説明

抗真菌医薬組成物

ルリコナゾール等の化合物及び/又はその塩を含有する外用医薬組成物において、1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び/又は二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルとを含有させる。本発明により、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドン以外の溶媒を可溶化・立体安定化の為の溶媒として用いた製剤であって、次の性状を有する製剤を提供する。
1)一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩が立体異性体を有する場合、60℃3週間の保存条件において、生成する当該化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物に関し、詳細には真菌症の治療に有用な抗真菌外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記一般式(1)に表される構造を有する化合物は、優れた抗真菌活性を有している。ルリコナゾールは、一般式(1)に表される構造を有する化合物の一つであり、式中のR、Rがともに塩素原子のものである。ルリコナゾール等の一般式(1)に表される化合物は、優れた抗真菌活性を有していることから、これまで外用投与では治療不可能とされてきた爪真菌症の治療にも応用可能性が指摘されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、この様な爪真菌症の治療用製剤とする場合、一般式(1)に表される化合物の含有量を更に高めることが望まれている。特に爪白癬症の治療用製剤においては、通常の皮膚真菌症の治療に用いる製剤の2倍以上の、具体的には5質量%以上の一般式(1)に表される化合物を可溶化することが望まれ、高濃度の一般式(1)に表される化合物を可溶化し製剤化する為の溶媒の開発が望まれている。
【0003】
しかしながら、その結晶性の良さから、かかる化合物を高濃度に含有する製剤を作るために用いることの出来る溶媒はごく限られたものにならざるを得ない状況が存した。即ち、溶媒の種類によっては、5℃等の低温条件で結晶を析出したり、塗布時に結晶を析出するなどの不都合を生じる場合が存した。
【0004】
【化1】

【0005】
(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R、Rの少なくとも一方はハロゲン原子である。)
【0006】
即ち、ルリコナゾール等を含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドン以外を可溶化・立体安定化の為の溶媒とした、次の性状を有する製剤の開発が望まれていたとも言える。
1)60℃3週間の保存条件において、生成するルリコナゾール等の立体異性体の量は、保存当初のルリコナゾール等の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【0007】
一方、イソステアリルアルコール等の1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、アジピン酸イソプロピル等の二塩基酸のジエステルが医薬製剤化の為の成分として知られており、これらを組み合わせて
用いた医薬製剤としては、軟膏剤(例えば、特許文献3を参照)、ゲル剤(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7を参照)等が存するが、溶液系の製剤は知られていないし、化合物の立体構造維持のために用いられた例もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO/2007/102241
【特許文献2】WO/2007/102242
【特許文献3】特開平08−291049号公報
【特許文献4】特開2005−298635号公報
【特許文献5】特開2005−298388号公報
【特許文献6】特開2006−232856号公報
【特許文献7】特開2005−239678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、ルリコナゾール等の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドン以外の溶媒を可溶化・立体安定化の為の溶媒として用いた製剤であって、次の2)及び3)の性状を有する製剤を提供することを課題とする。また、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩が立体異性体を有する場合、次の1)〜3)の性状を有する製剤を提供することを課題とする。
1)60℃3週間の保存条件において、生成する一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドン以外を用いて高温、低温で一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を安定化させた液体製剤を提供するために、鋭意研究努力を重ねた結果、1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び/又は二塩基酸のジエステルと、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルの併用がこの様な製剤の提供を可能ならしめることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。尚、ここで二塩基酸とは、カルボキシル基を2つ有するジカルボン酸の総称で、炭酸は含まない。
【0011】
[1] 1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩、
2)1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)から選ばれる少なくとも1種、及び
3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種、
を含有する、外用医薬組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R、Rの少なくとも一方はハロゲン原子である。)
[2] 一般式(1)に表される化合物が、ルリコナゾールである、[1]に記載の外用医薬組成物。
[3] 1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステルから選ばれる少なくとも1種が、イソステアリルアルコール及び/又はアジピン酸ジイソプロピルであり、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及び/又はポリオキシエチレンセチルエーテルである、[1]又は[2]に記載の外用医薬組成物。
[4] 次に示す性状を有する、[1]〜[3]の何れかに記載の外用医薬組成物。
1)一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩が立体異性体を有する場合、60℃3週間の保存条件において、生成する当該化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
[5] 更に、炭酸ジエステル、クロタミトン及びN−メチル−2−ピロリドンから選ばれる少なくとも1種の溶媒を含有する、[1]〜[4]の何れかに記載の外用医薬組成物。
[6] 爪白癬治療用の薬剤である、[1]〜[5]の何れかに記載の外用医薬組成物。[7] 1)1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)から選ばれる少なくとも1種、及び
2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種、
の混合物を含有する、下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の可溶化剤。
【0014】
【化3】

【0015】
(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R、Rの少なくとも一方はハロゲン原子である。)
【0016】
[8] 1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステルから選ばれる少なくとも1種と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルの質量比が4:1の混合物を含有する、[7]に記載の可溶化剤。
[9] 一般式(1)に表される化合物がルリコナゾールであり、ルリコナゾールの立体安定化用である、[7]又は[8]に記載の可溶化剤。
[10] [1]〜[6]の何れかに記載の外用医薬組成物の製造方法であって、
一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を溶剤の一部で湿らせ、
1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール、二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル以外の成分を加え、
1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)から選ばれる少なくとも1種、並びにポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を加える、
工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ルリコナゾール等の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドン以外の溶媒を可溶化・立体安定化の為の溶媒として用いた製剤であって、次の2)及び3)の性状を有する製剤を提供することができる。また、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩が立体異性体を有する場合、次の1)〜3)の性状を有する製剤を提供することができる。
1)60℃3週間の保存条件において、生成する一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1>本発明の外用医薬組成物の必須成分である一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩
本発明の外用医薬組成物は、ルリコナゾール、ラノコナゾール等の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を含有することを特徴とする。ルリコナゾールは、化学名(R)−(−)−(E)−[4−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン]-1−イミダゾリルアセトニトリル、ラノコナゾールは、化学名(±)−(E)−[4−(2−クロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン]-1−イミダゾリルアセトニトリルで表される化合物であり、かかる化合物の製造方法は既に知られている(例えば、特開平09−100279号公報など)。
【0019】
本発明の外用医薬組成物は、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を、医薬組成物全量に対し、通常1〜15質量%、好ましくは5〜13質量%含有することを特徴とする。一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩は結晶性に優れ、乳酸などのヒドロキシカルボン酸を添加し、結晶化を抑制した状態においても、用いた溶媒の種類によっては、5℃等、低温下の保存では1質量%以上の含有において結晶を析出する場合が存する。本発明においては、後記1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び/又は二塩基酸のジエステルと、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルとの組
合せにおいてこの様な析出を抑制し、その生体利用性、特に爪中への移行を高め、爪白癬症の治療効果を高めている。爪は組織内への移行が困難な器官であり、有効量が移行するためには、医薬組成物全量に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上の含有量である。又、低温での結晶析出抑制の上限から、医薬組成物全量に対し、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下の含有量である。これらを鑑みれば5〜13質量%程度がより好ましい。
【0020】
上記「その塩」としては、生理的に許容されるものであれば特段の限定はされないが、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酢酸塩等の有機酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩等の含硫酸塩が好適に例示できる。安全性、溶解性の面からより好ましくは、塩酸塩である。
【0021】
<2>本発明の外用医薬組成物の必須成分である高級アルコール及び二塩基酸のジエステル
本発明の外用医薬組成物は、高級アルコール及び/又は二塩基酸のジエステルを必須成分として含有することを特徴とする。ここで、二塩基酸とはカルボキシル基2個を有するジカルボン酸を意味し、炭酸は含まれない。
高級アルコールとしては、1気圧25℃の条件で液状を呈するものが使用できる。かかる性状を呈するものとしては、例えば、炭素数10〜30の分岐状の高級アルコール、炭素数10〜30の不飽和アルコールなどが好適に例示でき、具体的には、イソステアリルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコールなどが好適に例示でき、特にイソステアリルアルコールが好ましい。又、二塩基酸のジエステルを構成する二塩基酸としては、例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数4〜8の二塩基酸などが好適に例示でき、具体的には、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸等が好ましく例示でき、二塩基酸のジエステルを構成するエステルとしては、例えば炭素数1〜20、好ましくは1〜5の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基又はアルケニル基が好ましく例示でき、具体的には、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステルなどが好適に例示できる。該二塩基酸のジエステルは唯一種のエステルでも構わないし、二種以上の混合エステルでも構わない。二塩基酸のジエステルの好ましい具体例としては、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジイソプロピルなどが例示できる。
【0022】
これらの成分は、低温域において一般式(1)の化合物及び/又はその塩の結晶が析出することを抑制する。又、溶解度そのものも向上せしめる。この様な効果を奏するためには、1気圧25℃の条件で液状の高級アルコールであれば、医薬組成物全量に対して、通常10〜30質量%含有することができ、好ましくは15〜25質量%、より好ましくは20質量%含有することが例示できる。又、二塩基酸のジエステルであれば、医薬組成物全量に対して、通常5〜30質量%含有することができ、好ましくは10〜25質量%、より好ましくは12質量%含有することが例示できる。
【0023】
1気圧25℃の条件で液状の高級アルコール、二塩基酸のジエステルは、これらから選ばれる1種を選択することもできるし、2種以上を組み合わせて選択することもできる。量範囲は、それぞれ独立に好ましい量範囲を選択することができるが、これら2種の成分の質量の総和が、医薬組成物全量に対して、5〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%となるように配合することが好ましい。
【0024】
<3>本発明の外用医薬組成物の必須成分であるポリオキシエチレンアルキル(若しくはアルケニル)エーテル
本発明の外用医薬組成物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキ
シエチレンアルケニルエーテルを必須成分として含有することを特徴とする。かかるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルを構成するポリオキシエチレン基は、オキシエチレンの重合度が1〜30が好ましく、2〜25がより好ましい。性状としては、1気圧25℃の条件で液体であることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルを構成するアルキル基又はアルケニル基は、炭素数が8以上のものであって、炭素数が10〜30のものが好ましく、炭素数10〜18のものが特に好ましい。具体的には、ラウリル基、セチル基、イソステアリル基、オレイル基等が特に好適に例示できる。具体的なポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルの例としては、例えば、ポリオキシエチレン(POE)(4.2)ラウリルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(20)イソステアリルエーテルなどが好適に例示できる。
【0025】
かかる成分は、一般式(1)の化合物及び/又はその塩の溶解状態での立体安定性を損なうことなく、その可溶化状態を、5質量%以上の高濃度域において、5℃付近以下の低温域であっても安定に保つ作用を有する。この様な効果を奏するためには、医薬組成物全量に対して、通常1〜30質量%含有することができ、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%含有することが例示できる。特に、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の含有量が10質量%付近においては、該一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の質量と同量又はそれ以上の配合を行うことにより、この効果は顕著に表れる。このため、この様な配合条件を充足することが好ましい。この様な条件下においては、本発明の外用医薬組成物は、5℃付近の低温域、20℃付近の室温条件、40℃付近の高温域の広い温度範囲において、2週間以上、好ましくは1ヶ月以上、より好ましくは3ヶ月以上の保存においても溶状に変化を示さない。立体異性体の生成も殆ど皆無であり、60℃3週間の保存においても保存当初の化合物の全質量に対して1質量%以下である。このため、爪などの吸収性の低い臓器に適用する製剤として好適である。特に、塗布後の蒸散により結晶を析出することが少ないので、爪中への吸収が阻害されない。かかる効果により、生物利用性が著しく向上する。
【0026】
ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルは、これらから選ばれる1種を選択することもできるし、2種以上を組み合わせて選択することもできる。
【0027】
本発明の外用医薬組成物に於けるイソステアリルアルコールなどの1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び/又はアジピン酸ジイソプロピル等の二塩基酸のジエステルと、前記ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルの質量比は7:1〜1:1が好ましく、6:1〜12:5がより好ましい。1気圧25℃で液状を呈する高級アルコールとポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルの質量比は5:1〜1:1が好ましく、4:1が特に好ましい。二塩基酸のジエステルとポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルの質量比は7:1〜1:1が好ましく、ポリオキシエチレンセチルエーテルであれば、質量比は7:1〜1:1が好ましく、6:1が特に好ましい。二塩基酸のジエステルとポリオキシエチレンラウリルエーテルであれば、質量比は4:1〜1:1が好ましく、12:5が特に好ましい。この様な含有比が、ルリコナゾール等に対する優れた溶剤効果をもたらすと同時に、高温保存に於ける立体構造維持効果を発揮する。溶剤効果においては、5℃付近における静置保存での結晶析出の抑制のみならず、爪塗布時の結晶析出など、衝撃による結晶析出への抑制効果も発揮する
【0028】
<4>本発明の外用医薬組成物
本発明の外用医薬組成物は、前記の必須成分を含有し、且つ、通常製剤化のために使用される任意成分の含有を許容される。
この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ
油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーンに分類されないシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ポリオキシエチレンラウリル燐酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、グルコノラクトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;燐酸、クエン酸等のpH調整剤;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、硫酸バリウム等の粉体類;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い、赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の
有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類;アセトン、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール等の芳香族アルコール、クロタミトン、N−メチル−2−ピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸アルキレン、炭酸ジエチル、炭酸ジカプリル等の炭酸ジエステル、トリアセチン、サリチル酸エチレングリコール等の溶媒;乳酸、グリコール酸、クエン酸等のヒドロキシ酸、リン酸等の鉱酸等の安定化剤等が好ましく例示できる。
【0029】
この様な任意成分の内、特に好ましいものとしては、炭酸プロピレンのような環状構造を有する炭酸アルキレン、直鎖の炭化水素基が2つ結合した、炭酸ジカプリルなどの炭酸ジアルキルに代表される炭酸ジエステル、ベンジルアルコールのような芳香族アルコール等から選択される溶媒が好ましく例示できる。
【0030】
本発明の外用医薬組成物としては、炭酸ジアルキル、炭酸アルキレン等の炭酸ジエステル、好ましくは、炭酸アルキレン、より好ましくは炭酸プロピレンを、医薬組成物全量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜5質量%を含有することが安定性を向上させるために好ましい。かかる炭酸ジエステルにおいては、総炭素数は5〜30が好ましく、6〜25がより好ましい。かかる成分は、低温でのルリコナゾール等の可溶化安定性を向上せしめる作用を有し、5℃での2週間、好ましくは4週間以上の保存での結晶析出を抑制し、且つ、高温安定性を向上せしめる作用も有し、60℃での3週間の保存でも立体異性化を防ぎ、立体異性体の生成を1質量%以下に抑える。かかる成分は、ルリコナゾール等と同程度の質量比又は半分質量程度で含有されることが好ましい。炭酸プロピレンは炭酸アルキレンの1種であり、他の炭酸アルキレン、例えば炭酸エチレン等も炭酸プロピレンと同様の効果を有しているので、本願発明の技術的範囲に属する。或いは、炭酸ジエステル、例えば、炭酸ジエチル、炭酸ジカプリル等も炭酸プロピレンと同様の効果を有しているので、本願発明の技術的範囲に属する。2種以上を用いる場合には、炭酸ジエステル量を、炭酸ジエステル類の総量として読み替えることができる。
【0031】
本発明の外用医薬組成物としては、芳香族アルコール、好ましくは、ベンジルアルコールを、医薬組成物全量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは、1〜8質量%、特に好ましくは1〜5質量%を含有することが溶解性・安定性を向上させるために好ましい。かかる成分は、製造時に一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を可溶化させる助剤として有用であり、加えて、低温保存において、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の結晶析出を抑制する作用を有する。この様な効果は、前記量範囲において、発現される。他の芳香族アルコール、例えば、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコールなども、ベンジルアルコールには及ばないものの、同様の効果を奏し、ベンジルアルコールと同様に取り扱うことができる。即ち、本発明の技術的範囲に属する。
【0032】
前記炭酸ジエステル、芳香族アルコールは、これらから選ばれる1種を選択することもできるし、2種以上を組み合わせて選択することもできる。量範囲は、それぞれ独立に好
ましい量範囲を選択することができるが、これら2種の成分の質量の総和が、外用医薬組成物全量に対して、1〜20質量%、より好ましくは2〜18質量%となるように配合することが好ましい。
【0033】
更に、本発明の外用医薬組成物の安定性と、塗工後の結晶析出の抑制効果を向上させるために、乳酸、グリコール酸、クエン酸等のヒドロキシ酸や、リン酸などの鉱酸等の安定化剤を、医薬組成物全量に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%含有させることも好ましい。加えて、立体安定性維持効果の存する、クロタミトン、N−メチル−2−ピロリドンを、医薬組成物全量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%含有させることも好ましい。
【0034】
この様な任意成分と、必須の成分とを用いて、本発明の外用医薬組成物を製造することができる。本発明の外用医薬組成物の製造方法としては、一般式(1)に表される化合物又はその塩に、芳香族アルコール、脂肪族(低級)アルコール等の溶媒成分の一部を加えて、溶媒和させ、次いで溶媒和に用いた残余の溶媒を加え可溶化する方法が好ましく例示できる。前記溶媒和・可溶化させるための溶媒としては、脂肪族又は芳香族アルコールが好適に例示でき、アセトンや炭酸ジエステル、脂肪族(高級)アルコール、二塩基酸のジエステル等は溶解性の向上に用いることが好ましい。この様な可溶化作業には30〜90℃の加温を伴うことが好ましい。前記溶媒和のための溶媒には、溶媒和に用いる溶媒全量の6〜50質量%を充当することが好ましい。斯くの如くの操作を行い、さらに常法に従って処理すれば、本発明の外用医薬組成物を得ることができる。
【0035】
本発明の外用の医薬組成物としては、外用の医薬組成物で使用されている剤形であれば特段の限定無く適用することが出来、例えば、ローション剤、乳液剤、ゲル剤、クリーム剤、エアゾル剤、ネイルエナメル剤、ハイドゲル貼付剤などが好適に例示できる。特に好ましいものはローション剤である。
【0036】
本発明の外用医薬組成物は、ルリコナゾール等の特性を利用し、真菌による疾病の治療又は悪化の予防に用いることが好ましい。真菌による疾病としては、水虫のような足部白癬症、カンジダ、デンプウのような体部白癬症、爪白癬のようなハードケラチン部分の白癬症が例示でき、その効果が顕著なことから、爪白癬のようなハードケラチン部分の処置に用いることが特に好ましい。本発明の外用医薬組成物の効果は爪に特に好適に発現されるが、通常の皮膚真菌症にも及ぶので、本発明の構成を充足する皮膚真菌症に対する外用医薬組成物も本発明の技術的範囲に属する。この様な皮膚真菌症としては、足白癬症や足白癬症の内、かかとなどに現れる角質増殖型の白癬症などが例示できる。上記皮膚真菌症においては、通常の薬剤が効果を奏しにくい角質増殖型の白癬症への適用が本発明の効果が著しく現れるので好ましい。
【0037】
その使用態様は、一日に一回又は数回、疾病の箇所に適量を塗布することが例示でき、かかる処置は連日行われることが好ましい。特に、爪白癬に対しては、通常の製剤では為し得ない量の有効成分であるルリコナゾール等を、爪内に移行せしめることが出来る。これにより、長期間抗真菌剤を飲用することなく、外用のみによって爪白癬を治療することが出来る。又、再発や再感染が爪白癬では大きな問題となっているが、本発明の外用の医薬組成物を、症状鎮静後1〜2週間投与することにより、この様な再発や再感染を防ぐことができる。この様な形態で本発明の外用医薬組成物は予防効果を奏する。
【0038】
上述のとおり、本発明の外用医薬組成物は、次の2)及び3)の性状を有する製剤とすることができる。また、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩が立体異性体を有する場合、次の1)〜3)の性状を有する製剤とすることができる。
1)60℃3週間の保存条件において、生成する一般式(1)に表される化合物及び/又
はその塩の立体異性体の量は、当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃の恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
1)に関しては、例えば、製剤を製造後60℃に3週間保存し、目的の化合物及びその光学異性体を分離できる光学活性な固定相を用いて液体クロマトグラフィーによってそれらを光学分割し、得られたチャートの光学異性体のピークの面積により求めることができる。
2)に関しては、例えば、製剤を製造後20℃の恒温に保持し、製剤が恒温となったら肉眼及び/又は顕微鏡下で液状を観察することにより判定できる。白濁、沈殿等を認めない場合、透明な液状と判定する。
3)に関しては、例えば、製剤を製造後5℃に2週間保存し、肉眼及び/又は顕微鏡下で観察することにより判定できる。肉眼及び/又は顕微鏡下で結晶の析出を認めない場合、結晶を析出しないと判定する。
【0039】
斯くして得られる本発明の外用医薬組成物は、高濃度の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を含有しながら、透明の性状を長期間維持する作用に優れる。又、塗布後に結晶が析出するのを抑制しているが故に、該結晶により、臓器への化合物の配向、移行が阻害されることが抑制される。これにより優れた生物利用性を有することとなる。又、爪のような薬剤配向性の低い臓器にも十分な量が配向するので、爪用の外用医薬組成物として好適である。
【0040】
<5>本発明の可溶化剤
本発明の可溶化剤は、1)1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び/又は二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)から選ばれる少なくとも1種、及び2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種、の混合物を含有することを特徴とする。1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール、二塩基酸のジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルの種類及び含有比は、本発明の外用医薬組成物の項で上記したのと同様のものを用いることができる。
本発明の可溶化剤は、ルリコナゾール等の立体異性体を有する一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の立体安定化作用を有しており、このような化合物の立体安定化作用を有する可溶化剤として用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を示して本発明について更に詳細に説明を加える。
【0042】
[実施例1及び比較例1、2]
以下に示す処方に従って、本発明の外用医薬組成物を作製した。即ち、A、Bの成分をそれぞれ混合しておき、65℃に加温し、Bが可溶化したことを確認した上で、攪拌下徐々にAに加え、攪拌を続けて、可溶化を確認した。これに攪拌下、予め混合し、65℃に加温しておいたCを徐々に加え、可溶化を確認した。これに予め65℃に加温し、可溶化しておいたDを加え、攪拌混合し、可溶化したことを確認した。攪拌冷却し外用医薬組成物1を得た。このものは20℃に12時間保存後、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。
比較例1として、実施例1のイソステアリルアルコールとポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテルとをアジピン酸ジイソプロピルに置換したものを同様に調整しようとしたが、攪拌混合時に著しい結晶の析出を観察した。更に、比較例1のルリコナゾール5質量%の内の2質量%を置換し、比較例1のルリコナゾールを減量した比較例2の調整も行ったが、5℃で1週間の保存において、結晶析出を見た。製造直後の比較例2を爪に塗布
したところ、目視で観察できる程度の結晶が析出した。これより、実施例1の組成物は、イソステアリルアルコールとポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテルとを加えることにより、製剤での結晶析出抑制と、塗布直後の結晶析出抑制がなされていることが判る。
【0043】
【表1】

【0044】
<外用医薬組成物1の特徴>
(1)60℃での安定性
外用医薬組成物1を60℃で3週間保存し、ルリコナゾールの含有量及び立体異性体の含有量をHPLC法にて測定した。ルリコナゾールの定量値は100%であり、SE体[(S)−(+)体]の含有量は0.38質量%、Z体の含有量は0.05質量%であった。この値は、製造直後の値(定量値;100質量%、SE体;0.32質量%、Z体;0.05質量%)と実質的に変わらない値であった。
SE体の測定及び定量方法は以下の通りである。
HPLC(島津製作所製 LC-9Aシステム、HPLC条件:カラム;CHIRALCEL OD-R 4.6×250mm、カラム温度;40゜C、移動相;過塩素酸ナトリウムのメタノール/水混液(4:1, v/v)溶液(7→500)、流速;0.56mL/min、検知;295nm)
Z体の測定方法は以下の通りである。
HPLC(島津製作所製 LC-10VPシステム、HPLC条件:カラム;Inertsil ODS-2 4.6×150mm、カラム温度; 40゜C、移動相;1-ウンデカンスルホン酸ナトリウムの水/アセトニトリル/酢酸(100)混液(54:45:1, v/v/v)溶液(13→10000)、流速;1.0mL/min、検知;295nm)(2)5℃での溶状安定性
外用医薬組成物1を5℃で4週間保存し、肉眼及び顕微鏡下で観察を行ったが、結晶の析出は認めなかった。
【0045】
[実施例2]
以下の処方に従って、実施例1と同様の方法で、本発明の外用医薬組成物である外用医薬組成物2を作製した。このものは20℃に12時間保存後、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。
【0046】
【表2】

【0047】
<外用医薬組成物2の特徴>
(1)60℃での安定性
外用医薬組成物2を60℃で3週間保存し、ルリコナゾールの含有量及び立体異性体の含有量を実施例1に記載のHPLC法にて測定した。ルリコナゾールの定量値は99%であり、SE体の含有量は0.41質量%、Z体の含有量は0.05質量%であった。この値は、製造直後の値(定量値;100質量%、SE体;0.38質量%、Z体;0.01質量%)と実質的に変わらない値であった。
(2)5℃での溶状安定性
外用医薬組成物2を5℃で2週間保存し、肉眼及び顕微鏡下で観察を行ったが、結晶の析出は認めなかった。3週間の保管では結晶析出を肉眼、顕微鏡下の観察ともに認めた。
【0048】
[実施例3]
以下の処方に従って、実施例1と同様の方法で、本発明の外用医薬組成物である外用医薬組成物3を作製した。このものは20℃に12時間保存後、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。
【0049】
【表3】

【0050】
<外用医薬組成物3の特徴>
(1)60℃での安定性
外用医薬組成物3を60℃で3週間保存し、ルリコナゾールの含有量及び立体異性体の含有量を実施例1に記載のHPLC法にて測定した。ルリコナゾールの定量値は99%であり、SE体の含有量は0.42質量%、Z体の含有量は0.08質量%であった。この値は、製造直後の値(定量値;100質量%、SE体;0.37質量%、Z体;0.01質量%)と実質的に変わらない値であった。
(2)5℃での溶状安定性
外用医薬組成物3を5℃で4週間保存し、肉眼及び顕微鏡下で観察を行ったが、結晶の析出は認めなかった。
【0051】
[実施例4]
下記に示す処方に従って、実施例1と同様の方法で、本発明の外用医薬組成物である外用医薬組成物4を作製した。このものは20℃に12時間保存後、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。
【0052】
【表4】

【0053】
<外用医薬組成物4の特徴>
(1)60℃での安定性
外用医薬組成物4を60℃で3週間保存し、ルリコナゾールの含有量及び立体異性体の含有量を実施例1に記載のHPLC法にて測定した。ルリコナゾールの定量値は99.3%であり、SE体の含有量は0.39質量%、Z体の含有量は0.05質量%であった。この値は、製造直後の値(定量値;100質量%、SE体;0.4質量%、Z体;0.02質量%)と実質的に変わらない値であった。
(2)5℃での溶状安定性
外用医薬組成物4を5℃で4週間保存し、肉眼及び顕微鏡下で観察を行ったが、結晶の析出は認めなかった。
【0054】
[比較例3]
下記に示す処方に従って、実施例1と同様の方法で、比較例3の外用医薬組成物を作製した。このものは20℃に12時間保存後、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。しかしながら、製造直後の爪への塗布において、微細な結晶の析出が観察された。これらの結果から、二塩基酸のジエステル及び/又は高級アルコールを含有することが好ましいことが判る。
【0055】
【表5】

【0056】
[実施例5]
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に本発明の外用医薬組成物5を製造した。このものは20℃に12時間保存後、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。また、このものは、5℃4週間の保存でも結晶は析出せず、爪に塗布しても結晶析出を見なかった。
【0057】
【表6】

【0058】
<外用医薬組成物5の特徴>
(1)60℃での安定性
外用医薬組成物5を60℃で3週間保存し、ルリコナゾールの含有量及び立体異性体の含有量を実施例1に記載のHPLC法にて測定した。ルリコナゾールの定量値は98.8%であり、SE体の含有量は0.45質量%、Z体の含有量は0.08質量%であった。この値は、製造直後の値(定量値;100質量%、SE体;0.4質量%、Z体;0.01質量%)と実質的に変わらない値であった。
(2)5℃での溶状安定性
外用医薬組成物5を5℃で4週間保存し、肉眼及び顕微鏡下で観察を行ったが、結晶の析出は認めなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、外用医薬組成物に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩、
2)1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)から選ばれる少なくとも1種、及び
3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種、
を含有する、外用医薬組成物。
【化1】

(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R、Rの少なくとも一方はハロゲン原子である。)
【請求項2】
一般式(1)に表される化合物が、ルリコナゾールである、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステルから選ばれる少なくとも1種が、イソステアリルアルコール及び/又はアジピン酸ジイソプロピルであり、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及び/又はポリオキシエチレンセチルエーテルである、請求項1又は2に記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
次に示す性状を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の外用医薬組成物。
1)一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩が立体異性体を有する場合、60℃3週間の保存条件において、生成する当該化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【請求項5】
更に、炭酸ジエステル、クロタミトン及びN−メチル−2−ピロリドンから選ばれる少なくとも1種の溶媒を含有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の外用医薬組成物。
【請求項6】
爪白癬治療用の薬剤である、請求項1〜5の何れか1項に記載の外用医薬組成物。
【請求項7】
1)1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)から選ばれる少なくとも1種、及び
2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種、
の混合物を含有する、下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の可溶化剤。
【化2】

(但し、式中R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R、Rの少なくとも一方はハロゲン原子である。)
【請求項8】
1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステルから選ばれる少なくとも1種と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種の質量比が6:1〜12:5の混合物を含有する、請求項7に記載の可溶化剤。
【請求項9】
一般式(1)に表される化合物がルリコナゾールであり、ルリコナゾールの立体安定化用である、請求項7又は8に記載の可溶化剤。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか1項に記載の外用医薬組成物の製造方法であって、
一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を溶剤の一部で湿らせ、
1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール、二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル以外の成分を加え、
1気圧25℃で液状を呈する高級アルコール及び二塩基酸のジエステル(但し、炭酸ジエステルを除く)から選ばれる少なくとも1種、並びにポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を加える、
工程を含む、製造方法。

【公表番号】特表2012−523410(P2012−523410A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504268(P2012−504268)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/JP2010/056884
【国際公開番号】WO2010/117091
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507029007)株式会社ポーラファルマ (7)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】