説明

抗癌剤の新規標的タンパク質および対応する新規抗癌剤(スプナール)

KSRPまたはその機能的断片と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物ならびに該化合物のスクリーニング方法を提供する。KSRPは、抗癌剤の新規標的タンパク質であり、かかるタンパク質の発現や活性を制御し得る化合物およびそれを含む医薬組成物は増殖性疾患、特に抗癌剤として非常に有用である。当該新規標的タンパク質の提供により、従来説明のつかなかった抗癌作用のメカニズムが解明され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規な創薬ターゲットに関する。より詳しくは、スリンダク及びその誘導体等の非ステロイド性消炎・鎮痛剤(NSAIDs)による家族性大腸腺腫症(FAP)への有効性を担うと考えられるターゲット分子に関する。本発明はまた、当該ターゲット分子に特異的に結合する化合物に関する。
【背景技術】
ヒトゲノムの塩基配列が解読されるのに伴い、研究の対象はゲノム創薬、創薬ターゲットの探索・同定へと移行している。その中で、元来非ステロイド性消炎・鎮痛剤として汎用されてきたスリンダク(Sulindac)および誘導体、あるいはセレコキシブ(Celecoxib)等の非ステロイド性消炎・鎮痛剤(NSAIDs;Non−steroidal anti−inflammatory drugs)が当初予想もされなかった家族性大腸腺腫症(FAP;Familia adenomatous polyposis)等の癌の領域においても有効性を示すという注目すべき報告があるが、これらの化合物の癌領域での有効性を担うと考えられるターゲット同定もその一つである。
これまで、このメカニズムとしては主にこれらNSAIDs特異的ターゲットであるシクロオキシゲナーゼ(COX)(COX1、COX2)の寄与が考えられてきた(Cancer Research,57,p.2452−2459(1997)参照)。しかしながら、スリンダクやある種のスリンダク誘導体(具体的にはスリンダクスルホン)はCOX1やCOX2に対して弱い阻害作用しか示さない(Cancer Research,57,p.2909−2915(1997)参照)。
このようなCOXに対する活性が弱く、その抗癌作用への関与が否定的であるスリンダク誘導体(スリンダクスルホン等)のFAPへの有効性に関しては、現在ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害作用との関係が示唆され、インビトロ、インビボの研究室レベルでの実験がなされてきた(Cancer Research,57,p.2452−2459(1997)参照)。しかしながら、これら誘導体による臨床における抗癌作用の全てを説明するには不十分な点も残されており、その真のメカニズムの解明が待たれていた。
【発明の開示】
本発明はスリンダクおよびその誘導体、セレコキシブ等のNSAIDsによる家族性大腸腺腫症への有効性を担うと考えられるターゲットを同定し、当該ターゲットを用いて家族性大腸腺腫症等の疾患の治療に有用な化合物のスクリーニング方法ならびに該スクリーニングによって得られる化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、スリンダクおよびその誘導体、セレコキシブ等のNSAIDsが有する抗癌作用(臨床有効性)のメカニズムを説明し得るターゲットの探索を行った。その結果、KSRP(KH−type splicing regulatory protein)と呼ばれるmRNAのスプライシングを制御するタンパク質がこれらの誘導体の抗癌作用を説明するのに十分な新規創薬ターゲットであることを見出し(表1)、かかるターゲットあるいは該ターゲットを発現する細胞を用いて、増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患等の疾患の治療に有用な化合物のスクリーニング方法を開発し、候補化合物を得て本発明を完成するに至った。

即ち本発明は下記の通りである。
〔1〕一般式(I)または一般式(II)で表わされる化合物またはその医薬上許容され得る塩:

(式中、Xは

であり;
環Aは、置換されていてもよい、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基であり;
環Bは、さらに1乃至4個の置換基を有していてもよいベンゼン環であり;
は置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換アミド基または置換されていてもよいアミノ基であり;
〜Rは同一または異なって、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基あるいは飽和もしくは不飽和の複素環基である(RおよびRは結合して環を形成してもよい)〕、但し以下の化合物は除く。

〔2〕式(I)で表わされる化合物が式(I’)で表わされる化合物である、上記〔1〕記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩:

(式中、環A’は、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和の複素環基であり;それ以外の記号は上記〔1〕と同義である)。
〔3〕一般式(I’)中、環A’が、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基、飽和もしくは不飽和の複素環基、カルボキシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基である、上記〔2〕記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
〔4〕一般式(I’)中、環A’が、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基、および飽和もしくは不飽和の複素環基からなる群より選択されるいずれか1つの置換基と、カルボキシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択されるいずれか1つの置換基を有する飽和もしくは不飽和の複素環基である、上記〔2〕記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
〔5〕一般式(II)中、RおよびRが結合して形成される環が、カルボキシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基である、上記〔1〕記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
〔6〕一般式(II)中、RおよびRが結合して形成される環が、カルボキシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基である上記〔5〕記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
〔7〕飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基がインデンである、上記〔6〕記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩を有効成分として含有する医薬組成物。
〔9〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療用である、上記〔8〕記載の医薬組成物。
〔10〕配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
〔11〕配列番号2のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列を有し且つ以下の特徴を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物;
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない。

〔12〕配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
〔13〕配列番号3のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列を有し且つ以下の特徴を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物;
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない。

〔14〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療用である、上記〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔15〕増殖性疾患が、家族性大腸腺腫症、食道癌、小細胞肺癌、前立腺癌、乳癌、非小細胞性癌および卵巣癌からなる群より選択される少なくとも1種である、上記〔14〕記載の医薬組成物。
〔16〕KSRPと特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
〔17〕KSRPの発現を制御する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
〔18〕KSRPの活性を制御する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
〔19〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療用である、上記〔16〕〜〔18〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔20〕増殖性疾患が、家族性大腸腺腫症、食道癌、小細胞肺癌、前立腺癌、乳癌、非小細胞性癌および卵巣癌からなる群より選択される少なくとも1種である、上記〔19〕記載の医薬組成物。
〔21〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)KSRPまたはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、KSRPまたはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程においてKSRPまたはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
〔22〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
〔23〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号2のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し且つ以下の特徴
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない

を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
〔24〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
〔25〕増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号3のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、且つ以下の特徴
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない

を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
〔26〕上記〔21〕〜〔25〕のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得られる増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物。
【図面の簡単な説明】
図1は、各化合物のKSRP結合の特異性を調べた結果を示している。KSRPと特異的に結合する化合物を固定化した固相担体上には1回目の固定化樹脂処理で速やかにKSRPが結合する。スリンダクスルファイドを固定した樹脂以外の4化合物を固定化した樹脂にはKSRPが結合した。
【発明を実施するための最良の形態】
KSRP(KH−type splicing regulatory protein)は、別名FBP2(FUSE binding protein 2)とも称され、当初c−mycの発現に重要な働きをするFBP(FUSE binding protein)に類似したタンパク質として1996年にNIHのD.Levensによって発見され(J.Biol.Chem.,271(49),p.31679−31687(1996))、その後、増殖作用に関与するc−srcのスプライシング・バリアント成熟に必須なタンパク質として1997年に別グループによって別個に発見されたタンパク質である(Gene & Development,11,p.1023−1036(1997))。また、近年では細胞をアポトーシスに導く際に重要となるカスパーゼ−3,7の基質タンパク質として同定され(Protein & Peptide Lett.,9(6),p.511−519(2002))、またJurakat細胞をFas抗原にてアポトーシスに導く際に関するプロテオーム解析においても顕著な変化を示すタンパク質として同定される(J.Biol.Chem.,276(28),p.26044−26050(2001))等、注目を集めているタンパク質である。より具体的には配列番号2のアミノ酸配列で表わされる711個のアミノ酸からなるタンパク質である(アクセッションNo.NP_003676)。
本発明においてKSRPとしては、(i)式1化合物と結合し、(ii)式2化合物とは結合しない

という特徴を有するタンパク質であれば必ずしも配列番号2のアミノ酸配列のみで表わされる必要はなく、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号2のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。より具体的には配列番号2のアミノ酸配列と60%以上、70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるタンパク質であり、配列番号2のアミノ酸配列中、40アミノ酸以上、好ましくは70アミノ酸以上、特に好ましくは100アミノ酸以上の連続したアミノ酸を含むタンパク質(ポリペプチド)であることがいっそう好ましい。本明細書中、「相同性」とは、二つのポリペプチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。相同性は容易に算出することができる。二つのポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」(「同一性」とも言われる)なる用語は、当業者には周知である。二つの配列の相同性を測定するのに用いる一般的な方法には、Martin,J.Bishop(Ed.),Guide to Huge Computers,Academic Press,San Diego,(1994);Carillo,H.& Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)等に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同性を測定するための好ましい方法としては、試験する二つの配列間の最も大きな適合関係部分を得るように設計したものが挙げられる。このような方法は、コンピュータープログラムとして組み立てられているものが挙げられる。二つの配列間の相同性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG プログラムパッケージ(Devereux,J.et al.,Nucleic Acids Research,12(1):387(1984))、BLASTP、FASTA等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、当該分野で公知の方法を使用することができる。
さらに、本発明においてはスリンダク誘導体等の一連のNSAIDsのターゲットであり得るならば、(i)式1化合物と結合し、(ii)式2化合物とは結合しないという特徴を有する範囲内でKSRPの断片であってもよく、以下このような断片をKSRPの機能的断片ともいう。機能的断片としては、具体的には、配列番号3のアミノ酸配列で表わされるタンパク質や、(i)式1化合物と結合し、(ii)式2化合物とは結合しないという特徴を保持し且つ、配列番号3のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列からなるタンパク質等が挙げられる。
いずれの態様も、特段のことわりのない限り本発明におけるKSRPに包含される。
「特異的に結合する」とは、アゴニストあるいはアンタゴニストに対する特異的受容体、基質に対する酵素、そして例えばFK506(リガンド)に対するFK506結合タンパク質(ターゲット分子)や、ステロイドホルモンに対するステロイドホルモン受容体(例=dexamathasonとglucocorticoid receptor)、抗がん剤trapoxinに対するHDAC等の関係に例示されるものであり、Kd、Ka等の数値として、競合実験等により確認することができる。実施例にて後述するが、具体的数値として表わす以外に電気泳動法等の視覚的手段により確認することもできる。
本発明はKSRP(配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号2のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し且つ(i)式1化合物と結合し、(ii)式2化合物とは結合しないという特徴を有するタンパク質等)およびその機能的断片(例えば配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号3のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し且つ(i)式1化合物と結合し、(ii)式2化合物とは結合しないという特徴を有するタンパク質等)に特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。かかる化合物は新規な抗癌ターゲットであるKSRPと結合することによりKSRPの発現を制御し、および/またはその活性を制御することが可能であり、従ってKSRPが関与する種々の疾患の予防や治療に有用である。例えば卵巣癌や非小細胞癌、乳癌等への適用が報告されているタキソールもKSRPと結合する(後述:実施例参照)。KSRPが関与する種々の疾患としては、上述したような従来の報告により、増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患等が例示されるが、KSRPがかかる疾患の治療に有用な化合物のスクリーニングに利用可能なターゲットであるという報告はない。「増殖性疾患」とは、細胞の異常な増殖を特徴とし、その増殖が発症や病状の進行に関連していると考えられる疾患であり、例えば、家族性大腸腺腫、食道癌、小細胞肺癌、前立腺癌、乳癌、非小細胞性癌等が挙げられる。「炎症性疾患」とは、外因性あるいは内因性の急性あるいは慢性の疾患であり、急性疾患の場合には発熱、発赤、腫脹、疼痛および機能障害の5主徴を伴う。「脳疾患」とは脳において観察される、外因性あるいは内因性の機能障害を意味する。
さらに、KSRPが、増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患等の新規の創薬ターゲットとなり得るという本発明において見出された知見によれば、直接KSRPと結合しなくても直接的あるいは間接的に作用して結果的にKSRPの発現や活性を制御する化合物もまた増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患の治療に有用であるといえる。
本発明に有効成分として含められる化合物としては具体的には一般式(I)または一般式(II)で表わされる化合物またはその医薬上許容され得る塩が例示される。

(式中、Xは

であり;
環Aは、置換されていてもよい、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基であり;
環Bは、さらに1乃至4個の置換基を有していてもよいベンゼン環であり;
は置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換アミド基または置換されていてもよいアミノ基であり;
〜Rは同一または異なって、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基あるいは飽和もしくは不飽和の複素環基である(RおよびRは結合して環を形成してもよい)〕、但し以下の化合物は除く。

本明細書中、「飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基」とは、炭素数3乃至18の飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基、具体的には、例えば、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
該「脂環式炭化水素基」としては、例えば3乃至10個の炭素原子から構成される単環式または縮合多環式の基、具体的にはシクロアルキル基、シクロアルケニル基およびこれらと炭素数6乃至14のアリール基(例えば、ベンゼン等)等との2または3環式縮合環等が挙げられる。該「シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3乃至6のシクロアルキル基等が、該「シクロアルケニル基」としては、例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等炭素数3乃至6のシクロアルケニル基等が挙げられる。
該「芳香族炭化水素基」としては、例えば6乃至18個の炭素原子から構成される単環式芳香族炭化水素基、縮合多環式芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−インデニル、2−アンスリル等の炭素数6乃至14のアリール基が挙げられる。
本明細書中、「飽和もしくは不飽和の複素環基」とは、例えば窒素原子を1〜2個含む5〜6員単環式の基、窒素原子を1〜2個と酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5〜6員単環式の基、酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、窒素原子1〜4個を含み、6員環と5または6員環が縮合した二環式の基等が挙げられ、具体的には、例えば、ピリジル、チエニル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フリル、ピロリル、キノリル、キナゾリニル、プリニル、ピラゾリル、チオフェニル等が挙げられる。
「置換されていてもよい、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基(前述と同義)、飽和もしくは不飽和の複素環基(前述と同義)、ハロゲン原子(後述)、カルボキシル基、置換アミド基(後述)、置換されていてもよい低級アルキル基(後述)等が挙げられる。これらの置換基は、該環状炭化水素基もしくは複素環基上に化学的に許容される範囲において置換される。ただし、置換基の数が2個以上の場合は同一または相異なっていてもよい。好ましくは置換されていてもよい飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基(前述と同義)および置換されていてもよい飽和もしくは不飽和の複素環基(前述と同義)からなる群より選択されるいずれか1つの置換基(例えばメチルフェニル)と、ハロゲン原子(後述)、カルボキシル基、置換アミド基(後述)および置換されていてもよい低級アルキル基(後述)からなる群より選択されるいずれか1つの置換基(例えばトリフルオロメチル)との2個の置換基を有する。
「ハロゲン原子」としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
「置換アミド基」としては、N置換アミド基またはN,N’ジ置換アミド基が挙げられ具体的には低級アルキル基(後述)で置換されたアミド基等が挙げられる。
本明細書中、「低級アルキル基」としては、例えば、炭素数1乃至6の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル等が挙げられる。「置換されていてもよい低級アルキル基」における「置換基」としては、カルボキシル基、置換アミド基(前述と同義)、シアノ基、ハロゲン原子(前述と同義)等が挙げられる。
ベンゼン環Bが有していてもよい1乃至4個の置換基は、化合物がKSRPとの結合性を維持している、および/またはKSRPの発現を制御、KSRPの活性を制御し得る限りは特に限定されず、同一であっても異なっていてもよい。例えば、飽和もしくは不飽和の炭化水素基(後述)あるいは飽和もしくは不飽和の複素環基(前述と同義)である。
本明細書中、「アリール基」としては、前述の「芳香族炭化水素基」と同様なものが挙げられる。「置換されていてもよいアリール基」における「置換基」としては、特に限定されないが、例えば、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基(前述と同義)、飽和もしくは不飽和の複素環基(前述と同義)、ハロゲン原子(前述と同義)、アミノ基、カルボキシル基、置換アミド基(前述と同義)、置換されていてもよい低級アルキル基(前述と同義)等が挙げられる。
「置換されていてもよいアミノ基」における「置換基」としては、低級アルキル基(前述と同義)、低級アルカノイル基(例えばホルミル、アセチル、プロピオニル等の炭素数1乃至6のアルカノイル基)等が挙げられる。
「飽和もしくは不飽和の炭化水素基」としては、飽和もしくは不飽和の鎖式炭化水素基または飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基(前述と同義)等が挙げられる。「飽和もしくは不飽和の鎖式炭化水素基」としては例えば、炭素数1乃至10の直鎖状または分枝状鎖式炭化水素基等を示し、具体的には、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。これらの中で特にアルキル基が好ましい。該「アルキル基」としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル等の炭素数1乃至10のアルキル基等が挙げられる。該「アルケニル基」としては、例えばビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル等の炭素数2乃至10のアルケニル基等が挙げられる。該「アルキニル基」としては、例えばエチニル、1−プロピニル、プロパルギル等の炭素数2乃至10のアルキニル基等が挙げられる。
およびRが結合して形成してもよい環とは、具体的には飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基(前述と同義)または飽和もしくは不飽和の複素環基(前述と同義)であり、当該環は、ハロゲン原子(前述と同義)、カルボキシル基、置換アミド基(前述と同義)、置換されていてもよい低級アルキル基(前述と同義)等で置換されていてもよい。
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表わされる化合物は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成方法を適用して製造することができる。例えばアルキル化、アシル化、アミノ化、イミノ化、ハロゲン化、還元、酸化、縮合等が挙げられ、通常当分野で用いられる反応または方法が利用できる。
本発明の一般式(I)または一般式(II)で表わされる化合物等のKSRPまたはその機能的断片に結合し得る化合物は、ヒトを含め、サル、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、モルモットなどの哺乳動物に対して優れた抗癌作用、抗炎症作用および/または脳機能障害改善作用を有し、従って抗癌剤等の増殖性疾患治療剤、炎症性疾患治療剤ならびに脳疾患治療剤として有用である。対象となる疾患については上記した通りである。
同様にKSRPまたはその機能的断片に結合し得るスプナールも、各種哺乳動物に対して優れた抗癌作用、抗炎症作用および/または脳機能障害改善作用を有し、従って抗癌剤等の増殖性疾患治療剤、炎症性疾患治療剤ならびに脳疾患治療剤として有用である(対象となる疾患については上記した通りである)。特にスプナールは抗癌剤として好適である。
以下一般式(I)や一般式(II)で表わされる化合物、スプナール、それ以外のKSRPまたはその機能的断片に結合し得る化合物を総称して本発明化合物と称することもある。
本発明化合物は、医薬上許容され得る塩を形成していてもよく、該塩としては酸付加塩、例えば無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等)等が挙げられる。
尚、本発明化合物またはその塩は水和物等の溶媒和物であってもよい。
本発明化合物が、増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療薬として使用される場合には、一般的な医薬製剤として調製され、経口または非経口的に投与される。
経口的に投与する場合、通常当分野で用いられる投与形態で投与することができる。非経口的に投与する場合には、局所投与剤(経皮剤等)、直腸投与剤、注射剤、経鼻剤等の投与形態で投与することができる。
経口剤または直腸投与剤としては、例えばカプセル、錠剤、ピル、散剤、ドロップ、カシェ剤、座剤、液剤等が挙げられる。注射剤としては、例えば、無菌の溶液又は懸濁液等が挙げられる。局所投与剤としては、例えば、クリーム、軟膏、ローション、経皮剤(通常のパッチ剤、マトリクス剤)等が挙げられる。
上記の剤形は当分野で通常行われている手法により、薬学的に許容される賦形剤、添加剤とともに製剤化され得る。薬学的に許容される賦形剤、添加剤としては、担体、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
薬学的に許容される担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。
さらに、錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、腸溶性コーティング錠、フィルムコーティング錠あるいは二層錠、多層錠とすることができる。散剤は、薬学的に許容される散剤の基剤と共に製剤化される。基剤としては、タルク、ラクトース、澱粉等が挙げられる。ドロップは水性又は非水性の基剤と一種またはそれ以上の薬学的に許容される拡散剤、懸濁化剤、溶解剤等と共に製剤化できる。カプセルは、有効成分となる化合物を薬学的に許容される担体と共に中に充填することにより製造できる。当該化合物は薬学的に許容される賦形剤と共に混合し、または賦形剤なしでカプセルの中に充填することができる。カシェ剤も同様の方法で製造できる。本発明を座剤として調製する場合、植物油(ひまし油、オリーブ油、ピーナッツ油等)や鉱物油(ワセリン、白色ワセリン等)、ロウ類、部分合成もしくは全合成グリセリン脂肪酸エステル等の基剤と共に通常用いられる手法によって製剤化される。
注射用液剤としては、溶液、懸濁液、乳剤等が挙げられる。例えば、水溶液、水−プロピレングリコール溶液等が挙げられる。液剤は、水を含んでも良い、ポリエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールの溶液の形で製造することもできる。
経口投与に適切な液剤は、有効成分となる化合物を水に加え、着色剤、香料、安定化剤、甘味剤、溶解剤、増粘剤等を必要に応じて加え製造することができる。また経口投与に適切な液剤は、当該化合物を分散剤とともに水に加え、粘重にすることによっても製造できる。増粘剤としては、例えば、薬学的に許容される天然または合成ガム、レジン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたは公知の懸濁化剤等が挙げられる。
局所投与剤としては、上記の液剤および、クリーム、エアロゾル、スプレー、粉剤、ローション、軟膏等が挙げられる。上記の局所投与剤は、有効成分となる化合物と薬学的に許容される希釈剤および担体と混合することによって製造できる。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性の基剤に増粘剤および/またはゲル化剤を加えて製剤化する。該基剤としては、例えば、水、液体パラフィン、植物油等が挙げられる。増粘剤としては、例えばソフトパラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ラノリン、水素添加ラノリン、蜜蝋等が挙げられる。局所投与剤には、必要に応じて、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、ベンザルコニウムクロリド等の防腐剤、細菌増殖防止剤を添加することもできる。ローションは、水性又は油性の基剤に、一種類またはそれ以上の薬学的に許容される安定剤、懸濁化剤、乳化剤、拡散剤、増粘剤、着色剤、香料等を加えることができる。
投与量、投与回数は使用する化合物の種類、患者の症状、年齢、体重、投与形態等によって異なり、それらに応じて適宜設定する。
本発明はまた、KSRPまたはその機能的断片(各用語の定義は上述の通り)と特異的に結合し得るか否かを指標として、KSRPが関与する種々の疾患、例えば増殖性疾患、炎症性疾患、脳疾患等の疾患の治療に有用な化合物のスクリーニングを行うことができる。ここでKSRPまたはその機能的断片は、精製あるいは未精製のタンパク質(ポリペプチド)またはその(機能的)断片として用いることもできるし、細胞内で発現した状態で使用することもできる。KSRPまたはその(機能的)断片は、(1)それらを産生する細胞の培養物または組織を原料として単離精製する方法、(2)化学的に合成する方法または(3)遺伝子組換え技術等によりKSRPまたはその(機能的)断片を発現するように操作された細胞から精製する方法等の公知手法を適宜用いることによって取得することができる。
本発明のKSRPまたはその(機能的)断片の単離精製は、例えば以下のようにして行うことができる。すなわちKSRPまたはその(機能的)断片を発現している組織、あるいは適当な液体培地中でKSRPまたはその(機能的)断片を発現している細胞を培養して得られる培養物から公知の方法で抽出、精製される。当該抽出、精製の方法は目的生成物の存在する画分に応じて適宜公知の手法が用いられる。
具体的には次のようにして行なわれる。まず、組織あるいは培養物をそのまま濾過又は遠心分離等の常法に付して組織もしくは細胞あるいは上清を回収する。細胞中に所望するタンパク質が蓄積されている場合には、当該回収した細胞を適当な緩衝液剤中に懸濁して、さらに界面活性剤を適当な濃度で加えて膜を可溶化する。界面活性剤としてはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)等が挙げられるが、これらは強力なタンパク質変性作用を有するので、タンパク質が生物活性を持つように折り畳まれるためには、例えばTritonX−100等の穏やかな非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。次いで得られる粗抽出液を、必要ならば界面活性剤の存在下で、一般に用いられる方法を適宜組み合わせることによって該タンパク質またはその機能的断片を単離精製する。塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、SDS−PAGE等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー等の荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動等の等電点の差を利用する方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、減圧濃縮、凍結乾燥、常用の溶媒による抽出、pH調整、陰イオン交換樹脂または陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂等の常用の吸着剤による処理、結晶化、再結晶化等の慣用の方法によって分離、精製することができる。
化学合成による本発明のKSRPまたはその(機能的)断片の製造は、例えば配列番号2あるいは3に示されるアミノ酸配列情報を基に、ペプチド合成機を用いて合成あるいは半合成することにより行うことができる。
また、遺伝子組換え技術等によりKSRPまたはその(機能的)断片を発現するように操作された細胞から取得する場合には、具体的には以下のようにして行う。
まず、KSRPまたはその機能的断片をコードする遺伝子を機能的に含有する発現ベクターを調製する。
KSRPまたはその機能的断片をコードする遺伝子はいかなる方法で得られるものであってもよい。例えば、mRNAから調製される相補DNA(cDNA)、ゲノミックライブラリーから調製されるゲノミックDNA、化学的に合成されるDNA、RNA又はDNAを鋳型としてPCR法により増幅させて得られるDNA及びこれらの方法を適当に組み合わせて構築されるDNA等が含まれる。例えば配列番号1(アクセッションNo.NM_003685)に示される塩基配列から実質的になるDNAの全部または一部を含むDNA、配列番号1の塩基番号472〜2226から実質的になるDNAの全部または一部を含むDNA等が例示される。
ここで、「実質的になるDNA」とは、上記特定の塩基配列からなるDNAに加えて、ストリンジェントな条件(本発明では、塩基配列において約60%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上の相同性を有するDNAがハイブリダイズし得る条件をいい、ストリンジェンシーはハイブリダイズ反応や洗浄の際の温度、塩濃度等を適宜変化させることにより調節することができる)において、上記の特定塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし得る塩基配列からなるDNAを意味する。ストリンジェントな条件は、所望する相同性やオリゴヌクレオチドの長さ等をもとに適宜当分野で利用されている計算式に当てはめて算出することができる。例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理や、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC,0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理等が例示される。
得られたDNAを原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主内で複製保持または自律増殖できるプラスミドベクターおよびファージベクター等に適当な制限酵素部位を利用して挿入することによってKSRPまたはその機能的断片をコードする遺伝子を機能的に含有する発現ベクターを得ることができる。
ここで「機能的に」とは、そのベクターに適合する宿主細胞内で該遺伝子(DNA)が転写され、それにコードされるタンパク質が産生され得るように該遺伝子が配置されていることを意味する。好ましくは、プロモーター領域、開始コドン、KSRPまたはその機能的断片をコードする遺伝子、終止コドンおよびターミネーター領域が連続的に配列された発現カセットを有するベクターである。形質転換体選択のためには選択マーカー遺伝子をさらに含有することが好ましい。
例えば哺乳動物細胞を形質転換する場合、動物ウイルス、例えばSV40、RSV、MMLV等のプロモーターおよびポリアデニル化シグナルが制限酵素部位、好ましくはマルチクローニング部位を介して連結したプラスミドに、pSV2−neo、pSV2−dhfr等のプラスミド由来の選択マーカー遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素等)を挿入したプラスミドが使用できる。
宿主細胞は使用する発現ベクターに適合し、形質転換され得るものであれば特に限定されず、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞或いは人工的に樹立された組換え細胞等種々の細胞が利用できる。具体的には、大腸菌、枯草菌等の細菌、酵母等の真菌類、動物細胞または昆虫細胞等が例示される。好ましくは哺乳動物細胞、特にラット由来細胞、ハムスター由来細胞(CHO、BHK等)、マウス由来細胞(COP、L、C127、Sp2/0、NS−1、NIH T3等)、サル由来細胞(COS1、COS3、COS7、CV1、Velo等)およびヒト由来細胞(Hela、2倍体線維芽細胞由来細胞、ミエローマ細胞、Namalwa、Jurkat細胞等)が挙げられる。
発現ベクターの宿主細胞への導入は従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、哺乳動物細胞に導入する場合、リン酸カルシウム共沈澱法、プロトプラスト融合法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、リソソーム法等が挙げられる。
KSRPまたはその機能的断片は上記のごとく調製される発現ベクターを含む形質転換体を培養することによっても製造することができる。培地は、宿主細胞(形質転換体)の生育に必要な炭素源、無機もしくは有機窒素源を含んでいることが好ましい。炭素源としては、例えばグルコース、デキストリン、可溶性デンプン、ショ糖等が、窒素源としては、例えばアンモニウム塩、硝酸塩、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、馬鈴薯抽出液等が例示される。また所望により他の栄養素〔例えば、無機塩(塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム等)、ビタミン類、抗生物質(テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、アンピシリン等)〕を含んでいてもよい。
培養は当分野において知られている方法により行われる。培養条件はタンパク質の発現が可能な条件であって、例えば温度、培地のpHおよび培養時間は当該タンパク質が大量に生産されるように適宜選択される。
例えば、宿主が動物細胞である場合、培地としては例えば約5〜20%のウシ胎児血清(FCS)を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、RPMI−1640培地、199培地等を用いることができる。培地のpHは約6〜8であることが好ましく、培養は通常30〜40℃で約15〜72時間行われ、必要により通気や攪拌を行うこともできる。
本発明のKSRPまたはその機能的断片は上記培養により得られる培養物から、前述のKSRPまたはその機能的断片を発現している細胞あるいは組織からの抽出・単離・精製と同様にして採取することができる。
かくして得られたKSRPまたはその機能的断片と、試験化合物との接触処理は、通常当分野で実施されている結合実験に準じて行うことができる。具体的にはKSRPまたはその機能的断片、あるいは試験化合物のいずれかを固相担体に固定化し、KSRPまたはその機能的断片を固定化した場合には試験化合物を含有する溶液を、試験化合物を固相担体に固定化した場合にはKSRPまたはその機能的断片を含有する溶液(精製タンパク質溶液あるいは細胞抽出液や組織抽出液などの粗精製タンパク質溶液)を、該固相担体に接触させる。カラム法やバッチ法等が利用できる。
試験化合物がKSRPまたはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程は、試験化合物とKSRPまたはその機能的断片とを接触させる工程をどのようにして行ったかによって適宜変更し得るが、例えば試験化合物が固定化された固相担体(例えばビーズ樹脂)を充填してなるカラムを用いた場合、続くKSRPまたはその機能的断片を含有する溶液(試料)の添加により、両者の間に特異的な親和性がある場合にはKSRP分子が固相担体上に結合する(特異的な親和性がない場合には結合しない)。結合したKSRPまたはその機能的断片を緩衝液の極性を変える、あるいは過剰の試験化合物をさらに加える等の処理によって固相上から解離させ、その後同定したり、あるいは固相上の試験化合物と結合した状態でそのまま界面活性剤等によって抽出して同定したりすることもできる。同定方法としては具体的には電気泳動法、免疫学的反応を用いたイムノブロッティングや免疫沈降法、クロマトグラフィー、マススペクトラム、アミノ酸シーケンス、NMR等の公知の手法により、またこれらの方法を組み合わせて実施する。KSRPまたはその機能的断片が固相上に捕捉されるかあるいはカラムの素通り画分中に含まれるか否か、あるいはその程度等を測定することによって、試験化合物がKSRPに特異的に結合し得るか否かを判定し、結合する化合物を選択する。
また、本工程は自動化されていてもよい。例えば2次元電気泳動で得られた種々の分子のデータを直接読み取り、既存のデータベースに基づいて分子の同定を行うことも可能である。
さらに、KSRPまたはその機能的断片を細胞内で発現した状態で使用する場合には、RI標識や蛍光標識等の各種のラベリング技術を駆使してKSRPまたはその機能的断片と試験化合物との結合の有無、結合の程度を測定することもできる。本発明のスクリーニング方法における「KSRPまたはその機能的断片と試験化合物との接触」にはこのような態様も含まれる。細胞と試験化合物との接触条件は使用する細胞やKSRPまたはその機能的断片の細胞内での発現状況等の要因により適宜設定される。また、KSRPまたはその機能的断片が細胞内で発現しているか否かは抗体等を用いて予め確認しておくことが好ましい。
【実施例】
以下、製造例、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
製造例1:スリンダクスルファイド固定化樹脂(A)の合成

TOYOパール(AF−Amino−650M)(600μl,60μmol;TOSHO、Cat.NO=08039)、スリンダクスルファイド(20.4mg,60μmol;SIGMA,Cat.No.=S−3131)、WSCD(11.6μl,66μmol;(株)ペプチド研究所、Cat.NP=1020;水溶性カルボジイミド)、HOBt(9.7mg,72μmol;1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)を加え、室温にて一昼夜攪拌した。樹脂をDMF(ジメチルホルムアミド)にて5回洗浄後、ニンヒドリンテストを行った結果、収率93%にて目的の化合物を得た。
引き続き、20%無水酢酸DMF溶液5mlを加え30分間室温にて攪拌し、残りのアミノ基をアセチル基にてキャッピングした。20%エタノール溶液5mlにて洗浄し、目的の化合物(A)を得た。
製造例2:スリンダク固定化樹脂(B)の合成

TOYOパール(AF−Amino)(600μl,60μmol)、スリンダク(21.4mg,60μmol;SIGMA Cat.NO=S−8139)、WSCD(11.6μl,66μmol)、HOBt(9.7mg,72μmol)を加え、室温にて一昼夜攪拌した。樹脂をDMFにて5回洗浄後、ニンヒドリンテストを行った結果、収率92%にて目的の化合物を得た。
引き続き、20%無水酢酸DMF溶液5mlを加え30分間室温にて攪拌し、残りのアミノ基をアセチル基にてキャッピングした。20%エタノール溶液5mlにて洗浄し、目的の化合物(B)を得た。
製造例3:スリンダクスルホン固定化樹脂(C)の合成

TOYOパール(AF−Amino)(600μl,60μmol)、スリンダクスルホン(22.3mg,60μmol;SIGMA Cat.NO=S−1438)、WSCD(11.6μl,66μmol)、HOBt(9.7mg,72μmol)を加え、室温にて一昼夜攪拌した。樹脂をDMFにて5回洗浄後、ニンヒドリンテストを行った結果、収率87%にて目的の化合物を得た。
引き続き、20%無水酢酸DMF溶液5mlを加え30分間室温にて攪拌し、残りのアミノ基をアセチル基にてキャッピングした。20%エタノール溶液5mlて洗浄し、目的の化合物(C)を得た。
製造例4:セレコキシブ誘導体固定化樹脂(D−2)の合成

TOYOパール(AF−Amino)、化合物D−1(J.Med.Chem.1997,40,1347−1365の記載に従い合成)(21.4mg,60μmol)、WSCD(11.6μl,66μmol)、HOBt(9.7mg,72μmol)を加え、室温にて一昼夜攪拌した。樹脂をDMFにて5回洗浄後、ニンヒドリンテストを行った結果、収率92%にて目的の化合物を得た。
引き続き、20%無水酢酸DMF溶液5mlを加え30分間室温にて攪拌し、残りのアミノ基をアセチル基にてキャッピングした。20%エタノール溶液5mlにて洗浄し、目的の化合物(D−2)を得た。
製造例5:タキソール固定化樹脂(E)の合成

タキソール(35mg,41μmol;WAKO,Cat.NO=163−18614)をアセトニトリル(2ml)に溶解し、0℃に冷却した後、フォスゲン/トルエン溶液(1.24mmol/ml、3.3ml)及びジイソプロピルエチルアミン(42μl,240μmol)を加えた。反応液を室温で1時間攪拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣をアセトニトリルに溶解し、この溶液をTOYOパール(TSKgel AF−amino;100μl中に0.01mmolのアミンが存在)100μlに加えて、更にジイソプロピルエチルアミン(42μl,240μmol)を加えて終夜室温で振とうした。反応終了後、樹脂をアセトニトリル、蒸留水の順に十分に洗浄した後、飽和炭酸水素ナトリウム水(1.2ml)を加えて室温で30分間振とうし、その後、樹脂を蒸留水、アセトニトリルの順に十分に洗浄した。ニンヒドリンテストよりタキソールの導入率は約75%であった。この樹脂に無水酢酸/DMF(1/4)の混合溶液(1.0ml)を加えて室温で30分間振とうした。反応終了後、樹脂をDMF及び20エタノール水で十分に洗浄してタキソール固定化樹脂(E)を得た。
[実施例1]
(1−1)ラット脳ライセートの調製
ラットの脳(2.4g)を混合液A(25mM Tris−HCl pH8.0,0.5% Tween20,300μM DCC(24ml;N,N−ジエチルジチオカルバメート ナトリウム))に混ぜ、ホモジネートを作成し、9,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離上清を取り、50,000rpmで更に30分間遠心分離した。こうして得られた上清をライセートとして使用した。なお、実験はすべて4℃あるいは氷上で行った。
(1−2)結合実験
製造例1〜5で調製した各試験化合物が固定化された固定化樹脂および実施例1(1−1)で調製したラット脳ライセートを用い、下記に示す手順で結合実験を行った。
樹脂(10μl)とライセート(1ml)を4℃で約1時間、静かに振とうした。その後、遠心分離操作を行い、各々の上澄みを注意深く採集した。そして、各上澄み液を再びフレッシュな化合物結合樹脂(10μl)と混合した。この時、分離した化合物結合樹脂を1回目の結合実験樹脂として4℃にて静かに保存しておく。3時間ほど静かに撹拌した後に、遠心分離操作を行い、上澄み液を除去した。こうして2回目の結合実験で得られた化合物結合樹脂と1回目で得られた樹脂とを混合液Aにて5回程度丁寧に洗浄し、樹脂上に結合するタンパク質以外を出来る限り除いた。こうして得られた各化合物結合樹脂に25μlのSDS用loading buffer(nakalai Cat.NO=30566−22、電気泳動用sample buffer solution with 2−ME(2−mercaptoethanol)(2x)for SDS PAGE)を加え、25℃で10分間撹拌した。こうして得られたサンプル液を市販のSDSゲル(BioRadreadyGel J,15%SDS,Cat.NO=161−J341)で分離し、そのSDSゲルを解析した(図1)。1回目で得られた結合樹脂上に結合するタンパク質を含むサンプル液の電気泳動像(図1中、便宜上(−)と標記)、および2回目で得られた結合樹脂上に結合するタンパク質を含むサンプル液の電気泳動像(図1中、便宜上(+)と標記)とを比較した。
その結果、スリンダクスルファイドを固定した樹脂以外の4化合物を固定化した樹脂にMARTA1(KSRPと高い相同性を有するラットのタンパク質。homology=98%。J.Neurochem.,82(5),1039−46(2002))が結合し、しかもその結合は、化合物結合樹脂との1回目の結合実験で顕著に確認され、2回目の結合実験では殆ど観察されないことから特異的な結合であることが示された。なお、宿主細胞に発現させたヒト型のKSRPタンパク質(部分タンパク質127−711;配列番号3)を用いた場合にも同様の結果を得ることが出来た。
【産業上の利用可能性】
これまで得られてきたNSAIDs誘導体が元来抗炎症作用を指標としスクリーニングされ創出されてきたことから、より抗癌作用と一致した挙動を示すKSRPに対する作用を指標として再スクリーニングすることにより、抗炎症作用のみならず癌に対しても有用な化合物を得ることができる。
本出願は、日本で出願された特願2003−401132(出願日:2003年12月1日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)または一般式(II)で表わされる化合物またはその医薬上許容され得る塩:

(式中、Xは

であり;
環Aは、置換されていてもよい、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基であり;
環Bは、さらに1乃至4個の置換基を有していてもよいベンゼン環であり;
は置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換アミド基または置換されていてもよいアミノ基であり;
〜Rは同一または異なって、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基あるいは飽和もしくは不飽和の複素環基である(RおよびRは結合して環を形成してもよい)〕、但し以下の化合物は除く。

【請求項2】
式(I)で表わされる化合物が式(I’)で表わされる化合物である、請求の範囲1記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩:

(式中、環A’は、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和の複素環基であり;それ以外の記号は請求の範囲1と同義である)。
【請求項3】
一般式(I’)中、環A’が、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基、飽和もしくは不飽和の複素環基、カルボギシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基である、請求の範囲2記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
【請求項4】
一般式(I’)中、環A’が、飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基、および飽和もしくは不飽和の複素環基からなる詳より選択されるいずれか1つの置換基と、カルボキシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択されるいずれか1つの置換基を有する飽和もしくは不飽和の複素環基である、請求の範囲2記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
【請求項5】
一般式(II)中、RおよびRが結合して形成される環が、カルボキシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または飽和もしくは不飽和の複素環基である、請求の範囲1記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
【請求項6】
一般式(II)中、RおよびRが結合して形成される環が、カルボキシル基、置換アミド基および置換されていてもよい低級アルキル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基である請求の範囲5記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
【請求項7】
飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基がインデンである、請求の範囲6記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩。
【請求項8】
請求の範囲1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容され得る塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項9】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療用である、請求の範囲8記載の医薬組成物。
【請求項10】
配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項11】
配列番号2のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列を有し且つ以下の特徴を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物;
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない

【請求項12】
配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項13】
配列番号3のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換若しくは付加してなるアミノ酸配列を有し且つ以下の特徴を有するタンパク質と特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物;
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない

【請求項14】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療用である、請求の範囲10〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
増殖性疾患が、家族性大腸腺腫症、食道癌、小細胞肺癌、前立腺癌、乳癌、非小細胞性癌および卵巣癌からなる群より選択される少なくとも1種である、請求の範囲14記載の医薬組成物。
【請求項16】
KSRPと特異的に結合する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項17】
KSRPの発現を制御する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項18】
KSRPの活性を制御する化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項19】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療用である、請求の範囲16〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
増殖性疾患が、家族性大腸腺腫症、食道癌、小細胞肺癌、前立腺癌、乳癌、非小細胞性癌および卵巣癌からなる群より選択される少なくとも1種である、請求の範囲19記載の医薬組成物。
【請求項21】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)KSRPまたはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、KSRPまたはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程においてKSRPまたはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
【請求項22】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
【請求項23】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号2のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し且つ以下の特徴
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない

を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
【請求項24】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
【請求項25】
増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする為の方法であって、以下の工程を含む方法;
(1)配列番号3のアミノ酸配列において、1または2以上のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、且つ以下の特徴
(i)式1化合物と結合する
(ii)式2化合物と結合しない

を有するタンパク質またはその機能的断片を試験化合物に接触させる工程、
(2)該試験化合物が、該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合するか否かを判定する工程、および
(3)上記(2)の工程において該タンパク質またはその機能的断片に特異的に結合する試験化合物を選択する工程。
【請求項26】
請求の範囲21〜25のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られる増殖性疾患、炎症性疾患および脳疾患からなる群より選択される疾患の治療に有用な化合物。

【国際公開番号】WO2005/054181
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516011(P2005−516011)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018108
【国際出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)タンパク質−汎用低分子医薬品相互作用の重点的解析による創薬研究のための基盤技術開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける出願
【出願人】(501260082)株式会社リバース・プロテオミクス研究所 (15)
【Fターム(参考)】