説明

抗真菌薬標的

真菌のPPTBタンパク質を標的とする抗真菌剤の同定方法であって、候補化合物がPPTBタンパク質に結合するか否か又はPPTBタンパク質を阻害するか否かを決定することを含み、結合又は阻害は候補物質が抗真菌剤であることを示す、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼBタンパク質(phosphopantetheinyl transferase B proteins)(PPTB)及び抗真菌薬標的としてのそれらの使用、PPTB阻害剤のスクリーニング方法及び抗真菌化合物としてのそれらの使用、並びにそれらを含有する医薬組成物及び医薬における(具体的には抗真菌感染(antifungal infection)にかかりやすいか又はかかっている個体の治療における)それらの使用に関する。特に、該化合物は、例えばAspergillus及びCandida種の真菌により引き起こされる全身性又は局所性真菌感染の治療における使用を見出す。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPT)は、コエンザイムA由来のホスホパンテテイニル基の付加により、それらの基質タンパク質を修飾する。S. cerevisiaeにおいては、3つのPPTが存在する:LYS5(PPTA)は、α−アミノアジピン酸レダクターゼ(リジン生合成経路の酵素)の活性化に必要であり、且つシデロホア及びポリケチド合成に重要である;PPT2(PPTB)は、ミトコンドリアアシルキャリアータンパク質(ACP)(ミトコンドリア脂肪酸生合成に関与する)をパンテテイニル化する(pantetheinylates);そしてFAS2脂肪酸合成酵素αサブユニット(細胞質脂肪酸合成に関与するPPT機能を有する、マルチドメインタンパク質である)。これらのPPTはAspergillus fumigatus及びCandida albicansなどの他の真菌においても見出され、そしてPPTA及びPPTBの相同体は細菌において見出され、PPTAはサーファクチン合成酵素−活性化酵素(sfp)ファミリーの細菌タンパク質に類似しており、PPTBは細菌アシルキャリアータンパク質合成酵素に類似している。PPTAは動物において見出されるが、PPTBは見出されない。
【発明の概要】
【0003】
PPTBの特徴づけ及びPPTBの阻害剤を検出することが可能なスクリーニング方法の開発に基づき、本発明者らは、抗真菌薬を取得する新たな方法を解明した。本発明の一態様は、PPTBが真菌において必須であるとの知見に関わる。本発明は、ハイスループットスクリーニングに適した、in vitroで真菌PPTBをアッセイする方法を提供することも目的とする。本発明は、真菌PPTBの阻害剤をスクリーニングする方法も提供する。
【0004】
また、本発明者らは、真菌(例えばC. albicans)は2つのACP分子を有し得るが、その一方のみがPPTBの基質として適していることを見出した。更に、本発明者らは、驚くほど安定な反応生成物をもたらし且つアッセイが行なわれた後少なくとも5日間試料を読み取り可能にするアッセイ条件を特定し、その結果、多数の試料が処理され得る。
【0005】
従って、本発明は以下を提供する:
−抗真菌剤の同定方法であって、候補化合物が
(i)配列番号10又は配列番号19によって示される配列を含むPPTBタンパク質、
(ii)(i)の相同体であるPPTBタンパク質、
(iii)(i)又は(ii)と少なくとも50%の同一性を有するタンパク質、
(iv)(i)、(ii)又は(iii)の変異体又は断片(該断片は少なくとも50アミノ酸の長さを有する)を含むタンパク質、
に結合するか否か又はこれを阻害するか否かを決定することを含み、
ここで(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の結合又は阻害は候補物質が抗真菌剤であることを示す、方法、
−抗真菌剤を同定するか又は取得するための、該方法の使用、
−抗真菌化合物としての使用のための、真菌PPTB機能を障害する、該方法によって同定される化合物、
−真菌感染の予防又は治療のための医薬の製造における、該方法によって同定される抗真菌剤の使用、
−本発明のスクリーニング方法によって同定される抗真菌剤を投与することを含む、真菌感染の予防又は治療方法、
−PPTB阻害剤及び医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【0006】
配列の説明
配列番号1及び2;A. fumigatusにおけるPPTBノックアウトのためのプライマー
配列番号3;プラスミドpMB4 zeo
配列番号4−6;PPTB遺伝子におけるトランスポゾン挿入部位の確認のためのプライマー
配列番号7;A. fumigatus PPTBコード配列
配列番号8及び9;PPTBノックアウト形質転換体のスクリーニングのためのプライマー
配列番号10;A. fumigatus PPTBタンパク質配列
配列番号11;A. fumigatus ACPコード配列
配列番号12;A. fumigatus ACPタンパク質配列
配列番号13及び14;A. fumigatus PPTBのPCRのためのプライマー
配列番号15及び16;A. fumigatus ACPのPCRのためのプライマー
配列番号17;PCRによって生成されたACP配列
配列番号18;C. albicans PPTBコード配列
配列番号19;C. albicans PPTBタンパク質配列
配列番号20及び21;C. albicans PPTBのPCRのためのプライマー
配列番号22;C. albicans ACPgコード配列
配列番号23;C. albicans ACPgタンパク質配列
配列番号24;C. albicans ACPeコード配列
配列番号25;C. albicans ACPeタンパク質配列
配列番号26及び27;C. albicans ACPgのPCRのためのプライマー
配列番号28及び29;C. albicans ACPeのPCRのためのプライマー
配列番号30及び31;C. albicans PPTB遺伝子の5’領域のPCRのためのプライマー;
配列番号32及び33;URA3−MET3コンストラクトの作製のためのプライマー;
配列番号34及び35;C. albicans PPTBコード配列の最初の394bpの増幅のためのプライマー;
配列番号36及び37;C. albicansにおけるPPTBノックアウトのためのプライマー
配列番号38及び39;PPTBノックアウト形質転換体のスクリーニングのためのプライマー;
配列番号40及び41:PPTBノックアウト形質転換体のスクリーニングのためのプライマー;
配列番号42及び43:PPTBノックアウト形質転換体のスクリーニングのためのプライマー;
配列番号44;PPTBノックアウト形質転換体のスクリーニングのためのプライマー
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
上述のように、本発明は、抗真菌剤を同定するための、真菌PPTB及びACPタンパク質(真菌PPTB及びACPタンパク質の相同体及び/又は断片を含む)のものであるか又はそれらに由来する、特定のタンパク質配列(本明細書中「本発明のタンパク質」と称する)の使用に関する。本発明の方法は、可能性のある抗真菌剤として化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【0008】
本発明のタンパク質
本明細書中で使用される場合、PPTBタンパク質(ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼB)は、コエンザイムA由来の4’−ホスホパンテテイン基のアシルキャリアータンパク質(ACP)への転移を触媒することができる酵素として定義され得る。本発明のPPTBは一般に、酵素委員会の分類EC 2.7.8.−に入る。
【0009】
本明細書中で使用される場合、用語必須真菌遺伝子は、真菌において遺伝的に破壊された場合(例えば発現しない場合)、最少培地若しくは合成培地(defined medium)上で、又はこの真菌を感染させたモルモット、マウス、ウサギ若しくはラットにおいて、該細胞の生存を妨げるか又は増殖を著しく遅らせるものとして定義され得る。
【0010】
本明細書中で使用される場合、用語抗真菌剤は、真菌の増殖を遅らせるか、破壊するか若しくは妨げる薬剤、真菌感染を治療するために使用される薬剤、又は宿主に対する最小限の毒性で宿主から真菌病原体を選択的に除去する薬剤として定義され得る。化合物の抗真菌効果(antifungal efficacy)は、in vitroで(例えば真菌の培養物を用いて)、又はin vivoで(例えば感染宿主において)測定され得る。
【0011】
本発明のタンパク質(又は真菌PPTBタンパク質若しくはACP)は、そのファミリーの別のメンバーに対する配列類似性によって定義され得る。上述のように、この類似性は、(例えば配列番号10、12、19又は23の配列に対する)パーセント同一性に基づいてもよい。或いは、PPTBタンパク質は、PFAM 4’−ホスホパンテテイントランスフェラーゼスーパーファミリーのメンバーとして特定されるタンパク質として定義され得る;ACPは、InterproプロファイルIPR003231、IPR006162、IPR006163又はIPR009081と一致するタンパク質として定義され得る。
【0012】
本発明のタンパク質は、例えば本発明の方法において使用される場合、単離された形態(非細胞形態など)であり得る。好ましくは、単離されたタンパク質は、PPTB又はACPを含む。タンパク質は、天然タンパク質、合成タンパク質又は組換えタンパク質を含み得る。タンパク質は、天然タンパク質、合成タンパク質又は組換えタンパク質の組合せを含み得る。本発明のタンパク質は、天然に存在するPPTB又はACPタンパク質と同じか又は異なる配列を有し得る。タンパク質配列は、de novo合成され得るか、又は天然アミノ酸/タンパク質配列、若しくはその誘導体であり得る。
【0013】
本明細書中、用語「から単離された(isolated from)」は、「の(of)」と読まれ得ることが理解される。従って、特定の生物「から単離された」タンパク質への言及は、合成又は組換えなどの、それらをこの生物から取得すること以外の手段によって調製されたタンパク質を含む。
【0014】
好ましくは、タンパク質は、真菌、より好ましくは糸状菌、なおより好ましくは子嚢菌から単離される。
【0015】
好ましくは、本発明のタンパク質は、以下の属から独立に選択される生物から単離される: Absidia; Acremonium; Alternaria; Aspergillus; Bipolaris; Blastomyces; Blumeria; Candida; Cladosporium; Coccidioides; Colletotrichium; Cryptococcus; Curvularia; Encephalitozoon; Epicoccum; Epidermophyton; Exophiala; Exserohilum; Fonsecaea; Fusarium; Histoplasma; Leptosphaeria; Microsporum; Mycosphaerella; Neurospora; Paecilomyces; Paracoccidioides; Penicillium; Phialophora; Phytophthora; Plasmopara; Pneumocystis; Pseudallescheria; Pyricularia; Pythium; Puccinia; Rhizoctonia; Rhizomucor; Rhizopus; Saccharomyces; Scedosporium; Scopulariopsis; Sporothrix; Trichophyton; Trichosporon; Ustilago及びWangiella。
【0016】
好ましくは、本発明のタンパク質は、以下の種から選択される生物から単離される: Absidia corymbifera; Acremonium spp.: Alternaria alternata; Aspergillus flavus; Aspergillus fumigatus; Aspergillus nidulans; Aspergillus niger; Aspergillus parasiticus; Aspergillus terreus; Bipolaris spp.; Blastomyces dermatitidis; Blumeria graminis; Candida albicans; Candida glabrata; Candida krusei; Candida parapsilosis; Candida tropicalis; Cladosporium carrionii; Cladosporium cladosporoides; Cladosporium herbarium; Coccidioides immitis; Coccidioides posadasii; Curvularia lunata; Colletotrichium trifolii; Cryptococcus neoformans; Encephalitozoon cuniculi; Epicoccum nigrum; Epidermophyton floccosum; Exophiala spp.; Exserohilum rostratum; Fonsecaea pedrosoi; Fusarium graminarium; Fusarium solani; Fusarium sporotrichoides; Histoplasma capsulatum; Leptosphaeria nodorum; Microsporum canis; Mycosphaerella graminicola; Paecilomyces lilanicus; Paecilomyces varioti; Paracoccidioides brasiliensis; Penicillium chrysogenum; Phialophora verrucosa; Phytophthora capsici; Phytophthora infestans; Plasmopara viticola; Pneumocystis jiroveci; Puccinia coronata; Puccinia graminis; Pyricularia oryzae; Pythium ultimum; Rhizoctonia solani; Rhizomucor spp.: Rhizopus spp.; Saccharomyces spp.; Scedosporium apiospermum; Scedosporium prolificans; Scopulariopsis brevicaulis; Sporothrix spp.; Trichophyton mentagrophytes; Trichophyton interdigitale; Trichophyton rubrum; Trichosporon asahii; Trichosporon beigelii及びUstilago maydis。
【0017】
好ましくは、タンパク質は、Aspergillus属又はCandida属の生物から単離される。
【0018】
好ましくは、タンパク質は、Aspergillus fumigatus種又はCandida albicans種の生物から単離される。
【0019】
上述したタンパク質の変異体も提供され、それらは後述される。
【0020】
一実施形態において、本発明のタンパク質は、配列番号10、12、19若しくは23に示される配列と実質的に類似のアミノ酸配列、又はその変異体を含む。
【0021】
用語「天然アミノ酸/タンパク質」とは、in vivo又はin vitroのいずれかで生物源から天然に産生されるアミノ酸又はタンパク質を意味する。
【0022】
用語「合成アミノ酸/タンパク質」とは、当該分野において公知のタンパク質合成装置を使用して、人工的に又はde novoで製造されたアミノ酸又はタンパク質を意味する。
【0023】
用語「組換えアミノ酸/タンパク質」とは、熟練した技術者に公知の組換えDNA又はタンパク質技術又は方法論を使用して製造されたアミノ酸又はタンパク質を意味する。
【0024】
用語「相同体」とは、共通の祖先に起因して、類似又は同一の機能を有するタンパク質を意味する。例えば、A. fumigatus及びC. albicans(それらは共通の真菌祖先を共有すると考えられる)のPPTBタンパク質は、相同であると言われる。相同タンパク質は、配列レベルにおいてパーセント同一性を算出することによって比較され得る。
【0025】
用語「変異体」、及び用語「実質的に類似の」は、本明細書中、関連する配列をいうために使用される。後述されるように、このような関連する配列は、典型的には、例えば配列の全長にわたり、又は所定の長さの一部分にわたり、所定の配列と相同である(所定の配列とパーセント同一性を共有する)。関連する配列は、この配列又は相同配列の断片でもあり得る。変異体タンパク質は、変異体ポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0026】
用語「変異体」、及び用語「実質的に類似の」とは、配列が、言及された配列のいずれか1つのアミノ酸/タンパク質配列と、少なくとも30%、好ましくは40%、より好ましくは50%、そしてなおより好ましくは、60%の配列同一性を有することを意味する。言及された配列のいずれかに65%よりも高い同一性を有するアミノ酸/タンパク質配列も想定される。言及された配列のいずれかと70%よりも高い同一性を有するアミノ酸/タンパク質配列も想定される。言及された配列のいずれかと75%よりも高い同一性を有するアミノ酸/タンパク質配列も想定される。言及された配列のいずれかと80%よりも高い同一性を有するアミノ酸/タンパク質配列も想定される。好ましくは、アミノ酸/タンパク質配列は、言及された配列のいずれかと85%の同一性、より好ましくは90%の同一性、なおより好ましくは92%の同一性、なおより好ましくは95%の同一性、なおより好ましくは97%の同一性、なおより好ましくは98%の同一性、そして最も好ましくは言及された配列のいずれかと99%の同一性を有する。「実質的に類似の」配列は、関連する配列と同一であり得る。
【0027】
上述したパーセント同一性は、原配列の全長にわたり、又は原配列の15、20、50若しくは100アミノ酸の領域にわたり、測定され得る。好ましい実施形態において、パーセント同一性は、配列番号10、12、19又は23に対して測定される。好ましくは変異体タンパク質は、配列番号10、12、19若しくは23、又は配列番号10、12、19若しくは23の一部分と、少なくとも40%の同一性(少なくとも60%、又は少なくとも80%の同一性、又は少なくとも90%など)を有する。
【0028】
パーセント同一性は、アラインメントから(N/T)*100(ここで、Nは、2つの配列が同一の残基を共有する位置の数であり、そしてTは、比較される位置の総数である)として算出される。或いは、パーセント同一性は、(N/S)*100(ここで、Sは、比較されているより短い配列の長さである)として算出され得る。
【0029】
或いは、実質的に類似のタンパク質は、配列番号10、12、19又は23に示される配列から、少なくとも1アミノ酸(しかし5、10、20、50又は100アミノ酸未満)異なってもよい。このような違いは、それぞれ付加、欠失又は置換であり得る。
【0030】
用語「変異体」、及び用語「実質的に類似の」は、関連するアミノ酸/タンパク質配列の断片(上記言及された、相同配列(特定の配列とパーセント同一性を有する)の断片を含む)も含む。アミノ酸/タンパク質断片は、典型的には、少なくとも10アミノ酸(少なくとも15、20、25、30、35、40、50、80、100、150、200、300、400又は500アミノ酸など)を含む。断片は、タンパク質のいずれか又は両方の末端から、少なくとも3アミノ酸(少なくとも5、7、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100又は110アミノ酸など)欠いてもよい。
【0031】
他の適切な変異体は、相同なヌクレオチド配列を有するが、保存的変化を生じさせるために、置換するアミノ酸と同様の生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって改変された配列の全部、又は一部を含むものである。例えば、小さく、非極性で、疎水性のアミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン及びメチオニンが挙げられる。大きく、非極性で、疎水性のアミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンが挙げられる。極性で、中性のアミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン及びグルタミンが挙げられる。正電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、リシン、アルギニン及びヒスチジンが挙げられる。負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。Candidaを含む特定の生物が、大多数の真核生物で使用されているコドンと比較して、非標準的なコドンを使用することが知られている。このような生物に由来するポリヌクレオチド及びタンパク質と本明細書に示される配列とのいかなる比較も、これらの差異を考慮に入れるべきである。
【0032】
タンパク質配列における他の修飾(即ち、例えばアセチル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、タンパク質分解による切断又はリガンドへの結合によって、翻訳中又は翻訳後に生じる修飾)も想定され、特許請求される発明の範囲内である。
【0033】
本発明のタンパク質は、好ましくはその誘導体又は変異体を生じさせるために、使用前に修飾され得る。タンパク質は、誘導体化され得る。タンパク質は、エピトープタグ化、融合パートナー又は精製タグ(グルタチオンS−トランスフェラーゼ、NUSタグ、複数のヒスチジン又はマルトース結合タンパク質など)の付加、緑色蛍光タンパク質の付加、ビオチン若しくは蛍光タグ、発色団を含む分子の共有結合、セレノメチオニンの組み込み、放射性同位元素又は蛍光性/非蛍光性ランタニドキレートの封入又は付着によって、或いは上記タグ、タンパク質又はエピトープをコードする配列の付加によって、修飾され得る。
【0034】
本発明のタンパク質は、融合タンパク質として使用され得、それは、別のタンパク質(又はその一部;好ましくは、タンパク質の少なくとも10、20又は50アミノ酸の部分)のアミノ酸配列に、随意にN末端又はC末端において、共有結合(例えばペプチド結合)を介して融合された、PPTB若しくはACPポリペプチド又はその断片として定義される。
【0035】
スクリーニング方法
本発明は、本発明のPPTBタンパク質の活性の阻害剤などの、PPTBタンパク質のモジュレーターを同定するために使用され得るスクリーニング方法を提供する。この方法の一実施形態において、候補物質を本発明のPPTBタンパク質と接触させ、候補物質がタンパク質に結合するか又はタンパク質を調節するか否かが決定される。
【0036】
モジュレーターは、タンパク質の活性を促進(刺激)又は阻害(拮抗)し得る。治療的モジュレーター(真菌感染に対する)は、本発明のタンパク質の活性を阻害する。
【0037】
任意の適切な結合又は活性アッセイが使用され得る。候補物質がタンパク質に結合できるか否かを決定する方法は、候補物質にタンパク質を提供すること、及び、例えばタンパク質に結合する候補物質の量を測定することにより、結合が起こるか否かを決定することを含み得る。結合は、結合時に変化するタンパク質の特徴(分光学的変化など)を測定することにより決定され得る。結合は、候補の存在下及び非存在下において、反応基質又は生成物のレベルを測定し、このレベルを比較することにより測定され得る。結合は、候補の存在下及び非存在下において、反応の基質から標識を転移させること及び/又は反応の生成物へ標識を転移させることにより測定され得る。標識は、放射性同位元素、フルオロフォア、発色団又は酵素であり得る。
【0038】
本方法は、競合的結合法であり得る。これは、候補が、タンパク質に結合することが知られている薬剤(タンパク質に特異的な抗体又はタンパク質の基質など)へのそのタンパク質の結合を阻害することができるか否かを決定する。
【0039】
候補物質がタンパク質の活性を調節するか否かは、タンパク質の活性を許容する条件下でそのタンパク質に候補物質を提供すること、及び候補物質が生成物の活性を調節することができるか否かを決定することにより決定され得る。
【0040】
測定される活性は、ホスホパンテテイントランスフェラーゼ活性などの本明細書中で言及される本発明のPPTBタンパク質の活性のいずれかであり得る。一実施形態において、スクリーニング方法は、候補物質の存在下又は非存在下でホスホパンテテイントランスフェラーゼ反応を行い、候補物質が本発明のタンパク質のトランスフェラーゼ活性を阻害するか否かを決定することを含み、ここでトランスフェラーゼ反応は、候補物質の非存在下ではタンパク質がACPのパンテテイニル化を触媒する条件下で、前記タンパク質をACP及びコエンザイムAと接触させることにより行なわれる。
【0041】
好ましい実施形態において、ホスホパンテテイントランスフェラーゼ反応の阻害は、例えば蛍光標識されたコエンザイムAを使用して蛍光ACPの生成を測定することにより、ACPに転移されたホスホパンテテインの量を検出することにより測定される。これは、蛍光偏光法を使用して測定され得る。本発明の更に好ましい実施形態において、ACPは、Bodipy−TMRで標識されるが、他のフルオロフォアも使用され得る。
【0042】
或いは、パンテテイニル基の転移は、標識されたコエンザイムA及び標識されたACPを使用して、蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer)(FRET)により測定され得る。
【0043】
上記方法において試験され得る適切な候補物質としては、コンビナトリアルライブラリー、明確な化学的実体(defined chemical identities)、ペプチド及びペプチド模倣体、オリゴヌクレオチド並びに天然物のライブラリー(ディスプレイライブラリー(例えばファージディスプレイライブラリー)など)が挙げられる。候補物質は化合物であり得る。例えば、反応当たり10個の物質の初期のスクリーニング(screen)において候補物質のバッチが使用され得、阻害を示すバッチ由来の物質が個別に試験される。抗体産物(例えば、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体並びにCDR移植抗体)も試験され得る。
【0044】
本発明者らは、アッセイ生成物が驚くほど安定であり、アッセイが行なわれた後少なくとも5日までマイクロウェルプレートを読み取り可能にするような条件を特定した。従って、本発明の一実施形態において、アッセイは、随意に、以下の条件下で行なわれる:50mM Bis−Tris、及び/又は10mM MgCl、及び/又はpH6.75で、及び/又は1%v/v DMSO、及び/又は酵素活性が時間及びタンパク質濃度に関して直線範囲内にあるようなPPTB酵素濃度で、及び/又は20〜40分間インキュベートされ、及び/又は室温においてインキュベートされ、及び/又は停止試薬が60mM EDTA pH8.0であり、及び/又はアッセイが0.70のZ’値を有し、及び/又はアッセイが4%の%CV100%値を有し、及び/又はアッセイが>15のW値を有する。
【0045】
本発明の別の実施形態において、アッセイは、随意に、以下の条件下で行なわれる:10mM〜500mM Bis−Tris、好ましくは20mM〜200mM Bis−Tris、より好ましくは35mM〜100mM Bis−Tris、最も好ましくは50mM Bis−Tris;及び/又は1〜50mM MgCl、好ましくは2〜20mM MgCl、より好ましくは5〜15mM MgCl、最も好ましくは10mM MgCl;及び/又はpH4〜pH9で、好ましくはpH5〜pH8で、より好ましくはpH6〜pH7で、最も好ましくはpH6.75で;及び/又は0%〜10%DMSO、好ましくは0.1%〜5%DMSO、より好ましくは0.5%〜2%DMSO、最も好ましくは1%v/v DMSOを用いて;及び/又は酵素活性が時間及びタンパク質濃度に関して直線範囲内にあるようなPPTB酵素濃度で;及び/又は2分間〜5時間、好ましくは10分間〜2.5時間、より好ましくは15分間〜1時間、最も好ましくは20〜40分間インキュベートされ;及び/又は5℃〜37℃、好ましくは10℃〜25℃、より好ましくは15℃〜20℃、最も好ましくは室温でインキュベートされ;及び/又は停止試薬が10〜500mMの濃度で且つpH5.0〜10.0のEDTA、好ましくは20〜250mMの濃度で且つpH6.0〜9.0のEDTA、より好ましくは40〜100mMの濃度で且つpH7.0〜9.0のEDTA、最も好ましくは60mM EDTA pH8.0であり;及び/又はアッセイが0.50、好ましくは0.60、より好ましくは0.65、最も好ましくは0.70のZ’値を有し;及び/又はアッセイが10%、好ましくは7%、より好ましくは5%、最も好ましくは4%の%CV100%値を有し;及び/又はアッセイが>8、好ましくは>10、より好ましくは>12、最も好ましくは>15のW値を有する。
【0046】
本発明の更なる実施形態において、ACP−Bodipy TMR反応生成物は、少なくとも5日間まで安定であり、それゆえ5日後にZ’0.70、%CV100%4%且つW>15である。
【0047】
本発明の別の実施形態において、ACP−Bodipy TMR反応生成物は、少なくとも2日間、好ましくは3日間、より好ましくは4日間、最も好ましくは5日間まで安定であり、それゆえこの時間の後、アッセイは0.50、好ましくは0.60、より好ましくは0.65、最も好ましくは0.70のZ’値を有し;且つ/又はアッセイは10%、好ましくは7%、より好ましくは5%、最も好ましくは4%の%CV100%値を有し;且つ/又はアッセイは>8、好ましくは>10、より好ましくは>12、最も好ましくは>15のW値を有する。
【0048】
真菌感染の治療
本発明の更なる態様に従って、真菌感染の治療用の医薬の調製のための本発明のタンパク質の使用が提供される。
【0049】
好ましくは、医薬は、真菌感染を遅らせるか又は予防するのに適している。真菌感染は、ヒト、動物又は植物におけるものであり得る。タンパク質は、薬物の開発のために使用され得る。治療は、真菌感染を遅らせるか又は予防することを含み得る。好ましくは、薬物及び/又は医薬は、阻害剤、好ましくはPPTB阻害剤を含む。好ましくは、薬物又は医薬は、タンパク質又はその断片の機能を阻害するのに適している。
【0050】
好ましくは、真菌感染は、真菌、より好ましくは子嚢菌、なおより好ましくは、以下の属から選択される生物による感染を含む: Absidia; Acremonium; Alternaria; Aspergillus; Bipolaris; Blastomyces; Blumeria; Candida; Cladosporium; Coccidioides; Colletotrichium; Cryptococcus; Curvularia; Encephalitozoon; Epicoccum; Epidermophyton; Exophiala; Exserohilum; Fonsecaea; Fusarium; Histoplasma; Leptosphaeria; Microsporum; Mycosphaerella; Neurospora; Paecilomyces; Paracoccidioides; Penicillium; Phialophora; Phytophthora; Plasmopara; Pneumocystis; Pseudallescheria; Pyricularia; Pythium; Puccinia; Rhizoctonia; Rhizomucor; Rhizopus; Saccharomyces; Scedosporium; Scopulariopsis; Sporothrix; Trichophyton; Trichosporon; Ustilago及びWangiella。
【0051】
好ましくは、真菌感染は、Aspergillus属又はCandida属由来の真菌による感染を含む。
【0052】
好ましくは、真菌感染は、以下の種から選択される生物による感染を含む: Absidia corymbifera; Acremonium spp.; Alternaria alternata; Aspergillus flavus; Aspergillus fumigatus; Aspergillus nidulans; Aspergillus niger; Aspergillus parasiticus; Aspergillus terreus; Bipolaris spp.; Blastomyces dermatitidis; Blumeria graminis; Candida albicans; Candida glabrata; Candida krusei; Candida parapsilosis; Candida tropicalis; Cladosporium carrionii; Cladosporium cladosporoides; Cladosporium herbarium; Coccidioides immitis; Coccidioides posadasii; Curvularia lunata; Colletotrichium trifolii; Cryptococcus neoformans; Encephalitozoon cuniculi; Epicoccum nigrum; Epidermophyton floccosum; Exophiala spp.; Exserohilum rostratum; Fonsecaea pedrosoi; Fusarium graminarium; Fusarium solani; Fusarium sporotrichoides; Histoplasma capsulatum; Leptosphaeria nodorum; Microsporum canis; Mycosphaerella graminicola; Paecilomyces lilanicus; Paecilomyces varioti; Paracoccidioides brasiliensis; Penicillium chrysogenum; Phialophora verrucosa; Phytophthora capsici; Phytophthora infestans; Plasmopara viticola; Pneumocystis jiroveci; Puccinia coronata; Puccinia graminis; Pyricularia oryzae; Pythium ultimum; Rhizoctonia solani; Rhizomucor spp.; Rhizopus spp.; Saccharomyces spp.; Scedosporium apiospermum; Scedosporium prolificans; Scopulariopsis brevicaulis; Sporothrix spp.; Trichophyton mentagrophytes; Trichophyton interdigitale; Trichophyton rubrum; Trichosporon asahii; Trichosporon beigelii及びUstilago maydis。
【0053】
好ましくは、真菌感染は、Aspergillus fumigatus種又はCandida albicans種から選択される生物による感染を含む。
【0054】
医薬組成物
治療(ヒト又は獣医学の)においてPPTB阻害剤を使用するために、それらは通常は、例えばPPTB阻害剤及び医薬上許容される担体を混合することにより、標準的な薬務に従って、医薬組成物へと製剤化される。
【0055】
従って、本発明の更なる態様に従って、PPTB阻害剤及び医薬上許容される担体を含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、真菌感染の予防又は治療において、好ましくは、Aspergillus又はCandida真菌感染の治療において、特に有用である。
【0056】
PPTB阻害剤は、薬物投与のために通常使用される経路のいずれかにより宿主に投与され得、例えばそれらは、非経口的、経口的、局所的(口腔内、舌下若しくは経皮を含む)に、又は吸入により投与され得る。いかなる場合においても、投与に最も適した経路は、その特定のPPTB阻害剤、関与する感染性生物、宿主、並びに疾患の性質及び重症度並びに宿主の体調による。
【0057】
PPTB阻害剤は、1以上の他の治療上活性のある(例えば抗真菌性の)化合物と組み合わせて(例えば同時に、連続的に又は別々に)投与され得る。
【0058】
本明細書中に引用された全ての刊行物(特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない)は、個々の刊行物が、完全に記載されたかのように参照により本明細書中に組み込まれることが具体的且つ個別に示されたかのように、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0059】
以下の実施例は、単なる例示として解釈され、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。
【0060】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、例としてここに説明される:
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、A. fumigatus PPTBの4つの推定的な阻害剤についてのPPTBスクリーニングからの阻害曲線を示す。
【図2】図2は、C. albicans PPTBの2つの推定的な阻害剤についてのPPTBスクリーニングからの阻害曲線を示す。
【図3】図3は、メチオニン及びシステインの存在下及び非存在下でのC. albicans PPTB変異体の増殖を示す。
【実施例】
【0062】
1.Aspergillus fumigatusにおけるPPTBのノックアウト
1.1 イントロダクション
A. fumigatusにおけるPPTBの重要性を決定するために、この遺伝子を、定方向突然変異誘発によりノックアウト(即ち破壊)した。A. fumigatusは、天然には一倍体であるため、2つの色彩変異体の一倍体のプロトプラスト融合により二倍体株をまず作り出し、緑色の二倍体(褐色の一倍体及び白色の一倍体から容易に識別できた)を得た。次いで、相同組換えにより、選択マーカー(PyrG)を二倍体株中の1コピーのPPTB遺伝子へと導入し、PPTBについてヘテロ接合性の二倍体株を得た。最後に、二倍体を再び一倍体化させ、2種類の一倍体(ウリジン及びウラシルを添加した通常の最少培地上で増殖するが添加なしでは増殖できない、破壊されていないPPTB遺伝子を有するもの、及び破壊されたPPTB遺伝子を有するもの)を作り出した。もしPPTBが必須でなければ、一倍体は添加した培地と添加しない培地の両方で増殖する;もしこの遺伝子が必須であれば、この一倍体はいずれの培地でも増殖できない。
【0063】
1.2 方法及び結果
上流及び下流隣接領域を含むA. fumigatus PPTB遺伝子を、単離したA. fumigatus AF293ゲノムDNAからPCRによりクローン化した。Reddy mix Extensor PCR mastermix(Abgene)を、以下のプライマーと共に使用した:
【0064】
配列番号1;PPTB_KOcass F1;GCGTTGATGCAGCTGTGTAT
配列番号2;PPTB KOcass R1;TAGCCGAGGCAAGTAGCAGT
【0065】
PCR産物を、T4 DNAリガーゼ(Promega)を含む1xライゲーションバッファー中、14℃で一晩ライゲーションすることにより、pGEMTEasyベクターに連結した。反応液をSelect96細胞(Promega)に形質転換し、形質転換体を診断的消化(SphI、NotI及びXbaIを用いた)によりスクリーニングし、PPTBがpGEMTeasyにクローン化されていることを確認した。
【0066】
pGEMTEasy_PPTB DNAを、EZ-TN5細菌トランスポゾンシステム(Epicentre)を使用して突然変異誘発させた。EZ-TN5トランスポゾンを、PshAI及びXmnIを用いた消化により、pMB4zeo(配列番号3)から遊離させた。トランスポゾンモザイク末端(ME)の間には、Aspergillusにおける選択のためのPyrGコンストラクト及び細菌における選択のためのゼオシン耐性コンストラクトがある。pGEMTEasy_PPTB DNAを、製造者の使用説明書によって指示されるようにEZ-TN5トランスポゾン及びEZ-TNトランスポサーゼの存在下でインキュベートした。トランスポサーゼ反応を、1/10容量の10x停止液を用いて停止させた。1ulの反応液を、エレクトロポレーションによりGenehogs electrocompetent E. coli(Invitrogen)に形質転換した。結果として生じたコロニーを、以下のプライマーを使用して、PCRによりスクリーニングし、PPTBコード配列内で破壊されたクローンを特定した:
【0067】
配列番号4:PPTBint F1:GTTCTTGGTTTCACCTCTGC;(コード配列の123bp上流に結合する)
配列番号5:BVK1:GAGCCAATATGCGAGAACACCCG;(トランスポゾン末端)
配列番号6:BVK6:CGACTACGCACTAGCCAACA;(トランスポゾン末端)
【0068】
PCRで陽性だったプラスミドを配列決定に送り、挿入部位がPPTBコード配列(配列番号7)の塩基368〜369の間であることを見出した。
【0069】
破壊されたPPTBコンストラクトをNotIを用いた消化によりpGEMTEasyから遊離させ、アガロースゲル電気泳動及びQiaquickカラム(Qiagen)上でのゲル精製により精製した。この断片を、プロトプラスト形質転換によりA. fumigatus CDP1に形質転換し、形質転換体を、BVK1、BVK6及びPPTBoutcass F1 & R1を使用するPCRによりスクリーニングした:
【0070】
配列番号8:PPTBoutcass F1;TCGGTGGGTTTGATGTAATC
配列番号9:PPTBoutcass R1;gacaggcggagataatgatg
【0071】
1つの形質転換体がPPTB部位における相同組換えについて陽性であり、即ち、この二倍体において、1コピーのPPTB遺伝子が破壊されたPPTBコンストラクトに置換されていた。この形質転換体を、SAB+5mMウリジン+5mMウラシル+1.2μg/mlベノミル上での再一倍体化に供した。一倍体コロニーを採取し、SABUU(非選択)及びSAB培地(選択)上に接種し、3日間37℃にて増殖させた。非選択条件下では、褐色及び白色の一倍体が観察されたが、選択条件下では二倍体(緑色)又は時々異数体が観察されるのみだった(異数体はpptbの無傷のコピー及び破壊されたコピーを有するため、それらは増殖する;これはPCRによって確認した)。従って、PPTBがA. fumigatusの増殖に必須であることが分かった。
【0072】
2.組換えA. fumigatus PPTB及びACPの作製
2.1 A. fumigatus ACPの同定
A. fumigatus PPTB及びその基質ACPの配列は、公共のデータベース上でそれぞれAfu4g04040及びAfu1g06620として入手可能である。これらの配列と他の生物由来のオーソロガスな配列とのアラインメントは、PPTB配列が正しいことを示した;これは配列番号10として示される。しかしながら、ACP配列は、他の配列とはかなり異なることが見出され、従って、標準的なエキソン境界コンセンサスに従い且つ他のACPと良く整列するACP配列を与えるようにゲノム配列から再予測した。新しいcDNA配列を配列番号11として示し、タンパク質配列を配列番号12として示す。
【0073】
2.2 PCRによる増幅及びEK/LICクローニング
PCRを使用して、PPTB及びACPをコードするcDNAクローンを作り出した。ACPは、N末端から〜50アミノ酸(A. fumigatusにおいては、配列番号12のアミノ酸1−49)の除去により翻訳後にプロセシングされるため、切断された形態のACPを作り出した。KOD Hot Start DNAポリメラーゼ(Novagen)を使用してPCRを行い、A. fumigatus cDNAから、PPTBに対応する489bpのDNA断片及びACPに対応する297bpのDNA断片を増幅した。PCRプライマー対を以下に示す。使用したアニーリング温度は、PPTBについては60℃、ACPについては50℃であった。
【0074】
PPTBセンス;配列番号13;GACGACGACAAGATGAAACTAATTCCTTTTCCA
PPTBアンチセンス;配列番号14;GAGGAGAAGCCCGGTTCAACCAGCCGCAAGCAC
【0075】
ACP1F;配列番号15;gacgacgacaagatgtctgcccccgccggt
ACP1R+stop;配列番号16;GAGGAGAAGCCCGGTTAGTGGGCATCAGGCTGGGC
【0076】
PPTB産物は、配列番号7にプライマー由来の突出を加えたものに相当した;ACP産物は、配列番号17にプライマー由来の突出を加えたものに相当した。
【0077】
PCR産物をアガロースゲルから切り取り、精製し、T4 DNAポリメラーゼで処理して相補的突出末端を作り出し、そしてEk/LICクローニングキットマニュアル(Novagen)に記載されたように、pET30 Ek/LICベクターにアニールさせた。NovaBlue GigaSinglesコンピテント細胞を熱ショックによる形質転換のために使用した。形質転換混合物をLB寒天/カナマイシン(30μg/ml)上に蒔いた。プラスミドDNAを、製造者の使用説明書によりQiaprepスピンミニプレップキット(Qiagen)を使用してミニプレップによりいくつかのコロニーから調製し、上記プライマーを使用するPCR、並びにpET30-PPTBについてはXmnI、pET30-ACPについてはBglII及びSalIを用いた制限酵素消化により、インサートの存在について試験した。試験した全てのクローンは、関連するインサートを含んでいた。PPTB及びACPクローン由来のおよそ1μgのプラスミドをDNA配列決定に送った;全てのインサート配列に誤りがないことを見出した。
【0078】
最初の発現研究(以下を参照のこと)の後、PPTBが不溶性であることを見出した。従って、PPTB cDNAを、HindIII/KpnI制限酵素部位を介してpET43.1b(Novagen)(溶解性を促進するためのNusA融合タグ、及び選択マーカーとしてアンピシリン耐性遺伝子を含む)にクローン化した。エレクトロポレーションによるPPTB-pET43.1bコンストラクトを用いたGenehogsの形質転換の後、PCR並びにKpnI及びHindIIIを用いた制限酵素消化により、正しいインサートを含むものとして4クローンを特定した。クローンPPTB-43.1b-1を配列決定し、誤りがないことを見出した。
【0079】
2.3 A. fumigatus PPTB及びACP融合タンパク質の過剰発現
BL21(DE3)Star細胞を、熱ショックにより、pET30-PPTB及びpET30-ACPプラスミドで形質転換し、カナマイシン(30μg/ml)及びグルコース(1%w/v)を添加した10ml Luria Bertani(LB)培地中で、一晩振盪しながら37℃にて増殖させた。1mlの一晩の培養物を10ml LB/カナマイシン/グルコースに添加し、600nmにおける光学密度が0.5−1に達するまで(約2時間)、37℃にて振盪しながら増殖させた。次いで、0.5mMの終濃度までIPTGを添加することにより発現を誘導し、培養物をおよそ20時間、20℃にて振盪しながら増殖させた。4℃にて15分間、Falcon 6/300遠心分離機で3000rpm(2000g)にて遠心分離することにより細菌細胞を集め、上清を捨てた。Novagenマニュアルに記載されたように、ベンゾナーゼ(25U/ml)及びrLysozyme(1KU/ml)を添加したBugbusterで、細胞のペレットを溶解させた。Novagenマニュアルに記載されたように、10μlの試料をSDS−PAGE及びクマシー染色により分析した。発現したタンパク質が可溶性であるか否か又は不溶性の封入体中に存在するか否かを確認するために、10μlの溶解した試料を、4℃にて15分間、16000gにて遠心分離した。次いで、上清及びペレット(10μl HO中に再懸濁させた)をSDS−PAGEにより分析した。
【0080】
PPTBタンパク質(21.6kDa)は、部分的にのみ可溶性であることが見出され、精製及び保存で溶液から出てくることが観察された。従って、PPTBを異なるベクター、pET43.1b(Novagen)にクローン化し、公知の溶解性促進剤であるNusAとの融合タンパク質としてPPTBを発現させた。pET43.1b(上記を参照のこと)への更なるクローン化の後、20℃における0.5mM IPTGを用いた20時間の誘導後、可溶性PPTB−NusA(80kDa)をBL21(DE3)細胞により発現させることに成功した。0.5mM IPTGを用いた20時間の誘導後、ACP融合タンパク質(14.5kDa)を20℃にて発現させることに成功した。
【0081】
2.4 PPTB及びACPの精製
PPTB及びACPを大量(50−400ml)培養から精製した。Novagenマニュアルに記載されたように、ベンゾナーゼ(25U/ml)、rLysozyme(1KU/ml)及び10mMイミダゾールを添加したBugbusterで、細胞を溶解させ、4℃にて20分間、16000gにて遠心分離することにより残骸を除去した。製造者の使用説明書(Novagen)によりNi-NTA His結合樹脂を使用して、PPTB及びACPタンパク質を上清から精製した。250mMイミダゾールを使用して、タンパク質を樹脂から溶出した。次いで、製造者の使用説明書に従ってPD10脱塩カラム(GE Healthcare)を使用して、調製物を100mM Tris−HCl、10mM MgCl、pH7.5へと移した。画分をゲル電気泳動により分析した。
【0082】
3.A. fumigatus PPTBアッセイの開発
3.1 イントロダクション
現在利用可能なアッセイは、過度に労働集約的であるか、又はそれらが複数の工程を必要とする(即ち、それらが均一でない)ため、創薬の重要な部分であるハイスループットスクリーニングに適していない(例えば、Lambalot & Walsh (1995) J. Biol. Chem 270, 24658-24661;Stuible et al. (1998) J. Biol. Chem. 273, 22334-22339;EP1795608;Mofid et al. (2002) J. Biol. Chem., 277, 17023-17031)。
【0083】
本研究において、PPTBアッセイは、PPTB活性が標識をACP上に転移させるように、蛍光標識されたコエンザイムA分子(CoA−Bodipy TMR)を使用した。従って、PPTB反応の後、PPTB反応の生成物をSDS−PAGEゲル上で分離すること及びACPのバンドが蛍光性になっているか否かを調べるために紫外光を照射することができた。ハイスループットスクリーニングのために、PPTBアッセイは、蛍光偏光法のアプローチを使用した。これは、それらの蛍光寿命中に顕著な分子運動をするフルオロフォアによってもたらされる平面偏光の配向の変化を測定する。この寿命は、励起光子の吸収と蛍光を通じた光子の放射との間の期間として定義される。CoA−Bodipy TMR分子の回転は、それが顕著により大きいサイズの分子(この場合ACP)に結合する場合に減少する。回転の減少は、Bodipy TMR分子が平面偏光を解消する能力の低下を引き起こし、それが測定され得る。
【0084】
3.2 Bodipy TMR−標識されたCoA(CoA−Bodipy TMR)の作製
Bodipy TMRヨードアセトアミド(iodoacetimide)(Molecular Probes)をコエンザイムAの末端−SH基に結合することにより、蛍光コエンザイムAを作製した。60mMコエンザイムAストックを無菌ddHO中に調製した。15mM Bodipy TMRヨードアセトアミドストックを、使用の直前にDMSO中に調製し、光から保護した。Bodipy TMR:CoAが1.5:1〜1:1の間のモル比を与えるように、CoAをBodipy TMRヨードアセトアミドに添加した。次いで、標識反応において使用したBodipy TMR 1mgにつき2.5mlのバッファー(100mM Bis−Tris、10mM MgCl pH7.5)を添加することにより容量を増加させ、試料をボルテックスし、氷上で30分間、次いで室温にて10分間インキュベートした。過剰な未反応のBodipy TMRヨードアセトアミド標識を酢酸エチルで抽出することにより除去した;10ml酢酸エチルを添加し、ボルテックスにより混合し、層を分離させ、有機層を除去した。これを、酢酸エチルが清澄なままで残り、且つ紫外光下で蛍光を発しなくなるまで、繰り返した。標識反応において使用したBodipy TMRヨードアセトアミド1mgにつき、およそ1.5mlの強烈なピンク色の溶液が残った。−80℃における保存の前に、CoA−Bodipy TMRをアッセイバッファーで1:5に希釈し、アリコートにした。
【0085】
3.3 PPTBアッセイ
予備的研究は、組換えPPTBが、マグネシウムイオン及びCoA−Bodipy TMRの存在下で、組換えACP(SDS−PAGEゲル上で分離した)を標識できることを示し、PPTBが機能的であることを示した。標識反応は、EDTAの添加によって阻害された。蛍光偏光法を使用して更なる実験を行ない、ハイスループットスクリーニングのためにPPTBアッセイを最適化した。
【0086】
4.A. fumigatus PPTBの阻害剤についてのハイスループットスクリーニング
4.1 装置
PPTB阻害剤についてのハイスループット蛍光偏光スクリーニングを、以下の装置を使用して黒色平底384ウェルプレート中で行なった:ディスペンスカセット及びプレートアダプターを備えたThermo Labsystems Multidrop 384マシン(Multidrop(登録商標)384);Tecan Genesis Freedom及び235μlチップヘッドを備えたTecan Te-Mo自動液体ハンドリングロボット、これらに加えて適切なPC/ベースユニット/ソフトウェア;235μlチップヘッドを備えたPerkinElmer Minitrak自動液体ハンドリングロボット、これに加えて適切なPC/ベースユニット/ソフトウェア;並びにPerkinElmer Fusion-Alpha-FP HTプレート読み取り分光光度計、これに加えて適切なFPフィルター(励起フィルター540nm;発光フィルター580nm、両フィルターとも20nmバンド幅を有する)。
【0087】
4.2 ストック溶液
バッファーA:62.5mM Bis−Trisバッファー(pH6.75)、12.5mM MgCl。アッセイにおける終濃度は、50mM Bis−Tris及び10mM MgClだった。
【0088】
CoA−Bodipy TMR−ACP混合物:11.6ml ACP(3.421mg/ml)+1854.7μl CoA−Bodipy TMRストック(上記セクション3.2を参照のこと)を、4℃にてバッファーAで529.9mlに調製した。
【0089】
PPTB酵素:典型的には50〜100ng全タンパク質/ウェルで、PPTB酵素を使用した;時間及びタンパク質濃度の両方に関して反応直線性を与える濃度で、酵素を使用した。これは各酵素バッチについて決定しなければならなかった。酵素添加を必要とするスクリーニングの段階の直前に、1アリコートの酵素を氷上で解凍し、適切な容量のバッファーAへと洗い流した。
【0090】
停止試薬;60mM EDTA pH8.0。
【0091】
4.3 PPTBスクリーニングの実行
アッセイを黒色平底384ウェルプレート中で行なった。最初に、化合物ライブラリーをスクリーニングし、可能性のあるヒットを特定した:アッセイにおいて1%v/v DMSO水中で0.02mg/mlの終濃度(400ダルトンの分子量を有する化合物について50μMに相当する)を与えるように、化合物の溶液をウェルへとまず分注した。次いで、20μlのPPTB酵素溶液をウェルに加えた;無酵素対照ウェルには20μlのバッファーAを入れた。20μlのCoA−Bodipy TMR−ACP混合物を全てのウェルに加え、プレートを室温にて30分間インキュベートした。反応を25μlの停止試薬の添加により終結させ、その後プレートを分光光度計で読み取った。少なくとも80%の阻害を与える化合物を可能性のあるヒットとみなした。
【0092】
スクリーニングの質を、パラメーターZ’、%CV及びWを使用して測定し、これらは以下のように定義される(式中、「SD」は標準偏差を表し、「100%対照」は、全てのウェルが阻害されていない反応を含む384マイクロウェルプレートであり、「0%対照」は、全てのウェルが完全に阻害された反応を含むか、又は酵素を含まない384マイクロウェルプレートである):
【0093】
Z’=1−((3SD 100%対照+3SD 0%対照)/(平均 100%対照−平均 0%対照));
【0094】
%CV=(プレート全体からのデータの標準偏差/プレート全体からのデータの平均)x100;これは0%対照を有するプレート(%CV0%)又は100%対照を有するプレート(%CV100%)について算出され得る。
【0095】
W=(100%対照−0%対照)/√((SD 100%対照)+(SD 0%対照)))
【0096】
驚いたことに、アッセイプレート中の反応生成物は、アッセイ後、少なくとも5日間安定であることが見出された:従って1時間後、アッセイの質パラメーターは以下の値を示した;Z’=0.83、%CV100%=3.4%及びW=22.9;一方5日後、アッセイの質パラメーターはZ’=0.77、%CV=2.3%及びW=17.9の値を示した。また、標識されていないコエンザイムAを使用してアッセイを行なった場合、CoAについてのIC50は、1日目に6.02μM、105時間後に5.90μMであった。この安定性は、多数の化合物をスクリーニングすること及び多数のプレートを読み取ることを可能にした。検出方法として蛍光偏光法を使用する場合には、例えば、単純な吸光分光光度法(absorbance spectrophotometry)を用いる場合よりも個々のウェルを読み取るのに長い時間がかかるため、長い安定時間は特に重要である。10,000個の化合物について、アッセイの最初の段階(ストックからの化合物の分注から反応の停止まで)は、典型的には7時間かかった。プレートの読み取りは60時間かかったが、10時間も可能かもしれない。
【0097】
次いで、40μg/ml−400pg/mlの濃度範囲(終濃度;400ダルトンの分子量の化合物について100μM−1nMに相当する)にわたり、第二のスクリーニングにおいて可能性のあるヒットを試験した。試料データを図1(ハイスループットスクリーニングから特定した4つの化合物についての第二のスクリーニングの結果を示す)に示す。2つの化合物(A及びB)は、優れたIC50値を有する阻害剤であることを見出し、一方2つ(C及びD)は不活性であることを見出した。典型的には、10μM以下のIC50を有する化合物を優れた阻害剤とみなし、阻害曲線がシグモイドであり、5%〜95%阻害の範囲が阻害剤濃度の2対数スパン(two log span)内であることを、好ましいと見なした。
【0098】
5.Candida albicansにおけるPPTBの必須性
5.1 イントロダクション
A. fumigatus PPTBのCandida albicansホモログは、CaO19.4812である。C. albicansは二倍体生物であるため、C. albicansにおけるPPTBの重要性を決定するためには両方の対立遺伝子を考慮しなければならない。一方の対立遺伝子を完全にノックアウトし、他方の対立遺伝子を調節可能なプロモーターMET3の制御下に置くことを戦略とした。MET3プロモーターは、メチオニン及びシステインの存在により下方調節される(Care et al, 1999 Molecular Microbiology 34, 792-798)。
【0099】
2回の相同的形質転換を行った;1回目はPPTB開始コドンの直前にMET3プロモーターを挿入するためであり、2回目は定方向突然変異誘発により残っている対立遺伝子を破壊するためである。C. albicans三重栄養要求株SN76(ura3/arg4/his1)を実験に使用した。プロモーター置換は、MET3プロモーター及びURA3マーカーからなるコンストラクトを使用して行なった。定方向突然変異誘発は、ARG4マーカーを有するコンストラクトを使用して実施した。PPTBがこの真菌の増殖に必須であれば、残っている遺伝子のコピーがメチオニン及びシステインの存在により下方調節された場合、変異体は増殖しないはずである。しかしながら、メチオニン及びシステインの非存在下では、PPTBが発現し、変異体は増殖するはずである。
【0100】
5.2 方法及び結果
プロモーター置換コンストラクトを融合PCRにより作製した。まず、3つのPCR産物を、55℃のアニーリング温度及び68℃の伸長温度でKOD DNAポリメラーゼ(Novagen)を使用して調製した。PPTB遺伝子の5’領域の391bpを、プライマーPPTBF(配列番号30)及びPPTBMIDR(配列番号31)を使用してSN76ゲノムDNAから増幅した。2733bpのURA3-MET3コンストラクトを、プライマーURA3MET3F(配列番号32)及びURA3MET3R.(配列番号33)を使用して調製した。C.albicans MET3プロモーター(Care et al, 1999 Molecular Microbiology 34 (4), 792-798)がRPS10部位の代わりにURA3遺伝子の下流に挿入されたCIP10ベクター(Murad et al, 2000 Yeast 16, 325-327)からなるpMET3プラスミドを鋳型とした。PPTBコード配列の最初の394bpを、プライマーPPTBMIDF(配列番号34)及びPPTBR(配列番号35)を使用してSN76ゲノムDNAから増幅した。
【0101】
配列番号30:PPTBF:CACGGTTTCACCAGTGTCTG
配列番号31:PPTbMIDR:gatctaggcttggccaagtcggccgCTGGAAAAATTTCCCCGAGA
配列番号32:URA3MET3F:CGGCCGACTTGGCCAAGCCTAGATC
配列番号33:URA3MET3R:TGGGGAGGGTATTTACTTTTAAATA
配列番号34:PPTbMIDF:TatttaaaagtaaataccctccccaATGCCAAAAGTAGGCACTGT
配列番号35:PPTBR: CCTTCTGACGAAGTACTGTAGCAA
【0102】
PCR産物は、それらの末端に、反応液中に存在する3つのPCR産物と共にPPTBF(配列番号30)及びPPTBR(配列番号35)プライマーを使用する最後の融合PCR反応において産物を融合させる25bpの重複配列を含んだ。3543bpの産物を得た。この産物を使用して、酢酸リチウム法(Walther and Wendland, 2003 Current Genetics 42, 339-343)を使用してC. albicans SN76を形質転換し、続いて、30℃にて3日間、SD寒天(アミノ酸を含まない1X酵母窒素源基礎培地+2%グルコース+2% bacto寒天)+アルギニン(0.2mM)+ヒスチジン(0.2mM)プレート上でインキュベートした。結果として得られた形質転換体をSD寒天+アルギニン+ヒスチジン上に接種し、4日間インキュベートした。PCRにより、MET3プロモーターの正しい挿入について、コロニーをスクリーニングした。これらの変異体の1つを2回目の形質転換のために選択した。この条件的ヘテロ接合体をPPTB#2と名づけた。
【0103】
第二の対立遺伝子をノックアウトするために、鋳型としてのARG4マーカー(Dennison et al, 2005 Fungal Genetics and Biology 42, 737-748)を含むCaARG4コンストラクト並びに長いプライマーPPTBARGF(配列番号36)及びPPTBARGR(配列番号37)(ここで20bpはプラスミド結合領域に相当し、100bpは標的挿入領域に相同的であった)を使用して、PCRにより、第二の形質転換コンストラクトを作製した。55℃のアニーリング温度及び68℃の伸長温度でKOD DNAポリメラーゼを使用した。
【0104】
配列番号36:PPTBARGF:GGAAATTTTTCCAGCATCGAGTTAGTAGCTCTCTGTACCTTAATATCTACTACATGTGATGCCAAAAGTAGGCACTGTATTGGGTATAGGTGTTGATATCCCAGGGTTTTCCCAGTCACG
配列番号37:PPTBARGR:CTTTAGATTTGATAAACCTTCTGACGAAGTACTGTAGCAATTACAAGAGAATCATCATGTGAGATACTAAGATGGAACTCTTCATCAGACAATTTGTATCACTAAAGGGAACAAAAGC
【0105】
100bpのPPTB遺伝子の5’及び3’隣接領域が隣接するARG4マーカーからなる2486bpの産物を得た。この産物を使用して、酢酸リチウムプロトコールを使用してPPTB#2を形質転換し、続いて、30℃にて3日間、SD寒天+ヒスチジン上でインキュベーションを行なった。結果として得られた形質転換体をSD寒天+ヒスチジン上に再接種した。選択したコロニーをSD培地中に接種し、30℃にて一晩インキュベートし、MasterPure Yeast DNA抽出キット(Epicentre Biotechnologies)を使用してゲノムDNAを単離した。以下のプライマー対を使用して、5回のPCR反応を実施し、両方の形質転換コンストラクトの正しい挿入及び野生型対立遺伝子がないことを特定した:PPTBUP(配列番号38)及びURAMET3INTR(配列番号39)(期待された産物のサイズ982bp);PPTBD(配列番号40)及びURAMET3INTF(配列番号41)(期待された産物のサイズ=1310bp);PPTBUP(配列番号42)及びARGINTR(配列番号43)(期待された産物のサイズ=1667bp);PPTBD(配列番号40)及びARGINTF(配列番号44)(期待された産物のサイズ=1789bp);PPTBF(配列番号30)&PPTBR(配列番号35)野生型のみについて期待された産物のサイズ=785bp)。
【0106】
配列番号38:PPTBUP:GCTGTTCCCAAGTTTGGTGT
配列番号39:URAMET3INTR:TGCTACTGGTGAGGCATGAG
配列番号40:PPTBD:CAAGACCCATCACAATGTCG
配列番号41:URAMET3INTF:attgctgtggatcacgtgc
配列番号42:PPTBUP:GCTGTTCCCAAGTTTGGTGT
配列番号43:ARGINTR:GCCCATCTAATAGGTTGAGC
配列番号44:ARGINTF:gcaattcttgaacgagcaca
【0107】
形質転換体の1つが、望ましい遺伝子型(一方の対立遺伝子がMET3プロモーターの制御下にあり、第二の対立遺伝子が完全にノックアウトされている)を有することが示された。この条件的ヌル変異体をPPTB#11と名づけた。PPTB#11を、一晩SD培地+ヒスチジン中で増殖させた。OD600を測定し、SD+ヒスチジン中でOD600を0.1に調節した。5μlのこの培養物及びその後の5倍希釈物を、2.5mMメチオニン及び2.5mMシステインを含むか又は含まないSD寒天+ヒスチジン+アルギニン+ウリジン培地上に接種した。SN76親株及びPPTB2を対照として使用した。プレートを30Cにて4日間インキュベートし、その結果を図3に示す。インキュベーション後、SN76及びPPTB#2は、メチオニン及びシステインの存在下及び非存在下で増殖した。条件的ヌル変異体PPTB#11は、メチオニン及びシステインの非存在下でのみ増殖し、それによってCa019.4812がC.albicansの増殖に必須の遺伝子であることを示した。
【0108】
6.組換えC. albicans PPTB及びACPの製造
6.1 C. albicans PPTBのクローン化、発現及び精製
Candida albicans PPTB、CaO19.4812は、単一エキソン遺伝子である;DNA配列を配列番号18に、タンパク質配列を配列番号19に示す。C. albicansは、CTGコドンを、他の生物のほとんどにおいて見られるロイシンの代わりにセリンとして翻訳するが、この遺伝子内にはCTGコドンはない。プライマー(配列番号20(SK_CPPTB-F)及び配列番号21(SK_CPPTB-R))並びにKOD Hot Start DNAポリメラーゼ(Novagen)を使用して、C. albicans ゲノムDNAからPCRによりC. albicans PPTB遺伝子を作り出した。
【0109】
配列番号20:SK_CPPTB-F:GAC GAC GAC AAG ATG CCA AAA GTA GGC ACT GTA T
配列番号21;SK_CPPTB-R;GAG GAG AAGCCC GGT TTA GAT TTG ATA AAC CTT CT
【0110】
PCR産物をT4 DNAポリメラーゼで処理し、pET43.1に連結し、Novablue細胞に形質転換した。PCR及び制限酵素消化により、正しいインサートについてコロニーを確認した。結果として得られたpET43-PPTBコンストラクトを使用して、BL21細胞を形質転換した。タンパク質発現の小規模誘導及びPPTBインサートの配列決定を行ない、タンパク質製造に適した誤りのないクローンを特定した。
【0111】
アッセイ用のC. albicans PPTBを製造するために、pET43.1-PPTBを含む細胞を使用して、12ml LB/アンピシリン(100μg/ml)/グルコース(1%)に接種し、培養物を37℃にて一晩増殖させた。次いで、4mlのこのものを100ml LB/アンピシリン/グルコースに加え、OD600が0.747に達するまで、2時間20分間、培養物を増殖させた。次いで、IPTGを0.3mMの終濃度まで加え、培養物を15℃にて一晩振盪しながらインキュベートした。細胞のペレットを遠心分離により採取し、1つの50mlペレットを3ml BugBuster、25U/mlベンゾナーゼ、1KU/ml.リゾチーム、10mMイミダゾールで溶解し、その後、4℃にて20分間、16000gにて遠心分離することにより、ライセートを清澄化した。Ni-NTA His結合樹脂を使用した更なる精製工程を、セクション2.4に記載したように行なった。
【0112】
A. fumigatus ACPを基質として使用したC. albicans PPTB活性についてのアッセイは、弱いシグナルしか与えなかった。従って、組換えC. albicans ACPを製造し、C. albicans 酵素がC. albicans ACPをその基質として必要とするか否かを決定した。
【0113】
6.2 C. albicans ACPのクローン化、発現及び精製
BLAST検索は、C. albicansが2つのACP、CaO19.8439(ACPg)、及びCaO19.9975(ACPe)を有するが、ACPgがS. cerevisiaeの唯一のACPにより良く似ていることを示した。配列番号及び切断後の成熟N末端の位置(上記2.2を参照のこと)を表1に示す。両方ともCTGコドンを有さない単一エキソン遺伝子である。
【0114】
【表1】

【0115】
KOD-Hot Startポリメラーゼ、C. albicans gDNA及び以下のプライマーを使用して、PCRによりC. albicans ACPのcDNAを作り出した:
【0116】
ACPg;CaO19.8439プライマー
配列番号26;SK_GoodACP-F;GACGAC GAC AAG ATG GTT GCC CCA CCA ATT TC
配列番号27;SK_GoodACP-R;GAG GAG AAG CCC GGT TTA TTT AGA TTC TTC TTT GT
【0117】
ACPe;CaO19.9975プライマー
配列番号28;SK_EvilACP-F;GAC GAC GAC AAG ATG AGT GCC TTC CCA GAA TT
配列番号29;SK_EvilACP-R;GAG GAG AAG CCC GGT TTA ACA AGA ATC TGG TTG AG
【0118】
PCR産物をT4 DNAポリメラーゼで処理し、pET30に連結し、Novablue細胞に形質転換し、LB/カナマイシン(30μg/ml)上に蒔いた。コロニーをPCRにより試験し、インサートについて確認し、次いでDNAを調製し、制限酵素消化及び配列決定により更に確認した。誤りのないDNAをE. coli BL21細胞に形質転換し、試験誘導が正しい分子量の可溶性タンパク質を生じさせることを見出した。
【0119】
両方のACPについて、pET30-ACPを含むBL21細胞を、LB/カナマイシン(30μg/ml)/グルコース(1%)中で一晩増殖させた。次いで、3mlの培養物を50ml LB/カナマイシン/グルコースに接種し、37℃にて2時間増殖させ、その後、タンパク質発現をIPTG(終濃度0.5mM)の添加により誘導し、その後、細胞を20℃にて一晩振盪しながらインキュベートした。次いで、細菌のペレットを遠心分離により集め、タンパク質を上記のように精製した(セクション2.4)。PD10脱塩カラムを使用して、ACP試料を100mM Tris、10mM MgCl、pH7.5に交換した。
【0120】
6.3 C. albicans PPTBアッセイ.
A. fumigatus及びC. albicansの両方に由来するPPTB及びACP並びにCoA−Bodipy TMRを使用して、PPTBアッセイを構築し、反応生成物をSDS−PAGEゲル上で分離し、紫外光下で可視化した。C. albicans PPTBは、ACPgを強くパンテテイニル化したが、ACPe及びA. fumigatus ACPは弱くパンテテイニル化された。A. fumigatus PPTBは、A. fumigatus ACP及びACPgの両方をパンテテイニル化することができたが、ACPeは弱くパンテテイニル化された。従って、C. albicans PPTBは、正しい機能のためにC. albicans ACPgを必要とする。
【0121】
7.C. albicans PPTB阻害剤についてのハイスループットスクリーニング
C. albicans PPTB及びC. albicans ACPgを使用し、タンパク質濃度を調節して、A. fumigatus PPTB(セクション4)について上記記載したように、C. albicans PPTBの阻害剤についてのスクリーニングを行なった。A. fumigatus PPTBに対して活性がある2つの化合物を、C. albicans酵素に対して試験した;結果を図2に示す。両方の化合物ともに、C. albicans酵素の優れた阻害剤であることを見出した;化合物Eが9.8μMのIC50、化合物Fが7.1μMのIC50を有することを見出した。
【0122】
配列表

配列番号1
GCGTTGATGCAGCTGTGTAT

配列番号2
TAGCCGAGGCAAGTAGCAGT

配列番号3
AATTCGCCTCAAACAATGCTCTTCACCCTCTTCGCGGGTCTGAAATACCCTCACCTGGCAACAGCAATTGGCGCTTCATGGCTGTTTTTCCGATCTCTCTACTTGTACGGCTATGTGTACTCGGGTAAGCCACAAGGCAAGGGCAGATTGCTGGGAGGTTTCTTCTGGTTTTCTCAAGGCGCTCTGTGGGCTCTGAGTGTGTTTGGTGTTGCCAAAGACATGATCTCTTACTGAGAGTTATTCTGTGTCTGACGAAATATGTTGTGTATATATATATATGTACGTTAAAAGTTCCGTGGAGTTACCAGTGATTGACCAATGTTTTATCTTCTACAGTTCTGCCTGTCTACCCCATTCTCGCTGTACCTGACTACAGAGTAGTTTAATTGTGGTTGACCCCACAGTCGGAGGCGGAGGAATACAGCACCGATGTGGCCTGTCTCCATCCAGATTGGCACGCAATTTTTACACGCGGAAAAGATCGAGATAGAGTACGACTTTAAATTTAGTCCCCGGCGGCTTCTATTTTAGAATATTTGAGATTTGATTCTCAAGCAATTGATTTGGTTGGGTCACCCTCAATTGGATAATATACCTCATTGCTCGGCTACTTCAACTCATCAATCACCGTCATACCCCGCATATAACCCTCCATTCCCACGATGTCGTCCAAGTCGCAATTGACTTACGGTGCTCGAGCCAGCAAGCACCCCAATCCTCTGGCAAAGAGACTTTTTGAGATTGCCGAAGCAAAGAAGACAAACGTTACCGTCTCTGCTGATGTGACGACAACCCGAGAACTCCTGGACCTCGCTGACCGTACGGAAGCTGTTGGATCCAATACATATGCCGTCTAGCAATGGACTAATCAACTTTTGATGATACAGGTCTCGGTCCCTACATCGCCGTCATCAAGACACACATCGACATCCTCACCGATTTCAGCGTCGACACTATCAATGGCCTGAATGTGCTGGCTCAAAAGCACAACTTTTTGATCTTCGAGGACCGCAAATTCATCGACATCGGCAATACCGTCCAGAAGCAATACCACGGCGGTGCTCTGAGGATCTCCGAATGGGCCCACATTATCAACTGCAGCGTTCTCCCTGGCGAGGGCATCGTCGAGGCTCTGGCCCAGACCGCATCTGCGCAAGACTTCCCCTATGGTCCTGAGAGAGGACTGTTGGTCCTGGCAGAGATGACCTCCAAAGGATCGCTGGCTACGGGCGAGTATACCAAGGCATCGGTTGACTACGCTCGCAAATACAAGAACTTCGTTATGGGTTTCGTGTCGACGCGGGCCCTGACGGAAGTGCAGTCGGATGTGTCTTCAGCCTCGGAGGATGAAGATTTCGTGGTCTTCACGACGGGTGTGAACCTCTCTTCCAAAGGAGATAAGCTTGGACAGCAATACCAGACTCCTGCATCGGCTATTGGACGCGGTGCCGACTTTATCATCGCCGGTCGAGGCATCTACGCTGCTCCCGACCCGGTTGAAGCTGCACAGCGGTACCAGAAAGAAGGCTGGGAAGCTTATATGGCCAGAGTATGCGGCAAGTCATGATTTCCTCTTGGAGCAAAAGTGTAGTGCCAGTACGAGTGTTGTGGAGGAAGGCTGCATACATTGTGCCTGTCATTAAACGATGAGCTCGTCCGTATTGGCCCCTGTAATGCCATGTTTTCCGCCCCCAATCGTCAAGGTTTTCCCTTTGTTAGATTCCTACCAGTCATCTAGCAAGTGAGGTAAGCTTTGCCAGAAACGCCAAGGCTTTATCTATGTAGTCGATAAGCAAAGTGGACTGATAGCTTAATATGGAAGGTCCCTCAGGACAAGTCGACCTGTGCAGAAGAGATAACAGCTTGGCATCACGCATCAGTGCCTCCTCTCAGACAGAATTCGAGCTCGGTACCCGGGGATCCTCTAGCTCGAGCACGTGTTGACAATTAATCATCGGCATAGTATATCGGCATAGTATAATACGACAAGGTGAGGAACTAAACCATGGCCAAGTTGACCAGTGCCGTTCCGGTGCTCACCGCGCGCGACGTCGCCGGAGCGGTCGAGTTCTGGACCGACCGGCTCGGGTTCTCCCGGGACTTCGTGGAGGACGACTTCGCCGGTGTGGTCCGGGACGACGTGACCCTGTTCATCAGCGCGGTCCAGGACCAGGTGGTGCCGGACAACACCCTGGCCTGGGTGTGGGTGCGCGGCCTGGACGAGCTGTACGCCGAGTGGTCGGAGGTCGTGTCCACGAACTTCCGGGACGCCTCCGGGCCGGCCATGACCGAGATCGGCGAGCAGCCGTGGGGGCGGGAGTTCGCCCTGCGCGACCCGGCCGGCAACTGCGTGCACTTCGTGGCCGAGGAGCAGGACTGAGAATTCCCGGGGATCCTCTAGAGTCGACCTGCAGGCATGCAAGCTTGCCAACGACTACGCACTAGCCAACAAGAGCTTCAGGGTTGAGATGTGTATAAGAGACAGCTGTCTTAATGAATCGGCCAACGCGCGGGGAGAGGCGGTTTGCGTATTGGGCGCTCTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGGACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCTAAGAAACCATTATTATCATGACATTAACCTATAAAAATAGGCGTATCACGAGGCCCTTTCGTCTCGCGCGTTTCGGTGATGACGGTGAAAACCTCTGACACATGCAGCTCCCGGAGACGGTCACAGCTTGTCTGTAAGCGGATGCCGGGAGCAGACAAGCCCGTCAGGGCGCGTCAGCGGGTGTTGGCGGGTGTCGGGGCTGGCTTAACTATGCGGCATCAGAGCAGATTGTACTGAGAGTGCACCATATGCGGTGTGAAATACCGCACAGATGCGTAAGGAGAAAATACCGCATCAGGCGCCATTCGCCATTCAGGCTGCGCAACTGTTGGGAAGGGCGATCGGTGCGGGCCTCTTCGCTATTACGACAGCTGTCTCTTATACACATCTCAACCATCATCGATGAATTTTCTCGGGTGTTCTCGCATATTGGCTCG

配列番号4:
GTTCTTGGTTTCACCTCTGC

配列番号5:
GAGCCAATATGCGAGAACACCCG

配列番号6:
CGACTACGCACTAGCCAACA

配列番号7:
ATGAAACTAATTCCTTTTCCATATCCCCTCAATATAGGGACGGATGTCGTTCATCTCCCCCGAATTCTCCGCCTCATCAACCGTCCCGACTACTTCCACCGCTTCACCCGGCGGATCCTCCACGAACAGGAGCAGCGAGACTTCCGCACCAGATTCTCCCTCCCACCACCATCGTCCGGCGCAGAAAAGACTGGACTCAATCCAATAACGCCAGATATGGCGCGCTGGCTGGCTGGCCGTTTCGCGGCAAAAGAGGCAGCACGTAAGGCTGCTCCGGCCGGCGCGTCATCCCTCGGGTGGAAGGATGTTATTGTTAGGGTTGGTGAGGCCGATAAGGGAAGACCGGAGATTGTGTACTTGGATCCCATGGGCTGTGGAGAAACCGGCGGAGGCAGAGTAGGCAAGCTGTCTATCTCGCATGATGGGGATTATGTGGTTGCTACGGTGCTTGCGGCTGGTTGA

配列番号8:
TCGGTGGGTTTGATGTAATC

配列番号9:
GACAGGCGGAGATAATGATG

配列番号10:
MKLIPFPYPLNIGTDVVHLPRILRLINRPDYFHRFTRRILHEQEQRDFRTRFSLPPPSSGAEKTGLNPITPDMARWLAGRFAAKEAARKAAPAGASSLGWKDVIVRVGEADKGRPEIVYLDPMGCGETGGGRVGKLSISHDGDYVVATVLAAG

配列番号11:
ATGTTCCGTTCCGCTGTCGTCCGCTCGTTGAGAGCTTCCGTTCCCCGTGCTGTCAGGACTCCTGCTGCCTTCCAGATCCGTAGCTCTCCTGTTGCTCGTCCTGCTCAATTCGCCCCTCGCTTTGCTTACCAGGGTGTCCGCCTCTACTCTGCCCCCGCCGGTCTGAACAAGGAGGAGGTTGAGGGCCGGATAGTCAACCTCTTGAAGAACTTTGACAAGGTCTCCGATGCCAGCAAGATCAACGGCTCTTCCCACTTCTCGAACGACCTTGGTCTGGATTCCCTGGATACTGTTGAGGTTGTGATGGCTATTGAGGAGGAGTTCAGCATTGAGATCCCCGACAAGGAGGCCGACGCTATCCACAGTGTTGACAAGGCTGTTGAGTACATCCTTGCCCAGCCTGATGCCCACTAA

配列番号12: MFRSAVVRSLRASVPRAVRTPAAFQIRSSPVARPAQFAPRFAYQGVRLYSAPAGLNKEEVEGRIVNLLKNFDKVSDASKINGSSHFSNDLGLDSLDTVEVVMAIEEEFSIEIPDKEADAIHSVDKAVEYILAQPDAH

配列番号13:
GACGACGACAAGATGAAACTAATTCCTTTTCCA

配列番号14:
GAGGAGAAGCCCGGTTCAACCAGCCGCAAGCAC

配列番号15:
GACGACGACAAGATGTCTGCCCCCGCCGGT

配列番号16:
GAGGAGAAGCCCGGTTAGTGGGCATCAGGCTGGGC

配列番号17:
ATGTCTGCCCCCGCCGGTCTGAACAAGGAGGAGGTTGAGGGCCGGATAGTCAACCTCTTGAAGAACTTTGACAAGGTCTCCGATGCCAGCAAGATCAACGGCTCTTCCCACTTCTCGAACGACCTTGGTCTGGATTCCCTGGATACTGTTGAGGTTGTGATGGCTATTGAGGAGGAGTTCAGCATTGAGATCCCCGACAAGGAGGCCGACGCTATCCACAGTGTTGACAAGGCTGTTGAGTACATCCTTGCCCAGCCTGATGCCCACTAA

配列番号18:
ATGCCAAAAGTAGGCACTGTATTGGGTATAGGTGTTGATATCGTCAATTCTGTCAGATTTGAAAGATTGTTGACAGCCAAAAGCACGTCTTTCGGAACAAGGCTATCCAAGCGAATTCTTCACCCAGAACACGAATTACCTTTGTTTCAGCAGATGCACTCACAACGACAAGCTCAATATCTTACTGGATCTTGGGCAGCAAAGGAAGCATTATTCAAGACATTGGACTTAAACTCACAGAAAGAGTTCAACTTTAACCAATGGTACCGCTTCCATGATTCCAATGGGAAGCCATTTATTTGGAACGATCGATACAAATTGTCTGATGAAGAGTTCCATCTTAGTATCTCACATGATGATTCTCTTGTAATTGCTACAGTACTTCGTCAGAAGGTTTATCAAATCTAA

配列番号19:
MPKVGTVLGIGVDIVNSVRFERLLTAKSTSFGTRLSKRILHPEHELPLFQQMHSQRQAQYLTGSWAAKEALFKTLDLNSQKEFNFNQWYRFHDSNGKPFIWNDRYKLSDEEFHLSISHDDSLVIATVLRQKVYQI

配列番号20:
GAC GAC GAC AAG ATG CCA AAA GTA GGC ACT GTA T

配列番号21:
GAG GAG AAGCCC GGT TTA GAT TTG ATA AAC CTT CT

配列番号22:
ATGTTTAAATTAGCTTTCCGTTCCATTCGTGCACCAGTTGCTAGAGCTTCATTTGTCAAACCAATTCGTTTTTATGTTGCCCCACCAATTTCCAAAGATGAAGTTACTTCAAGAGCCATTCAAGCTTTGAAAACCGTTGCTCCATTACAAGAATCCAATATCACATTAGAATCTTCTTTCCAAAAGGATTTGGGCTTAGATTCTTTAGATACTGTTGAAGCTTTAGTGGCATTGGAAGAAGAATTCGATTTAGAAATTCCTGATAAGATTTCTGATGAGATAAAGACTGTTGGGGAAGCTGTTGATTACATTTACAAAGAAGAATCTAAATAA

配列番号23:
MFKLAFRSIRAPVARASFVKPIRFYVAPPISKDEVTSRAIQALKTVAPLQESNITLESSFQKDLGLDSLDTVEALVALEEEFDLEIPDKISDEIKTVGEAVDYIYKEESK

配列番号24:
ATGTTTAGAACTACTTTATTAAAATCATTAAGAGCTTCAGTATCAAAACCTTCAATGGTGAAAACCATTCAATCATCATCAAGATCATTATTCACCATCACCACCATCACTAACAACAAAAATGTCACTCCTTTGACTTCATCAATGAACTTTATTCGTTGTTATAGTGCCTTCCCAGAATTAACTAGAGATATTGCTAAAGAAAGAATTATTGAATTATTAGAAGGTTATGATAAAGTAGATCAATCTAAAGGTGAAATCACTGAACAAAACTCATTTACTTCTGATTTAGGTTTGGATTCTTTAGATGTTGTTGAAGTGATTATGGAATTAGAACATGAATTTAATATTCAAATCCCTGATAATGAAGCCGATAGTTTAAAAACTGTTGGTCAAACTATTGATTATATTTTAGCTCAACCAGATTCTTGTTAA

配列番号25:
MFRTTLLKSLRASVSKPSMVKTIQSSSRSLFTITTITNNKNVTPLTSSMNFIRCYSAFPELTRDIAKERIIELLEGYDKVDQSKGEITEQNSFTSDLGLDSLDVVEVIMELEHEFNIQIPDNEADSLKTVGQTIDYILAQPDSC

配列番号26:
GACGAC GAC AAG ATG GTT GCC CCA CCA ATT TC

配列番号27:
GAG GAG AAG CCC GGT TTA TTT AGA TTC TTC TTT GT

配列番号28:
GAC GAC GAC AAG ATG AGT GCC TTC CCA GAA TT

配列番号29:
GAG GAG AAG CCC GGT TTA ACA AGA ATC TGG TTG AG

配列番号30:
CACGGTTTCACCAGTGTCTG

配列番号31:
GATCTAGGCTTGGCCAAGTCGGCCGCTGGAAAAATTTCCCCGAGA

配列番号32:
CGGCCGACTTGGCCAAGCCTAGATC

配列番号33:
TGGGGAGGGTATTTACTTTTAAATA

配列番号34:
TATTTAAAAGTAAATACCCTCCCCAATGCCAAAAGTAGGCACTGT

配列番号35:
CCTTCTGACGAAGTACTGTAGCAA

配列番号36: GGAAATTTTTCCAGCATCGAGTTAGTAGCTCTCTGTACCTTAATATCTACTACATGTGATGCCAAAAGTAGGCACTGTATTGGGTATAGGTGTTGATATCCCAGGGTTTTCCCAGTCACG

配列番号37:
CTTTAGATTTGATAAACCTTCTGACGAAGTACTGTAGCAATTACAAGAGAATCATCATGTGAGATACTAAGATGGAACTCTTCATCAGACAATTTGTATCACTAAAGGGAACAAAAGC

配列番号38:
GCTGTTCCCAAGTTTGGTGT

配列番号39:
TGCTACTGGTGAGGCATGAG

配列番号40:
CAAGACCCATCACAATGTCG
配列番号41:
ATTGCTGTGGATCACGTGC

配列番号42:
GCTGTTCCCAAGTTTGGTGT

配列番号43:
GCCCATCTAATAGGTTGAGC

配列番号44:
GCAATTCTTGAACGAGCACA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗真菌剤の同定方法であって、候補化合物が
(i)配列番号10又は配列番号19によって示される配列を含むPPTBタンパク質、
(ii)(i)の相同体であるPPTBタンパク質、
(iii)(i)又は(ii)と少なくとも50%の同一性を有するタンパク質、
(iv)(i)、(ii)又は(iii)の変異体又は断片(該断片は少なくとも50アミノ酸の長さを有する)を含むタンパク質、
に結合するか否か又はこれを阻害するか否かを決定することを含み、
ここで(i)、(ii)、(iii)又は(iv)の結合又は阻害は候補物質が抗真菌剤であることを示し、且つ随意に(i)、(ii)、(iii)又は(iv)はPPTB活性を有する、方法。
【請求項2】
候補化合物が(i)、(ii)、(iii)又は(iv)によるACPへのホスホパンテテイニル基の転移を阻害することが可能であるか否かを決定することを含み、随意に転移の検出がACPに結合しているフルオロフォアの蛍光特性における変化を測定することにより行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ACP分子が
(i)随意にPPTBタンパク質又は変異体と同じ真菌由来である、真菌ACP、
(ii)配列番号12又は配列番号23によって示される配列を含むACP、
(iii)(ii)と少なくとも50%の同一性を有するACPタンパク質、
(iv)(ii)又は(iii)の変異体又は断片(該断片は少なくとも10アミノ酸の長さを有する)を含むACPタンパク質、
であり、
ここで随意にACP分子又はその変異体は、1つより多くのACPを発現する真菌のものであり、かつ該真菌によって発現される少なくとも1つのACP分子は、PPTBの基質ではない、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
転移の検出が蛍光偏光法を使用して行なわれ、ここで随意にフルオロフォアはBodipy TMRである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
以下の条件下で行なわれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法:
− 約50mM Bis−Tris、及び/又は約10mM MgCl、及び/又は
− 約pH6.75で、及び/又は
− 約1%v/v DMSOを用いて、及び/又は
− 酵素活性が時間及びタンパク質濃度に関して直線範囲内にあるようなPPTB酵素濃度で、及び/又は
− 20〜40分間インキュベートされ、及び/又は
− 約室温(例えば15〜30℃)でインキュベートされ、及び/又は
− 停止試薬が約pH8.0の約60mMのEDTAであり、及び/又は
− アッセイが0.70のZ’値を有し、及び/又は
− アッセイが4%の%CV100%値を有し、及び/又は
− アッセイが>15のW値を有する。
【請求項6】
該方法において、少なくとも5日間まで安定なACP産物が形成され、それゆえ5日後にZ’0.70、%CV100%4%且つW>15である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
随意に70時間未満で、少なくとも10,000の異なる化合物がスクリーニングされるハイスループットな方法である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
候補化合物の阻害曲線を決定すること、及び随意に以下に基づき化合物を選択することを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法:
−阻害曲線が図1(A若しくはB)又は図2(E若しくはF)に示される曲線と同じであるか否か、及び/又は
−IC50が10μM以下であるか否か、及び/又は
−阻害曲線がシグモイドであり、5%〜95%阻害の範囲が阻害剤濃度の2対数スパン内であるか否か。
【請求項9】
抗真菌化合物としての使用のための、上記方法のいずれかにより同定される抗真菌剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−528585(P2012−528585A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513672(P2012−513672)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001091
【国際公開番号】WO2010/139952
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510282125)エフツージー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】