説明

抗菌・消臭性繊維、これを用いた繊維成形品及び繊維製品

【課題】細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、更に多種類の臭気性物質にも対応可能である一方、変色が発生し難く、安定な性能を維持できる抗菌・消臭性繊維を提供する。
【解決手段】少なくとも下記の成分(A)と、成分(B)及び/又は成分(C)を含む繊維処理剤が、繊維の全質量に基づいて0.2〜5質量%付着している繊維であって、該繊維処理剤中で、成分(A)が20〜80質量%、成分(B)及び/又は成分(C)が80〜20質量%を占めることを特徴とする抗菌・消臭性繊維。
(A)茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物;
(B)アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤;
(C)カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌・消臭性繊維に関する。更に詳しくは、おむつ、ナプキン、パッド等の吸収性物品、医療衛生材、生活関連材、一般医療材、寝装材、フィルター材、介護用品、及びペット用品等の用途として適した抗菌・消臭性繊維とその製造方法、並びにこれを用いた繊維成形品及び繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活様式の変化、居住環境の高密度化や気密性の高まり等により、我々の生活空間には様々な細菌やかびが存在している。特に日本のような高温多湿の環境下では、吸収性物品に代表される衛生材料、衣服などの繊維材料の表面に細菌やカビなどが増殖し易い。その結果、皮膚障害を起こしたり、繊維の変質、変色による品質低下、或いは微生物の繁殖に伴う悪臭を生じる。中でも悪臭の発生は特に問題とされ、微生物の増殖抑制、悪臭除去に対する要求は近年共に高まってきている。代表的な悪臭成分として、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性ガス、硫化水素やメチルメルカプタン等の含硫黄化合物及び、汗腺、皮脂腺等から出る排泄物を微生物が分解することにより生じる酢酸、酪酸、吉草酸及びカプロン酸等の低級脂肪酸類等がある。これら以外にも、人に不快を感じさせる成分としては、インドール、スカトールのような含窒素環状化合物等が知られている。
【0003】
かかる臭気物質を除去する代表的な方法として、活性炭やシリカゲル等の多孔質体を用いて吸着する物理的吸着法、中和、酸化反応等により反応、除去する化学的方法、強い芳香により不快感を抑える感覚的方法等がある。
【0004】
一方、微生物の増殖に伴う悪臭の発生に対しては、抗菌性を繊維に付与させることで間接的に抑制することができる。先に挙げた臭気物質を除去する手法と併用することにより、効率的に臭気を除去し、発生を抑制することが可能である。このような手法の代表的なものとして、銀、亜鉛系等の無機系抗菌・消臭剤を繊維へ付与することのほか、茶葉抽出物等に含まれているカテキン類を繊維に含有させること(例えば特許文献1参照)、ローズマリー精油等を繊維材料へ付与すること(例えば特許文献2参照)などが提案されている。
【0005】
しかし、先に挙げた茶葉抽出物や植物抽出液を添加した抗菌・消臭繊維は、良好な抗菌・消臭性を有する一方で、外気中の酸化性物質、例えば二酸化窒素等の窒素化合物等により容易に酸化され易く、黄変や赤変等の変色が発生する問題を有していた。このため抗菌・消臭性が低下するだけでなく、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パッド等に代表される衛生用品では変色に因る外観不良への懸念から使用が大きく制限されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−303250号公報
【特許文献2】特開2003−253559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、細菌に対して優れた増殖抑制効果を有し、更に多種類の臭気性物質にも対応可能である一方、変色が発生し難く、安定した性能を維持できる抗菌・消臭性繊維を提供することを目的とする。本発明はまた、このような抗菌・消臭性繊維の製造方法を提供することを目的とする。本発明はさらに、上記の抗菌・消臭性繊維を用いた繊維成形品、及び該繊維成形品を用いた繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、下記の構成を有する繊維により、細菌に対する増殖抑制、及び消臭性能が発揮され、且つ変色が発生し難く、長期的に抗菌・消臭性能が維持されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、少なくとも下記の成分(A)と、成分(B)及び/又は成分(C)を含む繊維処理剤が、繊維の全質量に基づいて0.2〜5質量%付着している繊維であって、該繊維処理剤中で、成分(A)が20〜80質量%、成分(B)及び/又は成分(C)が80〜20質量%を占めることを特徴とする抗菌・消臭性繊維である。
(A)茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物;
(B)アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤;
(C)カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤
【0009】
本発明の好ましい実施態様として、上記植物抽出物中に含有されるポリフェノール類が、該繊維処理剤の質量に基づいて1〜20質量%を占める抗菌・消臭性繊維;上記成分(A)の含有量が、繊維の全質量に基づいて少なくとも0.1質量%である抗菌・消臭性繊維が挙げられる。
上記成分(B)のアルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤は具体的に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪族アミン、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸アミド及びポリオキシアルキレンアルキルアルカノールアミドから選択することができる。上記成分(B)の多価アルコール型非イオン系界面活性剤が具体的に、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン又はソルビトールの高級脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及び高級脂肪酸アルカノールアミドから選択することができる。
【0010】
本発明の抗菌・消臭性繊維は好ましくは、繊維中に、酸化亜鉛および/または下記一般式(1):M2+(1-x1)3+x1-δO (1)
(M2+は亜鉛又は亜鉛を必須成分とする2価金属を示し、M3+はAl,Fe,Ceから選ばれる3価金属を示し、x1は0<x1≦0.5の範囲の数を示し、δはカチオン格子欠陥を示す)で表わされる複合酸化物を繊維重量に対し0.1〜10質量%の範囲で含む。
本発明の抗菌・消臭性繊維の形態の例として、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を含む複合繊維が挙げられ、さらに、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、同樹脂が鞘側に配された鞘芯型複合繊維が挙げられる。
本発明の抗菌・消臭性繊維の好ましい態様として、上記金属酸化物が該複合繊維の鞘成分内に練り込まれている複合繊維が挙げられる。
本発明はまた、上記の抗菌・消臭性繊維を用いた繊維成形品、及び該繊維成形品を用いた繊維製品に向けられる。
【0011】
本発明はさらに、抗菌・消臭性繊維の製造方法に向けられていて、その方法は、少なくとも下記の成分(A)と、成分(B)及び/又は成分(C):
(A)茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物;
(B)アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤;
(C)カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤
を含む繊維処理剤を、繊維の全質量に基づいて0.2〜5質量%付着させることを含み、該繊維処理剤中で、成分(A)が20〜80質量%、成分(B)及び/又は成分(C)が80〜20質量%を占めていて、成分(A)と成分(B)及び/又は成分(C)を繊維に同時に適用するか、又は成分(A)を繊維に適用した後、成分(B)及び/又は成分(C)を適用するか、又は成分(B)及び/又は成分(C)を適用した後、成分(A)を適用することを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の抗菌・消臭性繊維は、茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物が付与されていることにより、細菌に対する良好な増殖抑制、及び優れた消臭性能を発現させることができる。さらに、所定の非イオン界面活性剤及び/又はアニオン界面活性剤を含んでいることにより、繊維の変色が抑制され、良好な外観を維持し、及び長期的に抗菌・消臭性能を発揮することができる。
本発明の抗菌・消臭性繊維から得られる繊維成形品は優れた抗菌性、消臭性能を有するので、例えばおむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、一般医療材、寝装材、フィルター材、介護用品など様々な用途において、良好な抗菌・消臭性能を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の抗菌・消臭性繊維は、少なくとも下記の成分(A)と、成分(B)及び/又は成分(C)とからなる繊維処理剤が、繊維の全質量に基づいて0.2〜5質量%付着している繊維であって、該繊維処理剤において上記各成分の質量比率が、成分(A)が20〜80質量%、成分(B)及び/又は成分(C)が80〜20質量%の範囲にある。
成分(A)は茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物;成分(B)はアルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤;及び成分(C)はカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤である。
【0014】
本発明において成分(A)に用いられる植物は、茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物である。成分(A)として使用する植物抽出物に存在する有効な成分、例えばポリフェノール類を多様なものとするために、2種以上の植物の抽出物を用いることが好ましい。
植物の抽出に使用する部位は地上部、地下部、果実、果皮或いは種子のいずれでも良い。これら1種以上の植物に加えて、更に檜、ブナ、ヒバ、ドクダミ、オレンジ、イランイラン、カモミール、グレープフルーツ、サンダルウッド、シナモン、ジャスミン、セージ、ゼラニウム、ティートリー、バジル、ペパーミント、レモン、ユーカリ、ライム、ラベンダー、レモングラス、ローズマリー等の植物の抽出物を用いても良い。
植物抽出物を得る方法の例として、植物を生のまま或いは乾燥し、細切り或いは細切りせずに、抽出溶媒として水、無機酸水溶液、有機酸水溶液、無機アルカリ水溶液、有機溶媒等の1種又は2種以上の混合溶媒を用いて抽出することが挙げられる。得られた抽出液を濾過後に減圧濃縮などによる濃縮を行い、植物抽出液を得る。あるいは抽出溶媒を蒸発させた後の乾固物として得てもよい。
抽出液又は乾固物の状態の植物抽出物は、繊維へ付与するに当り、植物抽出液の状態で使用してもよいし、乾固物であれば適当な溶媒を用いて溶解し、又は成分(B)及び/又は(C)及び任意に適当な溶媒を用いて溶解させて、使用することができる。
【0015】
抽出溶媒となる無機酸水溶液として、例えば塩酸、硫酸、硝酸水溶液などが挙げられ、好ましいpHは2〜6である。有機酸水溶液として、例えば酢酸、クエン酸水溶液などが挙げられ、好ましいpHは2〜6である。無機アルカリ水溶液としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、クエン酸カリウム水溶液などが挙げられ、好ましいpHは8〜12である。また上記無機酸水溶液と上記アルカリ水溶液の混合緩衝液を用いることも好ましい。
有機溶媒としては、ヘキサン等のアルカン類の他、エーテル類、ケトン類、アルコール類等が挙げられ、特に炭素数が1〜3の低級アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらの水溶液を用いることが好適である。
【0016】
抽出処理は、冷浸、温浸、加熱還流、パーコレーション法等の方法によって行うことができる。その他、具体的な抽出方法について限定されないが、例えば水蒸気を用いて抽出を行う水蒸気蒸留法や、圧搾法、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出等の方法が例示できる。このような抽出方法については、例えば特開平8−296173号公報の実施例、特開平9−131393号公報の実施例、特開2006−249599号公報の実施例を参照することができる。
成分(A)として用いる植物抽出物として市販品を使用することもでき、そのような市販品として、例えば環境科学開発社製「L−17W」(笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬抽出物)、太陽化学社製「サンフラボン」(茶抽出物)、伊藤園社製「テアフラン」、「テアフラン30A」(茶抽出物、茶ポリフェノール40%)、白井松新薬社製「ネオバンプス2000」(竹抽出物)、リリース科学社製「パンシル」(柿抽出物、柿ポリフェノール5%)、「デスファン」(グレープフルーツ抽出物)などが挙げられる。成分(A)として用いる植物抽出物は本発明の要件を満たす構成であれば特に限定されない。
【0017】
成分(A)の植物抽出物に含まれる有効成分は、フラボノイド、特にカテキン、タンニン等のポリフェノール類や、テルペン、テルペノイド、リモネン等各種の成分などである。中でもポリフェノール類については、抗菌・消臭性が非常に良好であるものの、植物由来の有効成分の中でも特に酸化による変色を受けやすいため、繊維へ付着される繊維処理剤におけるポリフェノール類の質量比率は、1〜20質量%であることが特に望ましい。ポリフェノール類の比率がこの範囲にあると、黄変や赤変等の変色が抑制される一方で所望の抗菌・消臭性が示される。
成分(A)に用いられる植物として、好ましいのは茶葉、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、柿であり、特に茶葉、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬が好ましく用いられる。
【0018】
繊維へ付与された繊維処理剤中のポリフェノール類の含有量を定性、定量的に確認する方法として、繊維表面に付着あるいは含まれた繊維処理剤を、水などの極性溶媒及び/又は非極性溶媒からなる溶媒で繊維から抽出し、抽出液をフォーリンデニス法、フォーリンチオカルト法等の比色分析法を用いる方法や、センサーを用いた電気化学的分析法(例えば東洋紡社製「ポリフェノール測定器PA−20」)を用いる方法などが挙げられる。
【0019】
また、成分(A)中にはポリフェノール類以外にも、先に挙げたテルペン、テルペノイド、リモネンなど各種の成分が含まれており、これらの成分は例えばODSカラムなどを用いた逆相HPLC法やGC/MS法などのガスクロマトグラフを用いることにより定性、定量化が可能である。更にこれらの方法はポリフェノール類も分析が可能であり、例示したこれらの方法に限定されず、他の手法でも確認可能である。勿論、これらの手法を併用することも好ましい。
【0020】
上記の有効成分より構成された成分(A)を用いることにより、良好な抗菌・消臭性の発現が可能になる。しかし、本発明に用いられる成分(A)を、ただ単に繊維表面に付着又は含有させるだけでは、繊維、繊維成形品または繊維製品に加工した後、外気中の酸化性物質に対する耐変色性が十分でなく、品質安定性が著しく低下する。そこで成分(B)及び/又は成分(C)を、成分(A)と混合した上で繊維に付着させるか、あるいは成分(A)を繊維に付着した上から成分(B)及び/又は成分(C)を付着(上塗り)させることで、外気中における長期の耐変色性を発揮でき、更に成分(A)のみを付着させた場合よりも優れた抗菌・消臭性能を得ることが可能となる。
【0021】
ポリフェノール類に代表される植物抽出物に、外気中の窒素酸化物、オゾン等の酸化物が作用することで、キノンなどの共役化合物やニトロ化合物などの有色な化合物を生成する。その正確な作用は不明だが、仮説として挙げれば上記反応の過程において、繊維表面のpHが8を超える場合、副生成物として生成する亜硝酸などが反応、消費されることにより上記反応が更に促進されると考えられる。しかし、成分(B)及び/又は成分(C)が存在する場合、繊維表面のpHが4〜8付近に保たれることにより変色を抑制する。さらに、植物抽出物を包み込むことで外気との反応を最小限に抑え、揮散などによる自然損失を抑制する。
【0022】
植物抽出物が有する親水性と帯電防止性は、繊維加工に於いて十分なレベルではなく、繊維からウェブ、スライバーへの加工工程において、カード機またはエアレイド機と繊維とが擦れ合うことで帯電が起こり、加工性が低下する傾向がある。そこで成分(B)及び/または成分(C)を成分(A)と混合するか、又は成分(A)に被覆させることで、高速カード加工下においても充分な制電性を発揮でき、同時に繊維表面における植物抽出物の剥離防止性を有することができる。このため成分(A)のみを付着させた場合よりも優れた抗菌・消臭性能を得ることが可能となる。
【0023】
本発明で用いられる成分(B)としては、アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤(成分(B1)という)及び多価アルコール型非イオン界面活性剤(成分(B2)という)から選ばれる非イオン界面活性剤を挙げることができる。
成分(B)の非イオン界面活性剤を構成するアルキルとしては、炭素数が12〜24のアルキルが利用できる。このアルキルは、任意の−CH2−が−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。このアルキルは、パーム油、牛脂、ナタネ油、米糠油、魚油等の天然油脂由来のアルキルでも合成系のアルキルでもよい。
【0024】
成分(B1)は、高級アルコール、高級脂肪酸またはアルキルアミンなどに直接アルキレンオキシドを付加させるか、グリコール類にアルキレンオキシドを付加させて得られるポリエチレングリコール類に高級脂肪酸などを反応させるか、または多価アルコールに高級脂肪酸を反応して得られたエステル化物にアルキレンオキシドを付加させることにより得られる。
【0025】
成分(B1)を構成するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムまたはブロック付加物が挙げられ、なかでも、エチレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムまたはブロック付加物が好ましい。付加モル数は、5〜50モルが好ましく、付加すべきアルキレンオキシドのうち50〜100質量%がエチレンオキシドであることが好ましい。なお、エチレンオキシドをEOと略し、nモル付加した場合に、EO(n)として表記する場合がある。
【0026】
成分(B1)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル{成分(B1−1)}、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル{成分(B1−2)}、ポリオキシアルキレン多価アルコール高級脂肪酸エステル{成分(B1−3)}、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル{成分(B1−4)}、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル{成分(B1−5)}、ポリオキシアルキレンアルキルアルカノールアミド{成分(B1−6)}等を挙げることができる。
【0027】
成分(B1−2)、成分(B1−3)、成分(B1−6)及び成分(B2)を構成する高級脂肪酸としては、パーム油、牛脂、ナタネ油、米糠油、魚油などの天然脂肪酸由来の高級脂肪酸が一般的に利用できるが、化学的に合成した高級脂肪酸を使用してもよい。
【0028】
成分(B1−3)及び成分(B2)を構成する多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、ショ糖等の3〜8価アルコールを挙げることができる。特にグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトールが好ましい。
【0029】
成分(B1−4)を構成するアルキルフェニルとしては、炭素数8〜12のアルキルを有するモノアルキルフェニルまたはジアルキルフェニルを挙げることができる。
成分(B1−5)を構成するアルキルアミノとしては、炭素数8〜24のアルキルを有するモノアルキルアミノまたはジアルキルアミノを挙げることができる。このアルキルの任意の−CH2−が−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。
成分(B1−6)を構成するアルキルアルカノールアミドは、アルカノールアミンと高級脂肪酸の脱水反応によって得られる基である。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等を挙げることができる。
【0030】
上記の非イオン界面活性剤である成分(B)のうち、成分(B1−1)〜成分(B1−3)、(B1−6)、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトールなどからなる多価アルコール型非イオン界面活性剤が特に好ましい。
成分(B)として一種単独を使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明で用いられるアニオン界面活性剤である成分(C)は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩のいずれでもよい。具体的には、カルボン酸塩としては、オレイン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム等の石鹸類が利用できる。また、スルホン酸塩としては、ラウリルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩類、ラウリルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類が利用できる。硫酸エステル塩としては、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩等のアルキル硫酸エステル塩、ラウリルアルコールにオキシアルキレンを付加した化合物の硫酸エステルナトリウム塩等の硫酸アルキル(ポリオキシアルキレン)エステル塩が利用できる。リン酸エステル塩としては、ステアリルアルコール等の高級アルコールまたはこれにポリオキシアルキレンを付加した化合物のリン酸エステル塩が利用できる。なかでも高級アルコール、ポリオキシアルキレンを付加した硫酸エステルアルカリ金属塩及びリン酸エステルアルカリ金属塩が制電性に優れているため好ましく、リン酸エステルアルカリ金属塩は繊維の平滑性にも優れているため特に好ましい。
成分(C)として一種単独を使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明において、繊維処理剤の成分として成分(B)及び成分(C)の双方、あるいは一方を使用することができる。
【0033】
本発明に用いられる繊維処理剤において、前記成分(A)と、成分(B)及び/または成分(C)との質量比率は、20/80〜80/20、好ましくは25/75〜75/25、より好ましくは30/70〜70/30である。成分(A)と成分(B)及び/または成分(C)の質量比率が20/80〜80/20の範囲にあると、抗菌性・消臭性が充分であり且つ安定性が良好である。なお、本明細書中で、成分(A)(植物抽出物)の量は、抽出溶媒蒸発後の残余、すなわち純分の量に基づいて述べる。
更に、これら繊維処理剤の繊維への付着量は、繊維の全質量に基づいて0.2〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、より好ましくは0.3〜1.5質量%である。繊維処理剤の付着量が0.2〜5質量%の範囲であれば、消臭性、制電性を共に発揮させることができる。さらに消臭性能を充分に発揮させるためには、成分(A)の付着量は、繊維の全質量に基づいて少なくとも0.1質量%であることが好ましい。
【0034】
繊維処理剤の付着量の範囲は、一般に繊維開繊工程での加工性を維持する上で求められる範囲であり、工程通過後に繊維成形品を作製する際には、これらの範囲を超えて付着させても、本発明の効果を何ら阻害することはない。なお、繊維処理剤を繊維へ付着する場合には、付着加工がし易いように、繊維処理剤を水で希釈し、仕上剤として使用することが好ましい。
【0035】
本発明に用いられる繊維処理剤において、成分(B)と成分(C)とは、各々単独又は併用しても良いが、好ましくは成分(B)と(C)の質量比率を40/60〜90/10とすること、更に好ましくは45/55〜90/10として併用することにより変色防止性と帯電防止性とのバランスを良好にでき、これにより繊維開繊工程での加工性の向上に繋がるので好ましい。
【0036】
本発明に用いられる繊維処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、ベンザルコニウムクロライド等のアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、セチルピリジニウムクロライド等のアルキルピリジニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、ポリリジン等のカチオン系抗菌剤を添加することができる。
【0037】
また、必要により、繊維処理剤に、炭素数2〜4のアルカノールアミン等のpH調整剤、EDTA、ポリリン酸ナトリウム等のキレート剤、スクワラン、ヒアルロン酸ナトリウム等の皮膚保護剤、ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、パーフルオロアルキル基含有化合物等の撥水剤、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド等の香料、防腐剤、防錆剤、消泡剤等を添加してもよい。
【0038】
本発明の抗菌・消臭繊維には、抗菌・消臭性の強化及び、植物抽出剤への耐久性付与を目的として、酸化亜鉛もしくは下記式(1)で表される酸化亜鉛系複合酸化物を繊維に添加することも望ましい。
2+(1-x)3+x-δO (1)
(式中、M2+はZn又はZnを必須成分とする2価金属を示し、M3+はAl,Fe,Ceから選ばれる3価金属、好ましくはAlを示し、xは0<x≦0.5の範囲の数を示し、δはカチオン格子欠陥を示す)
この酸化亜鉛系複合酸化物とは、ZnOにAl等のM3+が置換固溶したZnOと同じ結晶構造の固溶体、あるいは該固溶体とスピネル(M2+3+24)との混合物を意味し、粉末X線回折にかけるとZnOと殆ど同じ回折パターンを示す。
【0039】
式(1)において、xの値が0.5以下の場合、式(1)の固溶体にAl23、Fe23、Ce23等が混在しないか混在しても問題になる量ではないので、式(1)の固溶体の特性が十分に発揮され好ましい。またxの値が小さくても、M2+が活性化される範囲であれば、十分な消臭性能を得ることができる。この為、本発明に用いる複合酸化物のxの範囲は、0<x≦0.5、好ましくは0.1≦x≦0.4、より好ましくは0.2≦x≦0.4である。該複合酸化物は、例えば、ハクスイテック株式会社製「パゼットシリーズ」、または株式会社海水化学研究所製「シーバイオ」等として入手できる。なお、該複合酸化物の製造の過程で副生したAl23、Fe23、Ce23等が式(1)の複合金属酸化物に混在した状態であっても、本発明の効果が損なわれない限り抗菌・消臭剤として適用することができる。また、M2+はZn又はZnを必須成分とする2価金属であり、具体的にはZn以外に、Ca、Mg、Cu等を併用することで、大腸菌、黄色ブドウ球菌等の細菌に加え、黒かび等、カビに対する増殖抑制効果も高められる等の効果が得られる。
【0040】
本発明に用いる複合酸化物の含有量、及びM2、M3+、の混率を定性、定量的に確認する方法として、繊維表面に露出した複合酸化物の微粒子を蛍光X線分析、X線光電子分光分析等により表面分析を行う方法、繊維を構成する熱可塑性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて溶解、含有する複合酸化物を濾過、遠心分離等の手法で分離した後、先に挙げた表面分析及び原子吸光法、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析法等の手法で元素分析を行う方法等が挙げられる。勿論、例示したこれらの方法に限定されず、他の手法でも確認可能である。更に、これらの手法を併用することにより、含有する無機物が2価及び/または3価金属の固溶体であるか、異なる金属酸化物を混合させた物であるかを判別し易くなる為好ましい。
【0041】
本発明に用いる金属酸化物、酸化亜鉛系複合酸化物は、繊維全質量に対して0.1〜10質量%が適当であり、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。この量が0.1〜10質量%の範囲にあると、十分な消臭性能を発現させることができるとともに、紡糸性の悪化や不織布加工時における繊維表面からの脱落が起こらず、生産性が良好に維持される。
【0042】
本発明の抗菌・消臭性繊維が1種類の均一な熱可塑性樹脂成分からなる繊維(単一繊維)である場合、用いる熱可塑性樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、立体規則性ポリスチレン樹脂、またはこれらの混合物等が例示されるが、特に限定されるものではない。また、本発明を構成する繊維は、エラストマー樹脂を主成分とする樹脂組成物から得られるものでも構わない。ここで主成分とは、含有量が最も多い成分を言う。エラストマー樹脂は、常温(20〜30℃)では加硫ゴムと同様な弾性体の性質を持ち(分子中のソフトセグメントによる)、高温では通常の熱可塑性樹脂と同様に既存の繊維成形機をそのまま使って成形することができる(分子中のハードセグメントによる)高分子材料である。このようなエラストマー樹脂としては、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーを挙げることができる。このようなエラストマー樹脂を用いると、本来の抗菌・消臭性機能の他に、伸縮弾性機能も具備することが出来る。
【0043】
本発明の抗菌・消臭性繊維が複合繊維である場合、少なくとも2成分の熱可塑性樹脂で構成される。本発明でいう熱可塑性樹脂は、繊維形成性を有し、通常の溶融紡糸装置を使用して溶融紡出可能なものであれば特に限定されることはない。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂及び熱可塑性エラストマー樹脂、立体規則性ポリスチレン樹脂、またはこれらの混合物等が例示されるが、鞘成分については、後述の理由よりポリオレフィン系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0044】
上記のポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリメチルペンテン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエンが利用できる。更にこれらの単独重合体に、単独重合体を構成する単量体以外のエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1または4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンが共重合成分として少量含有されていてもよい。また、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、スチレン及びα−メチルスチレン等の他のエチレン系不飽和モノマーが共重合成分として少量含有されていてもよい。また上記ポリオレフィン樹脂を2種以上混合して使用してもよい。これらは、通常のチーグラーナッタ触媒等から重合されたポリオレフィン樹脂だけでなく、メタロセン触媒から重合されたポリオレフィン樹脂、及びそれらの共重合体も好ましく用いることができる。また、好適に使用できるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略す)は、紡糸可能な範囲であれば特に限定されることはないが、1〜100g/10分が好ましく、より好ましくは、5〜70g/10分である。
【0045】
上記MFR以外のポリオレフィンの物性、例えばQ値(重量平均分子量/数平均分子量)、ロックウェル硬度、分岐メチル鎖数等の物性は、本発明の要件を満たすものであれば、特に限定されない。
【0046】
ポリエステル系樹脂は、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得ることができる。ポリエステル樹脂の縮重合に用いられるジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。また、用いられるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。本発明ではポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートが好ましく利用できる。また、これらのポリエステル樹脂は、単独重合体だけでなく、共重合ポリエステル(コポリエステル)でもよい。このとき、共重合成分としては、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸成分、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール成分が利用できる。その他、ポリ乳酸も好ましく用いることができる。
【0047】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−46、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12、ポリメタキシレンアジパミド(MXD−6)、ポリパラキシレンデカンアミド(PXD−12)、ポリビスシクロヘキシルメタンデカンアミド(PCM−12)が利用できる。更にこれらのポリアミド樹脂に用いられている単量体を構成単位とするアミドの共重合体も利用できる。
【0048】
立体規則性ポリスチレン系樹脂は、13C−NMR法により測定されるタクティシティーとして、連続する複数個の構造単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアット、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明で用いられる該立体規則性ポリスチレン系樹脂としては、通常ペンタッド分率が85%以上、好ましくは95%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリエチルスチレン、ポリイソプロピルスチレン等のポリアルキルスチレン、ポリクロロスチレン、ポリブロモスチレン、ポリフルオロスチレン等のポリハロゲン化スチレン、ポリクロロメチルスチレン等のポリハロゲン化アルキルスチレン、ポリメトキシスチレン、ポリエトキシスチレン等のポリアルコキシスチレン、ポリ安息香酸エステルスチレン等であり、これらを単独もしくは混合して使用することができるのは勿論、これら共重合体を構成するモノマー相互の共重合体もしくはこれらモノマーを主成分とする共重合体である。
【0049】
すなわち、上述のモノマー群から選択される1種以上のモノマーとエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー、環状オレフィンモノマー、環状ジエンモノマーもしくはメタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アクリロニトリル等の極性ビニル系モノマーとのシンジオタクティックスチレン構造を有する共重合体である。これらの単独重合体もしくは共重合体は市販品を使用することができる。
【0050】
上記熱可塑性樹脂の中でも特に、融点が低く加熱による接着が容易であり、ガスに対する透過性が比較的高いポリオレフィン系樹脂に繊維処理剤を付着、或いは含有等の手段で繊維表層に添加することで、臭気物質に対する反応や、細菌の増殖抑制が効率良く進む。即ち、前記単一繊維及び複合繊維の鞘成分には、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
本発明に用いる熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲内でさらに、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料及び可塑剤等の添加剤を適宣必要に応じて添加してもよい。
【0052】
本発明の抗菌・消臭性繊維として、少なくとも2種の熱可塑性樹脂からなる複合繊維を利用することで、熱接着性能を発揮させることができる。複合繊維に充分な熱接着性能を発揮させるためには、該複合繊維が、例えば芯成分と鞘成分とからなる場合、鞘成分の熱可塑性樹脂が芯成分の熱可塑性樹脂よりも低融点であり、鞘成分が繊維表面に露出していることがよい。熱可塑性単一繊維の場合、繊維成形品に成形する主な加工方法には、バインダーによる被覆や、ニードルパンチ、スパンレース等の物理的交絡法になるが、これらの方法では、バインダーによって有効成分を被覆してしまう場合や、針、高圧水流によって繊維処理剤の有効成分を脱落させてしまう場合がある。しかし、複合繊維とすることで、熱加工により成形が可能となるため、被覆や脱落による抗菌・消臭性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0053】
本発明の抗菌・消臭性繊維の断面形状としては、円形断面形状だけでなく、異形断面形状(非円形断面形状)にすることができる。異形断面形状としては、例えば、星形、楕円形、三角形、四角形、五角形、多葉形、アレイ形、T字形及び馬蹄形などを挙げることができ、これらの場合、表面積が拡大するので抗菌・消臭効果が向上する。更にこれらは前記異形の他、中空断面にすることもできる。また、複合繊維の場合鞘芯型、並列型、偏心鞘芯型、多層型、放射型または海島型などが例示できるが、複合酸化物が効率良く露出されやすいこと、熱接着による不織布化が容易であることなどの理由から、鞘芯型、並列型、偏心鞘芯型断面であることが好ましい。
【0054】
本発明の抗菌・消臭性複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の組合せとしては、その組合せ例を鞘成分/芯成分の形式で表すと、ポリオレフィン樹脂/ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂/ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂/ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂/ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂/ポリアミド樹脂の組合せが利用できる。ポリオレフィン樹脂/ポリオレフィン樹脂の組合せとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレンが例示できる。
【0055】
ポリオレフィン樹脂/ポリエステル樹脂の組合せとしては、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートが例示できる。またポリエチレンテレフタレートの他にも、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸を用いても良い。
【0056】
ポリエステル樹脂/ポリエステル樹脂の組合せとしては、共重合ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート等が例示できる。
【0057】
本発明の抗菌・消臭性複合繊維において、鞘成分と芯成分との複合比は10/90質量%〜90/10質量%の範囲にすることが好ましく、より好ましくは30/70質量%〜70/30質量%である。かかる範囲の複合比とすることにより、両成分が均一に配置された断面形状となる。尚、以下の説明においても複合比の単位は質量%である。
【0058】
本発明において繊維処理剤を繊維に付着させる方法に制限はなく、紡糸及び/または延伸工程でオイリングロールとの接触、浸漬槽への浸漬、スプレー噴霧等により繊維に付着できる。繊維に付着するだけでなく、ウェブや繊維成形体に付着してもよい。例えば、不織布加工工程でウェブに接触法、浸漬法、噴霧法により付着させる方法や、繊維成形体に加工した後に接触法、浸漬法、噴霧法により付着させる方法が利用できる。更に付着は、上記成分(A)〜(C)の混合物を一度に付着させる方法が好ましいが、紡糸工程、延伸工程または不織布加工工程において消臭成分である成分(A)と、成分(B)及び/または成分(C)を含む界面活性剤を個別に付着させる方法でもよい。成分(B)及び/または成分(C)が成分(A)を保護することにより、不織布加工工程中の繊維開繊工程における帯電の抑制(制電)及び成分(A)の脱落、更には長期保存時の酸化物による変色を最小限に抑えることができる。
【0059】
一例として、乾式紡糸法、湿式紡糸法、ゲル紡糸法、溶融紡糸法等の公知の方法で製造された繊維に、この紡糸工程において、タッチロール等の方法で成分(A)を付着させた後、延伸工程において、成分(A)の層上に、成分(B)及び/または成分(C)からなる界面活性剤を付着させる方法が挙げられる。
【0060】
更に他の例として、ウェブ/ウォータージェット加工法、短繊維/エアレイド/サーマルボンド加工法、メルトブロー紡糸/サーマルボンド加工法、スパンボンド紡糸/サーマルボンド法等公知の方法で作製された不織布に、タッチロール、グラビアロール等で、成分(A)を付着させた後、成分(A)の層上に成分(B)及び/または成分(C)からなる界面活性剤を付着させる方法を挙げることができる。しかし、特に例示したこれらの方法に限定されない。
【0061】
本発明の抗菌・消臭性繊維を用いた繊維成形品としては、ネット、ウェブ、編織物、不織布等を挙げることができ、特に不織布が好ましく用いられる。不織布加工の方法としては、サーマルボンド法(スルーエアー法、ポイントボンド法)、エアレイド法、ニードルパンチ法、ウォータージェット法等の公知の方法を用いることができる。短繊維をカード機等でウェブにした後に、前記不織布加工の方法でウェブを不織布にするだけでなく、メルトブロー法またはスパンボンド法でウェブを直接製造した後、前記不織布加工の方法でウェブを不織布にすることができる。また、混綿、混紡、混繊、交撚、交編、交繊等の方法で混合した繊維を前記不織布加工の方法で布状の形態にすることもできる。なお、本発明で得られた繊維成形品を単体で使用してもよいし、他の不織布、編織物、メッシュ状物、フィルム等の成形品と積層または一体化した状態で使用してもよい。
【0062】
本発明の抗菌・消臭性繊維を用いた繊維製品としては、おむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、一般医療材、寝装材、フィルター材、介護用品など様々な親水性、透水性を要求される繊維製品への用途に利用することができる。
【0063】
特に本発明の抗菌・消臭性繊維またはそれを用いた不織布を吸収性物品に用いると、消臭性以外に、おむつかぶれ等の皮膚炎から皮膚を保護する効果があるため好ましい。このおむつかぶれは、皮膚上に存在する細菌や酵素が尿等の排泄物と接触することにより、アンモニアを発生し、皮膚のpHを高め、これにより、蛋白質分解酵素や脂質分解酵素の活性が上がることが原因と考えられる。しかし、成分(A)中の有効成分が、発生したアンモニアと反応すること、または弱酸性の緩衝作用を有することで、皮膚のpHを一定に保ち、結果的におむつかぶれを抑制することになる。
【0064】
更に、添加した酸化亜鉛が繊維表面を乾燥状態と同様な状態に保つことで、全体にさらさらした触感を与える。この為肌に対して収斂、消炎、抗アレルギー作用等、スキンケアの役割も積極的に寄与することができる。この乾燥状態は肌に対しての作用以外にも、防ダニ、即ちダニに対しての増殖抑制も果す。乾燥状態がダニの水分調整バランスを崩し、繁殖能力を抑えることにより、効果を発現することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、各例において物性評価は以下に示す方法で行った。
(繊維の耐変色性促進試験)
試料繊維100gを、25℃、相対湿度65%の条件下で7m/minの速度でローラーカード試験機でカードウェブとし、ニードルパンチ加工機で加工して、目付約80g/m2のニードルパンチ不織布とした。これを8cm×8cmにカットし、台紙に固定した。石油ストーブの周囲を金属で覆った暴露装置を作成し、石油ストーブの燃焼ガスを捕集できる様にした。ストーブの火源より80cm上方に不織布サンプルを吊るし、装置内の温度を約100℃に保った状態で3時間燃焼ガスに暴露させた。暴露後、前後のサンプルを目視比較し、黄変、赤変等変色の有無を以下の基準で評価した。
○:変色は殆んど見られない
△:僅かな変色が見られる
×:黄変、赤変が著しく、明らかな変色が見られる
【0066】
(繊維処理剤の付着量)
迅速残脂抽出装置R−II型(東海計器(株)製)を用いて、迅速抽出法により付着量を測定した。試料繊維及び繊維成形体2g(短繊維において、処理剤の付着方法により付着斑等が懸念される場合は、カードにかけウェブとしたものを用いること)を金属製の筒(内径16mm、長さ130mm、底部はすり鉢状で最底部には1mmの孔があるもの)に詰め、上部よりメタノール25mlを数回に分けて投入する。
底部の孔より滴下した液体を加熱したアルミ皿で受け、メタノールを蒸発させる。アルミ皿にある残留物の質量(g)を測定し、以下の式で付着量を算出する。
付着量=(残留物の質量/2)×100(単位は%)
【0067】
(消臭性試験)
実施例及び比較例で得られた不織布の消臭性能を、アンモニア、酢酸について次のように測定した。テドラーバッグ(容積5リットル)に所定量(3g)の不織布を入れて密封した。次いで、シリンジを用いて、所定濃度の臭気成分を含む空気を、全ガス量3リットルとなるようにテドラーバッグ内に注入した。ガスを注入してから一定時間経過後に、テドラーバッグ内のガスをガス検知管(ガステック社製、酢酸用81型、硫化水素用4LL、4LT型)を用いて直接測定し、下記式により臭気成分の除去率を求めた。
除去率(%)={(C0−C)/C0}×100
0:初期濃度
C:24時間経過後の対象臭気物質濃度
【0068】
(抗菌性試験)
繊維製品衛生加工協議会(SEK)の統一試験法に準じて行った。滅菌後クリーンベンチ内で乾燥した試料0.4gの全体に、あらかじめ高圧蒸気滅菌して氷冷した1/20濃度のニュートリエントブロスで、生菌数を1×105個/mlに調製した試験菌懸濁液0.2mlを均一に接種して、滅菌したキャップを締め付ける。これを37±1℃で18時間培養し、培養後の生菌数を測定する。
試料には標準布(抗菌防臭加工製品の加工効果評価試験マニュアルに規定のもの)と各実施例で作製した加工布の2種類であり、試験菌としては黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538P)を用いた。そして、下記の式で抗菌性の指標である静菌活性値を算出した。
静菌活性値=logB−logC
但し、試験成立条件(logB−logA)>1.5を満たすこと
A:標準布の接種直後に回収した菌数の平均値
B:標準布の18時間培養後回収した菌数の平均値
C:加工布の18時間培養後回収した菌数の平均値
静菌活性値が2.2以上のものを抗菌性ありと判定した。
【0069】
(植物抽出物)
繊維処理剤の成分(A)となる植物抽出物として、以下の物質を用いた。
抽出物1:L−17W(商品名:環境科学開発社製、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬抽出物)
抽出物2:パンシル(商品名:リリース科学社製、柿抽出物、柿ポリフェノール5%)
抽出物3:テアフラン30A(商品名:株式会社伊藤園製、茶抽出物、茶ポリフェノール40%)
【0070】
(繊維処理剤及びその添加方法)
各種繊維処理剤を構成する成分(A)、成分(B)、成分(C)について、以下の表1に組成(単位:質量%)示す。
【0071】
【表1】

繊維処理剤の繊維への添加方法としては、表2に示すように紡糸工程及び/又は延伸工程で付着させた。尚、成分(A)、成分(B)、成分(C)を混合した処理剤は、紡糸工程において付着した。
【0072】
(金属酸化物及びその添加方法)
熱可塑性樹脂に添加する金属酸化物として以下の物質を用いた。
酸化物1:ZnO
酸化物2:Zn0.75Al0.25
金属酸化物の粉体をマスターバッチ化後、鞘成分へ添加する。マスターバッチ化に用いる樹脂は、鞘成分と同じ樹脂を用いた。
表2に金属酸化物の含有量を示す。尚、含有量は繊維中の含有量である。
【0073】
(熱可塑性樹脂)
繊維を構成する熱可塑性樹脂として以下の樹脂を用いた。
樹脂1:密度0.96g/cm3、MFR(190℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が131℃である高密度ポリエチレン(略記号PE)
樹脂2:MFR(230℃ 荷重21.18N)が15g/10min、融点が162℃である結晶性ポリプロピレン(略記号PP)
樹脂3:MFR(230℃ 荷重21.18N)が16g/10min、融点が131℃であるエチレン含有量4.0重量%、1−ブテン含有量2.65重量%のエチレン−プロピレン−1−ブテン3元共重合体。(略記号co−PP)
樹脂4:固有粘度が0.65であるポリエチレンテレフタレート。(略記号PET)
樹脂5:固有粘度が0.92であるポリトリメチレンテレフタレート。(略記号PPT)
繊維に用いる樹脂とその組み合わせを表2に示す。
【0074】
(メルトフローレート(MFR)の測定)
JIS K 7210に準拠し、メルトフローレートの測定を行った。ここで、MIは、附属書A表1の条件D(試験温度190℃、荷重2.16kg)に準拠し、MFRは、条件M(試験温度230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定した。
【0075】
(不織布化)
不織布化の方法として、以下の方法と条件を用いた。
スルーエア加工(略称TA):表2に示す熱可塑性樹脂を用い、表に示す比率(質量比)と断面形状で紡糸し、その際、表1に示す各種繊維処理剤をオイリングロールに接触させて、該処理剤を付着させた。延伸工程を経た後、乾燥させて2.2dtexの繊維を得た。次いで、該繊維をカッターでカット長51mmの短繊維とし、これを試料繊維として用いた。
試料繊維をローラーカード試験機にてカードウェブとし、このウェブをサクションドライヤーで加工して目付25g/m2の不織布として用いた。加工条件は、加工温度130℃で行った。
【0076】
[実施例1〜8、比較例1]
上記のようにして得た複合繊維及びその繊維を用いて作成した不織布について、それらの性能を前記評価方法に基づき評価、測定した。その結果を表2に合わせて示す。






【0077】
【表2】

【0078】
上記表の結果にあるように、本発明による繊維は、細菌に対する増殖抑制及び、消臭性能を発揮することができ、一方繊維の変色が抑えられている。繊維の変色を抑制する観点から、繊維処理剤に占めるポリフェノール類の比率が1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
本発明の抗菌・消臭性繊維から、例えばおむつ、ナプキン、失禁パット等の吸収性物品、ガウン、術衣等の医療衛生材、壁用シート、障子紙、床材等の室内内装材、カバークロス、生ゴミ用カバー等の生活関連材、使い捨てトイレ、トイレ用カバー等のトイレタリー製品、ペットシート、ペット用おむつ、ペット用タオル等のペット用品、一般医療材、寝装材、フィルター材、介護用品などの抗菌・消臭性能が要求される様々な繊維成形品又は繊維製品を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の成分(A)と、成分(B)及び/又は成分(C)を含む繊維処理剤が、繊維の全質量に基づいて0.2〜5質量%付着している繊維であって、該繊維処理剤中で、成分(A)が20〜80質量%、成分(B)及び/又は成分(C)が80〜20質量%を占めることを特徴とする抗菌・消臭性繊維。
(A)茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物;
(B)アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤;
(C)カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤
【請求項2】
植物抽出物中に含有されるポリフェノール類が、該繊維処理剤の質量に基づいて1〜20質量%である請求項1に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項3】
成分(A)の付着量が、繊維の全質量に基づいて少なくとも0.1質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項4】
上記成分(B)のアルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪族アミン、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸アミド及びポリオキシアルキレンアルキルアルカノールアミドから選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項5】
上記成分(B)の多価アルコール型非イオン系界面活性剤がグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン又はソルビトールの高級脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及び高級脂肪酸アルカノールアミドから選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項6】
繊維中に、酸化亜鉛および/または下記一般式(1)
2+(1-x1)3+x1-δO (1)
(M2+は亜鉛又は亜鉛を必須成分とする2価金属を示し、M3+はAl,Fe,Ceから選ばれる3価金属を示し、x1は0<x1≦0.5の範囲の数を示し、δはカチオン格子欠陥を示す)で表わされる複合酸化物を繊維の全質量に対し0.1〜10質量%の範囲で含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項7】
繊維が、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を含む複合繊維である請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項8】
少なくとも1種類の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、同樹脂が鞘側に配された鞘芯型複合繊維である請求項7に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項9】
抗菌・消臭性繊維が複合繊維であって、金属酸化物が該複合繊維の鞘成分内に練り込まれている請求項6に記載の抗菌・消臭性繊維。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗菌・消臭性繊維を用いた繊維成形品。
【請求項11】
請求項10に記載の繊維成形品を用いた繊維製品。
【請求項12】
少なくとも下記の成分(A)と、成分(B)及び/又は成分(C):
(A)茶葉、アロエ、竹、笹、フキ、ヘチマ、スギナ、蓬、ゲンノショウコ、柿及びグレープフルーツからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物;
(B)アルキレンオキシド付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコール型非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非イオン界面活性剤;
(C)カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン界面活性剤
を含む繊維処理剤を、繊維の全質量に基づいて0.2〜5質量%付着させることを含み、該繊維処理剤中で、成分(A)が20〜80質量%、成分(B)及び/又は成分(C)が80〜20質量%を占めていて、成分(A)と成分(B)及び/又は成分(C)を繊維に同時に適用するか、又は成分(A)を繊維に適用した後、成分(B)及び/又は成分(C)を適用するか、又は成分(B)及び/又は成分(C)を適用した後、成分(A)を適用することを含む、抗菌・消臭性繊維の製造方法。

【公開番号】特開2008−255518(P2008−255518A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98669(P2007−98669)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(506276907)ESファイバービジョンズ株式会社 (16)
【出願人】(506276712)イーエス ファイバービジョンズ ホンコン リミテッド (16)
【出願人】(506275575)イーエス ファイバービジョンズ リミテッド パートナーシップ (16)
【出願人】(506276332)イーエス ファイバービジョンズ アーペーエス (16)
【Fターム(参考)】