説明

抗真菌性ネイルコート及び使用方法

爪の真菌感染症、特に爪甲真菌症を回復又は予防するための二重作用抗真菌性ネイルコート組成物及び使用方法が開示される。毎日の殺真菌剤投薬計画に適した一液型又は二液型の形態の組成物の実施態様が開示される。好ましい抗真菌性ネイルコート組成物は、殺菌有効量の抗真菌剤、浸透促進量の実質的に不揮発性の浸透促進剤、皮膜形成量の親水性重合体、及び医薬適合性の揮発性担体を含有してなる。この組成物は、真菌に感受性の爪又は感染した爪に接触すると、実質的に水溶性の殺真菌性被膜を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年3月21日付けで出願された特許出願番号第60/456,684の米国仮出願の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、足指の爪又は指の爪、及びこれに隣り合った皮膚の爪甲真菌症を回復又は予防するのに有用な局所抗真菌性組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、二重作用抗真菌性ネイルコート組成物及び該抗真菌性組成物を真菌に感受性の爪又は感染した爪及び/又は隣り合った皮膚に施用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚、毛髪、爪又は粘膜の表在性真菌感染症は、全ての人々の間で未だに極めてありふれたものである。特に、爪甲真菌症は爪の真菌感染症である。爪甲真菌症は、頻繁に生じ、40歳から60歳の年齢の間の最大約15%の人を冒す。幾つかの評価は、爪甲真菌症が南アメリカの全住民の約6から約13%を冒し、米国では約4.9から12.3百万の人々が冒されていることを示唆している。欧州では、爪甲真菌症の推定される全罹病率は、約3から約10%の範囲内にある。
【0004】
抗真菌剤の爪を通って爪床及び周囲の皮膚への送達は、主として使用される被膜形成性の水不溶性重合体が乾燥被膜から爪及び皮膚中への薬剤の拡散を制限すること及び従来のネイルラッカー組成物は爪及び周囲の皮膚の両方に薬剤を最適抗真菌活性に十分な量で送達するための浸透促進の最適バランスを有していないことから、ネイルラッカーの形態では爪甲真菌症(指の爪、足指の爪、及び直に接している周囲の皮膚の感染症)の治療に対する有効性は小さかった。
【0005】
爪の真菌感染症(一般に、爪甲真菌症と呼ばれる)は、皮膚糸状菌によって最も頻繁には引き起こされるが、糸状菌やカンジダ種によっても引き起こされ得る。爪甲真菌症は、男性や高齢者では主として指の爪よりもむしろ足指の爪に存在する。爪甲真菌症は、最も一般的には紅色白癬菌(Trichophyton. rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton. mentagrophytes)及びエピデルモフィトン・フロッコーズム(Epidermophyton. floccusum)によって引き起こされる。非皮膚糸状菌による爪甲真菌症は、通常は、カンジダ種、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によって引き起こされ、おそらくは免疫応答性が保たれている人の足指の爪よりも指の爪において侵襲性の爪の病気を引き起こしやすい。
【0006】
爪甲真菌症は、ある種の病気、例えば糖尿病や個体が免疫抑制状態である場合の他の病気を有する個人において医学的意義を有する。また、爪甲真菌症は、歩行などの日常生活動作に相当な望ましくない影響を及ぼし、自然寛解は稀である。爪甲真菌症の現行の治療としては、抗真菌剤、例えばイトラコナゾール〔Ortho Biotech Products L.P.社から商品名SPORONOX(スポロノックス)(登録商標)として供給される〕、及びテルビナフィン〔Novartis Pharmaceuticals Corporationから商品名LAMISIL(ラミシール)(登録商標)として供給される〕の経口投与が挙げられる。イトラコナゾール及び塩酸テルビナフィンは、イミダゾール類(例えば、ケトコナゾール)と比べて、著しい治癒率、短い治療計画及びより低い水準の有害事象を提供するが、臨床上重要な薬物相互作用が生じ得、治療期間は少なくとも数ヶ月を必要とする。従って、爪甲真菌症の非経口管理については継続的な要求と要望がある。
【0007】
抗真菌剤、すなわち水不溶性の被膜形成重合体を含有する8%局所溶液としてDermik Laboratories、Inc.から商品名PENLAC(商標)Nail Lacquerとして市販されているシクロピロクスを用いる一つの試みがなされており、Bohnらの米国特許第4,957,730号公報に記載されている。水不溶性の被膜形成重合体を利用する別の抗真菌性ネイルラッカー組成物が、Samourの米国特許第6,495,124号公報に記載されている。さらに別のネイルラッカー製剤は、5%のアモロルフィン(モルホリン誘導体)を含有し、商品名LOCERYL(商標)としてRoche Laboratoriesによって製造されている。しかし、慣用のネイルラッカー組成物に使用されるような水不溶性の皮膜形成重合体は、水不溶性重合体の急速乾燥性(1分未満)溶液であり、爪を取り囲む皮膚領域にブラシ塗りされると、皮膚領域を刺激する傾向がある。また、このような伝統的な水不溶性、急速乾燥性の皮膜形成重合体は、高粘度のネイルラッカー組成物を生成し、従って治療効果の低下を招く薄膜と爪甲の間の抗真菌剤の活性交換のための移動性と時間を制限する。ある場合には、ネイルラッカーは、爪床を巻き込むことなく軽度の爪甲真菌症の治療にのみ適しており、爪床を含む重度の爪甲真菌症には全身療法がさらに必要とされる。
【0008】
水不溶性脂肪成分、可溶化剤及び急速乾燥性の水溶性ポリビニルピロリドン、又は酢酸ビニル共重合体及びこの四元重合体を含有する組成物から施用されるアゾール誘導体を0.5から1%濃度で用いる試みが、カナダ特許第1,175,355号公報及び欧州特許第055,397号公報に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の二重作用抗真菌性局所ネイルコート組成物及び方法は、このような治療を必要としている哺乳動物の種々の重症度の爪甲真菌症の治療に適した殺真菌剤投与計画(regimen)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
爪及び周囲の皮膚の真菌感染症、特に爪甲真菌症を回復又は予防するための抗真菌剤を含有する二重作用抗真菌性ネイルコート組成物が開示される。本発明の組成物は、有効成分を、爪甲全体に及び周囲の皮膚組織全体に送達する。また、二重作用抗真菌性ネイルコート組成物を真菌に感受性の爪又は感染した爪に局所施用する方法が開示される。抗真菌剤の生体利用性は、本発明の実施によって最適化される。
【0011】
抗真菌性ネイルコート組成物は、「一液」型及び「二液」型組成物として配合される。
【0012】
好ましい一液型の抗真菌性ネイルコート組成物の実施態様は、
殺菌有効量の抗真菌剤;
N,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール、及びこれらの混合物からなる群の中から選択される浸透促進量の実質的に不揮発性の浸透促進剤;
皮膜形成量の親水性重合体;及び
医薬適合性の揮発性有機担体
を含有してなる。
【0013】
一液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物において、有機担体は、ネイルコート組成物が真菌に感受性の爪又は感染した爪又は隣り合った皮膚と接触すると、薬剤、すなわち抗真菌剤を実質的に均一に分配することを促進し、施用後約1から5分以内に揮発して真菌感染症の持続的な回復及び防止のために爪及び隣り合った皮膚組織上に薬剤及び1種又はそれ以上の実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有する実質的に水溶性の殺真菌性薄膜を提供することが好ましい。
【0014】
別の好ましい二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、
抗真菌性プライマーコートを提供するための、医薬適合性の揮発性有機担体に分散させた殺菌有効量の抗真菌剤を含有してなる第一の抗真菌性ネイルコート組成物と、
抗真菌性薄膜を提供するための、皮膜形成量の親水性重合体、殺真菌有効量の抗真菌剤及び医薬適合性の揮発性有機担体とを含有してなり及び第一の抗真菌性ネイルコート組成物又は第二の抗真菌性ネイルコート組成物のいずれか一つが場合により実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有するものである二液型組成物である。
【0015】
二液型の二重作用組成物において、抗真菌剤は、真菌に感受性の爪又は感染した爪と接触すると第一の抗真菌性ネイルコート組成物から爪に急速に放出されて、殺真菌性プライマーコートを提供する。第二の抗真菌性ネイルコート組成物は、この後に前記の殺真菌性プライマーで被覆された爪と接触すると、爪の上に殺真菌性薄膜を提供する。殺真菌性薄膜は、長期間にわたって放出させることができる追加の抗真菌剤用の貯蔵所(depot)を提供し、プライマーコートから爪への抗真菌剤の徐放を維持して抗真菌剤の局所生体利用性を最適化し及び環境から感染した爪への真菌胞子のさらなる接触性を最小限にする爪保護層を提供する。
【0016】
抗真菌剤は、アリルアミン系抗真菌剤及びアゾール系抗真菌剤からなる群の中から選択されることが好ましい。アリルアミン系抗真菌剤テルビナフィン(通常、塩酸テルビナフィンと呼ばれる)が特に好ましい。アゾール系抗真菌剤としては、アゾール類、イミダゾール類及びトリアゾール類が挙げられる。
【0017】
親水性重合体は、ビニルピロリドン単量体単位からなる皮膜形成重合体、例えば単独重合体(例えば、ポリビニルピロリドン)、共重合体、及びこれらの複合物、ガム、樹脂などであり得る。親水性重合体はポリビニルピロリドン(PVP)であることが好ましい。
【0018】
揮発性有機担体は、2から約5個の炭素原子を有する医薬適合性の脂肪族アルカノールであることが好ましく、エタノールであることがさらに好ましい。
【0019】
実質的に不揮発性の浸透促進剤は、ドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート(DDAIP)、ベンジルアルコール及びこれらの組合せであることが特に好ましい。
【0020】
本発明の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、1種又はそれ以上の浸透促進剤を、爪及び周囲の皮膚中の抗真菌薬の抗真菌濃度を達成するのに有効な量で含有することができ、また治療の効果を増強するために補助抗感染薬、例えば抗菌剤、消毒剤などを含有することができる。
【0021】
足指の爪又は指の爪の真菌感染症は、開示された二重作用抗真菌性局所ネイルコート組成物を本明細書に記載の方法で一液型又は二液型の形態で施用する殺真菌剤投与計画によって回復又は予防し得る。本発明の方法は、真菌感染症を回復又は予防するのに必要な限りは、1日に少なくとも1回行うことが好ましい。
【0022】
二重作用抗真菌性ネイルコート組成物を使用する本発明の実施は、特に足指の爪又は指の爪の爪甲真菌症の治療において、抗真菌薬の局所生体利用性を高めるために所望される。都合のよいことに、二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、治療期間全体を短くすることができ、経口治療に通常関連した全身の有害事象を回避又は排除し、及び臨床効果を改善することができる。
【0023】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明の抗真菌性ネイルコート組成物に適用される「二重作用」という用語は、該ネイルコート組成物が、爪及び隣り合った皮膚組織の表面に抗真菌薬を含有する水溶性の殺真菌性被膜を提供し、並びに爪及びこの周囲の皮膚組織への抗真菌薬の浸透を促進する実質的に不揮発性の浸透促進剤を提供することを意味する。
【0024】
本発明の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物に有用な抗真菌剤に関して、抗真菌剤が足指の爪又は指の爪及び周囲の皮膚の感染症、特に爪甲真菌症を引き起こすことが公知である真菌類に対して効力がある限りは、特に制限はない。抗真菌剤のリストは、以下に限定されることなく、例えば、The Merck Index(メルクインデックス)(2001)の第31版の「Therapeutic Category and Biological Activity Index section」の「抗真菌薬(抗生物質)」及び「抗真菌薬(合成)」の標題に見出し得、本明細書に参照により組み込まれる。
【0025】
適切な抗真菌剤としては、例えばアリルアミン類、例えばテルビナフィン、ナフチフィン及びブテナフィン;並びにアゾール類、例えばイミダゾール類及びトリアゾール類などが挙げられる。イミダゾール類としては、ケトコナゾール、ビフォナゾール、ブトコナゾール、クロルダントイン、クロルミダゾール(chlormidazole)、クロコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、エニルコナゾール、フェニコナゾール、フルトリマゾール、イソコナゾール、ラノコナゾール、ミコナゾール、ネチコナゾール、オモコナゾール、硝酸オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、及びチオコナゾールが挙げられる。トリアゾール類としては、フルコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、サペルコナゾール、テルコナゾール及びボリコナゾールが挙げられる。前記アリルアミン、テルビナフィン;前記イミダゾール、ケトコナゾール;並びにトリアゾール類、フルコナゾール及びイトラコナゾールが特に好ましい。
【0026】
説明したような本発明は、特にテルビナフィン及びこの酸付加塩に適応できるが、これらに限定されない。テルビナフィンを使用する本発明の実施が望ましい。この理由は、この抗真菌薬の局所生体利用性を高めることが足指の爪又は指の爪の爪甲真菌症に有用であるからである。都合のよいことに、二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、真菌感染症の標的部位に施用されることから、治療期間全体を短くすることができ、経口治療に通常関連した全身の有害事象を回避又は排除し、及び臨床効果を改善することができる。
【0027】
テルビナフィンは、(E)−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−1−ナフタレンメタンアミンとして化学的に示され、次の構造式:
【0028】
【化1】

を有する。
【0029】
本明細書で使用する「テルビナフィン」という用語は、本化合物の遊離塩基の形態及びこの化学療法的に許容し得る酸付加塩を包含する。適切な塩の形態としては、塩酸塩、水素フマル酸塩、又はナフタリン−1,5−ジスルホン酸塩が挙げられる。本発明の目的には、無機酸塩、すなわち塩酸テルビナフィンが特に好ましい。塩酸テルビナフィンは、ナフチフィンに関連した合成抗真菌剤アリルアミンであり、経口投与用の錠剤に製剤されたLAMISIL(登録商標)(Novartis Pharmaceuticals Corporation)という名前で販売されている市販の抗真菌薬の有効成分(250mgベースに相当する)である。プロペニルアミン類(テルビナフィンが挙げられる)の製造は、米国特許第4,755,534号公報に記載されており、本明細書に記載の医薬用途の局所投薬剤形は、0.05から5重量%、特に1重量%の濃度の軟膏又はクリームである。
【0030】
本発明は、皮膚糸状菌が宿る足指の爪及び指の爪並びに周囲の皮膚の種々の重症度の爪甲真菌症を回復するための局所治療に基づいた総合的治療プログラムにおいてテルビナフィンの臨床及び菌学的効果の最適化を可能にする。総合的治療プログラムは、爪甲真菌症を回復又は予防するために以下に記載のようにして二重作用抗真菌性ネイルコート組成物を局所施用する毎日の投与計画を含むことが好ましく、少なくとも毎月、結合されていない(unattached)感染爪の除去を含むことが好ましい。
【0031】
二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の実施態様は、「一液型」組成物として又は「二液型」組成物として処方することができる。本明細書で使用する「一液型組成物」という用語は、親水性重合体及び実質的に不揮発性の浸透促進剤が爪及び隣り合った皮膚組織の表面に持続的な回復又は抗真菌予防効果を提供するための薬剤の補給所として実質的に均一な殺真菌性薄膜を提供できるように、抗真菌性ネイルコート組成物が、揮発性担体を含有して爪及びこの周囲の皮膚と接触すると薬剤の初期分配を促進し、次いで比較的迅速に(すなわち、約0.5分から約10分の範囲の時間内に)揮発することを意味する。従って、殺真菌性薄膜は、ネイルコートが例えば水洗又は水浴によって取り除かれるまで爪と接触し続ける。このようにして、従来の抗真菌性ネイルラッカーが直面した重合体担体の望ましくない付着(build−up)が回避される。
【0032】
一液型組成物は、必要に応じて毎日少なくとも1回施用されることが好ましく、水洗を介在させて又は介在させずに再施用することができる。
【0033】
一液型の抗真菌性爪組成物において、通常存在する抗真菌剤の量は、約0.1重量%から約20重量%の範囲、好ましくは約0.5重量%から約15重量%の範囲、最も好ましくは約1重量%から約5重量%の範囲にある。
【0034】
本明細書で使用する「二液型抗真菌性爪組成物」という用語は、二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の製剤を示し、このそれぞれは連続して毎日少なくとも1回施用される。従って、二液型の抗真菌性爪組成物は、爪甲及び隣り合った組織領域の中に、これらを横切って及びこれらの表面に、テルビナフィンを比較的短時間で実質的に均一に浸透させるための殺真菌性プライマーコートを提供する第一の抗真菌性ネイルコート組成物と、この後に前記殺真菌性プライマーで被覆された爪の上に実質的に均一な補給用薄膜を提供して爪の保護層として及び徐々に放出させることができる追加のテルビナフィン用の補給所として作用させる第二の抗真菌性ネイルコート組成物とを含有してなる。従って、第二の抗真菌性爪組成物は、前記プライマーで被覆された爪に水洗を介在させずに直接に施用される。
【0035】
抗真菌性ネイルコート組成物の二液型の実施態様において、第一の抗真菌性ネイルコート組成物及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物それぞれに存在させる抗真菌剤の量は、変化させることができるが、第一のネイルコート組成物中の抗真菌剤の重量に対する第二のネイルコート組成物中の抗真菌剤の重量の比は、約1よりも小さいことが好ましい。感染症の重症度に応じて、第一の抗真菌性ネイルコート組成物中の抗真菌剤の量は全組成物の重量の約0.1から約20%の範囲内で変化させることができ、第二のネイルコート組成物中の抗真菌剤の量は全組成物の重量の約0.1から約15%の範囲内で変化させることができる。
【0036】
二液型組成物について好ましい第一の抗真菌性ネイルコート組成物の実施態様は、揮発性の医薬適合性の担体に溶解されたテルビナフィンを約0.5から約20重量%の範囲内の濃度で、さらに好ましくは約10重量%の濃度で含有する実質的に透明な無色溶液である。揮発性担体は、2から約5個の炭素原子を有するアルカノール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどである。エタノールが特に好ましい。また、揮発性担体は、浸透促進剤としても機能を果たすことができる。
【0037】
特に好ましい第一の抗真菌性ネイルコート組成物は、重量/重量基準でエタノール中に溶解された約10重量%のテルビナフィンを含有してなる。第一の抗真菌性ネイルコート組成物は、好ましくは、爪甲の毛細血管系に沿って及び爪甲を横切って真菌胞子に到達し真菌胞子を爪甲及び爪床中に固定する。二液型組成物の実施態様に特に好ましい第二の抗真菌性ネイルコート組成物は、約0.1から約10重量%未満の範囲の濃度のテルビナフィン、有効皮膜形成量の親水性皮膜形成重合体及び残部として前記の医薬適合性の揮発性担体を含有してなることが好ましい。第一の組成物及び第二の組成物中の揮発性担体は、所望に応じて同じであることができるし又は異なることができる。
【0038】
親水性重合体は、ビニルピロリドン単量体単位を含む皮膜形成重合体、例えば単独重合体(すなわち、ポリビニルピロリドン)、共重合体及びこれらの複合体、ガム、樹脂などであり得る。本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用する「共重合体」という用語は、2種またはそれ以上の単量体反復単位を含む重合体を意味し、一般に「三元重合体」、「四元重合体」などと呼ばれる重合体を包含する。
【0039】
ビニルピロリドン(VP)単量体単位を含有する典型的な皮膜形成重合体は、種々の粘度グレードの範囲で及び約8,000から約3,000,000ダルトンの範囲の種々の重量平均分子量で販売されているポリビニルピロリドン(PVP)(PVP K 単独重合体シリーズ)である。PVPは、BASF Corporationから商品名KOLLIDON(登録商標)CLとして販売されている。USPグレードのポピドン(PVP)が好ましい。典型的な皮膜形成共重合体としては、ISPから販売されているPVP/VA共重合体シリーズなどのVP/VAのモル比の範囲内で入手できるビニルピロリドン/酢酸ビニル(VA)共重合体が挙げられる。典型的なVP複合体は、ポビドン−ヨウ素(PVP−I)である。
【0040】
親水性重合体は、約30の「K」値(すなわち、約45,000から60,000ダルトンの範囲の重量平均分子量)を有するポリビニルピロリドンであることが好ましい。
【0041】
典型的なガムとしては、寒天ガム、カラジーナンガム、ガッチガム、カラヤガム、ラムソン(rhamson)ガム、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0042】
典型的な樹脂としては、カルボマー、ポリアルケニルポリエーテルを用いて容易に架橋されるポリアクリル酸重合体が挙げられる。これはNoveon Inc.(オハイオ州クリーブランド)から「CARBOPOL(登録商標)」という名称で市販されている。特に好ましいグレードのカルボマーは「CARBOPOL(登録商標)940」と呼ばれるカルボマーである。使用に適した他のポリアクリル酸重合体は、「PEMULEN(登録商標)」(Noveon Inc.)及びPOLYCARBOPHIL(登録商標)(A.H.Robbins Company,Inc.,バージニア州リッチモンド所在)という名称で市販されており、ジビニルグリコールで架橋されたポリアクリル酸である。PEMULEN(登録商標)重合体は、C10−C30アルキルアクリレートと、スクロースのアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸、メタクリル酸又はこれらの単純エステル類の1種又はそれ以上の単量体との共重合体である。
【0043】
ネイルコート組成物が爪に容易に施用でき、この表面に薄膜を形成できる限りは、使用する親水性の皮膜形成重合体の形態(すなわち、液体又は粉末)又は使用量については、制限は無い。
【0044】
本発明の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、1種又はそれ以上の実質的に不揮発性の浸透促進剤、補助抗感染薬、例えば抗菌剤、防腐剤など、及びこれらの混合物を含有することができる。二液型組成物の実施態様において、1種又はそれ以上の実質的に不揮発性の浸透促進剤は、第一の抗真菌性ネイルコート組成物又は第二の抗真菌性ネイルコート組成物、又はこの両方に含有させることができる。本発明の抗真菌性ネイルコート組成物中の浸透促進剤は、爪及び周囲の皮膚組織領域への薬剤の浸透を促進することが好ましい。
【0045】
好ましい皮膚浸透促進剤の中に、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ラウリン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウロカプラム〔AZONE(登録商標)〕、ジオキソラン類(米国特許第4,861,764号公報に記載されている)、大環状ケトン類、1−デシル−チオエチル−2−ピロリドン(HP−101)、オキサゾリドン類及び生分解性浸透促進剤〔Wongらの米国特許第4,980,378号及び同第5,082,866号公報に記載されている、例えばアルキル−2−(N,N−ジ置換アミノ)アルカノエート(例えば、ドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート(DDAIP))、N,N−ジ置換アミノアルカノールアルカノエート〕及びこれらの混合物がある。脂肪族及び芳香族アルコールが、主な爪浸透促進剤である。
【0046】
浸透促進剤は、抗真菌剤の浸透を高めるのに十分な量で存在させる。具体的な量は、必然的に所望の放出速度及び使用する具体的な抗真菌剤に従って変化する。一般に、浸透促進剤は、抗真菌性ネイルコート組成物の全重量に基づいて、約0.1から約25重量%の範囲の量で存在させる。浸透促進剤は、抗真菌性ネイルコート組成物の好ましくは約0.1から約10重量%の範囲の量、さらに好ましくは約0.5から約5重量%の範囲の量で存在させる。
【0047】
一般的に、適切な浸透促進剤は、前記に挙げた浸透促進剤、並びに脂肪族及び芳香族アルコール類、スルホキシド類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、ポリオール類、アミド類、界面活性剤、テルペン類、アルカノン類、有機酸類及びこれらの混合物の中から選択される。一般に、Chattaraj,S.C. and Walker,R.B.,Penetration Enhancer Classification,pp.5−20 in Maibach,H.I.,and Smith,H.E.,(eds.),Percutaneous Penetration Enhancers, CRC Press,Inc., Boca Raton,FL(1995)及びBuyuktimkin,N.ら,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement,in Ghosh,T.K.,and Pfister,W.R.(eds.) Transdermal and Topical Drug Delivery System,Interpharm Press,Inc.,Buffalo Grove,IL(1997)を参照。
【0048】
適切なアルコールとしては、限定されることなく、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、カプリルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、2−ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。2から約5個の炭素原子を有する揮発性の脂肪族アルコールは、揮発性担体及び浸透促進剤として働くという二重の機能を提供することができる。ベンジルアルコール、フェノキシエタノールなどの芳香族アルコールは、実質的に不揮発性の浸透促進剤及び補助抗感染薬として働くという二重の機能を提供することができる。好ましいアルコールは、エタノール及びベンジルアルコールである。
【0049】
適切なスルホキシドとしては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
適切な脂肪酸としては、吉草酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリル酸、イソ吉草酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、トリメチルヘキサン酸、ネオデカン酸及びイソステアリン酸、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
適切な脂肪酸エステルとしては、n−酪酸イソプロピル、n−ヘキサン酸イソプロピル、n−デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、吉草酸メチル、プロピオン酸メチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル及びこれらの混合物が挙げられる。適切なポリオールとしては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、ソルビトール、デキストラン類、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
適切なアミドとしては、尿素、ジメチルアセトアミド、ジエチルトルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルオクタアミド、ジメチルデカアミド、ピロリドン誘導体、1−アルキル−4−イミダゾリン−2−オン、環状アミド、ヘキサメチレンラウリルアミド及びこの誘導体、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びこれらの混合物が挙げられる。適切なピロリドン誘導体としては、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1−ラウリル−2−ピロリドン、1−ラウリル−4−カルボキシ−2−ピロリドン、1−メチル−4−カルボキシ−2−ピロリドン、1−ヘキシル−4−カルボキシ−2−ピロリドン、1−デシルチオエチル−2−ピロリドン(HP−101)、N−シクロヘキシルピロリドン、1−メチル−4−メトキシカルボニル−2−ピロリドン、1−ヘキシル−4−メトキシカルボニル−2−ピロリドン、1−ラウリル−4−メトキシカルボニル−2−ピロリドン、N−ジメチルアミノプロピルピロリドン、N−ココイルピロリドン、N−タローイルピロリドン、N−(2−ヒドロキシメチル)−2−ピロリドン脂肪酸エステル及びこれらの混合物が挙げられる。適切な環状アミドとしては、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン〔ラウロカプラム、AZONE(登録商標)〕、1−ゲラニルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ファルネシルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルゲラニルアザシクロヘプタン−2−オン、1−(3,7−ジメチルオクチル)アザシクロヘプタン−2−オン、1−(3,7,11−トリメチルオクチル)アザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロヘキサン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロペンタン−2,5−ジオン、1−ファルネシルアザシクロペンタン−2−オン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
適切な界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、胆汁酸塩及びレシチンが挙げられる。適切な陰イオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。適切な陽イオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンズアルコニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、及びこれらの混合物が挙げられる。適切な非イオン性界面活性剤としては、α−ヒドロ−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピル)ポリ(オキシエチレン)ブロック共重合体、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪アルコールのポリエチレングリコールエステル、及びこれらの混合物が挙げられる。適切なα−ヒドロ−ω−ヒドロキシ−ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピル)ポリ(オキシエチレン)ブロック共重合体としては、ポロキサマー(Poloxamer)182、184、231及びこれらの混合物が挙げられる。適切なポリオキシエチレンエーテルとしては、PEG−4ラウリルエーテル〔BRIJ(登録商標)30〕、PEG−2オレイルエーテル〔BRIJ(登録商標)93〕、PEG−10オレイルエーテル〔BRIJ(登録商標)96〕、PEG−20オレイルエーテル〔BRIJ(登録商標)99〕、及びこれらの混合物が挙げられる。適切なポリオキシエチレンソルビタンエステルとしては、モノラウリン酸エステル〔TWEEN(登録商標)20〕、モノパルミチン酸エステル〔TWEEN(登録商標)40〕、モノステアリン酸エステル〔TWEEN(登録商標)60〕、モノオレイン酸エステル〔TWEEN(登録商標)80〕及びこれらの混合物が挙げられる。脂肪酸の適切なポリエチレングリコールエステルとしては、ポリオキシエチレン(8)モノステアレート〔MYRJ(登録商標)45〕、ポリオキシエチレン(30)モノステアレート〔MYRJ(登録商標)51〕、ポリオキシエチレン(40)モノステアレート〔MYRJ(登録商標)52〕、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
適切な両性界面活性剤としては、以下に限定されること無く、ラウリンアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ココベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、アミノプロピルラウリルグルタミド、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホプロピオン酸ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ココアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウリミノ二プロピオン酸ナトリウム、ココアンホカルボキシメチルヒドロキシプロピル硫酸二ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
適切な胆汁酸塩としては、コール酸ナトリウム、ラウロコール酸のナトリウム塩、グリコール酸のナトリウム塩及びデソキシコール酸のナトリウム塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
適切なテルペン類としては、D−リモネン、α−ピネン、β−エンレン(β−enrene)、α−テルピネオール、テルピネン−4−オール、カルボール、カルボン、プレゴン、ピペリトン、メントン、メントール、ゲラニオール、シクロヘキセンオキシド、リモネンオキサイド、α−ピネンオキサイド、シクロペンテンオキシド、1,8−シネオール、イランイラン油、アニス油、ケノポジ油、ユーカリ油、及びこれらの混合物が挙げられる。適切なアルカノン類としては、N−ヘプタン、N−オクタン、N−ノナン、N−デカン、N−ウンデカン、N−ドデカン、N−トリデカン、N−テトラデカン、N−ヘキサデカン、及びこれらの混合物が挙げられる。適切な有機酸としては、クエン酸、コハク酸、サリチル酸、サリチル酸エステル類(例えば、メチル、エチル及びプロピルグリコール誘導体)、酒石酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
好ましい実質的に不揮発性の浸透促進剤は、N,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩を含む。本明細書で使用するように、「(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル」という用語は、(C−C18)アルコールと(C−C18)カルボン酸 とのエステルを意味する。(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステルに関連する「N,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換」という用語は、エステルが調製される前記アルコール部分又は前記カルボン酸部分がアミノ置換基NR〔式中、R及びRはそれぞれ独立して(C−C)アルキル基である〕を有することを意味する。R及びRは両方共にメチル基であることが好ましい。
【0058】
ドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオン酸エステル(DDAIP);ドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)酢酸エステル(DDAA);1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロピルドデカン酸エステル(DAIPD);1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロピルミリスチン酸エステル(DAIPM);1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロピルオレイン酸エステル(DAIPO);及びこれらの医薬適合性の酸付加塩が好ましい。
【0059】
特に好ましい皮膚浸透促進剤は、DDAIP単独又は補助浸透促進剤と組み合わせたDDAIPである。DDAIP・HClは、Steroids、Ltd.(イリノイ州シカゴ所在)及びPisgah Laboratories(ノースカロライナ州Pisgah Forest)から入手できる。DDAIPの塩酸塩(DDAIP・HCl)が特に好ましい。DDAIP及びこの結晶質酸付加塩は、Buyuktimkinらの米国特許第6,118,020号公報に記載されている。この公報は、本明細書に参照により組み込まれる。長鎖の同様のアミノ置換アルキルカルボン酸エステル類は、Wongらの米国特許第4,980,378号公報に記載のようにして容易に入手できる化合物から合成できる。この公報は、本明細書と矛盾しない範囲で本明細書に参照により組み込まれる。
【0060】
本明細書で使用する「抗感染症薬」という用語は、二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の効果を増強できる局所抗菌剤、防腐剤などを包含する。適切な抗菌剤としては、静菌性防腐剤、例えばベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、ヨードプロピニルブチルカルバメート、パラベンなどが挙げられる。ベンジルアルコールが特に好ましく、存在させる場合には浸透促進剤及び抗感染薬として二重の目的を果たし得る。
【0061】
適切な防腐剤としては、アルコール(すなわち、エタノール、イソプロパノール)、ハロゲン含有化合物(すなわち、ポビドン−I、トリクロサン等);四級アンモニウム化合物(すなわち、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等)が挙げられる。
【0062】
当業者には、1種又はそれ以上の前記成分が2以上の機能を果たすことができることが理解されるであろう。
【0063】
好ましい二重作用性の一液型の抗真菌性ネイルコート組成物の実施態様は、
殺菌有効量の抗真菌剤;
N,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール、及びこれらの混合物を含む群の中から選択される浸透促進量の実質的に不揮発性の浸透促進剤;
皮膜形成量の親水性重合体;及び
医薬適合性の揮発性有機担体
を含有してなる。
【0064】
一液型の抗真菌性ネイルコート組成物は、実質的に透明な製剤であることが好ましい。
【0065】
抗真菌性ネイルコート組成物の好ましい二重作用性の一液型の実施態様は、組成物の全重量を基準として:
約0.1から約20重量%の範囲、さらに好ましくは約0.5から約15重量%の範囲;最も好ましくは約1から約5重量%の範囲の量の抗真菌剤;
約0.1から約25重量%の範囲、さらに好ましくは約1から約10重量%の範囲の合計量の実質的に不揮発性の浸透促進剤;
約0.1から約5重量%の範囲、さらに好ましくは約0.25から約1重量%の範囲の親水性皮膜形成重合体;及び
医薬適合性の揮発性有機担体を含む残部を含む。好ましい揮発性有機担体は、組成物の全重量を基準として、好ましくは約50から約99.5重量%の範囲、さらに好ましくは約85から約99重量%の範囲の量で存在させる脂肪族アルコールである。
【0066】
特に好ましい実質的に透明な、二重作用性の一液型抗真菌性ネイルコート組成物は、組成物の全重量を基準として:
約0.5から約10重量%の範囲、さらに好ましくは約1から約5重量%の範囲の量で存在する塩酸テルビナフィン;
約0.1から約25重量%の範囲、さらに好ましくは約0.1から約10重量%の範囲の量で存在するDDAIP・HCl;
約0.1から約10重量%の範囲、さらに好ましくは約0.5から約1.5重量%の範囲の量で存在するベンジルアルコール;
約0.1から約5重量%の範囲、さらに好ましくは約0.1から約5重量%の範囲の量で存在するポリビニルピロリドン;及び
エタノールである残部
を含む。
【0067】
第一の抗真菌性ネイルコート及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物を利用する二液型の実施態様では、第二の抗真菌性ネイルコート組成物は、指の爪に付着した薄膜が足指の爪に付着したプライマー薄膜よりも、水による即時除去に対して実質的により耐性であるように配合されることが好ましい。
【0068】
特に好ましい二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、組成物の全重量を基準として、第一の抗真菌性ネイルコート組成物すなわちプライマー用抗真菌性ネイルコート組成物中に、エタノールに溶解した約10重量%のテルビナフィンを含有し、及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物中に好ましくは約5重量%未満のテルビナフィンを含有する。この好ましい第二の抗真菌性ネイルコート組成物すなわち補給所用抗真菌性ネイルコート組成物は、約20重量部のポリビニルピロリドン、約3重量部のテルビナフィン、及び約47重量部のエタノールを含有してなる。
【0069】
ヒトの切り取った爪を使用する生体外試験研究に基づいて、エタノール溶解10%溶液として施用されるテルビナフィンは、爪の膜の全域に約1時間の時間で拡散することができ、真菌類について最小発育阻止濃度(MIC)を越える濃度に達することができることが認められた。
【0070】
足指の爪又は指の爪の真菌感染症は、以下に記載の一液型法又は二液型法で回復又は予防し得る。
【0071】
一液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、真菌に感受性の爪又は感染した爪及びこれに隣り合った皮膚組織の表面に実質的に均一な殺真菌性被膜を得るために施用し、少なくとも約0.5時間これらと接触させて維持することができる。一液型法では、ネイルコート組成物は、この後に水で洗浄することによって除去することができる。多重被覆法では、前記組成物は水洗浄を介在させて又は介在させることなく少なくとも2回再施用することができる。前記ネイルコート組成物は、殺真菌効果を達成するのに十分な期間毎日の投薬計画で施用することが好ましい。
【0072】
本発明の二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物は、次の多重被覆方法で施用することができる。
【0073】
(1)殺菌有効量の抗真菌剤を含有する第一の抗真菌性ネイルコート組成物を、感染した指の爪又は足指の爪、及びこの周囲の皮膚領域に少なくとも1回施用して、活性な殺真菌性プライマー被膜を得る;
(2)得られた活性な殺真菌性プライマーコートを、約10分間又は該殺真菌性プライマーで被覆された爪が実質的に接触乾燥状態になるまで実質的に乾燥させる;次いで
(3)実質的に乾燥した殺真菌性プライマーで被覆された爪を、抗真菌剤を爪にさらに放出するために爪の表面に殺真菌性薄膜を得るのに十分な殺菌量の第二の抗真菌性ネイルコート組成物で被覆する。
【0074】
二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物を用いた殺真菌剤投薬計画の初期において、第一の抗真菌性ネイルコート組成物の多重投与を、ステップ(3)を行う前にステップ(1)及び(2)連続して少なくとも2回行うことによって適用して、真菌剤の生体利用性をさらに最適化することができる。
【0075】
本発明の方法は、新たな爪の成長が肉眼で真菌感染が認められなくなるまで、毎日実行することが好ましい。
【0076】
テルビナフィンを用いる本発明の二液型の方法の実施が第一の抗真菌性ネイルコート組成物から施用されるテルビナフィンの残留時間を延ばすこと、第二の抗真菌性ネイルコート組成物の親水性重合体薄膜が内部及び外部保護膜の形成を促進すること及び約4週間の比較的短い期間内で爪甲真菌症の回復又は予防において高い効果が達成されることが認められた。
【0077】
本発明のネイルコート組成物は、爪に慣用の方法、例えばブラシ塗り又は吹き付け塗りで施用できる。施用された組成物は、存在する揮発性有機担体の量に応じて、約0.5分から約10分の範囲の時間内で、さらに好ましくは約1分から約5分の範囲の時間内で、実質的に接触乾燥状態になる。
【0078】
殺真菌性ネイルコート組成物は、キットの形態で使用のためにこの中に含まれる指示書と共にキット形態で提供し得る。二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の第一の抗真菌性被覆組成物及び第二の抗真菌性被覆組成物は、独立してそれぞれ同様の又は異なる形状のパッケージで包装されていてもよいし、又は治療順序の施用の後に使用者を手助けするために、第一の組成物と第二の組成物とを互いに肉眼で区別するために色分けされる。
【0079】
指示書としては、限定されることなく、使用者を教育する印刷媒体、聴覚媒体、視覚教材、電子媒体又はこれらの組み合わせが挙げられる。印刷媒体としては、ラベル、パンフレット、本、チラシなどが挙げられるが、これらに限定されない。聴覚媒体としては、テープ録音、オーディオコンパクトディスク、レコードなどが挙げられるが、これらに限定されない。視覚教材としては、写真、スライド、映画、ビデオ、DVDなどが挙げられるが、これらに限定されない。電子媒体としては、全ての形の電子データ記憶媒体、例えばディスケット、対話型CD−ROM、対話型DVDなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
(実施例)
以下の実施例は、本発明を例示することを目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0081】
本発明の二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物及び方法における塩酸テルビナフィンの予備的効果及び安全性を、足指の爪及び/又は指の爪の真菌感染症を有する患者で研究した。患者は、非盲検で(open label)単一病院パイロット臨床試験に3ヶ月間にわたって加わった。
【0082】
爪床からの爪甲分離、角質増殖、及び変色に基づいた感染の尺度を使用することによって測定される軽度から重度の爪甲真菌症を有すると判断された最大20人の患者を選んだ。爪甲真菌症、角質増殖、及び変色の程度は、下記の尺度等級を使用して評価した。
爪甲真菌症
0=爪床から爪甲の分離がない。
【0083】
1=爪甲の分離が≦50%である。
【0084】
2=爪甲の分離が>50%であるが≦75%である。
【0085】
3=爪甲の分離が>75%である。
角質増殖
0=爪下壊死組織片がない。
【0086】
2=爪下領域の厚みが≦50%である
2=爪下領域の厚みが>505であり、≦75%である。
【0087】
3=爪下領域の厚みが>75%である。
変色
0=爪甲の異常な着色(白色、黄色など)がない。
【0088】
1=爪甲の≦50%にまで至る変色がある。
【0089】
2=爪甲の>50%であるが≦75%にまで至る変色がある。
【0090】
3=爪甲の>75%にまで至る変色がある。
【0091】
試験への算入について、基準は:爪甲の破壊部分又は欠落部分を含んだ爪の全表面の少なくとも25%について爪併発(involvement)を有する18から70歳の年代の間の爪甲真菌症患者であった。指の爪又は足指の爪の爪甲真菌症は、KOH染色顕微鏡検査及び真菌培養により、次のようにして確認した。
【0092】
爪甲及び硬い壊死組織片を、該断片を数滴の水酸化カリウム(5%グリセリンを有する25%KOH)と共に、ペトリ皿で覆った時計皿の中で24時間放置することによって軟化させた。真菌検査には光学顕微鏡を使用した。薄片の小さな断片を顕微鏡スライドの上に置き、カバースリップを置いた。調製物を低出力で注意深く調べた。皮膚糸状菌は、均一な幅の半透明分岐桿状糸状体として現われる。菌糸の存在が40倍の対物レンズを用いて検査することによって確認される場合には、試験結果は陽性と判断される。
【0093】
真菌培養は、標準培地、サブロー寒天(寒天18g、ペプトン10g、グルコース40g、蒸留水1000ml)を使用して行った。最も医学的に重要な真菌類は、この培地上で約28℃の温度で約24時間から約48時間の培養時間にわたって好気的に増殖する。
【0094】
試験から除外するための基準は:糸状菌(カンジダ種)によって引き起こされる爪甲真菌症;テルビナフィンに対する過敏性;異常肝機能(上限値の2倍);2週間以内に局所治療又は2か月以内に経口治療を受けた者;Hブロッカー、制酸薬、リファンピン、フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、テルフェナジン〔例えば、SELDANE(登録商標)〕又はジゴキシンを用いた同時治療;1ヶ月の試験薬の使用;乾癬又は乾癬履歴;試験に影響を及ぼすかもしれない重度の併発症;及び妊娠中の女性又は授乳期間中の母親であった。
【0095】
35から59歳の年齢の患者20人(女性6人、男性14人)(46歳の平均年齢を有する)が、上記の算入基準を満たした。これらの患者20人のうち、17人が12週の治療を終えた。試験の開始時に、爪甲真菌症の程度は、患者20人の15%については軽度(すなわち、≦40%の感染した爪)と評価され、残りの80%については重度(すなわち、>40%の感染した爪)と評価された。患者20人について、患者の45%が爪甲の分離を有し;45%が角質増殖を有し;及び10%が変色を有していた。
【0096】
一次効果基準は、陰性のKOH染色顕微鏡検査及び陰性の真菌培養の達成に基づいた菌学的治癒であった。
【0097】
二次効果基準は、菌学的治癒及び臨床効果についての医者の判断であった。臨床効果の評価は、下記のように判断された。「治療された」(すなわち、真菌症の症状がない、残っている爪の変形がない、さらに治療する必要が無い);「著しく改善された」(すなわち、真菌症の症状の著しい軽減と共に最小限の爪の関与);及び「極僅かから中程度の改善」(すなわち、爪の関与及び真菌症の症状の程度の僅かから中程度の軽減)。
【0098】
試験の完了後に、臨床安全性及び投与の効果は、有害事象、KOH染色顕微鏡検査、真菌培養、臨床効果評価(すなわち、病変部の面積測定、新たな爪の成長の写真比較、及び爪関与の程度の減少)及び医者の総合評価に基づいて、研究員によって分析された。
【0099】
一次安全性パラメーターには、有害事象、生命徴候、臨床検査室試験、理学的検査、及び心電図(ECG)が含まれる。
【0100】
試験に指定された患者は、それぞれブラシアプリケーターを備えた2つのビンが与えられ、それぞれのビンはネイルコート組成物(それぞれのビンに約20g)を含有し、「A」及び「B」として特定された。ビン「A」は、エタノールに溶解された塩酸テルビナフィン10%(重量/重量)を含有していた。ビン「B」は、20重量部のポリビニルピロリドン〔PVP、KOLLIDON(登録商標)30、約45,000から60,000ダルトンの範囲の重量平均分子量〕、3重量部の塩酸テルビナフィン、及び47重量部のエタノールを含有していた。
【0101】
患者は、温水を使用することによって足又は両手を洗浄し、できる限り感染した爪を切るか又は清潔にすることを指示されたが、爪を提出することは指示されなかった。また、患者は、足を洗浄した実質的に直後のそれぞれの夜に1回、感染した爪に直接に抗真菌性ネイルコート組成物を塗布することも指示された。
【0102】
患者は、ブラシを用いて溶液Aを最初に塗布し、溶液Aを乾燥させ、次いでブラシを用いて溶液Bを塗布し、溶液Bを乾燥させることを指示された。足を濡らすこと又は洗うことを避けることは制限がなかった。塗膜は、二重作用抗真菌性ネイルコート組成物を再塗布する前に洗い落とすことは容易であった。患者は、塗膜を洗い落とした後に、前記抗真菌性ネイルコート組成物を直ちに再塗布することを指示された。医師は、患者に、特に最初の1ヶ月間は、毎日、抗真菌性ネイルコート組成物を使用することを推奨した。
【0103】
試験期間の1ヶ月目、2ヶ月目及び3ヶ月目の最後に、一次効果(菌学的治療)、臨床効果(新たな爪の出現、徴候及び症状の消滅)、及び総合効果(すなわち、菌学的評価及び臨床評価の両方)に基づいた効果を、表1に要約する。
【0104】
【表1】

【0105】
表1に示されるように、爪関与(involvement)における評価の変化、真菌感染症の徴候の変化、及び新たな爪の成長に基づいて、治療の1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目の最後の臨床効果(例えば、「僅かから中程度改善された」、「著しく改善された」及び「治癒した」と評価された患者)は、それぞれ33.3%、58.8%及び94.1%であった。
【0106】
表2に示されるように、重度の爪甲真菌症を有すると最初に評価された患者の人数は、試験期間の1ヶ月、2ヶ月目及び3ヶ月目の終わりに減少し、同時に軽度の爪甲真菌症を有すると評価された患者の人数が増えた。
【0107】
【表2】

【0108】
「軽度」の爪甲真菌症を有する患者及び「重度」の爪甲真菌症を有する患者は、3ヶ月目の終わりに著しい改善を示すと判断された。
【0109】
試験期間中、患者はまた日記を継続し、これから有害事象の患者の経験が記録された。有害事象は、試験期間中は患者の誰からも報告されなかった。
【0110】
新たな爪の成長には時間がかかることが認められた。爪は、報告によれば、1ヶ月に3から4ミリメートル(mm)(1日に0.112から0.132mm)の速度で連続的に成長し、従って爪の完全な再生には4.5から5ヶ月を要する。また、爪の成長の速度は個人及び年齢層で異なること(爪の成長は若者ではより早い)、及びある種の健康障害及び投薬が成長の速度を狂わし得ることが認められた。従って、菌学的評価は、十分に将来の臨床効果を最も良く予測するために最も適切な客観的な一次効果基準であると判断された。短い試験期間内での二液型の二重作用抗真菌性爪組成物の効果は、種々の強さの爪甲真菌症を回復するのに安全であり及び有効であると判断された。
【実施例2】
【0111】
爪基質による抗真菌剤の摂取量を、一人の人から集めたヒトの切り取った爪を使用して生体外で評価した。切り取った爪を洗浄し、数週間、無水エチルアルコーで抽出した後に抗真菌剤、塩酸テルビナフィンを施用した。
【0112】
組成物の全容量を基準として、下記に示した量の塩酸テルビナフィン、揮発性有機担体(エタノール)、皮膜形成親水性重合体〔ポリビニルピロリドン(PVP)〕、又は浸透促進剤ドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、(DDAIP・HCl)を含有する4種類の抗真菌剤含有溶液それぞれ約15mlを調製した。
【0113】
溶液A. 無水エチルアルコールに溶解した10重量%塩酸テルビナフィン。
【0114】
溶液B. 無水エチルアルコールに溶解した10重量%塩酸テルビナフィン及び10重量%PVP〔KOLLIDON(登録商標)30、BASF製〕。
【0115】
溶液C. 無水エチルアルコールに溶解した10重量%塩酸テルビナフィン及び0.5重量%DDAIP・HCl。
【0116】
溶液D. 無水エチルアルコールに溶解した10重量%塩酸テルビナフィン及び1重量%DDAIP・HCl。
【0117】
切り取った爪を、溶液A、B、C及びDのそれぞれ約5mLに別々に浸し(約1:10の固形分:液体の比)、溶液中のテルビナフィンの濃度を測定することにより、テルビナフィンの摂取量を浸漬から約24時間までの時間にわたる時間の関数として調べた。測定は、Waters Alliance HPLC(Waters Symmetry C18、3.5nm 4.2×75mmのカラムが分離のために装備されている、検出にはUV224nm、流量1.5mL/分、注入量20μL)を使用して、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法を使用して行った。緩衝液はトリエチルアミン2部及び脱イオン水1000部からなり、このpHはリン酸でpH7に調節された。移動相の組成は、緩衝液25部及びアセトニトリル75部であった。
【0118】
図1にグラフとして示すように、テルビナフィンの溶液濃度の初期の急速な低下が全ての場合において認められ、これは徐々に約5時間後には平衡に達し、この後は最大24時間まで実質的に変化がなく、飽和が達成されたことを示している。溶液Aから得られた摂取量は、約1時間未満の間に平衡に達し、溶液B、C又はDから得られた摂取量よりも幾分早かった。全ての場合に、テルビナフィン摂取量の平均量は、約5.2mg/100mg爪すなわち爪の重量を基準として約5.2%であると判断された。
【0119】
テルビナフィン処理された切り取った爪を、次いでそれぞれの試験溶液から別々に回収し、10mLのエチルアルコールで洗浄して表面の空洞から抗真菌剤液を除去した。次いで、それぞれの試験から得た洗浄した切り取った爪を、別の5mLの無水エチルアルコールに別々に浸して、時間の関数として放出された塩酸テルビナフィンの濃度を、前記HPLC法を使用して測定することによって、爪の表面から放出されるテルビナフィンの割合を評価した。約48時間にわたる放出測定に基づいて、爪から最初に放出される塩酸テルビナフィンの量は、溶液Aで処理した爪の方が、溶液B、C又はDで処理した爪よりも多かった。図2にグラフとして示されるように、爪の中に保持された塩酸テルビナフィンの量は、約10時間の時間内で平衡に達した。処理の効果の順位は、溶液D>溶液C>溶液B>溶液Aであった。
【0120】
図3は、溶液C及びDで処理した爪の最新の塩酸テルビナフィンの保持量をグラフで示す。データは、溶液B中の皮膜形成重合体及び溶液C及びD中の浸透促進剤が、爪の中のテルビナフィンの滞留時間の増大に有利に寄与することを示した。
【実施例3】
【0121】
時間の関数としてのヒトの切り取った爪による塩酸テルビナフィンの浸透を、実施例2に記載のようにして調製した溶液A及びCを使用して比較した。実質的に同様の乾燥厚み (+/−5%)をもつ切り取った爪を選択した。選択した切り取った爪を、2個の開放金属フレームの間に置くことによって固定し、シーラント材料をこのフレームの縁と爪の端部の間に置き、次いで爪の両端を圧迫して爪を安定化させ及び爪ホルダーを得た。このようにして、爪ホルダーは、浸透用の開口を有し、固定された爪が透過膜として水平なフランツ(Franz)拡散セル中に置かれた場合の漏れに対してシールされた。供給セル及び受け入れセルのそれぞれの容積容量は、3mLであり、約78.5平方mmの浸透面積であった。供給溶液は、抗真菌剤溶液(溶液A又は溶液C)であり、受器溶液は無水エチルアルコールであった。受器溶液を最大約100時間までの時間にわたって定期的にサンプリングし、実施例2に記載のようにしてHPLCで分析した。
【0122】
受器中の塩酸テルビナフィンの累積透過は、図4にグラフで示され、無水エチルアルコール中の10%塩酸テルビナフィンを含有する溶液Aの浸透よりも10%塩酸テルビナフィンと0.5%DDAIP・HClを含有する溶液Cから爪への塩酸テルビナフィンの高められた浸透を示している。
【実施例4】
【0123】
本実施例は、一液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の配合を例示する。
【0124】
【表3】

【実施例5】
【0125】
本実施例は、毛瘡白癬菌(Trichophyton. mentagrophytes)(ATCC24953)によって引き起こされる皮膚糸状菌症について認められているモルモットモデルにおいて、種々の量の塩酸テルビナフィン及び種々の量の浸透促進剤DDAIP・HClを含有する一液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の生体内臨床及び殺真菌効果を例示する。表4に示した量を有する10種類の組成物を調製した。
【0126】
【表4】

【0127】
使用した生体内評価プロトコールの操作は、動物福祉法(Animal Welfare Act)、実験動物の管理及び使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)、及びOffice of Laboratory Animal Welfareに従っている。また、プロトコールは、動物の管理および使用に関する委員会〔Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)〕によって承認されており、IACUC指針に従った。評価は、オハイオ州クリーブランド所在のケース・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)のCenter for Medical Mycology and Mycology Reference Laboratoryで行った。
【0128】
体重約400から約450gの雄性アルビノモルモットHarlan−Sprague−Dawley(San Diego、CA)を、使用前に最低5日間順応させた。動物室の環境調節は、約16から約22℃の範囲の温度、約30から約70%の範囲の相対湿度、及び12時間/12時間の明/暗サイクルを維持するために設定した。モルモットは生まれつき皮膚糸状菌感染症に対して感受性であり、免疫抑制などの特殊な操作を必要としない。
【0129】
各試験モルモットに、キシラジン、ケタミン及びアセプロマジン(容量で3:3:1)の麻酔薬カクテル0.1mlの筋肉内(IM)注射により麻酔をかけた。電気かみそりを使用して、モルモットの背中の左側の毛を刈り込んだ。安全かみそりを用いてさらにすき間なく毛を剃った。ステンシルを使用して、約2.5×2.5cmの毛を剃った皮膚面積に複数の四分円の印をつけ、印をつけた皮膚領域を、滅菌微細粒度のサンドペーパを用い皮膚を擦りむいた。次いで、擦りむいた皮膚に、毛瘡白癬菌(T. mentagrophytes)(ATCC24953)の細胞懸濁液を十分に擦りこむことによって、モルモットを局所感染させた。
【0130】
毛瘡白癬菌(T.mentogrophytes)懸濁液は、毛瘡白癬菌(T.mentagrophytes)(凍結保存物から)をポテトデキストロース寒天(PDA)(Difco Laboratories製)プレート上で継代培養し、次いで該プレートを約30℃の温度で約5日から約7日間インキュベートすることによって調製した。得られたコロニーを、プレートから滅菌食塩水溶液(NaCl0.85%)を使用して擦り落とした。滅菌食塩水溶液を用いて3回洗浄した後に、分生子を滅菌食塩水溶液に再懸濁した。分生子懸濁液の10倍希釈液を調製し、血球計を使用して数えた。分生子の作業懸濁液を、100マイクロリットルの標準食塩水溶液当たり1×10コロニー形成単位(CFU)の最終濃度で調製した。毛瘡白癬菌(T.mentagrophytes)作業分生子懸濁液の10倍希釈液の接種物数を、該懸濁液をサブローデキストロース寒天(Difco Laboratories製)培地に塗布し、このプレートを約30℃の温度で約3から約4日間インキュベートし、次いでコロニー数を調べることによって調べた。
【0131】
前記皮膚糸状菌を接種し、感染させた後の3日目に、モルモットをそれぞれ、表4に挙げた選択したネイルコート組成物5(AからJ)の一つの施用量0.1mLを用いて7日間に毎日1回処理した。7日の試験期間の完了後3日目に、菌学的効果及び臨床効果を調べた。
【0132】
菌学的効果は、滅菌ピンセットを用いて4つの四分円から毛の試料(四分円当たりそれぞれ10本の毛)を取り除くことによって調べた。毛の試料を、ポテトデキストロース寒天プレート上の対応四分円の中に置き、約30℃の温度で約2日間インキュベートした。2日のインキュベーション期間の後に、毛根における菌の成長を立体顕微鏡下で調べた。処理動物群当たりの菌学的に陽性の毛の試料の個数の減少における試験組成物の有効性は、次式:効果%=100−(T×100/K)
(式中、T=試験群の陽性の毛であり及びK=未処理対照群の陽性の毛である)
を使用して、未処理対照群の動物に対する効果%として表した。
【0133】
4匹のモルモットを、プラセボ(ビヒクル対照)群(群1)として、実施例5(A)の組成物を用いて試験し、5匹のモルモットを表4に示す実施例の製剤〔実施例5(BからJ)〕のそれぞれ一つを用いて試験し(群2から10それぞれとして特定した)、4匹のモルモットの1群を感染対照群(群11)として維持した。
【0134】
感染した対照モルモット(群11)から得た毛は、毛根の浸潤を示す菌糸の成長を示した。毛根の実質的に同様の浸潤が、プラセボで処理した感染モルモット(群1)及び実施例5(B)の薬剤無含有の組成物で処理した感染モルモット(群2)において認められた。塩酸テルビナフィンを含有する組成物、すなわち実施例5(CからJ)の組成物の全ては、毛根に真菌要素が存在しないことによって示される菌学的効果を有していた。
【0135】
臨床効果は、皮膚の外観の局部変化と、試験部位の毛の再成長を調べることによって、次の数値の評点基準を使用して評価した:0=病巣なし;1=皮膚に極僅かな紅斑がある;2=十分に明確な発赤、腫脹があり、逆立った毛髪を伴う;3=大きな面積の著しい発赤の瘡蓋、スケール(scaling)、禿げ上がった地肌、所々に潰瘍あり;4=外皮の部分損傷及び毛の喪失あり;及び5=外皮に対する広い損傷及び感染の部位の毛の完全な喪失あり。処理動物群当たりの評点の変化における臨床評価の評価は、次式:効果%=100−(T×100/K)(式中、T=試験群の評点であり及びK=未処理対照群の評点である)を使用して、未処理対照群の動物に対する効果%として表した。
【0136】
感染した対照モルモット(群11)は、毛の喪失及び容易に目で見ることができる潰瘍性又は落屑性の皮膚部分を示した。実質的に同様の病変が、プラセボ〔実施例5(A)〕で処理した群1のモルモットにおいて及び薬剤を含有していない組成物〔実施例5(B)〕で処理した群2のモルモットにおいて認められた。テルビナフィン含有組成物〔実施例5(CからJ)〕は全て、プラセボ(ビヒクル)対照及び薬剤を含有していない組成物〔実施例5(AからB)〕で処理したモルモットの皮膚及び毛の再成長に比べて、群3から10のモルモットのより健全な皮膚及び毛の再成長によって示されるように皮膚の改善された外観に基づいて、臨床効果を有していた。臨床効果は、薬剤含有量の増加又は浸透促進剤含有量の増加は臨床効果においてさらなる有利な増大を提供しなかったことから、約1重量%の薬剤濃度〔実施例5(C)〕で及び約0.5重量%のDDAIP浸透促進剤濃度〔実施例例5(F)〕で最適であると判断された。
【0137】
試験の終わりに、生存動物全てを、安楽死溶液を静脈内注射することによって犠牲にし、焼却のためにthe Animal Resource Centerに処分した。
【実施例6】
【0138】
本実施例は、動物の蹄のケラチンモデル(ウマの蹄)及び寒天プレート拡散アッセイを使用して、塩酸テルビナフィンを含有する一液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の硬質ケラチンへの浸透性を生体外で例示する
3個ディスク(I、II及びIII)を、ウマの蹄のケラチンから約0.5から約1ミリメートル(mm)の範囲の厚み(ディスクI);約1.1から約1.5ミリメートル(mm)の範囲の厚み(ディスクII);及び約1.6から約2ミリメートル(mm)の範囲の厚み(ディスクII)に切り取った。それぞれのディスクの両側面及び一方の面を、ワセリンで被覆して、反対面を暴露させる寒天拡散の評価中の抗真菌薬の漏出を防止した。
【0139】
一つの拡散アッセイ評価において、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に塩酸テルビナフィンを25mg/ml、0.5mg/ml及び1mg/mlそれぞれの量を含有する3種類の抗真菌性コート溶液〔6(A)、6(B)、6(C)〕を調製した。各抗真菌性コート溶液を、各選択された蹄のディスク(I、II及びIII)の暴露面に塗布した。次いで、この蹄のディスクの抗真菌剤被覆面を、5×10の濃度の毛瘡白癬菌(T. mentagrophytes)(ATCC24953)の分生子懸濁液のローン(lawn)を接種した寒天プレートと接触させて置き、約8時間インキュベートした。次いで、阻止の帯域(透明のままである、すなわち成長がない領域の直径)をミリメートル(mm)で測定した。
【0140】
結果は、全ての濃度の塩酸テルビナフィンで蹄の中への拡散が起こること及び浸透物は生物活性を保持していたことを示した。阻止について測定された帯域は、一般に蹄のディスクの厚みに対して直径で半比例した。約1.1mmから約1.5mmの範囲の厚みをもつ蹄のディスクIIは、ヒトの爪の厚みに類似していると判断される。
【実施例7】
【0141】
本実施例は、実施例6に記載のウマの蹄モデルを使用して、ヒトの爪に対する一液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の臨床使用を模擬実験する。
【0142】
臨床使用を模擬実験するための一般的な方法は次の通りである:ウマの蹄をきれいにし、緩衝液で3回洗浄した。約100マイクロメーターの厚みをもつウマの蹄の複数の切片を、Arborブレードを使用して切り取り、加圧滅菌により滅菌した。次いで、それぞれの蹄部分を、表5の組成物7(AからH)に示す量の塩酸テルビナフィン及び浸透促進剤を含有する選択されたネイルコート組成物を用いて被覆し、ネイルコート組成物と接触させた。比較のために、同様にウマの蹄の複数の切片を、合成抗真菌剤シクロピロクスを含有する市販の局所ネイルラッカーPENLAC(商標)と接触させた〔実施例7(1)〕。次いで、処理した蹄の切片をそれぞれ、5×10の濃度の毛瘡白癬菌(T. mentagrophytes)(ATCC24953)の分生子懸濁液のローンを接種した寒天プレートの上に置き、約35℃の温度で約4日間インキュベートした。次いで、阻止の帯域を測定した。
【0143】
【表5】

【実施例8】
【0144】
本実施例は、皮膚糸状菌、紅色白癬菌(Trichopyton. rubrum)の3種類の菌株、皮膚糸状菌、毛瘡白癬菌(Trichophyton. mentagrophytes)の9種類の菌株及び酵母カンジダ・アルビカンス(Candida. albicans)の10種類の菌株に対する、塩酸テルビナフィン及び浸透促進剤としてDDAIP・HClを含有する一液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物の殺菌活性を例証する。
【0145】
表6に示す量を有する塩酸テルビナフィンを含有するネイルコート組成物、実施例8(A)、8(B)、及び薬剤なしの対照、実施例8(C)を調製し、殺真菌効果を、市販の組成物、実施例8(D):PENLAC(商標)ネイルラッカー溶液局所溶液8%(シクロピロクス含有)の殺真菌効果と比較した。
【0146】
【表6】

【0147】
殺真菌効果を、薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)及び最大殺真菌濃度(MFC)に基づいて、ブロス微量希釈アッセイ、及び阻止の帯域を測定する寒天拡散プレートアッセイを使用して評価した。
【0148】
ブロス微量希釈法は、臨床研究所規格委員会〔National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS)〕の分生子形成糸状菌の感受性試験のNCCLS M38−A標準法の変法であった。上記変法は、the American Society for Microbiologyによって刊行されたJessup,ら,「Antifungal Susceptibility Testing of Dermatophytes: Establishing a Medium for Inducing Conidial Growth and Evaluation of Susceptibility of Clinical Isolates,「Journal of Clinical Microbiology38,341−344,(2000)」に記載の方法に基づいてオハイオ州クリーブランドのthe Center for Medical Mycology、University Hospitals of Clevelandで開発された。この公開は本明細書に参考として援用されている。皮膚糸状菌を試験するための前記変法の再現性の多施設共同研究に基づいて、NCCLS M38−A標準法の修正として前記変法の採用が提案された。この変法を以下に記載する。
【0149】
皮膚糸状菌分離株を、ポテトデキストロース寒天(PDA)上で継代培養し、約30℃の温度で約4日から約5日間又は良好な分生子形成が生じるまでインキュベートした。紅色白癬菌(T. rubrum)分離株を、PDAの代わりに穀物(オートミール)寒天上で継代培養して、分生子生成を誘導した。分生子を滅菌食塩水に懸濁した懸濁液は、コロニー表面を滅菌綿棒で穏やかに擦ることによって調製される。この懸濁液を約5分から約10分間静置させ、分生子を血球計を使用して数えた。分生子の作業懸濁液は、10mlのRPMI1604(Difco Laboratories製)培地中で1から3×10CFU/mlの最終濃度に調製した。酵母対照は、PDA上で継代培養し、約35℃の温度で約48時間インキュベートした。酵母接種材料を、0.5から2.5×10CFU/mlの最終濃度に調製した。MICアッセイについては、それぞれの薬剤濃度ウエル及び増殖対照ウエルに、100マイクロリットルの細胞懸濁液を接種し、それぞれのマクロタイターウエルの最終容量は200マイクロリットルである。皮膚糸状菌プレートを約35℃の温度で約4日間インキュベートした(酵母対照については48時間)。プレートを増殖対照と比較して50%及び80%増殖阻止について肉眼で調べ、MIC結果をマイクログラム(μg/ml)で記録した。MIC終点は、一般に増殖対照と比較して真菌増殖を80%阻止した最低濃度として定義される。MFCアッセイを行うために、可視できる増殖がないそれぞれのマイクロタイターウエルから100μlを取り出し、ポテトデキストロース寒天プレート上で継代培養した。<1から2個のコロニーを生成させるための最低濃度を、MFCとみなす。(マイクロタイターウエルから取り出した接種材料を、単離のために画線した − 阻止の帯域が存在しない)。
【0150】
MICアッセイについては、ブロス希釈を、希釈剤としてRPMI1064を用いてマイクロタイターウエル中で行った。MFCアッセイは、MIC試験からマイクロタイターウエルを継代培養することによって行った。
【0151】
寒天拡散アッセイについては、分生子の標準化接種材料をポテトデキストロース寒天プレートの表面に塗布し、乾燥させた。次いで、ウエルを寒天に切断し、試験組成物をこのウエルに入れ、拡散させ、抗真菌性活性を、ミリメートル(mm)直径で測定されるプレートの表面の増殖阻止の帯域(すなわち、透明であり、増殖が無い領域)によって証明する。
【0152】
寒天拡散アッセイは、5×10CFU/mlの濃度で分生子懸濁液のローンを播種したポテトデキストロース寒天プレートを使用して行った。寒天に切断したウエルに未希釈試験組成物200μlを加えることによって実施例8(AからD)の未希釈組成物を別々にプレートに接種し、拡散させた。次いで、接種プレートを、35℃で皮膚糸状菌については約4日間及び酵母については48時間インキュベートした。表6におけるネイル組成物の阻害(帯域)アッセイの帯域のミリメートル(mm)測定の範囲及び平均直径を、以下の表6−Aに要約する。
【0153】
【表7】

【0154】
表6−Aのデータは、テルビナフィン含有ネイルコート組成物〔実施例8(A)及び8(B)〕が3種類の生物全てに対して殺真菌活性であり、互いに対する活性において実質的に均等であることを示す。薬剤無含有組成物〔実施例8(C)〕は、酵母に対して実質的に無効であり、2種類の皮膚糸状菌に対して効果が弱いと判断され、このような活性は恐らくはベンジルアルコール及びエタノールによる寄与がある抗菌効果に起因している可能性があることを示す。テルビナフィン含有ネイルコート組成物は、皮膚糸状菌、毛瘡白癬菌(T. mentagrophytes)及び紅色白癬菌(T. rubrum)に対して市販のシクロピロクス含有ネイルラッカーよりも約3倍以上の効果があると判断され、酵母カンジダ・アルビカンス(C. albicans)に対して市販のシクロピロクス含有ネイルラッカーと実質的に同等であった。
【実施例9】
【0155】
皮膚糸状菌、毛瘡白癬菌(T. mentagrophytes)(ATCC24953)に対する塩酸テルビナフィンの殺菌活性を、最小発育阻止濃度(MIC)及び最大殺真菌濃度(MFC)並びに阻止の帯域を測定する寒天拡散プレートアッセイに基づいて、実施例8に記載の改変NCCLSブロス希釈アッセイで例示する。
【0156】
表7に示す量を有するプラセボ組成物〔実施例9(A)〕、2種類の塩酸テルビナフィン含有ネイルコート組成物〔実施例9(B)及び9(C)〕、及び薬剤無含有の比較組成物〔実施例9(D)〕を調製した。また、表7に示す量で塩酸テルビナフィンのジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒溶液、浸透促進剤DDAIP・HClのジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒溶液、これらの組み合わせの溶媒溶液〔実施例9(EからH)〕を調製した。比較のために、市販のPENLAC(商標)ネイルラッカー溶液も含めた。
【0157】
【表8】

【0158】
MICアッセイを、RPMI1604を希釈剤として用いてマイクロタイターウエル中で行った実施例8に記載のブロス希釈法を使用して調べた。各試験組成物の連続希釈を、RPMI希釈剤中で行い、次いで100μlの未希釈試験組成物及び各希釈組成物を、それぞれのマクロタイタープレートに加えた。次いで、各ウエルに分生子懸濁液(100μl)を加え、プレートを約35℃のインキュベーション温度で皮膚糸状菌については4日間及び酵母については48時間のインキュベーション期間でインキュベートした。MFC決定のために、寒天に切断したウエルに未希釈試験組成物を加え、拡散させた。MIC終点は、一般に増殖対照と比較して真菌増殖を80%阻止した最低濃度であった。MFC終点は、1個から2個のコロニーを生成するための最終濃度であった。阻止帯域の大きさを測定した(透明のままである、すなわち増殖の無い領域の直径)。
【0159】
組成物のそれぞれを用いて得られたMIC及びMFCアッセイの阻止の帯域(mmの直径サイズ)及び希釈因子を表7−Aに示す。
【0160】
【表9】

【0161】
テルビナフィン含有ネイルコート組成物〔実施例9(B)及び9(C)〕は、最も高い希釈(>1:512)で殺真菌性であった。テルビナフィン無含有組成物〔実施例9(A)及び9(D)〕は、MICアッセイに基づいて殺真菌性が弱く、阻害の帯域を生成せず、観察された阻止効果は恐らくビヒクル中のベンジルアルコール及びエタノールによるある種の抗菌寄与に主として起因していることを示す。テルビナフィン含有組成物は、阻止の帯域に基づいて、同等の容量濃度で市販のネイルラッカー〔実施例9(1)〕の約2.4倍の効果があると判断された。市販のネイルラッカーは、MIC及びMFCアッセイに基づいて、テルビナフィン無含有組成物に相当した。最も高い濃度で市販のネイルラッカーラッカーについては、ビヒクルの蒸発及びマイクロタイターウエル中のラッカーの硬化により幾つかの問題に遭遇した。
【0162】
DMSO溶媒において、1mg/ml濃度の塩酸テルビナフィンの>1:512の希釈の殺真菌効果を、実施例9(F)で再確認し、MICに基づいて浸透促進剤単独〔実施例8(E)〕〕はあってもある弱い効果であることが再確認された。1μg/mlの塩酸テルビナフィン濃度では、塩酸テルビナフィンの殺真菌効果は、浸透促進剤を存在させた場合又は存在させない場合と実質的に同等であった〔実施例9(G)、9(H)〕。
【0163】
上記の記載は、本発明を例示することを目的とするものであり、本発明を限定するものではない。数値的改変及び変更は本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、テルビナフィン供給溶液中に残存するテルビナフィンの濃度として表される選択された個体から切り取ったヒトの爪によって摂取されたテルビナフィンの時間の関数としてのグラフである、溶液Aは無水エタノール中の10重量%塩酸テルビナフィンであり、溶液Bは無水エタノール中の10重量%塩酸テルビナフィン+10重量%ポリビニルピロリドン(K−30)であり、溶液Cは無水エタノール中の10重量%塩酸テルビナフィン+0.5重量%DDAIP・HClであり、溶液Dは無水エタノール中の10重量%塩酸テルビナフィン+1重量%DDAIP・HClである。
【図2】図2は、切り取った爪に残存する塩酸テルビナフィンの計算量として表される図1の選択された個体の切り取ったヒトの爪から放出されるテルビナフィンの時間の関数としてのグラフである。試料Aは溶液Aで予め処理され、試料Bは溶液Bで予め処理され、試料Cは溶液Cで予め処理され、試料Dは溶液Dで予め処理された。
【図3】図3は、無水エタノールに溶解した塩酸テルビナフィンの溶液中のDDAIP・HCl濃度の関数としての、ヒトの切り取った爪に保有される塩酸テルビナフィンの計算量のグラフである。
【図4】図4は、無水エタノールに溶解した塩酸テルビナフィンの10重量%溶液から及び無水エタノールに溶解した塩酸テルビナフィンの10重量%溶液と0.5重量%のDDAIP・HClを含有する溶液からの時間の関数としてのヒトの切り取った爪の中の塩酸テルビナフィンの浸透のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌有効量の抗真菌剤;
N,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール及びこれらの混合物からなる群の中から選択される浸透促進量の実質的に不揮発性の浸透促進剤;
皮膜形成量の親水性重合体;及び
医薬適合性の揮発性有機担体
を含有してなり、真菌に感受性の爪又は感染した爪に接触して真菌感染症を回復又は予防する、実質的に水溶性の殺真菌性被膜を提供する二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項2】
抗真菌剤がアリルアミン系抗真菌剤及びアゾール系抗真菌剤からなる群の中から選択される、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項3】
抗真菌剤がアリルアミン類である、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項4】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項5】
浸透促進剤がドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩である、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項6】
浸透促進剤が芳香族アルコールを含む、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項7】
芳香族アルコールがベンジルアルコールである、請求項6に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項8】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項9】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位の単独重合体、ビニルピロリドン単量体単位の共重合体及びこれらの複合体の中から選択されるビニルピロリドン単量体単位を含む、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項10】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項11】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項12】
担体がエタノールである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項13】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、約0.1から約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項14】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、約0.5から約15重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項15】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項16】
塩酸テルビナフィンが、組成物の全重量を基準として、約0.5から約10重量%の範囲内の量で存在する、請求項15に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項17】
塩酸テルビナフィンが、組成物の全重量を基準として、約1から約5重量%の範囲内の量で存在する、請求項15に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項18】
組成物の全重量を基準として、浸透促進剤が約0.1から約25重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項19】
組成物の全重量を基準として、存在する浸透促進剤が約0.1から約10重量%のデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩及び約0.1から約10重量%のベンジルアルコールである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項20】
組成物の全重量を基準として、親水性重合体が約0.1から約5重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項21】
組成物の全重量を基準として、親水性重合体が約0.25から約1重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項22】
補助抗感染薬を含有する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項23】
真菌に感受性の爪又は感染した爪及びこれに隣り合った皮膚組織を、これらの表面に実質的に均一な殺真菌性被膜を提供するために請求項1に記載のネイルコート組成物と接触させること、および前記接触を少なくとも約0.5時間維持することからなる、足指の爪又は指の爪の真菌感染症を回復又は予防する方法。
【請求項24】
前記方法を1日に少なくとも1回行う、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
薬理学的に許容し得る揮発性有機担体に分散させた殺菌有効量の抗真菌剤を含有してなる第一の抗真菌性ネイルコート組成物;及び
皮膜形成量の親水性重合体、殺菌有効量の抗真菌剤、及び医薬適合性の揮発性有機担体を含有してなる第二の抗真菌性ネイルコート組成物
を含有し、第一の抗真菌性ネイルコート組成物又は第二の抗真菌性ネイルコート組成物のいずれか一つが場合により実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなるものであり、並びに第一の抗真菌性ネイルコート組成物が真菌に感受性の爪又は感染した爪と接触するとこの表面に殺真菌性プライマーコートを提供するものであり、及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物がこの後に抗真菌性プライマーで被覆された爪と接触するとこの表面に殺真菌性薄膜を提供するものである、二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項26】
抗真菌剤がアリルアミン系抗真菌剤、アゾール系抗真菌剤及びトリアゾール系抗真菌剤からなる群の中から選択されるものである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項27】
抗真菌剤がアリルアミンである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項28】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項29】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項30】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位の単独重合体、ビニルピロリドン単量体単位の共重合体及びこれらの複合体の中から選択されるビニルピロリドン単量体単位を含む、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項31】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項32】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項33】
担体がエタノールである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項34】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、第一の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.5から約20重量%の範囲内の量で存在し及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.1から約15重量%の範囲内の量で存在する、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項35】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり、並びに第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量%のポリビニルピロリドン、約3重量%のテルビナフィン及び約47重量%のエタノールを含有してなるものである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項36】
存在する場合には、浸透促進剤がN,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール及びこれらの混合物からなる群の中から選択される、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項37】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物のいずれか一つの中にさらに抗感染薬を含有する、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項38】
次の連続するステップ:
(a)殺菌有効量の抗真菌剤、医薬適合性の揮発性担体及び場合によっては実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなる第一の抗真菌性ネイルコート組成物を、真菌に感受性の爪又は感染した爪及びこれに隣り合った皮膚組織に塗布して殺真菌性プライマーコートを得るステップ;
(b)得られた殺真菌性プライマーコートを、前記殺真菌性プライマーで被覆された爪が実質的に接触乾燥状態になるまで乾燥するステップ;
(c)実質的に乾燥した殺真菌性プライマーで被覆された爪に、皮膜形成量の親水性重合体、殺菌有効量の抗真菌剤、医薬適合性の揮発性担体及び場合により実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなる十分な皮膜形成量の第二の抗真菌性ネイルコート組成物を塗布して実質的に均一な殺真菌性薄膜を得るステップ
からなる足指の爪又は指の爪の真菌感染症を回復又は防止する方法。
【請求項39】
前記方法を1日に少なくとも1回行う、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程(a)及び工程(b)を工程(c)の前に少なくとも2回行う、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり、及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量部のポリビニルピロリドン、約3重量部のテルビナフィン及び約47重量部のエタノールを含有してなるものである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、約10重量%のテルビナフィン、約0.5から約1重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、及び残部エタノールを含有してなるものである、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
パッケージ形態である、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項44】
請求項43に記載のパッケージ組成物を含有するキットを含む製品。
【請求項45】
第一の抗真菌性ネイルコート及び第二の抗真菌性ネイルコートのそれぞれが個々にパッケージ化されているものである、請求項25に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項46】
請求項45に記載のパッケージ化組成物の少なくとも一つを含有するキットを含む製品。
【請求項47】
組成物の全重量を基準として、
約0.5から約10重量%の塩酸テルビナフィン、
約0.1から約10重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、
約0.1から約10重量%のベンジルアルコール、
約0.1から約5重量%のポリビニルピロリドン、及び
残部を構成するエタノール
を含む二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項48】
浸透促進剤がドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩からなるものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項49】
浸透促進剤が芳香族アルコールを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項50】
芳香族アルコールがベンジルアルコールである、請求項49に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項51】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項1から4及び48から50のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項52】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位の単独重合体、ビニルピロリドン単量体単位の共重合体及びこれらの複合体の中から選択されるビニルピロリドン単量体単位を含む、請求項1から4及び48から51のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項53】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項1から4及び48から52のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項54】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項1から4及び48から53のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項55】
担体がエタノールである、請求項1から4及び48から54のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項56】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、約0.1から約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から4及び48から55のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項57】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、約0.5から約15重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から4及び48から55のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項58】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項1から4及び48から57のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項59】
塩酸テルビナフィンが、組成物の全重量を基準として、約0.5から約10重量%の範囲内の量で存在する、請求項58に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項60】
塩酸テルビナフィンが、組成物の全重量を基準として、約1から約5重量%の範囲内の量で存在する、請求項58に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項61】
組成物の全重量を基準として、浸透促進剤が約0.1から約25重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から4及び48から60のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項62】
組成物の全重量を基準として、浸透促進剤が約0.1から約10重量%の範囲内の量のデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩及び約0.1から約10重量%の範囲内の量のベンジルアルコールである、請求項1から4及び48から61のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項63】
組成物の全重量を基準として、親水性重合体が約0.1から約5重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から4及び48から62のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項64】
組成物の全重量を基準として、親水性重合体が約0.25から約1重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から4及び48から63のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項65】
補助抗感染薬を含有する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項66】
抗真菌剤がアリルアミンである、請求項25から26のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項67】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンある、請求項25から26及び66のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項68】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項25から26及び66から67のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項69】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位の単独重合体、ビニルピロリドン単量体単位の共重合体及びこれらの複合体の中から選択されるビニルピロリドン単量体単位を含む、請求項25から26及び66から68のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項70】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項25から26及び66から69のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項71】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項25から26及び66から68のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項72】
担体がエタノールである、請求項25から26及び66から71のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項73】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、第一の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.5から約20重量%の範囲内の量で存在し及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.1から約15重量%の範囲内の量で存在する、請求項25から26及び66から72のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項74】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量%のポリビニルピロリドン、約3重量%のテルビナフィン及び約
47重量%のエタノールを含有してなるものである、請求項25から26及び66から73のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項75】
存在する場合には、浸透促進剤がN,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール、及びこれらの混合物からなる群の中から選択される、請求項25から26及び66から74のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項76】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物のいずれか一つにさらに抗感染薬を含有する、請求項25から26及び66から75のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項77】
工程(a)及び工程(b)を工程(c)の前に少なくとも2回行う、請求項38から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり;及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量部のポリビニルピロリドン、約3重量部のテルビナフィン及び約47重量部のエタノールを含有してなるものである、請求項38から39及び77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、約10重量%のテルビナフィン、約0.5から約1重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、及び残部エタノールを含有してなるものである、請求項38から39及び76から78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
パーケージ形態である、請求項1から4、25から26及び47から76のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項81】
請求項80に記載のパーケージ組成物を含有するキットを含む製品。
【請求項82】
第一の抗真菌性ネイルコート及び第二の抗真菌性ネイルコートのそれぞれが個々にパッケージ化されているものである、請求項25から26及び65から76のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項83】
請求項82に記載のパッケージ組成物の少なくとも一つを含有するキットを含む製品。
【請求項84】
皮膚浸透促進剤を、抗真菌活性に十分な皮膚中の抗真菌剤濃度を達成するために、抗真菌剤の皮膚への吸収を促進する十分な量で含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項85】
爪浸透促進剤を、抗真菌活性に十分な爪中の抗真菌剤濃度を達成するために、抗真菌剤の爪への吸収を促進する十分な量で含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌有効量の抗真菌剤;
N,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール及びこれらの混合物からなる群の中から選択される浸透促進量の実質的に不揮発性の浸透促進剤;
皮膜形成量の親水性重合体;及び
医薬適合性の揮発性有機担体
を含有してなり、真菌に感受性の爪又は感染した爪に接触して真菌感染症を回復又は予防する、実質的に水溶性の殺真菌性被膜を提供する二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項2】
抗真菌剤がアリルアミン及びこの医薬適合性の酸付加塩及びアゾール系抗真菌剤からなる群の中から選択される、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項3】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項4】
浸透促進剤がドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩である、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項5】
浸透促進剤が芳香族アルコールを含む、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項6】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項7】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項8】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項9】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、約0.1から約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項10】
塩酸テルビナフィンが、組成物の全重量を基準として、約0.5から約10重量%の範囲内の量で存在する、請求項3に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項11】
組成物の全重量を基準として、浸透促進剤が約0.1から約25重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項12】
組成物の全重量を基準として、存在する浸透促進剤が約0.1から約10重量%のデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩及び約0.1から約10重量%のベンジルアルコールである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項13】
組成物の全重量を基準として、親水性重合体が約0.1から約5重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項14】
補助抗感染薬を含有する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項15】
真菌に感受性の爪又は感染した爪及びこれに隣り合った皮膚組織を、請求項1に記載のネイルコート組成物と1日に少なくとも1回接触させてこれらの表面に実質的に均一な殺真菌性被膜を得ること、および前記接触を少なくとも約0.5時間維持することからなる、足指の爪又は指の爪の真菌感染症を回復又は予防するための、請求項1に記載のネイルコート組成物の使用方法。
【請求項16】
薬理学的に許容し得る揮発性有機担体に分散させた殺菌有効量の抗真菌剤を含有する第一の抗真菌性ネイルコート組成物、及び
皮膜形成量の親水性重合体、殺菌有効量の抗真菌剤及び医薬適合性の揮発性有機担体を含有する第二の抗真菌性ネイルコート組成物
を含有し、
抗真菌剤がアリルアミン及びこの医薬適合性の酸付加塩及びアゾール系抗真菌剤からなる群の中から選択されるものであり、
第一の抗真菌性ネイルコート組成物又は第二の抗真菌性ネイルコート組成物のいずれか一つが場合により実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなるものであり、場合により補助感染薬を含有するものであり、並びに
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が真菌に感受性の爪又は感染した爪と接触するとこの表面に殺真菌性プライマーコートを提供するものであり、及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物がこの後に抗真菌性プライマーで被覆された爪と接触するとこの表面に殺真菌性薄膜を提供するものである、二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項17】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項18】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項19】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項20】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項21】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、第一の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.5から約20重量%の範囲内の量で存在し及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.1から約15重量%の範囲内の量で存在する、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項22】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり。並びに第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量%のポリビニルピロリドン、約3重量%のテルビナフィン及び約47重量%のエタノールを含有してなるものである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項23】
存在する場合には、浸透促進剤がN,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール及びこれらの混合物からなる群の中から選択される、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項24】
次の連続するステップ:
(a)殺菌有効量の抗真菌剤、医薬適合性の揮発性担体及び場合によっては実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなる第一の抗真菌性ネイルコート組成物を、真菌に感受性の爪又は感染した爪及びこれに隣り合った皮膚組織に塗布して殺真菌性プライマーコートを得るステップ;
(b)得られた殺真菌性プライマーコートを、前記殺真菌性プライマーで被覆された爪が実質的に接触乾燥状態になるまで乾燥するステップ;
(c)実質的に乾燥した殺真菌性プライマーで被覆された爪に、皮膜形成量の親水性重合体、殺菌有効量の抗真菌剤、医薬適合性の揮発性担体及び場合により実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなる十分な皮膜形成量の第二の抗真菌性ネイルコート組成物を塗布して実質的に均一な殺真菌性薄膜を得るステップ
を含み、1日に少なくとも1回行う、足指の爪又は指の爪の真菌感染症を回復又は防止する方法。
【請求項25】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり、及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量部のポリビニルピロリドン、約3重量部のテルビナフィン及び約47重量部のエタノールを含有してなるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、約10重量%のテルビナフィン、約0.5から約1重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、及び残部エタノールを含有してなるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
パッケージ形態である、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項28】
請求項27に記載のパッケージ組成物を含有するキットを含む製品。
【請求項29】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物のそれぞれが別々にパッケージされた形態である、請求項16に記載の二液型の抗真菌性ネイルコート組成物を含有するキットを含む製品。
【請求項30】
組成物の全重量を基準として:
約0.5から約10重量%の塩酸テルビナフィン、
約0.1から約10重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、
約0.1から約10重量%のベンジルアルコール、
約0.1から約5重量%のポリビニルピロリドン、及び
残部を構成するエタノール
を含む二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌有効量の抗真菌剤;
N,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール及びこれらの混合物からなる群の中から選択される浸透促進量の実質的に不揮発性の浸透促進剤;
皮膜形成量の親水性重合体;及び
医薬適合性の揮発性有機担体
を含有してなり、真菌に感受性の爪又は感染した爪に接触して真菌感染症を回復又は予防する、実質的に水溶性の殺真菌性被膜を提供する二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項2】
抗真菌剤がアリルアミン及びこの医薬適合性の酸付加塩及びアゾール系抗真菌剤からなる群の中から選択される、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項3】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項4】
浸透促進剤がドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩である、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項5】
浸透促進剤が芳香族アルコールを含む、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項6】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項7】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項8】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項9】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、約0.1から約20重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項10】
塩酸テルビナフィンが、組成物の全重量を基準として、約0.5から約10重量%の範囲内の量で存在する、請求項3に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項11】
組成物の全重量を基準として、浸透促進剤が約0.1から約25重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項12】
組成物の全重量を基準として、存在する浸透促進剤が約0.1から約10重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩及び約0.1から約10重量%のベンジルアルコールである、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項13】
組成物の全重量を基準として、親水性重合体が約0.1から約5重量%の範囲内の量で存在する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項14】
補助抗感染薬を含有する、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項15】
真菌に感受性の爪又は感染した爪及びこれに隣り合った皮膚組織を、請求項1に記載のネイルコート組成物と1日に少なくとも1回接触させてこれらの表面に実質的に均一な殺真菌性被膜を得ること、および前記接触を少なくとも約0.5時間維持することからなる、足指の爪又は指の爪の真菌感染症を回復又は予防するための、請求項1に記載のネイルコート組成物の使用方法。
【請求項16】
薬理学的に許容し得る揮発性有機担体に分散させた殺菌有効量の抗真菌剤を含有する第一の抗真菌性ネイルコート組成物、及び
皮膜形成量の親水性重合体、殺菌有効量の抗真菌剤及び医薬適合性の揮発性有機担体を含有する第二の抗真菌性ネイルコート組成物
を含有し、
抗真菌剤がアリルアミン及びこの医薬適合性の酸付加塩及びアゾール系抗真菌剤からなる群の中から選択されるものであり、
第一の抗真菌性ネイルコート組成物又は第二の抗真菌性ネイルコート組成物のいずれか一つが場合により実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなるものであり、場合により補助抗感染薬を含有するものであり、並びに
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が真菌に感受性の爪又は感染した爪と接触するとこの表面に殺真菌性プライマーコートを提供するものであり、及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物がこの後に抗真菌性プライマーで被覆された爪と接触するとこの表面に殺真菌性薄膜を提供するものである、二液型の二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項17】
抗真菌剤が塩酸テルビナフィンである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項18】
親水性重合体が、ビニルピロリドン単量体単位を含む重合体、ガム及び樹脂からなる群の中から選択されるものである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項19】
親水性重合体がポリビニルピロリドンである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項20】
担体が2個から約5個の炭素原子を有するアルカノールである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項21】
抗真菌剤が、組成物の全重量を基準として、第一の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.5から約20重量%の範囲内の量で存在し及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物中に約0.1から約15重量%の範囲内の量で存在する、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項22】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり。並びに第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量部のポリビニルピロリドン、約3重量部のテルビナフィン及び約47重量部のエタノールを含有してなるものである、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項23】
存在する場合には、浸透促進剤がN,N−ジ(C−C)アルキルアミノ置換(C−C18)アルキル(C−C18)カルボン酸エステル又はこの医薬適合性の酸付加塩、医薬適合性のアルコール及びこれらの混合物からなる群の中から選択される、請求項16に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項24】
次の連続するステップ:
(a)殺菌有効量の抗真菌剤、医薬適合性の揮発性担体及び場合によっては実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなる第一の抗真菌性ネイルコート組成物を、真菌に感受性の爪又は感染した爪及びこれに隣り合った皮膚組織に塗布して殺真菌性プライマーコートを得るステップ;
(b)得られた殺真菌性プライマーコートを、前記殺真菌性プライマーコートで被覆された爪が実質的に接触乾燥状態になるまで乾燥するステップ;
(c)実質的に乾燥した殺真菌性プライマーコートで被覆された爪に、皮膜形成量の親水性重合体、殺菌有効量の抗真菌剤、医薬適合性の揮発性担体及び場合により実質的に不揮発性の浸透促進剤を含有してなる十分な皮膜形成量の第二の抗真菌性ネイルコート組成物を塗布して実質的に均一な殺真菌性薄膜を得るステップ
を含み、1日に少なくとも1回行う、足指の爪又は指の爪の真菌感染症を回復又は予防するための、請求項16に記載のネイルコート組成物の使用方法。
【請求項25】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、エタノール中に約10重量%のテルビナフィンを含有してなるものであり、及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物が約20重量部のポリビニルピロリドン、約3重量部のテルビナフィン及び約47重量部のエタノールを含有してなるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物が、組成物の全重量を基準として、約10重量%のテルビナフィン、約0.5から約1重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、及び残部エタノールを含有してなるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
パッケージ形態である、請求項1に記載の抗真菌性ネイルコート組成物。
【請求項28】
請求項27に記載のパッケージ組成物を含有するキットを含む製品。
【請求項29】
第一の抗真菌性ネイルコート組成物及び第二の抗真菌性ネイルコート組成物のそれぞれが別々にパッケージされた形態である、請求項16に記載の二液型の抗真菌性ネイルコート組成物を含有するキットを含む製品。
【請求項30】
組成物の全重量を基準として:
約0.5から約10重量%の塩酸テルビナフィン、
約0.1から約10重量%のドデシル−2−(N,N−ジメチルアミノ)イソプロピオネート塩酸塩、
約0.1から約10重量%のベンジルアルコール、
約0.1から約5重量%のポリビニルピロリドン、及び
残部を構成するエタノール
を含む二重作用抗真菌性ネイルコート組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−520800(P2006−520800A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507422(P2006−507422)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/008618
【国際公開番号】WO2004/084826
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(500210660)ネクスメツド・ホールデイングス・インコーポレイテツド (4)
【Fターム(参考)】