説明

抗細菌化合物

細菌性疾患及び感染の治療に役立つ式(I)の化合物、それらの化合物を含む組成物、並びにそれらの化合物を用いる細菌性疾患及び感染の治療方法を開示する。特に、これらの化合物は、Clostridium difficileの感染及びClostridium difficileによって引き起こされる疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、細菌性疾患及び感染の治療に役立つ化合物、それらの化合物を含む組成物並びにそれらの化合物を用いる細菌性疾患及び感染の治療方法に関する。特に、本発明の化合物は、Clostridium difficileの感染及びClostridium difficileによって引き起こされる疾患に有用である。
【0002】
発明の背景
(a)抗細菌薬及びClostridium difficile
抗細菌薬の開発は、20世紀の医学の最も重要な進歩の1つといえる。以前は治療不可能であった疾患が今や容易に制御できるようになり、多くの疾患がこれらの新しい特効薬によって根絶されると思われた。このような著しい治療の進歩にもかかわらず、感染性疾患は、米国における主要死亡原因の第3位であり(Clin.Infect.Dis.、2004年、38、1279〜1286頁)、依然として最も重大な世界的医療問題の1つである。全ての主要病原性細菌において耐性率が劇的に上昇しており、特に懸念されているのが、院内感染の数及び重症度の増加である(Infectious Disease Society of America、2004年、Bad Bugs,No Drugs)。多剤耐性病原体の出現により、現在第一線で使用されている薬の多くが、多くの疾患の制御に全く無効になった。
【0003】
懸念すべき細菌性病原体の特定のサブセットは、胞子形成細菌に分類されるものである。細菌胞子(内生胞子)は、細菌によって環境ストレスに応答して形成される、休眠状態の非生殖性構造である。環境条件が良好になると、細菌胞子は発芽し、細菌が増殖する。病原性細菌の場合、ヒト宿主内での発芽は疾患を引き起こす可能性がある。
【0004】
細菌胞子は、放射線、乾燥、温度、飢餓及び化学作用因子を含む多くの作用因子(agent)及び環境条件に対して耐性が非常に強い。化学作用因子に対するこのような自然耐性により、細菌胞子は、病院、他の医療施設及び食品製造施設などの重要な環境に何ヶ月も存在し続けることになり、その場合、標準的な清浄剤、殺菌剤及び滅菌法では細菌は根絶されない。食品製造の場合、細菌胞子の存在は、単純な食品腐敗から食品媒介病原体及び食中毒の蔓延に及ぶ重大な結果を招くおそれがある。最近になって、炭疽病の起因病原体であるBacillus anthracisの胞子に関連するリスクが注目されるようになった。この胞子は、数々の方法で散布され及びバイオテロ物質(bioterrorist agent)として使用されるおそれがあるドライパウダーとして容易に調製される可能性がある。炭疽菌は、単独の最も憂慮すべきバイオテロ物質と見られている(CDC Emerg.Infect.Dis.、2004年、(4)、552〜555頁)。これは、2001年に米国で起こった郵送炭疽菌攻撃によってクローズアップされていると考えられる。確認された感染症は22例で、そのうち5例が死に至り、攻撃後の清掃及び除染の費用は10億ドルと推定された。
【0005】
重要な胞子形成細菌は、Bacillus属及びClostridium属のグラム陽性内生胞子形成細菌である。ヒトにとって健康上懸念されるBacillus属の例としては、B.anthracis及びB.cereusが挙げられるが、これらに限定するものではない。Bacillus anthracisは、炭疽病の起因病原体として特に懸念されている。炭疽菌感染は、Bacillus anthracis胞子の経口摂取、吸入又は皮膚接触によって起こり、3つの独特な臨床型をもたらすと考えられる。皮膚感染は、全感染の約95%を占め、一般には好適な抗生物質の使用によって十分に制御される。皮膚炭疽の未治療症例は、約20%が死に至るであろう。腸内感染は、腸管の急性炎症を特徴とし、悪心、食欲不振、嘔吐、発熱、腹痛、吐血及び重度の下痢症を引き起こす。腸炭疽は、症例の25〜60%が死に至る。この疾患の最も重篤な臨床型は肺炭疽であり、抗生物質の積極的な適時投与をもってしても、多くの場合致死的である。空気を介して、及び広域にわたって炭疽菌胞子を容易に分散させて肺炭疽を誘発し得るため、炭疽菌は最も重要なバイオテロ物質となっている。
【0006】
Clostridium属のメンバーは、グラム陽性の胞子形成性偏性嫌気性菌である。ヒトの疾患を引き起こす種の例としては、C.perfringens、C.tetani、C.botulinium、C.sordellii、C.difficileが挙げられるが、これらに限定するものではない。クロストリジウムは、破傷風、ガス壊疽、ボツリヌス中毒症及び偽膜性大腸炎を含む種々のヒトの疾患に関連し、食中毒の起因病原体ともなり得る。
【0007】
特に懸念されるのは、Clostridium difficileによって引き起こされる疾患である。Clostridium difficileはClostridium difficile関連疾患(CDAD)を引き起こし、過去10年以内にその症例数は10倍に増加しており、強毒性(hyper−virulent)の薬物耐性株が今や風土病となりつつある。英国保健保護局(HPA)の最近のデータは、2006年には英国の65才以上の患者においてC.difficile感染症が55,681例認められたことを示している(前年より8%上昇)。おそらく最も憂慮すべきは、CDADの症例であるが、背景因子としての抗生物質使用は現在のところ報告されていない。
【0008】
Clostridium difficileは共生腸内細菌であり、そのレベルは正常腸内細菌叢によって抑制されている。しかし、この細菌は、C.difficile関連疾患(CDAD)の起因病原体であり、CDADの最も重篤な発現症状、偽膜性大腸炎の主因と確認されている。CDADは、軽度の下痢症から偽膜性大腸炎、中毒性巨大結腸症及び死に及ぶ広範囲の症状を伴う。CDAD発症の第1リスク因子は、正常腸内細菌叢を撹乱させてClostridium difficileの異常増殖を引き起こす抗生物質の使用である。クリンダマイシンはCDADに関連する主要な抗生物質であるが、この疾患は今や、フルオロキノロン、セファロスポリン、マクロライド、β−ラクタム及び多くの他の種類のメンバーを含むほとんど全ての抗生物質と関連している。
【0009】
CDADは、主として病院環境で懸念され、死亡率が特に高い高齢患者の間では特に憂慮されている。CDADの報告率はここ数年で劇的に増加し、英国では2006年に55,000件を超える症例の報告があった(Health Protection Agency Surveillance of Healthcare Associated Infections Report 2007)。
【0010】
米国では、1999年に人口100万人当たり5.7人だった死亡率は、2004年には人口100万人当たり23.7人まで上昇した。C.difficileのコロニー形成率は一般群では3%以下であるが、入院によって25%まで劇的に増加する。特に懸念されるのは、新しいエンデミック菌株の出現である。特に関係がある例は、毒素A及びBの産生増加と別の新しいバイナリートキシン(binary toxin)の産生を示す、強毒性BI/NAP1型(リボタイプ027型としても知られる)菌株である。
【0011】
クロストリジウムと関連する重要因子は、病院環境に存在する高率の細菌胞子である。最近になって、使用されている標準的な病院用清浄剤は、クロストリジウム胞子を根絶するのに環境には効果がなく、その結果、疾患の制御に効果がないことが示された(Infect Cont.Hosp.Epidemiol.、2007年、28、920〜5頁)。BI/NAP1型などの菌株の高胞子形成(hyper−sporulation)特性が、この問題の大きな原因となっている。
【0012】
CDADに関連する第1リスク因子は、背景因子としての抗生物質使用及び年齢である(CMAJ、2008年、179(8)、767〜772頁;J.Antimicrob.Chem.、2003年、51、1339〜1350頁)が、例えば、プロトンポンプ阻害薬の使用、H2受容体拮抗薬の使用、利尿薬の使用、入院期間、栄養管の使用、機械的人工呼吸及び基礎疾患としての併存疾患を含む多数の他の関連因子がある。
【0013】
胃液酸度は、摂取した病原体に対する自然防御機構の一部である。胃の酸度低下は、正常状態では無菌の上部消化管におけるコロニー形成を引き起こす可能性があり、その結果、正常な腸内細菌叢が撹乱される可能性がある。したがって、プロトンポンプ阻害薬(PPI)及びヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)などの胃酸分泌抑制薬の使用は、C.difficileのコロニー形成とそれに続くCDADの発症のリスク増加に関連する。PPI及びH2RAはこれまで、旅行者下痢症、サルモネラ症及びコレラなど、他の腸感染に関連して使用されてきた。Dialらは、CDADのリスクが、地域社会(JAMA、2005年、294(23)、2989〜2995頁)及び病院環境(CMAJ、2004年、171(1)、33〜38頁)のいずれにおいても胃酸抑制薬の使用と共に増加することを報告している。
【0014】
PPIとしては、オメプラゾール(Losec、Prilosec、Zegerid)、ランソプラゾール(Prevacid、Zoton、Inhibitol)、エソメプラゾール(Nexium)、パントプラゾール(Protonix、Somac、Pantoloc、Pantozol、Zurcal、Pan)及びラベプラゾール(Rabecid、Aciphex、Pariet、Rabeloc)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0015】
H2RAとしては、シメチジン(Tagamet)、ラニチジン(Zinetac、Zantac)、ファモチジン(Pepcidine、Pepcid)、ロキサチジン(Roxit)及びニザチジン(Tazac、Axid)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0016】
PPI又はH2RAを2種の抗生物質の組み合わせと併用する三剤併用療法は、ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染の除菌治療として承認されている(Aliment.Pharmacol.Ther.、2001年、15(5)、613〜624頁;Helicobacter.、2005年、10(3)、157〜171頁)。しかし、この三剤併用療法のレジメンがCDADの副作用を引き起こす可能性があるという数報の報告がある(Am.J.Gastroenterol.、1998年、93(7)、1175〜1176頁;J.Int.Med.、1998年、243(3)、251〜253頁;Aliment.Pharm.Ther.、2001年、15(9)、1445〜1452頁;Med.Sci.Monit.、2001年、(4)、751〜754頁)。ピロリ菌感染の治療に使用されている典型的な抗細菌薬は、メトロニダゾール、アモキシシリン、レボフロキサシン及びクラリスロマイシン(これらの多くはCDADの発症と強く関連している)から選択される(但し、これらに限定するものではない)薬剤の組み合わせである。最新の治療法は、特に、ほとんど全ての種類の抗生物質がこの疾患の病因と関連するという事実に鑑みて、極めて限られている。CDADの治療用としてFDAに認可された唯一の薬はバンコマイシンであるが、メトロニダゾールも広く使用されている。CDADの治療へのバンコマイシンの広範な使用は、クロストリジウムに対する静細菌作用、比較的高いコスト並びに耐性を持つC.difficile菌株及び他の細菌類(特にEnterococcus spp.)の淘汰の可能性のために、懸念されている。メトロニダゾール及びバンコマイシンの両者に関する重要な問題は、少なくとも1つの再発エピソードを経験している患者の少なくとも20%で高い再発率が認められることである。再発は、治療中にクロストリジウムの胞子を根絶できず、その結果としてその後に病態に発展していくために起こると述べられている。このように胞子形成を制御できないことにより、病院環境の細菌汚染が継続される。したがって、増殖性細胞を根絶し、内生胞子を制御できる薬剤があれば、非常に有利であろう。
【0017】
CDAD治療のための第一選択療法は、実施中の全ての抗菌薬治療の中止とそれに続く、バンコマイシン又はメトロニダゾールのいずれかの適切な使用である。いずれの薬剤も通常は経口的に投与されるが、メトロニダゾールは静脈内投与されることもでき、重症例では、バンコマイシンも、多数の他の経路によって、例えば、結腸内に、経鼻胃管を通して又はバンコマイシン停留浣腸として投与することができる。CDADの治療に使用されることが報告されている他の抗生物質薬としては、フシジン酸、リファマイシン及びその類似体、テイコプラニン並びにバシトラシンが挙げられるが、いずれもバンコマイシン又はメトロニダゾールを超える特別な効果は示さない。原因となる抗細菌薬治療の中止に加えて、逆蠕動薬、アヘン剤又はロペラミドの使用も回避すべきである。これは、それらが、C.difficile毒素のクリアランスを低下させ、毒素による結腸損傷を増悪させる可能性があるためである。このような薬剤はまた、腸閉塞を誘起し、結腸の中毒性拡張を引き起こす場合がある(J.Med.Microbiol.、2005年、54、101〜111頁;JAMA、1993年、269、71〜5頁;Postgrad.Med.J.、1990年、66(777)、582頁)。
【0018】
スタンダードアロンの薬剤として又は抗細菌薬と組み合わせて使用される代替療法は、生来の腸内微生物群の回復、C.difficile毒素濃度の低減又は免疫系の刺激を試みることを目的としている(概説については、Antibiotic Treatment for Clostridium difficile−Associated Diarrhea in Adults,Cochrane Database of Systematic Reviews 2007年、Issue 3.Art.No.:CD004610.;Clin.Inf.Dis.、2008年、46(S1)、S32〜S42頁;Clin.Inf.Dis.、2007年、45(S2)、S122〜S128頁;J.Med.Microbiol.、2005年、54、101〜111頁及びそれらの参考文献を参照のこと)。したがって、代替CDAD療法は、Saccharomyces boulardii又はLactobacillus acidophilusと、抗生物質、糞便移植(faecal transplantation)、及び全ての他の治療法選択肢に効果がなかった重症例では、外科手術との併用を含む。結腸切除率は低い(症例の3%以下)が、結腸切除には高い死亡率が伴う(最大60%)。
【0019】
したがって、胞子形成細菌に関連する疾患、特にClostridium属及びBacillus属のメンバーによって引き起こされる疾患、とりわけ、Clostridium difficile感染に関連する疾患の治療に有効な新規薬剤に対して差し迫った必要性がある。この必要性は、多くの広域スペクトル抗生物質(βラクタム及びキノロン系抗生物質を含む)に対するClostridium difficileの抵抗性及び耐性出現頻度に鑑みて、特に切実である(Antimicrob.Agents Chemother.、1985年、28(6):842〜844頁)。
【0020】
(b)先行技術
国際公開第2007/056330号パンフレット、国際公開第2003/105846号パンフレット及び国際公開第2002/060879号パンフレットは、種々の2−アミノベンゾイミダゾールを抗細菌薬として開示している。
【0021】
国際公開第2007/148093号パンフレットは、種々の2−アミノベンゾチアゾールを抗細菌薬として開示している。
【0022】
国際公開第2006/076009号パンフレット、国際公開第2004/041209号パンフレット及びBowserら(Bioorg.Med.Chem.Lett.、2007年、17、5652〜5655頁)は、微生物の耐性、病原性及び増殖を低下させる抗感染薬として有用な種々の置換ベンゾイミダゾール化合物を開示している。これらの化合物は、インビトロでは固有抗菌活性(intrinsic antimicrobial activity)を示さないとされている。
【0023】
米国特許第5,824,698号は、種々のジベンゾイミダゾールを広域スペクトル抗生物質として開示しており、Staphylococcus spp.及びEnterococcus spp.を含むグラム陰性及びグラム陽性の両細菌に対する活性を開示している。しかし、この特許文献は、嫌気性胞子形成細菌に対する活性は開示しておらず、特にClostridium spp.(C.difficileを含む)に対する活性は開示していない。
【0024】
米国特許出願公開第2007/0112048(A1)号は、種々のビ−及びトリアリールイミダゾリジン並びにビ−及びトリアリールアミジンを広域スペクトル抗生物質として開示しており、Staphylococcus spp.、Enterococcus spp.及びClostridium spp.を含むグラム陰性及びグラム陽性の両細菌に対する活性を開示している。しかし、この特許文献は、本明細書中に記載する一般式(I)の化合物は開示していない。
【0025】
Chaudhuriら(J.Org.Chem.、2007年、72、1912〜1923頁)は、種々のビス−2−(ピリジル)−1H−ベンゾイミダゾール(本明細書中に記載する式Iの化合物を含む)をDNA結合剤として記載している。この特許文献は、強力な抗細菌活性については言及していない。
【0026】
発明の概要
したがって、本発明の第1の態様において、任意選択で細菌性感染又は疾患の治療用の、一般式(I):
【化1】


[式中、
L1は、直接結合又はリンカー基であり、
及びRはそれぞれ独立して、H並びに任意選択で置換されているC1〜6アルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル及びヘテロシクリルから選択され、前記の任意選択の置換は、ハロ、CN、NO、R、OR、N(R、COR、CO,SO、NRCOR、NRCO、NRSO、NRCONR、CONR及びSONRから選択される1つ又は複数の置換基により、但し、R及びRの少なくとも一方は環状であり、
各Rは独立して、H、ハロ、C1〜6アルキル、OR、N(R、CN及びNOから選択され、
及びXはそれぞれ独立して、N及びCRから選択され、
はNR、O及びSから選択され、
はNHであり、
はH、ハロ及びC1〜6アルキルから選択され、RはH及びC1〜6アルキルから選択され、RはH、C1〜アルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cカルボシクリル、C〜Cヘテロシクリル及び5員又は6員アリール又はヘテロアリールから選択され、いずれも任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されており、Rは水素及びC〜Cアルキルから選択され、いずれも任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されている]
の化合物又はその薬学的に許容され得るN−オキシド、塩、水和物、溶媒和物、複合体、バイオアイソスター、代謝物若しくはプロドラッグが提供される。
【0027】
一般式(I)の化合物の一部は新規である。したがって、本発明によって、我々はまた、新規である一般式(I)の化合物を、それらの製造方法、それらを含む組成物並びにそれらの医薬としての使用と共に提供する。
【0028】
したがって、別の態様において、一般式(I)
【化2】


[式中、
L1は、直接結合又はリンカー原子若しくは基であり、
及びRはそれぞれ独立して、H並びに任意選択で置換されているC1〜6アルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル及びヘテロシクリルから選択され、前記の任意選択の置換は、ハロ、CN、NO、R、OR、N(R、COR、CO,SO、NRCOR、NRCO、NRSO、NRCONR、CONR及びSONRから選択される1つ又は複数の置換基により、但し、R及びRの少なくとも一方は環状であり、
各Rは独立して、H、ハロ、C1〜6アルキル、OR、N(R、CN及びNOから選択され、
及びXはそれぞれ独立して、N及びCRから選択され、
はNR、O及びSから選択され、
はNHであり、
はH、ハロ及びC1〜6アルキルから選択され、RはH及びC1〜6アルキルから選択され、RはH、C1〜アルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cカルボシクリル、C〜Cヘテロシクリル及び5員又は6員アリール又はヘテロアリールから選択され、いずれも任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよく、Rは水素及びC〜Cアルキルから選択され、いずれも任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されている]
の化合物又はその薬学的に許容され得るN−オキシド、塩、水和物、溶媒和物、複合体、バイオアイソスター、代謝物若しくはプロドラッグが提供される。
【0029】
L1は任意選択で、O、S、SO2、NR7、C(R7)2及びC=Oから選択してもよい。
【0030】
上記で定義した化合物は、治療法又は予防に、例えば、細菌性感染又は疾患の治療に用いることができる。
【0031】
別の態様において、対象の細菌性感染又は細菌性疾患の治療方法であって、有効量の上記で定義した化合物を前記対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0032】
別の態様において、細菌を死滅させるか又は細菌の増殖を阻害、低減若しくは防止する方法であって、前記細菌を、上記で定義した化合物と接触させるステップを含む方法が提供される。
【0033】
また、前記で定義した本発明の化合物と、以下に定義する種々の補助薬とを含む組み合わせも意図する。
【0034】
本発明の更に他の態様は、添付した特許請求の範囲において定義する。
【0035】
発明の詳細な説明
本明細書中で言及する全ての刊行物、特許、特許出願及び他の参考文献は、全ての目的に関し個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的及び個別に参照によって組み入れられており並びにその内容が全て列挙されているかのように、参照によってその全体を本明細書中に組み入れる。
【0036】
I.定義及び一般的優先傾向
本明細書中で使用する場合、特に断らない限り、以下の用語は、当業界でその用語が有するであろう全てのより広義の(又はより狭義の)意味に加えて、以下の意味を有するものとする。
【0037】
文脈によって他に必要とされない限り、本明細書中における単数形の使用は複数形を含むように読み取るべきであり、逆もまた同様である。実体(entity)に関して用いる「a」又は「an」は、1つ(種)又は複数のその実体を指すものと読み取るべきである。したがって、本明細書中では、「a」(又は「an」)、「1つ(種)又は複数」及び「少なくとも1つ(種)」は同義で使用する。
【0038】
本明細書中で使用する用語「〜を含む(comprise)」、又は「comprises」若しくは「comprising」などのその変形は、列挙された全ての整数体(例えば、1つ(種)の特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は制限)又は整数体の群(例えば、複数(複数種)の特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は制限)の包含を示すが、任意の他の整数体又は整数体の群の除外を示さないものと読み取るべきである。したがって、本明細書中で使用する用語「comprising」は、包括的であるか又は限度を設定せず、追加の、列挙されていない整数体又は方法/プロセスステップを除外しない。
【0039】
本明細書中において、「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」という表現は、指定された(1つ若しくは複数の)整数体又はステップ及び、特許請求の範囲に記載された発明の特質又は機能に実質的に影響を及ぼさない整数体又はステップが不可欠であることを示すのに用いる。
【0040】
本明細書中で使用する用語「〜からなる」は、列挙した整数体(例えば、1つの特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は制限)又は整数体の群(例えば、複数(複数種)の特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は制限)のみの存在を示すのに用いる。
【0041】
本明細書中で使用する用語「疾患」は、生理的機能を損ない及び特有の症状を伴う全ての異常な病態を定義するのに用いる。この用語は、病因の性質に関係なく(又は実際には、疾患の病因学的根拠が立証されているか否かにかかわらず)生理的機能が損なわれている全ての障害、疾病、異常、病変、病気、病態又は症候群を網羅するのに広範に用いる。したがって、この用語は、外傷、傷害、外科手術、放射線による切除、中毒又は栄養失調に起因する病態を網羅する。
【0042】
本明細書中で使用する用語「細菌性疾患」は、対象の体及び/又は細胞中に存在する並びに/若しくは対象の体及び/又は細胞中で自己複製する細菌を含む(例えば、そのような細菌の存在によって引き起こされる、増悪する、そのような細菌の存在と関連する、又はそのような細菌の存在を特徴とする)全ての疾患を指す。したがって、この用語は、細菌毒素によって引き起こされるか又は増悪する疾患を含む(本明細書中では、「細菌性中毒」と称する場合もある)。
【0043】
本明細書中で使用する用語「Clostridium difficile関連疾患(CDAD)」は、対象の体に存在する及び/又は対象の体で自己複製するClostridium difficileを含む(例えば、Clostridium difficileの存在によって引き起こされる、増悪する、Clostridium difficileの存在と関連する、又はClostridium difficileの存在を特徴とする)全ての疾患を定義するのに用いる。したがって、この用語は、Clostridium difficile種の細菌が原因微生物として作用するか又はClostridium difficileの1種若しくは複数の菌株による感染が関与し、検出され又は含まれる全ての疾患、障害、病変、症状、臨床状態又は症候群を包含する。したがって、この用語は、大腸炎の種々の形態、偽膜性大腸炎、下痢症及び抗生物質起因性疾患を含む。
【0044】
本明細書中で使用する用語「細菌性感染」は、対象が細菌に感染している病態を定義するのに用いる。感染は症候性又は無症候性の場合がある。無症候性の場合は、対象は、例えば、生化学的検査、血清学的検査、微生物培養及び/又は顕微鏡検査を含む種々の検査に基づいて感染と確認されることができる。
【0045】
用語「静細菌(性)」及び「殺細菌(性)」はそれぞれ、細菌増殖を防止する(又は減速する)能力及び細菌細胞の細胞破壊を(直接的に又は間接的に)媒介できる能力を定義するのに用いられる専門用語である。この用語は、相互排他的ではなく、多くの薬剤は静細菌作用と殺細菌作用の両方を及ぼす(場合によっては、用量特異的又は標的特異的な方法で)。一般に、殺細菌剤の方が良好な治療結果を生じるので、好ましい。
【0046】
本明細書中で使用する用語「広域スペクトル抗生物質」は、グラム陽性及びグラム陰性の両細菌を含む範囲の細菌に対して殺細菌性及び/又は静細菌性である薬剤を定義する。
【0047】
本明細書中で細菌に適用される用語「多剤耐性」(MDR)は、ペニシリン、メチシリン、キノロン、マクロライド及び/又はバンコマイシンから選択される抗生物質を含む(但し、これらに限定するものではない)2種以上の抗生物質に対して耐性がある細菌を定義する。
【0048】
本明細書中で使用する用語「治療」又は「治療する」は、疾患を治癒させ、疾患の症状を寛解させ若しくは軽減するか又はその(1つ若しくは複数の)病因(例えば、病原細菌)を取り除く(若しくはその病因の影響を軽減する)治療介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、この用語は用語「治療法」と同義で用いる。したがって、本発明による感染症の治療は、本発明の化合物の(直接的又は間接的な)静細菌作用及び/又は殺細菌作用を特徴とする場合がある。
【0049】
更に、用語「治療」又は「治療する」は、疾患の開始若しくは進行を防止し若しくは遅延させるか又は治療群内におけるその発生数を減少させる(若しくは皆無にする)治療介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、用語「治療」は、用語「予防」と同義で用いる。
【0050】
用語「対象」(状況が許せば、「個体」、「動物」、「患者」又は「哺乳動物」を含むように読み取るべきである)は、治療の適応がある全ての対象、特に哺乳動物の対象を定義する。哺乳動物の対象としては、ヒト、家畜用動物、農場用動物、動物園用動物、スポーツ用動物、ペット用動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛;霊長類、例えば、類人猿、サル、オランウータン及びチンパンジー;イヌ科動物、例えば、イヌ及びオオカミ;ネコ科動物、例えば、ネコ、ライオン及びトラ;ウマ科動物、例えば、ウマ、ロバ及びシマウマ;食用動物、例えば、乳牛、ブタ及びヒツジ;有蹄動物、例えば、シカ及びキリン;齧歯類動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター及びモルモットなどが挙げられるが、これに限定するものではない。好ましい実施形態において、対象はヒト、例えば、ヒト乳児である。
【0051】
用語「グラム陽性細菌」は、ある種の細胞壁染色特性に基づいて1つのグループにまとめられる細菌の特定の類を定義する専門用語である。
【0052】
用語「低G+Cグラム陽性細菌」は、DNA中の塩基の組成に基づいてグラム陽性菌に含まれる進化的に近縁な細菌の特定のサブクラスの類を定義する専門用語である。このサブクラスとしては、Streptococcus spp.、Staphylococcus spp.、Listeria spp.、Bacillus spp.、Clostridium spp.、Enterococcus spp.及びLactobacillus spp.が挙げられる。
【0053】
用語「最小発育阻止濃度」又は「MIC」は、インビトロで細菌分離株の増殖を阻止するのに必要な試験化合物の最低濃度を定義する。抗生物質のMICの一般的な測定方法は、試験化合物の連続希釈を含むいくつかの試験管を用意し、次にその連続希釈に当該細菌分離株を接種するものである。適切な雰囲気及び温度においてインキュベートした後、混濁を示していない最低濃度を有する試験管から抗生物質のMICを決定できる。
【0054】
本明細書中で使用するように、2種以上の化合物及び/又は薬剤(本明細書中では「成分」とも称する)に適用される用語「組み合わせ」は、2種以上の化合物/薬剤が関連している物質を定義するものとする。これに関連する用語「組み合わされた」及び「組み合わせる」は、それに応じて解釈すべきである。
【0055】
組み合わせ中の2種以上の化合物/薬剤の関連性は、物理的でも非物理的でもよい。物理的に関連した、組み合わされた化合物/薬剤の例としては、以下のものが挙げられる。
・混合された(例えば、同一単位用量内に)2種以上の化合物/薬剤を含む組成物(例えば、一体型製剤)、
・2種以上の化合物/薬剤が化学的/物理化学的に連結されている(例えば、架橋、分子凝集又は共通のビヒクル部分への結合によって)物質を含む組成物、
・2種以上の化合物/薬剤が化学的/物理化学的に共パッケージ化されている(例えば、脂質小胞、粒子(例えば、ミクロ粒子若しくはナノ粒子)又はエマルジョン液滴上又はその内部に配置されている)物質を含む組成物、
・2種以上の化合物/薬剤が共パッケージ化されている又は共存させられている(例えば、複数の単位用量の配列の一部として)医薬キット、医薬パック又は患者用パック。
【0056】
非物理的に関連した、組み合わされた化合物/薬剤の例としては、以下のものが挙げられる。
・2種以上の化合物/薬剤のうち少なくとも1種を使用説明書と共に含む、前記の少なくとも1種の化合物/薬剤を即時関連させて2種以上の化合物/薬剤を物理的に関連させるための物質(例えば、非一体型製剤)、
・2種以上の化合物/薬剤のうち少なくとも1種を指示書と共に含む、2種以上の化合物/薬剤を用いる併用療法のための物質(例えば、非一体型製剤)、
・2種以上の化合物/薬剤のうち少なくとも1種を使用説明書と共に含む、2種以上の化合物/薬剤のその他(複数可)が既に投与された(又は現在投与されている)患者群に投与するための物質、
・2種以上の化合物/薬剤の少なくとも1種を、2種以上の化合物/薬剤のその他(複数可)と組み合わせて使用するように特別に構成された量又は形態で含む物質。
【0057】
本明細書中で使用する用語「併用療法」は、2種以上の化合物/薬剤の組み合わせ(前記で定義した通り)を使用する療法と定義するものとする。したがって、本出願における、「併用療法」、「組み合わせ」及び化合物/薬剤の「組み合わせ」使用(併用)への言及は、同じ全治療計画の一部として投与される化合物/薬剤を指すことができる。したがって、2種以上の化合物/薬剤のそれぞれの薬量学は異なる場合がある。即ち、2種以上の化合物/薬剤のそれぞれは、同時に又は異なる時間に投与される場合がある。したがって、組み合わせの化合物/薬剤は、連続的に(例えば、前若しくは後に)、又は同時に同一医薬製剤として(即ち、一緒に)若しくは異なる医薬製剤として(即ち、別々に)投与できることが理解されるであろう。同一医薬製剤としての同時投与は、一体型製剤として投与することであり、異なる医薬製剤としての同時投与は非一体型製剤として投与することである。併用療法における2種以上の化合物/薬剤のそれぞれの薬量学は、投与経路によって異なる場合もある。
【0058】
本明細書中で使用する用語「医薬キット」は、投与手段(例えば、計量装置)及び/又は送達手段(例えば、吸入器又は注射器)と一体化され、任意選択で全てが共通の外装内に収容された、医薬組成物の1つ又は複数の単位用量の配列を定義する。2種以上の化合物/薬剤の組み合わせを含む医薬キットにおいて、個々の化合物/薬剤は一体型又は非一体型製剤のいずれであってもよい。(1つ又はそれ以上の)単位用量が、ブリスターパック内に収容されていてもよい。医薬キットは任意選択で、使用説明書を更に含んでいてもよい。
【0059】
本明細書中で使用する用語「医薬パック」は、任意選択で共通の外装内に収容された、医薬組成物の1つ又は複数の単位用量の配列を定義する。2種以上の化合物/薬剤の組み合わせを含む医薬パックにおいて、個々の化合物/薬剤は一体型又は非一体型製剤のいずれであってもよい。(1つ又はそれ以上の)単位用量が、ブリスターパック内に収容されていてもよい。医薬パックは任意選択で、使用説明書を更に含んでいてもよい。
【0060】
本明細書中で使用する用語「患者用パック」は、全治療過程のための医薬組成物を含む、一人の患者に処方されたパッケージを定義する。患者用パックは通常、1つ又は複数のブリスターパックを含んでいる。患者処方箋には通常欠けている、患者用パックに含まれる添付文書を患者はいつでも利用できるので、患者用パックは、薬剤師がバルク供給から医薬品の患者供給量を分割する従来の処方より有利である。添付文書の添付は、医師の指示に対する患者のコンプライアンスを改善するとみられている。
【0061】
本発明の組み合わせは、個々の化合物/薬剤を別々に投与した場合の治療的作用に比較して、治療上効果的な作用をもたらすことが可能である。
【0062】
本明細書中で使用する化合物の「有効量」又は「治療有効量」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症をいずれも生じることなく対象に投与され得る、妥当なリスク/ベネフィット比に見合う量であるが、所望の作用、例えば、対象の病態の持続的又は一時的な改善によって顕在化される治療又は予防を可能にするのに十分な量を定義する。この量は、個体の年齢及び全身状態、投与方法並びに他の因子によって、対象毎に異なるであろう。したがって、正確な有効量を特定することは不可能であるが、当業者ならば、ルーチン実験及び背景的一般知識を用いて個々の症例において適切な「有効」量を決定できるであろう。これに関連する治療結果としては、症状の根絶又は軽減、疼痛又は不快症状の低減、生存期間の延長、運動性の改善及び臨床的改善の他の指標が挙げられる。治療結果は、根治である必要はない。
【0063】
本明細書中で使用する「予防的有効量」は、必要な期間及び投与量において所望の予防的結果を得るのに有効な量を指す。典型的には、疾患前又は疾患の早期の対象に予防的用量を用いるので、予防的有効量は治療有効量より少ないであろう。
【0064】
用語「効果的な」は、相加性、相乗性、副作用の低減、毒性の低減又は運動能力若しくは活動性の改善などの有利な作用を含む。有利なことに、効果的な作用は、患者に投与される各成分又はいずれか一方の成分の用量を低減でき、それによって、同じ治療的作用をもたらし及び/又は持続させながら、毒性を低減できる。これに関連する相乗作用は、組み合わせの成分が個別に示す治療的作用の合計よりも大きい、組み合わせによってもたらされる治療的作用を指す。これに関連する相加作用は、組み合わせのいずれかの成分が個別に示す治療的作用よりも大きい、組み合わせによってもたらされる治療的作用を指す。
【0065】
本明細書中で使用する用語「補佐(ancillary)化合物」(又は「補佐剤」)は、本発明の化合物と組み合わされた場合に効果的な組み合わせ(本明細書中で定義)を生じる任意の化合物を定義するものとする。したがって、補佐化合物は、本発明の化合物の補助剤として働くことができるか、又は別の方法で組み合わせの効果に寄与することができる(例えば、相乗作用若しくは相加作用を生じることによって又は本発明の化合物の活性を増強することによって)。
【0066】
治療法又は予防への、本発明の化合物及び組み合わせの使用に適用する用語「補助(的)」は、物質が1種又は複数の他の薬物、治療介入、レジメン又は治療(例えば、外科手術及び/又は照射)と併用される使用を定義する。このような補助療法は、本発明の物質と他の(1種又は複数の)治療との同時、個別又は連続投与/適用を含むことができる。したがって、一部の実施形態において、本発明の物質の補助的使用は、本発明の医薬組成物の製剤に反映される。例えば、補助的使用は、個別の単位投与量に反映されることもできるし、又は本発明の化合物を補助的に使用すべき他の(1種若しくは複数の)薬物と本発明の化合物とが混合されて存在する(又は本発明の化合物が単回単位用量内で他の(1種若しくは複数の)薬物と物理的に関連している)製剤に反映されることができる。他の実施形態において、本発明の化合物又は組成物の補助的使用は、本発明の化合物を補助的に使用すべき他の(1種若しくは複数の)薬物と本発明の化合物とが共パッケージ化されている(例えば、複数の単位用量の配列の一部として)本発明の医薬キットの組成物に反映されることができる。更に他の実施形態において、本発明の化合物の補助的使用は、製剤及び/又は薬量学に関する、化合物と共パッケージ化された資料及び/又は使用説明書の内容に反映されることができる。
【0067】
本発明の化合物に適用される用語「薬学的に許容され得る誘導体」は、本発明の親化合物の化学誘導体化によって得られた(又は得ることができる)化合物を定義する。したがって、薬学的に許容され得る誘導体は、過度の毒性、刺激又はアレルギー反応をいずれも生じずに哺乳動物の組織に投与されるか又は哺乳動物の組織と接触させて使用するのに好適である(即ち、妥当なリスク/ベネフィット比に見合う)。好ましい誘導体は、本発明の親化合物のアルキル化、エステル化又はアシル化によって得られた(又は得ることができる)ものである。このような誘導体は、それ自体が活性であってもよいし、又はインビボで処理されるまで不活性であってもよい。後者の場合には、本発明の誘導体は、プロドラッグの役割を果たす。特に好ましいプロドラッグは、1つ又は複数の遊離ヒドロキシルがエステル化されており、インビボで加水分解によって活性化されるエステル誘導体である。他の好ましいプロドラッグは、インビボで(1つ又は複数の)共有結合が切断された後に一般式(I)の活性な親薬物を放出する共有結合化合物である。
【0068】
本発明の薬学的に許容され得る誘導体は、親化合物の活性の一部又は全てを持ち続ける。場合によっては、活性は、誘導体化によって増加する。誘導体化はまた、化合物の他の生物活性、例えば、バイオアベイラビリティを増大することもある。
【0069】
本発明の化合物に適用される用語「薬学的に許容され得る塩」は、過度の毒性、刺激又はアレルギー反応をいずれも生じずに哺乳動物の組織に接触させて使用するのに好適であり、妥当なリスク/ベネフィット比に見合う、遊離塩基化合物の全ての無毒性の有機又は無機酸付加塩を定義する。好適な薬学的に許容され得る塩は、当業界でよく知られている。例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸)、有機カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ジヒドロキシマレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、4−アミノ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、桂皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸及びマンデル酸)及び有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸)との塩である。本発明の化合物はまた、アルカリ金属ハロゲン化物、例えば、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化リチウムとの反応によって塩に転化されることもできる。好ましくは、本発明の化合物は、アセトンなどの溶媒の存在下で化学量論量の塩化ナトリウムと反応させることによって、その塩に転化される。
【0070】
このような塩及び遊離塩基化合物は、水和された又は実質的に無水の形態で存在できる。結晶の形態の本発明の化合物も考えられ、一般に本発明の化合物の酸付加塩は、水及び種々の親水性有機溶媒に可溶であり、その遊離塩基の形態と比較して高い融点及び増大した溶解性を示す結晶物質である。
【0071】
本発明の化合物に適用される用語「薬学的に許容され得る溶媒和物」は、このような化合物の生物学的有効性を持ち続ける、薬学的に許容され得る溶媒和物の形態の特定の化合物を定義する。溶媒和物の例としては、水(水和物)、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン又はアセトンと組み合わされた本発明の化合物が挙げられる。また、溶媒和物混合物の混和性製剤、例えば、アセトンとエタノールとの混合物と組み合わされた本発明の化合物も含まれる。好ましい一実施形態において、溶媒和物は、約20%のエタノール及び約80%のアセトンと組み合わされた本発明の化合物を含む。したがって、構造式は、水和された及び水和されていない形態を含む、示された構造を有する化合物を含む。
【0072】
本発明の化合物に適用される用語「薬学的に許容され得るプロドラッグ」は、生理的条件下で又は加溶媒分解によって、特定の化合物、このような化合物の薬学的に許容され得る塩、又は特定の化合物の抗細菌活性の少なくとも一部を担う(例えば、Clostridium difficileを抑える活性を示す)化合物への転化が可能な任意の薬学的に許容され得る化合物を定義する。
【0073】
本発明の化合物に適用される用語「薬学的に許容され得る代謝物」は、特定の化合物又はその塩の体内での代謝によって生成される、薬理活性のある生成物を定義する。
【0074】
本発明の化合物のプロドラッグ及び活性代謝物は、当業界で知られたルーチン技術(例えば、Bertoliniら、J.Med.Chem.、1997年、40、2011〜2016頁を参照のこと)を用いて確認できる。
【0075】
本発明の化合物に適用される用語「薬学的に許容され得る複合体」は、本発明の化合物が構成部分となっている化合物又は組成物を定義する。したがって、本発明の複合体は、本発明の化合物が別の1つ又は複数の部分に物理的に関連している(例えば、共有結合又は非共有結合によって)誘導体を含む。したがって、この用語は、本発明の化合物の多量体の形態を含む。このような多量体は、本発明の化合物の多数の複製物を互いに近傍で連結させるか又は近傍に配置することによって(例えば、足場材料又は担体部分を介して)生成させることができる。
【0076】
用語「バイオアイソスター(又は単純にアイソスター)は、1つ又は複数の原子(又は原子団)が置換原子(又は原子団)で置換されており、置換原子(又は原子団)が、それらが置換する原子と同様な立体的及び/又は電子的特徴を有する薬物類似体を定義するのに用いられる専門語である。フッ素原子による水素原子又はヒドロキシル基の置換が、一般的に使用されるバイオアイソスター置換である。シラ置換(C/Si−交換)は、アイソスター生成のための比較的最近の技術である。このアプローチは、珪素による、化合物中の1つ又は複数の特定の炭素原子の置換を含む(概説については、Tacke及びZilchによる論文、Endeavour、New Series、1986年、10、191〜197頁を参照のこと)。シラ置換アイソスター(珪素アイソスター)は、改善された薬理学的性質を示す場合があり、例えば、耐性がより高く、半減期がより長く又は増大した効力を示す場合がある(例えば、Englebienneによる論文、Med.Chem.、2005年,(3)、215〜226頁を参照のこと)。最も広範な態様において、本発明は、本発明の化合物の全てのバイオアイソスター(具体的には、全ての珪素バイオアイソスター)を意図する。
【0077】
最も広範な態様において、本発明は、本明細書中に記載した化合物の全ての光学異性体、ラセミ体及びジアステレオ異性体を意図する。当業者ならば、本発明の化合物中に存在する非対称に置換された炭素原子のために、化合物が光学活性体及びラセミ体として生成され得ることがわかるであろう。キラル中心又は別の形態の異性中心が本発明の化合物に存在する場合には、エナンチオマー及びジアステレオ異性体を含むこのような1種又は複数の異性体の全ての形態が、本発明の範囲に含まれるものとする。1つのキラル中心(又は複数のキラル中心)を含む本発明の化合物は、ラセミ混合物、エナンチオマーを多く含む混合物として使用することもできるし、又はラセミ混合物を周知の技術を用いて分離させてから、個々の異性体を単独で使用することもできる。したがって、本発明の化合物への言及は、ジアステレオ異性体の混合物としての、個々のジアステレオ異性体としての、エナンチオマーの混合物としての及び個々のエナンチオマーの形態での生成物を網羅する。
【0078】
したがって、本発明は、本発明の化合物の全ての光学異性体及びそのラセミ体を意図し、特に断らない限り(例えば、ダッシュ−くさび構造式を用いて)、本明細書中に示した化合物は、示した化合物の全ての可能な光学異性体を網羅するものとする。医薬としての有用性に化合物の立体化学的形態が重要である場合には、本発明は単離されたユートマーの使用を意図する。
【0079】
本明細書中で、用語「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素鎖を定義する。用語「C〜Cアルキル」は、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素鎖を指す。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル,t−ブチル、n−ヘキシルが挙げられる。用語「C〜Cアルキル」は、炭素原子数1〜9の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素鎖を指す。用語「C〜C15アルキル」は、炭素原子数1〜15の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素鎖を指す。本発明のアルキル基は、任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0080】
「C〜Cアルキル」は、炭素原子数が1〜4である以外は同様な意味を有する。
【0081】
「C〜Cアルケニル」は、少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を含む炭素原子数2〜6の直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。例としては、エテニル、2−プロペニル及び3−ヘキセニルが挙げられる。
【0082】
用語「C〜Cハロアルキル」は、1つ又は複数のハロゲン原子で置換されている、前記で定義されたC〜Cアルキル基を指す。
【0083】
本明細書中で、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を含む直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を定義する。用語「C〜Cアルケニル」は、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐鎖不飽和炭化水素鎖を指す。用語「C〜Cアルケニル」は、炭素原子数1〜9の直鎖又は分岐鎖不飽和炭化水素鎖を指す。用語「C〜C15アルケニル」は、炭素原子数1〜15の直鎖又は分岐鎖不飽和炭化水素鎖を指す。好ましいのは、C〜Cアルケニルである。例としては、エテニル、2−プロペニル及び3−ヘキセニルが挙げられる。本発明のアルケニル基は、任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0084】
本明細書中で、用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素―炭素三重結合を含む直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を定義する。用語「C〜Cアルキニル」は、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐鎖不飽和炭化水素鎖を指す。用語「C〜Cアルキニル」は、炭素原子数1〜9の直鎖又は分岐鎖不飽和炭化水素鎖を指す。用語「C〜C15アルキニル」は、炭素原子数1〜15の直鎖又は分岐鎖不飽和炭化水素鎖を指す。好ましいのは、C〜Cアルキニルである。例としては、エチニル、2−プロピニル及び3−ヘキシニルが挙げられる。本発明のアルキニル基は、任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0085】
用語「ヘテロシクリル」は、シクロアルキルと同様であるが、炭素原子の少なくとも1つがN、O、S、SO又はSOで置換されている、飽和又は部分飽和の3〜14員環系(別の環原子数を指定する場合を除いて)を定義する。例としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロフラン及びピロリジンが挙げられる。
【0086】
本明細書中で使用する用語「カルボシクリル」は、炭素原子数3以上(例えば、3〜14、3〜10又は3〜8)の単環式又は多環式残基を意味する。本発明のカルボシクリル残基は、任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよい。単環式及び二環式カルボシクリル残基が好ましい。カルボシクリル残基は飽和又は部分不飽和であることができ、縮合二環系又は三環系を含むことができる。このような基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル並びにまた架橋系、例えば、ノルボルニル及びアダマンチルが挙げられる。
【0087】
飽和カルボシクリル残基が好ましく、本明細書中では「シクロアルキル」と称する。用語「シクロアルキル」は、本明細書中では、縮合二環系又は三環系を含む飽和3〜14員炭素環を定義するのに用いる。このような基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル並びにまた架橋系、例えば、ノルボルニル及びアダマンチルが挙げられる。本発明のシクロアルキル残基は、任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0088】
本明細書中で、用語「アリール」は、少なくとも1つの環が芳香族である、5〜14員(例えば、5〜10員)芳香族単環式、二環式又は三環式基を定義する。したがって、二環式アリール基は芳香環を1つだけ含んでいてもよい。芳香族部分の例は、ベンゼン、ナフタレン、イミダゾール及びピリジンである。この用語はまた、環の1つ又は複数が芳香族性を有する二環又は三環系を含む。インダンは、この型の系の一例である。
【0089】
本明細書中で使用する用語「ヘテロアリール」は、ヘテロ原子(例えば、窒素、イオウ及び/又は酸素)を含む、前記で定義したアリール部分である。この用語はまた、芳香族性を有する環が飽和又は部分飽和環に縮合している系を含む。例としては、ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェン、インドール、イソインドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾリン、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、キナゾリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、インダゾール及びイミダゾール環系が挙げられる。特に断らない限り、用語「アリール」は、前記で定義したヘテロアリール基を含むと解釈すべきである。
【0090】
本発明のアリール及びヘテロアリール基は、任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0091】
本明細書中で、「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0092】
本発明の一般式(特に、以下に記載する一般式(I))において、種々の可能な(1つ又は複数の)ヘテロ原子が、芳香族性を満たし、反芳香族性を妨げ及び局在化により互換異性体を安定化させるように特定の要件を含む場合には、指定した環の結合次数は異なることができる。このような場合には、本発明の構造式中の環構造の適切な結合次数が、本明細書中で意図される。
【0093】
式(I)の化合物に適用される用語「対称」は、置換基R及びRが同一である化合物を定義できる。
【0094】
式(I)の化合物に適用される用語「非対称」は、置換基R及びRが異なる化合物を定義できる。
【0095】
II.本発明による化合物
(a)構造的考察
本発明の化合物は、一般式(I)
【化3】


[式中、置換基は前記で定義した通りである]
を有するか、又は薬学的に許容され得るそのN−オキシド、塩、水和物、溶媒和物、複合体、バイオアイソスター、代謝物若しくはプロドラッグであることができる。
【0096】
一般式(I)の特に好ましい化合物を、表1(下記)に列挙する。
【0097】
【表1】

【0098】
いずれの場合にも、本発明は、列挙した各化合物の薬学的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物、複合体、バイオアイソスター、代謝物若しくはプロドラッグを意図する。
【0099】
本明細書中における個々の化合物番号への言及は、表1の化合物番号を指す。
【0100】
一般式(I)の化合物の一部は新規である。したがって、本発明によれば、本発明は、化合物自体として新規である一般式(I)の化合物を、それらの製造方法、それらを含む組成物及び医薬としてのそれらの使用と共に意図する。
【0101】
したがって、本発明は、以下
4,4’−(3’−メチル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン
4,4’−(1−メチル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン
4,4’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ビス(N−メチルアニリン)
4−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)アニリン
4−(2’−フェニル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)アニリン
2’−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール
5,5’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジピリジン−2−アミン
から選択される化合物、又は薬学的に許容され得るそのN−オキシド、塩、水和物、溶媒和物、複合体、バイオアイソスター、代謝物若しくはプロドラッグ、及び前記化合物を含む組成物(例えば、医薬組成物)を意図する。
【0102】
一般式(I)の化合物は、米国特許第5,824,698号(その内容を参照によって本明細書中に組み入れる)に記載された方法のルーチン的変法によって及び実施例1(下記)に記載されるようにして製造できる。
【0103】
(b)機能的考察
(i)Clostridium difficileの菌株に対する作用及び選択性
本発明の好ましい化合物は、選択的Clostridium difficile薬である。
【0104】
本明細書中で、用語「選択的Clostridium difficile薬」は、C.difficileの1種又は複数の菌株に対して静細菌活性及び/又は殺細菌活性を示すが、(a)Escherichia spp.(例えば、Escherichia coli)、(b)Bacteroides spp.(例えば、B.fragilis)、(c)Fusobacterium spp.、(d)Eubacterium spp.、(e)Ruminococcus spp.、(f)Peptococcus spp.、(g)Peptostreptococcus ssp.、(h)Bifidobacterium spp.、及び(i)Lactobacillus ssp.から選択される正常腸内細菌叢の1種又は複数の代表菌に対しては静細菌活性及び/又は殺細菌活性を示さない化合物を定義するのに用いる。
【0105】
特に好ましい選択的Clostridium difficile薬は、C.difficileの1つ又は複数の菌株に対して静細菌活性及び/又は殺細菌活性を示すが、B.fragilis ATCC25285に対しては静細菌活性及び/又は殺細菌活性を示さない(MIC>64μg/mL)。
【0106】
更に特に好ましい選択的Clostridium difficile薬は、C.difficileの1つ又は複数の菌株に対して静細菌活性及び/又は殺細菌活性を示すが、Bacteroides fragilis ATCC25285及びEscherichia coli ATCC25922に対しては静細菌活性及び/又は殺細菌活性を示さない(MIC>64μg/mL)。
【0107】
したがって、選択的Clostridium difficile薬である本発明の好ましい化合物は、既存の腸内細菌叢を臨床的に有意なほどに撹乱させずに、CDADを治療するのに使用できる。したがって、このような化合物は、抗生物質起因性疾患(本明細書中で定義する通り)を引き起こさずに、抗菌薬として使用できる。
【0108】
選択的Clostridium difficile薬として作用する本発明の化合物は、Clostridium difficile及び正常腸内細菌叢に代表的な1種又は複数の指標細菌に対する化合物の相対抗細菌活性を測定することによって確認できる。このために好適な指標細菌としては、Escherichia coli及び/又は種々のBacteroides spp.(例えば、Bacteroides fragilis)が挙げられる。
【0109】
或いは又は更に、選択的Clostridium difficile薬として作用する本発明の化合物は、試験化合物が投与された対象から得られた連続糞便サンプルに対して定量的糞便培養を実施することによって確認できる。このアプローチのインビトロでの変法は、インビトロで希釈され、濾過された糞便サンプルをインキュベートした場合に試験化合物が大幅な細菌叢変化をもたらすか否かの検討に基づく。この場合、細菌叢変化は、2つ以上の以下の属:Bacteroides spp.、(c)Fusobacterium spp、(d)Eubacterium spp、(e)Ruminococcus spp、(f)Peptococcus spp.、(g)Peptostreptococcus spp.、(h)Bifidobacterium spp.、及び(i)Lactobacillus ssp.を代表する細菌の相対数に対する試験化合物の作用を測定することによって、検出できる。
【0110】
(ii)胞子発芽に対する作用
本発明の化合物は、胞子発芽を阻害又は防止できる。
【0111】
発芽胞子を阻害する化合物は、内生胞子の屈折能(refractivity)、耐熱性及び染色における変化をインビトロで検出することによって確認できる(発芽している内生胞子は、位相差で暗く(phase dark)なり、熱感受性となり、ある種の染料で染色可能になる。
【0112】
(iii)胞子生長に対する作用
本発明の化合物は、胞子生長を阻害又は防止することができる。
【0113】
胞子生長を阻害する化合物は、インビトロで発芽誘導物質(germinant)に曝露された胞子の顕微鏡検査によって確認できる。
【0114】
(iv)殺細菌作用及び/又は静細菌作用
本発明の化合物は、殺細菌性及び/又は静細菌性であることができる。
【0115】
好ましいのは、前記で定義した殺細菌化合物である。このような殺細菌化合物はまた、静細菌性である場合がある(例えば、標的細菌及び濃度によっては)。
【0116】
III.医学的応用
本発明の化合物は、広範な疾患の治療に応用される。したがって、本発明は、医薬(例えば、治療又は予防用の)に使用するための、本明細書中に記載した式(I)の化合物、本明細書中に記載した式(I)の化合物の投与を含む医学的治療又は予防方法、及び本明細書中に記載した式(I)の化合物を含む医薬組成物を意図する。
【0117】
本発明の化合物は、以下により詳細に記載する医学的用途に特に応用される。
【0118】
(a)細菌性疾患及び感染の治療
本発明は、任意のグラム陽性細菌性感染又は疾患の治療に広く応用される。
【0119】
特に好ましいのは、嫌気性グラム陽性細菌によって引き起こされるか又は嫌気性グラム陽性細菌に関連する疾患又は感染の治療である。このような実施形態において、嫌気性細菌は、通性嫌気性菌又は偏性嫌気性菌であることができる。
【0120】
特に好ましいのは、内生胞子形成グラム陽性細菌によって引き起こされるか又は内生胞子形成グラム陽性細菌に関連する疾患又は感染の治療である。このような実施形態において、内生胞子形成グラム陽性細菌は、嫌気性菌(例えば、通性嫌気性菌又は偏性嫌気性菌)であることができる。
【0121】
特に好ましいのは、(a)Clostridium spp.、(b)Staphylococcus spp.、(c)Enterococcus spp.及び(d)(a)〜(c)の組み合わせから選択される細菌によって引き起こされるか又はそのような細菌と関連する疾患又は感染の治療である。このような実施形態において、特に好ましいのは、(a)Clostridium difficile(例えば、菌株BI/NAP1)、(b)Clostridium perfringens、(c)Staphylococcus aureus、及び(d)それらの組み合わせから選択される細菌によって引き起こされるか又はそのような細菌と関連する疾患又は感染の治療である。
【0122】
細菌性疾患は、CDAD、大腸炎、偽膜性大腸炎、下痢症又は抗生物質起因性疾患(抗生物質起因性下痢症及び抗生物質起因性大腸炎を含む)であることができる。
【0123】
(b)細菌性中毒の治療
細菌性疾患又は感染は、例えば、内毒素、外毒素及び/又は毒性酵素を含む1種又は複数の細菌毒素による中毒を伴う場合がある。
【0124】
したがって、本発明の化合物は、細菌性中毒の治療に応用される。このような実施形態において、好ましいのは、細菌性の内毒素、外毒素及び/又は毒性酵素による中毒、例えば、(a)Clostridium spp.、(b)Staphylococcus spp.、(c)Enterococcus spp.及び(d)(a)〜(c)の組み合わせから選択される細菌を特に含む前パラグラフに記載された細菌によって産生された内毒素、外毒素及び/又は毒性酵素による中毒の治療である。
【0125】
特に好ましいのは、Clostridium difficile毒素A(TcdA)、毒素B(TcdB)及び/又はバイナリートキシンCDTを含むクロストリジウム外毒素による中毒の治療である。したがって、本発明の化合物は、Clostridium difficile毒素A(TcdA)、B(TcdB)及び/又はバイナリートキシンCDTの存在によって引き起こされる(又は増悪する)疾患の治療に応用される。
【0126】
(c)Clostridium difficile関連疾患(CDAD)の治療
Clostridium difficile関連疾患(CDAD)は、C.difficile感染及び/又は中毒に関連する一連の症状及び疾患を定義する。CDADは、下痢症、腹部膨満、インフルエンザ様症状、発熱、食欲不振、腹痛、悪心、脱水症及び腸の炎症(大腸炎)を含む。CDADの最も重篤な発現症状は、偽膜性大腸炎(PMC)である。偽膜性大腸炎は、組織学的には粘膜斑を伴う大腸炎を呈し、臨床的には重篤な下痢症、腹部痙攣及び全身毒性を呈する。
【0127】
本発明の化合物は、下痢症、腹部膨満、インフルエンザ様症状、発熱、食欲不振、腹痛、悪心、脱水症、大腸炎及び偽膜性大腸炎を含むCDADの全ての形態の治療に応用される。
【0128】
(d)抗生物質起因性疾患の治療
抗生物質起因性疾患は、抗生物質の投与による細菌叢の(部分的)消失によって引き起こされる正常腸内細菌叢を構成する微生物の相対量の変化に起因する病態を定義する。このような疾患は、抗生物質(特に、広域スペクトル抗生物質)の投与が病原生微生物を増殖させる(通常は正常腸内細菌叢によって抑制されている内在微生物群からの異常増殖によって又は抗生物質よって正常腸内細菌叢から排除された部位の日和見的コロニー形成によって)場合に起こる。
【0129】
抗生物質起因性疾患は典型的には、下痢症(及び随伴する脱水症)、腹部痙攣、しぶり及び発熱を呈する。抗生物質起因性疾患は、偽膜性大腸炎(PMC)を含む大腸炎の種々の形態につながる場合もある。したがって、抗生物質起因性疾患は、抗生物質起因性下痢症(AAD)及び抗生物質起因性大腸炎(AAC)を含む。
【0130】
抗生物質起因性疾患は多くの場合、Clostridium difficile、Staphylococcus aureus(メチシリン耐性S.aureusを含む)及びClostridium perfringensの毒素産生菌株によって引き起こされる。Clostridium difficileは、院内感染AADの最大原因であり、AACの症例の大多数の原因となっている。細菌は、広域スペクトル抗生物質を投与されたか又は癌化学療法が施された患者の結腸で急速に増殖する。
【0131】
したがって、本発明の化合物は、AAD及びAACを含む抗生物質起因性疾患の治療に応用される。特に好ましいのは、Clostridium difficile、Staphylococcus aureus及びClostridium perfringensから選択される細菌によって引き起こされるAAD又はAAC、最も好ましくはClostridium difficileによって引き起こされるAAD又はAACの治療である。
【0132】
このような応用への使用に特に好ましいのは、正常腸内細菌叢を実質的に残すので、選択的な(前記で定義した通り)本発明の化合物である。
【0133】
本発明の化合物は、AAD及びAACを含む抗生物質起因性疾患の予防に特に応用される。このような応用においては、本発明の化合物は、正常腸内細菌叢を構成する微生物の相対量の変化を引き起こす可能性のある他の抗生物質又は治療と併用されることができる。
【0134】
したがって、本発明の化合物は、広域スペクトル抗生物質によって治療された(又はその治療を受けている)対象の治療に使用できる。
【0135】
(e)大腸炎、偽膜性大腸炎及び下痢症の治療
前述の通り、Clostridium difficile、Staphylococcus aureus及びClostridium perfringensから選択される細菌は、大腸炎、偽膜性大腸炎(PMC)及び下痢症に関与する。
【0136】
したがって、本発明の化合物は、大腸炎、偽膜性大腸炎(PMC)又は下痢症の治療に応用される。
【0137】
特に好ましいのは、偽膜性大腸炎の治療である。
【0138】
IV.本発明の組み合わせに使用される補助薬
(a)概要
本発明の化合物に加えて、本発明は、本発明の更なる成分としての1種又は複数の以下の補助薬の使用を意図する。
【0139】
したがって、本発明は、本発明の化合物を、以下に記載する補助薬から選択される1種又は複数の補助薬と組み合わせて含む組成物を提供する。
【0140】
(b)抗ウィルス性補助薬
この組み合わせは好ましくは、1種又は複数の補助的な抗ウィルス薬を更に含む。このような補助的な抗ウィルス薬は、(a)ウィルス酵素阻害薬(例えば、(i)プロテアーゼ阻害剤、(ii)ヘリカーゼ阻害剤及び(iii)ポリメラーゼ阻害剤から選択される)、(b)ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害薬、(c)非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、(d)インテグラーゼ阻害薬、(e)成熟阻害薬、(f)サイトカイン類又はサイトカイン刺激因子、(g)ウィルス侵入阻害薬(例えば、(i)接着阻害剤、(ii)コレセプター結合阻害剤及び(iii)膜融合阻害剤から選択される)の1種又は複数から選択されることができる。
【0141】
(c)抗細菌性補助薬
本発明の化合物は、以下から選択される1種又は複数の抗生物質を含む(但し、これらに限定するものではない)種々の抗細菌薬と組み合わせて使用できる。
・アミドグリコシド系抗生物質(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン及びパロモマイシン)
・アンサマイシン系抗生物質(例えば、ゲルダナマイシン及びハービマイシン)
・カルバセフェム系抗生物質(例えば、ロラカルベフ)
・カルバペネム系抗生物質(例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン及びメロペネム)
・セファロスポリン系抗生物質(第1世代)(例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン/セファロシン及びセファレキシンを含む)
・セファロスポリン系抗生物質(第2世代)(例えば、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル及びセフロキシムを含む)
・セファロスポリン系抗生物質(第3世代)(例えば、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン及びセフジニルを含む)
・セファロスポリン系抗生物質(第4世代)(例えば、セフェピムを含む)
・グリコペプチド系抗生物質(例えば、バンコマイシン及びテイコプラニン)
・マクロライド系抗生物質(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン及びスペクチノマイシン)
・モノバクタム系抗生物質(例えば、アズトレオナム)
・ペニシリン系抗生物質(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン及びチカルシリン)
・ポリペプチド系抗生物質(例えば、バシトラシン、ポリミキシンB及びコリスチン)
・キノロン系抗生物質(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン及びトロバフロキサシン)
・スルホンアミド系抗生物質(例えば、マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド(sulfanilimide)、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム−スルファメトキサゾール配合剤(コトリモキサゾール、TMP−SMX)
・テトラサイクリン系抗生物質(例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン及びテトラサイクリン)
・アミノクマリン系抗生物質(例えば、ノボビオチン、アルバマイシン、クーママイシン及びクロロビオシン)
・オキサゾリジノン系抗生物質(例えば、リネゾリド及びAZD2563)
・リポペプチド系抗生物質(例えば、ダプトマイシン)
・ストレプトグラミン系抗生物質(例えば、キヌプリスチン/ダルホプリスチン)
・グリシルサイクリン系抗生物質(例えば、チゲサイクリン)
・ランチビオティクス系抗生物質(例えば、A型ランチビオティクス(例えば、ナイシン、サブチリン、エピデルミン、ミュータシンII、ミュータシンI&III)及びB型ランチバイオティクス(例えば、メルサシジン、アクタガルジン及びシンナマイシン))
【0142】
補助薬として有用な他の好適な抗生物質としては、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコアマイシン(lincoamycin)、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン/リファンピシン及びチニダゾールから選択される1種又は複数の抗生物質が挙げられる。
【0143】
したがって、本発明の化合物は、ペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カプレオマイシン、サイクロセリン、アズロシリン、カルベニシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、エタンブトール、エチオナミド、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、キノロン、シノキサシン、ナリジクス酸、フルオロキノロン(例えば、レボフロキサシン、モキサフロキサシン(moxafloxacin)及びガチフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン)、カナマイシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、p−アミノサリチル酸、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、スルホンアミド、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、コアモキシクラブ(co−amoxyclav)、セファロチン、セフロキシム、セフトリアキソン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、ニトロフラントイン、コトリモキサゾール、リファマイシン及びその誘導体(例えば、リファンピシン、リファブチン及びリファペンチン)、イソニアジド、ピラジナミド、キロマイシン、チオストレプトン、ミクロコクシン、フシジン酸、チオラクトマイシン及びホスミドマイシンから選択される1種又は複数の抗生物質と組み合わせて使用できる。
【0144】
他の好適な抗細菌性補助薬は、下記表に列挙されたものから選択することができる:
【0145】
【表2】

【0146】
(d)抗真菌性補助薬
本発明の化合物は、種々の抗真菌薬(アンチマイコティック)と組み合わせて使用できる。
【0147】
(e)抗原虫性補助薬
本発明の化合物は、クロロキン、ドキシサイクリン、メフロキン、メトロニダゾール、エプロルニチン(eplornithine)、フラゾリドン、ヒドロキシクロロキン、ヨードキノール、ペンタミジン、メベンダゾール、ピペラジン、ハロファントリン、プリマキン、ピリメタミン−スルファドキシン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、硫酸キニーネ、グルコン酸キニジン、キニン二塩酸塩、硫酸ヒドロキシクロロキン、プログアニル、キニン、クリンダマイシン、アトバクオン、アジスロマイシン、スラミン、メラルソプロール、エフロルニチン、ニフルチモックス、アンフォテリシンB、スチボグルコン酸ナトリウム、イセチオン酸ペンタミジン、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、ピリメタミン及びスルファジアジンを含む(但し、これらに限定するものではない)種々の抗原虫薬と組み合わせて使用できる。
【0148】
(f)他の補助薬
本発明の化合物は、抗炎症治療に起因する及び/又は感染の続発症として現れる副作用を治療又は防止する種々の他の補助治療薬と同時投与できる。この型の補助薬は、抗感染活性を有しても有さなくてもよく、例えば、PPI及びH2RA(前述の通り)を含む。
【0149】
したがって、本発明の化合物は、オメプラゾール(ロセック、プリロセック、ゼゲリッド)、ランソプラゾール(プレバシッド、ゾトン、インヒビトール)、エソメプラゾール(ネキシウム)、パントプラゾール(プロトニクス、ソマック、パントロック、パントゾール、ザーカル、パン)及びラベプラゾール(ラベシッド、アシフェックス、パリエット、ラベロック)を含む(但し、これらに限定するものではない)PPIと共に補助的に使用できる。
【0150】
本発明の化合物は、シメチジン(タガメット)、ラニチジン(ジネタック、ザンタック)、ファモチジン(ペプシジン、ペプシド)、ロキサチジン(ロキシット)及びニザチジン(タザック、アキシッド)を含む(但し、これらに限定するものではない)H2RAと共に補助的に使用することもできる。
【0151】
本発明の化合物は、PPI又はH2RAを2種の抗生物質(メトロニダゾール、アモキシシリン、レボフロキサシン及びクラリスロマイシンから選択される抗生物質を含むが、これらに限定するものではない)の組み合わせと併用する三剤併用療法と共に補助的に使用できる。
【0152】
例えば、Saccharomyces boulardii又はLactobacillus acidophilus細胞を含む種々のプロバイオティクスを、補助薬として使用できる。プロバイオティクスは、CDADを誘発した抗菌剤又は更にはCDADの治療に使用された薬剤によって撹乱された患者の固有腸内細菌叢の回復に役立つと述べられている生きた微生物の単一培養物又は混合培養物である。更に、このような微生物は、患者の免疫系を刺激し、C.difficileに関連する毒素を分解する酵素の産生を誘発する働きをする場合がある。該当する特定の微生物は、Saccharomyces spp.(例えば、Saccharomyces boulardii及びSaccharomyces cerevisiae)及びLactobacillus spp.(例えば、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaris及びLactobacillus plantarum)であるが、これに限定するものではない。ヒト腸管の正常なメンバーである他の一般的なプロバイオティック組成物又は微生物も考慮に入れることができる。
【0153】
腸管細菌叢の増殖の刺激を目的とする薬剤であるプレバイオティクスもまた、補助薬として使用できる。例えば、オリゴフルクトースの使用は、Bifidobacterium spp.のレベルを増加させ、患者においてその後の再発率を低下させることが示されている。したがって、Clostridium種を標的とする狭い活性スペクトルを有する全ての抗細菌薬は、正常の腸内微生物群の回復を目的とする治療法と組み合わせて投与する場合に著しい効果があるであろう。
【0154】
正常腸内細菌叢の回復を目的とする他のアプローチには、糞便バイオセラピー、及び腸の正常微生物を含む健常人の糞便から調製される糞便浣腸が含まれる。したがって、糞便細菌療法もまた、本発明の化合物と共に補助的に使用できる。
【0155】
C.difficileによって産生される毒素を捕捉するために、種々の異なる型の細菌毒素を結合及び捕捉できる吸収剤を、補助薬として使用することができる。胆汁酸捕捉剤コレスチラミン又はコレスチポールなどのイオン交換樹脂は、C.difficile毒素に結合するので、腸に対する毒素の曝露度を低減することを目的とする。しかし、イオン交換樹脂は、バンコマイシンなどの薬剤に結合することが知られているので、感染部位における抗細菌薬濃度を準最適とする可能性がある。本発明の化合物と共に補助的に使用できる他の吸収剤には、Synsorb 90及びTolevamerなどのポリマーが含まれる。
【0156】
プロバイオティクス療法は、CDAD患者における免疫系の反応を改善することが示唆されているが、静脈注射用免疫グロブリン(J.Antimicrob.Chem.、2004年、53、882〜884頁)は、例えば、CDAD患者、特に、更なる抗細菌治療が腸内細菌叢の撹乱を更に増悪するであろう再発症例の治療にも使用できる。したがって、本発明の化合物は、種々の免疫グロブリンと共に補助的に使用できる。
【0157】
下痢症の減少を目的とする薬剤の使用は、CDAD患者においては一般に回避されるが、一部の症例では、このような薬剤と抗細菌薬との併用が、感染部位の抗細菌薬濃度を増加させようとする場合及び/又は抗細菌薬が腸内病原体と接触する時間の長さを増加させようとする場合に有効であり得ると予想できる。このような薬剤としては、ロペラミド(ロペックス(Lopex)、イモジウム(Imodium)、ディモル(Dimor)、ペプト(Pepto))、ジフェノキシレート(ロモチル(Lomotil)、コフェノトロープ(Co−phenotrope))、ジフェノキシン(モトフェン(Motofen))及びラセカドトリルを挙げることができるが、これらに限定するものではない。したがって、本発明の化合物は、前記で列挙したいずれかを含む種々の止痢薬と共に補助的に使用できる。
【0158】
以下:(a)脂肪異栄養症及びるいそう、(b)顔面脂肪組織萎縮症、(c)脂質異常症、(d)疲労、(e)貧血、(f)末梢神経障害、(g)悪心、(h)下痢症、(i)肝毒性、(j)骨減少症、(k)脱水症及び(l)骨粗鬆症の副作用のいずれかを治療又は防止する併用治療薬を、本発明の化合物と同一の治療計画の一部として使用することができる。
【0159】
治療又は予防は、以下:
(a)癌療法
(b)AIDS療法
(c)免疫抑制的治療介入
(d)移植後のグラフト/インプラント管理
(e)爪甲真菌症の爪手術又はデブリードマン
(f)局所的抗真菌療法(例えば、アゾール、アリルアミン(例えば、テルビナフィン)又はモルホリン(例えば、アモロルフィン)から選択される抗真菌薬を使用)
(g)全身的抗真菌療法
(h)抗細菌療法
(i)抗ウィルス療法
(j)抗炎症療法(例えば、ステロイドを使用)
(k)鎮痛薬投与
(l)鎮痒薬投与
(m)プロバイオティクス投与
(n)糞便細菌療法、又は
(o)皮膚移植術
の治療又は治療介入の1つ又は複数に対する補助としての、本明細書中で定義した化合物の投与を含むことができる。
【0160】
したがって、本発明は、(a)〜(o)の治療又は治療介入の1つ又は複数が実施されている(又は実施されたことがある)患者群の治療又は予防を含むことができる。
【0161】
(g)補助的治療
治療又は予防は、以下:
1.癌療法
2.免疫抑制的治療介入
3.免疫賦活的治療介入
4.移植後のグラフト/インプラント管理
5.爪甲真菌症の爪手術又はデブリードマン
6.抗炎症療法(例えば、ステロイドを使用)
7.鎮痛薬投与
8.鎮痒薬投与
9.外科手術
10.細胞又は組織剥離
11.放射線療法
12.寒冷療法
13.糞便移植療法(糞便細菌療法)
14.プロバイオティクス療法、又は
15.皮膚移植術
の治療又は治療介入の1つ又は複数に対する補助としての、本明細書中で定義した化合物の投与を含むことができる。
【0162】
したがって、本発明は、(1)〜(15)の治療又は治療介入の1つ又は複数が実施されている(又は実施されたことがある)患者群の治療又は予防を含むことができる。
【0163】
(V)薬量学
本発明の化合物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、直腸内、膣内及び局所(頬側及び舌下)投与を含む経口経路又は非経口経路によって投与できる。
【0164】
投与する化合物の量は、使用する個々の投与単位、治療期間、治療患者の年齢及び性別、治療される障害の性質及び程度、並びに選択される個々の化合物によって大きく異なる可能性がある。
【0165】
一般的には、投与する化合物の有効量は一般に、約0.01mg/kg/日〜10000mg/kg/日の範囲であろう。単位投与量は、化合物を0.05〜500mg含むことができ、1日に1回又はそれ以上服用できる。化合物は、以下に記載するように、医薬担体と共に従来の投与単位形態を用いて経口的、非経口的又は局所的に投与できる。
【0166】
好ましい投与経路は、経口投与である。一般に、好適な用量は、0.01〜500mg/kg体重(服用者)/日の範囲、好ましくは0.1〜1000mg/kg体重/日の範囲、最も好ましくは1〜5mg/kg体重/日の範囲であろう。
【0167】
所望の用量は好ましくは、連日投与のための単回用量として与える。しかし、1日を通じて適切な間隔で2、3、4、5若しくは6回又はそれ以上に分けて投与されるサブ用量(sub−dose)も使用できる。これらのサブ用量は、例えば、単位剤形当たり活性成分を0.001〜100mg、好ましくは0.01〜10mg、最も好ましくは0.5〜1.0mg含む単位剤形で投与できる。
【0168】
有効量又は用量を決定するに当たって、担当医は、使用する化合物の作用の効力及び持続時間、治療される疾病の性質及び重症度、並びに治療される患者の性別、年齢、体重、全身健康状態及び個々の反応性、更に他の関連事情を含む(但し、これらに限定するものではない)多数の因子を考慮する。当業者ならば、Goodman & Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版(1996年)、Appendix II、1707〜1711頁からの指針に基づいて投与量を決定できることがわかるであろう。
【0169】
担体材料と組み合わせて単一剤形を生成できる化合物の量は、治療される対象及び個々の投与方法によって異なる。例えば、ヒトへの経口投与を意図する製剤は、約0.5mg〜約7gの活性薬剤を、任意選択で、総組成物の約5%から約95%まで変化できる適切で都合のよい量の担体材料と共に含むことができる。本発明の化合物の投与単位形態は一般に、活性成分を約1mg〜約500mg、例えば、5mg、10mg、20mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg又は1000mg含む。
【0170】
本発明の化合物の個々の投与量の有効性は、疾患の進行又は疾患の防止に対する所定の投与量の作用を監視することによって決定できる。
【0171】
(VI)製剤
本発明の化合物は任意の形態を取ることができる。本発明の化合物は、当業界において記載された技術を用いて、合成されたものであっても、天然供給源から精製又は単離されたものであってもよい。
【0172】
例示的な、薬学的に許容され得る塩は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルゲン酸(algenic)、b−ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸から調製する。
【0173】
好適な薬学的に許容され得る塩基付加塩は、金属イオン塩及び有機イオン塩を含む。金属イオン塩としては、適切なアルカリ金属(第Ia族)塩、アルカリ土類金属塩(第IIa族)塩、及び他の生理学的に許容され得る金属イオン塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。このような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛のイオンから生成できる。有機塩は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインを部分的に含む第三級アミン及び第四級アンモニウム塩から生成できる。前記塩は全て、当業者が対応する化合物から常法によって生成できる。
【0174】
医薬組成物は、安定剤、酸化防止剤、着色剤及び希釈剤を含むことができる。矢k具悪的に許容され得る担体及び添加剤は、医薬化合物の副作用が最小限に抑えられ、及び化合物の性能が、治療効果がなくなるほどには損なわれないように、選択する。
【0175】
医薬組成物は、経腸的に及び/又は腸管外に(非経口的に)投与できる。経口(胃内)投与が典型的な投与経路である。薬学的に許容され得る担体は、当業界でよく知られた腸溶コーティングなどのような剤皮及びシェルを用いて調製できる錠剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤を含む固体剤形中に存在できる。経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容され得る乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。
【0176】
腸管外投与としては、皮下、筋肉内、皮内、静脈内経路及び当業界で知られた他の経路が挙げられる。腸内投与としては、液剤、錠剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤及びシロップ剤が挙げられる。
【0177】
投与時には、医薬組成物は体温又は体温に近い温度であることができる。
【0178】
経口用の組成物は、医薬組成物を製造するために当業界で知られている任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は、医薬としてエレガントで風味のよい調合剤(preparation)を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種又は複数の薬剤を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に好適な無毒性の薬学的に許容され得る賦形剤との混合物として活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム)、造粒剤及び崩壊剤(例えば、トウモロコシ澱粉又はアルギン酸)、結合剤(例えば、澱粉、ゼラチン又はアラビアゴム)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)であることができる。錠剤はコーティングされていなくてもよいし、又は例えば、胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長期にわたって持続作用をもたらすように、既知の技術によってコーティングされていることもできる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用できる。
【0179】
経口用の製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤、或いは活性成分がそのままで存在するか又は水若しくは油媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油)と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として提供することもできる。
【0180】
水性懸濁剤の製造に好適な賦形剤との混合物中に活性物質を含む水性懸濁剤を製造できる。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムを含む。分散剤又は湿潤剤は、天然リン脂質、例えば、レシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、若しくはエチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、若しくはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから得られた部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、若しくはエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から得られた部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであることができる。
【0181】
水性懸濁剤はまた、1種若しくは複数の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル若しくはn−プロピル、1種若しくは複数の着色剤、1種若しくは複数の矯味矯臭剤、又は1種若しくは複数の甘味剤、例えば、スクロース若しくはサッカリンを含むことができる。
【0182】
油性懸濁剤は、ω−3脂肪酸、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油、又は鉱油、例えば、流動パラフィン中に活性成分を懸濁させることによって製剤化できる。油状懸濁剤は、増粘剤、例えば、蜜ろう、固形パラフィン又はセチルアルコールを含むことができる。
【0183】
風味のよい経口用調合剤を提供するために、甘味剤、例えば、前述のようなもの及び矯味矯臭剤を添加することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤の添加によって保存できる。
【0184】
水の添加による水性懸濁剤の調製に好適な分散性散剤及び顆粒剤は、活性成分を分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤及び1種又は複数の保存剤との混合物として提供する。好適な分散剤若しくは湿潤剤及び懸濁化剤の例は、既に前述したものである。別の賦形剤、例えば、甘味剤、矯味矯臭剤及び着色剤も存在できる。
【0185】
本発明の化合物を含むシロップ剤及びエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、ソルビトール又はスクロースを用いて製剤化できる。このような製剤はまた、粘滑剤、保存剤並びに矯味矯臭剤及び着色剤を含むことができる。
【0186】
本発明の化合物は、滅菌された注射可能な水性懸濁剤又は油性懸濁剤の形態で、非経口的に、例えば、皮下、静脈内若しくは筋肉内に又は輸液法によって投与できる。このような懸濁剤は、既知の技術によって、好適な分散剤若しくは湿潤剤及び懸濁化剤、例えば、前述したもの又は他の許容され得る薬剤を用いて製剤化できる。滅菌された注射可能な調合剤は、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤又は溶媒中の滅菌された注射可能な溶液又は懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中溶液であることができる。使用できる許容され得るビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。更に、滅菌固定油も、溶媒又は懸濁媒として従来から使用されている。このために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激性の(bland)固定油を使用できる。更に、ω−3多価不飽和脂肪酸を、注射剤の調製に使用できる。
【0187】
投与はまた、ネブライザー用のエアゾール剤若しくは液剤の形態で吸入によって、又は常温では固体であるが直腸温では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出するであろう好適な非刺激性の(non−irritating)賦形剤と薬物とを混合することによって調製された坐剤の形態で直腸内に行うこともできる。このような物質はカカオバター及びポリエチレングリコールである。
【0188】
本明細書中に記載した化合物を含む口内錠、パステル剤又はチューインガムの形態での投与を含む頬側及び舌下投与も、本発明によって網羅される。化合物は、風味付けされた基剤、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴム中に沈着させることができる。
【0189】
本発明の化合物の他の投与方法は、対象の皮膚中に直接的に及び/又は皮膚を経て薬を放出する皮膚パッチ剤を含む。
【0190】
局所送達系もまた本発明によって網羅され、軟膏剤、散剤、スプレー剤、クリーム剤、ゲル剤、洗眼剤、液剤又は懸濁剤を含む。
【0191】
本発明の組成物には任意選択で、例えば、粘度増強剤、保存剤、界面活性剤及び浸透促進剤などの別の薬剤を追加することができる。粘度上昇剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又は当業者に知られた他の薬剤が挙げられる。このような薬剤は典型的には、医薬組成物の約0.01〜2重量%の濃度で使用する。
【0192】
使用前又は使用中における微生物増殖を防止するために、保存剤を任意選択で使用する。好適な保存剤としては、ポリクオタニウム−1、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸又は当業者に知られた他の薬剤が挙げられる。典型的には、このような保存剤は、医薬組成物の約0.001〜約1.0重量%の濃度で使用される。
【0193】
この組成物の成分の溶解性は、組成物中の界面活性剤又は他の適切な補助溶媒によって増大させることができる。このような補助溶媒としては、ポリソルベート20、60及び80、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン界面活性剤(例えば、プルロニック(Pluronic)F−68、F−84及びP−103)、シクロデキストリン又は当業者に知られた他の薬剤が挙げられる。典型的には、このような補助溶媒は、医薬組成物の約0.01〜約2重量%の濃度で使用する。
【0194】
薬学的に許容され得る賦形剤及び担体は、前述のもの及び同類のものを全て網羅する。有効な製剤及び投与方法についての前記検討事項は、当業界でよく知られており、また、標準的な教科書に記載されている。例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版(Lippincott、Willians and Wilkins)、2000年、Liebermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.(1980年)、及びKibbeら編、Handbook of Pharmaceutical Excipients(第3版)、American Pharmaceutical Association、Washington(1999年)を参照のこと。
【0195】
したがって、本発明の化合物が薬学的に許容され得る賦形剤と共に製剤化される実施形態においては、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤及び保存剤を含む任意の好適な賦形剤を使用できる。好適な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウム及びカルシウム、リン酸ナトリウム及びカルシウム並びにラクトースが挙げられ、コーンスターチ及びアルギン酸が好適な崩壊剤である。結合剤としては、澱粉及びゼラチンを挙げることができ、滑沢剤は、存在する場合には、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであろう。医薬組成物は任意の好適な形態を取ることができ、例えば、錠剤、エリキシル剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、ネイルラッカー剤、バーニッシュ(varnish)及びベニヤ(veneer)、皮膚パッチ剤及びエアゾール剤が挙げられる。
【0196】
医薬組成物は、使用説明書及び/又は複数の異なる成分と共に本発明の組成物を単位剤形中に含むことができるキットオブパーツの形態を取ることができる。
【0197】
経口投与のためには、本発明の化合物は、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、口内錠、メルト、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、分散剤又は乳剤(液剤、懸濁剤、分散剤又は乳剤は水性でも非水性でもよい)などの固体又は液体調合剤に製剤化できる。固体単位剤形は、例えば、界面活性剤、滑沢剤並びにラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチなどの不活性充填剤を含む普通の硬質シェルゼラチン型又は軟質シェルゼラチン型であることができるカプセル剤であることができる。経口用の錠剤は、本発明の化合物を単独で、又は不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤及び保存剤などの薬学的に許容され得る賦形剤と共に含むことができる。好適な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウム及びカルシウム、リン酸ナトリウム及びカルシウム並びにラクトースが挙げられ、コーンスターチ及びアルギン酸が好適な崩壊剤である。結合剤としては澱粉及びゼラチンを挙げることができ、滑沢剤は、存在する場合には、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであろう。所望ならば、錠剤は、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの物質でコーティングして、胃腸管内での吸収を遅延させることができる。経口用のカプセル剤は、本発明の化合物が固体希釈剤と混合されている硬質ゼラチンカプセル剤、並びに活性成分が水又はピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油などの油と混合されている軟質ゼラチンカプセル剤を含む。
【0198】
直腸内投与用の製剤は、例えば、カカオバター又はサリチレートを含む好適な基剤を含む坐剤として提供できる。膣内投与に好適な製剤は、当業界において適切なことが知られている担体を活性成分の他に含む膣坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤又はスプレー剤として提供できる。
【0199】
筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内に使用するためには、本発明の化合物は一般に、適切なpH及び等張まで緩衝化されている滅菌水性液剤又は懸濁剤の形態で提供できる。
【0200】
好適な水性ベヒクルとしては、リンガー液及び等張塩化ナトリウム液が挙げられる。本発明による水性懸濁剤は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン及びトラガカントゴムなどの懸濁化剤並びにレシチンなどの湿潤剤を含むことができる。水性懸濁剤に好適な保存剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸エチル及びn−プロピルが挙げられる。
【0201】
本発明の化合物はまた、リポソーム製剤として提供できる。
【0202】
別の実施形態において、本発明の化合物は、従来の錠剤基剤(例えば、ラクトース、スクロース及びコーンスターチ)を、結合剤(例えば、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチン)、投与後の錠剤の分解及び溶解の補助を意図とする崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、コーンスターチ及びグアーガム)、錠剤顆粒の流れを改善し並びに錠剤ダイ及びパンチの表面への錠剤材料の付着を防止することを意図とする滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸、又はステアリン酸マグネシウム、カルシウム若しくは亜鉛)、錠剤の美観性を向上させ及び患者がより服用し易いようにすることを意図する染料、着色剤及び矯味矯臭剤と組み合わせて用いて、錠剤化できる。
【0203】
経口用液体剤形に使用するのに好適な賦形剤としては、薬学的に許容され得る界面活性剤、懸濁化剤又は乳化剤が添加されている又はされていない、水並びにアルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコールが挙げられる。
【0204】
本発明の化合物はまた、非経口的に、即ち、皮下、静脈内、筋肉内又は腹腔内に投与することもできる。このような実施形態において、化合物は、医薬担体(滅菌された液体又は液体混合物であることができる)と共に生理学的に許容され得る希釈剤中に含まれる注射可能な用量として提供できる。好適な液体としては、薬学的に許容され得る界面活性剤(例えば、石けん又は洗剤)、懸濁化剤(例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース)、又は乳化剤及び他の医薬補助剤が添加されているか又はされていない、水、生理的食塩水、デキストロース及び関連化合物の水溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール又はヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、グリセロールケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400)、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリドが挙げられる。本発明の非経口製剤に使用できる好適な油は、石油起源、動物起源、植物起源又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペテロラタム及び鉱油である。
【0205】
好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。好適な脂肪酸エステルは、例えば、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルである。好適な石けんとしては、脂肪酸アルカリ金属塩(fatty alkali metal)、アンモニウム塩及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な洗剤としては、カチオン性洗剤(例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物及びアルカリアミン酢酸塩)、アニオン性洗剤(例えば、アルキル、アリール及びオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリドスルフェート並びにスルホスクシネート)、ノニオン性洗剤(例えば、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー)、及び両性洗剤(例えば、アルキル−β−アミノプロピーネート及び2−アルキルイミダゾリン第四級アンモニウム塩)、並びに混合物が挙げられる。
【0206】
本発明の非経口用組成物は典型的には、約0.5〜約25重量%の本発明の化合物を溶解して含むであろう。保存剤及び緩衝剤も使用できる。注射部位の刺激を最小限に抑えるか又はなくすために、このような組成物は、親水性−親油性バランス(HLB)が約12〜約17のノニオン性界面活性剤を含むことができる。このような製剤中の界面活性剤の量は、約5〜約15重量%の範囲である。この界面活性剤は、前記HLBを有する単一成分であってもよいし、又は所望のHLBを有する2種以上の成分の混合物であってもよい。非経口製剤に使用する界面活性剤の実例は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルの類、例えば、ソルビタンモノオレエート、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される疎水性塩基とエチレンオキシドとの高分子量付加物である。
【0207】
本発明の化合物はまた、局所的に投与することもでき、その場合には、担体は好適には液剤、軟膏剤又はゲル剤の基剤を構成できる。基剤は、例えば、以下:ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜ろう、鉱油、水及びアルコールなどの希釈剤、並びに乳化剤及び安定剤の1種又は複数を含むことができる。局所製剤は、約0.1〜約10w/v%(単位体積当たりの重量)の濃度の化合物を含むことができる。
【0208】
補助的に使用する場合には、本発明の化合物は、1種又は複数の他の薬物と共に使用するために配合できる。特に、本発明の化合物は、鎮痛薬、抗炎症薬(例えば、ステロイド)、免疫調節薬及び鎮痙薬と組み合わせて使用できる。
【0209】
したがって、補助的使用は、他の(1種又は複数の)薬物と適合する(又は協力する)ように設計された特定の単位投与量に反映されることもできるし、或いは化合物が1種若しくは複数の抗炎症薬、サイトカイン若しくは免疫抑制薬(又は単回単位用量内で他の(1種又は複数の)薬物と物理的に関連している)と混合されている製剤に反映されることもできる。補助的使用はまた、本発明の化合物が抗菌薬及び/又は抗炎症薬と共パッケージ化されている(例えば、複数の単位用量の配列の一部として)本発明の医薬キットの組成物に反映されることもできる。補助的使用はまた、化合物と抗菌薬及び/又は抗炎症薬との同時投与に関連する資料及び/又は使用説明書に反映されることもできる。
【0210】
(VII)例示
本発明を、具体的な実施例に関して以下に説明する。これらの実施例は、例示に過ぎず、説明のみを目的とし、特許請求の範囲に記載した独占権の範囲又は明細書中に記載した本発明の範囲を制限することを意図しない。これらの実施例は、本発明を実施するために現在考えられる最良の形態を構成する。
【0211】
(a)実施例1 一般式(I)の化合物の製造
(i)一般的実験
HPLC−UV−MSは、Gilson 321 HPLC上で実施し、検出はGilson 170DAD及びFinnigan AQA質量分析計によって行い、エレクトロスプレーイオン化方式で操作した。使用したHPLCカラムは、Phenomenex Gemini C18 150×4.6mm又はPhenomenex Gemini C18 50×4.6mm 3μである。分取HPLCは、Gilson 321上で実施し、検出はGilson 170DADによって行った。画分は、Gilson 215フラクションコレクターで収集した。使用した分取HPLCカラムは、Phenomenex Gemini C18 150×10mmであり、移動相はアセトニトリル/水である。
【0212】
H NMRスペクトルは、300MHzで操作されるBruker装置上で記録した。NMRスペクトルは、CDCl又はDMSO−d溶液として、クロロホルム(7.26ppm)又はDMSO−d(2.50ppm)を参照標準として用いて得た(ppmで報告)。ピークの多重度を報告する場合、以下の略語:s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、m(多重線)、br(幅広)、dd(二重線の二重線)、dt(三重線の二重線)、td(二重線の三重線)、obsc.(不明瞭)、app.(見掛け)を用いる。結合定数を示す場合には、ヘルツ(Hz)で報告する。
【0213】
カラムクロマトグラフィーは、フラッシュクロマトグラフィー(40〜65μmシリカゲル)によるか又は自動精製システム(Biotage(登録商標)からのSP1(商標)Purification System又はISCOからのCombiFlash Companion)を用いて実施した。マイクロ波中の反応は、Initiator 8(商標)(Biotage)又はExplorer 48(CEM)中で実施した。
【0214】
使用した略語は、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、IMS(工業用変性アルコール)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、Boc(tert−ブチルオキシカルボニル)、RT(保持時間)、DCM(ジクロロメタン)、TFA(トリフルオロ酢酸)、LCMS(液体クロマトグラフィー−質量分析法)、NMR(核磁気共鳴)、DME(1,2−ジメトキシエタン)である。
【0215】
MICデータは、Methods for Antimicrobial Susceptibility Testing of Anaerobic Bacteria;Approved Standard−第7版[M11−A7、第27巻、第2号、2007年1月]及びMethods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically;Approved Standard−第7版[M7−A7、第26巻、第2号、2006年1月]に記載されたCLSIプロトコールに従って、微量液体希釈法によって測定した。
【0216】
(ii)市販化合物
以下の化合物は全て、ChemDiv.から購入した。
3,3’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン(化合物2)。
【0217】
(iii)ベンゾイミダゾール
方法1
4,4’−(1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン(化合物1)
200℃において撹拌PPA(20mL)に、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラアミン(500mg、2.34ミリモル)と4−アミノ安息香酸(640mg、4.67ミリモル)との均質混合物を分割して加えた。混合物を200℃において2.5時間撹拌した。この混合物を冷却し(<100℃まで)、水中に注いだ。得られた混合物を、均一な緑色の沈殿物が形成されるまで撹拌した。固体を濾去し、KCO水溶液及び水で洗浄し、次いで吸引下で乾燥させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc−NEt 99:1→EtOAc−MeOH−NEt 89:10:1)によって精製して、黄色の固体を得た。この固体をMeOH及び1M HClに溶解させ、次いで減圧濃縮した。次に、この物質を粉砕して微細粉末とし、NaHCO水溶液中で撹拌した。固体を濾過し、水洗し、乾燥させて(真空オーブン)、生成物を黄色の固体として得た(475mg、49%)。
LCMS RT=3.28分、MH 417.3;H NMR(DMSO+DO):7.90〜7.84(6H,m)、7.74〜7.65(4H,m)及び6.79〜6.73(4H,m)。
【0218】
以下の化合物を同様にして製造し、必要に応じて結晶化又はカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0219】
4,4’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ビス(N−メチルアニリン)(化合物6)
LCMS RT=1.46分、MH 445.2;H NMR(DMSO):12.52(2H,br s)、7.98〜7.90(4H,m)、7.72(2H,br s)、7.60〜7.52(2H,m)、7.48〜7.43(2H,m)、6.66(4H,d,J 8.8)、6.24〜6.17(2H,m)及び2.76(6H,d,J 4.8)。
【0220】
5,5’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジピリジン−2−アミン(化合物11)
LCMS RT=1.36分、MH 419.2;H NMR(DMSO):12.82(2H,br s)、8.75(2H,d,J 2.4)、8.13(2H,dd,J 8.9及び2.4)、7.76(2H,br s)、7.64〜7.57(2H,m)、7.53〜7.47(2H,m)及び6.61〜6.52(6H,m)。
【0221】
方法2
4,4’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジフェノール(化合物3)
ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラアミン(214mg、2.00ミリモル)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(489mg、4.00ミリモル)及びNa(380mg、2.00ミリモル)のIMS−HO(3:1、20mL)中混合物を、マイクロ波照射下で160℃において10分間、次いで180℃において10分間加熱した。混合物を濾過し、IMSで洗浄した。HOを濾液に加え、得られた白色沈殿物を濾過し、水及びEtOで洗浄した。粗製固体のカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc−MeOH 95:5)により、生成物を黄色の固体として得た(50mg、6%)。
LCMS RT=10.36分 [Dionex],MH 419.1;H NMR(DMSO):12.75〜12.66(2H,m)、10.00〜9.96(2H,m)、8.06〜7.99(4H,m)、7.86(1H,br s)、7.72〜7.63(2H,m)、7.58〜7.45(3H,m)及び6.96〜6.89(4H,m)。
【0222】
方法3
tert−ブチル−4,4’−(1−メチル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ビス(4,1−フェニレン)ジカルバメート(中間体8)
−メチルビフェニル−3,3’,4,4’−テトラアミン(150mg、0.66ミリモル)をDMF(10mL)中に溶解させた。オキソン(Oxone(登録商標))(810mg、1.32ミリモル)、続いてN−Boc−4−アミノベンズアルデヒド(J.Med.Chem.、1992年、35、4150頁及びJ.Med.Chem.、2004年、47、2411頁に従って製造)(320mg、1.45ミリモル)のDMF(5mL)中溶液を加えた。混合物を室温で5時間撹拌した。KCO水溶液を加え、得られた沈殿物を濾過し、水洗した(3×100mL)。この粗製物質を吸引下で乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(EtOAc−フェノール 75:25→EtOAc 100%)によって精製した。物質を、MeOHから再結晶させることによって更に精製して、生成物を白色の固体として得た(83mg、20%)。
H NMR(DMSO):12.81(1H,br s)、9.67(2H,d,J 6.1)、8.15〜8.05(2H,m)、7.96〜7.89(1.5H,m)、7.86〜7.77(2.5H,m)、7.73〜7.49(8H,m)、3.91(3H,s)及び1.51(18H,s)。
【0223】
以下の化合物を同様にして製造し、必要に応じて結晶化又はカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0224】
2,2’−ビス(4−メトキシフェニル)−1H,1H’−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール(化合物7)
LCMS RT=1.52分、MH 447.5;H NMR(DMSO):12.84〜12.77(2H,m)、8.19〜8.10(4H,m)、7.90(1H,br s)、7.75〜7.66(2H,m)、7.61〜7.48(3H,m)、7.17〜7.09(4H,m)及び3.85(6H,s)。
【0225】
2,2’−ジ(ピリジン−4−イル)−1H,1H’−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール(化合物12)
LCMS RT=1.46分、MH 389.1;H NMR(DMSO+DO):8.79〜8.74(4H,m)、8.12〜8.08(4H,m)、8.00〜7.89(2H,br m)、7.81〜7.73(2H,m)及び7.70〜7.63(2H,br m)。
【0226】
(iv)N−アルキル化化合物
3’−フルオロ−3,4’−ジニトロビフェニル−4−アミン(中間体1)
4−ブロモ−2−フルオロ−1−ニトロベンゼン(500mg、2.27ミリモル)、2−ニトロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(660mg、2.50ミリモル)及びKCO(940mg、6.81ミリモル)をDME−HO(4:1、15mL)中に懸濁させ、窒素でパージした。溶液を、音波処理によって脱気した後、Pd(dppf)Cl(185mg、10モル%)を加えた。混合物を、マイクロ波照射下で130℃において10分間加熱した。冷却混合物を、EtOAcとHOの間で分配させた。水層をEtOAcで抽出した(2×50mL)。合した有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮した。得られた黒色の固体をシリカ上に吸収させ、カラムクロマトグラフィー(ペトロール−EtOAc 4:1→1:1)によって精製して、生成物をオレンジ色の固体として得た(285mg、45%)。
H NMR(DMSO):8.43(1H,d,J 2.3)、8.19(1H,t,J 8.5)、7.96(1H,dd,J 4.8及び2.1)、7.92(1H,d,J 2.0)、7.79〜7.73(3H,m)及び7.15(1H,d,J 8.8)。
【0227】
−メチル−3’,4−ジニトロビフェニル−3,4’−ジアミン(中間体2)
3’−フルオロ−3,4’−ジニトロビフェニル−4−アミン(285mg、1.03ミリモル)をDCM(10mL)中に懸濁させた。KCO(284mg、2.06ミリモル)、続いてMeNH(40%水溶液、10mL)を加えた。混合物を室温で72時間撹拌した。次いで、溶液をHO及びブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧濃縮して、生成物を赤色の固体として得た。(296mg、100%)。
H NMR(DMSO):8.34(1H,d,J 2.2)、8.33〜8.26(1H,m)、8.11(1H,d,J 9.0)、7.91(1H,dd,J 8.8及び2.1)、7.71(2H,br s)、7.15(1H,d,J 9.0)、7.11〜7.08(1H,m)、6.97(1H,dd,J 9.0及び1.8)及び3.05(3H,d,J 5.0)。
【0228】
−メチルビフェニル−3,3’,4,4’−テトラアミン(中間体3)
−メチル−3’,4−ジニトロビフェニル−3,4’−ジアミン(290mg、1.01ミリモル)をIMS(25mL)中に懸濁させ、窒素でパージした。Pd(炭素上10%、30mg、10モル%)を加え、混合物をH雰囲気下に置いた(5×真空/バルーンサイクル)。混合物を室温で18時間撹拌した。その時点までには、TLC(EtOAc)によれば出発原料は残っていなかった。混合物をセライトに通して濾過し、MeOHで徹底的に洗浄した。濾液を減圧濃縮して、褐色の油を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc−MeOH 97:3)で精製して、生成物をピンク色のフォームとして得た(158mg、69%)。
H NMR(DMSO):6.74(1H,d,J 2.0)、6.61〜6.47(5H,m)、4.62〜4.53(1H,m)、4.46〜4.31(6H,m)及び2.75(3H,d,J 2.8)。
【0229】
tert−ブチル−4,4’−(3’−メチル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ビス(4,1−フェニレン)ジカルバメート(中間体4)
前記方法3によって製造した。
H NMR(DMSO):12.81(1H,d,J 8.3)、9.69〜9.75(2H,m)、8.12〜8.06(2H,m)、8.01〜7.99(0.5H,m)、7.93〜7.89(1H,m)、7.83〜7.76(2.5H,m)、7.74〜7.55(8H,m)、3.95(3H,s)及び1.51(18H,s)。
【0230】
4,4’−(3’−メチル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン(化合物4)
tert−ブチル−4,4’−(3’−メチル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ビス(4,1−フェニレン)ジカルバメート(63mg、0.10ミリモル)をTFA(3mL)中で30分間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣にKCO水溶液を加えた。得られた沈殿物を濾過し、水洗し、次いで吸引下で乾燥させて、生成物を淡黄色の固体として得た(36mg、86%)。
LCMS RT=10.28分 [Dionex],MH 431.2;H NMR(DMSO):12.48(1H,br s)、7.91〜7.79(4H,m)、7.67〜7.49(6H,m)、6.75〜6.63(4H,m)、5.64〜5.59(4H,br m)及び3.92(3H,s)。
【0231】
4−ブロモ−N−メチル−2−ニトロアニリン(中間体5)
4−ブロモ−1−フルオロ−2−ニトロベンゼン(1.50g、6.82ミリモル)及びKCO(1.88g、13.6ミリモル)をDCM(7mL)中に懸濁させた。MeNH(40%水溶液、7mL)を徐々に加え、混合物を室温で4時間撹拌した、混合物をHOで希釈し、DCMで抽出した(3×40mL)。合したDCM層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮して、生成物を鮮やかなオレンジ色の固体として得た(1.47g、93%)。
H NMR(CDCl):8.32(1H,d,J 2.4)、8.03(1H,br s)、7.52(1H,dd,J 9.2及び2.5)、6.76(1H,d,J 9.2)及び3.02(3H,d,J 4.2)。
【0232】
−メチル−3,3’−ジニトロビフェニル−4,4’−ジアミン(中間体6)
4−ブロモ−N−メチル−2−ニトロアニリン(100mg、0.43ミリモル)、2−ニトロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン(115mg、0.43ミリモル)、ビフェニル−2−イルジシクロヘキシルホスフィン(30mg、20モル%)及びKPO(275mg、1.3ミリモル)をDME−HO(4:1、5mL)中に懸濁させた。混合物を窒素でパージし、次いで音波処理によって脱気した。Pd(OAc)(5mg、5モル%)を加え、混合物をマイクロ波照射下で130℃まで10分間加熱した。冷却混合物をEtOAc及びHOで希釈した。有機物質を分離し、水層をEtOAcで抽出した(3×50mL)。合した有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧濃縮して、粗生成物を暗褐色の固体として得た(210mg)。この粗製物質を、更に精製することなく採取した。
H NMR(DMSO):8.29〜8.14(3H,m)、7.90(1H,dd,J 9.1及び2.3)、7.77(1H,td,J 8.5及び2.3)、7.54(2H,br s)、7.15〜7.05(2H,m)及び3.00(3H,d,J 5.0)。
【0233】
−メチルビフェニル−3,3’4.4’−テトラアミン(中間体7)
−メチル−3,3’−ジニトロビフェニル−4,4’−ジアミン(粗製物質、150mg)をIMS(10mL)中に懸濁させた。この系を窒素でパージ後、Pd(炭素上10%、15mg、10モル%)を加えた。混合物をHの雰囲気下に置き(3×真空/バルーンサイクル)、室温で2.5時間撹拌した。混合物をセライトに通して濾過し、MeOHで徹底的に洗浄した。濾液を減圧濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc−MeOH 95:5)で精製して、生成物を淡褐色の油として得た(65mg、66%、2ステップ以上で)。
H NMR(DMSO):6.73〜6.63(3H,m)、6.56〜6.45(2H,m)、6.37(1H,d,J 8.1)、4.42(7H,br s)及び2.71(3H,s)。
【0234】
tert−ブチル−4,4’−(1−メチル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2.2’−ジイル)ビス(4,1−フェニレン)ジカルバメート(中間体8)
前記方法3によって製造した。
H NMR(DMSO):12.81(1H,br s)、9.67(2H,d,J 6.1)、8.15〜8.05(2H,m)、7.96〜7.89(1.5H,m)、7.86〜7.77(2.5H,m)、7.73〜7.49(8H,m)、3.91(3H,s)及び1.51(18H,s)。
【0235】
4,4’−(1−メチル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン(化合物5)
tert−ブチル−4,4’−(1−メチル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2.2’−ジイル)ビス(4,1−フェニレン)ジカルバメート(83mg、0.13ミリモル)をTFA(4mL)中で30分間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣にKCO水溶液を加えた。得られた沈殿物を濾過し、水洗し、次いで乾燥させて(真空オーブン)、生成物を白色の固体として得た(46mg、81%)。
LCMS RT=1.44分、MH 431.2;H NMR(DMSO):12.49(1H,br s)、7.89〜7.83(3H,m)、7.72(1H,br s)、7.63〜7.42(6H,m)、6.74〜6.64(6H,m)、5.62(4H,m)及び3.88(3H,s)。
【0236】
(v)非対称ビス−化合物
4−(2−(4−アミノフェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−イル)ベンゼン−1,2−ジアミン(中間体9)
ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラアミン対4−アミノ安息香酸比1:1及び反応時間2時間を用いて、方法1によって製造した。
H NMR(DMSO):12.33(1H,br s)、7.86〜7.80(2H,m)、7.45(2H,br m)、7.25(1H,dd,J 8.4及び1.7)、6.86(1H,d,J 2.1)、6.72(1H,dd,J 7.9及び2.1)、6.69〜6.63(2H,m)、6.57(1H,d,J 7.9)及び5.80〜4.40(6H,br s)。
【0237】
4−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)アニリン(化合物8)
4−(2−(4−アミノフェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−イル)ベンゼン−1,2−ジアミン(200mg、0.64ミリモル)及び蟻酸(0.24mL、6.35ミリモル)をHO(2mL)に溶解させ、混合物をマイクロ波照射下で160℃まで20分間加熱した。冷却と同時に、沈殿物が形成され、これを濾去し、水洗した。濾液をKCOで塩基性化し、30分間撹拌した。その時点までに沈殿物が形成された。混合物を濾過し、沈殿物を水洗し、吸引下で乾燥させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc→EtOAc−MeOH 85:15)によって精製して、生成物を白色の固体として得た(12mg、6%)。
LCMS RT=1.35分、MH 326.3;H NMR(DMSO):12.48(2H,br s)、8.23(1H,br s)、7.91〜7.68(4H,m)、7.65〜7.41(4H,m)、6.70〜6.64 (2H,m)及び5.62(2H,br s)。
【0238】
4−(2’−フェニル−1H,1’H,−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)アニリン(化合物9)
安息香酸1当量のみ及び反応時間2時間を用いて、方法1によって製造した。
LCMS RT=1.48分、MH 402.0;H NMR(DMSO):12.97(1H,br s)、12.50(1H,br s)、8.24〜8.18(2H,m)、7.96〜7.80(3.5H,m)、7.76〜7.70(1.5H,m)、7.68〜7.43(8H,m)、6.67(2H,d,J 8.7)及び5.63(2H,br s)。
【0239】
4−(2−4−メトキシフェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−6−イル)ベンゼン−1,2−ジアミン(中間体10)
ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラアミン対4−メトキシベンズアルデヒド比1:1及び180℃への10分間の加熱を用いて、方法2によって製造した。
H NMR(DMSO):12.68〜12.62(1H,br m)、8.14〜8.07(2H,m)、7.66〜7.54(1H,m)、7.51〜7.43(1H,m)、7.35〜7.27(1H,m)、7.16〜7.08(2H,m)、6.88(1H,d,J 2.1)、6.76〜6.71(1H,m)、6.61〜6.56(1H,m)、4.55(4H,br s)及び3.84(3H,s)。
【0240】
2’−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール(化合物10)
ベンズアルデヒド1当量のみ及び180℃への10分間の加熱を用いて、方法2によって製造した。
LCMS RT=1.52分、MH 417.0;H NMR(DMSO):12.99(1H,br s)、12.82(1H,br s)、8.24〜8.19(2H,m)、8.18〜8.12(2H,m)、7.97〜7.96(1H,br m)、7.80〜7.66(2H,br m)、7.63〜7.47(4H,m)、7.17〜7.10(2H,m)及び3.85(3H,s)。
【0241】
(b)実施例2 C.difficileに対する本発明の化合物の活性
一般式(I)の好ましい化合物のリストを、Clostridium difficile ATCC700057及びClostridium difficile臨床分離株(CI)に対するそれらの最小発育阻止濃度(MIC)と共に、表2(下記)に要約する。
【0242】
【表3】

【0243】
前記表中、MIC値を示すのに用いた記号は、次の通りである。
+++=<1μg/mL
++ =1〜16μg/mL
+ =17〜64μg/mL
− =>64μg/mL
【0244】
(c)実施例3 C.perfringensに対する本発明の化合物の活性
化合物のリストを、Clostridium perfringens ATCC13124及びClostridium perfringens臨床分離株(CI)に対するそれらの最小発育阻止濃度(MIC)と共に、表3(下記)に要約する。MIC値を示すのに用いた記号は、表2(前記)の場合と同様である。
【0245】
【表4】

【0246】
(d)実施例4 S.pneumoniaeに対する本発明の化合物の活性
化合物のリストを、Streptococcus pneumoniae ATCC49619及びStreptococcus pneumoniae MDR菌株(MDR)に対するそれらの最小発育阻止濃度(MIC)と共に、表4(下記)に要約する。MIC値を示すのに用いた記号は、表2(前記)の場合と同様である。
【0247】
【表5】

【0248】
(e)実施例5 S.aureusに対する本発明の化合物の活性
化合物のリストを、Staphylococcus aureus ATCC29213及びStaphylococcus aureus MDR菌株(MDR)に対するそれらの最小発育阻止濃度(MIC)と共に、表5(下記)に要約する。MIC値を示すのに用いた記号は、表2(前記)の場合と同様である。
【0249】
【表6】

【0250】
(f)実施例6 E.faeciumに対する本発明の化合物の活性
化合物のリストを、Enterococcus faecium及びEnterococcus faecium MDR菌株(MDR)に対するそれらの最小発育阻止濃度(MIC)と共に、表6(下記)に要約する。MIC値を示すのに用いた記号は、表2(前記)の場合と同様である。
【0251】
【表7】

【0252】
(g)実施例7 E.faecalisに対する本発明の化合物の活性
化合物のリストを、Enterococcus faecalisのバンコマイシン耐性菌株 ATCC51299(VR)に対するそれらの最小発育阻止濃度(MIC)と共に、表7(下記)に要約する。MIC値を示すのに用いた記号は、表2(前記)の場合と同様である。
【0253】
【表8】

【0254】
(h)実施例8 本発明の化合物の特異性
前記化合物はいずれも、グラム陰性通性嫌気性細菌Esherichia coli(ATCC25922)に対して有意な活性を示さなかった(MIC>64μg/mL)。グラム陰性偏性嫌気性菌Bacteroides fragilisに対しては、化合物7及び10のみが多少の活性を示した(ATCC25285及び臨床分離株の両方について試験した)。
【0255】
E.coli及びBacteroides fragilisは、正常腸内細菌叢に典型的に見られる細菌であり、したがって、腸内微生物叢の代わりとなる。
【0256】
実施例2〜7に記載したデータは、化合物12は、C.perfringens、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecium及びEnterococcus faecalisに比べて、Clostridium difficileに対して選択性が高いことを示している。化合物12はまた、Bacillus subtilis又はBacteroides fragilisのいずれに対しても有意な抗細菌活性を示さなかった。
【0257】
したがって、これらのデータから、本発明の化合物は、正常腸内細菌叢の病的な撹乱を引き起こすことなく、CDADの治療に有用性を見出し得ることがわかった。
【0258】
(VIII)均等物
以上の説明は、本発明の現時点で好ましい実施形態を詳述している。これらの説明を検討することによって、当業者には、それらを実施する上での多くの変更形態及び変形形態が思い浮かぶはずである。このような変更形態及び変形形態は、添付した「特許請求の範囲」内に含まれることが意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Clostridium difficile関連疾患(CDAD)の治療用の、式(I):
【化1】


[式中、
L1は、直接結合又はリンカー基であり、
及びRはそれぞれ独立して、H並びに任意選択で置換されているC1〜6アルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル及びヘテロシクリルから選択され、前記の任意選択の置換は、ハロ、CN、NO、R、OR、N(R、COR、CO、SO、NRCOR、NRCO、NRSO、NRCONR、CONR及びSONRから選択される1つ又は複数の置換基により、但し、R及びRの少なくとも一方は環状であり、
各Rは独立して、H、ハロ、C1〜6アルキル、OR、N(R、CN及びNOから選択され、
及びXはそれぞれ独立して、N及びCRから選択され、
はNR、O及びSから選択され、
はNHであり、
はH、ハロ及びC1〜6アルキルから選択され、RはH及びC1〜6アルキルから選択され、RはH、C1〜アルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cカルボシクリル、C〜Cヘテロシクリル及び5員又は6員アリール又はヘテロアリールから選択され、いずれも任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換されていてもよく、Rは水素及びC〜Cアルキルから選択され、いずれも任意選択で1つ又は複数のハロゲン原子で置換される]
の化合物又はその薬学的に許容され得るN−オキシド、塩、水和物、溶媒和物、複合体、バイオアイソスター、代謝物若しくはプロドラッグ。
【請求項2】
及び/又はXがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がNRである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
及びRがそれぞれ独立して、H及びアリールから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
及びRがそれぞれ独立して、H並びに任意選択でOR及びN(Rで置換されるアリールから選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
及びRがいずれも環状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が、H及びC1〜アルキルから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
各RがHである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
L1が直接結合、例えば、各環の5位及び/又は6位の間の直接結合である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
L1が、O、S、SO、NR、C(R及びC=Oから選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
対称である、例えば、RとRとが同一である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
非対称である、例えば、RとRとが異なっている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
及び/又はRがヘテロシクリル又はヘテロアリールである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
及び/又はRが、(a)ハロ、CN、NO、R、OR、N(R、COR、CO,SO、NRCOR、NRCO、NRSO、NRCONR、CONR及びSONRから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換されているヘテロシクリル、又は(b)ハロ、CN、NO、R、OR、N(R、COR、CO,SO、NRCOR、NRCO、NRSO、NRCONR、CONR及びSONRから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換されているヘテロアリールである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
及び/又はRがピリジルである、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
及びRがピリジルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記ピリジルが、ハロ、CN、NO、R、OR、N(R、COR、CO,SO、NRCOR、NRCO、NRSO、NRCONR、CONR及びSONRから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換されている、請求項15又は16に記載の化合物。
【請求項18】
2,2’−ジ(ピリジン−4−イル)−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール又はその薬学的に許容され得るN−オキシド、塩、水和物、溶媒和物、複合体、バイオアイソスター、代謝物若しくはプロドラッグである、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
本明細書中の表1に列挙した化合物1〜12から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
正常腸内細菌叢を残しながらCDADの治療をするための、請求項1〜19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記CDADが、(a)大腸炎、(b)偽膜性大腸炎、(c)下痢症及び(d)抗生物質起因性疾患から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
前記抗生物質起因性疾患が、(a)抗生物質起因性下痢症及び(b)抗生物質起因性大腸炎から選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
選択的Clostridium difficile薬である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物と本明細書中に記載された補助薬から選択された補助薬とを含む組み合わせ。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物と、(a)バンコマイシン、(b)メトロニダゾール、(c)プロバイオティクス、(d)プレバイオティクス、(e)細菌毒素捕捉剤(例えば、イオン交換樹脂)、(f)静脈注射用免疫グロブリン及び(g)止痢薬から選択された補助薬とを含む、請求項24に記載の組み合わせ。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物と、Saccharomyces spp.及び/又はLactobacillus spp.から選択されたプロバイオティクスとを含む、請求項24又は25に記載の組み合わせ。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物及び補助薬が物理的又は非物理的に関連している、請求項24又は25に記載の組み合わせ。
【請求項28】
対象の細菌性感染又は細菌性疾患の治療方法であって、有効量の、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物又は請求項24〜27のいずれか一項に記載の組み合わせを前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項29】
細菌を死滅させるか又は細菌の増殖を阻害、低減若しくは防止する方法であって、前記細菌を、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物又は請求項24〜27のいずれか一項に記載の組み合わせと接触させるステップを含む方法。
【請求項30】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物又は請求項24〜27のいずれか一項に記載の組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項31】
例えば、
4,4’−(3’−メチル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン、
4,4’−(1−メチル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジアニリン、
4,4’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ビス(N−メチルアニリン)、
4−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)アニリン、
4−(2’−フェニル−1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)アニリン、
2’−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1H,3’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール、
5,5’−(1H,1’H−5,5’−ビベンゾ[d]イミダゾール−2,2’−ジイル)ジピリジン−2−アミン、
から選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
治療又は予防、例えば、細菌性感染又は疾患の治療で使用するための、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
(a)プロトンポンプ阻害薬で治療されたか又はプロトンポンプ阻害薬による治療を受けている対象、(b)H2受容体拮抗薬で治療されたか又はH2受容体拮抗薬による治療を受けている対象、(c)利尿薬で治療されたか又は利尿薬による治療を受けている対象、(d)入院患者、(e)栄養管が留置されている対象、(f)機械的人工呼吸器を使用している対象、(g)プロバイオティクスで治療されたか又はプロバイオティクスによる治療を受けている対象、並びに(g)バンコマイシン及び/若しくはメトロニダゾールで治療されたか又はバンコマイシン及び/若しくはメトロニダゾールによる治療を受けている対象
から選択された患者サブグループの治療のための、請求項1〜32のいずれか一項に記載の発明。


【公表番号】特表2012−510458(P2012−510458A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538052(P2011−538052)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002792
【国際公開番号】WO2010/063996
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(510222361)サミット コーポレイション ピーエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】SUMMIT CORPORATION PLC
【Fターム(参考)】