説明

抗癌化合物およびこれを含有する医薬組成物

本発明は、式(I)の化合物、より具体的にはこのL型形態(1a)、特にメタノール中0.698mg/mlの濃度において旋光度[α]D=−38.6+0.7を示す形態の化合物に関する。この化合物は、塩基の形態、または特に医薬的に許容される酸との付加塩の形態であってもよい。この化合物は、オーロラAおよびBキナーゼの選択的阻害剤であり、抗癌薬として使用できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の化合物:
【0002】
【化1】

およびこれを含む医薬組成物に関する。この化合物は、好ましくはL型(levogyratory)化合物(Ia)である。この化合物は、抗癌成分として使用できる。本発明はまた、化合物(I)または(Ia)を調製するための方法およびさらにこの方法における中間体の一部に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの癌の治療方針は、オーロラタイプのキナーゼ、特に有糸分裂の調節に関与するオーロラAおよびBを阻害することを目的としている;この点に関して、Nature Reviews 2004,4,927−936;Cancer Res.2002,94,1320;Oncogene 2002,21,6175;Mol.Cell.Biol.2009,29(4),1059−1071;Expert Opin.Ther.Patents 2005,15(9),1169−1182;Clin.Cancer Res.2008,14(6),1639を参照されたい。
【0004】
一部のオーロラ阻害剤化合物(例えば、MillenniumからのMLN−8237、Astra−ZenecaからのAZD−1152またはSunesisからのSNS−314)は、現在臨床試験にて評価中である。MLN−8237はオーロラAに対して選択的であるが、AZD−1152はオーロラBに対して選択的である。オーロラAおよびBの両方のキナーゼが癌においては調節解除されるので、両方のオーロラAおよびBを阻害することにより、一方のキナーゼまたは他方のキナーゼの選択的阻害に関連する利点が得られる。さらに、多種キナーゼ化合物、例えばオーロラAおよびBを含む多くのキナーゼを阻害するAstexからの化合物AT−9283が存在する。このタイプの化合物に関して、オーロラキナーゼの阻害は、オーロラAおよびB以外のキナーゼの阻害により副作用を生じる可能性があるので、実際に臨床的に活用され得ることを予測するのは困難である。そのため、本発明が解決することを意図する技術的問題の1つは、オーロラAおよびBの強力な選択的阻害剤である化合物を開発することである。
【0005】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ酵素PDE3は、平滑心臓および血管筋の筋細胞において生じる環状ヌクレオチドcAMPおよびcGMPにより媒介される信号伝達に主要な役割を果たす。小分子によるPDE3の阻害は変力および血管拡張作用を有し、これは、心収縮における欠損が1つの特徴である特定の心筋症の処置のために短期間では有用であることが証明され得る。しかし、これら分子の長期間の使用によりこうしたタイプの患者の死亡率が増大することが示されている。さらに、このタイプの病態が存在しない患者、例えば癌を患う患者においてPDE3阻害剤を使用することにより、心臓律動に所望でない作用を生じる場合がある。このため、抗癌治療の内容において、PDE3を阻害しないことが重要である。この点に関して、Exp.Opin.Invest.drugs 2002,11,1529−1536「Inhibitors of PDE3 as adjunct therapy for dilated cardiomyopathy」;Eur.Heart J.supplements 2002,4(supplement D),D43−D49「What is wrong with positive inotropic drugs? Lessons from basic science and clinical trials」を参照されたい。本発明が解決することを意図する別の技術的問題は、オーロラAおよびB阻害剤化合物が酵素PDE3を阻害しないことである。
【0006】
抗癌成分は代謝安定性を示すことも重要である(section 10.2.2 of「Chimie pharmaceutique」G.L.Patrick,De Boeck,published 2003,ISBN=2−7445−0154−9を参照されたい。)。この理由は、医薬化合物の薬物動態学が不適当であることが、医薬化合物の開発における失敗の主要原因の1つであるからである(Curr.Pharm.2005,11,3545「Why drugs fail−a study on side effects in new chemical entities」)。さらに、代謝は、薬物動態学におけるクリアランス、薬物相互作用、個体間変動ならびに臨床効果および臨床毒性の主要決定因子であることが多い(Curr.Drug Metab.2004,5(5),443−462「Human hepatocytes in primary culture:the choice to investigate drug metabolism in man」)。本発明が解決することを意図する別の技術的問題は、オーロラAおよびB阻害剤化合物が高い化学安定性および代謝安定性を示すことである。
【0007】
Bioorg.Med.Chem.Lett.2002,12,1481−1484には、異なる三環状構造を有する化合物6Aが表IIに記載されている。
【0008】
WO01/36422には、異なる三環状構造を有する化合物が記載されている。
【0009】
WO2004/005323には、異なる三環状構造を有するEPOレセプターとして式(a)の化合物E5A29が記載されている。
【0010】
【化2】

【0011】
さらに、この化合物は、三環状の環系の上部に基−O−ベンゾイミダゾリルによって置換されたフェニル環を含んでいない。
【0012】
WO2005/016245には、式(b):
【0013】
【化3】

(式中、Rは置換されたフェニル基を表してもよい。−O−ベンゾイミダゾリル基による置換は記載も示唆もされていない。)
の異なる三環状構造を有する抗癌化合物が記載されている。
【0014】
WO2007/012972およびEP1746097には、式(c)の抗癌化合物
【0015】
【化4】

および1つの実施形態において式(c’)の化合物が記載されている。
【0016】
【化5】

は、置換されたアリールまたはヘテロアリール基を表し、Xは、NまたはCRを表し、RおよびRは両方ともHまたはCHを表してもよい。WO2007/012972には、式(I)の化合物を特徴とする基
【0017】
【化6】

が含有されている例はない。さらに、分割された化合物のうち、WO2007/012972には、これがオーロラAまたはBに対して最も活性なD型化合物であることが教示されている(147頁の表における実施例119および120を参照)。
【0018】
WO02/062795には、式(d):
【0019】
【化7】

(式中、RおよびRは、場合により、5−または6−員環を形成してもよい。)
の化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第01/36422号
【特許文献2】国際公開第2004/005323号
【特許文献3】国際公開第2005/016245号
【特許文献4】国際公開第2007/012972号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1746097号明細書
【特許文献6】国際公開第02/062795号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Nature Reviews 2004,4,927−936
【非特許文献2】Cancer Res.2002,94,1320
【非特許文献3】Oncogene 2002,21,6175
【非特許文献4】Mol.Cell.Biol.2009,29(4),1059−1071
【非特許文献5】Expert Opin.Ther.Patents 2005,15(9),1169−1182
【非特許文献6】Clin.Cancer Res.2008,14(6),1639
【非特許文献7】Exp.Opin.Invest.drugs 2002,11,1529−1536「Inhibitors of PDE3 as adjunct therapy for dilated cardiomyopathy」
【非特許文献8】Eur.Heart J.supplements 2002,4(supplement D),D43−D49「What is wrong with positive inotropic drugs? Lessons from basic science and clinical trials」
【非特許文献9】section 10.2.2 of「Chimie pharmaceutique」G.L.Patrick,De Boeck,published 2003,ISBN=2−7445−0154−9
【非特許文献10】Curr.Pharm.2005,11,3545「Why drugs fail−a study on side effects in new chemical entities」
【非特許文献11】Curr.Drug Metab.2004,5(5),443−462「Human hepatocytes in primary culture:the choice to investigate drug metabolism in man」
【非特許文献12】Bioorg.Med.Chem.Lett.2002,12,1481−1484
【発明の概要】
【0022】
本発明は、式(I)の化合物:
【0023】
【化8】

より具体的には、L型形態(Ia)、特にメタノール中0.698mg/mlの濃度において旋光度[α]=−38.6±0.7を示す形態の化合物に関する。この化合物は、塩基の形態、または酸、特に医薬的に許容される酸との付加塩の形態で存在してもよい。この化合物は、オーロラAおよびBキナーゼの選択的阻害剤である。これは、抗癌成分として使用できる。
【0024】
本発明はまた、この化合物および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物およびこの化合物を含む薬剤に関する。
【0025】
本発明はまた、
以下の3つの化合物を共に反応させる工程であって、PGがベンゾイミダゾールのNH機能のための保護基を示し、
【0026】
【化9】

次の化合物を得る工程:
ベンゾイミダゾールのNH機能を脱保護して式(I)の化合物を得る工程:
適切な場合には、L型化合物を単離する工程
を含む、化合物を調製するための方法に関する。
【0027】
3つの化合物間の反応は、還流下のアルコール、特に1−ブタノールにて行われる。次の中間体も本発明の一部を形成する。
【0028】
【化10】

PGは、例えば基
【0029】
【化11】

であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、式(I)の化合物:
【0031】
【化12】

に関する。
【0032】
この化合物は、ラセミ形態、または2つのL型(Ia)およびD型(Ib)エナンチオマーの形態で存在し得る。L型化合物(Ia)は、D型エナンチオマー(Ib)の活性よりも相当大きい、オーロラAおよびBキナーゼの選択的阻害活性を有する。L型化合物(Ia)はまた、D型エナンチオマー(Ib)の活性よりも大きい抗増殖活性を有する(表I参照)。
【0033】
3つの化合物(I)、(Ia)および(Ib)は、塩基または酸の付加塩の形態で存在してもよい。塩は、医薬的に許容される酸を用いて調製されるのが有利であるが(P.Stahl,C.Wermuth;Handbook of Pharmaceutical Salts;Wiley Ed.ISBN−13:978−3906390260,ISBN−10:3906390268を参照されたい。)、いずれかの他のタイプの酸の塩も、例えば精製または単離工程のために使用されてもよく、本発明の一部を形成する。
【0034】
化合物(I)および(Ia)は、抗癌成分として使用されてもよく、または癌の処置のための薬剤を調製するために使用されてもよい。癌は、より具体的にはオーロラAおよび/またはBキナーゼが関与する癌である。
【0035】
化合物(I)、(Ia)および(Ib)は、以下のスキームIに従って得られる。
【0036】
【化13】

工程1:2−ハロ−ベンゾイミダゾール(Hal=BrまたはCl)のNH機能は、保護基PGを用いて保護されてA1を得る。PG−Xは、保護基PGを導入する試薬を表す。PGは、より具体的にはジヒドロピラン(
【0037】
【化14】

)であってもよく、この場合PG−Xは3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(
【0038】
【化15】

)を表す。
【0039】
工程2:A1は、塩基の存在下で3−ホルミル−フェノールと反応させ、対応するフェノラートイオンを生じてB1を得る。塩基は、例えばNaHのようなアルカリ金属水素化物であってもよい。反応は、DMFのような極性非プロトン性溶媒中で行われる。
【0040】
工程3:B1である3−アミノ−2−エトキシカルボニルピロールおよび1,3−シクロヘキサンジオンは、例えば環流下のアルコール(例えば1−ブタノール)中で互いに反応してC1を得る。
【0041】
工程4:C1のNH機能を脱保護して、化合物(I)を得る。脱保護条件は、PGの特性に依存する。例えば、PGがジヒドロピランを表す場合、強酸が使用される。
【0042】
工程5:例えばキラルクロマトグラフィを用いて、2つのエナンチオマー(Ia)および(Ib)が単離される。
【0043】
工程1から5それぞれについて、実施例1に記載の特定条件を参照できる。
【実施例】
【0044】
分析方法
方法LC/MS−A
分析のための生成物は、70℃で恒温にしたAcquity Beh C18 UPLCカラム(1.7μm、2.1×50mm(Waters))にて分離され、1ml/分の流速にて0.1%ギ酸(溶媒B)を含有するアセトニトリルから0.1%のギ酸(溶媒A)を含有する水への勾配を用いて溶出される;溶出プログラム:溶媒Bの5%での均一濃度段階0.15分、5%から100%への溶媒Bの勾配3.15分、次いで0.1分かけて初期条件への回復。生成物は、Acquity PDAダイポールアレイUV/vis検出器(Waters、走査される波長範囲:192から400nm)、Sedex85光散乱検出器(Sedere、噴霧ガス:窒素、噴霧温度:32℃、噴霧圧力3.8bar)およびAcquity SQD質量分析計(Waters、正イオンおよび負イオンモードにて操作、走査される質量範囲:80から800amu)によって検出される。
【0045】
方法LC/MS−B
スペクトルは、次の液体クロマトグラフィ条件の下で、正イオンおよび/または負イオン電子スプレーイオン化モード(ES+/−)におけるWaters UPLC−SQD装置にて得られた:カラム:ACQUITY BEH C18 1.7μm、2.1×50mm;Tカラム:50℃;流速:1ml/分;溶媒:A:HO(0.1%ギ酸);B:CHCN(0.1%ギ酸);勾配(2分):0.8分で5%から50%B;1.2分:100%B;1.85分100%B;1.95分5%B。
【0046】
H NMR
スペクトルは、Bruker分光計にて記録され、生成物はDMSO−d6中に溶解される。化学シフトδはppm単位で表される。
【0047】
IR
赤外スペクトルは、KBrディスク上に、2cm−1の解像度で、Nicolet Nexus分光計にて記録される。
【0048】
旋光度の測定
旋光度は、Perkin−Elmer341旋光計にて記録した。
【0049】
元素分析
元素分析は、Thermo EA1108分析器にて行った。
【0050】
オーロラAおよびBに対する活性の測定
酵素のキナーゼ活性を阻害する能力は、異なる濃度の試験化合物(一般に0.17から10000nM)の存在下、酵素の残存キナーゼ活性を測定することによって見積もられる。IC50(50%阻害濃度)を決定可能な用量−応答曲線を得る。キナーゼ活性は、37℃で30分の温置後、タンパク質NuMA(核有糸分裂装置タンパク質)の断片に組み込まれる量の放射活性ホスファート(33P)の量の放射活性アッセイによって測定される。試験化合物は、まずジメチルスルホキシド(DMSO)中にて異なる濃度で溶解される。反応は、FlashPlateマイクロタイタープレート(Nickel Chelate FlashPlate−96,PerkinElmer)のウェル中で行われる。各ウェル(100μl)は、50mMのTris−HCl、pH=7.5;10mMのMgCl;50mMのNaClの緩衝液中に10nMオーロラA、500nMのNuMA、1μMのATPおよび0.2μCiのATP−γ−33P、1mMのジチオトレイトールを含有する。DMSOの最終パーセンテージは3%である。撹拌による均質化の後、プレートを37℃で30分間温置する。次いでウェルの内容物を取り出し、ウェルをPBS緩衝液で洗浄する。次いで放射活性をTRILUXI450Microbetaカウンター(WALLAC)を用いて測定する。各プレートにおいて、8個の対照ウェルが存在する:酵素および基質の存在下および本発明の化合物の不存在下で測定を行うための4つのポジティブ対照(最大キナーゼ活性)、ならびに酵素、基質および試験化合物の不存在下で測定を行うための4つのネガティブ対照(背景)。測定値を表Iに示す。
【0051】
オーロラA
使用される組換え型ヒト酵素オーロラAは、N−末端位置にてポリヒスチジンタグを有する全体形態で発現され、E.coliに産生される。C−末端位置にポリ−ヒスチジンタグを有するヒトタンパク質NuMAの断片(アミノ酸1701−2115)は、E.coliにて組換え形態で発現される。
【0052】
オーロラB/Incenp
ヒト酵素オーロラB全体は、バキュロウィルス系にてヒトタンパク質Incenp(aa821−918)の断片と共に同時発現され、昆虫細胞中に発現される。オーロラBは、N−末端位置にてポリ−ヒスチジンタグを有するが、Incenp断片は、N−末端位置にてグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)タグを保持する。2つのタンパク質は、オーロラB/Incenpと呼ばれる複合体を形成する。C−末端位置にポリ−ヒスチジンタグを有するヒトタンパク質NuMAの断片(aa1701−2115)は、E.coliにて組換え形態で発現される。この断片は基質として使用される。
【0053】
細胞増殖の測定
細胞(腫瘍細胞株HeLa−参照:ATCC CCL−2およびHCT116 参照:ATCC CCL−247)は試験化合物と96時間接触されるが、最後の24時間の間に14C−チミジンが添加される。細胞増殖は、細胞に組み込まれる14C−チミジンの量によって見積もられる。
【0054】
試験化合物は溶解されて、DMSO中10mMにて原液を形成し、この原液を使用して、一般に10000μMから0.3μMの一連の段階希釈を行い、これらの段階希釈は、細胞培養培地中に1/50で希釈され(20×溶液)、これを細胞培養プレート中で1/20希釈のために使用する。試験化合物の最終濃度は、一般に10000から0.3nMである。
【0055】
D0:細胞は、180μLの培養培地中で96ウェルのCytostarプレートに播種される。次いでプレートは、5%CO、37℃にて4時間恒温槽に置かれる。試験生成物は、20×溶液から出発して、ウェルあたり、10μLの体積で添加される。この溶液は、培養培地中に2%DMSOを含有する。このため、DMSOの最終濃度は0.1%である。次いでプレートは、5%CO、37℃にて72時間恒温槽に置かれる。
【0056】
D3:72時間後、培養培地中、ウェルあたり10μLの14C−チミジン10μCi/mLを添加する。次いでプレートは、5%CO、37℃にて24時間恒温槽に置かれる。
【0057】
D4:14Cチミジンの組み込みを、この24時間の「パルス」期間後に、Micro−Beta放射活性カウンター(Perkin−Elmer)にて測定する。試験生成物を有する細胞の総処置時間は96時間である。
【0058】
阻害%IC50は、次の式を用いてエクセル計算される:
【0059】
【数1】

IC50は、値1に固定されたパラメータD(ヒル番号)を用いて、式205の補助によりXLfitソフトウェア(IDBS、英国)を用いて計算する。結果を表Iに示す。
【0060】
酵素PDE3の活性における本発明の化合物の作用の評価
酵素PDE3の活性における本発明の化合物の作用は、CEREP社(Le bois l’Eveque,86600 Celle l’Evescault,France;http://www.cerep.fr)によって標準プロトコルに従って評価された(Bender,A.T.,Beavo,J.A.Pharmacol Rev.2006,58,488−520を参照されたい。組換え形態の酵素PDE3Aは、Sf9細胞にて発現され、基質はcAMPであり、残存AMPcはHTRFによって測定される。試験中の参照阻害剤はミルリノンであり、このIC50は270nMである。残存活性%は、阻害剤を使用しない対照に関連する。)結果は、50%(IC50)によって阻害を誘導する濃度として、または化合物の設定濃度において測定された阻害%として表される。結果を表Iに示す。
【0061】
化合物の化学安定性の測定
化合物の化学安定性は、種々の培地中で測定された:50/50(v/v)水/アセトニトリル混合物中の0.05Nの塩酸;50/50(v/v)水/アセトニトリル混合物中の0.05N水酸化ナトリウム;50/50(v/v)水/アセトニトリル混合物中のリン酸ナトリウム緩衝液、25mM、pH=7.4;1%(w/v)のベンジルアミン塩酸塩を含有する50/50(v/v)水/アセトニトリル混合物中のリン酸ナトリウム緩衝液25mM、pH=7.4;1%(v/v)の2−メルカプトエタノールを含有する50/50(v/v)水/アセトニトリル混合物中のリン酸ナトリウム緩衝液、25mM、pH=7.4。化合物は、DMSO中の10mM原液の希釈によって、100μMの最終濃度にて試験下の培地中に希釈される。溶液を20℃にて、合計48時間貯蔵し、試験下の化合物の濃度をHPLCによって経時的(t=0、1、6、12、24および48時間)に測定する。HPLC分析は、Luna C18カラム30×4.6mm、3μm(Phenomenex)上にダイオードアレイ検出器を備えたAgilentシステム1100装置を用いて行うが、この装置では、アセトニトリル(溶媒B)から、0.5%(v/v)のギ酸(溶媒A)を含有する水への勾配を用い、流速1.5ml/分および温度25℃で溶出する。溶出プログラムは、5分での10から90%への溶媒Bの勾配、続いて90%の溶媒Bにて1分の均一濃度段階、1分かけて初期条件への回復からなる。試験下の生成物の濃度は、各生成物の最大波長におけるクロマトグラムにおける試験下の生成物の特徴的ピークの高さおよび面積から見積もられる。サンプリングのそれぞれの時間において測定される面積および高さは、時間0において試料のために得られた面積および高さに関連する。分解が観察される場合、得られた時間−濃度曲線から半減期が測定される。結果を表IIに示す。
【0062】
ヒトおよびマウス肝臓のミクロソーム調製物の存在下での代謝の評価
ミクロソーム調製物が、医薬化合物の代謝安定性を決定するのに依然として重要であるが、初代培養肝細胞の培養により、この固有クリアランスのより詳細な評価が可能になり、良好なビトロ−ビボ相間が、ヒトの肝クリアランスを示唆する。
【0063】
本発明の化合物(5μM)は、ヒトおよびマウスミクロソーム肝臓フラクション(1mg/mlのタンパク質)について生理学的温度にて温置され、ウシ血清アルブミン(1mg/mlBSA)および還元形態のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスファート(1mMNADPH)の存在下、リン酸塩緩衝液中に希釈される。温置を終了させるために、内部標準(IS)としてコルチコステロンを含有する4体積のアセトニトリルを添加する。試料を遠心分離し、上清を、液体クロマトグラフィ/タンデム型質量分析カップリング(LC/MS−MS)によって分析する。LC/MS−MS分析は、1100シリーズのクロマトグラフィシステム(Agilent)およびPal CTC自動注入器を備えたQTRAP API4000質量分析器(Sciex)にて行う。データを得て、Analyst1.4.1ソフトウェアを用いて分析する。試料を、3μmC18Polarisカラムにて分離し、流速0.7ml/分にて、アセトニトリル(溶媒B)から0.1%ギ酸(溶媒A)を含有する水への勾配を用いて溶出する。溶出プログラムは、2分で20から90%への溶媒Bの勾配;0.9分間の90%の溶媒Bでの均一濃度段階および0.1分での初期条件への回復を含む。化合物および内部標準についてのクロマトグラフィのピーク面積を、Analyst−Classicアルゴリズムを用いて積分する。本発明の生成物の代謝安定性は、温置の0分(t0)および20分(t20)後に測定された積分比(化合物のイオン電流/イオン電流IS)を比較することによって見積もられる。次いで代謝安定性は、次の式に従って消失%として表される:
代謝%=(t0でのピーク比−t20でのピーク比)/t0でのピーク比
結果を表IIIに示す。
【0064】
ヒト肝細胞の存在下でのクリアランスの評価
本発明の化合物(0.5または5μM)は、生理学的温度での恒温槽中において、特定ドナーから得られた新鮮なまたは凍結保存されたヒト肝細胞(約200000細胞/ウェル)の存在下でコラーゲンで覆われた48ウェルプレート中にて24時間温置する。温置は、培養培地(HAM F12−WilliamE)を用いて行われる。種々の時間(0;0.5;1;2;4;6;8および24時間)にて、100μlを各ウェルから試料化し、内部標準(IS)としてコルチコステロンを含有する700μlの70/30(v/v)アセトニトリル/水混合物を添加することによって動力学を停止する。次いで、細胞を解離し、細胞内および細胞外培地を混合し、−20℃の凍結形態にてこれらの分析の前に貯蔵する。解凍後、試料を300gで20分間遠心分離し、上清を液体クロマトグラフィ/タンデム型質量分析カップリング(LC/MS−MS)によって分析する。LC/MS−MS分析は、1100シリーズのクロマトグラフィシステム(Agilent)およびPal CTC自動注入器を備えたQTRAP API4000質量分析器(Sciex)にて行う。データを得て、Analyst1.4.1ソフトウェアを用いて分析する。試料を、3μmC18Polarisカラムにて分離し、流速0.7ml/分にて、アセトニトリル(溶媒B)から0.1%ギ酸(溶媒A)を含有する水への勾配を用いて溶出する。溶出プログラムは、2分で20から90%への溶媒Bの勾配;0.9分間の90%の溶媒Bでの均一濃度段階および0.1分での初期条件への回復を含む。本発明の生成物の濃度を、内部標準(IS)に関連した、生成物の特徴的イオンのイオン電流を積分することによって測定する。得られた化合物/IS比は、既知の濃度の較正曲線に関し、これによって本発明の生成物濃度を確認できる。固有クリアランス(ml.h−1.10−6細胞単位で表される。)は、次いで、WinNonLin software(5.0)を用いて、動力学的プロファイル(濃度/時間)から決定される。結果を表IVに示す。
【0065】
(実施例1)
エチル 8−オキソ−9−[3−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ)フェニル]−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラート(I)の調製
【0066】
【化16】

A1.2−クロロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール(CAS 208398−29−2)
【0067】
【化17】

10lの反応器に、アルゴン下、撹拌しながら、2.5lのTHF、180gの2−クロロベンゾイミダゾール(1.18モル)および325mlの3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(6.56モル、3当量)を充填する。反応器を溶解が生じるまで加熱する(混合物の温度:40℃)。次いで6.3gのパラ−トルエンスルホン酸(0.033モル、0.028当量)を導入する。温度を49から52℃に2.5時間維持する。12℃で冷却を行い、7.65gのナトリウムメトキシド(0.142モル、0.12当量)を、合計15分間撹拌を維持しながら添加する。次いで温度を18℃にして、5lのn−ヘプタンを添加し、混合物全体を300gのClarcelFLO−Mにて濾過し、残余分を5lのn−ヘプタンで洗浄する。濾液を減圧下で乾燥するまで濃縮して、292.6gの2−クロロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾールを淡黄色の油の形態で得る(定量収率)。H NMR(400MHz,DMSO−d6):1.42−2.01(m,5H);2.21−2.34(m,1H);3.69−3.78(m,1H);4.12(d,J=11.4Hz,1H);5.72(dd,J=2.4および11.2Hz,1H);7.22−7.34(m,2H);7.62(d,J=7.2Hz,1H);7.78(d,J=7.2Hz,1H)。
【0068】
B1:3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]ベンズアルデヒド
【0069】
【化18】

2つの2lの3ツ口丸底フラスコ(それぞれ、冷却器、温度計および撹拌シャフトを備える。)に、アルゴン下、N,N−ジメチルホルムアミド(フラスコあたり0.4l)および3−ヒドロキシベンズアルデヒド(68.5g、フラスコ1;64.2g、フラスコ2;1.08モル)を充填する。 次いで水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散液)を、滴下し(フラスコ1:26g;フラスコ2:24g;1.25モル、1.2当量)、添加中の最大温度は32℃であり、85%純度と見積もられる2−クロロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール(A1)を次いで導入する(フラスコ1:0.5l中の151gのN,N−ジメチルホルムアミド;フラスコ2:0.5l中の142gのN,N−ジメチルホルムアミド;1.05モル、0.97当量)。次いで混合物を還流加熱し(温度140℃、温度上昇時間40分)、還流を1時間維持する。次いで加熱を停止し、混合物を1.5時間冷却させる。2つのフラスコの内容物を合わせる。合わせた混合物を徐々に5lの氷水に混合する。次いで得られた水相を4×2.5lの酢酸エチル(AcOEt)で抽出する。次いで有機相を合わせ、3lの水で洗浄し、次いで2lの飽和NaCl溶液で洗浄し、最後にMgSOを添加して一晩乾燥する。次いで得られた有機相をガラスフリット(多孔度4)で濾過し、減圧下で乾燥するまで濃縮して385gの褐色油を得る(LC/MS−A、tr(保持時間)=1.86分、MS正イオンモードm/z=323.16)。
【0070】
上記で得られた粗生成物の158g画分を1.5lのn−ヘプタン/AcOEt混合物(8/2体積)に熱溶解させ、500gのシリカ(70−30メッシュ)を合わせ、混合物を45分間撹拌する。得られた懸濁液をCeliteで濾過し、3lのn−ヘプタン/AcOEt混合物(8/2体積)で洗浄する。得られた有機相を減圧下で乾燥するまで濃縮する。残渣を機械的撹拌および超音波処理によって200mlのイソプロピルエーテルに再懸濁させ、次いでガラスフリット(多孔度3)で濾過する。得られた固体を2×40mlのイソプロピルエーテルで洗浄し、40℃にて16時間減圧下で乾燥させ、68gの固体を得る。粗生成物の残りに適用された同様の処理により、87.8gの固体を得る。得られた固体を合わせ、均質化して155.8gの3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]ベンズアルデヒドを淡ベージュ色の結晶形態で得る(LC/MS−A、tr=1.87分、MS正イオンモードm/z=323.13)。MS(LC/MS−B):tr=1.00分;[M+H]+:m/z323;H NMR(400MHz,DMSO−d6):1.54−1.62(m,1H);1.63−1.84(m,2H);1.92−2.03(m,2H);2.30−2.42(m,1H);3.70−3.79(m,1H);4.10(d,J=11.5Hz,1H);5.74(dd,J=2.1 and 11.1Hz,1H);7.13−7.22(m,2H);7.43(d,J=7.3Hz,1H);7.65(d,J=7.3Hz,1H);7.73(t,J=7.8Hz,1H);7.78−7.83(m,1H);7.87(d,J=7.8Hz,1H);7.96(s,1H);10.05(s,1H)。
【0071】
上記で使用されたシリカ相を2lのn−ヘプタン/AcOEt混合物(体積で1/1)で洗浄することにより、67gの生成物を得て、これを減圧下で乾燥するまで濃縮する。生成物を2lのn−ヘプタン/AcOEt混合物(体積で9/1)に溶解し、285gのシリカ(70−30メッシュ)を合わせ、撹拌し、超音波で1時間処理する。次いで懸濁液をCeliteで濾過し、固相を2lのn−ヘプタン/AcOEt混合物(体積で9/1)で洗浄する。濾液を減圧下で乾燥するまで濃縮して、残渣を400mlのn−ヘプタン/エタノール混合物(体積で95/5)に研和し、ガラスフリット(多孔度3)で濾過し、減圧下で乾燥して35gの3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]ベンズアルデヒドを淡ベージュ色の結晶形態として得る(LC/MS−A、tr=1.93分、MS正イオンモードm/z=323.16)。
【0072】
C1:エチル 8−オキソ−9−{3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]フェニル}−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラート
【0073】
【化19】

2lの円錐フラスコに、磁性撹拌しながら、50gの3−アミノ−2−エトキシカルボニルピロール塩酸塩および0.204lの2N水酸化ナトリウム溶液を充填する。混合物を周囲温度(AT)で15分間撹拌し、次いで3×0.3lのジクロロメタンで抽出する。有機相を合わせ、MgSOで乾燥し、減圧下で乾燥するまで濃縮する。残渣をn−ペンタンで研和し、濾過し、減圧下で一定重量まで乾燥して、36.4gの3−アミノ−2−エトキシカルボニルピロールを褐色固体の形態で得る。
【0074】
撹拌シャフト、温度計および冷却器を備えた2lの3ツ口丸底フラスコに、1.2lの1−ブタノール、145gの3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]ベンズアルデヒド(0.405モル、B1)、62.4gの3−アミノ−2−エトキシカルボニルピロール(1当量、0.405モル)、46.8gの1,3−シクロヘキサンジオン(97%形態(1当量、0.405モル))および70.5mlのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1当量)を充填し、混合物を環流下におく(温度上昇時間55分、30分間の還流維持、温度114℃)。次いで混合物をATまで冷却し、減圧下で乾燥するまで濃縮して、エチル 8−オキソ−9−{3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]フェニル}−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラートを含有する290gの褐色油を得る(LC/MS−A、tr=1.96分、MS正イオンモードm/z=553.33)。35gの3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]−ベンズアルデヒド(0.098モル、実施例B1)を用いて同様の操作を行い、エチル 8−オキソ−9−{3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]フェニル}−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラートを含有する72gの褐色油を得る(LC/MS−A、tr=1.96分、MS正イオンモードm/z=553.35)。
【0075】
D1:エチル 8−オキソ−9−[3−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ)フェニル]−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラート(化合物I)
【0076】
【化20】

2lの丸底フラスコに、エチル 8−オキソ−9−{3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]フェニル}−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラート(実施例1.3)を含有する224gの褐色油、0.7lのエタノールおよび0.243lの2N塩酸を充填する。混合物をATで16時間撹拌し、次いでガラスフリット(多孔度4)で濾過する。濾液を減圧下で乾燥するまで濃縮して、残渣を0.5lのイソプロピルエーテルで研和する。得られた固体を、減圧下で一定重量に乾燥して、エチル 8−オキソ−9−[3−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ)フェニル]−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラートを含有する253gの褐色固体を得る(LC/MS−A、tr=1.46分、MS正イオンモードm/z=469.29)。エチル 8−オキソ−9−{3−[1−(テトラヒドロ−ピラン−2−イル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ]フェニル}−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラート(C1)を含有する54gの褐色油を用いて同様の操作を行い、エチル 8−オキソ−9−[3−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ)フェニル]−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラートを含有する60gの褐色固体を得る(LC/MS−A、tr=1.48分、MS正イオンモードm/z=469.29)。
【0077】
得られた生成物0.8gのアリコート画分を、ジクロロメタンの均一濃度段階で20分、次いで0から1体積%へのジクロロメタン中のイソプロパノールの勾配で1時間、最後にジクロロメタン/イソプロパノール(体積で99/1)の均一濃度段階で20分で溶出する、50gシリカカートリッジ(10から90μm)(Biotage SNAP,KP−Sil)でのクロマトグラフィにより精製してもよい。予測生成物を含有する画分を合わせて、0.21gの黄色固体を得る。同じスケールで行われる2つの同様のクロマトグラフィ分離の生成物をアセトニトリルから結晶化して、合計0.16gのエチル 8−オキソ−9−[3−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ)フェニル]−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラートをベージュ色の結晶形態として得る(LC/MS−A、tr=1.61分、MS正イオンモードm/z=469.28)。H NMR(400MHz,DMSO−d6):1.29(t,J=7.0Hz,3H);1.80−1.97(m,2H);2.19−2.27(m,2H);2.55−2.69(m,1H);2.81(dt,J=4.8および17.2Hz,1H);4.26(q,J=7.0Hz,2H);5.11(s,1H);6.73(d,J=3.3Hz,1H);7.02−7.16(m,5H);7.25(t,J=7.9Hz,1H);7.31−7.38(m,2H);8.34(s,1H);11.33(broad s,1H);12.26(broad s,1H)。元素分析:C=68.72%;H=5.10%;N=11.82%;HO=0.38%。
【0078】
(実施例2)
エチル 8−オキソ−9−[3−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ)フェニル]−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラートのL型エナンチオマー(Ia)
L型エナンチオマーを実施例D1の粗生成物から、n−ヘプタン/ジクロロメタン/エタノール/トリエチルアミン混合物(体積で50/47.5/2.5/0.1)で溶出するWelk−01RRキラルカラム、10μM、80×350mm(Regis、米国)にて精製する。生成物の溶出を265nmのUV分光法により検出する。実施例D1に記載される10gの粗生成物量を、各操作に注入する。これらの条件下、L型エナンチオマーに対応するピークを、50から80分のtrで溶出する。実施例D1に記載された310gの粗生成物を精製するために必要とされる操作に対応して精製されたL型エナンチオマー画分を合わせ、均質化し、減圧下で乾燥するまで濃縮して50gのベージュ色固体を得る。マススペクトル(LC/MS−B):tr=0.77分;[M+H]+:m/z469;[M−H]−:m/z467。H NMR(400MHz,DMSO−d6):1.29(t,J=7.1Hz,3H);1.79−1.97(m,2H);2.19−2.27(m,2H);2.55−2.66(m,1H);2.81(dt,J=4.9および17.1Hz,1H);4.26(q,J=7.1Hz,2H);5.12(s,1H);6.73(d,J=3.4Hz,1H);7.02−7.16(m,5H);7.25(t,J=8.3Hz,1H);7.29−7.41(m,2H);8.32(s,1H);11.31(broad s,1H);12.26(broad s,1H)。IR:主要バンド:1678;1578;1525;1442;1188;1043および743cm−1。c=メタノール中0.698mg/mlでの旋光度:[α]=−38.6±0.7。元素分析:C=68.18%;H=5.92%;N=11.22%;HO=1.25%。
【0079】
(実施例3)
エチル 8−オキソ−9−[3−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イルオキシ)フェニル]−4,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−2H−ピロロ[3,4−b]キノリン−3−カルボキシラートのD型エナンチオマー(Ib)
D型エナンチオマーは、n−ヘプタン/エタノール混合物(体積で7/3、次いで6/4)で溶出するWelk−01SSキラルカラム、10μM、60×350mm(Regis、米国)でのクロマトグラフィによって実施例D1からの精製された生成物の精製によって得られる。生成物の溶出をUV分光法により検出する。D型エナンチオマーの画分を合わせ、均質化し、減圧下で乾燥するまで濃縮して1.9gの黄色粉末を得る。MS(LC/MS−B):tr=0.77分;[M+H]+:m/z=469.2;[M−H]−:m/z=467.2。c=メタノール中3.6mg/mlでの旋光度:[α]=+53.1±1.1。
【0080】
(実施例4から13)
実施例4から11の化合物をWO2007/012972(請求項26の方法を参照されたい。)に記載の方法で調製した。式(II)の三環状ジヒドロピリジン生成物を、スキームIIに従って調製してもよい。
【0081】
【化21】

ピラゾール(X=N)またはピロール−2−カルボキシラート(X=COOEt)の1当量混合物、1当量のアルデヒドR−CHOおよび1当量のジケトン誘導体(Y=CH、CMe、N−Boc)をアルコール、例えばエタノールまたは1−ブタノール中で30分間から数時間環流加熱する。次いで混合物を周囲温度に冷却する。所望の生成物を濾過によって単離し、または他には溶媒を乾燥するまで蒸発させる。必要に応じて、粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィまたは他には高速分取液体クロマトグラフィ(HPLC)によって精製する。
【0082】
YがN−Bocを表す場合、生成物は、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸(50/50)の溶液または他にはジオキサン中の塩酸溶液を用いて脱保護してもよい(スキームIII)。
【0083】
【化22】

化合物4(R=H)の調製に使用される一般式(III)のアルデヒドを、スキームIVに従って得てもよい。Rは、ベンゾイミダゾール核において1つ(n=1)またはこれ以上(nは2から4)の置換基を示し、次のH、F、Cl、Br、OH、SH、CF、OCF、OCH、SCF、SCH、OCHF、OCHF、SCHF、(C−C)アルキル、O−アリル、場合により1つ以上のハロゲン原子で置換されるフェニルから選択される。
【0084】
【化23】

工程1:3−ヨード−ベンズアルデヒドのアルデヒド機能を、アルコール保護基、より具体的にはジオール保護基(例えばエチレングリコール)を用いて、酸、例えばパラ−トルエンスルホン酸の存在下、不活性溶媒、例えばトルエン中、20℃から反応混合物の沸騰温度の間の温度にて保護する。
【0085】
工程2:形成された中間体を、パラジウム錯体、例えばビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ホスフィン誘導体、例えばビス[(2−ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルおよび塩基、例えばナトリウムtert−ブトキシドの存在下、不活性溶媒、例えばトルエン中、20℃から反応混合物の沸騰温度までの温度にて、式(IV)の生成物と反応させる。
【0086】
工程3:アルデヒド機能を、酸性水溶液、例えば塩酸の存在下、場合により溶媒、例えばアセトン中、20℃から反応混合物の沸騰温度の間の温度にて、脱保護する。
【0087】
表Iは、オーロラAおよびB阻害活性、株HeLaおよびHCT116での抗増殖活性、PDE3阻害活性および代謝を比較する。化合物(I)または(Ia)は、オーロラAおよびBキナーゼの阻害のレベルが高く、株HeLaおよびHCT116に対する活性が非常に良好であることがわかった。
【0088】
【表1】



【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物。
【請求項2】
L型形態の請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
メタノール中0.698mg/mlの濃度において旋光度[α]=−38.6±0.7を示す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
塩基の形態、または酸、特に医薬的に許容される酸との付加塩の形態である、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項5】
オーロラAおよびBキナーゼの選択的阻害剤としての請求項1から4に記載の化合物。
【請求項6】
抗癌成分としての請求項1から5に記載の化合物。
【請求項7】
癌の処置のための薬剤を調製するための請求項1から5に記載の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1から6に記載の化合物および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1から6に記載の化合物を含む薬剤。
【請求項10】
請求項1から4に記載の化合物を調製する方法であって、
PGがベンゾイミダゾールのNH機能のための保護基を示す、以下の3つの構成成分を共に反応させて、
【化2】

化合物を得る工程:
ベンゾイミダゾールのNH機能を脱保護して式(I)の化合物を得る工程:
適切な場合には、L型化合物を単離する工程
を含む方法。
【請求項11】
3つの化合物間の反応が、還流下のアルコール、特に1−ブタノール中で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PGが基
【化3】

を表す、請求項10から11に記載の方法。
【請求項13】
次のリスト:
【化4】

から選択される化合物であって、PGはベンゾイミダゾールのNH機能のための保護基を示す化合物。
【請求項14】
PGが基
【化5】

を表す、請求項14に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1から4に記載の化合物の調製における中間体としての請求項13または14に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−527436(P2012−527436A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511323(P2012−511323)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050948
【国際公開番号】WO2010/133794
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】