説明

抗腫瘍薬組み合わせ

【課題】医薬用途に用いられる4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エン酸[4−(3−クロロ−4−フルオローフェニエルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]アミドの原料である4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エン酸誘導体、並びにこれらの誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エン酸誘導体は、(1)4−ジメチルアミノクロトン酸トリメチルシリル、(2)4−ジメチルアミノクロトン酸メチル、(3)4−ジメチルアミノクロトン酸(4)4−ジメチルアミノクロトン酸塩酸塩(5)並びに4−ジメチルアミノクロトン酸クロライドである。これらの誘導体の製造法は、例えば、化合物(1)は4−ブロモクロトン酸トリメチルシリルをジメチルアミンと反応させて製造され、更に加水分解することにより化合物(3)を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)および4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エン酸[4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アミドとのラパマイシン42−エステル(EKB−569)の組み合わせの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンはストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって生産される大環状トリエン抗生物質であり、抗真菌活性を、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して、インビトロおよびインビボで有することが見出された[非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;特許文献1;および特許文献2]。加えて、ラパマイシンは単独で(特許文献3)またはピシバニールと組み合わせて(特許文献4)抗腫瘍活性を有することが示された。
ラパマイシンの免疫抑制効果は非特許文献4に開示された。他の大環状分子であるシクロスポリンAおよびFK−506は、また免疫抑制剤として有効であり、それ故、移植片拒絶を予防するのに有用であることが示された[非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;および特許文献5]。非特許文献7はラパマイシンが実験的アレルギー性脳脊髄炎モデル、多発性硬化症モデル;アジュバント関節炎モデル、関節リウマチモデルに有効であり;IgE様抗体の形成を有効に阻害することを開示した。
【0003】
ラパマイシンはまた全身性エリテマトーデス[特許文献6]、肺炎症[特許文献7]、インスリン依存性糖尿病[特許文献8]、乾癬のような皮膚障害[特許文献9]、腸障害[特許文献10]、血管損傷後の平滑筋細胞増殖または内膜肥厚[特許文献11および特許文献12]、成人T細胞白血病/リンパ腫[特許文献13]、眼炎症[特許文献14]、悪性癌[特許文献15]、心臓炎症性疾患[特許文献16]、および貧血[特許文献17]の予防または治療に有用である。
3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)はインビトロおよびインビボの両方のモデルで腫瘍増殖に対して有意な抑制効果を示したラパマイシンのエステルである。CCI−779を含む、ラパマイシンのヒドロキシエステルの調製および使用は特許文献18に開示されている。
【0004】
CCI−779は、細胞毒性とは反対に細胞増殖抑制性を示し、腫瘍進行までの期間または腫瘍再発までの期間を遅延することができる。CCI−779はシロリムス(sirolimus)に類似の作用機序を有すると考えられる。CCI−779は細胞質タンパク質FKBPと結合して複合体を形成し、酵素、mTOR(ラパマイシンの哺乳動物における標的、FKBP12−ラパマイシン関連タンパク質[FRAP]としても知られている)を阻害する。mTORのキナーゼ活性の阻害は、サイトカインの刺激による細胞増殖、細胞周期のG1期を調節するいくつかの主要タンパク質のmRNAの翻訳、およびIL−2誘発性転写を含む様々なシグナル伝達経路を阻害し、細胞周期のG1期からS期への進行を阻害する。G1からS期への遮断を生じさせるCCI−779の作用機序は抗癌剤では新規である。
【0005】
インビトロで、CCI−779は多くの組織学的に多様な腫瘍細胞の増殖を阻害することが示された。CCI−779に対して最も感受性が高いものの中には中枢神経系(CNS)癌、白血病(T細胞)、乳癌、前立腺癌およびメラノーマ株があった。該化合物は細胞周期のG1期で細胞を停止させた。
ヌードマウスのインビボ研究ではCCI−779が多様な組織学的型のヒト腫瘍異種移植片に対する活性を有することが証明された。神経膠腫はCCI−779に対して特に感受性が高く、該化合物はヌードマウスにおける同所神経膠腫モデルについての活性があった。インビトロでのヒト神経膠芽腫細胞株の(血小板由来)増殖因子誘発刺激はCCI−779によって著しく抑制された。インビボで研究された2つの乳癌株のうちの1つだけではなくヌードマウスにおけるいくつかのヒト膵腫瘍の増殖もまたCCI−779によって阻害された。
【0006】
タンパク質チロシンキナーゼはATPまたはGTPから基質タンパク質上に位置するチロシン残基へのリン酸基の転移を触媒する種類の酵素である。タンパク質チロシンキナーゼは明らかに通常の細胞増殖で役割を果す。成長因子受容体タンパク質の多くはチロシンキナーゼとして機能し、それらのシグナル伝達の達成は上記のこのプロセスによるものである。成長因子と上記受容体との相互作用は細胞増殖の正常な調節において必要な事象である。しかしながら、ある状況下では突然変異または過剰発現の結果としてこれらの受容体は調節が解除され得る;その結果、細胞増殖が制御されず、腫瘍増殖に至ることがあり得、最終的には癌として知られる疾患に至ることがあり得る[非特許文献8および非特許文献9]。本発明の化合物の標的である成長因子受容体キナーゼおよびそれらの同定された癌原遺伝子の中には上皮増殖因子受容体キナーゼ(EGF−Rキナーゼ、erbB癌遺伝子のタンパク質産物)があり、該産物はerbB−2(neuまたはHER2とも言う)癌遺伝子により産生される。リン酸化事象は細胞分裂が生じるのに必要なシグナルであるため、および過剰発現または突然変異したキナーゼは癌と関係付けられたため、この事象の阻害剤であるタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は、制御されないかまたは異常な細胞増殖を特徴とする癌および他の疾患の治療に関する治療的価値があるだろう。例えば、erbB−2癌遺伝子の受容体キナーゼ産物の過剰発現はヒト乳癌および卵巣癌と関係付けられている[非特許文献10および非特許文献11]。EGF−Rキナーゼの調節解除は、類表皮腫瘍[非特許文献12]、乳癌[非特許文献13]、および他の主要器官に関する腫瘍[非特許文献14]と関係付けられた。癌の発病において調節が解除された受容体キナーゼにより果たされる役割の重要性のため、多くの最近の研究が有望な抗癌治療剤としての特異的PTK阻害剤の開発を取り扱っている[いくつかの最近のレビュー:非特許文献15および非特許文献16]。
【0007】
4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エン酸[4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アミド(EKB−569)はインビトロおよびインビボの両方のモデルで腫瘍増殖に対する有意な阻害効果を有するEGFRキナーゼ阻害剤である。EKB−569のような、EGFRキナーゼ阻害剤の調製および使用は特許文献19に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,929,992号
【特許文献2】米国特許第3,993,749号
【特許文献3】米国特許第4,885,171号
【特許文献4】米国特許第4,401,653号
【特許文献5】米国特許第5,100,899号
【特許文献6】米国特許第5,078,999号
【特許文献7】米国特許第5,080,899号
【特許文献8】米国特許第5,321,009号
【特許文献9】米国特許第5,286,730号
【特許文献10】米国特許第5,286,731号
【特許文献11】米国特許第5,288,711号
【特許文献12】米国特許第5,516,781号
【特許文献13】欧州特許出願公開525,960A1
【特許文献14】米国特許第5,387,589号
【特許文献15】米国特許第5,206,018号
【特許文献16】米国特許第5,496,832号
【特許文献17】米国特許第5,561,138号
【特許文献18】米国特許第5,362,718号
【特許文献19】米国特許第6,002,008号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C. Vezinaら, J. Antibiot. 28, 721 (1975)
【非特許文献2】S. N. Sehgalら, J. Antibiot. 28, 727 (1975)
【非特許文献3】H. A. Bakerら, J. Antibiot. 31, 539 (1978)
【非特許文献4】FASEB 3,3411(1989)
【非特許文献5】FASEB 3, 5256 (1989)
【非特許文献6】R. Y. Calneら, Lancet 1183 (1978)
【非特許文献7】R.Martelら [Can. J. Physiol. Pharmacol. 55, 48 (1977)]
【非特許文献8】Wilks A. F., Adv. Cancer Res., 60, 43 (1993)
【非特許文献9】Parsons, J. T.;Parsons, S. J., Important Advances in Oncology, DeVita V.T. Ed., J. B. Lippincott Co., Phila., 3 (1993)
【非特許文献10】Slamon, D. J.ら, Science, 244, 707 (1989)
【非特許文献11】Science, 235, 1146 (1987)
【非特許文献12】Reiss, M.ら, Cancer Res., 51, 6254 (1991)
【非特許文献13】Macias, A.ら, Anticancer Res., 7, 459 (1987)
【非特許文献14】Gullick, W. J., Brit. Med. Bull., 47, 87 (1991)
【非特許文献15】Burke. T. R., Drugs Future, 17, 119 (1992)
【非特許文献16】Chang, C. J.;Geahlen, R. L., J. Nat. Prod., 55, 1529 (1992)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は抗腫瘍薬組み合わせ化学療法としてのCCI−779およびEKB−569の組み合わせの使用を提供する。特に、これらの組み合わせは腎癌、軟部組織癌、乳癌、肺の神経内分泌腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、頭頸部癌、神経膠腫、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵癌、リンパ腫、メラノーマ、小細胞肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、胃癌、白血病、結腸直腸癌、および未知の原発癌の治療に有用である。本発明はまた抗腫瘍薬組み合わせ化学療法としての使用に関するCCI−779およびEKB−569の組み合わせを提供し、CCI−779もしくはEKB−569のいずれかまたは両方の投与量は治療量以下の有効な量にて使用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はHCT116細胞におけるEKB−569、CCI−779、およびEKB−569+CCI−779の組み合わせの細胞毒性曲線を示す。
【図2】図2はEKB−569+CCI−779の組み合わせの(50%有効レベルにおける)アイソボログラムを示す。
【図3】図3は50〜65%の範囲の種々の終点に由来するEKB−569+CCI−779の組み合わせに関するアイソボログラムを示す。
【図4】図4はEKB−569+CCI−779の組み合わせの相乗的相互作用の3次元分析を示す。
【図5】図5はEKB−569+CCI−779の組み合わせの3次元相乗作用プロットの等高線プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用する場合、「治療」なる用語は、新生物疾患を有する哺乳動物における新生物の増殖の阻害、該新生物の根絶、または該哺乳動物の寛解を目的としてかかる哺乳動物にCCI−779およびEKB−569の組み合わせの有効量を提供することによってかかる哺乳動物を治療することを意味する。
本発明で使用される場合、組み合わせを提供することに関する「提供する」なる語は、組み合わせを直接投与すること、または体内で組み合わせの有効量を形成する組み合わせの成分のうちの片方または両方のプロドラッグ、誘導体、またはアナログを投与することのいずれかを意味する。
【0013】
CCI−779の調製は米国特許5,362,718に開示されている(出典明示により本明細書の一部とする)。CCI−779の改良した調製は米国特許出願SN09/670,358に記載されている(出典明示により本明細書の一部とする)。CCI−779を抗腫瘍薬として使用する場合、初回静脈点滴量が1日投与計画(2〜3週ごとに5日間毎日)で投与する場合には約0.1〜100mg/mであり、また、毎週1回投与計画で投与する場合には約0.1〜1000mg/mであるように計画される。経口または静脈点滴は好ましい投与経路であり、静脈点滴がより好ましい。
EKB−569は米国特許6,002,008に開示される手順に従って調製することができる(出典明示より本明細書の一部とする)。EKB−569の調製に関する好ましい手順を本明細書に記載する。EKB−569を抗腫瘍薬として使用する場合、初回経口投与量が1日当たり1〜100mgであるように計画される。EKB−569は、患者耐性に応じて、治療期間の間、例えば14日間、毎日投与し、その後、休止期間(全く薬物を投与しない)を置くことができるか、または長期治療期間(例えば、6ヶ月またはそれ以上)の間、連続的に投与することができる。
【実施例】
【0014】
CCI−779とEKB−569との組み合わせの抗腫瘍活性はインビトロ標準薬理試験法にて確認された;使用した手順および得られた結果を以下に簡単に記載する。
【0015】
細胞増殖法
7%CO下にて37℃で、10%ウシ胎仔血清(FBS、Life Technologies)および50μg/mlゲンタマイシン(Life Technologies)を補充したRPMI 1640培地(Life Technologies、Inc.、Gaithersburg、MD)中にてHCT 116結腸腺癌細胞を維持した。5%FBSおよび50μg/mlゲンタマイシンを含有するRPMI 1640培地200μl中、96ウェルマイクロタイターディッシュ(6000細胞/ウェル)にて細胞をプレーティングし、37℃で一夜インキュベートした。同培地にて化合物希釈液を5X最終濃度で調製し、該薬物希釈液50μlを細胞含有ウェルに加えた。2つの薬物の組み合わせに関連する研究のために、1つの化合物の段階希釈をもう1つの化合物の投与量を固定して調製した。別法として、チェッカー盤希釈系列を使用した。細胞を薬物の存在下で3日間培養した。対照として未処理の細胞を含んだ。タンパク質結合色素であるスルホローダミンB(SRB、Sigma-Aldrich、St Louis、MO)を使用して生存細胞のパーセンテージを測定した。50%冷トリクロロ酢酸50μlを加えて細胞タンパク質を各ウェル中に沈殿させた。1時間後、該プレートを水で広範に洗浄し、乾燥させた。SRB色素試薬(1%酢酸中0.4%SRB、1ウェル当たり80μl)を加え、プレートを室温で10分間保存した。次いで、プレートを1%酢酸で完全に洗浄し、乾燥させた。細胞結合色素を10mMトリス(150μl)に溶解させ、マイクロタイタープレートリーダーで540nmにて吸光度を読み取った。細胞の生存率(未処理の細胞と比較)を化合物投与量に対してプロットして、固定された成長阻害割合を引き起こす化合物の濃度を測定した。
【0016】
相乗作用評価
アイソボログラムを使用して2つの薬剤の相互作用を研究した。本明細書では、ある特定の終点(例えば、50%の細胞成長阻害、IC50)を生じる各薬物単独の濃度を2つのグラフ軸上にプロットした。2つの点を繋ぐ直線は、相互作用が純粋に加法的である場合に同等に有効な濃度の2つの薬物の全ての組み合わせを表す。アイソボログラムの予想される細胞毒性の左への移動(凹側を上にした曲線)は相乗的相互作用を表す。逆に、右への移動(凸側を上にしたアイソボログラム)は拮抗的相互作用を表す。種々の終点に関するアイソボログラムを同一のグラフにプロットすると、各薬物の濃度は同一の効果を生じる各薬物単独の濃度分率として表された。これにより各軸上に無単位の測定値を有する対称的なアイソボログラムが作成され、種々の終点の直接的な比較を可能にする。
薬物相互作用の研究に関するもう1つのモデルはPrichardおよびShipman[Antiviral Research.14:181-206(1990)]によって提示された。これは3次元モデルである:各薬物に対して1つずつ、そして、3つ目は生物学的効果に対するものである。理論的な加法的相互作用は加法性の非類似部位モデル(Bliss independence)に基づいて個々の用量応答曲線から計算される。予想される細胞毒性を表す計算した加法的表面を実験表面から差し引いて毒性上昇(相乗作用)または毒性減少(拮抗作用)の領域を示す。生じた表面は、相互作用が加法的であれば、計算した加法的表面上に阻害率0%の水平面として現れる。この面から逸脱するピークと谷は、各々相乗作用および拮抗作用を示す。Microsoft Excel基本ソフトウェアであるMacSynergyIIを使用して、全ての計算を自動的に行った。このスプレッドシートは理論的な加法的相互作用を計算し、95%の信頼レベルで、有意な相乗的相互作用または拮抗的相互作用を位置決定し定量化する。結果を3次元プロット、または等高プロットとしてプロットした。
【0017】
結果
HCT 116細胞は、低いが検出可能なレベルのEGFRを発現し、EGFR阻害剤による阻害に感受性が高いので、HCT 116細胞を選択した。該細胞はCCI−779に対してやや耐性があるが、この薬物の多量投与(5〜10μg/ml)により阻害される。EKB−569単独、CCI−779単独、またはCCI−779の投与量を固定したEKB−569の希釈系列の存在下でHCT−116細胞を培養した。3日間成長させて、SRB試験法を使用して細胞生存率を測定した。細胞毒性曲線を図1に示す。HCT116細胞でEKB−569は0.31μg/mlのIC50値を得た。この化合物を2.08μg/mlのCCI−779(単独投与した場合、成長阻害率41%であった)と組み合わせた場合、IC50は0.03μg/mlまで減少し、10倍減少する。0.026μg/mlのCCI−779(単独では36%細胞増殖を阻害する)と組み合わせた場合、IC50値は0.051μg/mlまで減少し、6倍減少する。投与量を固定したEKB−569の存在下にてCCI−779を用いて用量応答曲線を作成した場合、同様の結果が観察された。この薬物相互作用の性質を同定するために、EKB−569およびCCI−779の組み合わせのアイソボログラム(50%の有効レベルで)を作成した(図2)。該アイソボログラムは凹側を上にして深く窪み、2つの薬物間の実質的な相乗的相互作用を示す。最も相乗的な点で、0.077μg/mlのCCI−779と組み合わせた0.03μg/mlのEKB−569が0.31μg/mlのEKB−569単独または4.3μg/mlのCCI−779単独(各薬物単独でのIC50)と同等に有効であった。それ故、細胞増殖を50%阻害するために、薬物を組み合わせた場合、各薬物単独と比較してEKB−569の投与量では10倍減少およびCCI−779の投与量では50倍減少を必要とした。50〜65%の範囲の種々の終点由来のアイソボログラムもまた試験した。図3に示されるように、作成されたアイソボログラムはほとんど重ねることができ、試験したあらゆる有効レベルで相乗作用を示す。
【0018】
また、3次元分析を使用してEKB−569およびCCI−779間の相互作用を評価した。ここでは、0%の平面は加法的相互作用を表し、ピークおよび谷は各々、2つの薬物間の相乗作用または拮抗作用の領域を表す3次元プロットで薬理的相互作用を表す。図4では、EKB−569およびCCI−779の組み合わせは、アイソボログラム研究で示される結果と一致する広範囲の相乗的相互作用を生じた。3次元相乗作用プロットの等高プロットは最大の相乗的毒性が生じる薬物濃度の同定を容易にする(図5)。0.0005〜3μg/mlのCCI−779および0.16〜0.4μg/mlのEKB−569で広範囲の相乗作用が観察された。この領域内で、最大相乗作用の2つのピークが0.0005〜0.003μg/mlおよび0.05〜0.3μg/mlのCCI−779および0.25〜0.37μg/mlのEKB−569で生じた。
【0019】
これらの標準薬理試験法の結果に基づき、CCI−779とEKB−569との組み合わせは一緒になって相乗的に作用し、抗腫瘍療法として有用である。より特に、これらの組み合わせは腎癌、軟部組織肉腫、乳癌、肺の神経内分泌腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、頭頸部癌、神経膠腫、非小細胞肺癌、前立腺癌、膵癌、リンパ腫、メラノーマ、小細胞肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、胃癌、白血病、結腸直腸癌、および未知の原発癌の治療に有用である。これらの組み合わせは少なくとも2つの活性な抗腫瘍薬を含有するため、このような組み合わせの使用はまた薬剤の一方または両方が治療量以下の有効な投与量で使用されて、個々の化学療法剤に付随した毒性を軽減させる各薬剤の組み合わせの使用に関して提供する。
【0020】
化学療法を提供する際、異なる作用様式を有する複数の薬剤が化学療法「カクテル」の一部として典型的に使用される。本発明の組み合わせは治療される新生物の性質によって1つまたはそれ以上の付加的な抗腫瘍薬を含有することができる化学療法カクテルの一部として使用されることが予想される。例えば、本発明はまた、代謝拮抗物質(すなわち、5−フルオロウラシル、フロクスウラジン、チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ゲムシタビン、カペシタビン、ペントスタチン、トリメトレキセート、またはクラドリビン);DNA架橋およびアルキル化薬(すなわち、シスプラチン、カルボプラチン、ストレプタゾイン、メルファラン、クロラムブシル、カルムスチン、メトクロレタミン、ロムスチン、ビスルファン、チオテパ、イホファミド、またはシクロホスファミド);ホルモン薬(すなわち、タモキシフェン、ロロキシフェン、トレミフェン、アナストロゾール、またはレトロゾール);抗生物質(すなわち、プリカマイシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、ドキソルビシンまたはダウノルビシン);免疫調節薬(すなわち、インターフェロン、IL−2、またはBCG);有糸分裂阻害剤(すなわち、エストラムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビノレルビン);トポイソメラーゼ阻害薬(すなわち、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、またはテニポシド);および他の薬剤(すなわち、ヒドロキシ尿素、トラスツズマブ、アルトレタミン、リツキシマブ、L−アスパラギナーゼ、またはゲムツズマブオゾガマイシン)のような、他の化学療法剤と組み合わせて使用されるCCI−779/EKB−923組み合わせの使用を包含する。
【0021】
本発明で使用される場合、組み合わせ投与方針は同時に行うことができ、または、CCI−779をEKB−923とは化学療法単位の間の異なる時点で投与するスタガー投与方針で行うことができる。2つの薬剤の投与間のこの時差は数分、数時間、数日、数週、またはそれ以上の範囲であり得る。したがって、組み合わせなる語は同時にまたは単位投与として投与されることを必ずしも意味せず、各成分が所望の治療期間の間に投与されることを意味する。該薬剤はまた異なる方法で投与されてもよい。例えば、CCI−779とEKB−569との組み合わせでは、CCI−779が経口または非経口投与され(非経口が好ましい)、他方EKB−569が非経口、経口、または他の許容される方法で投与されえることが考えられる。これらの組み合わせは毎日、毎週、または1ヶ月に1回でも投与することができる。化学療法的投与方針に典型的であるように、化学療法単位を数週間後に繰り返してもよく、化学療法単位は2つの薬剤の同一の投与時間枠に従ってもよいか、または患者の反応に基づいて変更されてもよい。
【0022】
化学療法に典型的であるように、投与方針は、疾患の重篤度、疾患に対する反応、いくつかの治療関連毒性、年齢、患者の健康状態、および他の随伴する障害または治療を含む多くの因子に基づいて主治医によって厳密にモニターされる。
CCI−779とEKB−569との組み合わせで得た結果に基づいて、CCI−779の初回静脈点滴量は約0.1〜100mg/m、好ましくは約2.5〜70mg/mであるように計画される。CCI−779はまた静脈内投与により、典型的には30分間かけて投与され、週に約1回投与されるのが好ましい。EKB−569の初回一日量は約1〜100mgであり、5〜75mgが好ましい。1回またはそれ以上の治療サイクルの後、投与量は得られた結果および観察された副作用に応じて上方または下方に調節され得る。
【0023】
本発明の活性化合物を含有する経口処方物は錠剤、カプセル剤、バッカル剤、トローチ剤、ロゼンジ剤および経口リキッド剤、懸濁剤または液剤を含む、いずれかの慣用的に使用される経口形態を含むだろう。カプセル剤は活性化合物と医薬上許容されるスターチ(コーン、ポテトまたはタピオカスターチ)、糖類、人工甘味料、結晶および微結晶セルロースのような粉末セルロース、小麦、ゼラチン、ガムなどのような不活性充填剤および/または希釈剤との混合物を含有するだろう。有用な錠剤処方物は慣用的な圧縮法、湿潤造粒法または乾燥造粒法によって調製され、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合シリケート、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥スターチおよび粉糖を包含するがそれらに限定されない医薬上許容される希釈剤、結合剤、潤沢剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定剤を使用し得る。好ましい表面改質剤としてはノニオンおよびアニオン表面改質剤が挙げられる。表面改質剤の代表例としてはポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書における経口処方物は標準の遅延または時間放出処方を使用して活性化合物の吸収を変化することができる。経口処方はまた、必要に応じて適当な可溶化剤または乳化剤を含有していてもよい水またはフルーツジュース中にて活性成分を投与することから成ってもよい。
【0024】
エアゾールの剤形で気道に直接化合物を投与することが望ましい場合がある。
該化合物はまた非経口または腹腔内投与してもよい。遊離塩基または医薬上許容される塩としてのこれらの活性化合物の液剤または懸濁剤はヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適当に混合した水にて調製することができる。分散剤はまたグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその油中混合物にて調製することができる。通常の貯蔵および使用条件下にて、これらの製剤は微生物の増殖を防止するために保存料を含有する。
【0025】
注入使用に適した医薬剤形としては、滅菌水性液剤または分散剤および滅菌注入液剤または分散剤の即時調製用の滅菌散剤を含む。いかなる場合も、該剤形は無菌でなければならず、注射が容易である程度に流動性がなければならない。それは製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの適当な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。
この開示の目的では、経皮投与は体表ならびに上皮および粘膜組織を含む身体の通路の内側の内張りを横切るあらゆる投与を含むと理解される。かかる投与は本発明の化合物、またはその医薬上許容される塩を、ローション剤、クリーム剤、フォーム剤、パッチ剤、懸濁剤、液剤および(直腸および膣)坐剤中で使用して行われるだろう。
【0026】
経皮投与は、活性化合物、および、活性化合物に対して不活性であって、皮膚に対して毒性が無く、皮膚を介して血流中に全身吸収させるための薬剤のデリバリーを可能にする担体を含有する経皮パッチの使用を介して達成され得る。該担体はクリーム剤および軟膏剤、ペースト剤、ゲル剤、および閉塞装置のような多くの形態をとり得る。クリーム剤および軟膏剤は水中油型または油中水型のいずれかの粘稠液体または半固体エマルションであり得る。活性成分を含有する石油または親水性石油中に分散した吸収性粉末から成るペーストが適当であり得る。担体を有するまたは有しない活性成分を含有するレザバーを覆う半透膜、または活性成分を含有するマトリックスのような種々の閉塞装置が血流中に活性成分を放出するために使用され得る。他の閉塞装置は文献公知である。
坐剤処方物は、坐剤の融点を変えるためにワックスを加えたかまたは加えないカカオ脂、およびグリセリンを含む、伝統的な物質から製造され得る。種々の分子量のポリエチレングリコールのような水溶性坐剤基剤を使用することもできる。
【0027】
以下は市販の出発物質または利用可能な文献手法に従って製造することができる出発物質からのEKB−569の調製を記載する。
【0028】
4−ブロモクロトン酸TMSからの4−ジメチルアミノクロトン酸の調製
【化1】

【0029】
ジメチルアミン211ml(THF中2M、0.422モル)を4−ブロモクロトン酸TMS 50g(0.211モル、GC−MSで75.9%)のTHF 250ml中溶液にN下にて0〜50℃で滴下した。反応混合物を室温で30分間攪拌した。白色固体の副産物を濾去した。濾液に水2mlを加え、次いで、シーディングした。形成した結晶を濾過し、エーテルで洗浄してオフホワイト色固体の生成物18.3g(2つの収穫物から)を得た。収率は67.2%であった(GC−MSで純度98%、NMRは該構造と一致した)。
【0030】
4−ブロモクロトン酸メチルからの4−ジメチルアミノクロトン酸メチルの調製
【化2】

【0031】
ジメチルアミン120ml(THF中2M、0.24モル)を4−ブロモクロトン酸メチル20g(純度85%、0.095モル)のTHF 150ml中溶液に窒素下にて0〜50℃で滴下した。反応混合物を室温で15分間攪拌した。TLC(EtNを数滴加えた9:1のジクロロメタン:メタノール)は4−ブロモクロトン酸メチルが残存することを示した。反応混合物を40〜450Cで15分間加熱した。白色固体の副産物を濾去した。濾液を蒸発させて黄色油状物(14g)を得た。黄色油状物をCHCl 100mlに溶解させ、HOで2回洗浄した。水性層をCHCl 100mlで抽出した。CHCl層を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過した。濾液を蒸発させて油状物(12g)を得た。収率は88%であった。NMRは微量の4−ブロモクロトン酸メチルを有する所望の生成物であることを示した。
【0032】
4−N,N−ジメチルアミノクロトン酸メチル・塩酸塩の大規模調製
【化3】

【0033】
テトラヒドロフラン(0.71kg、0.80L)で3Lフラスコを満たした。4−ブロモクロトン酸メチル(0.20kg、0.13L、d=1.522g/mL)を加え、テトラヒドロフラン(0.18kg、0.20L)ですすいだ。溶液を攪拌し、0〜10℃に冷却した。滴下漏斗をジメチルアミンのテトラヒドロフラン中溶液で満たし、温度を0〜10℃に維持しながら1時間15分かけて加えた。混合物を最低30分間攪拌し、TLCによって反応完了をチェックした。検出可能な出発物質(4−ブロモクロトン酸メチル)が≦2%存在する場合に反応を完了とした。混合物をブーフナー漏斗から3L多口フラスコへ冷却濾過し、予め冷却した(0〜10℃)テトラヒドロフラン(2×0.18kg、2×0.20L)ですすぎ、滴下が止まるまで吸引し続けた。該フラスコに攪拌器、温度計、および真空蒸留装置を装着した。溶液を、125〜200mmHgの減圧下、40℃の最大釜温度で蒸留して濃縮して200mLの釜容量を得た。イソプロパノール(0.22kg、0.28L)を加え、混合物を0〜10℃に冷却した。蒸留ヘッドを塩化水素のイソプロパノール中溶液で満たした滴下漏斗に取り替え、温度を0〜10℃で維持しながらpHが2.0〜3.0に達するまで45分間かけて加えた。混合物を最低30分間保持し、ブーフナー漏斗で冷却濾過し、イソプロパノール(2×0.12kg、2×0.15L)ですすいだ。濾過ケークをせき止め、滴下が止まるまで吸引を続けた。生成物を50℃および10mmHgの真空オーブン中で18〜20時間乾燥させた。
【0034】
4−ジメチルアミノクロトン酸メチルからの4−ジメチルアミノクロトン酸・塩酸塩の調製
【化4】

【0035】
NaOH溶液(HO 25ml中3.35g、0.084モル)を4−ジメチルアミノクロトン酸メチル12g(0.084モル)のMeOH 100ml中溶液に室温で滴下した。反応混合物を40〜45℃に1時間加熱し、次いで、室温に冷却した。5N HClでpHを1〜2に調節した。混合物を濃縮して濃厚な油を得、これを脱水アルコールと一緒にトリチュレートして固体を形成した。固体副産物を濾去した。濾液を蒸発させて油状物を得、これをIPAと一緒にトリチュレートした。白色固形生成物(7g)を得た。収率は50%でGC−MSによる純度は86.3%であった。
【0036】
4−N,N−ジメチルアミノクロトン酸・塩酸塩の大規模調製
【化5】

【0037】
2L多口フラスコに攪拌器、温度計、滴下漏斗、および窒素保護を装着した。該フラスコをエタノール(0.39kg、0.50L)で満たした。4−N,N−ジメチルアミノクロトン酸メチル・塩酸塩(0.125kg)を加え、エタノール(0.10kg、0.125L)ですすいだ。懸濁液を攪拌し、0〜10℃に冷却した。滴下漏斗を水酸化ナトリウム(50%)(0.11kg、0.072L、d=1.53g/mL)で満たし、温度を0〜10℃に維持しながら20分間かけて加えた。僅かな発熱が観察され、混合物が黄色に変化した。混合物を最低15分間攪拌し、次いで、18〜22℃まで加温し、最低4時間保持した。TLCによって反応の完了をチェックした。検出可能な出発物質(4−N,N−ジメチルアミノクロトン酸メチル・塩酸塩)が≦2%存在する場合に反応を完了とする。混合物を0〜10℃に冷却した。滴下漏斗を塩化水素のイソプロパノール中溶液で満たし、釜温度を0〜10℃に維持しながらpHが2.0〜3.0に達するまで40分間かけて加えた。混合物を最低30分間攪拌して、ブーフナー漏斗から3L多口フラスコへ冷却濾過し、冷エタノール(0〜10℃)(2×0.05kg、2×0.063L)ですすぎ、滴下が止まるまで吸引し続けた。該フラスコに攪拌器、温度計、および真空蒸留装置を装着した。溶媒を、50〜100mmHgの減圧下、40℃の最大釜温度で除去して160〜180mLの釜容量を得た。イソプロパノール(0.049kg、0.063L)を加え、混合物を10分間かけて35〜40℃に加温した。釜温度を35〜40℃に維持しながらアセトン(0.10kg、0.13L)を20分間かけて加えた。混合物をシーディングし、周囲温度20〜25℃に冷却し、最低12〜18時間保持した。混合物を0〜10℃に冷却し、最低1時間保持した。イソプロパノール(0.049kg、0.063L)およびアセトン(0.10kg、0.13L)の混合物を調製し、攪拌して均質化し、0〜10℃に冷却した。混合物をブーフナー漏斗で冷却濾過し、イソプロパノール/アセトン(2×0.074kg、2×0.096L)ですすぎ、濾過ケークをせき止め、滴下が止まるまで吸引し続けた。生成物を50℃および10mmHgの真空オーブン中で18〜20時間乾燥させた。
【0038】
4−ジメチルアミノクロトン酸・塩酸塩からの4−ジメチルアミノクロトニルアニリドの調製
【化6】

【0039】
下、0℃で、4−ジメチルアミノクロトン酸・塩酸塩0.33g(0.002モル)のDMF 2滴を含有するCHCl 15ml中溶液に塩化チオニル(0.36ml、0.005モル)を滴下した。反応混合物を30分間還流した。次いで、反応混合物にアニリン0.72ml(0.008モル)を0℃で滴下し、室温で1時間攪拌した。固体副産物を濾過した。濾液を蒸発させて油状物(0.6g)を得た。GC−MSデータは該油状物が4−ジメチルアミノクロトン酸・塩酸塩11.7%および所望の生成物85%であることを示す。
【0040】
4−N,N−ジメチルアミノクロトノイルクロリド・塩酸塩の調製および単離
4−ジメチルアミノクロトン酸塩酸塩(5.0g、30ミリモル)を冷(0℃)THF(40mL)およびDMF(ピペットで2滴)中で十分に攪拌した懸濁液を塩化オキサリル(3.15mL、36ミリモル)で処理した。混合物を20〜25℃で3時間攪拌し、0℃に冷却し、30分間保持した。固体をブーフナー漏斗(窒素でのガスシール下)上に収集して冷(0℃)THF(3×5mL)で洗浄した。真空下(約1トル)、生成物を40〜50℃で3時間乾燥させ、4−ジメチルアミノクロトノイルクロリド・塩酸塩4.0gを得た。この物質は、該固体をメタノールで処理してそのメチルエステルとして特徴付けられる。
別法として、標記化合物はCHCNで調製することができ、カップリング工程に直接使用することができる。
【0041】
EKB−569の調製
3L多口フラスコに攪拌器、温度計、ディップ管、および窒素保護を装着した。該フラスコをN−メチルピロリジノン(0.77kg、0.75L、d=1.033g/mL)で満たした。周囲温度で、4−[3−クロロ−4−フルオロフェニル]アミノ−6−アミノ−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン(0.0748kg)[米国特許6,002,008を参照]を加え、混合物を40〜45℃に加熱しながら攪拌し、15分間保持した。フラスコを0〜10℃に冷却した。4−N,N−ジメチルアミノクロトノイルクロリド・塩酸塩を含有する混合物を、0〜10℃に維持しながらディップ管および正の窒素圧を介して30〜45分間かけて3Lフラスコに移した。混合物を0〜10℃に最低2時間維持した。HPLCによって反応の完了をチェックした。出発物質(4−[3−クロロ−4−フルオロフェニル]−アミノ−6−アミノ−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン)が≦2%存在する場合に反応を完了とする。攪拌器、温度計、ディップ管、および窒素保護を装着した12L多口フラスコを水(2.61kg、2.61L)で満たした。重炭酸ナトリウム(0.209kg)を加え、溶液が得られるまで攪拌した。溶液を20〜24℃に冷却した。NMP−CHCN混合物を、20〜24℃に維持しながらディップ管および正の窒素圧を介して45〜60分間かけて12Lフラスコに移した。混合物を20〜24℃に最低1時間維持し、ブーフナー漏斗で濾過し、水(3×0.40kg、3×0.40L)ですすぎ、滴下が止まるまで吸引し続けた。生成物を50℃および10mmHgの真空オーブン中で28〜30時間乾燥させて生成物78.5g(収率86%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

または
【化2】

または
【化3】

または
【化4】

または
【化5】

で示される化合物。
【請求項2】
(a)4−ブロモクロトン酸トリメチルシリルまたは4−ブロモクロトン酸メチルをジメチルアミンと反応させて対応する4−ジメチルアミノクロトン酸エステルを得ること;
(b)工程(a)の4−ジメチルアミノクロトン酸エステルを加水分解して、対応する4−ジメチルアミノクロトン酸を形成すること;および
(c)工程(b)の4−ジメチルアミノクロトン酸を塩素化してそのHCl塩を形成してもよいこと
を含む、式:
【化6】

または
【化7】

で示される請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項3】
加水分解工程(b)がMeOHの存在下にて4−ジメチルアミノクロトン酸エステルをNaOHと反応させることを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
塩素化工程(c)が4−ジメチルアミノクロトン酸をHClと反応させることを含む、請求項2または請求項3記載の方法。
【請求項5】
反応が4−ブロモクロトン酸トリメチルシリルを用いて行われる、請求項2〜4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応が4−ブロモクロトン酸メチルを用いて行われる、請求項2〜4いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
(a)0〜10℃の温度で、4−[3−クロロ−4−フルオロ−フェニル]アミノ−6−アミノ−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン、4−N,N−ジメチルアミノクロトノイルクロリド・塩酸塩およびN−メチルピロリジノンを含む懸濁液を形成すること;
(b)4−[3−クロロ−4−フルオロフェニル]アミノ−6−アミノ−3−シアノ−7−エトキシ−キノリンの濃度が2%またはそれ以下になるまで懸濁液を保持すること;
(c)溶液が得られるまで工程(b)における懸濁液に重炭酸ナトリウムを添加すること;
(d)工程(c)の生成物を収集して、化合物4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エン酸[4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アミドを得ること
を含む、4−ジメチルアミノ−ブタ−2−エン酸[4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アミドの製造方法。
【請求項8】
収集工程が工程(c)の生成物を濾過すること、洗浄すること、および乾燥することを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらに、
(i)式:
【化8】

で示される化合物のTHFおよびDMF中冷懸濁液に塩化オキサリルを添加すること;
(ii)20〜25℃で工程(i)における懸濁液を撹拌すること;
(iii)工程(ii)の懸濁液を冷却すること
を含む4−N,N−ジメチルアミノクロトノイルクロリド・塩酸塩を製造する工程をさらに含む、請求項7または請求項8記載の方法。
【請求項10】
(i)における冷懸濁液が約0℃である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
(iii)における冷却が0℃への冷却である、請求項9または請求項10記載の方法。
【請求項12】
(iii)の生成物を冷テトラヒドロフランで洗浄し、乾燥して、4−ジメチルアミノクロトノイルクロリド・塩酸塩を得る、請求項9〜11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
4−N,N−ジメチルアミノクロトノイルクロリド・塩酸塩が、THFおよびDMF中ではなくCH3CN中にて製造される、請求項9〜11いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
以下の反応シーケンス:
【化9】

を含む、式:
【化10】

で示される請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項15】
以下の反応シーケンス:
【化11】

を含む、式:
【化12】

で示される請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項16】
以下の反応シーケンス:
【化13】

を含む、式:
【化14】

で示される請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項17】
以下の反応シーケンス:
【化15】

または
【化16】

のいずれかを含む、式:
【化17】

で示される請求項1記載の化合物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−155845(P2010−155845A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11652(P2010−11652)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【分割の表示】特願2003−524573(P2003−524573)の分割
【原出願日】平成14年8月6日(2002.8.6)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】