抗腫瘍剤及びその製造方法
【課題】難治性のATL、リンパ腫及び固形癌に対する新規抗腫瘍剤の提供。
【解決手段】一般式(I):
[式中、R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基等であり;R2は、水素原子、ヒドロキシル基等、及び、以下:
から選択され;R3は、水素原子、ヒドロキシル基等から選択され;R4は、水素原子、ヒドロキシル基等から選択される]
【解決手段】一般式(I):
[式中、R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基等であり;R2は、水素原子、ヒドロキシル基等、及び、以下:
から選択され;R3は、水素原子、ヒドロキシル基等から選択され;R4は、水素原子、ヒドロキシル基等から選択される]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍剤及びその製造方法に関する。特に、本発明は、シソ科植物ヒプティス・ヴェルチシラータ(Hyptis verticillata)由来の抗腫瘍剤及びその製造方法に関する。具体的には、ヒプティス・ヴェルチシラータ由来の化合物及び組成物を有効成分として含有する抗腫瘍剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シソ科植物であるヒプティス・ヴェルチシラータは熱帯アメリカ原産で、南北アメリカの熱帯から亜熱帯地方に生息している。メキシコでは、一般に「hierba maltina」と呼ばれているこの植物の葉は、経口的に頭痛、胃痛及び消化器疾患等の薬として用いられている。また、この植物全体を煮詰めたものは、虫刺され、リウマチ及び皮膚感染症等の塗り薬として用いられており、さらに、駆虫剤や下剤としても広く用いられている。
【0003】
ヒプティス・ヴェルチシラータからは、過去の研究により、多くのリグナン骨格を有する化合物が単離されている(非特許文献1及び2)。非特許文献2には、図1に示すようなリグナン骨格を有する化合物が記載されている。
【0004】
成人T細胞白血病(Adult T−cell Leukemia:以下、ATLという)は、細胞性免疫担当細胞であるT細胞がHTLV−1というウイルスに侵されてガン化する白血病のことであり、T細胞がガン化したATL細胞の一部は花びらのような形状をした核を有し、「花細胞」と呼ばれている。感染経路としては、母乳、胎盤、産道を介した垂直感染、及び、性交、輸血、臓器移植を介した水平感染等が挙げられる。ATLの発症までの潜伏期間は40〜60年であり、成人期以降に水平感染した人からは、ATLの発症はほとんど見られない。HTLV−1ウイルスのキャリアは日本で120万人、世界では1000万〜2000万人とされており、日本では九州・沖縄地方に多いという特徴をもつ。発症すると、白血球数の増加、リンパ節腫脹、肝臓や脾臓の腫大、皮膚紅斑や皮下腫瘤等の皮膚病変、下痢や腹痛等の消化器症状がしばしばみられる。また病勢の悪化によって血液中のカルシウム値が上昇(高カルシウム血症)すると、全身の倦怠感、意識障害等の症状を引き起こす。さらに免疫能の低下により感染症にかかりやすくなり、真菌、原虫、寄生虫及びウイルス等による日和見感染症を高頻度に合併する。ATL細胞は抗ガン剤が効きにくく、また寛解が得られたとしても、再発率が高い。このため、従来の治療法ではきわめて難治性であるため有効な治療薬の探索が求められている。
【0005】
非特許文献3には、リグナン類に属する化合物であるエトポシド(etoposide)(VP−16):
【化1】
が記載されている。エトポシドはメギ科の植物ポドフィルム(Podophyllum peltatum)から単離されたポドフィロトキシン(podophyllotoxin)を原料に合成された。エトポシドはトポイソメラーゼ阻害作用を有し、肺小細胞ガン、悪性リンパ腫、子宮頚ガン、急性白血病、精巣腫瘍、膀胱ガン及び絨毛性疾患等に対する薬として用いられている。また、エトポシドはATLの治療にも用いられているが、エトポシド以外のリグナン類に属する化合物についてはATL細胞に対して抗腫瘍活性があるという報告は現在までにない。
【0006】
また特許文献1には、キク科植物ベニバナボロギクからの抽出物がATL細胞に対して抗腫瘍活性を有することが記載されている。
【0007】
しかしながら、シソ科植物ヒプティス・ヴェルチシラータ由来の化合物又は抽出物がATL細胞に対して抗腫瘍活性を有することはこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−105960号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】秋久俊博ほか;「資源天然物化学」、共立出版、128−132頁
【非特許文献2】M. Novelo et al. J.Nat.Prod., 1993, 56, 1728−1736
【非特許文献3】B. Konuklugil, Chem. Nat. Compd., 2005, 41, 306-307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、極めて効果の高い抗腫瘍剤、特に難治性のATLをはじめとする多種の白血病、リンパ腫及び固形癌に対して極めて高い効果を有する抗腫瘍剤並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、シソ科植物ヒプティス・ヴェルチシラータ由来の化合物及び組成物が高い抗腫瘍活性を有することを見出した。
【0012】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)一般式(I):
【化2】
【0013】
[式中、
R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基、メチレンジオキシ基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1個の基により置換されているフェニル基であり;
R2は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基、アニリノ基、及び、以下:
【化3】
から選択され;
R3は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択され;
R4は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される]
で示される化合物(ただし、式(D):
【化4】
で示される化合物を除く)。
(2)R3が、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される、上記(1)に記載の化合物。
(3)式(A):
【化5】
で示される、上記(1)又は(2)に記載の化合物。
(4)上記(3)に記載の化合物を含有するヒプティス・ヴェルチシラータ(Hyptis verticillata)由来の組成物。
(5)前記組成物が式(B):
【化6】
で示される化合物;
式(C):
【化7】
で示される化合物;
式(D):
【化8】
で示される化合物;及び
式(E):
【化9】
で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、上記(4)に記載の組成物。
(6)前記組成物がヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物又はその処理物である、上記(4)又は(5)に記載の組成物。
(7)ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物をエーテルと水で分配して得られたエーテル層を85〜95%メタノール水溶液とヘキサンで分配した場合の前記メタノール水溶液抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより処理して得られる組成物。
(8)シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、上記(7)に記載の組成物。
(9)シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の40%〜50%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、上記(7)に記載の組成物。
(10)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化合物、又は上記(4)〜(9)のいずれかに記載の組成物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
(11)成人T細胞白血病治療剤である、上記(10)に記載の抗腫瘍剤。
(12)薬剤耐性を有する患者に投与するための、上記(10)又は(11)に記載の抗腫瘍剤。
(13)医薬品である、上記(10)〜(12)いずれかに記載の抗腫瘍剤。
(14)食品に添加するための、上記(10)〜(12)のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
(15)ヒプティス・ヴェルチシラータを抽出し、得られた抽出物を精製することを特徴とする、式(A):
【化10】
で示される化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、極めて効果の高い抗腫瘍剤、特に難治性のATLをはじめとする多種の白血病、リンパ腫及び固形癌に対して極めて高い効果を有する抗腫瘍剤並びにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、過去にヒプティス・ヴェルチシラータから単離された化合物を示す図である。
【図2】図2は、ヒプティス・ヴェルチシラータからの抽出スキームを示す図である。
【図3】図3は、ヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物の精製スキーム及び当該抽出物からの化合物(A)−(E)の単離スキームを示す図である。
【図4】図4は、化合物(A)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を示す図である。
【図5】図5は、化合物(A)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図6】図6は、化合物(A)の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図7】図7は、化合物(B)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を示す図である。
【図8】図8は、化合物(C)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を示す図である。
【図9】図9は、化合物(D)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を示す図である。
【図10】図10は、化合物(E)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を示す図である。
【図11】図11は、化合物(A)の癌細胞株に対する細胞障害活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の化合物は、一般式(I):
【化11】
[式中、
R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基、メチレンジオキシ基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1個の基により置換されているフェニル基であり;
R2は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基、アニリノ基、及び、以下:
【化12】
から選択され;
R3は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択され;
R4は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される]
で示される構造を有する(ただし、式(D):
【化13】
で示される化合物を除く)。
【0017】
本発明の式(I)の化合物は、1位における絶対配置はR体及びS体のいずれであってもよく、またラセミ体であってもよい。好ましい絶対配置はR体である。また、式(I)の化合物は、2〜3位に二重結合があるという点でエトポシドと異なる。さらに、式(I)の化合物は、5位の置換基、ラクトン環の向きが上記エトポシドと異なる。
【0018】
R1は、好ましくは、以下:
【化14】
から選択される。
【0019】
R2は、水素原子、ヒドロキシル基又はメトキシ基であることが好ましい。
R3は、水素原子、メトキシ基又はヒドロキシル基であることが好ましく、メトキシ基又はヒドロキシル基であることが特に好ましい。
R4は、水素原子であることが好ましい。
【0020】
本発明の式(I)の化合物は、極めて効果の高い抗腫瘍活性を有し、特に難治性のATLをはじめとする多種の白血病、リンパ腫及び固形癌に対して極めて高い効果を有する。
【0021】
本発明の組成物は、式(I)の化合物を有効成分として含有する。
【0022】
本発明の化合物は、特に好ましくは、式(A):
【化15】
で示される構造を有する。化合物(A)の1位における絶対配置はR体及びS体のいずれであってもよく、またラセミ体であってもよい。好ましい化合物(A)の絶対配置はR体である。また、化合物(A)は、2〜3位に二重結合があるという点、配糖体でないという点でATL細胞に対する抗腫瘍活性が報告されているエトポシドと異なる。さらに、化合物(A)は、4’位及び5位の置換基、ラクトン環の向きが上記エトポシドと異なる。
【0023】
本発明の組成物は、シソ科イガニガクサ属のヒプティス・ヴェルチシラータに由来する。用いるヒプティス・ヴェルチシラータの部分は、特に限定されず、全ての植物体を使用できるが、葉及び茎等を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物は化合物(A)を含有することが好ましい。
本発明の組成物は化合物(B)−(E)から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、化合物(A)と化合物(B)−(E)から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、ヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物(以下、抽出物という)又はその処理物(以下、処理物という)であることが好ましい。処理物とは、抽出物に分離、精製、単離等の各種処理の少なくとも1つを施したものである。
【0027】
抽出溶媒としては、水;脂肪族炭化水素類、例えばヘキサン;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール;エステル類、例えば酢酸エチル等の酢酸エステル;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等が挙げられる。抽出物を一旦溶媒除去して乾燥物として用いる場合には、前述した任意の溶媒を単独で又は混合して用いることができる。一方、抽出物を溶媒に溶解した状態で用いる場合には、人体に対して有害な作用を示さない溶媒を用いる必要があり、この場合には、水、エタノール又はこれらの混合物を用いることが好ましい。抽出に際して、ヒプティス・ヴェルチシラータは、そのまま用いることができ、また乾燥後に破砕又は粉砕して溶媒との接触を高めることもできる。
【0028】
本発明の抽出物は、ヒプティス・ヴェルチシラータ1kg当たり、好ましくは5〜30L、特に好ましくは10〜15Lの抽出溶媒で抽出することができる。抽出温度は、好ましくは室温ないし加圧下での沸点の範囲内であり、抽出時間は、抽出温度等により異なるが、好ましくは24〜60時間であり、特に好ましくは36〜48時間である。
【0029】
このようにして得られた抽出液は、必要に応じて、布、ステンレスフィルター、濾紙、濾過滅菌用フィルター等で濾過して不溶物、不純物等を除去してもよい。また、濾過後の抽出液に、スプレードライ処理、フリーズドライ処理、超臨界処理等の処理を施してもよい。
【0030】
このようにして得られた抽出物又はその処理物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、吸着・逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、透析等の各種精製手段により処理し、さらに活性を高めた処理物としてもよい。
【0031】
本発明の抽出物としては、例えば、ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物、これをエーテルと水で分配して得られたエーテル層を85〜95%、好ましくは90%メタノール水溶液とヘキサンで分配した場合のメタノール水溶液抽出物等が挙げられる。
【0032】
本発明の処理物としては、例えば、上記抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(例えば移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチル、塩化メチレン/メタノール/水及びメタノールを順次用いる)を用いて分取した溶出画分、好ましくは60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分が挙げられる。
【0033】
本発明の処理物としては、上記溶出画分をさらに、例えばHPLC(例えばCosmosil 5C18−MS−II、φ4.6×250mm、φ10×250mm、例えば移動相として51%メタノール/水、50%メタノール/水を用いる)を用いて分取した溶出画分が挙げられる。
【0034】
本発明の処理物としては、上記60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分をさらに、例えばHPLC(例えばCosmosil 5C18−AR、φ10×250mm、例えば移動相として50%メタノール/水を用いる)を用いて分取した溶出画分が挙げられる。本発明の化合物(A)及び(C)は、これらの溶出画分から得られる。本発明の化合物(B)、(D)及び(E)は、これらの溶出画分を例えばHPLC(例えばCosmosil 5C18−MS−II、φ4.6×250mm、φ10×250mm、例えば移動相として30%アセトニトリル/水、43%メタノール/水)を用いて精製した場合に得られる。
【0035】
本発明の式(I)の化合物又は化合物(B)〜(E)は、合成により製造してもよい。本発明の化合物は、リグナン類の合成法についての総説Eur. J. Org. Chem., 2007, 3815-3828の記載に基づき合成することができる。
【0036】
本発明の組成物は、本発明の式(I)の化合物を、組成物全量を100質量部として、好ましくは0.01〜0.02質量部、特に好ましくは0.015〜0.017質量部含有する。
【0037】
本発明の組成物は、そのまま本発明の抗腫瘍剤の有効成分として使用することができる。本発明の抗腫瘍剤は医薬品であってもよく、食品に添加されてもよい。
【0038】
本発明において、「腫瘍」には固形腫瘍及び造血器腫瘍が含まれる。ここで、固形腫瘍は、例えば、脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、胆のう・胆管癌、肝癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、卵巣癌、絨毛上皮癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎盂・尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、睾丸癌、胎児性癌、ウイルス腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、ユーイング腫、軟部肉腫等であり、好ましくは非小細胞肺癌、結腸癌である。一方、造血器腫瘍は、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(HCL)、成人T細胞白血病(ATL)等の白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(例えばB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫等)等のリンパ腫、多発性骨髄腫等であり、好ましくは急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性前骨髄球性白血病(APL)、成人T細胞白血病(ATL)であり、特に好ましくは成人T細胞白血病(ATL)である。
【0039】
さらに、本発明の抗腫瘍剤は、薬剤耐性を有する腫瘍細胞に対しても抗腫瘍活性を有する。上記薬剤耐性に関与する遺伝子としては、MRP−1、P−糖蛋白質遺伝子、BCRP等が挙げられる。このように、本発明の抗腫瘍剤は、従来の抗癌剤に対して耐性を獲得した癌患者に対しても治療効果が期待できる。
【0040】
本発明の抗腫瘍剤は、公知の食品用担体又は医薬用担体と組合せて製剤化することができる。投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤として使用される。また、本発明の抗腫瘍剤は、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として使用してもよい。また、本発明の抗腫瘍剤は、食品、チューインガム、飲料等に添加して、いわゆる特定保健用食品(例えば、癌予防食品)等とすることもできる。
【0041】
本発明の抗腫瘍剤の投与量は、患者の年令、体重、疾患の程度、投与経路により異なるが、経口投与では、本発明の式(I)の化合物の乾燥粉末として、通常1日1〜10mgであり、投与回数は、通常、経口投与では1日1〜3回である。
【0042】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。
【0043】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0044】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0045】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0046】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。
【0047】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0048】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0049】
また、本発明の抗腫瘍剤は、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
1.ヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物、その処理物の調製及び化合物(A)−(E)の単離
ATL患者由来の白血病細胞株S1T細胞に対する抗腫瘍活性を指標として行った。抗腫瘍活性は、下記3に示す方法で測定した。
【0052】
ヒプティス・ヴェルチシラータ(被子植物門 双子葉植物網 キク亜綱 シソ目 シソ科 イガニガクサ属)はジャマイカで採取された。
【0053】
ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物(S1T細胞に対するIC50値0.1μg/mL)をエーテルと水で二層分配した。エーテル可溶部(IC50値0.125μg/mL)をさらに90%メタノール水溶液とヘキサンで分配し、得られた90%メタノール水溶液可溶部(IC50値0.03μg/mL)を減圧濃縮した。この抽出スキームを図2に示す。
【0054】
90%メタノール水溶液可溶部(1.07g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:5%酢酸エチル/ヘキサン−100%酢酸エチル(画分1〜18)、塩化メチレン:メタノール:水=7:3:0.5(画分19)、100%メタノール(画分20)を用いて分取した。
【0055】
60%酢酸エチル/ヘキサンで溶出した9番目の画分53.2mg(IC50値3ng/mL)をさらにHPLC(Cosmosil 5C18−AR、φ10×250mm、移動相:50%メタノール/水、18画分)を用いて分取した。得られた6番目の画分からさらにHPLC(Cosmosil 5C18−MS−II、φ4.6×250mm、移動相:30%アセトニトリル/水)を用いて化合物(B)1.6mg(IC50値2.5ng/mL)を、10番目の画分から化合物(C)2.2mg(IC50値22ng/mL)を単離した。また、12番目の画分からHPLC(Cosmosil 5C18−MS−II、φ10×250mm、移動相:43%メタノール/水)を用いて化合物(D)0.5mg(IC50値0.15ng/mL)と、化合物(E)1.3mg(IC50値15.0ng/mL)をそれぞれ単離した。さらに17番目の画分から化合物(A)1.7mg(IC50値3.0ng/mL)を単離した。
【0056】
40%〜50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出した5番目の画分66.1mg(IC50値0.35μg/mL;シリカゲルTLC(50%酢酸エチル/ヘキサン)のRf値約0.4)をさらにHPLC(Cosmosil 5C18−AR、φ10×250mm、移動相:51%メタノール/水、9画分)を用いて分取した。4番目の画分(IC50値0.25ng/mL;保持時間約80分)及び7番目の画分(IC50値0.25ng/mL;保持時間約140分)を得た。
上記精製、単離スキームを図3に示す。
【0057】
2.構造決定
化合物(A)は、不定形で黄色がかった固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量426であり、分子式C23H22O8であった。また、1H NMRスペクトルによる解析から、リグナン骨格を示していることが分かった。さらに、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルを含めた解析により、化合物(A)が、4−メトキシ−9−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−8,9−ジヒドロフロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d][1,3]ジオキソール−6(5H)−オンであると同定した。化合物(A)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を図4に示す。また、化合物(A)の1H NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを、それぞれ図5及び6に示す。化合物(A)は、現在までに単離された報告はなく、今回初めて単離された化合物であった。
【0058】
化合物(B)は、不定形無色の固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量414であり、分子式C22H22O8であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、B.Konuklugil,Chem.Nat.Compd.,2005,41,306−307及びD. E. Jackson and P. M. Dewick, Phytochemistry, 1984, 23, 1147−1152との比較により、化合物(B)がβ−ペルタチン(β−peltatin)((5R)−5,8,8aβ,β−テトラヒドロ−10−ヒドロキシ−5−(3,4,5−トリメトキシフェニル)フロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−[1,3]−ジオキソール−6(5aαH)−オン)であると同定した。化合物(B)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を図7に示す。
【0059】
化合物(C)は、不定形で黄色がかった固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量384であり、分子式C21H20O7であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、D. E. Jackson and P. M. Dewick, Phytochemistry, 1984, 23, 1147−1152との比較により、化合物(C)が4’−デメチルデスオキシポドフィロトキシン(4’−demethyldesoxypodpphyllotoxin)((5R)−5β−[3,4,5−トリメトキシフェニル]−5aα-ヒドロキシ-5,8,8aβ,9−テトラヒドロフロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−1,3−ジオキソール-6(5aH)-オン))であると同定した。化合物(C)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を図8に示す。
【0060】
化合物(D)は、不定形無色の固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量396であり、分子式C22H20O7であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、M. Kuhnt et al, Phytochemistry, 1994,36,485−489との比較により、化合物(D)がヒプチニン(hyptinin)(9α−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−5,9−ジヒドロフロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−[1,3]−ジオキソール−6(8H)−オン)であると同定した。化合物(D)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を図9に示す。
【0061】
化合物(E)は、不定形無色の固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量398であり、分子式C22H22O7であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、Y. Inamori et al. Chem. Pharm. Bull., 1985, 33, 704−709との比較により、化合物(E)がデオキシピクロポドフィリン(Deoxypicropodophyllin)((5R)−5,8,8aβ,9−テトラヒドロ−5β−(3,4,5−トリメトキシフェニル)フロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−[1,3]−ジオキソール−6(5aβH)−オン)であると同定した。化合物(E)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を図10に示す。
【0062】
3.抗腫瘍活性の測定
抗腫瘍活性は、ATL細胞株であるS1T細胞に対する細胞障害性をWST法で測定することにより行った。
【0063】
RPMI−1640 10%FCS培養液を用いて、96穴平底マルチプレートにS1T細胞1×104/100μL/ウェルと10倍希釈系列の分画液(100μL/ウェル)を入れ、72時間37℃、5%CO2存在下で培養した。
【0064】
最後の4時間、テトラゾリウム塩WST−8試薬を20μL/ウェル添加し、培養を継続した。次いで450nmの吸光度を測定した。細胞生存率はコントロール群を100%として、各濃度分画液のコントロールに対する割合で評価した。抗腫瘍活性の表現として、50%の細胞障害作用を引き起こす化合物の濃度をIC50とした。IC50はμg/mL及びnMで表した。
【0065】
化合物(A)について、上記抗腫瘍活性試験を行った結果を表1及び図11に示す。白血病細胞株であるK3T(ATL細胞)、Jurkat(急性リンパ性白血病細胞)、HL60及びK562(骨髄性白血病細胞)、並びにA549(肺癌細胞)及びSW480(結腸癌細胞)に対する細胞障害性についてもS1T細胞と同様に測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
さらに、化合物(A)について、S1T(ATL細胞)及びActT(活性化T細胞)に対して抗腫瘍活性試験を行った結果を表2に示す。抗腫瘍活性試験は細胞障害性をWST法で測定することにより行った。96穴マルチプレートを用いて化合物(A)を最終濃度10μg/mLから10倍希釈系列で希釈し、それにS1T細胞又はActT細胞1×105/ウェルを添加し、37℃、5%CO2の条件で72時間培養し、上記と同様にWST法で発色させ細胞障害活性を測定した。50%細胞障害作用を引き起こす濃度をIC50とした。
【0068】
【表2】
【0069】
表2より、化合物(A)は、ATL細胞であるS1Tに対し、ActTの12倍の抗腫瘍活性を有することがわかる。
【0070】
以上より、本発明の化合物(A)は、癌細胞、特に白血病細胞であるATL細胞に対して非常に高い抗腫瘍活性を有することがわかった。
【0071】
4.薬剤耐性細胞株に対する抗腫瘍活性の測定
薬剤耐性細胞株に対して化合物(A)、エトポシド及びミトキサントロンの抗腫瘍活性試験を行った結果を表3に示す。薬剤耐性細胞としては、類上皮癌KB3−1とそれに薬剤耐性遺伝子MRP−1を移入した細胞KB/MRP、同様に薬剤耐性遺伝子P−糖蛋白質遺伝子を移入したKB−G2、骨髄性白血病細胞株K562とそれに薬剤耐性遺伝子BCRPを移入したK562/BCRPを用いた。MRP−1、P−糖蛋白質遺伝子及びBCRPはいずれも、多種類の抗癌剤耐性に関与している。MRP−1とP−糖蛋白質の遺伝子移入株についてはエトポシドをコントロール薬剤として用い、BCRP移入株においてはミトキサントロンをコントロール薬剤として用いた。抗腫瘍活性試験は細胞障害性をWST法で測定することにより行った。
【0072】
RPMI−1640 10%FCS培養液を用いて、96穴平底マルチプレートに各細胞1×104/100μL/ウェルと10倍希釈系列の分画液(100μL/ウェル)を入れ、72時間37℃、5%CO2存在下で培養した。
【0073】
テトラゾリウム塩WST−8試薬を20μL/ウェル添加し、同条件で4時間培養した後、450nmの吸光度を測定した。細胞生存率はコントロール群を100%として、各濃度分画液のコントロールに対する割合で評価した。50%細胞障害作用を引き起こす濃度をIC50とした。
【0074】
【表3】
【0075】
KB/MRP細胞はKB3−1に比べて、エトポシドに対し28.6倍の薬剤耐性を示すが、化合物(A)に対しては1.17倍の薬剤耐性を示すに過ぎない。KB−G2細胞はKB3−1に比べて、エトポシドに対して20.8倍の薬剤耐性を示すが、化合物(A)に対しては耐性を全く示さない。K562/BCRP細胞はK562に比べて、ミトキサントロンに対して約15倍の薬剤耐性を示すが、化合物(A)に対しては約1.9倍という極めて低い薬剤耐性を示すに過ぎない。
【0076】
以上より、化合物(A)は、多剤耐性遺伝子である、MRP−1、P−糖蛋白質遺伝子及びBCRPの関与する薬剤耐性を超えて、癌細胞株に作用することが明らかとなった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍剤及びその製造方法に関する。特に、本発明は、シソ科植物ヒプティス・ヴェルチシラータ(Hyptis verticillata)由来の抗腫瘍剤及びその製造方法に関する。具体的には、ヒプティス・ヴェルチシラータ由来の化合物及び組成物を有効成分として含有する抗腫瘍剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シソ科植物であるヒプティス・ヴェルチシラータは熱帯アメリカ原産で、南北アメリカの熱帯から亜熱帯地方に生息している。メキシコでは、一般に「hierba maltina」と呼ばれているこの植物の葉は、経口的に頭痛、胃痛及び消化器疾患等の薬として用いられている。また、この植物全体を煮詰めたものは、虫刺され、リウマチ及び皮膚感染症等の塗り薬として用いられており、さらに、駆虫剤や下剤としても広く用いられている。
【0003】
ヒプティス・ヴェルチシラータからは、過去の研究により、多くのリグナン骨格を有する化合物が単離されている(非特許文献1及び2)。非特許文献2には、図1に示すようなリグナン骨格を有する化合物が記載されている。
【0004】
成人T細胞白血病(Adult T−cell Leukemia:以下、ATLという)は、細胞性免疫担当細胞であるT細胞がHTLV−1というウイルスに侵されてガン化する白血病のことであり、T細胞がガン化したATL細胞の一部は花びらのような形状をした核を有し、「花細胞」と呼ばれている。感染経路としては、母乳、胎盤、産道を介した垂直感染、及び、性交、輸血、臓器移植を介した水平感染等が挙げられる。ATLの発症までの潜伏期間は40〜60年であり、成人期以降に水平感染した人からは、ATLの発症はほとんど見られない。HTLV−1ウイルスのキャリアは日本で120万人、世界では1000万〜2000万人とされており、日本では九州・沖縄地方に多いという特徴をもつ。発症すると、白血球数の増加、リンパ節腫脹、肝臓や脾臓の腫大、皮膚紅斑や皮下腫瘤等の皮膚病変、下痢や腹痛等の消化器症状がしばしばみられる。また病勢の悪化によって血液中のカルシウム値が上昇(高カルシウム血症)すると、全身の倦怠感、意識障害等の症状を引き起こす。さらに免疫能の低下により感染症にかかりやすくなり、真菌、原虫、寄生虫及びウイルス等による日和見感染症を高頻度に合併する。ATL細胞は抗ガン剤が効きにくく、また寛解が得られたとしても、再発率が高い。このため、従来の治療法ではきわめて難治性であるため有効な治療薬の探索が求められている。
【0005】
非特許文献3には、リグナン類に属する化合物であるエトポシド(etoposide)(VP−16):
【化1】
が記載されている。エトポシドはメギ科の植物ポドフィルム(Podophyllum peltatum)から単離されたポドフィロトキシン(podophyllotoxin)を原料に合成された。エトポシドはトポイソメラーゼ阻害作用を有し、肺小細胞ガン、悪性リンパ腫、子宮頚ガン、急性白血病、精巣腫瘍、膀胱ガン及び絨毛性疾患等に対する薬として用いられている。また、エトポシドはATLの治療にも用いられているが、エトポシド以外のリグナン類に属する化合物についてはATL細胞に対して抗腫瘍活性があるという報告は現在までにない。
【0006】
また特許文献1には、キク科植物ベニバナボロギクからの抽出物がATL細胞に対して抗腫瘍活性を有することが記載されている。
【0007】
しかしながら、シソ科植物ヒプティス・ヴェルチシラータ由来の化合物又は抽出物がATL細胞に対して抗腫瘍活性を有することはこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−105960号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】秋久俊博ほか;「資源天然物化学」、共立出版、128−132頁
【非特許文献2】M. Novelo et al. J.Nat.Prod., 1993, 56, 1728−1736
【非特許文献3】B. Konuklugil, Chem. Nat. Compd., 2005, 41, 306-307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、極めて効果の高い抗腫瘍剤、特に難治性のATLをはじめとする多種の白血病、リンパ腫及び固形癌に対して極めて高い効果を有する抗腫瘍剤並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、シソ科植物ヒプティス・ヴェルチシラータ由来の化合物及び組成物が高い抗腫瘍活性を有することを見出した。
【0012】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)一般式(I):
【化2】
【0013】
[式中、
R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基、メチレンジオキシ基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1個の基により置換されているフェニル基であり;
R2は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基、アニリノ基、及び、以下:
【化3】
から選択され;
R3は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択され;
R4は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される]
で示される化合物(ただし、式(D):
【化4】
で示される化合物を除く)。
(2)R3が、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される、上記(1)に記載の化合物。
(3)式(A):
【化5】
で示される、上記(1)又は(2)に記載の化合物。
(4)上記(3)に記載の化合物を含有するヒプティス・ヴェルチシラータ(Hyptis verticillata)由来の組成物。
(5)前記組成物が式(B):
【化6】
で示される化合物;
式(C):
【化7】
で示される化合物;
式(D):
【化8】
で示される化合物;及び
式(E):
【化9】
で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、上記(4)に記載の組成物。
(6)前記組成物がヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物又はその処理物である、上記(4)又は(5)に記載の組成物。
(7)ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物をエーテルと水で分配して得られたエーテル層を85〜95%メタノール水溶液とヘキサンで分配した場合の前記メタノール水溶液抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより処理して得られる組成物。
(8)シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、上記(7)に記載の組成物。
(9)シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の40%〜50%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、上記(7)に記載の組成物。
(10)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化合物、又は上記(4)〜(9)のいずれかに記載の組成物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
(11)成人T細胞白血病治療剤である、上記(10)に記載の抗腫瘍剤。
(12)薬剤耐性を有する患者に投与するための、上記(10)又は(11)に記載の抗腫瘍剤。
(13)医薬品である、上記(10)〜(12)いずれかに記載の抗腫瘍剤。
(14)食品に添加するための、上記(10)〜(12)のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
(15)ヒプティス・ヴェルチシラータを抽出し、得られた抽出物を精製することを特徴とする、式(A):
【化10】
で示される化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、極めて効果の高い抗腫瘍剤、特に難治性のATLをはじめとする多種の白血病、リンパ腫及び固形癌に対して極めて高い効果を有する抗腫瘍剤並びにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、過去にヒプティス・ヴェルチシラータから単離された化合物を示す図である。
【図2】図2は、ヒプティス・ヴェルチシラータからの抽出スキームを示す図である。
【図3】図3は、ヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物の精製スキーム及び当該抽出物からの化合物(A)−(E)の単離スキームを示す図である。
【図4】図4は、化合物(A)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を示す図である。
【図5】図5は、化合物(A)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図6】図6は、化合物(A)の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図7】図7は、化合物(B)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を示す図である。
【図8】図8は、化合物(C)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を示す図である。
【図9】図9は、化合物(D)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を示す図である。
【図10】図10は、化合物(E)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を示す図である。
【図11】図11は、化合物(A)の癌細胞株に対する細胞障害活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の化合物は、一般式(I):
【化11】
[式中、
R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基、メチレンジオキシ基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1個の基により置換されているフェニル基であり;
R2は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基、アニリノ基、及び、以下:
【化12】
から選択され;
R3は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択され;
R4は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される]
で示される構造を有する(ただし、式(D):
【化13】
で示される化合物を除く)。
【0017】
本発明の式(I)の化合物は、1位における絶対配置はR体及びS体のいずれであってもよく、またラセミ体であってもよい。好ましい絶対配置はR体である。また、式(I)の化合物は、2〜3位に二重結合があるという点でエトポシドと異なる。さらに、式(I)の化合物は、5位の置換基、ラクトン環の向きが上記エトポシドと異なる。
【0018】
R1は、好ましくは、以下:
【化14】
から選択される。
【0019】
R2は、水素原子、ヒドロキシル基又はメトキシ基であることが好ましい。
R3は、水素原子、メトキシ基又はヒドロキシル基であることが好ましく、メトキシ基又はヒドロキシル基であることが特に好ましい。
R4は、水素原子であることが好ましい。
【0020】
本発明の式(I)の化合物は、極めて効果の高い抗腫瘍活性を有し、特に難治性のATLをはじめとする多種の白血病、リンパ腫及び固形癌に対して極めて高い効果を有する。
【0021】
本発明の組成物は、式(I)の化合物を有効成分として含有する。
【0022】
本発明の化合物は、特に好ましくは、式(A):
【化15】
で示される構造を有する。化合物(A)の1位における絶対配置はR体及びS体のいずれであってもよく、またラセミ体であってもよい。好ましい化合物(A)の絶対配置はR体である。また、化合物(A)は、2〜3位に二重結合があるという点、配糖体でないという点でATL細胞に対する抗腫瘍活性が報告されているエトポシドと異なる。さらに、化合物(A)は、4’位及び5位の置換基、ラクトン環の向きが上記エトポシドと異なる。
【0023】
本発明の組成物は、シソ科イガニガクサ属のヒプティス・ヴェルチシラータに由来する。用いるヒプティス・ヴェルチシラータの部分は、特に限定されず、全ての植物体を使用できるが、葉及び茎等を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物は化合物(A)を含有することが好ましい。
本発明の組成物は化合物(B)−(E)から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、化合物(A)と化合物(B)−(E)から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、ヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物(以下、抽出物という)又はその処理物(以下、処理物という)であることが好ましい。処理物とは、抽出物に分離、精製、単離等の各種処理の少なくとも1つを施したものである。
【0027】
抽出溶媒としては、水;脂肪族炭化水素類、例えばヘキサン;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール;エステル類、例えば酢酸エチル等の酢酸エステル;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等が挙げられる。抽出物を一旦溶媒除去して乾燥物として用いる場合には、前述した任意の溶媒を単独で又は混合して用いることができる。一方、抽出物を溶媒に溶解した状態で用いる場合には、人体に対して有害な作用を示さない溶媒を用いる必要があり、この場合には、水、エタノール又はこれらの混合物を用いることが好ましい。抽出に際して、ヒプティス・ヴェルチシラータは、そのまま用いることができ、また乾燥後に破砕又は粉砕して溶媒との接触を高めることもできる。
【0028】
本発明の抽出物は、ヒプティス・ヴェルチシラータ1kg当たり、好ましくは5〜30L、特に好ましくは10〜15Lの抽出溶媒で抽出することができる。抽出温度は、好ましくは室温ないし加圧下での沸点の範囲内であり、抽出時間は、抽出温度等により異なるが、好ましくは24〜60時間であり、特に好ましくは36〜48時間である。
【0029】
このようにして得られた抽出液は、必要に応じて、布、ステンレスフィルター、濾紙、濾過滅菌用フィルター等で濾過して不溶物、不純物等を除去してもよい。また、濾過後の抽出液に、スプレードライ処理、フリーズドライ処理、超臨界処理等の処理を施してもよい。
【0030】
このようにして得られた抽出物又はその処理物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、吸着・逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、透析等の各種精製手段により処理し、さらに活性を高めた処理物としてもよい。
【0031】
本発明の抽出物としては、例えば、ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物、これをエーテルと水で分配して得られたエーテル層を85〜95%、好ましくは90%メタノール水溶液とヘキサンで分配した場合のメタノール水溶液抽出物等が挙げられる。
【0032】
本発明の処理物としては、例えば、上記抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(例えば移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチル、塩化メチレン/メタノール/水及びメタノールを順次用いる)を用いて分取した溶出画分、好ましくは60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分が挙げられる。
【0033】
本発明の処理物としては、上記溶出画分をさらに、例えばHPLC(例えばCosmosil 5C18−MS−II、φ4.6×250mm、φ10×250mm、例えば移動相として51%メタノール/水、50%メタノール/水を用いる)を用いて分取した溶出画分が挙げられる。
【0034】
本発明の処理物としては、上記60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分をさらに、例えばHPLC(例えばCosmosil 5C18−AR、φ10×250mm、例えば移動相として50%メタノール/水を用いる)を用いて分取した溶出画分が挙げられる。本発明の化合物(A)及び(C)は、これらの溶出画分から得られる。本発明の化合物(B)、(D)及び(E)は、これらの溶出画分を例えばHPLC(例えばCosmosil 5C18−MS−II、φ4.6×250mm、φ10×250mm、例えば移動相として30%アセトニトリル/水、43%メタノール/水)を用いて精製した場合に得られる。
【0035】
本発明の式(I)の化合物又は化合物(B)〜(E)は、合成により製造してもよい。本発明の化合物は、リグナン類の合成法についての総説Eur. J. Org. Chem., 2007, 3815-3828の記載に基づき合成することができる。
【0036】
本発明の組成物は、本発明の式(I)の化合物を、組成物全量を100質量部として、好ましくは0.01〜0.02質量部、特に好ましくは0.015〜0.017質量部含有する。
【0037】
本発明の組成物は、そのまま本発明の抗腫瘍剤の有効成分として使用することができる。本発明の抗腫瘍剤は医薬品であってもよく、食品に添加されてもよい。
【0038】
本発明において、「腫瘍」には固形腫瘍及び造血器腫瘍が含まれる。ここで、固形腫瘍は、例えば、脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、胆のう・胆管癌、肝癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、卵巣癌、絨毛上皮癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎盂・尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、睾丸癌、胎児性癌、ウイルス腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、ユーイング腫、軟部肉腫等であり、好ましくは非小細胞肺癌、結腸癌である。一方、造血器腫瘍は、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(HCL)、成人T細胞白血病(ATL)等の白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(例えばB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫等)等のリンパ腫、多発性骨髄腫等であり、好ましくは急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性前骨髄球性白血病(APL)、成人T細胞白血病(ATL)であり、特に好ましくは成人T細胞白血病(ATL)である。
【0039】
さらに、本発明の抗腫瘍剤は、薬剤耐性を有する腫瘍細胞に対しても抗腫瘍活性を有する。上記薬剤耐性に関与する遺伝子としては、MRP−1、P−糖蛋白質遺伝子、BCRP等が挙げられる。このように、本発明の抗腫瘍剤は、従来の抗癌剤に対して耐性を獲得した癌患者に対しても治療効果が期待できる。
【0040】
本発明の抗腫瘍剤は、公知の食品用担体又は医薬用担体と組合せて製剤化することができる。投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤として使用される。また、本発明の抗腫瘍剤は、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として使用してもよい。また、本発明の抗腫瘍剤は、食品、チューインガム、飲料等に添加して、いわゆる特定保健用食品(例えば、癌予防食品)等とすることもできる。
【0041】
本発明の抗腫瘍剤の投与量は、患者の年令、体重、疾患の程度、投与経路により異なるが、経口投与では、本発明の式(I)の化合物の乾燥粉末として、通常1日1〜10mgであり、投与回数は、通常、経口投与では1日1〜3回である。
【0042】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。
【0043】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0044】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0045】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0046】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。
【0047】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0048】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0049】
また、本発明の抗腫瘍剤は、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
1.ヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物、その処理物の調製及び化合物(A)−(E)の単離
ATL患者由来の白血病細胞株S1T細胞に対する抗腫瘍活性を指標として行った。抗腫瘍活性は、下記3に示す方法で測定した。
【0052】
ヒプティス・ヴェルチシラータ(被子植物門 双子葉植物網 キク亜綱 シソ目 シソ科 イガニガクサ属)はジャマイカで採取された。
【0053】
ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物(S1T細胞に対するIC50値0.1μg/mL)をエーテルと水で二層分配した。エーテル可溶部(IC50値0.125μg/mL)をさらに90%メタノール水溶液とヘキサンで分配し、得られた90%メタノール水溶液可溶部(IC50値0.03μg/mL)を減圧濃縮した。この抽出スキームを図2に示す。
【0054】
90%メタノール水溶液可溶部(1.07g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:5%酢酸エチル/ヘキサン−100%酢酸エチル(画分1〜18)、塩化メチレン:メタノール:水=7:3:0.5(画分19)、100%メタノール(画分20)を用いて分取した。
【0055】
60%酢酸エチル/ヘキサンで溶出した9番目の画分53.2mg(IC50値3ng/mL)をさらにHPLC(Cosmosil 5C18−AR、φ10×250mm、移動相:50%メタノール/水、18画分)を用いて分取した。得られた6番目の画分からさらにHPLC(Cosmosil 5C18−MS−II、φ4.6×250mm、移動相:30%アセトニトリル/水)を用いて化合物(B)1.6mg(IC50値2.5ng/mL)を、10番目の画分から化合物(C)2.2mg(IC50値22ng/mL)を単離した。また、12番目の画分からHPLC(Cosmosil 5C18−MS−II、φ10×250mm、移動相:43%メタノール/水)を用いて化合物(D)0.5mg(IC50値0.15ng/mL)と、化合物(E)1.3mg(IC50値15.0ng/mL)をそれぞれ単離した。さらに17番目の画分から化合物(A)1.7mg(IC50値3.0ng/mL)を単離した。
【0056】
40%〜50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出した5番目の画分66.1mg(IC50値0.35μg/mL;シリカゲルTLC(50%酢酸エチル/ヘキサン)のRf値約0.4)をさらにHPLC(Cosmosil 5C18−AR、φ10×250mm、移動相:51%メタノール/水、9画分)を用いて分取した。4番目の画分(IC50値0.25ng/mL;保持時間約80分)及び7番目の画分(IC50値0.25ng/mL;保持時間約140分)を得た。
上記精製、単離スキームを図3に示す。
【0057】
2.構造決定
化合物(A)は、不定形で黄色がかった固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量426であり、分子式C23H22O8であった。また、1H NMRスペクトルによる解析から、リグナン骨格を示していることが分かった。さらに、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルを含めた解析により、化合物(A)が、4−メトキシ−9−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−8,9−ジヒドロフロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d][1,3]ジオキソール−6(5H)−オンであると同定した。化合物(A)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を図4に示す。また、化合物(A)の1H NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルを、それぞれ図5及び6に示す。化合物(A)は、現在までに単離された報告はなく、今回初めて単離された化合物であった。
【0058】
化合物(B)は、不定形無色の固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量414であり、分子式C22H22O8であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、B.Konuklugil,Chem.Nat.Compd.,2005,41,306−307及びD. E. Jackson and P. M. Dewick, Phytochemistry, 1984, 23, 1147−1152との比較により、化合物(B)がβ−ペルタチン(β−peltatin)((5R)−5,8,8aβ,β−テトラヒドロ−10−ヒドロキシ−5−(3,4,5−トリメトキシフェニル)フロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−[1,3]−ジオキソール−6(5aαH)−オン)であると同定した。化合物(B)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を図7に示す。
【0059】
化合物(C)は、不定形で黄色がかった固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量384であり、分子式C21H20O7であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、D. E. Jackson and P. M. Dewick, Phytochemistry, 1984, 23, 1147−1152との比較により、化合物(C)が4’−デメチルデスオキシポドフィロトキシン(4’−demethyldesoxypodpphyllotoxin)((5R)−5β−[3,4,5−トリメトキシフェニル]−5aα-ヒドロキシ-5,8,8aβ,9−テトラヒドロフロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−1,3−ジオキソール-6(5aH)-オン))であると同定した。化合物(C)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を図8に示す。
【0060】
化合物(D)は、不定形無色の固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量396であり、分子式C22H20O7であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、M. Kuhnt et al, Phytochemistry, 1994,36,485−489との比較により、化合物(D)がヒプチニン(hyptinin)(9α−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−5,9−ジヒドロフロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−[1,3]−ジオキソール−6(8H)−オン)であると同定した。化合物(D)の構造及び1H NMRケミカルシフト値(ppm)を図9に示す。
【0061】
化合物(E)は、不定形無色の固体として得られた。FABマススペクトルによる解析から、分子量398であり、分子式C22H22O7であった。さらに、1H NMR、13C NMR、13C DEPT、HMBC、HMQCスペクトルによる構造解析、及び、Y. Inamori et al. Chem. Pharm. Bull., 1985, 33, 704−709との比較により、化合物(E)がデオキシピクロポドフィリン(Deoxypicropodophyllin)((5R)−5,8,8aβ,9−テトラヒドロ−5β−(3,4,5−トリメトキシフェニル)フロ[3’,4’:6,7]ナフト[2,3−d]−[1,3]−ジオキソール−6(5aβH)−オン)であると同定した。化合物(E)の構造及びHMBC相関と1H NMRケミカルシフト値及び13C NMRケミカルシフト値を図10に示す。
【0062】
3.抗腫瘍活性の測定
抗腫瘍活性は、ATL細胞株であるS1T細胞に対する細胞障害性をWST法で測定することにより行った。
【0063】
RPMI−1640 10%FCS培養液を用いて、96穴平底マルチプレートにS1T細胞1×104/100μL/ウェルと10倍希釈系列の分画液(100μL/ウェル)を入れ、72時間37℃、5%CO2存在下で培養した。
【0064】
最後の4時間、テトラゾリウム塩WST−8試薬を20μL/ウェル添加し、培養を継続した。次いで450nmの吸光度を測定した。細胞生存率はコントロール群を100%として、各濃度分画液のコントロールに対する割合で評価した。抗腫瘍活性の表現として、50%の細胞障害作用を引き起こす化合物の濃度をIC50とした。IC50はμg/mL及びnMで表した。
【0065】
化合物(A)について、上記抗腫瘍活性試験を行った結果を表1及び図11に示す。白血病細胞株であるK3T(ATL細胞)、Jurkat(急性リンパ性白血病細胞)、HL60及びK562(骨髄性白血病細胞)、並びにA549(肺癌細胞)及びSW480(結腸癌細胞)に対する細胞障害性についてもS1T細胞と同様に測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
さらに、化合物(A)について、S1T(ATL細胞)及びActT(活性化T細胞)に対して抗腫瘍活性試験を行った結果を表2に示す。抗腫瘍活性試験は細胞障害性をWST法で測定することにより行った。96穴マルチプレートを用いて化合物(A)を最終濃度10μg/mLから10倍希釈系列で希釈し、それにS1T細胞又はActT細胞1×105/ウェルを添加し、37℃、5%CO2の条件で72時間培養し、上記と同様にWST法で発色させ細胞障害活性を測定した。50%細胞障害作用を引き起こす濃度をIC50とした。
【0068】
【表2】
【0069】
表2より、化合物(A)は、ATL細胞であるS1Tに対し、ActTの12倍の抗腫瘍活性を有することがわかる。
【0070】
以上より、本発明の化合物(A)は、癌細胞、特に白血病細胞であるATL細胞に対して非常に高い抗腫瘍活性を有することがわかった。
【0071】
4.薬剤耐性細胞株に対する抗腫瘍活性の測定
薬剤耐性細胞株に対して化合物(A)、エトポシド及びミトキサントロンの抗腫瘍活性試験を行った結果を表3に示す。薬剤耐性細胞としては、類上皮癌KB3−1とそれに薬剤耐性遺伝子MRP−1を移入した細胞KB/MRP、同様に薬剤耐性遺伝子P−糖蛋白質遺伝子を移入したKB−G2、骨髄性白血病細胞株K562とそれに薬剤耐性遺伝子BCRPを移入したK562/BCRPを用いた。MRP−1、P−糖蛋白質遺伝子及びBCRPはいずれも、多種類の抗癌剤耐性に関与している。MRP−1とP−糖蛋白質の遺伝子移入株についてはエトポシドをコントロール薬剤として用い、BCRP移入株においてはミトキサントロンをコントロール薬剤として用いた。抗腫瘍活性試験は細胞障害性をWST法で測定することにより行った。
【0072】
RPMI−1640 10%FCS培養液を用いて、96穴平底マルチプレートに各細胞1×104/100μL/ウェルと10倍希釈系列の分画液(100μL/ウェル)を入れ、72時間37℃、5%CO2存在下で培養した。
【0073】
テトラゾリウム塩WST−8試薬を20μL/ウェル添加し、同条件で4時間培養した後、450nmの吸光度を測定した。細胞生存率はコントロール群を100%として、各濃度分画液のコントロールに対する割合で評価した。50%細胞障害作用を引き起こす濃度をIC50とした。
【0074】
【表3】
【0075】
KB/MRP細胞はKB3−1に比べて、エトポシドに対し28.6倍の薬剤耐性を示すが、化合物(A)に対しては1.17倍の薬剤耐性を示すに過ぎない。KB−G2細胞はKB3−1に比べて、エトポシドに対して20.8倍の薬剤耐性を示すが、化合物(A)に対しては耐性を全く示さない。K562/BCRP細胞はK562に比べて、ミトキサントロンに対して約15倍の薬剤耐性を示すが、化合物(A)に対しては約1.9倍という極めて低い薬剤耐性を示すに過ぎない。
【0076】
以上より、化合物(A)は、多剤耐性遺伝子である、MRP−1、P−糖蛋白質遺伝子及びBCRPの関与する薬剤耐性を超えて、癌細胞株に作用することが明らかとなった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、
R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基、メチレンジオキシ基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1個の基により置換されているフェニル基であり;
R2は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基、アニリノ基、及び、以下:
【化2】
から選択され;
R3は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択され;
R4は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される]
で示される化合物(ただし、式(D):
【化3】
で示される化合物を除く)。
【請求項2】
R3が、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(A):
【化4】
で示される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物を含有するヒプティス・ヴェルチシラータ(Hyptis verticillata)由来の組成物。
【請求項5】
前記組成物が式(B):
【化5】
で示される化合物;
式(C):
【化6】
で示される化合物;
式(D):
【化7】
で示される化合物;及び
式(E):
【化8】
で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物又はその処理物である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物をエーテルと水で分配して得られたエーテル層を85〜95%メタノール水溶液とヘキサンで分配した場合の前記メタノール水溶液抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより処理して得られる組成物。
【請求項8】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の40%〜50%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項4〜9のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
【請求項11】
成人T細胞白血病治療剤である、請求項10に記載の抗腫瘍剤。
【請求項12】
薬剤耐性を有する患者に投与するための、請求項10又は11に記載の抗腫瘍剤。
【請求項13】
医薬品である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項14】
食品に添加するための、請求項10〜12のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項15】
ヒプティス・ヴェルチシラータを抽出し、得られた抽出物を精製することを特徴とする、式(A):
【化9】
で示される化合物の製造方法。
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、
R1は、ヒドロキシル基、メトキシ基、メチレンジオキシ基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1個の基により置換されているフェニル基であり;
R2は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基、アセチル基、アニリノ基、及び、以下:
【化2】
から選択され;
R3は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択され;
R4は、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される]
で示される化合物(ただし、式(D):
【化3】
で示される化合物を除く)。
【請求項2】
R3が、ヒドロキシル基、メトキシ基及びアセチル基から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(A):
【化4】
で示される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物を含有するヒプティス・ヴェルチシラータ(Hyptis verticillata)由来の組成物。
【請求項5】
前記組成物が式(B):
【化5】
で示される化合物;
式(C):
【化6】
で示される化合物;
式(D):
【化7】
で示される化合物;及び
式(E):
【化8】
で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がヒプティス・ヴェルチシラータの抽出物又はその処理物である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
ヒプティス・ヴェルチシラータのメタノール抽出物をエーテルと水で分配して得られたエーテル層を85〜95%メタノール水溶液とヘキサンで分配した場合の前記メタノール水溶液抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより処理して得られる組成物。
【請求項8】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の60%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相として酢酸エチル/ヘキサン−酢酸エチルを用いた場合の40%〜50%酢酸エチル/ヘキサン溶出画分である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項4〜9のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
【請求項11】
成人T細胞白血病治療剤である、請求項10に記載の抗腫瘍剤。
【請求項12】
薬剤耐性を有する患者に投与するための、請求項10又は11に記載の抗腫瘍剤。
【請求項13】
医薬品である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項14】
食品に添加するための、請求項10〜12のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
【請求項15】
ヒプティス・ヴェルチシラータを抽出し、得られた抽出物を精製することを特徴とする、式(A):
【化9】
で示される化合物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−6821(P2013−6821A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258221(P2011−258221)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】
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