説明

抗癌医薬組成物

【課題】 癌腫、肉腫又は造血器癌を予防又は治療するための抗癌剤を提供する。
【解決手段】
上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤及びRafキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つの抗癌剤と、5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩とを有効成分として含有する、同時に又は時間をおいて別々に投与するための、癌腫、肉腫又は造血器癌を治療するための抗癌剤であって、EGFR阻害剤がセツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ及びラパチニブからなる群より選択され、VEGFR阻害剤がベバシツマブ、ソラフェニブ及びSU11248からなる群より選択され、Rafキナーゼ阻害剤がソラフェニブである抗癌剤(ただし、抗癌剤がソラフェニブ又はエルロチニブであり、癌種が肺癌である抗癌剤を除く)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化能を有するチアゾリジンジオン化合物を有効成分として含有する抗癌医薬組成物、並びに、PPARγ活性化能を有する化合物及び上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤又はRafキナーゼ阻害剤を有効成分として含有する、癌腫、肉腫又は造血器癌を予防若しくは治療するための抗癌医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
PPARγ活性化剤は、ロジグリタゾン、ピオグリタゾンなどの例で見られるように2型糖尿病治療薬として有用であることが広く知られている。PPARγは、脂肪細胞への分化誘導や生体のエネルギー代謝の調節など、多様な生理機能を有するものと考えられている(例えば、非特許文献1、2参照)。一方、PPARγ活性化剤がある種の癌細胞に対して分化誘導、細胞周期阻害あるいはアポトーシスなどを誘導し、癌細胞の増殖阻害を引き起こすことが報告されている(例えば、非特許文献3、4、5参照)。さらにこれらの知見に加え、甲状腺癌でPAX8−PPARγ1の染色体転座が高頻度で認められPPARγの機能が失活していること、大腸癌で頻度は高くないものの機能不全をもたらす点変異が認められることから、PPARγが癌化に抑制的に働く可能性が示唆されてきた(例えば、特許文献6、7参照)。このような知見からPPARγ活性化剤の癌治療における有効性の可能性が考えられ、ロジグリタゾンを用いた小規模な癌患者に対する臨床試験が行なわれたが、十分な有効性は確認できなかった(例えば、特許文献8参照)。この理由についてはこれまで明らかになっていないが、ロジグリタゾンによる抗癌効果が十分強くはなかった可能性が高い。このことから、より強力な抗癌効果を有するPPARγ活性化剤を見出すことは、将来の癌治療に大きく貢献することが期待される。
【0003】
一方、近年の癌治療においては、複数の抗癌剤を併用して使用することにより、各薬剤の単剤投与よりも有効性を増し副作用を軽減することが試みられている。これら併用療法に用いられる抗癌剤の種類には、殺細胞性癌化学療法剤や近年市場に新規導入されつつある様々な分子標的薬剤などがある。特に分子標的薬剤は一般的に前者よりも副作用が低く、併用用法における副作用の増大を防ぐために前者の用量を減らす必要がない場合が多い。このため併用治療において殺細胞性癌化学療法剤の有効性を最大限発揮させつつ分子標的薬の薬効によってその効果を増強することができるため、現在様々な分子を標的とした薬剤の開発が精力的に進められている。現在注目されている分子標的薬剤としては、血管新生阻害活性を持つ抗体医薬であるベバシツマブ(商品名アバスチン)、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤であるゲフィチニブ(商品名イレッサ)やエルロチニブ(商品名タルセバ)などがある。さらに現在臨床試験段階にある血管新生阻害(血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害作用とRafキナーゼ阻害活性を併せ持つソラフェニブなども有効性が臨床試験で示唆されており注目を集めている。このように、これら分子標的薬剤との併用投与によって抗癌効果の増強が示されることは、癌治療を考える上で多様な治療法の選択肢を患者に提供することを可能とし、治療成績の向上に大きく貢献する。なおここで併用投与による抗癌効果の増強とは、一般に各々の単剤投与における効果よりも併用投与による効果が優れていることであり(例えば、非特許文献9参照)、必ずしも相乗的な増強効果が得られなくても臨床における意義は大きいとみなされている。
【0004】
特許第3488099号公報(その他、特許文献1、2参照)には、新規な化学構造を有するチアゾリジンジオン化合物が開示されている。本発明の抗癌医薬組成物の有効成分として含有される一般式(I)で表される化合物は、同公報に開示されるチアゾリジンジオン化合物の化合物範囲に包含される化合物である。特許第3488099号公報には、同公報に開示されるチアゾリジンジオン化合物が、PPARγ活性化能を有し、抗癌剤として使用できることが記載されている。しかし、同公報には、このチアゾリジンジオン化合物が、実際に抗癌作用を有していることを示す具体的な試験データは、なんら開示されていない。
【0005】
さらに、このチアゾリジンジオン化合物と、他の薬剤とを含有する医薬組成物が報告されている。
【0006】
例えば、このチアゾリジンジオン化合物と、MAPキナーゼ阻害剤とを含有する医薬組成物が報告されており(特許文献3、4参照)、この医薬組成物が、特に、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、膵臓癌、肝臓癌、白血病、頭頸部癌、脂肪肉腫のような癌の予防剤又は治療剤又は細胞増殖抑制剤として有用であると記載されている。
【0007】
また、上記チアゾリジンジオン化合物の化合物範囲に含まれる一部の化合物と、RXR(レチノイドX受容体)活性化作用剤とを含有する癌を予防又は治療するための医薬組成物が報告されており(特許文献5、6参照)、この医薬組成物は、特に肺癌、胃癌又は大腸癌の治療剤又は予防剤として有用であると記載されている。
【0008】
上記チアゾリジンジオン化合物とフルオロウラシル系代謝拮抗剤又は白金錯体とを含有する医薬組成物が報告されており(特許文献7、8参照)、この医薬組成物が、特に、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、膵臓癌、肝臓癌、白血病、頭頸部癌、脂肪肉腫のような癌の予防剤又は治療剤又は細胞増殖抑制として有用であると記載されている。
【0009】
上記チアゾリジンジオン化合物と利尿剤とを含有する医薬組成物が報告されており(特許文献9、10参照)、この医薬組成物が、PPARγ活性化剤を投与した際に生じる心肥大、浮腫、体液貯留、胸水貯留のような副作用を予防又は治療することができ、特に、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、膵臓癌、肝臓癌、白血病、頭頚部癌、脂肪肉腫のような癌の予防剤若しくは治療剤又は細胞増殖抑制剤として有用であると記載されている。
【0010】
上記チアゾリジンジオン化合物とMEK阻害活性を有する新規なスルファミド誘導体とを含有する医薬組成物が報告されており(特許文献11、12参照)、この医薬組成物が、特に、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、膵臓癌、肝臓癌、白血病、頭頸部癌、脂肪肉腫のような癌の予防剤又は治療剤又は細胞増殖抑制剤として有用であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6432993号明細書
【特許文献2】欧州特許第1022272号明細書
【特許文献3】特開2003−192592号公報
【特許文献4】国際公開第03/032988号パンフレット
【特許文献5】特開2003−238406号公報
【特許文献6】国際公開第03/053440号パンフレット
【特許文献7】特開2004−83558号公報
【特許文献8】国際公開第03/082865号パンフレット
【特許文献9】特開2004−83574号公報
【特許文献10】国際公開第2004/000356号パンフレット
【特許文献11】特開2005−162727号公報
【特許文献12】国際公開第2004/083167号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Spiegelman BM. PPAR-γ: Adipogenic regulator and thiazolidinedione receptor. Diabetes, 1998; 47: 507-14。
【非特許文献2】Lehmann JM, Moore LB et al. An antidiabetic thiazolidinedione is a high affinity ligand for peroxisome proliferator-activated receptor gamma. J Biol Chem 1995; 270: 12953-6。
【非特許文献3】Mueller E, Sarraf P et al. Terminal differentiation of the human breast cancer through PPAR gamma. Mol Cell 1998; 1: 465-70.
【非特許文献4】Yoshizume T, Ohta T et al. Thiazolidinedione, a peroxisome proliferator-activated receptor gamma ligand, inhibits growth and metastasis of HT-29 human colon cancer cells through differentiation-promoting effects. Int J Oncol 2004; 25: 631-9
【非特許文献5】Ray DM, Bernstein SH et al. Human multiple myeloma cells express peroxisome proliferator-activated receptor γ and undergo apoptosis upon exposure to PPARγligands. Clin Immunology, 2004; 113: 203-13.
【非特許文献6】Dwight T, Thoppe SR, et al. Involvement of the PAX8/peroxisome proliferator-activated receptor gamma reaarangement in follicular thyroid tumors. J Clin Endocrinol Metab 2003; 88: 4440-5.
【非特許文献7】Sarraf P, Mueller E et al. Loss-of-function mutations in PPAR gamma associated with human colon cancer. Mol Cell 1999; 3: 799-804.
【非特許文献8】Debrock G, Vanhentenrijk V et al. A phase II trial with rosiglitazone in liposarcoma patients. Br J Cancer 2003; 89: 1409-12.
【非特許文献9】斎藤達雄編、癌の薬物療法開発と効果判定、株式会社リアライズ社、p128-138、(1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明者等は、上記チアゾリジンジオン化合物の化合物範囲より、本発明の抗癌医薬組成物の有効成分である一般式(I)で表される化合物を選択し、本発明の一般式(I)で表される化合物単独での抗癌効果を検討した。
【0014】
その結果、本発明の一般式(I)で表される化合物又はその薬理上許容される塩が特定の癌種で優れた抗癌効果を有することを見出した。
【0015】
また、本発明者等は、更に優れた抗癌作用を有する薬剤の組み合わせを模索すべく検討した結果、PPARγ活性化能を有する化合物(特に、本発明の一般式(I)で表される化合物)又はその薬理上許容される塩と、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤又はRafキナーゼ阻害剤とを併用投与することによって各々単剤で投与した場合よりも抗癌効果が増強されることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、
(1) 下記一般式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
[式中、
Rは、置換基群αから選択される基で1乃至5個置換されたフェニル基を示し、
Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。

<置換基群α>ハロゲン原子;ヒドロキシ基;C1 −C6 アルキル基;ハロゲノC1 −C6 アルキル基;C1 −C6 アルコキシ基;C1 −C6 アルキルチオ基;置換基群γから選択される基で1又は2個置換されてもよいアミノ基;置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよい、C3 −C10シクロアルキル、C6 −C10アリール、C7 −C16アラルキル、C6 −C10アリールオキシ、C7 −C16アラルキルオキシ及びC6 −C10アリールチオ基;C1 −C7 脂肪族アシルオキシ基;窒素原子を含有する4乃至7員飽和複素環基;窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環基;ニトロ基;並びにシアノ基。

<置換基群β>ハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1 −C6 アルキル基、ハロゲノC1 −C6 アルキル基、C1 −C6 アルコキシ基、置換基群γから選択される基で1又は2個置換されてもよいアミノ基、C6 −C10アリール基、及びニトロ基。

<置換基群γ>C1 −C10アルキル基、C6 −C10アリール基、C7 −C16アラルキル基、C1 −C7 脂肪族アシル基、C7 −C11芳香族アシル基、C−C12芳香脂肪族アシル基、C4−C11シクロアルキルカルボニル基及び窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環カルボニル基。]
を有する化合物又はその薬理上許容される塩を有効成分として含有する、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫、多発性骨髄腫又は白血病を予防若しくは治療するための抗癌医薬組成物、
(2) (1)において、Rが、置換基群αから選択される基で1乃至5個置換されたフェニル基を示し、
置換基群αが、ハロゲン原子、C1 −C6 アルキル基、ハロゲノC1 −C6 アルキル基、置換基群γから選択される基で1乃至2個置換されてもよいアミノ基、窒素原子を含有する4乃至7員飽和複素環基及び窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環基である医薬組成物、
(3) (1)において、Rが、1乃至2個の置換基で置換されてもよいアミノ(該置換基は、同一又は異なって、C1 −C10アルキル、C6 −C10アリール及びC7 −C16アラルキル基から成る群から選択される基である。)で1個置換され、更に、1乃至3個の置換基で置換されてもよいフェニル基(該置換基は、ハロゲン、C1 −C6 アルキル、ハロゲノC1 −C6 アルキル及びC1 −C6 アルコキシから成る群から選択される基である。)である医薬組成物、
(4) (1)において、Rが、アミノ又はモノ若しくはジ−C1 −C10アルキルアミノで1 個で置換され、更に、1乃至2個のC1 −C6 アルキルで置換されてもよいフェニル基である医薬組成物、
(5) (1)乃至(4)のいずれか1項において、Xが、酸素原子である医薬組成物、
(6) (1)において、一般式(I)を有する化合物が、下記から選択される化合物である医薬組成物:
5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(3−(エチル−イソプロピル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−sec−ブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−イソブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
及び
5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(7) (1)において、一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩が、5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩である医薬組成物、
〈8〉 (1)において、一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩が、5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩である医薬組成物、
(9)上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤及びRafキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つの抗癌剤と、下記一般式(I):
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、
Rは、置換基群αから選択される基で1乃至5個置換されたフェニル基を示すし、
Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。

<置換基群α>ハロゲン原子;ヒドロキシ基;C1 −C6 アルキル基;ハロゲノC1 −C6 アルキル基;C1 −C6 アルコキシ基;C1 −C6 アルキルチオ基;置換基群γから選択される基で1又は2個置換されてもよいアミノ基;置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよい、C3 −C10シクロアルキル、C6 −C10アリール、C7 −C16アラルキル、C6 −C10アリールオキシ、C7 −C16アラルキルオキシ及びC6 −C10アリールチオ基;C1 −C7 脂肪族アシルオキシ基;窒素原子を含有する4乃至7員飽和複素環基;窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環基;ニトロ基;並びにシアノ基。

<置換基群β>ハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1 −C6 アルキル基、ハロゲノC1 −C6 アルキル基、C1 −C6 アルコキシ基、置換基群γから選択される基で1又は2個置換されてもよいアミノ基、C6 −C10アリール基、及びニトロ基。

<置換基群γ>C1 −C10アルキル基、C6 −C10アリール基、C7 −C16アラルキル基、C1 −C7 脂肪族アシル基、C7 −C11芳香族アシル基、C−C12芳香脂肪族アシル基、C4−C11シクロアルキルカルボニル基及び窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環カルボニル基。]
を有する化合物及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物とを有効成分として含有する、同時に又は時間をおいて別々に投与するための、癌腫、肉腫又は造血器癌を予防若しくは治療するための抗癌医薬組成物、
(10) (9)において、抗癌剤が、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤(該薬剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ又はラパチニブである。)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤(該薬剤は、ベバシツマブ、ソラフェニブ、SU11248又はバタラニブである。)及びRafキナーゼ阻害剤(該薬剤は、ソラフェニブである。)からなる群より選択される少なくとも1つである医薬組成物、
(11) (9)において、抗癌剤が、ゲフィチニブ及びソラフェニブからなる群より選択される少なくとも1つである医薬組成物、
(12) (9)乃至(11)のいずれか1項において、癌腫が、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌又は前立腺癌である医薬組成物、
(13) (9)乃至(12)のいずれか1項において、肉腫が、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫又は脂肪肉腫である医薬組成物、
(14) (9)乃至(13)のいずれか1項において、造血器癌が、多発性骨髄腫又は白血病である医薬組成物。
(15) (9)乃至(14)のいずれか1項において、Rが、置換基群αから選択される基で1乃至5個置換されたフェニル基を示し、
置換基群αが、ハロゲン原子、C1 −C6 アルキル基、ハロゲノC1 −C6 アルキル基、置換基群γから選択される基で1乃至2個置換されてもよいアミノ基、窒素原子を含有する4乃至7員飽和複素環基及び窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環基である医薬組成物、
(16) (9)乃至(14)のいずれか1項において、Rが、1乃至2個の置換基で置換されてもよいアミノ(該置換基は、同一又は異なって、C1 −C10アルキル、C6 −C10アリール及びC7 −C16アラルキル基から成る群から選択される基である。)で1個置換され、更に、1乃至3個の置換基で置換されてもよいフェニル基(該置換基は、ハロゲン、C1 −C6 アルキル及びハロゲノC1 −C6 アルキル基から成る群から選択される基である。)である医薬組成物、
(17) (9)乃至(14)のいずれか1項において、Rが、アミノ又はモノ若しくはジ−C1 −C10アルキルアミノで1 個で置換され、更に、C1 −C6 アルキルで1乃至2個置換されてもよいフェニル基である医薬組成物、
(18) (9)乃至(17)のいずれか1項において、Xが、酸素原子である医薬組成物、並びに
(19) (9)において、一般式(I)を有する化合物が、下記から選択される化合物である医薬組成物:
5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(3−(エチル−イソプロピル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−sec−ブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−(4−(6−(4−イソブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
及び
5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン、
(20) (9)において、一般式(I)を有する化合物及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物が、5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩である医薬組成物、
および
(21) (9)において、一般式(I)を有する化合物及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物が、5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩である医薬組成物
である。
【0021】
また、本発明は、上記(1)乃至(8)から選択されるいずれか1項に記載された医薬組成物を温血動物(好ましくはヒト)に投与することからなる、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫、多発性骨髄腫又は白血病を予防若しくは治療方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、上記(9)乃至(21)から選択されるいずれか1項に記載された医薬組成物の有効成分を同時に又は各有効成分を時間をおいて投与することからなる、癌腫(特に、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌又は前立腺癌である。)、肉腫(特に、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫又は脂肪肉腫である。)又は造血器癌(特に、多発性骨髄腫又は白血病である)を予防若しくは治療方法を提供する。
【0023】
本発明において、置換基群α及びβの定義における「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好適には、フッ素原子又は塩素原子であり、さらに好適には、フッ素原子である。
【0024】
置換基群α及びβの定義における「C1 −C6 アルキル基」は、炭素数1乃至6個の直鎖又は分枝鎖アルキル基を示し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、2−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル又は2−エチルブチル基であり、置換基群αにおいて、好適には、メチル又はt−ブチル基であり、置換基群βにおいて、好適には、C1 −C4 アルキル基であり、さらに好適には、メチル又はエチル基である。
【0025】
置換基群α及びβの定義における「ハロゲノC1 −C6 アルキル基」は、前記C1 −C6 アルキル基に1乃至3個の前記ハロゲン原子が結合した基を示し、例えば、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、フルオロメチル、2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ブロモエチル、2−クロロエチル、2−フルオロエチル、2−ヨードエチル、3−クロロプロピル、4−フルオロブチル、6−ヨードヘキシル又は2,2−ジブロモエチル基であり、好適には、ハロゲノC1 −C2 アルキル基であり、さらに好適には、トリフルオロメチル基である。
【0026】
置換基群α及びβの定義における「C1 −C6 アルコキシ基」は、前記C1 −C6 アルキル基が酸素原子に結合した基を示し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、2−メチルブトキシ、ネオペントキシ、1−エチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、4−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−メチルペントキシ、3,3−ジメチルブトキシ、2,2−ジメチルブトキシ、1,1−ジメチルブトキシ、1,2−ジメチルブトキシ、1,3−ジメチルブトキシ、2,3−ジメチルブトキシ、2−エチルブトキシ基であり、好適には、C1 −C4 アルコキシ基であり、さらに好適には、C1 −C2 アルコキシ基であり、特に好適にはメトキシ基である。
【0027】
置換基群αの定義における「C1 −C6 アルキルチオ基」は、前記C1 −C6 アルキル基が硫黄原子に結合した基を示し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、2−メチルブチルチオ、ネオペンチルチオ、1−エチルプロピルチオ、ヘキシルチオ、4−メチルペンチルチオ、3−メチルペンチルチオ、2−メチルペンチルチオ、1−メチルペンチルチオ、3,3−ジメチルブチルチオ、2,2−ジメチルブチルチオ、1,1−ジメチルブチルチオ、1,2−ジメチルブチルチオ、1,3−ジメチルブチルチオ、2,3−ジメチルブチルチオ又は2−エチルブチルチオ基であり、好適には、C1 −C4 アルキルチオ基であり、さらに好適には、C1 −C2 アルキルチオ基であり、特に好適には、メチルチオ基である。
【0028】
置換基群α及びβの定義における「置換基群γから選択される基で1又は2個置換されてもよいアミノ基」は、C1 −C10アルキル基、C6 −C10アリール基、C7 −C16アラルキル基、C1 −C7 脂肪族アシル基、C7 −C11芳香族アシル基、C−C12芳香脂肪族アシル基、C4−C11シクロアルキルカルボニル基及び窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環カルボニル基から成る置換基群γから選択される基で、同一又は異なって、1又は2個置換されてもよいアミノ基を示す。
【0029】
上記において、置換基群γの定義における「C1 −C10アルキル基」は、炭素数1乃至10個の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、例えば、前記C1 −C6 アルキル、ヘプチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1−プロピルブチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、1−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、4−メチルヘプチル、5−メチルヘプチル、6−メチルヘプチル、1−プロピルペンチル、2−エチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、ノニル、3−メチルオクチル、4−メチルオクチル、5−メチルオクチル、6−メチルオクチル、1−プロピルヘキシル、2−エチルヘプチル、6,6−ジメチルヘプチル、デシル、1−メチルノニル、3−メチルノニル、8−メチルノニル、3−エチルオクチル、3,7−ジメチルオクチル又は7,7−ジメチルオクチル基であり、好適には、炭素数1乃至4個の直鎖又は分枝鎖アルキル基である。
【0030】
上記において、置換基群γの定義における「C6 −C10アリール基」は、炭素数6乃至10個の芳香族炭化水素基を示し、該基は、ニトロ基、上記ハロゲン原子、ヒドロキシ基、上記C−Cアルキル基、上記C−Cアルキルカルボニルオキシ基、又は、C−Cアルコキシ基で置換されていてもよい。このような基としては、例えば、フェニル、ナフチル、パラニトロフェニル、パラクロロフェニル、パラフルオロフェニル、パラヒドロキシフェニル、パラアセトキシフェニル、パラメチルフェニル、パラエチルフェニル、パラプロピルフェニル、パラメトキシフェニル、パラエトキシフェニル又はパラプロポキシフェニル基であり、好適には、フェニル、パラニトロフェニル又はパラメトキシフェニル基である。
【0031】
上記において、置換基群γの定義における、「C7 −C16アラルキル基」は、前記C6 −C10アリール基が前記C1 −C6 アルキル基に結合した基を示し、例えば、ベンジル、ナフチルメチル、インデニルメチル、ジフェニルメチル、1−フェネチル、2−フェネチル、1−ナフチルエチル、2−ナフチルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルプロピル、2−ナフチルプロピル、3−ナフチルプロピル、1−フェニルブチル、2−フェニルブチル、3−フェニルブチル、4−フェニルブチル、1−ナフチルブチル、2−ナフチルブチル、3−ナフチルブチル、4−ナフチルブチル、5−フェニルペンチル、5−ナフチルペンチル、6−フェニルヘキシル又は6−ナフチルヘキシル基であり、好適には、フェニル基がC1 −C4アルキル基に結合したアラルキル基であり、さらに好適には、ベンジル基である。
【0032】
上記において、置換基群γの定義における「C1 −C7 脂肪族アシル基」は、水素原子又は飽和若しくは不飽和のC1 −C6 鎖状炭化水素基がカルボニル基に結合した基を示し、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、アクリロイル、メタクリロイル又はクロトノイル基であり、好適には、アセチル、プロピオニル又はピバロイル基であり、さらに好適には、アセチル基である。
【0033】
上記において、置換基群γの定義における「C7 −C11芳香族アシル基」は、C6 −C10アリール基がカルボニル基に結合した基を示し、例えば、ベンゾイル、1−インダンカルボニル、2−インダンカルボニル又は1−若しくは2−ナフトイル基であり、好適には、ベンゾイル又はナフトイル基である。
【0034】
上記において、置換基群γの定義における、「C8 −C12芳香脂肪族アシル基」は、フェニル基がC2 −C6 脂肪族アシル基に結合した基を示し、例えば、フェニルアセチル、3−フェニルプロピオニル、4−フェニルブチリル、5−フェニルペンタノイル又は6−フェニルヘキサノイル基であり、好適には、フェニルアセチル基である。
【0035】
上記において、置換基群γの定義における、「C4 −C11シクロアルキルカルボニル基」は、C3 −C10シクロアルキル基(縮環していてもよい3乃至10員飽和環状炭化水素基を示し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ノルボルニル又はアダマンチル基であり、好適には、C3 −C6 シクロアルキル基である。)にカルボニル基が結合した基を示し、例えば、シクロプロパノイル、シクロブチリル、シクロペンタノイル、シクロヘキサノイル、シクロヘプチルカルボニル、ノルボルニルカルボニル又はアダマンチルカルボニル基であり、好適には、C4 −C7 シクロアルキルカルボニル基であり、特に好適には、シクロペンタノイル又はシクロヘキサノイル基である。
【0036】
上記において、置換基群γの定義における、「窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環カルボニル基」は、窒素原子を少なくとも1個含み、更に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から成るヘテロ原子群から選択されたヘテロ原子を含有してもよい5乃至6員芳香複素環(例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル又はチアジアゾリル基である。)にカルボニル基が結合した基を示し、例えば、ピロリルカルボニル、イミダゾリルカルボニル、ピラゾリルカルボニル、トリアゾリルカルボニル、テトラゾリルカルボニル、ニコチノイル、イソニコチノイル、ピラジニルカルボニル、ピリミジニルカルボニル、ピリダジニルカルボニル、チアゾリルカルボニル、オキサゾリルカルボニル、オキサジアゾリルカルボニル又はチアジアゾリルカルボニル基であり、好適には、ピリジルカルボニル基であり、特に好適には、ニコチノイル又はイソニコチノイル基である。
【0037】
置換基群α及びβの定義における「置換基群γから選択される基で1又は2個置換されていてもよいアミノ基」は、好適には、アミノ基、1又は2個の置換基で置換されたアミノ基(該置換基は、同一又は異なって、C1−C10アルキル基、C6 −C10アリール基、C7 −C16アラルキル基から成る群から選択される基である。)であり、更に好適には、アミノ基、モノ若しくはジ−C1 −C10アルキルアミノ基であり、特に好適には、アミノ、ジメチルアミノ又はイソプロピルアミノ基である。
【0038】
置換基群αの定義における「置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよいC3 −C10シクロアルキル基」のC3 −C10シクロアルキル部分は前述したものと同意義を示し、好適には、置換基群βから選択される基で1個置換されてもよいC3 −C10シクロアルキル基であり、更に好適には、ハロゲン、ヒドロキシ、C1 −C6 アルキル及びハロゲノC1 −C6 アルキルから成る群から選択される基で1個置換されていてもよいC3 −C10シクロアルキル基であり、より好適には、フッ素、塩素、ヒドロキシ、メチル、エチル、t−ブチル、トリフルオロメチル、メトキシ、アミノ、メチルアミノ又はジメチルアミノで1個置換されてもよいアダマンチル基であり、特に好適には、アダマンチル基である。
【0039】
置換基群αの定義における「置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよいC6 −C10アリール基」及び置換基群βの定義における「C6 −C10アリール基」のC6 −C10アリール部分は前述したものと同意義を示し、好適には、置換基群βから選択される基で1個置換されてもよいC6 −C10アリール基であり、更に好適には、ハロゲン、ヒドロキシ、C1 −C6 アルキル、ハロゲノC1 −C6 アルキル、C1 −C6 アルコキシ又は置換気群γから選択される基で1又は2個置換されていてもよいアミノで1個置換されていてもよいC6 −C10アリール基であり、より好適には、フッ素、塩素、ヒドロキシ、メチル、エチル、t−ブチル、トリフルオロメチル、メトキシ、アミノ、メチルアミノ又はジメチルアミノで1個置換されてもよいフェニル基であり、特に好適には、フェニル又は4−ヒドロキシフェニル基である。
【0040】
置換基群αの定義における「置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよいC7 −C16アラルキル基」のC7 −C16アラルキル部分は前述したものと同意義を示し、好適には、置換基群βから選択される基で1個置換されてもよいC7 −C16アラルキル基であり、更に好適には、ハロゲン、ヒドロキシ、C1 −C6 アルキル、ハロゲノC1 −C6 アルキル、C1 −C6 アルコキシ又は置換気群γから選択される基で1又は2個置換されてもよいアミノで1個置換されてもよいベンジル基であり、より好適には、フッ素、塩素、ヒドロキシ、メチル、エチル、t−ブチル、トリフルオロメチル、メトキシ、アミノ、メチルアミノ又はジメチルアミノで1個置換されてもよいベンジル基であり、特に好適には、ベンジル基である。
【0041】
置換基群αの定義における「置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよいC6 −C10アリールオキシ基」のC6 −C10アリールオキシ部分は、前記C6 −C10アリールが酸素原子に結合した基を示し、例えば、フェノキシ、1−インデニルオキシ、2−インデニルオキシ、3−インデニルオキシ、1−ナフチルオキシ又は2−ナフチルオキシ基であり、好適には、フェノキシ基である。
【0042】
置換基群αの定義における「置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよいC7 −C16アラルキルオキシ基」のC7 −C16アラルキルオキシ部分は、前記C7 −C16アラルキル基が酸素原子に結合した基を示し、例えば、ベンジルオキシ、ナフチルメトキシ、インデニルメトキシ、ジフェニルメトキシ、1−フェネチルオキシ、2−フェネチルオキシ、1−ナフチルエトキシ、2−ナフチルエトキシ、1−フェニルプロポキシ、2−フェニルプロポキシ、3−フェニルプロポキシ、1−ナフチルプロポキシ、2−ナフチルプロポキシ、3−ナフチルプロポキシ、1−フェニルブトキシ、2−フェニルブトキシ、3−フェニルブトキシ、4−フェニルブトキシ、1−ナフチルブトキシ、2−ナフチルブトキシ、3−ナフチルブトキシ、4−ナフチルブトキシ、5−フェニルペンチルオキシ、5−ナフチルペンチルオキシ、6−フェニルヘキシルオキシ又は6−ナフチルヘキシルオキシ基であり、好適にはベンジルオキシ基である。
【0043】
置換基群αの定義における「置換基群βから選択される基で1乃至3個置換されてもよいC6 −C10アリールチオ基」のC6−C10アリールチオ部分は、前記C6 −C10アリール基が硫黄原子に結合した基を示し、例えば、フェニルチオ、1−インデニルチオ、2−インデニルチオ、3−インデニルチオ、1−ナフチルチオ又は2−ナフチルチオ基であり、好適には、フェニルチオ基である。
【0044】
置換基群αの定義における「C−C脂肪族アシルオキシ基」は、前記C−C脂肪族アシル基に酸素原子が結合した基を示し、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、イソバレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ又はクロトイルオキシ基であり、好適には、アセトキシ基である。
【0045】
置換基群αの定義における「窒素原子を含有する4乃至7員飽和複素環基」は、窒素原子を少なくとも1個含み、更に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から成るヘテロ原子群から選択されたヘテロ原子を含有してもよい4乃至7員飽和複素環基を示し、例えば、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル基であり、好適には、ピロリジニル、ピペリジニル又はモルホリニル基であり、さらに好適には、ピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イル又はモルホリン−4−イル基である。
【0046】
置換基群αの定義における「窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環基」は、前述したものと同意義を示し、好適には、イミダゾリル、テトラゾリル又はピリジニル基であり、さらに好適には、ピリジン−2−イル又はピリジン−3−イル基である。
【0047】
Rは、好適には、ハロゲン原子、C1 −C6 アルキル基、ハロゲノC1 −C6 アルキル基、置換基群γから選択される基で1乃至2個置換されてもよいアミノ基、窒素原子を含有する4乃至7員飽和複素環基及び窒素原子を含有する5乃至6員芳香複素環基からなる群より選択される1乃至5個の基で置換されたフェニル基である。
【0048】
Rは、更に好適には、アミノ又は1乃至2個の置換基で置換されたアミノ(該置換基は、同一又は異なって、C1 −C10アルキル基、C6 −C10アリール基及びC7 −C16アラルキルから成る群から選択される基である。)で1個置換され、更に、1乃至3個の置換基で置換されてもよいフェニル基(該置換基は、ハロゲン原子、C1 −C6 アルキル基及びハロゲノC1 −C6 アルキル基から成る群から選択される基である。)である。
【0049】
Rは、より好適には、アミノ又はモノ若しくはジ−C1 −C10アルキルアミノ基で1個置換され、更に、C1 −C6 アルキルで1乃至2個置換されてもよいフェニル基である。
【0050】
本発明の医薬組成物の有効成分である一般式(I)を有する化合物として、好適には、
・ 5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
・ 5−(4−(6−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
・ 5−(4−(6−(4−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
・ 5−(4−(6−(3−(エチル−イソプロピル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
・ 5−(4−(6−(4−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
・ 5−(4−(6−(4−sec−ブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
・ 5−(4−(6−(4−イソブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
若しくは
・ 5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
又はそれらの薬理上許容される塩であり、さらに好適には、
5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩、若しくは、
5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩である。
【0051】
本発明は、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤及びRafキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つの抗癌剤と、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ活性化能を有する化合物及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物とを有効成分として含有する、同時に又は時間をおいて別々に投与するための、癌腫、肉腫又は造血器癌を予防若しくは治療するための抗癌医薬組成物を提供する。
【0052】
上皮増殖因子受容体(EGFR)とは、上皮増殖因子(epidermal growth factor)に対する細胞表面に存在する受容体蛋白質である。本受容体は細胞膜貫通蛋白質であり、細胞内にチロシンキナーゼ活性を有する領域を持っている。本受容体は多くの癌細胞の表面に発現していることが明らかとなっており、特に肺癌、乳癌、大腸癌、膵臓癌などで高頻度に過剰発現が認められる。上皮増殖因子受容体(EGFR)の機能を阻害する薬剤には、細胞外領域に結合する抗体として、例えば、セツキシマブ(商品名エルビタックス)、パニツムマブが挙げられる。また、チロシンキナーゼ活性に対する阻害剤としては、例えば、ゲフィチニブ(商品名イレッサ)、エルロチニブ(商品名タルセバ)、ラパチニブが挙げられる。好適には、エルロチニブ(商品名タルセバ)である。
【0053】
血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)とは、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial cell growth factor)に対する細胞表面に存在する受容体蛋白質である。本受容体は細胞膜貫通蛋白質であり、細胞内にチロシンキナーゼ活性を有する領域を持っている。本受容体は主に血管内皮細胞に発現していることが知られており、癌細胞から分泌される血管内皮細胞増殖因子の刺激を受けて血管内皮細胞の増殖を促す。この結果、癌組織周辺の血管新生が亢進し、癌組織の増殖が促進される。血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)の機能を阻害する薬剤としては、血管内皮細胞増殖因子そのものに対する中和抗体であるベバシツマブ(商品名アバスチン)が、また、チロシンキナーゼ活性に対する阻害剤としては、ソラフェニブ、SU11248、バタラニブ(PTK787)が挙げられる。好適には、ソラフェニブである。
【0054】
Rafキナーゼは、細胞増殖シグナルに深く関与するセリンスレオニンキナーゼの一種であり、低分子量G蛋白質であるRas蛋白質からの増殖シグナルを核内に伝達するカスケードの一翼を担うことが知られている。Rafのキナーゼ活性を阻害する薬剤としては、例えば、ソラフェニブが挙げられる。
【0055】
本発明の上記抗癌医薬組成物の一方の有効成分であるPPARγ活性化能を有する化合物には、任意の許容されるアッセイによるヒトPPARγを活性化する任意の化合物、又は一般的にPPARγ アクチベーターもしくはPPARγ アゴニストとして認識されている任意の化合物が含まれる。このようなPPARγ アクチベーターは2以上のPPARサブタイプのアクチベーターであってもよい。好ましいPPARγアクチベーターとしては、糖尿病の治療に有用であることが知られているチアゾリジンジオン化合物や米国特許第6,294,580号に開示されているもの等の非チアゾリジンジオン化合物であるPPARγアクチベーターも挙げることができる。好ましいチアゾリジンジオン化合物としては、本発明の一般式(I)を有する化合物に加え、現在市販されているロジグリタゾン、ピオグリタゾンや、特許第2976885号公報(US5886014号公報)、特許第3488099号公報(US6432993号公報、EP1022272号公報)、特開2000−351779号公報(WO00/61581号公報)に記載されている化合物を挙げることができる。好ましい非チアゾリジンジオン化合物としては、GlaxoSmithKline化合物 GI262570 (ファルグリタザール(farglitazar))等の開発中の化合物を挙げることができる。これらのPPARγ活性化能を有する化合物の中でも、特に好適には、本発明の一般式(I)を有する化合物またはその薬理上許容される塩である。
【0056】
本発明の医薬組成物の有効成分である一般式(I)を有する化合物、PPARγ活性化能を有する化合物、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤のうち塩を形成するものは、各々、所望に応じて、常法に従い、塩にすることができ、このような塩も本発明に包含される。
【0057】
そのような塩のうち、酸との塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸の塩;酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩などのカルボン酸の塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸の塩;グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などのアミノ酸の塩等を挙げることができる。
【0058】
塩基との塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属との塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属との塩;またはアンモニウム塩、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩のような有機塩基との塩を挙げることができる。
【0059】
本発明の医薬組成物の有効成分である一般式(I)を有する化合物、PPARγ活性化能を有する化合物、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤は、各々、光学異性体が存在することがあるが、その各々あるいはそれらの混合物のいずれも本発明に包含される。このような光学異性体は、各々の異性体の原料化合物を用いて合成するか又は合成した化合物を所望により通常の分割法もしくは分離法を用いて分割することにより得ることができる。
【0060】
本発明の医薬組成物の有効成分である一般式(I)を有する化合物、PPARγ活性化能を有する化合物、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤は、各々、水和物又は溶媒和物として存在することがあるが、その各々或いはそれらの混合物のいずれも本発明に包含される。
【0061】
本発明は、癌腫(特に、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌又は前立腺癌である。)、肉腫(特に、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫又は脂肪肉腫である。)、又は造血器癌(特に、多発性骨髄腫又は白血病である。)の予防若しくは治療方法を提供するが、本発明におけるこれらの予防若しくは治療法は、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬理上許容される塩を単独で、あるいは、PPARγ活性化能を有する化合物(好適には、本発明の一般式(I)を有する化合物)又はその薬理上許容される塩と、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤若しくはRafキナーゼ阻害剤との併用によって行なわれる。
【0062】
本発明において「併用」とは、2種以上の薬剤を用いることであり、例えば、それぞれの薬剤を同時に投与する形態、時間をおいて各々単独で別々に投与する形態、混合して物理的に単一の組成物として投与する形態などが挙げられる。
【0063】
本発明において、「同時に投与する」とは、ほぼ同じ時間に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、単一の組成物として投与するのが好ましい。
【0064】
また、「時間をおいて別々に投与する」とは、異なった時間に別々に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、例えば、最初に上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤又はRafキナーゼ阻害剤を投与し、次いで、決められた時間後に、PPARγ活性化能を有する化合物又はその薬理上許容される塩を投与することが挙げられる。
【発明の効果】
【0065】
一般式(I)を有する化合物を有効成分として含有する本発明の抗癌医薬組成物は、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫、多発性骨髄腫又は白血病の予防剤若しくは治療剤として有用である。
【0066】
本発明の、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤及びRafキナーゼ阻害剤からなる群より選ばれる少なくとも1つの抗癌剤と、PPARγ活性化能を有する化合物及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物とを有効成分として含有する、同時に又は時間をおいて別々に投与するための抗癌医薬組成物は、抗癌剤(胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、前立腺癌のような癌腫、髄芽細胞腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫のような肉腫又は多発性骨髄腫、白血病のような造血器癌を予防若しくは治療するための抗癌剤)として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】縦軸に、各種癌細胞に化合物Xを添加した後の各細胞の吸光度(%)を、横軸に添加した化合物Xの濃度(μM)をとってプロットして、化合物Xの濃度と癌細胞増殖抑制活性の関係を示したグラフである。
【図2】縦軸に、各種癌細胞に化合物Xを添加した後の各細胞の吸光度(%)を、横軸に添加した化合物Xの濃度(μM)をとってプロットして、化合物Xの濃度と癌細胞増殖抑制活性の関係を示したグラフである。
【図3】縦軸に、各種癌細胞に化合物Xを添加した後の各細胞の吸光度(%)を、横軸に添加した化合物Xの濃度(μM)をとってプロットして、化合物Xの濃度と癌細胞増殖抑制活性の関係を示したグラフである。
【図4】縦軸には、移植した癌細胞に、化合物X、ゲフィチニブの単剤或いは両剤を併用した時の腫瘍体積(mm)を、横軸には移植後日数(day)をとってプロットし、移植日数と腫瘍体積との関係を示したグラフである。
【図5】縦軸には、移植した癌細胞に、化合物X、ソラフェニブの単剤或いは両剤を併用した時の腫瘍体積(mm)を、横軸には移植後日数(day)をとってプロットし、移植日数と腫瘍体積との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の医薬組成物の有効成分である一般式(I)を有する化合物は、特許第3488099号公報に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0069】
ロジグリタゾンは、US5741803号公報、ピオグリタゾンは、US4687777号公報に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0070】
特許第2976885号公報(US5886014号公報)、特許第3488099号公報(US6432993号公報、EP1022272号公報)、特開2000−351779号公報(WO00/61581号公報)に記載のPPARγ活性化能を有するチアゾリジンジオン化合物は、各公報に製造方法も記載されており、各公報に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0071】
ファルグリタザールは、WO00/08002号公報に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0072】
一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩等のPPARγ活性化能を有する化合物と、他の抗癌剤とを有効成分とする、本発明の抗癌医薬組成物の有効成分である上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤のうち、ゲフィチニブは、アストラゼネカ社より入手することができる。
【0073】
セツキシマブは、EP359282号公報、パニツムマブは、WO96/33735号公報、エルロチニブは、WO96/30347号公報、ラパチニブは、WO99/35146号公報、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤のうち、ベバシツマブは、EP1325932号公報、ソラフェニブは、WO99/35146号公報、SU11248は、WO2001/060814号公報、バタラニブは、WO98/035958号公報に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0074】
本発明の医薬組成物の有効成分である一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を、治療剤・改善剤又は予防剤として使用する場合には、それ自体或は適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等による経口的又は注射剤若しくは坐剤等による非経口的に投与することができる。
【0075】
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤:及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる。)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;脂肪酸ナトリウム塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体を挙げることができる。)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸を挙げることができる。)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0076】
その投与量は、薬剤の活性、患者(温血動物、特に人間)の症状、年齢、体重等の種々の条件によって大幅に変化し得るが、例えば、経口投与の場合には、1回当り、下限として0.0005 mg/kg体重、上限として50 mg/kg体重を、静脈内投与の場合には1回当たり、下限として0.0005 mg/kg体重、上限として50 mg/kg体重を、1日当たり1乃至数回症状に応じて投与することが望ましい。
【0077】
また、PPARγ活性化能を有する化合物(好適には、上記一般式(I)を有する化合物)又はその薬理上許容される塩と、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤又はRafキナーゼ阻害剤は、各々単独で別々の単位投与形態に、又は混合して物理的に単一の投与形態に調整することができる。
【0078】
このような各々単独の単位投与形態又は混合した単一投与形態で用いる場合、PPARγ活性化能を有する化合物又はその薬理上許容される塩、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤を、各々それ自体、或いは適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等により経口的に、又は、注射剤若しくは坐剤等により非経口的に投与することができる。
【0079】
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体を挙げることができる)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸を挙げることができる)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0080】
PPARγ活性化能を有する化合物又はその薬理上許容される塩と、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤との投与比率は、個々の薬剤の活性、患者の症状、年齢、体重等の種々の条件により変化し得る。
【0081】
その投与量は、薬剤の活性、患者(温血動物、特に人間)の症状、年齢、体重等により異なるが、経口投与の場合には、各々、1回当たり下限0.1mg/kg、上限100mg/kg(好適には20mg/kg)を、非経口的投与の場合には、1回当たり下限0.01mg、上限100mg/kg(好適には10mg/kg)を、成人に対して1日当たり1乃至6回、症状に応じて、同時に又は時間を置いて別々に投与することができる。
【0082】
また、PPARγ活性化能を有する化合物と、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤又はRafキナーゼ阻害剤の投与量の比率も、また、大幅に変わりうるが、例えばPPARγ活性化能を有する化合物又はその薬理上許容される塩と、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤又はRafキナーゼ阻害剤の投与量比率は、重量比で、1:1000乃至1000:1の範囲内であり得る。
【実施例】
【0083】
以下、製造例、試験例、製剤例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0084】
製造例1
5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩
0.74gの参考例2で得たN−(2−アミノ−5−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル、0.70gの4−(2,4−ジオチアゾリジン−5−イルメチル)−フェノキシ酢酸(特開平11−193276)、0.41gのシアノホスホン酸ジエチル、0.25gのトリエチルアミンおよび30mlの無水テトラヒドロフランの混合物を室温で4.5時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=2/3)で精製して、中間体であるN−(5−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−2−(4−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−フェノキシアセチルアミノ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを得た。この中間体を50mlの4規定塩酸/1,4−ジオキサンに溶解後、室温で16時間放置し、析出した成績体を濾取、酢酸エチルで洗浄して、標記化合物(0.76g、収率64%)を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 1.21( 6H, d, J=6.4Hz ), 3.11( 1H, dd, J=14及び9.0Hz ), 3.34( 1H, dd, J=14及び4.4Hz ), 3.57-3.65( 1H, m ), 3.95( 3H, s ), 4.91( 1H, dd, J=9.0及び4.4Hz ), 5.63( 2H, s ), 6.70-7.20( 3H, m ), 7.14 ( 2H, d, J=8.7Hz ), 7.25( 2H, d, J=8.7Hz ), 7.25( 1H, d, J=3.3Hz ), 7.35-7.45( 1H, m ), 7.68( 1H, d, J=1.9Hz ), 7.83( 1H, d, J=8.9Hz ), 12.05( 1H, s ; 重水添加により消失)。
【0085】
製造例2
5−(4−(6−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩
製造例1のN−(2−アミノ−5−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルの代わりに参考例5で得たN−(2−アミノ−5−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを用いて、製造例1と同様にして標記化合物を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 0.86( 6H, d, J=6.7Hz ), 1.90-1.99( 1H, m ), 2,91( 3H, s ), 3.08-3.14( 3H, m ), 3.34( 1H, dd, J=14及び4.4Hz ), 3.94( 3H, s ), 4.91( 1H, dd, J=9.0及び4.4Hz ), 5.65( 2H, s ), 6.21( 1H, br ), 6.39 ( 1H, br ), 6.53( 1H, br ), 7.15-7.27( 6H, m ), 7.62( 1H, d, J=2.1Hz ), 7.80( 1H, d, J=8.9Hz ), 12.04( 1H, br ; 重水添加により消失)。
【0086】
製造例3
5−(4−(6−(4−(イソブチル−メチル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩
製造例1のN−(2−アミノ−5−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルの代わりに参考例8で得たN−(2−メチル−5−(4−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−フェニル)メチルアミンを用いて、製造例1と同様にして標記化合物を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 0.90( 6H, d, J=4.4Hz ), 1.75-2.05( 1H, m ), 1.99( 3H, s ), 2.90-3.10( 2H, m ), 3.11( 1H, dd, J=14及び8.9Hz ), 3.34( 1H, dd, J=14及び4.4Hz ), 3.92( 3H, s ), 4.91( 1H, dd, J=8.9及び4.4Hz ), 5.62( 2H, s ), 6.65-7.20( 5H, m ), 7.13 ( 2H, d, J=8.7Hz ), 7.25( 2H, d, J=8.7Hz ), 7.45-7.60( 1H, m ), 7.78( 1H, d, J=8.9Hz ), 12.05( 1H, s ; 重水添加により消失)。
【0087】
製造例4
5−(4−(6−(3−(エチル−イソプロピル−アミノ)−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
620mgの製造例1で得た5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩、66mgのアセトアルデヒド、90mgの酢酸、318mgのトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム及び15mlの無水テトラヒドロフランの混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1)で精製して、標記化合物(260mg,収率48%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 1.06 (3H, t, J=7.0Hz), 1.11 (6H, d, J=6.6Hz), 3.05 (1H, dd, J=14及び9.2Hz), 3.18 (2H, q, J=7.0Hz), 3.31 (1H, dd, J=14及び4.3Hz), 3.79 (3H, s), 3.94-4.04 (1H, m), 4.87 (1H, dd, J=9.2及び4.3Hz), 5.63 (2H, s), 6.11 (1H, dd, J=7.9及び2.0Hz ), 6.34 (1H, t, J=2.2Hz), 6.46 (1H, dd, J=8.5及び2.3Hz), 6.92 (1H, dd, J=8.8及び2.2Hz), 7.06-7.11 (3H, m), 7.19 (1H, d, J=8.7Hz), 7.28 (1H, d, J=2.3Hz), 7.63 (1H, d, J=8.7Hz), 12.02 (1H, s ; 重水添加により消失)。
【0088】
製造例5
5−(4−(6−(4−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
製造例4の5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩の代わりに5−(4−(6−(4−アミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩(特開平11−193276)、アセトアルデヒドの代わりにアセトンを用いて、製造例4と同様にして標記化合物を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 1.13( 6H, d, J=6.3Hz ), 3.05( 1H, dd, J=14及び9.1Hz ), 3.31( 1H, dd, J=14及び4.3Hz ), 3.45-3.52( 1H, m ), 3.75( 3H, s ), 4.87( 1H, dd, J=9.1及び4.3Hz ), 5.24( 1H, br ; 重水添加により消失), 5.34( 2H, s ), 6.56( 2H, dd, J=12及び3.3Hz ), 6.81( 2H, d, J=8.6Hz ), 6.83( 1H, dd, J=8.2及び2.3Hz ), 7.04-7.07( 3H, m ), 7.19( 2H, d, J=8.6Hz ), 7.57( 1H, d, J=8.8Hz ), 12.02( 1H, br ; 重水添加により消失)。
【0089】
製造例6
5−(4−(6−(4−sec−ブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
製造例4の5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩の代わりに5−(4−(6−(4−アミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩、アセトアルデヒドの代わりにメチルエチルケトンを用いて、製造例4と同様にして標記化合物を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 0.90( 3H, t, J=7.4Hz ), 2.17( 3H, d, J=6.4Hz ), 1.34-1.46( 1H, m ), 1.48-1.59( 1H, m ), 3.06( 1H, dd, J=14及び9.2Hz ), 3.24-3.34( 2H, m ), 3.75( 3H, s ), 4.87( 1H, dd, J=9.2及び4.3Hz ), 5.23( 1H, br ; 重水添加により消失), 5.34( 2H, s ), 6.57( 2H, d, J=8.7Hz ), 6.81 ( 2H, d, J=8.9Hz ), 6.84( 1H, dd, J=8.8及び2.2Hz ), 7.01-7.09( 3H, m ), 7.19( 2H, d, J=8.7Hz ), 7.57( 1H, d, J=8.8Hz ), 12.01( 1H, br ; 重水添加により消失)。
【0090】
製造例7
5−(4−(6−(4−イソブチルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン
製造例4の5−(4−(6−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩の代わりに5−(4−(6−(4−アミノ−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩、アセトアルデヒドの代わりにイソブチルアルデヒドを用いて、製造例4と同様にして標記化合物を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 0.94( 6H, d, J=6.7Hz ), 1.77-1.88( 1H, m ), 2.78-2.81( 2H, m ), 3.05( 1H, dd, J=14及び9.3Hz ), 3.31( 1H, dd, J=14及び4.3Hz ), 3.74( 3H, s ), 4.86( 1H, dd, J=9.3及び4.3Hz ), 5.34( 2H, s ), 5.50( 1H, s ; 重水添加により消失), 6.57( 2H, dd, J=6.8及び2.0Hz ), 6.81 ( 2H, d, J=8.8Hz ), 6.83( 1H, dd, J=8.6及び2.4Hz ), 7.04-7.07( 3H, m ), 7.19( 2H, d, J=8.6Hz ), 7.56( 1H, d, J=8.8Hz ), 12.01( 1H, s ; 重水添加により消失)。
【0091】
製造例8
5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・二塩酸塩
製造例1のN−(2−アミノ−5−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルの代わりに参考例11で得たN−(2−アミノ−5−(4−t−ブトキシカルボニルアミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを用いて、製造例1と同様にして標記化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ: 2.34 (6H, s), 3.10 (1H, dd, J=14及び9.0Hz), 3.34 (1H, dd, J=14及び4.4Hz), 3.93 (3H, s), 4.91 (1H, dd, J=4.4及び9.0Hz), 5.62 (2H, s), 6.80 (2H, s), 7.14 (2H, d, J=8.7Hz), 7.18 (1H, dd, J=8.9及び2.2Hz), 7.25 (2H, d, J=8.7Hz), 7.61 (1H, d, J=2.2Hz), 7.81 (1H, d, J=8.9Hz), 12.1 (1H, br; 重水添加により消失)。
【0092】
参考例1
N−(5−(3−アミノフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
2.18gの水素化ナトリウム(55重量%)を含む80mlの無水N,N−ジメチルホルムアミド懸濁液中に5.45gの3−アミノフェノールを加え、室温で20分間攪拌した。次いで、14.3gのN−(5−クロロ−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル(特開平11−193276)を少しずつ加え、100℃で6時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、水を加え、3規定塩酸及び重曹粉末を用いて中和した。析出した不溶性の成績体を濾取、水洗後、減圧下乾燥して、標記化合物(16.6g、収率92%)を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 1.23及び1.42(計9H, 各s ), 3.18( 3H, s ), 5.38( 2H, s ; 重水添加により消失), 6.25( 1H, dd, J=7.6及び2.4Hz ), 6.31( 1H, s ), 6.46( 1H, dd, J=8.1及び1.0Hz ), 6.88( 1H, dd, J=9.0及び2.1Hz ), 7.09( 1H, t, J=8.0Hz ), 7.16( 1H, s ),8.00 ( 1H, d, J=9.0Hz )。
【0093】
参考例2
N−(2−アミノ−5−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
14.4gのN−(5−(3−アミノフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル、2.90gのアセトン、3.00gの酢酸、10.6gのトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム及び200mlの無水テトラヒドロフランの混合物を室温で4日間攪拌した。反応混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=2/3)で精製して、中間体であるN−(5−(3−イソプロピルアミノ−フェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを得た。この中間体を200mlのメタノールに溶解し、2.02gの10%パラジウム−炭素を加え、水素雰囲気下室温で2.5時間激しく攪拌した。反応終了後、触媒を濾去し、溶媒を留去して、標記化合物(12.0g、収率81%)を得た。
1H-NMR ( DMSO-d6 )δ: 1.08( 6H, d, J=6.4Hz ), 1.29( 9H, s ), 2.98( 3H, s ), 3.40-3.47( 1H, m ), 4.78( 2H, s ; 重水添加により消失), 5.45( 1H, d, J=7.8Hz ; 重水添加により消失), 5.96( 1H, d, J=7.2Hz ), 6.07( 1H, t, J=2.2Hz ), 6.20 ( 1H, dd, J=8.1及び1.9Hz ), 6.60( 1H, s ), 6.71( 2H, s ), 6.93( 1H, t, J=8.1Hz )。
【0094】
参考例3
N−(5−(3−ブロモフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
2.5gの水素化ナトリウム(55重量%)を含む50mlの無水N,N−ジメチルホルムアミド懸濁液中に10.0gの3−ブロモフェノールを加え、氷冷下15分間攪拌した。次いで、16.6gのN−(5−クロロ−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを70mlの無水N,N−ジメチルホルムアミドに溶解したものを滴下し、100℃で3時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、水を加えて3規定塩酸を用いて中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。抽出液より酢酸エチルを留去し、析出した不溶性の成績体をヘキサンで洗浄後濾取し、減圧下乾燥して、標記化合物(20.2g、収率83%)を得た。
1H-NMR ( CDCl3 )δ: 1.24( 9H, s ), 3.19( 3H, s ), 6.97( 1H, dd, J=9.0及び2.4Hz ), 7.22( 1H, d, J=7.9Hz ), 7.29 ( 1H, d, J=1.7Hz ), 7.42-7.51( 3H, m ),8.03 ( 1H, d, J=9.0Hz )。
【0095】
参考例4
N−(5−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
700.0mgの参考例3で得たN−(5−(3−ブロモフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル、0.24mlのイソブチルメチルアミン、151.0mgのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、115.7mgの2−(ジシクロヘキシルフォスフィノ)ビフェニル及び277.7mgのカリウム t−ブトキシドを4mlの無水トルエンに懸濁し、100℃で1.5時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/7)で精製して、標記化合物(204.2mg、収率29%)を得た。
1H-NMR ( CDCl3 )δ: 0.80(6H, d, J=6.6Hz), 1.25( 9H, s ), 1.88-2.01( 1H, m ),2.85(3H, s), 2.95(2H, d, J=7.3Hz), 3.14(3H, s), 6.20-6.27( 2H, m ), 6.43( 1H, dd, J=8.8及び2.2Hz ), 6.72-6.83( 2H, m ), 7.11( 1H, t, J=8.1Hz ), 7.81 ( 1H, d, J=9.5Hz )。
【0096】
参考例5
N−(2−アミノ−5−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
204.2mgの参考例4で得たN−(5−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを10mlのエタノールに溶解し、100.0mgの10%パラジウム−炭素を加え、水素雰囲気下室温で2.5時間激しく攪拌した。反応終了後、触媒を濾去し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/4→1/3)で精製して、標記化合物(145.4mg、収率77%)を得た。
1H-NMR ( CDCl3 )δ: 0.90(6H, d, J=6.6Hz), 1.57( 9H, s ), 1.98-2.09( 1H, m ),2.92(3H, s), 3.06(2H, d, J=7.3Hz), 3.13(3H, s), 3.64(2H,s;重水添加により消失), 6.30( 1H, t, J=2.2Hz), 6.35( 1H, dd, J=8.1及び2.2Hz ), 6.70-6.88( 3H, m ), 7.08 ( 1H, t, J=8.2Hz ), 7.25-7.31(1H, m)。
【0097】
参考例6
(4−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−t−ブチルジメチルシラン
5mlの(4−ブロモフェノキシ)−t−ブチルジメチルシラン、2.9mlのイソブチルメチルアミン、458.0mgの酢酸パラジウム、1.2gの2−(ジt−ブチルフォスフィノ)ビフェニル及び2.9gのナトリウム t−ブトキシドを40mlの無水トルエンに懸濁し、100℃で1.5時間撹拌した。触媒を濾去した後水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/40→1/20)で精製して、標記化合物(3.83g、収率64%)を得た。
1H-NMR ( CDCl3 )δ: 0.16(6H, s), 0.91(6H, d, J=6.6Hz), 0.97(9H, s), 1.94-2.05(1H, m), 2.87(3H, s), 2.98(2H, d, J=7.3Hz), 6.57(2H, d, J=8.8Hz), 6.72(2H, d, J=8.8Hz)。
【0098】
参考例7
N−(5−(4−(イソブチル−メチル−アミ)フェノキシ)−2−ニトロフェニル)メチルアミン
3.83gの参考例6で得た(4−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−t−ブチルジメチルシランを、20mlの無水テトラヒドロフランに溶解し、20mlの1M フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム テトラヒドロフラン溶液を加え、室温で30分間撹拌した。反応混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/5)で精製した。得られた成績体を4規定塩酸―1,4−ジオキサンに溶解させ、室温で30分間撹拌した。反応液を濃縮し、ジエチルエーテルで洗浄した後、中間体である4−イソブチルメチルアミノフェノール・一塩酸塩を得た。この中間体500.0mgと2.6gの炭酸カリウムを含む20mlの無水N,N−ジメチルホルムアミド懸濁液を室温で15分間攪拌した。次いで、664.7mgのN−(5−クロロ−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを加え、150℃で3時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/トルエン=1/30)で精製し、標記化合物(256.1mg、収率34%)を得た。
1H-NMR ( CDCl3 )δ: 0.96(6H, d, J=6.8Hz), 2.00-2.13(1H, m), 2.92(3H, d, J=5.9Hz), 2.98(3H, s), 3.12(2H, d, J=7.8Hz), 6.19-6.23(2H, m), 6.68(2H, d, J=8.8Hz), 6.96(2H, d, J=8.8Hz), 8.13(1H, d, J=9.8Hz)。
【0099】
参考例8
N−(2−メチル−5−(4−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−フェニル)メチルアミン
参考例5のN−(5−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルの代わりに参考例7で得たN−(5−(4−(イソブチル−メチル−アミ)フェノキシ)−2−ニトロフェニル)メチルアミンを用いて、参考例5と同様にして標記化合物を得た。
1H-NMR ( CDCl3 )δ: 0.88(6H, d, J=6.6Hz), 1.94-2.04(1H, m), 2.77(3H, s), 2.87(3H, s), 2.99(2H, d, J=7.3Hz), 3.22(2H, s), 6.16(1H, dd, J=8.1及び2.5Hz), 6.33(1H, d, J=2.5Hz), 6.57(1H, d, J=8.1Hz), 6.59(2H, d, J=8.8Hz), 6.87(2H, d, J=8.8Hz)。
【0100】
参考例9
N−(5−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
参考例1の3−アミノフェノールの代わりに4−アミノ−3,5−ジメチルフェノールを用いて、参考例1と同様に処理し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/n−へキサン=1/2)で精製することにより標記化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ: 1.23及び1.41 (total 9H, 各s), 2.10 (6H, s), 3.17 (3H, s), 4.66 (2H, br; 重水添加により消失), 6.69 (2H, s), 6.75 (1H, dd, J=9.1及び2.5Hz), 7.07 (1H, s), 7.96 (1H, d, J=9.1)。
【0101】
参考例10
N−(5−(4−t−ブトキシカルボニルアミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
2.27gのN−(5−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル、1.28gの重炭酸ジーt−ブチル、0.59gのトリエチルアミンおよび20mlの無水テトラヒドロフランの混合物を、6時間加熱還流した。反応混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶剤:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10)で精製して、標記化合物(1.74g、収率61%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ: 1.24及び1.42 (total 9H, 各s), 1.46 (9H, s), 2.17 (6H, s), 3.19 (3H, s), 6.84 (1H, dd, J=9.0及び2.7), 6.90 (2H, s), 7.21 (1H, s), 8.00 (1H, d, J=9.0), 8.42 (1H, s; 重水添加により消失)。
【0102】
参考例11
N−(2−アミノ−5−(4−t−ブトキシカルボニルアミノー3,5−ジメチル−フェノキシ)−フェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステル
参考例5のN−(5−(3−(イソブチル−メチル−アミノ)フェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルの代わりに参考例10で得たN−(5−(4−t−ブトキシカルボニルアミノ−3,5−ジメチルフェノキシ)−2−ニトロフェニル)−N−メチルカルバミン酸 t−ブチルエステルを用いて、参考例5と同様にし、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/n−へキサン=1/2)で精製することにより標記化合物を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ: 1.30及び1.37 (total 9H, 各s), 1.44 (9H, s), 2.07 (6H, s), 2.98 (3H, s), 4.83 (2H, br; 重水添加により消失), 6.54 (2H, s), 6.58-6.74 (3H, m), 8.22 (1H, s; 重水添加により消失)。
【0103】
試験例1
癌細胞増殖抑制活性の評価
株式会社免疫生物研究所より購入したヒト胃癌細胞株(MKN74、MKN28)、American Tissue Culture Collectionより購入したヒト乳癌細胞株(ZR-75-1)、小細胞肺癌株(SBC-1)、膵臓癌細胞株(AsPC-1)、前立腺癌(DU-145)、腎臓癌細胞株(ACHN)、髄芽細胞腫株(D341 Med)、ヒト肉腫細胞株(横紋筋肉腫株A-204、ユーイング肉腫株RD-ES、脂肪肉腫株SW872)、多発性骨髄腫株(U266)を実験に使用した。MKN74、MKN28、ZR-75-1、SBC-1、AsPC-1は10%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- RPMI(インビトロジェン社)を用いて、RD-ESは15%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- RPMI(インビトロジェン社)を用いて、D341 Medは10%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- MEMα(インビトロジェン社)を用いて、ACHNは10%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- E-MEM(インビトロジェン社)を用いて、SW872は10%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- L15(インビトロジェン社)を用いて、A-204は10%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- McCoy’s 5A(インビトロジェン社)を用いて、U266は0.5%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- 2 ng/mL IL-6(Genzyme社)- RPMI(インビトロジェン社)を用いて培養を行なった。
【0104】
各々の細胞を細胞培養用96穴プレート(NUNC社)に1000〜10000cells/well播種し、同時にジメチルスルホキシド(DMSO:同仁化学研究所)に溶解した、PPARγ活性化作用を持つ製造例8の化合物(以下、化合物Xと記す。図1、図2及び図3においては、CompoundXと記す。)を各wellにDMSO濃度が0.1 %、化合物Xの濃度が0.1、1、10 μMになるように添加した(AsPC-1の場合は0.05、0.5、5 μM)。対照群には0.1%となるようにDMSOのみ添加した。その後細胞培養プレートを5%二酸化炭素存在下37℃で7日間培養した。なお、U266細胞については4日間の培養とした。培養終了後に、最終濃度が10%になるように50% トリクロロ酢酸(和光純薬工業)溶液を細胞培養液に添加し4℃に1 hr放置して細胞を固定した。その後各wellを蒸留水で5回洗浄し、次に0.4% sulforhodamine B(Molecular Probes社)- 1% 酢酸溶液を各wellに100 μL添加して30分間放置し、細胞を染色した。その後各wellを1% 酢酸溶液で5回洗浄し、風乾した。癌細胞が固定染色された各wellに10 mM Trisを150 mL/well添加し、各wellの吸光度A490をMICROPLATE READER Model 3550(BIO-RAD社)を用いて測定した。DMSO処理を行なった対照群の平均吸光度を100%とし、化合物Xの各濃度処理群の平均吸光度のパーセント表示を行なうことによって、化合物Xによる癌細胞増殖抑制活性を検討した。
【0105】
結果を図1、図2及び図3に示す。各グラフの縦軸は吸光度[%]を示し、横軸は化合物Xの濃度[μM]を示す。
【0106】
図1、図2及び図3に示すように、化合物Xは、いずれの癌細胞に対しても有意な増殖抑制活性を示した。このことから、化合物Xはヒト胃癌細胞、ヒト乳癌細胞、小細胞肺癌、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、髄芽細胞腫、ヒト肉腫細胞(横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫)、多発性骨髄腫に対して抗腫瘍活性を示す可能性が強く示唆された。
【0107】
試験例2
ヒト白血病細胞に対する細胞増殖抑制活性の評価
PPARγ活性化作用を持つ製造例8に記載の化合物(化合物Xと記す。)のヒト白血病細胞に対する細胞増殖抑制効果について、American Tissue Culture Collectionより購入したヒト白血病細胞株HL-60およびTHP-1を用いて検討した。これらの細胞は、10%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- RPMI(インビトロジェン社)を用いて培養した。HL-60細胞およびTHP-1細胞を96 wellプレ−トに2 x 103 cells/well 播種し、同時にDMSOに溶解した各種濃度の薬剤をDMSO濃度が0.1%になるように添加した。化合物Xの濃度は10、 25、50 μMで検討した(n=4)。薬剤を添加後、5%二酸化炭素存在下37℃で細胞を5日間培養した。その後Cell Titer 96 Aqueous One Solution Reagent (Promega Corp.) を各40 μl/well添加し、2時間培養後、各wellの吸光度A490をMICROPLATE READER(BIO RAD)を用いて測定した。DMSO処理を行なった対照群の平均吸光度を100%とし、化合物Xの各濃度処理群の平均吸光度をパーセント表示した。この値を100%から差し引くことにより、化合物Xによる癌細胞増殖抑制活性を検討した。
結果を表1に示す。
【0108】
(表1)

HL−60 THP−1
増殖抑制率 増殖抑制率
化合物Xの濃度[μM] % %
10 23 7
25 27* 20
50 45** 48**
* P < 0.05, ** P<0.01 (対薬剤非添加群、Students’ t 検定)
【0109】
表1の結果より、化合物Xがヒト白血病細胞の増殖抑制活性を有意に抑制することが示された。
【0110】
試験例3
ヒト大腸癌細胞に対するin vivo抗腫瘍活性の評価
PPARγ活性化作用を持つ製造例8に記載の化合物(化合物Xと記す。)と、PPARγ活性化作用を持つ製造例1に記載の化合物(化合物Yと記す。)によるヒト大腸癌細胞に対するin vivo抗腫瘍活性を検討した。実験には検疫によってマウス病原微生物が検出されないことを確認したヒト大腸癌株WiDr(American Type Culture Collectionより購入)をヌードマウスBALB/cA Jcl-nu(日本クレア)の腋窩部皮下に移植し継代した腫瘍を5 mm大の小片に細切し、トローカー(日本クレア)を用いてBALB/cA Jcl-nuマウスの右腋窩部皮下に移植した。化合物XならびにYを必要量秤量し、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA:和光純薬工業)に溶解させ、その後少量ずつの5% Emulphor 620(GAF Corporation)-生理食塩水(大塚製薬)を添加して各々の化合物濃度が0.2、1、5mg/mLになるように調製した。なお、DMAは最終濃度2.5%になるようにした。これら各化合物投与液を、WiDr担癌ヌードマウスに対して腫瘍移植翌日よりマウス体重10gあたり0.1mLになるように一日一回、週5回、移植後32日までゾンデ(フチガミ器械店)を用いて経口投与を行なった。移植腫瘍の長径および短経を週2回電子デジタルノギス(MAX-CAL MAX-15:日本測定工具株式会社)を用いて計測し、腫瘍増殖抑制活性を以下に示す計算式により求め、腫瘍増殖抑制率として表した。
各実験群における平均腫瘍体積(mm3)= 1/2 × 短経2 (mm3) × 長径(mm3
腫瘍体積抑制率(%)= {1-(薬剤投与群の平均腫瘍体積/ 非投与対照群の平均腫瘍
体積)} × 100
【0111】
各薬剤投与群による抗腫瘍活性の評価は、腫瘍体積抑制率によって判定した。また、統計的有意差検定は移植後38日における非投与対照群と薬剤投与群の腫瘍体積をStudents’ t検定を行なうことによって判定した。なお、p値が0.05未満の時に両群間で有意差があるとみなした。
結果を表2に示す。
【0112】
(表2)

投与量 腫瘍体積抑制率(%)a) 化合物 [mg/kg] Exp.1 Exp.2
化合物X 50 49* 38*
10 N.D.b) 35* 2 N.D. 31*
化合物Y 50 35* 40*
10 N.D. 32*
2 N.D. 26*
a) WiDr、Day35が判定日
b) N.D.;not done
* b<0.01
【0113】
表2に示す結果から、化合物XならびにYともにヒト大腸癌株に対してin vivoで有意な抗腫瘍活性を示すことが明らかとなった。
【0114】
試験例4
PPARγ活性化作用を持つ化合物と上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤の併用によるヒト非小細胞肺癌株に対するin vitro細胞増殖抑制活性の評価
ヒト非小細胞肺癌株A549に対する、PPARγ活性化作用を持つ製造例8に記載の化合物(化合物Xと記す。)と上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤との併用効果についてin vitro細胞増殖抑制活性を指標に検討した。
【0115】
ヒト非小細胞肺癌株A549細胞(American Tissue Culture Collectionより購入)は10%牛胎児血清(ハイクローンラボラトリーズ社)- RPMI(インビトロジェン社)を用いて培養を行なった。A549細胞を96 wellプレ−トに5 × 102 cells/well 播種し、同時にDMSOに溶解した各種濃度の薬剤をDMSO濃度が0.1%になるように添加した。化合物Xは10 μMを、EGFR阻害剤としてゲフィチニブ (gefitinib、三共株式会社で合成)は0.1、0.5 μMの2濃度を用いて検討した(n=4)。薬剤を添加後、5%二酸化炭素存在下37℃で細胞を7日間培養した。その後Cell Titer 96 Aqueous One Solution Reagent (Promega Corp.) を各40 μL/well添加し、2時間培養後、各wellの吸光度A490をMICROPLATE READER(BIO RAD)を用いて測定した。化合物非添加(DMSO処理のみ)対照群の平均吸光度を100%とし、化合物Xならびにゲフィチニブの各濃度処理群の平均吸光度をパーセント表示した。この値を100%から差し引くことにより、化合物X、ゲフィチニブならびに両者の併用による癌細胞増殖抑制活性を検討した。
結果を表3に示す。
【0116】
(表3)

化合物濃度
化合物X [μM] 0 0 0 10 10 10
ゲフィチニブ [μM] 0 0.1 0.5 0 0.1 0.5
細胞増殖抑制 [%] 0 5 22 12 37* 50*
* P <0.05(併用群対各単剤処理群、Students’ t 検定)
【0117】
表3に示すように、化合物Xの単剤処理(10 μM)によって12%の増殖抑制率を示し、ゲフィチニブでの単剤処理(0.5 μM)では22%の増殖抑制率を示したのみであったが、両薬剤を併用することによって50%の増殖抑制率を示した。この結果から、化合物Xと上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤とを併用することによって相乗的な癌細胞増殖抑制活性を示すことが明らかとなった。
【0118】
試験例5
非小細胞肺癌に対するin vivo抗腫瘍活性の評価
製造例8に記載の化合物(化合物Xと記す。)の非小細胞肺癌に対するin vivo抗腫瘍活性を検討した。
【0119】
実験には検疫によってマウス病原微生物が検出されないことを確認したヒト非小細胞肺癌株A549(American Type Culture Collectionより購入)をヌードマウスBALB/cA Jcl-nu(日本クレア)の腋窩部皮下に移植し継代した腫瘍を5 mm大の小片に細切し、トローカー(日本クレア)を用いてBALB/cA Jcl-nuマウスの右腋窩部皮下に移植した。化合物Xならびに上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤であるゲフィチニブ(gefitinib、三共株式会社が合成)を必要量秤量し、PPARγ活性化作用を持つ製造例8に記載の化合物(化合物Xと記す。)を最終濃度が1 mg/mL になるように0.5%-メチルセルロース溶液に懸濁し、ゲフィチニブを最終濃度が10 mg/mLになるように0.05% Tween 80(東京化成工業株式会社)溶液に調製した。これら各化合物投与液を、A549担癌ヌードマウスに対して腫瘍移植後14日よりマウス体重10gあたり0.1mLになるように一日一回、週5回、移植後60日までゾンデ(フチガミ器械店)を用いて経口投与を行なった。移植腫瘍の長径および短経を週2回電子デジタルノギス(MAX-CAL MAX-15:日本測定工具株式会社)を用いて計測し、腫瘍増殖抑制活性を以下に示す計算式により求め、腫瘍増殖抑制率として表した。
各実験群における平均腫瘍体積(mm3)= 1/2 × 短経2 (mm3) × 長径(mm3
腫瘍体積抑制率(%)= {1-(薬剤投与群の平均腫瘍体積/ 非投与対照群の平均腫瘍 体積)}× 100
【0120】
各薬剤投与群による抗腫瘍活性の評価は、腫瘍体積抑制率によって判定した。また、統計的有意差検定は移植後63日における非投与対照群と薬剤投与群の腫瘍体積をStudents’ t検定を行なうことによって判定した。なお、p値が0.05未満の時に両群間で有意差があるとみなした。
結果を図4に示す。
【0121】
図4に示すように、化合物Xは腫瘍体積抑制率33%の有意な抗腫瘍活性を示した。また、ゲフィチニブも腫瘍体積抑制率56%の有意な抗腫瘍活性を示した。一方、化合物Xとゲフィチニブを併用投与したところ、腫瘍体積抑制率73%と、化合物X単剤投与群、ゲフィチニブ単剤投与群のいずれとも有意差をもった抗腫瘍活性の増強が認められた。以上の結果より、化合物Xがヒト非小細胞肺癌に対して抗腫瘍活性を有すること、ならびに上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤との併用投与による抗腫瘍活性の増強が認められることが明らかとなった。
【0122】
試験例6
PPARγ活性化作用を持つ化合物と、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤との併用によるヒト非小細胞肺癌株に対するin vitro細胞増殖抑制活性の評価
ヒト非小細胞肺癌株A549に対する、PPARγ活性化作用を持つ製造例8に記載の化合物(化合物Xと記す。)と、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤との併用効果を、細胞増殖抑制活性を指標に検討した。
【0123】
ヒト非小細胞肺癌株A549細胞を96 wellプレ−トに5 × 102 cells/well 播種し、同時にDMSOに溶解した各種濃度の薬剤をDMSO濃度が0.1%になるように添加した。化合物Xは10 μMを、VEGFR阻害作用を有し且つRafキナーゼ阻害作用を有するソラフェニブ(sorafenib、三共株式会社で合成)は5 μMを用いて検討した(n=4)。薬剤を添加後、5%二酸化炭素存在下37℃で細胞を6日間培養した。その後Cell Titer 96 Aqueous One Solution Reagent (Promega Corp.) を各40 μL/well添加し、各wellの吸光度A490をMICROPLATE READER(BIO RAD)を用いて測定した。化合物非添加(DMSO処理のみ)対照群の平均吸光度を100%とし、化合物Xならびにソラフェニブの各濃度処理群の平均吸光度をパーセント表示した。この値を100%から差し引くことにより、化合物X、ソラフェニブならびに両者の併用による癌細胞増殖抑制活性を検討した。
結果を表4に示す。
【0124】
(表4)

増殖抑制率[%]
化合物X 15
ソラフェニブ 47
化合物X及びソラフェニブ 71**
** P <0.01(併用群対各単剤処理群、Students’ t 検定)
【0125】
表4に示すように、化合物Xの単剤処理(10 μM)では15%の増殖抑制率を示し、ソラフェニブでの単剤処理(5μM)では47%の増殖抑制率を示したのみであったが、両薬剤を併用することによって71%の増殖抑制率を示した。このとき併用群による増殖抑制活性は各々の薬剤単剤処理群と比較して統計的有意性を示した。この結果から、化合物Xと血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤とを併用することによって相乗的な癌細胞増殖抑制活性を示すことが明らかとなった。
【0126】
試験例7
PPARγ活性化作用を持つ化合物と、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ(VEGFR)阻害剤、Rafキナーゼ阻害剤との併用によるヒト腎臓癌に対するin vivo抗腫瘍活性の評価
PPARγ活性化作用を持つ製造例8に記載の化合物(化合物Xと記す。)のヒト腎臓癌に対するin vivo抗腫瘍活性を検討した。
【0127】
実験には検疫によってマウス病原微生物が検出されないことを確認したヒト非小細胞肺癌株SN12-PM6(九州大学内藤誠二教授より供与)をヌードマウスBALB/cA Jcl-nu(日本クレア)の腋窩部皮下に移植し継代した腫瘍を5 mm大の小片に細切し、トローカー(日本クレア)を用いてBALB/cA Jcl-nuマウスの右腋窩部皮下に移植した。化合物Xと、VEGFR阻害作用を有し且つRafキナーゼ阻害作用を有するソラフェニブ(sorafenib、三共株式会社で合成)とを必要量秤量し、化合物Xを0.5%-メチルセルロース溶液に、ソラフェニブを50%エタノール(関東化学株式会社)- 50%クレモフォア(Sigma)に懸濁し、その後蒸留水(大塚製薬工場)でエタノールならびにクレモフォアが最終濃度12.5%になるように添加した。化合物Xとソラフェニブの最終濃度は各々0.3 mg/mL、10 mg/mLになるように調製した。これら各化合物投与液を、SN12-PM6担癌ヌードマウスに対して腫瘍移植後10日よりマウス体重10gあたり0.1mLになるように一日一回、週5回、移植後56日までゾンデ(フチガミ器械店)を用いて経口投与を行なった。移植腫瘍の長径および短経を週2回電子デジタルノギス(MAX-CAL MAX-15:日本測定工具株式会社)を用いて計測し、腫瘍増殖抑制活性を以下に示す計算式により求め、腫瘍増殖抑制率として表した。
各実験群における平均腫瘍体積(mm3)= 1/2 × 短経2 (mm3) ×長径(mm3
腫瘍体積抑制率(%)= {1-(薬剤投与群の平均腫瘍体積/ 非投与対照群の平均腫瘍 体積)} × 100
【0128】
各薬剤投与群による抗腫瘍活性の評価は、腫瘍体積抑制率によって判定した。また、統計的有意差検定は移植後59日における非投与対照群と薬剤投与群の腫瘍体積をStudents’ t検定を行なうことによって判定した。なお、p値が0.05未満の時に両群間で有意差があるとみなした。
結果を図5に示す。
【0129】
図5に示すように、化合物Xの単剤投与によって有意にヒト腎臓癌株SN12-PM6の増殖を抑制した(腫瘍体積抑制率37%)。ならびにソラフェニブの単剤投与によっても有意な増殖抑制活性を示した(腫瘍体積抑制率43%)。一方、化合物Xとソラフェニブを併用したところ、腫瘍体積抑制率65%と、化合物X単剤投与群、ソラフェニブ単剤投与群のいずれとも有意差をもった抗腫瘍活性の増強が認められた。これらの結果から化合物Xがヒト腎臓癌に対して抗腫瘍活性を有すること、ならびに血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤やRafキナーゼ阻害剤との併用投与による抗腫瘍活性の増強が認められることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤及びRafキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つの抗癌剤と、5−(4−(6−(4−アミノ−3,5−ジメチル−フェノキシ)−1−メチル−1H−べンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)−ベンジル)−チアゾリジン−2,4−ジオン・2塩酸塩とを有効成分として含有する、同時に又は時間をおいて別々に投与するための、癌腫、肉腫又は造血器癌を治療するための抗癌剤であって、EGFR阻害剤がセツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ及びラパチニブからなる群より選択され、VEGFR阻害剤がベバシツマブ、ソラフェニブ及びSU11248からなる群より選択され、Rafキナーゼ阻害剤がソラフェニブである抗癌剤(ただし、抗癌剤がソラフェニブ又はエルロチニブであり、癌種が肺癌である抗癌剤を除く)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−255042(P2012−255042A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222130(P2012−222130)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2007−557880(P2007−557880)の分割
【原出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】