説明

抗老化剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品

【課題】優れた抗老化作用(皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、UV−Bダメージからの回復作用等)を有し、かつ、安全性の高い抗老化剤、並びに、前記抗老化剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供すること。
【解決手段】発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする抗老化剤、並びに、前記抗老化剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤及び飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物発酵抽出物を含有する抗老化剤、並びに、前記抗老化剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、皮膚線維芽細胞、及び、これらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲンやエラスチン等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより、水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線(UV−A、UV−B)の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄、過酸化水素との接触等の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、コラーゲンやエラスチン等の細胞外マトリックスの産生量が減少すると共に、架橋による弾力低下を起こす。その結果、皮膚は保湿機能や弾力性が低下し、角質は異常剥離を始めるため、肌は張りや艶を失い、荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。
【0003】
このように皮膚の老化に伴う変化、即ち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、コラーゲンやエラスチン等の真皮マトリックス成分の減少乃至変性が関与していることが知られている。
コラーゲンの中でもI型コラーゲンは、最も多く体内に含まれるコラーゲンであり、皮膚の真皮にも多く含まれ、皮膚の強さを生み出す役割を果たしていることが知られている。
また、エラスターゼは皮膚の真皮に存在するエラスチンの加水分解酵素であるが、エラスターゼは、紫外線暴露や老化により過剰発現することがあり、エラスターゼによりエラスチンが変性・破壊されると、皮膚の弾力性が低下すると考えられている。
【0004】
また、近年、真皮マトリックス成分の減少乃至変性を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ類(以下、「MMPs」と称することもある)と呼ばれるタンパク質分解酵素群が挙げられる。
前記MMPsは、その一次構造と基質特異性の違いから、(1)コラゲナーゼ群(MMP−1、MMP−8及びMMP−13)、(2)ゼラチナーゼ群(MMP−2及びMMP−9)、(3)ストロメライシン群(MMP−3及びMMP−10)、(4)膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ群(MMP−14、MMP−15、MMP−16、及びMMP−17)、(5)その他(MMP−7、MMP−11、及びMMP−12)の5つのグループに分類されている(特許文献1参照)。
前記MMPsの中でも、MMP−1及びMMP−14は、皮膚の真皮マトリックスの主な構成成分であるI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲンを分解する酵素として知られている。また、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、紫外線によるコラーゲンの減少乃至変性の一因となり、皮膚のシワ形成等の大きな要因であると考えられる。
【0005】
また、加齢に伴う皮膚老化の一因として、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が減退することがある。エストロゲンは成人女性の健康維持に深く関わっており、その分泌不足は種々の内科的疾患を招く他、肌の過敏症、弾力性低下、潤いの減少等の好ましくない肌の変化の原因となることが知られている。
【0006】
また、角層は、表皮角化細胞が終末分化して形成された角質細胞と、細胞間を埋める細胞間脂質から形成される。セラミドを主成分とする細胞間脂質は、ラメラ構造を形成することにより、角層バリア機能を担っている。一方、角質細胞は、ケラチン線維を主成分とし、膜の裏打ち蛋白であるコーニファイドエンベロープ(角質肥厚膜、以下「CE」と略す。)という疎水的で強靭な細胞膜様構造物に覆われている。CEは、表皮角化細胞の分化に従って細胞内で産生されるインボルクリン、ロリクリンなど複数のCE前駆体蛋白質が、酵素トランスグルタミナーゼ−1により架橋され、不溶化して形成され、このCEが皮膚のバリア機能に密接に関与している。さらに、その一部にはセラミド等が共有結合し、疎水的な構造をとることで細胞間脂質のラメラ構造の土台を供給し、角層バリア機能及び皮膚の水分保持機能の基礎が形成される。
【0007】
しかしながら、加齢、乾燥、紫外線(UV−A、UV−B)などの影響によりターンオーバー速度に異常が生じると、ラメラ構造の乱れやCEが不完全な状態で形成された、いわゆる不全角化が誘発され、角質細胞や細胞間脂質の構造に異常が生じ、角層の水分保持機能及びバリア機能は低下する。このことが肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状につながると考えられる。また、乾癬やアトピー性皮膚炎の患者では、バリア機能が低下した皮疹部で未熟なCEが高頻度に観察され、CEが正しく形成されることが皮膚のバリア機能に非常に重要であると考えられている(非特許文献1参照)。
【0008】
このようなことから、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、UV−Bダメージからの回復作用等の各作用を有する抗老化剤は、皮膚の弾力性低下、荒れ、シワ等の皮膚の老化症状を、効果的に予防乃至改善することができると考えられる。
【0009】
しかしながら、現在までのところ、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のものであって、味、匂い、使用感等の点で添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚外用剤及び飲食品に広く使用可能な抗老化剤は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【0010】
【特許文献1】特開2000−344672号公報
【非特許文献1】Experimental Dermatology 12:591−601(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた抗老化作用(皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、UV−Bダメージからの回復作用等)を有し、かつ、安全性の高い抗老化剤、並びに、前記抗老化剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、ヨモギ、バガス、グアバ、ニガナ、ギンネム、ウコン、及び月桃の各植物をそれぞれ発酵させて得られる各植物発酵物を、更に抽出することにより得られる各植物発酵抽出物が、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかに基づく、優れた抗老化作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする抗老化剤である。
<2> 皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかを有する前記<1>に記載の抗老化剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
<4> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた抗老化作用(皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、UV−Bダメージからの回復作用等)を有し、かつ、安全性の高い抗老化剤、並びに、前記抗老化剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(抗老化剤)
本発明の抗老化剤は、発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物から選択される少なくとも1種を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物とはそれぞれ、ヨモギ、バガス、グアバ、ニガナ、ギンネム、ウコン、及び月桃の各植物をそれぞれ発酵させて得られる発酵物(本明細書中において、「植物発酵物」と称することがある)を、更に抽出することにより得られる抽出物(本明細書中において、「植物発酵抽出物」と称することがある)をいう。
【0016】
前記抗老化剤は、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかに基づく抗老化作用を有するものである。
前記発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物における、抗老化作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記各植物発酵抽出物がこのような優れた作用を有し、抗老化剤として有用であることは、従来には全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0017】
前記ヨモギは、キク科の植物であり、学名はArtemisia princepsである。前記ヨモギは、多年草であり、日本全国に広く分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記ヨモギの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉、茎が好ましい。
前記バガス(bagasse)とは、サトウキビ(学名:Saccharum officinarum)から砂糖を製造する過程で発生するサトウキビの圧搾かすである。そのため、前記バガスは、サトウキビから砂糖を製造する際の廃棄物として、容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記バガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生バガス、乾燥バガスなどが挙げられ、これらの中でも、乾燥バガスが好ましい。
前記グアバは、フトモモ科の植物であり、学名はPsidium guajava Linnである。前記グアバは、常緑樹であり、東南アジア、中国南部、ハワイなどの熱帯、亜熱帯地域に広く分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記グアバの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記ニガナは、キク科の植物であり、学名はCrepidiastrum lanceolatum Nakaiである。前記ニガナは、多年草であり、沖縄など、日本の山地や野原に広く植生・分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記ニガナの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記ギンネムは、マメ科の植物であり、学名はLeucaena leucocephalaである、前記ギンネムは、多年性植物であり、熱帯、亜熱帯地方に広く分布しており、また、日本では沖縄地方でも栽培されており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記ギンネムの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉、茎が好ましい。
前記ウコンは、ショウガ科の植物であり、学名はCurcuma longa L.である。前記ウコンは、多年草であり、インド、東南アジア、中国南部などの熱帯地方や、日本では沖縄地方でも栽培されており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記ウコンの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、根茎が好ましい。
前記月桃は、ショウガ科の植物であり、学名はAlpinia speciosa K.Schumである。前記月桃は、多年草であり、九州南部から中国南部〜熱帯アジアに広く分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記月桃の部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
【0018】
前記各植物は、各植物発酵物を得るための発酵原料として使用される。前記各植物を、任意の方法で発酵させることにより、各植物発酵物を得ることができる。前記各植物の発酵方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特開2004−267100号公報(ヨモギ)、特許第4031637号公報(ヨモギ、グアバ、月桃)、特許第4067805号(バガス)、特開2006−347985号公報(ニガナ)、特許第2596472号公報(ギンネム)、特許第2949411号(ウコン)、特開2004−345986号公報(ウコン)、特開2007−99625号公報(月桃)に記載の方法などを、好適に採用することができる。具体的には、例えば、前記各植物を、乾燥した後に、そのままの状態で又は粗砕機等を用いて粉砕した状態で、乳酸菌、酵母、枯草菌などの微生物による発酵処理に供することにより、前記各植物発酵物を得ることができる。
【0019】
前記のようにして得られた各植物発酵物は、各植物発酵抽出物を得るための抽出原料として使用される。前記各植物発酵物は、例えば、乾燥した後、溶媒抽出に供することができる。前記乾燥は、例えば、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、前記各植物発酵物は、滅菌処理を施してから、抽出原料として使用してもよい。前記滅菌処理は、例えば、加熱等の公知の方法により行うことができる。なお、前記各植物発酵物は、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから、抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、前記各植物発酵物の極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0020】
前記各植物発酵抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用して、前記植物発酵物に抽出処理を施すことにより、容易に得ることができる。また、前記各植物発酵抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記各植物発酵抽出物には、前記各植物発酵物の抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0021】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒を、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。前記各植物発酵物に含まれる抗老化作用を示す成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって、容易に抽出することができる。
【0022】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0023】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、該親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
なお、発酵月桃を抽出原料とする場合、これらの溶媒の中でも、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、MMP−1活性阻害作用、UV−Bダメージからの回復作用等を高めることができる点で、低級アルコールを、水10質量部に対して5〜20質量部混合した混合溶媒を使用することが好ましい。
【0024】
抽出原料である前記各植物発酵物から、抗老化作用を有する抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、前記各抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50〜95℃にて1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40〜95℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明の抗老化剤の有効成分として用いることができる。
【0025】
抽出により得られる前記各植物発酵物の抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られる前記各植物発酵物の抽出液は、そのままでも抗老化剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、抽出原料である前記各植物発酵物は特有の匂いと味を有している場合があり、そのため、前記各植物発酵物の抽出物に対しては、生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、例えば皮膚化粧料に添加する場合などには大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0026】
以上のようにして得られる前記各植物発酵物の抽出物(植物発酵抽出物)は、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかを有し、これらの作用に基づき、本発明の抗老化剤の有効成分として好適に利用可能なものである。なお、前記植物発酵抽出物は、前記した各作用に基づき、皮膚線維芽細胞増殖促進剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、エラスターゼ活性阻害剤、MMP−1活性阻害剤、エストロゲン様作用剤、I型コラーゲン産生促進剤、表皮角化細胞増殖促進剤、UV−Bダメージからの回復作用剤としても、それぞれ好適に利用可能である。
前記抗老化剤中の前記各植物発酵抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記抗老化剤は、前記各植物発酵抽出物そのものであってもよい。
また、前記抗老化剤中、前記各植物発酵抽出物は、いずれか1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。前記抗老化剤中に2種以上の植物発酵抽出物が含まれる場合の、各々の含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
また、前記抗老化剤中に含まれ得る、前記各植物発酵抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記各植物発酵抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。また、前記抗老化剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記抗老化剤は、必要に応じて製剤化することにより、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形とすることができる。
【0028】
本発明の抗老化剤は、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかに基づく、優れた抗老化作用を有すると共に、安全性に優れるため、例えば、後述する本発明の皮膚外用剤、本発明の飲食品などへの利用に好適である。
【0029】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、前記した本発明の抗老化剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記皮膚外用剤とは、皮膚に適用される各種の薬剤を意味し、その区分としては特に制限されるものではなく、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものである。
前記皮膚外用剤は、前記各植物発酵抽出物を、その活性を妨げないように任意の皮膚外用剤に配合したものであってもよいし、前記各植物発酵抽出物を主成分とした皮膚外用剤であってもよい。また、前記皮膚外用剤は、前記各植物発酵抽出物そのものであってもよい。
【0030】
前記皮膚外用剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプーなどが挙げられる。
【0031】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、皮膚外用剤を製造するにあたって通常用いられる成分、例えば、収斂剤、殺菌、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、抗老化剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。
【0032】
前記皮膚外用剤中の、前記抗老化剤の含有量としては、特に制限はなく、皮膚外用剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、前記各植物発酵抽出物の量として、0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
【0033】
(飲食品)
本発明の飲食品は、前記した本発明の抗老化剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記飲食品は、前記各植物発酵抽出物を、その活性を妨げないように任意の飲食物に配合したものであってもよいし、前記各植物発酵抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。また、前記飲食品は、前記各植物発酵抽出物そのものであってもよい。
【0034】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
【0035】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0036】
前記飲食品中の、前記抗老化剤の含有量としては、対象となる飲食品の種類に応じて異なり、一概には規定することができないが、例えば、飲食品本来の味を損なわない範囲で任意の飲食物に配合することを目的とする場合には、有効成分である前記各植物発酵抽出物の量として、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。また、例えば、前記各植物発酵抽出物を主成分とする顆粒、錠剤、カプセル形態等の栄養補助飲食品を製造することを目的とする場合には、有効成分である前記各植物発酵抽出物の量として、0.01質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。
【0037】
(効果)
本発明の抗老化剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、日常的に使用することが可能であり、有効成分である前記各植物発酵抽出物の働きによって、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかに基づく抗老化作用を、極めて効果的に発揮させることができるものである。そのため、本発明の抗老化剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品によれば、皮膚の弾力性低下、荒れ、シワ等の皮膚の老化症状の予防・改善を、効果的に行えるようになることが期待される。
【0038】
なお、本発明の抗老化剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。また、本発明の抗老化剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、天然由来の各植物発酵抽出物を有効成分としたものであり、安全性に優れる点でも、有利である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(製造例1)
−各植物発酵物の水抽出物の製造−
抽出原料となる植物発酵物として、発酵ヨモギ、発酵バガス、発酵グアバ、発酵ニガナ、発酵ギンネム、発酵ウコン、及び発酵月桃(いずれも株式会社琉球バイオリソース開発製)をそれぞれ使用した。前記各植物発酵物100gを、水1000mlに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、90℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、粉末状の抽出物を得た。得られた抽出物(植物発酵抽出物)の収率を表1に示す。
【0041】
(製造例2)
−各植物発酵物の50質量%エタノール抽出物の製造−
抽出原料となる植物発酵物として、発酵ヨモギ、発酵バガス、発酵グアバ、発酵ニガナ、発酵ギンネム、発酵ウコン、及び発酵月桃(いずれも株式会社琉球バイオリソース開発製)をそれぞれ使用した。前記各植物発酵物100gを、50質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)1000mlに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、90℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、粉末状の抽出物を得た。得られた抽出物(植物発酵抽出物)の収率を表1に示す。
【0042】
(製造例3)
−各植物発酵物の80質量%エタノール抽出物の製造−
抽出原料となる植物発酵物として、発酵ヨモギ、発酵バガス、発酵グアバ、発酵ニガナ、発酵ギンネム、発酵ウコン、及び発酵月桃(いずれも株式会社琉球バイオリソース開発製)をそれぞれ使用した。前記各植物発酵物100gを、80質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:4)1000mlに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、90℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、粉末状の抽出物を得た。得られた抽出物(植物発酵抽出物)の収率を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例1:皮膚線維芽細胞増殖促進作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により皮膚線維芽細胞増殖促進作用を試験した。
【0045】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10%FBS含有α−MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を7.0×10cells/mLの濃度に5%FBS含有α−MEMで希釈した後、96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、5%FBS含有α−MEMで溶解した被験試料を各wellに100μL添加し、3日間培養した。皮膚線維芽細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。培養終了後、各wellから100μLずつ培地を抜き、終濃度5mg/mLでPBS(−)に溶解したMTTを各wellに20μLずつ添加した。4.5時間培養した後に、10%SDSを溶解した0.01mol/L 塩酸溶液を各wellに100μLずつ添加し、一晩培養した後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様の方法で空試験を行い補正した。
皮膚線維芽細胞増殖促進作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表2〜7に示す。
皮膚線維芽細胞増殖促進率(%)=(St−Sb)/(Ct−Cb)×100
St:被験試料を添加した細胞での吸光度
Sb:被験試料を添加した空試験の吸光度
Ct:被験試料を添加しない細胞での吸光度
Cb:被験試料を添加しない空試験の吸光度
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
【表7】

【0052】
(実施例2:トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を試験した。
【0053】
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)をヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10cells/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、2日間培養した。培養終了後、KGMで溶解した被験試料を各wellに100μL添加し、24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したトランスグルタミナーゼ−1の量をモノクローナル抗ヒトトランスグルタミナーゼ−1抗体を用いたELISA法により測定した。
トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表8〜12に示す。
トランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)=A/B×100
A:被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度
B:被験試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度
【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

【0056】
【表10】

【0057】
【表11】

【0058】
【表12】

【0059】
(実施例3:エラスターゼ活性阻害作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりエラスターゼ活性阻害作用を試験した。
【0060】
96wellプレートにて、0.2mol/L Tris−HCL緩衝液(pH8.0)で調製した被験試料50μL及び20μg/mL エラスターゼ・タイプIII溶液50μLを混合した。その後、上記緩衝液にて調製した0.4514mg/mL N−SUCCINYL−ALA−ALA−ALA−p−NITROANILIDE 100μLを添加して、25℃にて15分反応させた。反応終了後、波長415nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
エラスターゼ活性阻害作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表13〜14に示す。
エラスターゼ活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
A:被験試料無添加、酵素添加での波長415nmにおける吸光度
B:被験試料無添加、酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
C:被験試料添加、酵素添加での波長415nmにおける吸光度
D:被験試料添加、酵素無添加での波長415nmにおける吸光度
【0061】
【表13】

【0062】
【表14】

【0063】
(実施例4:MMP−1活性阻害作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりMMP−1活性阻害作用を試験した。
【0064】
試験方法としては、Wunsch and Heidrich法を一部改変した方法を使用した。即ち、蓋付試験管にて、20mmol/mL 塩化カルシウム含有0.1mol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.1)に溶解した被験試料50μL、MMP−1(COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum(Sigma社))溶液50μL、及びPz−peptide(Pz−Pro−Leu−Gly−Pro−D−Arg−OH(BACHEM Feinchemikalien AG社))溶液400μLを混合し、37℃にて30分反応させた後、25mmol/L クエン酸溶液1mLを加え反応を停止した。その後、酢酸エチル5mLを加え、激しく振とうした。これを遠心(1600×g、10分)し、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
MMP−1活性阻害作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表15〜19に示す。
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
A:被験試料無添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度
B:被験試料無添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度
C:被験試料添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度
D:被験試料添加、酵素無添加での320nmにおける吸光度
【0065】
【表15】

【0066】
【表16】

【0067】
【表17】

【0068】
【表18】

【0069】
【表19】

【0070】
(実施例5:エストロゲン様作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりエストロゲン様作用を試験した。
【0071】
ヒト乳癌由来細胞(MCF−7)を10%FBS、1%NEAA、及び1mmol/L ピルビン酸ナトリウムを含有するMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を活性炭処理した10%FBS、1%NEAA、及び1mmol/L ピルビン酸ナトリウムを含有するフェノールレッド不含MEM(T−MEM)を用いて3.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、48wellプレートに1wellあたり450μLずつ播種し、細胞を定着させるため培養した。6時間後(0日目)にT−MEMで終濃度の10倍に調製した被験試料を各wellに50μL添加し培養を続けた。3日目に培地を抜き、T−MEMで終濃度に調製した被験試料を各wellに0.5mL添加し、さらに培養を続けた。エストロゲン様作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、1%NEAA、1mmol/L ピルビン酸ナトリウムを含有するMEMに終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各wellに200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。ポジティブコントロールとして、1×10−9Mエストラジオールを使用した。
エストロゲン様作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表20〜24に示す。
エストロゲン様作用率(%)=A/B×100
A:被験試料添加時の吸光度
B:被験試料無添加時の吸光度
【0072】
【表20】

【0073】
【表21】

【0074】
【表22】

【0075】
【表23】

【0076】
【表24】

【0077】
(実施例6:I型コラーゲン産生促進作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりI型コラーゲン産生促進作用を試験した。
【0078】
ヒト正常線維芽細胞(NB1RGB)を10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの濃度に上記培地で希釈した後、96wellマイクロプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、0.25%FBS含有ダルベッコMEMに溶解した被験試料を各wellに150μL添加し、3日間培養した。培養後、各wellの培地中のI型コラーゲン量をELISA法により測定した。
I型コラーゲン産生促進作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表25〜29に示す。
I型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
A:被験試料添加時のI型コラーゲン量
B:被験試料無添加時のI型コラーゲン量
【0079】
【表25】

【0080】
【表26】

【0081】
【表27】

【0082】
【表28】

【0083】
【表29】

【0084】
(実施例7:表皮角化細胞増殖促進作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により表皮角化細胞増殖促進作用を試験した。
【0085】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)を正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.5×10cells/mL(発酵ニガナ、発酵ウコンの場合)又は2.0×10cells/mL(発酵月桃の場合)の濃度にEpiLife−KG2で希釈した後、コラーゲンコートした96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、EpiLife−KG2で溶解した被験試料を各wellに100μL添加し、3日間培養した。表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLでPBS(−)に溶解したMTTを各wellに100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。
表皮角化細胞増殖促進作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表30〜32に示す。
表皮角化細胞増殖促進率(%)=St/Ct×100
St:被験試料を添加した細胞での吸光度
Ct:被験試料を添加しない細胞での吸光度
【0086】
【表30】

【0087】
【表31】

【0088】
【表32】

【0089】
(実施例8:UV−Bダメージからの回復作用試験)
前記各植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりUV−Bダメージからの回復作用を試験した。
【0090】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10%FBS含有α−MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞をα−MEMを用いて2.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、48wellプレートに1wellあたり200μLずつ播種した。24時間培養後、培地を100μLのPBS(−)へ交換し、1.0J/cmのUV−Bを照射した。照射後、直ちに、PBS(−)を抜き、10%FBS含有D−MEMに溶解した被験試料を各wellに400μL添加し、24時間培養した。紫外線UV−Bダメージからの回復効果は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各wellに200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様に細胞播種した後、UV−Bを照射しない細胞、及び細胞播種後UV−Bを照射し被験試料を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非照射群と照射群とした。
UV−Bダメージ回復作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表33〜34に示す。
UV−Bダメージ回復率(%)={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
Nt:UV−Bを照射しない細胞での吸光度
C:UV−Bを照射し被験試料を添加しない細胞での吸光度
Sa:UV−Bを照射し被験試料を添加した細胞での吸光度
【0091】
【表33】

【0092】
【表34】

【0093】
実施例1〜8の結果から、発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物は、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかを有することが確認され、これらのことから、発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物が、抗老化剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0094】
(配合例1)
−乳液−
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
・発酵ヨモギの50質量%エタノール抽出物・・・0.10g
・ホホバオイル・・・4.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・2.50g
・オリーブオイル・・・2.00g
・スクワラン・・・2.00g
・セタノール・・・2.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・黄杞エキス・・・0.10g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.10g
・イチョウ葉エキス・・・0.10g
・コンキオリン・・・0.10g
・オウバクエキス・・・0.10g
・カツミレエキス・・・0.10g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計100.00g)
【0095】
(配合例2)
−化粧水−
下記組成に従い、化粧水を常法により製造した。
・発酵バガスの50質量%エタノール抽出物・・・0.10g
・グリセリン・・・3.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・クエン酸・・・0.10g
・クエン酸ソーダ・・・0.10g
・油溶性甘草エキス・・・0.10g
・海藻エキス・・・0.10g
・クジンエキス・・・0.10g
・キシロビオースミクスチャー・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0096】
(配合例3)
−クリーム−
下記組成に従い、クリームを常法により製造した。
・発酵グアバの50質量%エタノール抽出物・・・0.10g
・スクワラン・・・10.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.00g
・流動パラフィン・・・5.00g
・サラシミツロウ・・・4.00g
・セタノール・・・3.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.00g
・ラノリン・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・1.50g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・1.50g
・ステアリン酸・・・1.00g
・酵母抽出液・・・0.10g
・シソ抽出液・・・0.10g
・シナノキ抽出液・・・0.10g
・ジユ抽出液・・・0.10g
・香料・・・0.10g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0097】
(配合例4)
−パック−
下記組成に従い、パックを常法により製造した。
・発酵ニガナの50質量%エタノール抽出物・・・0.20g
・ポリビニルアルコール・・・15.00g
・エタノール・・・10.00g
・プロピレングリコール・・・7.00g
・ポリエチレングリコール・・・3.00g
・セージ抽出液・・・0.10g
・トウキ抽出液・・・0.10g
・ニンジン抽出液・・・0.10g
・パラオキシ安息香酸エチル・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0098】
(配合例5)
−錠剤状栄養補助食品−
下記の混合物を打錠して、錠剤状栄養補助食品を製造した。
・発酵ギンネムの50質量%エタノール抽出物・・・30g
・粉糖(ショ糖)・・・178g
・ソルビット・・・10g
・グリセリン脂肪酸エステル・・・12g
【0099】
(配合例6)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・発酵月桃の50質量%エタノール抽出物・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の抗老化剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、優れた抗老化作用を有するので、例えば、皮膚の弾力性低下、荒れ、シワ等の皮膚の老化症状の予防・改善を目的とした皮膚外用剤や飲食品に、好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵ヨモギの抽出物、発酵バガスの抽出物、発酵グアバの抽出物、発酵ニガナの抽出物、発酵ギンネムの抽出物、発酵ウコンの抽出物、及び発酵月桃の抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項2】
皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかを有する請求項1に記載の抗老化剤。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1から2のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2009−242263(P2009−242263A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88532(P2008−88532)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【出願人】(397031784)株式会社琉球バイオリソース開発 (21)
【Fターム(参考)】