説明

抗菌剤及び宿主反応調節剤の組み合わせを含有する口腔ケア組成物

本発明は、口腔内の細菌媒介疾患及び状態の有効な治療及び予防のために、並びに口腔に存在する病原菌に対する、及び、毒素と、内毒素と、炎症性サイトカインと、これらの病原菌によって放出される又は誘発されるメディエータとに対する宿主反応を調節するための、口腔に許容可能なキャリア中に抗菌剤と抗炎症剤との組み合わせを含む局所口腔ケア組成物を含む。本組成物及び方法の利益は、口腔の細菌感染を治療及び予防することを超えて、全身又は全身系の健康を促進することに及ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病の極めて有効な治療及び抑制のために、並びに口腔全体の健康及び全身又は全身系の健康の促進のために、治療薬の組み合わせ、特に抗菌剤と、宿主反応調節剤、特に抗炎症活性を有する薬剤との組み合わせを含む口腔ケア組成物に関する。本組成物は、口腔中の病原菌を阻害又は死滅させ、並びにこれらの病原体及びこれらの病原体によって放出又は誘発される毒素、内毒素、炎症性サイトカイン及びメディエータの存在に対する宿主反応を調節するのに特に有効である。歯周感染は、心臓血管疾患、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、重篤な呼吸器感染、早産及び低出生体重といった多くの全身症状の発生における危険因子であるため、歯周病を有効に治療及び予防することによって、本組成物は全身又は全身系の健康にも利益をもたらす。
【背景技術】
【0002】
最近の研究では、歯周病(歯肉疾患)は全身系の健康に対して、以前からわかっていたよりもはるかに深刻な脅威となり得ることが明らかになった。歯周病の一形態である歯周炎は、歯肉縁に沿った病原菌の蓄積及びその結果として生ずるこれらの病原菌に対する組織破壊性の宿主反応が原因の組織破壊プロセスである。歯周炎があると血流に細菌及び/又は細菌性毒素が放出されることもある。これらの病原菌及び/又は毒素が血流中に存在することによる宿主反応は、アテローム性動脈硬化症(心臓疾患)の発生、早産、低体重児の危険性の増大の一因となり;糖尿病、重篤な呼吸器疾患、脳卒中及び菌血症(血液中の細菌)によって健康が冒されている人々にとって深刻な脅威となる可能性がある。
【0003】
長年、細菌は心臓に影響を及ぼし得ることが知られている。現在では、細菌媒介疾患である歯周炎を有する人は心臓疾患の危険性がより高くなり、歯周炎のない患者よりも致命的な心臓発作を生じる危険性が顕著に高いことを示唆する証拠が増えている。心臓疾患はほとんどの先進国で主な死因であり、歯周炎はヒトにおける最も一般的な細菌媒介疾患の1つであり、50歳を越えるヒトでは1/3もが患っている。故に、たとえ歯周炎が心臓発作の危険性の増大にそれ程大きな影響を与えなくても、その罹患率から見れば人口全体に対する心臓疾患の危険性に大きく関与することになる。
【0004】
歯周病と心臓疾患との関連を説明するいくつかの理論が存在する。その理論の1つは、口腔病原菌が炎症を起こした歯肉を通って血液中に侵入し、冠状動脈(心臓血管)中の脂肪斑に定着し、小さい凝血を生じ、動脈血栓の一因となるというものである。研究者らは、頚動脈をブロックし、脳卒中の原因となる脂肪斑の70%が細菌を含有していることを見出した。これらの細菌の40%が元は口内にあったことが突きとめられた。冠状動脈疾患は、脂肪タンパク質の蓄積により冠状動脈壁が厚くなることが特徴である。凝血は正常な血流を遮り、心臓が適切に機能するために必要な栄養素及び酸素の量を制限し得る。これが心臓発作を導き得る。別の可能性は、歯周炎によって生じる全身系炎症メディエータの変化がアテローム斑の発生を増加させ、次いでそれが動脈壁を厚くする一因となるというものである。
【0005】
研究はまた、糖尿病を有する人は糖尿病でない人よりも歯周炎を有する可能性が高く、歯周炎が存在すると糖尿病患者の血糖値を管理するのがより困難になる可能性もあることを示唆している。歯周炎が存在すると血糖値は増大し、身体が高血糖レベルで機能する期間を長期化することになり、糖尿病患者の糖尿病性合併症の危険性が高くなることが知られている。故に、歯周炎の管理が糖尿病の管理に役立ち得る。最近の調査(「歯周病学誌(Journal of Periodontology)」(1999年11月)の「高脂血症を有する2型糖尿病患者における増大した歯肉炎及び付着喪失(Heightened Gingival Inflammation and Attachment Loss in Type 2 Diabetics with Hyperlipidemia)」)では、あまり管理されていない2型糖尿病患者は、よく管理された糖尿病患者よりも歯周病を生じる可能性が高いことを見出した。この調査では更に、糖尿病患者が重篤な歯周病を患い易い理由について説明している。この調査では、おそらく増加した血清トリグリセリドのために、あまり管理されていない糖尿病患者は、歯肉線における細菌性歯垢に対して、よく管理された糖尿病患者及び非糖尿病患者とは異なる応答をすると結論付けている。あまり管理されていない糖尿病患者はその歯肉組織に有害なタンパク質(サイトカイン)が多く、それが歯肉に破壊性の炎症を生じる。次に有益なタンパク質(成長因子)が減り、感染に対する治癒反応を邪魔する。この調査の研究主任であるクリストファー・カトラー博士(歯科医師)(Christopher Cutler, D.D.S., Ph.D.)は、「管理されていない糖尿病患者における血清トリグリセリド濃度の増大は、歯周病の指標である付着喪失及びプロービング・デプス(probing depths)の増大に関連するようである」と述べている。
【0006】
歯周炎を有する妊婦は、早産による低出生体重児を有する可能性が顕著に高くなり得ることを示唆する証拠も増えている。歯周炎及び/又は関連する血流中の病原菌/毒素の存在によって誘発される炎症反応が、胎児の健康に危険をもたらすので、妊婦の不安の原因になっている。歯周炎の存在により、妊婦の血流中に細菌性毒素が放出され、それが胎盤にまで至ることにより胎児の成長が遅れ、早産を誘発し得る炎症性メディエータの全身濃度が増大することによって胎児の発達を邪魔するようである。科学者らはまた、低レベルの感染の存在でも傷ついた細胞に影響し、堕胎を誘導するのに使用されるのと同様の炎症性物質を放出する場合があることを述べている。これにより子宮頚部が拡張し、子宮収縮が始まることがある。早産で低出生体重児になる危険性は、重篤な歯周病を有する女性では少なくとも7.5倍高くなり、5%の妊婦に生じ、1年で57億米ドルが費やされると見積もられた[S.オフェンバッカー(S. Offenbacher)、「歯周病学誌(J. Periodontol.)」、1996年10月、67巻(10補足)、1103〜13]。
【0007】
研究は更に、歯周病が、肺炎、気管支炎、気腫及び慢性閉塞性肺疾患のような重篤な呼吸器疾患の危険性を増大させる可能性があることも示唆している。
【0008】
VA歯科長期調査(VA Dental Longitudinal Study)(DLS)及び規範的な老化調査(Normative Aging Study)(NAS)は、全ての結果から歯周病と死亡率との関係について調査し、基準時での歯周の状態が死亡率の有意で独立した予測因子であると結論付けた。[「歯周病学年報(Annals of Periodontology)」、3(1)、339〜49、1998年7月]この調査は、良好な医学的健康状態にある人々に対して1960年半ばに開始され、25年を越えて続いた。口全体の平均ABL(歯根尖端周囲フィルムの全口内シリーズを用いるスケイ・ルーラ(Schei ruler)を用いて測定された歯槽骨喪失)の20%の増大毎に、被験者の死亡危険性が51%増加することがわかった。死亡危険性はまた、歯周のプロービング・デプスによって臨床的に測定される歯周状態に関連することがわかった。平均プロービング・デプスが最も大きい群の被験者は、危険性が74%高いことがわかった。
【0009】
シカゴ大学の内科医で麻酔科医のマイケル・ロイゼン博士(Dr. Michael Roizen)によれば、歯と歯肉の健康を維持すれば寿命が6.4年延びるということである。実際、米国歯周病学会(American Academy of Periodontology)(AAP)は、歯と歯肉の健康を維持することが、人が寿命を延ばすためにできることの上位にあるものとして、ビタミンの摂取、禁煙、ストレス削減と同等に重要であることに同意している。
【0010】
歯周病(「歯肉疾患」)は、歯肉と、歯をその下で支える歯槽骨を侵食する疾患を述べるのに使用される、広義の用語である。その疾患は、ヒトやイヌなどの多数の温血動物種に存在し、疾患の段階又は状態、あるいは患者の年齢に応じて、それぞれ異なる様々な症候群を呈する一連の疾患を包含する。その用語は、初めは周辺の歯肉の部位で発生して歯槽骨にも影響を及ぼし得る、いかなる炎症性疾患に対しても使用される。歯周病は、歯の周りの組織を取り巻き支える歯周組織(すなわち、歯周靭帯、歯肉、及び歯槽骨)に影響を及ぼす。歯周病の一般的な2つの段階が、歯肉炎(歯肉の炎症)と、歯周炎(歯槽骨の進行性吸収、歯の移動性の増加、及び進行段階における歯の喪失を示す歯周靭帯の炎症)である。炎症と変性状態の併発は、複雑性歯周炎と呼ばれる。歯周病の様々な態様に対して使用される他の用語は、「若年性歯周炎」、「急性壊死性潰瘍性歯肉炎」、及び「歯槽膿漏」である。
【0011】
歯周病は、以下の状態:歯肉の炎症、歯周ポケットの形成、歯周ポケットからの出血及び/又は排膿、歯槽骨の吸収、歯の緩み及び歯の喪失のうちの1つ以上を含むことがある。歯の表面上及び歯周ポケット内に形成する歯垢中に存在する細菌が歯周病の発症及び進行の両方に寄与する。したがって、歯周病を予防又は治療するためには、これらの細菌を、単純な機械的洗浄以外の何らかの手段によって抑制しなければならない。このような目的に向かって、これらの細菌を抑制するのに有効な治療用歯磨剤、うがい薬、及び歯周病を治療する方法を開発することを照準とする多くの研究がある。しかし、歯周病は細菌感染に留まるものではない。重篤な歯周病は、歯周組織及び歯肉溝における細菌に対する宿主反応、特に炎症によって媒介される間接的な作用が主要因である歯周組織の破壊を伴う。
【0012】
示されるように、歯肉炎は、発赤、膨張及びプロービング時の出血を特徴とする歯肉及び歯周組織の炎症性疾患である。無検査のままでは、歯肉炎は歯周炎にまで進行する可能性があり、付着喪失、骨破壊及び歯喪失にまで至る場合がある。嫌気性細菌は一般に歯肉炎の惹起因子と見なされ、後続の進行及び疾患重症度は、複数の炎症促進因子が関与する非特異性の細胞及び生化学的プロセスである宿主免疫反応、すなわち炎症によって決定される。
【0013】
細菌代謝産物は白血球の化学走性を誘発し、それが細菌負荷部位における炎症性細胞の集積を引き起こす。更に細菌代謝代謝物は、白血球細胞、特に単球による、炎症性メディエータの産生を誘発する。これらの中には、アラキドン酸の代謝産物、例えば、ロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサン、などの局所疾患のメディエータがある。プロスタグランジンは、組織及び歯槽骨の代謝及び破壊に特に重要であることがわかっている。実際、歯周組織内におけるプロスタグランジンの産生が、歯周組織内の歯槽骨喪失の重要なメディエータであることがわかっている。歯周が破壊された患者は、歯肉組織中及び歯肉溝滲出液中の両方でのプロスタグランジンE濃度の上昇を示す。プロスタグランジン及びトロンボキサンは、酵素カスケードによってアラキドン酸から形成されるものであり、その第1ステップは、シクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素によるシクロオキシゲン化である。シクロオキシゲナーゼを阻害することには、プロスタグランジンの形成を阻害し、その結果歯槽骨喪失を低減させる可能性があり、実際、特定のシクロオキシゲナーゼ阻害物質、特にインドメタシンやフルルビプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬が、歯槽骨吸収を顕著に低減させることがわかっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】(「歯周病学誌(Journal of Periodontology)」(1999年11月)の「高脂血症を有する2型糖尿病患者における増大した歯肉炎及び付着喪失(Heightened Gingival Inflammation and Attachment Loss in Type 2 Diabetics with Hyperlipidemia)」)
【非特許文献2】[S.オフェンバッカー(S. Offenbacher)、「歯周病学誌(J. Periodontol.)」、1996年10月、67巻(10補足)、1103〜13]
【非特許文献3】[「歯周病学年報(Annals of Periodontology)」、3(1)、339〜49、1998年7月]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
一旦炎症が発症したら、プロセスは原因物質が除かれたとしても自己伝播することがある。故に、抗菌剤、例えば第一スズ、亜鉛、CPC及び過酸化物と抗炎症剤との組み合わせは、抗菌剤を単独で用いる従来の方法よりも歯肉炎に対してより有効な治療となる。本発明は、口腔の細菌媒介疾患を有効に治療及び予防し、それによって歯周細菌が誘発する全身系の疾患を阻害するために、口腔ケア組成物にて特定の抗菌剤と抗炎症剤とのこうした組み合わせを含む。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、口腔の細菌媒介疾患に対して増強された効果を提供するために、特定の抗菌剤と、抗炎症活性を有する薬剤、すなわち口腔内で細菌感染に応答して体(宿主)により産生される1つ以上の炎症性因子に対して抗炎症活性を有する薬剤との組み合わせを含む口腔ケア組成物を包含し、この炎症性因子には、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、PGE、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β変換酵素(ICE)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ヒアルロニダーゼ、カテプシン、核因子κB(NF−κB)、及びIL−1受容体関連キナーゼ(IRAK)が挙げられる。本組成物は、病原性口腔細菌を阻害及び/又は死滅させ、並びに口腔中のこれらの病原体の存在及びこれらの病原体によって放出又は誘発される毒素、内毒素、炎症性サイトカイン及びメディエータに対する宿主反応を調節するのに有効である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、口腔内の細菌媒介疾患及び状態の有効な治療及び予防のために、並びに口腔に存在する病原菌に対する、及び毒素と、内毒素と、炎症性サイトカインとこれらに関連するメディエータとに対する宿主反応を調節するために、口腔に許容可能なキャリア中に抗菌剤と抗炎症剤との組み合わせを含む局所口腔ケア組成物を含む。本発明はまた、口腔への局所適用を含むこれらの組成物の使用方法を包含する。本組成物及び方法の利益は、口腔内の口腔細菌感染を治療及び予防することを超えて、全身又は全身系の健康を促進することに及ぶ。
【0018】
本明細書で使用するとき、「全身の健康」とは、心臓血管疾患、脳卒中、糖尿病、重篤な呼吸器感染、早産及び出産時低体重(神経/発育機能の分娩後機能不全を含む)などの重大な全身系の疾患及び状態の発生の危険性、並びに関連する高い死亡危険性の低下を特徴とする、総合的な全身系の健康を意味する。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「口腔の疾患及び状態」は、歯周病、歯肉炎、歯周炎、歯周症、成人及び若年性歯周炎、並びに口腔内組織の他の炎症状態、虫歯、壊死性潰瘍性歯肉炎、これらの疾患に起因する口内の悪臭又は口臭などの状態、ヘルペス性病変などの他の状態、並びに、骨手術、抜歯、歯周剥離掻爬手術、歯科インプラント及び歯石除去と歯根掻爬などの歯科処置後に発生し得る感染症を含む。また特に、歯槽感染症、歯の膿瘍(例えば顎蜂巣炎;顎骨髄炎)、急性壊死性潰瘍性歯肉炎(すなわちワンサン感染症(Vincent's infection))、感染性口内炎(すなわち口内粘膜の急性炎症)、及び水癌(すなわち壊疽性口内炎又は口腔内壊疽性病変)も挙げられる。口腔及び歯の感染症については、ファインゴールド(Finegold)、「ヒトの疾患における嫌気性細菌(Anaerobic Bacteria in Human Diseases)」(第4章、78〜104頁、及び第6章、115〜154頁、アカデミックプレス社(Academic Press,Inc.)、ニューヨーク、1977年)に、より詳細に開示されている。本発明の組成物及び治療方法は、歯周病(歯肉炎及び/又は歯周炎)並びに口臭の治療及び予防に特に有効である。
【0020】
本明細書で使用するとき、「局所口腔用組成物」又は「口腔ケア組成物」とは、通常の使用過程では、特定の治療薬について全身投与の目的で意図的に嚥下されるのではなく、むしろ、口腔の活性を目的として実質的に全ての歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたり、口腔内に保持される製品を意味する。
【0021】
本発明の局所口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨き粉、局所口腔用ゲル、口内洗浄剤、義歯製品、口内スプレー、ムース、フォーム、トローチ剤、経口錠剤、及びチューインガムなどの様々な形態であってもよい。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「歯磨剤」は、特に指定がない限り、ペースト、ゲル、又は液体製剤を意味する。歯磨剤組成物は、深くまで達する縞状、表面的な縞状、ペーストを囲むゲルを有する多層状又はこれらのいずれかの組み合わせのような、いずれの所望の形態であってもよい。
【0023】
本明細書で使用するとき、「安全かつ有効な量」とは、口腔の硬組織及び軟組織に安全であると共に所望の利益を提供する、活性剤の十分な量を意味する。抗菌剤又は抗炎症剤の安全で有効な量は、治療される特定の状態、治療される患者の年齢及び身体状態、状態の重症度、治療期間、併用療法の性質、使用する特定の剤形、並びに薬剤を適用するための特定のビヒクルによって異なる。
【0024】
用語「口腔に許容可能なキャリア」とは、本明細書で使用するとき、本発明の組成物に使用するための安全で有効な物質を包含する。このような物質は口腔ケア組成物における従来の添加剤であり、それらとしては、フッ化物イオン源、抗結石剤又は抗歯石剤、緩衝剤、シリカなどの研磨剤、過酸化物源などの漂白剤、アルカリ金属重炭酸塩、増粘物質、湿潤剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味系、甘味剤、キシリトール、着色剤及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において、用語「歯石」及び「結石」とは、互換的に用いられ、石化した(mineralized)歯垢バイオフィルムを指す。
【0026】
本明細書で用いられる全ての百分率は、特に指定されない限り、口腔ケア組成物の重量による。本明細書で用いられる比率は、特に指定されない限り、全組成物のモル比である。全ての測定は、特に指定しない限り25℃で行われる。
【0027】
本明細書にて、「含む」及びその変形は、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び他の成分の追加が可能であることを意味する。この用語には、「からなる」及び「から本質的になる」という用語が包含される。
【0028】
本明細書で使用するとき、単語「包含する」及びその変形は非限定的であることを意図し、挙げられた品目の詳細説明は、本発明の物質、組成物、装置及び方法においてもまた有用であり得るその他の類似の品目を除外しない。
【0029】
本明細書で使用するとき、単語「好ましい」、「好ましくは」及びその変形は、一定の条件下において一定の利益をもたらす本発明の実施形態に関する。しかし、同様の又は他の環境において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0030】
本明細書で有用な活性物質及び他の成分は、治療上及び/若しくは美容上の利益、又はそれらの想定される作用若しくは機能様式によって、本明細書中で分類又は記述され得る。ただし、本明細書に有用な活性物質及び他の成分が、場合によっては美容上の及び/若しくは治療上の1つを超える利益をもたらすこと、又は1つを超える作用様式で機能若しくは作用することができることを理解すべきである。したがって、本明細書での分類は便宜上実施されるものであり、及び成分を特に規定した用途又は列挙した用途に制限しようとするものではない。
【0031】
本発明の組成物を用いて、歯周病などの口腔の疾患及び状態を治療及び予防し、それによって、以下の健康指標(又はバイオマーカー)から明らかなように、治療されている個人の全身の健康又は全身系の健康を促進及び/又は増強する。
【0032】
1)心臓麻痺、脳卒中、糖尿病、重篤な呼吸器感染、出生時低体重児、分娩後の神経/発育機能不全の発生危険性、及び関連する高い死亡危険性の軽減;
2)動脈の脂肪線条、アテローム斑、斑形成の進行、アテローム斑上の繊維性被膜の菲薄化、アテローム斑の破裂、及びその結果生じる血液凝固症状の発生の軽減;
3)頸動脈(内膜)壁の厚み(例えば超音波技術によって評価した場合の厚み)の縮小;
4)血液循環及び体循環の口腔病原体及び/又はその毒性成分への曝露の軽減(具体的には、口腔細菌、リポ多糖体(LPS)の血中濃度、並びに/又は動脈プラーク、動脈構造、及び/若しくは遠隔臓器(例えば心臓、肝臓、膵臓、腎臓)内に見られる口腔病原体及び/若しくはその成分の発生率の低下をもたらす);
5)下部呼吸器の病原菌吸入への曝露、並びにそれに伴う肺炎の発生及び/又は慢性閉塞性肺疾患の悪化の軽減;
6)循環ヘマトクリット、ヘモグロビン、白血球数、及び/又は血小板数の変化の軽減;
7)炎症性メディエータ/サイトカイン、例えばTNF−α、IL−1、IL−6、及びCD−14の血中/血清及び唾液濃度の調節障害の発生率の低下;
8)C反応性タンパク質、フィブリノゲン、α1−抗トリプシン、及びハプトグロビンなどの急性期反応物質の血流/血清及び唾液レベルの調節障害の発生率の低下;
9)ホモシステイン、グリコシル化ヘモグロビン、8−イソ−PGF−2α、及び尿酸などの代謝調節障害の血中/血清及び唾液マーカーの調節障害の発生率の低下;
10)典型的には耐糖能障害試験によって評価するようなグルコース代謝の調節障害、空腹時に上昇する血糖濃度、及び空腹時インスリン濃度異常の、発生率の低下;並びに
11)血中若しくは血清コレステロール、トリグリセリド、LDL、HDL、VLDL、アポリポタンパク質B、及び/又はアポリポタンパク質A−1などの血中脂質の濃度の調節障害の軽減。
【0033】
理論に束縛されるものではないが、本組成物は、口内病原菌及び関連する細菌毒素、内毒素、炎症性メディエータ及びサイトカインに対する体の反応を効率的に調節することによって全身の健康又は全身系の健康を促進すると考えられる。本組成物は、口腔に存在する歯垢、歯肉炎、歯周炎、及びヘルペス性病変などの細菌媒介疾患、並びに歯科処置、例えば骨の手術、抜歯、歯周剥離掻爬手術、歯科インプラント、及び歯石除去及び歯根掻爬の後に発生し得る感染症を治療及び予防するのに有効である。口腔に存在する細菌媒介疾患及び状態を制御することによって、血流及び身体の他の部分に病原菌並びに毒素及び内毒素などの関連有害物質が広がることを予防又は最小限にする。
【0034】
口腔の感染症は、全身系の感染症を引き起こし得る。細菌は、口から血流及び体の他の部分に広がることができ、ヒトの健康を危険に曝す恐れがある。最近の研究では、歯周炎が、心臓疾患、糖尿病、重篤な呼吸器疾患、及び早産による低体重出産などの多くの重篤な状態の発生原因となる場合があることが見出されている。
【0035】
慢性の口腔感染症は、アテローム性動脈硬化症及び血栓塞栓事象を惹起し、悪化させることがある細菌毒素及び炎症性サイトカインの生物学的負荷を生ずることが現在知られている。加えて、既知の歯周病原体、ポルフィロモナス・ジンジバリスが動脈硬化斑から単離されている。歯周病が、顕著な菌血症及び血栓塞栓事象(心筋梗塞など)の発症を誘発するということもまた示されており、菌血症に続いて脳卒中が起こる可能性がある。口腔疾患に関連する特定の細菌、ストレプトコッカス・サングイス及びポルフィロモナス・ジンジバリスは、血小板がこれらの細菌と接触したときに凝集する原因となるということが実証されている。その結果生ずる細菌誘導型の血小板凝集体は、急性心筋梗塞又は脳卒中の原因である塞栓を形成する可能性がある。
【0036】
歯周病の一般的な形態である歯周炎は、バイオフィルムとして歯根表面に存在するグラム陰性菌の小さい群によって生じると考えられている。バイオフィルムは、マトリックスに含まれる細菌群が互いに及び/又は表面若しくは中間面に定着したものとして定義される。専門家らは、最近、全てグラム陰性及び嫌気性である3つの種が、これらのバイオフィルムに存在し、ほとんどの歯周炎の原因になっていると結論付けた。これらは、ポルフィロモナス・ジンジバリス、バクテロイデス・フォルシサス及びアクチノバシルス・アクチノミセテムコミタンスであり、後者は大抵の若年性歯周炎に見られる。バイオフィルム中の細菌は、リポ多糖体(LPS)の豊富な小胞を出す。細菌及び細菌物質、特にLPSは、付着上皮及びポケット上皮を横断して結合組織及び血管に侵入し、免疫性炎症を引き起こし、持続させる。血液及び血清のあらゆる成分は結合組織に入る。B−及びT−リンパ球、血漿細胞及びマクロファージが、歯周組織に出現する。LPSは単核細胞及びマクロファージと相互作用し、細胞を活性化して多量の炎症促進性サイトカイン(IL−1、TNFα、PGEなど)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を合成する。MMPは、歯肉及び歯周靭帯の結合組織を破壊し、IL−1、TNF−α、及びPGEは骨の破壊を媒介することがわかっている。歯周炎は、いくつかの方法で全身系疾患への感受性を増強し得る。バイオフィルムからのLPS及び生存グラム陰性菌並びに炎症を起こした歯周組織からのサイトカインは病原性の量で循環系に侵入する場合がある。
【0037】
1つの態様において、本発明は、ヒト及び動物のための局所口腔用組成物に関し、それらには、治療用洗浄剤、特に口内洗浄剤;歯磨剤、例えば練り歯磨き、歯用ゲル、及び歯磨き粉;非研磨剤ゲル;口内スプレー;ムース;フォーム;チューインガム、トローチ剤、及び口臭予防用ミント;歯科用溶液及び洗浄溶液;歯科用器具、例えばデンタルフロス及びテープ;並びに栄養補助食品、餌、飲料水添加剤、チュー又はトイなどのペットケア製品が挙げられ、
(a)マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、PGE、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β変換酵素(ICE)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ヒアルロニダーゼ、カテプシン、核因子κB(NF−κB)、及びIL−1受容体関連キナーゼ(IRAK)から選択される少なくとも1つの宿主炎症促進性因子に対して阻害活性を有する1つ以上の第1の活性剤と;
(b)バイオフィルム形成と、バイオフィルム定着と、ジンジパイン、METアーゼ及びシスタリシン(Cystalysin)から選択される細菌酵素とから選択される細菌性病原因子の少なくとも1つに対して阻害活性を有する1つ以上の第2の活性剤との組み合わせを含む。
【0038】
少なくとも2つの異なる活性剤の組み合わせにより、細菌媒介口腔状態を治療及び予防し、口腔細菌媒介全身系疾患を抑制するための増強された効果を提供する。
【0039】
第1の活性剤は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、PGE、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β変換酵素(ICE)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ヒアルロニダーゼ、カテプシン、核因子κB(NF−κB)、及びIL−1受容体関連キナーゼ(IRAK)などの、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の主要な宿主炎症促進性因子に対する活性によって示されるような抗炎症活性を有する。高濃度のこれらの因子は、歯肉炎及び歯周炎に関連し、これらの成分が宿主での炎症の主要なメディエータであることを示している。
【0040】
MMP(種々のサブタイプ、例えばMMP1、2、3、8、9、13など)は、組織破壊及び組織修復に寄与する宿主細胞外マトリックスプロテアーゼである。COX酵素は、アラキドン酸のプロスタグランジンへの変換を触媒し、血管拡張、発赤、腫れ及び痛みを生じる。IL−1βは、炎症促進性サイトカインであり、それがPGE及び種々のMMPの合成を誘導し、歯槽骨の破壊に関与するようである。IL−1βは、より大きな前駆体ペプチドとして合成され、活性形態になるにはICEによる分裂が必要である。故にICEはIL−1βの産生のための処理酵素である。IRAKは、IL−1βから下流のシグナル分子である。誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)は、細胞毒性であり得る多量の一酸化窒素の生成に関与する酵素である。TGF−β1は、細胞増殖を促進し、炎症の他の主要なメディエータと共に悪化した宿主反応を調節する成長因子の1つであることが示唆されている。ヒアルロニダーゼは、歯垢誘発歯肉炎に有益な効果を有する抗炎症及び抗浮腫性のグリコサミノグリカンである内因性のヒアルロン酸(ヒアルロナン)の分解を触媒する。故にヒアルロニダーゼの阻害は、ヒアルロン酸の内因性レベルを増大させる。歯肉炎及び歯周炎の主要な特徴は、周囲の結合組織のコラーゲン性マトリックスの破壊である。カテプシンは、破壊部位に隣接する細胞から放出されるタンパク質分解酵素である。核因子−κB(NF−κB)は、LPSによって刺激される転写因子であり、複数のサイトカイン及びMMPの発現を刺激し、それによって複数の炎症性経路を制御する。
【0041】
本質的に炎症が複因子プロセスであるので、好ましい抗炎症剤は、少なくとも2つの異なる炎症促進性因子を抑制するものである。3つ以上のこれらの炎症促進性因子を抑制する薬剤は更により有効である。あるいは、薬剤の組み合わせを使用して互いに補えば、複数、好ましくは大部分又は全ての炎症促進性因子に対する活性を提供できる。
【0042】
可能性のある薬剤の活性が、歯肉炎及び歯周炎に関与することが知られている精製宿主及び細菌酵素を阻害する能力に関して試験された。精製されたヒトのMMP(バイオモル・インターナショナル(Biomol International)から供給)及びICE(カルバイオケム(Calbiochem)から供給)の阻害は、それぞれ蛍光発生基質Mca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH(バイオモル・インターナショナル(Biomol International))及びN−アセチル−Trp−Glu−His−Asp−AMC(バイオモル・インターナショナル(Biomol International))の開裂によって測定された。活性は、C.G.ナイト(C.G. Knight)らの「FEBSレターズ(FEBS Lett.)」(296巻、263頁、1992年)に記載される蛍光試験を用いて測定された。
【0043】
シクロオキシゲナーゼCOX1及び2の阻害は、製造元の説明書に従ってケイマンCOXスクリーニング試験キット(Cayman COX Screening Assay Kit)(ケイマン・ケミカル(Cayman Chemical))を用いて測定された。
【0044】
TGF−β活性は、ヒト胎児由来腎臓HEK293細胞にて発現するSmad結合要素(SBE)の制御下、β−ラクタマーゼレポーター遺伝子を用いて測定された。TGF−β活性の阻害は、TGF−β−誘導β−ラクタマーゼ活性の減少によってモニターされた。β−ラクタマーゼ活性は、蛍光共鳴エネルギー転移試験を用いて2つのフルオロプローブ(クマリン及びフルオレセイン)を含有する蛍光発生基質の開裂によって測定された。
【0045】
IL−1R(受容体)活性は、ヒト内皮ECV304細胞にて遺伝子レポーター試験を用いて測定された。レポーター遺伝子ICAM−1/ルシフェラーゼは、IL−1Rによって活性化される2つの転写因子NF−κB及びAP−1によって調節されるICAM−1プロモーターの制御下にある。IL−1R活性阻害は、IL−1β−誘導ルシフェラーゼ活性の減少によってモニターされた。ルシフェラーゼ活性は、ATP依存化学発光試験を用いて測定された。
【0046】
PGE形成の阻害は、ヒト上皮A549細胞におけるIL−1β誘導−PGE放出の減少によって測定された。組織培養物の中に放出されたPGEの量は、製造元の説明書に従ってPGE均一時間分解蛍光(HTRF)キット(シスバイオ(CisBio)から供給)を用いて測定された。
【0047】
試験により抗炎症活性を有する薬剤を同定したが、それらには、ビタミン化合物、例えばリボフラビン、リボフラビンホスフェート、葉酸、シアノコバラミン(ビタミンB12)、及びメナジオン(ビタミンK3);クルクミノイド、例えばクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスメトキシクルクミン及びテトラヒドロクルクミン;シンナムアルデヒド、桂皮酸、グアヤコール及び誘導体、例えばオイゲノール、イソオイゲノール、ジヒドロオイゲノール、バニリルブチルエーテル、バニリン(4−ホルミル−グアヤコール)、5−プロペニルグエトール、4−エチル−2−メトキシフェノール、4−アリル−2−メトキシフェノールアセテート、及び4−メチルグアヤコールなどの活性化合物を含有する香辛料及び植物、例えばクローブ、桂皮、カッシア、生姜、バジル、コリアンダー、シラントロ及びオールスパイスからの油及び抽出物;チモール、カルバクロール及びカルバクリルエチルエーテルを含有するタイム、オレガノ及びセージの油又は抽出物;インドセンダンオイル;フラボノイド及びフラボン、例えばバイカレイン、バイカリン、ワゴノシド、オウゴニン、及びケルセチン;茶、クランベリー、ザクロ及びオーク樹皮のような植物種からのフェノール成分、例えばカテキン、ガロカテキンガレート、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)、テアフラビン、テアルビジン、アントシアニジン/プロアントシアニジン及びアントシアニン(例えば、シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、マルビジン及びペツニジン);タンニン酸;没食子酸;エラグ酸;エラジタニン;ヘキサミジン;及びベルベリンが挙げられる。
【0048】
代表的な有用薬剤の活性を示す試験結果を以下の表Iに要約する。データが報告されていない箇所は、化合物/活性物質が活性を有さないことを示しているのではなく、化合物/活性物質が活性について試験されなかったことを示す。
【表1】

抽出物
オレオレジン
【0049】
例えばMMPの阻害物質としての活性を有するものとして同定された追加の有用な薬剤には、メンチルアントラニレート(日焼け止め剤としてリップクリームにて商業的に使用される);ヘキシルイソブチレート(ブドウ香味料);4−ヒドロキシベンズアルデヒド(バニラ抽出物の香味成分);レスベラトロル(赤ワインの成分、ブドウの皮に見出される)、イソリキリチゲニン(isoliquertigenin)(カンゾウに見られる)、アピゲニン(カミツレに見られる)、プラトール(ムラサキツメクサに見られる)、4’−メトキシフラボン、8−メチル−4’−メトキシフラボン及び6−メチル−4’−メトキシフラボンなどの広範囲のポリフェノールが挙げられる。阻害活性を有する追加の薬剤には:iNOSに対するブラジリン及びケルセチン;ヒアルロニダーゼに対する緑茶及びエキナシア抽出物;カテプシンに対する桂皮;NF−κBに対するクルクミン、カフェイン酸フェネチルエステル、ビープロポリスの調製物、及びシリマリン;並びにIRAKに対するクルクミン、フィセチン、ケルセチン、ルテオリン、アピゲニン及びジオスメチンが挙げられる。抗炎症活性を有する追加の薬剤には、種々の広範な植物誘導化学物質;フラボノイド、イソフラボノイド及びその他のフェノール成分(例えば、ミリセチン、ケンフェロール、ルテオリン、ヘスペリチン、ナリンゲニン、プテロスチルベン、ルチン、ローズマリー酸、グラブリジン);カロチノイド(例えば、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−カロチン);リモノイド及びテルペノイド(例えば、リモネン、ゲラニオール、ファルネソール);フィトステロール(例えば、β−シトステロール、スティグマステロール、カンペステロール、ウルソル酸);アリシン;クロロゲン酸;フェルラ酸;エモジン;イソチオシアネート(例えば、スルホラファン);N−アセチルシステイン;フィチン酸;及びベタインが挙げられる。
【0050】
本発明の1つの利益は、大部分の効能のある活性剤の多くが摂取に安全であることが既に知られている天然物質であることである。例えば、抗炎症活性能を有する上記のポリフェノールの多くは、ヒトが定期的に消費する茶(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis))の天然成分である。本明細書のポリフェノールを提供するのに好適な茶の一部の例には、赤茶、ウーロン茶、バオチャンティ(baozhong tea)、杭州茶(hangzhou tea)、及び緑茶が挙げられるが、これらに限定されない。更に、本物質は、抗生物質ではなく、有益な口腔微生物叢を害することなく、歯周病の進行を改善する。例えば、茶ポリフェノールは、有益な微生物(例えば、ビフィドバシルス(Bifidobacillus))の成長を更に増強することができる。現在実際に使用される活性物質(例えばクロロヘキシジン、ドキシサイクリン及びメトロニダゾール)は、より広範囲の有機体、すなわち有害な細菌及び有益な細菌の両方を死滅させる可能性があると共に、菌耐性問題にも効能を有する抗生物質である。
【0051】
本発明に好ましい抗菌剤は、歯周病に関与するグラム陰性嫌気性細菌、例えばP.ジンジバリス、B.フォルシサス、A.アクチノミセテムコミタンス、T.デンチコラ(T.denticola)、T.ソクランスキー、F.ヌクレアタム(F. nucleatum)、及びP.インターメディア(P. intermedia)に対して選択性を有するものであり、並びに他の口腔菌株、例えばL.アシドフィラス(L.acidophilus)、L.カセイ(L.casei)、A.ビスコサス(A.viscosus)、S.ソブリナス(S.sobrinus)、S.サングイス(S.sanguis)、S.ビリダンス(S.viridans)、及びS.ミュータンス(S.mutans)に対するものである。本発明の組成物は、口腔の局所治療可能な感染症及び疾患を生じる細菌代謝を死滅させ、及び/又は変更し、並びに/あるいはこれらの微生物の成長を抑制するのに有効である。
【0052】
P.ジンジバリスは、ヒト及びコンパニオンアニマルにおける大抵の歯周病の原因であるグラム陰性嫌気性生物である。P.ジンジバリスは、歯肉溝を感染させ、ジンジパインとして知られるシステインプロテアーゼなどの多数の病原因子を産出する。ジンジパインは、キノゲン(kinogens)、補体因子、免疫グロブリン(immunoglobins)などのいくつかの免疫系分子に作用し、歯肉溝への流体流入、好中球動員、及び出血を生じる。最終的な結果は、COX2誘導、プロテアーゼ発現(MMP)、プロスタグランジン上昇及び活性酸素上昇により特徴付けられる宿主炎症反応を生じ、結果として組織損傷及び骨吸収を引き起こし、最終的に歯が脱離することになる。免疫調節タンパク質におけるジンジパインのタンパク質分解作用の阻害は、炎症性宿主反応及びそれに続く組織破壊を減らすことになるはずである。故に口腔ケア剤の抗菌活性は、ジンジパイン及び他の細菌酵素、例えば硫黄含有アミノ酸を分解し、口臭又は悪臭を導く揮発性イオウ化合物(VSC)、例えば硫化水素又はメチルメルカプタンを生じることに関与するMETアーゼ及びシスタリシンに対する阻害活性に関して評価されてもよい。
【0053】
R−ジンジパインの活性は、蛍光発生基質Z−Phe−Arg−AMC・HCl(カルバイオケム(Calbiochem))の開裂によって測定された。ポルフィロモナス・ジンジバリスのR−ジンジパインの組み換え型触媒ドメインは、大腸菌から発現され、精製された。R−ジンジパインの活性は、蛍光試験により測定された。
【0054】
METアーゼ活性は、タカクラ(Takakura)ら、「アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)」327巻:233〜240頁(2004年)に記載される分光測光法を用いて、ヒドラジンへのカップリングにより定量されるL−メチオニンのケトブチレートへの変換により測定された。シスタリシン活性は、ラクテートデヒドロゲナーゼを介するNADHの減少に至るピルベート産生のカップリングによって測定した。
【0055】
本薬剤の抗菌活性の別の態様は、バイオフィルム形成及び分散又は破壊に関する。バイオフィルムは、微生物が表面上に定着し、多糖類を含むマトリックスの生成に関わる遺伝子を活性化するときに形成される。このマトリックスは、バイオフィルム細菌を殺生物剤から保護し得る。クオラムセンシング信号と呼ばれる分子は、バイオフィルム形成プロセスの一部分を始動及び調整するのに役立つ。細菌は、絶えず低レベルの信号を分泌し、細菌表面上の受容体を通してか又は内部的にかのどちらかで信号を感知する。信号濃度が臨界閾値に到達できるのに十分な細菌が存在する場合、受容体は行動変化を始動する。一旦これが起きると、細菌は共同行動をとることにより反応し、例えばバイオフィルムを形成し、病原菌の場合には毒素のような病原因子を発現する。細菌は、それら自体の種の仲間に伝達することに加えて、異種間の伝達も行い、その結果バイオフィルムは複数の細菌種を含有する可能性がある。歯及び口腔表面に定着したバイオフィルムは、歯垢及び歯石を導き、最終的に歯周病及び他の口腔感染症を生じる。有用な抗菌剤は、細菌の定着を予防し、口内でのコロニー形成、及びバイオフィルムへの熟成を予防するものである。バイオフィルム形成を阻害及び/又はバイオフィルムを分散させる薬剤の活性は、出願人に譲渡されたPCT国際公開特許第02/088298A1号に記載されるような試験方法を用いて測定された。バイオフィルムの制御は、試験化合物の非存在下での治療から生じる量と比較して、試験化合物の存在下での治療から生じるバイオフィルムの量を分析することによって測定される。治療の結果として存在するバイオフィルムの量の変化は、バイオフィルムのエキソポリサッカライドマトリックスへの作用、又はバイオフィルム中の微生物への作用、又はそれらの間の作用による可能性がある。例えば、バイオフィルムの形成又は分散は、細胞及び細胞外多糖類の両方を染色する定量的な全バイオフィルム染色染料としてクリスタル・バイオレットを用いて測定されてもよい。
【0056】
本発明の実施にて特に有用な抗菌剤は、1つ以上の上記細菌酵素及び/又はバイオフィルムに対する阻害活性を示すものである。好ましい抗菌剤は、複数の阻害活性を有するものである。代表的な有用薬剤の活性を示す試験結果が以下の表IIに要約される。データが報告されていない箇所は、化合物/活性物質が活性を有さないことを示しているのではなく、化合物/活性物質が活性について試験されなかったことを示す。
【表2】

【0057】
好適な抗菌剤には、塩化セチルピリジニウム(CPC)、第一スズイオン剤、亜鉛イオン剤、銅イオン剤、鉄イオン剤、トリクロサン、アスコルビルステアレート;オレオイルサルコシン、ジオクチルスルホスクシネート、アルキルサルフェート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
抗菌活性に加えて、上記の選択された抗菌剤は、上記の表Iにて示されるような抗炎症剤についての同じ試験を用いて示されるように、抗炎症活性を有することを見出した。例えば、CPCは、MMP13>MMP1>MMP9>MMP3>MMP2の効力順序にて、いくつかのMMPサブタイプを阻害することが示された。CPCはまた、シクロオキシゲナーゼCOX1及びCOX2並びにインターロイキン変換酵素(ICE)を包含する他の宿主炎症促進酵素も阻害した。フッ化第一スズも、MMP13>MMP3>MMP2>ICE>MMP9>MMP1の効力順序にて、活性を有することが示された。これらの知見は、CPC及びスズなどの口腔活性物質の抗歯肉炎効果が、それらの抗菌作用に加えて、それらの抗炎症作用及び組織破壊の予防によって部分的に媒介されることを示す。
【0059】
更なる発見は上記の抗炎症剤はまた、細菌性病原因子の阻害についての生体外試験を用いて測定されるように、いくらかの抗菌活性も有するということである。例えば、リボフラビン、リボフラビンリン酸一ナトリウム、エピガロカテキン及びエピガロカテキンガレート(EGCG)は、ジンジパイン、METアーゼ、シスタリシン及びバイオフィルムに対して強い阻害活性を有することがわかった。重要なことに、これらの薬剤の効果は臨床試験にて確認される。例えば、マウスモデルにおいて、飲料水中10mMのリボフラビンリン酸一ナトリウムは、非治療対照と比べて、P.ジンジバリスの感染による骨喪失を顕著に低減した。イヌの歯肉炎モデルにおいて、水性リボフラビンリン酸一ナトリウム(0.39重量%)での1日2回の洗浄は、出血部位の減少についてクロルヘキシジン(0.12重量%)での治療よりも一方向的に良好であり、歯肉炎指数及び炎症指数に関してクロルヘキシジン治療に匹敵した。
【0060】
故に、本抗菌剤及び抗炎症剤の組み合わせは、歯周病に対する増強された効果及びその多くの態様を提供し、特に歯垢の低減、腫れ、出血歯肉及び歯肉の炎症の低減;ポケット深さの低下、歯槽骨及び歯付着の進行性消失の停止;口臭の改善を示し、更に重要なことに全身系炎症の低減により、良好な全身又は全身系の健康を導く。大部分の好ましい組み合わせは、細菌及び宿主因子の両方に対して活性を有する薬剤を包含する。典型的には、抗菌剤は組成物の約0.01重量%〜約20重量%で存在し、抗炎症剤は約0.001重量%〜約10重量%で存在する。
【0061】
追加の治療薬
本発明の組成物は、任意に、最適な効果を得るために追加の治療薬を含んでいてもよい。故に、例えば、本発明の組成物は、抗菌/抗歯垢剤、バイオフィルム阻害剤、抗生物質;鎮痛剤及び局所麻酔剤;象牙質減感剤;悪臭マスキング剤、及び他の宿主反応調節剤などの追加の薬剤を含んでいてもよい。
【0062】
抗菌性の抗歯垢剤には、クロルヘキシジン(メルク・インデックス、No.2090)、アレキシジン(メルク・インデックス、No.222);ヘキセチジン(メルク・インデックス、No.4624);サンギナリン(メルク・インデックス、No.8320);塩化ベンザルコニウム(メルク・インデックス、No.1066);サリチルアニリド(メルク・インデックス、No.8299);臭化ドミフェン(メルク・インデックス、No.3411);塩化テトラデシルピリジニウム(TPC);塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム(TDEPC);オクテニジン;デルモピノール、オクタピノール、及び他のピペリジノ誘導体;ナイシン(Nisin)調製物;精油(サリチル酸メチル、ユーカリプトール、メントールなど);金属イオン供給源、例えばマンガン及び銀並びに上記抗菌性の抗歯垢剤の類縁体及び塩が挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、抗菌性の抗歯垢剤は、一般に、本発明の組成物の少なくとも約0.01重量%を構成する。
【0063】
バイオフィルム阻害剤としては、フラノン、細胞壁溶解酵素(リゾチームなど)、歯垢マトリックス阻害物質(デキストラナーゼ及びムタナーゼなど)、及びペプチド(バクテリオシン、ヒスタチン、デフェンシン及びセクロピンなど)を挙げることができる。
【0064】
他の任意の治療薬には、抗生物質、例えばオーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、ネオマイシン、カナマイシン、又はクリンダマイシン;象牙質減感剤、例えば塩化ストロンチウム(好適には六水和物として)、酢酸ストロンチウム(好適には半水和物として)、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム/プルロニックゲル、フッ化第一スズ、及びフッ化ナトリウム;悪臭マスキング剤、例えばペパーミント油又はクロロフィル;局所用麻酔剤、例えばリドカイン又はベンゾカイン;並びに栄養剤、例えばアミノ酸、必須脂肪、及びミネラルが挙げられる。
【0065】
本組成物に組み込まれてもよい他の種類の宿主反応調節剤は、次のパラグラフで説明する。
【0066】
H−2拮抗物質
ヒスタミン−2(H−2又はH2)受容体拮抗化合物(H−2拮抗物質)が、本発明の口腔ケア組成物に使用されてもよい。本明細書で使用するとき、選択的H−2拮抗物質は、H−2受容体を遮断するが、ヒスタミン−1(H−1又はH1)受容体の遮断に関して有意な活性の無い化合物である。選択的H−2拮抗物質は、消化管や気管支などの様々な臓器の平滑筋の収縮を刺激するが、この作用は、典型的な抗ヒスタミン剤である低濃度のメピラミンで抑制することができる。これらメピラミン感受性のヒスタミン応答に関与する薬理学的受容体は、H−1受容体と定義されている(A.S.F.アッシュ(Ash, A.S.F.)及びH.O.シルド(H.O. Schild)、「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・ケモセラピー(Brit. J. Pharmacol Chemother.)」27巻、1966年、427頁)。ヒスタミンはまた、胃による酸の分泌を刺激し(E.R.ロウ(Loew, E.R.)及びO.チッカーリング(O. Chickerin)、「プロシーディングス・フォー・ザ・エクスペアリメンタル・バイオロジー・アンド・メディシン(Proc. Soc. Exp. Biol. Med.)」48巻、1941年、65頁)、心拍数を上昇させ(U.トレンデレンバーグ(Trendelenburg, U.)、「ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(J. Pharmacol)」130巻、1960年、450頁)、ラットの子宮収縮を阻害する(P.B.デュー(Dews, P.B.)及びJ.D.P.グラハム(J.D.P. Graham)、「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・ケモセラピー(Brit. J. Pharmacol Chemother.)」1巻、1946年、278頁)が、これらの作用はメピルアミン及び関連薬物によっては拮抗できない。口腔ケア組成物又は物質に有用なH−2拮抗物質は、メピラミン非感受性の非H−1(H−2)ヒスタミン応答に関与する受容体を遮断するものであり、メピラミン感受性のヒスタミン応答に関与する受容体を遮断しないものである。
【0067】
選択的H−2拮抗物質は、H−2拮抗物質の機能についての古典的な前臨床スクリーニングテストにおけるそれらの性能を通してH−2拮抗物質であることが見出される化合物である。選択的H−2拮抗物質は、H−2受容体の機能に特に依存するスクリーニングモデルでは、ヒスタミン媒介効果の競合的又は非競合的阻害物質として機能するが、H−1受容体の機能に依存するスクリーニングモデルでは、有意なヒスタミン拮抗物質活性を欠くことが明示され得る化合物として識別される。具体的には、これには、J.W.ブラック(Black, J.W.)、W.A.M.ダンカン(W.A.M. Duncan)、C.J.デューラント(C.J. Durant)、C.R.ガネリン(C.R. Ganellin)及びE.M.パーソンズ(E.M. Parsons)の「ヒスタミンH2受容体の定義及び拮抗作用(Definition and Antagonism of Histamine H2-Receptors)」(「ネイチャー(Nature)」236巻、1972年4月21日、385〜390頁(ブラック(Black)))に記載されているように、モルモットの自発的に拍動する右心房生体外試験及びラットの胃酸分泌生体内試験による試験を通じてブラック(Black)により記載されたように評価された場合、H−2拮抗物質として分類されるが、モルモットの回腸収縮生体外試験又はラットの胃筋収縮生体内試験のいずれかについてブラック(Black)により記載されたように評価された場合、H−2拮抗物質活性に比べて、有意のH−1拮抗物質活性を欠くことが示された化合物が挙げられる。好ましくは、選択的H−2拮抗物質は、上記のH−1試験において妥当な投与濃度において、有意のH−1活性を全く示さない。典型的な妥当な投与濃度は、ヒスタミンの90%の阻害、好ましくはヒスタミンの99%の阻害が上記H−2試験において実現される最低投与濃度である。
【0068】
選択的H−2拮抗物質には、上記の基準を満たす化合物が挙げられ、それらは米国特許第5,294,433号及び同第5,364,616号(シンガー(Singer)ら、それぞれ1994年3月15日及び1994年11月15日に発行及びプロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)に譲渡)に開示されており、選択的H−2拮抗物質は、好ましくは、シメチジン、エチンチジン、ラニチジン、ICIA−5165、チオチジン、ORF−17578、ルピチジン(lupitidine)、ドネチジン(donetidine)、ファモチジン、ロキサチジン、ピファチジン(pifatidine)、ラミチジン(lamtidine)、BL−6548、BMY−25271、ザルチジン(zaltidine)、ニザチジン、ミフェンチジン、BMY−25368(SKF−94482)、BL−6341A、ICI−162846、ラミキソチジン(ramixotidine)、Wy−45727、SR−58042、BMY−25405、ロキシチジン(loxtidine)、DA−4634、ビスフェンチジン(bisfentidine)、スフォチジン(sufotidine)、エブロチジン(ebrotidine)、HE−30−256、D−16637、FRG−8813、FRG−8701、イムプロミジン、L−643728、及びHB−408からなる群から選択される。特に好ましいのは、シメチジン(SKF−92334)、N−シアノ−N’−メチル−N”−(2−(((5−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオ)エチル)グアニジンである。
【化1】

【0069】
シメチジンはまた、「メルク・インデックス(Merck Index)」11版(1989年)354頁(エントリー番号2279)、及び「医師用卓上参考書(Physicians’ Desk Reference)」46版(1992年)2228頁に開示されている。関連する好ましいH−2拮抗物質には、ブリマミド及びメチアミドが挙げられる。
【0070】
存在する場合、H−2拮抗物質剤は一般に、本発明の組成物の約0.001重量%〜約20重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約15重量%、より好ましくは更に約0.1重量%〜約10重量%、更により好ましくは約1重量%〜約5重量%で含まれる。シメチジンに加えて、好ましいH−2拮抗物質には、ラニチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ニザチジン及びミフェンチジンが挙げられる。
【0071】
抗炎症剤
他の抗炎症剤も本発明の口腔組成物に存在してもよい。これらの薬剤には、リポキシゲナーゼ阻害剤、例えばノルジヒドログアイアレチン酸;シクロオキシゲナーゼ阻害物質、例えばフルルビプロフェン;及び非ステロイド性抗炎症剤、例えばアスピリン、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ケトプロフェン、ピロキシカム、メクロフェナム酸、ロフェコキシブ、セレコキシブ、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、他の抗炎症剤は一般に、本発明の組成物の約0.001重量%〜約5重量%を構成する。ケトロラクは、米国再発行特許第036,419号(1999年11月30日発行);米国特許第5,785,951号(1998年7月28日発行)及び同第5,464,609号(1995年11月7日発行)に記載されている。
【0072】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害物質
他のマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害物質も本発明の口腔組成物に存在してもよい。メタロプロテイナーゼ(MP)は、しばしば細胞間マトリックスに作用する酵素であり、したがって組織の破壊及び再形成に関与する。MPの例には、ヒト皮膚線維芽細胞コラゲナーゼ、ヒト皮膚線維芽細胞ゼラチナーゼ、ヒト喀痰コラゲナーゼ、アグリカナーゼ及びゼラチナーゼ、並びにヒトストロメリシンが挙げられる。コラゲナーゼ、ストロメリシン、アグリカナーゼ及び関連酵素は、歯周病などの多くの症候学的疾患の媒介に重要であると考えられている。MP阻害物質の潜在的な治療上の指標については、リウマチ様関節炎(D.E.ミューリン(Mullins, D. E.)ら(「バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochim. Biophys. Acta.)」(1983年、695巻:117〜214頁)所収);変形性関節症(B.ヘンダーソン(Henderson, B.)ら(「ドラッグス・アンド・フューチャー(Drugs of the Future)」(1990年、15巻:495〜508頁)所収);腫瘍細胞の転移(前掲論文、M.J.ブロードハースト(Broadhurst, M. J.)ら(欧州特許出願第276,436号(1987年公開))、R.ライヒ(Reich, R.)ら(「キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)」(48巻、3307〜3312頁、1988年)所収);及び組織の様々な潰瘍形成又は潰瘍状態の治療を包含する文献中に記載されている。例えば、アルカリ火傷の結果として、又は緑膿菌、アカントアメーバ、単純ヘルペス及びワクシニア・ウイルスによる感染の結果として、角膜に潰瘍状態が起こる可能性がある。望ましくないメタロプロテアーゼ活性を特徴とする状態の他の例とには、歯周病、表皮水疱症、発熱、炎症、及び強膜炎が挙げられる(デチッコ(DeCicco)ら、PCT国際公開特許第95/29892号(1995年11月9日公開))。
【0073】
本組成物に有用な他のMMP阻害物質には、これらに限定されるものではないが、ヒドロキサム酸誘導体、ホスフィン酸アミド、並びにヘテロ原子含有の環式及び非環式構造体を挙げてもよく、例えば全てプロクター・アンド・ギャンブル社(Procter& Gamble Company)に譲渡された、米国特許第6,015,912号(2000年1月18日発行)、同第5,830,915号(1998年11月3日発行)、同第5,672,598号(1997年9月30日発行)、同第5,639,746号(1997年6月17日発行)、及びPCT国際公開特許第99/52868号、同第99/06340号、同第98/08827号、同特許第98/08825号、同第98/08823号、同第98/08822号、同第98/08815号、及び同第98/08814号に開示されている。
【0074】
存在する場合、MMP阻害物質は一般に、本発明の組成物の少なくとも約0.001重量%を構成する。
【0075】
酸化防止剤、ビタミン及び栄養素
細胞の酸化還元状態の調整剤には、酸化防止剤(例えば、N−アセチルシステイン及び没食子酸)、酸化防止酵素誘発因子(例えば、アネトール−ジチオチオン、オルチプラッツ、ピロリジンジチオカルバメート(PDTC)及びインドール−3−カルビノール)、栄養素及びビタミン(例えば、補酵素Q10、ピロロキノリンキノン(PQQ)、ビタミンA、C、及びE、セレン及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0076】
口腔に許容可能なキャリア物質
口腔に許容可能なキャリアは、局所的口腔投与に好適な1種以上の混和性のある固体若しくは液体賦形剤、又は希釈剤を含む。本明細書で使用するとき、「混和性のある」とは、組成物の成分が、実質的に組成物の安定性及び/又は効果を低下させるような方法で相互作用することなく混合し得ることを意味する。これらの物質は、当該技術分野において周知であり、組成物が調製されるのに望ましい物理的、審美的及び性能特性に基づいて当業者によって容易に選択される。これらのキャリアは、典型的には、口腔用組成物の約50重量%〜約99重量%、好ましくは約70重量%〜約98重量%、より好ましくは約90重量%〜約95重量%の濃度で含まれてもよい。
【0077】
本発明のキャリア又は賦形剤は、以下でより詳細に記載するように、歯磨剤、非研磨剤ゲル、歯肉縁下用ゲル、うがい薬又は口内洗浄剤、口内スプレー、チューインガム、トローチ剤、及び口臭予防用ミントの通常及び従来の成分を包含することができる。
【0078】
使用されるキャリアの選択は、基本的に、組成物を口腔内に導入すべき方法によって決定される。練り歯磨き、歯用ゲルなどのためのキャリア物質には、米国特許第3,988,433号(ベネディクト(Benedict))に開示されているような研磨剤物質、起泡剤、結合剤、保湿剤、着香剤及び甘味剤などが挙げられる。二相性歯磨剤配合用のキャリア物質は、全てルカコビッチ(Lukacovic)らによる米国特許第5,213,790号(1993年5月23日発行)、同第5,145,666号(1992年9月8日発行)、及び同第5,281,410号(1994年1月25日発行)、並びにシェファー(Schaeffer)による米国特許第4,849,213号及び同第4,528,180号に開示されている。うがい薬、口内洗浄剤、又は口内スプレーキャリア物質には典型的に、例えば米国特許第3,988,433号(ベネディクト)に開示されているように、水、着香剤及び甘味剤などが挙げられる。トローチ剤キャリア物質は典型的に、キャンディーベースを包含し;チューインガムキャリア物質は、例えば、米国特許第4,083,955号(グラベンシュテッター(Grabenstetter)ら)のようにガムベース、着香剤及び甘味剤を包含する。香粉(sachet)のキャリア物質としては、典型的には、匂い袋、着香剤及び甘味剤が挙げられる。活性物質の歯周ポケット内又は歯周ポケットの周りへの送達のために使用される歯肉縁下用ゲルのためには、例えば米国特許第5,198,220号及び同第5,242,910号(共にダマニ(Damani)、それぞれ1993年3月30日及び1993年9月7日発行)に開示されているような「歯肉縁下用ゲルキャリア」が選択される。本発明の組成物の調製に好適なキャリアは、当該技術分野において周知である。それらの選択は、味、価格、及び貯蔵安定性などのような二次的な考慮事項によって左右される。
【0079】
本発明の組成物はまた、非研磨剤ゲル及び歯肉縁下用ゲルの形態であってよく、これは水性であっても非水性であってもよい。更に別の態様では、本発明は、本組成物を含浸させた歯科用器具を提供する。歯科用器具は、歯及び口腔内の他の組織に接触するための器具を含み、この器具には、本組成物が含浸されている。歯科用器具は、デンタルフロス又はテープ、チップ、ストリップ、フィルム及びポリマー繊維を包含する、含浸された繊維であることができる。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、練り歯磨き、歯用ゲル及び歯磨き粉のような歯磨剤の形態である。これらの練り歯磨き及び歯用ゲルの成分は一般に、歯の研磨剤(約6%〜約50%)、界面活性剤(約0.5%〜約10%)、増粘剤(約0.1%〜約5%)、保湿剤(約10%〜約55%)、着香剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、着色剤(約0.01%〜約0.5%)、及び水(約2%〜約45%)を1つ以上包含する。このような練り歯磨き又は歯用ゲルはまた、抗カリエス剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)、及び抗結石剤(約0.1%〜約13%)の1つ以上を包含してもよい。歯磨き粉はもちろん、実質的に全ての非液体成分を含有する。
【0081】
本発明の他の好ましい実施形態は液体製品であり、うがい薬又は口内洗浄剤、口内スプレー、歯科溶液及び洗浄溶液が挙げられる。そのようなうがい薬及び口内スプレーの成分は、典型的には、水(約45%〜約95%)、エタノール(約0%〜約25%)、保湿剤(約0%〜約50%)、界面活性剤(約0.01%〜約7%)、着香剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、及び着色剤(約0.001%〜約0.5%)の1つ以上を包含する。このようなうがい薬及び口内スプレーにはまた、抗カリエス剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)、及び抗結石剤(約0.1%〜約3%)の1つ以上を包含してもよい。歯科用溶液の成分は、一般に、水(約90%〜約99%)、防腐剤(約0.01%〜約0.5%)、増粘剤(0%〜約5%)、着香剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、及び界面活性剤(0%〜約5%)の1つ以上を包含する。
【0082】
本組成物の好適なキャリア物質の例は、次に続く段落で説明する。
【0083】
フッ化物イオン源
本発明の口腔用組成物は、任意に、生物学的に利用可能で有効なフッ化物イオンを提供することができる可溶性フッ化物源を包含する。可溶性フッ化物イオン源には、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン及びモノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられる。フッ化第一スズは好ましい可溶性フッ化物源である。この成分は、第一スズイオン源及びフッ化物源の両方として作用できる。米国特許第2,946,725号(ノリス(Norris)ら、1960年7月26日発行)及び同第3,678,154号(ウィダー(Widder)ら、1972年7月18日発行)は、このようなフッ化物源、並びにその他の物質を開示している。
【0084】
本組成物は、約50ppm〜約3500ppm、好ましくは約500ppm〜約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供できる可溶性フッ化物イオン源を含有してもよい。所望の量のフッ化物イオンを送達するために、フッ化物イオン源は、全口腔用組成物中に、口腔に送達される全組成物の約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.2重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約0.6重量%の量で存在してもよい。
【0085】
過酸化物源
本発明は、組成物中に過酸化物源を含んでいてもよい。白化に加えて、過酸化物はまた口腔に他の効果も提供する。過酸化水素及び他の過酸素化合物は、虫歯、歯垢、歯肉炎、歯周炎、口臭、慢性再発性アフター性潰瘍、義歯の炎症、歯列矯正装置の損傷、抜歯後及び歯根膜手術後、外傷性口腔病変、並びに粘膜感染、ヘルペス口内炎などに対する治療的及び/又は予防的処置に有効であると長い間認められてきた。口腔内の過酸化物含有剤は、組織及び唾液酵素との相互作用によって生じる何千もの小さな酸素の泡を生成する化学機械的作用を及ぼす。口内洗浄剤の激しい動き(swishing action)が、この特有の化学機械的作用を増強する。そのような作用は、その他の剤を感染した歯肉のクレバスに送達するために推奨されてきた。故に、過酸化物は、歯周病と関連することが知られている嫌気性細菌のコロニー形成及び増殖を防ぎ、本明細書で使用するのに好ましい抗菌剤の1つである。
【0086】
過酸化物源は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択される。以下の量は過酸化物原料物質の量を示すが、過酸化物源は過酸化物原料物質以外の成分を含有してもよい。本組成物は、口腔用組成物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約3重量%、最も好ましくは約0.3重量%〜約0.8重量%の過酸化物源を含有してもよい。
【0087】
アルカリ金属重炭酸塩
本発明はまたアルカリ金属重炭酸塩を包含してもよい。重曹としても知られている重炭酸ナトリウムは、好ましいアルカリ金属重炭酸塩である。上記で示したように、重曹はある程度の抗菌及び抗炎症活性を有し、故に活性成分として使用されてもよい。アルカリ金属重炭酸塩はまた緩衝剤としても機能する。本組成物は、口腔用組成物の約0.5重量%〜約50重量%、好ましくは約0.5重量%〜約30重量%、より好ましくは約2重量%〜約20重量%、最も好ましくは約5重量%〜約18重量%のアルカリ金属重炭酸塩を含有してもよい。
【0088】
抗結石剤
本組成物は、任意に、キレート化活性を有する物質であり、歯石形成に関連する鉱物の沈着を低減するのに有効な抗結石剤を含んでいてもよい。このようなキレート剤は、細菌の細胞壁に見られるカルシウムを錯化でき、更にこのバイオマスをそのまま保持するのに役立つカルシウム架橋からカルシウムを除去することによって歯垢を分解できる。しかしながら、カルシウムに対する親和性が高すぎるキレート剤を用いることは、結果として歯の脱ミネラル化(demineralization)をもたらす可能性があり、これは本発明の目的及び意図に反するために、望ましくない。好適なキレート剤は、通常はカルシウム結合定数が約10〜10であり、洗浄を改善し、歯垢及び結石の形成を減少させる。キレート剤はまた、金属イオンと錯化することができ、故に組成物に存在する場合に第一スズを安定化するために使用することができる。
【0089】
抗結石活性に有用なこのようなキレート剤には、ピロリン酸塩、トリポリホスフェート及びジホスホネート、例えばEHDP及びAHPが挙げられる。本組成物にてピロホスフェートイオン源として有用なピロホスフェート塩には、ジアルカリ金属ピロホスフェート塩、テトラアルカリ金属ピロホスフェート塩、及びこれらの混合物が挙げられる。無水和物並びに水和物の形の、二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、及びピロリン酸四カリウム(K)が好ましい種である。本発明の組成物では、ピロホスフェート塩は、主に溶解した形態、主に溶解していない形態、又は溶解した形態と溶解していない形態のピロホスフェートの混合物、の3つの形態のうちの1つで存在してよい。
【0090】
主に溶解したピロホスフェートを含む組成物とは、少なくとも1つのピロホスフェートイオン源が、少なくとも約1.0%の遊離ピロホスフェートイオンを提供するのに十分な量である組成物を指す。遊離ピロホスフェートイオンの量は、約1%〜約15%、1つの実施形態においては約1.5%〜約10%、及び別の実施形態では約2%〜約6%であってもよい。遊離ピロホスフェートイオンは、組成物のpHに依存して多様なプロトン化状態で存在してもよい。
【0091】
主に溶解していないピロホスフェートを含む組成物とは、組成物中に溶解している総ピロホスフェート塩が約20%以下、好ましくは組成物中に溶解している総ピロホスフェートが約10%未満で含有される組成物を指す。ピロリン酸四ナトリウム塩は、これらの組成物中の好ましいピロホスフェート塩である。ピロリン酸四ナトリウムは、無水塩形態若しくは十水和物形態、又は歯磨剤組成物中において固形で安定な他のいずれかの種であってもよい。塩はその固体粒子状形態であり、その結晶性及び/又は非晶性状態であってもよく、塩の粒径は、好ましくは、審美的に許容可能であると共に使用中容易に溶解するのに十分に小さい。これらの組成物の製造に有用なピロホスフェート塩の量は、歯石抑制に有効ないずれかの量であり、一般に、歯磨剤組成物の約1.5重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、最も好ましくは約3重量%〜約8重量%である。
【0092】
組成物はまた、溶解したピロホスフェート塩と溶解していないピロホスフェート塩との混合物を含んでもよい。前述のピロホスフェート塩のいずれを用いてもよい。
【0093】
ピロホスフェート塩はカーク/オスマー(Kirk-Othmer)編「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」第3版、第17巻、ワイリー−インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)(1982年)に、より詳細に記載されている。
【0094】
抗結石剤として使用されるキレート剤の他の例には、英国特許第490,384号(1937年2月15日)に開示されるエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸及び関連化合物;米国特許第3,678,154号(1972年7月18日、ウィダー(Widder)ら)、米国特許第5,338,537号(1994年8月16日発行、ホワイトJr.(White, Jr.))、及び米国特許第5,451,401号(1995年9月19日発行、ザービー(Zerby)ら)のポリホスホネート;米国特許第3,737,533号(1973年6月5日、フランシス(Francis))のカルボニルジホスホネート;米国特許第4,138,477号(1979年2月6日発行、ガッファー(Gaffar))の、亜鉛化合物と、カルボン酸、スルホン酸及び/又はホスホン酸ラジカルを含有するアニオン性ポリマーとの反応又は相互作用によって形成される亜鉛−ポリマー混合物;米国特許第5,849,271号(1998年12月15日発行)及び同第5,622,689号(1997年4月22日発行)(両方ともルカコビック(Lukacovic)の酒石酸;米国特許第5,015,467号(1991年5月14日発行、スミザーマン(Smitherman))のタータラートモノスクシネート、タータラートジスクシネート、及びこれらの混合物の酸又は塩の形態;米国特許第4,847,070号(1989年7月11日、ピルズ(Pyrz)ら)、及び米国特許第4,661,341号(1987年4月28日、ベネディクト(Benedict)ら)のアクリル酸ポリマー又はコポリマー;米国特許第4,775,525号(1988年10月4日発行、ペラ(Pera))のアルギン酸ナトリウム;英国特許第741,315号(1955年11月30日公開)、PCT国際公開特許第99/12517号(1999年3月18日公開)及び米国特許第5,538,714号(1996年7月23日発行、ピンク(Pink)ら)のポリビニルピロリドン;並びに米国特許第5,670,138号(1997年9月23日発行、ベネマ(Venema)ら)及び特開2000−0633250(ライオン社(Lion Corporation)、2000年2月29日公開)のビニルピロリドンとカルボキシレートとのコポリマーが挙げられる。抗結石剤として使用されてもよい他のキレート剤には、グルコン酸、酒石酸、クエン酸及び薬剤として許容されるそれらの塩が挙げられる。例には、グルコン酸及びクエン酸のナトリウム又はカリウム;クエン酸/クエン酸アルカリ金属塩混合物;クエン酸亜鉛三水和物;酒石酸二ナトリウム;酒石酸二カリウム;酒石酸ナトリウムカリウム;酒石酸水素ナトリウム;酒石酸水素カリウムが挙げられる。本発明に用いられるのに好適なこれらのキレート剤の量は、約0.1%〜約2.5%、好ましくは約0.5%〜約2.5%、より好ましくは約1.0%〜約2.5%である。
【0095】
本発明に使用するのに好適な更に別の抗結石剤は、米国特許第4,138,477号(1979年2月6日)及び米国特許第4,183,914号(1980年1月15日)(ガッファー(Gaffar)ら)に開示されている、ポリマー性ポリカルボキシレートであるが、それらには、無水マレイン酸又はマレイン酸と別の重合可能なエチレン性不飽和モノマー、例えばメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)、スチレン、イソブチレン又はエチルビニルエーテルとのコポリマーが挙げられる。このような物質は当該技術分野において周知であり、その遊離酸又は部分的に若しくは好ましくは完全に中和された水溶性アルカリ金属塩(例えばカリウム、好ましくはナトリウム)若しくはアンモニウム塩の形態で使用される。例は、約3万〜約100万の分子量(M.W.)を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルの1:4〜4:1コポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GAFケミカルズ・コーポレーション(GAF Chemicals Corporation)のガントレッツAN 139(分子量50万)、AN 119(分子量25万)、及びS−97医薬品等級(分子量7万)として入手可能である。
【0096】
他の有効なポリマー性ポリカルボキシレートには、無水マレイン酸とエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、又はエチレンとの1:1コポリマーであって、後者は、例えばモンサント(Monsanto)EMA No.1103、分子量1万及びEMA等級61として入手可能であるもの、及びアクリル酸とメチル若しくはヒドロキシエチルメタクリレート、メチル若しくはエチルアクリレート、イソブチルビニルエーテル又はN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマーが挙げられる。
【0097】
研磨剤
本発明の組成物の局所口腔キャリアにおいて有用な歯科用研磨剤には、多くの様々な物質が含まれる。選択される物質は、目的の組成物中で混和性があり、象牙質を過度に削らないものでなければならない。好適な研磨剤には、例えば、ゲル及び沈殿物を包含するシリカ、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、炭酸カルシウム、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、及び尿素とホルムアルデヒドとの粒子状縮合生成物のような樹脂性研磨剤物質が挙げられる。
【0098】
本組成物に用いられる別の部類の研磨剤は、米国特許第3,070,510号(クーリー(Cooley)及びグレーベンシュテッター(Grabenstetter)、1962年12月25日発行)に記載されているような粒子状熱硬化性重合樹脂である。好適な樹脂には、例えば、メラミン、フェノール樹脂、尿素、メラミン−尿素、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド、架橋エポキシド、及び架橋ポリエステルが挙げられる。
【0099】
様々な種類のシリカ歯科用研磨剤は、歯のエナメル質又は象牙質を過度に削らない、優れた歯の清浄及び研磨性能という独特の効果があるため好ましい。他の研磨剤と同様に、本明細書のシリカ砥粒研磨物質は、一般に、約0.1〜約30ミクロン、好ましくは約5〜約15ミクロンの範囲の平均粒径を有する。研磨剤は、沈殿シリカ、又はシリカキセロゲルのようなシリカゲルであることができ、米国特許第3,538,230号(ペイダー(Pader)ら、1970年3月2日発行)及び同第3,862,307号(ディギュリオ(DiGiulio)、1975年1月21日発行)に記載されている。例には、商標名「シロイド(Syloid)」としてW.R.グレース・アンド・カンパニー、デイビソン・ケミカル・ディビジョン(W.R. Grace & Company Davison Chemical Division)から市販されているシリカキセロゲル、及びJ.M.フーバーコーポレーション(J. M. Huber Corporation)から商標名ゼオデント(Zeodent)(登録商標)で市販されるもの、特に、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)119、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)118、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)109、及びゼオデント(Zeodent)(登録商標)129という表記を有する沈殿シリカ物質が挙げられる。本発明の練り歯磨きに有用なシリカの歯の研磨剤の種類は、ウェイソン(Wason)の米国特許第4,340,583号(1982年7月29日発行);及び譲渡人に譲渡された米国特許第5,603,920号(1997年2月18日発行);同第5,589,160号(1996年12月31日発行);同第5,658,553号(1997年8月19日発行);同第5,651,958号(1997年7月29日発行)、及び同第6,740,311号(2004年5月25日発行)により詳細に記載されている。
【0100】
上に列挙された様々な等級のゼオデント(登録商標)シリカ研磨剤の混合物のような研磨剤の混合物を用いることができる。本発明の歯磨剤組成物中の研磨剤の総量は、典型的には組成物の約6重量%〜約70重量%であり、練り歯磨きは、好ましくは約10重量%〜約50重量%の研磨剤を含有する。本発明の歯科用溶液、口内スプレー、うがい薬、及び非研磨剤ゲル組成物は、典型的には、少量の研磨剤しか含有しないか、又は研磨剤を全く含有しない。
【0101】
水分含有量
商業的に好適な口腔用組成物の調製に用いる水は、好ましくは、イオン含量が少なく、有機不純物を含まないものであるべきである。口腔用組成物において、水は、本明細書の組成物の0重量%〜約95重量%、好ましくは約5重量%〜約50重量%を占めてもよい。水の量には、添加される遊離水に加えてソルビトール、シリカ、界面活性剤溶液、及び/又は着色剤溶液など他の物質と共に導入される水が包含される。
【0102】
緩衝剤
本組成物は緩衝剤を含有してもよい。本明細書で使用するとき、緩衝剤とは、組成物のpHをpH約3.0〜pH約10の範囲に調整するために用いることができる薬剤を指す。
【0103】
好適な緩衝剤には、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤には、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。好ましい緩衝剤は、第一スズイオンのような活性剤を錯化することなく、pHを目的とする範囲に制御するものである。好ましい緩衝剤としては、酢酸、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、安息香酸及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は、本組成物の約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%、より好ましくは約1.5重量%〜約3重量%の濃度で用いられる。
【0104】
増粘剤
練り歯磨き又はゲルを調製する際には、組成物の望ましい稠度を提供し、使用に際した望ましい活性剤放出特性を提供し、貯蔵安定性を提供し、組成物などの安定性を提供するために、いくつかの増粘物質を加えることが必要である。好ましい増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのようなセルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴムのような天然ゴムを使用することもできる。更に質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は超微粒子状シリカを増粘剤の一部として使用することができる。
【0105】
増粘剤又はゲル化剤の好ましい部類には、ペンタエリスリトールのアルキルエーテル若しくはスクロースのアルキルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー、又はカルボマーの部類が挙げられる。カルボマーは、カーボポール(Carbopol)シリーズとしてB.F.グッドリッチ(B.F.Goodrich)から市販されている。とりわけ好ましいカーボポールには、カーボポール(Carbopol)934、940、941、956、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0106】
ラクチド及びグリコリドモノマーのコポリマーである、約1,000〜約12万(数平均)の範囲の分子量を有するコポリマーは、「歯肉縁下用ゲルキャリア」として歯周ポケットの中又は歯周ポケットの周りに活性物質を送達するのに有用である。これらのポリマーは、米国特許第5,198,220号(1993年3月30日)及び同第5,242,910号(1993年9月7日)(両方ともダマニ(Damani)に発行)、並びに同第4,443,430号(1984年4月17日、マテイ(Mattei)に発行)に記載されている。
【0107】
増粘剤は、練り歯磨き又はゲル組成物の総量の約0.1重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、より好ましくは約4重量%〜約8重量%の量で使用することができる。チューインガム、トローチ剤、口臭予防用ミント、香粉、非研磨剤ゲル及び歯肉縁下用ゲルには、より高濃度で使用することができる。
【0108】
保湿剤
本発明の組成物の局所的な口腔キャリアの別の任意成分は、保湿剤である。保湿剤は、練り歯磨き組成物が空気への曝露時に硬化するのを防ぎ、組成物に口への潤い感を付与し、特定の保湿剤では、練り歯磨き組成物に望ましい甘い香味を付与するのに役立つ。保湿剤は、純保湿剤を基準にすると、一般に本明細書の組成物の約0重量%〜約70重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%を構成する。本発明の組成物における使用に好適な保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールのような食用多価アルコール、特にソルビトール及びグリセリンが挙げられる。
【0109】
着香剤及び甘味剤
着香剤もまた、組成物に添加してもよい。好適な着香剤には、ウインターグリーン油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブ芽油、メンソール、アネトール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン(oxanone)、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、CGAとして知られるシンナムアルデヒドグリセロールアセタール、及びこれらの混合物が挙げられる。着香剤は、一般に組成物中で、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。
【0110】
使用することができる甘味剤には、スクロース、グルコース、サッカリン、デキストロース、果糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルト−ス、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム及びシクラミン酸塩、特にシクラミン酸ナトリウム及びサッカリンナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。組成物は、組成物の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%のこれらの薬剤を含有するのが好ましい。
【0111】
本発明の組成物では、任意成分として、着香剤及び甘味剤に加え、冷却剤、唾液分泌剤、加温剤及び局部麻酔剤を使用することができる。これらの薬剤は組成物中に、組成物の約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の濃度で存在する。
【0112】
冷却剤は、多種多様な物質のいずれかであり得る。このような物質には、カルボキサミド、メントール、ケタール、ジオール、及びこれらの混合物が包含される。本組成物に好ましい冷却剤は、「WS−3」として商業的に既知であるN−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、「WS−23」として既知であるN,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、及びこれらの混合物などの、パラメンタンカルボキシアミド剤である。追加の好ましい冷却剤は、メントール、TK−10として既知の3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール(高砂(Takasago)製)、MGAとして既知のメントングリセロールアセタール(ハーマン(Haarmann)&ライマー(Reimer)製)及びフレスコラート(登録商標)(ハーマン(Haarmann)&ライマー(Reimer)製)として既知のメンチルラクテートからなる群から選択される。本明細書で使用するとき、用語、「メントール」及び「メンチル」は、これらの化合物の右旋性−及び左旋性の異性体、並びにこれらのラセミ混合物を包含する。TK−10は、米国特許第4,459,425号(アマノ(Amano)ら、1984年7月10日)に記載されている。WS−3及び他の薬剤が、米国特許第4,136,163号(ワトソン(Watson)ら、1979年1月23日発行)に記載されている。
【0113】
本発明の好ましい唾液分泌剤には、高砂(Takasago)製のジャンブ(Jambu)(登録商標)が挙げられる。好ましい加温剤には、トウガラシ、及びベンジルニコチネートのようなニコチネートエステルが挙げられる。好ましい麻酔剤には、ベンゾカイン、リドカイン、クローブ芽油、及びエタノールが挙げられる。
【0114】
界面活性剤
本組成物はまた、一般的に起泡剤とも呼ばれる界面活性剤を含んでもよい。好適な界面活性剤は、広いpH範囲にわたって適度に安定かつ発泡性であるものである。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性、又はこれらの混合物であってよい。
【0115】
本明細書で有用なアニオン性界面活性剤には、アルキルラジカルに8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなサルコシネートである。アニオン性界面活性剤の混合物を使用することもできる。多くの好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458号(アグリコーラ(Agricola)ら、1976年5月25日発行)に開示されている。
【0116】
本発明の組成物に用いることができる非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基(性質上親水性)と、性質上脂肪族又はアルキル−芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物として広く定義できる。好適な非イオン性界面活性剤の例には、ポロキサマー(商標名プルロニック(Pluronic)として販売)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(商標名トゥイーンズ(Tweens)として販売)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、プロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物とエチレンオキシドの縮合から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、及びこれらの物質の混合物が挙げられる。非イオン性界面活性剤ポロキサマー407は、ポロキサマーがまた乳化剤、結合剤、安定剤としても機能し得、第一スズ及び亜鉛のような金属イオンの収斂性を低減するので、最も好ましい界面活性剤の1つである。ポロキサマーは、分子量が1,000〜15,000超の範囲である、一級ヒドロキシル基で終端をなす二官能性ブロックポリマーである。ポロキサマーは、BASFによりプルロニクス(Pluronics)及びプルラフロ(Pluraflo)の商標名で販売されている。本発明に好適なポロキサマーは、ポロキサマー407及びプルラフロL4370である。
【0117】
本発明において有用な両性界面活性剤は、脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体として広く記載することができ、その際、脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝鎖状であることができ、また脂肪族置換基の1つは約8〜約18個の炭素原子を含有し、1つはアニオン性水溶性基、例えばカルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。他の好適な両性界面活性剤はベタイン、特に、コカミドプロピルベタインである。両性界面活性剤の混合物も使用できる。この好適な非イオン性及び両性界面活性剤の多くが、米国特許第4,051,234号(ギースキー(Gieske)ら、1977年9月27日発行)に開示されている。本組成物は、典型的には、組成物の約0.25重量%〜約12重量%、好ましくは約0.5重量%〜約8重量%、最も好ましくは約1重量%〜約6重量%の各濃度で1つ以上の界面活性剤を含む。
【0118】
追加のキャリア物質
本組成物に使用してよい他の乳化剤としては、B.F.グッドリッチ(B.F.Goodrich)から入手可能なペミュレン(Pemulen)(登録商標)シリーズのようなポリマー性乳化剤が挙げられ、これは、主に、疎水性物質用の乳化剤として有用な高分子量のポリアクリル酸ポリマーである。
【0119】
二酸化チタンをまた本組成物に添加してもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明感を加える白色粉末である。二酸化チタンは一般に、歯磨剤組成物の約0.25重量%〜約5重量%含む。
【0120】
着色剤もまた本組成物に添加されてもよい。着色剤は水溶液の形態であってもよく、好ましくは1%の着色剤水溶液であってもよい。着色溶液は、一般に組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する。
【0121】
本発明の組成物中に用いられてよい他の任意の薬剤には、アルキル−及びアルコキシ−ジメチコンコポリオールから選択されるジメチコンコポリオール、例えばC12〜C20アルキルジメチコンコポリオール及びこれらの混合物が挙げられる。極めて好ましいのは、アビル(Abil)EM90の商標名で市販されているセチルジメチコンコポリオールである。ジメチコンコポリオールは一般に、約0.01重量%〜約25重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約1.5重量%の濃度で存在する。ジメチコンコポリオールは、歯の良い感触効果を提供するのに役立つ。
【0122】
組成物の使用
1つ以上の抗菌剤及び抗炎症剤の組み合わせを含む安全で有効な量の本発明の組成物は、患者の口腔の上述した疾患及び状態の治療又は予防のために、いくつかの従来の方法で、口腔の粘膜組織、口腔の歯肉組織、及び/又は歯の表面に局所適用してもよい。患者は、歯垢、歯肉炎及び歯周炎を包含する口腔状態の治療又は予防の必要なヒト又は動物であってもよい。「動物」とは、特に家庭用ペット若しくは他の家畜、又は捕獲されている動物を包含することを意味する。
【0123】
例えば、歯肉又は粘膜組織は、溶液(例えば、口内洗浄剤、口内スプレー)によりすすがれてもよく、あるいは組成物が歯磨剤(例えば、練り歯磨き、歯用ゲル、若しくは歯磨き粉)である場合、歯肉/粘膜組織又は歯は、液体を浴びる、及び/又は、歯を磨くことにより生成される泡を浴びる。他の非限定的な例には、以下に述べる口腔ケア器具を使用して又は使用せずに、歯肉/粘膜組織又は歯に直接適用する、非研磨剤ゲル又はペースト;チューインガム;噛む又は舐める口臭予防タブレット又はトローチ剤の適用が挙げられる。本組成物の局所口腔適用の好ましい方法は、口内洗浄剤によるすすぎ、及び歯磨剤を用いたブラッシングを介する。歯肉/粘膜組織並びに歯の表面に本組成物を局所適用する他の方法は、当業者には明らかである。
【0124】
本発明の組成物中の抗菌剤及び抗炎症剤の濃度は、歯肉/粘膜組織及び/又は歯に組成物を適用するために使用される組成物のタイプ(例えば、練り歯磨き、口内洗浄剤、トローチ剤、ガムなど)によって異なり、これは、組織及び歯に接触する組成物の有効性の違いと、更にその組成物が一般に使用される量のためである。その濃度は、使用される具体的な薬剤及び治療する疾患又は状態にも依存する。典型的には、抗菌剤は約0.01重量%〜約20重量%で組成物に存在し、抗炎症剤は約0.001重量%〜約10重量%で存在する。これらの量は、使用される供給源における抗菌剤又は抗炎症活性剤の量を指す。例えば、茶ポリフェノールは、茶抽出物として組成物に組み込まれてもよく、それは典型的にはタンニン酸、カフェイン、ビタミン及び多糖類などの他の成分を含有する。茶ポリフェノールは、抽出物の85%〜95%を構成してもよい。
【0125】
本発明の組成物は、好ましくは歯肉/粘膜組織及び/又は歯に、好ましくは少なくとも約10秒、好ましくは約20秒〜約10分、より好ましくは約30秒〜約60秒(例えば、口内洗浄剤によるすすぎ、器具を使用する又は使用しない非研磨剤ゲルの直接適用、歯ブラシによる歯磨剤又は歯用ゲルの適用、トローチ剤や口臭予防ミントを舐める又は噛むことによって)適用する。この方法は、多くの場合、そのような接触の後に続いて組成物の大部分の喀出を伴う。このような接触の頻度は、好ましくは週に約1回〜1日に約4回、より好ましくは週に約3回〜1日に約3回、更により好ましくは1日に約1回〜1日に約2回である。このような治療の期間は、典型的には約1日から一生涯の範囲である。特定の口腔ケアの疾患又は状態では、治療の期間は、治療される口腔の疾患又は状態の重篤度、利用される特定の送達形態、及び患者の治療に対する反応によって左右される。歯周病の治療など、歯周ポケットへの送達が望ましい場合には、注射器又は水噴射装置を使用して口内洗浄剤を歯周ポケットに送達することができる。これらの装置は当業者に既知である。この種類の装置には、テレダイン社(Teledyne Corporation)による「ウォーター・ピック(Water Pik)」が挙げられる。洗浄後、被験者は、口の中を洗浄剤でゆすぎ、舌の背側及び他の歯肉及び粘膜の表面を覆うことも可能である。練り歯磨きに加えて、非研磨剤ゲル、歯用ゲルなどは、舌の表面及び口腔の他の歯肉及び粘膜組織の上を磨くことができる。
【0126】
本組成物は、計量装置、標的適用装置、及び洗浄又は総合的な口内衛生システムなどの電気機械装置を使用して、口腔内の組織及び/又は空間に送達することもできる。
【0127】
口内組織の傷の治療や組織再生の補助には、歯周の空洞などの治療が必要な領域に注射器を介してあるいは針又はカテーテルのいずれかを介して直接挿入することができる流体歯肉縁下用ゲル組成物が、非常に有用で都合がよい。好ましいゲル状流体組成物は、水や歯肉溝滲出液など水性流体の存在下でほぼ固体相に転換されるものであり、そのようなゲルは、典型的にはポリ(ラクチル−co−グリコシド)コポリマーとプロピレンカーボネートなどの溶媒とを含むキャリア系に0.02%〜6%の活性剤を含む。その結果、硬化した組成物が適用部位で保持され、ポリマー性キャリアが加水分解を介して緩やかに分解されるので、そのような組成物から活性剤が持続して放出される。
【0128】
餌、チュー及びトイのようなペットケア製品は、本組成物を含有するように処方されてもよい。活性剤は、例えば、生皮、天然繊維又は合成繊維製のロープ、及びナイロン、ポリエステル又は熱可塑性ポリウレタン製のポリマー性物品などの、比較的柔軟であるが強くて丈夫な材料に組み込まれてもよい。動物が製品を噛み、舐め又はかじるときに、組み込まれた活性剤が動物の口腔内の唾液媒体内に放出され、効果的なブラッシング又はすすぎに匹敵する。ペットフード実施形態において、活性剤は、成分として組み込まれてもよく、又はペットフード、例えば粗挽き、セミモイスト、又は缶詰フードに混合されてもよい。極めて好ましい餌の実施形態は、口腔内における餌の滞留時間を増加させる傾向にあるキャリアを包含する。例えば、活性剤は、特定量の製品が口に留まり、直ぐには摂取されないように、歯に粘着又は付着する傾向のあるキャリアに組み込むことができる。本組成物はまた、栄養補助食品及び飲料水添加物を包含する他のペットケア製品に組み込まれてもよい。
【0129】
以下の非限定的な実施例は、本発明の範囲内の好ましい実施形態を更に説明する。これらの実施例は、例示を目的とするものにすぎず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の多くの変形形態が可能であるので、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0130】
実施例I.口内洗浄剤組成物
本発明の次の口腔ケア口内洗浄剤組成物を、以下に成分の量(重量%)と共に示す。これらの組成物を従来の方法を用いて作製する。
【表3】

【0131】
実施例II.歯磨剤組成物
本発明による歯磨剤組成物を、以下に成分の量(重量%)と共に示す。これらの組成物を従来の方法を用いて作製する。
【表4】

【0132】
実施例III.生体内効果試験
調査は、イヌ科動物モデルにてリボフラビン+塩化セチルピリジニウム(CPC)リンスの生体内効果を評価するために行われた。調査の初めに、ビーグル犬披検体は予防処置を受けた。約1週間後、ビーグル犬は基準歯肉炎指数(GI)及び歯垢指数について類別された。歯肉炎指数は、0〜3の等級である(0=炎症なし;1=炎症が存在し、歯肉は赤色である;2=プロービング時に出血;3=自然に出血)。歯垢指数は各歯の歯垢被覆%である。SASランダム化プログラムを用いて基準炎症指数(II)スコアのバランスをとった治療群に犬をランダムに振り分けた。治療は振り分け後の次の日に開始した。動物は、歯/歯肉をスプレーミストボトルを用いて、30日間平日は1日2回、週末には1日1回局所治療された(30mL/治療)。30日の終わりに、動物は最終的な臨床類別を行われた。
【0133】
臨床類別は、基準及び最終評価時に行われた。歯肉炎指数については、次の歯(第一大臼歯、第四、第三及び第二小臼歯及び第一犬歯)の4つの四半部分全てについて頬面部が、全部で20本の歯について測定された。各歯について3つのスコアが測定され、60個のスコアが得られた。歯毎に3つの頬面の最大スコアが記録された。次いで、これらのスコアの平均がコンピュータ計算された(歯のレベルの平均スコア)。データは、統計分析システム(SAS)を用いてモデル共変量として各基準に関して共分散分析(ANCOVA)を用いて分析された。歯垢は、各歯の被覆百分率で測定された。歯垢は、先端が綿であるアプリケータを用いて1%塩基性フクシン溶液で染め出される。水が噴霧されて過剰の染色溶液を除去する。各歯について5%増加毎に紫の百分率も記録される。歯垢データは、分散分析(ANOVA)を用いて分析された。結果は以下にまとめられる。
【0134】
これらの結果は、抗炎症剤(リボフラビン)及び抗菌剤(CPC)の組み合わせが、抗歯垢及び抗歯肉炎効果の増強を提供することを示す。実際、これらの組み合わせは、CPCが低濃度であっても効果をもたらす。これは、CPCなどの四級アンモニウム抗菌剤が有効ではあるが不快な味を与え、特に効果を提供するために使用されている濃度にて歯の着色又は変色を生じることが知られているので、有利である。このような低濃度の使用により、不快な味及び歯の染みを生じる傾向の両方が回避される。そのため、本組成物は、当該技術分野において使用されている抗着色及び味マスキング添加剤を必要とせずに、CPCに関連する負の側面に対処できる。
【表5】

基準歯−レベルGI平均=0.83
【0135】
本明細書で開示した寸法及び値は、列挙した厳密な数値に狭義に厳しく限定されるものとして解釈されるべきではない。それよりむしろ、特に指定されない限り、これらの寸法はそれぞれ、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0136】
本発明の「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において、本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。本明細書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲においては、本明細書においてその用語に付与した意味又は定義を適用するものとする。
【0137】
本発明の特別な実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることは当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるこのような全ての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所口腔用組成物であって、口腔に許容可能なキャリア中に、
(a)マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、PGE、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β変換酵素(ICE)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ヒアルロニダーゼ、カテプシン、核因子κB(NF−κB)、及びIL−1受容体関連キナーゼ(IRAK)から選択される少なくとも1つの宿主炎症促進性因子に対して阻害活性を有する1つ以上の第1の活性剤と、
(b)バイオフィルム形成と、バイオフィルム定着と、ジンジパイン、METアーゼ及びシスタリシンから選択される酵素とから選択される細菌性病原因子の少なくとも1つに対して阻害活性を有する1つ以上の第2の活性剤と、
の組み合わせを含み、
前記組み合わせが、細菌媒介口腔状態を治療及び予防するための増強された効果を提供するのに有効な量で存在する、局所口腔用組成物。
【請求項2】
抗炎症活性を有する前記第1の活性剤が、リボフラビン、リボフラビンホスフェート、クルクミン、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、チモール、カルバクロール、シンナムアルデヒド、アントシアニジン、バイカレイン、タンニン酸、ケルセチン、葉酸、ヘキサミジン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ベルベリン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の局所口腔用組成物。
【請求項3】
抗菌活性を有する前記第2の活性剤が、塩化セチルピリジニウム(CPC)、第一スズイオン剤、亜鉛イオン剤、銅イオン剤、鉄イオン剤、アスコルビルステアレート、オレオイルサルコシン、アルキルサルフェート、ジオクチルスルホスクシネート、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の局所口腔用組成物。
【請求項4】
アスピリン、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、アスピリン、ケトプロフェン、ピロキシカム、メクロフェナム酸、ノルジヒドログアイアレチン酸、及びこれらの混合物から選択される抗炎症剤を更に含む、請求項2に記載の局所口腔用組成物。
【請求項5】
前記組成物が、口内洗浄剤、練り歯磨き、歯用ゲル、歯磨き粉、非研磨剤ゲル、ムース、フォーム、チューインガム、口内スプレー、トローチ剤、経口錠剤、歯科用器具、及びペットケア製品から選択される形態である、請求項1に記載の局所口腔用組成物。
【請求項6】
補酵素Q10、PQQ、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、アネトール−ジチオチオン、及びこれらの混合物からなる群から選択される細胞酸化還元状態調整剤である宿主反応調節剤を更に含む、請求項1に記載の局所口腔用組成物。
【請求項7】
前記組成物が、抗菌/抗歯垢剤、バイオフィルム阻害剤、抗生物質、鎮痛剤、局所用麻酔剤、象牙質減感剤、悪臭マスキング剤、及びこれらの混合物から選択される追加の治療活性物質を含む、請求項1に記載の局所口腔用組成物。
【請求項8】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、PGE、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β変換酵素(ICE)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、ヒアルロニダーゼ、カテプシン、核因子κB(NF−κB)、及びIL−1受容体関連キナーゼ(IRAK)から選択される1つ以上の宿主炎症促進因子に対して阻害活性を有する薬剤の、口腔細菌感染の治療及び予防、並びに前記口腔細菌感染及び全身系疾患を有する又は発生する危険性のある患者にて前記口腔細菌感染によって媒介される全身系疾患を阻害するための局所口腔用組成物の製造における使用であって、前記組成物が、バイオフィルム形成と、バイオフィルム定着と、ジンジパイン、METアーゼ及びシスタリシンから選択される酵素とから選択される1つ以上の細菌性病原因子に対して有効な活性剤と、口腔に許容可能なキャリアとを含む組成物を前記患者の口腔に局所投与することを更に含む、使用。

【公表番号】特表2010−508346(P2010−508346A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535253(P2009−535253)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/007972
【国際公開番号】WO2008/057136
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】