説明

抗細菌活性を有するプレウロムチリン誘導体

【課題】進歩した抗微生物活性、例えば抗細菌活性を有し、天然のプレウロムチリン類の基本環構造を有するムチリン類の提供。
【解決手段】14−O−[(シクロアルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルキル−アルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルコキシ)アセチル]ムチリン類;または14−O−[(シクロアルキル−アルコキシ)アセチル]ムチリン類から選択される化合物およびその医薬としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌剤、特にムチリン類に関する。プレウロムチリンは抗マイコプラズマ活性および中等度の抗細菌活性を有する天然の抗生物質である。我々は、進歩した抗微生物活性、例えば抗細菌活性を有し、天然のプレウロムチリン類の基本環構造を有するムチリン類を発見した。
【0002】
本発明の1つの側面において、本発明は14−O−[(シクロアルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルキル−アルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルコキシ)アセチル]ムチリン類;および14−O−[(シクロアルキル−アルコキシ)アセチル]ムチリン類;例えば14−O−[(アミノシクロアルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(アミノシクロアルキル−アルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(アミノシクロアルコキシ)アセチル]ムチリン類;および14−O−[(アミノシクロアルキル−アルコキシ)アセチル]ムチリン類;好ましくは14−O−[(アミノシクロアルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類を提供し;例えばシクロアルキルは好ましくは(C3−12)シクロアルキルであり;シクロアルコキシは好ましくは(C3−12)シクロアルコキシであり;アルキルは好ましくは(C1−4)アルキルであり;そしてアルコキシは好ましくは(C1−4)アルコキシである。
【0003】
別の側面において、本発明は下記式:
【0004】
【化4】

[式中、Rは水素であり;Rは下記式:
【0005】
【化5】

の基であり、ここで、
Xはイオウ、酸素またはNR10であり、ここでR10は水素またはアルキルであり;および、
はアミノ、アルキル、アリールまたはヘテロサイクリルであり;および、Xが酸素である場合は、Rは更に水素でもあり;
Yはイオウまたは酸素であり;
は水素または例えば有機化学、例えば(プレウロ)ムチリン化学において従来用いられている置換基を含む1つ以上の置換基であり、Rは水素またはアルキルであり;Rは水素またはアルキルであり;RおよびR’は水素、重水素またはハロゲンであり;R、RおよびRは水素または重水素であり;mは0〜4から選択される数であり、nは0〜10から選択される数であり、および、pは0〜10から選択される数であり;ただし、n+pは少なくとも1であり;例えば好ましくは13未満である。]の化合物を提供する。
【0006】
式Iにおいて、好ましくは、
Rは水素であり;Rは水素または式−C(=X)Rの基であり、
ここでXは酸素であり;および、
はアルキル、例えば(C1−8)アルキル、例えば(C1−4)アルキル、例えば未置換または置換されたアルキル、例えば有機化学、例えばプレウロムチリン化学で従来使用されている基、例えばアミノ1個以上で置換されたものであり;例えばRがアミノで置換されたアルキルである場合は、Rは好ましくは例えばバリン等のアミノ酸の残基であり、および例えば該残基にはカルボキシル基が脱離した後に残るアミノ酸の部分が包含され;
Yはイオウであり;
は水素であり;
、R、R、R’、R、RおよびRは水素であり;
mは0であり;
nは3または4であり;および、
pは0または1であり;および例えばpプラスnは3または4である。
【0007】
別の側面において、本発明は下記式:
【0008】
【化6】

[式中、R1pは水素またはアミノ酸の残基であり;例えばバリルであり;例えばR1pは式−CO−R9pの基であり、ここでR9pはカルボキシル基が脱離した後に残るアミノ酸の残基である。]の化合物を提供する。
【0009】
式Iにおいて、基−NH−R1pは、シクロヘキシル環系の何れの位置にあってもよく、好ましくは2位または3位に存在する。R1pの意味におけるアミノ酸とは、何れかのアミノ酸、好ましくはバリンを包含し;およびR1pは好ましくは基−CH(NH)−CH(CHである。該アミノ酸残基におけるアミノ基は未保護であるか、または、適切なアミノ酸保護基、例えば従来のもの、例えばt−ブトキシカルボニルにより保護されていてよく;および、好ましくは未保護である。
【0010】
別の側面において、本発明は、14−O−[(アミノシクロヘキサン−2−イル−スルファニル)アセチル]ムチリン;14−O−[(アミノシクロヘキサン−3−イル−スルファニル)アセチル]ムチリン;14−O−[(N−バリル−アミノシクロヘキサン−2−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン;および14−O−[(N−バリル−アミノシクロヘキサン−3−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン、例えば14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−2(R)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン、14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−2(S)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン、14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−3(R)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリンおよび14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−3(S)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン;から選択される、例えば遊離の(塩基)形態または塩の形態、例えば塩酸塩の形態での化合物を提供する。
【0011】
本発明により提供される化合物は、以下「本発明の化合物」と記載する。本発明は、例えば遊離の(塩基)形態および塩の形態、例えば溶媒和物の形態の式IおよびIpの化合物を包含する本発明の化合物を含む。
【0012】
別の側面において、本発明は塩の形態、または塩の形態と溶媒和物の形態、または溶媒和物の形態の本発明の化合物を提供する。
【0013】
本発明の化合物の塩は製薬上許容しうる塩、例えば金属塩または酸付加塩を包含する。金属塩には、例えばアルカリまたはアルカリ土類金属の塩を包含し;酸付加塩には、例えば水素フマル酸、フマル酸、ナフタリン−1,5−スルホン酸、塩酸、重塩酸;好ましくは塩酸または重塩酸のような酸と本発明の化合物との塩が包含される。遊離の形態の本発明の化合物は塩の形態の相当する化合物に変換してもよく、またその逆も可能である。遊離形態または塩の形態、および溶媒和物の形態の本発明の化合物は、遊離の形態または未溶媒和形態の塩の形態の本発明の化合物に変換してよく、またその逆も可能である。
【0014】
本発明の化合物は異性体およびその混合物の形態で存在してよく;例えば本発明の化合物は不斉炭素原子を有してよく、そしてこのため、ジアステレオマーおよびその混合物の形態で存在してよい。
【0015】
例えば、基−NH−R1pがシクロヘキシル環の2位または3位にある式Iの化合物の場合、ムチリン環の側鎖に連結しているシクロヘキシル環の炭素原子および基−NH−R1pが連結しているシクロヘキシル環の炭素原子はともに不斉炭素原子である。基−NH−R1pがシクロヘキシル環の2位または3位にある式Iの化合物は、このようにこれらの炭素原子の双方に関して(R)配置および(S)配置で存在してよい。
【0016】
例えばR1pがアミノ酸の残基である場合は、そのアミノ酸は不斉炭素原子を有していていよい。例えばR1pがバリルである場合は、該バリルのアミノ基が連結している炭素原子は不斉炭素原子である。R1pがバリルである式Iの化合物は即ち該バリル炭素原子に関して(R)配置および(S)配置で存在してよい。
【0017】
異性体またはジアステレオマーの混合物は例えば従来の方法に従って適宜分離してよく、これによりそれぞれ純粋な異性体またはジアステレオマーを得ることができる。本発明は如何なる異性体およびジアステレオマーの形態、および、如何なる異性体およびジアステレオマーの混合物の形態の本発明の化合物も包含するものとする。好ましくは、式Iの化合物のムチリン環における配置は天然に生じるプレウロムチリンと同じである。
【0018】
本発明の化合物は、適切に、従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法で得てよい。
【0019】
例えば、本発明の14−O−[(シクロアルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルキル−アルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルコキシ)アセチル]ムチリン類;および14−O−[(シクロアルキル−アルコキシ)アセチル]ムチリン類は、14−O−[(メルカプト)アセチル]ムチリンまたは14−O−[(ヒドロキシ)アセチル]ムチリンをそれぞれ活性化型、例えばスルホン酸とのエステルの形態のヒドロキシシクロアルキルまたはヒドロキシアルキルシクロアルキルと反応させ、そして、得られた反応混合物から本発明の化合物を単離することにより調製してよい。本発明のすべての化合物および本発明の化合物の調製におけるすべての中間体は、適切に、従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法で、または実施例を含む本明細書において特定する通り、得てよい。式IまたはIの化合物は、14−O−[(シクロアルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルキル−アルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;14−O−[(シクロアルコキシ)アセチル]ムチリン類;および14−O−[(シクロアルキル−アルコキシ)アセチル]ムチリン類を調製するための方法に従って、例えばこれと類似の方法で得てよい。
【0020】
別の側面において、本発明は:
a.下記式:
【0021】
【化7】

[式中、Y、R、R’、RおよびRは前記の通り定義され、およびR、RおよびRは水素である。]の化合物を、活性化型、例えば4−トルエンスルホン酸とのエステル(トシレート)またはメチルスルホン酸とのエステル(メシレート)の形態の下記式:
【0022】
【化8】

[式中、R、R、R、m、nおよびpは前記の通り定義される。]の化合物と反応させてR、RおよびRが水素でありそしてY、R、R,R、R、R’、R、R、m、nおよびpが前記したものである式Iの化合物とすること、および所望により、
b. 工程aで得られた式Iの化合物に重水素を導入してY、R、R,R、R、R’、R、R、m、nおよびpが前記したものであり、そしてR、RおよびRが重水素である式Iの化合物とすること、
を包含する式Iの化合物の製造方法を提供する。
【0023】
式IIの化合物は既知物質であるか、または、従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法により得てよい。
【0024】
式IIIの化合物は、適切に、従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法により得てよい。式IIIの化合物は好ましくは以下に記載する方法に従って、または実施例に記載する通り調製してよい。
【0025】
、m、pおよびnが前記したものであるジヒドロキシシクロアルキルまたは(ヒドロキシアルキル)(ヒドロキシ)シクロアルキルを反応条件下で不活性である溶媒中、4−トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸の無水物と反応させることによりそれぞれ相当するジ−トシル/メシル−オキシシクロアルキル、または(トシル/メシル)オキシアルキル)(トシル/メシルオキシ)シクロアルキルとし;このジ−トシル/メシル−化合物を更にアジ化ナトリウムと反応させて相当する(トシル/メシル)(アジド)シクロアルキルまたは(トシル/メシルオキシアルキル)(アジド)シクロアルキルとする。得られた(トシル/メシルオキシ)(アジド)化合物において、アジド基を還元し、例えば接触還元し、それぞれ相当する(トシル/メシルオキシ)(アミノ)シクロアルキルまたは(トシル/メシルオキシアルキル)(アミノ)シクロアルキルとする。これはヒドロキシ基がトシル化またはメシル化された式IIIの化合物であり、ここでRおよびRは水素であり、およびR,m、pおよびnは前述の通り定義される。所望により、アジド基の還元により得られるアミン基を、RおよびXが前述のものである活性化型のR−C(=X)OH、例えばXが酸素である場合はR−C(=X)OHは無水物、ハロゲン化物の形態であってよいもの、と反応させてよく;これによりRが水素であり、Rが式−C(=X)Rの基であり、ここでXとRは前述の通り定義され、R、m、nおよびpは前述の通り定義される式IIIの化合物を得てよい。
【0026】
例えば塩の形態における式Iの化合物の水素原子の重水素原子による置き換えは、適切に、従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法で、または、本明細書に記載する方法に従って行ってよく;例えば式Ipの化合物を含む式Iの化合物を適切な溶媒(系)中重塩酸(DCI)で処理し、そして、例えばR、RおよびRの水素原子が重水素原子で置き換えられている塩の形態の式Iの化合物を単離することにより行なってよい。
【0027】
およびR’が重水素またはハロゲンである式Iの化合物の製造は、適宜、従来の方法に従って、またはこれと類似の方法で、知られている下記式:
【0028】
【化9】

[式中、共に水素であるRおよびR’を担持している炭素原子は一緒になって二重結合を形成する。]の化合物をハロゲン、例えばF、Cl、BRで処理してRおよびR’が重水素またはハロゲンである式Vの化合物とし;そして、更に、RおよびR’が重水素またはハロゲンである式Vの化合物を、適切に、例えば従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法により反応させて、RおよびR’が重水素またはハロゲンでありR、RおよびRが水素である式IIの化合物とすることにより、行なってよい。
【0029】
好ましくは、式IIの化合物は式Vの化合物を下記式:
【0030】
【化10】

[式中、Y、RおよびRは前述の通り定義され、そしてHalはハロゲン、好ましくはブロモ、クロロである]の化合物と反応させることにより式Vの化合物から得てよい。式IIIの化合物は既知物質であるか、または、適切に、例えば従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法により得てよい。
【0031】
本発明式IおよびIpの化合物を包含する本発明の化合物は以下に「本発明の活性化合物」と称するが、これは、薬理学的活性を示し、そしてそのため、医薬として有用である。
【0032】
例えば、本発明の活性化合物は、グラム陽性細菌、例えばスタフィロコッカス類、例えばスタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス類、例えばストレプトコッカス・ピオゲンス、ストレプトコッカス・ニューモニア、エンテロコッカス類、例えばエンテロコッカス・フェシウムに対して、そして、マイコプラズマ類、クラミジアおよび真性嫌気性菌類、例えばバクテロイデス・フラジリスに対しても抗微生物活性、例えば抗細菌活性を示し;このことは、臨床研究基準に関するナショナル・コミッティー(NCCLS)による寒天希釈試験またはミクロ希釈試験、1997年度、文書番号M7−A4、第17巻、No.2:「好気的に生育する細菌に関する希釈抗微生物剤感受性試験の方法−第4版、認可された基準」においてin vitroで;そして、臨床研究基準に関するナショナル・コミッティー(NCCLS)による嫌気性菌試験、第13巻、No.26、M11−A4、嫌気性菌の抗微生物剤感受性試験の方法;認可された基準;第4版において、認められている。
【0033】
例えば、実施例1の化合物は、上記した菌株に対する上記した寒天希釈試験および/またはミクロ希釈試験において、0.01〜1.0μg/mLのMIC値を示す。
【0034】
別の側面において、本発明は医薬として、好ましくは抗生物質のような抗微生物剤として、そして例えば抗嫌気性菌剤として使用するための本発明の化合物を提供する。
【0035】
更に別の側面において、本発明は微生物疾患、例えばスタフィロコッカス類、ストレプトコッカス類、エンテロコッカス類により生じる疾患、およびマイコプラズマ、クラミジアおよび真性嫌気性菌により生じる疾患の治療のための医薬の調製において使用するための本発明の化合物を提供する。
【0036】
更に別の側面において、本発明は例えば医薬組成物の形態における本発明の化合物の有効量を微生物疾患の治療の必要な対象に投与することを包含する該疾患の治療方法を提供する。
【0037】
抗微生物剤療法のためには、適切な用量は当然ながら例えば使用する本発明の活性化合物、宿主、投与方法および治療対象となる症状の性質および重症度により変化する。しかしながら、一般的には大型の哺乳類、例えばヒトにおいて満足できる結果を得るためには、例示される一日当たり用量は本発明の活性化合物役0.5〜3gの範囲であり、これを好都合には例えば一日当たり4回まで分割投与する。
【0038】
本発明の活性化合物は何れかの従来の経路により、好ましくは経口投与によりり、例えば錠剤、粉剤、カプセル剤、懸濁液の形態で、例えば非再吸収性の経口用剤型の形態で;または非経腸的に、例えば注射溶液または懸濁液の形態で;または局所投与により、例えば点鼻スプレー、外用薬溶液、クリーム、点眼剤の形態で投与してよい。
【0039】
本発明の活性化合物はエリスロマイシン類、テトラサイクリン類と同様の用量および同様の適応症に対して類似の態様で投与してよい。
【0040】
意外にも、本発明の活性化合物はエリスロマイシン類、テトラサイクリン類に対して耐性である菌株に対しても活性を示す。
【0041】
本発明の活性化合物は製薬上許容しうる塩、例えば酸付加塩または金属塩の形態で、または遊離の形態で、場合により溶媒和物の形態で投与してよい。塩の形態の本発明の活性化合物は遊離の形態の本発明の活性化合物と同様のオーダーの活性を示す。本発明の活性化合物は医薬組成物の形態で投与して良い。
【0042】
別の側面において、本発明は、例えば遊離形態または製薬上許容しうる塩の形態またはまた溶媒和物の形態の本発明の化合物を製薬上許容しうる担体または希釈剤少なくとも1種と共に含有する医薬組成物を提供する。
【0043】
このような組成物は従来の方法に従って、例えばこれと類似の方法により製造してよい。単位剤型には例えば約100mg〜約1グラムを含有する。
【0044】
本発明の活性化合物は更に、家禽類、豚類および牛類のような動物における微生物、例えば細菌性の疾患の予防および治療における、そして、例えば人工授精用液体の希釈のためおよび卵子浸積法のための、獣医科用薬剤、例えば獣医科用活性化合物として適している。
【0045】
別の側面において、本発明は獣医科用薬剤として使用するための本発明の化合物を提供する。
【0046】
更に別の側面において、本発明は獣医科用薬剤として有用な獣医科用組成物の調製のための本発明の化合物を提供する。
【0047】
本発明は更に、例えば獣医科用組成物の形態の本発明の化合物の有効量を微生物、例えば細菌による疾患の治療の必要な対象に投与することを包含する該疾患の予防および治療のための獣医科的方法を提供する。
【0048】
獣医科用薬剤として本発明の活性化合物を使用するためには、用量は当然ながら、動物の大きさおよび齢、および、所望の作用により変化し;例えば予防的治療のためには、比較的低用量を長期間、例えば1〜3週間に渡り投与する。飲用水中の好ましい用量は0.0125〜0.05w/v、好ましくは0.0125〜0.025であり;そして飼料中では20〜400g/メートルトン、好ましくは20〜200g/メートルトンである。
【0049】
獣医科用薬剤としての本発明の活性化合物は、ニワトリに対しては飲用水中、ブタに対しては飼料中、そして、ウシに対しては経口または非経腸、例えば経口用または非経腸用製剤の形態で投与することが好ましい。
【0050】
本発明を説明する以下の実施例において、温度の記載は摂氏で示す。
【0051】
以下の略記法を用いる。
DCCI ジシクロヘキシルカルボジイミド
BOC t−ブトキシカルボニル
DMF ジメチルホルムアミド
実施例において示したムチリン環のナンバリングは以下の式において示す。
【0052】
【化11】

【0053】
実施例1
14−O−[(3−(R)−アミノ−2−メチル−プロパンカルボニルアミノ)−シクロヘキサン−1−イル)−スルファニル)−アセチル]ムチリン(=14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−3(R)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン)
A.1,3−ビス−(4−トルエン−スルホニルオキシ)−シクロヘキサン
塩化メチレン200mL中の1,3−ジヒドロシクロヘキサン11.6g、無水4−トルエンスルホン酸6.52gおよびN−メチルモルホリン40.4gの溶液を室温で約24時間攪拌する。得られた混合物を1N塩酸に注ぎ込み、そして得られた混合物を塩化メチレンで抽出する。得られた有機層を乾燥し、溶媒を蒸発させる。1,3−ビス−(4−トルエン−スルホニルオキシ)−シクロヘキサン38.5gを得る。
【0054】
B.1−トルエンスルホニルオキシ−3−アジド−シクロヘキサン
DMF100mL中の1,3−ビス−(4−トルエン−スルホニルオキシ)−シクロヘキサン3.9gの溶液に、アジ化ナトリウム0.55gを1回で添加する。得られた反応混合物を約2時間約80℃に加熱し、溶媒を真空下に除去し、得られた残存物を塩化メチレン200mLに溶解し、クロマトグラフィーに付す。1トルエンスルホニルオキシ−3−アジドシクロヘキサン1.2gを得る。
−NMR(CDCl):ジアステレオマー混合物:7.8, 7.3(2×d, 4H,芳香族H), 4.8, 4.4(2×m,1H,CHO),3.2,3.7(2×m,1H,CHN),2.4(s,3H,芳香族CH),1.2−1.8(m,8H,シクロヘキシル)。
【0055】
C.1−トルエンスルホニルオキシ−3−(3(R)−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルプロパンカルボニルアミノ)−シクロヘキサン
酢酸エチル50mL中の1−トルエンスルホニルオキシ−3−アジド−シクロヘキサン2.75gの溶液を触媒量のPd/C(10%)の存在下に水素化する。触媒を濾去し、得られた濾液にN−BOC−(D)−バリン2.2gおよびDCC2gを添加する。得られた反応混合物を約15時間室温で攪拌し、濾過し、溶媒を蒸発させる。得られた残存物をクロマトグラフィーに付す。
【0056】
1−トルエンスルホニルオキシ−3−(3(R)−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルプロパンカルボニルアミノ)−シクロヘキサン1.4gを得る。
【0057】
【化12】

【0058】
D.14−O−[(3−(3−(R)−アミノ−2−メチル−プロパンカルボニルアミノ)−シクロヘキサン−1−イル)−スルファニル)−アセチル]ムチリン
エタノール100mL中の14−メルカプトアセチル−ムチリン1.75gおよびナトリウム70mgの溶液に、1−トルエンスルホニルオキシ−3−(3(R)−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチルプロパンカルボニルアミノ)−シクロヘキサン1.4gおよびN−メチルモルホリン0.7mLを添加する。得られた混合物を約90℃で約8時間加熱する。得られた混合物を食塩水に注ぎ込み、得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を蒸発させる。得られた残存物をトリフルオロ酢酸/塩化メチレンの1:1混合物で処理し、クロマトグラフィーに付す。
【0059】
14−O−[(3−(3−(R)−アミノ−2−メチル−プロパンカルボニルアミノ)−シクロヘキサン−1−イル)−スルファニル)−アセチル]ムチリンが得られる。
【0060】
【化13】

【0061】
実施例2
A.N−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(R)−ヒドロキシ−シクロヘキシルアミン
塩化メチレン40mL中のトランス−2−アミノシクロヘキサノール1.5g、BOC−(RR)−バリン2.17g、DCC2.06gおよびN−メチルモルホリン1.01gの混合物を25℃で約24時間保持する。沈殿(尿素)が形成し、これを濾去する。得られた濾液を水で抽出し、乾燥し、溶媒を蒸発させ、得られた蒸発残差をシリカゲル上のクロマトグラフィーに付す。
【0062】
N−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(R)−ヒドロキシ−シクロヘキシルアミン710mgが得られる。
NMR(D6DMSO, ジアステレオマー混合物):6.1,6.25(3×d,1H,CONH),5.1,5.2(2×b,1H,BOC−HN),3.85(m,1H,α−H−Val), 3.3, 3.65(2×m,NCH,OCH)。
【0063】
B.N−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(R)−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキシルアミン
塩化メチレン15mL中のN−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(R)−ヒドロキシ−シクロヘキシルアミン710mg、無水メタンスルホン酸393mgおよびN−メチルモルホリン236mgの混合物を約12時間25℃で攪拌する。得られた混合物を1N塩酸で抽出し、乾燥し、溶媒を蒸発させ、N−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(R)−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキシルアミン685gを得る。
【0064】
C.塩酸塩および(RSR)−ジアステレオマー1:1の形態の14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−2(S)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン
乾燥エタノール10mL中のN−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(R)−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキシルアミン588mg、22−デスオキシ−22−プレウロムチリン−チオール591mgおよびナトリウム35mgの混合物を25℃で約24時間攪拌し、90℃で約2時間加熱する。得られた混合物から溶媒を蒸発させる。蒸発残差に酢酸エチルと水を添加し、形成した層を分離し、そして有機層をシリカゲル上のクロマトグラフィーに付す。14−O−[(N−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−(R)−アミノシクロヘキサン−2(S)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリンが得られ、これをエーテル性塩酸で処理する。
【0065】
塩酸塩の形態の14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−2(S)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン940mgが得られる。
【0066】
【化14】

【0067】
D.塩酸塩および(RSR)−ジアステレオマー1:1の形態の14−O−[(N−(R)−バリル−(R)−アミノシクロヘキサン−2(R)−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン
適切な出発物質、即ち、N−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(R)−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキシルアミンの代わりにN−(R)−(N−BOC−(R)−バリル)−2(S)−メタンスルホニルオキシ−シクロヘキシルアミンを用いた以外は実施例2の工程C)に記載の通り調製する。
【0068】
【化15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物群:
14−O−[(シクロアルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;
14−O−[(シクロアルキル−アルキル−スルファニル)アセチル]ムチリン類;
14−O−[(シクロアルコキシ)アセチル]ムチリン類;または、
14−O−[(シクロアルキル−アルコキシ)アセチル]ムチリン類;
から選択される化合物。
【請求項2】
下記式:
【化1】

[式中、
Rは水素であり;
は水素または下記式:
【化2】

の基であり;
ここで、
Xはイオウ、酸素またはNR10であり、ここで、R10は水素またはアルキルであり;および、
はアミノ、アルキル、アリールまたはヘテロサイクリルであり;および、Xが酸素である場合は、Rは更に水素でもあり、但しXが酸素のときRはアミノで置換された(C1−4)アルキルではなく
Yはイオウまたは酸素であり;
は水素または1つ以上の置換基であり;
は水素またはアルキルであり;Rは水素またはアルキルであり;
およびR’は水素、重水素またはハロゲンであり;
、RおよびRは水素または重水素であり;
mは0〜4から選択される数であり;
nは0〜10から選択される数であり;および、
pは0〜10から選択される数であり;ただし、n+pは少なくとも1である。]の化合物。
【請求項3】
下記式:
【化3】

[式中、R1pは水素またはアミノ酸残基であり、但し該アミノ酸残基は(C2−5)アミノ酸残基ではない]の化合物。
【請求項4】
下記化合物群:
14−O−[(アミノシクロヘキサン−2−イル−スルファニル)アセチル]ムチリン;
14−O−[(アミノシクロヘキサン−3−イル−スルファニル)アセチル]ムチリン;
14−O−[(N−バリル−アミノシクロヘキサン−2−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン;または、
14−O−[(N−バリル−アミノシクロヘキサン−3−イル)スルファニル)−アセチル]ムチリン;
から選択される化合物。
【請求項5】
塩の形態、または塩の形態と溶媒和物の形態、または溶媒和物の形態の請求項1から4の何れか1項に記載の化合物。
【請求項6】
医薬として使用するための請求項1から5の何れか1項に記載の化合物。
【請求項7】
医薬用の担体または希釈剤の少なくとも1種とともに請求項1から5の何れか1項に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1から5の何れか1項に記載の化合物の有効量を微生物疾患の治療の必要な対象に投与することを包含する該疾患の治療方法。
【請求項9】
獣医科用薬剤として使用するための請求項1から5の何れか1項に記載の化合物。

【公開番号】特開2009−108088(P2009−108088A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300463(P2008−300463)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【分割の表示】特願2002−509081(P2002−509081)の分割
【原出願日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【出願人】(307004693)ナブリバ・セラピユーテイクス・フオルシユング・ゲー・エム・ベー・ハー (3)
【Fターム(参考)】