説明

抗線維症薬としてのαvβ3及びαvβ6インテグリンアンタゴニスト

本発明は、αvインテグリン、特にαvβ3及びαvβ6インテグリンの、特異的アンタゴニスト(好ましくは非ペプチド性アンタゴニスト)関連化合物及び類似する特異性を有する化合物による阻害に関する。前記アンタゴニスト、関連化合物及び類似する特異性を有する化合物は、細胞移動を阻害すること並びに活性化された肝星状細胞/筋線維芽細胞、活性化された上皮及び内皮による前線維形成性分子(例えばコラーゲン、TIMP-1)及びサイトカイン(例えばCTGF)の産生を阻害することによって線維形成をダウンレギュレートする。これらのアンタゴニストは単独で又は他の薬剤と併用して、肝臓の線維症/肝硬変などの進んだ線維症や肺、腎臓、腸、膵臓、皮膚及び動脈などの他の器官の線維症の進行を効果的に防止し、緩和し、又は後退さえもさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異的アンタゴニスト(好ましくは非ペプチド性アンタゴニスト、例えばEMD409915及びEMD409849)、その関連化合物及び類似の特異性を有する化合物によるαvインテグリン類(特にαvβ3及びαvβ6インテグリン)の阻害に関する。それらアンタゴニスト及び化合物は、細胞移動の阻害並びに活性化された肝臓星状細胞、活性化された筋線維芽細胞及び線維芽細胞、活性化された上皮及び内皮による前線維形成性(profibrogenic)分子(例えばコラーゲン、TIMP-1)及びサイトカイン(例えばCTGF、TGFβ1、2)の産生の阻害によって、線維形成をダウンレギュレートする。これらのアンタゴニストは、単独で又は他の薬剤と併用されて、進んだ線維症、例えば肝臓の線維症/肝硬変、及び他の器官(例えば肺、腎臓、腸、膵臓、皮膚及び動脈)の線維症の進行を効果的に防止し、緩和し、又は後退さえさせることができる。
【背景技術】
【0002】
活性化された肝臓星状細胞及び筋線維芽細胞(HSC/MF)は、慢性肝疾患の進行において中心的な役割を果たす。それらの細胞は、線維症及び最終的には肝硬変をもたらす過剰な細胞外マトリックス成分を沈着する。肝硬変は、重篤な血管及び機能異常をともなう肝臓の構造的変形と定義される。その結果は門脈の高血圧であり、腹水及び食道静脈瘤の出血の進行、肝性脳症及びしばしば致死的な感染傾向を伴う。ある種の細胞-細胞及び特に細胞-マトリックス受容体、主としてインテグリンは、活性化された内皮及びHSC/MFで有意にアップレギュレートされ、移動シグナル、増殖促進シグナル及び他の前線維形成シグナルを伝達する。
したがって、インテグリンαvβ3の活性化は、前線維形成性サイトカイン(例えばPDGF-AB/BB)に応答してHSC/MFの活性化及び移動を仲介し、さらにHSC/MFによる前線維形成性サイトカイン(例えばCTGF、オートクリン及びパラクリン経路でコラーゲン合成を刺激する因子)の発現をアップレギュレートする。
同様に、インテグリンαvβ6の劇的なアップレギュレーションが、活性化された上皮細胞、特に線維症の肝臓において増殖中の胆管上皮で見出され、基底膜並びにHSC/MFを活性化する他の前線維形成性タンパク質及び増殖因子の遊離の引き金になることによって線維形成をさらに促進する。
線維症性肝疾患及び肝硬変のαvβ3及びαvβ6インテグリン特異的アンタゴニストによる治療は、内皮細胞、HSC/MF及び上皮細胞の移動及び活性化を遮断し、したがって線維形成を緩和し又は後退さえさせることができる。肝臓と同様に、活性化された筋線維芽細胞様細胞及び上皮細胞は他の進行性線維症性疾患の病理発生の中心であるので、αvβ3及びαvβ6インテグリン特異的アンタゴニストは、他の器官、例えば膵臓、腸、肺、心臓、腎臓、動脈又は皮膚の線維症性疾患の治療にも用いることができる。
【0003】
インテグリンは、細胞間相互作用及び細胞と細胞外マトリックスとの間の相互作用を仲介する細胞性膜貫通型受容体ファミリーである。インテグリン仲介接触の低下は通常アポトーシスにつながる。インテグリン受容体はα及びβサブユニットで構成され、前記サブユニットは少なくとも24の異なる組合せを生じ、その各々はそれ自身の結合特異性及びシグナル伝達特性を有する。β3鎖サブファミリーは2つのインテグリンαIIbβ3及びαvβ3から成る。αIIbβ3は血小板及び巨核球で発現され、血栓形成に関与する。αvβ3は、内皮細胞、筋線維芽細胞及びいくつかの炎症性細胞によって発現される非血小板インテグリンである(参考文献1〜3)。β6インテグリン鎖は、主として上皮細胞及びある種の活性化された線維芽細胞/筋線維芽細胞で見出され、avサブユニットとのみヘテロ二量体を形成する(参考文献4)。
いくつかの報告により、αvβ3の発現の上昇は、ヒト腫瘍細胞の腫瘍形質転換及び腫瘍の進行(すなわち侵襲性及び転移性特性)と密接に関連するらしいということが示されている。内皮細胞表面でのαvβ3インテグリンの誘導された発現は、内皮細胞の移動、増殖及び細管形成に必須であると考えられている(参考文献5)。近年になって、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質とのインテグリン仲介接着がほとんどの細胞型の増殖及び生存に必要とされることが明らかになった(参考文献2)。接着の破壊は細胞をG1期に拘束し、アポトーシスを引き起こす。αvβ3インテグリンは、血管形成の間、内皮細胞のアポトーシスを阻害することによって根元的な役割を果たすことが見出された(参考文献6)。チャイニーズハムスター卵巣細胞でのαvβ3の過剰発現はRho活性及びストレスファイバー形成を強化し(参考文献7)、これらの因子は粘着、移動及び活性化と連携している。
PDFG(BB)-PDGFβ受容体系のアップレギュレーションは、線維形成の間、すなわち、肝臓のような器官における細胞外マトリックス(ECM)のde nove形成及び沈着の間、重要な役割を果たす(参考文献8)。活性化されたPDGFβ受容体はαvβ3インテグリンと一緒に免疫共沈降させることができ(参考文献9)、αvβ3は、形質転換増殖因子β(TGFβ)の潜伏期関連ペプチド(latency-associated peptide)(LAPβ1)のRGDモチーフと相互作用することが最近示されている(参考文献10)。これらは、癌並びに両タンパク質の発現が重要な役割を果たす多数の炎症性及び線維症性疾患において、密接な関係を有し得る)。
【0004】
αvβ3インテグリンは、平滑筋細胞及び内皮細胞の移動並びに肉芽組織における血管形成に必須である。これまでのところ、肝線維症及び他の器官の線維症におけるαvβ3の潜在的役割はほとんど分かっていない(参考文献11〜9)。
インテグリンαvβ6は、もっぱら活性化された上皮細胞及び線維芽細胞上で見出される。インテグリンαvβ6は、組織損傷の間に劇的にアップレギュレートされる(参考文献20〜22)。このインテグリンサブユニットを欠くマウスは、肺線維症の誘導に対して驚くほどの耐性を示す(参考文献20)。胆管上皮細胞の活性化及び増殖は、慢性肝損傷及び線維症で常に認められ、増殖中の胆管上皮は前線維形成因子(例えばTGFβ1、TGFβ2及びCTGF並びに肝線維症、特に胆管線維症におけるある種のECMタンパク質)の主要な供給源である(参考文献23、24)。
HSC/MF及び筋線維芽細胞は、活発な肝線維形成の間に過剰なECMの沈着を招く主要な細胞型であると考えられる。それらは、数種類のコラーゲン、特に瘢痕組織の筋原線維形成コラーゲンI型及びIII型、ラミニン-2、フィブロネクチン並びにTIMP-1(コラゲナーゼなどの主要な阻害剤)を合成及び放出することが示されている(参考文献12〜19、25〜27)。前記細胞の移動は、肝臓の損傷部位での前述するような物質の蓄積に非常に重要である。活性化に続いて、培養HSC/MFは、いくつかの刺激に応答して移動する;そのような刺激としては、増殖因子(例えばPDGF-AB、PDGF-BB)、血管作用性物質(例えばエンドセリン-1)及びケモカイン(例えば単球化学走性タンパク質(MCP-1))が挙げられる(参考文献28〜30)。
HSC/MFは、リガンドがもっぱらECM分子である多数のインテグリンを発現し、前記ECM分子は、サイトカイン/増殖因子と調和してECM由来の細胞外シグナルを前記細胞に伝達する(クロスシグナル伝達)(参考文献1〜3)。HSC/MFのいくつかの活性はインテグリンによって調節することができ、そのような活性としては細胞増殖、収縮、移動及びECM合成が含まれる(参考文献1〜3)。さらにまた、インテグリンはまた潜伏期TGFβを活性化し、よって、この重要なサイトカインの線維形成活性を増幅させることができる(参考文献10、22)。したがって、インテグリンシグナル伝達に干渉することによりHSC/MFと周囲のECMとの間の相互作用を薬理学的に調節することは、肝線維症及び他の器官の線維症に歯止めをかける強力なストラテジーである。
【0005】
in vivoでのHSC/MFの移動を測定することは困難であるが、in vitroでHSC/MFの移動を阻害する物質は、損傷した肝臓における上述の物質の蓄積を減少させる有力な候補である。さらにまた、内皮、胆管上皮細胞及び内皮細胞の活性化、移動及び増殖の阻害は、慢性的に損傷した肝臓における線維形成をさらに抑制することができる。
次に、肝線維症を例にとって慢性線維形成疾患の臨床的影響力を例示する。そのシナリオは全ての線維形成疾患(例えば肺、腎臓、腸、膵臓、皮膚又は動脈で症状を示すもの)で同様である。1億人の人口を有するドイツだけで、おおざっぱにいって500,000人が慢性肝疾患の最終段階である肝硬変に罹患しており、肝硬変による死亡率は毎年50,000人から100,000人と概算される(参考文献12、31)。肝硬変は、過剰な細胞外マトリックス(ECM)の蓄積による肝臓の構造的変形と定義することもでき、結果として、異常な肝細胞結節、類洞周囲の硬化及び代謝的に活性な肝細胞からの血流の遮断をもたらす。肝硬変の患者は容易に非代償性肝疾患の状態に陥り、そのいずれの結末も肝臓の合成機能障害(凝固異常、アルブミン及び栄養物の合成不全)であり、全身的出血、浮腫、腹水及び食道静脈瘤出血を生じる門脈高血圧、重篤な感染症傾向、並びに肝性脳症の進行をもたらす。肝硬変それ自体が原発性肝細胞癌の高い有病率の素因となる。
【0006】
一方、西欧では肝硬変症例の約半数がアルコール乱用によるものであり、残る半数が多様な原因、例えば(大規模なものから順に)慢性ウイルス性肝炎(C型及びB型)、自己免疫疾患(原発性胆管性肝硬変、古典的自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎)、代謝性疾患(ヘモクロマトーシス、ウィルソン氏病、α1-抗トリプシン欠損症、チロシン血症、糖原病)、嚢胞性線維症、薬剤誘導性線維症(例えばメトトレキセート)、先天性異常(先天性肝線維症、胆管閉鎖症、アラジル症候群)、術後合併症(二次性胆管性肝硬変)、又は血管疾患(バッドキアーリ症候群)を有する。このような肝硬変の数及び原因は他の欧州の国々についても容易に推定することができる。その数は欧州以外の国々ではさらに増加している場合さえあり、B型及びC型ウイルス性肝炎の割合はいっそう高いことがあり得る。
これら肝疾患の原因の治療は限定的なものである(参考文献12、31)。したがって、もっとも有効な薬理学的治療でさえも、慢性ウイルス性肝炎患者から単にB型ウイルスを40%で、C型ウイルスを30〜40〜50%で除去できるだけである。これらの治療は常に6〜12ヶ月のインターフェロン治療を含み、したがって経費集約的であり、また著しい副作用を伴う。増大する健康問題はC型肝炎の流行であり(参考文献32)、C型肝炎は、感染者の80〜90%が慢性になり、また西ヨーロッパでは0.5〜1%、アメリカ合衆国では1〜1.5%、東ヨーロッパ及びアジアでは約2%、エジプトのようないくつかの国では20%もの罹患率を示す。自己免疫疾患などのいくつかの肝臓疾患では対症療法を実施するか、又はコルチコステロイド(古典的自己免疫性肝炎の場合)及びウルシデオキシコール酸(原発性胆管性肝硬変の場合)のような薬剤によって肝硬変への進行をわずかに遅らせることができる。他のものは初期段階で発見されたときには防止することができる。そのような例は、ヘモクロマトーシスの場合の瀉血やウィルソン氏病の場合のD-ペニシラミンなどのキレート剤である。ドナー不足及び高価な経費のために、肝移植は、末期肝臓疾患の少数の選択された事例でのみ可能である。
【0007】
既に述べた悪影響を与える刺激、例えばアルコールを含む肝臓毒素、肝向性(hepatotropic)ウイルス、肝臓に対する免疫反応、代謝性疾患及び胆管うっ血は、肝線維症、すなわち細胞外マトリックス(ECM)の過剰な合成及び沈着の引き金となる。急性肝疾患(例えば自己限定性ウイルス肝炎)では、線維形成は、線維溶解、すなわち過剰なECMの除去によって均衡が保たれている。しかしながら、多くの慢性肝炎で起こる充分に重篤な損傷の反復又は更なる有害な影響(例えばアルコール消費と組み合わされた慢性C型肝炎)は、ECM代謝を線維形成に向かって移行させ、線維症又は肝硬変をもたらす(参考文献12〜19、32)。線維形成では、肝細胞又は胆管上皮への損傷は、単核球の活性化、線維形成因子の放出及び肝臓間葉細胞の活性化をもたらす。活性化されたクッパー細胞、すなわち肝特異的マクロファージだけでなく増殖胆管上皮もまた潜在的に線維形成性のサイトカイン及び増殖因子の主要な供給源であると考えられ、前記サイトカイン及び増殖因子は、肝臓の過剰なECM沈着を招く細胞型である活性化されたHSC/MFを最終的に標的とする(参考文献12〜19、32)。上述のように、それら両細胞は他の全ての間葉-上皮及び血管器官と相関関係を有する(参考文献14、33〜44)。線維形成性増殖因子による活性化及びそれらの正常な三次元的マトリックス環境の破壊に際して、通常は休止状態のHSC/MFが、高い増殖能力及び過剰なECM分子の産生能力によって特徴付けられる細胞表現型へと形質変換する。この形質変換は、通常は筋線維芽細胞マーカー、α平滑筋アクチンの獲得によって特徴付けられ、致死的な可能性がある創傷の急速な閉鎖を目的とする防御プログラムで中心的な役割を果たす。このプログラムは、攻撃物質が短期間の間だけ存在する場合は、通常、自己限定的であり、持続的に活性化される場合に線維症及び肝硬変をもたらし得る。肝線維症及び肝硬変をもたらす細胞及び因子は、他の器官の線維症及び瘢痕形成をもたらすプロセスの根底にある物質とほとんど同一であることを再度強調する必要がある。
したがって、線維症をもたらす、肝臓(参考文献12〜19、32)及び他の器官(例えば心臓、腎臓、肺、動脈、皮膚、腸及び膵臓(参考文献14、33〜44))の慢性疾患の多くでは、持続的な損傷を防止することができず、最良でも単に緩和できるだけである。さらにまた、患者は通常、構造的及び機能的障害が既に進んだ状態を提示している。これらの事実は、器官の線維症の進行を停止させることができるか、又は進んだ瘢痕形成を後退さえさせることができる治療の開発を必要としている。そのような治療は、経口的に利用可能であり、経済的に手ごろで、また望ましくない副作用がないものであるべきである。
【発明の開示】
【0008】
(発明の概要)
本発明の目的は、活性化された線維芽細胞、筋線維芽様細胞及び筋線維芽細胞並びに活性化された内皮細胞及び上皮細胞が過剰な細胞外マトリックスを産生及び/又は誘導して、望まれない瘢痕形成をもたらす病態を治療する方法を提供することである。本発明は、肝臓の線維症及び肝硬変に関するが、ほぼ同一の病理プロセスを受け得る肺、腎臓、腸、膵臓、皮膚及び動脈などの他の器官の線維症にも関する。
本発明のまた別の目的は、活性化された線維芽細胞、筋線維芽様細胞及び筋線維芽細胞並びに活性化された内皮細胞及び上皮細胞が抑制され、したがって瘢痕形成が少なくとも部分的に抑制される、疾患治療用組成物を提供することである。
上述の疾患及び病態は、インテグリン阻害剤、好ましくはαvインテグリン阻害剤、より好ましくはαvβ3及びαvβ6アンタゴニスト(ペプチド性だけでなく非ペプチド性分子が含まれる)を用いて好都合に治療できることが見出された。好ましくは、前記インテグリン阻害剤EMD409915及びEMD409849は前記の状況で非常に強力な薬剤であり、それらは従来技術で公知であり、又は標準的技術にしたがって容易に製造することができる。
EMD409915は、3-ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-5-イル-3-{6-[2-(6-メチルアミノ-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-1H-インドール-3-イル}-プロピオン酸である。
EMD409849は、3-{3-ベンジルオキシ-2-[5-(ピリジン-2-イルアミノ)-ペンタノイルアミノ]-プロパノイルアミノ}-3-(3,5-ジクロロ-フェニル)-プロピオン酸である。
これらのアンタゴニストは、単独又は他の薬剤と併用して、進んだ線維症、例えば肝臓の線維症/肝硬変並びに肺、腎臓、腸、膵臓、皮膚及び動脈など他の器官の線維症の進行を効果的に防止し、緩和し又は退行さえさせることができる。
【0009】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
[HSCの単離及び培養]
簡単に記せば、16−18Gカニューレを用いて、カルシウム非含有HBSS(Gybco, UK)を5分間、続いて0.1%プロナーゼE(Sigma)を含むダルベッコ改変イーグル培地とその後の0.025%IV型コラゲナーゼ(Sigma)を含むダルベッコ改変イーグル培地を各10〜15分間、門脈からin situで肝臓に灌流させた。消化した肝臓を切り取り、穏やかに切り刻んで、0.04%プロナーゼ、0.025%コラゲナーゼ、0.002%DNase(Sigma)を含み25mM HEPESを補充したダルベッコ改変イーグル培地で37℃にてさらに10〜30分間穏やかに攪拌しながらインキュベートした。100μmナイロンガーゼでろ過した後、実質細胞を低速遠心分離で取り出した。ニコデンツ(Nycodenz)(Sigma)11%及び13%グラジエントにより1500gにて15分間、ブレーキング無しの2段階遠心による濃縮後、グラジエント界面からHSC画分を採集し、10%FCS、ペニシリン及びストレプトマイシンを補充したDMEMに0.5×106/cm2の密度で播種した。培地は、24時間後に交換し、その後は48時間毎に交換した。単離した細胞の生存率をトリパンブルー除外により評価し、常に95〜98%を超えていた。HSC単離物の純度は、HSCの典型的な形態学的外観、すなわち、390nmで緑色の自家蛍光を示す細胞質内の脂質滴と星形の形態とによって確かめた。クッパー細胞の混入は3μmのラテックスビーズを貪食する能力によって評価し、単離後は3〜5%未満であり、第一回目の継代後にはほとんど検出不能であった。実験のために、細胞は、別に記載がなければ、1回目〜3回目の継代の間に使用した。また、HSC細胞株CFSC-2G(適度に活性化されているもの、Dr. M. Rojkind(Washington DC, USA)より贈与)も使用した。
【0010】
[動物実験]
雄のウィスターラット成体(平均体重206±19g)に手術用顕微鏡(OPMI6-S, Zeiss, Germany)下で次の顕微鏡下手術を施した(参考文献45〜47):
1.100mg/kgケタミン-ヒドロクロリド(Ketanest(登録商標)、Parke-Davis, Germany)及び10mg/kg 5,6-ジヒドロ-2-(2,6-キシリジノ)-4H-1,3-チアジン-ヒドロクロリド(Rompun(登録商標)、Bayer, Germany)による麻酔後に腹部正中線切開;
2.総胆管の解剖、テフロンカテーテル(Abbocath(登録商標)-T26G、Venisystems, USA)の挿入並びに5-0絹糸(Perma-hand(登録商標)、Ethicon, Germany)による遠位部不完全結紮及び近位部完全結紮の実施;
3.0.02mL/100g体重の投与量のナトリウム-アミドトリゾエート(Ethibloc(登録商標)、Ethicon, Germany)の逆行注入;
4.カテーテルの除去、近位部結紮の閉鎖、胆管の結紮間での切断、及び切開創の閉鎖。
胆管閉鎖(BDO)後に、動物に通常の固形飼料(Altromin(登録商標)、Lage, Germany)を与え、自由に飲水させた。
BDOによるラットの早期死亡率(1時間から3日以内)は胆汁の漏出によるもので、9%に達した。このモデルではBDOのわずか2週間後に有意な線維症が認められたので、その前に死亡した動物は統計分析に考慮する必要はなかった。6週間後、ケタネスト/ロンパン麻酔下で右心室穿刺及び放血によってラットを屠殺した。肝臓及び脾臓を秤量して、組織学、mRNA及びヒドロキシプロリン(HYP)測定のために、左右の肝葉の1〜2g片を4%ホルマリンで固定するか又は液体窒素で瞬間凍結した。
【0011】
[スクラッチアッセイ]
細胞移動は、スクラッチ面積の縮小を測定することによって概算した。細胞は、24ウェルプレートに60,000細胞/ウェルの密度で播種した。コンフルエントに達した後、滅菌ピペットを用いて細胞単層にスクラッチを作る24時間前から、細胞を無血清培地で飢餓状態にした。傷を付けた後、漸増濃度(10-10M〜10-6M)のαvβ3インテグリン阻害剤で細胞を30分前処理し、続いて無血清下、10ng/mL濃度のPDGF-BBで処理した。スクラッチ面積の縮小は、ネット-マイクロメーター付きの特別な接眼レンズを用いて、1ウェル当たり別個の3箇所で15〜20時間後に測定した。
[BrdUの取り込み]
細胞増殖を評価するために、de novo DNA合成をBrdUの取り込みで決定した。細胞を、20,000細胞/ウェルの密度で10%ウシ胎児血清(FCS)を含む増殖培地を入れた96ウェルプレートに播種した。24時間後に培地を0%FCSのものと交換して24時間インキュベートし、続いて10ng/mL濃度のPDGF-BB若しくはαvβ3インテグリン阻害剤(10-9〜10-6)を含む培地又は阻害剤を含まない培地で20時間インキュベートした。インキュベーションの最後の数時間に細胞をBrdUでパルス標識し、BrdUの取り込みをELISAキット(Rpche)及びマイクロプレートリーダーを用いて測定した。
[リアルタイムPCR]
市販のRNApureキット(PeqLab, Erlangen, Germany)を製造元の推奨に従って用いて、総RNAを細胞溶解物から単離した。0.5mgの総RNAの逆転写によって鋳型cDNAを得た。
相対的な転写物のレベルは、ライトサイクラーシステム(LightCycler system)(Roche)を用い、1.5μLの鋳型cDNA希釈液を使用し、総反応容積15μLで製造元の指示にしたがいリアルタイムRT-PCRによって定量した。前記反応容積中には、“ライトサイクラー・ファストスタートDNAマスターハイブリダイゼーションプローブキット”(LightCycler FastStart DNA Master Hybridization Probes Kit)(Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany)によって提供されるTaq DNAポリメラーゼ、dNTPミックス、反応緩衝液及び3.0mMのMgCl2が含まれていた。測定した各転写物について、1つのサンプルの1:2から1:32稀釈シリーズを標準物として用いた。データは“プロポーショナル・セカンドデリバティブ・マキシマム”(Proportional second derivative maximum)オプションを用いてライトサイクラー(LightCycler)ソフトウエアで解析した。結果の正規化のために、ハウスキーピング遺伝子β-2マイクログロブリン又はGAPDHを並行反応で増幅させた。
公開された配列を基にしてTaqManプローブ及びプライマーセットをプライマーエクスプレス(Primer Express)ソフト(Perkin Elmer)を用いて設計した。5'末端をレポーター色素(FAM)で3'末端をクェンチャー分子(TAMRA)で標識したセンス及びアンチセンスプライマー(各々0.5μM)並びに0.125μMの5'-リン酸化プローブを、MWGバイオテク社(MWG Biotech AG, Ebersberg, Germany)で合成した。特定の標的遺伝子の発現の測定に用いたプライマーセットは下記の表にまとめられている:
【0012】

【0013】
β3及びβ6インテグリンの定常状態の転写レベルの定量のために、蛍光色素としてSYBRグリーン(Mokecular Probes, Eugene, OR)を用いるリアルタイムPCRを使用した。特異的PCR産物を非特異的な産物及びプライマー二量体と区別するために、融解曲線解析を実施した。種々のDNA産物が種々の温度で融解するので、真の産物をプライマー二量体又は非特異的産物と区別することが可能であった。
全ての実験は、筋線維芽細胞様細胞株CFSC-2G(肝硬変ラット肝臓由来のHSC細胞株)及びラット初代HSC/MFを用いて細胞培養物で実施した。αvβ3インテグリン阻害剤の細胞移動に対する影響を調べるために、細胞を24ウェルプレートに播種し、コンフルエントに達した後、FCS非存在下で24時間飢餓状態にした。スクラッチを行い、10-6〜10-9 Mのαvβ3阻害剤の存在下又は非存在下、10ng/mL PDFG-BBで細胞を処理した。移動率は、17〜20時間後に最初のスクラッチ幅の縮小として測定した。
αvβ3阻害剤は、スクラッチ領域へのPDGF-BB誘導性細胞移動を用量依存性の様式で強く阻害した。使用した全ての細胞型において、10-6 Mで移動の完全な抑止が観察された(図1)。驚くべきことに、FCSで刺激した細胞移動に対しては、αvβ3インテグリン阻害剤の影響は存在せず(図2)、このような細胞移動は、FCSが引き金となる移動に関係するおそらくより正常な他の経路の刺激によるものであろう。EMD409915は、低濃度のFCS(0.25%)でさえ有意な移動阻害を示さなかった(データは示さず)。これらの知見は、PDGF誘導性HSC/MF移動が特異的に且つ強くαvβ3依存性であることを示唆している。このように、β3インテグリン阻害剤を用いることによって、“正常な”移動を有意な程度まで干渉せずに、線維症の肝臓及び他の線維症の器官において非常に特異的な様式でHSCMFの移動を阻止することは魅力的である。
【0014】
αvβ3阻害剤が細胞増殖に対して同様な作用を示すか否かを調べるために、細胞を無血清培地で24時間飢餓状態にし、続いて10ng/mL濃度のPDGF-BB及び10-8〜10-6 Mのαvβ3阻害剤で24時間処理した。これらの条件下では、αvβ3阻害剤はPDGF-BB刺激した全細胞型の細胞増殖に対して影響を与えなかった(図3)。血清刺激した細胞増殖でも同じように影響が無いことが観察された(図4)。
αvβ3インテグリン阻害剤がECM発現に対してなんらかの影響を有するか否かをHSC/MFのmRNAで調べるために、プロコラーゲンα1(I)、TGFβ1、TGFβ2、MMP-3、MMP-13、MMP-2、結合組織増殖因子(CTGF)及びTIMP-1のような主要な前線維形成分子及び抗線維形成分子のスペクトルをリアルタイムPCRで測定した。コンフルエントになった細胞を24時間無血清培地で飢餓状態にし、続いてαvβ3阻害剤で30分前処理し、さらに24時間PDGF-BB(10ng/mL)で刺激した。図5に示したように、αvβ3阻害剤はCFSC-2G細胞でのCTGF発現を用量依存性の様式でダウンレギュレートし、最大の阻害は10-6Mで認められた。他のECM分子の転写レベルに変化はなかった(データは示さず)。
肝線維症の間のインテグリンの発現パターンを調べるために、それぞれ4倍又は10〜12倍の相対的(肝臓1g当たり)及び絶対的(全肝臓当たり)肝コラーゲン蓄積を伴う肝硬変を生じる6週間の完全胆管閉鎖ラットモデルを用いた。胆管閉鎖6週間後に、偽手術した動物と比較して、プロコラーゲンα1(I)、TGFβ1、TGFβ2、及びCTGFのmRNA発現の劇的なアップレギュレーション(それぞれ25、10、200及び190倍)が観察された(図6)。
【0015】
同時に、αvβ3のmRNAは中程度にアップレギュレートされ(図7a)、一方、β6インテグリンサブユニットの劇的な過剰発現(180倍)が肝硬変の肝臓で観察された(図7b)。β6インテグリンのこの強いアップレギュレーションはこれまで線維症性疾患では示されておらず、特に肝線維症では示されていなかった。このアップレギュレーションを担う細胞は、主として増殖中の胆管上皮細胞(しかし、活性化されたHSC/筋線維芽細胞もまた)であり、そのような細胞は、大量の前線維形成性サイトカイン(例えばTGFβ及びCTGF)を分泌し、したがって活性化されたHSC/MFに加えて肝線維症治療の主要な標的となる。さらにまた、容赦なく進行するラット線維症胆管閉鎖モデル(1群あたり動物5〜6匹)における我々の最近の試験的実験により、EMD409849による特異的なβ6インテグリン阻害は、胆管閉鎖後5〜6週間で肝臓の総コラーゲンを50〜70%低下させることによって二次的な胆管性肝線維症を有意に改善できることが示唆される。
総合すれば、これらのデータは、特定の低分子量ペプチド及び特にそれらの非ペプチド類似体によるインテグリンαvβ3及びαvβ6の阻害は、その治療が大部分はとらえどころがない肝臓及び他の器官の線維症を改善し、遮断し又は後退さえさせる強力なツールであることを示している(参考文献11〜19、33〜44)。
従って、本発明に従い使用される化合物及び/又はそれらの生理学的に許容できる塩及び/又はそれらの生理学的に許容できる誘導体は、少なくとも1つの賦形剤又は補助剤、また必要に応じて1若しくは2以上のさらに別の活性化合物と一緒にして適切な剤形にすることにより、医薬組成物又は医薬製剤の製造に用いることができる。そのようにして得られる医薬組成物又は医薬製剤は、ヒトの医薬又は動物薬として用いることができる。適切な賦形剤は、経腸的投与(例えば経口又は直腸用)又は非経口的投与に適し且つ本発明にしたがって使用される化合物と反応しない有機又は無機物質であり、例えば水、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート及び他の脂肪酸グリセリド、ゼラチン、ダイズレシチン、炭水化物(例えばラクトース又はデンプン)、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はセルロースである。
【0016】
経口投与のためには、特に錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ジュース(juice)又はドロップ(drop)が用いられる。特に重要なものは腸溶被覆又はカプセル外皮を有する被覆錠剤及びカプセル剤である。直腸投与のためには座薬が用いられ、非経口投与のためには液剤、好ましくは油性若しくは水性の液剤が用いられ、懸濁液、乳液又はインプラント(埋込錠)も用いられる。
本発明に使用される化合物は凍結乾燥することもでき、得られた凍結乾燥物は、例えば注射製剤の製造に用いることができる。示した医薬組成物又は医薬製剤は滅菌することができ、及び/又は補助剤、例えば保存料、安定化剤及び/又は湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩類、緩衝物質、着色剤及び/又は香料を含むことができる。必要に応じて、前記医薬組成物や医薬製剤はまた、1又は2以上のさらに別の活性化合物、例えば1又は2以上のビタミン類、利尿剤、抗炎症性化合物、抗糖尿病薬、鎮痛剤、消炎剤、又は本発明に使用される化合物以外の他の化合物、例えば本発明の対象ではない化合物、本明細書に記載の疾患、臨床像及び/又は症状の診断、予防及び/又は治療に使用することができる化合物、例えば、本発明に使用される化合物の治療効果及び/又は耐性をさらに改良又は強化する化合物を含むこともできる。
【0017】
本発明の医薬組成物は、本技術分野で公知の方法又はそれらに類似する方法にしたがって入手又は製造することができる。通常、本発明の医薬組成物は、非化学的な方法、例えば、有効成分を、例えば生理学的に許容できる賦形剤、補助剤、アジュバント及び担体と混合し、さらに前記混合物を所望の剤形、例えば成形法により錠剤へ又は有効成分を溶媒に溶解することにより液剤へ変換することによって製造される。一般的には、有効成分は、1又は2以上の賦形剤、例えば固体、液体及び/又は半液体の賦形剤と一緒に、又は1若しくは2以上の補助剤と一緒に、また必要に応じて1若しくは2以上のさらに別の有効成分と組み合わせて医薬組成物へ変換される。
これらの製剤はヒトの医薬又は動物薬として用いることができる。適切な賦形剤は、経腸的(例えば経口的)、非経口的又は局所的投与に適し且つ本発明の新規な化合物と反応しない有機又は無機物質であり、例えば水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、炭水化物(例えばラクトース又はデンプン)、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はワセリンである。経口投与に適切なものは、特に錠剤、ピル、被覆錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒、シロップ剤、ジュース又はドロップであり、直腸投与に適したものは座薬であり、非経口投与に適したものは液剤、好ましくは油性若しくは水性の液剤であり、さらにまた懸濁液、乳液又はインプラントであり、局所適用に適切なものは軟膏、クリーム剤又は粉剤である。本発明の新規な化合物はまた凍結乾燥することができ、得られた凍結乾燥物は、例えば注射製剤の製造に用いることができる。示した製剤は滅菌することができ、及び/又は補助剤、例えば滑沢剤、保存料、安定化剤及び/又は湿潤剤、乳化剤、浸透圧を改変するための塩類、緩衝物質、色素、香料及び/又はさらに別の有効成分、例えば1又は2以上のビタミン類を含むことができる。
【0018】
吸入スプレーとして投与するためには、有効成分を噴霧ガス又は噴霧ガス混合物(例えばCO2又はクロロフルオロカーボン)に溶解又は懸濁させたスプレーを使用することが可能である。この事例では有効成分は微粉形態として有利に用いることができ、この場合1又は2以上の生理学的に許容される更なる溶媒(例えばエタノール)が存在していてもよい。吸入溶液は通常の吸入器を用いて投与することができる。
したがって、本発明のアンタゴニストは、好ましくは単位用量につき約0.001mg〜200mg、より好ましくは約0.01mg〜100mg、さらに好ましくは約0.01mg〜50mg、特に好ましくは約0.01mg〜30mgの用量で投与される。
1日用量は、好ましくは約0.0001mg/kg(体重)以上、より好ましくは約0.001mg/kg以上、さらに好ましくは約0.005mg/kg以上、約0.01mg/kg以上、又は約0.1mg/kg以上である。1日用量は、好ましくは約30mg/kg(体重)以下、より好ましくは約20mg/kg以下、さらに好ましくは約15mg/kg以下、約5mg/kg以下又は約1mg/kg以下である。
【0019】
(参考文献)
1. Hood JD, Cheresh DA. Role of integrins in cell invasion and migration. Nat. Rev. Cancer 2002; 2: 91-100.
2. Schuppan D, Ruehl M, Somasundaram R, Hahn EG. Matrix as a modulator of hepatic fibrogenesis. Sem. Liver Dis. 2001; 21: 351-72,
3. Carloni V, Romanelli RG, Pinzani M, Laffi G, Gentilini P. Expression and function of integrin receptors for collagen and laminin in cultured human hepatic stellate cells. Gastroenterology 1996; 110: 1127-36.
4. Sheppard D. Functions of pulmonary epithelial integrins: from development to disease. Physiol. Rev. 2003; 83: 673-86.
5. Woods D, Cherwinski H, Venetsanakos E, Bhat A, Gysin S, Humbert M, Bray PF, Saylor VL, McMahon M. Induction of beta3-integrin gene expression by sustained activation of the Ras-regulated Raf-MEK-extracellular signal-regulated kinase signaling pathway. Mol. Cell. Biol. 2001; 21: 3192-205.
6. Scatena M, Almeida M, Chaisson ML, Fausto N, Nicosia RF, Giachelli CM. NF-kappaB mediates alphavbeta3 integrin-induced endothelial cell survival. J. Cell Biol. 1998; 141: 1083-93.
7. Miao H, Li S, Hu YL, Yuan S, Zhao Y, Chen BP, Puzon-McLaughlin W, Tarui T, Shyy JY, Takada Y, Usami S, Chien S. Differential regulation of Rho GTPases by beta1 and beta3 integrins: the role of an extracellular domain of integrin in intracellular signaling. J. Cell Sci. 2002; 115 (Pt 10): 2199-206.
8. Pinzani M, Milani S, Herbst H, DeFranco R, Grappone C, Gentilini A, Caligiuri A, Pellegrini G, Ngo DV, Romanelli RG, Gentilini P. Expression of platelet-derived growth factor and its receptors in normal human liver and during active hepatic fibrogenesis. Am. J. Pathol. 1996; 148: 785-800.
9. Schneller M. Identification of a candidate integrin-fraction associated with the activated form of the PDGF-receptor. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2001; 281: 595-602.
【0020】
10. Ludbrook SB, Barry ST, Delves CJ, Horgan CM. The integrin alphavbeta3 is a receptor for the latency-associated peptides of transforming growth factors beta1 and beta3. Biochem. J. 2003; 369 (Pt 2): 311-8.
11. Nejjari M, Couvelard A, Mosnier JF, Moreau A, Feldmann G, Degott C, Marcellin P, Scoazec JY. Integrin up-regulation in chronic liver disease: relationship with inflammation and fibrosis in chronic hepatitis C. J. Pathol. 2001; 195: 473-81.
12. Schuppan D, Strobel D, Hahn EG. Hepatic fibrosis - therapeutic strategies. Digestion 1998; 59: 385-90.
13. Gressner AM. The cell biology of liver fibrogenesis - an imbalance of proliferation, growth arrest and apoptosis of myofibroblasts. Cell Tissue Res. 1998; 292: 447-52.
14. Schuppan D, Koda M, Bauer M, Hahn EG. Fibrosis of liver, pancreas and intestine: common mechanisms and clear targets? Acta Gastroenterol. Belg. 2000; 63: 366-70.
15. Friedman SL. Molecular regulation of hepatic fibrosis, an integrated cellular response to tissue injury. .J Biol. Chem. 2000; 275: 2247-50.
16. Bissell DM. Chronic liver injury, TGF-beta, and cancer. Exp. Mol. Med. 2001; 33: 179-90.
17. Neubauer K, Saile B, Ramadori G. Liver fibrosis and altered matrix synthesis. Can. J. Gastroenterol. 2001; 15: 187-93.
18. Bataller R, Brenner DA. Hepatic stellate cells as a target for the treatment of liver fibrosis. Semin. Liver Dis. 2001; 21: 437-51.
【0021】
19. Murphy F, Arthur M, Iredale J. Developing strategies for liver fibrosis treatment. Expert Opin. Investig. Drugs. 2002; 11: 1575-85.
20. Munger JS, Huang X, Kawakatsu H, Griffiths MJ, Dalton SL, Wu J, Pittet JF, Kaminski N, Garat C, Matthay MA, Rifkin DB, Sheppard D. The integrin alpha v beta 6 binds and activates latent TGF beta 1: a mechanism for regulating pulmonary inflammation and fibrosis. Cell 1999; 96: 319-28.
21. Morris DG, Huang X, Kaminski N, Wang Y, Shapiro SD, Dolganov G, Glick A, Sheppard D. Loss of integrin alpha(v)beta6-mediated TGF-beta activation causes Mmp12-dependent emphysema. Nature 2003; 422: 169-73.
22. Thomas GJ, Poomsawat S, Lewis MP, Hart IR, Speight PM, Marshall JF. alpha v beta 6 Integrin upregulates matrix metalloproteinase 9 and promotes migration of normal oral keratinocytes. J. Invest. Dermatol. 2001; 116: 898-904.
23. Milani S, Herbst H, Schuppan D, Stein H, Surrenti C. Transforming growth factors β1 and β2 are differentially expressed in fibrotic liver disease. Am. J. Pathol. 1991; 139: 1221-9.
24. Sedlaczek N, Jia JD, Bauer M, Herbst H, Cho JJ, Ruehl M, Riecken EO, Schuppan. Proliferating bile duct epithelial cells are a major source of connective tissue growth factor in rat biliary fibrosis. Am. J. Pathol. 2001; 158: 1239-44.
25. Milani S, Herbst H, Schuppan D, Surrenti C, Riecken EO, Stein H. Cellular localization of type I, III and IV procollagen gene transcripts in normal and fibrotic human liver. Am. J. Pathol. 1990; 137: 59-70.
26. Milani S, Herbst H, Schuppan D, Surrenti C, Riecken EO, Stein H. Cellular localization of type I, III and IV procollagen gene transcripts in normal and fibrotic human liver. Am. J. Pathol. 1990; 137: 59-70.
27. Herbst H, Wege T, Milani S, Pellegrini G, Orzechowski HD, Bechstein WO, Neuhaus P, Gressner AM, Schuppan D. Tissue inhibitor of metalloproteinases-1 and 2 expression in rat and human liver fibrosis. Am. J. Pathol. 1997; 150: 1647-59.
【0022】
28. Ikeda K, Wakahara T, Wang YQ, Kadoya H, Kawada N, Kaneda K. In vitro migratory potential of rat quiescent hepatic stellate cells and its augmentation by cell activation. Hepatology 1999; 29: 1760-7.
29. Marra F, Romanelli RG, Giannini C, Failli P, Pastacaldi S, Arrighi MC, Pinzani M, Laffi G, Montalto P, Gentilini P. Monocyte chemotactic protein-1 as a chemoattractant for human hepatic stellate cells. Hepatology 1999; 29: 140-8.
30. Pinzani M. PDGF and signal transduction in hepatic stellate cells. Front. Biosci. 2002; 7: d1720-6.
31. Oxford Textbook of Clinical Hepatology. Bircher J, Benhamou JP, McIntyre N, Rizzetto M, Rodes J, editors. 1998.
32. Schuppan D, Krebs A, Bauer M, Y. Popov, Hahn EG. Hepatitis C and fibrosis progression. Cell Death Diff. 2003; 10 (Suppl.1): 59-67.
33. Booz GW, Dostal DE, Baker KM. Paracrine actions of cardiac fibroblasts on cardiomyocytes: implications for the cardiac renin-angiotensin system. Am. J. Cardiol. 1999; 83 (12A): 44H-47H.
34. Weber KT. Fibrosis and hypertensive heart disease. Curr. Opin. Cardiol. 2000;15: 264-72.
35. Jugdutt BI. Remodeling of the myocardium and potential targets in the collagen degradation and synthesis pathways. Curr. Drug Targets Cardiovasc. Haematol. Disord. 2003; 3: 1-30.
36. Becker GJ, Perkovic V, Hewitson TD. Pharmacological intervention in renal fibrosis and vascular sclerosis. J. Nephrol. 2001; 14: 332-9.
37. Herzlinger D. Renal interstitial fibrosis: remembrance of things past? J. Clin. Invest. 2002; 110: 305-6.
【0023】
38. Phan SH. The myofibroblast in pulmonary fibrosis. Chest. 2002; 122 (Suppl.6): 286S-289S.
39. Pardo A, Selman M. Molecular mechanisms of pulmonary fibrosis. Front. Biosci. 2002; 7: d1743-61.
40. Schwartz SM. Smooth muscle migration in vascular development and pathogenesis. Transpl. Immunol. 1997; 5: 255-60.
41. Martin J. Learning from vascular remodelling. Clin. Exp. Allergy.. 2000; 30 Suppl 1:33-6.
42. Trojanowska M. Molecular aspects of scleroderma. Front Biosci. 2002; 7: d608-18.
43. Pucilowska JB, Williams KL, Lund PK. Fibrogenesis. IV. Fibrosis and inflammatory bowel disease: cellular mediators and animal models. Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 2000; 279: G653-9.
44. Esposito I, Friess H, Buchler MW. Molecular mechanisms in chronic pancreatitis. Zentralbl. Chir. 2001; 126: 867-72.
45. Boigk G, Stroedter L, Herbst H, Waldschmidt, Riecken EO, Schuppan D. Silymarin retards hepatic collagen accumulation in early and advanced biliary fibrosis secondary to bile duct obliteration in the rat. Hepatology 1997; 26: 643-9.
46. Cho JJ, Hocher B, Herbst H, Jia JJ, Boigk G, Hahn EG, Riecken EO, Schuppan D. An oral endothelin A receptor antagonist blocks collagen synthesis and deposition in advanced rat secondary biliary fibrosis. Gastroenterology 2000; 118: 1169-78.
47. Raetsch C, Boigk G, Herbst H, Riecken EO, Schuppan D. Pentoxifylline retards collagen accumulation in early but not in advanced rat secondary biliary fibrosis. Gut 2002; 50: 241-7.
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】a)CFSC-2G細胞(ラットHSC株)、及びb)PDGF-BB(10ng/mL)で処理したラット初代HSC/MFに対する10-9〜10-6MのEMD409915の影響を示す。細胞移動は20時間以内で評価した。データは、3連で構成する3以上の独立した実験のデータを表しており、平均値±SEMとして示されている(最初のスクラッチ幅に対する縮小の割合(%))。
【図2】ウシ胎児血清(FCS)刺激HSC/MF細胞移動に対する10-10〜10-6MのEMD409915の影響を示す。細胞の移動は20時間後に評価した。データは、3連で構成する3以上の独立した実験のデータを表しており、平均値±SEMとして示されている(最初のスクラッチ幅に対する縮小の割合(%))。
【図3】10-6〜10-8MのEMD409915の存在下で24時間PDGF-BB(10ng/mL)により刺激し、BrdU取り込みを用いて測定した、HSC/MFのDNA合成を示す。データは、3連で構成する3以上の独立した実験のデータを表しており、平均±SEMとして示されている(任意(arbitrary)単位)。
【図4】10-6〜10-8MのEMD409915の存在下で10%FCSにより刺激し、BrdU取り込みを用いて測定した、HSC/MFのDNA合成を示す。データは、4連で構成する3以上の独立した実験のデータを表しており、平均値±SEMとして示されている(任意単位)。
【図5】24時間PDGF-BB(10ng/mL)の存在下で10-6〜10-8MのEMD409915で処理したCFSC-2G細胞のCTGFの発現を示す。データは、4連で構成する3以上の独立した実験のデータを表しており、平均値±SEMとして示されている(任意単位)。
【図6】二次性胆管性肝線維症におけるa)プロコラーゲンα1(I)、b)TGFβ1及びc)CTGFの発現を示す。偽手術したラット(Sham)及び6週間の胆管閉鎖のため線維症を患うラット(BDL)の肝臓由来の総RNAのリアルタイムPCRにより測定した。各棒グラフは3匹の個々の動物から得た肝臓RNAサンプルを表し、データは平均値±SEMとして示されている(任意単位)。
【図7】肝線維症におけるa)β3インテグリン及びb)β6インテグリンの発現を示す。偽手術したラット(Sham)及び6週間の胆管閉鎖のため線維症を患うラット(BDL)の肝臓由来の総RNAのリアルタイムPCRによって測定した:。各棒グラフは3匹の個々の動物から得た肝臓RNAサンプルを表し、データは平均値±SEMとして示されている(任意単位)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化された線維芽細胞又は筋線維芽細胞が関与する哺乳動物の病態の治療用医薬を製造するためのαvインテグリンアンタゴニストの使用。
【請求項2】
αvインテグリンアンタゴニストがαvβ3アンタゴニストである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
αvインテグリンアンタゴニストがαvβ6アンタゴニストである、請求項1記載の使用。
【請求項4】
αvインテグリンアンタゴニストが、(i)3-ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール-5-イル-3-{6-[2-(6-メチルアミノピリジン-2-イル)-エトキシ]-1H-インドール-3-イル}-プロピオン酸及び(ii)3-{3-ベンジルオキシ-2-[5-(ピリジン-2-イルアミノ)-ペンタノイルアミノ]-プロパノイルアミノ}-3-(3,5-ジクロロフェニル)-プロピオン酸から成る群より選択される、請求項2又は3記載の使用。
【請求項5】
病態が、線維症又は線維症性疾患である、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
線維症が線維症性肝疾患である、請求項5記載の使用。
【請求項7】
線維症性肝疾患が肝硬変である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
アンタゴニストがPDGF誘導性のHSC/MFの移動及び/又は活性化を阻害する、請求項5記載の使用。
【請求項9】
アンタゴニストが瘢痕形成を阻害する、請求項5記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−507440(P2007−507440A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529991(P2006−529991)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010396
【国際公開番号】WO2005/039547
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】