抗腫瘍性の薬物、医薬、組成物、およびその使用

本発明は、抗腫瘍活性を有する、配列番号4のアミノ酸配列を含む活性ポリペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、小さいポリペプチドによる癌の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、制御されない細胞の分裂および浸潤による周辺組織への直接的成長によるか、または(癌細胞が血流もしくはリンパ系を通して輸送される)転移を介する遠隔部位への移植によるかのいずれかでこれらの細胞が広がる能力によって特徴付けられる疾患または障害の部類である。癌は、あらゆる年齢の人々に影響を及ぼす可能性があるが、リスクは年齢と共に増大する傾向にある。それは、先進諸国における死亡の主要な原因の1つである。
【0003】
多くの種類の癌がある。症状の重症度は、悪性腫瘍の部位および性格ならびに転移の有無に依存する。ひとたび診断されると、癌は通常、外科手術、化学療法、および放射線治療の組み合わせで治療される。研究が発展するにつれて、治療は、癌病理の種類に対してより特異的になっている。特異的な癌を標的とする薬物が、幾つかの癌について既に存在する。治療されない場合、癌は最終的に病気および死を引き起こす可能性があるが、必ずしもそうなるとは限らない。
【0004】
現在の治療は、例えば、アポトーシスを逃れること、テロメラーゼの過多による無制限の成長能(不死化)、成長因子の自給自足、抗成長因子に対する非感受性、増大した細胞分裂速度、変化した分化する能力、接触阻害の能力がないこと、隣接組織に浸潤する能力、遠隔部位で転移を構築する能力、血管の成長(血管形成)を促進する能力などの、悪性細胞の明確な特性を標的にしている。
【0005】
腫瘍血管形成は、腫瘍の中に入り込んで、栄養物および酸素を供給しかつ老廃物を除去する血管のネットワークの増殖である。腫瘍血管形成は、実際には、癌性腫瘍細胞が周囲の正常な宿主組織にシグナルを送る分子を放出することから始まる。このシグナル伝達によって、宿主組織中のある種の遺伝子が活性化され、その遺伝子によって、今度は、新しい血管の成長を促すタンパク質が作られる。固形腫瘍は、それらの成長に必要な栄養物および酸素を得て、それにより腫瘍が遠隔部位に転移することができる経路を提供するために、新しい血管の形成を刺激しなければならない。
【0006】
実験的証拠により、悪性腫瘍は、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子アルファ(TGF-アルファ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-アルファ)、および多くのその他のものなどの、様々な因子を生成することによって血管形成を誘導することができるということが示唆されている(Liotta et al., 1991, Cell 64: 327-336; Hanahan et al., Cell 86: 353-364)。
【0007】
今日、血管形成を標的とするたくさんの化学療法分子が市場で入手可能である。周知の天然に存在する血管形成インヒビターは、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、血小板因子4、プロラクチン16Kd断片、トロンボスポンジン、 TIMP-I(メタロプロテアーゼ-1の組織インヒビター)、TIMP-2、およびTIMP-3である。これらの分子だけでなく、例えば、コンブレスタチンA4、EMD 121974、TNP-470、スクアラミン、サリドマイド、インターフェロン-アルファ、抗VEGF、抗体などのようなその他の薬物も、化学療法的治療として用いることができる。しかしながら、それらの有効性は決して十分なものではなく、代わりの治療が望ましい。
【0008】
それ故に、増大した有効性を有し、あまり侵襲性がないかまたはあまり毒性がなく、かつ結果的に回復の速度が速まる、腫瘍の治療のための代替的な化学療法剤が必要である。
【発明の概要】
【0009】
本出願人の名の下にある、国際公開第03/080105号は、血管形成の調節に関与する5つの遺伝子を記載している。これらの遺伝子の中で、「タンパク質168A」(本明細書中の配列番号2)をコードする、「遺伝子168」(本明細書中の配列番号1)は、血管形成の活性化に関わると記載されている。特に、国際公開第03/080105号は、タンパク質168Aが、例えば、TNF-αなどの、血管形成促進性因子で刺激された内皮細胞に発現することを開示している。国際公開第03/080105号は、ヒト内皮細胞での、遺伝子168のアンチセンス配列の発現、すなわち、遺伝子168の発現の阻害が、毛細管の形成を阻害するということも開示している。
【0010】
コンピューター内(in silico)での実験により、924個のアミノ酸から構成される、タンパク質168Aが、1つの膜貫通ドメイン、および5つの免疫グロブリン様ドメインを有する可能性があることがさらに明らかにされた。
【0011】
その研究がより深まるにつれて、本発明者らは、タンパク質168Aの様々な断片に対応する、タンパク質168Aの切断型(truncated form)を作り出した。これらの断片の中で、168A-T2は、タンパク質168Aの細胞外ドメインの断片に対応し、本明細書中の配列番号4(108アミノ酸)と同一である。
【0012】
第1の実験で、本発明者らは、タンパク質168A-T2がインビトロでのヒト内皮細胞増殖を用量依存的に阻害し得ることを見出した。
【0013】
その後、第2の実験で、本発明者らは、驚くべきことに、タンパク質168A-T2がインビトロでの毛細管形成を、用量依存的に阻害する強い活性を有し得ることを見出した。
【0014】
本発明者らによって行なわれたその他の実験により、168A-T2がインビトロでの内皮細胞の遊走の、用量依存的な形での阻害を誘導し得ることが示唆された。
【0015】
用量-応答研究の結果により、タンパク質168A-T2が用量依存的にヒト内皮細胞の増殖を阻害し得、かつこの阻害が3.1 μMの濃度で80%より多くに達する可能性があるということがさらに明らかにされた。これは、本組換えタンパク質が、強力な抗血管形成化合物であり、抗VEGF mAbおよび/またはVEGF受容体(KDR)に基づいて確認されたペプチド(Binetruy-Tournaire R et al., Identification of a peptide blocking vascular endothelial growth factor (VEGF)-mediated angiogenesis, EMBO J. 2000; 19: 1525-1533)よりも少なくとも600倍強力であり得ることを示すことになる。
【0016】
毛細管形成、ヒト内皮細胞増殖、およびヒト内皮細胞遊走は、血管形成の3つの必須段階である。従って、168A-T2がインビトロでの毛細管形成、ヒト内皮細胞の増殖および/または遊走を用量依存的に阻害し得るという事実により、タンパク質168Aの切断型の強力な抗血管形成活性の強い証拠がこのように構成された。
【0017】
ネイティブなタンパク質168Aは、血管形成促進性の条件下で、すなわち、TNFαの存在下で好ましく発現され、かつヒト内皮細胞での、遺伝子168のアンチセンスの発現、すなわち、遺伝子168の阻害は、毛細管の形成を阻害するので、これらの結果は全て、全く予期しないものであった。それ故に、タンパク質168Aの切断型が抗血管形成活性を有し得るということは実に驚くべきことであった。
【0018】
さらに驚くべきことに、本発明者らは、タンパク質168A-T2がインビボでの強い抗腫瘍活性を有し、かつ例えばシスプラチンなどのその他の化学療法剤との組み合わせで強い相乗活性を有するということを見出した。
【0019】
本発明者らは、試験物質168A-T2が、担腫瘍ヌードマウスにおいて異なる被験用量で毒性がないことを見出した。その上、168A-T2は、処置の開始の早くも2日後に、ヒト腫瘍に対して強い統計的に有意な抗腫瘍活性を示した。この抗腫瘍活性は、処置期間中ずっと持続した。168A-T2のこの抗腫瘍効果は、単独治療としての現実的な治療的アプローチを示した。その効力も、腫瘍成長を抑制する、細胞毒性のある抗癌薬物CDDP(シスプラチン)と組み合わせた時に強く増強された。他方、シスプラチン単独では、腫瘍成長が根絶されなかった。
【0020】
データは、168A-T2が第1義の抗腫瘍薬剤としてかまたは癌の治療用の第1義の細胞毒性薬剤に対する追加の相乗的治療としてかのいずれかで役立ち得るということを強く示唆した。
【0021】
上述のように、タンパク質168Aが内皮細胞に発現しているということ、および血管形成が国際公開第03/080105号に記載されたように、TNFαなどの血管形成促進性の因子によって刺激された時にその発現が亢進するということが現在証明されている。タンパク質168Aは膜貫通タンパク質であり、血管形成促進性のシグナルの伝達に関わる可能性がある。理論に束縛されることを望まないが、本出願人らは、168Aの切断型が「可溶性受容体機構」を通じてそれらの役割を果たし得る:つまり、168Aの切断型が細胞の表面に可溶性のまま残り得、かつネイティブな168Aタンパク質のリガンドによって認識され得るということを提案する。結果として、168Aの可溶型(本発明の断片)とネイティブな膜貫通タンパク質の間のリガンドの認識における競合、その結果として用量依存的な形での、血管形成促進性シグナルの伝達の減少があり得、それ故に血管形成の阻害およびその後の腫瘍体積の減少が結果的にもたらされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】増加する濃度のタンパク質168A-T2によるインビトロでの内皮細胞増殖の%阻害を表す図表である。
【図2】異なる条件での内皮細胞のインビトロ血管形成の写真である: - 図2a:対照(緩衝液尿素 2 M) - 図2b:168A-T2 3.5 μg/mL(0.2μM) - 図2c:168A-T2 6.9 μg/mL(0.4μM) - 図2d:168A-T2 13.6 μg/mL(0.8μM)
【図3】異なる条件で行なわれた内皮細胞に対する創傷アッセイの写真である: - 図3a:対照(緩衝液尿素 2 M) - 図3b:168A-T2 12 μg/mL(0.7μM) - 図3c:168A-T2 17 μg/mL(1 μM) - 図3d:168A-T3 23 μg/mL(1.35μM)
【図4】増加する濃度のタンパク質168A-T2によるインビトロでの腎腫瘍細胞(Biz)増殖の%阻害を表す図表である。
【図5】増加する濃度のタンパク質168A-T2によるインビトロでの肺腫瘍細胞(Calu-6)増殖の%阻害を表す図表である。
【図6】実施例8に従って処置された異なる群のマウスについての平均腫瘍体積(mm3)対時間(日)を表すグラフである。
【図7】実施例8に従って処置された異なる群のマウスについての平均相対腫瘍体積(単位なし)対時間(日)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
したがって、本発明は、第1の態様において、配列番号3の核酸配列を有するか、もしくは配列番号3の核酸配列と少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の同一性を有する核酸、または少なくとも60個の連続するヌクレオチドを有するその断片、または該核酸が、配列番号1、配列番号21、米国特許第2005/106644号に開示された配列番号58、もしくは配列番号23ではなく、該核酸が抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有するポリペプチドもしくはペプチドをコードするという条件で、該断片の核酸配列と少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の同一性を有する核酸配列に関する。
【0024】
配列番号21は、国際公開第02/081731号に開示された核酸配列
配列番号87に対応する。
【0025】
配列番号23は、国際公開第03/080105号に開示された核酸配列
配列番号28に対応する。
【0026】
好ましい実施態様において、本発明は、核酸配列 配列番号3または実用的な理由からここでは配列番号Xと呼ばれる核酸配列であって、配列番号3と整列させた時に:
a)配列番号3の長さの全体にわたり少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%の同一な残基のパーセンテージ、ならびに、
b)該アミノ酸配列 配列番号Xの長さの全体にわたり少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、およびより好ましくは少なくとも95%の同一な残基のパーセンテージ、
を有する核酸配列、
または少なくとも60個の連続するヌクレオチドを有するその断片に関する。
【0027】
本発明によれば、配列番号3の長さの全体にわたり同一な残基のパーセンテージは、配列番号3における残基の数で割った配列番号Xと配列番号3の間の同一な残基の数に対応する。GenomeQuestデータベースを用いる場合、配列番号3の長さの全体にわたり同一な残基の該パーセンテージは、クエリーパーセンテージ同一性(% idクエリー)に対応し、その場合クエリーは配列番号3である。
【0028】
本発明によれば、配列番号Xの長さの全体にわたり同一な残基のパーセンテージは、配列番号Xにおける残基の数で割った配列番号Xと配列番号3の間の同一な残基の数に対応する。GenomeQuestデータベースを用いる場合、配列番号Xの長さの全体にわたり同一な残基の該パーセンテージは、対象パーセンテージ同一性(% id対象)に対応する。
【0029】
上で使用されたように、「断片」は、少なくとも60個の連続するヌクレオチドを有し、かつ抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有する活性のあるペプチドまたはポリペプチドをコードする、配列番号3の切断された配列を意味する。特定の実施態様において、断片は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号18の核酸配列を有する。別の実施態様において、本発明は、少なくとも60個の連続するヌクレオチドの配列番号3の断片ならびに特に配列番号13、14、15、16、17、または18と整列させた時に
a)配列番号3の該断片の長さの全体にわたり少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%の同一な残基のパーセンテージ、ならびに、
b)該核酸断片の長さの全体にわたり少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%の同一な残基のパーセンテージ、
を有し、
かつ抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有するペプチドをコードする、
核酸断片をも包含する。
【0030】
別の態様において、本発明は、上で定義されたような少なくとも1つの核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0031】
本明細書で使用する場合、「発現ベクター」は、特異的な核酸配列を標的細胞に導入し、発現させるのに用いられる、任意のプラスミドまたは核酸コンストラクトを意味する。
【0032】
本発明はさらに、第3の態様において、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の同一性を有する活性ポリペプチド、または少なくとも20個の連続するアミノ酸を有するその断片、または該ポリペプチドが、配列番号2、配列番号22、もしくは米国公開第2005/106644号に開示された配列番号58にコードされるかもしくは配列番号23によってコードされるポリペプチドではないという条件で、該断片のアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%の同一性を有するペプチドに関する。
【0033】
配列番号22は、国際公開第02/081731号に開示されたアミノ酸配列
配列番号87に対応する。
【0034】
好ましい実施態様において、本発明は、活性ポリペプチド 配列番号4、または配列番号4と整列させた時に、
a)配列番号4の長さの全体にわたり少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%の同一な残基のパーセンテージ、ならびに、
b)該アミノ酸配列 配列番号Yの長さの全体にわたり少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%の同一な残基のパーセンテージ、
を有するアミノ酸配列 配列番号Y、
または少なくとも20個の連続するアミノ酸を有するその断片に関する。
【0035】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」とは、定義された順序で、100個未満のアミノ酸を連結することにより形成される短い分子を意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」とは、定義された順序で、少なくとも100個のアミノ酸を連結することにより形成される分子を意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「活性ポリペプチド」とは、生物学的活性を有するポリペプチドを意味する。本発明において、ポリペプチドは、抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有する。
【0038】
本発明によれば、上記のようなポリペプチドは抗腫瘍活性を有する。
【0039】
本発明によれば、配列番号4の長さの全体にわたり同一な残基のパーセンテージは、配列番号4における残基の数で割った配列番号Yと配列番号4の間の同一な残基の数に対応する。GenomeQuestデータベースを用いる場合、配列番号4の長さの全体にわたり同一な残基の該パーセンテージは、クエリーパーセンテージ同一性(% idクエリー)に対応し、その場合クエリーは配列番号4である。
【0040】
本発明によれば、配列番号Yの長さの全体にわたり同一な残基のパーセンテージは、配列番号Yにおける残基の数で割った配列番号Yと配列番号4の間の同一な残基の数に対応する。GenomeQuestデータベースを用いる場合、配列番号Yの長さの全体にわたり同一な残基の該パーセンテージは、対象パーセンテージ同一性(% id対象)に対応する。
【0041】
本発明によれば、上記のような配列番号4の断片は、配列番号4の切断型に対応し、かつ抗腫瘍活性を有する。該断片は、好ましくは配列番号4の少なくとも20個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を有する。特定の実施態様において、断片は、少なくとも37個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を有する。別の特定の実施態様において、該断片は、配列番号7(90アミノ酸)、配列番号8(77アミノ酸)、配列番号9(66アミノ酸)、配列番号10(51アミノ酸)、配列番号11(37アミノ酸)、または配列番号12(20アミノ酸)のアミノ酸配列を有する。別の実施態様において、本発明は、少なくとも20個の連続するアミノ酸の配列番号4の断片及び特に配列番号7、8、9、10、11、または12の断片と整列させた時に、
a)配列番号4の該断片の長さの全体にわたり少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%の同一な残基のパーセンテージ、ならびに、
b)該ペプチドの長さの全体にわたり少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%の同一な残基のパーセンテージ、
を有し、
かつ抗腫瘍活性を有する、
ペプチドをも包含する。
【0042】
特定の実施態様において、本発明による活性ポリペプチドは、上で定義されたような発現ベクターによって産生される。
【0043】
第4の態様において、本発明は、上記のような少なくとも1つの核酸配列、ベクター、またはポリペプチドを含む医薬に関する。
【0044】
第5の態様において、本発明は、上記のような少なくとも1つの核酸配列、ベクター、またはポリペプチド、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物に関する。
【0045】
第6の態様において、本発明は、ヒトまたは動物の体の癌および/または腫瘍の治療の方法で使用するための、上記のような少なくとも1つの核酸配列、ベクター、またはポリペプチド、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物に関する。
【0046】
特定の実施態様において、上記のような薬学的組成物は、抗血管形成物質または抗腫瘍物質より選択される少なくとも1つの別の活性物質をさらに含む。これらの物質は、当業者によって、達成されるべき効果の点で選ばれてもよい。好ましくは、これらの物質は、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびイリノテカンなどより選択されることができる。
【0047】
第7の態様において、本発明は、有効量の、
- 上記のようなポリペプチド、断片、および/またはペプチド、ならびに、
- シスプラチンおよびカルボプラチンからなる群より選択される白金錯体、
を含む薬学的組成物に関する。
【0048】
本出願人らは、驚くべきことに、本発明によるポリペプチドを白金錯体と組み合わせることが相乗活性を示すことを見出した。
【0049】
「相乗的」に、活性素を組み合わせることの全体的な効果が、各々の活性素を別々に摂取することの効果よりも大きいということが、本発明内で、意味される。
【0050】
本発明の実施に有用な医薬または組成物を公知の従来の経路で哺乳動物に投与する。本明細書に記載された医薬または組成物を、同じ経路で、または異なる経路で投与してもよい。例えば、医薬または組成物を経口的にかまたは非経口的に(静脈内、皮下、筋肉内、髄腔内、腹腔内などに)患者に投与してもよい。
【0051】
非経口的に投与する場合、組成物は、好ましくは、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液)で少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化される。そのような賦形剤は、典型的には、無毒でかつ非治療的である。そのような賦形剤の例は、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液などの水性ビヒクル、ならびに固定油(例えば、コーン、綿実、ピーナッツ、およびゴマ)、オレイン酸エチル、ならびにミリスチン酸イソプロピルなどの非水性ビヒクルである。滅菌生理食塩水は好ましい賦形剤である。賦形剤は、溶解度、等張性、および化学安定性を亢進させる物質、例えば、酸化防止剤、緩衝剤、および防腐剤などの微量の添加剤を含んでもよい。経口的に(または経直腸的に)投与する場合、化合物は通常、錠剤、カプセル、座薬、またはカシェーなどの単位投薬形態に製剤化されると考えられる。そのような製剤は、典型的には、固体、半固体、または液体の担体または希釈剤を含む。例示的な希釈剤および賦形剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、スターチ、アカシアゴム、リン酸カルシウム、ミネラルオイル、ココアバター、テオブロマの油、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、メチルセルロース、ポリオキシエチレン、ソルビタンモノラウレート、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、およびステアリン酸マグネシウムである。好ましい実施態様において、本発明による薬学的組成物を静脈内投与する。
【0052】
本発明によれば、医薬または組成物に存在するポリペプチドの量は、感受性腫瘍を治療するのに効果的である。好ましくは、ポリペプチドは、重量にして0.01〜90%、好ましくは重量にして0.1%〜10%、より好ましくは重量にして1%〜5%の量で、医薬または組成物に存在する。これらの量は、回復を達成するために患者に投与すべき最良の分量を選ぶことができる、当業者によって日常的に調整可能である。
【0053】
第8の態様において、本発明は、癌および/または腫瘍の治療のための、上記のような少なくとも1つの核酸配列、ベクター、もしくはポリペプチド、または上記のような医薬、または上記のような薬学的組成物の使用に関する。
【0054】
本発明によれば、治療されるべき腫瘍は、好ましくは、固形腫瘍である。より好ましくは、治療されるべき腫瘍は、肉腫、癌腫、およびリンパ腫より選択される。そのような腫瘍の例は、膀胱癌、黒色腫、乳癌、非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、骨腫瘍、結腸直腸癌、肝癌、膵癌、子宮内膜癌、前立腺癌、腎癌、皮膚癌(非黒色腫)、甲状腺癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)である。
【0055】
第9の態様において、本発明は、治療を必要とする対象に、上記のような少なくとも1つの核酸配列、ベクター、もしくはポリペプチド、または上記のような医薬、または上記のような薬学的組成物を、癌または腫瘍の成長を阻害するのに十分な量で投与する工程を含む治療の方法に関する。
【0056】
本明細書で使用する場合、「治療を必要とする対象」は、癌または腫瘍に苦しむ任意のヒトまたは温血動物を意味する。
【0057】
特定の実施態様において、本発明は、少なくとも1つのその他の抗新生物薬物または抗腫瘍薬物を投与する工程をさらに含む上記のような治療の方法に関する。
【0058】
これらの方法において、投与は、局所投与、経口投与、静脈内投与、または腹腔内投与を含む。
【0059】
第8の態様において、本発明は、治療を必要とする対象に、癌または腫瘍の成長を阻害するのに十分である、有効量の、
- 上記のようなポリペプチド、断片、および/またはペプチド、ならびに、
- シスプラチンおよびカルボプラチンからなる群より選択される白金錯体、
を投与する工程を含む治療の方法に関する。
【0060】
本出願人らは、驚くべきことに、本発明によるポリペプチドおよび白金錯体の両方の投与が相乗効果を示すことを見出した。
【0061】
ある実施態様において、該ポリペプチドまたはその断片および該白金錯体を同時に投与する。
【0062】
別の実施態様において、該ポリペプチドまたはその断片および該白金錯体を連続的に投与する。好ましくは、該ポリペプチドまたはその断片および該白金錯体を別々の経路で、すなわち、経口的にかまたは非経口的に(静脈内、皮下、筋肉内、髄腔内、腹腔内などに)投与する。
【0063】
特定の実施態様において、該白金錯体はシスプラチンである。
【0064】
別の実施態様において、該白金錯体はカルボプラチンである。
【0065】
これから、本発明を以下の非限定的な実施例に関連してさらに記載する。
【0066】
(実施例1)
タンパク質168A-T2の産生
挿入物168A-T2の合成:
第1に、公知の手順に従って、遺伝子168AをpGEM(登録商標)-T・イージーベクターシステム(Promega(登録商標))にクローニングした(得られたベクターを「pGEM-T-168A」と名付けた)。
【0067】
第2に、タンパク質168Aの細胞外ドメインの形質膜周辺部分をコードする、挿入物T2(配列番号3)を、プラスミド「pGEM-T-168A」ならびに2つのプライマーCDS5(配列番号19)およびCDS4(配列番号20)(表1)を用いてPCRで増幅した。
【0068】
【表1】

【0069】
第3に、公知の手順に従って、タンパク質168A-T2をコードするDNA配列(配列番号3)をベクターpET-30 EK/LIC(Novagen(登録商標))に挿入した(pET-30-168A-T2)。pET-30ベクター内の168A-T2をコードする核酸配列を配列番号5に示す。
【0070】
その後、精製したベクターをタンパク質産生のために大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysに導入した。コロニーをベクターおよび挿入物の両方の存在についてPCRで確認した。
【0071】
産生されたタンパク質168A-T2の大きさは18 kDで、予期される大きさと一致しており、シーケンシングで確認されたようにN末端のHisタグを含んでいた。産生されるタンパク質168A-T2のアミノ酸配列を配列番号6に示す。
【0072】
タンパク質168A-T2の抽出および精製
タンパク質168A-T2は細菌の不溶性画分中に産生されたので、それを変性条件で抽出する必要があった。
【0073】
培養後、細菌を溶解し、遠心分離し、上清を捨てた。得られた不溶性画分をTris-HCl
20 mM、尿素 8 M、イミダゾール 5 mM、NaCl 0.5 M、GSH 5 mM、pH 8.0で処置した。この処置の後、懸濁液を遠心分離し、上清を回収し、0.45 μm膜で濾過し、不溶物を捨てた。その後、濾過された抽出物を用いて、HPLCシステム(Amersham)に接続されたHis-Trapカラム(Amersham(登録商標))を用いることによりタンパク質168A-T2を精製した。
【0074】
得られた精製タンパク質を4 M 尿素および0.3 M イミダゾールに希釈した。これらの薬剤を調製物から除去するために、溶液を4℃で透析に供した。
【0075】
これらの透析の工程の後、精製タンパク質を4,000 x gで15分間遠心分離し、0.45 μm膜で濾過し、あり得る沈殿物を除いた。精製タンパク質調製物を、1976年にBradfordによって記載された方法(Anal. Biochem. 72: 248-54)に従いかつSDS-PAGEによってタンパク質含有量について確認した。ゲルをGene Geniusソフトウェアを用いて解析し、画像解析によって純度を定量化した。
【0076】
タンパク質168A-T2の純度を増大させるために、本発明者らは、イオン交換液体クロマトグラフィを用いることによって第2の精製工程を行なった。HisTrapで精製された調製物を(NaClの濃度を50 mMまで減少させるために)緩衝液Tris-HCl 20 mM、pH 8、2 M 尿素で3倍に希釈し、Unicornソフトウェア(Amersham, GE, Saclay, France)により運転されるHPLCシステムに接続されたMonoSカラムに充填した。その後、カラムを徹底的に洗浄し、線形勾配のイオン力(Tris-HCl 20 mM 緩衝液、pH 8、2 M 尿素中の0.05 M〜0.5 M NaCl)で溶出させた。精製タンパク質調製物をBradford法およびSDS-PAGEの両方によりタンパク質含有量について確認した。
【0077】
(実施例2)
インビトロでの168A-T2による内皮細胞増殖の阻害の試験
HUVEC細胞を、完全EGM2-MV培地(Cambrex)中、37℃で、5% CO2の加湿雰囲気中でコンフルエンシーまで培養した。その後、細胞をトリプシン-EDTA消化(Versene, Eurobio)により回収した。5分後、酵素反応を、5% FCSを含む3 mlの培養培地を添加することにより停止させた。その後、細胞を220 gで10分間、室温で遠心分離し、5 mlの培養培地で2回洗浄し、完全培養培地に懸濁し、計数し、50000細胞/mlに調整した。その後、ウェル当たり100 μLを96-ウェルの細胞培養等級マイクロプレートに配分し(5000細胞/ml)、150 mM NaClおよび尿素 2 Mを含む、Tris-HCl 20 mM 緩衝液(pH 8)中の異なる濃度の精製タンパク質168A-T2と共にインキュベートし;この緩衝液を対照として用いた。
【0078】
37℃で42時間後、チアゾリルブルーテトラゾリウムブロマイド(MTT)法を用いて細胞増殖を測定した。簡潔には、MTT(Sigma)をPBSに5 mg/mlで溶かし、溶液を濾過し(0.22 μm)、10 μlを96-ウェルマイクロプレートの各ウェルに添加した。37℃、5% CO2の加湿雰囲気での3時間のインキュベーションの後、マイクロプレートを220 x gで10分間遠心分離し、上清を捨て、100 μlのDMSOを各ウェルに添加することにより結晶を溶かした。その後、KC4(Bio-Tek)ソフトウェアに連結されたμQuantマイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instrument gmbh, Colmar, France)を用いて、570 nmでの光学密度(OD)を測定した。ブランクウェルのOD値(細胞を含まないウェルから得られるOD値)を差し引くことによってODを修正し、細胞増殖の阻害を対照に対して測定した(処置していないHUVECを含むウェルから得られるODは、最大増殖応答、すなわち100%に相当する)。
【0079】
図1に示すように、タンパク質168A-T2は、ヒト内皮細胞増殖を用量依存的に阻害した。この阻害は、54 μg/mL(すなわち3.1 μM)のタンパク質168A-Tで80%に相当した。
【0080】
(実施例3)
168A-T2によるインビトロ血管形成の阻害
精製タンパク質168A-T2を、FGF2およびVEGFによってMatrigel上で誘導されるHUVECの血管形成についてインビトロで試験した。
【0081】
24ウェルプレートを250 μLのBD Matrigel(商標)/ウェルで調製し、その後、インキュベーター中で30分インキュベートした。その後、HUVEC細胞を実施例2に記載されたように調製し、(0.5mL中の)70000細胞をウェル毎に播種し、150 mM NaClおよび尿素 2 Mを含む、Tris-HCl 20 mM 緩衝液(pH 8)中の、異なる濃度の精製タンパク質168A-T2と共にインキュベートし;この緩衝液を対照として用いた:
- 図2a:対照(緩衝液尿素 2 M)
- 図2b:168A-T2 3.5 μg/mL(0.2 μM)
- 図2c:168A-T2 6.9 μg/mL(0.4 μM)
- 図2d:168A-T2 13.6 μg/mL(0.8 μM)
【0082】
図2b、2c、および2dに示すように、タンパク質168A-T2はインビトロ血管形成を用量依存的に阻害した。
【0083】
(実施例4)
168A-T2によるヒト内皮細胞の遊走の阻害
細胞遊走を、若干の変更を加えてSatoおよびRifkin(J Cell Biol. 1988; 107: 1199)により説明された創傷アッセイによって試験した。成長培地EGM- 2MV(Cambrex)中で成長させたHUVECを、500μLの成長培地中にウェル当たり80000細胞で24-ウェルプレートに播種し、37℃で、5% CO2を含む加湿雰囲気中でコンフルエンスまで成長させた。細胞をプラスチックの先端で線1本だけこすって傷つけた。傷をつけた後、培養培地を新鮮な培地(対照、図3a)かまたは
- 図3b:168A-T2 12 μg/mL(0.7 μM)
- 図3c:168A-T2 17 μg/mL(1 μM)
- 図3d:168A-T3 23 μg/mL(1.35 μM)
を補充した新鮮な培地と取り替えた。
【0084】
培養の18時間後、細胞を観察し、倒立顕微鏡(Analysis, Olympus, Rungis, France)下で撮影した。
【0085】
図3b、3c、および3dに示すように、タンパク質168A-T2は、ヒト内皮細胞遊走を用量依存的に阻害した。
【0086】
(実施例5)
インビトロでの168A-T2による腎癌細胞株増殖の阻害の試験
50000細胞/mLのBizX細胞調製物を完全培地中に調製した。96ウェルプレート中、100 mLの細胞調製物を各ウェルに配分し、その後、異なる濃度の168A-T2と共にインキュベートした(各濃度を3通りで試験した)。37℃で48時間のインキュベーションの後、10 mLのMTT(水の中に5mg/L)を各ウェルに添加した。37℃で3時間のインキュベーションの後、培養培地を除き、100 mLのDMSOを添加し、MMT結晶を可溶化した。その後、KC4(Bio-Tek)ソフトウェアに連結されたμQuantマイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instrument gmbh, Colmar, France)を用いて、570 nmでの光学密度(OD)を測定した。ブランクのウェルのOD値(細胞を含まないウェルから得られるOD値)を差し引くことによってODを修正し、細胞増殖の阻害を対照に対して測定した(処置していない腎腫瘍細胞を含むウェルから得られるODは、最大増殖応答、すなわち100%に相当する)。
【0087】
図4に示すように、タンパク質168A-T2は、腎癌株(BizX)の増殖を20%まで阻害した。
【0088】
(実施例6)
インビトロでの168A-T2による肺癌細胞株増殖の阻害の試験
Calu6細胞を、実施例5に記載されたように培養し、処置した。
【0089】
図5に示すように、タンパク質168A-T2は、肺癌株(Calu6)の増殖を40%まで阻害した。
【0090】
(実施例7)
腫瘍試料におけるタンパク質168Aの発現
多数の異なるヒト腫瘍試料を遺伝子168Aの発現についてスクリーニングした。各々の病理試料について、腫瘍の周囲を腫瘍の中心部から分離し、これら2つの部分における遺伝子168Aの発現を、mRNA抽出後のRT-PCRによって比較した。
【0091】
腎腫瘍試料
腎腫瘍由来の19の病理生検を解析した。19人の患者中11人において、168Aの発現が腫瘍の周囲でよりも中心部でずっと高かった。19人の患者中8人において、168Aの発現が中心部でよりも腫瘍の周囲でずっと高かった。
【0092】
肺腫瘍試料
ヒト肺腫瘍由来の40の病理生検を解析した。40人の患者中23人において、168Aの発現が腫瘍の周囲でよりも中心部でずっと高かった。
【0093】
結腸腫瘍試料
ヒト結腸腫瘍由来の33の病理生検を解析した。33人の患者中13人において、168Aの発現が腫瘍の中心部でよりも周囲でずっと高かった。
【0094】
(実施例8)
インビボでのswiss系ヌードマウスにおけるヒト非小細胞肺癌(CALU-6)異種移植モデルでの168A-T2の試験
CALU-6細胞の調製
CALU-6細胞を、完全EMEM培地(型番CM1MEM18-01, バッチ番号462502, Eurobio, France) 10% 胎仔ウシ血清(FCS;型番CVFSVFOO-01, バッチ番号S13021, Eurobio, France)中で37℃、5% CO2の加湿雰囲気下で付着細胞として培養した。それらを90×106細胞に達するよう75 cm2-フラスコの中で増幅させた。
【0095】
0日目に、培地を除去し、3
mlのトリプシン-EDTA(型番CEZTDA00-0U, バッチ番号633920, Eurobio, France)を添加することによって、CALU-6細胞(ヒト肺癌)を75 cm2-フラスコから回収した。37℃で5分のインキュベーションの後、細胞はプラスチックから剥がれており、10% 胎仔ウシ血清を含む3 mlのEMEM培地を添加することによって酵素反応を停止させた。その後、細胞を700 gで5分間、室温で遠心分離した。それらを、血清を含まないEMEM培養培地に再懸濁した。細胞を計数し、トリパンブルー排出(型番CSTCOL03-OU, バッチ番号434511, Eurobio, France)によって生存率を評価した。生存しているCALU-6細胞の数は、>99%であった。その後、細胞の数を、血清を含まない培地中で25×106細胞/mlに調整した。
【0096】
腫瘍誘導
30匹の健康なメスのSwiss系ヌードマウスにケタミン-キシラジン(80 mg/kg - 12 mg/kg;型番K-113, Sigma, France)の腹腔内注射により麻酔をかけた。その後、CALU-6細胞(200 μlの血清を含まない培地中に5×106細胞/マウス)を各マウスの右脇腹に皮下移植した。移植後2時間、マウスを観察した。
【0097】
処置スケジュール
CALU-6細胞の移植後12日目に、30匹のマウスを無作為に5匹のマウスの4群に分けた。腫瘍体積は54〜296 mm3 に達しており、平均腫瘍体積は無作為化後の群間で統計的に異ならなかった。
【0098】
12日目に始まり28日目に終わる、処置スケジュールを表2にまとめる。
- 第1群の動物は、ビヒクル溶液(Tris-HCl pH 7.5、2 M 尿素、150 mM NaCl, 0.1 mM CaCl2)で処置し;
- 第2群の動物は、生理的血清中の0.5 mg/mLの濃度のシスプラチン(CDDP, cis-ジアミン白金(II)ジクロリド, 型番P4394, バッチ番号014K0993, Sigma, France, 純度100%, MW. 300)の溶液で処置し、
- 第3群の動物は、15 mg/kgの用量の試験物質168A-T2を補充したビヒクルで処置し、
- 第4群の動物は、15 mg/kgの用量の試験物質168A-T2を補充したビヒクルで処置し、さらに5 mg/kgのCDDPを与えた。
【0099】
第1群、第2群、第3群、および第4群での注射を、Q2DX8というスケジュールに従って、すなわち、1回分の分量を2日に1度、8回行なった。
【0100】
注射後2時間、マウスを観察した。頸椎脱臼で屠殺する前に、ケタミン/キシラジン(80 mg/kg - 12 mg/kg;型番K-113, Sigma, France)を用いて動物に麻酔をかけた。全ての動物について、腫瘍の大きさを週に2回キャリパーで測定した。腫瘍体積(mm3)を公式:(長さ×幅2)/2に従って測定した。
【0101】
統計的研究
以下に概略が説明されるデータを計算した:
- 平均腫瘍体積(MTV)を用いて腫瘍成長曲線を引き、
- 時間tでのMTVと注射の時点(t=D12)での体積の間の比として平均相対腫瘍体積(MRTV)を計算し、
- 処置群対ビヒクル群の腫瘍体積中央値の比として腫瘍成長阻害(T/C、%)を評価した。
【0102】
腫瘍体積(TV)、「TV」に達するまでの時間、腫瘍倍加時間(DT)、相対腫瘍体積(RTV)、および腫瘍成長阻害(T/C)の統計解析を全ての群について行なった。データを平均±SDとして表す。データの群は正規分布した。単変量解析を行ない、群間の差を評価した。その後、スチューデントのt検定を用いて、統計的有意を決定した。P<0.05を統計的に有意であるとみなした。統計解析はXLSTAT(Addinsoft, France)を用いて行なった。
【0103】
体重
表3に示すように、ビヒクルは全く影響がなかった:マウスの行動および体重増は正常であり、どの動物も早死にすることがなかった。15 mg/kgの用量の試験物質168A-T2による処置の過程の間に毒性は全く観察されず、わずかな体重増が観察された(+2.45 g)。
【0104】
対照的に、CDDPで処置した第2群、第4群で重大な毒性が観察された(それぞれ、-2.70 gおよび-2.35 gの体重減)。第1群対第2群および第4群ならびに第3群対第2群および第4群の間の差は統計的に有意(p<0.0001)であったが、第2群と第4群の間の差は統計的に有意ではなかった。
【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
平均腫瘍体積(MTV)、平均相対腫瘍体積(MRTV)、および腫瘍成長パラメータ(T/C)の結果を図6、7、ならびに表4、5、および6に示す。
【0108】
MTV(表4、図6)は、ビヒクルの第1群のマウス(1233.44 mm3)と比べて、CDDPで処置した第2群のマウス(742.44 mm3)で28日目に減少した。28日目でのMTVは、15 mg/kgの試験物質168A-T2で2日につき1回の注射で処置した群でも減少した(615.96 mm3)。最も重大なMTV減少は、第4群の動物について得られた(317.17 mm3)。第1群と試験物質で処置した2つの群の間の差は、統計的有意に達した(第4群に対してp<0.0001 - 第3群に対してp=0.003)。第2群と第4群の間の差も有意であった(p=0.001)。対照的に、第2群(CDDPのみ)と第3群(168A-T2のみ)の間には統計的な差が全く観察されなかった。
【0109】
【表4】

【0110】
これらの結果をMRTV(表5、図7)の解析により確認した。第1群の動物についてのMRTVは28日目で8.24であった。第2群、すなわちCDDPで処置した動物については、28日目でのMRTVは5.98であり;第3群、すなわち168A-T2(15 mg/kg)で処置した動物については、28日目でのMRTVは4.51であり;最後に、第4群、すなわちCDDPおよび168A-T2の両方で処置した動物については、MRTVは2.18であった。
【0111】
【表5】

【0112】
表5および図7に示すように、MRTVは、第4群の動物について28日目に2.18に達しており、それにより168A-T2のシスプラチンとの相乗効力が確認された。その上、単独で用いたシスプラチン(第2群)または単独で用いた168A-T2(第3群)は、近いMRTVを28日目に示し、168A-T2も強力な単独治療による抗腫瘍薬剤であるということを示唆している。
【0113】
【表6】

【0114】
腫瘍成長阻害のパラメータである、T/C比(表6)は、単独治療として用いた時にそれがビヒクルで処置した第1群と比べて27%だけ腫瘍の大きさを縮小させたように、試験物質のわずかな抗腫瘍活性を明らかにした。しかしながら、CDDPと組み合わせた時、阻害率は、ビヒクルで処置した第1群に比べて腫瘍の大きさの74%縮小に達した。
【0115】
これらの結果は、それが単独でかまたはCDDPなどの細胞毒性薬剤と組み合わせて用いられる時に、168A-T2が強力な抗腫瘍活性を有するということを直接的に示している。
【配列表フリーテキスト】
【0116】
配列番号1は、遺伝子168の核酸配列に対応する。
【0117】
配列番号2は、タンパク質168Aのアミノ酸配列に対応する。
【0118】
配列番号3は、168A-T2の核酸配列に対応する。
【0119】
配列番号4は、168A-T2のアミノ酸配列に対応する。
【0120】
配列番号5は、ベクターpET30内の168A-T2の核酸配列に対応する。
【0121】
配列番号6は、ベクターpET30を用いて産生される168A-T2のアミノ酸配列に対応する。
【0122】
配列番号7は、168A-T2の断片のアミノ酸配列に対応する。
【0123】
配列番号8は、168A-T2の断片のアミノ酸配列に対応する。
【0124】
配列番号9は、168A-T2の断片のアミノ酸配列に対応する。
【0125】
配列番号10は、168A-T2の断片のアミノ酸配列に対応する。
【0126】
配列番号11は、168A-T2の断片のアミノ酸配列に対応する。
【0127】
配列番号12は、168A-T2の断片のアミノ酸配列に対応する。
【0128】
配列番号13は、配列番号7をコードする核酸配列に対応する。
【0129】
配列番号14は、配列番号8をコードする核酸配列に対応する。
【0130】
配列番号15は、配列番号9をコードする核酸配列に対応する。
【0131】
配列番号16は、配列番号10をコードする核酸配列に対応する。
【0132】
配列番号17は、配列番号11をコードする核酸配列に対応する。
【0133】
配列番号18は、配列番号12をコードする核酸配列に対応する。
【0134】
配列番号19は、プライマーCDS5の核酸配列に対応する。
【0135】
配列番号20は、プライマーCDS4の核酸配列に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3の核酸配列、
または配列番号3と整列させた時に、
a)配列番号3の長さの全体にわたり少なくとも50%同一な残基のパーセンテージ、および、
b)配列番号Xのアミノ酸配列の長さの全体にわたり少なくとも80%同一な残基のパーセンテージ、
を有する該配列番号Xの核酸配列、
または少なくとも60個の連続するヌクレオチドを有するその断片。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1つの核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項3】
配列番号4の活性ポリペプチド、
または配列番号4と整列させた時に、
a)配列番号4の長さの全体にわたり少なくとも50%同一な残基のパーセンテージ、および、
b)配列番号Yのアミノ酸配列の長さの全体にわたり少なくとも65%同一な残基のパーセンテージ、
を有する該配列番号Yのアミノ酸配列、
または少なくとも20個の連続するアミノ酸を有するその断片。
【請求項4】
請求項2に記載の発現ベクターによって産生されることを特徴とする、請求項3に記載の活性ポリペプチド。
【請求項5】
該ポリペプチドが抗血管形成活性および抗腫瘍活性を有する、請求項3または4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載の少なくとも1つの核酸配列、または請求項2に記載の少なくとも1つの発現ベクター、または請求項3〜5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬。
【請求項7】
請求項1に記載の少なくとも1つの核酸配列、または請求項2に記載の少なくとも1つの発現ベクター、または請求項3〜5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項8】
ヒトまたは動物の体の癌および/または腫瘍の治療の方法で使用するための、請求項1に記載の少なくとも1つの核酸配列、または請求項2に記載の少なくとも1つの発現ベクター、または請求項3〜5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項9】
抗血管形成物質または抗腫瘍物質より選択される少なくとも1つの別の活性物質をさらに含む、請求項7または8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
有効量の、
- 請求項3〜5のいずれか一項に記載のポリペプチド、ならびに、
- シスプラチンおよびカルボプラチンからなる群より選択される白金錯体、
を含む薬学的組成物。
【請求項11】
局所、全身、経口、皮下、経皮、筋肉内、または腹腔内の投与に好適な形状である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
該ポリペプチドが、重量にして0.01〜90%、好ましくは重量にして0.1%〜10%、より好ましくは重量にして1%〜5%の量で存在する、請求項7〜11のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
癌および/または腫瘍の治療のための、請求項1に記載の核酸、請求項2に記載の発現ベクター、請求項3〜5に記載のポリペプチド、または請求項6に記載の医薬、または請求項7〜12記載の薬学的組成物の使用。
【請求項14】
腫瘍が固形腫瘍である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
固形腫瘍が、肉腫、癌腫、およびリンパ腫より選択される、請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2A−2D】
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【図3A−3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−526549(P2010−526549A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507938(P2010−507938)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056075
【国際公開番号】WO2008/138994
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509270395)ジェネ シグナル インターナショナル エスエー (2)
【Fターム(参考)】