説明

抗菌コポリマーおよびその使用

【課題】ランダムコポリマー類およびそれらの使用法、例えば薬物学的および非薬物学的用途における上記コポリマーの抗菌剤としての使用法などを提供すること。
【解決手段】本発明は上記コポリマー類の組成物および上記コポリマー類の製法も開示する。本発明は、微生物感染の処置を必要とする動物を処置する方法であって、上記動物に式IIIのコポリマーおよび薬学的に受容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む方法にも関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は抗菌活性をあらわす両親媒性ランダムコポリマー類に関するものである。上記コポリマー類は多くの薬物学的および非薬物学的用途において抗菌剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
ホスト防御ペプチドはホストを細菌感染から防御する特殊な機能を有するペプチドの一クラスである(非特許文献1)。これらの化合物は植物、昆虫、虫および哺乳動物を含む多くの種を微生物から防御する防御の第一線に相当する。(非特許文献2;非特許文献3)。哺乳動物において、上記ペプチド類は皮膚、粘膜表面および好中球によって産生、分泌される。天然のホスト防御ペプチドには多くの異なる種類があるが(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)、大部分は20−40アミノ酸残基を含み、両親媒性二次構造をとるのが普通である。
【0003】
ホスト防御ペプチド類は種々の異なる種に見いだされ、多くの異なる配列からなるとはいえ、それらの生理化学的特性は非常に似ている。それらは二次構造の一端に隔離された正に帯電した基と、対置表面上の疎水性基とを有する両親媒性構造をとり、その結果それらは細菌細胞膜の脂質二重層を破壊することができる。細胞膜との結合の際に標準的ラセン・コンフォメーションをとることによって、それらは正に帯電したカチオン性側鎖基と疎水性側鎖基とがラセン表面の異なる側に規則的に分布した表面両親媒性構造をあらわす。上記ペプチド類のカチオン基のおかげで、これらペプチドは細菌細胞膜表面に選択的に相互作用できる。それは動物および植物細胞表面の比較的小さい電荷と比較して細菌細胞表面に一般的に認められる高密度の負に帯電した脂質集団との静電気的相互作用によるものである。疎水性基は脂質二重層に組み込まれ、伸長するペプチド−脂質錯体を形成し、その結果細胞膜の損傷および細胞死をおこす。
【0004】
抗細菌活性の他に、幾つかのホスト防御ペプチドは抗真菌活性(例えば、非特許文献14を参照)および抗ウィルス活性(例えば、非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;および非特許文献18を参照)を有する。
【0005】
蛋白設計の原理を使用して、研究者らは天然ホスト防御ペプチドに認められる側鎖の両親媒性α−ラセン配列を理想化することによって合成抗菌ペプチドを設計し、多数の強力かつ選択的抗菌化合物を作り出した(非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献4;非特許文献22;非特許文献23)。結果として、合成抗菌ポリマー類は一般的に比較的硬いポリマー主鎖を有し、そのポリマー主鎖に沿って疎水性および疎水性基が規則的に分布するように設計された(非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27)。しかし最近の報告は規則的置換パターンは不必要であることを示唆した。なぜならばポリスチレン主鎖に沿った第三級アミンおよびアルキル基のランダム分布も抗菌活性を示すからである(非特許文献28)。
【0006】
経済的効果並びにヒトの健康効果をもたらす効果的抗菌化合物が必要である。
【非特許文献1】Zasloff,M.,Nature(2002)415:289
【非特許文献2】Boman,H.G.,Immunol.Rev.(2000)173:5−16
【非特許文献3】Hancock,R.E.,and Lehrer,R.,Trends Biotechnol.(1998)16:82−88
【非特許文献4】Zasloff,M.,Curr.Opin.Immunol.(1992)4:3−7
【非特許文献5】Zasloff,M.,Trends Pharmacol.Sci.(2000)21:236−238
【非特許文献6】Steiner,H.ら、Nature(1981)292,246−248
【非特許文献7】Ganz,T.ら、Eur.J.Haematol.(1990)44:1−8
【非特許文献8】Tang,Y.O.ら、Science(1999)286:498−502
【非特許文献9】Ganz,T.ら、J.Clin.Invest.(1985)76:1427−1435
【非特許文献10】Landon,C.ら、Protein Sci.(1997)6:1878−1884
【非特許文献11】Zhao,C.ら、FEBS Lett.(1994)346:285−288
【非特許文献12】Peggion,E.ら、Biopolymers(Peptide Science)(1998)43:419−431
【非特許文献13】Dempsey,C.E.,Biochim.Biophy.Acta(1990)1031:143−161
【非特許文献14】DeLucca,A.J.,and Walsh,T.J.,Antimicob.Agents Chemother.(1999)43:1−11
【非特許文献15】Belaid,A.ら、J.Med.Virol.(2002)66.229−234
【非特許文献16】Egal,M.ら、Int J.Antimicrob.Agents(1999)13:57−60
【非特許文献17】Andersen,J.H.ら、Antiviral Rs.(2001)51;141−149
【非特許文献18】Bastian,A.,and Schafer,H.,Regul.Pept.(2001)15:157−161
【非特許文献19】Tossi,A.ら、Biopolymers(2000)55:4−30
【非特許文献20】DeGrado,W.F.,Adv.Protein.Chem.(1988)39:51−124
【非特許文献21】Maloy,W.L.,and Kari,U.P.,Biopolymers(1995)37:105−122
【非特許文献22】Boman,H.G.ら、Eur.J.Biochem.(1991)201:23−31
【非特許文献23】Oren,Z.,and Shai,Y.,Biopolymers(1998)47:451−463
【非特許文献24】Liu,D.ら、Angrew.Chem.Int.Ed.(2004)43:1158
【非特許文献25】Tew,G.N.ら、PNAS(2002)99:5110
【非特許文献26】Ilker,M.F.ら、Macromolecules(2004)37:694
【非特許文献27】Arnt,L.and Tew,G.N.,J.Am.Chem.Soc.(2002)124:7664
【非特許文献28】Gelman,M.A.ら、Org.Lett.(2004)6:557
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明はランダムコポリマー類およびそれらの使用法、例えば薬物学的および非薬物学的用途における抗菌剤としての上記コポリマーの使用法などを提供する。本発明は上記コポリマー類の組成物および上記コポリマー類の製法も開示する。
【0008】
したがって、本発明は、式Iのモノマー単位:
−[CH−C(R)(B)]− I
および式(II)のモノマー単位:
−[CH−C(R)(D)]− II
を有するランダムコポリマー類、またはそれらの受容可能な塩または溶媒和物に関連する:その際上記コポリマー類は重合度約5〜約50を有し、連鎖移動剤Aを使用してコポリマーの重合度を調節し;R、B、R、D、mおよびnは以下に定義されるものである。
【0009】
本発明は式IIIのランダムコポリマー類:
A−(B)n1−(D)m1−H III
または受容可能なその塩または溶媒和物にも関連する。その際上記コポリマーはBおよびDモノマーのランダムコポリマーであり;上記コポリマーは約5〜約50の重合度を有し;A、Bn1およびDm1は以下に定義されるものである。
【0010】
本発明はさらに以下に定義される式IIIのコポリマーおよび薬学的に受容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物にも関連する。
【0011】
本発明は、微生物感染の処置を必要とする動物を処置する方法であって、上記動物に以下に定義される式IIIのコポリマーおよび薬学的に受容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む方法にも関連する。
【0012】
本発明はさらに、動物の低分子量のヘパリン過量投与に対する解毒薬を提供する方法であって、上記動物に以下に定義される式IIIのコポリマーおよび薬学的に受容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を上記動物に投与することを含む方法に関連する。
【0013】
本発明はさらに、微生物を死滅させまたは微生物の増殖を阻止する方法であって、上記微生物と、以下に定義される式IIIのコポリマーの有効量とを接触させることを含む上記方法に関連する。本発明は微生物を死滅させまたはそのの増殖を阻止する方法であって、その際上記コポリマーがその基質に共有結合しているかまたは上記コポリマーが基質上に存在している上記方法にも関連する。
【0014】
本発明は、以下に定義されるような式IIIのコポリマーと、塗料、ラッカー、コーティング、ワニス、コーキング、グラウト、接着剤、樹脂、フィルム、化粧品、石鹸、ローション、ハンドウォッシュおよび洗剤からなる群より選択される組成物とを含む抗菌性組成物にも関連する。
【0015】
本発明は上記微生物が細菌細胞、真菌またはウィルスである上記方法のすべてに関連する。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
式III:
A−(B)n1−(D)m1−H III
のランダムコポリマー、またはその受容可能な塩もしくは溶媒和物であって、上記式中:
Aは連鎖移動剤の残基であり;
Bは−[CH−C(R11)(B11)]−であり、ここでB11は−X11−Y11−Z11であり、
11はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはX11は存在せず;
11はO、NHまた任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはY11は存在せず;
11は−Z11A−Z11Bであり、ここで:
11Aはアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり、そのいずれかは任意に置換されており;またはZ11Aは存在せず;
11Bは−グアニジノ、−アミジノ、−N(R)(R)または−N(R)(R)(R)であり、ここでR、RおよびRは独立的に水素、アルキル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、またはアラルキルであり;または
11はピリジニウム
【化1】

であり、
ここで、R81、R911、R921、およびR931は独立的に水素またはアルキルであり;
Dは−[CH−C(R21)(D21)]−であり、ここでD21は−X21−Y21−Z21であり、
21はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはX21は存在せず;
21はO、NHまたは任意に置換されたC1−6アルキレンであるか、またはY21は存在せず;
21はアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、またはアラルキルであり、そのいずれかは任意に置換されており;
11およびR21は独立的に水素またはC1−4アルキルであり;
Dモノマーのモル分率、m1、は約0.1〜約0.9であり;
Bモノマーのモル分率、n、は1−mである;
該コポリマーはBおよびDモノマーのランダムコポリマーであり、
該コポリマーは約5〜約50の重合度を有する、
ランダムコポリマーまたはその受容可能な塩もしくは溶媒和物。
(項目2)
AがC1−4アルコキシカルボニル(C1−4)アルキルチオである、項目1に記載のランダムコポリマー。
(項目3)
項目2に記載のランダムコポリマーであって、
11およびX21がカルボニルであり;
11およびY21がOであり;
11が−Z11A−Z11Bであり、ここでZ11AはC1−4アルキルまたはアリールで任意に置換されたC1−6アルキレンであり;Z11Bは−N(R31)(R41)または−N(R31)(R41)(R51)であり、ここでR31、R41およびR51は独立的に水素、C1−4アルキル、アミノ(C1−4)アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;
21はC1−6アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;
11およびR21は独立的に水素またはメチルであり;
該コポリマーは約5〜約25の重合度を有する、
ランダムコポリマー。
(項目4)
11Aがメチルまたはエチルで任意に置換されたC1−4アルキレンであり;R31、R41およびR51が独立的に水素またはメチルである、項目3に記載のランダムコポリマー。
(項目5)
項目2に記載のランダムコポリマーであって、
11がピリジニウム
【化2】

であり、式中R81、R911、R921およびR931は独立的に水素またはC1−4アルキルである、ランダムコポリマー。
(項目6)
項目2に記載のランダムコポリマーであって、
21がカルボニルまたは任意に置換されたC1−4アルキレンであり;
21がOまたはNHであり;
21がC1−6アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルである、ランダムコポリマー。
(項目7)
21がメチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、またはベンジルである、項目6に記載のコポリマー。
(項目8)
が約0.35〜約0.60である、項目1に記載のランダムコポリマー。
(項目9)
重合度(DP)が約5〜約10である、項目1に記載のランダムコポリマー。
(項目10)
項目1に記載のランダムコポリマーであって、
該ランダムコポリマーが式IIIa
【化3】

のランダムコポリマーであるか、またはその受容可能な塩または溶媒和物であり、式中:
1aおよびR2aは独立的に水素またはメチルであり;
3a、R4aおよびR5aは独立的に水素またはC1−4アルキルであり;
6aはC1−4アルキルであり;
7aはC1−10アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;
1aは1〜4であり;
2aは1〜6であり;
は約0.35〜約0.55であり;nは1−mであり;
該コポリマーは約5〜約25の重合度を有する、
ランダムコポリマー。
(項目11)
1aおよびR2aが独立的にメチルであり;
3a、R4aおよびR5aが独立的に水素またはメチルであり;
6aがメチルまたはエチルであり;
7aがC1−4アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、
1aが1または2であり;
2aが1、2または3であり;
が約0.35〜約0.55であり;nが1−mである、
項目10に記載のランダムコポリマー。
(項目12)
前記ランダムコポリマーが、式IIIb
【化4】

のランダムコポリマーであるか、またはその受容可能な塩または溶媒和物であり、式中:
は約0.45〜約0.55であり;nは1−mであり;および
重合度が約5〜約10である、
項目10に記載のランダムコポリマー。
(項目13)
前記ランダムコポリマーが式IIIc
【化5】

のランダムコポリマーであるか、またはその受容可能な塩または溶媒和物であり、式中:
は約0.35〜約0.45であり;nは1−mであり;および
重合度が約5〜約10である、
項目10に記載のランダムコポリマー。
(項目14)
前記ランダムコポリマーが式IIId
【化6】

のランダムコポリマーであるか、またはその受容可能な塩または溶媒和物であって、式中:
は約0.45〜約0.55であり;nは1−mであり;および
重合度は約5〜約10である、
項目10に記載のランダムコポリマー。
(項目15)
前記ランダムコポリマーが式IIIe
【化7】

のランダムコポリマーであるか、またはその受容可能な塩または溶媒和物であって、上記式中:
は約0.50〜約0.60であり;nは1−mであり;
重合度は約5〜約10である、
項目10に記載のランダムコポリマー。
(項目16)
項目1のランダムコポリマーと薬学的に受容可能な担体または希釈剤とを含む、医薬組成物。
(項目17)
微生物感染の処置を必要とする動物における該微生物感染を処置する方法であって、該方法は、該動物に項目16の医薬組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目18)
前記微生物感染が口腔感染である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記微生物感染が細菌感染、真菌感染またはウィルス感染である、項目17に記載の方法。
(項目20)
微生物を死滅させるか、またはその増殖を阻止する方法であって、該微生物と項目1のランダムコポリマーの有効量とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目21)
前記微生物が細菌細胞、真菌、またはウィルスである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記ランダムコポリマーが基質上に存在する、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記ランダムコポリマーが前記基質に共有結合する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記基質が木材、合成ポリマー類、天然繊維類、合成繊維類、布、紙、ゴムおよびガラスからなる群より選択される、項目22に記載の方法。
(項目25)
項目1のコポリマーと、塗料、ラッカー、コーティング、ワニス、コーキング材、グラウト、接着剤、樹脂、フィルム、化粧品、石鹸、ローション、ハンドウォッシュおよび洗剤からなる群より選択される組成物とを含む、抗菌組成物。
(項目26)
動物において、低分子量のヘパリン過剰投与に対する解毒剤を提供する方法であって、該動物に項目16の医薬組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目27)
式Iのモノマー単位と式IIのモノマー単位とを有するランダムコポリマー、またはその受容可能な塩もしくは溶媒和物であって、
ここで、式Iは、
−[CH−C(R)(B)]− I
であり、ここで、
は水素またはC1−4アルキルであり;
は−X−Y−Zであり;ここで:
はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはXは存在せず;
はO、NH、または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはYは存在せず;
は−Z1A−Z1Bであり、ここで:
1Aはアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり、そのいずれかは任意に置換されており;またはZ1Aは存在しない;
1Bは−グアニジノ、−アミジノ、−N(R)(R)または−N(R)(R)(R)であり、ここで、R、RおよびRは独立的に水素、アルキル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、またはアラルキルであり;または
はピリジニウム
【化8】

であり、ここでR、R91、R92、およびR93は独立的に水素またはアルキルであり;
nは1−mであり、ここでmは以下に定義され、
ここで、式IIは
−[CH−C(R)(D)]− II
であり、ここで、
は水素またはC1−4アルキルであり;
は−X−Y−Zであり;式中:
はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはXは存在せず;
はO、NH、または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはYは存在せず;
はアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、またはアラルキルであり、そのいずれかは任意に置換されており;
mは約0.1〜約0.9であり;
該コポリマーは約5〜約50の重合度を有し、連鎖移動剤Aの使用によって該ランダムコポリマーの重合度が調節される、
ランダムコポリマーまたはその受容可能な塩もしくは溶媒和物。
(項目28)
前記連鎖移動剤Aが
【化9】

またはアルコキシカルボニルアルキルチオールである、項目27に記載のランダムコポリマー。
(項目29)
前記連鎖移動剤Aが
【化10】

である、項目28に記載のランダムコポリマー。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1Aおよび1Bは、連鎖移動剤の存在下におけるポリマーのラジカル重合を説明する一般的スキームを示す。図1Aはラジカル重合中におきる一般的工程である。
【図1B】図1Aおよび1Bは、連鎖移動剤の存在下におけるポリマーのラジカル重合を説明する一般的スキームを示す。図1Bはラジカル重合によって合成されるポリマーのポリマー長さまたは重合度を計算するために用いられる等式である。
【図2】図2は異なる連鎖移動剤(CTA)濃度において得られた実施例1、工程2のポリメタクリレートホモポリマーの平均重合度(“DP”)の逆数と[CTA]/[1]との関係を示すプロットである。この勾配から測定された連鎖移動定数、CT、は、0.86である。
【図3】図3は実施例3のn−ブチルメタクリレート・ランダムコポリマー類の各シリーズの分子量(数平均分子量)を示す。各ポリマーの分子量をNMRによって測定されたDP(平均重合度)から計算し、各系列のコポリマーのブチル基のパーセンテージの関数としてプロットする。
【図4】図4は実施例3のn−ブチルメタクリレート・ランダムコポリマーを使用して行われた抗菌性アッセイの結果を示す。各コポリマーの最小阻止濃度(“MIC”)をコポリマー疎水性基(ブチル基)のモルパーセントの関数としてプロットした。
【図5】図5はコポリマー疎水性(ブチル)基のモルパーセントの関数としてプロットされた実施例3のn−ブチルメタクリレート・ランダムコポリマーの3系列各々の、抗菌性アッセイ培地(Mueller−Hinton)中の溶解限度を示す。
【図6】図6A−6Dは、実施例3のn−ブチルメタクリレート・ランダムコポリマーの3組の各々で行われた溶血性アッセイおよび抗菌性アッセイの結果を示す。図6Aは系列1(P−1−8.7K)の溶血性アッセイおよび抗菌性アッセイの結果を示す。図6Bは系列2(P−1−5K)の溶血性アッセイおよび抗菌性アッセイの結果を示し、図6Cは系列3(P−1−1.6K)の溶血性および抗菌性アッセイの結果を示す。各コポリマーで測定したMICおよびHC50値をコポリマー疎水性基(ブチル基)のモルパーセントの関数としてプロットした。図6Dはコポリマー類の3系列で計算した選択指数(HC50/MIC)を示す。
【図7】図7Aおよび7Bは実施例4に記載のコポリマーのC−1系列で行った分子量測定結果および溶血および抗菌性アッセイの結果を示す。図7AはC−1系列のSH30コポリマー類の分子量(数平均分子量)を、コポリマー疎水性基のモルパーセントの関数として示す。図7BはSH30コポリマー類の抗菌性および溶血性アッセイの結果を示す。各コポリマーについて測定したMICおよびHC50値を、コポリマー疎水性基のモルパーセントの関数としてプロットする。
【図8−1】図8A−8Dは実施例4に記載されるコポリマー類のC−2系列で測定された分子量の結果および実施された溶血性および抗菌性アッセイの結果を示す。図8AはC−2系列のSH10、SH20、およびSH30コポリマーの分子量(数平均分子量)をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数として示す。図8BはSH10コポリマー類の抗菌性および溶血性アッセイの結果を示し、図8CはSH20コポリマー類のアッセイ結果を示し、図8DはSH30コポリマー類のアッセイ結果を示す。各ポリマーで測定したMICおよびHC50値をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数としてプロットする。
【図8−2】図8A−8Dは実施例4に記載されるコポリマー類のC−2系列で測定された分子量の結果および実施された溶血性および抗菌性アッセイの結果を示す。図8AはC−2系列のSH10、SH20、およびSH30コポリマーの分子量(数平均分子量)をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数として示す。図8BはSH10コポリマー類の抗菌性および溶血性アッセイの結果を示し、図8CはSH20コポリマー類のアッセイ結果を示し、図8DはSH30コポリマー類のアッセイ結果を示す。各ポリマーで測定したMICおよびHC50値をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数としてプロットする。
【図9−1】図9A−9Dは実施例4に記載されるコポリマー類のC−3系列で行われた分子量測定結果および溶血性および抗菌性アッセイの結果を示す。図9AはC−3系列のSH10、SH20およびSH30コポリマーの分子量(数平均分子量)をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数として示す。図9BはSH10コポリマーの抗菌性および溶血性アッセイの結果を示し、図9CはSH20コポリマーのアッセイ結果を示し、図9DはSH30コポリマーのアッセイ結果を示す。各コポリマーについて測定したMICおよびHC50値はコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数としてプロットされる。
【図9−2】図9A−9Dは実施例4に記載されるコポリマー類のC−3系列で行われた分子量測定結果および溶血性および抗菌性アッセイの結果を示す。図9AはC−3系列のSH10、SH20およびSH30コポリマーの分子量(数平均分子量)をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数として示す。図9BはSH10コポリマーの抗菌性および溶血性アッセイの結果を示し、図9CはSH20コポリマーのアッセイ結果を示し、図9DはSH30コポリマーのアッセイ結果を示す。各コポリマーについて測定したMICおよびHC50値はコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数としてプロットされる。
【図10−1】図10A−10Dは実施例4に記載されるコポリマーのC−4系列で行われた分子量測定の結果および溶血性および抗菌性アッセイの結果を示す。図10AはC−4系列のSH10、SH20およびSH30コポリマーの分子量(数平均分子量)をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数として示す。図10BはSH10コポリマーの抗菌性および溶血性アッセイの結果を示し、図10CはSH20コポリマーのアッセイ結果を示し、図10DはSH30コポリマーのアッセイ結果を示す。各コポリマーで測定したMICおよびHC50値をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数としてプロットする。
【図10−2】図10A−10Dは実施例4に記載されるコポリマーのC−4系列で行われた分子量測定の結果および溶血性および抗菌性アッセイの結果を示す。図10AはC−4系列のSH10、SH20およびSH30コポリマーの分子量(数平均分子量)をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数として示す。図10BはSH10コポリマーの抗菌性および溶血性アッセイの結果を示し、図10CはSH20コポリマーのアッセイ結果を示し、図10DはSH30コポリマーのアッセイ結果を示す。各コポリマーで測定したMICおよびHC50値をコポリマー疎水性基のモルパーセントの関数としてプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は非ペプチド性、両親媒性ランダムコポリマー類および、抗菌剤としての薬物学的および非薬物学的用途におけその使用などを含む多くの用途における上記コポリマー類の使用法を提供する。本発明はランダムコポリマー類を含む組成物およびランダムコポリマー類の製法も提供する。
【0018】
本発明のコポリマー類は式Iのモノマー単位:
−[CH−C(R)(B)]− I
および式(II)のモノマー単位:
−[CH−C(R)(D)]− II
を有するランダムコポリマー類を含み
上記式中、B、D、R、R、nおよびmは以下に定義されるものである。
【0019】
幾つかの実施形態において、本発明のコポリマー類は式IIIのランダムコポリマーであり:
A−(B)n1−(D)m1−H III
上記式中、Bは−[CH−C(R11)(B11)]−として定義され、Dは−[CH−C(R21)(D21)]−として定義され、A、B11、D21、R11、R21、nおよびmは以下に定義されるものである。
【0020】
本発明のコポリマー類は、親水性側鎖を有するモノマー単位と疎水性側鎖を有するモノマー単位とからなり、上記2種類のモノマー単位がコポリマー主鎖に沿ってランダムに分布しているランダムポリマーである。例えば本発明のコポリマー類としては疎水性および極性アクリルアミドまたはスチリルモノマー前駆体類の共重合によって作られるランダムコポリマーが含まれる。例えば本発明の幾つかの実施形態において、式Iの反復モノマー単位または式IIIのBは親水性カチオン基(BまたはB11)を含み、式IIの反復モノマー単位、または式IIIのDは疎水性基(DまたはD11)を含む。
【0021】
本発明のランダムコポリマーは重合度を調節するために連鎖移動剤を使用して合成することができ、よって連鎖移動剤を使用せずに合成されたものよりも低い平均重合度および平均分子量を有する。本発明のコポリマーは一般的には約4または5から約50〜100までの平均重合度を有する。好ましいコポリマーは約4または5から約20まで、または5から約30までの平均重合度を有する。
【0022】
連鎖移動剤を使用して重合度を調節すると、本発明の低分子量コポリマーが比較的高収率で製造され、連鎖移動剤を使用せずに行われる重合では、低分子量ポリマーを得るためには通常必要な時間のかかるカラムクロマトグラフィーによる分画化の必要がなくなる。したがって本発明のコポリマーは製造し易く、安価で、工業的規模の生産に適する。
【0023】
本発明のコポリマーは両親媒性であり、微生物の細胞膜の一体性を破壊することができ、微生物の増殖阻止または死に導く。結果として、上記コポリマー類は抗細菌、抗真菌および抗ウィルス活性を含む抗菌活性を有し、抗菌剤として有用である。本発明のコポリマー類は広域抗菌活性を有し、グラム陽性およびグラム陰性細菌、真菌、酵母、マイコプラズマ、マイコバクテリア、原虫類などを含む種々の微生物に対して有効である。その上、分子量および/または疎水性側鎖を選択することによって本発明のコポリマー類の相対的抗微生物特性および溶血特性を調節して哺乳動物には無毒性である抗菌コポリマーを製造することができる。
【0024】
本発明のコポリマーは抗菌剤として多くの用途において有用である。例えば本発明のコポリマーはヒトおよび非ヒト脊椎動物、例えば野生動物、家畜および牧畜動物などの細菌感染を処置するために治療的に使用できる。動物の細菌感染は、本発明のコポリマーの医薬組成物の有効量を上記動物に投与することによって処置される。上記コポリマー類は広範囲の抗菌活性を有するので、それらは動物の種々の感染を有効に処置する。上記コポリマー組成物類は全身的または局所的に投与でき、あらゆる体部位または体組織に投与できる。例えば本発明のコポリマー類を用いて歯周病のような口腔疾患を処置することができ、またはこのような口腔疾患の予防薬として使用できる。この用途では、コポリマーは多数の製品、例えば非制限的に口腔洗浄剤、チューインガム、歯磨きペーストまたは歯磨きジェルに挿入できる。或いはこの用途においては歯肉に埋め込めるデバイス、ポリマーまたは基材に上記ポリマーを挿入し、徐々に放出させ、微生物を直接殺すことができる。
【0025】
本発明のランダムコポリマーの両親媒性は、もう一つの治療的使用の基礎となる、すなわち上記コポリマーをヘパリン治療に関連する出血性副作用に対する解毒薬として使用するのである。例えば動物のヘパリン過量投与に対して、上記コポリマーの医薬組成物の有効量をその動物に投与して解毒するという方法に本発明のコポリマー類を用いることができる。
【0026】
本発明のランダムコポリマーは消毒薬または保存料としても使用できる。例えば微生物と本発明のコポリマーの有効量とを接触させることによって微生物を殺しまたはその増殖を阻止する方法に本発明のコポリマーを使用できる。例えば本発明のコポリマーを消毒薬または保存料として、化粧品、石鹸、ローション、ハンドウォッシュ、塗料、クレンザーおよびつや出しなどに、または食料品、食品用容器および食品取扱器具などに使用できる。上記コポリマーはこれらの目的で溶液、分散液または懸濁液として使用される。本発明のコポリマーは物品に成形することができるプラスチックスに挿入したり、表面に付着または固定させて、表面と接触する微生物を死滅させるか、またはその増殖を阻止する表面介在性殺菌剤とすることもできる。その他に、本発明のコポリマーの分子量および/または疎水性基を選択することによって、上記コポリマー類の物理的性質を特殊の用途のために最適化することができる。例えば上記コポリマー類の分子量および疎水性基を変えることによって、上記コポリマー類の溶液の粘度を調節でき、そのコポリマーを食料品または塗料などに挿入するような用途においては上記コポリマーは増粘剤としても役立つ。
【0027】
本発明は両親媒性ランダムコポリマーを開示する。ポリマーは概してモノマー・サブユニットが集まった合成化合物として定義され、分子量は多分散性である。ポリマーはone−pot合成法によって作られるのが最も一般的である。本明細書に用いられる用語“ポリマー”は複数の反復単位またはモノマー単位を含む高分子を言う。用語“ポリマー”は1種類のモノマーから形成されるホモポリマーおよび2種類以上のモノマーから形成されるコポリマーを含むことができる。用語“コポリマー”は上記モノマー類がランダムに(ランダムコポリマー)、交互に(交互ポリマー)またはブロックになって(ブロックコポリマー)分布しているポリマー類を含む。本発明のコポリマー類はランダムコポリマーである。本明細書に使用する用語“ランダムコポリマー”は上記モノマー類がランダムに分布しているコポリマー類である。
【0028】
本発明のランダムコポリマーは式Iのモノマー単位:
−[CH−C(R)(B)]− I
上記式中:
は水素またはC1−4アルキルであり;
は−X−Y−Zであり、ここで:
はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはXは存在せず;
はO、NH、または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはYは存在せず;
は−Z1A−Z1Bであり、ここで:
1Aはアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり、そのいずれも任意に置換され;またはZ1Aは存在せず;
1Bは−グアニジノ、−アミジノ、−N(R)(R)または−N(R)(R)(R)であり、ここでR、R、Rは独立的に水素、アルキル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、またはアラルキルであり;または
はピリジウム
【0029】
【化11】

であり、ここでR、R91、R92、およびR93は独立的に水素またはアルキルであり;
nは1−mであり、mは下に定義されるものである;
および式IIのモノマー単位:
−[CH−C(R)(D)]− II
または受容可能なその塩または溶媒和物を有し、
上記式中:
は水素またはC1−4アルキルであり;
は−X−Y−Zであり、ここで
はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか、またはXは存在せず;
はO、NHまたは任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはYは存在せず;
はアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、またはアラルキルであり、そのいずれも任意に置換され;
mは約0.1から約0.9までであり;
上記コポリマーは約5〜約50の重合度を有する。
【0030】
連鎖移動剤Aを使用して上記コポリマーの重合度を調節できる。本発明のコポリマー類の合成には任意の一般的連鎖移動剤を使用できる。しかし、好ましい連鎖移動剤Aはチオール化合物、例えばアルキルチオまたはアリールチオール化合物などである。例えば本発明の好ましいコポリマー類は下記からなる群より選択される連鎖移動剤A
【0031】
【化12】

およびアルコキシカルボニルアルキルチオールを使用して合成される。アルコキシカルボニルアルキルチオール類、例えばメチル3−メルカプトプロピオネートおよびエチル3−メルカプトプロピオネートは連鎖移動剤として特に好ましい。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態において好ましいコポリマー類は、式Iの反復単位がカチオン性であるものである。例えば、幾つかの実施形態において好ましいコポリマー類は、Zが−Z1A−Z1Bであるものであり、ここでZ1Aは、C1−6アルキレン、例えばC1−4アルキルまたはアリールによって任意に置換された、エチレン、プロピレン、またはブチレンであり;Z1Bは−N(R)(R)または−N(R)(R)(R)であり、ここでR、R、およびRは独立的に水素、C1−4アルキル、アミノ(C1−4)アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルである。特に好ましいコポリマー類は、Zが−Z1A−Z1Bであるものであり、ここでZ1Aはメチルまたはエチルで任意に置換されたC1−4アルキレンであり;Z1Bは−N(R)(R)(R)であり、R、R、およびRは独立的に水素またはメチルである。
【0033】
幾つかの実施形態において、Z1Aの好ましい等価物は任意に置換されたC1−10アルキレン、すなわち任意に置換された−(CH−であり、ここでpは1〜10である。したがって本発明の幾つかの実施形態においてZの好ましい等価物は−(CH−グアニジノ、−(CH−アミジノ、−(CHN(R)(R)または−(CH(R)(R)(R)であり、ここでR、R、Rは独立的に水素、アルキル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、またはアラルキルである;pは0〜10であり;−(CH−は任意に置換される。これらの実施形態において特に好ましいコポリマー類は、Zが−(CHN(R)(R)または−(CH(R)(R)(R)であるものであり、ここでR、RおよびRは独立的に水素、C1−4アルキル、アミノ(C1−4)アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;pはO〜10であり;−(CH−はC1−4アルキル、アミノ、ヒドロキシ、またはクロロまたはブロモのようなハロによって任意に置換される。最も好ましいのは、Zが−(CH(R)(R)(R)であり、pが1−4であり、R、RおよびRが各々水素であり、−(CH)p−がメチル、エチルまたはハロによって任意に置換されている。
【0034】
幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は、Zがピリジニウム
【0035】
【化13】

であるコポリマーであり、ここでR、R91、R92およびR93は独立的に水素またはアルキルである。これらの実施形態において、R、R91、R92およびR93の特に好ましい等価物は水素およびC1−4アルキルである。
【0036】
本発明のコポリマー類におけるXの好ましい等価物はカルボニルおよび任意に置換されたC1−4アルキレンである。Xの特に好ましい等価物はカルボニルである。ある実施形態においてはXの好ましい等価物は−CH−である。ある実施形態においてXは存在しない(すなわちXは共有結合である)。
【0037】
の好ましい等価物はOおよびNHであり、Oが特に好ましい。ある実施形態においてはYの好ましい等価物は−CH−であり、ある実施形態においてYは存在しない(すなわちYは共有結合である)。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は、式IIの反復単位が疎水性であるものである。例えば、本発明の好ましいコポリマー類は、Xがカルボニルまたは任意に置換されたC1−4アルキレンである式IIの反復単位を有するコポリマー類である。Xがカルボニルであるコポリマー類が特に好ましい。ある実施形態において、Xの好ましい等価物は−CH−であり、ある実施形態においてXは存在しない(すなわちXは共有結合である)。
【0039】
の好ましい等価物はOおよびNHである。YがOであるものが特に好ましい。ある実施形態においては、Yの好ましい等価物は−CH−であり、ある実施形態においてYは存在しない(すなわちYは共有結合である)。
【0040】
の好ましい等価物はC1−6アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルである。Zの特に好ましい等価物はメチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシルおよびベンジルなどである。
【0041】
したがって本発明の幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は式Iの反復モノマー単位を有するコポリマー類であって:式中、
およびXはカルボニルであり;
およびYはOであり;
はZ1A−Z1Bであり、ここでZ1Aは任意に置換されたC1−6アルキレンであり、Z1Bは−N(R)(R)または−N(R)(R)(R)であり、R、R、およびRは独立的に水素、C1−4アルキル、アミノ(C1−4)アルキル、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;
はC1−6アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;
およびRは独立的に水素またはメチルである
上記コポリマー類を含む。
【0042】
本発明のその他の実施形態において、好ましいコポリマー類は式Iの反復モノマー単位を有するコポリマー類であって:
およびXはカルボニルであり;
およびYはOであり;
は−(CHN(R)(R)または−(CH(R)(R)(R)であり、R、RおよびRは独立的に水素、C1−4アルキル、アミノ(C1−4)アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;pは0〜10であり;−(CH−は任意に置換され;
はC1−6アルキル、C1−6アリールまたはC1−6アラ(C1−4)アルキルであり;
およびRは独立的に水素またはメチルである
上記コポリマー類を含む。
【0043】
本発明の好ましいコポリマー類は、平均重合度(“DP”)が約4〜約50、約4〜約30、約5〜約25、約5〜約20、約5〜約15、約5〜約10、約5〜約12、約5〜約10、または約6〜約8であるコポリマー類でもある。本発明の幾つかの局面において、好ましいコポリマー類は、DPが約4〜約15または約4〜約10であるものである。特に好ましいのは、DPが約4〜約10または約6〜約8であるコポリマー類である。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は、DPが約5〜約50、約5〜約30、約5〜約20、約6〜約20、約6〜約15、約6〜約12、約6〜約10、または約6〜約8であるものである。特に好ましいのはDPが約6〜約10、または約6〜約8であるコポリマー類である。
【0045】
本発明の好ましいコポリマー類は、nが1−mであり、mが約0.1〜約0.9、約0.1〜約0.6、約0.35〜約0.60、約0.35〜約0.55、約0.50〜約0.60、約0.45〜0.55、または約0.35〜約0.45であるコポリマー類である。
【0046】
幾つかの実施形態において、本発明のコポリマー類は式IIIのランダムコポリマー類:
A−(B)n1−(D)m1−H III
または受容可能なその塩または溶媒和物である。上記式中、
Aは連鎖移動剤の残基であり;
Bは[CH−C(R11)(B11)]−であり、ここでB11は−X11−Y11−Z11である、
11はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはX11は存在せず;
11はO、NHまたは任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはY11は存在せず;
11は−Z11A−Z11Bであり、ここで:
11Aはアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり、これらのいずれも任意に置換されており;またはZ11Aは存在せず;
11Bは−グアニジノ、−アミジノ、−N(R)(R)、または−N(R)(R)(R)であり、R、RおよびRは独立的に水素、アルキル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、またはアラルキルであり;または
11はピリジニウム
【0047】
【化14】

であり;上記式中、R81、R911、R921、およびR931は独立的に水素またはアルキルであり;
Dは−[CH−C(R21)(D21)]−であり、ここでD21は−X21−Y21−Z21であり、
21はカルボニル(−C(=O)−)または任意に置換されたC1−6アルキレンであるか;またはX21は存在せず;
21はO、NHまたは任意に置換されたC1−6アルキレンであるか、またはY21は存在せず;
21はアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールまたはアラルキルであり、そのいずれも任意に置換され;
11およびR21は独立的に水素またはC1−4アルキルであり;
Dモノマーのモル分率、m1、は約0.1〜約0.9であり;
Bモノマーのモル分率、n1、は1−m1である;
上記コポリマーはBおよびDモノマーのランダムコポリマーであり、上記コポリマーは約5〜約50の重合度を有する。
【0048】
式IIIの好ましいコポリマーにおいて、Aはチオール連鎖移動剤の残基であり、非制限的に下記のチオール連鎖移動剤のうちのいずれかの残基:
【0049】
【化15】

またはアルコキシカルボニルアルキルチオール、例えばメチル3−メルカプトプロピオネートおよびエチル3−メルカプトプロピオネートなどが含まれる。特に好ましいのは連鎖移動剤メチル3−メルカプトプロピオネートである。
【0050】
例えば式IIIの好ましいコポリマーにおいて、Aはアルコキシカルボニルアルキルチオである。特に好ましい式IIIのコポリマー類において、AはC1−4アルコキシカルボニル(C1−4)アルキルチオである。式IIIのAの特に好ましい等価物は、連鎖移動剤メチル3−メルカプトプロピオネートから誘導される残基であるメチルオキシカルボニルエチルチオである。
【0051】
式IIIの好ましいコポリマー類は、Bが親水性残基であり、Dが疎水性残基であるものである。本発明の幾つかの実施形態において、式IIIの好ましいコポリマー類はBがカチオン性残基であるものである。よって、X11およびY11の好ましい等価物は上記のように式IのXおよびYそれぞれについて列挙された好ましい等価物である。Z11、R11、R31、R41、R51、R81、R911、R921、R931、およびnの好ましい等価物は、上記のように式IのZ、R、R、R、R、R、R91、R92、R93およびnそれぞれについて列挙された好ましい等価物である。
【0052】
Dが疎水性残基であるコポリマー類も式IIIの好ましいコポリマー類である。よって、R21、X21、Y21およびmの好ましい等価物は式IIのR、X、Yそれぞれについて列挙された好ましい等価物である。
【0053】
式IIIの好ましいコポリマー類は、平均重合度(DP)が約4〜約50、約5〜約50、約4〜約30、約5〜約30、約5〜約25、約5〜約20、約6〜約20、約5〜約15、約6〜約15、約5〜約12、約6〜約12、約5〜約10、約6〜約10、または約6〜約8であるものである。特に好ましいのは、DPが約4〜約10、約5〜約10、約6〜約10、または約6〜約8である式IIのコポリマー類である。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は、上記コポリマーが式IIIaであらわされるランダムコポリマーであるか:
【0055】
【化16】

または受容可能なその塩または溶媒和物であるものであり:
上記式中、
1aおよびR2aは独立的に水素またはメチル;
3a、R4aおよびR5aは独立的に水素またはC1−4アルキル;
6aはC1−4アルキル;
7aはC1−10アルキル、C1−6アリール、またはC1−6アラ(C1−4)アルキル;
1aは1〜4;
2aは1〜6;および
は約0.35〜約0.55;およびnは1−mであり;
上記コポリマーは約5〜約25の重合度を有する。
【0056】
例えば本発明の幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は式IIIaであらわされ:式中、
1aおよびR2aは独立的にメチルであり;
3a、R4aおよびR5aは独立的に水素またはメチルであり;
6aはメチルまたはエチルであり;
7aはC1−4アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルであり;
1aは1または2であり;
2aは1、2または3であり;
は約0.35〜約0.55;nは1−mであり;
重合度は約5〜約25、約5〜約10、約5〜約15または約5〜約10であるものである。
【0057】
したがって本発明の幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は、式IIIbであらわされるランダムコポリマーであるか:
【0058】
【化17】

または受容可能なその塩または溶媒和物であって:
は約0.45〜約0.55;nは1−mb;および
重合度は約5〜約15、約5〜約10、または約6〜約8である。
【0059】
本発明のまた別の実施形態において、好ましいコポリマー類は、上記コポリマーが式IIIcであらわされるランダムコポリマーであるか:
【0060】
【化18】

または受容可能なその塩または溶媒和物であるものであり:式中、
は約0.35〜約0.45であり;nは1−mであり;
重合度は約5〜約15、約5〜約10または約6〜約8である。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態において、好ましいコポリマー類は、上記コポリマーが式IIIdであらわされるランダムコポリマーであるか:
【0062】
【化19】

または受容可能なその塩または溶媒和物であり:式中、
は約0.45〜約0.55であり;nは1−mであり;
重合度は約5〜約15、約5〜約10または約6〜約8である。
【0063】
本発明のその他の実施形態において、好ましいコポリマー類は、上記コポリマーが式IIIeであらわされるランダムコポリマーであるか:
【0064】
【化20】

または受容可能なその塩または溶媒和物であるものであり:式中、
は約0.50〜約0.60;neは1−mであり;
重合度は約5〜約15、約5〜約10または約6〜約8である。
【0065】
本発明のコポリマー類は約4モノマー単位から約50〜100モノマー単位を有し、その平均分子量は約500ダルトンから約10,000〜20,000ダルトンの範囲、または約1,000ダルトンから約10,000〜20,000ダルトンの範囲である。好ましいコポリマー類は、約4〜約30モノマー単位、約5〜約20モノマー単位、約4〜約20モノマー単位、または約5〜約20モノマー単位を有し、平均分子量が約500ダルトンから約10,000ダルトンまで、約1,000ダルトンから約10,000ダルトンまで、約1,000ダルトンから約5,000ダルトンまで、または約1000ダルトンから約4,000ダルトンまでの範囲であるものである。特に好ましいコポリマー類は約5〜約10モノマー単位、または約6〜約8モノマー単位を有し、平均分子量が約500ダルトンから約2,000ダルトンまで、または約1,000ダルトンから約2,000ダルトンまでのものである。
【0066】
ここに用いられる用語“ポリマー主鎖”または“主鎖”は、重合でモノマー間に形成される結合を含む連続鎖である上記コポリマーの部分である。コポリマー主鎖の組成は、上記コポリマー主鎖の分子、または側鎖の組成とは無関係に上記主鎖を形成するモノマー類の同定によって明らかにすることができる。
【0067】
用語“コポリマー側鎖”または“側鎖”は、重合後、コポリマー主鎖の伸長部を形成するモノマー部分を言う。
【0068】
本明細書に用いられる用語“両親媒性”は分離した疎水性および親水性領域を有する構造を示す。両親媒性コポリマーにはコポリマー主鎖に沿った疎水性単位および親水性単位両方の存在が必要である。
【0069】
本明細書に用いられる用語“微生物”は細菌、藻類、真菌、酵母、マイコプラズマ、マイコバクテリア、寄生虫および原虫を含む。
【0070】
用語“抗菌性(antimicrobial)”、“殺菌性(microbisidal)”または“生物致死性(殺菌性、biocidal)”はその物質が微生物の成長または増殖を阻害、阻止または破壊することを意味する。この活性は殺菌性か静菌性でよい。本明細書に用いられる用語“殺菌性”は微生物の死滅を意味する。本明細書に使用される用語“静菌性”は微生物の増殖の阻止であるが、ある条件下ではその阻止は回復し得ることを意味する。
【0071】
本明細書に用いられる用語“アルキル”は、それ自体、またはその他の基の一部として、1から12までの炭素を含む直鎖および枝分かれ鎖脂肪族炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどを言う。
【0072】
本明細書に用いられる用語“アルキレン”は炭素原子1〜20個の長さの、またはより好ましくは炭素原子1〜10個、または炭素原子1〜6個の長さの直鎖、または分岐二価脂肪族炭化水素基を言う。アルキレン基の例としては非制限的に、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン異性体(例えば−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)などがある。
【0073】
本明細書に使用される用語“アルコキシ”は、酸素原子に結合した1〜20個の炭素原子(鎖の長さが制限されていない限り)の直鎖または分岐鎖脂肪族炭化水素基を言い、非制限的にメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、などを含む。好ましくは上記アルコキシ鎖は炭素原子1〜10個の長さ、より好ましくは炭素原子1〜8個の長さ、さらにより好ましくは炭素原子1〜6個の長さである。
【0074】
本明細書に使用される用語“アリール”はそれ自体、またはその他の基の部分として、環部分に6〜12個の炭素を含む、より好ましくは環部分に6−10炭素原子を含む単環または二環式芳香族基、例えば炭素環式基フェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルなどを言う。
【0075】
本明細書に使用される用語“アリーレン”は環部分に6〜12個の炭素、より好ましくは環部分に6−10個の炭素を含む二価アリール基(例えば単環式または二環式芳香族基)であって、2つの環炭素原子から1個の水素原子を除去することによって生成する上記二価アリール基である。アリーレン基の例は非制限的にo−フェニレン、ナフチレン、ベンゼン−1,2−ジイルなどである。
【0076】
本明細書に使用される用語“シクロアルキル”はそれ自体または別の基の一部として、3〜9個の炭素原子、より好ましくは3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基を言う。典型的例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルおよびシクロノニルである。
【0077】
本明細書に使用される用語“ハロゲン”または“ハロ”はそれ自体または別の基の部分として、塩素、臭素、弗素またはヨウ素を言う。
【0078】
本明細書に使用される用語“ヘテロアリール”は、5〜14個の環状原子を有し;環状列において6、10または14の7π電子を共有し;炭素原子および1、2または3個の酸素、窒素または硫黄ヘテロ原子を含む基を言う。ヘテロアリール基の例はチエニル、イマジゾリル、オキサジアゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、フリル、ピラニル、チアントレニル、ピラゾリル、ピラジニル、インドリジニル、イソインドリル、イソベンゾフラニル、ベンゾキサゾリル、キサンテニル、2H−ピロリル、ピロリル、3H−インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニル、およびフェノキサジニル基を含む。特に好ましいヘテロアリール基としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−アミノ1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、3−アミノ−1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、ピリジン、および2−アミノピリジンが含まれる。本明細書に用いられる用語“ヘテロアリーレン”は、2個の環状原子から1個の水素原子を除去することによって生成す二価ヘテロアリール基を言う。
【0079】
用語“ヘテロサイクル”、“複素環”または“複素環環”は、別途記載がない限り、安定な5−〜7員単環式または二環式、または安定な7−〜10員二環式複素環系を示し、その任意の環は飽和さされていても不飽和でもよく、炭素原子、およびN、O、およびSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子からなり、その際上記窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、上記窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい;そして上に定義された任意の複素環がベンゼン環に融合した任意の二環式基も含む。1個の酸素または硫黄、1〜3個の窒素原子、または1または2個の窒素原子と結合した1個の酸素または硫黄を含む環が特に有用である。複素環環は、結果として安定構造を作り出すような任意のヘテロ原子または炭素原子に結合してもよい。そのような複素環基の例は、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソキサゾリル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾイル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、フリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルフォキシド、チアモルホリニルスルホン、およびオキサジアゾリルなどである。モルホリノはモルホリニルと同じである。
【0080】
本明細書に使用される用語“アルキルアミノ”はそれ自体または別の基の部分として、1〜6個の炭素原子を有する1つのアルキル基で置換されたアミノ基を言う。本明細書に使用される用語“ジアルキルアミノ”はそれ自体または別の基の部分として、各々1〜6個の炭素原子を有する2つのアルキル基で置換されたアミノ基を言う。
【0081】
本明細書に使用される用語“アルキルチオ”はそれ自体または別の基の部分として、1〜10個の炭素原子、またはより好ましくは1〜6個の炭素原子を有する1つのアルキル基で置換されたチオ基を言う。
【0082】
概して、また別途記載がない限り、本明細書に用いられるフレーズ“任意に置換される”はアミノ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオール、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、およびC1−6アリールからなる群から独立的に選択される1つ以上の置換基で任意に置換される1つの基または複数の基について言う。
【0083】
本明細書に用いられる用語“処置する”、“処置された”または“処置している”は治療的処置および予防的または阻止的処置の両方を意味し、それらの処置によって対象の不利益な生理学的状態、異常または疾患は阻止されまたはスローダウン(緩和)し、または対象が有利なまたは所望の臨床的結果を得られる。本発明の目的では、有利なまたは所望の臨床的結果とは、非制限的に、症状の改善;症状、異常または疾患の程度の軽減;症状、異常または疾患の状態の安定化(すなわち悪化しない);症状、異常または疾患の発生の遅延または進行の緩徐化;症状、異常または疾患の一部または全体的緩解(確認できてもできなくても)または、症状、異常または疾患の向上または改善などである。処置とは、過度の副作用なしに臨床的に顕著な反応を引き出すことを含む。処置には、処置を受けない場合に予測される生存に比較した生存期間の延長も含まれる。
【0084】
本明細書に使用される用語“動物”は非制限的に、ヒトや、野生動物、家畜および牧畜動物のような非ヒト脊椎動物を含む。
【0085】
本発明の幾つかの局面において、本発明のコポリマーはプロドラッグと言われる誘導体である。“プロドラッグ”という表現は、公知の直接作用する薬剤の誘導体であって、上記薬剤に比較して高い送達特性および治療価値を有し、酵素または化学的プロセスによって活性薬剤に変換される上記誘導体類を指す。
【0086】
上記の任意の式(例えば式I、II、III、IIIa,IIIb、IIIc、IIId、またはIIIe)について記載された任意の構成成分または任意のコポリマー類において任意の変化が1回以上発生する場合、各発生におけるその定義はあらゆるその他の発生におけるその定義とは無関係である。また、置換基および/または変化の組み合わせはそのような組み合わせが安定化合物を生成する場合に限って受容可能な。
【0087】
本発明は、本発明のコポリマー類の立体異性体、ジアステレオマーおよび光学異性体、並びにこれらの混合物を使用して、細菌感染を処置し、微生物を殺しまたはその増殖を阻止し、動物の低分子量のヘパリン過剰投与の解毒剤を提供することを含むことは理解される。その他に、本発明のコポリマー類の立体異性体、ジアステレオマーおよび光学異性体、およびこれらの混合物が本発明の範囲内であることも理解される。非制限的例によって、上記混合物はラセミ体でもよいし、または上記混合物がある種の特定の立体異性体を他の立体異性体に対して異なる比率で含むこともできる。その他に、本発明のコポリマー類は実質的に純粋な立体異性体、ジアステレオマー、および光学異性体としても提供できる。
【0088】
本発明のまた別の局面において、本発明のコポリマー類、特にカチオン性側鎖を有するコポリマー類は受容可能な塩(すなわち薬学的に受容可能な塩)の形で提供され、細菌感染を処置し、微生物を殺し、またはその増殖を阻止し、動物における低分子量のヘパリン過量投与の解毒剤となり得る。コポリマーの塩類は医薬品として使用するために、または上記コポリマーの薬物学的所望の形を作るための中間体として提供できる。受容可能なと考えられる一つのコポリマー塩は塩酸付加塩である。例えば塩素イオンはカチオン性側鎖を有するコポリマーのための対イオンとして存在することができる。薬物学的活性物質がプロトン化可能のアミン基を有する場合、塩酸付加塩は受容可能な塩であることが多い。本発明のコポリマーがポリアミンのようなポリイオンである場合、受容可能なコポリマー塩はポリ(アミン塩酸)の形で提供される。その他の受容可能なコポリマー塩類には薬学的に受容可能な酸トリフルオロ酢酸(TFA)の共役塩基であるトリフルオロアセテートのような薬学的に受容可能な酸類の共役塩基類が含まれる。
【0089】
本発明のコポリマー類は抗菌活性を有することが示された。したがって本発明のコポリマー類は抗菌剤として使用され、例えば動物の細菌感染を処置する方法に使用できる。
【0090】
よって本発明は、動物の細菌感染を処置する方法であって、これを必要とする動物に本発明のコポリマーを投与する上記方法に関連する。
【0091】
例えば幾つかの局面において、本発明は動物の細菌感染を処置する方法であって、それを必要とする動物に、上に明記される式IIIのランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量と薬学的に受容可能な担体または希釈剤、または上に明記される式Iのモノマー単位および式IIのモノマー単位を有するランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む方法に関連する。
【0092】
本発明のコポリマー類を使用してあらゆる種類の微生物、例えば非制限的に細菌、藻類、真菌、酵母、マイコプラズマ、マイコバクテリア、寄生虫および原虫などによっておきる細菌感染を処置できる。したがって本発明のコポリマー類は細菌感染、真菌感染、ウィルス感染、酵母感染、マイコプラスミド感染、マイコバクテリア感染または寄生虫感染の処置に有効である。
【0093】
本発明のコポリマー類は抗ウィルス活性を有することも示され、抗ウィルス剤として使用できる。
【0094】
したがって幾つかの局面において、本発明は動物のウィルス感染を処置する方法であって、上記処置を必要とする動物に上に明記される式IIIのランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量および薬学的に受容可能な担体または希釈剤を、または上に明記される式Iのモノマー単位および式IIのモノマー単位を有するランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む方法に関連する。
【0095】
本発明のコポリマー類は真菌感染を処置する方法にも使用できる。
【0096】
免疫無防備状態の人は全身性真菌感染発生の重大なリスクにさらされており、癌およびAIDSの高発生率は有効かつ安全な抗真菌療法の開発の必要性を強調している。現存の抗真菌薬の多くは細胞壁合成に関連する分子標的に作用する(Debono,M.,and Gordee,R.S.,Ann.Rev.Microbiol.48:471−497(1994))。しかしこれら標的の多くは哺乳動物細胞にも見いだされ、その結果不都合な副作用につながることがあり、現在の治療法は肝臓および腎臓毒性を含む重大な合併症と関係する。さらに、細菌感染の場合のように、薬剤耐性真菌類が危険を感じる程の発生率で出現している(DeLucca,S.J.,and Walsh,T.J.,Antimicob.Agents Chemother.43:1−11(1999))。そこで、速やかに、効果的に、そして安全に真菌感染を抑制し、その一方でそれらの作用メカニズムに対する耐性発生の可能性を最小にする全身的および局所的薬剤に対する新規のアプローチの開発が極めて必要である。
【0097】
本発明のコポリマー類は抗真菌活性を有することが判明し、したがって抗真菌剤として動物の真菌感染を処置する方法などに使用できる。
【0098】
したがって幾つかの局面において、本発明は動物の真菌感染を処置する方法であって、上記処置を必要とする動物に上に明記される式IIIのランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量および薬学的に受容可能な担体または希釈剤を、または上に明記される式Iのモノマー単位および式IIのモノマー単位を有するランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量を投与することを含んでなる方法に関連する。
【0099】
本発明のコポリマー類は低分子量のヘパリン治療と関連する出血性合併症の解毒剤としも使用できる。
【0100】
ヘパリンは病院では抗凝固剤および抗血栓剤として一般に使用されている。しかし、治療を複雑にする標準ヘパリン(SH)の薬力学的パラメータが幾つかある。例えばSHの血清中高蛋白結合活性は皮下投与を妨害し、その速やかな、予測できない血中クリアランスのために、効果を評価するための活性化部分トロンポプラスチン時間を絶えずモニターする必要に迫られる(Turpine,A.G.G.,Am.Heart J.135:S329−S335(1998))。より最近になって、低分子量のヘパリン誘導体(LMWH)が比較的太い血管の血栓症状を処置する治療の標準となった(Hirsh,J.,and Levine,M.N.,Blood.79:1−17(1992))。やはりLMWHは、それらの改善された薬力学のために、そして体重ごとの用量対抗凝固反応関係がより予測しやすいために、抗血栓剤として標準ヘパリン(SH)を上回る人気を得ている。LMWHはヘパリンの酵素的または化学的分解によって生成し、効果的因子Xaインヒビタである。というのはそれらは高親和性五糖類配列を含むからである。しかしそれらは有効なトロンビンインヒビタではない(Hirsh,J.,and Levine,M.N.Blood.79:1−17(1992))。
【0101】
SHもLMWHも高い正味の負(アニオン性)電荷を有する。出血性合併症は両方の薬剤による抗血栓治療と関係があり、過剰投与は重大な出血をおこすかも知れない。プロタミンはその正電荷のために、ヘパリンの効果を中和することができるが、プロタミン治療も、例えば低血圧症、肺高血圧症および血小板およびリンパ球を含むある種の血球の障害など、著しく不都合な副作用を有する(Wakefield,T.W.,et al.,J.Surg.Res.63:280−286(1996))。したがってSHおよびLMWH抗血栓治療と関連した出血性合併症のための有効な解毒剤の開発が強く要求される。
【0102】
本発明のコポリマー類はヘパリン、特に低分子量のヘパリンの抗凝固効果を阻止することが示され、したがって低分子量のヘパリン治療に関連する出血性合併症の解毒剤として使用できる。
【0103】
こうして幾つかの局面において、本発明は動物の低分子量のヘパリン過量投与に対する解毒剤を提供する方法であって、上記解毒剤を必要とする動物に、上に明記される式IIIのランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量と薬学的に受容可能な担体または希釈剤、または上に明記される式Iのモノマー単位および式IIのモノマーを有するランダムコポリマーを含む医薬組成物の有効量を投与することを含んでなる方法に関連する。
【0104】
本発明の幾つかの局面において、本発明のコポリマー類は殺菌剤として有用である。例えば、コーティングおよび塗料接着剤はすべて細菌汚染にさらされ、しかも細菌増殖が望ましくない場所に使用される。そのため、表面に適用するために製造される光沢剤、塗料、噴霧剤または洗剤類に本発明のコポリマー類を挿入して、上記表面上の細菌種の増殖を阻止する。これら表面としては非制限的に、カウンター表面、机、椅子、研究室のベンチ、テーブル、床、ナイトテーブル、道具または器具、ドアノブおよび窓などがある。本発明のコポリマー類は石鹸、化粧品、ハンドローションなどのローション類、ハンドウォッシュにも加えられる。これらのクレンザー、光沢剤、塗料、噴霧剤、石鹸、化粧品、ローション、ハンドウォッシュ、または洗剤は、これらに静菌性を与える本発明のコポリマーを含む。それらは任意に適切な溶媒(類)、担体(類)、増粘剤類、色素類、香料類、脱臭剤類、乳化剤類、界面活性剤類、湿潤剤類、ワックス類、または油類を含むことができる。例えば本発明のある局面において、本発明のコポリマー類は、薬学的に受容可能な皮膚クレンザーとして外用するための組成物、特にヒトの手の表面に塗布する組成物に挿入される。本発明のコポリマー類を含むクレンザー類、光沢剤類、塗料類、噴霧剤類、石鹸類、ローション類、ハンドウォッシュ類、および洗剤類などは、家庭および施設において、特に、限定的ではないが院内感染を防ぐために病院環境において有用である。
【0105】
本発明のその他の局面において、本発明のコポリマー類は保存料として有用であり、製品中の細菌種を死滅またはその増殖を阻止する方法に利用できる。例えば本発明のコポリマー類は化粧品の保存料として使用できる。
【0106】
上記コポリマー類は保存料として食料品に加えることもできる。本発明のコポリマーで処理できる食料品は非制限的に、マヨネーズまたはその他の卵製品のような非酸性食品、ポテト製品、およびその他の野菜または肉製品などである。上記食料品に加えるためのコポリマー類は、便利に混合するための、または特定の食料品に溶解するための適切な媒質または担体も含む任意の食用組成物の部分でもよい。上記媒質または担体は、対象の食品のよく知られた風味、例えば食品加工熟練者が公知の上記風味を害さないものであるのが好ましい。
【0107】
本発明のまた別の局面において、本発明のコポリマー類は、表面と接触している微生物だけを殺し、表面介在性殺菌剤または保存料として有用である、表面介在性殺菌剤を提供する。
【0108】
細菌または微生物汚染にさらされる、或いは細菌または微生物に汚染されやすい任意の物体を本発明のコポリマー類で処置し、微生物表面を提供することができる。微生物表面を提供するために、本発明のコポリマー類は適切な方法、例えば共有結合、イオン相互作用、クーロン相互作用、水素結合または架橋などによって、ほとんど全ての基材、例えば非制限的に木材、紙、合成ポリマー類(プラスチックス)、天然および合成繊維、天然および合成ゴム、布、ガラスおよびセラミックスに接着、塗布または挿入される。合成ポリマーの例としては熱硬化性または熱可塑性である弾性変形性ポリマー類、例えば非制限的にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリラクチド、ポリグリコリドのようなポリエステル類、ポリイソプレン、ポリブタジエンまたはラテックスのようなゴム類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホンおよびポリエチレンスルホン−ポリマー類またはコポリマー類などがある。天然繊維の例は綿、ウールおよびリネンを含む。
【0109】
食品に含まれる病原菌による感染発生は相変わらず重大であり、抗菌性の包装材料、家庭用品および表面が貴重である。ヘルスケアおよび医学的デバイス領域において、抗菌性の器具類、包装および表面の有用性は明らかである。ヒトまたは動物の健康のために体内外で用いられる製品、例えば非制限的に外科用手袋、移植用デバイス、縫合糸、カテーテル、透析膜、水のフィルタおよび器具類はすべて病原菌を担持し、移動させる可能性がある。
【0110】
本発明のコポリマー類はこれら任意のデバイスまたは道具に挿入され、表面介在性抗菌性表面を作り、この表面と接触する病原菌を殺しまたはその増殖を阻止する。例えば本発明のコポリマー類は細菌に汚染されやすい材料、例えば非制限的に布、手術用ガウンおよびカーペットなどに使用するための可紡性繊維に挿入できる。本発明のコポリマー類を用いてHVACシステムおよび電子部品に塗布または挿入し、これら表面上の微生物を死滅させるか、またはその増殖を阻止することもできる。眼科用溶液およびコンタクトレンズも容易に汚染され、眼の感染をおこす。そのため本発明のコポリマーを挿入したコンタクトレンズ用抗菌性保存容器および洗浄液は非常に貴重である。
【0111】
幾つかの実施形態において、本発明は微生物を殺しまたはその増殖を阻止する方法であって、上記微生物と上記のコポリマー、例えば上に明記される式IIIのランダムコポリマー、または上に明記される式Iのモノマー単位および式IIのモノマー単位を有するランダムコポリマーの有効量とを接触させることを含む方法に関連する。
【0112】
本発明のコポリマー類は連鎖移動剤の存在下で遊離基重合を利用して合成される。遊離基重合の標準的方法は当業者には公知である。(例えば、Mayo,F.R.,J.Am.Chem.Soc.65:2324−2329(1943)を参照。“Polymer Synthesis:Theory and Practice”Third edition,D.Braun,H.Cherdron,H.Ritter,Springer−Verlag Berlin Heidelberg New York;Sanda,F.,et.al.,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.36,1981−1986(1988);Henriquez,C.,et.al.,Polymer 44:5559−5561(2003);and De La Fuente,J.L.,and Madruga,E.L.,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.38,170−178(2000)も参照。ポリメタクリレート ランダムコポリマー類の合成法を記載している以下の実施例1も参照されたい。) 例えば、本発明のコポリマー類は各々C−C二重結合を含む2種類のビニルモノマー、例えばスチレンまたはメチルメタクリレートなどの直接重合によって合成され、ランダムコポリマーを生成する。
【0113】
連鎖移動剤の存在下で下のスキーム1に示すようなポリマーの遊離基重合を説明する一般的スキームを図1Aに示す。
【0114】
【化21】

適切な場合、保護基をモノマーの側鎖に付加し、ラジカル重合中に上記側鎖を保護することができる。例えばtert−ブトキシカルボニル(“BOC”)保護基を使用してモノマー2−アミノエチルメタクリレート塩酸の遊離アミン基を保護できる。実施例1およびスキーム2を参照されたい。反応基を化学的に保護する方法は当業者には公知である。例えば“Protective Groups in Organic Synthesis”Third eddition,T.W.Greene,P.G.M.Wuts,John Wiley & Sons,Inc.(1999);およびBoc保護基を有するモノマーのラジカル重合の記述として、Sanda,F.,et.al.,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.36,1981−1986(1998)を参照されたい。
【0115】
本発明のコポリマー類の合成に用いられるモノマー類は市場で入手でき、または当業者に公知の方法によって作ることができる。例えば、2−アミノエチルメタクリレート塩酸は市販されている。
【0116】
本発明のコポリマー類の抗菌活性は当業者に公知の方法によって試験することができる。例えばTew,G.N.et.al.,(Tew,G.N.,et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:5110−5114(2002))を参照されたい。抗菌性の試験はE.coli、または所望ならば別の菌種、例えばB.subtilis、P.aeruginosa、K.pneumoniae、S.typhimurium、N.gonorrhoeae、B.megaterium、S.aereus、E.feacalis、M.luteus、またはS.pyogenesを用いてミクロ−ブロス希釈法によって行うことができる。スクリーニングできるその他の特殊の菌種はアンピシリンおよびストレプトマイシン耐性E.coliD31、バンコマイシン耐性Enterococcus faecium A436、およびメシチリン耐性S.aereus5332などである。活性であることが判明した任意のコポリマーを精製して均質にし、再試験して正確なIC50を得る。二次的スクリーンはKlebsiellapneumoniaeKpl、およびSalmonella typhimuriumS5、およびPseudomonus aeruginosa10を含む。伝統的にミクロ−ブロス希釈法は18−24時間の単一のデータ点を評価するに過ぎない;しかし、その測定を24時間に延長して細胞増殖を全増殖期間にわたってモニターすることができる。これらの実験はLB培地(蛋白発現のために細胞を増殖させるために一般に用いられる富化培地)で行われ、活性を試験する重要な一次スクリーンである。塩濃度、蛋白類、およびその他の溶質類は抗生物質の活性に影響を与えることがあるから、富化培地において活性を示さない材料は最小培地(M9)で再試験し、富化培地が活性を制限するかどうかを調べることができる。一般的膜破壊によると考えられる作用モードにしたがう培地と活性との間の関連性は認められなかった。
【0117】
本発明のコポリマーが静菌性であるかまたは殺菌性であるかを調べる標準的アッセイを行うことができる。このようなアッセイは当業者には公知であり、例えばE.coli細胞を被験コポリマーと共に一晩インキュベートし、その後その混合物を当業者に公知の方法によって寒天プレート上で培養するというやり方で行われる。例えばTew,G.N.et al.(Tew,G.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:5110−5114(2002)およびLiu,D.,and DeGrado,W.F.(Liu,D.,andDeGrado,W.F.,J.Am.Chem.Soc.123:7553−7559(2001))を参照されたい。
【0118】
本発明のコポリマー類の抗ウィルスおよび抗真菌活性を測定するアッセイも当業者には公知である。抗ウィルスアッセイの例としては、Belaid et al.,(Belaid,A.,et al.,J.Med.Virol.66:229−234(2002))、Egal et al.,(Egal,M.,et al.,Int J.Antimicrob.Agents 13:57−60(1999))、Andersen et al.,(Andersen,J.H.,et al.,Antiviral Rs.51:141−149(2001))、およびBastian,A.,and Schafer,H.(Bastian,A.,and Schafer,H.,Regul.Peptk.15:157−161(2001))を参照されたい。Cole,A.M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:1813−1818(2002)も参照。抗真菌アッセイの例としてはEdwards,J.R.,et al.,Antimicrobial Agents Chemotherapy 33:215−222(1989)、and Broekaert,W.F.,et al.,FEMS Microbiol.Lett.69:55−60(1990)を参照されたい。これら各記事の全内容は参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。
【0119】
細菌および真核細胞に対する本発明のコポリマー類の細胞傷害性選択性を測定するためのアッセイは当業者には公知である。例えば細胞傷害性選択性は上記コポリマー類の溶血活性の測定によって評価できる。溶血活性アッセイは、上記コポリマーの存在下でインキュベートした後のヒト赤血球の溶血度を測定し、HC50値を確認するというやり方で行われる。HC50値は50%ヘモグロビン遊離をおこす上記化合物の濃度である。例えばKuroda,K.,and DeGrado,W.F.J.Am.Chem.Soc.127:4128−4129(2005)および Liu,D.,and DeGrado,W.F.,J.Am.Chem.Soc.123:7553−7559(2001)、およびそのなかに記載される参考文献を参照されたい。Java(登録商標)dpour,M.M.et al.,J.Med.Chem.39:3107−3113(1996)も参照されたい。
【0120】
本発明のコポリマーが細胞膜のモデルである燐脂質二重層と相互作用するかどうか、またそれを破壊するかどうかを確認するために、小胞漏出アッセイを用いることもできる。小胞漏出アッセイは当業者には公知である。例えばTew,G.N.,et al.,(Tew,G.N.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:5110−5114(2002))、およびその中に記載される参考文献を参照されたい。
【0121】
本発明のコポリマー類のヘパリン中和活性を測定するアッセイは当業者には公知であり、一般に活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(例えば、試験化合物の存在下、または試験化合物を含まずに固定濃度のヘパリンの存在下における活性化血漿の凝固時間の遅れを測定する)か、因子Xアッセイのいずれかを用いて行われる。例えばKandrotas(Kandrotas,R.J.,Clin.Pharmacokinet.22:359−374(1992))、Wakefield et al.,(Wakefield,T.W.,et al.,J.Surg.Res.63:280−286(1996))、and Diness,V.,and stergaard,P.B.(Diness,V.O.,and stergaard,P.B.,Thromb.Haemost.56:318−322(1986))およびそのなかに記載される参考文献を参照されたい。Wong,P.C.,et al.,J.Pharm.Exp.Therap.292:351−357(2000)、およびRyn−McKenna,J.V.,et al.,Thromb.Haemost.63:271−274(1990)も参照されたい。
【0122】
本発明のコポリマー類を用いて下記の細菌類または下記の細菌類の混合物を殺し、またはそれらの増殖を阻止することができ、または本発明のコポリマー類を投与して下記の細菌類または下記の細菌類の混合物によって起きる局所性および/または全身性細菌感染を処置することができる:グラム陽性球菌、例えばブドウ球菌(Staph.aureus、Staph.epidermidis)および連鎖球菌(Strept.agalactiae、Strept.faecalis、Strept.pneumoniae、Strept.pyogenes);グラム陰性球菌(Neisseria gonorrhoeae および Yersinia pestis)、および腸内細菌のようなグラム陰性杆菌、例えばEscherichia coli、Haemophilus influenzae、シトロバクター属(Citrob.freundii、Citrob.divernis)、サルモネラ属および赤痢菌属、およびフランシセラ属(Francisella tularensis);バシラス属のようなグラム陽性杆菌(Bacillus anthracis、Bacillus thuringenesis);さらにクレブシエラ属(Klebs.pneumoniae、Klebs.oxytoca)、エンテロバクター属(Ent.aerogenes、Ent.agglomerans)、ハフニア属、セラチア属(Serr.marcescens)、プロテウス属(Pr.mirabilis、Pr.rettgeri、Pr.vulgaris)、プロビデンシア属、エルジニア属、およびアシネトバクター属。さらに本発明のコポリマー類の抗菌スペクトルは、シュードモナス属(Ps.aeroginosa、Ps.maltophilia)並びにペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属およびクロストリジウム属の典型例であるBacteroides fragilisのような厳密に嫌気性の細菌類も含む;さらにマイコプラズマ(M.pneumoniae、M.hominis、Ureaplasma urealyticum)並びにマイコバクテリア、例えばMycobacterium tuberculosisも含む。この細菌リストは純粋に説明のためのものであり、決して制限するものではない。
【0123】
本発明の投与によって処置できる細菌感染または疾患の例は、非制限的に、ヒトの細菌感染または疾患、例えば耳炎、咽頭炎、肺炎、腹膜炎、腎盂腎炎、膀胱炎、心内膜炎、全身性感染、気管支炎(急性および慢性)、敗血症性感染、上部気道疾患、び慢性軸索周囲脳炎、肺気腫、赤痢、腸炎、肝膿瘍、尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎、胃腸感染、骨および関節の感染、嚢胞性繊維症、皮膚感染、術後傷感染、膿瘍、蜂巣炎、創傷感染、感染火傷、火傷、口中感染(非制限的に歯周病および歯肉炎など)、歯の手術後の感染、骨髄炎、細菌性関節炎、胆嚢炎、虫垂炎を伴う腹膜炎、胆管炎、腹腔内膿瘍、膵炎、静脈洞炎、乳様突起炎、乳腺炎、扁桃炎、チフス、髄膜炎、および神経系の感染、卵管炎、子宮内膜炎、性器感染、骨盤腹膜炎および眼の感染を含む。
【0124】
本発明のコポリマー類の投与によって処置できるウィルス感染の例としては、非制限的に、ヒト免疫不全ウィルス(HIV−1、HIV−2)、肝炎ウィルス(例えばA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎およびE型肝炎ウィルス)、ヘルペスウィルス(例えば、単純ヘルペスウィルスI型およびII型、水痘−帯状疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス、EBウィルス、およびヒトヘルペスウィルス6、7および8型)、インフルエンザウィルス、RSウィルス(RSV)、ワクシニアウィルス、およびアデノウィルスによってオキルウィルス感染が含まれる。このリストは純粋に例証的なものであり、決して制限するものではない。
【0125】
本発明のコポリマー類の投与によって処置できる真菌感染または疾患の例としては非制限的に、Chytridiomycetes、Hyphochrytridiomycetes、Plasmodiophoromycetes、Oomycetes、Zygomycetes、Ascomycetes、およびBasiodiomycetesによって引き起こされる真菌感染が含まれる。本発明のコポリマー類の組成物で阻止または処置できる真菌感染は非制限的に次のものを含む:例えば非制限的にCandida albicans、Candida tropicalis、Candida (Torulopsis)glabrata、Candida parapsilosis、Candida lusitaneae、Candida rugosaおよびCandida pseudotropicalisなどのカンジダ種によっておきるカンジダ症、例えば非制限的にonchomycosis、慢性粘膜カンジダ症、口中カンジダ症など、喉頭蓋炎、食道炎、胃腸感染、尿生殖器感染など;例えば非制限的にAspergillus fumigatus、Aspergillus favus、Aspergillus nigerおよびAspergillus terreusなどのアスペルギルス属によって引き起こされるアスペルギルス症(Asperugillosis)、例えば非制限的に顆粒球減少症など;例えばケカビ属、Rhizopus属、Absidia属、Rhizomucor、Cunningamella、Saksenaea、BasidobolusおよびConidobolusなどによって引き起こされる接合真菌症、例えば非制限的に肺、洞および鼻脳感染など;Cryptococcus neoformansなどによって引き起こされるクリプトコックス症、例えば非制限的に髄膜炎などの中枢神経系の諸疾患、および呼吸気道感染など;例えばTrichosporon beigeliiによって引き起こされるトリコスポロン症;Psuedallescheria boydiiなどによって引き起こされるシュードアレシェリア症;Fusarium solani、Fusarium moniliformeおよびFusarium proliferartumのようなフザリウム属によって引き起こされるフザリウム感染;およびその他の感染、例えばペニシリウム属(全身皮下膿瘍)、Trichophyton mentagrophytesおよびTrichophyton rubrumなどの白癬菌属(Trichophyton spp.)、S.ChartarumのようなStachybotrys属、Drechslera、Bipolaris、Esserohilum属、Paecilomyces lilacinum、Exophila jeanselmei(皮膚結節)、Malassezia furfur(毛包炎)、Alternaria(皮膚結節性創傷)、Aureobasidium pullulans(脾およびはん種性感染)、Rhodotorula属(はん種性感染)、Chatomium属(膿胸)、Torulopsis candida(真菌血症)、Curvularia属(鼻咽頭感染)、Cunninghamella属(肺炎)、H.Capsulatum、B.dermatitis,Coccidioides immitis、Sporothrix schenckiiおよびParacoccidioides brasiliensis、Geotrichum candidum(はん種性感染)によって引き起こされる感染。本発明のコポリマー類を用いて上記の任意の真菌を死滅させ、その増殖を阻止できる。このリストは純粋に例証的なものであり、決して制限するものではない。
【0126】
本発明のコポリマー類はヒト対象に投与できる。例えば本発明の幾つかの局面において、上記コポリマー類はヒトに投与される。
【0127】
上に開示した方法は獣医学にも利用でき、これらの方法を用いて種々様々の非ヒト脊椎動物を処置できる。例えば、本発明のその他の局面において、本発明のコポリマー類は上記の方法によって、野生、家畜、または畜産動物のような非ヒト脊椎動物、例えば非制限的に畜牛、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、およびヒナドリ、七面鳥、ウズラ、ハト、鑑賞用鳥などの家禽類などに投与される。
【0128】
下記は、本発明のコポリマーの投与によって処置できる非ヒト脊椎動物の細菌感染の例である:ブタ:大腸性下痢、腸性毒血症、敗血症、赤痢、サルモネラ症、子宮−乳腺−アガラクシア症候群、乳腺炎;反スウ動物(畜牛、ヒツジ、ヤギ):下痢、敗血症、気管支肺炎、サルモネラ症、パスツレラ症、マイコプラズマ症、性器感染;ウマ:気管支肺炎、関節疾患、産じゅく期および産じゅく期後感染、サルモネラ症;イヌおよびネコ:気管支肺炎、下痢、皮膚炎、耳炎、尿路感染、前立腺炎;家禽(ヒナドリ、七面鳥、ウズラ、ハト、鑑賞用鳥など):マイコプラズマ症、E.coli感染、慢性呼吸気道疾患、サルモネラ症、パスツレラ症、オウム病。このリストは純粋に例証的なものであり、決して制限するものではない。
【0129】
本発明のコポリマー類を殺菌剤および/または保存料として、クレンザー類、光沢剤類、塗料類、噴霧剤類、石鹸類、または洗剤類に使用する用途においては、上記コポリマー類は適切な溶媒(類)、担体(類)、増粘剤、色素類、香料類、脱臭剤類、乳剤類、界面活性剤類、湿潤剤、ワックス類または油類と組み合わせて、上記クレンザー、光沢剤、塗料、噴霧剤、石鹸または洗剤組成物に使用される。上記コポリマーを食料品の保存料として使用する場合は、上記コポリマーは、上記食料品に都合よく混合または溶解するための適切な媒質または担体も含む任意の食用組成物の一部として上記食料品に加えることができる。上記クレンザー、光沢剤、石鹸などの組成物または食料品に添加または挿入されるコポリマーの量は、所望の細菌種を殺し、またはその増殖を阻止するのに十分な量であり、当業者は容易に決定できる。
【0130】
本発明のコポリマー類が表面介在性殺菌剤として使用される用途、例えば殺菌剤および保存料として使用する幾つかの用途(非制限的に医科用デバイス、例えばカテーテル、包帯、および移植デバイスなど、または食品容器および食品取り扱い器具などを含む)では、上記コポリマー類は共有結合、イオン相互作用、クーロン相互作用、水素結合または架橋などを含む適切な方法によって、ほとんどあらゆる基質、例えば非制限的に木材、紙、合成ポリマー類(プラスチックス)、天然および合成繊維、天然および合成ゴム類、布、ガラスおよびセラミックスに接着または挿入される。
【0131】
本発明のコポリマー類を適切な材料および基質に接着、塗布および挿入するための方法はWIPO Publ.No.WO02/100295に開示されており、その内容は参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。適切な基質および材料もWO 02/100295に開示されている。
【0132】
本発明のコポリマーはそれらが活性である任意の経路による便利な仕方で投与できる。投与は全身的、局所的または経口でよい。 例えば非制限的に、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、バッカル、または眼内、または膣内に、吸入によって、蓄積注射によって、またはインプラントによって投与できる。例えば本発明のコポリマー類の投与方法(単独でまたはその他の医薬品と組合わせて)としては、非制限的に舌下、注射(皮下または筋肉内に注射できる短時間作用性、デポ、インプラントおよびペレット型を含む)、または膣クリーム、座剤、ペッサリー類、膣リング類、直腸座剤、子宮内デバイス、およびパッチおよびクリームなどの経皮型がある。
【0133】
特殊な投与法は適応症による(例えば上記コポリマー類を細菌感染の処置のために投与するのか、またはヘパリン治療と関連する出血症状を解毒するために投与するかなど)。上記投与法は標的とする病原または細菌によって決まることもある。特異的投与経路および投与法の選択は臨床医に公知の方法によって臨床医によって調節または決定できる。投与すべきコポリマー量は治療的に有効な量である。投与すべき量は処置すべき対象の特性、例えば処置する特定の動物、年齢、体重、健康状態、もしあれば同時に行う処置の種類、および処置の頻度に左右され、当業者(例えば臨床医)は容易に決定できる。
【0134】
本発明のコポリマー類および適切な担体を含む医薬組成物は固体投与型、例えば非制限的に錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット、ピル、粉末および顆粒;局所投与型、例えば非制限的に溶液、粉末、エマルション液、懸濁液、半固体、軟膏、ペースト、クリーム、ゲルおよびゼリー、およびフォーム;および非経口投与型、例えば非制限的に溶液、懸濁液、エマルション、およびドライパウダーであり、これらは本発明のコポリマーの有効量を含む。このような組成物中に、上記活性成分類を薬学的に受容可能な希釈剤、フィラー、殺菌剤、結合剤、滑剤、表面活性剤、疎水性媒質、水溶性媒質、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、溶解剤、保存料などと共に含めることができる。投与手段および方法は当業者には公知であり、当業者は指針として種々の薬物学的参考文献を参照できる。例えばModern Pharmaceutics,Banker & Rhodes,Marcel Dekker,Inc.(1979);およびGoodman & Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,6th Edition,MacMillan Publishing Co.,New York(1980)が参考になる。
【0135】
本発明のコポリマー類は注射による非経口投与、例えば一回注射または連続注入による非経口投与のために処方できる。上記コポリマー類は連続注入で約15分から約24時間にわたる連続皮下注入によって投与できる。注射用組成物は単回投与型、例えばアンプルで、または保存料を添加する多数回投与容器で提供できる。上記組成物類は油性または水性媒質中の懸濁液、溶液またはエマルションのような形をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。
【0136】
経口投与のための上記コポリマー類は、これらの化合物を当業者に公知の薬学的に受容可能な担体と組み合わせることによって容易に処方できる。このような担体を用いて本発明の化合物類を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することができ、処置すべき患者に経口投与できる。経口使用のための医薬組成物は固体賦形剤を加え、生成混合物を任意にすりつぶし、もし所望ならば適切な助剤を加えた後、顆粒混合物を処理することによって、錠剤または糖衣錠コアを作る。適切な賦形剤としては非制限的にフィラー類、例えば、非制限的にラクトース、スクロース、マンニット、およびソルビットなどの糖類;セルロース製品、例えば非制限的に、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ポテト澱粉、ゼラチン、トラガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロールナトリウムおよびポリビニルピロリドン(PVP)などがある。所望ならば崩壊剤を加えることができる。これは例えば非制限的に、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどである。
【0137】
糖衣錠コアに適切なコーティングを施すことができる。この目的のために、濃縮糖溶液を使用できる。それは任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液類、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を任意に含むことができる。染料または色素を上記錠剤またはコーティングに加えて、活性化合物の量の異なる組み合わせを識別または特徴づけることができる。
【0138】
経口的に使用できる医薬製品には、非制限的にゼラチンから作られるプッシュ−フィット・カプセル、並びにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビットのような可塑剤から作られる軟シールドカプセルが含まれる。プッシュ−フィットカプセル類は、ラクトースのようなフィラー、澱粉のような結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムのような滑剤、および任意に安定剤を含むことができる。軟カプセルでは、活性化合物は脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールのような適切な液に溶解または懸濁することができる。さらに安定剤も加えることができる。経口投与のための全ての組成物はそのような投与に適した量でなければならない。
【0139】
バッカル投与のための上記コポリマー組成物は、一般的方法で処方される錠剤またはトローチ剤の形をとることができる。
【0140】
吸入による投与のために本発明によって使用するコポリマー類は、加圧パックまたはネブライザーからのエアゾールスプレーの形で、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適切なガスを使用して便利に供給される。加圧エアゾールの場合には、定量を供給するバルブを備えることによって投与単位を決めることができる。吸入器または吹付器に使用するためには上記化合物の粉末ミックスとラクトースまたは澱粉などの適切な粉末ベースとを含む例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジ作ることができる。
【0141】
本発明のコポリマー類は、ココアバターまたはその他のグリセリド類などの一般的座薬基材を含む座薬または停留浣腸のような直腸組成物にも処方できる。
【0142】
既述の組成物に加えて、本発明のコポリマー類はデポー製剤としても処方できる。このような徐放製剤は移植によって(例えば皮下または筋肉内)または筋肉注射によって投与できる。
【0143】
デポー注射は約1〜約6カ月またはより長い期間にわたって投与できる。そのため上記化合物類は適切な重合または疎水性物質と共に(例えば受容可能な油中エマルションとして)またはイオン交換樹脂として、または実質上溶解しない誘導体類、例えば実質上溶解しない塩として処方できる。
【0144】
経皮的投与において、本発明のコポリマー類は例えばプラスターに使用することができ、または経皮的治療系に使用し、結果的に生体に供給することができる。
【0145】
上記コポリマー類の医薬組成物は適切な固体またはゲル相の担体または賦形剤も含むことができる。このような担体または賦形剤の例には、非制限的に炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、澱粉類、セルロース誘導体類、ゼラチン、および例えばポリエチレングリコールのようなポリマー類がある。
【0146】
本発明のコポリマー類はその他の活性成分、例えばアジュバント類、プロテアーゼインヒビタ類またはその他の適合性薬剤類または化合物類と組み合わせて投与することもできる:ただしそのような組合わせが、本明細書に記載される方法の所望の効果(例えば有害微生物によっておきる感染のコントール、またはヘパリン治療と関連する出血性合併症の処置)を達成するために望ましく、または有利であることが判明している場合に限る。例えば本発明のコポリマー類はその他の抗生物質、例えば非制限的にバンコマイシン、シプロフロキサシン、メラペネム、オキシシリンおよびアミカシンなどと共に投与できる。
【0147】
下記の例は本発明の性質をさらに特徴づけるために役立つが、本発明の範囲を制限するものではない。この範囲は添付の請求項だけによって決まるものである。
【実施例】
【0148】
(実施例1)
(ポリメタクリレート・ランダムコポリマー類の合成および特徴づけ)
ポリメタクリレート・ランダムコポリマー類の系列を遊離基重合法を用いて合成し、in vitroアッセイを用いてその抗菌活性を試験した。カチオン性および疎水性基はラジカル重合合成中、上記ポリマーに沿ってランダムに分布し、下記の一般構造を有するランダムコポリマーを生成した:
【0149】
【化22】

上記式中、xは疎水性モノマー単位のモル分率であり、1−xはカチオン性モノマー単位のモル分率である。連鎖移動剤を用いて上記コポリマー類の分子量を調節した。ランダムコポリマー類の諸系列はポリマー主鎖に沿って分布する疎水性基のパーセントおよびアイデンティティーおよび上記コポリマーの分子量が共に変化した。
【0150】
(方法)
機器:H NMRスペクトルはVarian Unity500 NMRスペクトロメータで得た。ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)測定は直列に連結した2本のカラム(PLゲル、5μm、mixed−C、Polymer laboratories)および屈折率検出器を用いて室温で行われた。溶出液としてTHFを使用した。ポリマーの分子量(MおよびM)は単分散ポリスチレン標準を使用した較正に基づいて計算した。
【0151】
Boc−保護メタクリレートモノマー(1)の合成。塩化メタクリロイル(6.5mL、65mmol)を、ドライアイス/アセトン浴で冷やしたTHF(100ml)およびトリエチルアミン(9.5mL、68mmol)中、tert−ブチルN−(2−ヒドロキシエチル)カルバメート(10g、62mmol)に加えた。反応混合物を室温で一晩温め、生成した沈殿物を濾去した。濾液を蒸発によって濃縮し、残渣をCHClで希釈し、水、1NのNaOHおよびブラインで洗った。有機層をNaSO上で乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発した。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl(90):EtOAc(10))によって精製した。得られた固体をCHCl/ヘキサンから再結晶すると上記生成物が4.74g得られた(収率31%)。
【0152】
両親媒性ポリメタクリレートコポリマー類の合成(6)。モノマー1および4(合計0.435mmol)を、AIBN(0.716mg、4.35μmol)および連鎖移動剤としてのメチル3−メルカプトプロピオネートを含むジオキサンまたはアセトニトリル(0.5mL)に溶解し、Arで2分間パージした。反応混合物を60℃で一晩撹拌し、溶媒を蒸発して除去した。油性残留物をCHClで希釈し、ヘキサン中に滴下した。得られた沈殿物を濾過によって集め、真空下で乾燥した。生成したコポリマー(ポリマー5)のモノマー組成をCDClHNMRスペクトルにおける側鎖のメチレンプロトンからのシグナルを積分して計算した。
【0153】
上記コポリマー(ポリマー5)(10−20mg)をTFA(1mL)に溶解し室温で1時間撹拌した。TFAを蒸発して除去し、油性残留物をジエチルエーテルですすいだ。生成した沈殿物を遠心分離によって集め、さらにジエチルエーテルですすぎ、真空下で一晩乾燥するかまたは凍結乾燥すると、コポリマー6が白色粉末として得られた。
【0154】
抗菌性アッセイ。各ポリマーをDMSO(5mg/mL)に溶解した。この溶液を水と混合し、2倍希釈の一連のストック溶液を調製した。E.coli溶液(Mueller−Hilton培地)を含む96ウェルプレートに加えた際、これらは10倍に希釈された。E.coliを含む上記ポリマー溶液を36℃で18時間インキュベートし、λ=595nmの光学密度によって細胞増殖を測定した(Liu,D.,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,43:1158(2004);Tew,G.N.,et al.,PNAS99:5110(2002))。
【0155】
(結果)
連鎖移動剤を使用するポリメタクリレートポリマー類の合成
上記ポリマー類の分子量はラジカル重合中に連鎖移動剤(CTA)よって調節された。種々のCTA濃度における重合度を確認するために、連鎖移動剤(CTA)メチル3−メルカプトプロピオネートの存在下でアゾビスブチロニトリル(AIBN)ラジカル開始剤を用い、Boc−保護アミンモノマー1をn−ブチルメタクリレートで重合すると、Boc−保護ポリマー2が得られた(スキーム2)。
【0156】
【化23】

上記ポリマー類をH NMRおよびゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)によって上記のように特徴づけた。結果を表1に示す。末端メチル基からのシグナルはHNMRスペクトルにおけるポリマーのその他のピークから解析されるので、メチル3−メルカプトプロピオネートはCTAとしてこのチオール化合物を用いて合成されたポリマーの平均重合(“DP”)度を決定するための有用なマーカーとなる。よってNMR分析を利用して、ポリマー末端のCTA残基のメチル基からのシグナルを上記ポリマーのモノマー側鎖のメチレンプロトンに対して積分することによって、ポリマー2のDPを決定した。上記DPは種々のCTA濃度のポリマーで、マヨ等式(Mayo,F.R.,J.Am.Chem.Soc.65:2324(1943);図1Aおよび1Bも参照)を使って計算された:
【0157】
【化24】

上記式中、DPはCTAが存在しない時の重合度をあらわし、CTは連鎖移動定数をあらわす。図2は種々のCTA濃度で得られたポリマー2のDPsの逆数を[CTA]/[1]に対してプロットしたものである。データは直線を与えた。この勾配から導き出される連鎖移動定数CTは0.86である。ポリマー2のBoc基をTFAによって除去するとカチオン性ポリマー3が得られた。
【0158】
(表1.Boc−保護ポリマー2の特徴づけ)
【0159】
【化25】

a)GPC(THF、ポリスチレン標準)。
【0160】
b)M/Mによって決まる。Mは重量平均分子量;Mは数平均分子量を示す。
【0161】
c)HNMR分析によって測定。
【0162】
(ポリメタクリレートランダムコポリマー類の合成)
CTAとしてのチオールの存在下でモノマー1を、異なる疎水性基を担うコモノマー4で重合した(スキーム3)。
【0163】
スキーム3
【0164】
【化26】

R=エチル、ブチル、ヘキシル、イソブチルまたはベンジル。
【0165】
ポリマー類の広範なライブラリーを作成するために、モノマー1対コモノマー類の供給比およびCTA濃度を変化させた。表2は、モノマー類の総量に対する10mol%CTAの存在下で重合したエチルメタクリレートまたはベンジルメタクリレートとのコポリマー類5の特徴づけ結果を示す。上記コポリマー類のHNMR分析は上記ポリマー類の平均モノマー組成およびそれらのDPsを決定した。生成したポリマー類のモノマー組成は供給組成物に近く、両方のポリマーのDPsは全く同様であった。コポリマー類5をTFAによって脱保護するとカチオン性ポリマー6が得られた。上記ポリマーは水に易溶性であった。
【0166】
(表2.ランダムコポリマーの特徴づけ)
【0167】
【化27】

a)供給組成物。
【0168】
b)HNMR分析によって測定。
【0169】
c)GPC(THF、ポリスチレン標準)によって測定。
【0170】
d)M/Mによって決定。
【0171】
コポリマー6の諸系列について、上記のようにin vitro抗菌性アッセイによって抗菌活性を試験した。最小阻止濃度(MICs)をポリマー6の系列においてE.coliで測定した。エチルメタクリレートコポリマー類のデータを表3に列挙する。これらのポリマーは、疎水性基のパーセントの増加につれて、より高い活性(より低いMICs)を示した。カルボン酸を有するアニオン性ポリマー類似体は不活性である。同じ傾向が長鎖アルキルを担うその他のポリマーでも認められたが、活性は疎水性基のパーセントが高くなると低下した(データは示されず)。より低い活性はより大きい分子量のポリマーでも認められた(データは示されず)。
【0172】
(表3.エチルメタクリレートカチオン性ポリマー6の特徴づけおよび抗菌活性)
【0173】
【化28】

a)重合には10mol%CTAを用いた。
【0174】
b)E.coliで測定
(実施例2)
(ポリメタクリレートランダムコポリマー系列の抗菌活性)
上の実施例1およびスキーム3に記載したように下記の一般構造を有するポリメタクリレートランダムコポリマーの5系列を合成し、抗菌活性を試験した。
【0175】
【化29】

R=エチル、ブチル、ヘキシル、イソブチルまたはベンジル。
【0176】
連鎖移動剤メチル3−メルカプトプロピオネートを用いて上記コポリマー類の分子量を調節した。各コポリマー系列でモノマー1
【0177】
【化30】

の、疎水性コモノマー(すなわちエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、またはベンジルメタクリレート)に対する供給比、およびCTA濃度を変化させ、ポリマー主鎖に沿って分布する疎水性基のパーセントおよびアイデンティティ、および分子量が共に変化したランダムコポリマーを生成した。MW範囲(平均DP):大(“L”;MW約30,000−10,000);中(“M”;MW約4,000−2,000;CP=15−20);小(“S”;MW約2,500;DP=12);および極小(“XS”;MW約2,000−1,000;DP=6−8)に基づいて4カテゴリーのコポリマー類を合成した。その他の限られたアニオン性COOH−エチルコポリマー10の系列を合成した。
【0178】
【化31】

各系列のコポリマーについて、実施例1に記載したようにE.coliを用い、抗菌アッセイによって抗菌活性を試験した。脱保護したモノマー1である2−アミノエチルメタクリレート塩酸を対照として用いた。結果を表4に示す。
【0179】
(表4)
(結果:E.coliの場合のMIC(μg/mL)(インキュベーション時間:18時間))
【0180】
【化32】

[ポリマー]=500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8、3.9μg/mL(2倍希釈系列)
a)重合中の疎水性基の理論的組成を使用した。
【0181】
b)8%ブチル基
c)13%ブチル基
d)市販;酢酸エチルから再結晶。
【0182】
e)10−20%の未反応アミンモノマーを含む
(実施例3)
(n−ブチルメタクリレートランダムコポリマー類の合成および特徴づけ)
3系列のn−ブチルメタクリレート・ランダムコポリマーを遊離基重合法を用いて連鎖移動剤の存在下で製造し、下のスキーム4および実施例1に記載される方法、およびKuroda et al.J.Am.Chem.Soc.127:4128−4129(2005)らの方法(http://pubs.acs.org.に補助情報あり)によって特徴づけた。補助情報を含むKuroda et al.J.Am.Chem.Soc.127:4128−4129(2005)の全内容は参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。
【0183】
ランダムコポリマー類の合成。R=ブチル。
【0184】
【化33】

スキーム4
Boc−保護アミンモノマー1をスキーム3に記載のように連鎖移動剤(CTA)メチル3−メルカプトプロピオネートの存在下でn−ブチルメタクリレート・モノマー7で重合した。CTAを使用して生成ポリマーの重合度を、したがって分子量を調節した。モノマー類およびCTAの供給比を変えることによって、異なるモノマー組成および分子量を有するn−ブチルメタクリレート・ランダムコポリマー(コポリマー8)の3系列が生成した。HNMR分析により平均モノマー組成および重合度(DP)が決定された。分子量(数平均)はHNMR分析によって測定したDP値から計算した。ジエチルエーテル中でboc−保護コポリマーを沈殿するとコポリマー9が得られた。低分子量のコポリマー類は沈殿しにくいことを利用してサイズ排除クロマトグラフィー(メタノール中SephadexLH−20)によって低分子量コポリマーを精製した。
【0185】
各系列の合成法は次のようである:
(両親媒性ポリメタクリレート誘導体類の合成法:ポリマー系列1および2)
【0186】
【化34】

Boc−保護ポリマー類:N−(tert−ブトキシカルボニル)アミノエチルメタクリレートおよびn−ブチルメタクリレート(合計0.435mmol)をAIBN(0.716mg、4.35μmol)および連鎖移動剤としてのメチル3−メルカプトプロピオネートを含むアセトニトリルに溶解し、Arで2分間パージした。反応混合物を60℃で一晩撹拌し、溶媒を蒸発除去した。油性残留物をCHClで希釈し、ヘキサン中に滴下した。得られた沈殿を遠心分離によって集め、真空下で乾燥した。上記ポリマー類のブチル基のモルパーセント(MPBu)をHNMRスペクトル(CDCl3)におけるモノマー側鎖類のメチレンプロトンからのシグナルの積分比によって計算した。DPは上記ポリマー末端におけるMMPのメチルプロトンからのシグナルに対して上記側鎖類のメチレンプロトンからのシグナルを積分することによって決定した。典型的ポリマー(MPBu=29およびDP=30)のHNMR(500MHz、CDCl):δ4.2−3.8(bm,59.49H)、3.691(s,3H)、3.390(bs,42.44H)、2.8−2.5(m,5.28H),2.2−0.8(m,427.92H)。特徴づけの結果を表5−1および5−2にまとめる。
【0187】
Boc−保護ポリマー類の脱保護:Boc−保護ポリマー(10−20mg)をTFA(1mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。蒸発によってTFAを除去した後、油性残留物をジエチルエーテルですすいだ。生成した沈殿物を遠心分離によって集め、ジエチルエーテルでさらにすすぎ、真空下で一晩乾燥し、凍結乾燥すると、カチオン性ポリマーが白色粉末として得られた。Boc−脱保護後の沈殿操作中、大きいDPsを有するポリマー類がジエチルエーテルから選択的に沈殿し、結果として、集められたポリマー類はBoc−保護ポリマー類より大きいDPsを有する。特徴づけの結果を表S−1およびS−2に列挙した。代表的ポリマー(MPBu=27およびDP=46)のHNMR(500MHz、メタノール−d):δ4.4−4.1(bs,67.03H)、4.1−3.9(bs,25.34H)、3.681(s,3H)、2.8−2.5(m,8.71H)、2.3−1.8(m,76.93H)、1.7−0.8(m,243.35H).
(表5−1.ポリマー系列1の特徴づけ
【0188】
【化35】

[MMP]/[モノマー類]=0.05(重合中)。重合中のモノマー総量に対するブチルメタクリレートのパーセンテージ。
【0189】
(表5−2.ポリマー系列2の特徴づけ
【0190】
【化36】

[MMP]/[モノマー類]=0.10(重合中)
重合中のモノマー類の総量に対するブチルメタクリレートのパーセンテージ。
【0191】
両親媒性ポリメタクリレート誘導体ポリマー系列3の合成法:ポリマー系列3を系列1および2と同様な方法によって製造した。ただしBoc−保護ポリマーの精製は、ポリマー類の沈殿が困難であるためSephadex LH−20(Amersham Pharmacia Biotech AB)および溶出液メタノールを使用するカラムクロマトグラフィーによって行い、未反応MMPおよびモノマー類を除去した。Boc−脱保護後の沈殿操作中、大きいDPsおよび低いパーセンテージのブチル基を有するポリマー類はジエチルエーテルから選択的に沈殿し、その結果集められたポリマーは50パーセント以下のブチル基と、Boc−保護ポリマーのDPsより大きいDPsを有する。特徴づけの結果を表5−3にまとめる。
【0192】
(表5−3.ポリマー系列3の特徴づけ
【0193】
【化37】

[MMP]/[モノマー類]=重合中0.50
重合中のモノマーの総量に対するブチルメタクリレートのパーセンテージ
ポリマー類の分子量をモノマー類およびMMPの分子量と共にMPBuおよびDPのデータを用いて計算し、MPBuの関数として図S−1にプロットした。
【0194】
n−ブチルメタクリレートコポリマー類(コポリマー9)のサンプルについて実施例1および下記に記載のように抗菌および溶血活性を分析試験した。溶解度の限度も以下に記載のように各コポリマー系列で測定した。
【0195】
抗菌性アッセイ: 各ポリマーをDMSOに溶解した(5mg/mL)。この溶液を水と混合し、2倍希釈のストック溶液を作った。ポリマーを含まずDMSOを含む溶液を対照として調製した。細菌種Escherichia coli D31(アンピシリン−およびストレプトマイシン耐性)をミュラー−ヒントン・ブロス(MHブロス)において37℃で一晩増殖させ、その細菌増殖を1mLのプラスチック製使い捨てキュベット(1cm経路長さ)中でエッペンドルフ−バイオフォトメータを使用してλ=600(OD600)の光学密度として濁り度によって測定した。この細胞培養物をMHブロスで希釈するとOD600=0.1を有する細胞懸濁液(20mL)を与えた。それを37℃で15時間インキュベートした。健康な細胞増殖がOD600の測定(0.5と0.6との間と測定された)によって確認され、この細胞懸濁液をさらに希釈するとOD600=0.001を有する細菌アッセイのストック溶液が得られた。このE.coliストック溶液(90μL)を96ウェル滅菌アッセイプレート(Coster Clear Polystyrene 3370、コーニング)の各ウェルに加えた。上記ポリマーストック溶液(10μL)または対照溶液(10μL)を上記ウェルに加えた。上記アッセイプレートを37℃で18時間インキュベートした。細菌増殖をThermoLabsystems
Multiskan Spectrumを使用してOD595で検出し、ポリマーおよびE.coliのないMHブロスのそれと比較した。全てのアッセイは同じアッセイプレートにおいて3回づつ行われた。MICは、3回の測定のうち少なくとも2サンプルにおいて細菌増殖を完全に阻止する最低ポリマー濃度と定義された。本論文に報告されたMICは異なる日に別々に調製された細胞培養物で行われた独立的な4実験の平均値である。
【0196】
溶血アッセイ:ポリマーストック溶液および対照溶液を抗菌性試験と同様な方法によって調製した。
全血を遠心分離し、血漿および白血球を除去することによって、新鮮ヒト赤血球(RBCs)を得た。そのRBCs(1mL)を9mLのTBS緩衝液(10mLトリス緩衝液、pH=7.0、150mMNaCl)で希釈し、この懸濁液をファクター40でさらに希釈し、RBCストック懸濁液(0.25%血球)を得た。このRBCストック(120μL)、TBS緩衝液(15μL)およびポリマーストック溶液(15μL)(または対照溶液)を200μL遠心分離管に加え、37℃で1時間インキュベートした。上記管を4,000ppmで5分間遠心分離した。上澄液(30μL)をTBS緩衝液(100μL)で希釈し、溶液のOD414をヘモグロビン濃度として測定した。陽性対照としてメリチンを用い、100%溶血の基準として最も濃いサンプル(100μg/mL)を用いた。ポリマーを含まず、漸減量のDMSOを含む対照溶液を0%溶血の基準として用いた。溶血パーセント(P)を次の等式から計算した:
P=[OD414(ポリマー)−OD414(対照)]/[OD414(メリチン)−OD414(対照)]
HC50は50%溶血時のポリマー濃度として得られ、それは下記の等式と一致する曲線によって推定された:
P(C)=100/[1+(K/C
上記式中、P(C)およびKは所定のポリマー濃度(C)およびHC50それぞれの溶血曲線である。Kおよびnは一致する曲線における可変パラメータである。HC50は異なる日に独立的に行われた3実験の平均値として報告される。Liu,D.,およびDeGrado,W.F.,J.Am.Chem.Soc.123:7553−7559(2001)およびKuroda,K.,and DeGrado,W.F.,J.Am.Chem.Soc.127:4128−4129(2005))も参照されたい。
【0197】
溶解度の測定:抗菌性試験または溶血性アッセイにおいて調製したポリマーストック溶液を用いた。上記ポリマーストック溶液(10μL)を96ウェルプレート中のアッセイ培地(90μLのMHブロスまたはTBS緩衝液)に加え、37℃で18時間インキュベートした。ポリマー沈殿はOD595における濁り度として検出された。溶解限度は系列中の最高ポリマー濃度(その際上記ポリマー溶液のOD595値は対照のそれと同じである)と決定された。溶解限度は2つの独立的実験の平均値として報告される。抗菌性試験では、ポリマー系列1において40%より高いMPBuを有するポリマーのMICsは、ポリマー類の沈殿によって生ずる濁りのために得ることができなかった。溶血アッセイ培地(TBS緩衝液)において、ポリマー沈殿は500μg/mLまで(アッセイにおける最も濃いポリマー)検出されなかった。
【0198】
表6は、n−ブチルメタクリレートコポリマー類の各系列の数平均分子量(“M”)および数平均分子量範囲(“MW範囲”)を示す。各コポリマーは、一般に遊離基重合法によって合成されるポリマーにおいて期待される分子量分布を有すると考えられた。図3はコポリマーの各系列の分子量を示す。これはNMRによって測定されるDPから計算され、各系列のコポリマーのブチル基パーセントの関数としてプロットされている。
【0199】
(表6.n−ブチルメタクリレートコポリマーの3系列のNW範囲およびM値)
【0200】
【化38】

抗菌性アッセイの結果を図4に示す。ここでは各ポリマーの最小阻止濃度(“MIC”)がコポリマー疎水性基(ブチル基)のモルパーセントの関数としてプロットされる。図4は、各ポリマー中のブチル基のモルパーセントの増加につれてMIC値が減少し、コポリマーの3種類のMW系列全てにおいてブチル基約20−30モルパーセントで水平に達することを示す。
【0201】
抗菌性アッセイ培地(ミュラーヒルトン培地)におけるコポリマーの沈殿は、コポリマーブチル基20−30モルパーセント以上で、約125−500μg/mLのコポリマー濃度で起きた。図5は各コポリマーの溶解度限度、μg/mL、を上記コポリマーの疎水性(ブチル)基のモルパーセントの関数として示すものである。図5はより低分子量のコポリマー類がより高分子量のコポリマー類よりもこのアッセイ培地に、より可溶性であることを示す。図5は、この培地中のコポリマー溶解度がブチル基のモルパーセントの増加につれて減少したことも示す。この最後の結果は、疎水性ポリマー、特に疎水性モルパーセントが30以上(コポリマーMICが水平になる疎水性モルパーセント値)を有する疎水性ポリマーが凝集し、溶液から沈殿することを示唆する(図4を参照)。
【0202】
溶血アッセイの結果を図6A、6Bおよび6Cに示す。これらは比較のための抗菌アッセイデータも含む。図6A−6Cは、コポリマー類の3系列の各々において、コポリマーのHC50がブチル基のモルパーセント(MPBu)の増加につれて減少することを示す。高MPBu領域(30−60%)では、より高いMWを有するコポリマー系列(系列2および1(P−1−5KおよびP−1−8.7K))のHC50値が<1μg/mLのプラトーに達した。これはメリチンのそれより低い(1.24μg/mL)。これに対して、最も小さいMWを有するコポリマー系列のHC50値(系列3(P−1−1.6K))はMPBuの増加と共に一本調子で減少し、同じMPBuではより高いMWを有する2コポリマー系列のそれらと比較して約1桁高かった。この結果はMPBu約10%〜約30%の効果を知る機会を与える。この範囲で系列3のコポリマー類は細菌細胞に選択的に毒性をあらわし、約17%MPBuで最大選択度(HC50/MIC)を示す(図6D)。
【0203】
(実施例4)
(ポリメタクリレートランダムコポリマーの4系列の抗菌性および溶血性活性)
ランダムコポリマー類の下記の4組を合成し、抗菌性および溶血性活性を試験した:
【0204】
【化39】

各系列は種々のモルパーセントの疎水性R側鎖(“X”)を有するコポリマー類を含む。
【0205】
ランダムコポリマー類を実施例1および実施例2および上のスキーム3に記載した一般的方法を用いて合成した。ただし各コポリマー組の合成中、使用した総モノマー([CTA]/[モノマー])に対するCTAの濃度比は0.10、0.20、および0.30であった(すなわち各組のコポリマー類は、総モノマー量に対して10モルパーセント、20モルパーセント、または30モルパーセントのCTAの存在下で重合された。)さらに、コポリマーのC−1系列は連鎖移動剤(CTA)としてメチル3−メルカプトプロピオネートの代わりにエチル3−メルカプトプロピオネートを使用して合成された。残りのコポリマー組(C−2、C−3およびC−4系列)はCTAとしてメチル3−メルカプトプロピオネートを用いて合成された。また、各コポリマー系列はカラムクロマトグラフィーでなく沈殿によって精製された。
【0206】
実施例1に記載したように、各コポリマー系列で数平均分子量を決定した。図7A、8A、9Aおよび10Aは各コポリマー系列で測定した数平均分子量を疎水性基のモルパーセント(X(%))の関数としてプロットしたものをあらわす。[CTA]/[モノマー]比0.10、0.20、または0.30を用いて合成したコポリマー類をそれぞれSH10、SH20、またはSH30と呼ぶ。図7A、8A、9Aおよび10Aは、上記コポリマー類の数平均分子量が[CTA]/[モノマー]の比の増加につれて減少することを示す。
【0207】
上の実施例1および3およびKuroda et al.,J.Am.Chem.Soc.127:4128−4129(2005)に記載したように上記コポリマー類の抗菌および溶血活性を試験した。結果を図7B、8B−8D、9B−9Dおよび10B−10Dに示す。図7B、8B−8D、9B−9Dおよび10B−10Dの大部分において、MIC値は、疎水性基のアイデンティティに応じて、疎水性基モルパーセント約30−50モル%で約16−8μg/mLのプラトーに達する。図7B、8B−8D、9B−9Dおよび10B−10Dは、より小さい疎水性基を有するより低分子のコポリマー類(例えばC1およびC2系列のSH20およびSH30コポリマー類)がより大きい疎水性基を有するより高分子のコポリマー類(例えばC3およびC4系列のSH10コポリマー)と比較してより大きい効果がある(すなわち哺乳動物細胞(赤血球)よりも細菌細胞(E.coli)に選択的に毒性を有する)という情報も示している。この結果は本発明のランダムコポリマーの抗菌および溶血特性が上記コポリマーの分子量および疎水性基を選択することによって調節でき、哺乳動物に無毒である抗菌性コポリマーを作ることができることを示唆する。
【0208】
(実施例5)
(第三および第四アミン基を有するカチオン性ランダムコポリマーの合成および特徴づけ)
第三または第四アミン基を有するポリメタクリレートランダムコポリマーの2系列を下記のように合成し、上の実施例1および3に記載したように抗菌活性を試験した。
【0209】
カチオン性コポリマーの下記の2系列(P−DMAおよびP−Q系列)を次のように合成した:
(カチオン性ランダムコポリマーP−DMAおよびP−Qの合成)
【0210】
【化40】

スキーム5
P−DMAの合成:N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート(合計3.18mmol)をAIBN(5.2mg,31.8μmol)および連鎖移動剤メチル3−メルカプトプロピオネート(MMP)(0.115mL、103μmol)と混合し、Arで2分間パージした。反応混合物を70℃で一晩撹拌した。生成したポリマー類をメタノールで希釈し、セファデックスLH−20(Amersham Pharmacia Biotec AB)および溶出液としてのメタノールを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製し、未反応のMMPおよびモノマー類を除去した。上記ポリマー類ではエチル基(X)のモルパーセントは実施例1に記載のように、HNMRスペクトル(CDCl)におけるモノマー側鎖のメチレンプロトンからのシグナルおよびポリマー主鎖のメチルプロトンからのシグナルの積分比を使用して計算した。重合度(DP)は上記ポリマー末端におけるMMPのメチルプロトンからのシグナルに対する上記側鎖のメチレンシグナルからのシグナルの積分によって決定した。
【0211】
P−Qの合成:ヨウ化メチル(t−ブチルメチルエーテル中2.0M)(0.5−0.1mL、上記ポリマーのアミノ基に対して3等量)をTHF(1mL)中の上記ポリマー(50mg)に加え、室温で2時間撹拌した。生成した沈殿を遠心分離によって分離し、THFおよびジエチルエーテルですすぎ、真空下で乾燥した。上記ポリマーのエチル基(X)のモルパーセントをHNMRスペクトル(DO)におけるモノマー側鎖のメチレンプロトンからのシグナル類の積分比によって計算した。上記DPはポリマー末端のMMPのメチルプロトンからのシグナルに対して側鎖のメチレンプロトンからのシグナルを積分することによって決定した。
【0212】
上記コポリマー類の抗菌活性を、上の実施例1および3およびKuroda et al.,J.Am.Chem.Soc.127:4128−4129(2005)に記載された方法を使用して試験した。結果を表7に示す。
【0213】
(表7.第三または第四アミンを有するカチオン性コポリマーの抗菌活性)
【0214】
【化41】

a)重合中のエチル基のモル%
b)水溶液中の溶解度が低いため測定できない。
【0215】
(実施例6)
(ポリウレタンフィルムに埋め込まれたポリメタクリレートランダムコポリマーの抗菌活性)
ポリウレタンフィルムに挿入後のポリメタクリレートランダムコポリマー類の抗菌活性の残留を試験する。実施例2のポリメタクリレートランダムコポリマーの5系列のうちの1つについて、上記コポリマーをポリウレタンフィルムシートに挿入した後の抗菌活性の残留を試験する。
【0216】
例えば、未処理ガラススライド、未処理ポリウレタンフィルム、および実施例2の最低分子量のイソブチルメタクリレートコポリマーのサンプルを含むポリウレタンフィルム(MW約2,000−1,000;(疎水性モルパーセント=40%))を37℃で72時間増殖した細菌(E.coliD31)培養液に浸す。イソブチルメタクリレートコポリマー誘導体化ポリウレタンは、上記コポリマーを含む溶媒を上記フィルムにしみ込ませ、それを乾燥させることによって作った。このプロセス中に上記フィルムにイソブチルメタクリレートコポリマーが浸潤する。62時間のインキュベーション期間の終わりに、未処置ガラススライド、未処置ポリウレタンフィルム、および誘導体化ポリウレタンフィルムの細菌増殖を検査する。イソブチルメタクリレートコポリマー誘導ポリウレタンフィルム上に細菌がほとんど増殖していないか、明らかな増殖が全くない場合は、上記コポリマーは上記プラスチックフィルムの表面に挿入されたときに抗菌活性を保持していたことを示す。
【0217】
上記の実験をE.coliの代わりにL.monocytogenesを使用して反復する。
【0218】
(実施例7)
(ポリメタクリレートランダムコポリマー類の抗ウィルス活性)
本発明の1種類以上のコポリマー(例えば実施例2の最低分子量のヘキシルメタクリレートコポリマー(MW約2,000−1,000;疎水性モルパーセント=40%))を上記のように合成し、細胞培養中のHIV複製を阻止する能力を試験する。2種類のウィルスを上記感染アッセイに使用する:NLHXまたはYU2(これらはコーリセプタとしてそれぞれCXCR4またはCCR5を使用する)。U87/CD4/CCR5またはU87/CD4/CXCR4細胞を感染の前日に3×10細胞/ウェルの割合で48ウェルプレートに接種した。培養上澄液を細胞から除去し、シュードタイプ・ルシフェラーゼリポータウィルス単独、またはシュードタイプ・ルシフェラーゼリポータウィルスおよび指示された最終濃度のコポリマーで置き代える。ウィルスおよび化合物を感染の約16時間後に細胞から除去し、それらの細胞を洗い、その後培養培地を再び満たした。細胞を溶解し、感染3日後にルシフェラーゼを分析試験する。結果を、コポリマー不在時に認められたルシフェラーゼ活性のパーセントとして示す。
【0219】
(実施例8)
(ポリメタクリレートランダムコポリマーの抗菌活性)
数種類の真菌属について本発明の1組のポリメタクリレートランダムコポリマー(例えば実施例2の最低分子量ブチルメタクリレートコポリマー類(MW約2,000−1,000;;疎水性モルパーセント=50パーセント))に対するそれらの感受性を試験する。非繊維状(酵母)および繊維状真菌両方共試験し、種々のタイプのヒト感染と関連する特異的真菌を選び、スクリーニングした(表8)。1種類以上のコポリマーの抗真菌活性を試験する。抗真菌アッセイは、増殖を完全に阻止する最小阻止濃度(MIC100)を決定するために行われた。全増殖アッセイは総計1ml容量で行われ、増殖は濁り度測定によって評価される。その他の抗真菌アッセイは表9に記載される。
【0220】
(表8.特異的真菌の臨床的特徴)
【0221】
【化42】

(表9.その他の抗真菌アッセイ条件)
【0222】
【化43】

(実施例9)
(ポリメタクリレートランダムコポリマー類の、低分子量のヘパリンの抗凝固作用を阻止する能力)
本発明の両親媒性ポリメタクリレートランダムコポリマー類(例えば実施例2の最低分子量ブチルメタクリレートコポリマー(MW約2,000−1,000;疎水性モルパーセント=50%))を幾つか合成し、それらがヘパリン抗凝固作用を阻止する能力を試験する。ヘパリン中和活性は、それらコポリマーの疎水性よりもそれらコポリマーの電荷および電荷分布特性に大きく依存すると考えられる。
【0223】
ヘパリンの固定濃度によって起きる活性化血漿の凝固時間の遅れを上記コポリマー類の濃度を高めながら試験する。1単位(0.2μg/ml)のヘパリンの存在下における活性化血漿の凝固時間を4種類の濃度のコポリマーの存在下および不在下で測定する。上記アッセイは各コポリマー濃度で4回行われ、平均凝固時間が決定される。用量反応データを集める。
【0224】
活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(凝固アッセイ)を用いて凝固時間を決定する。上記アッセイは次ぎのように行われる:ヘパリンまたはヘパリンと被験コポリマーとを含む血漿サンプル(0.1mL)を試験キュベットにピペットで滴下し、37℃で約2分間インキュベートする。水を加えて戻したCephalinex(Bio/Data
Corporationから得られる燐脂質血小板代用物)(0.1mL)を上記血漿サンプルに加える。混合物を37℃で約5分間インキュベートする。あらかじめ37℃に温めた25mM塩化カルシウム溶液をこの混合物に加え(0.1mL)、フィブロメータを用いて凝固時間を記録する。
【0225】
低分子量ヘパリン(LMWH)によって起きる凝固時間の遅れの拮抗(作用)も研究する。4.6μg/mlのLMWHの存在下における活性化血漿の凝固時間を3種類の濃度のコポリマーの存在下および不在下で測定する。用量反応データを集める。
【0226】
全血においても1種類以上の濃度のコポリマーの存在下または不在下で3種類の濃度のLMWH(LeoPharm、1μg/ml)によって起きる凝固時間の遅れを測定することによって上記コポリマー類のLMWH拮抗活性を研究する。全血におけるアッセイのパフォーマンスは薬物学的応用を考慮して行われる。なぜならばこのようなアッセイは、in vivo生物学的活性に影響を与えるかも知れないコポリマーと血清蛋白との結合が問題であるかどうかを示すからである。上記アッセイは活性化血漿を使用するアッセイと同様に行われ、用量反応データが集められる。
【0227】
ここに本発明を十分に記載したが、本発明の範囲またはその任意の実施例に影響を与えることなく、条件、組成およびその他のパラメータの広い同等の範囲内で同じことが行われ得ることは当業者には当然である。
【0228】
本明細書に記載された全ての出版物、例えば科学的刊行物、特許、特許出願および特許公報は、それら各出版物がそのまま参考として本明細書に組み込む旨が具体的かつ個別に示されているのと同程度に、引用によって本明細書にそのまま組み込まれるものである。記載された文書がその文書の第一ページであるに過ぎない場合、その全文書はその文書の残りのページを含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公開番号】特開2012−17473(P2012−17473A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−232258(P2011−232258)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【分割の表示】特願2007−522826(P2007−522826)の分割
【原出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(504074710)ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア (20)
【Fターム(参考)】