説明

抗菌マスク、マスク用抗菌フィルタ及びそのマスク又はフィルタを用いる抗菌方法

【課題】マスク着用から短時間の間に生残菌数が10(CFU/m1)以下となり、抗菌効果を長時間持続でき、高い安全性が確保できる抗菌マスク及びマスク用抗菌フィルタ、そして、それらを用いた抗菌方法を提供する。
【解決手段】本発明の抗菌マスクは、本体部が第1基布と第2基布の接触面を一体化しており、上記第1基布が織布、不織布又は多孔質シートの上記接触面にバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、上記第2基布が織布、不織布又は多孔質シートにカルボン酸を析出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク着用から短時間で、病原性細菌、ウイルス、結核菌等に抗菌効果を発揮する抗菌マスク、マスクに内装するマスク用抗菌フィルタ及びそのマスク又はフィルタを用いる抗菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生マスクは、病原性細菌、ウイルス等の飛来を防ぎ、保菌者から病原性細菌、ウイルス等の飛散を防ぐ目的で用いられている。着用後の衛生マスクは病原性細菌やウイルスが捕捉されているとしてマスク面に触れないように注意されており、病院では殺菌処理を施しているが、家庭では殺菌処理が困難であるために、着用後のマスクの取扱い、例えば着用したマスクを再度使用しない、捨てる際には安全な場所に廃棄する等の指導がなされてはいるが、その取扱は安全な状況になっていない。そして、近年の新型インフルエンザは、その被害が世界的な規模となっており、それを食い止めるために抗菌効果に優れたマスクの必要性が高まっている。
【0003】
抗菌マスクに関する特許文献として以下のものが知られている。
特許文献1には、銀ゼオライトを付着した抗菌マスクが記載されており、実施例1には、ポリエステル繊維ウェブの両面に、ポリエステル繊維接着剤に銀ゼオライトを混合した混合物をドット状に付着させたポリエステルトリコット編物を重ねて接着した基布をマスク本体に用いた抗菌マスクが記載されており、その抗菌効果は、大腸菌の10(CFU/ml)を接種して18時間培養した後の生残菌数が0(CFU/ml)となることが開示されている(特許文献1参照)。この18時間は、樹脂製品の抗菌性試験であるJIS Z 2801に基づき、指定の試験菌である黄色ブドウ球菌、大腸菌の懸濁液(初発菌数(10CFU/ml))を接種し、37℃で18時間培養した後に試験菌を洗い出して生残菌数(CFU/ml)を測定することで、抗菌性を施された繊維製品の区別化ができる時間として18時間を定めている。この抗菌性試験で18時間培養した後の生残菌数が0(CFU/ml)であることは、その抗菌効果の達成に18時間を要するという訳ではなく、それより早い時間で達成さている可能性があるが、その具体的な達成時間は開示されていない。
【0004】
特許文献2には、ナノシルバー、即ち、直径約10nmシリコン粒子の外表面に、直径1〜3nmの複数個の銀粒子が保持されている粒子状の素材を含有したウェブ材を用いた抗菌マスクとその抗菌効果が開示されている。黄色ブドウ球菌の1.4×10(CFU/ml)を接種して生残菌数が10(CFU/ml)以下になる時間は、図6の記載からみて12時間であることが示されており、18時間より早い12時間で達成できることが開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
上記ゼオライトは一般的に三次元骨格構造を有するアルミノケイ酸塩であり、そのゼオライトに関する文献として以下のものが挙げられる。
特許文献3には、銀ゼオライトとpHの関係が示されており、水処理用に用いられる銀担持抗菌剤(銀ゼオライト)の製造に関して、ゼオライトに銀を担持させるにはpH5以下ではゼオライトの骨格構造が崩壊するので銀が担持できないことが開示されている(特許文献3参照)。
また、非特許文献1には、A型ゼオライトはpH4.7以下の酸性条件でゼオライトの骨格構造が崩壊されることが報告されている(非特許文献1参照)。
【0006】
このように、銀ゼオライトがpH5以下になると、ゼオライトの骨格構造の崩壊により、銀イオンが放出されることは良く知られたことである。
一方、非特許文献2には、アパタイト(燐酸カルシウム)とpHの関係が示されており、pHが中性では難溶性であるが、酸性では易溶性になり、pH4以下ではよく溶解することが報告されている(非特許文献2参照)。
ところで、水道法に基づく安全に関する水質基準は、一般細菌が10(CFU/ml)以下であることが世界的に規定されている。従って、抗菌試験において細菌10(CFU/ml)を接種して培養をした場合に、安全の達成を生残菌数が10(CFU/m1)以下になる時間で示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−88083号公報
【特許文献2】特開2005−334137号公報
【特許文献3】特開2001−278715号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「資源と素材」、Vo1.117(2001)No9.p.743〜746、「A型ゼオライトのMg2+イオン交換率の向上」
【非特許文献2】「What is Critical pH and Why Does a Tooth Dissolve in Acid Colin Dawes」, Jounal of Canadian Denta1 Association, Dec. 2003.vo169,No.11,p722
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
基布に抗菌性ゼオライトを適用する方法として、繊維の紡糸段階で繊維ポリマー中に練り込む方法、直接繊維材表面に糊成分の樹脂との混合懸濁液をスプレー法、スクリーン法等により付着させる方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の抗菌マスクはスプレー法で抗菌性ゼオライトを付与されており、特許文献2の抗菌マスクは繊維ポリマー中に練り込む方法で抗菌性ゼオライトを含有させている。しかしながら、これらの従来の基布に付与又は練り込みされた抗菌性ゼオライトを利用して作成された抗菌マスクは、特許文献1及び2の抗菌マスクの抗菌効果が示すように、着用後の早期に抗菌効果を達成できるものではない。そして、特許文献1又は2の抗菌マスクが、マスク着用後の例えば、10時間経たないと抗菌効果の安全が達成されないとすると、マスク着用時には安全ではないことを意味しており、マスク着用後の10時間も経てばマスクを廃棄するのが一般的で、マスク着用が意味をなさないことになる。また、抗菌効果が達成されていない状態でマスクを廃棄することは、新型インフルエンザを含む各種の菌を拡散する危険があり、安全性を脅かすものである。それ故に、利用者は抗菌マスクの着用から短時間で抗菌効果が達成でき、着用時間が長時間、例えば10時間であっても抗菌効果が持続できる抗菌マスクの着用により、高い安全性を確保できる抗菌マスクを望んでいる。
【0010】
一方、特許文献3及び非特許文献1、2の記載からみて、銀系無機抗菌剤は、pH5以下になると銀ゼオライトの骨格構造の崩壊により、銀イオンが放出されること、そして、アパタイトがpH4以下ではよく溶解することは知られており、また、カルボン酸の濃度、例えば、クエン酸の濃度が1.16mg/LであればpH5であるが、18.6mg/LであればpH4であることも知られている。
しかし、抗菌マスクの着用から短時間で抗菌効果を達成するために、基布に従来の付与又は練り込みされた抗菌性ゼオライトを、カルボン酸でその骨格構造を崩壊することができれば、早期に抗菌効果が達成できる可能性があるが、上記基布に従来の付与又は練り込みされた抗菌性ゼオライトが開発されてから約30年が経つ今日に至っても、着用から短時間で抗菌効果が達成できる抗菌マスクや抗菌フィルタは、製品化されていないし知られていない。
【0011】
それ故に、本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、基布に従来の付与又は練り込みされた抗菌性ゼオライトで作成された抗菌マスクと全く異なる構成を採用することで、マスク着用から短時間の間に生残菌数が10(CFU/m1)以下となり、抗菌効果を長時間持続でき、高い安全性が確保できる抗菌マスク及びマスク用抗菌フィルタ、そして、それらを用いた抗菌方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、第1基布のバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持した基布と、第2基布にカルボン酸を析出させた基布の接触面を一体化させた抗菌マスクを着用すると、銀イオンを一挙に溶出させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りのものである。
請求項1に係る抗菌マスクは、口許および鼻孔を覆う本体部と、この本体部の左右両側に設けられた耳に係止する耳掛け部を備えるマスクであって、前記本体部が第1基布と第2基布の接触面を一体化しており、上記第1基布が織布、不織布又は多孔質シートの上記接触面にバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、上記第2基布が織布、不織布又は多孔質シートにカルボン酸を析出していることを特徴とする。
同様に、請求項2に係る抗菌マスクは、前記カルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸の群より選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする。
請求項3に係る抗菌マスクは、前記銀系無機抗菌剤が、銀ゼオライト又は銀アパタイトであることを特徴とする。
請求項4に係る抗菌マスクは、前記バクテリアセルロースの網目構造に保湿剤を保持することを特徴とする。
請求項5に係る抗菌マスクは、前記保湿剤がトレハロース、1,3−ブチレングリコール、マルチトール及びキシリトールより選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする。
請求項6に係る抗菌マスクは、前記第1基布の表面積当たりに、前記銀系無機抗菌剤の保持量が1〜5g/m、前記保湿剤の保持量が1〜5g/m、前記バクテリアセルロースの保持量が0.01〜0.1g/mの範囲で保持されており、前記第2基布の表面積当たりに、カルボン酸の保持量が1〜5g/mの範囲で保持されていることを特徴とする。
請求項7に係る抗菌マスクは、前記第1基布の表面積当たりに、銀系無機抗菌剤の保持量が1g/mで保持されており、前記第2基布にカルボン酸の保持量が4g/mで保持されており、前記抗菌マスクの着用から20分後に、病原性細菌、ウイルス、結核菌の生残菌数が10(CFU/ml)以下であることを特徴とする。
請求項8に係る抗菌マスクは、前記本体部の第1基布の目付が30〜45g/m、第2基布の目付が30〜45g/mであることを特徴とする。
請求項9に係る抗菌マスクは、前記第1基布と前記第2基布の形状は同一形状であり、該第2基布が前記口許および鼻孔を覆う位置に配置され、その上に該第1基布が配置されていることを特徴とする。
請求項10に係る抗菌マスクは、前記バクテリアセルロースがアセトバクターキシリナム菌により産生されたものであることを特徴とする。
請求項11に係る抗菌マスクは、前記本体部の口許および鼻孔を覆う部位にのみ、前記第1基布がバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、第2基布がカルボン酸を析出していることを特徴とする。
請求項12に係る抗菌マスクは、前記抗菌マスクの最外面の中央部位にpH指示薬が含浸、印刷又は捺印により付与されており、該pH指示薬がその色調の変化によりpHを表示することを特徴とする。
請求項13に係るマスク用抗菌フィルタは、口許および鼻孔を覆う本体部と、この本体部の左右両側に設けられた耳に係止する耳掛け部を備えるマスクにおける、その本体部に内装するフィルタであって、前記フィルタが第1基布と第2基布を一体化しており、上記第1基布が織布、不織布又は多孔質シートにバクテリアセルロースを交絡し、該バクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、上記第2基布が織布、不織布又は多孔質シートにカルボン酸を析出していることを特徴とする。
請求項14に係るマスク用抗菌フィルタは、前記カルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸の群より選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする。
請求項15に係るマスク用抗菌フィルタは、前記銀系無機抗菌剤が、銀ゼオライト又は銀アパタイトであることを特徴とする。
請求項16に係るマスク用抗菌フィルタは、前記バクテリアセルロースの網目構造に保湿剤を保持することを特徴とする。
請求項17に係るマスク用抗菌フィルタは、前記保湿剤がトレハロース、1,3−ブチレングリコール、マルチトール及びキシリトールより選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする。
請求項18に係るマスク用抗菌フィルタは、前記第1基布の表面積当たりに、前記銀系無機抗菌剤の保持量が1〜5g/m、前記保湿剤の保持量が1〜5g/m、前記バクテリアセルロースの保持量が0.01〜0.1g/mの範囲で保持されており、前記第2基布の表面積当たりに、カルボン酸の保持量が1〜5g/mの範囲で保持されていることを特徴とする。
請求項19に係るマスク用抗菌フィルタは、前記第1基布の表面積当たりに、銀系無機抗菌剤の保持量が1g/mで保持されており、前記第2基布にカルボン酸の保持量が4g/mで保持されており、前記抗菌マスクの着用から20分後に、病原性細菌、ウイルス、結核菌の生残菌数が10(CFU/ml)以下であることを特徴とする。
請求項20に係るマスク用抗菌フィルタは、前記第1基布の目付が20〜40g/m、第2基布の目付が20〜40g/mであることを特徴とする。
請求項21に係るマスク用抗菌フィルタは、前記第1基布と前記第2基布の形状は同一形状であり、該第2基布が前記口許および鼻孔を覆う位置に配置され、その上に該第1基布が配置されていることを特徴とする。
請求項22に係るマスク用抗菌フィルタは、前記バクテリアセルロースがアセトバクターキシリナム菌により産生されたものであることを特徴とする。
請求項23に係るマスク用抗菌フィルタは、前記マスク用抗菌フィルタの最内面の中央部位にpH指示薬が含浸、印刷又は捺印により付与されており、該pH指示薬がその色調の変化によりpHを表示することを特徴とする。
請求項24に係る抗菌マスクの抗菌方法は、口許および鼻孔を覆う本体部と耳掛け部を備えるマスクを用いる抗菌方法であって、前記マスクの本体部が、銀系無機抗菌剤を保持した基布とカルボン酸を析出した基布を一体化してなる抗菌マスクからなり、その抗菌マスクを着用する過程と、呼気が抗菌マスクに接触することで、その接触面に結露を生じる過程と、その結露が抗菌マスクのカルボン酸を溶解する過程と、その溶解液が上記銀系無機抗菌剤を保持した基布の位置まで流動して、該銀系無機抗菌剤を崩壊又は溶解させて銀イオンを上記カルボン酸溶解液中に溶出させる過程を経ることで、抗菌作用を生じさせることを特徴とする。
請求項25に係る抗菌マスクの抗菌方法は、前記抗菌作用の生じる時間をカルボン酸の保持量で制御することを特徴とする。
請求項26に係るマスク用抗菌フィルタの抗菌方法は、口許および鼻孔を覆う本体部と耳掛け部を備えるマスクに内装するフィルタを用いる抗菌方法であって、前記フィルタが、銀系無機抗菌剤を保持した基布とカルボン酸を析出した基布を一体化してなるマスク用抗菌フィルタからなり、前記マスクに内装されたマスク用抗菌フィルタを着用する過程と、呼気がマスク用抗菌フィルタに接触することで、その接触面に結露を生じる過程と、その結露がマスク用抗菌フィルタのカルボン酸を溶解する過程と、その溶解液が上記銀系無機抗菌剤を保持した基布の位置まで流動して、該銀系無機抗菌剤を崩壊又は溶解させて銀イオンを上記カルボン酸溶解液中に溶出させる過程を経ることで、抗菌作用を生じさせることを特徴とする。
請求項27に係るマスク用抗菌フィルタの抗菌方法は、前記抗菌作用の生じる時間をカルボン酸の保持量で制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の抗菌マスク又はマスク用抗菌フィルタは、着用後20分程度で病原性細菌、ウイルス等に抗菌効果が発揮されるので、利用者の病原性細菌、ウイルス等に対する抗菌を早期に図ることが可能となり、また、着用していれば抗菌効果が持続し続けているので、本発明の抗菌効果は短期間に発揮され、且つ着用している間も発揮され続けていることで、高い安全性を確保することができる。そして、抗菌効果が短期間で発揮されるので、着用後のマスクの取扱が安全な状況になった。
【0014】
銀系無機抗菌剤が2〜5μmと極微小にもかかわらず、バクテリアセルロース(7〜10nmのナノセルロースファイバー)を交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に保持されているので、第1基布から上記極微小の銀系無機抗菌剤が脱落することがなく、また、カルボン酸の溶解液がその銀系無機抗菌剤の位置まで容易に流動することができる。
本体部を構成する第1基布及び第2基布が織布、不織布又は多孔質シートにより構成されているため、マスク本体を安価にかつ大量に生産することができるので、本発明の抗菌マスクは、使い捨てタイプのマスクとするのに好適であり、また、本発明のマスク用抗菌フィルタは、そのフィルタだけを使い捨てたとしても、使い捨て抗菌マスクと同様に抗菌効果が早期に達成されているので、新型インフルエンザを含む各種の菌が抗菌化され、危険性が回避されており、高い安全性が確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】バクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤が保持された状態を示す、倍率3000倍の電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例の培養時間(分)と大腸菌及び黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
【図3】実施例1〜3の培養時間と大腸菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
【図4】実施例1〜3の培養時間と黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
【図5】実施例4〜6の培養時間と大腸菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
【図6】実施例4〜6の培養時間と黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
【図7】実施例7〜9の培養時間と大腸菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示す大腸菌のグラフである。
【図8】実施例7〜9の培養時間と黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の抗菌マスクは、口許および鼻孔を覆う本体部と、この本体部の左右両側に設けられた耳に係止する耳掛け部を備えるマスクであって、該本体部に技術的特徴を有するものである。また、本発明のマスク用抗菌フィルタは、口許および鼻孔を覆う本体部と、この本体部の左右両側に設けられた耳に係止する耳掛け部を備えるマスクにおける、その本体部に内装する抗菌フィルタであって、該抗菌フィルタに技術的特徴を有するものである。
【0017】
最初に、上記抗菌マスクを説明して、次に、マスク用抗菌フィルタを説明する。
(抗菌マスク)
本発明の抗菌マスクの本体部は、第1基布と第2基布が一体化されており、第1基布にバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤、又は、銀系無機抗菌剤及び保湿剤を保持しており、その第1基布とカルボン酸が析出された第2基布が一体化されている。
第1基布、バクテリアセルロース、銀系無機抗菌剤、保湿剤、第1基布の保持成分量、第2基布、第2基布のカルボン酸析出量、第1基布と第2基布の一体化、そして、抗菌性試験についてその順に説明する。
【0018】
(第1基布)
第1基布は、目付け30〜45g/mの織布、不織布又は多孔質シートにバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤、又は、銀系無機抗菌剤及び保湿剤を保持して形成されたものである。この保持して形成されたものを「第1基布」と定義して、本発明の構成を以下に説明する。
織布として好ましくはガーゼが挙げられ、不織布としてセルロース繊維、好ましくはレーヨンが挙げられ、多孔質シートとして湿式ウレタンスポンジの0.3〜0.5mmのスライスシートが挙げられる。
銀系無機抗菌剤は後述するカルボン酸によるpHの作用を受け易いように、バインダー等で被覆されることなく、露頭状態で第1基布に保持されることが好ましい。この露頭状態で保持するには、第1基布にバクテリアセルロースが交絡して、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤が保持されている状態が好ましい。
以下の説明では織布、不織布又は多孔質シートの不織布を代表例として説明する。
【0019】
(バクテリアセルロース)
バクテリアセルロースは、アセトバクターキシリナム菌の産生する7〜10nmのナノセルロースファイバーであり、アセトバクター菌の産生するナタデココとして知られているバクテリアセルロースの含水ゲル体を用いる。バクテリアセルロースにより基布に網目構造を形成するには、ナタデココを離解して平均粒径が0.5mmとしたスラリー状の離解物に、銀系無機抗菌剤及び保湿剤を配合し撹拌したもの(以下、「混合液」という。)を、不織布にスプレー等で混合液を塗布し、又は混合液に不織布を含浸して、その後に乾燥することにより、不織布にバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤及び保湿剤が保持される。
図1は上記バクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤が保持された状態を示す、倍率3000倍の電子顕微鏡写真である。この写真は、7〜10nmのナノセルロースファイバーが形成する網目構造に、2〜5μmの銀ゼオライトが保持されている状態を示している。
【0020】
(銀系無機抗菌剤)
銀系無機抗菌剤には、銀ゼオライト又は銀アパタイトを挙げることができる。銀ゼオライトは、X型ゼオライト又はA型ゼオライトであることが骨格構造を崩壊し易いので好ましい。Y型ゼオライト、ハイシリカゼオライトは骨格構造が崩壊し難いので好ましくない。アパタイトはハイドロキシアパタイトが使用され、pH4以下で易溶性になり銀イオンを放出する。
(保湿剤)
保湿剤として、トレハロース、1,3−ブチレングリコール、マルチトール及びキシリトールを挙げることができる。その他にも化粧用に用いる保湿剤を使用することができるが匂いを有するものは好ましくない。
保湿剤は抗菌マスクの着用により、吐き出される息の湿度を保持する機能を有しており、特に、湿度の低い地域において、抗菌マスクを使用する場合には保湿剤が有効に働くが、湿度の高い地域においては、保湿剤を用いなくても良い。また、後述する第2基布の溶解したカルボン酸液が第1基布への浸透と、第1基布での銀イオンの溶出に必要な水分を得るのに有効である。保湿剤は細菌の捕捉にも有効である。
【0021】
(第1基布の保持成分量)
抗菌マスクの第1基布は、目付け30〜45g/mの織布、不織布又は多孔質シートにバクテリアセルロースを交絡させ、そのバクテリアセルロースの網目構造に、銀系無機抗菌剤及び保湿剤が保持されている。その第1基布の表面積当たりに、銀系無機抗菌剤の保持量が1〜5g/m、保湿剤の保持量が1〜5g/m、バクテリアセルロースの保持量が0.01〜0.1g/mの範囲で保持されている。
銀系無機抗菌剤が1g/m以下の保持量では抗菌効果が得られ難く、5g/m以上の保持量にしても抗菌効果は向上しない。保湿剤の保持量が1g/m以下の保持量では保湿効果が不充分であり、5g/m以上の保持量は必要でない。バクテリアセルロースが0.01〜0.1g/m以下の保持量では網目構造が形成しにくく、0.1g/m以上は不織布に加工し難くなり好ましくない。
【0022】
(第2基布)
第2基布は、目付け30〜45g/mの織布、不織布又は多孔質シートにカルボン酸を析出して形成されたものである。この形成されたものを「第2基布」と定義して、本発明の構成を説明する。
第2基布は、第1基布と同様に、織物として好ましくはガーゼが挙げられ、不織布としてセルロース繊維、好ましくはレーヨンが挙げられ、多孔質シートとして湿式ウレタンスポンジの0.3〜0.5mmのスライスシートが挙げられる。
第2基布は、カルボン酸の水溶液を基布に塗布又は含浸し乾燥によりカルボン酸を基布に析出させて形成される。カルボン酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸が挙げられる。匂いを有するものや肌に刺激を与えるものは好ましくない。
【0023】
(第2基布のカルボン酸析出量)
抗菌マスクの第2基布は、目付け30〜45g/mの織布、不織布又は多孔質シートを用いて、カルボン酸を析出させる。不織布にカルボン酸を塗布又は含浸し乾燥してカルボン酸を析出させる。その第2基布の表面積当たりに、カルボン酸の保持量が1〜5g/mの範囲で保持されている。呼気は湿気が多く、その息が第2基布を通過することで、第2基布の析出したカルボン酸が溶解して、pH4.5以下を示すことになる。基布にカルボン酸を塗布又は含浸する量がlg/m以下であると、カルボン酸の溶解する量が少ないために、pH4.5以下のカルボン酸溶解液を第1基布に浸透し難い。塗布又は含浸する量が5g/m以上であると、pHが高くなり不織布に悪い影響が生じ好ましくない。
【0024】
(第1基布と第2基布の一体化)
第1基布と第2基布の一体化について、第1基布及び第2基布が不織布の場合を以下に説明するが、織布又は多孔質シートの場合にも同様にして一体化を行うので、その説明は省略する。
上記混合液を不織布に塗布して形成した第1基布の塗布面と、不織布にカルボン酸が析出した第2基布の面を重ね合わせてエンボスロールを用いても良いが、2本ロールを通した後に所定のマスクの寸法に打ち抜けば周辺部が密着してずれることはなく、また、接触面が密着状態となり一体化する。上記したように、第1基布と第2基布の接触面の一体化は、第1基布及び第2基布の織布、不織布又は多孔質シートの面を重ね合わせて、上記したロールを通すことで第1基布と第2基布の接触面が密着状態となり一体化する。この「第1基布と第2基布の接触面の密着状態」を「一体化」と定義して、本発明の構成を説明する。なお、この一体化を行う理由は詳細には後述するが、概略述べれば、呼気の結露で第2基布のカルボン酸が溶解されて酸性の溶解液となり、その酸性溶解液が第1基布の銀系無機抗菌剤の位置まで流動させるために、第1基布と第2基布の接触面を密着状態にさせる必要がある。
【0025】
第1基布と第2基布の一体化に際しては、1枚と1枚を重ね合わせて一体化して用いても良いし、2枚と1枚を重ね合わせて一体化して用いても良い。重ね合わせる枚数及び重ね合わせる組合せを限定するものではない。また、第2基布を顔面側にしてその上に第1基布を重ね合わせて使用するのが好ましいが、これに限定するものではなく、その逆であっても良い。
第1基布及び第2基布の素材である織布、不織布又は多孔質シートの目付けは、30〜45g/mが好ましい。30g/m以下の目付は、マスクとして通気性が大となり細菌の飛来、飛散を防ぐのに適合しない。45g/m以上の目付は、マスクとして通気性の低下により息苦しくなり適さない。
【0026】
(マスク用抗菌フィルタ)
本発明のマスク用抗菌フィルタは、マスクの本体部に内装するフィルタであって、そのマスク用抗菌フィルタを上記本体部に両面接着テープで接着することが好ましいが、マジックファスナ(商標名)等を用いても良い。そして、第1基布、銀系無機抗菌剤、第1基布の保持成分量、第2基布、第2基布のカルボン酸析出量及び第1基布と第2基布の一体化については、抗菌マスクで記載した通りに行えば良い。ただし、マスク用抗菌フィルタはマスクの本体部に内装するものであるから、第1基布及び第2基布の目付が、抗菌マスクの目付より少ない20〜40g/mの範囲が好ましい。マスク用抗菌フィルタの一体化は、2本ロールを通した後に所定のフィルタの寸法に打ち抜けば周辺部が密着してずれることはなく、また、接触面が密着状態となり一体化する。
【0027】
(抗菌性試験)
第1基布と第2基布を一体化した抗菌マスクを12cm×8cmに裁断してマスクの着用試験の試料とした。抗菌性試験にはこの試験試料を更に5cm×5cmに切取って抗菌試験試料とした。抗菌性試験方法はJIS Z 2801に基づいて実施した。試験細菌は、大腸菌と黄色ブドウ球菌である。
黄色ブドウ球菌と大腸菌の培地はNB培地を用いた。試験菌液の接種は、黄色ブドウ球菌及び大腸菌の懸濁液、2.5〜10×10(CFU/m1)を、それぞれ0.4m1を前記試験試料に接種した。
測定は培養時間の経過による生残菌数を測定した。JIS Z 2801は、抗菌加工布の18時間後の生残菌数の対数値を測定して、その測定結果で抗菌効果の有無を判断しているが、本発明の実施例1〜9の抗菌性試験では、培養時間0、10、20、30、60分ごとの生残菌数を測定して、その測定結果に基づいて抗菌効果の判断を行った。
【0028】
(比較例)
比較例として、第1基布は、その素材としてレーヨン不織布を用いて作成したものを、そして、第2基布はレーヨン不織布(クエン酸の塗布又は含浸なし)を用いた。第1基布と第2基布の一体化は、上記実施例に記載の方法で行った。
第1基布は、バクテリアセルロースのスラリーに、銀系無機抗菌剤として銀ゼオライト(ゼオミックAJ10N(Ag2.2重量%含有):株式会社シナネンゼオミック製品)を配合し、保湿剤としてトレハロースを配合してミキサーにより撹拌した混合液をレーヨン不織布(目付30〜45g/m)に塗布し乾燥して比較例を作成した。銀ゼオライト、トレハロース、バイオセルロ−スを保持する量を、1g/m、1g/m、0.05g/mの量で比較例を作成した。
【0029】
比較例の抗菌性試験は、上記実施形態で説明したJIS Z 2801で行った。培養時間として0、60、120、240、360の分単位で生残菌数を測定した。その測定結果及びそれを対数Log(CFU/ml)で表示した結果を表3に示す。
【表1】

【0030】
(実施例)
最初に、抗菌マスクの実施例を説明し、その後にマスク用抗菌フィルタの実施例を説明する。
抗菌マスクの実施例について、「第1基布の作成」、「第2基布の作成」、「第1基布と第2基布の一体化」、そして、「抗菌マスクの作成」を以下に説明する。
(第1基布の作成)
第1基布の素材としてレーヨン不織布を用いた。
バクテリアセルロース2重量%のスラリーに、銀系無機抗菌剤として銀ゼオライト(ゼオミックAJ10N(Ag2.2重量%含有):株式会社シナネンゼオミック製品)を配合し、保湿剤としてトレハロースを配合してミキサーにより撹拌した混合液を目付30g/mのレーヨン不織布に塗布し乾燥して第1基布を作成した。その作成した第1基布が銀ゼオライト、トレハロース、バイオセルロ−スを保持する量を表2に示す量で第1基布を作成した。
【表2】

【0031】
(第2基布の作成)
目付30g/mのレーヨン不織布に、クエン酸水溶液を塗布し乾燥して、クエン酸の析出量は表3の通りであり、1g/m、2g/m、4g/mの3条件とした。
【表3】

【0032】
(第1基布と第2基布の一体化)
第1基布の塗布面と第2基布を重ね合わせて2本のロールを通して密着状態にして、所定のマスクの寸法にトムソン刃で打ち抜けば周辺部が圧着してずれることはなく、また、接触面が密着状態となり一体化する。
(抗菌マスクの作成)
抗菌マスクは口許および鼻孔を覆う本体部が、上述した第1基布と第2基布を一体化したものを用いて作成するが、その一体化した本体部の周辺部を縫製又は熱融着を行って抗菌マスクの本体部として用いても良いし、上記本体部を切断して2枚の同一形状のものを形成し、その2枚の端部を重ねてマスクの中央部に接合部を形成して立体マスクの本体部として用いても良いし、また、上記本体部をプリーツ状に折り畳んで鼻孔を覆う部分を押し広げるプリーツ状マスクの本体部として用いても良い。
【0033】
抗菌マスクをどの様な形態のマスクにするかは任意であるが、本体部の素材として上述した第1基布と第2基布を一体化したものを用いることが必要である。そして、本発明の抗菌マスクは、その本体部の左右両側に設けられた耳に係止する耳掛け部が備えられているが、その耳掛け部が伸縮性のある他の不織布等から形成されたマスクであり、本体部と耳掛け部の接合はヒートシール、接着剤等の従来から用いられている任意の接合方法が利用可能である。
【0034】
(実施例1〜9)
実施例1から実施例9を以下の手順で作成した。
表1に示す第1基布の1−1(銀ゼオライト、トレハロース、バイオセルロ−スの保持量を1g/m、1g/m、0.05g/m)に対して、表2に示す第2基布の2−1(クエン酸1g/m)、2−2(クエン酸2g/m)、2−3(クエン酸4g/m)を組み合わせて一体化した試料を実施例1〜3とした。次に、表1に示す第1基布の1−2(銀ゼオライト、トレハロース、バイオセルロ−スの保持量を2g/m、2g/m、0.05g/m)に対して、表2に示す第2基布の2−1(クエン酸1g/m)、2−2(クエン酸2g/m)、2−3(クエン酸4g/m)を組み合わせて一体化した試料を実施例4〜6とした。最後に、以下同様にして組み合わせて一体化した試料を実施例7〜9とした。
【0035】
実施例1〜9の第1基布と第2基布を組み合わせて一体化した試料の銀ゼオライト、クエン酸、トレハロース、バイオセルロ−スの保持量を表4に示す。上記した比較例の各保持量も示した。
【表4】

【0036】
実施例1〜9の抗菌性試験をJIS Z 2801で行った。培養時間として0、10、20、30、60の分単位で試験菌をSCDLP培地で洗い出して生菌を回収して生残菌数を測定した。
その測定結果を以下の表5〜表7に示す。
【0037】
【表5】

【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
比較例の表3、実施例1〜9の表5〜表7に示した培養時間(分)と大腸菌及び黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフを以下に説明する。
図2は表1に示した比較例の培養時間(分)0、60、120、240、360分と大腸菌及び黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
○印が黄色ブドウ球菌を、◇印が大腸菌を示している。
比較例は銀ゼオライトを1g/m保持しているので、培養時間が増えるにつれて抗菌効果が現れている。培養時間6時間で大腸菌の生残菌数Log(CFU/ml)が2.0、即ち、生残菌数が10となっていることが分かる。そして、グラフの勾配からみて、黄色ブドウ球菌のほうが大腸菌より銀イオンに対する抵抗力が強いことが分かる。
【0040】
図3は大腸菌に関して、実施例1〜3の培養時間と大腸菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
◇印が実施例1を、○印が実施例2を、△印が実施例3を示している。
表4の銀ゼオライト、クエン酸、トレハロース、バイオセルロ−スの保持量から分かるように、実施例1はクエン酸の保持量が1g/mで、他の保持量は実施例1、2、及び3が同じであるのに対して、実施例2はクエン酸の保持量が2g/mで2倍に、実施例3はその保持量が4g/mで4倍に増加している。実施例1は生残菌数Log(CFU/ml)が2.0になるのに、60分の時間が必要であるが、実施例2は50分、実施例3は20分で達成されている。
図4は黄色ブドウ球菌に関して、実施例1〜3の培養時間と黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。図4の黄色ブドウ球菌のグラフは、図3の大腸菌のグラフと同じ傾向を示していることが分かる。
以上のことから、生残菌数Log(CFU/ml)が2.0になるのに、比較例では6時間かかっているのに対して、実施例1ではその1/6、実施例2ではその1/7、実施例3ではその1/15の時間で優れた抗菌効果を示している。
【0041】
図5は大腸菌に関して、実施例4〜6の培養時間と大腸菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
◇印が実施例4を、○印が実施例5を、△印が実施例6を示している。
表4の銀ゼオライト、クエン酸、トレハロース、バイオセルロ−スの保持量から分かるように、実施例4はクエン酸の保持量が1g/mで、他の保持量は実施例4、5及び6が同じである(実施例1〜3の銀ゼオライト及びトレハロースの倍の保持量)のに対して、実施例5はその保持量が2g/mで2倍に、実施例6はその保持量が4g/mで4倍に増加している。実施例4は生残菌数Log(CFU/ml)が2.0になるのに、60分の時間が必要であるが、実施例5は50分弱、実施例6は25分弱で達成されている。
図6は黄色ブドウ球菌に関して、実施例4〜6の培養時間と黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。図6の黄色ブドウ球菌のグラフは、図5の大腸菌のグラフと同じ傾向を示していることが分かる。
以上のことから、生残菌数Log(CFU/ml)が2.0になるのに、比較例では6時間かかっているのに対して、実施例4ではその1/6、実施例5ではその1/7、実施例6ではその約1/15の時間で優れた抗菌効果を示している。
【0042】
図7は大腸菌に関して、実施例7〜9の培養時間と大腸菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。
◇印が実施例7を、○印が実施例8を、△印が実施例9を示している。
表4の銀ゼオライト、クエン酸、トレハロース、バイオセルロ−スの保持量から分かるように、実施例7はクエン酸の保持量が1g/mで、他の保持量は実施例7、8及び9が同じである(実施例1〜3の銀ゼオライト及びトレハロースの4倍の保持量)のに対して、実施例8はその保持量が2g/mで2倍に、実施例9はその保持量が4g/mで4倍に増加している。実施例7は生残菌数Log(CFU/ml)が2.0になるのに、約60分の時間が必要であるが、実施例8は45分、実施例9は約20分で達成されている。
図8は黄色ブドウ球菌に関して、実施例7〜9の培養時間と黄色ブドウ球菌の生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフである。図8の黄色ブドウ球菌のグラフは、図7の大腸菌の実施例9に関して、その生残菌数Log(CFU/ml)が2.0になるのに25分と若干時間が延びているが、実施例7及び8は図7のグラフと同じ傾向を示していることが分かる。
以上のことから、生残菌数Log(CFU/ml)が2.0になるのに、比較例では6時間かかっているのに対して、実施例6ではその1/6、実施例7ではその1/7、実施例8ではその約1/15の時間で優れた抗菌効果を示している。
【0043】
以上述べた図3〜図8が示す実施例1〜9のグラフ全体の傾向を鳥瞰すると、大腸菌に関する、実施例1、実施例4及び実施例7は、培養時間60分で生残菌数Log(CFU/ml)が2.0付近の値を示し、実施例2、実施例5及び実施例8は、培養時間50分で生残菌数Log(CFU/ml)が2.0付近の値を示し、実施例3、実施例6及び実施例9は、培養時間20分で生残菌数Log(CFU/ml)が2.0付近の値となる傾向を示している。また、黄色ブドウ球菌に関する、実施例1、実施例4及び実施例7は、培養時間60分で生残菌数Log(CFU/ml)が2.0付近の値を示し、実施例2、実施例5及び実施例8は、培養時間50分で生残菌数Log(CFU/ml)が2.0付近の値を示し、実施例3、実施例6及び実施例9は、培養時間22〜25分で生残菌数Log(CFU/ml)が2.0付近の値となる傾向を示している。
【0044】
上記した比較例のグラフの勾配からみて、黄色ブドウ球菌のほうが大腸菌より銀イオンに対する抵抗力が強いことを説明したが、上記グラフ全体の傾向から、実施例1〜9のグラフも同様に黄色ブドウ球菌が銀イオンに対する抵抗力が強いことで、培養時間が大腸菌より若干長くなっている。そして、実施例3、実施例6及び実施例9に関して、生残菌数Log(CFU/ml)が2.0以下になるのに要する培養時間は、20分程で達成されていることから、第1基布に銀ゼオライト1g/mを保持させ、第2基布にカルボン酸4g/mを保持させることで、培養時間20分で生残菌数Log(CFU/ml)が2.0以下になることが判った。
【0045】
(マスク用抗菌フィルタ)
次に、マスク用抗菌フィルタの実施例を説明する。
上記抗菌マスクは、その本体部が第1基布と第2基布の接触面を一体化しており、上記第1基布が織布、不織布又は多孔質シートにバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、上記第2基布が織布、不織布又は多孔質シートにカルボン酸を析出しているものとして説明したが、マスク用抗菌フィルタは、マスクの本体部に内装するフィルタであるから、上記抗菌マスクの本体部と構造が同じであり、該マスク用抗菌フィルタは、口許および鼻孔を覆う大きさであればよく、また、マスクの本体部に内装するものであるから、その目付は抗菌マスクの目付が30〜45g/mであるのに対して、20〜40g/mと少なくて良い。形状の大きさ及び目付が抗菌マスクより小さいものであり、それ以外は全く同じ構成のものである。また、マスク用抗菌フィルタは、抗菌マスクと同じ構成であり、それがマスクに内装する点が異なるだけであるので、マスク用抗菌フィルタの抗菌性試験は、抗菌マスクの試験結果と同じ結果になるはずであるから省略した。
【0046】
(抗菌マスクの着用のpHの時間変化)
上記実施例1の試料を用いて、鼻孔を覆う部分を押し広げるプリーツ状マスクの本体部を作成し、耳掛け部は扁平の弾性部材をその本体部に縫合して抗菌マスクを作成した。そして、本体部中央部位の第1基布と第2基布の間にpH試験紙ADVANTEC−UNlV(pH1〜11)(東洋濾紙株式会社製品)を挿入して、下記の着用試験によるpHの変化を測定した。マスク着用の試験は、3種類の作業内容を各2人の合計6人で実施した。作業内容はア.通勤電車での移動、イ.事務作業、ウ.掃除作業の3種類で行った。
【0047】
3種類の作業内容でのpHの結果は、最初はpH7であったが、事務作業では40分位でpH4を示したのに対して、通勤電車での移動、掃除作業では20分位でpH4を示している。この3種類の作業で、事務作業は、息の吐き出す量が少ないので40分位かかるのに対して、通勤電車での移動、掃除作業では、息の吐き出す量が多いので20分位でpH4を示したものと推測される。更に、この結果から、クエン酸1g/mlをクエン酸2g/mlに増やせば、事務作業員の着用する抗菌マスクであっても、20分位でpH4を示すものと考えられる。
【0048】
上記の3種類の作業内容でのpHの結果からみて、上記抗菌マスクのpHが7から4に変化することが明らかであるが、上記抗菌性試験の結果は、この抗菌マスクが短時間の間に生残菌数10(CFU/m1)以下にする抗菌作用を発揮することを示している。この抗菌作用がどの様な過程を経て行われるのかを以下に検討する。
抗菌マスクを着用すると、肺の中で暖められた湿度の高い空気が、呼気となって外に吐かれた際、抗菌マスクの第2基布中の外気との混合により急激に冷やされ、湿度が100%を越える場合に、空気中に溶けきれなくなった水蒸気が凝集して小さな水の粒、即ち結露が生じ、その結露がその第2基布に析出しているカルボン酸を溶解させる。その溶解したカルボン酸溶解液は濃度が高いためにpH4程度の酸性を示すもので、そして、第2基布の溶解液は、そのフィラメント間の毛細管現象で第1基布に保持された銀系無機抗菌剤の位置まで流動して、該銀系無機抗菌剤を崩壊又は溶解させて銀イオンを上記酸性溶解液中に溶出させることになる。この酸性溶解液がpHを7から4に変化させるものと考えられる。その酸性溶解液中に銀イオンが溶解することで、抗菌マスクは抗菌作用を生じるものとなる。なお、マスク用抗菌フィルタのpHが7から4に変化する過程は、上記抗菌マスクと同様の過程であることは明らかであるので、その説明を省略する。
ところで、上述したように、銀系無機抗菌剤の銀ゼオライトは、pH4程度の酸性でその骨格構造が崩壊されて銀イオンが酸性溶解液中に溶出するが、銀系無機抗菌剤の銀アパタイトは、pH4程度の酸性で溶解された銀イオンが酸性溶解液中に溶出する。
【0049】
以上述べた抗菌作用の過程を経時的に概括して記載するならば、以下の通りである。
マスクの本体部が、銀系無機抗菌剤を保持した基布と、カルボン酸を析出した基布からなる抗菌マスクを着用すると、外に吐かれた呼気が抗菌マスクに接触することで結露を生じ、その結露が該抗菌マスクのカルボン酸を溶解して酸性の溶解液となり、その溶解液が抗菌マスクの網目構造に保持された銀系無機抗菌剤の位置まで流動して、該銀系無機抗菌剤の骨格構造を崩壊又は溶解させて酸性溶解液中に銀イオンを溶出させることで、抗菌作用を生じる。
なお、上述した抗菌マスクの説明では、抗菌マスクの本体部は、その全領域に銀系無機抗菌剤、析出したカルボン酸が保持されているものとして説明したが、上記抗菌作用を生じさせるメカニズムから明らかなように、呼気が接触する部位、即ち口許および鼻孔を覆う部位にだけ上記銀系無機抗菌剤、析出したカルボン酸を保持させた抗菌マスクを作成しても抗菌作用を奏するものである。
【0050】
そして、上記酸性溶解液中に銀イオンが溶けている限りは、抗菌マスクは抗菌作用を奏するが、銀イオンが金属銀に変わると抗菌作用は失われる。例えば、銀イオンが金属銀に還元される条件は、まず銀イオンが水酸化銀(AgOH)となり、続いて脱水して酸化銀(AgO)、さらに日光により金属銀(Ag)に変わる。生成した銀イオンの抗菌寿命は環境によって変わるが、抗菌マスクを着用した状態で、日中外出して例えば8時間の長時間に渡ってマスクが日光に曝されてとしても、金属銀に変わることはない。従って、抗菌マスクを着用していれば抗菌作用が長時間に渡って持続し続ける。第1基布と第2基布の前後の配置の位置は、第1基布又は第2基布が何れの位置であっても銀イオンの抗菌寿命が長時間に渡って持続する。
【0051】
本発明の最良の実施形態として、不織布にバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持した第1基布と、不織布の基布にカルボン酸を析出した第2基布の接触面を一体化した抗菌マスク、マスク用抗菌フィルタを説明したが、上記抗菌作用の過程はこの抗菌マスクに限定されるものではない。他の抗菌マスクの形態、例えば、不織布にアクリル系接着剤をスプレーで塗布し、その後に銀系無機抗菌剤をその接着剤に露頭状態で保持させた第1基布に、カルボン酸を析出した第2基布を一体化した抗菌マスク又はマスク用抗菌フィルタを用いても、このマスク又はフィルタの抗菌作用の過程は、上記した抗菌作用の過程と同じである。このように同じ抗菌作用の過程を経るならば、本発明の抗菌マスク又はマスク用抗菌フィルタを用いる抗菌方法の範囲に属するものである。
また、実施例1〜9の培養時間と生残菌数Log(CFU/ml)の関係を示すグラフから明らかなように、カルボン酸の保持量の増加に伴って生残菌数Log(CFU/ml)が減少することから、換言すれば、カルボン酸の保持量で抗菌作用が生じる時間を制御できることが判った。
【0052】
以上述べたように、本発明の抗菌マスク、マスク用抗菌フィルタ及びそのマスク又はフィルタを用いる抗菌方法は、溶解したカルボン酸が銀系無機抗菌剤を崩壊又は溶解させて銀イオンを一挙に溶出させることで、短時間に抗菌効果を達成することができるが、その効果が得られる病原性細菌には、グラム陽性球菌(黄色ブドウ球菌、肺炎球菌)、グラム陰性球菌(髄幕炎菌)、グラム陽性かん菌(結核菌)、グラム陰性かん菌(大腸菌)が挙げられ、ウイルスには、トリインフルエンザ、C型肝炎ウイルス、狂犬病ウイルス、新型ウイルスその他を挙げることができる。
【0053】
そして、上記実施例では、カルボン酸の例としてクエン酸を、銀系無機抗菌剤として銀ゼオライトを、そして、保湿剤の例としてトレハロースを挙げて説明したが、クエン酸に替えてリンゴ酸又は酒石酸でも、銀系無機抗菌剤を崩壊又は溶解させて銀イオンを一挙に溶出させることができるし、また、銀ゼオライトに替えて銀アパタイトを用いても良いし、更に、トレハロースに替えて1,3−ブチレングリコール、マルチトール又はキシリトールを用いても良い。
【0054】
本発明の抗菌マスクを着用後に、その抗菌効果の有効性を明示するために、抗菌マスクの最外面の中央部位にメチルオレンジ、メチルイエロー、ブロモクレゾールグリーンを配合したpH指示薬を、例えば、第1基布の外側中央部位に含浸、印刷又は捺印等により付与して、色の変色によりpHを識別することができる。その含浸、印刷又は捺印等で付与する形状は、任意の形状を選択できる。
本発明のマスク用抗菌フィルタの場合には、その最内面の中央部位に上記pH指示薬を含浸、印刷又は捺印等により付与して、色の変色によりpHを識別することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口許および鼻孔を覆う本体部と、この本体部の左右両側に設けられた耳に係止する耳掛け部を備えるマスクであって、
前記本体部が第1基布と第2基布の接触面を一体化しており、上記第1基布が織布、不織布又は多孔質シートの上記接触面にバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、上記第2基布が織布、不織布又は多孔質シートにカルボン酸を析出していることを特徴とする抗菌マスク。
【請求項2】
前記カルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸の群より選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌マスク。
【請求項3】
前記銀系無機抗菌剤が、銀ゼオライト又は銀アパタイトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌マスク。
【請求項4】
前記バクテリアセルロースの網目構造に保湿剤を保持することを特徴とする請求項3に記載の抗菌マスク。
【請求項5】
前記保湿剤がトレハロース、1,3−ブチレングリコール、マルチトール及びキシリトールより選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする請求項4に記載の抗菌マスク。
【請求項6】
前記第1基布の表面積当たりに、前記銀系無機抗菌剤の保持量が1〜5g/m、前記保湿剤の保持量が1〜5g/m、前記バクテリアセルロースの保持量が0.01〜0.1g/mの範囲で保持されており、前記第2基布の表面積当たりに、カルボン酸の保持量が1〜5g/mの範囲で保持されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の抗菌マスク。
【請求項7】
前記第1基布の表面積当たりに、銀系無機抗菌剤の保持量が1g/mで保持されており、前記第2基布にカルボン酸の保持量が4g/mで保持されており、前記抗菌マスクの着用から20分後に、病原性細菌、ウイルス、結核菌の生残菌数が10(CFU/ml)以下であることを特徴とする請求項6に記載の抗菌マスク。
【請求項8】
前記本体部の第1基布の目付が30〜45g/m、第2基布の目付が30〜45g/mであることを特徴とする請求項1に記載の抗菌マスク。
【請求項9】
前記第1基布と前記第2基布の形状は同一形状であり、該第2基布が前記口許および鼻孔を覆う位置に配置され、その上に該第1基布が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の抗菌マスク。
【請求項10】
前記バクテリアセルロースがアセトバクターキシリナム菌により産生されたものであることを特徴とする請求項4に記載の抗菌マスク。
【請求項11】
前記本体部の口許および鼻孔を覆う部位にのみ、前記第1基布がバクテリアセルロースを交絡させて、そのバクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、第2基布がカルボン酸を析出していることを特徴とする請求項1に記載の抗菌マスク。
【請求項12】
前記抗菌マスクの最外面の中央部位にpH指示薬が含浸、印刷又は捺印により付与されており、該pH指示薬がその色調の変化によりpHを表示することを特徴とする請求項1に記載の抗菌マスク。
【請求項13】
口許および鼻孔を覆う本体部と、この本体部の左右両側に設けられた耳に係止する耳掛け部を備えるマスクにおける、その本体部に内装するフィルタであって、
前記フィルタが第1基布と第2基布を一体化しており、上記第1基布が織布、不織布又は多孔質シートにバクテリアセルロースを交絡し、該バクテリアセルロースの網目構造に銀系無機抗菌剤を保持しており、上記第2基布が織布、不織布又は多孔質シートにカルボン酸を析出していることを特徴とするマスク用抗菌フィルタ。
【請求項14】
前記カルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸の群より選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする請求項13に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項15】
前記銀系無機抗菌剤が、銀ゼオライト又は銀アパタイトであることを特徴とする請求項13又は14に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項16】
前記バクテリアセルロースの網目構造に保湿剤を保持することを特徴とする請求項15に記載の抗菌マスク。
【請求項17】
前記保湿剤がトレハロース、1,3−ブチレングリコール、マルチトール及びキシリトールより選ばれた1種類又は2種類以上であることを特徴とする請求項16に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項18】
前記第1基布の表面積当たりに、前記銀系無機抗菌剤の保持量が1〜5g/m、前記保湿剤の保持量が1〜5g/m、前記バクテリアセルロースの保持量が0.01〜0.1g/mの範囲で保持されており、前記第2基布の表面積当たりに、カルボン酸の保持量が1〜5g/mの範囲で保持されていることを特徴とする請求項13乃至16の何れか1項に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項19】
前記第1基布の表面積当たりに、銀系無機抗菌剤の保持量が1g/mで保持されており、前記第2基布にカルボン酸の保持量が4g/mで保持されており、前記抗菌マスクの着用から20分後に、病原性細菌、ウイルス、結核菌の生残菌数が10(CFU/ml)以下であることを特徴とする請求項18に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項20】
前記第1基布の目付が20〜40g/m、第2基布の目付が20〜40g/mであることを特徴とする請求項13に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項21】
前記第1基布と前記第2基布の形状は同一形状であり、該第2基布が前記口許および鼻孔を覆う位置に配置され、その上に該第1基布が配置されていることを特徴とする請求項13に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項22】
前記バクテリアセルロースがアセトバクターキシリナム菌により産生されたものであることを特徴とする請求項16に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項23】
前記マスク用抗菌フィルタの最内面の中央部位にpH指示薬が含浸、印刷又は捺印により付与されており、該pH指示薬がその色調の変化によりpHを表示することを特徴とする請求項13に記載のマスク用抗菌フィルタ。
【請求項24】
口許および鼻孔を覆う本体部と耳掛け部を備えるマスクを用いる抗菌方法であって、
前記マスクの本体部が、銀系無機抗菌剤を保持した基布とカルボン酸を析出した基布を一体化してなる抗菌マスクからなり、その抗菌マスクを着用する過程と、
呼気が抗菌マスクに接触することで、その接触面に結露を生じる過程と、
その結露が抗菌マスクのカルボン酸を溶解する過程と、
その溶解液が上記銀系無機抗菌剤を保持した基布の位置まで流動して、該銀系無機抗菌剤を崩壊又は溶解させて銀イオンを上記カルボン酸溶解液中に溶出させる過程を経ることで、抗菌作用を生じさせることを特徴とする抗菌マスクの抗菌方法。
【請求項25】
前記抗菌作用の生じる時間をカルボン酸の保持量で制御することを特徴とする請求項24に記載の抗菌マスクの抗菌方法。
【請求項26】
口許および鼻孔を覆う本体部と耳掛け部を備えるマスクに内装するフィルタを用いる抗菌方法であって、
前記フィルタが、銀系無機抗菌剤を保持した基布とカルボン酸を析出した基布を一体化してなるマスク用抗菌フィルタからなり、前記マスクに内装されたマスク用抗菌フィルタを着用する過程と、
呼気がマスク用抗菌フィルタに接触することで、その接触面に結露を生じる過程と、
その結露がマスク用抗菌フィルタのカルボン酸を溶解する過程と、
その溶解液が上記銀系無機抗菌剤を保持した基布の位置まで流動して、該銀系無機抗菌剤を崩壊又は溶解させて銀イオンを上記カルボン酸溶解液中に溶出させる過程を経ることで、抗菌作用を生じさせることを特徴とするマスク用抗菌フィルタの抗菌方法。
【請求項27】
前記抗菌作用の生じる時間をカルボン酸の保持量で制御することを特徴とする請求項26に記載のマスク用抗菌フィルタの抗菌方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−167226(P2011−167226A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31125(P2010−31125)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000212005)
【出願人】(595118010)
【Fターム(参考)】