説明

抗菌コーティングの製造方法

抗菌粒子が外気と接触するように基板上に位置することを可能にするコーティング中に分散された殺生物剤を用いた基板のコーティング方法が提供される。前記方法において、1または2以上の殺生物剤がコーティング中に分散される。殺生物剤を含むコーティングは少なくともいくつかの個別の殺生物粒子がコーティング表面に超えて広がるような厚さで基板に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2008年8月7日に出願された米国仮特許出願第61/086,889号の優先権を主張するものであり、その全体の内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、抗菌コーティングに関する。より具体的には、本発明は、基板への抗菌コーティングの塗布に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の開示
銀および銀塩は周知の抗菌剤であり、殺生物剤とも呼ばれている。金、亜鉛、銅、およびセリウムなどの他の金属は、単独で、および銀と組み合わせると抗菌特性を有することが見出されている。これらおよび他の金属は、微量であっても抗菌特性を示し、その性質は「微量作用」と呼ばれている。微生物増殖を抑制するため、材料および基板に金属殺生物剤を組み込む多くの技術が利用されている。
【0004】
抗菌面を得るための従来のアプローチの1つは、例えば、蒸着コーティング、スパッタコーティング、またはイオンビームコーティングによる、基板表面への直接的な金属銀(または他の微量作用金属)の定着がある。これらは非接触型定着コーティング技術と呼ばれているが、低接着性、コーティング均一性の欠如、およびいくつかの銀塩の光感受性による暗所での調製等の特別な処理条件の必要性などの多くの欠点がある。これらの方法は満足のできるものではなく、かけた時間と抗菌効果が相関しないため、効果的なものではない。
【0005】
基板上に銀をコーティングする別の方法は、溶液からの銀の定着または電着である。これらの方法もまた、低接着性、基板への低集成性、表面処理の必要性、およびコーティングを製造するために通常必要な多工程浸漬操作に関連した高い作業費用などの欠点を有する。接着性の問題は、金および白金などの定着剤および安定化剤の添加、または銀化合物と、基板表面との化学的複合体の形成によって対処がなされている。しかしながら、追加の成分の添加により、複雑性およびコーティング等の製造コストが増加する。
【0006】
抗菌面を得るための他の従来のアプローチの1つは、銀、銀塩、およびそのほかの抗菌化合物のポリマー基板物質への組み込みである。微量作用金属は、様々な方法でポリマー基板に物理的に組み込まれうる。例えば、ポリマー成形品を形成する前に、銀塩の溶液を、例えば、ペレット形態の固体基板上に浸漬、スプレー、またはふりかけられうる。また、固体形態の銀塩を微細に分割し、または液化したポリマー樹脂と混合し、成形品または基板を形成しうる。別の方法として、重合前に微量作用化合物を原料のモノマーと混合しうる。
【0007】
これらのアプローチは、微量作用金属がポリマー表面上ではなく、はじめにポリマー内全体に含まれる必要があるため、多量の微量作用原料を必要とし、基板またはフィルムの表面の抗菌効果が制限される。このような方法は、用いられる抗菌剤の量と比較して抗菌効果が制限される。微量作用化合物粒子の定着は、粒子サイズおよび密度に応じて生じるものである。組成物中の微量作用剤の濃度による定着の変化は予測することができず、結果として、特に基板またはフィルムの表面における抗菌活性がほとんどない、またはまったくない部位が生じる。
【0008】
殺生物剤を組み込む従来の方法は、ベースポリマーフィルム中に粒子を分散することを含む。これらのベースポリマーフィルムは、一般的に殺生物粒子の平均粒子径よりも数百倍厚さが厚い。よって、当該フィルムは、殺生物粒子の大部分がその全体、またはほとんど全体でベース基材中に含まれており、有用な効果がないことから、抗菌面としては効果的ではない。これらの先行技術の方法において、殺生物粒子は、押し出しの際にポリマーフィルム中に分散されており、そのイオンを外気水分と交換するために表面を動くことができない。効果の面では、これらの粒子はフィルム中に包含されることによって、浪費されている。
【0009】
殺生物剤が表面に位置し、表面と接触するように塗布された抗菌コーティングまたはフィルムが望ましい。基板の表面の微生物増殖の抑制および防止する方法およびフィルムが好ましい。
【発明の概要】
【0010】
抗菌コーティングを有する基板を製造する方法を提供する。前記抗菌コーティングは、コーティング中に分散された殺生物粒子(殺生物剤または抗菌剤とも称する)を含む。前記殺生物剤を含むコーティングを、少なくともいくつかの個別の殺生物粒子がコーティングの表面を超えて広がるような厚さで、基板に塗布する。
【0011】
抗菌フィルム、ラミネート、または基板もまた提供される。前記抗菌フィルム、ラミネート、または基板は、ベースポリマーフィルム、ベースポリマーフィルム表面の少なくとも一部のコーティング、およびコーティング中に分散された1または2以上の殺生物剤を有し、この際、前記コーティングを硬化する際に、少なくともいくつかの個別の殺生物粒子は、コーティングの表面を超えて広がる。
【0012】
固体表面上の微生物増殖を抑制する方法もまた提供される。前記方法は、抗菌フィルムを固体表面に塗布する工程を含む。前記抗菌フィルムは、ベースポリマーフィルム、ベースポリマーフィルム表面の少なくとも一部のコーティング、およびコーティング中に分散された1または2以上の殺生物剤を含む。前記コーティングを硬化させる際に、少なくともいくつかの個別の殺生物粒子は、コーティングの表面を超えて広がる。これは、コーティング中の殺生物剤の粒子径のサイズに関するコーティングの制御によって行われる。
【0013】
コーティングの厚さの制御によって、表面に曝露される殺生物剤の量が制御されうる。従来の方法では、殺生物剤を表面から突出させる試みは、不規則な形状および配向性に頼っていたためうまくいかなかった。一方、本発明に係る方法ではコーティングの表面の殺生物剤の位置について、より正確に制御できる。
【0014】
前記コーティングの表面における抗菌効果は、表面の殺生物剤の量に比例する(内部に埋め込まれているものとは対照的である)。本発明に係る方法は、殺生物剤の表面の濃度を正確に制御するために、分散剤が添加または除去される。従来の方法において、前記濃度は、ベースポリマーの中で均一に分散され、最も効果を有する表面に突出した殺生物剤は、たとえあったとしてもごく少量であった。本発明の方法によると、より効果的に制御することができ、コストを減少させることができる。第一に、平均粒子径の分布は、計算することができ;および前記分布に基づき、所望の表面領域に曝露するようにコーティングの厚さが決定できる。
【0015】
また、微生物増殖の制御の効率を向上させるために、本発明に従い、より丈夫で耐久力のあるコーティングまたはフィルムを有する表面が調製される。前記コーティングまたはフィルムは向上した硬度を有し、引っかき抵抗性および耐摩耗性がある。殺生物剤は、実際にフィルムの表面を超えて広がるが、いくつかの実施形態において用いられる殺生物剤のタイプは、表面に毒性および刺激性がない。
【0016】
以下の図面は、例示を目的とするものであり、本発明の思想を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、抗菌コーティングを有するコートされた基板の一実施形態の側面図を示す。
【図2】図2は、コーティング中の個別の殺生物粒子の拡大図を示す。
【0018】
概説
基板に抗菌面を提供する方法が提供される。前記方法において、基板に抗菌保護を付与するため、抗菌コーティングは基板の表面に塗布される。前記コーティングは、硬化性殺生物剤の分散系、またはコーティング中に殺生物剤を分散させうる他のタイプのコーティングを作製することによって調製される。前記分散系は、殺生物剤の平均粒子径よりも薄い厚さで基板表面にコートされる。コーティングの粒子および厚さの物理的な寸法により、少なくともいくつかの殺生物粒子のコーティングの表面を超えた広がりを図に示す。
【0019】
前記方法において、少なくともいくつかの殺生物粒子は、コーティングが塗布された表面で、直接外部に接している。殺生物粒子の外気近傍(よって微生物の近傍である)は、殺生物剤が完全に埋め込まれている従来の方法と比較して、基板の微生物増殖の防止に優れている。
【0020】
前記コーティングは、微生物増殖の防止および抑制並びに/または基板の硬度および耐久性を向上する目的で、実質的にいかなる固体基板にも塗布される。前記コーティングは、実質的にいかなるタイプのフィルムまたは硬質基板にも直接塗布される。また、前記抗菌コーティングは、フィルムまたはラミネートに間接的に塗布されてもよく、前記フィルムまたはラミネートは、次いで基板に塗布される。この場合、フィルムまたはラミネートは、基板に直接塗布される前記方法と同様に、分散させて塗布される。得られた抗菌フィルムまたはラミネートは、抗菌特性および/または引っかき抵抗性を有し、基板に何度でも塗布されうる。前記フィルムまたはラミネートは、摩耗および輸送(traffic)の度合いの必要に応じて取りかえられうる。
【0021】
前記コーティングは、殺生物粒子が分散されうる任意のタイプの原料からなる。前記コーティングは液体または液体分散剤として基板に塗布され、次いで、殺生物粒子もしくは少なくともいくつかの粒子が硬化したコーティングの表面を超えて広がるように、硬化、乾燥、架橋、セット、またはその他の硬化が行われうる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照にすると、基板3は抗菌コーティング2のベースとなる。前記コーティング2は、コーティング2中に埋め込まれた、または添加された殺生物粒子1を含む。前記コーティング2は、基板3の表面4を抗菌保護できる。図1に示されるように、粒子1の多くが、前記コーティングの厚さよりも大きい。前記粒子1は、粒子1の配向性に関らず、前記コーティング2の表面を超えて広がる。いくつかの粒子1は、コーティング2の厚さよりも小さくてもよく、その結果、全体がコーティングに埋め込まれうる。これは、表面を超えて広がる粒子1の比率に著しく影響を与えない限り、抗菌特性にマイナスの影響を与えるものではない。
【0023】
コーティング2、基板3、および殺生物粒子1の特定のタイプを変更し、それは当該技術分野で用いられる一般的なものの1つまたは組み合わせでありうる。コーティング2の特定の選択は、特定の(コーティングを塗布した最終製品を志向した)塗布および/または用いられる基板2のタイプ(下記により詳細に記載される)に依存しうる。いくつかの実施形態において、コーティング2は、硬化コーティングであり、好ましくは架橋することができる。架橋コーティング2を用いた場合、硬化または架橋の開始方法は、重要なものではなく、当該技術分野で一般的に用いられているいずれの方法も用いられうる。好ましい一実施形態において、前記コーティングは、適当な光開始剤を用いた紫外線により架橋される。他の方法において、前記コーティングは、基板にコーティングを塗布した後に熱硬化されうる。
【0024】
硬化コーティングが用いられる場合、前記殺生物剤は、硬化されていないコーティング中に均一に分散されて、基板に塗布される。前記コーティングは、通常、基板に塗布されるまで硬化されないが、いくつかの実施形態において、基板に塗布される前に部分的または全体を硬化させうる。他の実施形態において、前記コーティングは、硬化性のタイプではない。
【0025】
一般的に、前記コーティングは、基板に塗布され、殺生物粒子が分散されうる原料のいずれのタイプであってもよい。基板にコーティングした後、殺生物粒子が硬化したコーティングの表面を超えて広がるように、硬化、乾燥、またはセットされうる。コーティング2の他のタイプには、例えば、溶媒または水性コーティングを含みうる。溶媒または水性コーティングについては、前記殺生物剤がコーティング中に分散されており、コーティング2を基板3に塗布した後、前記溶媒または水性コーティングを除去する。その他の有用なコーティングは、限定されないが、少しの例を挙げると、100%固体、押し出しコーティング、キャストフィルム、熱溶解押し出し成形を含む。前記コーティングは、殺生物剤を基板に塗布および組み込むことができる限り、ポリマーである必要はなく、下記に詳細に記載される基板に塗布されうる。
【0026】
硬化性であるか非硬化性であるかに関らず、前記殺生物(抗菌)コーティングは、コーティング中に殺生物剤を分散させて製造される。好ましくは、前記殺生物剤は、コーティングを通して一定の方法で分散させる。当該方法において、前記コーティングは、塗布される領域について、より相関した抗菌保護が得られる。殺生物剤の濃度は、固体の%として好ましくは約1〜約5重量%の範囲である。より大きな割合またはさらに大きな割合が、殺生物剤およびコーティングの許容されるヘイズ値に応じて用いられうる。一つの特に好ましい実施形態において、乾燥コーティングにおける殺生物剤の濃度は約3重量%である。低いヘイズ値で製造されるが、前記割合により優れた抗菌効果が得られる。
【0027】
前記殺生物剤は、当該技術分野において通常用いられる任意の方法によりコーティング中に分散されうる。一例を挙げると、殺生物剤は、モノマーマトリックス(または他のコーティングマトリックス)中に約2000rpmの高速分散機で分散される。前記分散機によりブレード(8インチ)チップで約4180FPMの分散速度が提供される。前記分散は約15分間(またはマトリックス中に均一に分散されるまで)行われる。前記混合物は、均一性を維持するため、コーティングする直前まで、装置で撹拌し続けることが好ましい。
【0028】
前記基板3としては、実質的に抗菌保護または成長抑制を目的とするいかなる物質または表面も用いられうる。前記コーティングは、実質的にコーティングを担持する、いかなる堅い、剛性、または半剛性基板にも直接塗布されうる。いくつかの実施形態において、前記基板3は、PETなどのポリマーフィルムである。前記基板3は、ポリマーである必要はないが、コーティングが塗布される任意の物質、例えば、紙、乾式壁、しっくい、ホイル、金属、コンクリート、ステンレススチール、および木材でありうる。
【0029】
効果的な抗菌効果を提供するために、少なくともいくつかの殺生物粒子1の一部は、いくつかの粒子の表面が外気に接するコーティング2の表面を超えて広がっている。図2を参照すると、表面コーティング11を超えて広がる殺生物粒子1の個別の拡大図が示されている。前記表面11を超えて広がる粒子1は、大気圧下、外気水分12と相互作用しうる。細菌、かび、または真菌13が水分のフィルム表面と接触した状態になった場合、ナトリウムイオンと交換された銀イオンが細胞機能および細胞増殖と相互作用し、成長が抑制される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において用いられる殺生物剤は、ゼオライトまたは珪藻土中に組み込まれたイオン性銀である。銀イオンは、大気圧下、陽イオン(通常、ナトリウムイオン)と交換されうる。「オン・デマンド」による銀イオンの放出は、表面に抗菌特性付与する。ゼオライト中に組み込まれたイオン性銀は、例えば、Aglon Technology社で市販されている。銀イオンは、細胞壁内の輸送機能の阻害、または細胞分割の阻害および細胞代謝をかく乱することによって微生物、ウイルス、カビ、および真菌の成長を阻害することが証明されている。
【0031】
いくつかの実施形態において、平均粒子径は、好ましくは平均値が約4−5μmである。前記粒子径において、コーティングの厚さの範囲が約2.3−約3.0ミクロンであることが好ましい。これにより表面の細菌の環境に曝露される重量が高い割合で確保される。つまり、粒子径を意味するコーティングの厚さの比率は、粒子径の高い割合がコーティングの表面を超えて広がり、外気と直接的に接するように確保する。異なる粒子径が用いられうるが、表面を超えて広がる粒子が有意な数となるように、平均粒子径は、コーティングの厚さよりも有意に大きくなければならない。
【0032】
他の殺生物剤も用いられうる。これらの別の殺生物剤は、単独、または組み合わせて用いられうる。これらはまた、イオン性銀、または例を挙げると、銅およびセリウム等の他の殺生物剤と組み合わせて用いられうる。
【0033】
また、銀の抗菌特性に加えて、殺生物剤、殺生物粒子、もしくはゼオライト、または珪藻土を、コーティングに組み込むことにより、フィルムの強度およびコーティングの硬度を付与する機能もある。前記コーティング(硬化コーティングの場合には、1度硬化したもの)は、殺生物物質を含有しないコーティングと比較して、より引っかき抵抗性がある。ゼオライトは、天然の、または人工的に合成された微孔性アルミノシリケートである。殺生物剤を含むゼオライトの組み込みにより、ゼオライトを含まない銀よりも、さらに引っかき抵抗性が付与される。また、いくつかの実施形態において、引っかき抵抗性を高めるために他の添加物が含まれうる。例えば、ポリジメチルシロキサンまたはナノシリカが殺生物剤とともに分散されうる。一実施形態において、50nm粒子径のナノシリカが、引っかき抵抗性を高めるための分散液に添加される。
【0034】
ほとんどの用途において、個別の殺生物粒子または物質(交互に用いられる)は、ある範囲をもったサイズで提供される。基板3に塗布した後、いくつかの個別の粒子は、様々な奥行きでコーティング中に組み込まれ、コーティング2の表面を超えて広がる。次に、コーティングの厚さが、殺生物粒子の平均厚さに基づいて選択される。乾燥重量、殺生物剤の平均粒子径よりも薄い厚さを選択することにより、前記殺生物粒子または物質は、コーティング上に広がりうる。前記粒子は次いでコーティング表面を超えて広がることから、周囲の外気と直接接触しうる。個別の殺生物粒子のサイズにおけるいくつかの変動が予測されることから、いくつかの粒子はコーティング中に完全に埋め込まれ、または表面を超えて広がらないこともありうる。これは、実質的に一貫した方法で殺生物粒子の少なくともいくつかが外気と接触している限り、有効性にマイナスの影響を与えるものではない。コーティング表面に殺生物剤を組み込むための別の方法も用いられうる。例えば、水膨潤性コーティングが用いられうる。
【0035】
ほとんどの用途において、コーティング2の厚さは、約6−約250ミクロンの範囲内である。前記厚さは、好ましくは約25−175ミクロンの範囲内である。この的確な厚さは、コーティングの化学、殺生物剤の粒子径、および基板の性質に依存しうる。
【0036】
その他の実施形態において、基板はフィルムまたはラミネートであり、抗菌コーティングはフィルムおよびラミネートの上層に直接塗布される。前記抗菌トップコーティングは、上述の方法でフィルムまたはラミネートに塗布される。得られたフィルムまたはラミネート(場合によっては抗菌オーバーレイ(「AMO」)とも称する)は、例えば固体への適用等、様々なものに適用して利用されうる。ベースフィルム、底部コーティング、または層およびトップコーティング(抗菌層)は、特定の適用に基づいてそれぞれ選択されうる。ある用途では、前記抗菌フィルムまたはラミネートは、デバイスまたは成形品、例えば、流し台、調理台、壁、およびテーブルなどの表面に塗布または接着され、塗布される前記デバイスまたは成形品の表面の微生物増殖を防止しうる。これらの耐久性のあるAMOフィルムは、細菌、かび、および真菌の成長を抑制することによって、ヘルスケアセンター、病院、および食品加工施設表面クリーナーに役立つ。例えば、一実施形態において、イオン性銀は、感圧接着剤で透明PET層の底部にコートされる。得られたフィルムは、調理台、ステンレススチール、および現存するタッチパネルのオーバートップを含む様々な用途に有用である。
【0037】
AMOの一実施形態において、架橋または硬化ポリマーコーティングは、フィルムの単層またはラミネートのいずれかのポリマーフィルム層上にコートされる、AMOを形成する。一実施形態において、表面上の直接のAMOの適用について、前記AMOの底部表面は接着層である、または塗布された底部表面に接着剤を有する。前記接着剤は、アクリル接着剤ベースの溶媒等、当該技術分野において通常用いられるものの一つでありうる。得られたラミネートまたはフィルムは、湿式または乾式ラミネート加工が適用されうる。
前記接着剤は、好ましくは、異物の混入を防止するが、無色透明であり、非接着性残基を除去できる。この場合、異物の混入防止は、少しの例を挙げると、ウッドラミネート、ガラス、およびステンレススチールなどの多様な表面に接着するように、感圧接着剤が設計されることを意味する。前記接着は、ある程度の努力により、塗布した後に簡単に剥がれないようにされ、つまり異物混入を防止するが、一度剥がれると、塗布された表面に非接着剤がきれいに放出される。
【0038】
得られた抗菌フィルムまたはラミネートは、細菌または他の微生物の成長を抑制するために、実質的にいかなる表面、例えば、調理台、流し台、壁、テーブル等にも接着しうる。前記AMOは、塗布する表面の強度の向上および/または引っかき抵抗性および耐摩耗性を付与するために用いられうる。このフィルムは、摩耗および輸送(traffic)の度合いの必要に応じて取りかえられうる。前記AMOは、水、弱酸、塩およびアルカリ、石油グリース、オイル、並びに脂肪族溶剤などの物質に対して、優れた化学抵抗性を有する。
【0039】
一実施形態において、前記コーティング2は、多官能基脂肪族アクリル酸ウレタン(上述のように分散された殺生物剤を含む)である。官能機の数は、最小で2つ、通常で6つでありうる。さらなる高官能性によって架橋度が向上し、硬度および収縮度が大きくなる。架橋化学のその他のタイプは、最終製品および環境適用への必要性に基づき選択されうる。
【0040】
前記AMOのポリマー層は、任意のタイプのフィルムまたはラミネートでありうる。一実施形態において、前記フィルムはPETである。PETは、その高い透明度により製品を透明にすることができることから、多くの用途に有用である。この実施形態の基板の厚さは、好ましくは2−7ミルである。厚さが7ミルよりも大きいと、PET基板が、1または2以上のポリマーフィルムなどの他の基板とラミネートされうる。厚さが2ミルよりも小さいフィルムを用いるとコートされるが、架橋による収縮およびUV源による加熱によって、より困難となりうる。任意的に、ポリエステルライナーでコートされた1ミルの透明シリコンなどのリリースライナーが含まれる。
【0041】
AMOの他の実施形態において、透明7ミルPETフィルムなどのフィルムは、上述の抗菌コーティングを含むコーティングである。前記AMOの底部表面は、インクの付着を推進または促進するために前処理される。この実施形態は、薄膜スイッチに統合させられるため、特に有用である。前記フィルムが約7ミルPETフィルムであり、前記抗菌剤が銀ゼオライトであることが好ましいが、当該技術分野で用いられるその他のフィルム、抗菌剤、およびコーティングのタイプに置換されうる。フィルムの底部は、任意にプリント処理できるポリエステル層を含む。このAMOは、薄膜フィルム中への統合を含む多くの用途に適している。
【0042】
本発明に従い調製されたAMOの他の実施例は、タッチパネル中に統合させるように設計される。この実施例において、AMOのベースフィルムは7ミル熱安定化PETフィルムである。しかしながら、ポリマーのタイプおよび厚さは、特定の適用の必要に応じて調節されうる。例えば、ベースフィルムは、ポリカーボネートまたは他の剛性ポリマーフィルムでありうる。AMOがタッチパネル用である場合、熱安定性であることが一般的に好ましい。上述の抗菌コーティングはフィルムの上面に塗布される。マスクされた250オームのインジウムスズ酸化物コーティングは、PETフィルムの底部表面に塗布される。
【0043】
その他
当業者に明らかな、開示された発明の様々な修飾、調節、および適用が可能であり、本願はそのような実施形態を包含している。したがって、本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載しているが、これらのすべての技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的範囲を参照して定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング中に1または2以上の殺生物剤を分散し、
基板に殺生物剤を含むコーティングを塗布し、この際、前記コーティングは、塗布された際に、少なくともいくつかの個別の殺生物剤粒子がコーティングの表面を超えて広がるように塗布される、
工程を含む、基板上に抗菌面を提供する方法。
【請求項2】
前記基板が、ポリマーフィルムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングが、硬化コーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングが、架橋コーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1または2以上の殺生物剤が、ゼオライト中に組み込まれたイオン性銀である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
コーティングの厚さが、殺生物剤粒子の平均粒子径よりも薄い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ベースポリマーフィルム、
ベースポリマーフィルム表面の少なくとも一部のコーティング、および
コーティング中に分散された1または2以上の殺生物剤、この際、前記コーティングが前記フィルムに塗布された際に、少なくともいくつかの個別の殺生物剤粒子がコーティングの表面を超えて広がる、
を含む、抗菌フィルム
【請求項8】
前記ベースポリマーフィルムがPETである、請求項7に記載の抗菌フィルム。
【請求項9】
前記コーティングが、架橋コーティングである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記1または2以上の殺生物剤が、ゼオライト中に組み込まれたイオン性銀である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ベースポリマーフィルムがラミネートである、請求項7に記載の抗菌フィルム。
【請求項12】
前記ラミネートが、底部接着層を含む、請求項11に記載の抗菌フィルム。
【請求項13】
前記ラミネートが、プリント処理できるポリエステルの底層を含む、請求項11に記載の抗菌フィルム。
【請求項14】
コーティングの厚さが、1または2以上の殺生物剤粒子の平均粒子径よりも薄い、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
抗菌フィルムを固体表面に塗布することを含む、固体表面上の微生物増殖を抑制する方法であって、この際、前記抗菌フィルムが、
ベースポリマーフィルム、
ベースポリマーフィルム表面の少なくとも一部のコーティング、および
コーティング中に分散された1または2以上の殺生物剤、この際、前記コーティングが硬化した際に、少なくともいくつかの個別の殺生物剤粒子がコーティングの表面を超えて広がる、
を含む、方法。
【請求項16】
前記1または2以上の殺生物剤が、ゼオライト中に組み込まれたイオン性銀である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ベースポリマーフィルムがラミネートである、請求項15に記載の抗菌フィルム。
【請求項18】
前記ラミネートが、底部接着層を含む、請求項15に記載の抗菌フィルム。
【請求項19】
ベースポリマーフィルム、
ベースポリマーフィルム表面の少なくとも一部のコーティング、および
コーティング中に分散された1または2以上の殺生物剤、ゼオライト、および珪藻土、この際、前記コーティングが塗布された際に、少なくともいくつかの個別の殺生物剤粒子がコーティングの表面を超えて広がる、
を含む、引っかき抵抗性フィルムまたはラミネート。
【請求項20】
コーティングの厚さが、平均粒子径よりも薄い、請求項19に記載の引っかき抵抗性フィルムまたはラミネート。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−530400(P2011−530400A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522110(P2011−522110)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/051797
【国際公開番号】WO2010/017049
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(500570564)マディコ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】