説明

抗菌剤およびその使用法

本出願は、微生物成長、微生物感染、炎症性疾病、ウイルス性疾病、心血管疾病、糖尿病、ならびに/またはガンなどの微生物感染によって制御され得るかもしくは微生物感染と関連し得る疾患を阻害し、治療するための新規抗菌性組成物および前記抗菌性組成物の使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、微生物成長、微生物感染、炎症性疾病、ウイルス性疾病、心血管疾病、糖尿病、ならびに/またはガンなどの微生物感染によって制御され得るかもしくは微生物感染と関連し得る疾患を阻害し、治療するための新規抗菌性組成物および前記抗菌性組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具の表面におけるバイオフィルムの形成は、医療コミュニティにとって重大で、深刻化している問題である。バイオフィルムは、多種多様な材料で構成され、カテーテルおよびポート、移植された人工器具などの金属表面、深い傷外傷領域などの生きている組織、ならびに歯、歯肉組織および骨などの口腔組織を含む多くの種類の表面で形成する。細菌および真菌を含む多種類の生物が、バイオフィルムを作ることができる。さらに、いくつかのバイオフィルムは単一の種で占めることができるが、より一般的には、バイオフィルムは様々な生物のコミュニティ全体からなる。場合によっては、ウイルスでさえ、バクテリオファージを介して、バイオフィルムコミュニティによって生じた病態に関与し得る。グラム陰性およびグラム陽性の両方の細菌性生物ならびに真菌が、バイオフィルムを生成することができる。
【0003】
バイオフィルムを占める一方で、多くの生物、特に、病原体は、抗生物質に対する感受性または抵抗性が変化したプロファイルを示す。これは、バイオフィルムが提供する物理化学的保護と相まって、バイオフィルム感染症の患者の治療を非常に困難にする。有効量の抗生物質をバイオフィルム占有者に送達する手段が見つけられる時でさえ、この問題は、生物が抗生物質耐性になればなるほどますます難しくなる。
【0004】
バイオフィルム生物の浮遊形態に対して強い効果がある小分子剤または抗生物質のいずれかを利用して、バイオフィルム感染を破壊するように抗菌処理を設計しようとすると、さらなる問題が生じる。この問題は、抗生物質などの抗菌剤がバイオフィルムに浸透することができないことにあり、一部には、このバイオフィルムが、抗生物質の拡散を防ぐかまたは減少させることで、低濃度でのみ標的生物に達することによって、埋め込まれた微生物を保護するように作用することに起因する。バリアのこの形態が機能することができる一つの手段は、表面またはその近くで入ってくる抗菌剤と反応し、それを異なる、致死的となり得る可能性の低い形態に変換することである。別のメカニズムは生理学に基づくものであり、バイオフィルムに結合した生物が、浮遊対応物と比較して、基本的に、改良された代謝過程を受けており、この改良が、生物の抗生物質に対する感受性を低下させると仮定している。したがって、有効な抗菌剤の設計は多くの課題を提示している。
【発明の概要】
【0005】
微生物感染の間、様々な細胞ストレス応答も誘発され、組織の炎症および免疫細胞の活性化につながる。これらの免疫事象は、次に、ガンなどの下流の疾患の基礎をなす経路の発達を促進し、かつ/またはその経路を維持することができる。しかし、これらのプロセスに関連づけられる分子事象はよく分かっておらず、下流の免疫と関連する疾患の治療に有用であり得る効果的な免疫モジュレーターを発見する試みを妨げる。
【0006】
本出願は、集合的に、抗菌剤として有効である成分の新規の組み合わせの発見に関する。したがって、本出願では、微生物成長、微生物感染、炎症性疾病、ウイルス性疾病、心血管疾病、糖尿病、ならびにガンもしくは前ガン状態などの微生物感染に制御され得るかまたは微生物感染と関連し得る疾患を阻害し、治療するための新規の組成物およびその抗菌剤の使用法について記載する。
【0007】
一実施形態において、本出願は、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む抗菌剤を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、本抗菌剤中のアルコールはエタノールを含む。いくつかの実施形態において、このアルコールは、約1容積%〜約95容積%の濃度で本抗菌剤に存在する。他の実施形態において、このアルコールは、約20容積%〜約60容積%で本抗菌剤に存在する。別の実施形態において、このアルコールは約50容積%で存在する。
【0009】
いくつかの実施形態において、本抗菌剤中のキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその酸類ならびにその塩を含む。いくつかの実施形態において、このEDTAは、約5mg/mL〜約50mg/mlの濃度で存在する。他の実施形態において、このEDTAは約10mg/mLの濃度で存在する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本抗菌剤中の過酸化物または過酸化物生成剤は過酸化水素(H)を含む。いくつかの実施形態において、このHは、約0.05容積%〜約40容積%の濃度で存在する。他の実施形態において、このHは、約0.05容積%〜約10容積%の濃度で存在する。別の実施形態において、このHは、約1.5容積%の濃度で存在する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本抗菌剤は、さらに粘度増加剤を含む。いくつかの実施形態において、この粘度増加剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、本抗菌剤は、微生物成長、微生物感染、炎症性疾病、ウイルス性疾病、心血管疾病、糖尿病、または微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾患を軽減または阻害するのに有用である。いくつかの実施形態において、本抗菌剤は、微生物成長、微生物感染、炎症性疾病、ウイルス性疾病、心血管疾病、糖尿病、または微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾患を治療するのに有用である。
【0013】
別の実施形態において、本出願は、微生物成長を阻害または軽減する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法を提供する。別の実施形態において、本出願は、微生物成長を治療する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。
【0014】
別の実施形態において、本出願は、微生物感染を阻害または軽減する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。別の実施形態において、本出願は、微生物感染を治療する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。
【0015】
いくつかの実施形態において、この微生物成長または微生物感染は、細菌、真菌、原生動物およびウイルスからなる群から選択される微生物に起因する。
【0016】
いくつかの実施形態において、これらの方法は、医療器具と関連する微生物成長または微生物感染を治療する方法である。
【0017】
別の実施形態において、本出願は、炎症性疾患または炎症性疾病を阻害または軽減する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。別の実施形態において、本出願は、炎症性疾患または炎症性疾病を治療する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。
【0018】
別の実施形態において、本出願は、ウイルス性疾患またはウイルス性疾病を阻害または軽減する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。別の実施形態において、本出願は、ウイルス性疾患またはウイルス性疾病を治療する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。
【0019】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患もしくは炎症性疾病またはウイルス性疾患もしくはウイルス性疾病を治療する方法は、微生物成長または微生物感染と関連する。いくつかの実施形態において、この微生物成長または微生物感染は医療器具と関連する。
【0020】
いくつかの実施形態において、炎症性疾患を治療する方法は、心血管疾病、糖尿病およびガンまたは前ガン状態と関連する。他の実施形態において、ウイルス性疾患を治療する方法は、心血管疾病、糖尿病およびガンまたは前ガン状態と関連する。
【0021】
別の実施形態において、本出願は、微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾患または微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾病を阻害または軽減する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。別の実施形態において、本出願は、微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾患または微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾病を治療する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。
【0022】
いくつかの実施形態において、微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾患または微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾病は、ガンまたは前ガン状態、炎症性疾病およびウイルス性疾病からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、この疾患はガンまたは前ガン状態である。
【0023】
別の実施形態において、本出願は、免疫応答を阻害または軽減する方法であって、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤、および(d)キレート剤を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法に関する。
【0024】
いくつかの実施形態において、これらの免疫応答を阻害または軽減する方法は、局所毒性または全身毒性の阻害に有効な量で本抗菌剤を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本抗菌剤は、サイトカインレベルもしくはケモカインレベル、サイトカイン活性もしくはケモカイン活性および/またはサイトカイン受容体のレベルもしくはケモカイ受容体のレベル、サイトカイン受容体の活性もしくはケモカイン受容体の活性の阻害に有効な量である。いくつかの実施形態において、このサイトカインもしくはケモカインのレベルまたはサイトカインもしくはケモカインの活性の阻害は、サイトカインもしくはケモカインおよび/またはその受容体の化学的阻害もしくは修飾の結果である。
【0025】
いくつかの実施形態において、この免疫応答は、ガンまたは前ガン状態、炎症性疾病、ウイルス性疾病、微生物感染、心血管疾病または糖尿病と関連する。いくつかの実施形態において、この免疫応答は、ガンまたは前ガン状態と関連する。いくつかの実施形態において、この微生物感染は、細菌、真菌、原生動物およびウイルスからなる群から選択される微生物に起因する。
【0026】
別の実施形態において、本出願は、バイオフィルム形成を阻害または軽減する方法であって、部位を特定すること、ならびに抗菌剤をこの部位に適用することを含み、本抗菌剤が、(a)水、(b)低分子量アルコール、(c)過酸化物または過酸化物生成剤および(d)キレート剤を含む方法に関する。
【0027】
いくつかの実施形態において、このバイオフィルム形成は、微生物成長または微生物感染の結果である。いくつかの実施形態において、この微生物成長または微生物感染は、細菌、真菌、原生動物およびウイルスからなる群から選択される微生物に起因する。
【0028】
いくつかの実施形態において、この対象はヒトである。
【0029】
いくつかの実施形態において、本抗菌剤を、局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは腹腔内移植、筋肉内注射もしくは筋肉内移植、(腫瘍内の)病巣内注射、皮下注射もしくは皮下移植、皮内注射、坐剤、ペッサリー、経腸適用、または鼻経路により投与する。いくつかの実施形態において、本薬剤を局所適用により投与する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本抗菌剤を、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、火傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、経口部位、骨部位、肛門部位、膣部位、頸管部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍皮膚部位、挫瘡部位、光線角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、および耳部位からなる群から選択される部位に投与する。
【0031】
この発明の概要を、抗菌性組成物および前記抗菌性組成物の使用法に関する簡略化した概念を紹介するために提供し、この概念を以下の発明を実施するための形態でさらに説明する。この概要は、特許請求の対象の基本的特徴を特定することを意図せず、特許請求の範囲を制限するように用いられるべきでない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語は、この出願が属する技術の技術者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0033】
本明細書で使用する「対象者」、「患者」および「個人」という用語は本明細書で互換的に使用され、治療される、かつ/または生体試料を得る哺乳類(例えば、ヒト)の対象者を意味する。
【0034】
本明細書で使用する「試料」という用語は、その最も広い意味で、本明細書で使用する。例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、抗体などを含む試料は、体液、細胞調製物の可溶性画分または細胞を成長させた培地、ゲノムDNA、RNAまたはcDNA、細胞、組織、皮膚、髪などを含み得る。試料の例として、生検、血清、血液、尿、血漿および唾液が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用する「安全かつ有効な量」という用語は、本明細書に記載のとおりに使用される時に、(毒性、刺激、またはアレルギー反応などの)過度の有害な副作用がなく、合理的なベネフィット/リスク比にふさわしい所望の治療応答を得るのに十分な成分の量を表す。
【0036】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、所望の治療応答を得るのに有効な、本明細書に記載の組成物の量を意味する。
【0037】
特定の安全かつ有効な量または治療有効量は、治療される特定の疾患、患者の健康状態、治療される哺乳類または動物の種類、治療の期間、(もしあれば)併用療法の性質、ならびに用いられる特定の製剤および化合物もしくはその誘導体の構造などの因子によって異なる。
【0038】
本明細書で使用する「治療」という用語は、疾病、疾病の兆候または疾病素因を有する患者への治療剤の適用もしくは投与、そのような患者から単離された組織もしくは細胞株へのその治療剤の適用もしくは投与として定義され、その疾病、その疾病の兆候、またはその疾病素因を治癒する、治す、緩和する、軽減する、変更する、治療する、回復させる、改善するかまたは影響を与えることを目的とする。例えば、疾病もしくは障害の兆候または臨床的に関連する徴候が特定されていない患者の「治療」は、予防的(preventive)または予防的(prophylactic)療法であるが、疾病もしくは障害の兆候または臨床的に関連する徴候が特定されている患者の臨床的、治療的または対症的「治療」は、一般的に、予防的(preventive)または予防的(prophylactic)療法を構成しない。
【0039】
本明細書に記載の組成物および方法と同様もしくは同等の組成物および方法を、本出願の実行または検査に用いることができる。適切な組成物および方法を以下に記載する。
【0040】
最適な治療に使用するために、およびこれらの抗菌剤に対して治療効果のある臨床療法を開発するために、活性が改善された(場合によっては、毒性が減少した)抗菌剤を特定するニーズがある。さらに、様々な関連する臨床徴候に有用な製剤のニーズがある。本出願はかかるニーズを満たし、さらに関連する他の利点を提供する。
【0041】
本出願は、医療用途における抗菌剤として働くことが意図された成分の新規の組み合わせに基づく。本出願の抗菌剤は少なくとも3つの成分を含み、本抗菌剤中の全ての成分が、長期間望ましくない効果を示すことなく、ヒトまたは動物の患者の体内に少量配置されることに適合するように設計される。本出願の抗菌剤中の個々の成分は、少なくとも低レベルで、ヒトもしくは動物の体にまたはヒトもしくは動物の体内への適用に対して安全であることが知られている。本出願は、有意水準の抗菌性(antimicrobial)作用、抗菌性(antibacterial)作用、抗真菌性作用、抗炎症性作用、抗ウイルス性作用、抗バイオフィルム作用、免疫調節作用またはこれらの特性のいくつかの組み合わせを提供する個々の成分の新規の組み合わせに関する。
【0042】
バイオフィルム形成
多くの種類の表面におけるバイオフィルムの形成は、深刻な、ますます満たされない医療問題である。バイオフィルムは、ほんの数例を上げれば、カテーテルおよびポート、移植された人工器具などの金属表面、深い傷外傷領域などの生きている組織、ならびに歯、歯肉組織および骨などの口腔組織を含む多くの表面上で形成することができる。
【0043】
バイオフィルムを占有する微生物の多くによる抗生物質耐性の進行が、有効な治療薬の設計を複雑にする。さらに、薬剤によるバイオフィルムへの浸透は大きなハードルをもたらす。バイオフィルムへの浸透の基礎をなすメカニズムおよび生じる菌耐性を説明する試みのために、2つのシナリオが仮定されている。第1は輸送ベースの説明であり、このバイオフィルムが抗生物質の拡散を防ぐかまたは減少させ、低下した濃度で標的生物に達することによって埋め込まれた微生物を保護するように作用することを示唆する。バリアのこの形態が作動することができる一つの手段は、表面またはその近くで入ってくる抗菌剤と反応し、それを異なる、致死的となり得る可能性の低い形態に変換することである。第2の説明は生理学に基づくものであり、バイオフィルムに結合した生物が、浮遊対応物と比較して、基本的に改良された代謝過程を受けており、この改良が、生物の抗生物質に対する感受性を低下させると仮定している。
【0044】
クオラムセンシング
バイオフィルムの理解の中で最も重要な進歩の中にクオラムセンシング(QS)の発見があり、この手段は、バイオフィルム形成細菌の数が特定の閾値に達した時に、それら自体の存在を伝え、バイオフィルム形成のプロセスを開始するというものである。分子レベルでの伝達「トリガー」の探索により、グラム陰性細菌の主要なクオラムセンシング伝達分子としてアシルホモセリンラクトン(AHL)のファミリーが同定された。グラム陽性菌のクオラムセンシングでは、少なくとも3つのステップのカスケードが関与するが、少なくともいくつかの種において、重要なものの1つはAHLである。グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の両方で、QSシグナルの検出は遺伝子発現を介すると現在理解されている。AHLが、センシング分子の結合部位を占有することができる時に、AHLは、バイオフィルムの菌体外多糖「スライム」の産生をもたらす反応のカスケードを開始する。
【0045】
研究例は少ないが、グラム陽性細菌において、類似のファミリーの分子がクオラムセンシング機能を提供する。少なくともいくつかの場合において、グラム陽性菌は3つのステップのクオラムセンシング経路を用いるが、AHLが関与する経路が依然として主要な機能である。少なくとも1つの場合、海洋生物のビブリオ・ハーベイにおいて、このQSシステムはよく研究されており、3つの並列システムが関与する。それはより複雑な場合であるが、AHLシステムが主要である。その特定の場合において、AHLバリアントは、N−(3−ヒドロキシブタノイル)ホモセリンラクトンである。
【0046】
AHLの全てはラクトン環を有し、その3位はN原子である。この構造変化は主にN結合鎖に生じ、サイズ、形状、鎖の長さ、飽和、およびヘテロ原子の有無が変わる。種間で変化が生じる。これらの変化の中に、N−結合側鎖における飽和度がある。場合によっては、その側鎖が環状であることが知られている。AHLがトリガー分子の活性部位に結合し、次に、バイオフィルムの主要な構成要素である菌体外多糖(EPS)の生産を開始することを示す証拠がある。その証拠の中に、一連の3−置換フラノンが、AHL結合の強力なアンタゴニストであることが示されていることが含まれる。これらのフラノンは構造的にAHLに似ており、もちろん、いくつかは自然に発生し、いくつかは合成され、いくつかは、例えば、Brで置換されたヘテロ原子であり、ほぼ同様の構造の側鎖で3位置換されている。多くの場合、このフラノン環構造内に、AHLのラクトン環に直接類似していない不飽和(すわなち、C=C結合)がある。これらの環−不飽和は、フラノンのAHLアンタゴニズムを妨げない。フラノンの主要な構造成分は、その側鎖よりもむしろその環であるため、側鎖の変化はそのアンタゴニズムに大きな変化を引き起こさないが、例えば、その環の置換基におけるハロゲン置換などの変化はそのアンタゴニズムに大きな変化を引き起こす。
【0047】
フラノン作用の第2の指標となる特徴は、このフラノンが、一般的に、完全にAHL結合を阻止することができないということである。これは、一般的に、天然のAHLとその受容体との間、または(天然ではない)フラノンの類似構造とその受容体との間で競合的結合を示すと考えられている。そのような場合は、発明者らの知識では確立されていないが、この競合的結合は可逆的でもある可能性が高い。
【0048】
この結合は、両方の場合において可逆的であると想定され、式1および式2で示されるこれらの平衡が適用される。[LuX−1イニシエータ]=1とする。
式1:LuX 1 イニシエータ+AHL⇔LuX 1−AHL
AHL=[LuX 1−AHL]/[AHL]
式2:LuX 1 インデューサー+Fur⇔LuX 1−Fur
Fur=[LuX 1−Fur]/[Fur] (式中、Kfurは約1である。)
【0049】
KfurのK値の割り当ては、同様の反応の値に基づいて、おおよそのものである。本出願の抗菌剤の設計には、アルコール(すなわち、特に、エタノール(EtOH))とAHLとの間の所望の反応を考慮に入れたが、これは、バイオフィルムの破壊に有効である。本出願の抗菌剤には、エタノール、過酸化水素(H)、およびキレート剤、特に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の都合のよい混合物が含まれる。したがって、本出願の抗菌剤は、単にその組成物に基づいて、抗バイオフィルムであると知られる少なくとも2つの特徴を有する。
【0050】
EDTAはいくつかのバイオフィルムを破壊することが報告され、エタノールは、バイオフィルムに存在する細菌および浮遊細菌を含む様々なバイオフィルム細菌に有毒である。病原性生物が破壊される場合のスペクトルを高めるために、本出願の抗菌剤は、バイオフィルム形成を阻害するかまたは防ぐ。この戦略は、バイオフィルム形成を阻害し、より高い割合の細菌を浮遊状態に維持することによって、すなわち、細菌が、抗菌剤または抗生剤による殺傷により脆弱である状態に細菌を保つことによって、発明者らの抗菌剤の殺菌スペクトルを改善する。この目標が達成され得る1つの手段はQSシステムを遮断することであり、これは、次に、浮遊状態からバイオフィルム状態への遷移を妨げる。
【0051】
AHL破壊に対する発明者らのアプローチは、以前の研究とは異なる。AHL−結合部位を特異的に占有する酵素遮断物質を開発する試みよりもむしろ、AHL自体の化学構造の変化を選んだ。AHLの含有量が、QSに必要な臨界レベルに達することができなかった場合は、全ての細菌が保護されておらず、成長力のある状態である。
【0052】
穏やかな温度、中性に近いpHにて、本出願の抗菌剤などのアルコール水溶液中でAHL分子の非酸化的破壊を可能にし得るいくつかのよく知られた反応がある。
【0053】
オプション1:ラクトン基での開環加水分解
AHL+HO<=>HO−(CH−CH−(CONH−R)−COOH
【0054】
オプション2:ラクトン基での開環エタノリシス(すなわち、エステル転移反応)
AHL+EtOH<=>HO−(CH−CH−(CONH−R)−COOEt
【0055】
オプション3:水による側鎖のアミド基の加水分解
AHL+H2O<=>3−アミノテトラヒドロフラン−2−オン+HOOC−R(一般に、脂肪酸)
【0056】
これらの反応の全ては平衡であり、その特定の平衡定数は容易に見つからない。しかし、いくつかの化学的原理を用いて、それらがバイオフィルムの防止または阻害に必要とされる侵入をもたらすかどうかを判断するために、それらの反応パラメータを推定することができる。第1に、この加水分解の平衡定数が不利に小さい場合であっても、例えば、AHL構造が、開環加水分解またはエタノリシスの熱力学または動力学によって支持されている場合は、濃度に大きな差があるため、十分な量の反応が起こり得る。AHLは、ナノモル(nM)の濃度で活性があることが知られている。一方、本出願の代表的な抗菌剤は、例えば、水中にEtOHを20〜60容積%含んでいてもよい。これらの溶液の密度は約1.0〜1.2g/mLである。これは、60%EtOH溶液が、約500〜600g/Lのエタノール、すなわち、EtOHを約11Mおよび水を約28〜30M含んでいることを示唆する。これらのレベルは、AHL濃度を10倍上回る。したがって、平衡定数は非常に好ましくないものであっても、小さいながらもおそらく十分な量の加水分解/エタノリシスが平衡状態で予想される。
【0057】
しかし、Hが、典型的には約3〜6%(約1.5M〜3.0M)のレベルで本出願の抗菌剤に存在するので、第2の相反応、すなわち、加水分解/エタノリシス生成物の酸化消耗が起こり得る。過酸化物反応は、多くの場合、一般的に反応性フリーラジカルに基づいて、高速動力学によって、および/または反応生成物の物理的回避により、例えば、ガスの排出によって促進される。したがって、そのような状況において、変更されていないAHLと水またはエタノールのいずれかの間の平衡は、その平衡パートナーが急速に別の種に変換される時に、加水分解生成物またはエタノリシス生成物へシフトすることが期待される。したがって、AHLはこのように溶液から除去されるか、またはAHLの濃度は、非常に重要なQS閾値以下のレベルにそれを保持するように低下させられる。したがって、QSは、存在する細菌の高接種量で遮断される。
【0058】
本出願の抗菌剤
本出願の抗菌剤には、アルコール、過酸化物または過酸化物生成剤およびキレート剤が含まれ、残りのバランスは水で構成されている。本出願の抗菌剤の特有の設計特性および個々の成分の組み合わせに由来する相乗効果は、単一の成分治療の落とし穴を避ける効果のスペクトルを提供する。
【0059】
本出願の抗菌剤は、アルコール、好ましくは、低分子量のアルコールを含む。それは、約1容積%〜約95容積%、好ましくは、約20容積%〜約60容積%、より好ましくは、約50容積%の濃度で存在し得る。本出願内に企図される代表的なアルコールには、鎖、環および芳香族化合物を含むエタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、フェノールおよびフェノール誘導体、フラノールおよびフラノール誘導体、ジオール、トリオール、ポリオールなどが含まれるが、これらに限定されない。エタノール、好ましくは約50容積%を含む抗菌剤が好ましい。
【0060】
本出願の抗菌剤は、過酸化物または過酸化物生成剤も含む。本抗菌剤は、約0.05容積%〜約40容積%、好ましくは、約0.05容積%〜約10容積%、より好ましくは、約1.5容積%の濃度で存在する。本出願内に企図される代表的な過酸化物または過酸化物生成剤には、過酸化水素H、過酸化カルバミド(すなわち、過酸化尿素)、ペルオキシ酢酸などのペルオキシ酸、ペルオキシ安息香酸、無水酢酸などが含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、遊離ヒドロキシル基または遊離ラジカルを発生する物質が存在するか、または過酸化水素と置き換わり得る。本出願内で企図される代表的な遊離ラジカル発生物質には、過酸化アセトン、t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ブチルジアジン(di−t−butyl diazine)((t−BU))などが含まれるが、これらに限定されない。他の遊離ラジカル発生材料には、例えば、UV光への曝露の際に、遊離ラジカルを発生するものが含まれる。Hを、好ましくは約1.5容量%含む抗菌剤が好ましい。
【0061】
本出願の抗菌剤には、さらに、キレート剤(キレーター)である1つ以上の化合物が含まれる。それらのキレート剤は、溶液のpHが特定の適用のために所望のレベルに調整される時に生じる形態の本出願の抗菌剤中に存在する。本出願内で企図される代表的なキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、およびそれらの塩、サリチル酸またはサリチル酸エステルなどの他の置換化合物などが含まれるが、これらに限定されない。EDTAを、好ましくは約5mg/mL〜約50mg/mLの濃度で、より好ましくは約10mg/mLの濃度で含む抗菌剤が好ましい。
【0062】
いかなる特定の理論によって制限されることは望まないが、キレーターは、主として、多種多様な無機イオンまたは有機イオンに強い結合を形成するように働くことが知られており、それによって、それらのイオンを様々な種類の代謝過程で使用することは比較的できないようにする。具体的には、それによって、代謝作用において特定の過程を支持するかまたは引き起こすために、前記イオンは特定のタンパク質および/もしくは酵素システムによる結合または使用を阻止される。様々なイオンを結合することが知られている代表的なタンパク質には、亜鉛(Zn+2)などの二価の陽イオンと結合する金属メタロプロテアーゼ(MMP)である。EDTAなどの薬剤のキレート効果は、(その機能に必要とされる)Zn+2イオンをMMPから奪うことにより、MMPの活性を阻害することができる。したがって、本出願の抗菌剤中の(EDTAなどの)キレート剤は、MMPによって引き起こされる組織破壊を制御するか、阻害するか、または回避することに役立ち得る。メタロカルバマーゼ(Metallocarbamases)も、二価の陽イオン、例えば、亜鉛を必要とし、EDTAまたは同様のキレーターの別の標的になり得る。他のメタロプロテアーゼも企図される。
【0063】
ジンクフィンガータンパク質は、一般的に、DNAに結合する保護タンパク質として発見されている。それらは、一般的に、1ループにつき1つの亜鉛イオンを結合する保存されたHis−Cysモチーフを有する1つ以上の短いループ(複数可)を含む。それらは、DNAヘリックスに沿って間隔を開けて挿入された1つ以上のジンクフィンガーによって所定の位置に保持されるタンパク質「グローブ」でDNA分子を包むことによりDNA保護機能を提供する。一般的に、ジンクフィンガーの形成および安定性は、EDTAなどのキレーターによって、遊離Zn+2に結合することによって、および遊離Zn+2の量を調節することによって破壊することができ、したがって、本出願の抗菌剤が、他の薬剤からのDNA保護の程度または他の薬剤への暴露の程度を変更する可能性を有する手段を提供する。
【0064】
さらに、二価イオン、特に、Mg+2イオンおよびCa+2イオンは、バイオフィルムの大部分を形成するリポ多糖マトリックスの形成および/または維持のために存在しなければならないことが知られている。さらに、EDTAは、既存のバイオフィルムを破壊するかまたは完全に分解する力を備えた溶液に溶け、少なくとも、いくつかの医学的に重要なバイオフィルム形成生物の場合において、バイオフィルム形成を遅らせるかまたは防ぐことが知られている。したがって、特に、他の活性成分と共に、本出願の抗菌剤中にEDTAもしくは他のキレーターを含むことは、バイオフィルムの阻止および根絶に相乗的に有用であることを示唆することは合理的である。
【0065】
本出願の抗菌剤が患者の血液と接触する可能性が存在する適用において、本抗菌剤は抗凝固剤を含むことが望ましい。EDTAは、例えば、採血管、例えば、Vacutainers(登録商標)(Becton Dickinson and Company,ラザフォード、ニュージャージー州)の中で抗凝固剤として現代の医療業務で利用されている場合が多い。静脈内使用は、例えば、とりわけ、重金属(例えば、鉛、Pb)中毒を軽減するための金属キレート療法の場合によく知られている。したがって、EDTAの抗凝固機能は、特に、血液接触の状況において、発明者らの本出願の抗菌剤に対する追加的な適用である。本出願の抗菌剤におけるEDTA包含の別の重要な利点は、患者の血流との接触が保証されるカテーテルロック溶液の場合である。EDTAは、一般的に、重金属中毒の治療にも利用されるIV療法と適合する。
【0066】
EDTAは、様々な形態で、例えば、純粋な酸として、または、例えば、二ナトリウム塩、または、例えば、カルシウム二ナトリウム塩、二カリウム塩、もしくは四ナトリウム塩として使用することができる。全てのこれらの場合および他の場合において、本出願の抗菌剤中のEDTAの実際のイオン組成物は、pHが調整される時に、緩衝液として働くEDTAで調整される。さらに、このEDTAは、二価の触媒分解から過酸化物を保護することによって、他の既知の場合のように、本出願の溶液の抗菌剤に保護機能を提供する。
【0067】
本出願は、EDTAが、例えば、エタノールの溶液に比較的低い溶解性を有するが、過酸化水素(H)などの過酸化物または過酸化物生成剤は、強力な共溶媒として働くことができるという予想外の発見を提供する。例えば、50%v/v以上のエタノール溶液、および生理学的pHに近いがHが存在しない溶液において、EDTAの溶解性は10mg/ml未満に制限される。しかし、Hが1〜2%ほどの低いレベルで存在する時に、10mg/mLのEDTAおよび少なくとも50〜60%v/vのエタノールの安定溶液は容易に調製され、0℃ほどの低い温度で安定である(すなわち、沈殿または他の変化が見られない)。さらに、50%v/vのエタノール溶液においてでさえ、6%H存在下でのEDTAは、27℃および0℃の両方において、40mg/mLほどの高い濃度で安定であった。この予想外の効果は、この効果が、溶液中の水の総量が一定に保たれている時でさえ起こるという事実によって証明されるとおり、Hと共に導入された追加の水の存在によるものではない。
【0068】
したがって、本出願の抗菌剤における個々の成分の特有の組み合わせは、比較的高濃度のエタノール、高濃度のEDTAおよび他の手段によって利用できない過酸化水素レベルを提供する。本出願の抗菌剤は予想外の安定性を有し、さらに、抗菌剤として機能的に強力で多用途であり得る。基本的に過酸化物およびアルコールの効果の全てを保持しながら、高エタノール濃度(50%)および高EDTA濃度(10mg/ml以上)を有する4%H溶液の安定性試験は、(室温で)14ヵ月を越える有効期限を示す。Hがもたらす沈殿に対するEDTAの予想外の安定性、およびEDTAがもたらす分解に対する過酸化水素の安定性は、通常、無生物系では見られない相乗効果の例であり、共生の関係に似ている。追加のキレーターを用いて、本出願の抗菌剤を特定の適用に適合させることができる。これらの例として、ジピコリン酸、クエン酸、ピリジン誘導体、様々なジアミンまたは置換ジアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0069】
予想外の安定性に加えて、本出願の抗菌剤中の(エタノールなどの)比較的高濃度のアルコールは、この組み合わせの中の(Hなどの)過酸化剤および(EDTAなどの)キレート剤によって与えられる特有の性質により、本質的に純然たるその殺傷力をもたらすことができる。例えば、バイオフィルムの外側(遠位)表面近くに過酸化反応剤、例えば、カタラーゼまたはペルオキシダーゼが存在することにより、Hによるバイオフィルムへの浸透が低下する可能性を示唆するいくつかの証拠、および濃度が減少したときにのみ深く浸透することができたという証拠が存在する。本出願の抗菌剤におけるエタノールの存在は、Mukergeeらによって発見された効果によるH浸透の減少の可能性を軽減することを助けることができる。いくつかの医学的状態、例えば、カンジダ・アルビカンスにおいて、エタノールの存在は、アルコール脱水素酵素(ADH)の酵素の存在および作用を介して、バイオフィルムの厚さを大いに減らすことができる。例えば、カテーテルのバイオフィルムコロニー形成は減少する。さらに、エタノールは、酵素およびその補因子であるNADHの両方に対して高濃度で存在する。エタノールの消費量は、特に、アルコール脱水素酵素の機序の1つが遊離Zn+2イオンを利用するために、厳しく制限されている。したがって、亜鉛と結合するのと同時に、ADHに対するNADH補因子を制限することでバイオフィルム構造自体を攻撃する抗菌剤、EDTAの複合作用において、総エタノールのごく一部が消費され、残りの大部分が急速にバイオフィルムに浸透するように働き、その殺傷力を与える。
【0070】
(濃厚剤またはゲル化剤などの)粘度増加剤も望ましい場合がある。代表的な粘度増加剤には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムヒドロキシアルキルセルロース(sodium hydroxyalkyl cellulose)、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。他の粘度増加剤は、それらの中で、ジメチコンおよびシリコーンゲルなどのシリコンベースの生成物が企図されるが、これらに限定されない。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、好ましくは、約0.7容積%の濃度で含む抗菌剤が好ましい。
【0071】
さらなる成分が、本出願の抗菌剤に含まれ得る。通常、特定の適用のために抗菌剤のpHを調整することが必要である。例えば、本抗菌剤が産生される時に酸性である適用において、塩基、排他的ではなく一般的に、水酸化ナトリウム溶液を加え、所望のpHまたは生理的pHにそのpHを調整することができる。もう一つの方法として、本抗菌剤が産生される時に塩基性である場合、酸、排他的ではなく一般的に、塩酸、クエン酸、または酢酸のいずれかを加え、所望のpHまたは生理的pHにそのpHを戻すことができる。いくつかの実施形態において、本抗菌剤が、いくぶんか非中性かまたは非生理的なpHであることが望ましいこともあり、そのような場合には、追加の調整が行われる。極端な場合において、中性から程遠い抗菌剤が必要となることもあり、そのような場合において、追加の緩衝液が必要になることもある。かかる緩衝液は当業者にはよく知られており、様々な用途に利用できる。
【0072】
本抗菌剤の平衡は水で構成される。
【0073】
(成分の強度などの)本抗菌剤組成は、個々の特定のニーズに合わせて調整することができる。例えば、この組成は、損傷の性質、傷の深さは、損傷後の期限が切れた期間、重感染、血管増生および患者の全身状態(例えば、ショック、腎不全、心肺不全、凝固障害)などの要因によって決めることができる。もう1つの方法として、本出願の抗菌剤は、包帯と併せて適用することができる。好ましくは、包帯材は、必要に応じて、医学的な場所へ本抗菌剤を放出する非毒性の材料であり得る。適切な包帯の材料は、損傷の性質および患者の全身状態によって決まる。
【0074】
本出願の抗菌剤は、特定の適用において、溶液形態にあることが好ましい場合もある。他の適用において、本出願の抗菌剤は、ゲル、クリーム、軟膏、点滴、注射、スプレーなどの他の形態、錠剤などの販売形態などにあることが好ましい場合もある。
【0075】
本出願の抗菌剤をボーラスとして、あるいは必要に応じて、患者の全身状態および医師の医学的配慮により一定期間の複数回投与として投与することができる。
【0076】
本出願の抗菌剤を、局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは腹腔内移植、筋肉内注射もしくは筋肉内移植、(例えば、腫瘍内)病巣内注射、皮下注射もしくは皮下移植、皮内注射、坐剤、ペッサリー、経腸適用、または鼻経路を含むが、これらに限定されない多くの手段によって投与することができる。好ましくは、本出願の抗菌剤は、局所適用によって投与される。
【0077】
本出願の抗菌剤は、(創傷領域の周りの皮膚を含む)創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、火傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変部(擦り傷)など、(白板症、上皮内ガン、口腔ガン、「口内炎」(すなわち、オープン病変)などの)経口部位、(例えば、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニによって引き起こされる骨髄炎を有する)骨部位、肛門部位、膣部位、頸管部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍皮膚部位(例えば、糖尿病性足潰瘍、褥瘡(「床擦れ」)部位)、挫瘡部位(例えば、顔、躯幹など)、光線角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位(上部、下部)、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、および耳部位ならびにカテーテルロック溶液を含むが、これらに限定されない多くの場所に投与することができる。
【0078】
本抗菌剤の適用例
本出願の抗菌剤は、微生物成長の阻害または軽減のために提供することができる。本出願の抗菌剤は、微生物成長を阻害するかまたは軽減するためにも提供することができる。
【0079】
本出願の抗菌剤は、微生物感染の阻害または軽減のために提供することができる。本出願の抗菌剤は、微生物の感染を阻害するかまたは軽減するためにも提供することができる。
【0080】
微生物成長または微生物感染は、細菌、真菌、原虫およびウイルスを含むが、これらに限定されない異なる微生物が原因であり得る。特定の出願において、微生物成長または微生物感染は、カテーテル、ステント、医療用インプラント、歯科用器具およびインプラント、補綴装置およびインプラント、ならびに心臓装置およびインプラントを含むが、これらに限定されない医療器具と関係し得る。
【0081】
本出願の抗菌剤を、対象者または患者の体内の外側にあるが、病原微生物が対象者もしくは患者の組織または対象者もしくは患者の血流へすぐに到達することができる位置における特定の重要な表面に提供することができることも企図される。かかる部位には、カテーテルルーメン、カテーテル挿入部位、およびカテーテルポートが含まれるが、これらに限定されない。静脈内装置なども使用の候補である。さらに、創傷、熱傷、皮膚病変および小胞、経口部位、頸管部位、膣部位、外陰部位、陰茎部位、肛門部位、食道部位、胃部位、胃腸部位、食道胃腸部位、腸部位などが、本出願の抗菌剤の使用目的の場所として企図される。例えば、本出願の抗菌剤は、内視鏡検査または放射線管の配置と腔内注入によってかかる部位に提供することができると企図される。
【0082】
本出願の抗菌剤が、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)または他のサイトカインもしくはケモカインと相互作用し、これらの自然発生物質と基礎となる組織との間の相互作用の程度を調節するように、本出願の抗菌剤を免疫調節剤として適用することができる。これらの自然発生物質の過剰発現は、望ましくないまたは有害な炎症および外傷もしくは病気からの治癒または回復に付随する他の障害を引き起こす可能性がある。
【0083】
したがって、本出願の抗菌剤を用いて、一般的に化学的相互作用によって、MMP、サイトカイン、ケモカイン、もしくはTNF−αの遮断薬の量、レベルまたは活性を調整するかまたは変更することができると企図される。例えば、MMPは、それらが機能するために、少なくとも1つの二価金属イオン、一般的に、Zn+2の存在を必要とするので、そのように呼ばれている。本出願の抗菌剤の一成分は、多価金属イオンと配位するかまたはキレートするように設計されるので、MMPは多価金属イオンの利用可能状態を抑える。例えば、腫瘍壊死因子(TNF)−α変換酵素(TACE)は、TNF−αを不活性細胞に結合したその前駆体から遊離するMMPおよび重要なシェダーゼ(sheddase)である。TACEの活性を、本出願の抗菌剤のキレート成分によって隔離された多価金属イオンを欠くことによって激しく破壊させることができる。これは、次いで、活性のあるTNF−αの量、レベルおよび活性ならびにTNF−αと関連する炎症促進効果を低下させる。同様に、本出願の抗菌剤の別の成分は、酵素分子のいくつかの部分に酸化機能を提供するように設計され、酵素分子が不活性化または変性される手段を提供する。この酸化機能は、酵素の構造中の硫黄含有アミノ酸を酸化させ、この変化は、電荷保有、H−結合、溶媒結合および水和の特性の変化に反映され、その結果、このタンパク質の全体的な折りたたみ構造および形状は、その触媒特性に大きな変化を引き起こす。本出願の抗菌剤の酸化成分は、(IL−8、IL−12、IL−6およびTNF−αなどの)炎症促進性サイトカインおよびケモカインに共通の硫黄含有アミノ酸を酸化させることができ、これらのタンパク質のレベルおよび活性を著しく変えることができる。
【0084】
抗菌剤成分によって提供されるキレート化および酸化機能に対する相乗効果に加えて、水和、水素結合、および全体的なバイオ環境の親水性/疎水性バランスを変更することができる溶媒相互作用をもたらす能力も有する。かかる変化は、例えば、病原性生物に重要な様々な膜を変更すること、およびおそらく、細菌の、さらに真核細胞標的、例えば、ミトコンドリアの小胞体(ER)のウイルスの標的膜を変更することにより、ウイルスまたはそれらの病原性の構造を変更することに重要であり得る。同様に、かかる変化は、原核生物およびヒトを含む多細胞生物を含む真核生物の細胞間シグナル伝達ならびに/または細胞内シグナル伝達を破壊することによって、変化をもたらすことができるという点でも重要である。ヒトを含む高等生物において、かかる化学シグナル伝達は、例えば、発ガンの段階、ガンの発生または転移の段階のいずれかにおけるガンを含む多くの疾患に関与し得る。本出願の抗菌剤によって提供される効果の宝庫は、かかる生物の化学情報伝達を制御することに価値がある。
【0085】
さらに、本出願の抗菌剤は、その求核的相互作用(nucleophilic interaction)を介してMMP、サイトカインおよびケモカインの量、レベルまたは活性を調整するかまたは変更することができると企図される。例えば、本出願の抗菌剤の中のEDTAは、金属イオンのキレート化において役割を果たすことができるだけでなく、その2つのアミノ基に起因する求核活性を発揮することもできる。EDTAの求核活性は、様々な生体分子のペプチド、特に、サイトカインおよびケモカインなどのタンパク質の破壊をもたらし、それによってそれらの機能を破壊することができる。さらに、タンパク質中に「ループ」ターンおよび「ヘアピン」ターンを作るS−S結合も求核剤により容易に破壊することができ、それによって複雑な3次元構造およびその働きを変えることができる。アミノ酸のメチオニンを含むタンパク質も、Hの酸化作用によって3次元構造の変更を受けやすく、容易に、Met−S−R基はMet−S(=O)−R基に変換され、これは、著しく異なる極性、形状および溶媒相互作用を有する。したがって、本出願の抗菌剤は、多くの生体分子の構造を変更し、破壊し、それらの活性および機能を著しく変化させることができる。例えば、MMP活性および機能のこのような破壊は、腫瘍形成、腫瘍の進行、腫瘍転移および血管新生を含む多くの下流の状態に著しく影響を及ぼし得る。MMPは、発ガン段階、発達段階または転移段階のいずれかにて、ガンの複数のステップにおける重要なプレーヤーとして十分に特徴づけられている。
【0086】
本出願の抗菌剤を用いて、一般的に、サイトカインもしくはケモカインのレベル、サイトカインもしくはケモカインの活性および/またはサイトカイン受容体もしくはケモカイン受容体のレベル、サイトカイン受容体もしくはケモカイン受容体の活性を阻害することによって、免疫応答を阻害するかまたは低下させることができる。これは、サイトカインもしくはケモカインおよび/またはその受容体の化学的阻害または修飾を含むが、これらに限定されない多くの手段によって達成できる。
【0087】
本出願の抗菌剤は、戦争の傷、外傷、熱傷または他の治療領域内の他の潜在的に有害な成分が不活性化され、組織の損傷および全身毒性が軽減される手段も提供することができる。これらの成分には、(多耐性広域スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBL)を含む)宿主のMMP、TNF−α、細菌のβ-ラクタマーゼ、カルバペネマーゼ、およびメタロカルバマーゼが含まれるが、これらに限定されない。これらの成分は、一般的に、比較的複雑なタンパク質ベースの化合物である。しかし、本出願の抗菌剤は、生化学反応のスペクトルを提供し、それらのうちの少なくとも1つ以上は、有害なプロセスの破壊および/または減弱に有効である。対象者の治癒率および/または一般的健康状態は、宿主のサイトカイン、ケモカインおよび他の炎症性分子の過剰発現による副作用の減少により改善される。全身抗菌薬の治療活性の保存は、微生物酵素の不活性化ならびに細菌および真菌の毒素の低下を防ぐことによって宿主の生存も増加させる。
【0088】
したがって、本出願の抗菌剤は、炎症性疾患を阻害または軽減するためにも提供することができる。本出願の抗菌剤は、炎症性疾患を治療するためにも提供することができる。場合によっては、炎症性疾患は微生物成長または微生物感染症と関連する。他の場合において、炎症性疾患は、医療器具と関連する。
【0089】
例えば、微生物の感染の結果として生じる炎症反応の際に、サイトカイン、ケモカインおよび他の炎症性分子の過剰発現は、さらに、下流の疾患または疾病の開始、発達、および/または進行の一因となり得る。
【0090】
例えば、慢性炎症は、心血管疾病および関連障害の発生とも関連している。冠動脈の発病における炎症パラダイムの研究は、慢性感染症が、次々に、生化学反応のカスケードを開始し、内皮損傷を引き起こし、コレステロールプラークの付着を促進し得るサイトカインおよび他の炎症促進性メディエーター(例えば、C−反応性タンパク質(CRP)、腫瘍壊死因子(TNF−α))の放出が関与し得ることを示唆する。最近の研究は、C−反応性タンパク(CRP)の基底レベルが上昇した患者は、(アテローム性動脈硬化症などの)心血管疾病、高血圧および糖尿病のリスクが増加することを示唆する。CRPは血液中に見られる急性期タンパク質であり、そのレベルは炎症に応答して上昇する。それは、一般的に、炎症および感染のマーカーとして用いられる。
【0091】
歯周病が心血管疾病のリスクを増加させ得ること、ならびに脳卒中に対するリスクもより高くなることを示す研究もある。疫学的研究は、炎症が歯周病と心血管合併症との間を結び付けるものである可能性を示唆する。興味深いことに、慢性歯周炎患者において、CRPのレベルの上昇が、アテローム性動脈硬化症発生のリスク増加と関連して検出されている。歯周治療は、CRPレベルの著しい調節をもたらすことを示し、これは心血管疾病を患う個人に利益をもたらし得る。それは、本出願の抗菌剤によって提供される歯周治療は、心血管疾病を発生しているまたは発生するリスクのある個人に有効であることが企図される。したがって、本出願の抗菌剤は、心血管疾病および関連障害を治療するかまたは心血管疾病および関連障害の発生リスクを低下させるのに有用であり得る。
【0092】
炎症活性が、インスリン抵抗性および糖尿病に重要な病原性の役割を果たす可能性も示唆されている。例えば、炎症バイオマーカーCRPは、糖尿病の個人および非糖尿病の個人におけるインスリン抵抗性および心血管リスクを監視するために用いられている。特に、インスリン抵抗性を標的とする抗糖尿病薬は、炎症、アテローム発生、ひいては心血管リスクを低下させることにより個人に利益をもたらし得るという仮説を試験する臨床試験の数が増えている。これらの臨床試験の結果は、CRPレベルが上昇した患者において、全身の血管炎症および心血管代謝症候群に対抗するために、早期のインスリン抵抗性の治療の利点を強調する。したがって、本出願の抗菌剤は、糖尿病および関連障害を治療することまたは糖尿病および関連障害の発生のリスクを低下させることに有用であり得る。
【0093】
慢性炎症が腫瘍形成に重要な役割を果たすことも示されており、このことは、炎症の負の調節が腫瘍抑制性である可能性を示唆する。例えば、全身性炎症に関与し、アポトーシス細胞死を引き起こす1つのメディエーターは、腫瘍壊死因子(TNF−α)である。TNF−αの主な役割は免疫細胞の調節である。TNF−αは、アポトーシス細胞死を引き起こし、炎症を引き起こし、腫瘍形成およびウイルス複製を阻害することができる。TNF−α産生の調節不全はガンを含む様々なヒト疾患に関係している。したがって、TNF−αなどの炎症性メディエーターの活性の調節は、炎症に媒介される発ガンを調節するのに有益な意味を持つことができる。あるいは、活性のあるTNF−αを放出するTNF−α変換酵素(TACE)の調節も、炎症に媒介される発ガンを調節するのに有益な意味を持つことができる。本出願の抗菌剤は、ガンを発生している個人または発生するリスクのある個人に有効であることが企図される。さらに、ガンの発生中の前ガン段階または転移段階のいずれかにおける様々な発ガン段階にあるガンは、本出願に含まれると企図される。
【0094】
(タンパク質53または腫瘍タンパク質53としても知られている)p53は、多細胞生物の重要な腫瘍抑制因子/アポトーシス促進性タンパク質である別のよく知られたメディエーターである。p53は細胞周期を調節するので、ガンを防ぐことに関与する腫瘍抑制因子として機能する。p53は、核因子κB(NFκB)のアンタゴニストとして働く炎症の一般的な阻害剤でもある。NFκBの抑制を介して働くp53は、その腫瘍抑制機能と十分に一致するインビボの自然免疫応答の一般的な「緩衝剤」の役割を果たすことを複数の研究が示している。これは、免疫調節が炎症に媒介される発ガンを緩和するかまたは治療するのに有効なアプローチであり得るさらなる証拠を提供する。本出願の抗菌剤は、ガンを発生しているまたは発生するリスクのある個人に有効であると企図される。さらに、ガンの発生中の前ガン段階または転移段階のいずれかにおける様々な発ガン段階にあるガンは、本出願に含まれると企図される。
【0095】
p53のアポトーシス促進効果は、ヒトパピローマウイルス(HPV)およびガンの発生にも関連付けられている。例えば、HPVタイプ16腫瘍性タンパク質、E6は、p53と複合体を形成し、p53の分解を促進する。興味深いことに、HPVタイプ16は、特定の悪性腫瘍の発生で役割を果たすようにも思われる。アポトーシスのメディエーターは、ガンの調節に関与することができ、免疫調節に有効なアプローチであり得ると企図される。
【0096】
腫瘍形成における上皮成長因子(EGF)および血管内皮増殖因子(VEGF)の役割も十分に証明されている。EGFは、細胞の成長、増殖および分化の調節に関与している。EGF/EGFR(上皮成長因子受容体)活性の上方制御は、制御されていない細胞分裂、ガンの発生の素因につながる。VEGFは、新生血管の成長、血管新生として知られるプロセスを刺激する細胞によって産生される。血管新生は腫瘍の増殖および転移に必要であり、VEGFの阻害は血管新生を損ない、転移拡散を乱す。免疫調節が、EGFおよび/もしくはVEGFの経路により開始されるかまたは媒介されるガンの発生および/もしくは進行を制御するのに有効なアプローチであり得ると企図される。興味深いことに、エタノールが、EGFR分子の構造変化および機能変化を引き起こし、EGF受容体結合の減少をもたらし、それによって、その受容体キナーゼ活性およびその生理的機能を損なうことができることを複数の研究が実証している。したがって、本出願の抗菌剤の中のエタノール、アルコール成分は、EGFR分子の活性の調節を介してガンの発生および/または進行を調節するのに有効であり得ると企図される。
【0097】
本出願は、本出願の抗菌剤が白板症(前ガン病変)または上皮内ガン段階もしくは浸潤性ガンの段階のいずれかにおけるガンの過程を変更し、著しく、急速に改善することができたことを示す。白板症の発生は、慢性歯周炎、大量の歯垢の蓄積によって引き起こされる歯周組織の慢性炎症を特徴とする炎症性疾患と診断された対象者の感染部位にあった。慢性歯周炎は、宿主反応を誘発する歯および歯肉と関連するグラム陰性およびグラム陽性の微生物のバイオフィルムに惹起され、骨および軟組織の破壊をもたらす。この疾病は、変わりやすい微生物パターンと関連する。歯周病原性細菌由来のエンドトキシンに応答して、いくつかの破骨細胞関連メディエーターは歯槽骨の破壊を標的とし、歯周靱帯などの結合組織を支持する。この積極的な組織破壊のいくつかの主要なドライバーには、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、カテプシン、および他の破骨細胞由来の酵素が含まれる。サブ抗菌用量の抗生物質が、歯周病原性細菌に対する宿主反応を変化させるために用いられているが、ドキシサイクリンまたはミノサイクリンの抗生物質を用いる局所治療は、口腔細菌叢の抵抗をもたらすだけでなく、潜在的な感染のために患者の他の身体部位にコロニー形成することができることが実証されている。クロルヘキシジンの経口投与は、より耐性のある細菌、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を選択し、これは持続的な炎症および耐性病原菌の伝染をもたらし得る。本出願は、本抗菌剤が、炎症反応の間に存在するサイトカイン、ケモカインおよび他の炎症性分子によっておそらく誘導される二次的症状である白板症状態および扁平上皮ガンの形態を阻害し、治療するのに有効であったことを実証する。
【0098】
ガンの発病におけるウイルス(およびウイルス感染)の役割は、別の重要な医学研究領域である。ヒトパピローマウイルス(HPV)は、ヒトに感染することができるウイルスのパピローマウイルスファミリーのメンバーである。HPV感染は、(子宮頸部、外陰部、膣、陰茎、肛門および中咽頭などの)皮膚または粘膜の重層上皮で発生する。「高リスク」HPV型による持続感染が、前ガン病変および浸潤ガンに進行する場合がある。HPV感染と(陰茎ガンおよび肛門ガンなどの)特定の型のガンとの間の関連を示す研究の数が増えている。さらなる複数の研究が、広範囲のHPV型と皮膚の扁平上皮ガンとの間の関連も示している。本出願の抗菌剤を用いる白板症状態(扁平上皮ガンの形態)の効果的な治療は、部分的に、全ての可能な基本的なウイルスの感染または活性に対するその効果により媒介され得ることが企図される。その効果は、全ての可能な基本的な炎症活性によっても媒介され得る。
【0099】
興味深いことに、HPVのE6およびE7タンパク質は、異形成および扁平上皮ガンの促進と関連付けられている。特に、E6タンパク質は、p53を不活性化すること、アポトーシスを阻止すること、テロメラーゼを活性化すること、細胞接着、極性および上皮分化を破壊すること、転写を変化させること、および免疫認識を低下させることを含む多くの活動に関与している。E6タンパク質は、2つの比較的大きなジンクフィンガーを構成する4つのシステインの配列を含み、そのジンクフィンガーの両方は、完全に機能するために必要である。本出願の抗菌剤は、遊離のZn+2イオンの隔離および結合におけるそのキレート機能を介してE6タンパク質のジンクフィンガー形成ならびに安定性を破壊することができると企図される。これは、HPVに媒介されるガンの阻害または治療に対する効果的な手段を提供することができる。
【0100】
ガンの発症におけるウイルスの役割の別の例は、ヒトヘルペスウイルス4(HHV−4)とも呼ばれるエプスタイン・バーウイルス(EBV)によって実証される。これは、ヘルペスファミリーの発ガン性ウイルスであることが知られており、ヒトにおける最も一般的なウイルスの一つである。このウイルスは、多発性ガン、特に、ホジキン病、バーキットリンパ腫、上咽頭ガン、およびHIVと関連した中枢神経系リンパ腫の発症に主要な役割を担っているという大きな証拠がある。上咽頭ガンの場合には、本出願の抗菌剤は、全ての可能な基本的なウイルスの感染または活性に対するその効果を介して、ガンを阻害するかまたは治療するのに有効な手段であると企図される。この効果は、全ての可能な基礎となる炎症活性によっても媒介され得る。
【0101】
本出願の抗菌剤は、さらに、大幅に重症度を軽減し、おそらく単純ヘルペスの発生から生じる「口唇ヘルペス」の過程を短縮するための手段を提供することができる。従って、本出願の抗菌剤は、ウイルス性疾患またはウイルス性疾病を阻害または軽減するためにも提供することができる。本出願の抗菌剤は、ウイルス性疾患またはウイルス性疾病を治療するためにも提供することができる。
【0102】
本発明の抗菌剤の別の企図される適用は、口または上咽頭の内側に痛みを伴う開いた傷口として存在し、粘膜の裂け目によって特徴づけられる口腔潰瘍の種類である口内炎(アフタ性口内炎)の阻害および/または治療のためであり得る。ひとたびヘルペスウイルス感染であると考えられると、口内炎の全てのクラスが様々な疾病過程の集合体であると考えられ、それぞれは、独自の方法で、主に、免疫学的機序および虚血性機序を介して、急速ではあるが自己制御式の粘膜破壊をもたらす能力を有する。一部の個人において、潰瘍は抗原刺激、特に食品)に対する二次的反応または過敏性反応であるが、他では、潰瘍は、原発性自己免疫障害(primary autoimmune disorder)である。本出願の抗菌剤は、口内炎の阻害および/または治療に有用であり得ることが企図される。この効果は、全ての基本的なウイルス感染、ウイルス活性または炎症活性の調節によって媒介され得る。
【0103】
本出願の抗菌剤は、既存の治療法との組み合わせで補助的療法として用いることができると企図される。「補助的」という用語は、「組み合わせて」または「組み合わせの」と互換的に用いられ、2つ以上の治療養生法または予防養生法は、同じ疾病の治療または予防に影響を与える場合に用いられる。例えば、本出願の抗菌剤は、ガンの管理のための補助的療法として用いることができる。本出願の抗菌剤は、抗ガン効果、ならびに化学療法または放射線療法の毒性および化学療法抵抗性などの副作用の制御または軽減の両方に相乗効果を提供することができる。本出願の抗菌剤は、所望の効果が重大な副作用に達するのに必要とされる閾値の投与量を満たすことなく得られるように、既存の治療法から投与量を調整する(例えば、減らす)手段を提供することができる。例えば、本出願の抗菌剤は、潜在的に投与量および/または放射線療法の期間を減らし、毒性の低下で有効性を増加させることにより、ガン細胞にヒドロキシルラジカルおよびDNA損傷を作る放射線療法の補助的療法として用いることができる。かかる補助的療法は既存の治療法からの同時投与、逐次投与または別個の投与の方法によって達成することができると企図される。
【0104】
したがって、本出願の抗菌剤は、微生物成長もしくは微生物感染から生じるかまたは微生物成長もしくは微生物感染と関連する疾患、または微生物成長もしくは微生物感染から生じるかまたは微生物成長もしくは微生物感染と関連する疾病を阻害または軽減するためにも提供することができる。本出願の抗菌剤は、微生物成長もしくは微生物感染から生じるかまたは微生物成長もしくは微生物感染と関連する疾患、または微生物成長もしくは微生物感染から生じるかまたは微生物成長もしくは微生物感染と関連する疾病を治療するためにも提供することができる。かかる疾患には、炎症性疾病、ウイルス性疾病およびガンまたは前ガン状態が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0105】
本出願の抗菌剤は、特に、傷、熱傷、手術部位、カテーテル挿入部位内のヒトおよび動物の患者の標的領域の化学的環境を変え、かかる部位で一般的に発見される様々な範囲の物質の範囲の存在によって細胞損傷および/または細胞毒性を防ぐための手段を提供することができる。かかる物質は、それらの濃度および他の要因に応じて、有益効果および有害効果のバランスを有する場合が多い。それらは、通常、非常に低レベル、一般的に、マイクロモルレベルまたはナノモルレベル(10−9)、場合によっては、ピコモル(10−12)レベルで存在する。したがって、本抗菌剤の成分の組み合わせは、さらに完了に向かって反応を促進する効果を有し、そうでなければ好ましくないと思われる非常に高レベルで存在するので、本出願は、かかるレベルにて一連の反応可能性を提供する。
【0106】
本出願の抗菌剤は、医療器具を用いて標的部位に提供することができると企図される。医療器具は、本出願の抗菌剤で処理するかまたは塗布することができ、かつ使い捨てカテーテルもしくは永久カテーテルまたは留置カテーテル(例えば、中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期トンネル中心静脈カテーテル、短期中心静脈カテーテル、末梢挿入中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、肺動脈カテーテル、導尿カテーテル、および腹膜カテーテル)、尿装置、血管移植片、血管カテーテルポート、創傷排液管、心室カテーテル、水頭症シャント、心臓弁、心臓補助装置(例えば、左心室補助装置)、ペースメーカーカプセル、失禁装置、陰茎インプラント、外陰部装置、小規模または一時的な関節置換、尿道拡張器、カニューレ、エラストマー、ヒドロゲル、手術器具、歯のトレーなどの歯科用器具、静脈管、呼吸管などの管類、接着剤(例えば、ヒドロゲル接着剤、熱溶解接着剤、シリコンベースの接着剤もしくは溶剤ベースの接着剤)、包帯、整形外科用インプラント、ならびに医療分野および歯科分野で用いられる任意の他の器具を含む医療器具または歯科用器具に組み込むことができる。医療器具には、人間や他の動物に挿入もしくは刺入することができるか、またはその挿入部位または刺入部位付近の皮膚などの挿入部位または刺入部位に配置することができる任意の器具も含まれる。医療器具には、さらに、手術室、緊急治療室、病室、診療所、およびバスルーム内の設備の表面が含まれる。
【0107】
本出願の抗菌剤は、性病の蔓延を防ぐのに役立ち得る殺精子剤および抗菌剤として有効であり得ることも企図される。HPV感染の予防は、ワクチンと共に、子宮頸ガン、ならびにある外陰部ガンおよび口腔咽頭ガンを顕著に軽減することができる。本出願の抗菌剤は単独で、またはペッサリー、スポンジもしくはコンドームなどの避妊の1つ以上のバリア法と組み合わせて投与することができる。
【0108】
本出願の抗菌剤は、特に、臨床環境において、細菌、真菌、ウイルスおよび寄生虫の疾病の感染を軽減するかまたは阻害するために手に適用される時に、洗浄剤/消毒剤として利用することができる。
【0109】
本出願の抗菌剤は、細菌および真菌がバイオフィルム形成者であろうとなかろうと、偶然の包含、封入によって存在しようとしまいと、またはそうでなければ、殺されるか、生き残れないようになるか、かつ/または別の方法で脅かさないようにされようとされまいと、細菌および真菌の生物によって形成されるバイオフィルムが破壊される手段ならびにそのバイオフィルムに埋め込まれた生物を提供することができる。
【0110】
本出願の抗菌剤は、細菌胞子および酵母胞子を胞子段階で完全に死滅させるか、または出芽できないことによって、もしくは、出芽後、それらの病原性の可能性が現れる前に迅速に死滅させることによって無効にさせる手段を提供することができる。
【0111】
本出願の抗菌剤は、バイオフィルムを形成する微生物によって用いられるクオラムセンシング(QS)機構を遮断させる手段を提供することができる。これらのメカニズムは生物ごとに変化し、グラム陽性生物はグラム陰性生物とは多少異なるQSシステムを用いるが、全ての場合において、QS機能を提供する分子または一連の分子がある。多くの場合、これらは、本出願の抗菌剤との反応によって潜在的に構造変化を受けやすいタンパク質分子である。加水分解、アルコール分解、エステル化、エステル交換、酸化、タンパク質の変性、または遊離イオンおよび部分的に結合したカチオンの両方のキレート化などの反応がおそらく起こり得る。加水分解的もしくはアルコール分解的な破滅または加水分解的もしくはアルコール分解的な破壊の標的である物質は、例えば、アシルホモセリンラクトン(AHL、グラム陽性バイオフィルム形成者のQS分子)、およびグラム陽性細菌の他のラクトンもしくはエステル成分である。バイオフィルム領域は、キレーターによって破壊されることも知られており、これは、バイオフィルムの形成に必要な二価、三価または他のカチオンに対するキレーターの結合効果に起因すると考えられている。1つ以上のキレーター、一般的には好まれるが、限定されないEDTAの包含は、本出願の抗菌剤にこの機能を提供する。
【0112】
カンジダ・アルビカンス
バイオフィルム研究が増え、ヒトおよび動物の病因におけるそれらの重要性が広く認識されるにつれて、脆弱性の他の点が知られるようになる。多くの場合、これらの研究は生物に固有のものであり、したがって、一般的な医療への応用のための潜在能力はいまだ知られていない。一方、いくつかは、狭い範囲の適用できる種でさえ、医学的に重要な治療に方法(window)を提供するとても重要な病原体を含む。例えば、Mukherjeeらは、酵素アルコールデヒドロゲナーゼ(Adh1p)が、アルコールベース機構を介してカテーテル表面にバイオフィルムを形成するカンジダ・アルビカンスの能力を制限することを示している。興味深いことに、Adh1p酵素はバイオフィルムの形成に必要であるが、ひとたびバイオフィルムが浮遊カンジダ・アルビカンス細胞によって産生されると、Adh1pの生産は浮遊量に対して著しく減少する。同様に興味深いことに、浮遊カンジダ・アルビカンスとバイオフィルムカンジダ・アルビカンスとの間で比較を行った時、アセトアルデヒドをエタノールに変換するAdh1pの化学的活性において著しい変化が見られる。浮遊形態において、この酵素は大量のエタノールを産生するが、バイオフィルムにおいて、アセトアルデヒド量が著しく上昇する。この知見は、バイオフィルムに結合したAdh1pは、アセトアルデヒドをエタノールに処理することができないことを意味しているようだが、この現象のメカニズムを説明していない。しかし、発明者らは、バイオフィルム中のエタノールの量を制限することによって、このカンジダ・アルビカンスはAdh1p活性を下方制御し、次に、追加のバイオフィルム成長を促進すると推測することができる。本出願の抗菌剤は高レベルのエタノールで設計され、これは、単独で、Mukherjee効果のバイオフィルム形成の減少を介してカンジダ・アルビカンスに対する有意な活性を提供する。さらに、発明者らの成分の組み合わせは、浮遊カンジダ・アルビカンスに対して迅速な活性があることがすでに示されている(未発表データ)。高レベルの浮遊細胞の死滅とわずかに残っている生存細胞によるバイオフィルム形成の予防を支援する能力のこの組み合わせは、カテーテルおよび他の移植装置のカンジダ感染に対して非常に十分な保護を患者に提供することが期待される。
【0113】
この仮説は、BaillieおよびDouglasの研究によって支持される。彼らの研究は、最大の厚さおよび密度となるようにカンジダバイオフィルムを成長させるための物理的な条件ならびにそれらの化学組成の研究を開発した。静的な条件下では、バイオフィルムマトリックスの形成は最小限であるが、液体の流れの存在によって非常に強化される。彼らは、このマトリックス形成の程度が、浮遊MICの多くの倍数を表すレベルにおいてさえ、フルシトシンおよび3つのアゾール化合物を含む異なる抗真菌薬に対するバイオフィルムの感受性に影響を及ぼさなかったことを明らかにしたことは興味深い。
【0114】
バイオフィルムマトリックスの異なる厚さ/密度による感受性の独立性は、Andesらによって検証され、カンジタにおいて、かれらは、感染を制御するかまたは除去することの重要性を示すデータも引用している。カンジダ血漿の場合の多くにカテーテルが関与し、最大の研究報告で、これらの場合の71%にカテーテルが関与する。カテーテル関連カンジダ血流感染症において、死亡率の41%が、カテーテルを保有する患者に見られた。Andesらは、カテーテルまたは他のプラスチック基板の表面材料に応じて、カンジダのバイオフィルム形成挙動に有意差を観察したとも主張している。異なるメーカーが提供する場合であっても、類似の高分子材料、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)は違いを示した。
【0115】
この研究は、原出願の全てが、液体の流れが最小限であるかまたは存在しない医療器具を含むという点で、受託者にとって特に興味深い。それらの場合において、バイオフィルムマトリックスが流れに刺激されない場合、この傾向は微生物にとって浮遊状態のままであり、したがって、溶液に対してより脆弱である。
【0116】
黄色ブドウ球菌
最近多くの医学的配慮を受けており、バイオフィルムの防止または軽減に潜在的に別の方法を提供する別の種が黄色ブドウ球菌である。特に、MRSA、すなわち、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が、特に厄介ものであり、危険である。CaiazzaとO’Tooleは、α−溶血素とも呼ばれる細胞間相互作用プロモーターのα−毒素がバイオフィルム形成に必要であることを示している。自己溶菌酵素、テイコ酸および表面タンパク質などの他の物質は、バイオフィルムコロニー形成の早期形成に不可欠であるが、α−毒素が必須である。このα−毒素は、多糖類の細胞接着(polysaccharide intracellular adhesion)(PIA)の合成に必要であると思われる。α−毒素はしばらくの間知られており(例えば、Bhakdi S,Tranum−Jensen J参照)、MW=34kDの親水性タンパク質と特徴づけられ、生物の表面膜のポア形成者であると示されている。
【0117】
黄色ブドウ球菌の軽減に本出願の抗菌剤を適用することにおいて、発明者らは、主に、過酸化水素がS−S結合の酸化的破壊、メチオニンメチルチオエーテルのスルホキシドへの酸化、遊離アミノ基および遊離水酸基の酸化によってα−毒素の構造を攻撃するので、このタンパク質の折り畳みを破壊すると期待する。かかる変化は、おそらく、α−毒素のバイオフィルム形成を促進する能力も破壊する。いくつかの類似した細胞膜構造、毒素およびバイオフィルムを有する連鎖球菌種などの他のグラム陽性細菌は、本出願の抗菌剤の作用に影響を受けやすいと期待され得る。
【0118】
大腸菌、クレブシエラ属および緑膿菌を含むグラム陰性細菌
リピドAと呼ばれることも多いリポ多糖は、膜脂質の生合成に必要な制御因子であることが知られるエンドトキシンである。リピドAは、いくつかの細菌細胞の死の際に放出される非常に有毒な成分の一つであり、場合によっては、毒素ショックを引き起こす。リピドAの構造は知られている(例えば、Jia et al.参照)。一般的なコア構造は基本的に不変であるが、多数の種に依存する変更が知られている。1つの高度に疎水性である部分は、糖環に結合したOHもしくは糖環に結合したNHのいずれかの一連の脂肪酸アシルエステルまたはアミド(通常は4つの鎖)から形成される。これらの4つの鎖は3’位に水酸基を有し、これらはアシル化もされる場合があり、通常2つの追加の鎖で分子内に疎水性の大きいゾーンを生成する。Jiaらは、水酸基の1つが、3’水酸化物にてパルミトイルエステルを形成することによって、細菌の外膜(OM)を渡る脂質輸送に関与していると報告している。このパルミトイルエステルの形成は、宿主免疫系の攻撃を防ぐため、およびエンドトキシン形成を制御するために、保護機能を提供する。
【0119】
このアプローチは、抵抗性の発達に選択圧を提供しないので、細菌による抵抗性の急激な発生を回避することができるはずである。バイオフィルム形成につながる基本過程を停止するかまたは干渉することは、バイオフィルムの生成を回避するかまたは対抗するための単純な変異または単純な一連の変異を防ぐことができる。仮定された過程が、バイオフィルム形成者、非バイオフィルム形成者および胞子を含む試験した広範囲の微生物に毒性があるとすでに示した本出願の抗菌剤の存在下で起こることに留意することも重要である。例えば、セレウス菌の胞子に対して、本出願の抗菌剤は、6ログを超えるコロニー形成単位(CFU)(未発表データ)の急速な殺胞子性低下をすぐに引き起こした。本出願の抗菌剤によって引き起こされる多数の異なる物理化学的反応のため、成長力のある生物または胞子の生存は、保護的なバイオフィルム中でさえ、繁殖することは極めてまれであるかまたはより具体的になる。さらに、遺伝的抵抗性の発達の可能性はさらに低くなる。本出願の抗菌剤の治療は、局所適用を含むことができ、全身療法で用いられる抗菌剤を含むので、本出願の抗菌剤は、一般的に用いられる全身抗菌薬に対する抵抗性を促進しない。
【0120】
バイオフィルムおよびそれらの形成と関連する他の効果は、本出願の抗菌剤の候補となる。例えば、前述したように、一度形成されたバイオフィルムは、同じ種の浮遊形態に対する治療レベルと比較して、桁違いに多く知られる抗生物質の有効性を低下させることができる。この問題は、細菌が、バイオフィルムの形成時および形成後にそれらの表現型の提示を変えるという事実によって、いくつかの細菌の場合において悪化する。例えば、緑膿菌はバイオフィルムの発達中に複数の表現型を示し、実際に、少なくとも4つの段階が他の表現型には存在しない鞭毛の発達および鞭毛の使用を含む1つのステージを含むと明らかにされた。したがって、バイオフィルム自体の物理化学的効果の存在のために、「伝統的な」抗生物質に対する潜在的な抵抗に加えて、様々な範囲の遺伝子発現における内因的変化が起こっているため、従来の抗生物質の使用または新しい抗生物質の探索を複雑にすることは明らかである。一部のゲノムの発現を変える効果は、外部のストレスまたは変異原が適用されないにもかかわらず、バイオフィルムの特定の種の中で多様性の程度を変更することもできる。BolesおよびSinghによって示されるこのような「変異体」は、緑膿菌、蛍光菌、コレラ菌、肺炎連鎖球菌および黄色ブドウ球菌のバイオフィルムによって生成される。これらの変異体は、内因性酸化ストレスにさらされる野生型(WT)生物から作製されるように思われる。抗酸化剤、例えば、N−アセチルシステインまたはL−プロリンの添加は、WTの変異体を生成する能力を低下させるかまたは除去した。そして、繰り返しになるが、変異体が少ないほど、バイオフィルムの制御がより簡単になる。したがって、場合によっては、特に、標的生物が、変異体を生成することにより、本出願の抗菌剤の本来の処理を受けている可能性がある場合に、本出願の抗菌剤を微調整することが必要になる可能性がある。CantinおよびWoodsは、過酸化水素がインビトロで塩化物イオン(Cl−1)と反応して次亜塩素酸(HOCl)を生成することができ、トブラマイシンまたはゲンタマイシンのようなアミノグリコシドの存在下で順に反応して、クロラミン種を形成することができることを示した。硫黄ベースの酸化ストレスまたは酸化的損傷のためにモデル化合物として5−チオ−2−ニトロベンゼンを用いて、彼らは、HOClを含む溶液に加えられたジメチルスルホキシド(DMSO)が、酸化から5−チオ−2−ニトロベンゼンを保護するが、DMSOはゲンタマイシンまたはトブラマイシンの存在下で同じ保護作用をもたらすことができないことを明らかにした。DMSOは、低濃度でヒトに対して最小限の毒性および他の破壊効果を有することが知られているので、DMSOおよび類似化合物は、その酸化特性を微調整するための、本出願の抗菌剤への潜在的な添加剤である。同様に、酸化生成物は親水性であることも示されている。その後、本出願の抗菌剤の場合において、混合物のエタノール画分を、親水性物質(すなわち、イオンなど)の移行のために、水相に向かって、比較的より疎水性になる。したがって、エタノール「フリード(freed)」は、バイオフィルム形成者の細胞膜または細胞壁およびそれらのEPS「要塞」を含む脂質画分により浸透し、より毒性を示すようになる。細菌のクオラムセンシング、細菌の細胞毒性および増殖ならびにバイオフィルム形成に対するさらなる有害効果が予想される。
【0121】
カテーテルが関わる静脈内注入療法において、カテーテルポートおよび内腔の内側表面の凝固回避および無菌の維持が不可欠である。そのため、フラッシュ液およびロック溶液の使用が実施の標準となっている。本出願の抗菌剤は、一実施形態において、有用なカテーテルロック溶液である。この実施形態において、成分リストにはいかなる粘度増加剤またはゲル化剤も含まず、過酸化物レベルを約0.5%〜1.0%に低下させる。
【0122】
本出願を、以下の特定の実施例によってさらに説明する。これらの実施例は、説明のためだけに提供され、決して本出願の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0123】
(実施例1):本抗菌剤の調製
本出願の抗菌剤を、エタノールなどの低分子量のアルコール、過酸化水素などの過酸化物または過酸化物生成剤、およびEDTAなどのキレート剤を様々な濃度で混合することにより調製した。
【0124】
簡単に説明すると、所望の量の乾燥したEDTA二ナトリウム二水和物を測定し、50mLのフラスコに加えた。次に、所望の量の過酸化水素(H)を、所望の量の滅菌水とともにこのEDTAに加えた。pHを監視しながら、このEDTAが完全に溶解するまで、試験液を機械的に混合した。試験液が半透明になった時点で、この試験液を所望の量の1.0M NaOHを用いて、約7.4のpHに調整した。次に、所望の量のエタノールを、完全に溶解するまで試験液に徐々に加えた(滴下した)。必要に応じて、所望の量の1.0M NaOHを用いて、得られた試験液を再び約7.4のpHに調整した。総重量が約40.00gになるまで、必要に応じて、滅菌水を加えた。
【0125】
表1は、本出願の抗菌剤中の異なる組合せから生じる特性を示す。
【0126】
【表1−1】

【0127】
【表1−2】

【0128】
表1に示すとおり、Hがない場合、EDTAのエタノールへの溶解度は非常に限られており、溶液の沈殿をもたらした。しかし、非常に低濃度であっても、Hが存在する時、室温または0℃での貯蔵後のいずれにおいても沈殿が観察されずに、エタノールにおけるEDTAの安定溶液を容易に調製した。
【0129】
必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの粘度増加剤を、本出願の抗菌剤にさらに加えることができる。簡単に説明すると、HPMCを含む抗菌剤を調製するために、2つのプレミックス、プレミックスAおよびプレミックスBを最初に調製した。3% USP H20.0gおよびEDTA二ナトリウム二水和物0.40gを含むプレミックスAでは、これらの成分を合わせ、機械的に混合し、完全に溶解させた。Dow K15M HPMC0.27gおよび無水エタノール5.00gを含むプレミックスBでは、これらの成分を合わせ、十分に混合し、滑らかなスラリーを作製した。プレミックスA溶液を激しいメカニカルスターラー(磁気)上に置き、使い捨てピペットからのプレミックスBのスラリーで処理した。ピペットに充填したスラリーが全部を示すこと、各ピペット添加からのボーラスを渦の中で最も活動的な部分に入れることを確かにするために注意を払った。澄明溶液はすぐに白濁したが、凝集しなかったかまたは目に見える分離は形成しなかった。プレミックスBの添加に約5分かかり、その後、全体の混合物をさらに1時間攪拌した。その時点の終わりには、溶液は曇るかまたはやや不透明になったが、15分間放置すると、閉じ込められた空気が脱出し、溶液が澄明になった。攪拌を再開し、無水エタノール15.0gをこの混合物に徐々に加えた。この混合物は、最初は澄明であったが、約31%のエタノール含有量で(例えば、エタノール約8.3gが加えられた時)、この混合物は次第に曇った。エタノール添加が完了した後、この混合物をさらに15分間撹拌した。得られた濃い混合物は真珠光沢の外観を有し、穏やかな振盪または単純な攪拌後に用いることができた。最初の粘度は、(Brookfield LVF2、30rpmにて)約330cpsであった。室温で放置した10日後の粘度は約270−280cpsに低下した。
【0130】
(実施例2):本抗菌剤の抗菌活性
本出願の抗菌剤の有効性を説明するために、3つの代表的な病原微生物を実験用に選択した。カンジダ・アルビカンスは真菌種であり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)はグラム陽性細菌種であり、緑膿菌はグラム陰性細菌種である。
【0131】
各試験微生物をブレインハートインフュージョン培地(BHIB)に接種し、20〜36時間、37℃でインキュベートし、最小で1ミリリットルあたり10コロニー形成単位(CFU/mL)を含む培養物を得た。希釈物をブレインハートインフュージョン寒天(BHIA)上に播いた後に、37℃で24時間インキュベートすることによって、この培養物の最初のCFU/mLを決定した。
【0132】
本出願の抗菌剤の有効性を試験するために、培養物1mLを抗菌剤溶液5mLにピペッティングで入れ、5:1の比を得た。本抗菌剤溶液と微生物のこの組み合わせをすぐにボルテックスし、所望の時間間隔で中断せずに静置させた。所望の時間間隔が完了した時点で、本抗菌剤溶液をろ過した。
【0133】
取り外し可能な膜を有するシリンジろ過装置は、いかなる微生物も捕えるように機能をするが、本抗菌剤溶液および培養液は通過させ、微生物が本抗菌剤溶液と所望の時間接触することを確実にした。0.2μmのシリンジを用いて、微生物培養液と抗菌剤溶液の混合物1mLをフィルターに通過させた。無菌の0.85%生理食塩水約2mLを用いて、フィルターからあらゆる残留抗菌剤溶液をすすいだ。その後、この膜を無菌的に取り除き、次いで、BHIA板上に置き、24時間インキュベートし、CFU決定を可能にした。この膜は、寒天から任意の生細胞へ栄養素の拡散を可能にした。この膜上での全ての成長を、単一コロニーをとって、単離のために画線し、グラム染色を行うことによって確認した。さらに、成長がない場合、拭き取り検体をこの膜から取得し、BHIA上に継代培養した。
【0134】
表2に、カンジダ・アルビカンス、MRSAおよび緑膿菌の死滅について試験した異なる抗菌剤溶液の有効性をまとめる。
【0135】
【表2−1】

【0136】
【表2−2】

【0137】
【表2−3】

【0138】
表2に示すとおり、低濃度のエタノールを含む抗菌剤溶液は、カンジダ・アルビカンスおよびMRSAの死滅に効果的ではなかった(緑膿菌死滅は試験しなかった)。しかし、高濃度のエタノールの存在下、30秒ほどの速さで、全ての暴露時間/処理時間での成長の欠如によって示されるとおり、試験した全3株の生存率は低下した。
【0139】
本出願の抗菌剤中の成分の組み合わせは、わずか30秒で、非常に高い細菌接種で致死性を示し、3つの代表的で、致命的なカテーテル関連血流感染(CRBSI)の病原体であるカンジダ・アルビカンス、MRSA、および緑膿菌の死滅に有効であった。したがって、本出願の抗菌剤は、10〜15分の処理時間で、より低い接種で高頻度に試験することで、細菌胞子または真菌胞子ではない限られた範囲の生物にのみ示す他の抗菌剤よりも優れていた。
【0140】
(実施例3):本抗菌剤の免疫調節活性
感染時に存在する炎症環境が、ガン(および前ガン)の発達および/もしくは進行を活性化するか、またはガン(および前ガン)の発達および/もしくは進行と関連するのかどうかを試験するために、慢性歯周炎にかかり、口腔内に白板症病変を示した被験者を調べた。
【0141】
この被験者は、大量の歯垢の蓄積によって引き起こされる歯周組織の慢性炎症を特徴とする炎症性疾患である慢性歯周炎と診断された。慢性歯周炎は、歯および歯肉と関連するグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌、通常、嫌気性生物または微好気性生物、宿主反応を誘発するバイオフィルムによって惹起され得、骨および軟組織の破壊をもたらす。この疾病は、変わりやすい微生物パターンと関連する。歯周病原菌由来のエンドトキシンに応答して、いくつかの破骨細胞関連メディエーターは歯槽骨の破壊を標的とし、歯周靱帯などの結合組織を支持する。この積極的な組織破壊のいくつかの主要なドライバーには、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、カテプシン、および他の破骨細胞由来の酵素が含まれる。
【0142】
慢性歯周炎と診断されることに加えて、この被験者は、右側下顎歯肉部内の上皮内ガンおよび異形成を囲んで浸潤性扁平上皮ガンを示す口腔内白板症病変を発生した。これらの病変の目視検査は、白の半透明パッチとして見えた。病変部の生検試料の組織学的検査は、基礎をなす線維性結合組織と共に大規模な非定型性を示す表面上皮の証拠を明らかにした。これらの上皮細胞は、成熟の減少、核過染症および核の密集の証拠を示した。基礎をなす結合組織は、炎症反応に典型的なリンパ球、形質細胞および好中球による浸潤を示した。この上皮は、いぼ状の過錯角化症および正常角化、不規則な表皮肥厚、および増殖性疣贅性白板症の段階、扁平上皮ガンの形態を示唆する軽度の上皮過形成を有する基部の過形成の兆しも示した。以前、この対象者の歯科医が、積極的な歯科衛生に加えて、経口抗生物質、抗真菌薬フルコナゾールおよび長期コースのクロルヘキシジン口腔リンスの継続により、慢性歯周炎と白板症を治療しようと試みた。これらの治療法の全ては、その対象者の状態を改善することまたは口腔ガンへの進行を防ぐことに著しく失敗した。
【0143】
溶液の形態の本出願の抗菌剤の単回局所適用を右下顎歯肉部に適用し、右上部の下顎歯肉部は未処置のままにした。抗菌剤で処置した領域の目視検査により、病変の大きさおよび重症度の両方に、約10時間以内に顕著な減少を明らかにした。12日を超えて、右下顎歯肉部に本抗菌剤溶液を毎日適用するかまたは1日2回適用することを継続することが、この病変をさらに約1mm減少させるのに有効であった。この病変の次の生検および組織学的検査による検査は、浸潤ガンの証拠を明らかにしなかったが、わずかな異形成が存在した。処置後、炎症性細胞の兆候は観察されなかった。対照的に、未処置の右上下顎歯肉部の病態は、浸潤性扁平上皮ガンの徴候を示し続け、処置後の手術により唯一最後に除去した。
【0144】
これらの結果は、本出願の抗菌剤が、既存の炎症性疾患の結果として発達している可能性がある浸潤性扁平上皮ガンなどの疾患の治療に免疫調節剤として有効であったことを示唆する。
【0145】
処置した領域の目視検査に加えて、処置前および処置後に、以下の身体的特徴について、この対象者の上部および下部の下顎の領域を調べた:出血、化膿、歯垢、歯石、ポケットの深さおよび臨床咬耗(clinical attrition)。この対象者の32本の歯のうちの192の部位を、以下の表3にまとめた物理的特性について調べた。
【0146】
【表3】

【0147】
臨床測定に基づいて、本出願の抗菌剤による治療は、出血(19%)、ポケットの深さ1〜3mm(33%)、臨床咬耗4〜5mm(20%)および臨床咬耗6+mm(8%)含む対象者の多くの身体的特徴を改善した。この対象者のポケットの深さ6+mmおよび臨床咬耗1〜3mmには変化はなく、この対象者のポケットの深さ4〜5mmは約5%悪化した。これらの臨床結果は、さらに、本出願の抗菌剤が、対象者の全体的な口腔衛生を改善するのに有効であり、これは強力な免疫調節剤としての役割によるものである可能性を示唆する。
【0148】
本抗菌剤溶液の効果が免疫調節であり、抗ウイルスではないことを確認するために、同じ被験者の生検試料を、ヒトパピローマウイルス(HPV)の存在について調べた。性器ガンの最も一般的な原因であるHPV−16およびHPV−18を含むHPVの異なる37種について試験する徹底的なスクリーニングは陰性であった。具体的には、ルミネックスビーズアッセイ検出システムと組み合わせたPCR増幅プロトコルを用いて、以下のHPV種を試験した:HPV6、11、16、18、26、31、33、35、39、40、42、45、51、52、53、54、55、56、58、59、61、62、64、66、67、68、69、70、71、72、73、81、82、83、84、IS39およびCP6108。ヒトのDNAは検出されたが、HPV種は生検試料中に検出されなかった。
【0149】
これらの結果は、このガンは他のウイルスの原因を排除しないが、最も一般的なタイプのウイルス感染によって引き起こされた可能性は低かったというさらなる証拠を提供する。
【0150】
(実施例4):本抗菌剤の抗ウイルス活性
本出願の抗菌剤の抗ウイルス活性も、口唇ヘルペスを発症した2人の被験者で試験した。
【0151】
2人の被験者は、唇の再発性単純ヘルペスウイルス(HSV)の臨床診断と一致していた口唇ヘルペスを発症していた。
【0152】
この第1の対象者において、溶液形態の本出願の抗菌剤の局所適用を、アウトブレイクが切れ目のない、液体で満たされた、水疱様の小胞を産生している時に、口唇ヘルペス病変部に適用した。2日間にわたって、この小疱を非常に小さいサイズまで大幅に縮小し、低下させたことが観察された。この小胞はひびの入った皮膚の小さな領域を作り出し、これも目に見える長引く影響もなく、急速に治癒した。
【0153】
第2の対象者において、溶液形態の本出願の抗菌剤の局所適用を、小胞が破裂した後にのみ口唇ヘルペス病変部に適用した。この治療対象者は、重症度が低下し、その対象者の口唇ヘルペスに典型的な治癒よりもはるかに速く治癒したことを示した。
【0154】
第1の対象者は、唇における潜在的な単純ヘルペスの突発的発生から生じる水疱の別の再発エピソードを有し、溶液形態の本出願の抗菌剤の局所適用の際に、この小胞の著しい減少および縮小が観察された。本出願の抗菌剤の継続的な局所適用により、継続的な小胞の縮小および減少をもたらし、皮膚領域の目に見える痂皮形成はなく、急速に治癒した。
【0155】
単純ヘルペスはウイルスであるので、このデータは、本出願の抗菌剤が抗ウイルス活性を示した証拠を提供する。
【0156】
本明細書で引用した刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考資料は、各参照が個々に、具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体を本明細書に記載されることと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
本明細書に特に示さない限り、またはそうでなければ明らかに文脈と矛盾しない限り、上記の要素の全ての可能な変化における任意の組み合わせは本出願によって包含される。
【0158】
本明細書に特に示さない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、本出願を記載する文脈の中で用いられる「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」という用語、ならびに同様の指示対象は、単数形および複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。
【0159】
本明細書に提供するいずれかのおよび全ての実施例、または代表的な用語(例えば、「など」)の使用は、本出願をより理解するためだけに意図され、特に示さない限り、本出願の範囲に制限をもたらさない。本明細書の用語は、できるだけ明確に述べない限り、本出願の実行に必須の任意の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0160】
1つまたは複数の要素を参照して、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(“including)」または「含む(containing)」などの用語を用いて、本明細書の全ての態様または実施形態を本明細書に記載することは、特に述べない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、その1つまたは複数の特定の要素「からなる」、「本質的になる」、または「実質的に含む」本出願の類似の態様もしくは実施形態への支持を提供すると意図される(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載される組成物は、特に述べない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、その要素からなる組成物も記載していると理解されるべきである)。とはいえ、特許請求の範囲の中の「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(“including)」または「含む(containing)」という用語は、列挙されるそれらの要素および他の要素を含むように、特許法の中のそれらの用語の従来の「オープンな」意味に従って解釈されるべきである。同様に、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists of)」、「本質的になる」、または「実質的に含む」という用語は、特許法でそれらの用語に帰する「閉ざされた」または「部分的に閉ざされた」意味に従って解釈されるべきである。
【0161】
本出願には、適用できる法律によって認められる最大限の範囲まで、本明細書に示す態様または実施形態に列挙した対象の全ての変更および同等物が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む抗菌剤。
【請求項2】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
前記アルコールが前記薬剤中、約1容積%〜約95容積%の濃度で存在する、請求項1記載の薬剤。
【請求項4】
前記アルコールの濃度が約20容積%〜約60容積%である、請求項3記載の薬剤。
【請求項5】
前記アルコールの濃度が約50容積%である、請求項4記載の薬剤。
【請求項6】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその酸類ならびにその塩を含む、請求項1記載の薬剤。
【請求項7】
前記EDTAが、約5mg/mL〜約50mg/mLの濃度で存在する、請求項6記載の薬剤。
【請求項8】
前記EDTAが約10mg/mLの濃度で存在する、請求項7記載の薬剤。
【請求項9】
前記過酸化物または過酸化物生成剤が過酸化水素(H)を含む、請求項1記載の薬剤。
【請求項10】
前記Hが、約0.05容積%〜約40容積%の濃度で存在する、請求項9記載の薬剤。
【請求項11】
前記Hが、約0.05容積%〜約10容積%の濃度で存在する、請求項10記載の薬剤。
【請求項12】
前記Hが約1.5容積%の濃度で存在する、請求項11記載の薬剤。
【請求項13】
粘度増加剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項14】
前記粘度増加剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項13記載の薬剤。
【請求項15】
前記薬剤が、微生物成長、微生物感染、炎症性疾病、ウイルス性疾病あるいは微生物成長もしくは感染に起因するかまたは関連する疾患の軽減または阻害に有用である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項16】
前記薬剤が、微生物成長、微生物感染、炎症性疾病、ウイルス性疾病あるいは微生物成長もしくは感染に起因するかまたは関連する疾患の治療に有用である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項17】
微生物成長を阻害または軽減する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項18】
微生物成長を治療する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項19】
微生物感染を阻害または軽減する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項20】
微生物感染を治療する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項21】
前記対象者がヒトである、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記微生物成長または微生物感染が、細菌、真菌、原生動物およびウイルスからなる群から選択される微生物に起因する、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤を、局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは腹腔内移植、筋肉内注射もしくは筋肉内移植、病巣内注射、皮下注射もしくは皮下移植、皮内注射、坐剤、ペッサリー、経腸適用、または鼻経路により投与する、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤を局所適用により投与する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記薬剤を、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、火傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、経口部位、骨部位、肛門部位、膣部位、頸管部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍皮膚部位、挫瘡部位、光線角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、および耳部位からなる群から選択される部位に投与する、請求項17〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、医療器具に付随する微生物成長または微生物感染を治療するためである、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記アルコールが前記薬剤中、約1容積%〜約95容積%の濃度で存在する、請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記アルコールの濃度が約20容積%〜約60容積%である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記アルコールの濃度が約50容積%である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその酸類ならびにその塩を含む、請求項17〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記EDTAが約5mg/mL〜約50mg/mLの濃度で存在する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記EDTAが約10mg/mLの濃度で存在する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記過酸化物または過酸化物生成剤が過酸化水素(H)を含む、請求項17〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記Hが約0.05容積%〜約40容積%の濃度で存在する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記Hが約0.05容積%〜約10容積%の濃度で存在する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記Hが約1.5容積%の濃度で存在する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
粘度増加剤をさらに含む、請求項17〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記粘度増加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
炎症性疾患または炎症性疾病を阻害または軽減する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項41】
炎症性疾患または炎症性疾病を治療する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項42】
ウイルス性疾患またはウイルス性疾病を阻害または軽減する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項43】
ウイルス性疾患またはウイルス性疾病を治療する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項44】
前記対象者がヒトである、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記薬剤を局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは腹腔内移植、筋肉内注射もしくは筋肉内移植、病巣内注射、皮下注射もしくは皮下移植、皮内注射、坐剤、ペッサリー、経腸適用、または鼻経路により投与する、請求項40〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記薬剤を局所適用により投与する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記薬剤を、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、火傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、経口部位、骨部位、肛門部位、膣部位、頸管部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍皮膚部位、挫瘡部位、光線角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、および耳部位からなる群から選択される部位に投与する、請求項40〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、微生物成長または微生物感染と関連する炎症性疾患もしくはウイルス性疾患または炎症性疾病もしくはウイルス性疾病を治療するためである、請求項40〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記微生物成長または微生物感染が医療器具と関連する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項40〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記アルコールが前記薬剤中、約1容積%〜約95容積%の濃度で存在する、請求項40〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記アルコールの濃度が約20容積%〜約60容積%である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記アルコールの濃度が約50容積%である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその酸類ならびにその塩を含む、請求項40〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記EDTAが約5mg/mL〜約50mg/mLの濃度で存在する、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記EDTAが約10mg/mLの濃度で存在する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記過酸化物または過酸化物生成剤が過酸化水素(H)を含む、請求項40〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記Hが約0.05容積%〜約40容積%の濃度で存在する、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記Hが約0.05容積%〜約10容積%の濃度で存在する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記Hが約1.5容積%の濃度で存在する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
粘度増加剤をさらに含む、請求項40〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記粘度増加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾患または疾病を阻害または軽減する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項64】
微生物成長もしくは微生物感染に起因するかまたは関連する疾患または疾病を治療する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項65】
前記対象者がヒトである、請求項63〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記微生物成長または微生物感染が、細菌、真菌、原生動物およびウイルスからなる群から選択される微生物に起因する、請求項63〜65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記疾患または疾病が、ガン、前ガン状態、炎症性疾病およびウイルス性疾病からなる群から選択される、請求項63〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記疾患がガンまたは前ガン状態である、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記薬剤を局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは腹腔内移植、筋肉内注射もしくは筋肉内移植、病巣内注射、皮下注射もしくは皮下移植、皮内注射、坐剤、ペッサリー、経腸適用、または鼻経路により投与する、請求項63〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記薬剤を局所適用により投与する、請求項69記載の方法。
【請求項71】
前記薬剤を、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、火傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、経口部位、骨部位、肛門部位、膣部位、頸管部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍皮膚部位、挫瘡部位、光線角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、および耳部位からなる群から選択される部位に投与する、請求項63〜70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項63〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記アルコールが前記薬剤中、約1容積%〜約95容積%の濃度で存在する、請求項63〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記アルコールの濃度が約20容積%〜約60容積%である、請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記アルコールの濃度が約50容積%である、請求項74記載の方法。
【請求項76】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその酸類ならびにその塩を含む、請求項63〜75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記EDTAが約5mg/mL〜約50mg/mLの濃度で存在する、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記EDTAが約10mg/mLの濃度で存在する、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記過酸化物または過酸化物生成剤が過酸化水素(H)を含む、請求項63〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記Hが約0.05容積%〜約40容積%の濃度で存在する、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記Hが約0.05容積%〜約10容積%の濃度で存在する、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記Hが約1.5容積%の濃度で存在する、請求項81記載の方法。
【請求項83】
粘度増加剤をさらに含む、請求項63〜82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記粘度増加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
免疫応答を阻害または軽減する方法であって、
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む治療有効量の抗菌剤を対象者に投与することを含む方法。
【請求項86】
前記量が、局所毒性または全身毒性の阻害に有効である、請求項85記載の方法。
【請求項87】
前記量が、サイトカインもしくはケモカインのレベルもしくは活性および/またはサイトカインもしくはケモカインの受容体のレベルもしくは活性の阻害に有効である、請求項85記載の方法。
【請求項88】
前記サイトカインもしくはケモカインのレベルもしくは活性の阻害が、サイトカインもしくはケモカインおよび/またはその受容体の化学的阻害もしくは修飾の結果である、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記対象者がヒトである、請求項85〜88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記免疫応答が、ガン、前ガン状態、炎症性疾病、ウイルス性疾病、微生物感染、心血管疾病または糖尿病と関連する、請求項85〜89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記免疫応答が、ガンまたは前ガン状態と関連する、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記微生物感染が、細菌、真菌、原生動物およびウイルスからなる群から選択される微生物に起因する、請求項90記載の方法。
【請求項93】
前記薬剤を、局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは腹腔内移植、筋肉内注射もしくは筋肉内移植、病巣内注射、皮下注射もしくは皮下移植、皮内注射、坐剤、ペッサリー、経腸適用、または鼻経路により投与する、請求項85〜92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記薬剤を局所適用により投与する、請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記薬剤を、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、火傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、経口部位、骨部位、肛門部位、膣部位、頸管部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍皮膚部位、挫瘡部位、光線角化症部位、炎症部位、刺激部位、胃部位、胃腸部位、食道部位、食道胃腸部位、腸部位、心臓部位、血管部位、鼻部位、鼻咽頭部位、および耳部位からなる群から選択される部位に投与する、請求項85〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項85〜95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記アルコールが前記薬剤中、約1容積%〜約95容積%の濃度で存在する、請求項85〜95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記アルコールの濃度が約20容積%〜約60容積%である、請求項97記載の方法。
【請求項99】
前記アルコールの濃度が約50容積%である、請求項98記載の方法。
【請求項100】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその酸類ならびにその塩を含む、請求項85〜95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記EDTAが約5mg/mL〜約50mg/mLの濃度で存在する、請求項100記載の方法。
【請求項102】
前記EDTAが約10mg/mLの濃度で存在する、請求項101記載の方法。
【請求項103】
前記過酸化物または過酸化物生成剤が過酸化水素(H)を含む、請求項85〜95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記Hが約0.05容積%〜約40容積%の濃度で存在する、請求項103記載の方法。
【請求項105】
前記Hが約0.05容積%〜約10容積%の濃度で存在する、請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記Hが約1.5容積%の濃度で存在する、請求項105記載の方法。
【請求項107】
粘度増加剤をさらに含む、請求項85〜105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記粘度増加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項107記載の方法。
【請求項109】
バイオフィルム形成を阻害または軽減する方法であって、
部位を特定すること;および
抗菌剤を前記部位に適用すること
を含み、
前記抗菌剤が:
(a)水;
(b)低分子量アルコール;
(c)過酸化物または過酸化物生成剤;および
(d)キレート剤
を含む方法。
【請求項110】
前記バイオフィルム形成が、微生物成長または微生物感染の結果である、請求項109記載の方法。
【請求項111】
前記微生物成長または微生物感染が、細菌、真菌、原生動物およびウイルスからなる群から選択される微生物に起因する、請求項110記載の方法。
【請求項112】
前記薬剤を、局所適用、静脈内注射、腹腔内注射もしくは腹腔内移植、筋肉内注射もしくは筋肉内移植、病巣内注射、皮下注射もしくは皮下移植、皮内注射、坐剤、ペッサリー、経腸適用、または鼻経路により投与する、請求項109〜111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記薬剤を局所適用により投与する、請求項112記載の方法。
【請求項114】
前記部位が、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、注射部位、カテーテル、カテーテル内腔、火傷部位、化学熱傷部位、放射線熱傷部位、皮膚病変、経口部位、骨部位、肛門部位、膣部位、頸管部位、外陰部位、陰茎部位、潰瘍皮膚部位、挫瘡部位および光線角化症部位からなる群から選択される、請求項109〜113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記アルコールがエタノールを含む、請求項109〜114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記アルコールが前記薬剤中、約1容積%〜約95容積%の濃度で存在する、請求項109〜114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記アルコールの濃度が約20容積%〜約60容積%である、請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記アルコールの濃度が約50容積%である、請求項117記載の方法。
【請求項119】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその酸類ならびにその塩を含む、請求項109〜114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記EDTAが約5mg/mL〜約50mg/mLの濃度で存在する、請求項119記載の方法。
【請求項121】
前記EDTAが約10mg/mLの濃度で存在する、請求項120記載の方法。
【請求項122】
前記過酸化物または過酸化物生成剤が過酸化水素(H)を含む、請求項109〜114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
前記Hが約0.05容積%〜約40容積%の濃度で存在する、請求項122記載の方法。
【請求項124】
前記Hが約0.05容積%〜約10容積%の濃度で存在する、請求項123記載の方法。
【請求項125】
前記Hが約1.5容積%の濃度で存在する、請求項124記載の方法。
【請求項126】
粘度増加剤をさらに含む、請求項109〜125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記粘度増加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項126記載の方法。

【公表番号】特表2013−518056(P2013−518056A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550177(P2012−550177)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022150
【国際公開番号】WO2011/091322
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(507119249)ハイプロテック、 インク. (6)
【Fターム(参考)】