説明

抗腫瘍活性を有するポリメチレン誘導体をリガンドとする新規ビス−プラチナ複合体

【課題】 ビス−プラチナ(II)複合体の中間体を製造する方法を提供する。
【解決手段】 化学式(III)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、ω−アミノ酸の窒素原子をtert−ブチルオキシカルボニル基で保護し、次に、無機酸で処理することで、塩素化酸でない第1の中間体を生成させるステップと、第1の中間体を、ジアミン1モル当たり約0.3〜0.5モルのtert−ブチルオキシカルボニル基で1つのアミノ基が保護された、ジアミンにより生成された第2の中間体と反応させて、第2の中間体を生成させるステップと、および、第2の中間体からtert−ブチルオキシカルボニル基を除去するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのプラチナ原子核がポリメチレン誘導体リガンドによって結合された新規ビス−プラチナ複合体及びそれを含む医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌の化学療法におけるプラチナ複合体の使用は良く知られている。例えば、シスプラチン(CDDP)は精巣癌、卵巣癌、頭部及び首部の癌や肺の小細胞癌に対する治療に使用されている。しかしながら、シスプラチンによる治療はひどい腎毒性作用をもたらす場合がある。更に、臨床医学上の不利益は、後天性の医薬抵抗性の問題であり、結果として腫瘍が薬による治療に対して治療抵抗性になる。
【0003】
シスプラチンによる腎毒性作用を克服するため、第二世代の類似化合物、カルボプラチンが開発された。カルボプラチン、又は[Pt(NH32(CBDCA)](この式中、CBDCAは1,1−シクロブタンジカルボキシレートを表す。)は、シスプラチンと同様に悪性腫瘍(癌)のスペクトルに対して臨床医学上効果的であり、しかし、腎毒性作用の軽減を示す。
【0004】
いくつかの異なったモノ及びビス−プラチナ複合体が異なった腫瘍及び悪性腫瘍(癌)の治療に対する試験のため調製されてきている(米国特許4,225,529;米国特許4,250,189;4,553,502;米国特許4,565,884)。このような化合物のいずれも現在治療には使用されていない。
【0005】
更に最近、新規のビス−プラチナ(II)複合体が開示されている(米国特許4,797,393)。この複合体は、ハロゲン、リン酸、硝酸、カルボン酸、置換基を有するカルボン酸のような(同じ又は異なる)1価の陰イオンリガンドを2つ、或いは、硫酸又はジカルボン酸のような2価の陰イオンリガンドを1つと共に、ジアミン又はポリアミンのリガンドの架橋と、プラチナ複合体に結合した第1級若しくは第2級アミン又はピリジンタイプの窒素−運搬リガンドをもつ。専門技術者は、この複合体は、2つの陰イオンが各プラチナ原子核上の+2の電荷と反対平衡を保っているため、中性であることがわかる。
【0006】
WO 91/03482は、米国特許4,797,393に記載されているようなビス−プラチナ(II)複合体を更に開示している。これらの主な違いは、2つの窒素−運搬中性リガンドおよび各プラチナ原子核上に1つだけ単に荷電したリガンドを有することである。これは結果として、全体で+2価の電荷を持った複合体を生じさせる。これらの複合体は、DNAと鎖間架橋を形成することでDNAの複製を阻害し、このことにより、DNAのコンフォメーションに変化を起こさせ、結果として、複製の阻害と最終的に細胞傷害を引き起こす。
【0007】
このような化合物は、シスプラチン抵抗性の細胞系中ではシスプラチンに対する抵抗性を部分的に克服することができ、従って、シスプラチンよりも広いスペクトルで活性を有し得るとしても、それにも関わらず、シスプラチンに非抵抗性の細胞系に対しては、これらの化合物の活性はシスプラチンに比べて低いようである(表1参照)。
【0008】
一方、ポリアミンは細胞増殖において必須であると考えられている。ほ乳動物細胞中で自然に発生するポリアミンは、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンである。広範な種類の同種のポリアミンが他の生物体では見つかっており、これらの生物の生理学上、重
要な役割を果たしているかもしれない。しかしながら、負に帯電したDNAと陽イオンであるポリアミンとの結合は、DNAの重大な構造変化を誘発することもよく知られている。スペルミジンとスペルミンはDNAを濃縮させ、凝縮させて、あるDNA配列では、B型からZ型への変換を誘発する(マートン,L.J.等、Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.,1995、35;55−91)。これは、ポリアミンが抗腫瘍医薬として使用可能であることを、研究者に注目させた(バス,H.S.等、Biochem.J.,1990,269;329−334;ヤンロン リー等,J.Med.Chem.,1996,39;339−341)。
【0009】
我々は、2番目の窒素原子を、異なった塩基性の基及び塩基性でない基で置換してポリアミン鎖を修飾することで、抗腫瘍医薬としての特に興味ある活性をもつビス−プラチナ複合体が得られることを見い出した。
【0010】
2つのアミド機能を持つリガンドにより架橋されたビス−プラチナ複合体が、Inorg.Chem.34,2316−22(1994)中で開示された。しかし、これらの化合物中の2つのアミン基は各プラチナ原子をキレートし、その結果として、これらの化合物は、本願発明の複合体とは、異なった配座様式をとる。更に、本願発明の複合体は、各プラチナ原子核上に2つの脱離するリガンド(塩素又はジメチルスルホキシド)を運び、そのため、総電荷と反応性が異なると考えられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の1つの目的は、化学式(I)のビス−プラチナ(II)複合体を提供することである。
【0012】
【化1】

【0013】
この式中、X、Y及びZは、アンモニア、塩素、臭素、ヨウ素又はR−COO−C1−C4の化学式のカルボン酸からなる群から選ばれ、ここで、Rは(C1〜C4)のアルキル基であり、但し、X、Y及びZのうち2つはアンモニアであり、他は塩素、臭素、ヨウ素及びカルボン酸(R−COO-)の中から選ばれたものであり、
nとmは、同じでも良く、また、違っていても良く、2〜8の整数であり、
pは整数で、1または2であり、
2N−(CH2n−A−(CH2m−NH2の化学式である2つの機能を有するリガンドは、ポリメチレン誘導体であり、
-pは適当な対イオンであり、
前記複合体のエナンチオマーとジアステレオマーを含む。
【0014】
本願発明の更なる目的は、化学式(I)の化合物を調製する工程を提供することである。
【0015】
本願発明のもう1つの目的は、薬学上許容される添加物と化学式(I)の化合物を含む医薬組成物、及び、一種または2種以上の化学式(I)の化合物を用いて、プラチナ複合体で治療が可能な、腫瘍を治療する方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願発明の1つの目的は、化学式(I)のビス−プラチナ(II)複合体を提供することである。
【0017】
【化2】

【0018】
この式中、X、Y及びZリガンドは、アンモニア、塩素、臭素、ヨウ素又はR−COO-の化学式であるカルボン酸からなる群から選ばれ、ここで、Rは(C1〜C4)のアルキル基であり、但し、X,Y及びZのうち2つはアンモニアであり、他は塩素、臭素、ヨウ素及びカルボン酸(R−COO-)の中から選ばれものであり、
nとmは、同じでも良く、また、違っていても良い、2〜8の整数であり、
pは整数で、1又は2であり、
Aは、−B1−と−B2−(CH2r−B2−から成る群から選ばれ、ここで、rは2〜8の整数であり、B1は−NR1−CO−、−CO−NR1−、−NR1−SO2−NR1−、−NR1−C(=NR2)−NR1−、−NR1−CO−CO−NR1−又は−NR1−CO−NR1−から成る群から選ばれ、B2は、−NR1−CO−又は−CO−NR1−基であり、ここで、R1は水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基であり、R2はR1の意味する基を有するか、または、tert−ブチルオキシカルボニル基であり、
-pは、塩素、臭素、ヨウ素、硝酸、硫酸、硫酸水素、過塩素酸から選ばれた陰イオンである。
【0019】
化学式(I)の化合物のエナンチオマーとジアステレオマーも本願発明の範囲に含まれる。
【0020】
好ましい化学式(I)の化合物は、AがB1であって、B1が上記の意味を有するものである。
【0021】
特に好ましい化学式(I)の化合物は、B1が−NHCO−、−CONH−、−NHCONH−又は−NHCO−CONH−基であるものである。
【0022】
更に、特に好ましい化学式(I)の化合物は、上記の限定に加えて更に、2つのプラチナ原子核がトランスの配座でリガンドを有しているものである。
【0023】
「トランスの配座」とは、化学式(I)の化合物において、2つのアンモニア基がトランスの位置である、即ち、XとZがアンモニアで、他が上記のように定義したものであることを意味する。
【0024】
化学式(I)の化合物は下記のステップを含む手順により調製することができる。
(a)化学式[Pt(X)(Y)(Z)Cl]である前駆体の反応、
この式中、X、Y及びZは上記のように定義されたものであり、2つのアンモニア基はシス配座であってもトランス配座であってもよく、ジメチルホルムアミド中で等量のAgNO3の存在で、化学式(II)である活性中間体を与える。
[Pt(X)(Y)(Z)(DMF)]+NO3- (II)
(b)2モルの中間体(II)とポリメチレン誘導体(III)との縮合、
2N−(CH2n−A'−(CH2m−NH2 (III)
この式中、A'はAと同じ意味を持つか又は、適当な保護基を除去してAに変換できる基であり、化学式(I')のPt複合体を得ることができるものである。
【0025】
【化3】

【0026】
この式中、すべての変数は上記の様に定義したものである。
(c)任意的に存在する保護基の除去、
(d)従来のクロマトグラフィーの手法による、任意的に形成されたジアステレオマーの分離、
化学式[Pt(X)(Y)(Z)Cl]である前駆体は公知の化合物であり、そのいくつかは市販されており購入可能である。
【0027】
外側の配位の範囲中で、硝酸対イオンは任意的に他の陰イオンと交換して、化学式(I)で表される他の化合物を与えることができる。
【0028】
ステップ(a)は、0℃から50℃の間の範囲の温度で、好ましくは、室温で行うことができる。
【0029】
ステップ(b)は、−40℃から室温の間の範囲の温度で、好ましくは、−20℃で行うことができる。
【0030】
10%から100%モル過剰な、化学式(II)で表されるプラチナ中間体を使用することができる。
【0031】
本願発明において使用できる適当な保護基は、塩基性の窒素原子を含む分子に対し一般的に使用される全ての保護基である。特に、好ましい保護基はtert−ブチルオキシカルボニル基である。上記で述べた通り、R2がtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である化合物は、本願発明の範囲に含まれる。これらの化合物は更に、(c)のステップに従い、BOC基の除去により、R2が水素原子である化学式(I)で表される他の化合物へ変換することができる。
【0032】
ステップ(c)は、2級アミンの保護基を除去するための従来法に従って行われる。例えば、tert−ブチルオキシカルボニル保護基が使われる場合、その除去は塩酸の水溶液又は水/メタノール溶液で処理する等のように、有機酸又は無機酸で処理することにより行うことができる。
【0033】
化学式(IIIa)の中間体は、(この式中、B1は−NR1−CO−又は−CO−NR1−基である)スキームIに従って調製される。化学式(IIIb)の中間体は、(この式中、A'は、−B2−(CH2r−B2−基であり、B2は−NR1−CO−又は−CO−NR1である)スキームIIに従って調製される。
【0034】
スキームIとIIに示した工程は、以下のステップを含む。
(e)適用な保護基、好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル基で、ω−アミノ酸の窒素原子の保護し、次に、無機酸による処理により、塩素化されていない酸を得る。
(f)適当な保護基、好ましくは、tert−ブチルオシカルボニル基でジアミンの1つのアミノ基を保護する。
(g)ステップ(e)で得られた中間体をステップ(f)で得られた中間体と反応させて中間体(IV)(スキームI)を与えるか、または、代わりに、ステップ(e)で得られた中間体をジアミンと反応をさせて中間体(V)(スキームII)を与える。
(h)中間体(IV)又は(V)中で、各々に存在する保護基を除去する。
【0035】
基の保護、縮合、保護基の脱離という連続したステップを経て、類似の合成スキームを使用し、(ここで、ジカルボン酸が2つのジアミンと反応するか又は、アミノ酸が他の2つのアミノ酸(この2つアミノ酸は異なるものか又同じもの)と連続して反応する)すべての可能な組み合わせが得られることは、明かである。
【0036】
HOOC−(CH2r−COOH+2H2N−(CH2n−NHBOC→→/NHCO−(CH2r−CONH−/
HOOC−(CH2r−NH2 + 第1のアミノ酸→+第2のアミノ酸→(−CONH−(CH2r−CONH−/
【0037】
ステップ(f)は、ジアミン1モル当たり0.3〜0.5モルの量の範囲で保護剤を使用することで行うことができる。適当な保護基はアミノ酸の第1級アミンに対する保護基であり、このことは、グリーン,T.W.,ウッツ,P.G.M.,「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、ジョン ウィリー & サンズ、1991、に報告されているように、専門的技術者にとっては明かである。
【0038】
ステップ(g)の縮合反応は、カルボキシル基をSOCl2で処理して塩化アシル(酸塩化物)を与えるか、又はN,N'−カルボニルジイミダゾールで同様の処理を行うこと、また、代わりに、2つの中間体がジシクロヘキシルカルボジイミド等のように適当な縮合剤を使用して縮合され得るというような、当業者に知られている方法でカルボキシル基の機能を活性化することにより行うことができる。
【0039】
ステップ(h)中の保護基の除去は、使用された保護基に関係し、特にtert−ブチルオシカルボニル基が使用された場合、その除去は酸、好ましくは有機溶媒中でトリフルオロ酢酸による処理により行われる。
【0040】
スキームII中のステップ(g)において、同じアミノ酸が2モル使用される代わりに、2種の異なるアミノ酸が使用されている場合(即ち、この式中、nとmが同じでない場合)、その後、化学式(IIIb)のポリメチレン誘導体、(この式中、nとmは異なる)が得られることは明かである。反応は、任意的に第1のステップでジアミンの1つの窒素を保護して、次に、保護した同じ基を選択的に脱保護して、そして、第2のアミノ酸と縮合させるという、2つのステップで行うこともできる。
【0041】
化学式(IIIc)のポリメチレン誘導体
2N−(CH2)n−NR1−SO2−NR1−(CH2)m−NH2 (IIIc)
この式中、R1は上記の意味の基を有し、次のステップに従って調製することができる。
【0042】
(i)J.Org.Chem.,55,2682−8(1990)に記載されている方
法に従い、1つのアミノ基が保護されたジアミン2モルと塩化スルホニルとの縮合。この反応は、1つ又は2つのステップによって行うことができる。後者(2つのステップ)の場合、nとmが異なる化合物を得ることができる。
【0043】
(l)窒素上の保護基の除去
ジアミンの適当な保護基は1級又は2級アミンに対する保護基である。このことは、グリーン,T.W.,ウッツ,P.G.M.,「Protective Groups in
Organic Synthesis」第2版、ジョン ウィリー & サンズ,1991に報告されてように、技術的専門家にとっては明かである。好ましい保護基はtert−ブチルオキシカルボニル基である。
【0044】
ステップ(i)は、好ましくは、石油エーテルのように不活性溶媒中で、−10℃〜50℃の範囲の温度で行われる。
【0045】
ステップ(l)中の保護基の除去は、使用された保護基に関係し、特にtert−ブチルオキシカルボニル基の場合が使用された場合、その除去は酸、好ましくは有機溶媒中でトリフルオロ酢酸による処理により行われることができる。
【0046】
化学式(IIId)のポリメチレン誘導体
2N−(CH2)n−NR1−C(=NR2)−NR1−(CH2)m−NH2 (IIId)
この式中、R1は上記の意味の基を有し、R2は水素原子又はtert−ブチルオキシカルボニル基であり、スキームIIIで描かれているように Tetrahedron Letters、40、5933−6(1992)、Organic Synthesis、Coll.Vol.IV、180 and Synthesis、1980、460−6、で述べられている方法に従って調製することができる。
【0047】
スキームIIIに示した工程は下記のステップを含む。
(m)クロロホルムのような不活性溶媒中で、1つのアミノ基が保護されたジアミンをベンゾイルイソチオシアネートと反応させる。
(n)塩基性条件下(水又は水とアルコールの混合溶液中で、アルカリ金属の又はアルカリ土類金属の炭酸塩を使用するような場合)で、窒素上のベンゾイル基を除去し、その後、その同じ窒素を適当な保護基で保護する。
(o)適当な縮合剤の存在下、ステップ(n)で得られた中間体と、ステップ(m)で使用された1つのアミノ基が保護された1モルの、同じジアミンまたは異なるジアミンとを反応させる。
(p)窒素原子に存在する保護基を除去して、R2が水素原子である化合物(IIId)を与える。
(q)一級アミンを適当な保護基、好ましくは、トリフルオロアセチル基で保護する。
(r)グアニジド窒素をtert−ブチルオキシカルボニル基で保護する。
(s)1級アミンの保護基を除去して、R2がtert−ブチルオキシカルボニル基である化合物(IIId)を与える。
【0048】
ステップ(n)に従い適当な保護基は、グリーン,T.W.,ウッツ,P.G.M.,「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、ジョン ウィリー & サンズ、1991に報告してあるように、1級アミンを保護する基である。好ましい保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル基である。ステップ(o)に従った適当な縮合試薬は、例えば、カルボジイミド、好ましくは、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミドのような水溶性のカルボジイミドである。
【0049】
ステップ(p)は、tert−ブチルオキシカルボニル基が保護基として使用された場合、不活性溶媒中で過剰のトリフルオロ酢酸を使用する様な酸性条件下でその後保護基の除去を行うことができる。
【0050】
2がtert−ブチルオキシカルボニル基である化合物(IIId)を得るための別の方法は、スキーム(IV)に示してある。
【0051】
この方法は次のステップを含む。
(t)ジアミンの1つの窒素を酸性条件下で安定な、適当な保護基、好ましくはトリフルオロアセチル基で保護する。
(u)ステップ(t)で得られた化合物を酸性条件(即ち塩酸)下でアンモニウムチオシアネートと反応させる。
(v)チオ尿素の1級窒素原子を適当な保護基、好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル基で保護する。
(z)ステップ(v)で得られた化合物をステップ(t)で使用された1つのアミノ基が保護された1モルの、同じジアミンまたは異なるジアミンと反応させる。
そして、先に述べたようにステップ(s)。
【0052】
2が(C1−C4)のアルキル基である化学式(IIId)のポリメチレン誘導体は、以下のステップを含む工程に従って得ることもできる。
(1)1つのアミノ基が保護されたジアミンとN−アルキルイソチオシアネートをステップ(m)に示した方法に従って反応させる。
(2)適当なアルキル化剤、好ましくはヨウ化メチルで硫黄原子をアルキル化する。
(3)ステップ(2)で得られた中間体を、ステップ(1)で使用されたものと同じ又は異なる、1つのアミノ基が保護されたジアミンと反応させる。
(4)第1級アミン上に存在する保護基を除去する。
【0053】
2が水素原子である化学式(I)のプラチナ複合体は、好ましくは、R2がtert−ブチルオキシカルボニル基である中間体(IIId)から出発して、すでに形成されたプラチナ複合体中のグアニジン窒素からBOC基を除去することにより得ることができる。
【0054】
化学式(IIIe)のポリメチレン誘導体
2N−(CH2n−NR1−CO−CO−NR1−(CH2m−NH2 (IIIe)
この式中、R1は上記の意味の基であり、以下のステップを含む工程により得ることができる。
【0055】
(5)先に述べたように1つのアミノ基が保護された2モルのジアミンを1モルの塩化オキサリルと反応させる。この反応は1つのステップまたは2つの別々のステップで行うことができる。後者(2つのステップ)の場合、2つの異なる、1つのアミノ基が保護されたジアミンを使用して、nとmとが異なる化合物(IIIe)を得ることができる。
【0056】
(6)1級の窒素原子上に存在する保護基を除去する。
【0057】
類似している、化学式(IIIf)のポリメチレン誘導体
2N−(CH2n−NR1−CO−NR1−(CH2m−NH2 (IIIf)
この式中、R1は上記の意味を有し、ステップ(5)中で、塩化オキサリルに代えて、ホスゲン、ジアルキルカルボン酸またはN,N'−カルボニルジイミダゾールの様な適当なカルボニル源を使用することにより得ることができる。この後者が好ましくは使用される。
【0058】
本願発明の化合物は、多くの腫瘍細胞系中(マウス白血病L1210細胞とヒト卵巣癌A2780細胞及びこれらの各々に対応するシスプラチン抵抗性の細胞系L1210/CDDPとA2780/CDDP中)で、その「試験管内での」細胞傷害作用の試験が行われた。表(I)は、シスプラチン及び従来から知られている化合物であるトランス[Pt(Cl(NH3222N−(CH26−NH2](NO32(WO91/03482に記載)と比較して本願発明のいくつかの代表的化合物の薬理学的データを示す。
【0059】
「表1」
表1 シスプラチン、公知のトランス−[Pt(Cl(NH3222N−(CH26−NH2](NO32及び本願発明の代表的化合物の、L1210、L1210/CDDP、A2780及びA2780/CDDP細胞系に対する細胞傷害活性
【0060】
【表1】

【0061】
a)IC50(細胞増殖を50%阻害する薬剤濃度(g/ml)として表される)
は薬剤を非抵抗性及び抵抗性細胞系に暴露してから2時間後測定された。
b)IC50は非抵抗性及び抵抗性細胞系の各々に薬剤を暴露してから1時間後測定された。
【0062】
化合物A=トランス−[Pt(Cl(NH3222N−(CH26−NHCO−CONH−(CH26NH2](NO32
化合物B=トランス−[Pt(Cl(NH3222N−(CH26−NHCONH−(CH26NH2](NO32
【0063】
見てわかるように、本願発明の化合物は、シスプラチンの効果を限定する耐性機構を克服することができる。これは間違いなく本願発明の化合物の重要な特徴である。
【0064】
更に、公知化合物 トランス−[Pt(Cl(NH3222N−(CH26−NH2](NO32と比較した場合、本願発明化合物は、非抵抗性細胞系においてもシスプラチンと同等か、またはそれ以上の高い活性を維持していることを示している。
【0065】
更に、本願発明の化合物は、L1210腫瘍細胞がマウスの腹膜腔内(ip)に植え付けられた「生体内で」で試験された。そして、この化合物は、腫瘍の培養後、24、120及び216時間目に、腹膜腔内に投与された。この化合物はこのような実験モデル系でも高い抗腫瘍性を証明した。
【0066】
化学式(I)の化合物は、シスプラチンの処理により耐性となったヒトまたは動物腫瘍
に対して、或いは抵抗性となった腫瘍に対して投与する場合、ヒトの体表面積(1平方メートル)当たり0.1mg〜1.2gの範囲の投与量で、前記の腫瘍の症状を緩和させることができる。
【0067】
更に一般的に、本願発明の化合物はシスプラチンが使用されるのと同じ病理学上の病気の治療に使用することができる。この治療には、腫瘍、感作または放射線の増強の治療、「ドープル等、Cisplatin Current Status and Developments、Ed.A.W.プレステイク等、Academic Press、125(1980);ドープル等、Platinum Metals Res.,29,118(1985)、そして、African sleeping sickness「ファレル等、Biochem.Pharmacol.,33,961(1984)」のように寄生虫の病気の治療も含まれる。
【0068】
それ故、本願発明のもう一つの目的は、シスプラチンにより治療され得るほ乳動物耐性腫瘍又は、少なくとも1種の化学式(I)で表される化合物の効果的抗腫瘍量に対して抵抗性を有するほ乳動物耐性腫瘍に対する治療方法である。
【0069】
本願発明の化合物の効果的投与量は従来法に従って専門の臨床医により決定され得る。多種多様な動物に対する投与量とヒトの投与量(体表面積 mg/m2を基準とする)との関係はフラインリッヒ等のQuantitative Comparison of Toxicity of Anticancer Agents in Mouse、Rat、Hamster、Dog、Monky and Man、Cancer Chemother、Rep.,50、N.4、219−244(1966)に記載されている。
【0070】
投与量は専門の臨床医に知られているように多くのファクターによって変わるが、通常、患者は体重当たり、0.1〜1200mg/kgの複合体の投与を受ける。
【0071】
時として、抗腫瘍活性を高めるか又はプラチナ複合体の治療に伴って生じるであろう好ましくない副作用を軽減する1種又は2種以上の薬を一緒に、本願発明のプラチナ複合体を投与することは都合が良いとわかることもあり得る。
【0072】
例えば、英国特許2174905と米国特許4,71,528、に明かにされているように、本願発明のプラチナ複合体は還元されたグルタチオンと一緒に投与できる。
【0073】
更に、抗腫瘍活性を有する他のプラチナ複合体と一緒に、本願発明のプラチナ複合体を投与することは都合が良いこともあり得る。
【0074】
抗腫瘍活性を有するプラチナ複合体と少なくとも化学式(I)の1つの化合物を含む医薬組成物は、本願発明の更なる目的である。
【0075】
治療の方法は、専門の臨床医に知られているように治療となる腫瘍の種類と患者の症状に従って適宜変えられる。
【0076】
本願発明の化合物は、任意的に適量の塩化ナトリウム(0.1〜0.9mg/ml)を含む、好ましくは無菌水溶液である。この溶液は、好ましくは、静脈中(iv)又は動脈中(ia)を経由して投与されるが、他の投与形式も特別の場合には使用することもできる。
【0077】
非経口投与の医薬組成物は、上記で定義した様に無菌食塩水又は、例示的に、溶液の調製のための滅菌パウダー、及び、筋肉中(im)又は腹膜中(ip)への投与のための油
状調製物を含む。
【0078】
他の有用な医薬組成物は、経口投与(os)に有用な形態である、シロップまたは同様の液状形態及び、タブレット、カプセルのような固体形状であり得る。
【0079】
本願発明に従った医薬組成物は Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook、XVII版,Mack Pub.,N.Y.,U.S.A.,で報告されているように以下の公知の方法に従って調製できる。
【0080】
本願発明の更なる目的は、従来の担体及び添加剤と混合して、少なくとも一種の化学式(I)で表される化合物を治療上効果がある量含む医薬組成物である。
【実施例】
【0081】
本願発明は以下の実施例により更に説明する。
【0082】
「準備1」 N−BOC 6−アミノヘキサン酸
6−アミノヘキサン酸(10g)を炭酸カリウム(7.85gを80mlの水に溶解)水溶液中に溶解させた。di−tert−ブチルジカルボネート(19.4g)を含む、エチレングリコールジメチルエーテル(65ml)溶液が室温下で加えられ、反応混合液は一晩攪拌された。そして、0℃〜5℃に冷却された後、pH=2とするため、6N塩酸が混合液に加えられた。
【0083】
この濁った懸濁液は酢酸エチル(2×100ml)で抽出された。有機層を合わせた抽出物は、塩水(2×50ml)で洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、少量に濃縮された。油状の残渣(約20g)はジイソプロピルエーテル(20ml)に溶解され、n−ヘキサン(100ml)で希釈された。一時間冷却、攪拌後、ろ過により白色固体が得られ、無水リンで室温下乾燥させて、14.9gの生成物が得られた。融点:42〜44℃。
【0084】
「準備2」 N−BOC 1,6−ジアミノヘキサン
窒素雰囲気下、di−tert−ブチルジカルボネート(123.6g)を含む無水テトラヒドロフラン(600ml)溶液は、冷却(0℃〜5℃)されて、攪拌された1,6−ジアミノヘキサン(200g)を含むTHF(600ml)溶液に、徐々に3時間かけて滴下された。10℃で3時間、そして、室温で16時間後、溶媒はほとんど完全に真空下で除去された。残った濃縮溶液(約300ml)は、tert−ブチルメチルエーテル(460ml)に溶解され、2N 水酸化ナトリウム(300ml)で洗浄された。この水層は更に、tert−ブチルメチルエーテル(2×300ml)で抽出された。この有機層を合わせた抽出物は硫酸ナトリウム(50g)で乾燥され、そして、少量に濃縮され、減圧蒸留により(0.8torr、122〜124℃)、N−tert−ブチルオキシカルボニル−1,6−ジアミノヘキサン(72g)が得られた。蒸留の最初は、もう一つ反応のために回収され得る過剰なヘキサンジアミンを含む。
【0085】
「準備3」 (N−BOC−6−アミノヘキシル)−N'−BOC−6−アミノカプロンアミド
窒素雰囲気下、1,1'−カルボニルジイミダゾール(1.7g)が少しづつ約30分間かけて、攪拌した、N−BOC−6−アミノヘキサン酸(2g)を含む、0℃〜5℃に冷却したテトラヒドロフラン(20ml)溶液に加えられた。混合の最後には、温度は25℃までになり、攪拌は更に1時間続けられた。その後、N−BOC−1,6−ジアミノヘキサン(1.87g)を含むテトラヒドロフラン(5ml)溶液が、室温で一晩攪拌された反応混合液に加えられた。溶媒を除去した後、残渣はクロロホルム中(50ml)に溶解され、塩水で洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、真空下で濃縮された。油状残渣
(4.5g)はジエチルエーテル(10ml)に溶解され、結晶化を起こさせるため、n−ヘキサン(50ml)で希釈された。室温で1時間攪拌後、ろ過により白色固体が得られ、析出、乾燥後、3.5gの生成物が得られた。融点:83℃〜85℃。
【0086】
「準備4」 N−(6−アミノヘキシル)6−アミノカプロンアミド
(N−BOC−6−アミノヘキシル)−N'−BOC−6−アミノカプロンアミド(5.3g)を含む、塩化メチレン(50ml)とトリフルオロ酢酸(9.5ml)の溶液は室温下で1晩攪拌された。混合溶液は注意して、冷却した6N 水酸化ナトリウム溶液(100ml)に加えられ、塩素化した溶媒は分離され、水層は更に塩化メチレン(6×50ml)で抽出された。有機層を合わせた抽出物は、硫酸ナトリウムで乾燥され、真空下で濃縮され、固体になる傾向がある無色油状の生成物2.34gが得られた。
【0087】
「準備5」 N−(7−アミノヘプシル)−8−アミノオクタンアミド
準備1〜4において述べた方法に従って、7−アミノヘプタン酸を出発物質として、表題の化合物が得られる。
塩酸塩の元素分析(%計算値/測定値):C 52.32/52.23;H 10.24/10.25;N 12.20/12.04;Cl 20.59/19.93
【0088】
「準備6」
準備1〜4の方法に従って、下記の化合物が得られる。
N−(6−アミノヘキサノイル)−ヘプタンジアミン
N−(4−アミノブチロイル)−ヘキサンジアミン
N−(5−アミノペンタノイル)−オクタンジアミン
N−(3−アミノプロパノイル)−ブタンジアミン
N−(7−アミノヘプタノイル)−オクタンジアミン
N,N'−(ビス−(6−アミノヘキサノイル))ヘキサンジアミン
N,N'−(ビス−(7−アミノヘプタノイル))オクタンジアミン
N,N'−(ビス−(2−アミノアセチル))エタンジアミン
N,N'−(ビス−(2−アミノアセチル))ペンタンジアミン
N,N'−(ビス−(4−アミノブタノイル))ヘキサンジアミン
N,N'−(ビス−(3−アミノプロパノイル))ブタンジアミン
N,N'−(ビス−(8−アミノオクタノイル))オクタンジアミン
N,N'−(ビス−(5−アミノペンタノイル))ヘプタンジアミン
【0089】
「準備7」 N,N'−ビス−[6−(tert−ブチルオキシカルボニルアミノ)ヘキシル]尿素
N−(tert−ブチルオキシカルボニル)−1,6−ヘキサンジアミン(5.11g)を含む、51mlの無水テトラヒドロフラン溶液は0℃まで冷却され、N,N'−カルボニルジイミダゾール(1.95g)が加えられる。温度を室温までその後上げられ、反応混合液は1晩攪拌し続けられる。その後、水(150ml)が加えられ、生じた混合液は酢酸エチル(3×40ml)で抽出される。有機抽出層は集められ、固体として結晶化するまで、少量の溶液に濃縮される。攪拌下で30分後、この固体結晶物がろ過される。生成物4.3gが得られる。融点:91℃〜93℃。
【0090】
「準備8」 N,N'−ビス(6−アミノヘキシル)尿素
N,N'−ビス−(6−(N−BOC)アミノヘキシル)尿素(4.7g、準備7)を含む、61mlの塩化メチレン溶液に、室温で攪拌下、7.82mlのトリフルオロ酢酸が加えられ、そして、反応混合液は一晩攪拌し続けられる。溶媒は減圧下で蒸発され、残渣に、塩化ナトリウムで飽和した10%水酸化ナトリウム溶液(150ml)が加えられ、その後、塩化メチレン(3×40ml)で抽出される。有機抽出物は集められ、硫酸ナ
トリウムで乾燥され、少量(約10ml)に濃縮される。30mlのtert−ブチルメチルエーテルが加えられて、生成物は結晶化する(2g)。融点:90℃〜91℃。
【0091】
「準備9」
準備7と8で述べた方法に従って、下記の中間体が得られる。
N,N'−ビス−(8−アミノオクチル)尿素
N,N'−ビス−(2−アミノエチル)尿素
N,N'−ビス−(5−アミノペンチル)尿素
N−(6−アミノヘキシル)−N'−(4−アミノブチル)尿素
N−(7−アミノヘプチル)−N'−(8−アミノオクチル)尿素
N−(3−アミノプロピル)−N'−(5−アミノペンチル)尿素
N−(2−アミノエチル)−N'−(4−アミノブチル)尿素
【0092】
「準備10」 N,N'−ビス−[6−(tert−ブチルオキシカルボニルアミノ)ヘキシル]オキサルアミド
N−BOCヘキサンジアミン(10g)とトリエチルアミン(9.65ml)を含む、90mlの無水塩化メチレン溶液は0℃まで冷却され、塩化オキサリル(2.015ml)を含む6mlの塩化メチレン溶液が一滴づつ、30分かけて滴下される。反応は、開放系で行われる。温度はその後、室温まで上げられ、反応混合物は4時間攪拌し続けられる。反応は混合液を氷/水につけることにより終了させる。30分後、固体が析出し、この固体は回収され、40mlの酢酸エチルで30分間攪拌処理される。生成物4.2gが得られる。融点:174℃〜178℃。
【0093】
「準備11」 N,N'−ビス−(6−アミノヘキシル)オキサルアミド
N,N'−ビス−[6−(tert−ブチルオキシカルボニルアミノ)ヘキシル]オキサルアミド(4g)とトリフルオロ酢酸(6.3ml)とを含む、50mlの塩化メチレン溶液は24時間攪拌し続けられる。上記無色塩化メチレン層はデカンテーションにより分離され、反応層に、10℃に保った20%水酸化ナトリウム溶液(150ml)が一滴づつ滴下される。非結晶性の固形が沈殿し、塩化メチレン(3×150ml)で抽出される。集められた有機抽出物は、硫酸ナトリウムで乾燥され、その後、約10mlまで濃縮される。150mlのtert−ブチルメチルエーテルを加えることにより固形物が沈殿し、更に2時間20分攪拌し続けられる。生成物1.4gが得られる。融点:115℃〜116℃。
【0094】
「準備12」
準備10と11に述べてられた方法により、下記の中間体が得られる。
N,N'−ビス−(8−アミノオクチル)オキサルアミド
N,N'−ビス−(2−アミノエチル)オキサルアミド
N,N'−ビス−(5−アミノペンチル)オキサルアミド
N−(6−アミノヘキシル)−N'−(4−アミノブチル)オキサルアミド
N−(7−アミノヘプチル)−N'−(8−アミノオクチル)オキサルアミド
N−(3−アミノプロピル)−N'−(5−アミノペンチル)オキサルアミド
N−(2−アミノエチル)−N'−(4−アミノブチル)オキサルアミド
【0095】
「実施例1」[(トランス−PtCl(NH32)22N−(CH26−NHCONH−(CH26−NH2](NO32
1gのトランス−プラチンを含む、100mlのジメチルホルムアミド溶液に、0.53gの硝酸銀が加えられた。混合液は、18時間、感光下、室温で攪拌された。塩化銀の沈殿をろ過後、0.35gのN,N'−ビス(6−アミノヘキシル)尿素を含む、25mlのジメチルホルムアミド溶液が、−20℃、30分以内で、1滴づつ滴下して、ろ液に
加えられた。−20℃で1時間攪拌され、更に室温で2時間攪拌された後、1gの活性炭が混合液に加えられ、30分間攪拌された。混合液はろ過され、蒸発させられて50〜60mlにされ、50mlのジエチルエーテルがこの溶液に加えられて、白色沈殿が得られた。この沈殿はろ過され、25mlのアセトン中で2日攪拌された。この化合物は、ろ過され、20mlのメタノール中で18時間攪拌された。最後に、白色の複合体は真空ろ過により集められ、ジエチルエーテルで洗浄され、真空下、56℃で乾燥された。
1H NMRinD2O:3.08、2.68、1.68、1.47、1.35ppm.
元素分析(%計算値/測定値):C 17.13/17.38;H 4.64/4.68;N 15.37/15.20;Cl 7.78/7.64;Pt 42.80/42.19
【0096】
「実施例2」
実施例1に述べた方法に従い、準備9又は12で得られた適当なポリメチレン誘導体を出発物質として、下記の複合体を得ることができる。
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH28−NHCONH−(CH28−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH22−NHCONH−(CH22−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH25−NHCONH−(CH25−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH26−NHCONH−(CH24−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH27−NHCONH−(CH28−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH23−NHCONH−(CH25−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH22−NHCONH−(CH24−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH26−NHCO−CONH−(CH26−NH2](NO32
1H NMRinD2O:3.12、2.65、1.63、1.49、1.37ppm
元素分析(%計算値/測定値):C 17.90/18.13;H4.51/4.48;N 14.91/14.93;Cl 7.55/7.55
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH28−NHCO−CONH−(CH28−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH22−NHCO−CONH−(CH22−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH25−NHCO−CONH−(CH25−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH26−NHCO−CONH−(CH24−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH27−NHCO−CONH−(CH28−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH23−NHCO−CONH−(CH25−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH22−NHCO−CONH−(CH24−NH2](NO32
【0097】
「実施例3」[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH27−CONH−(CH27−NH2](NO32
トランス−プラチン(1.94g)を含む、215mlの無水ジメチルホルムアミド溶
液に、室温で攪拌下、1.09gの硝酸銀が加えられる。この反応混合液は攪拌下、18時間感光される。そして、沈殿した塩化銀は、ろ過して除かれる。この結果生じた黄色透明の溶液は、−20〜−15℃に冷却され、準備5の化合物(0.701g)を含む、32mlのジメチホルムアミド溶液が1滴づつ約30分かけて、滴下される。−20℃で約3時間そして更に室温で3時間放置後、2gの炭が加えられ、その懸濁液は15分間攪拌され、その後、ろ過されて、そして、この透明溶液は沈殿物が生じるまでアセトン(約1.01L)で希釈される。この沈殿物は1晩攪拌し続けられ、そして、ろ過により回収され、1.13gの生成物が得られる。もとの溶液をアセトン(760ml)で希釈することで、更に419mgの生成物が得られる。
【0098】
生成物はメタノール/ジメチルホルムアミド=2:1中に溶解することで、再結晶することができ、また、アセトン(ジメチルホルムアミドに関して、約10:1)を加えることにより、再沈殿させることができる。
1H NMRinD2O:1.35ppm(m、12H);1.62ppm(m、8H);2.55ppm(t、2H);2.70ppm(m、4H);3.20(t、2H)
【0099】
「実施例4」
実施例3で述べた方法に従い、準備6で得られた適当なポリメチレン中間体を出発物質として下記のプラチナ複合体が調製される。
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH25−CONH−(CH27−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH23−CONH−(CH26−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH24−CONH−(CH28−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH22−CONH−(CH24−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH32)22N−(CH26−CONH−(CH28−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH25−CONH−(CH26−NHCO−(CH25−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH26−CONH−(CH28−NHCO−(CH26−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−CH2−CONH−(CH22−NHCO−CH2−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−CH2−CONH−(CH25−NHCO−CH2−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH23−CONH−(CH26−NHCO−(CH25−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH27−CONH−(CH28−NHCO−(CH27−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH3222N−(CH24−CONH−(CH27−NHCO−(CH24−NH2](NO32
[(トランス−PtCl(NH322(H2N−(CH27−CONH−(CH27−NH2)](NO32ジニトレート
1H−NMRinD2O:3.2ppm(t、2H)、2.55−2.85ppm(m、4H);2.25ppm(t、2H);1.45−1.8ppm(m、8H);1.35ppm(brs、12H)
195Pt−NMRinNaCl/D2O:−2421ppm
元素分析(%計算値/測定値):C 19.48/19.24;H 4.90/4.89
;N 13.63/13.48;Cl 7.67/7.56;Pt 42.20/41.29、[トランス−(PtCl(NH322(H2N−(CH25−CONH−(CH26−NH2]ジニトレート
1H−NMRinD2O:3.2ppm(t、2H);2.7ppm(brq、4H);2.2ppm(t、2H);1.2−1.8ppm(m、14H)
元素分析(%計算値/測定値):C 16.33/16.21;H 4.45/4.35;N 14.28/14.19;Cl 8.03/7.95;Pt 44.21/43.42、[トランス−(PtCl(NH322(H2N−(CH25−CONH−(CH22−NHCO−(CH25−NH2]ジニトレート
1H−NMRinD2O:3.3ppm(s、4H);2.7ppm(m、4H);2.2ppm(t、4H);1.3−1.7ppm(m、12H)、
元素分析(%計算値/測定値):C 17.92/17.92;H 4.51/4.18;N 14.91/14.35;Cl 7.55/7.06;Pt 41.52/41.92
【0100】
【化4】

【0101】
【化5】

【0102】
【化6】

【0103】
【化7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(III)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2n−A’’−(CH2m−NH2 (III);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、A’’は、−NR1−CO−又は−CONR1−であり、ここで、R1は、水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基である)
ω−アミノ酸の窒素原子をtert−ブチルオキシカルボニル基で保護し、次に、無機酸で処理することで、塩素化酸でない第1の中間体を生成させるステップと、
第1の中間体を、ジアミン1モル当たり0.3〜0.5モルのtert−ブチルオキシカルボニル基で1つのアミノ基が保護された、ジアミンにより生成された第2の中間体と反応させて、第2の中間体を生成させるステップと、および、
第2の中間体からtert−ブチルオキシカルボニル基を除去するステップとを含む方法。
【請求項2】
化学式(III)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2n−A’’’−(CH2m−NH2 (III);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、A’’’は、−B’’2−(CH2r−B’’2−であり、ここで、rは2〜8の整数であり、B’’2は、−NR1−CO−又は−CO−NR1−であり、ここで、R1は水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基である)
ω−アミノ酸の窒素原子をtert−ブチルオキシカルボニル基で保護し、次に無機酸で処理することで、塩素化酸でない第1の中間体を生成させるステップと、
第1の中間体をジアミンと反応させて、第2の中間体を生成させるステップと、および、
第2の中間体からtert−ブチルオキシカルボニル基の除去するステップとを含む方法。
【請求項3】
化学式(IIIc)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2)n−NR1−SO2−NR1−(CH2)m−NH2 (IIIc);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、R1は水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基である)
ω−アミノ酸の窒素原子をtert−ブチルオキシカルボニル基で保護し、次に無機酸で処理することで、塩素化酸でない第1の中間体を生成させるステップと、
第1の中間体の存在下、1つのアミノ基が保護されたジアミン2モルと塩化スルホニルとを縮合させるステップと、および、
窒素原子からtert−ブチルオキシカルボニル基を除去するステップとを含む方法。
【請求項4】
化学式(IIId)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2)n−NR1−C(=NR2)−NR1−(CH2)m−NH2 (IIId);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、R1は水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基であり、R2は水素原子又はtert−ブチルオキシカルボニル基である)
最初の1つのアミノ基が保護されたジアミンを不活性溶媒中でベンゾイルイソチオシアネートと反応させて、第1の中間体を生成させるステップと、
塩基性条件下、第1の中間体の窒素原子上のベンゾイル基を除去し、次に保護基でその窒素を保護して、第2の中間体を生成させるステップと、
第2の中間体を、第2の中間体1モルと又は最初の1つのアミノ基が保護されたジアミンとは異なる1つのアミノ基が保護されたジアミン1モルと、反応させて、縮合試薬の存在下で、第3の中間体を生成させるステップと、
第3の中間体からその窒素原子に存在する保護基を除去するステップと、
その1級アミンを第2の保護基で保護するステップと、
そのグアニジノ窒素をtert−ブチルオキシカルボニル基で保護するステップと、および、
第2の保護基を1級アミンから除去するステップとを含む方法。
【請求項5】
不活性溶媒がクロロホルムである請求項4記載の方法。
【請求項6】
第2の保護基がトリフルオロアセチル基である請求項4記載の方法。
【請求項7】
化学式(IIId)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2)n−NR1−C(=NR2)−NR1−(CH2)m−NH2 (IIId);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、R1は、水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基であり、R2は、tert−ブチルオキシカルボニル基である)
酸性条件下で実質的安定な最初の保護基でジアミンの1つの窒素を保護して、1つのアミノ基が保護されたジアミンを有する第1の化合物を生成させるステップと、
第1の化合物をアンモニウムチオシアネートと酸性条件下で反応させ、チオ尿素を生成させるステップと、
チオ尿素の1級窒素原子をtert−ブチオキシカルボニル基で保護し、第2の化合物を生成させるステップと、
第2の化合物を1モルの1つのアミノ基が保護されたジアミンと反応させるステップと、および、
1級アミンから保護基を除去して、化合物(IIId)を生成させるステップとを含む方法。
【請求項8】
第1の保護基がトリフルオロアセチル基である請求項7記載の方法。
【請求項9】
第1の保護基がtert−ブチルオキシカルボニル基である請求項7記載の方法。
【請求項10】
化学式(IIId)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2)n−NR1−C(=NR2)−NR1−(CH2)m−NH2 (IIId);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、R1は、水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基であり、R2は(C1〜C4)のアルキル基である)
1つのアミノ基が保護されたジアミンをN−アルキルイソチオシアネートと不活性溶媒中で反応させて、第1の中間体を生成させるステップと、
第1の中間体の硫黄原子をアルキル化剤でアルキル化して、第2の中間体を生成させるステップと、
第2の中間体を1つのアミノ基が保護されたジアミンと反応させるステップと、および、
1級アミンに存在する保護基を除去するステップとを含む方法。
【請求項11】
アルキル化剤がヨウ化メチルである請求項10記載の方法。
【請求項12】
化学式(IIIe)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2)n−NR1−CO−CO−NR1−(CH2)m−NH2 (IIIe);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、R1は水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基である)
2モルの1つのアミノ基が保護されたジアミンと1モルの塩化オキサリルとを反応させて、中間体を生成させるステップと、および、
この中間体から1級窒素原子に存在する保護基を除去するステップとを含む方法。
【請求項13】
化学式(IIIf)のポリメチレン誘導体を調製する方法であって、
2N−(CH2)n−NR1−CO−NR1−(CH2)m−NH2 (IIIf);
(この式中、nとmは、各々独立で、2〜8の整数であり、R1は水素原子又は(C1〜C4)のアルキル基である)
2モルの1つのアミノ基が保護されたジアミンと1つのカルボニル源とを反応させるステップと、および、
1級窒素原子に存在する保護基を除去するステップとを含む方法。
【請求項14】
カルボニル源がN,N'−カルボニルジイミダゾールである請求項13記載の方法。

【公開番号】特開2008−303216(P2008−303216A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135734(P2008−135734)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【分割の表示】特願平10−507093の分割
【原出願日】平成9年7月22日(1997.7.22)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(508154494)ヴァージニア コモンウェルス ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】