説明

抗痴呆薬の安定化方法

【課題】抗痴呆薬を含有した医薬組成物において、徐放性を有し、かつ保存安定性に優れた医薬組成物およびその製造方法、ならびに該医薬組成物における抗痴呆薬の安定化方法を提供すること。
【解決手段】抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を含む医薬組成物に、高分子量酸性物質を添加する工程を含む、抗痴呆薬の安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗痴呆薬を含有する組成物における抗痴呆薬の安定化に関するものである。より詳細には、本発明は、3級アミノ基を有する抗痴呆薬を含有し、かつ、徐放性を有する医薬組成物における抗痴呆薬の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、老人性痴呆あるいはアルツハイマー型痴呆等の痴呆症の介護が社会的な問題となっており、その治療薬の開発が盛んに行われている。中でも、ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有し、軽度から中等度のアルツハイマー痴呆症の治療剤としてその有用性が高く評価され、その塩酸塩を含む錠剤や顆粒剤が提供されてきた。最近では、嚥下能力の低下している場合でも服用しやすい口腔内崩壊錠も市販され、さらに、経口投与が困難になった場合を想定して、軟膏剤を経皮的に適用することも提案されている(例えば、特許文献1:特開平11−315016公開公報参照)。
【0003】
このように患者の状態や症状に適した医薬組成物を開発することは、投薬コンプライアンス面、あるいはクオリティ・オブ・ライフの面で非常に有意義である。その意味で、いわゆる徐放性製剤は、薬物を徐放化することにより薬物の投与回数を減らしてもなお、同等以上の治療効果を得ることが可能であり、投薬コンプライアンスの向上が期待されるため、抗痴呆薬においても有用である。
【0004】
一般に、生理活性を有する薬物の徐放性製剤としては、(1)薬物と徐放性基剤が、製剤中に一様に分布しているマトリックス型と、(2)生理活性薬物を含有する核粒子あるいは核錠剤の表面に徐放性コーティングを施すことにより放出制御を行う徐放性コーティング皮膜型、の2つに大別される。
【0005】
マトリックス型徐放性製剤は、薬物と徐放性基剤が均一に存在するマトリックスを有している。マトリックスは、通常、錠剤や顆粒剤としてそのまま利用できるが、さらに、遮光性コーティング皮膜等を施す場合もある。一方、徐放性コーティング皮膜型製剤としては、薬物を含む顆粒や錠剤等の核に徐放性基剤を含むコーティング被膜を施すタイプ、または、いわゆるノンパレルと言われる結晶セルロースや白糖からなる核粒子上に薬物を含む層を被覆した後、さらに徐放性コーティング被膜を施すタイプ等がある。薬物を含む層や徐放性基剤を含む被膜を複数重ねることにより、徐放性を制御する場合もある。
【0006】
しかしながら、これらの徐放性製剤は、通常の錠剤や速溶型の錠剤等では配合されていなかった徐放性基剤等の添加剤が新たに配合されるため、薬物の安定性の低下には注意しなければならない。特に、抗痴呆薬の多くは、アミノ基を有する塩基性薬物であり、一般に、アミノ基のような求核性を有する反応性が高い官能基は、カルボニル炭素、過酸化物或いは酸素等と反応して分解物を生成し易い性質を有する。
【0007】
そこで、医薬品の開発においては、薬物あるいは添加剤の分解物が、医薬品の安全性あるいは有効性に影響することから、それらの分解物の生成を防止し、あるいは、その生成量を極力抑制させることが検討される。抗痴呆薬の安定化方法として、例えば、光に対するドネペジルの安定化に関して、有機酸を含有した組成物が開示されている(例えば、特許文献2:特開平11−106353公開公報)。その光安定化効果は、エタノール水溶液中でのドネペジルに対する有機酸の添加効果として評価され、有機酸が添加されていない溶液よりも、トシル酸、メシル酸、クエン酸等が添加された溶液の方が、ドネペジルは高い残存率を示すことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−315016号公報
【特許文献2】特開平11−106353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、抗痴呆薬に関して、徐放性を有する医薬組成物のような投薬コンプライアンスに優れた医薬組成物が切望されている。一方、通常の医薬品と同様に、徐放性製剤においても、保存安定性を確保することが要求されている。さらに、抗痴呆薬は、長期間投与されるケースも多いため、徐放性のような機能を有する製剤であっても、低コストで簡便に製造できる医薬組成物およびその製造方法が望まれている。そこで、本発明の目的は、抗痴呆薬を含有する医薬組成物における抗痴呆薬の安定化である。具体的には、本発明の目的は、抗痴呆薬を含有した医薬組成物において、徐放性を有し、かつ保存安定性に優れた医薬組成物およびその製造方法、ならびに該医薬組成物における抗痴呆薬の安定化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような状況に鑑み、発明者は、抗痴呆薬を含有する医薬組成物について鋭意検討を行った結果、抗痴呆薬として塩酸ドネペジル、徐放性基剤として高分子量塩基性物質であるエチルセルロースを配合したマトリックス型徐放性製剤において、塩酸ドネペジル由来の分解物が生成するという知見を得て、抗痴呆薬と徐放性基剤である高分子量塩基性物質との接触に伴い生成される分解物を高分子量酸性物質が効果的に防止し、または抑制すること、さらに低分子量酸性物質や抗酸化剤との併用効果をも有すること見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明は、抗痴呆薬および徐放性基剤を含有する医薬組成物において、抗痴呆薬を安定化させるための高分子量酸性物質を配合した保存安定性に優れた医薬組成物に関する。また、高分子量酸性物質は、一般に市販されている腸溶性高分子物質等を用いることができ、本発明の医薬組成物は、抗痴呆薬や徐放性基剤とともに混合または造粒することにより簡便に製造することができる。
【0012】
本発明の第一の態様では、抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を含む医薬組成物において、高分子量酸性物質を添加することを特徴とする抗痴呆薬の安定化方法である。高分子量酸性物質を添加することにより、抗痴呆薬と前記高分子量塩基性物質の接触により生成される抗痴呆薬の分解物を抑制することができる。さらに、好ましい態様は、本発明の医薬組物中に、低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを添加する安定化方法である。
【0013】
本発明の第二の態様では、抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を含む医薬組成物であって、抗痴呆薬を安定化させるための高分子量酸性物質を含むことを特徴とする医薬組成物である。さらに、本発明の医薬組成物は、抗痴呆薬を安定化させるために低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを含むことを特徴とする。より具体的には、医薬組成物が、抗痴呆薬、高分子量塩基性物質および抗痴呆薬を安定化させるための高分子量酸性物質を混合してなるマトリックスを具備する医薬組成物、例えば、マトリック型徐放性製剤であり、あるいは、医薬組成物が抗痴呆薬を含む核および前記核を被覆する高分子量塩基性物質を含む被覆層を具備し、前記核および前記被覆層の少なくとも1つに高分子量酸性物質を混合してなる医薬組成物、例えば、徐放性コーティング被膜型製剤である。
【0014】
より詳細には、本発明の医薬組成物は、(1)0.1N 塩酸水溶液およびpH6の50mMリン酸緩衝液における溶解度が1mg/ml以上、pH8の50mMリン酸緩衝液における溶解度が0.2mg/ml以下、およびpH6.8の50mMリン酸緩衝液における溶解度が前記pH8の50mMリン酸緩衝液における溶解度の2倍以上であって、且つ前記pH6の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/2以下である塩基性薬物またはその塩と、(2)少なくとも1種類の高分子量酸性物質とである腸溶性高分子と、(3)少なくとも1種類の高分子量塩基性物質である水不溶性高分子を含有する医薬組成物である。
【0015】
本発明の第三の態様では、本発明の抗痴呆薬の安定化作用を効果的に発揮するための製造方法であり、すなわち、抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を含む医薬組成物の製造方法における混合工程および造粒工程のうち少なくとも1つの工程で、抗痴呆薬および高分子量塩基性物質の混合物に、抗痴呆薬を安定化させるための高分子量酸性物質を添加することを特徴とする医薬組成物の製造方法である。好ましい態様としては、抗痴呆薬を安定化させるために、高分子量酸性物質のほかに、低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを添加することができる。さらに好ましい態様としては、混合工程および造粒工程のうち少なくとも1つの工程で、高分子量酸性物質、低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを溶液または懸濁液として添加することを特徴とする製造方法である。特に好ましい態様としては、混合工程において高分子量酸性物質を粉末添加した後、造粒工程において低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを溶液または懸濁液として添加する製造方法である。
【0016】
また、本発明の第三の別の態様では、(1)0.1N 塩酸水溶液およびpH6の50mMリン酸緩衝液における溶解度が1mg/ml以上、pH8の50mMリン酸緩衝液における溶解度が0.2mg/ml以下、およびpH6.8の50mMリン酸緩衝液における溶解度が前記pH8の50mMリン酸緩衝液における溶解度の2倍以上であって、且つ前記pH6の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/2以下である塩基性薬物またはその塩、(2)少なくとも1種類の高分子量酸性物質である腸溶性高分子、および(3)少なくとも1種類の水不溶性高分子物質(高分子量塩基性物質)を混合し、圧縮成型する工程を含有してなる前記塩基性薬物またはその塩の医薬組成物の製造方法に関する。
【0017】
さらにまた、本発明の第四の態様では、抗痴呆薬および高分子量塩基性物質の接触により生成される抗痴呆薬の分解物を抑制するための高分子量酸性物質の使用であり、高分子量酸性物質の新たな用途を見いだしたものである。このとき、低分子量酸性物質や抗酸化剤との併用により、分解物を効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様としては、抗痴呆薬は、3級アミノ基を有する化合物である。さらに好ましい態様としては、抗痴呆薬は、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、3−[1−(フェニルメチル)ピペリジン−4−イル]−1−(2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−8−イル)−1−プロパンおよび5,7−ジヒドロ−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−6H−ピロロ[4,5−f]−1,2−ベンズイソキサゾール−6−オン、ならびにそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選ばれる抗痴呆薬である。特に好ましい態様は、ドネペジルまたは薬理学的に許容される塩である。
【0019】
また、本発明の高分子量塩基性物質の具体例には、エチルセルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーおよびポリエチレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。本発明の高分子量塩基性物質の好ましい態様として、エチルセルロースおよびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーの何れか1つであり、より好ましい態様としては、エチルセルロースである。また、本発明の高分子量塩基性物質のより好ましい態様としては、水不溶性高分子物質を挙げることもできる。
【0020】
さらに、本発明の好ましい態様としては、高分子量酸性物質は、腸溶性高分子物質である。高分子量酸性物質のより好ましい態様としては、メタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、高分子量酸性物質のさらに好ましい態様としては、メタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマーである。また、高分子量酸性物質の配合量の好ましい態様としては、本発明の医薬組成物100質量部に対し、0.1〜90質量部であり、好ましくは1〜70質量部、より好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは10〜50質量部である。
【0021】
本発明の好ましい態様としては、低分子量酸性物質は、カルボン酸、スルホン酸、ヒドロキシ酸、酸性アミノ酸および無機酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである。低分子量酸性物質のより好ましい態様としては、ヒドロキシ酸、酸性アミノ酸および無機酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである。低分子量酸性物質のさらに好ましい態様としては、ヒドロキシ酸および酸性アミノ酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0022】
低分子量酸性物質の具体的成分として、コハク酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸塩酸塩、塩酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである。特に好ましい態様としては、低分子量酸性物質が、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸塩酸塩、塩酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである。より特に好ましい態様としては、低分子量酸性物質が、クエン酸、アスパラギン酸および塩酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである。また、低分子量酸性物質の配合量の好ましい態様としては、本発明の医薬組成物100質量部に対して、0.05〜4質量部であり、好ましくは0.1〜3質量部であり、より好ましくは0.15〜2質量部であり、さらに好ましくは0.15〜1.5質量部である。
【0023】
本発明の好ましい態様としては、抗酸化剤は、アスコルビン酸類および含硫アミノ酸の少なくとも1つである。より好ましい態様としては、抗酸化剤は、メチオニン、アスコルビン酸および塩酸システインからなる群から少なくとも1つ選ぶことができる。薬物1質量部に対して、抗酸化剤0.01〜10質量部であり、好ましくは抗酸化剤0.02〜5質量部、より好ましくは0.05〜2質量部である。また、抗酸化剤の配合量についても特に限定されるものではないが、例えば、本発明の医薬組成物100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.1〜2質量部、最も好ましくは0.15〜1.5質量部である。
【0024】
本発明の第一ないし第三の態様における好ましい医薬組成物は、徐放性製剤であり、より好ましくは、マトリックス型徐放性製剤である。また、医薬組成物の剤形として好ましい態様は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、または細粒剤である。したがって、本発明の特に好ましい態様は、ドネペジルまたは薬理学的に許容される塩、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質を含むマトリックス型徐放性製剤、または、ドネペジルまたは薬理学的に許容される塩、高分子量塩基性物質、高分子量酸性物質、低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを含むマトリックス型徐放性製剤である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、抗痴呆薬と徐放性基剤が配合された医薬組成物において、それらの接触に伴う分解物の生成を防止、または抑制する方法、つまり、抗痴呆薬の安定化方法を提供できる。または、本発明の投薬コンプライアンスおよび品質に優れた医薬組成物により、特に抗痴呆薬に関し、患者またはその介護者に投薬作業の負担を軽減し、かつ、安心して服用できる医薬品を提供できる。さらに、本発明によれば、特殊なコーティング技術や製造装置を用いなくとも、徐放性をコントロールし、かつ、抗痴呆薬を安定化させた医薬品組成物のための簡便な製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】各種添加剤を配合した顆粒を開封下60℃ 75%RHで2週間保存した後の分解生成物量と、その添加剤の2.5%水溶液または懸濁液のpHの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、以下に説明するが、これらは、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0028】
(抗痴呆薬)
本発明に用いる抗痴呆薬は1級、2級あるいは3級アミノ基を有する塩基性薬物であれば特に限定されないが、好ましくは、3級アミノ基を有するものである。例えば、1級アミノ基を有する抗痴呆薬は、タクリン、メマンチンまたはこれらの薬理学的に許容される塩である。3級アミノ基を有する抗痴呆薬としては、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、3−[1−(フェニルメチル)ピペリジン−4−イル]−1−(2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−8−イル)−1−プロパンおよび5,7−ジヒドロ−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−6H−ピロロ[4,5−f]−1,2−ベンズイソキサゾール−6−オン、ならびにそれらの薬理学的に許容される塩である。好ましくは、1級アミノ基を有する抗痴呆薬としては、タクリンまたは塩酸メマンチンである。3級アミノ基を有する抗痴呆薬としては、リバスチグミン酒石酸塩、ガランタミン臭化水素酸塩、塩酸ドネペジル(化学名、(±)−2−[(1−ベンジルピペリジン−4‐イル)メチル]−5,6−ジメトキシインダン−1−オン 1塩酸塩)、3−[1−(フェニルメチル)ピペリジン−4−イル]−1−(2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−8−イル)−1−プロパンフマル酸塩(TAK−147)、5,7−ジヒドロ−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−6H−ピロロ[4,5−f]−1,2−ベンズイソキサゾール−6−オンマレイン酸塩(CP118954)である。さらに好ましくは、抗痴呆薬は、塩酸ドネペジル、TAK−147、CP118954であり、最も好ましくは塩酸ドネペジルである。なお、抗痴呆薬は、フリー体、有機酸塩あるいは無機酸塩の何れの形で使用してもよいが、有機酸塩あるいは無機酸塩が好ましく、無機酸塩が特に好ましい。具体的には、以下のものに限定されるわけではないが、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、メシル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、トシル酸塩等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いる塩基性薬物又はその塩は、その酸性水溶液、中性水溶液または塩基性水溶液に対する溶解性は、特に限定されないが、酸性水溶液及び中性水溶液における溶解度が、塩基性水溶液における溶解度よりも高い塩基性薬物である。ここで、これらの水溶液の調製のために、これらに限定されるものではないが、リン酸緩衝液(例えば、50mMリン酸ナトリウム水溶液と塩酸により調製される緩衝液)、G.L.Millerの緩衝液、Atkins-Pantinの緩衝液またはGoodの緩衝液等の緩衝液、0.1N塩酸水溶液、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液等を用いることができる。なお、ここでの溶解度は、水溶液の液温が25℃のときの値を示す。
【0030】
ここで、用語「酸性水溶液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を緩衝液等で溶解したときに酸性を示す水溶液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を示す。同様に、用語「中性(塩基性)水溶液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を緩衝液等で溶解したときに中性(塩基性)を示す水溶液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を示す。
【0031】
例示をすれば、本発明に用いる塩基性薬物又はその塩は、pH3.0の酸性水溶液における溶解度及びpH6.0の中性水溶液における溶解度が、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度よりも高い塩基性薬物又はその塩である。ここで、用語「pH3.0の酸性水溶液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を緩衝液等で溶解したときにpH3.0を示す酸性水溶液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を意味する。用語「pH6.0の中性水溶液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を緩衝液等で溶解したときにpH6.0を示す水溶液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を意味する。同様に、用語「pH8.0の塩基性水溶液における溶解度」とは、塩基性薬物を緩衝液等で溶解したときにpH8.0を示す水溶液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を意味する。
【0032】
別の例示では、本発明に用いる塩基性薬物又はその塩は、0.1N塩酸水溶液における溶解度及びpH6.0の中性水溶液における溶解度が、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度よりも高い塩基性薬物又はその塩である。ここで、用語「0.1N塩酸水溶液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を0.1N塩酸水溶液で溶解したときの塩基性薬物の溶解度を意味する。この場合、例えば、0.1N塩酸水溶液に溶解させた塩酸ドネペジルおよび塩酸メマンチン溶液のpHは、約1〜2の範囲である。
【0033】
好ましくは、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の中性水溶液における溶解度が、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度よりも高く、並びにpH6.8の中性水溶液における溶解度が前記pH8.0の塩基性水溶液における溶解度の2倍以上であって、かつ、前記pH6.0の中性水溶液における溶解度の1/2以下である塩基性薬物又はその塩である。ここで、用語「pH6.8の中性水溶液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を緩衝液等で溶解したときにpH6.8を示す水溶液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を意味する。
【0034】
より具体的に例示すれば、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の中性水溶液における溶解度が1mg/mL以上、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度が0.2mg/mL以下、及びpH6.8の中性水溶液における溶解度が前記pH8.0の塩基性水溶液における溶解度の2倍以上であって、且つ前記pH6.0の中性水溶液における溶解度の1/2以下である塩基性薬物又はその塩であれば、特に限定されない。即ち、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の中性水溶液における溶解度は、1mg/mL以上であれば特に限定されないが、通常1〜1000mg/mLであり、好ましくは5〜200mg/mLであり、より好ましくは5〜100mg/mLであり、特に好ましくは10〜80mg/mLである。また、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度は、0.2mg/mL以下であれば特に限定されないが、通常0.0001〜0.2mg/mLであり、好ましくは0.0005〜0.1mg/mLであり、より好ましくは0.001〜0.05mg/mL、特に好ましくは0.002〜0.03mg/mLである。更に、pH6.8の中性水溶液における溶解度は、前記pH8.0の塩基性水溶液における溶解度の2倍以上であって、且つ前記pH6.0の中性水溶液における溶解度の1/2以下であれば特に限定されないが、好ましくは、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度の3倍以上であって、かつ、pH6.0の中性水溶液における溶解度の1/3以下であり、より好ましくは、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度の5倍以上であって、かつ、pH6.0の中性水溶液における溶解度の1/5以下であり、特に好ましくは、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度の10倍以上であって且つpH6.0の中性水溶液における溶解度の1/10以下である。
【0035】
さらに、別の例示では、本発明に係る塩基性薬物又はその塩は、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度が、pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度よりも高い塩基性薬物又はその塩である。ここで、用語「pH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を50mMリン酸緩衝液で溶解したときにpH6.0を示す50mMリン酸緩衝液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を意味する。同様に、用語「pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度」とは、塩基性薬物又はその塩を50mMリン酸緩衝液で溶解したときにpH8.0を示す50mMリン酸緩衝液における塩基性薬物又はその塩の溶解度を意味する。
【0036】
好ましくは、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度が、前記pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度よりも高く、並びにpH6.8の50mMリン酸緩衝液における溶解度が前記pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の2倍以上であって、かつ、前記pH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/2以下である塩基性薬物又はその塩である。より具体的に例示すれば、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度が1mg/mL以上、pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度が0.2mg/mL以下、及びpH6.8の50mMリン酸緩衝液における溶解度が前記pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の2倍以上であって、且つ前記pH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/2以下である塩基性薬物又はその塩であれば、特に限定されない。即ち、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度は、1mg/mL以上であれば特に限定されないが、通常1〜1000mg/mLであり、好ましくは5〜200mg/mLであり、より好ましくは5〜100mg/mLであり、特に好ましくは10〜80mg/mLである。また、pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度は、0.2mg/mL以下であれば特に限定されないが、通常0.0001〜0.2mg/mLであり、好ましくは0.0005〜0.1mg/mLであり、より好ましくは0.001〜0.05mg/mL、特に好ましくは0.002〜0.03mg/mLである。さらに、pH6.8の50mMリン酸緩衝液における溶解度は、前記pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の2倍以上であって、且つ前記pH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/2以下であれば特に限定されないが、好ましくは、pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の3倍以上であって、かつ、pH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/3以下であり、より好ましくは、pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の5倍以上であって、かつ、pH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/5以下であり、特に好ましくは、pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の10倍以上であって且つpH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/10以下である。
【0037】
例えば、塩酸ドネペジルは、pH3.0の酸性水溶液における溶解度及びpH6.0の中性水溶液における溶解度が11mg〜16mg/mL、pH8.0の塩基性水溶液における溶解度が0.1mg/mL以下である。また、塩酸ドネペジルは、pH6.8の中性水溶液における溶解度がpH8.0の塩基性水溶液における溶解度の2倍以上であって、かつ、前記pH6.0の中性水溶液における溶解度の1/2以下であるという特性を持つ、3級アミノ基1個を有する弱塩基性薬物又はその塩であり、アルツハイマー型痴呆薬として汎用されている薬物である。
【0038】
あるいは、塩酸ドネペジルは、0.1N 塩酸水溶液及びpH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度が11mg〜16mg/mL、pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度が0.1mg/mL以下であり、かつ、pH6.8の50mMリン酸緩衝液における溶解度が前記pH8.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の2倍以上であって、かつ、前記pH6.0の50mMリン酸緩衝液における溶解度の1/2以下であるという特性を持つ、3級アミノ基1個を有する弱塩基性薬物又はその塩であり、アルツハイマー型痴呆薬として汎用されている薬物である。
【0039】
本発明に用いる塩基性薬物又はその塩の用量は、特に限定されるものではないが、例えば、アルツハイマー型痴呆薬としてのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であれば、0.01〜50mg/dayである。具体的な例としては、ドネペジル又はその薬理学的に許容される塩の用量は、0.01〜50mg/dayであり、好ましくは、0.1〜40mg/dayであり、さらに好ましくは、1〜30mg/dayであり、特に好ましくは、5〜25mg/dayである。リバスチグミン又はその薬理学的に許容される塩の用量は、0.01〜50mg/dayであり、好ましくは、0.1〜30mg/dayであり、さらに好ましくは、1〜20mg/dayであり、特に好ましくは、1〜15mg/dayである。ガランタミン又はその薬理学的に許容される塩の用量は、0.01〜50mg/dayであり、好ましくは、0.1〜40mg/dayであり、さらに好ましくは、1〜30mg/dayであり、特に好ましくは、2〜25mg/dayである。
【0040】
また、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗剤としてのメマンチン又はその薬理学的に許容される塩の場合、その用量は、0.5〜100mg/dayであり、好ましくは、1〜100mg/dayであり、さらに好ましくは、1〜40mg/dayである。特に好ましくは、5〜25mg/dayである。
【0041】
(高分子量塩基性物質)
本発明に用いる高分子量塩基性物質は、水に溶解または懸濁したときに塩基性を示す高分子物質である。例えば、高分子量塩基性物質を2.5%水溶液または懸濁液とした場合、pH7.0を超える高分子物質であり、好ましくは、pH7.5〜14.0を示す高分子物質であり、さらに好ましくは、pH8.0〜14.0を示す高分子物質である。また、本発明に用いる高分子量塩基性物質は、本発明に係る医薬組成物において徐放性基剤として配合することができるが、その他の使用目的で配合してもよい。また、高分子量塩基性物質は、水不溶性のものでも、水膨潤性物質あるいは水に溶解してゲルを形成するようなものでもよい。水不溶性の高分子量塩基性物質としては、例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類またはメタクリル酸・アクリル酸コポリマー(商品名オイドラギッド、レームファルマ社製)が挙げられる。例えば、エチルセルロース(商品名ETHOCEL、Dow Chemical社)、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロースもしくはイソプロピルセルロース、ブチルセルロース等のセルロースアルキルエーテル類;ベンジルセルロース等のセルロースアラルキルエーテル類;シアノエチルセルロース等のセルロースシアノアルキルエーテル類;セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートもしくはセルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース有機酸エステル類;アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(商品名オイドラギットNE、レームファルマ社製)等であるが、これらに限定されるものではない。また、水溶性または膨潤性の高分子量塩基性物質としては、ポリエチレンオキサイド(商品名POLYOX、Dow Chemical社、分子量(10万〜700万)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名L-HPC、信越化学工業)等であるが、これらに限定されるものではない。なお、本発明の高分子量塩基性物質は、単独でもあるいは2種類以上を医薬組成物に配合することができる。本発明に用いる高分子量塩基性物質は、好ましくは、エチルセルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(商品名オイドラギットNE)、ポリエチレンオキサイド(商品名POLYOX)である。さらに好ましくは、高分子量塩基性物質が、エチルセルロースおよびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーの少なくとも1つである。特に好ましい態様としては、高分子量塩基性物質が、エチルセルロースである。高分子量塩基性物質の医薬組成物中での配合量は、薬物の徐放性を制御する等の目的のために、適宜調節可能であり、特に限定されるものではない。本発明で用いる高分子量塩基性物質(水不溶性高分子物質)の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは3〜15μmであり、特に好ましくは5〜15μmである。
【0042】
マトリックス型徐放性製剤中の高分子量塩基性物質の配合量は特に限定されないが、医薬組成物100質量%に対して、1〜90質量%であり、好ましくは3〜70質量%であり、より好ましくは5〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜35質量%である。
【0043】
(分解物)
本発明における分解物とは、抗痴呆薬と高分子量塩基性物質の接触により生成される抗痴呆薬由来の分解物である。抗痴呆薬の有するアミノ基が反応することにより生成するものと推定される。例えば、塩酸ドネペジルと高分子量塩基性物質の接触により生じる分解物は、液体クロマトグラフ法により、常法により検出できる。
【0044】
(高分子量酸性物質)
本発明で用いる高分子量酸性物質は、水に溶解または懸濁したときに酸性を示す高分子物質であり、例えば、高分子量酸性物質を2.5%水溶液とした場合、pH7未満の高分子物質であり、好ましくは、pH1.0〜6.5を示す高分子物質であり、さらに好ましくは、pH1.0〜6.0以下を示す高分子物質である。本発明で用いる高分子量酸性物質は水不溶性のものでも、水膨潤性物質あるいは水に溶解してゲルを形成するようなものであってもよい。本発明の高分子量酸性物質は、例えば、腸溶性高分子物質である。腸溶性高分子物質の例としては、メタクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットL100(Methacrylic Acid copolymer, Type A)、オイドラギットS100(Methacrylic Acid copolymer, Type B):レ-ムファルマ社製)、メタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー(オイドラギットL100-55(Methacrylic Acid copolymer, Type C)、オイドラギットL30D-55(Methacrylic Acid copolymer Dispersion):レ-ムファルマ社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP-55、HP-50:信越化学社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(AQOAT:信越化学社製)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC:フロイント産業社製)、酢酸フタル酸セルロース等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いる高分子量酸性物質として、水膨潤性物質あるいは水に溶解してゲルを形成する高分子量酸性物質は、アルギン酸、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。本発明で用いる高分子量酸性物質は、単独でもあるいは2種類以上を医薬組成物に配合することができる。本発明で用いる高分子量酸性物質は、好ましくは、腸溶性高分子物質であり、より好ましくはメタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートであり、より好ましくは、メタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマーである。
【0045】
本発明で用いる高分子量酸性物質は、医薬組成物の製造工程で使用する際には、粉末タイプ、顆粒タイプ、あるいは予め溶媒に分散された懸濁タイプの市販品をそのまま利用できるが、さらに、これらの市販品を水や有機溶媒に分散させて使用することも可能である。本発明の高分子量酸性物質の粒径は小さいものほど好適であり、好ましくは、粉末タイプである。粉末タイプの例を挙げると、メタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマーの場合、オイドラギットL100-55である。また、本発明で用いる高分子量酸性物質の平均粒子径としては、特に限定されないが、好ましくは0.05〜100μmであり、より好ましくは0.05〜70μm、最も好ましくは0.05〜50μmである。
【0046】
高分子量酸性物質の中でも、特に腸溶性高分子物質の安定化効果は、本発明に係る医薬組成物中に多量に配合しても、抗痴呆薬の安定性は損なわれないため非常に有用である。したがって、高分子量酸性物質の配合量については限定されるものではないが、例えば、
高分子量酸性物質の配合量は、本発明に係る医薬組成物100質量部に対して、通常、0.1〜90質量部であり、好ましくは1〜70質量部であり、より好ましくは5〜60質量部であり、さらに好ましくは10〜50質量部である。
【0047】
医薬組成物における腸溶性高分子物質の配合量は特に限定されないが、医薬組成物100質量部に対し、5〜90質量部であり、好ましくは8〜70質量部であり、より好ましくは10〜60質量部であり、特に好ましくは15〜50質量部である。医薬組成物中における水不溶性高分子と腸溶性高分子の合計配合量は特に限定されないが、医薬組成物100質量部に対して、通常、25〜95質量部であり、好ましくは35〜95質量部であり、より好ましくは40〜90質量部であり、さらに好ましくは35〜90質量部であり、特に好ましくは35〜75質量部である。
【0048】
医薬組成物中の高分子量塩基性物質(水不溶性高分子物質)と高分子量酸性物質(腸溶性高分子物質)の合計配合量は、特に限定されないが、通常、医薬組成物100質量部に対して、通常、25〜95質量部であり、好ましくは35〜95質量部であり、より好ましくは35〜75質量部である。
【0049】
(低分子量酸性物質)
本発明で用いる低分子量酸性物質は、2.5%水溶液または2.5%懸濁液として、水に溶解または懸濁させたときのpHが4.5未満となるものであれば、特に限定されず、好ましくはpH1.0〜4.0であり、より好ましくはpH1.0〜3.5であり、特に好ましくはpH1.0〜3.0となる物質である。また、抗痴呆薬との関係として示せば、2〜5%水溶液または懸濁液のpHが4.0〜6.0となる抗痴呆薬に対し、その水溶液のpHから低分子量酸性物質の2.5%水溶液または2.5%懸濁液のpHを引いた値は、例えば、0.05〜5.5であり、好ましくは、0.5〜5.5であり、より好ましくは1.0〜5.0、さらに好ましくは1.5〜5.0である。
【0050】
また、本発明で用いる低分子量酸性物質は、アミノ酸、エチレンジアミン四酢酸のように、酸性官能基以外に塩基性官能基等を有するものであっても、2.5%水溶液または2.5%懸濁液のpHが4.5未満であれば本発明に含まれる。ここで、本発明で用いる用語「低分子量」とは、分子量1000以下を示し、本発明で用いる高分子量酸性物質は含まれない。さらに、本発明で用いる低分子量酸性物質は水溶性であっても水不溶性であっても構わないが、好ましくは、常温で固体であり、さらに好ましくは揮発性が低いという性質も具備しているものである。本発明で用いる低分子量酸性物質は、1つあるいは2種類以上を医薬組成物に配合することができる。
【0051】
低分子量酸性物質は特に限定されるものではないが、例えば、有機酸、無機酸あるいは酸性アミノ酸が挙げられる。有機酸としては、以下のものに限定されないが、酢酸、安息香酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、ソルビン酸等のカルボン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸、サリチル酸等のヒドロキシ酸、トシル酸、メシル酸等のスルホン酸が挙げられる。無機酸としては、以下のものに限定されないが、塩酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。酸性アミノ酸としては、以下のものに限定されないが、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸塩酸塩、塩酸ヒスチジン等が挙げられる。好ましくは、カルボン酸、ヒドロキシ酸、酸性アミノ酸および無機酸であり、より好ましくは、ヒドロキシ酸、酸性アミノ酸および無機酸である。具体的な成分として挙げるとすれば、本発明で用いる低分子量酸性物質は、以下のものに限定されないが、より好ましくは、コハク酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸塩酸塩、塩酸、リン酸である。さらに好ましくは、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸塩酸塩、塩酸、リン酸である。特に好ましくは、クエン酸、アスパラギン酸、塩酸である。
【0052】
また、低分子量酸性物質は、高分子酸性物質と併用することにより本発明の効果が顕著に得られる。高分子量酸性物質は、安定性の面で配合量を制限するものではないが、徐放性の観点から配合量を調節する場合がある。このとき、低分子量酸性物質を併用することにより、その調節量の影響を受けることなく、分解物を防止あるいは抑制することが可能である。低分子量酸性物質の配合量は、例えば、本発明に係る医薬組成物100質量部に対して、通常0.05〜4質量部であり、好ましくは0.1〜3質量部であり、より好ましくは0.15〜2質量部であり、さらに好ましくは0.15〜1.5質量部である。
【0053】
(抗酸化剤)
本発明で用いる抗酸化剤は、抗酸化剤自身が酸化されることにより抗酸化能を発揮する抗酸化剤であれば特に限定されないが、抗酸化剤自身がアミノ基を有する抗痴呆薬よりも酸化されやすいことが望ましい。したがって、本発明で用いる抗酸化剤は、還元作用を有する。本発明で用いる抗酸化剤の具体例としては、以下のものに限定されないが、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸類;システイン、塩酸システイン、メチオニン等の含硫アミノ酸;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩;カテコール、クロロゲン酸、カフェイン酸、チロシンなどのカテコール誘導体;ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどのヒドロキノン誘導体;没食子酸、没食子酸エステル、タンニン酸などの没食子酸誘導体;dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、d−β−トコトリエノール、d−γ−トコトリエノール、d−δ−トコトリエノール、またはそれらの混合物などのトコフェロール類;ルチン、ケルセチン、ヘスペリチンなどのフラボン類;カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、プロアントシアニジンなどのポリフェノール類等が挙げられる。好ましくは、アスコルビン酸類、含硫アミノ酸、ヒドロキノン誘導体、トコフェロール類である。より好ましくは、アスコルビン酸類または含硫アミノ酸である。さらに好ましくは、メチオニン、アスコルビン酸、または塩酸システインである。なお、本発明で用いる抗酸化剤はフリー体あるいは塩の何れの形態で使用してもよいが、好ましくは、水に溶解または懸濁させた際に、それらの水溶液が酸性を示す物質がよい。例えば、アスコルビン酸ナトリウムよりもアスコルビン酸が好ましく、システインよりも塩酸システインの方がより好ましい。また、本発明で用いる抗酸化剤は、単独でも、2種類以上の抗酸化剤を配合して使用してもよく、あるいは低分子量酸性物質と共に使用することもできる。さらに、本発明の抗酸化剤は水溶性であっても水不溶性でもよいが、好ましくは、常温で固体であり、より好ましくは揮発性が低いという性質も具備しているものである。
【0054】
本発明で用いる抗酸化剤と薬物の配合比については特に限定されるものではないが、例えば、薬物1質量部に対して、抗酸化剤が、通常、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.02〜5質量部、より好ましくは0.05〜2質量部である。また、抗酸化剤の配合量についても特に限定されるものではないが、例えば、本発明に係る医薬組成物100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.1〜2質量部、さらに好ましくは0.15〜1.5質量部である。
【0055】
(水溶性糖又は水溶性糖アルコール)
本発明に係る医薬組成物は、水溶性の糖類および/または糖アルコールをさらに含有することが好ましい。水溶性の糖類および/または糖アルコールは、特に限定されない。水溶性の糖類としては、以下のものに限定されないが、乳糖、白糖、ブドウ糖、デキストリン、プルラン等が挙げられる。水溶性の糖アルコールとしては、以下のものに限定されないが、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等が挙げられ、好ましくは、乳糖、マンニトールである。本発明に係る医薬組成物中の水溶性の糖類または糖アルコールの配合量は、特に限定されないが、マトリックス型徐放性製剤の100質量%に対して、通常、3〜70質量%であり、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは10〜60質量%であり、特に好ましくは12〜60質量%である。
【0056】
(賦形剤)
本発明に係る医薬組成物は、さらに薬理学的に許容される種々の担体、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等や、また必要に応じて、防腐剤、着色剤、甘味剤、可塑剤、フィルムコーティング剤などの添加剤を配合してもよい。賦形剤としては、以下のものに限定されないが、デンプン、α化デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。滑沢剤としては、以下のものに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc USA)、ステアリン酸カルシウム(Merck KGaA Darmstadt, Germany)、タルク、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。結合剤としては、以下のものに限定されないが、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。崩壊剤としては、以下のものに限定されないが、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。防腐剤としては、以下のものに限定されないが、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。着色剤の好適な例としては、以下のものに限定されないが、水不溶性レーキ色素、天然色素(例、βーカロチン、クロロフィル、ベンガラ)、黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、黒色酸化鉄などが挙げられる。甘味剤の好適な例としては、以下のものに限定されないが、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアなどが挙げられる。可塑剤としては、以下のものに限定されないが、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。フィルムコーティング基剤としては、以下のものに限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0057】
(医薬組成物)
本発明に係る医薬組成物は、抗痴呆薬が安定化した組成物であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、徐放性の機能を有する組成物、つまり徐放性製剤であり、より好ましくは、マトリックス型徐放性製剤である。また、本発明に係る医薬組成物の剤形は特に限定されるものではなく、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟膏剤、注射剤、貼付剤、吸入剤、ゼリー剤等の何れの剤形としても使用することが可能である。好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、ゼリー剤などの経口投与に適した剤形であり、より好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤である。
【0058】
また、本発明に係る医薬組成物は、抗痴呆薬、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質を含む医薬組成物である。医薬組成物中での抗痴呆薬、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質の分布状態としては特に制限はなく、これらの成分を、本発明に係る医薬組成物中の同一相に均一に配合させることができる。具体的には、抗痴呆薬、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質を混合してなるマトリックスを具備する医薬組成物であり、例示すれば、マトリックス型徐放性製剤である。本発明のマトリックスとは、薬物および徐放性基剤を均一に混合し、造粒または成型されたものである。もちろん、これらのマトリックスには、その他の添加剤を配合することもでき、あるいは、遮光剤や防湿剤等を含むコーティング層でマトリックスをさらに被覆することもできる。
【0059】
また、本発明に係る医薬組成物は、薬物と高分子量塩基性物質を前記医薬組成物中のお互いに隣接する相に個別に配合させることができる。さらに、これらの薬物を含む相と高分子量塩基性物質を含む相は、それぞれ複数の相を層状に重ねることもできる。このとき、いずれかの相の少なくとも1つの相に、高分子量酸性物質を配合することができる。例えば、本発明に係る医薬組成物は、抗痴呆薬を含む核と、この核を被覆する高分子量塩基性物質を含む被覆層とを具備し、かつ、核および被覆層の少なくとも1つに高分子量酸性物質を混合してなる医薬組成物であり、例示すれば、徐放性コーティング被膜型製剤である。なお、ここで、核とは、粒子状の形態のもの、錠剤等の形態が含まれ、特に限定されるものではない。薬物および高分子量酸性物質の両者を混合してなる素錠を核として、この素錠に、直接、高分子量塩基性物質を含有する皮膜を施した錠剤、または、薬物を含む顆粒を核として、その核に、直接、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質を含有する被膜を施した顆粒剤、ノンパレル等の核粒子に高分子量酸性物質および薬物を含有する層と、高分子量塩基性物質を含む層を積層した顆粒剤等が挙げられる。あるいは、ノンパレル等の核粒子に高分子量酸性物質および高分子量塩基性物質を含有する層と、薬物を含有する層を積層させた顆粒を含む錠剤またはカプセル剤等の形態にすることも可能である。
【0060】
さらに、本発明に係る医薬組成物は、薬物を含む相と高分子量塩基性物質を含む相の間に、高分子量酸性物質を含む相を具備し、抗痴呆薬と高分子量塩基性物質を接触させない医薬組成物とすることもできる。薬物を含む核に、高分子量酸性物質を含む混合物で被覆し、さらに、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質を含む被覆層で被覆した顆粒剤とすることができる。
【0061】
(高分子量酸性物質を配合する方法)
高分子量酸性物質を、本発明に係る医薬組成物中へ配合するにあたっては、公知の操作方法(例えば、第14改正、日本薬局方の製剤総則に記載されている操作方法)を利用することができ、医薬組成物の製造における混合工程、造粒工程、圧縮成型工程、コーティング工程、充填工程等の何れかの工程あるいは複数の工程で配合することができる。具体的には、(a)薬物および高分子量塩基性物質を乾式混合または湿式混合する工程で、さらに高分子量酸性物質を添加し混合する方法、(b)薬物及水不溶性高分子の混合物を湿式造粒するための水等の結合剤に高分子量酸性物質を懸濁させて添加する方法、(c)薬物及水不溶性高分子の混合物を乾式造粒するときに高分子量酸性物質を粉末添加する方法、(d)薬物を含む顆粒および高分子量塩基性物質を含む顆粒を混合して圧縮成型するときに、高分子量酸性物質を粉末添加する方法、(e)薬物を含む顆粒または錠剤に、高分子量塩基性物質を含有する糖衣層、あるいはフィルムコート層を施す際に、これらの層を形成するためのコーティング液等に予め高分子量酸性物質を添加する方法、(f)薬物を含む顆粒および高分子量塩基性物質を含む顆粒とともに高分子量酸性物質の粉末または顆粒をカプセルに充填する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、高分子量酸性物質は、混合工程および造粒工程の少なくとも1つの工程で添加するのがよい。より好ましくは、混合工程および造粒工程の少なくとも1つの工程において、薬物および高分子量塩基性物質の混合物に、高分子量酸性物質を粉末として、または溶液若しくは懸濁液として添加する方法であり、この方法によって各成分が均一に配合された顆粒剤を得ることができる。さらに好ましくは、薬物および高分子量塩基性物質の混合物に、高分子量酸性物質を粉末添加する方法である。なお、湿式混合、安定化剤の溶液あるいは懸濁液調製等の製造工程において使用する溶媒は特に限定されないが、例えば、アルコール類、水、またはそれらの混合液であり、好ましくはエタノール、水またはそれらの混合液である。
【0062】
(低分子量酸性物質等を配合した組成物)
本発明に係る医薬組成物は、抗痴呆薬、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質に、さらに、低分子量酸性物質を含む医薬組成物である。医薬組成物において、低分子量酸性物質の配合状態は限定されるものではないが、例えば、薬物、高分子量塩基性物質および高分子量酸性物質を均一に配合させた相に、さらに配合することができる。薬物と高分子量塩基性物質が異なる相に存在する場合は、それらの相の少なくとも1つの相に低分子量酸性物質を配合させた医薬組成物である。医薬組成物中のマトリックスや核に単独で、若しくは高分子量酸性物質とともに被覆することもできる。なお、抗酸化剤についても、以上に述べた通り、低分子量酸性物質と同様にして医薬組成物中に配合することもできる。もちろん、低分子量酸性物質とともに配合しても、または、低分子量酸性物質とは別に医薬組成物中に配合してもよい。
【0063】
(低分子量酸性物質等を添加する方法)
低分子量酸性物質や抗酸化剤の処方中への配合は、高分子量酸性物質の配合と同様に、医薬組成物製造の何れかの工程あるいは複数の工程で実施することができる。また、低分子量酸性物質は、高分子量酸性物質を添加する工程と同じ工程で配合することも、別の工程で配合することもできる。好ましくは、低分子量酸性物質や抗酸化剤は、医薬組成物の製造における混合工程および造粒工程の少なくとも1つの工程で添加する。より好ましくは、高分子量酸性物質および低分子量酸性物質は、医薬組成物の製造における混合工程および造粒工程の少なくとも1つの工程で添加する。また、低分子酸性物質や抗酸化剤の添加にあたっては、その方法や形態は限定されるものではなく、それらを粉末添加しても、溶媒に溶解若しくは分散させて添加しても、またはスプレーで噴霧してもよい。このとき、複数の低分子量酸性物質や抗酸化剤、または高分子量酸性物質を同じ工程で添加する場合であっても、その添加方法は、それぞれの物質によって異なる方法で添加しても、同じ方法で添加してもよい。例えば、混合工程において、高分子量酸性物質を粉末添加し、低分子量酸性物質や抗酸化剤を溶液若しくは懸濁液として添加する、あるいは混合工程で高分子量酸性物質を粉末添加し、造粒工程で、低分子量酸性物質や抗酸化剤を溶液若しくは懸濁液として添加することができるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明に係る医薬組成物の製造方法は、高分子量酸性物質を混合する工程を含む限り、特に限定されるものではなく、公知の操作方法(例えば、第14改正、日本薬局方の製剤総則に記載されている操作方法)を組み合わせて製造することができる。経口固形製剤を例に挙げれば、錠剤の場合は、薬物、必要に応じ、賦形剤、崩壊剤等を加えて混合し、結合剤を加えて顆粒とし、これに必要に応じ、崩壊剤、滑沢剤等を加えて打錠して錠剤とする。また、顆粒剤においても錠剤とほぼ同様の方法で押出し造粒を行うか、あるいはノンパレル(白糖75%(W/W)およびコーンスターチ25%(W/W)を含む核)に、水または、結合剤を含む溶液(濃度:約0.5〜70%(W/V))を噴霧しながら、薬物および添加剤を含有してなる粉状散布剤をコーティングすることにより得られる。また、カプセル剤の場合は、薬物を賦形剤とともに、ゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロース等のカプセルに充填すればよい。また、これらの医薬組成物は、味のマスキング、腸溶性あるいは徐放性等のために、コーティング剤を単独で、または、さらに遮光剤、本発明の低分子量酸性物質若しくは抗酸化剤等を含む混合物で被覆してもよい。
【0065】
本発明に係る医薬組成物は、例えば、以下の方法により、製造することができる。塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)130g、エチルセルロース(商品名エトセル10FP、ダウ・ケミカル)624g、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)780gおよび乳糖988gを攪拌造粒機中で混合する。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)52gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒する。上記造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒する。整粒後、顆粒99g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)1gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル10mgを含有する直径8mmの錠剤を得ることが可能である。更に、コーティング装置を用いて、当該錠剤にヒドロキシプロピルセルロース等を主成分とする水溶性フィルムを被覆してもよい。
【0066】
あるいは、本発明の医薬組成物は、以下の方法により、製造することができる。塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)130g、エチルセルロース(商品名エトセル10FP、ダウ・ケミカル)624g、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)780gおよび乳糖975gを攪拌造粒機中で混合する。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)52gおよびクエン酸13gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒する。上記造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒する。整粒後、顆粒99g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)1gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル10mgを含有する直径8mmの錠剤を得ることが可能である。さらに、コーティング装置を用いて、当該錠剤にヒドロキシプロピルセルロース等を主成分とする水溶性フィルムを被覆してもよい。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、医薬品組成物に用いる添加物は、日局、医薬品添加物規格2003(薬添規)、日本薬局方外医薬品規格1997(局外規)等の公定書に適合したもの、または試薬を使用した。
【0068】
(実施例1)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)300mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)375mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)1500mg、乳糖795mgに適量の精製水を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥した。乾燥後の顆粒に対し、ステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)30mgを加え混合した。上記混合物を200mg採取し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて製錠し、塩酸ドネペジル20mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。
【0069】
(実施例2)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに適量の精製水を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0070】
(実施例3)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、クエン酸20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0071】
(実施例4)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、クエン酸二水素ナトリウム20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0072】
(実施例5)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、アスパラギン酸20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0073】
(実施例6)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、アスコルビン酸20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0074】
(実施例7)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、アスコルビン酸ナトリウム20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0075】
(実施例8)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、システイン20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0076】
(実施例9)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、塩酸システイン20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0077】
(実施例10)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、メチオニン20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0078】
(実施例11)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)130g、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)312g、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)624gおよび乳糖1456gを攪拌造粒機中で混合した。この混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)52gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99gに対してステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)1gを添加して混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル10mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライイエロー(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0079】
(実施例12)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)130g、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)624g、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)780gおよび乳糖988gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)52gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99gに対してステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)1gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル10mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライイエロー(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0080】
(実施例13)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)130g、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)780g、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)858gおよび乳糖754gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)52gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)1gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル10mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライイエロー(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0081】
(実施例14)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)130g、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)832g、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)962gおよび乳糖598gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)52gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、上記造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)1gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル10mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライイエロー(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0082】
(実施例15)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)3.5g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)37.8g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)22.4g及び乳糖(Pharmatose200M、DMV社製)73.5gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達)2.8gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、パワーミルを用いて整粒した。整粒後、顆粒5000mg当りステアリン酸カルシウム(Merck KGaA Germany)50mgを添加し混合し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて、打錠圧1200Kgfで製錠することにより、202mg中に、塩酸ドネペジル5mgを含有する直径8mmの圧縮成型物を得た。
【0083】
(実施例16)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)3.5g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)37.8g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)22.4g及び乳糖(Pharmatose200M、DMV社製)73.08gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達)2.8g及びクエン酸0.42gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、パワーミルを用いて整粒した。整粒後、顆粒5000mg当りステアリン酸カルシウム(Merck KGaA Germany)50mgを添加し混合し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて、打錠圧1200Kgfで製錠することにより、202mg中に、塩酸ドネペジル5mgを含有する直径8mmの圧縮成型物を得た。
【0084】
(実施例17)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)3.5g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)37.8g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)22.4g及び乳糖(Pharmatose200M、DMV社製)73.5gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達)2.8gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、パワーミルを用いて整粒した。整粒後、顆粒5000mg当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)50mgを添加し混合し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて、打錠圧1200Kgfで製錠することにより、202mg中に、塩酸ドネペジル5mgを含有する直径8mmの圧縮成型物を得た。
【0085】
(実施例18)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)3.5g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)37.8g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)22.4g及び乳糖(Pharmatose200M、DMV社製)73.08gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達)2.8g及びクエン酸0.42gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、造粒顆粒を、棚式乾燥機を用いて加温乾燥後、パワーミルを用いて整粒した。整粒後、顆粒5000mg当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)50mgを添加し混合し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて、打錠圧1200Kgfで製錠することにより、202mg中に、塩酸ドネペジル5mgを含有する直径8mmの圧縮成型物を得た。
【0086】
(実施例19)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)980g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)3780g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)2660gおよび乳糖6188gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)300gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、上記造粒顆粒を、流動層乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99.7g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)0.3g添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル14mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライパープル(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0087】
(実施例20)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)1050g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)3780g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)2240gおよび乳糖6538gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)350gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、上記造粒顆粒を、流動層乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99.7g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)0.3gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル15mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライパープル(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0088】
(実施例21)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)1400g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)3500g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)2520gおよび乳糖6118gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)420gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、上記造粒顆粒を、流動層乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99.7g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)0.3gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル20mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライレッド(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0089】
(実施例22)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)1610g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)3500g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)2520gおよび乳糖5908gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)420gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、上記造粒顆粒を、流動層乾燥機用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99.7g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)0.3gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル23mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライレッド(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0090】
(実施例23)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)1610g、エトセル10FP(エチルセルロース、Dow Chemical Company)3080g、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)2940gおよび乳糖5908gを攪拌造粒機中で混合した。上記混合物に対し、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達製)420gを適量の精製水に溶解させた水溶液を加え湿式造粒し、上記造粒顆粒を、流動層乾燥機を用いて加温乾燥後、整粒した。整粒後、顆粒99.7g当りステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)0.3gを添加し混合し、ロータリー式打錠機を用いて製錠することにより、200mg中に塩酸ドネペジル23mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。得られた錠剤に対し、オパドライレッド(日本カラコン)を用いてヒドロキシプロピルメチルセルロースを主成分とする水溶性フィルムコーティング(皮膜量:8mg/錠)を施し、フィルム錠を得た。
【0091】
(実施例24〜30)
表1に示すフィルム錠を、前述の製法に従い製造することができる。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例31−34
表2および表3に示す配合量に従い、乳鉢にて各成分を混合した。上記混合物200mgを採取し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて製錠し、塩酸ドネペジル20mgまたは塩酸メマンチン20mgを含有する直径8mmの錠剤(錠剤重量:200mg)を得た。
【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
(比較例1)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)300mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)750mg、乳糖1920mg、ステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)30mgを乳鉢中で混合した。上記混合物を200mg採取し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて製錠し、塩酸ドネペジル20mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。
【0097】
(比較例2)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)300mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)750mg、乳糖1620mg、クエン酸300mg、ステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt Baker, Inc)30mgを乳鉢中で混合した。上記混合物を200mg採取し、オートグラフAG5000A(島津製作所)を用いて製錠し、塩酸ドネペジル20mgを含有する直径8mmの錠剤を得た。
【0098】
(比較例3)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、乳糖1500mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに適量の精製水を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0099】
(比較例4)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、クエン酸二ナトリウム20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0100】
(比較例5)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、クエン酸ナトリウム20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0101】
(比較例6)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、アスパラギン酸ナトリウム20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0102】
(比較例7)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、グリシン20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0103】
(比較例8)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、オイドラギットL100-55(レームファルマ社)500mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)500mgに、エデト酸二ナトリウム20mgを適量の精製水に溶解させた液体を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0104】
(比較例9)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、乳糖1000mg、エチルセルロース(エトセル10FP、ダウ・ケミカル)1000mgに、適量の精製水を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0105】
(比較例10)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、乳糖2000mgに、適量の精製水を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0106】
(比較例11)
塩酸ドネペジル(エーザイ株式会社)20mg、乳糖1500mg、オイドラギットL100-55(Rohm GmbH & Co. KG)500mg、に、適量の精製水を加えて混合した後、恒温槽を用いて加熱乾燥することにより、塩酸ドネペジルを約1%含有する顆粒を得た。
【0107】
(試験例1)
実施例1、比較例1および2の10%の塩酸ドネペジルを含む錠剤を、開封下60℃75%RHの恒温槽で1週間保存し、保存前後の分解物生成量を測定した。分解物の測定は、以下に示す分解物定量法1で行った。
【0108】
(分解物定量法1)
分解物生成量は、測定カラム:内径4.6mm*長さ75mmのODS-Aカラム(YMC社製)、カラム温度35℃、流速1ml/min、検出波長271nmの条件でHPLCを実施することにより評価した。使用した移動相組成およびリニアグラディエント条件は表4の通りである。分解物生成量は、主薬ピークに対し相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物ピークを指標として、総ピーク面積に対する面積%を基に比較し算出した。

移動相A:水/アセトニトリル/70%過塩素酸水溶液=899/100/1混液
移動相B:水/アセトニトリル/70%過塩素酸水溶液=99/900/1混液
【0109】
【表4】

【0110】
試験例1の測定結果として、ドネペジルに対する相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物生成量を表5に示す。比較例1では0.12%の分解物の生成が認められたのに対し、高分子量酸性物質としてオイドラギットL100-55を50%含有する実施例1では分解物の生成は観察されなかった。実施例1または比較例1のいずれでも、これ以外の分解物の生成は観察されなかった。一方、薬物とクエン酸を10%ずつ含有する比較例2においては相対保持時間1.1〜1.2付近に分解物が0.77%生成しているだけでなく、これ以外にも多数の分解物が生成しており、分解生成物の総量は約13%であった。背景技術にて記載した特開平11-106353公開公報において、0.1%ドネペジル溶液においてドネペジルの光安定性に効果を示したクエン酸の配合は、10%の塩酸ドネペジルを含む錠剤での熱安定性においては、むしろ、分解物を増加させた結果となった。高分子量酸性物質としてのオイドラギットL100-55を50%という高濃度で処方中に配合しても、分解物は検出されず、塩酸ドネペジルの熱安定性に対する改善効果が確認された。これは、抗痴呆薬と高分子量塩基性物質が共存する系において、高分子量酸性物質の熱安定性改善効果を示している。
【0111】
【表5】

【0112】
(試験例2)
実施例2および3、ならびに比較例3の約1%の塩酸ドネペジルを含む顆粒を、開封下60℃75%RHの恒温槽で2週間保存し、保存前後の分解物生成量を測定した。分解物の測定は、以下に示す分解物定量法2で行った。また、試験例1の効果を検証するため、比較例9〜11の顆粒も同様に試験を行った。
【0113】
(分解物定量法2)
分解物生成量は、測定カラム:内径4.6mm*長さ150mmのInertsil ODS-2カラム(GL Sciences社製)、移動相:水/アセトニトリル/70%過塩素酸水溶液/デカンスルホン酸ナトリウム=646.6/350/1/2.4混液、カラム温度35℃、流速1.4ml/min、検出波長271nmの条件でHPLCを実施することにより評価した。分解物生成量は、主薬ピークに対し相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物ピークを指標として、総ピーク面積に対する面積%を基に比較し算出した。
【0114】
試験例2の測定結果として、ドネペジルに対する相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物生成量を表6に示す。高分子量塩基性物質としてのエチルセルロースを含まない比較例10および11では、分解物は検出されず、エチルセルロースを配合した比較例3では0.51%の分解物の生成が認められた。さらに、エチルセルロースを増量した比較例9では、1.26%の分解物の生成を認めた。以上より、分解物の生成が、塩酸ドネペジルとエチルセルロースの共存により生ずるものであることが確認された。
【0115】
また、比較例3と実施例2により、医薬組成物中にオイドラギットL100-55が約25%配合されることにより、分解物量が抑制されていることが確認された。実施例2に、さらにクエン酸が約1%配合された実施例3では、分解物は検出されなかった。これにより、抗痴呆薬と高分子量塩基性物質の共存に伴う分解物の生成に対して、高分子量酸性物質が抑制効果を示すことが再確認されるとともに、クエン酸との併用効果も確認された。
【0116】
【表6】

【0117】
(試験例3)
オイドラギットL100-55と低分量酸性物質の併用効果を確認するため、クエン酸若しくはその塩(実施例3および4、比較例4および5)、アミノ酸(実施例5、比較例6および7)またはエデト酸塩(比較例8)を配合した顆粒を、開封下60℃ 75%RHの恒温槽で2週間保存し、保存前後の分解物生成量を測定した。分解物の測定は、先に示した分解物定量法2で行った。また、また、本試験例で検討に使用した添加剤、つまり、実施例2ではオイドラギットL100-55、それ以外の実施例および比較例は20mg配合した添加剤を2.5%の濃度で精製水に溶解あるいは懸濁させた溶液のpHを測定した。なお、参考値として塩酸ドネペジルの2%水溶液および5%水溶液のpHも測定した。
【0118】
試験例3の測定結果として、ドネペジルに対する相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物生成量を表7に示した。比較例3では0.51%の分解物の生成が認められたのに対し、分解物抑制するためにオイドラギットL100-55のみを配合した実施例2においては、0.28%となった。さらに、本発明の低分子量酸性物質を配合した実施例3〜5の分解物は、比較例3の0.51%以下となり、オイドラギットL100-55と低分子量酸性物質との併用により、分解物を抑制することが確認された。クエン酸を含有する実施例3及びアスパラギン酸を含有する実施例5は、オイドラギットL100-55のみを配合した実施例2と比較して、さらに分解物を抑制することができ、エチルセルロースを含有する医薬組成物中における塩酸ドネペジルの熱安定性に対する、低分子量酸性物質および高分子量酸性物質の相乗効果を認めた。本試験で使用した添加剤(実施例および比較例で20mg配合した添加剤)について、pH(2.5%水溶液または懸濁液)を測定した。図1は、各種添加剤を配合した顆粒を開封下60℃ 75%RHで2週間保存した後の分解生成物量と、その添加剤の2.5%水溶液または懸濁液のpHの関係を示す図である。pH4.5のときに、その分解物の生成量は比較例3とほぼ同等の値を示し、さらにpHが高くなるほど、分解物量は増加した。一方、pH4.5未満では、pHが低いほど、分解物の生成は抑制され、高い熱安定化効果を示した。2%塩酸ドネペジル水溶液のpHはpH5.0であり、また、5%塩酸ドネペジル水溶液ではpH4.8であることから、さらに、塩酸ドネペジル水溶液よりもpHの高い添加剤を配合した比較例4-7では比較例3に比べ安定性は低下した。
【0119】
【表7】

【0120】
(試験例4)
オイドラギットL100-55と抗酸化剤の併用効果を評価するため、各種抗酸化剤を含む実施例6〜10および比較例8の約1%の塩酸ドネペジルを含む顆粒を、開封下60℃ 75%RHの恒温槽で2週間保存し、保存前後の分解物生成量を測定した。分解物の測定は、先に示した分解物定量法2で行った。また、本試験例で検討に使用した添加剤(実施例および比較例で20mg配合した添加剤)を2.5%の濃度で精製水に溶解あるいは懸濁させた溶液のpHを測定した。
【0121】
試験例4の測定結果として、ドネペジルに対する相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物生成量を表8に示した。オイドラギットL100-55および抗酸化剤を配合した実施例6〜10では、比較例3に比べて分解物の生成が抑制されており安定化効果が観察された。特に、アスコルビン酸または含硫アミノ酸を含有する実施例では分解物は検出されず、オイドラギットL100-55との相乗効果を示した。一方、還元作用を有さない抗酸化剤(pH4.5、2%水溶液)を配合した比較例8では、比較例3(未添加)と同程度の分解物生成が観察されており、キレート性抗酸化剤は安定化に寄与しないことが確認された。
【0122】
図1に、試験例3の添加剤と同様に、還元作用を有する抗酸化剤を含有する実施例6〜10について、保存試験での分解生成物量と、2.5%水溶液あるいは懸濁液のpHの関係を示した。試験例3の結果との比較により、これらの抗酸化剤の効果は、その低分子量酸性物質としての効果とは異なることは明らかである。
【0123】
【表8】

【0124】
(試験例5)
本発明で用いる高分子量酸性物質および高分子量塩基性物質のpHについて、2.5%水溶液あるいは懸濁液中にて測定した。参考値として、塩酸ドネペジルの2%および5%水溶液、乳糖の2.5%水溶液のpHも測定した。その結果を表9に示す。
【0125】
【表9】

【0126】
(試験例6)
実施例15、16、17および18における塩酸ドネペジル5mgを含有する錠剤を、開封下60℃ 75%RHの恒温槽で2週間保存し、保存前後の分解物生成量を測定した。分解物の測定は、先に示した分解物定量法2で行った。
試験例6の測定結果として、60℃ 75%RHでの保存後のドネペジルに対する相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物量を表10に示した。表10から明らかなように、実施例15、16、17及び18では、過酷条件下において、塩酸ドネペジル含量に対して、0.5%以下に分解物量が抑制されたことが確認された。
【0127】
【表10】

【0128】
(試験例7)
実施例11、12および14で得られた錠剤を用いて安定性試験を行った。実施例11、12および14の各々において、錠剤50錠を高密度ポリエチレンボトルに充填し、アルミシールで封緘し、さらにポリプロピレン製のスクリューキャップで封をした後、5℃および40℃ 75%RHの恒温槽で保存し、保存前後の分解物生成量を測定した。分解物の測定は、分解物定量法2で行った。
【0129】
試験例7の測定結果として、40℃ 75%RH保存におけるドネペジルに対する相対保持時間1.1〜1.2付近に溶出する分解物生成量を表11に示した。表11から明らかなように、実施例11、12および14において、その分解物量は、塩酸ドネペジル含量に対して0.5%以下に抑制できることが確認された。ICH(International Conference on Harmonization)のガイドラインによれば、原薬の最大1日投与量が10mg〜100mgの医薬品の場合、不純物について安全性の確認が必要な閾値は、原薬に対して0.5%あるいは1日総摂取量200μgのいずれか低い方である。また、通常、40℃ 75%RHで、6ヶ月保存で医薬品の品質を確保できれば、医薬品の一般的な保証期間である3年(室温)を保証できると言われている。なお、実施例11、12および14のいずれの錠剤でも、塩酸ドネペジルに基づいて、不純物の検出限界以下である0.05%以下の分解物量であった。
試験例7の結果により、本発明は、塩酸ドネペジルを含む医薬品の品質を確保するために、有用な発明であることが確認された。
【0130】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、抗痴呆薬と徐放性基剤が配合された医薬組成物において、それらの接触に伴う分解物の生成を防止、または抑制する方法、つまり、医薬組成物中における抗痴呆薬の安定化方法を提供できる。または、本発明の投薬コンプライアンスおよび品質に優れた医薬組成物により、本発明は、特に抗痴呆薬に関し、患者またはその介護者に投薬作業の負担を軽減し、かつ、安心して服用できる医薬品を提供できる。さらに、本発明によれば、特殊なコーティング技術や製造装置を用いなくとも、徐放性をコントロールし、かつ、抗痴呆薬を安定化させた医薬品組成物のための簡便な製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を含む医薬組成物に、高分子量酸性物質を添加する工程を含む、抗痴呆薬の安定化方法。
【請求項2】
前記抗痴呆薬と前記高分子量塩基性物質の接触により生成される抗痴呆薬の分解物を抑制し得る量の前記高分子量酸性物質を添加する、請求項1に記載の安定化方法。
【請求項3】
前記抗痴呆薬が、3級アミノ基を有する化合物である請求項1または2に記載の安定化方法。
【請求項4】
抗痴呆薬が、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、3-[1-(フェニルメチル)ピペリジン-4-イル]-1-(2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピン-8-イル)-1-プロパンおよび5,7-ジヒドロ-3-[2-[1-(フェニルメチル)-4-ピペリジニル]エチル]-6H-ピロロ[4,5-f]-1,2-ベンズイソキサゾール-6-オン、ならびにそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選ばれる請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項5】
前記抗痴呆薬が、ドネペジルまたはその薬理学的に許容される塩である請求項1ないし4のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項6】
前記高分子量塩基性物質が、水不溶性高分子物質である請求項1ないし5のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項7】
前記高分子量塩基性物質が、エチルセルロース、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーおよびポリエチレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1ないし6のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項8】
前記高分子量酸性物質が、腸溶性高分子物質である請求項1ないし7のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項9】
前記高分子量酸性物質が、メタクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1ないし8のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項10】
さらに、低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを添加する工程を含む、請求項1ないし9のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項11】
前記低分子量酸性物質が、カルボン酸、スルホン酸、ヒドロキシ酸、酸性アミノ酸および無機酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項10に記載の安定化方法。
【請求項12】
前記低分子量酸性物質が、ヒドロキシ酸、酸性アミノ酸および無機酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項10または11に記載の安定化方法。
【請求項13】
前記低分子量酸性物質が、コハク酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸塩酸塩、塩酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項10ないし12のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項14】
前記低分子量酸性物質が、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸塩酸塩、塩酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項10ないし13のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項15】
前記抗酸化剤が、アスコルビン酸類、含硫アミノ酸、ヒドロキノン誘導体およびトコフェロール類からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項10ないし14のうち何れか一項に記載の安定化方法。
【請求項16】
抗痴呆薬および高分子量塩基性物質の接触により生成される抗痴呆薬の分解物を抑制するための高分子量酸性物質の使用。
【請求項17】
抗痴呆薬および高分子量塩基性物質の接触により生成される抗痴呆薬の分解物を抑制するための低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つ並びに高分子量酸性物質の使用。
【請求項18】
抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を含む医薬組成物であって、
抗痴呆薬を安定化させるための高分子量酸性物質を含む、医薬組成物。
【請求項19】
前記抗痴呆薬を安定化させるための低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が、前記抗痴呆薬、前記高分子量塩基性物質および前記抗痴呆薬を安定化させるための高分子量酸性物質を混合してなるマトリックスを具備する請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記マトリックス層に、さらに抗痴呆薬を安定化させるための低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを混合してなる請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が、抗痴呆薬を含む核および前記核を被覆する高分子量塩基性物質を含む被覆層を具備し、前記核および前記被覆層の少なくとも1つに高分子量酸性物質を混合してなる請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記核および前記被覆層の少なくとも1つに、さらに抗痴呆薬を安定化させるための低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つを混合してなる請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物が、徐放性製剤である請求項18ないし23のうち一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記高分子量酸性物質が、腸溶性高分子物質である請求項18ないし24のうち何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ドネペジルまたはその薬理学的に許容される塩と、
高分子量塩基性物質と、
高分子量酸性物質と、
を含むマトリックス型徐放性製剤。
【請求項27】
低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項26に記載のマトリックス型徐放性製剤。
【請求項28】
抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を含む医薬組成物の製造方法であって、
抗痴呆薬および高分子量塩基性物質を混合する工程と、
前記混合物を造粒する工程と、を含み、
前記混合工程および前記造粒工程の少なくとも1つの工程で、前記抗痴呆薬および前記高分子量塩基性物質の混合物に、前記抗痴呆薬を安定化させるための高分子量酸性物質を添加する医薬組成物の製造方法。
【請求項29】
前記高分子量酸性物質を粉末として添加する請求項28に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項30】
前記混合工程および前記造粒工程の少なくとも一つの工程で、前記抗痴呆薬および前記高分子量塩基性物質の混合物に、前記抗痴呆薬を安定化させるための低分子量酸性物質および抗酸化剤の少なくとも一つをさらに添加する、請求項28または29に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項31】
前記低分子量酸性物質および前記抗酸化剤の少なくとも一つを、溶液または懸濁液として添加する、請求項30に記載の医薬組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144568(P2012−144568A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98985(P2012−98985)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【分割の表示】特願2007−529288(P2007−529288)の分割
【原出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】