説明

抗腫瘍活性を持つ化合物の感受性の判定方法

【課題】
AhR agonistである抗癌剤は効果を示す癌と示さない癌がはっきりと分かれていることがわかっていた。しかし、AhR agonistである抗癌剤に対する感受性を事前に予測することは不可能であった。従って、AhR agonistである抗癌剤に対して、簡便かつ確実な、感受性の判定方法の提供が強く望まれていた。
【解決手段】
AhR agonistである抗癌剤に対する感受性がある細胞とない細胞の間でその遺伝子発現量に有意な差(P<1.0×10-5)がある266種の遺伝子を用いた階層的クラスター解析より、前記化合物に対して感受性を有する癌と、非感受性の癌を明確に識別し、前記化合物による治療効果の予測を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗腫瘍活性を示す化合物に対する原発癌組織の感受性を予測するための遺伝子セットによる感受性の判定方法に関する。本発明の判定方法は、癌患者の前記化合物若しくはその誘導体又は薬理学的に許容できるその塩による治療効果を判定する場合等に有用である。
【背景技術】
【0002】
日本における女性乳がん罹患数は顕著に増加し、1998年には胃癌を抜いて女性がんのトップとなっている。罹患数は2005年で41500人、2010年で45600人、2015年時点で48500人と今後も増加することが予想されている。乳がんの薬物治療としては術前化学療法、術後補助療法及び再発乳癌に対する薬物療法が行われる。その中でもエストロゲンレセプター陽性〔ER(+)〕患者は、抗ホルモン剤治療の適応となっているが、そのうちの半数(全乳癌患者の約3割)にしか有効でないことから、より広いスペクトルを持つ乳癌治療薬が望まれていた。
【0003】
そのような状況の中、(5S,7S)−7−メチル−3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロシンノリン−5−オール(以下150460という)が、既存内分泌療法剤に反応しないER(+)乳癌細胞や、抗エストロゲン剤治療で再発した乳癌細胞、更に一部のER(−)乳癌細胞に対して広い抗腫瘍効果スペクトラムを示すことが明らかとなった(特許文献1)。また、150460にコハク酸を付加して溶解性を向上させたプロドラッグ(以下150460−Pという)も開発されている(特許文献2)。このプロドラッグは生体内の加水分解酵素の働きにより150460を生成すると推定されている。
【0004】
150460と同様の抗腫瘍スペクトルを示す化合物として、2−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−5−フルオロベンゾチアゾール(以下5F−203という)が見出されている(図1)。5F−203は、アリルハイドロカーボン受容体アゴニスト(以下AhR agonistという)として作用し、下流遺伝子であるCYP1A1を誘導する。さらにその抗腫瘍効果にそのCYP1A1活性が必要であることが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。CYPの分子種は各組織に発現しているが、特に肝臓に多く発現しており、その役割として体内に入り込んできた低分子を水酸化し、親水性を増すことで異物の体外排出を促進すると考えられている。また一方で、一部の薬物の活性化にも関与して、薬効に寄与することが一般的に知られている。また、5F−203と同様の機構で作用する化合物として、(5−アミノ−2,3−フルオロフェニル)−6,8−ジフルオロ−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(以下NSC686288という)なども見出されている(非特許文献3)。さらに、AhRの下流には、CYP1A2やCYP1B1といった分子種も存在し、薬剤代謝に関わることが知られている。従って、AhR agonistとして作用し、CYP1A2やCYP1B1によって活性化されて抗腫瘍効果を示す化合物も、150460や5F−203、NSC686288が効果を示す細胞と同様の細胞に作用すると考えられる。
【0005】
5F−203については、3種類の感受性乳癌であるBG1、ZR−75−1及びMCF−7、また非感受性の乳癌であるHs0578T及びMDA−MB−231を用いて、SAGE ライブラリで各遺伝子の発現頻度について解析し、更に定量的PCRによって確認した感受性細胞と非感受性細胞間で発現量に有意差のある遺伝子についての報告がなされている(非特許文献4)。しかしながら、AhR agonist作用を持つ抗癌剤の効果を確実に予見できるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/052866号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/121105号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2001/014354号パンフレット
【特許文献4】国際公開第1996/024592号パンフレット
【非特許文献1】Loaiza−P▲e▼rez AI,Trapani V et al.,Mol.Pharmacol.61(1):13−19(2002)
【非特許文献2】Loaiza−P▲e▼rez AI,Kenney S et al.,Mol.Cancer Ther.3(6):715−725(2004)
【非特許文献3】Kuffel MJ,Schroeder JC,Pobst LJ et al.,Mol.Pharmacol.62(1):143−153(2002)
【非特許文献4】Wallqvist A,Connelly J et al.,Mol.Pharmacol.69(3):737−748.(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらAhR agonistである抗癌剤を患者に投与する場合、薬剤投与の前に感受性の有無を判別する手法はなく大きな問題となっていた。培養癌細胞株の研究から、AhR agonistである抗癌剤は効果を示す細胞と示さない細胞がはっきりと分かれており(図1)、効果を示さない患者への投与を避けるため、事前の診断法の確立が強く望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、AhR agonistである抗癌剤に対しての簡便かつ確実な、癌細胞の感受性の判定方法を提供することである。すなわちAhR agonistである抗癌剤が、治療に有効か否かを、予測する方法を提供することである。
【0009】
本願発明者らは、癌細胞における特定の遺伝子の発現量を測定することによって、AhR agonistであって抗腫瘍活性を有する化合物の癌細胞に対する感受性の有無が明確に区別されることを見出した。更に150460の感受性が不明なヒト乳癌由来のヌードラット皮下移植腫瘍のクラスター解析を行うことで感受性を判定出来ることを証明し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号1〜266で表される遺伝子266種からなる遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の発現量を測定する工程を含む、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性の判定方法、
(2)化合物が(5S,7S)−7−メチル−3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロシンノリン−5−オール、2−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−5−フルオロベンゾチアゾール、(5−アミノ−2,3−フルオロフェニル)−6,8−ジフルオロ−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン又はこれらの薬理学的に許容できるその塩である前記(1)に記載の判定方法、
(3)遺伝子群が配列番号1〜25で表される遺伝子25種からなる遺伝子群である前記(1)又は(2)に記載のAhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性の判定方法、
(4)癌細胞が乳癌細胞、肝癌細胞又は卵巣癌細胞である前記(1)ないしは(3)のいずれか一項に記載の方法、
(5)前記(3)に記載の25種の遺伝子からなる群より選択される1種以上の遺伝子全長またはその部分配列と相補的なオリゴDNAが固定された、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性を判定するためのマイクロアレイ、
(6)前記(5)に記載のマイクロアレイを含む、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物その誘導体、乃至は薬理学的に許容できるその塩に対する感受性の判定方法に用いられるキット、
(7)前記(1)に記載の遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の発現量を測定するためのプライマーセット、
(8)前記(1)に記載の遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の細胞内タンパク質量を定量するための抗体セット、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
癌患者から分離された癌組織から抽出したmRNAを用いて、その遺伝子発現様式から感受性細胞及び非感受性細胞との遺伝子発現様式を比較することで、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物に対する感受性を予測することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】150460と5F−203の乳癌における作用スペクトラムが一致することを示す図である。
【図2】150460感受性乳癌においてCYP1A1mRNAが誘導され、非感受性乳癌においては誘導されないことを示す図である。
【図3】150460感受性乳癌においてCYP1A1蛋白質が誘導され、非感受性乳癌においては誘導されないことを示す図である。
【図4】150460感受性乳癌SK−BR−3においてAhRならびにCYP1A1をノックダウンすることによって、150460の細胞増殖抑制効果がキャンセルされることを示す図である。0、2、10μMの150460を処理し、48時間培養を行った後の各群の細胞数を、150460無処理群の細胞数を100として相対標記した。
【図5】150460が肝癌細胞株に増殖抑制効果を示す図である。
【図6】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図7】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図8】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図9】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図10】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図11】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図12】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図13】本発明において選択された266種の遺伝子のうち30種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図14】本発明において選択された266種の遺伝子のうち26種を示す。感受性細胞、非感受性細胞のいずれに発現が多いかについても合わせて記載した。
【図15】150460の感受性細胞と非感受性細胞が、任意に選択した25種類の遺伝子によるクラスター解析で明確に分けることができることを示す図である。
【図16】任意に選択した25種類の遺伝子によるクラスター解析で感受性の不明なヌードラット皮下移植ヒト乳癌細胞KPL−1が感受性細胞であると示唆されることを示す図である。
【図17】ヌードラット皮下に移植したヒト乳癌細胞KPL−1が150460に感受性を示す図である。横軸に投与開始日からの日数、縦軸に相対腫瘍体積を示す。コントロール群を◆のシンボル、150460−P 60mg/kg 28日間連続経口投与群を■のシンボル、150460−P 30mg/kg 28日間連続経口投与群を▲のシンボル、150460−P 15mg/kg 28日間連続経口投与群を●のシンボルで示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
各種細胞の3万種類以上の遺伝子に対するDNAマイクロアレイ解析の結果、AhR agonistであってCYP1A1により活性化される化合物に感受性のある細胞と感受性のない細胞において、発現量に統計学的な有意差(P<1.0×10-5)が存在する遺伝子が266種あることが明らかとなった。感受性の判定においては、癌患者から分離された癌組織から抽出したmRNAの発現量を遺伝子チップ等の手段を用いて解析する。次いで、前記266種の遺伝子から任意に選ばれた20以上の遺伝子の発現量に基づいて、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物に対する癌細胞の感受性を判定する。
【0014】
これら266種の遺伝子の中から任意の遺伝子の発現量を測定することで、AhR agonistであってCYP1A1により活性化される化合物に対する感受性を判定することができる。さらに、266種の遺伝子から任意に選ばれた20以上の遺伝子の発現量だけでも、感受性の判定が可能である。以下に本発明の詳細を述べる。
【0015】
本発明で用いられる266種の遺伝子は以下の方法により得られる。なお、ここで、「発現量」とは絶対量である必要はなく相対量でよい。また、必ずしも数値的に表現される必要はなく、例えば、標識に蛍光標識等の可視的な標識を用いて目視により判定する場合等も「発現量の測定」にあたる。
【0016】
−DNAマイクロアレイの作製−
合成DNAを用いてDNAマイクロアレイを作製する。なお、DNAマイクロアレイとは、シリコン基板やスライドガラス上に目的遺伝子の部分配列からなる一本鎖オリゴDNAを固定したものであり、DNAチップと呼ばれることもある。固定される一本鎖オリゴDNA配列と相補的な遺伝子の発現量を網羅的に解析するためのツールとして用いられており、1から数十万の遺伝子発現量を一度に解析することが可能となっている。また、ここでいう合成DNAとは、既知の遺伝子に相補的な一本鎖オリゴDNAであり、細胞内の遺伝子発現量を測定するために用いる。合成DNAとしては、例えば25〜100塩基長の長さのものが用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。マイクロアレイの作製方法としては、例えば合成DNAをアレイヤーを用いてスライドガラス上にスポットした後、気相恒温器内にて80℃で1時間静置した状態で保温し、更にUVクロスリンカーを用いて120mJの紫外線を照射し、スポットした合成DNAをスライドガラス表面に固定化して作製する、などの方法が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0017】
−全RNAの抽出−
次いで、癌細胞から全RNAを抽出する。全RNAの抽出は例えば、(Chomczynski,P.and Mackey,K.,BioTechniques 19(6):942−945(1995))に記載の方法に従って行うことができるが、これに限られるものではない。本発明において全RNAを抽出する癌細胞としては、AhR agonistであってCYP1A1により活性化される化合物に対して感受性を有する細胞と感受性を持たない細胞をそれぞれ1種以上選択する必要がある。AhR agonistであってCYP1A1により活性化される化合物に対して感受性を有する癌細胞としては、例えば、HCC1419、MDA−MB−175VII、MDA−MB−361、MDA−MB−453、MCF−7、R27、ZR−75−1、CAMA1、SK−BR−3、ZR−75−30、T−47D及びMDA−MB−468などの乳癌細胞、HepG2及びHep3B等の肝癌細胞などを挙げることができる。AhR agonistであってCYP1A1により活性化される化合物に対して感受性を持たない細胞としては、例えば、MDA−MB−157、MDA−MB−231、MDA−MB−134IV、UACC812、Hs0578T、MDA−MB−435s及びHCC1937等の乳癌細胞、SK−Hep−1、HLF、HLE、PLC/PRF/5及びLi7等の肝癌細胞、AdrR等の卵巣癌細胞を挙げることができる。しかし、ここに挙げられた癌細胞に限定されるものではない。
【0018】
−検体用mRNAの精製−
癌細胞から抽出された全RNAからの検体用mRNAを精製する。mRNAの精製方法・条件に限定はないが、例えば、(Goss TA,Bard M,Jarrett HW.,J.Chromatogr.,588(1−2):157−164(1991))に記載の精製方法等が挙げられる。
【0019】
−標識cDNAの作製−
得られた検体用mRNAを鋳型として、任意の標識分子をつけた核酸を用いることで、標識cDNAを作製することができる。標識分子としては、例えばCyanine 5− deoxyuridinetriphosphate(Cy5−dUTP)、Cyanine 3−deoxyuridinetriphosphate(Cy3−dUTP)等を本発明においては用いることができる。標識cDNAの作成方法・条件は、例えば(Richter,A.et al.,BioTechniques,33(3):620−630(2002))に記載の方法に従って行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
−ハイブリダイゼーション−
得られた標識cDNAを検出用プローブとして、作製したDNAマイクロアレイとハイブリダイゼーションする。これによって、サンプル中に含まれる標識cDNAがDNAマイクロアレイ上の相補的なオリゴDNAと特異的に水素結合する。続いて、洗浄操作によって、DNAマイクロアレイ上のオリゴDNAと特異的にハイブリダイズした標識cDNA以外を除去する。ハイブリダイゼーション操作、洗浄操作の条件は適宜決定されるものであるが、例えば、(Schena,M.et al.,Science,270(5235):467−470(1995))に記載の方法に従って行うことができる。
【0021】
−遺伝子発現量の測定−
ハイブリダイゼーション操作、洗浄操作を行った後、DNAマイクロアレイ上に固定された各合成DNAと結合した標識cDNAの蛍光強度を測定することで、各遺伝子の発現量を見積もることができる。また、1または複数からなる任意の細胞をコントロール細胞とすることで、目的の細胞中の相対的な遺伝子発現量を算出することができる。
【0022】
−統計学的処理−
各遺伝子の遺伝子発現量を統計学的処理により解析し、感受性細胞群と非感受性細胞群で有意に発現量の差がある遺伝子を抽出する。統計学的処理の方法としては、スチューデントのt検定法を用い、統計学的な有意差のあるものを本発明の判定方法において用いる。ここでいう統計学的な有意差とは、感受性群と非感受性群との間で、P<1.0×10-5であるものであり、本発明においてはP<1.0×10-7のものが好ましく、更にはP<1.0×10-9が好ましい。
【0023】
−感受性の判定方法−
癌患者から手術、またはバイオプシー等により採取された癌細胞中における前記遺伝子のうち少なくとも1種以上の発現量を測定する。測定する遺伝子の数は1以上であればいくつでもよく、また、前記266種の遺伝子のいずれかであればよい。中でも前記遺伝子のうち配列番号1〜30のいずれか1以上の遺伝子の発現量を用いることが好ましい。これらのうち、20種以上の遺伝子の発現量を測定することがさらに好ましい。
【0024】
細胞中の各遺伝子の発現量は、細胞中の各遺伝子のmRNA量を測定することにより測定することができ、mRNA量の測定は周知の方法により行うことができる。例えば、本発明の判定方法で用いられるいずれかの遺伝子と相補的なオリゴDNAを固定化したDNAマイクロアレイを作製する。一方、検体のmRNAを元に、前記標識cDNAの作製と同様の方法で、標識cDNAを合成する。得られた標識cDNAを前記DNAマイクロアレイと反応させ、標識cDNAとDNAマイクロアレイ上のオリゴDNAとをハイブリダイズさせる。ハイブリダイズ後洗浄し、DNAマイクロアレイ上の各スポットの標識量を測定することにより遺伝子の発現量を測定することができる。なお、検体中の各遺伝子の発現量を測定する方法は、この方法に限定されるものではなく、遺伝子の発現量を測定できる方法であれば他のいずれの方法をも採用することができる。例えば、リアルタイム検出逆転写PCR法やノーザンブロット法等によっても検体中の各RNAを測定することが可能である。好ましい様態としては、検体から調製した標識cDNAを、マイクロアレイ上に固定化された各オリゴDNAとハイブリダイズさせてその標識量を測定する方法が挙げられる。
【0025】
次に、測定された検体の各遺伝子の発現量を、AhR agonistであってCYP1A1により活性化される化合物に対する感受性を有する細胞及び有さない細胞における前記各遺伝子の発現量と比較する。感受性を有する細胞及び有さない細胞は、培養癌細胞株でも良いし、既知の応答者及び非応答者由来の検体でもよい。
【0026】
感受性を有する細胞及び有さない細胞におけるこれら遺伝子の発現量を指標に各検体を階層的にクラスタリングすることができる。階層的クラスター解析は、「cluster」や「treeview」などのソフトウェアを用いて行うことができる。感受性群と非感受性群で発現量の有意差が十分高い遺伝子発現量を指標にして構築されるクラスターは感受性細胞群と非感受性細胞群に明瞭に区別できる。そのため、感受性を判定したいサンプルをさらに加えた階層的クラスター解析を行って、サンプルが感受性細胞群のクラスターに分布するか非感受性細胞群のクラスターに分布するか判別することによって、サンプルの薬剤感受性を判定することができる。
【0027】
上記の方法により、検体がAhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物に対する感受性を有するか否か、すなわち、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物による治療の応答者であるか非応答者であるかを判定することができる。
【0028】
なお、上記した本発明の方法により、感受性を判定できる化合物はAhR agonistであって抗腫瘍効果を示すものであれば限定されないが、具体例としては(5S,7S)−7−メチル−3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロシンノリン−5−オール(150460)、2−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−5−フルオロベンゾチアゾール(5F−203)又は(5−アミノ−2,3−フルオロフェニル)−6,8−ジフルオロ−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(NSC686288)等が挙げられる。なお、本発明においては、AhR agonistであってCYP1A1、CYP1A2またはCYP1B1により活性化される化合物と同一の作用機序・作用効果を有する化合物及びそれらの誘導体、乃至は薬理学的に許容できるその塩等であればいずれも本発明の判定方法によって、感受性を判定でき、治療効果を予測することができる。ここで、誘導体とは、ある化合物を構成する一つ又は複数の任意の置換基が、任意の異なる置換基または原子で置換された化合物であって、同様の性質の薬効を示すものである。ここで置換基の数は特に限定されないが、5個以下が好ましく、また、置換基としては炭素数1〜6の低級アルキル基、ハロゲン、アミノ基、水酸基、ニトロ基及びカルボキシル基等、特に炭素数1〜6の低級アルキル基を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、薬理学的に許容できる塩としては、メシル酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0029】
本発明のマイクロアレイとは、本発明の判定方法において用いられる遺伝子全長、またはその部分配列と相補的なオリゴDNAを1つ以上固定化したDNAマイクロアレイをいう。前記遺伝子のうち配列番号1〜30のいずれか1以上の遺伝子全長、またはその部分配列と相補的なオリゴDNAを固定化したものが好ましく、20種以上を固定化したものがさらに好ましい。ここでいう相補的なオリゴDNAは一般的に25〜100塩基の長さのものが用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0030】
本発明のキットとは、本発明のAhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性判定のためのマイクロアレイを含むものであって、ハイブリダイゼーションのための試薬、反応液、洗浄液等を含みうる。
【0031】
本発明のプライマーセットとは、本発明のAhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性判定のために用いられる遺伝子をPCR法によって増幅するためのオリゴDNAである。一般的には、17〜40塩基長のオリゴDNAが用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。これらオリゴDNAはホスホロアミダイト法など公知の方法で合成することが可能である。検体由来のmRNAから逆転写反応で合成したcDNAを鋳型として、プライマーを用いたリアルタイムPCR法で目的遺伝子量を定量することができる。該リアルタイムPCR法を行う場合には、PCR産物の生成量を測定するためにサイバーグリーンなどのDNAインターカレーター蛍光色素を用い、測定装置として例えばMX3000P(ストラタジーン社製)を用いることができる。但し、これらの条件は、実験が再現できる限り、適宜変更できる。その変更した条件で発明が実施される場合も、本発明の範囲に含まれるものとする。この方法で目的遺伝子の定量を行うことができるので、以下前記の方法に従って感受性の判別を行うことができる。
【0032】
本発明の抗体セットとは、本発明のAhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性判定のために用いられる遺伝子産物を免疫染色するために用いられる抗体を指す。抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など、特異的に抗原を認識できるものであれば何でもよい。また、これら抗体はマウス、ウサギ、ヤギなどを抗原で免疫して得ることができる。この抗原は目的遺伝子産物の全長でも良いし、その一部でも良い。これら抗体で腫瘍組織を免疫染色することによって、目的遺伝子の発現量を知ることが可能となるので、以下前記の方法に従って感受性の判別を行うことができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づき、より具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1 150460のAhR agonist作用が抗腫瘍効果に必要であることの証明
【0035】
1.150460によるCYP1A1mRNAの誘導
150460感受性の乳癌細胞株MCF−7,T−47D,SK−BR−3,MDA−MB−453,ならびに150460非感受性の乳癌細胞株MDA−MB−435S,Hs0578T,MDA−MB−231をそれぞれ100万個ずつ直径90mmの培養ディッシュに播種し、10%FBSを含むRPMI1640培地中で終夜培養した後、終濃度0及び2.5μMの150460を処理し、3時間培養した。続いて、培養液を除去後、Phosphate Buffered Saline(PBS)で洗浄し、1mLのISOGEN溶液(ニッポンジーン社製)を加えて、細胞を溶解した。溶解した細胞に250μLのクロロホルムを加え、激しく攪拌した後、15,000rpmで3分間,4℃にて遠心し、蛋白質を除去した。上清を500μL回収し、等量のイソプロパノールを加え、室温で10分間保温後、12,000rpmで10分間、4℃にて遠心しRNAを沈降させた。沈降させたRNAを1mLの75%エタノールで洗浄後、エタノールを除去し、水を加えることによってRNA溶液とした。RNA溶液は吸光度を用いて濃度と純度の検定を行った。
【0036】
それぞれ1μgのRNAを用いてcDNA合成を行った。すなわち、1μgのRNAと2μLの50μMオリゴ(dT)20溶液(インビトロジェン社製)を65℃で5分間保温したのち、1μLのSuperscriptIII逆転写酵素(インビトロジェン社製)、4μLの5倍濃度バッファー(SuperScriptIII逆転写酵素に添付のもの)、1μLのRNアーゼインヒビター(インビトロジェン社製)、1μLの0.1Mジチオトレイトール、4μLの2.5mMdNTPを加え、さらに全量が20μLとなるように水を加え、穏やかにピペッティングで攪拌した後、50℃で50分間保温し、cDNAを合成した。
【0037】
続いてcDNA中に含まれるCYP1A1遺伝子発現量の定量を行った。得られたcDNA1μLに、15μLのTaqMan Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社製)、1.5μLのCYP1A1定量用TaqManプローブ(アプライドバイオシステムズ社製)、12.5μLの水を加え、穏やかに攪拌した後、リアルタイムPCR装置MX3000P(ストラタジーン社製)を用い、95℃15秒、60℃1分のサイクルを40サイクル行うことによって、遺伝子の増幅を行った。それぞれの細胞について、遺伝子が対数的に増幅されている点を選択し、Ct値を求めた。コントロール遺伝子としては、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(以下GAPDHという)遺伝子を用い、同様の方法でCt値を求めた。各細胞の150460処理群と非処理群について、CYP1A1遺伝子のCt値から、GAPDHのCt値を引いた値を△Ct値として求め、相互に比較することによって、各群中におけるCYP1A1の相対的な発現量を見積もった。150460非処理群におけるCYP1A1遺伝子発現量を100とした時の、150460処理群の発現量を図2に示した。この結果、150460感受性癌においては、CYP1A1遺伝子発現の誘導が認められるが、150460非感受性癌には認められないことが明らかとなった。
【0038】
2.150460によるCYP1A1蛋白質の誘導
続いて、150460により、CYP1A1の蛋白質が誘導されているかどうか検討した。150460、感受性の乳癌細胞株MCF−7、T−47D,SK−BR−3、MDA−MB−453、ならびに150460非感受性の乳癌細胞株MDA−MB−435S、Hs0578T、MDA−MB−231をそれぞれ100万個ずつ直径90mmの培養ディッシュに播種し、10%FBSを含むRPMI1640培地中で終夜培養した後、終濃度0及び1μMの150460を処理し、6時間培養した。培地を取り除いた後、10mLのPBSにて洗浄を行い、スクレイパーで細胞を回収した。それぞれの細胞に、200μLの細胞溶解液(50mM トリス−塩酸(pH7.5)、300mM 塩化ナトリウム、0.5% トライトンX−100)を加え、ピペッティングで攪拌した後、氷上にて30分間保温した。続いて、15000rpm、30分間、4℃で遠心し、上清を蛋白質画分として回収した。蛋白質画分はBCA蛋白質アッセイキット(ピアス社製)を用いて、蛋白質定量を行い濃度を決定した。20μgずつの蛋白質を10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分画し、ブロッティング装置を用いて、PVDF膜に転写した。5%のスキムミルクを含むTBS−T溶液(20mM トリス−塩酸(pH7.5)、150mM 塩化ナトリウム、0.05% Tween20)で室温にて1時間ブロッキングした後、0.2μg/mLの抗CYP1A1抗体(sc−20772、サンタクルズ社製)を加えて、4℃にて終夜反応した。TBS−Tで3回の洗浄を行った後、二次抗体としてHRP結合抗ウサギIgG抗体(GEヘルスケア社製)を加え、室温で1時間反応した。TBS−Tで3回の洗浄を行った後、ECLウエスタンブロッティングディテクションシステム(GEヘルスケア社製)を用いて化学発光を行い、X線フィルムを感光させた。ウエスタンブロッティングの結果を図3に示す。この結果より、150460感受性細胞においては、CYP1A1蛋白質の誘導が起こり、非感受性細胞では起こらないことが明らかとなった。
【0039】
3.150460の抗腫瘍効果にAhR、CYP1A1が必要であることの証明
続いて、150460の抗腫瘍効果にCYP1A1ならびにAhRが必要であるかどうか検討した。150460感受性の乳癌細胞株SK−BR−3を5万個ずつ24ウエル培養プレートに播種し、10%FBSを含むRPMI1640培地中で終夜培養した後、AhRsiRNA(インビトロジェン社製)、CYP1A1siRNA(インビトロジェン社製)、ネガティブコントロールとしてノンサイレンシングsiRNA(インビトロジェン社製)を以下の方法で導入した。また、AhRsiRNAとCYP1A1siRNAは各3種類ずつを用いた。すなわち、20pmolのsiRNAを1μLのリポフェクタミン2000(インビトロジェン社製)、100μLのOPTI−MEM(インビトロジェン社製)と混合し、室温で20分間保温した後、各培養ウエルに投与した。投与後24時間培養を行い、各遺伝子をノックダウンした後、終濃度0、2、10μMの150460を処理し、さらに48時間培養を行った。続いて、培養液を抜き取り、メタノール固定後、メチレンブルー染色を行うことによって、細胞数を測定し、150460による細胞増殖抑制効果と各siRNAがその作用をキャンセルできるかどうか調べた。その結果を図4に示す。AhRならびにCYP1A1のsiRNAはいずれも150460の細胞増殖抑制効果を強く抑制したことから、150460の細胞増殖抑制作用にAhRとその下流のCYP1A1が必要であることが明らかとなった。
【0040】
実施例2 150460の抗腫瘍効果
150460は、複数の乳癌細胞株に細胞増殖抑制作用を示すが、それ以外の細胞種においてもそのような作用が認められるかどうか肝癌細胞株を用いて検討した。肝癌細胞株HLE、HLF、HuH6、HuH7、PLC/PRF/5、SK−Hep1、HT17、Hep3B、HepG2株を96ウエルの培養ディッシュに播種し、10%FBSを含むRPMI1640培地中で終夜培養した。続いて、終濃度0、0.016、0.08、0.4、2、10μMの150460を処理し、さらに72時間培養を行った。続いて、培養液を抜き取り、メタノール固定後、メチレンブルー染色を行うことによって、細胞数を測定し、150460による細胞増殖抑制効果を調べた。その結果を図5に示す。HuH6、HT17、Hep3B、HepG2株は150460に感受性を示し、乳癌以外の細胞株においても150460は増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。
【0041】
実施例3 マイクロアレイの作製
ヒト遺伝子断片ライブラリ(マイクロダイアグノスティック社)を超微量分注装置(マイクロダイアグノスティック社製、GeneMatrixMaker−R)を用いてスライドガラス(松浪硝子工業社製、S9115)上にスポットし、マイクロアレイを作製した。該マイクロアレイスライドガラスをスライド染色バスケット(松浪ガラス社製、B−60)に挿入し、気相恒温器(Stoval Life Science社製、Hybridization Oven)内にて80℃で1時間静置した状態で保温し、更にUVクロスリンカー(Hoefer社製、UVC500)を用いて120mJの紫外線を照射し、スポットした合成DNAをスライドガラス表面に固定化した。
【0042】
1.判定に使用するための遺伝子の選択
−全RNAの調製−
解析には150460の感受性癌細胞のうち乳癌としてMCF−7、MDA−MB−361、SK−BR−3、T−47D、MDA−MB−453、MDA−MB−175−VII、ZR−75−1、R27、HCC1419、ZR−75−30及びCAMA1の11種類を用いた。また、150460の非感受性細胞のうち、乳癌として、MDA−MB−435S、MDA−MB−134IV、Hs0578T、MDA−MB−231、MDA−MB−157及びUACC812を用い、肝癌として、HLE、SK−Hep−1、PLC/PRF/5、HLF及びLi7、卵巣癌としてAdrRの12種類を用いた。これら細胞については、底面積が175cm2の培養フラスコにて10%FBSを含有するRPMI1640培地で培養し、細胞密度が80〜90%になった時点で、培地を速やかに除去し、10.5mLのISOGENreagent(ニッポンジーン社製)を加えて細胞を溶解後、添付のマニュアルに従って、全RNAを抽出した。プロトコルに準じて得られた100?g以上の全RNAは分光光度計で260nm、280nmの吸光度を測定することで、純度の確認を行った。さらに、変性アガロースゲル電気泳動によって、RNA分解の有無の確認を行った後、以下の実験に進んだ。
【0043】
−標識cDNAの合成−
検体用mRNAは各細胞から抽出した全RNAから、Poly(A)Pureキット(Ambion社製)を用いてポリアデニル酸[ポリ(A)]+RNAを抽出して得た。このmRNAをそれぞれ2.0μg分取し、ラベリング&ハイブリダイゼーションキット(マイクロダイアグノスティック社製)、逆転写酵素SuperScript II(インビトロジェン社製)、及びCyanine 5−deoxyuridinetriphosphate(Cyanine5−dUTP)(PerkinElmer社製)を用い、各細胞検体の標識cDNAを作製した。またコントロールとして、使用した全細胞のmRNAの等量混合サンプルをCyanine 3−deoxyuridinetriphosphate(Cyanine3−dUTP)(PerkinElmer社)で標識したcDNAを作製した。
【0044】
−標識プローブの作製−
これらの標識cDNA、すなわち、Cyanine5で標識された各細胞検体およびCyanine3で標識されたコントロールを、同一試験管内で混合し、Microcon YM30(ミリポア社製)によって精製し、最終的に核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)付属のハイブリダイゼーションバッファーおよび純水を用いて15μLに調製した。
【0045】
−ハイブリダイゼーション−
この溶液を99℃で5分間加熱して熱変性させ、室温で5分間放置した後、マイクロアレイスライドガラスのDNAがスポットされている領域上に滴下し、24mm×40mmのカバーガラス(松浪硝子工業社製、NEOカバーガラス)を被せ、ハイブリダゼーションカセット(マイクロダイアグノスティック社製)に格納した。このマイクロアレイを格納したハイブリダゼーションカセットを、気相恒温器(三洋電機バイオメディカ社製、MIR262)に入れ、42℃で20時間、静置した状態で保温した。
【0046】
−洗浄−
該ハイブリダゼーションカセットを気相保温器からとりだし、核酸標識・ハイブリダイゼーション試薬(マイクロダイアグノスティック社製)付属のハイブリダイゼーション洗浄溶液を用い、同社推奨のプロトコルに従ってスライドガラスを洗浄した。
【0047】
−ハイブリダイゼーションの検出および数値化−
このようにしてハイブリダイゼーションと洗浄を行ったマイクロアレイスライドガラスを、スキャナ(Axon Instrument社製、GenePix4000B)を用いて波長635nmおよび532nmの蛍光シグナルを同時測定した。スキャナ付属の解析ソフトウェア(Axon Instrument社製、GenePix Pro)を用いて光学的に評価し、各試料についてのCyanine3:Cyanine5比からコントロールに対する相対的発現量を算出した。
【0048】
−統計学的処理−
次いで、感受性細胞と非感受性細胞の判別分離に有用な遺伝子を選択するために、感受性細胞及び非感受性細胞間において、各遺伝子の対数変換相対的発現量に対して、スチューデントのt分布の確率を返すTDIST関数を実施してP値を算出した。
【0049】
その結果、順列のP値が1.0×10-5未満である266種類の遺伝子が候補として抽出された(図6〜14)。これら266種類の遺伝子のうち、144の遺伝子は、感受性細胞に比べて非感受性細胞において発現レベルが増大しており、122の遺伝子は発現レベルが減少していた。
【0050】
2.有意差の大きい遺伝子によるクラスタリング
配列番号1〜25の25種類の遺伝子を用いて、階層的クラスター解析を行った。階層的クラスター解析は、M. Eisenにより開発され、インターネットのウェブから利用できるソフトウェアである「cluster」及び「treeview」(http://genome−www5/stanford.edu/MicroArray/SMD/restech.html)を用いて行った。クラスター分割アルゴリズムを適用する前に、各スポットについての蛍光比を対数変換し、次いで、各試料についてのデータをメジアン中央化して実験的なバイアスを除去した。その結果、これらの遺伝子セットを用いた解析により、細胞が感受性と非感受性の2つに明瞭に分離された(図15) 。
【0051】
実施例4 150460感受性が未知である腫瘍の150460感受性の予測
150460感受性が不明な腫瘍の感受性を判定できるかどうか検討する目的で、ヌードラットに移植した乳癌細胞株KPL−1から全RNAを取得し、マイクロアレイプロファイリングを行った。図15で作ったクラスター解析に、KPL−1を加えることによって、KPL−1は150460感受性であることが予想された(図16)。続いて、ヌードラットに移植したKPL−1細胞に150460−Pを投与し、150460感受性であることが確認された(図17)。このことより、この感受性判定方法を用いることによって、感受性が未知の腫瘍であっても、前もって感受性を判定することが出来ることが明らかとなった。以下に具体的実験例を示す。
【0052】
1.in vivo腫瘍からの全RNAの調製とマイクロアレイ解析
150460の感受性が不明なヒト乳癌株KPL−1を、当施設にてヌードマウス(BALB/cAJcl−nu/nu雌性;日本クレア株式会社製)の背側部皮下に移植して継代維持した。そして継代維持したKPL−1をヌードラット(F344/NJcl−rnu/run雌性;日本クレア株式会社製)の皮下に移植して増殖したものを摘出し、液体窒素にて凍結した腫瘍を、予めISOGEN reagent(ニッポンジーン社製)を加えた15mLのチューブに入れた。チューブに入れた凍結腫瘍はポリトロン(KINEMATICA社製)を用いてよく破砕した後、プロトコルに準じて全RNAを抽出した。得られた全RNAは分光光度計で260nm、280nmの吸光度を測定することで、純度と濃度の確認を行った。さらに、変性アガロースゲル電気泳動によって、RNA分解の有無の確認を行った後、以下の実験に進んだ。
【0053】
実施例3の実験例2と同様に、ヌードラットの皮下に移植したKPL−1についてマイクロアレイによる遺伝子発現解析を実施した。そこで得られたデータのうち、配列番号1〜25の25種類の遺伝子発現量を選択した。解析する対象には、感受性癌細胞のうち乳癌としてMCF−7、MDA−MB−361、SK−BR−3、T−47D、MDA−MB−453、MDA−MB−175−VII、ZR−75−1、R27、HCC1419、ZR−75−30及びCAMA1の11種類を用いた。また、150460の非感受性細胞のうち、乳癌として、MDA−MB−435S、MDA−MB−134IV、Hs0578T、MDA−MB−231、MDA−MB−157及びUACC812を用い、肝癌として、HLE、SK−Hep−1、PLC/PRF/5、HLF及びLi7、卵巣癌としてAdrRの12種類を用いた。これらの選択された25種類の遺伝子の発現量に関する11種類の感受性細胞及び12種類の非感受性細胞のデータを元に、KPL−1について階層的クラスター解析を行った。階層的クラスター解析は、実験例2と同様、「cluster」及び「treeview」を用いて行った。クラスター分割アルゴリズムを適用する前に、各スポットについての蛍光比を対数変換し、次いで、各試料についてのデータをメジアン中央化して実験的なバイアスを除去した。その結果、これらの遺伝子セットを用いた解析により、KPL−1が感受性の腫瘍であることが示唆された(図16) 。
【0054】
2.in vivo腫瘍の150460感受性の評価
KPL−1の150460感受性を判断するために、ヌードラット皮下に移植したKPL−1に対する抗腫瘍試験を行った。KPL−1を移植したヌードラットは、投与開始日に腫瘍体積及び体重を基に無作為に各群に振り分けた。腫瘍はデジタルノギスを用いて長径(Lmm)と短径(Wmm)を用いて、腫瘍体積(TV(mm))を以下の式から算出した。
【0055】
【化1】

【0056】
腫瘍体積を算出し、腫瘍の形状、生着位置から不良なものを除外し、腫瘍体積及び体重を用いて多変数による個体の除去を行った後、多変数によるブロック化割付け(SASシステム前臨床パッケージVer.5.0、SASインスティチュートジャパン社製)を行い、1群6匹で4群に割付けた。150460−P非投与群及び150460−Pを一日一回28日間、それぞれ60mg/kg、30mg/kg及び15mg/kgの経口投与を行う群に分けた。投与開始日の腫瘍体積を1とした相対腫瘍体積から、経時的な腫瘍増殖曲線を作成した。その結果、KPL−1は150460に対して感受性を示すことが示された(図17)。このことより、上記遺伝子セットを用いた感受性判定によって、感受性未知の細胞の150460感受性が判定できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の判定方法ならびにキットによって、手術又はバイオプシー等の手段によって癌患者から分離された癌細胞より抽出したmRNAをサンプルとして、その遺伝子発現様式を遺伝子チップ等を用いて解析し、感受性細胞及び非感受性細胞との遺伝子発現様式を比較することで、薬剤に対する感受性を予測することできる。
【配列表フリーテキスト】
【0058】
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配列番号183:TMC4のcDNA配列
配列番号184:ART4のcDNA配列
配列番号185:TMEM183AのcDNA配列
配列番号186:PIK3CDのcDNA配列
配列番号187:OPTNのcDNA配列
配列番号188:JTBのcDNA配列
配列番号189:DZIP1のcDNA配列
配列番号190:METのcDNA配列
配列番号191:FLJ23431のcDNA配列
配列番号192:BTN3A3のcDNA配列
配列番号193:FLJ11628のcDNA配列
配列番号194:SPTBN2のcDNA配列
配列番号195:EPHA1のcDNA配列
配列番号196:FLJ33892のcDNA配列
配列番号197:COL6A2のcDNA配列
配列番号198:TLN1のcDNA配列
配列番号199:IFI44のcDNA配列
配列番号200:MAP7D1のcDNA配列
配列番号201:SOAT1のcDNA配列
配列番号202:FLJ32204のcDNA配列
配列番号203:IGFBP7のcDNA配列
配列番号204:CNTNAP1のcDNA配列
配列番号205:C9orf30のcDNA配列
配列番号206:SLC44A2のcDNA配列
配列番号207:HADHのcDNA配列
配列番号208:ZNF385AのcDNA配列
配列番号209:FLJ32108のcDNA配列
配列番号210:FLJ11417のcDNA配列
配列番号211:TIMP1のcDNA配列
配列番号212:NAV2のcDNA配列
配列番号213:TAP1のcDNA配列
配列番号214:ECHDC1のcDNA配列
配列番号215:RAB3DのcDNA配列
配列番号216:FAM126AのcDNA配列
配列番号217:KIAA0754のcDNA配列
配列番号218:COL6A1のcDNA配列
配列番号219:CTNND1のcDNA配列
配列番号220:ARHGAP23のcDNA配列
配列番号221:AURKBのcDNA配列
配列番号222:LOC151361のcDNA配列
配列番号223:TIMP2のcDNA配列
配列番号224:FAM57AのcDNA配列
配列番号225:SPRY2のcDNA配列
配列番号226:CD44のcDNA配列
配列番号227:TGFBIのcDNA配列
配列番号228:FSCN1のcDNA配列
配列番号229:PIK3R3のcDNA配列
配列番号220:DHTKD1のcDNA配列
配列番号231:C10orf116のcDNA配列
配列番号232:CCDC50のcDNA配列
配列番号233:MGC16291のcDNA配列
配列番号234:TRIP10のcDNA配列
配列番号235:MACF1のcDNA配列
配列番号236:AKT3のcDNA配列
配列番号237:KIRRELのcDNA配列
配列番号238:VCLのcDNA配列
配列番号239:F2RのcDNA配列
配列番号240:SCHIP1のcDNA配列
配列番号241:ADMのcDNA配列
配列番号242:EPS8L1のcDNA配列
配列番号243:ADAM15のcDNA配列
配列番号244:FLJ10768のcDNA配列
配列番号245:NRP1のcDNA配列
配列番号246:FLJ31090のcDNA配列
配列番号247:ARL4CのcDNA配列
配列番号248:FLJ90460のcDNA配列
配列番号249:CCDC88AのcDNA配列
配列番号250:SLC41A3のcDNA配列
配列番号251:NFE2L3のcDNA配列
配列番号252:FLJ14044のcDNA配列
配列番号253:SGK1のcDNA配列
配列番号254:ABCG1のcDNA配列
配列番号255:PARVAのcDNA配列
配列番号256:FLJ45204のcDNA配列
配列番号257:FLJ34580のcDNA配列
配列番号258:GLT25D1のcDNA配列
配列番号259:UBE2E3cのDNA配列
配列番号260:SLC25A1のcDNA配列
配列番号261:FLJ41966のcDNA配列
配列番号262:FLJ32235のcDNA配列
配列番号263:PPP2R5AのcDNA配列
配列番号264:HIG2のcDNA配列
配列番号265:RNF208のcDNA配列
配列番号266:TMEM141のcDNA配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜266で表される遺伝子266種からなる遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の発現量を測定する工程を含む、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性の判定方法。
【請求項2】
化合物が(5S,7S)−7−メチル−3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−5,6,7,8−テトラヒドロシンノリン−5−オール、2−(4−アミノ−3−メチルフェニル)−5−フルオロベンゾチアゾール、(5−アミノ−2,3−フルオロフェニル)−6,8−ジフルオロ−7−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン又はこれらの薬理学的に許容できるその塩である請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
遺伝子群が配列番号1〜25で表される遺伝子25種からなる遺伝子群である請求項1又は請求項2に記載のAhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性の判定方法。
【請求項4】
癌細胞が乳癌細胞、肝癌細胞又は卵巣癌細胞である請求項1ないしは請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項3に記載の25種の遺伝子からなる群より選択される1種以上の遺伝子が固定されたAhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、又は薬理学的に許容できるその塩に対する癌細胞の感受性を判定するためのマイクロアレイ。
【請求項6】
請求項5に記載のマイクロアレイを含む、AhR agonistであって抗腫瘍活性を示す化合物、その誘導体、乃至は薬理学的に許容できるその塩に対する感受性の判定方法に用いられるキット。
【請求項7】
請求項1の遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の発現量を測定するためのプライマーセット。
【請求項8】
請求項1の遺伝子群から選択される1以上の遺伝子の細胞内タンパク質量を定量するための抗体セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−268690(P2010−268690A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120912(P2009−120912)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「遺伝子発現解析技術を活用した個別がん医療の実現と抗癌剤開発の加速」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】