説明

抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料

【課題】農産物用包装材料として有用な抗菌性ポリマー材料、ならびにコンドームシース、外科用チューブおよび外科用手袋を形成するのに有用な抗ウィルス性ポリマー材料並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】粉末形態のイオンの銅の微視的水不溶性粒子を有しており、該粒子がCuOとCu2Oの混合物であって、Cu++を放出するものであり、ポリマー材料に該粒子の一部が露出され、かつその表面から突出する状態で封入された、抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料並びにその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は農産物用包装材料として有用な抗菌性ポリマー材料、ならびにコンドームシース、外科用チューブおよび外科用手袋を形成するのに有用な抗ウィルス性ポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
全ての食品の輸出業者が直面する問題は、輸送中における収穫された後の農産物への微生物による攻撃である。それは、輸送が数時間というよりも数日、数週間あるいは数ヶ月に及ぶ場合に特に当てはまる。微生物は農産物に深刻なダメージをもたらし、消費者に課される付加的なコストの原因となることが知られている。その一例はイスラエルでのイチゴの収穫高である。毎年、収穫高の約50%が微生物の攻撃のせいで輸送中に失われている。今日まで、無駄になる割合を効果的に減らすことができる有効なシステムは開発されてこなかった。
【0003】
食品の輸送に用いる包装材料は、バーラップバックから、強度、柔軟性、通気性を示しかつ廉価である高機能のポリマー包装まで、数多く存在する。しかし、今日まで、どれも、包装された農産物中で繁殖する微生物の増殖を阻害することはできない。
【発明の概要】
【0004】
本発明に従えば、少ないパーセンテージの粉末形態のCu++を、包装材料に形成されるポリマーのスラリーに添加することで、そのパッケージには抗菌性が付与されることが今や見出された。
【0005】
また、驚くべきことに、コンドームに形成されるポリマーのスラリーに粉末形態のCu++を添加することで、体液中の活性なHIV−1を阻害して減じるコンドームが製造されることも見出された。
【0006】
同様に、抗菌特性および抗ウィルス特性を有する外科用手袋および外科用チューブを本発明に従って製造することができる。
【0007】
WO98/06508およびWO98/06509には、直接かつしっかりとその繊維に結合した、全部または部分的な金属または金属酸化物のメッキを有する様々な形態のテキスタイル(ここで金属および金属酸化物には、銅が含まれ、これらは該繊維に結合している)の教示がある。
【0008】
より詳細には、WO98/06509では、(a)金属被覆テキスタイル(該金属被覆テキスタイルは(i)天然繊維、合成セルロース繊維、再生繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ビニル繊維、およびそれらの混紡からなる群より選ばれる繊維を含むテキスタイルと(ii)金属および金属酸化物からなる群より選ばれる材料を含むメッキとを含み、該金属被覆テキスタイルはメッキが繊維に直接結合されているという特徴を有する)を提供する工程と、(b)金属被覆テキスタイルを製品に組み込む工程とを包含するプロセスが提供される。
【0009】
上記発明において、「テキスタイル」との語は、繊維(その繊維から紡糸した、天然(例えば、綿、絹、毛、および亜麻糸)または合成の糸のいずれでも)およびそれらの糸から作られた、織物、編物、および不織布を含む。上記発明の範囲には、全ての天然繊維;およびテキスタイル用途に用いられる全ての合成繊維が含まれ、これには合成セルロース繊維(すなわち、レーヨン等の再生セルロース繊維およびアセテート繊維等のセルロース誘導体繊維)、再生タンパク繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、およびビニル繊維が含まれるがこれらに限定されない(ただし、ナイロンおよびポリエステル繊維、ならびにそれらの混紡は除く)。
【0010】
上記発明は、金属を用いたプラスチックの電解メッキで使用される技術を適応した製品(特にプラスチック製のプリント基板)への適用を含んでいた。例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(編者Jacqueline I. Kroschwitz),Wiley and Sons,1987,vol.IX,pp580-598を参照。テキスタイルに適用する場合、該プロセスは2工程を含んだ。第一工程は、触媒貴金属の核形成部位をテキスタイル上に沈殿させることによるテキスタイルの活性化であった。これは、まず低酸化状態の還元剤カチオンの溶液にテキスタイルを浸漬し、次いで、貴金属カチオンの溶液、好ましくはPd++カチオンの溶液、最も好ましくは酸性PdCl2溶液に、テキスタイルを浸漬することによってなされた。低酸化状態のカチオンは、より高酸化状態に酸化されながら、貴金属カチオンを貴金属自体に還元する。好ましくは、還元剤カチオンは、最初の低酸化状態および最後の高酸化状態の両方で溶解性のものである(例えば、Sn++。これはSn++++に酸化される;またはTi+++。これはTi++++に酸化される)。
【0011】
第二工程は、活性化テキスタイルの非常に近傍での金属カチオンの還元(その還元は貴金属により触媒される)であった。カチオンを還元するのに使用した還元剤は、典型的には、分子種(例えば、Cu++の場合、ホルムアルデヒド)であった。還元剤が酸化されたので、本明細書中では金属カチオンを「酸化剤カチオン」という。該ように作られた金属被覆テキスタイルは、その金属メッキがテキスタイルの繊維に直接結合されていたのが特徴であった。
【0012】
WO98/06508は、
(a)天然繊維、合成セルロース繊維、再生タンパク繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ビニル繊維、およびそれらの混紡からなる群より選ばれる繊維を含むテキスタイルと、
(b)金属および金属酸化物からなる群より選ばれる材料を含むメッキ
とを含む組成物であって、該メッキが該繊維に直接結合されていることを特徴とする組成物を記載し特許請求している。
【0013】
上記公報はまた、
(a)天然繊維、合成セルロース繊維、再生タンパク繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ビニル繊維、およびそれらの混紡からなる群より選ばれる繊維を含むテキスタイルと、
(b)複数の核形成部位であって、該核形成部位のそれぞれが少なくとも1つの貴金属を含む複数の核形成部位とを含む組成物であって、少なくとも1つの金属カチオン種の還元金属への還元(これにより該繊維を該還元金属でメッキする)を触媒することにより特徴づけられる組成物を特許請求している。
【0014】
さらに、上記公報は、上記製品の製造方法を教示し、特許請求している。
【0015】
上記公報に従って金属被覆テキスタイルを調製するための好ましいプロセスには、
a)糸およびファブリックからなる群より選ばれる形状のテキスタイルを選択する工程であって、該テキスタイルが、天然繊維、合成セルロース繊維、再生タンパク繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ビニル繊維、およびそれらの混紡からなる群より選ばれる繊維を含む工程と、
b)少なくとも2つの正の酸化状態を有する少なくとも1つの還元剤カチオン種を含む溶液に、上記テキスタイルを浸漬する工程であって、該少なくとも1つのカチオン種が、該少なくとも2つの正の酸化状態のうちの低い方の状態にある工程と、
c)少なくとも1つの貴金属カチオン種を含む溶液に上記テキスタイルを浸漬する工程(これにより活性化テキスタイルを作る)と、
d)上記活性化テキスタイルと接触している媒体中の少なくとも1つの酸化剤カチオン種を還元する工程とが含まれる。
【0016】
しかし、該刊行物は、該プロセスに従って製造される被覆された繊維およびテキスタイルに限られるのであって、本明細書に記載され例示されるような、イオンの銅をポリマーのスラリーに導入し、それによってポリマーに封入され(encapsulate)、かつその表面から突出しているイオンの銅の微視的粒子(microscopic particle)を有し、かつ、抗菌性および抗ウィルス性のポリマー特性を有する、フィルムおよび繊維が製造される可能性を教示も示唆もしない。
【0017】
このような技術の実情に鑑み、今や、本発明に従って、抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料であって、イオンの銅の微視的粒子を有しており、該粒子が該ポリマー材料に封入され、かつその表面から突出している、ポリマー材料が提供される。
【0018】
本発明の別の側面においては、抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料の製造方法であって、ポリマーのスラリーを製造し、該スラリーにイオンの銅の粉末を導入して該スラリー中に該粉末を分散し、次いで、該スラリーを押出成形して、該イオンの銅の粒子が封入され、かつその表面から突出しているポリマー材料を形成することを含む、製造方法が提供される。
【0019】
本発明のポリマー材料はフィルム、繊維または糸の形態であってもよく、フィルムはそれ自身で使用され、並びに繊維および糸は農産物用包装材料に成形することができる。
【0020】
当該材料は、ほとんど全ての合成ポリマーから作ることができ、該ポリマーは、その液状スラリー状態の中に、アニオンの銅の粉(dust)の添加を許すであろう。幾つかの材料には、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、サイラスティックラバーおよびラテックスが例示される。銅の粉が微粉末(例えば、1ミクロンと10ミクロンとの間の大きさ)に粉砕され、少量(例えば、ポリマー重量の0.25%と10%との間の量)でスラリーに導入されると、そのスラリーから引き続いて製造される製品は抗菌性および抗ウィルス性の両方を示すことが分かった。
【0021】
例えば、WO98/06508およびWO98/06509に記載される、外側にコートされた繊維とは異なり、本発明の製品においては、ポリマーは、該ポリマーに封入され、かつその表面から突出しているイオンの銅の微視的粒子を有している。ポリマー材料の表面から突出しているこれらの粒子は、後述する試験によって証明されるように、活性であることが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、高分子スラリーへの添加後、ナイロン繊維中に埋め込まれ、かつそこから突出している銅粒子を有するナイロン繊維の電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、本発明に従ってイオンの銅の量を変動させて含ませた滅菌ラテックス手袋片でのHIV−1の阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一般的に、本発明の製品は以下のように製造される:
1.任意のポリマーからスラリーを製造する。主たる原料は、好ましくは、ポリアミド、ポリエチレン、ポリウレタンおよびポリエステルから選択される。該材料の二以上の組合わせは、それらが相溶するかまたは相溶するように調整されるのであれば、用いることができる。ポリマーの原料は、通常、ビーズの形態であり、本来的に単一成分、二成分または多成分であってもよい。ビーズを、好ましくは約120〜180℃の温度に加熱して融解させる。
2.熱混合段階(押出成形前)で、イオンの銅の粉末をスラリーに添加して、加熱されたスラリー中に自由に拡散させる。粒子の大きさは好ましくは1ミクロンと10ミクロンとの間であるが、フィルムまたは繊維の厚さがより大きな粒子に適応することができる場合には、粒子はより大きくすることができる。
3.次いで、液状のスラリーを圧力をかけて、紡糸口金と呼ばれる円形に形成された金属プレートの一連の穴へ押し通す。スラリーは、互いに近接した微小な穴へ押し通されるので、それらは単一の繊維、あるいは互いに接触できるなら、フィルムまたはシースを形成する。高温の液状繊維またはフィルムは冷たい空気とともに上方へ押されて、連続した一連の繊維または円形のシートを形成する。繊維またはシートの厚さは、穴の大きさと、スラリーが穴に押し通され、冷却空気流によって上方へ押される際の速度とによって制御される。
4.イオンの銅の粉が10重量%までの混合物においては、ポリアミドのスラリーにおいて、最終製品の物性の劣化は認められなかった。試験のときには、1%のように低い混合物ですら抗菌特性を示すとともに、驚くべきことにHIV−1活性の阻害も示した。
【0024】
収穫された後の包装システムとしての当該材料の使用について言及すると、パッケージの外部の微生物は包まれた領域に侵入できず、パケット内部の微生物は包装材料の内側(通常、包まれた領域内での凝縮に起因して微生物が成長するところである)に沿って増殖することが困難であることが判った。
【0025】
また、本明細書上記に示したように、本発明のポリマー材料(該ポリマー材料に封入されたイオン(ironic)の銅の微視的粒子を有する)は、鋳型/成形構造(configuration)を用いた使い捨て手袋およびコンドームの製造にも利用され得る。
【0026】
概して、主な原料は濃縮保存された天然ゴムのラテックスである。さらに、当該分野で公知の通り、酸、塩素ガス、アルカリなどの薬品およびコーン/トウモロコシデンプンが添加され得るが、本発明によると、さらに、粉末形態のCU++が添加される。
【0027】
成形器(former)(または凸鋳型)を液体ラテックスが成形器に張り付かない調製法によって準備する。これは、当該分野において自体公知である、一連の浸漬および鋳型への処理によって行われる。次いで、成形器を清掃、乾燥し、凝固剤薬品の溶液に浸漬する。凝固剤は成形器上に層を形成し、成形器をラテックスのタンク中に浸漬する際にラテックスを凝固するのに役立つ。
【0028】
成形器をラテックスの混合物に浸漬し、そこから取り出し、硬化オーブンを通過させる。手袋および/またはコンドームは、それらが約120〜140℃の範囲の温度と同一の温度を晒すオーブンの異なる領域を通過するにつれて、加硫される。該製造方法は、ラテックスゴムを架橋し、必要とされる物理的な品質を与える。
【0029】
使い捨て手袋/コンドームを製造する通常の製造方法と本発明の製造方法との間の差異は原料へのCu++粉末の添加である。
【0030】
本発明を、その局面がより完全に理解され評価され得るように、以下の実施例において特定の好ましい実施態様と絡めてここに記載するが、本発明をこれらの特定の実施態様に制限することは意図しない。反対に、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含まれ得るような全ての改変物、修飾物および等価物を包含することが意図される。従って、好ましい実施態様を含む以下の実施例は、本発明の実施を例示する役目をするものであり、示した特定物は本発明の好ましい実施態様の例示の目的および例示的考察のためのみのものであり、定式化手順ならびに本発明の原理および概念的局面の記載が最も有用かつ容易に理解されると考えられるものを提供する過程で提示されることが理解される。
【0031】
実施例1−繊維の調製
2つのビーズ状の薬品を各160℃の別個の浴中で加熱することによって全500グラムのポリアミド2成分化合物を調製した。
次いで、2つの別個の成分を共に混合し、混合物をその色が均一に見えるまで15分間攪拌した。
該混合した化学品(chemistry)を再度2つの別個のポット中に分割した。一方のポットにはCuOとCu2O粉末の混合物25グラムを添加し、1%混合物を得た。第二のポットにはCuOとCu2Oの混合物6.25グラムを添加し、0.25%混合物を得た。両方の場合において、160℃の温度を維持した。化合物をその色が均一に見えるまで攪拌した。
2つの混合物を孔を有する紡糸口金を通過させた。紡糸口金は、直径が50と70ミクロンとの間の繊維を与えた(hield)。Cu++放出粉末を20ミクロン未満の粒子に粉砕したので紡糸口金の孔に障害物は観察されなかった。押し出された繊維を空冷し、円錐形に紡績した。
繊維を生物学的な活性について試験した。
任意の合成繊維を製造する通常の製造方法と該製造方法との間の差異は、原料へのCu++放出粉末の添加である。
【0032】
実施例2
高濃縮HIV−1ウイルスの100μlアリコートを37℃で30分間、繊維上でインキュベートした。次いで、各10μlの前処理したウイルスを1mlの培地で培養したMT−2細胞(リンパ球 ヒト 細胞株)に添加した。次いで、細胞を37℃のモイストインキュベーター中で5日間インキュベートし、ウイルスの感染性および増殖を市販のELISA(Enzyme Based Immuno-absorbtion Assay)キットを用いて上清中のp24(特異的HIV−1タンパク質)の量を測定することによって決定した。結果は2回の実験の平均である。細胞へのCuOまたはCu2Oの可能性のある細胞毒性のコントロールとして、上記と同様の実験を行ったが、HIV−1を含まない100μlの天然媒地と共に繊維をインキュベートした。細胞毒性は観察されなかった。すなわち、上述した実験条件において死滅した宿主細胞は観察されなかった。
CuOおよびCu2Oを含ませた幾つかの繊維の、組織培養におけるHIV−1増殖を阻害する能力の評価を以下にまとめる。
陰性コントロール(CuOおよびCu2Oを含まないポリマー繊維):阻害なし
陽性コントロール(CuOおよびCu2O粉末): 70%阻害
1%CuOおよびCu2O繊維: 26%阻害
【0033】
実施例3
抗真菌感受性試験
感受性試験を以下の通りに行った:
該試験に使用した寒天処方物をNCCLS document M27−Aに従って選択し(RPMI(RPG))、0.165Mのモルホリンプロパンスルホン酸緩衝液(MOPS)でpH7.0に緩衝化した。
試験において、4.0mmの深さの寒天を含む90-mm-直径のプレートを使用した。Candida albicans、Cryptococcus neoformans、micrococcus、Tinea pedisおよびTinea curpusにおいて、接種物をそれぞれ24時間培養物および48時間培養物から調製し、対して、Aspergillus furnigatusおよびTrichophyton mentagrophytesにおいて、5日齢培養物を使用した。細胞懸濁液を滅菌0.85%NaCl中で調製し、0.5 McFarland標準の濁度に調整した。寒天の全表面にわたって、細胞懸濁液中に浸漬した無毒スワブを3方向に寒天全面に渡って画線することによって寒天表面に接種した。
過剰量の水分を寒天に吸収させた後、表面を完全に乾燥し、3%〜10%の範囲の濃度のChemtex/MTCで処理した繊維を各プレートに適用した。プレートを35℃でインキュベートし、24時間、48時間および7日間後に読み取った。処理した繊維の抗真菌活性は、繊維の下側および繊維の周囲で阻害領域が視認できた場合、陽性とみなした。
【0034】
抗菌感受性試験
感受性試験を以下の改変を伴って上記抗真菌活性に記載のように行った:Mueller−Hinton寒天(Difco、デトロイト、MI)を培地として使用した。pHを7.2〜7.4に調整した。該研究に使用した細菌は、Escherichia coli、Staphylococcus aureus、brevubacterium、acinetobacterおよびmicrococcusであった。
【0035】
結果
3〜10%の範囲の濃度で処理した繊維は、該繊維の下側および繊維の周囲に特徴的な阻害領域を示し、まさしく抗真菌および抗菌活性を示した。コントロール(未処理の繊維)は抗真菌または抗菌活性を示さなかった。
【0036】
実施例4
HIV−I IIIB(実験用T細胞感染性株、0.36pg p24[ウイルスの量])を含む50μlのRPMI 1640倍地をUV滅菌した手袋片上に配置した。ウイルス活性の陰性コントロールとして50μlの培地を手袋上に配置し、そして陽性コントロールとしてウイルスを通常の手袋(すなわち、Cu++含まず)上に配置した。実験を2回行った。すなわち、各手袋(Cu++の濃度が異なる)において、ウイルスあり、ウイルスなしの2つの別個の滴を配置した。
室温で20分間のインキュベーションの後、ウイルスを含む50μlの滴を450μlの新鮮培地(10%仔ウシ血清を含む)と混合し、混合物を1ml培地(10%仔ウシ血清を含む)中の2×105MT−2細胞(リンパ球細胞株)に添加した。
次いで、ウイルス−細胞混合物を37℃のCO2加湿インキュベーターにおいて24ウェルプレート中でインキュベートした。4日間のインキュベーションの後、1ウェルあたりに存在するウイルスの量を逆転写酵素(RT)アッセイによって定量した。
RTはHIV−Iの重要な酵素であり、該酵素はRNA鎖からDNA鎖を重合し得る。放射線標識したデオキシヌクレオチドを添加することによって、新たに合成されたDNAの量が定量され得る。図2に示す阻害の割合は、各手袋の濃度で得られた1分あたりの平均カウント数(CPM)を、通常のコントロールの手袋で得られたCPMで除算することによって計算された。
該グラフが示すように、1%以上の銅イオンを室温で産出する化合物が含まれたラテックス手袋の表面への濃縮HIV−1ウイルスの20分間の暴露は、結果として、続いて起こるリンパ球(HIV−1の主な標的)のウイルス感染を95%を越えて中和した。該結果は、スラリー中に銅を含ませて手袋またはコンドームなどの他の物品を形成し、血液または精液などのヒトの汚染された液体において見出され得る感染性ウイルスを中和するアプローチの可能性を指摘する。
【0037】
本発明が前述の例示的な実施例の詳細に限定されないこと、および本発明がその本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で具体化され得ることは当業者に明らかであろう。そして、それゆえ、本明細書の実施態様および実施例は全ての面において例示であって限定するものではないと考えられ、参照は先行する明細書ではなく添付の請求の範囲に対してなされるので、それゆえ、請求の範囲と同等の意味および範囲内での全ての改変はその中に包含されると意図されることが望まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料であって、イオンの銅の微視的粒子を有しており、該粒子が該ポリマー材料に封入され、かつその表面から突出している、ポリマー材料。
【請求項2】
上記ポリマー材料がフィルムである、請求項1記載の抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料。
【請求項3】
上記ポリマー材料が繊維である、請求項1記載の抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料。
【請求項4】
上記ポリマー材料が糸である、請求項1記載の抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料。
【請求項5】
上記粒子が1ミクロンと10ミクロンとの間の大きさである、請求項1記載の抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料。
【請求項6】
上記粒子がポリマー重量の0.25%と10%との間の量で存在する、請求項1記載の抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料。
【請求項7】
請求項1記載の抗菌性のポリマー材料を含む包装材料。
【請求項8】
抗ウィルス性のポリマー材料を含むコンドームであって、該ポリマー材料が微視的粒子を有しており、該粒子が該ポリマー材料に封入され、かつその表面から突出している、コンドーム。
【請求項9】
抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料の製造方法であって、ポリマーのスラリーを製造し、該スラリーにイオンの銅の粉末を導入して該スラリー中に該粉末を分散し、次いで、該スラリーを押出成形して、該イオンの銅の粒子が封入され、かつその表面から突出しているポリマー材料を形成することを含む、製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−229424(P2012−229424A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−129188(P2012−129188)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2001−571930(P2001−571930)の分割
【原出願日】平成13年4月1日(2001.4.1)
【出願人】(507145226)ザ カプロン コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】