説明

抗菌性および抗凝固性を有するカテーテルロック溶液

本発明は、局所麻酔薬および粘性付与剤を含み、抗菌活性および抗凝固性の両方を有するカテーテル溶液を含む。本発明の局所麻酔薬は、アミノアミド、アミノエステル、アミノアシルアニリド、安息香酸アミノアルキルエステル、アミノカーボネート、N−フェニルアミジン化合物、N−アミノアルキルアミド、アミノケトン、またはそれらの組み合わせおよび混合物であってもよい。本発明の具体的実施形態において、局所麻酔薬はテトラカインまたはジブカインである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物のコロニー形成が実質的に存在しない状態にカテーテルを維持することに関する。具体的には、本発明は、カテーテルの内腔内で利用可能であり、かつ抗菌性および抗凝固性の両方を有する溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、「抗菌性および抗凝固性を有するカテーテルロック溶液」の名称を有し、2009年6月11日に出願された米国特許仮出願第61/186,173号に対する優先権を主張する。当該仮出願の内容は、参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0003】
カテーテル、特に静脈内(IV)カテーテルは、患者に対して薬剤のような流体を注入するために、または患者から血液のような流体を抜き取るために用いることができる。カテーテルは、患者の体内へと注入される流体または薬剤、あるいは、患者の体内から取り出される流体または薬剤を収容する内腔または貯蔵部を含んでもよい。特定の構成においては、カテーテル内に注入ポートを設けてもよい。
【0004】
カテーテルに関する障害は、気胸/血胸、動脈穿刺および神経障害のようなカテーテルの挿入に関するもの、および、血栓、感染および凝固のようなカテーテルの使用の結果として発生するものを含む。カテーテル閉塞は、しばしば、カテーテルの内腔内部でのフィブリンシース(fibrin sheath)の形成に関連する血栓性障害に起因して発生する。フィブリンシースの形成は、カテーテル内腔内での細菌の付着を可能とし、カテーテルに関連する感染の中心として機能する。
【0005】
複数回の使用の間のカテーテル閉塞の障害を回避するために、一般的に用いられる抗凝固剤であるヘパリンの濃厚溶液を含むロック溶液を、カテーテルに充填することができる。ヘパリンロック溶液は、当該溶液によってカテーテルの内腔全体を充填する。ヘパリンロック溶液は、それぞれの使用の後に直ちにカテーテル内腔中に注入され、好ましくはカテーテルを再び利用するまでカテーテル内部に残される。ヘパリンロック溶液は、ヘパリンロック溶液が患者の体内に導入されないように、次の使用の前にカテーテルから抜き取らなければならない。典型的には、ヘパリンロック溶液は、カテーテル内腔当たり10000単位までのヘパリンを含む。患者に対するこの量のヘパリンの注入は、過度の出血をもたらす恐れがある。
【0006】
しかしながら、伝統的なヘパリンロック溶液の使用によってさえ、カテーテル内部での血液の凝固によって、複数回の使用の間にカテーテルが閉塞する恐れがある。不適切な体積のヘパリンがカテーテル内腔の内部に注入されること、内腔からヘパリンロック溶液が拡散すること、または残余血液が内腔内に残存することのために、血液がカテーテル内部に存在する可能性がある。これは、しばしば、血栓の形成をもたらし、付随して内腔を通る流れの損失をもたらす。
【0007】
ヘパリンは、実質的に抗菌性を持たず、実際、カテーテル表面上のタンパク質のバイオフィルム層内部での細菌の成長を促進する可能性がある。カテーテル表面上のバイオフィルムのタンパク質は、抗生物質および白血球からカテーテル内腔内部での細菌の成長を保護することができる。同様に、ヘパリンは、血小板の損失を誘起することが見いだされており、および、一部の患者において凝固を誘起する可能性がある。
【0008】
複数回の使用の間のカテーテル閉塞の障害を回避するために、ある種のカテーテルに、クエン酸ナトリウムのようなクエン酸塩を含むロック溶液で充填してもよい。クエン酸ナトリウムは既知の抗凝固剤であり、(体内試験当たり)約20単位/mLのヘパリンと同等であるが、それは、低濃度(<10%)において抗菌活性を持たない。高濃度のクエン酸ナトリウムを投与することは患者に対する毒性をもたらす恐れがあるため、これは問題である。
【0009】
患者に移植されたカテーテルが感染した場合、患者に対して、追加の全身の抗生物質処置、および/またはカテーテルの取り出しが必要となる恐れがある。カテーテルに関連する感染の危険は、体内へのカテーテル存置の期間、挿入部位、血管の解剖学的位置、不適切なカテーテル挿入技術、および不適切な種類のカテーテル材料の使用によって、変化する可能性がある。
【0010】
カテーテルに関連する重篤な感染の大部分は、中心静脈カテーテル、特に、集中治療室(ICU)内の患者に設置されるものに関連する。ICU環境において、感染の発生率は、しばしば、それほど重大ではない入院患者または通院患者の環境における発生率よりも大きい。肺動脈カテーテルおよび末梢動脈カテーテルのような特定のカテーテルは、血行動態測定のために、または実験室分析のための試料を得るために1日に複数回にわたって利用される可能性があり、汚染および引き続く臨床感染の可能性が増大する。
【0011】
カテーテルに関連する血流感染(CR−BSI)に最も一般的に関連する病原菌の例は、コアグラーゼ陰性生物、グラム陽性病原菌、グラム陰性病原菌、および真菌性生物を含む。グラム陽性病原菌の例は、Staphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisのようなStaphylococcus属の生物、Enterococcus属の種、およびBacillus属の種を含む。グラム陰性病原菌は、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas cepacia E. coli、およびKlebsiella属の種を含む。CR−BSIに一般的に関連する真菌性微生物の例は、Candida albicansのようなCandida属の種を含む。
【0012】
加えて、細菌種は、抗生物質による治療に対する抵抗性を迅速に獲得し、メチシリン耐性S. aureus、バンコマイシン低感受性S. aureus、およびバンコマイシン耐性enterococcus属を含む。
【0013】
微生物性病原菌がカテーテル内腔の内表面にコロニーを一度形成したならば、当該病原菌は、自己生成される細胞外ポリマーマトリックス中に埋め込まれる可能性がある。このマトリックスの内部で、病原菌は、宿主の防御および伝統的な抗生物質から保護される。
【0014】
したがって、抗凝固性を追加的に付与し、微生物性病原菌がカテーテルをコロニー化することを防止するための代替法に関する要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの実施形態は、局所麻酔薬および粘性付与剤(Viscosifying agent)を含むカテーテルロック溶液を指向する。
【0016】
具体的には、本発明のカテーテルロック溶液は、局所麻酔薬および粘性付与剤を含んでもよく、局所麻酔薬は、アミノアミド、アミノエステル、アミノアシルアニリド、安息香酸アミノアルキルエステル、アミノカーボネート、N−フェニルアミジン化合物、N−アミノアルキルアミド、アミノケトン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含む。局所麻酔薬は、ジブカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、ノボカイン、クロロプロカイン、プロポキシカイン、クロロカイン(chlorocaine)、メピバカイン、キシロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(dimethocaine)、ポポキシカイン(popoxycaine)、プロパラカイン、アーチカイン(articaine)、カーチカイン(carticaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、ピペロカイン、トリメカイン(trimecaine)、ヘキシルカイン、ベノキシネート、ブツカイン(butucaine)、ジペロドン、フェナカイン、ファリカイン(falicaine)、ジクロニン、プラモキシン、ジメチソキン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物からなる群から選択されてもよい。局所麻酔薬は、0.05mg/mL〜100mg/mLの量、たとえば0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在することができる。
【0017】
粘性付与剤は、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン(polygeline)、デキストラン、またはそれらの任意の混合物であってもよい。特に、局所麻酔薬がテトラカインであり、粘性付与剤がポリエチレングリコールであってもよく、あるいは、局所麻酔薬がジブカインであり、粘性付与剤がポリエチレングリコールであってもよい。局所麻酔薬は、重量パーセントで0.001%から99.99%の濃度でカテーテルロック溶液中に存在してもよく、粘性付与剤は、重量パーセントで0.001%から99.99%の濃度でカテーテルロック溶液中に存在してもよい。また、カテーテルロック溶液は、追加の抗菌剤および/または追加の抗凝固剤を含んでもよい。
【0018】
本発明の別の実施形態は、カテーテル中で抗菌活性および凝固を阻害する方法を指向し、該方法は、内腔を画定するカテーテルを提供する工程と、局所麻酔薬および粘性付与剤を含むカテーテルロック溶液をカテーテルの内腔に注入する工程を含む。
【0019】
指定時間、たとえば1週間以内の後に、カテーテルの内腔にカテーテルロック溶液を再注入してもよい。さらに、カテーテルの内腔は内部体積を有し、ロック溶液が内腔の内部体積の約80%および約100%の間を充填するように、ロック溶液を内腔中へと注入してもよい。カテーテルの内腔は、1〜1000回にわたって注入されてもよい。
【0020】
本発明の別の実施形態は、予充填シリンジを指向する。予充填シリンジは、局所麻酔薬および粘性付与剤を含むロック溶液を含む。
【0021】
本発明の予充填シリンジ内に収容されるカテーテルロック溶液は、局所麻酔薬および粘性付与剤を含んでもよい。局所麻酔薬は、アミノアミド、アミノエステル、アミノアシルアニリド、安息香酸アミノアルキルエステル、アミノカーボネート、N−フェニルアミジン化合物、N−アミノアルキルアミド、アミノケトン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含む。局所麻酔薬は、ジブカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、ノボカイン、クロロプロカイン、プロポキシカイン、クロロカイン(chlorocaine)、メピバカイン、キシロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(dimethocaine)、ポポキシカイン(popoxycaine)、プロパラカイン、アーチカイン(articaine)、カーチカイン(carticaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、ピペロカイン、トリメカイン(trimecaine)、ヘキシルカイン、ベノキシネート、ブツカイン(butucaine)、ジペロドン、フェナカイン、ファリカイン(falicaine)、ジクロニン、プラモキシン、ジメチソキン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物からなる群から選択されてもよい。局所麻酔薬は、0.05mg/mL〜100mg/mLの量、たとえば0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在することができる。
【0022】
粘性付与剤は、ポリエチレングリコール、グリセリン、デキストラン、またはポリゲリン(polygeline)であってもよい。特に、局所麻酔薬がテトラカインであり、粘性付与剤がポリエチレングリコールであってもよく、あるいは、局所麻酔薬がジブカインであり、粘性付与剤がポリエチレングリコールであってもよい。局所麻酔薬は、重量パーセントで0.001%から99.99%の濃度でカテーテルロック溶液中に存在してもよく、粘性付与剤は、重量パーセントで0.001%から99.99%の濃度でカテーテルロック溶液中に存在してもよい。また、予充填シリンジ内に収容されるカテーテルロック溶液は、追加の抗菌剤および/または追加の抗凝固剤を含んでもよい。
【0023】
本発明の別の実施形態は、それを貫く内腔を画定する管を含むカテーテルを指向し、内腔の少なくとも一部にカテーテルロック溶液が注入される。カテーテルロック溶液は、抗凝固活性および抗菌活性を有する局所麻酔薬と、粘性付与剤とを含む。
【0024】
具体的には、本発明のカテーテルロック溶液は、局所麻酔薬および粘性付与剤を含んでもよい。局所麻酔薬は、アミノアミド、アミノエステル、アミノアシルアニリド、安息香酸アミノアルキルエステル、アミノカーボネート、N−フェニルアミジン化合物、N−アミノアルキルアミド、アミノケトン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含む。局所麻酔薬は、ジブカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、ノボカイン、クロロプロカイン、プロポキシカイン、クロロカイン(chlorocaine)、メピバカイン、キシロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(dimethocaine)、ポポキシカイン(popoxycaine)、プロパラカイン、アーチカイン(articaine)、カーチカイン(carticaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、ピペロカイン、トリメカイン(trimecaine)、ヘキシルカイン、ベノキシネート、ブツカイン(butucaine)、ジペロドン、フェナカイン、ファリカイン(falicaine)、ジクロニン、プラモキシン、ジメチソキン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物からなる群から選択されてもよい。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、抗凝固活性および抗菌活性を有する局所麻酔薬と、粘性付与剤とを含むカテーテルロック溶液を指向する。局所麻酔薬は、ジブカインであり、0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在する。粘性付与剤はポリエチレングリコールである。
【0026】
本発明の別のさらなる実施形態は、抗凝固活性および抗菌活性を有する局所麻酔薬と、粘性付与剤とを含むカテーテルロック溶液を指向する。局所麻酔薬は、テトラカインであり、0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在する。粘性付与剤はポリエチレングリコールである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に従い、経時における、種々の剤に対するStaphylococcus epidermidisの感受性のグラフである。
【図2】Staphylococcus epidermidis、Candida albicansおよびPseudomonas aeruginosaに関する、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プリロカインおよびテトラカインの最小バイオフィルム発育阻止濃度(MBIC、mg/mL単位)のグラフである。
【図3】カテーテルセグメント1インチ当たりのコロニー形成単位の対数値によって測定される、シリコーン管上のStaphylococcus epidermidisに対する種々の麻酔薬のカテーテル試験のグラフである。
【図4】カテーテルセグメント1インチ当たりのコロニー形成単位の対数値によって測定される、シリコーン管上のCandida albicansに対する種々の麻酔薬のカテーテル試験のグラフである。
【図5】特許請求の範囲に記載された発明のカテーテルロック溶液を含む予充填シリンジの縦方向断面図である。
【図6】カテーテルを水中に浸漬した際の、異なる時点におけるカテーテルセグメントの種々の位置にて測定された任意蛍光単位のグラフである。
【図7】カテーテルを3%デキストラン溶液中に浸漬した際の、異なる時点におけるカテーテルセグメントの種々の位置にて測定された任意蛍光単位のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1つの実施形態において、本発明は、局所麻酔薬と粘性付与剤とを含むカテーテルロック溶液を提供する。本発明のロック溶液は、カテーテルの開通性(開いている状態、すなわち遮断されていない状態)を高め、かつ抗凝固活性および抗生物活性を示す。本発明のロック溶液は、カテーテルの寿命を増大させること、カテーテル閉塞の発生率を減少させること、または患者の敗血症または細菌感染の発生率を減少させることにより、格別の利点を提供することができる。
【0029】
本明細書にて用いられる際に、「ロック溶液」または「ロッキング溶液」という用語は、カテーテルの内腔に注射または別の方法で注入される溶液であって、所望されるまで、または内腔の利用または再利用(典型的にはさらなる処置)が必要となるまで、該溶液の相当部分を内腔中に残存させることを意図する溶液を指す。さらなる処置は、たとえば、カテーテルの内腔中への流体の注入または抜き取りを含んでもよい。ロック溶液をカテーテル中に配置して、短期的保護または長期的保護を提供することができる。好ましくは、ロック溶液は、約1週間にわたって継続する所望される時間にわたって、内腔中に残存することができる。しかしながら、カテーテルの通常の管理または殺菌維持中のように、毎日の基準でロック溶液を交換してもよい。カテーテルを交換してもよく、あるいは、カテーテル内腔からロック溶液を吸引すること、および新規なカテーテルロック溶液を用いてカテーテル内部を所望される時間にわたってカテーテルをロックすることによって、カテーテルを更新してもよい。本発明のロック溶液の使用は、カテーテルの寿命を延長し、必要とされるロック溶液の交換の間の間隔を長くし、または患者の感染を阻止することができる。
【0030】
本明細書にて用いられる際に、「局所麻酔薬」という用語は、可逆的な局所的麻痺および/または痛覚欠如、および侵害受容(具体的には、有害な刺激をエンコードおよび処理する神経プロセス)の喪失をもたらす化合物または溶液を意味する。本発明における使用に適当な局所麻酔薬は、概して、2つのクラス(アミノアミド局所麻酔薬およびアミノエステル局所麻酔薬)の一方に属する。しかしながら、他のクラスおよびサブクラスの局所麻酔薬が本発明における使用に適当である可能性があり、そのような局所麻酔薬は:アミノアシルアニリド化合物、および環系またはアミン窒素の上の種々の置換基を有する関連化合物;安息香酸アミノアルキルエステル化合物;アミノカーボネート化合物;N−フェニルアミジン化合物;N−アミノアルキルアミド化合物;アミノケトン化合物;およびアミノエステル化合物を含むが、それらに限定されるものではない。本発明の1つの実施形態において、局所麻酔薬はアミノアミドであることができ、本発明の別の実施形態において、局所麻酔薬はアミノエステルであることができる。あるいはまた、局所麻酔薬は、アミノアミドおよびアミノエステルの混合物であることができる。
【0031】
本発明における使用に適当な局所麻酔薬の例は、ジブカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、ノボカイン、クロロプロカイン、プロポキシカイン、クロロカイン(chlorocaine)、メピバカイン、キシロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(dimethocaine)、ポポキシカイン(popoxycaine)、プロパラカイン、アーチカイン(articaine)、カーチカイン(carticaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、ピペロカイン、トリメカイン(trimecaine)、ヘキシルカイン、ベノキシネート、ブツカイン(butucaine)、ジペロドン、フェナカイン、ファリカイン(falicaine)、ジクロニン、プラモキシン、ジメチソキン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含む。
【0032】
カテーテルロック溶液は、0.05mg/mL〜100mg/mL、たとえば0.1mg/mL〜50mg/mLの量で、局所麻酔薬を含んでもよい。別の実施形態において、カテーテルロック溶液は、0.24mg/mL〜28.2mg/mL、たとえば0.59mg/mL〜18.8mg/mLの量で、局所麻酔薬を含んでもよい。別の実施形態において、カテーテルロック溶液は、0.94mg/mL〜4.75mg/mLの量で、局所麻酔薬を含んでもよい。さらなる実施形態において、粘性付与剤が、カテーテルロック溶液の残余を占める。
【0033】
ロック溶液は、所望される時間にわたってロック溶液を内腔内に維持するのに十分な粘度を有する。粘性付与剤なしでは、ロック溶液の粘度は、水の粘度(1MPa・s)に接近する。ロック溶液の粘度は、粘性付与剤を使用することによって増加させることができる。血液の粘度により接近するようにロック溶液の粘度を増加させることによって、ロック溶液は、カテーテル内腔から周囲の血液環境へと吸引されることを防止してもよい。好ましくは、ロック溶液は、血液の粘度以下である粘度に接近する粘度、たとえば約4MPa・s以下、または約3MPa・s以下の粘度を有する。
【0034】
本発明における使用に適当な粘性付与剤は、既知および人間を含む動物の処置に一般的に用いられている、薬学的に許容可能な剤を含む。「薬学的に許容可能な」という用語は、過度の毒性、刺激およびアレルギー反応なしに人間および下等動物の組織と接触する使用に適当な化合物、溶液または混合物を意味する。粘性付与剤の例は、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、デキストラン、またはポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリンおよびデキストランのいくつかの混合物を含むが、それらに限定されるものではない。本発明における使用が可能な他の粘性付与剤は、ポビドン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールアルギネート、アルギン酸ナトリウム、キトサン、カボポール(cabopol)、澱粉、メチルセルロース、カルボキシポリメチレン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ソルビトールおよびマンニトールのような非代謝性糖、デキストラン、またはそれらの混合物を含む。
【0035】
局所麻酔薬および粘性付与剤を含むカテーテルロック溶液は、抗菌活性および抗凝固活性を提供し、それによって、その体の部分(静脈または他の血管のようなもの)にカテーテルが挿入または移植される患者に対する保護を提供することができる。
【0036】
特に、単一の局所麻酔薬が、抗菌剤および抗凝固剤としての2つの機能を有することができる。これは、カテーテルを開通状態および感染のない状態に維持する現在の試み(抗生物質および他のキレート剤(EDTAまたはシトレートなど)を同時に用いる)に優る重要な改善である。2つの機能を有する単一の成分は、ロック溶液の製品の開発、製造、および臨床実施を容易にする。
【0037】
特に、本発明の局所麻酔薬は、抗菌活性を付与する抗菌剤であってもよい。本明細書で用いられる際に、「抗菌剤」という用語は、「抗菌活性」を提供する剤を意味する。本明細書で用いられる際に、「抗菌活性」という用語は、所望されない生物の増殖、成長または繁殖の破壊、阻害または防止を意味する。「生物」という用語は、微生物、細菌、波動細菌(undulating bacteria)、スピロヘータ、胞子、胞子形成性生物、グラム陰性生物、グラム陽性生物、酵母、真菌、カビ、ウイルス、好気性生物、嫌気性生物、およびミコバクテリアを含むが、それらに限定されるものではない。そのような生物の具体的な例は、
Aspergillus niger、Aspergillus flavus、Rhizopus nigricans、Cladosporium herbarium、Epidermophyton floccosum、Trichophyton mentagrophytes、Histoplasma capsulatumなどのような真菌;Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Proteus vulgaris、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermis、Streptococcus faecalis、Klebsiella、Enterobacter aerogenes、Proteus mirabilis、他のグラム陰性菌およびグラム陽性菌、ミコバクチンなどのような細菌;およびSaccharomyces cerevisiae、Candida albicansなどのような酵母を含む。加えて、本発明の範囲内において、微生物の胞子およびウイルスも生物とみなされる。
【0038】
加えて、局所麻酔薬および粘性付与剤を有する本発明の局所麻酔薬は、抗凝固活性を提供する抗凝固剤であってもよい。本明細書で用いられる際に、「抗凝固剤」という用語は、「抗凝固活性」を提供する剤を意味する。本明細書で用いられる際に、「抗凝固活性」という用語は、血液の凝固の阻害または防止を意味する。
【0039】
本発明のロック溶液は、追加の抗凝固剤および/または他の抗細菌剤とともに使用することもできるし、それらの剤を伴わずに使用することもできる。したがって、本発明の1つの実施形態において、カテーテルロック溶液は、追加の抗菌剤または抗凝固剤またはそれらの両方を含んでもよい。そのような抗細菌剤および抗菌剤は、当業者によく知られており、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クエン酸ナトリウム塩およびこれらの剤の混合物を含むが、限定されるものではない。追加の抗凝固剤は、たとえば、ヘパリン、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲン賦活剤(tPA)、およびこれらの剤の混合物を含む。
【0040】
前述のように、本発明のロック溶液を用いて、カテーテル中の抗菌活性および凝固を阻害し、それによってカテーテルの開通性を高めることができる。本発明によって規定されるカテーテルは、その中を貫く内腔を画定する管であり、該カテーテルは、体の部分に挿入されるか、または体または他の生物学的培養物と連通して、それらに流体を送ることまたはそれらから流体を取り出すために提供される。1つの実施形態において、本発明のカテーテルロック溶液をもちいて、軟性カテーテルのような薄く可撓性の管あるいはまた硬性カテーテルのような硬い管の抗菌活性および凝固を阻害することができる。本発明のカテーテルロック溶液を用いて、体の特定の部分に設置されるカテーテルの抗菌活性および凝固を阻害することができる。それは、尿路カテーテル法におけるように膀胱からの尿の排液;蓄積流体の排液;静脈内の流体、薬剤または出生前栄養の投与;血管形成術;血管造影法;バルーン中隔開口術;および動脈または静脈内の血圧の直接測定を可能にする。本発明のカテーテルロック溶液は、任意のカテーテルの抗菌活性および凝固を阻害するために用いることができるが、カテーテル溶液を用いて、たとえば、静脈中に移植される別個の抜き取りカテーテルおよび戻しカテーテルに依拠し、血液の体外処理を可能にする血液透析および血液濾過のために用いられるカテーテル、腹膜中に移植される単一のカテーテルに依拠し、透析液の導入および抜き取りを可能にし、インサイチューの透析を可能にする腹膜透析のために用いられるカテーテルの抗菌活性および凝固を阻害してもよい。
【0041】
本発明のカテーテルロック溶液を用いて、任意のカテーテルの抗菌活性および凝固を阻害してもよく、該カテーテルは、たとえば、末梢静脈カテーテル(PVC)を含む、流体および薬剤の静脈投与に用いられるカテーテル;末梢動脈カテーテル;正中線カテーテル;ノリトンネルド(noritunneled)中心静脈カテーテル(CVC);肺動脈カテーテル;経皮的に挿入される中心カテーテル(PICC);トンネル型(tunneled)カテーテル;完全に移植可能なカテーテル;および臍帯カテーテルを含む。PVCは、胸および腹以外の末梢静脈または静脈、たとえば腕および手の静脈、脚および足の静脈、頭皮静脈などにおいて広く用いられる。
【0042】
IVを用いてより長期の治療を必要とする患者の場合、本発明のカテーテルロック溶液を用いて、より大きな静脈、たとえば鎖骨下静脈または頸静脈に挿入されるカテーテルの抗菌活性および凝固を阻害してもよい。より長期の治療用のカテーテルは、CVCであってもよい。それは、上大静脈中まで延ばされ、薬剤および流体の投与における血流へのより迅速な到達を可能とし、かつ最大7日間にわたってその場所に存置できる。数週間にわたってその場所に存置することを必要とするCVCを、皮膚の下に移植または貫通させ、および大静脈内部に配置することをができる。
【0043】
また、PICCのような長期用の中心静脈カテーテルは、肘窩中へと挿入され、次いで上大静脈中まで延び、かつ数週間にわたって同一血管内に残存することができる。PICCカテーテルは、集中治療室および重症管理室のような病院環境において一般的に用いられるのみならず、家庭看護環境においても広く用いられ、長期の治療(たとえば、数週間から数ヶ月)を必要とする患者のために用いられる。
【0044】
本発明のロック溶液は、カテーテル中の抗菌活性および凝固を阻害するための方法において用いることができる。該方法は、内表面および外表面を有するカテーテルを提供する工程と、カテーテルロック溶液を内表面の少なくとも一部の中に注入する工程とを含む。好ましくは、内部表面が実質的に充填されるように、ロック溶液を内部表面中へ注入する。本発明のカテーテルロック溶液で被覆または充填することができるカテーテルの内部表面の非制限的例は、内腔、関連する管、プランジャー、キャップ、および延長セットを含む。本発明のカテーテルロック溶液で被覆または充填することができる他のデバイスは、脈管アクセスデバイスの内側管腔、およびニードルレスアクセスデバイスを含む。ロック溶液は、浸漬、噴霧または注入のような、当業者によく知られている任意の慣用の方法によって注入することができる。
【0045】
本発明のロック溶液をカテーテルの内表面中に注入する際には、十分な量のロック溶液を注入して、カテーテルの内表面に加えて、取り付けられるアクセスデバイスの隣接する表面または管腔を充填または実質的に充填することができる。あるいはまた、カテーテルを充填するのに必要な量より少ない流体を、内表面中に注入することができる。たとえば、十分な量のロック溶液をカテーテルに注入して、たとえば、カテーテルの内部体積の80%〜100%を充填することができる。さらに別の実施形態においては、カテーテルの内部体積よりも多い量を注入することもできる。たとえば、患者の凝固系に対する悪影響なしに、カテーテルの内部体積よりも多い量のロック溶液を注入することができる。
【0046】
ロック溶液中に用いられる局所麻酔薬に依存して、カテーテルに対して、1回〜1000回にわたるロック溶液の注入またロック溶液によるフラッシング(flush)を行ってもよい。本発明のカテーテルロック溶液は、室温における単純な混合により調製することができ、約1週間の期間にわたる抗菌活性および抗凝固活性を提供することができる。
【0047】
1つの実施形態において、カテーテルはその中を貫く内腔を画定する管を含み、該管は、患者に対する挿入の前に、本発明のカテーテルロック溶液を予め充填されている。
【0048】
あるいはまた、本発明のカテーテルロック溶液20を収容する図5に示す予充填シリンジ10のような注入デバイス中に、ロック溶液を供給してもよい。本明細書において意図されるように、任意の慣用的に知られているシリンジを、本発明のロック溶液とともに用いてもよい。
【0049】
例示の目的のために本発明の特定の実施形態を上記で説明したが、添付の特許請求の範囲規定される発明から離れることなしに、本発明の詳細の多数の変形ができることは当業者にとって明らかであろう。
【実施例】
【0050】
本発明のロック溶液中の選択された局所麻酔薬の抗菌有効性を例示するために、3種の異なる試験を行い、以下に説明する。
【0051】
第1表に、実験のために選択した病原菌種を示す。Staphylococcus epidermidisは、コアグラーゼ陰性かつグラム陽性細菌種であり、Candida albicansは真菌種であり、Pseudomonas aeruginosaはグラム陰性細菌種である。前述のように、これらは、カテーテルに関連する血流感染(CR−BSI)における代表的な菌株である。第2表に、有効性試験のために選択された麻酔薬(市販、たとえばSigma-Aldrich Co.から入手可能)を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
本発明のロック溶液中のこれらの麻酔薬の抗菌有効性を実証するために、3種の試験を行った。これらは、(A)懸濁液中の細胞またはプランクトン細胞について実施する試験、(B)バイオフィルム形成を防止するために実施する試験(最小バイオフィルム発育阻止濃度)、および(C)模擬カテーテルモデル上に固定されたバイオフィルムについて実施する試験である。
【0055】
(A. プランクトン細胞試験)
プランクトン細胞試験において、CR−BSIの病因中の最も顕著な細菌種である、非粘着性コアグラーゼ陰性S. epidermidisに対して、ブピバカインを試験した。プランクトン細胞実験は、以下の手順によって実施した。最初に、細菌の懸濁液を調製した。具体的には、BD BBL(商標)Qualiswab(商標)を用いて、トリプシンソイ寒天(TSB)ペトリ皿に、S. epidermidisを蒔き、37℃で終夜にわたって成長させた。滅菌ループを用いて、TSBペトリ皿からS. epidermidisのコロニーを採取し、25mLの滅菌TSB培地を収容した滅菌フラスコ中に配置した。次いで、フラスコを37℃振盪培養器中に配置し、150rpmにおいて終夜にわたって振盪した。次の日、調製した細菌懸濁液15mLを、オートクレーブ済遠心分離管に配置し、Sorval Centrifugeを用いて10分間にわたって10000rpmで遠心分離を行った。(遠心分離工程の後に)液体培地を捨て、細菌のペレットを20mLの滅菌0.9%食塩水に再懸濁させることにより、細菌懸濁液由来の細菌を0.9%食塩水ですすいだ。さらに2回にわたって、細菌の遠心分離およびすすぎを行い、合計3回の食塩水すすぎを行った。
【0056】
もう1回、細菌を遠心分離し、10mLの0.9%食塩水に再懸濁させた。比濁計を用いて細菌懸濁液の濃度を試験した。ここで、0.5MacFarland標準に等しい懸濁液は、約1×108CFU/mLと等価である。1×104CFU/mLの濃度のために、それぞれ最終体積50mLの0.9%食塩水中で、100倍希釈液を2回連続して調製した。次いで、1×103CFU/mLの濃度のために、最終体積50mLの0.9%食塩水中で、10倍希釈液を調製した。
【0057】
ブピバカインおよび/またはバンコマイシンのバルク濃厚液(図1中に示す)を、別個のビーカー中で調製し、濾過滅菌した。全体積が4mLとなるように0.9%食塩水を用いて所望される薬剤濃度に調整することによって、薬剤濃度毎に3本の繰り返し用試験管を調製した。3本の繰り返し用比較対照試験管を、4mLの0.9%食塩水を含むように調製した。ついで、試料に調整された細菌懸濁液1mLを接種し、37℃の培養器振盪器中で培養した。3つの異なる期間(すなわち、30分間、60分間、120分間)にわたって細胞を局所麻酔薬配合物に暴露し、その時点で、100μLの薬剤/細菌懸濁液をTSB寒天プレートに蒔いた。試験管当たり3つの複製を作成して、コロニー形成単位を得た。抗菌物質への暴露のない時間0においても、試料を評価した。
【0058】
図1は、エラーバーで示される95%信頼区間値とともに、Staphylococcus epidermidisの対数計数値を示す。本実施例において、固定濃度の材料によって死滅させられる生物の速度によって、致死活性すなわち生物の減少を表現している。これらの結果は、200μg/mLのバンコマイシンを組み合わせたブピバカインが、Staphylococcus epidermidisに対して高度に有効な細菌剤であったことを示す。同様に、12μg/mLの濃度において、ブピバカインは、30分および60分の両方において顕著な抗菌効果を示した。具体的には、これらの結果は、ヘパリンおよび食塩水がStaphylococcus epidermidisに対する抗菌効果を事実上持たないのに対して、12μg/mLのブピバカインは、30分および60分の両方において実質的な効果を有することを示す。プランクトン細胞試験は、本発明のカテーテルロック溶液の局所麻酔薬、具体的には種々の濃度におけるブピバカインの抗菌有効性を実証する。
【0059】
(B. 最小バイオフィルム発育阻止濃度(MBIC)試験)
本発明の抗菌性ロック溶液中の局所麻酔薬の有効性をさらに評価するために、これら薬剤がバイオフィルムの発育を阻止することができる最小濃度を試験した。第3表に示す3種の異なる細菌に対して第4表に示す局所麻酔薬を試験して、接着した微生物に対する抗菌有効性を評価した。接着した微生物、すなわちバイオフィルムは、プランクトン細胞よりも抗菌物質に対する抵抗性が高くなり得ることが知られている。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
カテーテル先端における希釈を受けるのに伴って減少する濃度において、カテーテルロック溶液を評価した。
【0063】
以下にしたがって、付着した微生物に対する実験を行った。最初に、BD BBL(商標) Qualiswab(商標)を用いて、10mLの滅菌TSBを収容した試験管に、関心のある菌株を接種した。その試験管を、終夜にわたって37℃の培養器中に配置した。次の日に、25mLの滅菌TSB(または、真菌種に対してはサブローデキストロースブイヨン(SDB))を収容するフラスコに、1mLの細菌懸濁液を接種した。そのフラスコを、37℃の培養器中に配置し、150rpmにおいて振盪した。次の日に、25mLのTSB(またはSDB)培地を収容する新たなフラスコに、前述の培養物1mLを接種した。細菌種または真菌種を、対数期まで成長するままにした。具体的には、第3表に示すように、Staphylococcus epidermidisの成長時間は3〜4時間であり、Candida albicansの成長時間は18時間であり、Pseudomonas aeruginosaの成長時間は2〜3時間であった。
【0064】
微生物が対数期に入った後に、それらの濃度を検査し、0.5MacFarland標準によって示される1×108CFU/mLの最小値に到達していることを確実にした。比濁計を用いて、微生物を1×105CFU/mLの濃度まで希釈し、200μLの細菌分散液を96ウェルプレートのウェルのそれぞれに蒔いた。そのプレートを、37℃の標準培養器で2時間にわたって培養して、細菌細胞の接着をさせた。次に、所望の濃度の抗菌物質の希釈液を調製した。別個の未使用のプレートにおいて、1:2の順次的な希釈液を調製した。プレートの左側に最高濃度の抗菌物質を配置し、プレートの右側に向かって濃度を減少させた。たとえば、列1(プレートの左側)に、170μLの最高濃度の抗菌物質を分注した。残余の列は、170μLの食塩水を受容した。列2は、170μLの抗菌物質を受容し、1:2希釈液(すなわち、当初濃度の50%)を作成した。次いで、列2の内容物を列3に移動させ、続いて列3から列4のように行った。それぞれのウェルに、20%培地(S. epidermidisおよびP. aeruginosa用にTSB、およびC. albicans用にSDB)を補充し、試験時間(24時間)にわたって細胞の生存可能性を確実にした。正の比較対照ウェルは、食塩水中の20%培地を有した。細菌プレートを培養器から取り出し、細菌懸濁液を捨てた(接着した細胞はプレート上に残存する)。次に、第4表に示した抗菌配合物を細菌プレートに添加し、標準培養器中、37℃において、24時間にわたって培養した。この時間の後に、プレート中の溶液を捨てて、200μLの食塩水を用いてプレートをすすいだ。次いで、200μLの95%エタノールを用い、30分間にわたって細胞を固定し、10分間にわたって空気乾燥させた。次に、2%クリスタルバイオレット染料の濾過済み溶液250μLを用いて、20分間にわたって細胞を染色した。次いで、プレートを、水を用いて3回にわたってすすぎ、300μLの95%エタノールを用いて2%クリスタルバイオレット染料を可溶化した。10分間にわたってプレートを放置したままとし、可溶化を完了させ、次に分光計上でプレートを測定し、570nmの吸収値を読み取った。ここで、0.600より大きい高い吸収読取値は、細菌の成長を示す。成長が認められなかったプレートの列を、最小バイオフィルム発育阻止濃度(MBIC)として記録した。図2は、具体的な局所麻酔薬に対応するMBICを示す。
【0065】
具体的には、5種のアミノアミド化合物を比較する際に、バイオフィルムの成長を阻害するのに必要な最も低い濃度は、テトラカインににおいて認められた(S. epidermidisについて0.9mg/mL、P. aeruginosaについて1.88mg/mL、およびC. albicansについて0.24mg/mL)。ジブカインは、バイオフィルムの成長を阻害するのに必要な次に低い濃度を示し、その濃度は以下のとおりである。S. epidermidisについて0.59mg/mL、P. aeruginosaについて4.794mg/mL、およびC. albicansについて0.59mg/mL)。ブピバカインが、バイオフィルム形成を阻害するのに必要な次に低い濃度を示した。同様に、メピバカインおよびプロカインが必要とする濃度は、テトラカインおよびジブカインのものよりも大きかった。結論として、本実施例は、本発明のカテーテルロック溶液の局所麻酔薬、すなわち、テトラカイン、ジブカイン、ブピバカイン、メピバカインおよびプリロカインはそれぞれバイオフィルムの成長を阻害することを示した。
【0066】
(カテーテルバイオフィルム撲滅(カテーテルセグメント試験))
本発明のロック溶液中に用いられる局所麻酔薬の臨床環境における抗菌効果を理解するために、シリコーンカテーテル様の管の上にバイオフィルムを成長させ、種々の濃度の局所麻酔薬で処理した。最初に、10mLのTSB培地を収容する滅菌されたシリコーンカテーテル様の管に、BD BBL(商標) Qualiswab(商標)を用いて接種し、終夜にわたって37℃の培養器中に配置した。次の日に、25mLのTSB(細菌種用)または25mLのSDB(真菌種用)を収容する滅菌フラスコに、培養した細胞を接種した。試験の朝、25mLの培地を収容する新たなフラスコに、新規の終夜の懸濁液を接種した。これらの工程は、細胞が対数期(S. epidermidisについて約3〜4時間、およびC. albicansについて約18時間)にあることを確実にするために実施した。比濁計を用いて、0.5MacFarland標準によって示される1×108CFU/mLの最小値に到達していることを確実にした。適当な培地による希釈によって、微生物濃度を1×105CFU/mLに調整した。シリコーンカテーテル様の管を121℃において45分間にわたってオートクレーブ処理することによって、管を最終的に滅菌した。滅菌されたカテーテル様の管を、定常流の下で45分間にわたって1×105CFU/mLを用いて接種した。蠕動ポンプを用いて定常流を作り、そこでは、細菌懸濁液をカテーテルセグメントを通過して廃棄タンクへと流した。2時間の期間の後に、同一の装置構成を用いて、さらなる24時間にわたって管内にTSB培地をポンプ送液し、カテーテルの内腔の壁面にバイオフィルムを形成させた。24時間の後、30分間にわたって内腔に滅菌食塩水をポンプ送液し、カテーテルをすすいだ。次に、滅菌技術を用いて、カテーテルを1インチ(約2.54cm)のセグメントへと切り出した。カテーテルのセグメントを、4mLの抗菌物質を収容した滅菌チューブの中へと落とし、1時間にわたって37℃の培養器振盪器中で培養した。処理チューブからセグメントを取り出し、6mLの滅菌食塩水を充填した新たなチューブ内に配置した。それぞれのセグメントを滅菌スワブで拭き取り、チューブおよびスワブの両方を3分間にわたって超音波洗浄(超音波洗浄機VWRモデル250T)した。ついで、チューブおよびスワブのそれぞれ30秒間にわたって渦流混合した(Fisher Scientific Vortex Mixer #02-215-365)。TSB寒天プレート(真菌種についてはSDB)上に、懸濁液100μLを接種した。残余の5.9mLの懸濁液を0.4μmフィルターで濾過し、フィルターをTSBプレート上に配置した。この工程は、全ての可能な細菌を回収することを確実にするために実施した。次に、全てのTSBプレートを、24〜48時間にわたって静止型培養器中、37℃で培養し、そこでコロニー形成単位を計数した。図3および図4は、それぞれ、試験用管の1インチ(約2.54cm)の区分における、シリコーンカテーテルセグメント上のStaphylococcus epidermidisバイオフィルムおよびCandida albicansバイオフィルムの撲滅を示す。それらグラフは、Log10のスケールにおいて、両方の種における比較対照試料および処理されたセグメントの上で得られた計数値を示す。S. epidermidisについて、28mg/mLのメピバカインおよび30mg/mLのテトラカインは、固定されたバイオフィルムを撲滅し、それぞれ、1.6Logおよび1.7Logの減少を示した。ブピバカイン(16mg/mL)およびジブカイン(38mg/mL)は、わずかに低い減少を示し、それぞれ約0.5Logの減少を示した。プリロカインは最小限の抗菌効果を有した。C. albicansについては、ジブカイン(38mg/mL)およびテトラカイン(30mg/mL)は、固定されたバイオフィルムを完全に撲滅し、ブピバカインは、ほぼ1Logの減少を有した。具体的には、このカテーテルバイオフィルム撲滅実験は、本発明のカテーテルロック溶液の局所麻酔薬(すなわち、ブピバカイン、ジブカイン、プリロカインおよびテトラカイン)は、臨床環境において用いられるカテーテルと同様のカテーテル様の管の上の微生物を如何に効果的に減少させるかを例示する。
【0067】
(粘性付与剤試験)
前述のように、種々の粘性付与剤を、本発明のカテーテルロック溶液中に用いることができる。粘性付与剤は、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、デキストラン、ならびに、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、およびデキストランのいくつかの混合物を含む。本発明のカテーテルロック溶液において好ましい粘性付与剤の範囲を理解するために、実験を実施した。3gのデキストランを50mLの水と混合することによって、6%デキストラン溶液を作製した。この溶液を、溶解するまで渦流混合および撹拌した。次に、その溶液4.27mLを10mLの牛血清と混合して、血液の粘度と似たものとした(SD溶液)。次に、1000μg/mL濃度の純粋な蛍光染料Alexa Flour(登録商標)488(モレキュラープローブ#A20-000)から、水に近い粘度を有する抗菌剤を用いて、50μg/mLの濃度を有する10mLを作製した。次に、ガイドワイヤーを除去すること、およびコネクターデバイスを切除することによって、4本のシリコーンPICCカテーテル(BD First PICC 16g(5Fr)×65cm ID/OD 0.76/1.70 (BD #384158))を調製し、カテーテルを16cmに延伸した。次いで、カテーテルに蛍光性抗菌溶液を充填し、臨床操作において実施する様に、1つの端部をクランプ留めした。カテーテルの全長を、6%デキストラン溶液(血液と同様の粘度を有する)または水のいずれかに浸漬させた。蛍光性抗菌溶液を充填したカテーテルを、2時間または終夜(16時間)のいずれかにわたって浸漬したままにした。所望される時点の後に、カテーテルをそれらの配置から取り出し、処理した。カテーテルを疎水性表面(テフロンシートのようなもの)の上に延伸し、次いで、カミソリの刃を用いて、カテーテルセグメントを、カテーテル表面に見いだされる1cm目盛において切り出した。それぞれのセグメントを、1mLの水を収容した遠心分離管内に配置した。次いで、それぞれの管を10秒間にわたって渦流混合し、それぞれの溶液から200μLを96ウェルプレート中に配置した。それぞれの管について3つの複製物を作製した。図6および図7の両方は、y軸は任意蛍光単位を示し、x軸は、第1のセグメントをカテーテルクランプから最も遠いものとして、カテーテルのセンチメートルマーカーの数を示す。図6に示されるように、カテーテルを水中に浸漬した際に、カテーテルの内容物(模擬ロック溶液)の漸進的漏洩が起きた。浸漬後2時間においてさえ、先端から6cmにおいて、セグメントから回収される蛍光の量が相当に減少することが観察され、これはカテーテルロック溶液の損失を示す。対照的に、図7に示されるように、16時間の後においてさえ、カテーテル濃度のわずかな損失が発生したに過ぎない。比較対照データ(浸漬しなかったカテーテル)は、グラフ中の中空ダイヤモンドで示されるように、45000程度の任意蛍光単位を示した。この実験の結論は、ロック溶液中に粘性付与剤が含まれている場合、粘性付与剤は、血液よりも低い粘度を有するべきであるということである。このデータから、カテーテルの内容物がカテーテル内腔内に残存するように、本発明のロック溶液中の粘性付与剤は3〜4MPa・s未満であってもよいと結論づけた。具体的には、この実施例は、どのようにして、本発明のカテーテルロック溶液中の粘性付与剤がロック溶液の粘度を増大させて血液の粘度に接近するようにし、それによってロック溶液がカテーテル内腔から周囲の血液環境へと吸引されることを防止することができるかを例示する。
【0068】
(抗凝固試験)
局所麻酔薬は、抗凝固効果を有することを同様に示す。試験される麻酔薬に関してどのような作用濃度範囲を用いることができるかを理解するために、ヒツジ血漿凝固試験を実施した。この試験は、凝固に関するアメリカ薬局方(USP)標準試験に基づき、ヘパリンの効能を理解するためにしばしば用いられている。ヘパリンとの比較による局所麻酔薬の等価量の概念を得るために、麻酔薬をヘパリン標準と比較した。ヒツジ血漿を37℃に設定された水浴中で解凍した。解凍を容易にするために、瓶内の血漿を15分毎に上下を逆にした。約45〜60分後に、血漿は解凍された。解凍された血漿を、グラスウール通して濾過するか、または清浄なガラスビーカーまたはフラスコへと濾過して、粒子状物質を除去すると同時に血漿を活性化した。約70〜80mLの濾過されたヒツジ血漿を収集した。次に、6×12のラック内に試験管(VWR Disposable 13×100-mm)のセットを準備した。ヘパリン標準の10本の試験管を含めて、それぞれの試験溶液は10本の試験管を必要とした。抗凝固効果の一貫性を示すために、実験のそれぞれを3回にわたって行った。それぞれの試験溶液に関して、試験管(10本)のそれぞれは、異なる体積の0.9%NaClを受容した。具体的には、その体積は、第1の試験管の520μLから第10の試験管の340μLまでの範囲内であり、第2から第10の試験管のそれぞれは、体積で20μLずつの減少を有した。次に、局所麻酔薬、すなわち、30mg/mLのテトラカイン、30mg/mLのジブカイン、および38mg/mLのブピバカインを添加した。10本の試験管のそれぞれは、異なる体積の試験溶液を受容した。すなわち、280μLから開始し、20μLずつ体積を増加させ、第10の試験管において460μLの体積に到達した。それぞれの試験管内の食塩水および試験溶液の合計体積は800μLであった。標準溶液、すなわちUSPヘパリンナトリウム標準を同様に調製した。ヘパリンの開始濃度は5.6U/mLであった。次いで、ヘパリンアッセイ用のヒツジ血漿(Bio-Supplies, Inc、P-SPR-1500)を、それぞれの試験管にピペット注加し、ラックを穏やかに振盪して混合を確実にした。それぞれの試験管中に1%CaCl2溶液200μLを加えた。それぞれの試験管の合計体積は2mLである。それぞれの試験管をVWRプラグ型キャップで蓋をし、それぞれの試験管を6回にわたって上下逆さまにして、それぞれの試験管の内壁全体が湿潤することを確実にした。試験管を、室温において1時間にわたってインキュベートした。1時間の期間の後に、それぞれ別個の試験管を穏やかに振盪し(末端を穏やかにたたくことは許容される)、そして試験管を傾けて、垂直および水平の両方で凝固を観察することによって、それぞれの試験管内の凝固の程度を決定した。試験管の視覚的検査に関する以下の基準(USP標準に従う)を用いて、それぞれの試験管が凝固を発生させた程度を記録した。
【0069】
0%凝固=明らかな凝固物は形成されない。
25%凝固=大部分の液体の中の小さな観察可能な凝固物。凝固物は非常に動きやすい。
50%凝固=結晶は完全に凝固。しかし凝固物は動きやすい。
75%凝固=凝固物は動かないが、液体は依然として存在する。
100%凝固=凝固物は動かず、かつ、液体は存在しない。
【0070】
この試験の概要を第5表に、試験配合物毎に示す。
【0071】
【表5】

【0072】
試験手順の理由により、麻酔薬の開始濃度は、最初の配合物より希釈されている。標準サンプルおよび試験サンプルの両方が50%凝固をもたらす点を計算することによって、標準抗凝固剤であるヘパリンに対してこれらの麻酔薬の有効性を比較するために、計算を行うことができた。この計算を用いて、麻酔薬濃度を、ヘパリン等価量のU/mLの量と関連づけることができる。これらをどのように計算したかの例として、ヘパリン標準の複製物1が、370μLの麻酔薬において50%凝固を示すことを観察した。テトラカインの複製物1は、350μLの体積において50%凝固を示した。5.9U/mL(ヘパリンの開始濃度)のヘパリン等価効力を仮定すると、5.1mg/mLおよび5.4mg/mLの間の最終濃度のテトラカインが、6.25U/mL(すなわち(370μL/350μL)×5.9)のヘパリンと等価であると計算された。ブピバカインについては、凝固試験で得られた値は、試験された濃度は、試験された全ての濃度において75%凝固をもたらすことを示した。ジブカインは、実施した3回の試験の3回ともに非常に一貫性のある結果を示し、6.23U/mLのヘパリンに対する等価量、および同様に5.1〜5.4mg/mLの濃度をもたらした。したがって、本発明は、本発明のカテーテルロック溶液中の局所麻酔薬、すなわち、テトラカイン、ジブカインおよびブピバカインの、凝固を防止および阻害する有効性を示す。
【0073】
特許請求の範囲に記載の発明の重要な利点の1つは、実施例で示されるように、特許請求の範囲に記載のカテーテルロック溶液は、局所麻酔薬および粘性付与剤を有し、それによって局所麻酔薬が抗菌性および抗凝固性の両方を提供することである。具体的には、実施例は、単一の局所麻酔薬が、抗菌剤および抗凝固剤としての二重の機能を有することができることを示す。これは、カテーテルの開通状態および感染のないことを維持するための現行の試み(抗生物質および他のキレート剤を同時に用いている)に優る顕著な改善である。加えて、本発明のカテーテルロック溶液中の粘性付与剤は、ロック溶液の粘度を増大させ、当該粘度を血液の粘度に接近させ、ロック溶液がカテーテル内腔から周囲の血液環境へと吸引されることを防止することができる。したがって、本発明のカテーテルロック溶液は、現状でカテーテルロック溶液に付随する問題点に対処することができ、さらに、局所麻酔薬および粘性付与剤を含むカテーテルロック溶液を提供することによって、凝固阻害に加えて抗菌保護を提供する。
【0074】
発明の具体的実施形態を詳細に記載してきたが、当業者は、本開示内容の全体的教示内容に鑑みて、これらの詳細の種々の修正および代替手段を開発できることを理解するであろう。本明細書に記載した現時点で好ましい実施形態は、例示であることのみを意味し、添付の特許請求の範囲の全範囲およびその等価範囲によって規定される発明の範囲を制限することを意味するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗凝固活性および抗菌活性を有する局所麻酔薬と、
粘性付与剤と
を含むことを特徴とするカテーテルロック溶液。
【請求項2】
前記局所麻酔薬が、アミノアミド、アミノエステル、アミノアシルアニリド、安息香酸アミノアルキルエステル、アミノカーボネート、N−フェニルアミジン化合物、N−アミノアルキルアミド、アミノケトン、またはそれらの組み合わせおよび混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項3】
前記局所麻酔薬が、ジブカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、ノボカイン、クロロプロカイン、プロポキシカイン、クロロカイン、メピバカイン、キシロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ポポキシカイン、プロパラカイン、アーチカイン、カーチカイン、レボブピバカイン、ピペロカイン、トリメカイン、ヘキシルカイン、ベノキシネート、ブツカイン、ジペロドン、フェナカイン、ファリカイン、ジクロニン、プラモキシン、ジメチソキン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項4】
前記局所麻酔薬が、0.05mg/mL〜100mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項5】
前記局所麻酔薬が、0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項6】
前記粘性付与剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、またはそれらの任意の混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項7】
前記粘性付与剤は、前記カテーテルロック溶液の粘度を4MPa・s以下に変化させることを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項8】
前記局所麻酔薬がテトラカインであり、前記粘性付与剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項9】
前記局所麻酔薬がジブカインであり、前記粘性付与剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項10】
追加の抗菌剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項11】
追加の抗凝固剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテルロック溶液。
【請求項12】
ロック溶液を収容するシリンジを含む予充填シリンジであって、前記ロック溶液は、
抗凝固性および抗菌性を有する局所麻酔薬と、
粘性付与剤と
を含むことを特徴とする予充填シリンジ
【請求項13】
前記局所麻酔薬が、アミノアミド、アミノエステル、アミノアシルアニリド、安息香酸アミノアルキルエステル、アミノカーボネート、N−フェニルアミジン化合物、N−アミノアルキルアミド、アミノケトン、またはそれらの組み合わせおよび混合物を含むことを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項14】
前記局所麻酔薬が、ジブカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、ノボカイン、クロロプロカイン、プロポキシカイン、クロロカイン、メピバカイン、キシロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ポポキシカイン、アーチカイン、カーチカイン、レボブピバカイン、ピペロカイン、トリメカイン、ヘキシルカイン、ベノキシネート、ブツカイン、プロパラカイン、ジペロドン、フェナカイン、ファリカイン、ジクロニン、プラモキシン、ジメチソキン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含むことを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項15】
前記局所麻酔薬が、0.05mg/mL〜100mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項16】
前記局所麻酔薬が、0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項17】
前記粘性付与剤が、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、またはそれらの任意の混合物を含むことを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項18】
前記局所麻酔薬がテトラカインであり、前記粘性付与剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項19】
前記局所麻酔薬がジブカインであり、前記粘性付与剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項20】
追加の抗菌剤をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項21】
追加の抗凝固剤をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の予充填シリンジ。
【請求項22】
その中を貫く内腔を画定する管を含むカテーテルであって、前記内腔の少なくとも一部にカテーテルロック溶液が注入されており、前記カテーテルロック溶液は、
抗凝固性および抗菌性を有する局所麻酔薬と、
粘性付与剤と
を含むことを特徴とするカテーテル。
【請求項23】
前記局所麻酔薬が、アミノアミド、アミノエステル、アミノアシルアニリド、安息香酸アミノアルキルエステル、アミノカーボネート、N−フェニルアミジン化合物、N−アミノアルキルアミド、アミノケトン、またはそれらの組み合わせおよび混合物を含むことを特徴とする請求項22に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記局所麻酔薬が、ジブカイン、テトラカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、リドカイン、プリロカイン、プロカイン、ノボカイン、クロロプロカイン、プロポキシカイン、クロロカイン、メピバカイン、キシロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ポポキシカイン、アーチカイン、カーチカイン、レボブピバカイン、ピペロカイン、トリメカイン、ヘキシルカイン、ベノキシネート、ブツカイン、プロパラカイン、ジペロドン、フェナカイン、ファリカイン、ジクロニン、プラモキシン、ジメチソキン、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含むことを特徴とする請求項22に記載のカテーテル。
【請求項25】
抗凝固性および抗菌性を有する局所麻酔薬と、
粘性付与剤と
を含み、前記局所麻酔薬はテトラカインであり、前記粘性付与剤はポリエチレングリコールであり、前記局所麻酔薬は0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在することを特徴とするカテーテルロック溶液。
【請求項26】
抗凝固性および抗菌性を有する局所麻酔薬と、
粘性付与剤と
を含み、前記局所麻酔薬はジブカインであり、前記粘性付与剤はポリエチレングリコールであり、前記局所麻酔薬は0.24mg/mL〜28.2mg/mLの量で存在することを特徴とするカテーテルロック溶液。
【請求項27】
内表面および外表面を有するカテーテルを提供する工程と、
前記内表面の少なくとも一部に、抗凝固性および抗菌性を有する局所麻酔薬と、粘性付与剤とを含むカテーテルロック溶液を注入する工程と
を含むことを特徴とする、カテーテルの抗菌活性および凝固を阻害する方法。
【請求項28】
指定時間後に、前記カテーテルの前記内部表面に、前記カテーテル溶液を再注入する工程をさらに含み、前記指定時間は1週間未満であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記カテーテルの前記内表面は、内部体積を有し、前記注入工程は、前記内表面の前記内部体積の80〜100%を充填するのに十分な量の前記ロック溶液を前記内表面に注入する工程を含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記カテーテルの前記内表面は、1回〜1000回にわたって注入されることを特徴とする請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−529356(P2012−529356A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515128(P2012−515128)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038127
【国際公開番号】WO2010/144674
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】