説明

抗腫瘍性化合物

一般式(I):


の抗腫瘍性化合物であって、ここで、R1〜R14及び----線は、癌の治療に使用するために許容される定義を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗腫瘍性化合物、これらを含む医薬組成物、及び抗癌剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかのマクロライド類は、抗腫瘍、抗ウイルス、及び/または抗菌特性を有することが開示されてきた。具体的には、Kitagawaらは、沖縄産のTheonella swinhoei標本から単離された、細胞毒性を示す対称性二量体マクロライドであるスウィンホライドAについて報告している(Tetrahedron Lett., 1989, 30, 2963)。
【0003】
【化1】

【0004】
1994年には、Kitagawaらは、新規なスウィンホライド類の単離、ならびにスウィンホライドA及びその異性体の構造-活性研究について報告している。この研究では、スウィンホライドA、B、及びCは、L1210及びKB細胞株に対して強力な細胞毒性を有することを示し、IC50値は、L2110に対してそれぞれ0.03、0.30、0.14μg/mLであり、KBに対してそれぞれ0.04、0.04、及び0.05μg/mLであった(Chem. Pharm. Bull., 1994, 42(1), 19-26)。さらには、イソスウィンホライドAが上記他のマクロライド類よりも低い細胞毒性を示すことが観察された(IC50値は、L2110に対して1.35μg/mLであり、KBに対して1.1μg/mLであった)。
【0005】
【化2】

【0006】
Kitagawaらは、さらにスウィンホライドAから誘導された数種類の二量体の細胞毒性についても分析を行い、2種の二量体(8及び9)ともKB細胞において弱い増殖阻害活性を示すことを観察した(それぞれ、50μg/mLにおいて51.1%阻害、及び10μg/mLにおいて19.3%阻害)。
【0007】
【化3】

【0008】
スウィンホライドAから得られた他の二量体マクロライド類は以下の化合物であった。
【0009】
【化4】

【0010】
L1210及びKB細胞に対するこれら化合物(10〜13)の細胞毒性は、スウィンホライドAについて示された細胞毒性と比較して低かった。
【0011】
同時に、Kitagawaらは、CDF1マウスのP388白血病細胞株に対する、スウィンホライドA及びその異性体の抗腫瘍効果を検討した。意外なことには、スウィンホライドA、イソスウィンホライドA、及び異性体(11)は毒性を有し、有望な抗腫瘍活性を示さなかった。
【0012】
さらには、国際公開第88/00195号には、Theonella属の海綿から単離された数種類のマクロライド類(ミサキノライドA(14)及び誘導体(15))について記載されている。
【0013】
【化5】

【0014】
上記特許出願公開には、P388、HCT-8、A549、及びMDA-MB-231癌細胞に対するミサキノライドA(14)のin vitroでの抗腫瘍活性について記載されている。さらに、ミサキノライドAが強力な細胞毒性を有すること(IC50 0.035μg/mL (L1210))に加えて、抗腫瘍活性を有することも記載されている(P388白血病に対して0.1mg/kg(マウス)の投与量で140%のT/C)(Chem. Pharm. Bull., 1994, 42(1), 19-26)。
【0015】
最後に、国際公開第2007/068776号には、抗腫瘍活性を示す、一般式(I):
【化6】

のマクロライド類が記載されている。具体的には、Theonella swinhoeiの標本から単離された化合物aが、HT29、MDA-MB-231、及びA549細胞株に対して強力な細胞毒性を示し、細胞株それぞれに対して3.38E-7 M、8.08E-7 M、及び2.28E-7 MのGI50値を有することが開示されています。
【0016】
【化7】

【0017】
癌は、動物及びヒトにおける死亡の主な原因である。癌に罹患している患者への投与に活性であり安全である抗腫瘍剤を得るために、多大な努力が今まで払われており、依然として払われ続けている。本発明により解決される問題は、癌の治療に有用な化合物を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第88/00195号
【特許文献2】国際公開第2007/068776号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Tetrahedron Lett., 1989, 30, 2963
【非特許文献2】Chem. Pharm. Bull., 1994, 42(1), 19-26
【非特許文献3】Burger “Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed. (Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)
【非特許文献4】“Design and Applications of Prodrugs” (H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers)
【非特許文献5】Transactions of the Royal Society of Edinburgh 50(2): 423-467, pls XXXVIII-XL
【非特許文献6】M. B. Smith, J. March in March’s Advanced Organic Chemistry, 6th ed., John Wiley and Sons, Inc., New York, 2007
【非特許文献7】Comprehensive Organic Synthesis, B. M. Trost, editor-in-chief, Pergamon Press, Oxford 1991
【非特許文献8】Carey, Organic Chemistry, 6th ed., McGraw-Hill, New York, 2006
【非特許文献9】Larock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd ed. Wiley-VCH, New York, 1999
【非特許文献10】Wuts, P.G.M. and Greene T.W. in Protecting groups in Organic Synthesis, 4th Ed. Wiley-Interscience
【非特許文献11】Kocienski P.J. in Protecting Groups, 3rd Ed. Georg Thieme Verlag
【非特許文献12】E. W. Martin, “Remington’s Pharmaceutical Sciences” 1995
【非特許文献13】Skehan et al. J. Natl. Cancer Inst. 1990, 82, 1107-1112
【非特許文献14】Faircloth et al. Methods in Cell Science, 1988, 11(4), 201-205
【非特許文献15】Mosmann et al, Journal of Immunological Methods, 1983, 65(1-2), 55-63
【非特許文献16】Boyd MR and Paull KD. Drug Dev. Res. 1995, 34, 91-104
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
一つの態様において、本発明は、一般式(I):
【化8】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体を対象とし、
式中、
R1、R3、R5、R7、R9、及びR10の各々は、水素、ハロゲン、ORa、OCORa、OCOORa、OCONRaRb、OSO2Ra、OSO3Ra、及び=Oから独立に選択されるが、但し、基=Oが存在するとき、=Oが結合するC原子の水素は存在しないことを条件とし;
R2、R4、R6、R8、R11、R12、及びR13の各々は、水素、CORa、COORa、CONRaRb、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C12アルキニルから独立に選択され;或いは、R3及びR4は、それらが結合している対応するC原子及びそれらに隣接するC原子と一緒になって、5または6員のラクトン環またはラクタム環を形成し;
R14は、水素、CORa、COORa、CONRaRb、ORa、OCORa、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C12アルキニルから独立に選択され;
Ra及びRbの各々は、水素、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、置換または非置換のC2〜C12アルキニル、置換または非置換のアリール、及び置換または非置換の複素環基から独立に選択され;
----線の各々は、単結合または二重結合を表すが、但し、1個の炭素原子が----線を1本超有するとき、これらの線のうち1本は二重結合であってよいが、他の線は単結合であることを条件とする。
【0021】
別の態様において、本発明は、薬剤として、特に癌を治療するための薬剤として使用される、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体を対象とする。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、癌の治療における、または薬剤の調製における、好ましくは癌の治療のための薬剤の調製における、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体の使用もまた対象とする。本発明の別の態様は、治療方法及びこれらの方法において使用される化合物である。従って、本発明はさらに、上記で定義された化合物の治療有効量を罹患している個体に投与することを含む、癌に罹患している任意の哺乳動物、特にヒトを治療する方法を提供する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、抗癌剤として使用される、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、もしくは立体異性体を対象とする。
【0024】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体もしくは希釈剤とを一緒に含む、医薬組成物を対象とする。
【0025】
本発明はまた、Polymastiidae科Polymastia属Polymastia littoralis種の海綿動物からの式(I)の化合物の単離、及び単離された化合物からの誘導体の形成に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、上記で定義された一般式(I)の化合物に関する。
【0027】
これらの化合物において、置換基を以下の指針に従って選択することができる。
【0028】
アルキル基は、分岐または非分岐であることができ、好ましくは1〜約12個の炭素原子を有することができる。一つのより好ましい部類のアルキル基は、1〜約6個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、1、2、3、または4個の炭素原子を有するアルキル基である。メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びにn-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルが、本発明の化合物においてとりわけ好ましいアルキル基である。本明細書で用いられる用語アルキルは、別段に記述しない限り、環状及び非環状の基両方を言及するものであるが、ここで環状基は少なくとも3個の炭素環状員子を含み得る。
【0029】
本発明の化合物において好ましいアルケニル基及びアルキニル基は、分岐または非分岐であることができ、1つ以上の不飽和結合、及び2〜約12個の炭素原子を有することができる。一つのより好ましい部類のアルケニル基及びアルキニル基は、2〜約6個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、2、3、または4個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基である。本明細書で用いられる用語アルケニル及びアルキニルは、環状及び非環状の基両方を言及するものであるが、ここで環状基は少なくとも3個の炭素環状員子を含み得る。
【0030】
本発明の化合物において適当なアリール基には、単環化合物及び多環化合物が含まれ、分離及び/または縮合したアリール基を含有する多環化合物が含まれる。典型的なアリール基は、1〜3個の分離または縮合した環、及び6〜約18個の炭素原子を含有する。好ましくは、アリール基は6〜約10個の炭素環原子を含有する。特に好ましいアリール基には、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のナフチル、置換または非置換のビフェニル、置換または非置換のフェナントリル、及び置換または非置換のアントリルが含まれる。
【0031】
適当な複素環基には、1〜3個の分離及び/または縮合した環、並びに5〜約18個の環原子を含有する、複素環式芳香族基及び複素脂環式基が含まれる。好ましい複素環式芳香族基及び複素脂環式基は、5〜約10個の環原子を含有する。本発明の化合物において適当な複素環式芳香族基は、N、O、またはS原子から選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含有し、例えば、8-クマリニルを含むクマリニル、8-キノリルを含むキノリル、イソキノリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリミジニル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ピリダジニル、トリアジニル、シンノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルが含まれる。本発明の化合物において適当な複素脂環式基は、N、O、またはS原子から選択される1、2、または3個のヘテロ原子を含有し、例えば、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキシル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプチル、3H-インドリル、及びキノリジニルが含まれる。
【0032】
上記に記述された基は、OR’、=O、SR’、SOR’、SO2R’、NO2、NHR’、N(R’)2、=N-R’、N(R’)COR’、N(COR’)2、N(R’)SO2R’、N(R’)C(=NR’)N(R’)R’、CN、ハロゲン、COR’、COOR’、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、OCON(R’)2、CONHR’、CON(R’)2、CON(R’)OR’、CON(R’)SO2R’、PO(OR’)2、PO(OR’)R’、PO(OR’)(N(R’)R’)、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、置換または非置換のC2〜C12アルキニル、置換または非置換のアリール、及び置換または非置換の複素環基などの1つまたは複数の適当な基により1つまたは複数の許容される位置において置換されることができ、ここで、R’基の各々は、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、COOH、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、置換または非置換のC2〜C12アルキニル、置換または非置換のアリール、及び置換または非置換の複素環基である。上記基がそれ自体置換される場合、置換基は、前記のリストから選択することができる。
【0033】
本発明の化合物における適当なハロゲン基または置換基には、F、Cl、Br、及びIが含まれる。
【0034】
用語「薬学的に許容される塩」とは、患者に投与されると、本明細書に記載されている化合物を(直接的にまたは間接的に)提供することが可能な任意の塩を意味する。薬学的に許容される塩ではないものもまた、薬学的に許容される塩の調製に有用であり得るので、本発明の範囲内であると理解される。塩の調製は、当分野において既知の方法により実施することができる。
【0035】
例えば、本明細書において提供される化合物の薬学的に許容される塩は、従来の化学方法によって、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成される。一般に、上記塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水または有機溶媒またはこれらの混合物中、化学量論量の適当な塩基または酸と反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、2-プロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒質が好ましい。酸付加塩の例として、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの鉱酸付加塩、並びに、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及びアンモニウム塩などの無機塩、並びに、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、N,N-ジアルキレンエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、及び塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。
【0036】
本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和物(例えば、水和物、アルコラート、特にメタノラート)のいずれかの結晶形態であることができ、両方の形態は本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和化の方法は、当分野において一般に知られている。本発明の化合物は、異なる多型形態で存在することができるが、そのような形態もまた本発明に包含されることを意図する。
【0037】
式(I)の化合物のプロドラッグである任意の化合物が、本発明の範囲内である。用語「プロドラッグ」は、最も広範囲な意味において使用され、in vivoで本発明の化合物に変換される誘導体を包含する。プロドラッグの例は、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カーバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、及び生加水分解性ホスフェート類縁体などの生加水分解性部分を含む式(I)の化合物の誘導体及び代謝体が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、カルボキシル官能基を有する化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在する任意のカルボン酸部分をエステル化することによって好都合に形成される。プロドラッグは、典型的に周知の方法、例えば、Burger “Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed. (Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)及び“Design and Applications of Prodrugs” (H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers)により記述されているものなどの方法によって調製することができる。
【0038】
本明細書において言及される任意の化合物は、そのような特定の化合物、並びにある種の変形または形態を表すことが意図される。特に、本明細書において言及される化合物は、不斉中心を有することができ、それ故に、異なる鏡像異性形態で存在することができる。本明細書において言及される化合物の全ての光学異性体及び立体異性体、ならびにこれらの混合物は、本発明の範囲内であると考慮される。従って、本発明において言及される任意の所定の化合物は、ラセミ体、1種以上の鏡像異性形態、1種以上のジアステレオマー形態、1種以上のアトロプ異性形態、及びこれらの混合物のうちいずれか1種を表すことが意図される。特に、上記式(I)で表される本発明の化合物は、それらの非対称性またはジアステレオ異性体に応じて鏡像異性体を含むことができる。二重結合に関する立体異性もまた可能であり、従ってある場合には、分子は(E)-異性体または(Z)-異性体として存在することができる。分子が幾つかの二重結合を含有する場合、二重結合の各々は、分子のほかの二重結合の立体異性と同一または異なることができる、それ自体の立体異性体を有することができる。単一の異性体及び異性体の混合物は、本発明の範囲内である。
【0039】
さらには、本明細書において言及される任意の化合物は、互変異性体として存在することができる。具体的には、用語「互変異性体」は、平衡で存在し、1種の異性形態から別のものに容易に変換される、化合物の2種以上の構造異性体のうちの1種を意味する。一般的な互変異性体対は、アミン-イミン、アミド-イミド酸、ケト-エノール、ラクタム-ラクチムなどである。さらに、本明細書において言及される任意の化合物は、媒質中に存在するとき、水和物、溶媒和物、及び多形体、並びにこれらの混合物を表すことが意図される。加えて、本明細書において言及される化合物は、同位体標識形態で存在することができる。本明細書において言及される化合物の全ての幾何異性体、互変異性体、アトロプ異性体、水和物、溶媒和物、多形体、及び同位体標識形態、並びにこられの混合物は、本発明の範囲内であると考慮される。
【0040】
より簡潔な記載を提供するために、本明細書に記載される幾つかの定量表現は、用語「約」により制限されない。用語「約」が明示的に使用されているか否かに関わらず、本明細書に提示されているあらゆる量は、実際の所定の値を意味することが意図され、上記所定の値の実験及び/または測定条件に起因する等価値及び近似値を含む、上記所定値に対して当分野における通常の技術に基づいて合理的に推測される近似値を意味することも意図されることが理解される。
【0041】
一般式(I)の化合物において、R1、R5、R7、R9、及びR10の各々は、好ましくは、ORa、OCORa、及びOCOORaから独立に選択され、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。特に好ましいRaは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルであり;さらにより好ましくは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルである。より好ましくは、R1、R5、R7、R9、及びR10は、ORaであり、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから独立に選択され;さらにより好ましくは、Raは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから独立に選択される。メトキシが、最も好ましいR1、R5、及びR7基であり、ヒドロキシが、最も好ましいR9及びR10基である。
【0042】
特に好ましいR2、R6、R8、R11、及びR12は、各々独立して、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。より好ましくは、R2、R6、R8、R11、及びR12は、各々独立して、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される。さらにより好ましくは、R2、R6、R8、R11、及びR12は、各々独立して、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから選択され;ここで、メチルが最も好ましい。
【0043】
R13は、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択されることが好ましい。より好ましくは、R13は、置換または非置換のC1〜C6アルキルである。前記アルキル基は、1種以上の適切な置換基で置換されていることが特に好ましく、ここで、前記置換基は、OR’、SR’、NHR’、N(R’)2、NHCOR’、N(COR’)2、ハロゲン、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、及びOCON(R’)2から選択されることが好ましく、ここで、R’基の各々は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換のC2〜C6アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C6アルキニルから独立に選択され;さらにより好ましくは、置換基はOR’であり、ここでR’は、非置換のC1〜C6アルキルである。最も好ましいR13は、置換されたメチルであり;ここで、メトキシメチルが最も好ましい基である。
【0044】
特に好ましいR14は、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。より好ましくは、R14は、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される。さらにより好ましくは、R14は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから独立に選択され;ここで、水素が最も好ましい。
【0045】
特に好ましいR3は、ORa、OCORa、及びOCOORaから選択され、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。特に好ましいRaは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルであり;さらにより好ましくは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルである。より好ましくは、R3はORaであり、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから独立に選択され;さらにより好ましくは、Raは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから独立に選択される。ヒドロキシが最も好ましいR3基である。
【0046】
特に好ましいR4は、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。より好ましくは、R4は、置換または非置換のC1〜C6アルキルである。前記アルキル基は、1種以上の適切な置換基で置換されていることが特に好ましく、ここで、前記置換基は、SO2R’、COR’、COOR’、CONHR’、CON(R’)2、CON(R’)OR’、CON(R’)SO2R’、PO(OR’)2、PO(OR’)R’、PO(OR’)(N(R’)R’)、及び置換または非置換の複素環基から選択され、ここで、各R’基は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換のC2〜C6アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C6アルキニルから独立に選択されることが好ましく;さらにより好ましい置換基は、COOR’であり、ここでR’は、非置換のC1〜C6アルキルである。最も好ましいR4は、置換されたメチルであり;ここで、メトキシカルボニルメチルが最も好ましい基である。
【0047】
本発明の化合物の別の好ましい類において、R3及びR4は、これらが結合している対応するC原子及びそれらに隣接するC原子と一緒になって、5または6員のラクトン環を形成する。下記式:
【化9】

の6員のラクトン環がより好ましく;さらにより好ましくは、下記式:
【化10】

の6員のラクトン環であり、ここで、標示付きのC原子は、式(I)中の同一原子に対応する。
【0048】
特に好ましくは、----線の各々が二重結合であり、但し、1個の炭素原子が----線を1本越有するとき、これらの線のうち1本は二重結合であるが、他の線は単結合であることを条件とする。より好ましくは、----線の各々が二重結合であり、但し、1個の炭素原子が----線を1本越有するとき、これらの線のうち1本は二重結合であり、他の線は単結合であり、且つ、少なくとも1つのラクトン環が、前記ラクトン環のカルボニル基と共役する二重結合を有している。
【0049】
より詳しくは、本発明は、一般式(II):
【化11】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体を提供し、
式中、R1〜R14基及び----線は、前述したものと同義を示す。
【0050】
一般式(II)の化合物において、R1、R5、R7、R9、及びR10の各々は、好ましくはORa、OCORa、及びOCOORaから独立に選択され、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。特に好ましいRaは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルであり;さらにより好ましくは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びにn-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルである。より好ましくは、R1、R5、R7、R9、及びR10は、ORaであり、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから独立に選択され;さらにより好ましくは、Raは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから独立に選択される。メトキシが最も好ましいR1、R5、及びR7基であり、ヒドロキシが最も好ましいR9及びR10基である。
【0051】
特に好ましいR2、R6、R8、R11、及びR12は、各々独立して、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。より好ましいR2、R6、R8、R11、及びR12は、各々独立して、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される。さらにより好ましいR2、R6、R8、R11、及びR12は、各々独立して、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから選択され;ここで、メチルが最も好ましい基である。
【0052】
R13は、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択されることが好ましい。より好ましいR13は、置換または非置換のC1〜C6アルキルである。前記アルキル基は、1種または複数の適切な置換基で置換されていることが特に好ましく、前記置換基は、OR’、SR’、NHR’、N(R’)2、NHCOR’、N(COR’)2、ハロゲン、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、及びOCON(R’)2から選択されることが好ましく、ここで、各R’基は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換のC2〜C6アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C6アルキニルから独立に選択され;さらにより好ましい前記置換基は、OR’であり、ここで、R’は非置換のC1〜C6アルキルである。最も好ましいR13は置換されたメチルであり;ここで、メトキシメチルが最も好ましい基である。
【0053】
特に好ましいR14は、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。より好ましいR14は、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される。さらにより好ましいR14は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから独立に選択され;ここで、水素が最も好ましい基である。
【0054】
特に好ましいR3は、ORa、OCORa、及びOCOORaから選択され、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。特に好ましいRaは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルであり;さらにより好ましくは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルである。より好ましくは、R3はORaであり、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから独立に選択され;さらにより好ましくは、Raは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、並びに、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びiso-ブチルを含むブチルから独立に選択される。ここで、ヒドロキシが最も好ましいR3基である。
【0055】
特に好ましいR4は、水素、及び置換または非置換のC1〜C12アルキルから選択される。より好ましいR4は、置換または非置換のC1〜C6アルキルである。前記アルキル基は、1種または複数の適切な置換基で置換されていることが特に好ましく、前記置換基は、SO2R’、COR’、COOR’、CONHR’、CON(R’)2、CON(R’)OR’、CON(R’)SO2R’、PO(OR’)2、PO(OR’)R’、PO(OR’)(N(R’)R’)、及び置換または非置換の複素環基から選択され、ここで、各R’基は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換のC2〜C6アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C6アルキニルから独立に選択されることが好ましく;さらにより好ましい置換基はCOOR’であり、ここでR’は、非置換のC1〜C6アルキルである。最も好ましいR4は置換されたメチルであり;ここで、メトキシカルボニルメチルが最も好ましい基である。
【0056】
本発明の化合物の別の好ましい類において、R3及びR4は、これらが結合している対応するC原子及びそれらに隣接するC原子と一緒になって、5または6員のラクトン環を形成する。下記式:
【化12】

の6員のラクトン環がより好ましく;さらにより好ましくは、下記式:
【化13】

の6員のラクトン環であり、ここで、標示付きのC原子は、式(II)中の同一原子に対応する。
【0057】
特に好ましくは、----線の各々が二重結合であり、但し、1個の炭素原子が----線を1本超有するとき、これらの線のうち1本は二重結合であるが、他の線は単結合であることを条件とする。より好ましくは、----線の各々が二重結合であり、但し、1個の炭素原子が----線を1本超有するとき、これらの線のうち1本は二重結合であり、他の線は単結合であり、且つ、少なくとも1つのラクトン環が、前記ラクトン環のカルボニル基と共役する二重結合を有している。
【0058】
更なる好ましい実施形態では、上述した異なる置換基の選択肢は組み合わせられる。本発明は、上記式(I)または(I)における好ましい置換基の組み合わせも対象とする。
【0059】
本明細書中の記載及び定義において、本発明の化合物中に幾つかの置換基RaまたはRbが存在し、且つ、明示的に記載されていない限り、これら置換基は上記定めた定義内においてそれぞれ独立して異なってもよいと解されるべきであり、すなわち、Raが、本発明の特定の化合物とほぼ同じ基を表す必要性は必ずしもない。
【0060】
本発明の特に好ましい化合物は、下記式:
【化14】

を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体である。
【0061】
ナノモライド類A〜Cは、硬海綿目、Polymastiidae科、Polymastia属、Polymastia littoralis種の海綿動物から単離された。Polymasia littoralisは、1915年、Stephensによって最初に報告された(Transactions of the Royal Society of Edinburgh 50(2): 423-467, pls XXXVIII-XL)。Polymastia littoralisの試料は、メキシコ国立自治大学の海洋及び陸水学科学研究所(the Institute of Marine Sciences and Limnology of Universidad Nacional Autonoma of Mexico)に、参照コードSHIM-565で寄託された。この海綿体は、ケニヤ、モンバサのシモニ海峡(南緯04度40.576分/東経39度26.182分)において、水深27〜30mの範囲の深さでスキューバダイビングによって手で収集した。
【0062】
この海綿体の説明を以下に記載する。平均で厚さ約1cm、直径5x1cmの、皮殻で覆われ、クッション状の海綿であり、長さ最大0.6mm及び直径約1〜3mmの突起を有する。生きている海綿の色は褐色であり、アルコール中に保存されている海綿の色はベージュである。その皮層(cortex)は、表面を通してわずかに突出する、厚さ約100〜150μmの柵状組織を形成する小さなスタイル(style)を含有する。小さな針状体(spicules)の高密度な皮層は、厚さ約0.3mmである。コアノソーム(choanosomal)骨格は、幅100〜250mmの管(tracts)を含み、海綿底部から皮層へ出ている。少数の垂直コアノソーム管は皮層を貫通し、海綿の表面を越えて僅かに突き出ている。エクトソーム(ectosomal)スタイルは、長さ503μmの直線であり、平均87〜150μmの極めて細いヘッド(head)を有する。コアノソーム(choanosomal)スタイルは、平坦で直線状の、直径が均一であり、平均で500〜850μmの長さであり、細いヘッドを有している。
【0063】
さらに、本発明の化合物は、有機合成化学における通常の手法に基づく合成方法及び当業者に周知の方法で得ることができる。例えば、本発明の化合物は、以下の文献に記載された手法を提供することにより得ることができる:M. B. Smith, J. March in March’s Advanced Organic Chemistry, 6th ed., John Wiley and Sons, Inc., New York, 2007;Comprehensive Organic Synthesis, B. M. Trost, editor-in-chief, Pergamon Press, Oxford 1991; Carey, Organic Chemistry, 6th ed., McGraw-Hill, New York, 2006;及びLarock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd ed. Wiley-VCH, New York, 1999。
【0064】
同様に、本発明の天然、合成、または既に修飾された化合物を種々の化学反応によってさらに改変して、本発明の追加の化合物を得ることができる。それ故に、ヒドロキシル基は、標準のカップリングまたはアシル化手法により、例えば、ピリジンまたは同様の溶媒中、酢酸、塩化アセチル、または無水酢酸を用いてアシル化することができる。ホルメート基は、ギ酸中、ヒドロキシル前駆体を加熱することで得ることができる。カーバメートは、イソシアネートと共にヒドロキシル前駆体を加熱することで得ることができる。ヒドロキシル基は、ヨウ化物、臭化物、もしくは塩化物の場合、中間スルホネート体を経て、または、フッ化物の場合、(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリドを直接に使用して、ハロゲン基に変換することができ;或いは、これらを、中間スルホネート体の還元により、水素に還元することができる。ヒドロキシル基はまた、アルキルブロミド、ヨージド、またはスルホネートを用いたアルキル化によりアルコキシ基に、或いは、例えば保護された2-ブロモエチルアミンを用いてアミノ低級アルコキシ基に変換することもできる。アミド基は、標準のアルキル化またはアシル化手法により、例えば、それぞれ、KH及びヨウ化メチル、またはピリジンもしくは同様の溶媒中、塩化アセチルを用いて、アルキル化またはアシル化することができる。エステル基は、カルボン酸に加水分解することができ、或いは、アルデヒドまたはアルコールに還元することができる。カルボン酸は、標準のカップリングまたはアシル化手法により、アミン類とカップリングしてアミドを得ることができる。
【0065】
必要な場合、置換基に対して適切な保護基を使用して、反応性基が影響を受けないことを確実にすることができる。これらの保護基は、当業者には周知である。有機化学における保護基の一般総説は、Wuts, P.G.M. and Greene T.W. in Protecting groups in Organic Synthesis, 4th Ed. Wiley-Interscience、及びKocienski P.J. in Protecting Groups, 3rd Ed. Georg Thieme Verlagに提供される。これらすべての文献は、それら全体で参照として組み込まれる。
【0066】
合成は、適切な工程で所望の置換基に変換することができる前駆体置換基を用いるように設計することができる。環構造における飽和または不飽和を、合成の一部として導入または除去することができる。出発物質及び試薬を、望ましいように変更して、意図される化合物の合成を確実にすることができる。
【0067】
上記式(I)及び(II)の化合物の重要な特徴は、それらの生物活性であり、特にそれらの細胞毒性である。
【0068】
本発明によって、細胞毒性を有する一般式(I)及び(II)の化合物の新規医薬組成物、並びに、抗腫瘍剤としてのそれらの使用が提供される。従って、本発明は、さらに、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、または立体異性体と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0069】
用語「担体」は、活性成分と共に投与される補助剤、賦形剤、またはビヒクルを意図する。適切な医薬担体は、E. W. Martin, “Remington’s Pharmaceutical Sciences” 1995に記載されている。
【0070】
医薬組成物の例には、経口、局所、または非経口投与用の、任意の固体(錠剤、ピル剤、カプセル剤、顆粒剤など)または液体(液剤、懸濁剤、または乳剤)組成物が含まれる。
【0071】
本発明の化合物または組成物の投与は、静脈内注入、経口調合剤、並びに腹腔内及び静脈内投与などの、任意の適切な方法によって可能である。24時間までの注入時間を用いることが好ましく、より好ましくは1〜12時間であり、1〜6時間が最も好ましい。病院に一晩入院することなく治療を実施することを可能にする短い注入時間が特に望ましい。しかしながら、注入は、必要に応じて、12〜24時間またはそれ以上であることができる。注入は、例えば1〜4週間の適切な間隔で実施することができる。本発明の化合物を含む医薬組成物は、リポソームまたはナノ球体封入により、持続性放出製剤において、または他の標準的な送達手段により送達することができる。
【0072】
本発明の化合物の正確な投与量は、特定の製剤、適用様式、並びに特定の位置、宿主、及び治療される腫瘍に応じて変わり得る。年齢、体重、性別、食事、投与時間、排出速度、宿主の状態、薬剤の組み合わせ、反応感受性、及び疾患の重篤度などの他の要因が考慮され得る。投与は、最大耐量の範囲内で継続的または周期的に実施することができる。
【0073】
本明細書で用いられている用語「治療」及び「治療する」は、腫瘍、または初期、局所、もしくは転移性の癌細胞もしくは組織を根絶、除去、変異、または抑制すること、或いは、癌の拡大を最小化または遅らせることを含む。
【0074】
本発明の化合物は、肺癌、結腸癌、及び乳癌を含むが、これらに限定されない、幾つかの癌に対して抗腫瘍活性を有している。
【0075】
従って、本発明の別の実施形態において、上記に定義した式(I)または(II)の化合物を含む医薬組成物は、肺癌、結腸癌、または乳癌の治療に用いられる。
【0076】
(実施例)
実施例1:海洋生物及び収集の側面の記載
Polymastia littoralisは、ケニヤ、モンバサのシモニ海峡(南緯04度40.576分/東経39度26.182分)において、水深27〜30mの範囲の深さでスキューバダイビングによって手で収集した。動物材料は、Jose Luis Carballo博士(メキシコ国立自治大学;Universidad Nacional Autonoma of Mexico)により同定された。検体試料は、メキシコ国立自治大学の海洋及び陸水学科学研究所(the Institute of Marine Sciences and Limnology of Universidad Nacional Autonoma of Mexico)に、参照コードSHIM-565で寄託された。
【0077】
実施例2:ナノモライドAの単離
実施例1の冷凍検体(66g)を粉末にし、CH3OH:CH2Cl2 (50:50、4 x 300ml)の混合溶媒により23℃で抽出した。併合した有機抽出物を濃縮して、2.69gの粗生成物を得た。この物質を、H2OからMeOHへの段階勾配(stepped gradient)によるPolygoprep C18シリカゲルの真空液体クロマトグラフィー(VLC)に付した。ナノモライドA(9.7mg)を、半分取逆相HPLC(Atlantis dC18、10mm、10x150mm、CH3CNが40〜61.6%の勾配H2O:CH3CNを18分間、UV検出、流速4.0ml/分、保持時間16.5分)により、H2O:MeOH 1:9 (215.4mg)を用いて溶出してフラクションから単離した。
【0078】
ナノモライドA:非晶質の無色固体。(+)-HRMALDITOFMS m/z 1053.6033 M+ (C58H87NO16で計算 1053.6019)、m/z 1076.5938 [M+Na]+ (C58H87NO16Naで計算 1076.5917)。1H(500MHz)及び13C(125MHz)NMRについては表1を参照すること。
【0079】
【表1】


【0080】
【化15】

【0081】
実施例3:ナノモライドB及びナノモライドCの単離
実施例1の検体試料の第2群(304.5g)を粉末にし、MeOH:CH2Cl2(50:50)の混合溶媒により23℃で抽出した。併合した有機抽出を減圧下濃縮して、11.85gの粗生成物を得た。この物質を、H2OからMeOH及びCH2Cl2への段階勾配によるLichroprep RP-18を用いてクロマトグラフィー(VLC)に付した。H2O:MeOH 1:9(621.2mg)で溶出したフラクションを、分取逆相HPLC(Atlantis Prep dC18、5mm、19x150mm、CH3CNが40〜61.6%の勾配H2O:CH3CNを18分間、14.4ml/分、UV検出)に付し、3つのフラクション(H1〜H3)を得た。このクロマトグラフィーより得られたフラクションH2(17〜18分)を、半分取HPLC(X-Bridge C18、5mm、10x150mm、定組成H2O:CH3CN(57:43)を40分間、4.0ml/分、UV検出)に付し、ナノモライドA(17.1mg、保持時間31.6分)、ナノモライドC(2.5mg、保持時間35.8分)、及び混合物(保持時間30〜31分)を得、その混合物を、半分取HPLC(X-Terra Phenyl、5mm、10x150mm、定組成H2O:CH3CN(60:40)を30分間、4.0ml/分、UV検出)で分離することにより、追加量のナノモライドA(1.6mg、保持時間25.1分)及びナノモライドB(0.8mg、保持時間27.1分)を得た。
【0082】
ナノモライドB:非晶質の無色固体。(+)-ESIMS m/z 1060.4 [M+K]+、1044.5 [M+Na]+、990.2 [M-MeOH+H]+、972.3 [M-MeOH-H2O+H]+、954.3 [M-MeOH-2xH2O+H]+1H(500MHz)及び13C(125MHz)NMRについては表2を参照すること。
【0083】
ナノモライドC:非晶質の無色固体。(+)-ESIMS m/z 1076.4 [M+Na]+、1022.5 [M-MeOH+H]+、1004.5 [M-MeOH-H2O+H]+、986.5 [M-MeOH-2xH2O+H]+1H(500MHz)及び13C(125MHz)NMRについては表3を参照すること。
【0084】
【表2】

【0085】
【化16】

【0086】
【表3】

【0087】
【化17】

【0088】
実施例4:抗腫瘍活性の検出のためのバイオアッセイ
このアッセイの目的は、試験する試料のin vitroでの細胞増殖抑制性(腫瘍細胞増殖を遅延または阻止する能力)または細胞毒性(腫瘍細胞を死滅させる能力)の活性を評価することである。
【0089】
【表4】

【0090】
SBR比色アッセイを用いた細胞毒性活性の評価
スルホローダミンB(SRB)反応を用いた比色アッセイは、細胞増殖及び生存度の定量的測定のために採用されてきた(Skehan et al., J. Natl. Cancer Inst. 1990, 82, 1107-1112に記載された教示に従う)。
【0091】
この形態のアッセイは、SBS標準96ウェル細胞培養マイクロプレートを用いる(Faircloth et al. Methods in Cell Science, 1988, 11(4), 201-205;Mosmann et al, Journal of Immunological Methods, 1983, 65(1-2), 55-63)。この研究で使用した全ての細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)より得られ、且つ異なる型のヒト癌に由来する。
【0092】
細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン、及び100U/mLのストレプトマイシンを補充したDulbecco変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;DMEM)に、37℃、5%CO2、及び98%湿度下で維持した。実験のために、細胞を、トリプシン処理を使用してサブコンフルエント培養から採取し、カウント及び平板培養する前に、新たな培地に再懸濁した。
【0093】
細胞を、150μlのアリコートにより1ウェルあたり5x103〜7.5x103細胞で96ウエルマイクロタイタープレートに接種し、薬剤無含有培地において、18時間(終夜)かけてプレート表面に結合させた。その後、それぞれの細胞株に1つの対照(未処理)プレートを固定し(下記に記載するように)、0時間基準値として使用した。続いて、培養皿を、10段階希釈(10〜0.00262μg/mlの範囲の濃度)及び三重培養(1%DMSO最終濃度)を用いて、試験化合物(4%DMSOを加えた完全培地中の50μlアリコートの4xストック溶液)で暴露した。72時間の暴露後、SRB法により抗腫瘍効果を測定した:簡潔には、細胞をPBSで2回洗浄し、室温にて1%グルタルアルデヒド溶液で15分間固定し、PBSで2回すすぎ、0.4%SRB溶液により室温で30分間染色した。続いて、細胞を1%酢酸溶液で数回すすぎ、室温にて風乾した。続いて、SRBを10mMトリズマ塩基溶液で抽出し、自動分光光度プレートリーダーにより490nmで吸光度を測定した。細胞増殖及び細胞生存の効果は、NCIアルゴリズム(Boyd MR and Paull KD. Drug Dev. Res. 1995, 34, 91-104)
を適用することにより評価した。
【0094】
三重培養の平均±SDを使用して、用量反応曲線を非線形回帰分析を使用して自動的に生成した。3つの基準パラメーターを自動補間法により計算した(NCIアルゴリズム):GI50=対照の培養と比較して、50%の増殖阻害を生じる化合物濃度;TGI=対照の培養と比較して、総増殖阻害(細胞増殖抑制効果)を生じる化合物濃度、及びLC50=50%の純細胞死滅(細胞毒性効果)を生じる化合物濃度。
【0095】
表4は、本発明の化合物の生物学的活性についてのデータを例示する。
【0096】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、
R1、R3、R5、R7、R9、及びR10の各々は、水素、ハロゲン、ORa、OCORa、OCOORa、OCONRaRb、OSO2Ra、OSO3Ra、及び=Oから独立に選択されるが、但し、基=Oが存在するとき、=Oが結合するC原子の水素は存在しないことを条件とし;
R2、R4、R6、R8、R11、R12、及びR13の各々は、水素、CORa、COORa、CONRaRb、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C12アルキニルから独立に選択され;或いは、R3及びR4は、それらが結合している対応するC原子及びそれらに隣接するC原子と一緒になって、5または6員のラクトン環またはラクタム環を形成し;
R14は、水素、CORa、COORa、CONRaRb、ORa、OCORa、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C12アルキニルから独立に選択され;
Ra及びRbの各々は、水素、置換または非置換のC1〜C12アルキル、置換または非置換のC2〜C12アルケニル、置換または非置換のC2〜C12アルキニル、置換または非置換のアリール、及び置換または非置換の複素環基から独立に選択され;
----線の各々は、単結合または二重結合を表すが、但し、1個の炭素原子が----線を1本超有するとき、これらの線のうち1本は二重結合であってよいが、他の線は単結合であることを条件とする]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体。
【請求項2】
次式(II):
【化2】

[式中、R1〜R14及び----線は、請求項1で定義したとおりである]
を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体。
【請求項3】
R1、R5、R7、R9、及びR10が、各々独立して、ORa、OCOCORa、及びOCOORaから選択され、ここで、Raは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R1、R5、及びR7がメトキシである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R9及びR10がヒドロキシである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R2、R6、R8、R11、及びR12が、各々独立して、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R2、R6、R8、R11、及びR12がメチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R13が置換または非置換のC1〜C6アルキルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R13が、OR’、SR’、NHR’、N(R’)2、NHCOR’、N(COR’)2、ハロゲン、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、またはOCON(R’)2で置換された置換C1〜C6アルキルであって、ここで、前記R’基の各々は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換のC2〜C6アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C6アルキニルから独立に選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R13がメトキシメチルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R14が、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R14が水素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R3が、ORa、OCORa、及びOCOORaから選択され、ここでRaは、水素、及び置換または非置換のC1〜C6アルキルから選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
R3がヒドロキシである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
R4が置換または非置換のC1〜C6アルキルである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
R4が、SO2R’、COR’、COOR’、CONHR’、CON(R’)2、CON(R’)OR’、CON(R’)SO2R’、PO(OR’)2、PO(OR’)R’、PO(OR’)(N(R’)R’)、または置換もしくは非置換の複素環基で置換された置換C1〜C6アルキルであって、ここで、R’基の各々は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換のC2〜C6アルケニル、及び置換または非置換のC2〜C6アルキニルから独立に選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
R4がメトキシカルボニルメチルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R3及びR4が、それらが結合している対応するC原子及びそれらに隣接するC原子と一緒になって、5または6員のラクトン環またはラクタム環を形成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
R3及びR4が、それらが結合している対応するC原子及びそれらに隣接するC原子と一緒になって、下記式:
【化3】

の6員のラクトン環を形成する、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記6員のラクトン環が、下記式:
【化4】

[式中、標示付きのC原子は、式(I)または(II)中の同一原子に対応する]
のラクトン環である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
----線の各々が二重結合であるが、但し、1個の炭素原子が----線を1本超有するとき、これらの線のうち1本は二重結合であるが、他の線は単結合であることを条件とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
少なくとも1個のラクトン環が、前記ラクトン環のカルボニル基と共役する二重結合を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
次式:
【化5】

を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体、及び薬学的に許容される担体もしくは希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項25】
薬剤としての使用のための、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体。
【請求項26】
癌を治療するための薬剤の調製における、請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ、もしくは立体異性体の使用。
【請求項27】
癌に罹患している患者の治療方法であって、それを必要とする前記癌に罹患している個体に請求項1〜23のいずれか一項に記載の化合物を治療有効量投与することを含む、治療方法。

【公表番号】特表2011−526601(P2011−526601A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515462(P2011−515462)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058352
【国際公開番号】WO2010/000817
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(501440835)ファルマ・マール・ソシエダード・アノニマ (30)
【Fターム(参考)】