説明

抗真菌性の口腔ケア組成物

【課題】口腔粘膜に対する刺激が少なく優れた抗真菌症作用と口臭を防止する口腔ケア組成物を提供する。
【解決手段】緑茶ポリフェノールの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCG)の高純度(98%以上)組成物を、そのまま用いる。または、これを、天然物抗菌剤のε−ポリ−L−リジンと混合して用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、優れたカンジダ症などの真菌症と、う蝕予防効果を有する口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
21世紀の先進国は少子高齢化に伴い、65歳以上の高齢者が総人口の25%を占めるに至っている。その高齢者の80%以上は何らかの義歯を装着しているのが現状である。義歯は、歯の部分のみならず口蓋粘膜や歯肉の部分が樹脂や金属で造られているため、細菌が付着しやすい素材であり、義歯表面へのプラーク形成により口腔内が不潔になり易い。特に、カンジタ菌は義歯への付着生が高く、カンジタ症、義歯性口内炎、口臭の大きな原因となっている。
真菌による感染症を真菌症と云われているが、一般的な真菌症としては白癬菌による水虫や、カンジダによるカンジダ症、あるいはクリプトコッカスによるクリプトコッカス症などが知られている。口腔カンジダ症は真菌に属するcandida albicansによる口腔粘膜感染症で、口腔真菌症のなかでは最も多い疾患と言われ、別名モリニア症とも言われている。candida albicansは病原性が乏しい口腔内常在菌で、健康人にカンジダ症が発症することは極めて稀と言われている。一般に発生の誘因として悪性腫瘍、血液疾患、免疫不全症、結核および糖尿病などの基礎疾患の存在が挙げられる。このような基礎疾患を持たない場合の罹患者は乳幼児、老人、妊婦などの体力や抵抗力の弱い人が多く、また抗生物質療法によって口腔内常在菌のバランスが崩れ、しばしば菌交代現象として発生する。臨床的特徴として頬、口蓋、口唇および舌の粘膜が好発部位であり、歯肉に発症することは稀と言われている。口腔カンジダ症の治療には、アルカリ性含嗽剤である2%重曹水を用いて洗口させ、0.1%クロルヘキジンあるいはナイスタチン軟膏を患部に塗布する方法が一般的である。重症の場合には抗真菌性抗生物質アンホテリシンBなどの経口投与または点滴静注を併用するなどの治療を行う。また基礎疾患をもつ場合は本症の予後がその病態に大きく左右されるため、基礎疾患に対する適切な治療に努める必要がある。小範囲に限局した慢性肥厚性カンジダ症では、外科的切除の行われることがあるが、口腔カンジダ症の予防は高齢者の誤嚥性肺炎やQOL低下を防止するために重要であり、種々の研究が行われている。
真菌は毒素を分泌しないため、菌の増殖による組織の侵食と炎症反応により病変が生じる。HIV感染により細胞免疫力が低下すると真菌に対する抵抗力が低下し、真菌症であるカンジダ症やクリプトコッカス症の頻度が高くなることが知られている。
一方、茶に含まれているポリフェノールには、抗酸化作用、抗ウィルス作用、抗菌・殺菌作用および細菌毒素阻害作用など多くの生理活性が知られている。茶の苦味や、渋味の主体はタンニンと呼ばれているが、その主成分はカテキン類である。緑茶に含まれているカテキンは8種類あるが、その主なものは(−)−エピカテキン(EC;茶葉全カテキン中の比率=10%)、(−)−エピガロカテキン(EGC;22%)、(−)−エピカテキンガレート(ECG;11%)、(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG;54%)であり、これらの中でEGCGが主成分である。また、これらカテキンの中でEGCGが最も抗酸化活性が高いと言われている。
EGCG等のカテキン化合物は細菌に対する抗菌効果があることが報告されており(特許文献1〜3)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等に対する抗菌効果も報告されている。また、Blanco(非特許文献2)らは、緑茶ポリフェノールの主成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)が細菌の酵素活性を抑制し細菌進入を減少させることができることを報告している。さらには、抗真菌作用に関する報告もある(特許文献3、及び非特許文献1)。なお、数種の他の天然物による抗真菌活性に対しても報告されている(非特許文献5〜7)。
しかし、カテキン化合物単独では、抗真菌作用等が不充分であるとされており(特許文献1〜2)、松樹皮から抽出して得たオリゴメリック・プロアントシアニジンを配合することや(特許文献1)、抗真菌性を向上させたカテキン誘導体を用いること(特許文献2)が提案されている。また、既存の抗生物質に組み合わせて補完的に用いることについても提案されている。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の耐性を調節すべく、EGCGをペニシリンと組み合わせて用いること(非特許文献3)が報告されている。また、アムホテリシンB(AMPH)や、フルコナゾール(FLCZ)との混合物を用いることが提案されている(非特許文献4)。
【特許文献1】特開2004−284975
【特許文献2】特開平9−110615
【特許文献3】特開2002−255810
【非特許文献1】M.Hirasawa et al.,J.Antimicrob.Chemother.,53,225,2004
【非特許文献2】A.R.Blanco,S.La Terra Mule,G.Babini,S.Garbisa,V.Enea,D.Rusciano,(−)Epigallocatechin−3−gallate inhibits gelatinase activity of some bacterial isolates from ocular infection,and limits their invasion through gelatine,Biochim.Biophys.Acta 1620(2003)273−281.
【非特許文献3】P.D.Staplenton,P.W.Tayloy,Methiclillin resistance in Staphylococcus aureus:mechanisms and modulation,Sci.Prog.85(2002)57−72.
【非特許文献4】M.Hirasawa,K.Takada,Multiple effects of green tea catechin on the antifungal activity of antimycotics against Candida albicans,J.Antimicrob.Chemother.53(2004)225−229.
【非特許文献5】F.Mondello,F.De Bemardis,A.Girolamo,G.Salvatore,A.Cassone,In vitro and in vivo activity of tea tree oil against azole−susceptible and−resistant human pathogenic yeasts,J.Antimicrob.Chemother.51(2003)1223−9.
【非特許文献6】M.Donia,M.T.Hamann,Marine natural products and their potential applications as anti−infective agents,Lancet Infect.Dis.3(2003)338−48.
【非特許文献7】P.Lavermicocca,F Valerio,A.Viscnti,Antifungal activity of phenyllactic acid against molds isolated from bakery products,Appl.Environ.Microb.69(2003)624−40.
【非特許文献8】J.V.Higdon,B.Frei,Tea catechins and polyphenols:health effects,metabolism,and antioxidant functions,Crit.Rev.Food Sci.Nutr.43(2003)89−143.
【非特許文献9】J.Jodoin,M.Demeule,R.Beliveau,Inhibition of the multidrug resistance P−glycoproten activity by green tea polyphenols,Biochim.Biophys.Acta1542(2002)149−159.
【非特許文献10】S.Okubo,M.Toda,Y.Hara,T.Shimamura,Antifungal and fungicidal activities of tea extract and catechin against Trichophyton,Nippon Saikingaku Zasshi 46(1991)509−14.
【発明の開示】

【発明が解決しようとする課題、及び、課題を解決する為の手段】
安全性が高い物質である天然物の緑茶ポリフェノール一種であるEGCG単独、もしくはこのEGCGとポリリジンを配合することにより、カンジタ菌増殖抑制効果に優れ、ひいてはカンジタ症の予防、カンジタ菌による義歯性口内炎や、口臭の予防に有効な口腔ケア組成物を提供する。
過去数年間真菌感染の事例が増加しており、いろいろな新しい抗真菌剤が患者治療に使用されているが、カンジダ種と同じ薬剤耐性菌種が依然として増加する趨勢にある。アムホテリシンB(Amphotericin B;AMPH)はポリエン(Polyene)系抗生物質種の一つであり、フルコナゾール(Fluconazole;FLCZ)はアゾール(Azole)系抗真菌剤であるが、これらは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して強力な抗真菌活性を示すことが知られている。しかし、これら抗真菌剤は副作用があり、カンジダ種の中には抗真菌耐性臨床分離菌種が報告されている。
従って、効果的であると同時に安全な非抗生製剤の開発が抗生剤敏感及び抗生剤耐性カンジダ菌種の全てを除去する上でも切実な問題である。
本件発明者ら、上記問題点に鑑み、カテキン類その他の安全な天然化合物を用いて、抗生物質による抗真菌性外用剤を代替すべく鋭意検討を行った。その結果、偶然、純度98%以上のEGCGを用いた場合に、非常に優れた口腔内カンジダ症に対して効果が得られることを見出した。このような性質は、低純度のEGCG(例えば純度90%以下)では全く得られないものでありるが、その機構は不明である。
以上のように、本発明は、カンジダ・アルビカンス対して抗真菌効果が得られ、かつ、副作用や耐性菌誘発の問題を生じない抗真菌性タブレット及びジェル剤の口腔ケア組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
本発明の組成物は、ポリフェノール化合物として、実質上、純度98%以上のEGCGのみを含む。すなわち、ポリフェノール成分のうち、98%以上がEGCGとなっている。他の態様において、本発明の組成物は、(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)の純度が98%以上であるポリフェノール成分と、天然物抗菌剤のε−ポリ−L−リジンとを、99/1.0〜1.0/99の重量比で含むことを特徴とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)または、ポリリジンを含有する口腔ケア組成物に、トレハロース及び糖アルコールを配合することにより、EGCG及びポリリジン由来の歯牙表面へのミュータンス菌付着抑制効果がトレハロース及び糖アルコールの併用により相乗的に向上し、極めて優れたミュータンス菌付着抑制効果が発揮され、しかも、EGCGやポリリジン由来の苦味に伴う使用感の悪さを効果的に改善でき、安全性に問題のないEGCGやポリリジンを配合して、優れたう蝕予防効果を有し、かつ良好な使用感を有する口腔ケア組成物を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【発明の効果】
既存の一般的な抗生物質系の抗真菌剤と同程度の抗真菌効果が得られ、かつ、副作用や耐性菌誘発の問題を生じないため、特に義歯装着の高齢者に対して誤嚥性肺炎の予防に最適である。さらに、加齢臭や食後の口臭防止の効果も期待できる。
【発明を実施する為の最良の形態】
本発明におけるポリフェノールについては、限定されない。カテキン類、タンニン類、プロアントシアニジン又はリスベラトロールが使用され得る。特に好ましいのは、(−)−エピガロカテキン−3−0−ガレート(EGCg)、(−)−ガロカテキンガレート(GCg)、(−)−エピカテキンガレート(ECg)である。エピガロカテキンガレート(EGCg)、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレートの純度は90重量%以上が望ましく、98重量%以上がより望ましい。また、ポリフェノールは、例えば、茶、ワイン、チョコレート、サボテン、海藻、野菜(たまねぎ(最外部の黄褐色の皮)、アロエ抽出物パセリの葉、白色野菜など)、柑橘類(温州みかん、だいたい、ポンカンの皮、夏みかんの皮、グレープフルーツ、レモンなど)、リンゴなどの果実類、穀物(こうりゃん、大豆、そば、小麦など)、ダリアの花などの種々の食品・植物に多く含まれているので、茶抽出物、海草抽出物、果実抽出物、サボテン抽出物又はワイン抽出物などの抽出物でも良い。例えば、茶抽出物は、水、エタノール、酢酸エチルなどの溶剤を用いて茶の葉より抽出することで得られ、エピガロカテキンガレートを最も多く含むカテキン類を主成分とする。また、得られた茶抽出物あるいは市販の茶抽出物から、クロロフィルの除去、さらにカラムクロマトグラフ法による精製をすることによって、高純度のエピガロカテキンガレート(EGCg)を得ることが可能である。
また、本発明におけるε−ポリ−L−リジンは、具体的には、例えば、次のようにして得られらるものを用いることができる。日本特許第3525190号または日本特許第3653766号に記載の菌株であるストレプトマイセス・アルブラス・サブスピーシーズ・リジノポリメラスを用いる。そして、グルコース5重量%、酵母エキス0.5重量%、硫酸アンモニウム1重量%、リン酸水素二カリウム0.08重量%、リン酸二水素カリウム0.136重量%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05重量%、硫酸亜鉛・7水和物0.004重量%、硫酸鉄・7水和物0.03重量%、pH6.8に調整した培地にて培養し、得られた培養物からε−ポリリジンを分離・採取したものを利用できる。
本発明において、ポリフェノールとポリリジンとの濃度は、0.001−0.1重量%(10〜1000ppm)が好ましい。より好ましい濃度は0.005〜0.1重量%(50〜1000ppm)である。さらに好ましくは0.005〜0.03重量%(50〜300ppm)である。また、ポリリジンとポリフェノールの混合割合は、ポリリジン/ポリフェノール=0.1−99.1/99.1−0.1で任意に用いることができる。
本発明においてポリフェノールとポリリジンとを安定化させるため、L−アスコルビン酸および二亜硫酸カリウムが添加されていても良い。L−アスコルビン酸の濃度は0.0001〜0.3重量%(1〜300ppm)である。二亜硫酸カリウムの濃度は0.0001〜0.3重量%(1〜300ppm)である。
本発明の口腔ケア組成物は、トローチ、ジェルあるいはチューインガム等の形態とすることができ、それぞれの剤型の特徴に応じその他の成分を本発明の効果を損ねない範囲で使用し、通常の方法で調製することができる。 本発明の口腔ケア組成物には、用途に応じて抗酸化剤、安定化剤等の薬剤が適宜添加されても良い。そのような成分として、以下が挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;抗酸化剤(例えば、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ビタミンEまたはグルタチオン);低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);単糖類、二糖類、及び多糖類の化合物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、ポリオキシエチレン・ソルビタンエステル(Tween(商標))、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体(プルロニック(pluronic、商標))またはポリエチレングリコール);血栓溶解剤;血管拡張剤;組織賦活化剤;カテコラミン;PDEII阻害剤;カルシウム拮抗剤;βブロッカー;ステロイド剤;脂肪酸エステル;抗炎症剤;抗アレルギー剤;抗ヒスタミン剤等。
本発明のタブレット及びジェル剤の口腔ケア組成物は、高純度EGCG(純度98%以上)としてのポリフェノール成分のみ、または、これと天然物抗菌剤のε−ポリ−L−リジンとの混合物のみを、実質上の有効成分とするものである。但し、有効成分の効果を高めたり、その他の作用を行うための各種成分を含有することができる。
タブレットには苦み抑制剤としてβシクロデキストリンを含むことができる。また甘味料および賦形剤としてアスパルテーム、マルチトール、トレハロース、蔗糖脂肪酸エステル、キシリトール、グルコースなどを含むことができる。タブレットの大きさは直径10mmから20mmで、重さは1gから2gである。
ジェルはヒアルロン酸やゼラチン、甘味料としてアスパルテーム、マルチトール、トレハロース、蔗糖脂肪酸エステル、キシリトール、グルコースなどを含むことができる。以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を制限しない。
【実施例1】
試験にはボランティア14名が被験者として参加した(被験者選定に当たり、60歳以上の健康な男女60名のスクリーニング検査を実施し、口腔内カンジダ菌数を測定したところ、14名からカンジダ菌が検出された)。被験者の内訳は男性12名、女性2名で平均年齢69歳であり、年齢構成は50歳代1名、60歳代3名、70歳代10名であった(表1)。
この被験者に対して「高純度緑茶カテキン」タブレットの試食を行った。タブレットは3種類用意した。すなわち、高純度緑茶カテキン50mg含有タブレット、高純度緑茶カテキン100mg含有タブレットおよび高純度緑茶カテキン0mg含有タブレットを用意し、おのおの14日間、朝昼晩と一日3回試食させた。口腔内カンジダアルビカンス(Candida albicans)の測定はおのおの14日間の試食中、試食開始日、試食開始3日目、7日目、14日目に舌背を綿棒で数秒拭い、ただちにカンジダディテクター(亀水化学工業社製)に塗抹し、37℃で2日間の培養に供した。カンジダディテクターはサブロー培地を基本とし、コロニー数ならびに培地の色変化によってカンジダアルビカンスを検出判定する。培養後、検体のコロニー数、培地の色変化を測定した。
【実施例2】
<評価結果>
カンジダアルビカンスは、スクリーニング試験の結果、14名の被験者全員の口腔内から検出され、コロニー数から判断して、14名の被験者のうち6名では「高純度緑茶カテキン」50mg含有タブレットを口腔に貯留することでカンジダアルビカンスは減少傾向を認めた(図1)。「高純度緑茶カテキン」100mg含有タブレットを口腔に貯留することでもカンジダアルビカンスは減少傾向を認めた。この6名の被験者の内、義歯装着者は5名であった。14名の被験者のうち6名では口腔内のカンジダアルビカンスは少なく、効果判定では「どちらともいえない」であった。14名の被験者のうち残りの2名ではカンジダアルビカンスは減少傾向を示さず、「効果なし」と判定した。
14名の被験者に「高純度緑茶カテキン」タブレット試食に関する日誌を記載させた結果、日誌から判断して、試食に関してコンプライアンスは良好であったと考える。
<考察>
EGCGは緑茶抽出物に存在するカテキン類の代表的成分として抗菌作用及び特定抗生剤の効果を増強する機能を持つことが知られている。いくつかの病原性細菌に対するEGCGの抗菌作用は既に多数報告されている。(非特許文献2〜3、8〜9)
真菌に対しては大久保らは(非特許文献10)2.5%紅茶抽出物がTrichophyton mentagrophytesとT.rubrumの発育を抑制するが、カンジダ・アルビカンあるいはCryptococus neoformansの発育は10%濃度でも抑制できないと報告している。しかし、平沢らはEGCGを含んだカテキンに対するカンジダアルビカンの感受性を報告している(非特許文献4)。
口腔カンジダ症は主にカンジダアルビカンス(Candida albicans)が原因で生じるが、カンジダアルビカンスは健康人の口腔内にも若干存在しており、通常の場合は粘膜角質層がバリヤーとなり、症状はでない。ところが、そのバリアー機能が劣ってくると種々のファクターが加わり日和見的に発症してくる。全身的ファクターには抗生物質の長期投与による菌交代症や、宿主の抵抗力の低下、ステロイド剤の投与、AIDSによる免疫機能低下などが挙げられる。さらに結核や糖尿病などの基礎疾患や、老人などのようにからだの抵抗力が弱い場合に発症しやすいと言われている。一方、局所的ファクターには、口腔癌などに対する放射線照射、シェーグレン症候群、口腔乾燥症や不良補綴物、すなわち義歯の不適合による褥瘡性潰瘍、糜爛などが考えられる。
発症部位は舌や頬の粘膜に最も多く、口蓋粘膜や口唇などいずれの部位にも発症する。臨床症状としては、軽度の場合は白色または乳白色の苔状で散在し、無症状のことも少なくないが、症状が進行すると、図2のようにそれぞれが互いに癒合、拡大し、舌の疼痛や灼熱感、味覚異常、嚥下困難等の多彩な自覚症状が認められる。このような白苔は、軽度の場合にはガーゼなどで拭うと簡単に取り除けるが、菌糸が粘膜層にまで達すると次第に取り除きにくくなり、無理に取り除こうとすると出血する場合がある。また、さらに悪化すると口腔や咽頭、食道のカンジダによって誤嚥性肺炎として肺カンジダ症を発症する場合もあり、さらに全身の抵抗力が著しく減弱すれば、カンジダが血行、リンパ行性に全身に回り、多臓器不全を形成することもありえる。
そのため、その治療としては、まず基礎疾患の治療を行い、その誘因を除去し、全身状態の改善を図ることが大切で、それとともに、口腔内に病変が限局する場合は局所作用のゲル剤やシロップ剤を用い、さらに全身性では抗真菌剤の投与を考慮する。
以上、口腔カンジダ症の概略を述べたが、予防的な面から考えると喫煙や過度の飲酒、貧しい食生活など全身の健康に影響を与える生活習慣は、口腔および顎顔面領域の健康にも影響し、口腔カンジダ症などの疾病に対するリスクを高めることになる。局所的な面で言えば、歯周病の治療、歯石除去は随時行っていく必要があり、ブラッシングなどの口腔清掃、義歯などの補綴物の清掃は日常的になされるべきであろう。今回の結果から、「高純度緑茶カテキン」タブレットは口腔内のカンジダアルビカンスに対して、抑制的に働くことがわかり、予防的に用いると効果的であると考えることができる。また、「効果あり」と判定した被験者の中で5名が義歯を装着しており、タブレットの効果が義歯装着者にも及ぶことから、義歯に付着したカンジダアルビカンスに対しても抑制効果が期待できる事が示唆された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)の純度が60%以上であるポリフェノール成分からなることを特徴とする抗真菌性のからなる口腔ケア組成物。
【請求項2】
(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)の純度が60%以上であるポリフェノール成分と、天然物抗菌剤のε−ポリ−L−リジンとを、99/1.0〜1.0/99の重量比で含むことを特徴とする抗真菌性の口腔ケア組成物。

【公開番号】特開2009−269899(P2009−269899A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147440(P2008−147440)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(506224252)株式会社バイオベルデ (12)
【Fターム(参考)】