説明

抗菌性のフルオロポリマーフィルム、積層物および物品ならびにそれらの製造方法

活性化後にのみアミノ反応性官能基を含むフルオロポリマーを含むフィルム、積層物および物品は、フルオロポリマー表面を活性化し、その後、キトサンを含む溶液に活性化された表面を接触させることにより抗菌性にされる。活性化されたフルオロポリマーを含み、キトサンを含む溶液に接触させたフィルム、積層物および物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性のフルオロポリマーフィルム構造体および積層物品に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、フルオロポリマーフィルムを抗菌性にする方法であって、フルオロポリマーフィルムの活性化表面にキトサン溶液を接触させる工程を含む方法に関する。
【0003】
微生物、すなわち、細菌、ウイルスおよび真菌の成長を抑制することによるか、またはそれらを死滅させることにより環境の中で生じる微生物の数を減らす材料および/または方法の需要は明らかに存在する。特に、航空機室内の密閉領域は、この目標を実行するための有効な手段を必要とする。
【0004】
フルオロポリマーフィルムは、金属、木材ならびに熱可塑性樹脂および熱硬化性ポリマーなどの様々な物質のための保護用および装飾用のオーバーレイとして長く用いられてきた。フルオロポリマーフィルムの薄層は、その優れた耐薬品性および耐候性により、より耐久性でない物質を内部状況と外部状況の両方において損傷から保護するためにしばしば用いられている。フルオロポリマーフィルムは、例えば、室内天井および側壁装飾パネル、窓日除け、貯蔵ビン、便所、ギャラリー、天井パネルおよびバルクヘッド間仕切のために航空機室内装飾の中で広く用いられている。これらの状況の中でフルオロポリマーフィルムに抗菌機能を付加すると、航空機室内装飾の中の微生物負荷を減らすことにより航空機キャビンの総合的な空気品質を改善するであろう。
【0005】
キトサンは、ポリ−[1−4]−β−D−グルコサミンのために一般に用いられる名称である。キトサンは、ポリ−[1−4]−β−N−アセチル−D−グルコサミンであるキチンから化学的に誘導され、キチンは次に真菌の細胞壁、昆虫、特に甲殻類の殻から誘導される。従って、キトサンは広く入手可能な材料から安価に誘導される。キトサンは、例えば、バイオポリマー・エンジニアリング社(Biopolymer Engineering,Inc.)(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))、バイオポリマー・テクノロジーズ社(Biopolymer Technologies,Inc.)(マサチューセッツ州ウェストボロ(Westborough,MA))およびカーボマー社(CarboMer,Inc.)(マサチューセッツ州ウェストボロ(Westborough,MA))から商品として入手できる。
【0006】
キトサンは、金属イオンがキトサンと錯体を形成させるように金属塩溶液で処理することが可能である。キトサンおよびキトサン−金属化合物は、殺菌剤および殺真菌剤として抗菌活性を提供することが知られている。例えば、(非特許文献1)を参照すること。そのメカニズムはまだ十分に理解されていないが、キトサンは抗ウイルス活性を付与することも知られている。例えば、(非特許文献2)を参照すること。更に、キトサンは防臭特性を付与することが知られている。例えば、(特許文献1)を参照すること。
【0007】
キトサンで処理された抗菌フルオロポリマー材料は米国特許公報(特許文献2)で開示されている。この特許出願の中のフルオロポリマーは、キトサンアミン基と反応できるアミノ反応性官能基を重合されたときに既に含んでいる(例えば、無水マレイン酸グラフトモノマーまたは金属イオンを有する過弗素化イオノマーと共重合されたフルオロポリマー)。しかし、キトサンのアミノ基と直接反応できるグラフトモノマーと共重合されたフルオロポリマーは市販されていない。
【0008】
更に、こうしたコポリマーの合成は、キトサン処理工程を含む連続プロセスにおいて導入に向いていない条件を必要とする。過弗素化イオノマーは本来的に多量の水を保持し、陽子交換膜電池、水電解槽および様々な他の電気化学電池における膜の成分として主として用いられる。過弗素化イオノマーは非常に高価であり、航空機室内などの大面積用途においてキトサン処理過弗素化イオノマーを用いることは経済的に実現可能ではないであろう。
【0009】
従って、重合されたときにアミノ反応性官能基を既に含まずに、活性化されてこうした基を含むフルオロポリマーをキトサンで処理することが必要とされ続けている。こうしたプロセスは、便利で経済的な方式でおよび現場(in−situ)で調製することができる有効な抗菌性のフルオロポリマーフィルムまたは物品を提供するであろう。
【0010】
【特許文献1】国際公開第1999061079号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願第10/919844号明細書
【特許文献3】米国特許第3,524,906号明細書
【特許文献4】米国特許第4,931,324号明細書
【特許文献5】米国特許第5,707,697号明細書
【特許文献6】米国特許第2,419,008号明細書
【特許文献7】米国特許第2,510,783号明細書
【特許文献8】米国特許第2,599,300号明細書
【特許文献9】米国特許第3,139,470号明細書
【特許文献10】米国特許第2,953,818号明細書
【特許文献11】米国特許第4,877,683号明細書
【特許文献12】米国特許第6,348,117号明細書
【特許文献13】米国特許出願第10/999672号明細書
【非特許文献1】生理活性繊維およびポリマー(Bioactive Fibers and Polymers)、J.V.エドワーズ(J.V.Edwards)およびT.L.ビゴ(T.L.Vigo)編、ACS Symposium Series 792、175〜200頁、米国化学会(American Chemical Society)、2001年におけるT.L.ビゴ(T.L.Vigo)著「抗菌性のポリマーおよび繊維:回顧と展望(Antimicrobial Polymers and Fibers:Retrospective and Prospective)」
【非特許文献2】チルコフ,S.N.(Chirkov,S.N.)、Applied Biochemistry and Microbiology(Prikladnaya Biokhimiya i Mikrobiologiyaの翻訳)(2002年)、38(1)、1−8
【非特許文献3】「ポリマー科学技術エンサイクロペディア(Encyclopedia of Polymer Science and Technology)」、第3版、第6巻、ジャクリーン I.クロシュウィッツ(Jacqueline I.Kroschwitz(主任編集)、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)(2002年)、283〜305におけるエルドリッジ M.マウントIII(Eldridge M.Mount III)著「フィルム、製造(Films,Manufacture)」
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載された本発明は、フルオロポリマーがアミノ反応性官能基を含むようにフルオロポリマーを最初に活性化し、次にフルオロポリマーをキトサンで処理してフルオロポリマーを抗菌性にすることにより技術的問題を解決する。
【0012】
本明細書に記載された本発明は、フルオロポリマーとキトサン被膜とを含む抗菌性のフルオロポリマーフィルムまたは物品であって、前記フルオロポリマーが活性化するとアミノ反応性官能基を含み、それによって前記フィルムまたは物品の少なくとも1つの表面が微生物成長を抑えるのに十分なキトサン濃度を有する抗菌性のフルオロポリマーフィルムまたは物品を提供する。抗菌性にされるフルオロポリマーフィルムを調製する方法であって、
a.重合されたときにアミノ反応性官能基を含まないフルオロポリマーを含むフィルムまたは物品を提供する工程と、
b.前記フィルムまたは前記物品の少なくとも1つの表面を活性化して活性化フィルムまたは活性化物品を製造する工程と、
c.前記活性化フィルムまたは活性化物品の前記少なくとも1つの表面のキトサン濃度が微生物成長を抑えるのに十分であるようにキトサンを含む溶液に前記フィルムまたは物品を接触させる工程と、
d.前記接触させたフィルムまたは前記接触させた物品を乾燥させる工程と、
を含む方法も本明細書に記載されている。
【0013】
抗菌フィルムを含む物品のみでなく、積層フィルム構造体も本明細書に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書に記載された本発明は、抗菌高分子材料およびこの材料の物品ならびにこれらを製造する方法に関する。本発明のこれらの方法によって調製された材料および物品は、物品を普通に使用するときに微生物成長を抑える抗菌機能を示す。
【0015】
本開示の文脈において、多くの用語が用いられ、それらの用語は以下の定義を有する。
【0016】
本明細書で用いられる「抗菌性」は、当該技術分野で一般に知られている殺菌性、殺真菌性および抗ウイルス性を意味する。
【0017】
本明細書で用いられる「微生物成長を抑える」は、以下で記載され抗菌機能を測定するために一般に用いられる振とうフラスコ試験によって測定したときおよび抗菌機能を測定するために一般に用いられるときに24時間において細菌の99.9%死滅を意味し、それは細菌成長の3−log減少の最小要件を示している。
【0018】
本明細書で用いられる「アミノ反応性基」は、NH2基との化学反応を容易に行う化学官能基を意味する。例には、金属イオン、酸無水物、カルボン酸、イソシアネート、エポキシド、酸塩化物およびエノンなどの正に帯電した化学種が挙げられる。
【0019】
本明細書で用いられる「重合されたときにアミノ反応性官能基を含まない」は、キトサン薬剤のアミノ基が基材の表面と化学的に反応し、よって十分という用語が上で定義されている通り微生物成長を抑えるのに十分なキトサンの表面濃度を有する安定な被膜を形成するように十分な品質でアミノ反応性官能基を含む表面を(共)重合されたときにポリマーが提供しないことを示す。
【0020】
更に、「ポリマーは活性化された後にのみアミノ反応性官能基を含む」または「ポリマーは重合されたときにアミノ反応性官能基を含まない」は、アミノ反応性官能基(上で定義されている)を作ってキトサンと化学的に反応させて耐久性被膜を形成させるために基材の表面の追加的な化学変性または物理変性あるいは下塗りを必要とすることを示す。
【0021】
本明細書で用いられる「活性化」または「下塗り」は、表面上にヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基またはエチレン性不飽和基の官能基を形成させるためにポリマー表面を化学変性または物理変性に供することを意味する。
【0022】
本明細書で用いられる「キトサン溶液」は、キトサン、キトサン塩(例えば、水溶性塩を与えるためのキトサンと酸溶液の反応生成物)および他のキトサン誘導体を含むキトサン系部分の少なくとも1つのタイプを含む溶液を意味する。
【0023】
本明細書で用いられる「化学的に反応する」は、キトサン系部分と基材との間のイオン結合または共有結合の形成を意味する。
【0024】
ある範囲の数値を本明細書において挙げる場合、特に指定がない限り、その範囲は終点ならびに当該範囲内のすべての整数および端数を含むことが意図されている。本発明の範囲が、ある範囲を定めるときに挙げられた特定の値に限定されることを意図していない。
【0025】
(フルオロポリマーフィルム)
本発明は、特に、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、弗化ビニリデン、弗化ビニルのポリマーおよびコポリマーから調製されたフィルムなどのフルオロポリマーフィルムの広い範囲に適用可能である。
【0026】
例えば、フルオロポリマーは、特に、弗素化エチレン/プロピレンコポリマー(FEP樹脂として一般に知られている)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー(「ETFE」)、ペルフルオロビニルエーテル/テトラフルオロエチレンコポリマー(「PFA」)、弗化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、弗化ビニリデン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)ジポリマーおよびテトラフルオロエチレンとのターポリマー、ポリ弗化ビニリデンホモポリマー(PVDF)またはポリ弗化ビニリデンとアクリルポリマーのブレンド、またはポリ弗化ビニルホモポリマー(PVF)であってもよい。
【0027】
フルオロポリマーフィルムを製造する方法は、特定のフルオロポリマーの組成に応じて異なる。溶融加工性フルオロポリマーの例には、ETFE樹脂、PFA樹脂およびFEP樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。溶融加工性フルオロポリマーのフィルムは、典型的にはダイを通した溶融物の押出によって調製される。例えば、(非特許文献3)を参照すること。キャストフィルムまたはキャストシートは自立性であり、押出溶融物から成形される。多層構造は、多溶融物ストリームの共押出によって、またはプリフォームウェブ上への溶融物ストリームの押出被覆によって成形することが可能である。ブローフィルムプロセスにおいて、溶融物は、後でバブルにブローされる管に環状ダイを通して押し出される。バブルは溶融物から直接ブローしてもよいか、または管は最初に冷却し、次に再加熱し、フィルムにブローしてもよい。
【0028】
本発明は、好ましくは、ポリ弗化ビニル(PVF)フィルムと合わせて用いられる。本発明において用いるために好ましい他のフィルムは、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)から製造されるか、またはポリ弗化ビニリデン(PVDF)とアクリルポリマーのブレンドから製造される。これらのフルオロポリマーフィルムは、(1)フルオロポリマーの溶液または(2)フルオロポリマーの分散液のいずれかである流体組成物から製造することが可能である。フィルムは、キャスティングプロセスまたは押出プロセスによってフルオロポリマーのこうした溶液または分散液から成形される。
【0029】
ポリ弗化ビニリデンまたは弗化ビニリデンのコポリマーのための典型的な溶液または分散液は、フィルムの成形/乾燥プロセス中にバブルの形成を避けるのに十分に高い沸点を有する溶媒を用いて調製される。これらの溶液または分散液の中のポリマー濃度は溶液の使用可能な粘度を達成するために調節され、溶液の一般に約25重量%未満である。適するフルオロポリマーフィルムは、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)に記載された主成分としてのアクリル樹脂とポリ弗化ビニリデンのブレンドから、またはアクリル樹脂とポリ弗化ビニリデンのコポリマーまたはターポリマーから成形される。
【0030】
ポリ弗化ビニル(PVF)のフィルムを用いて、本発明の適するフィルムをフルオロポリマーの分散液から製造することが可能である。こうした分散液の性質および調製は、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)および米国特許公報(特許文献8)に詳しく記載されている。適するPVF分散液は、例えば、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホランおよびジメチルアセトアミドの中で形成することが可能である。分散液中のPVFの濃度は、用いられる特定のポリマー、プロセス装置およびプロセス条件により異なる。一般に、フルオロポリマーは分散液の約30〜約45重量%を構成する。
【0031】
必要ならば、製造中にポリ弗化ビニル分散液に顔料および充填剤を導入することにより、種々の色効果および乳白効果を達成することが可能である。顔料および充填剤の例は、金属酸化物、ヒドロキシド、クロメート、シリケート、スルフィド、スルフェートおよびカーボネート、有機染料およびカーボンブラックである。
【0032】
ポリ弗化ビニル(PVF)のフィルムは、溝付き鋳造ホッパーに接続された加熱押出機にポリ弗化ビニル分散液をフィードすることを記載している米国特許公報(特許文献9)および米国特許公報(特許文献10)で提示された手順などの押出手順によって成形してもよい。ポリ弗化ビニルの強靱な合着押出物は、潜溶媒を含むフィルムの形で連続的に押し出される。フィルムを単に乾燥させることが可能であるか、または代案として溶媒をフィルムから揮発させつつ加熱し、1つまたは複数の方向に延伸させることが可能である。延伸を用いるとき、配向されたフィルムが製造される。あるいは、ポリ弗化ビニルのフィルムを潜溶媒中でポリマーの希釈分散液からキャスティングすることが可能である。米国特許公報(特許文献11)に記載されたもののようなキャスティングされた多層ポリ弗化ビニル構造もPVFの単一フィルムの代わりに用いてよい。
【0033】
フルオロポリマーフィルムのキャスティングプロセスにおいて、フルオロポリマーは、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、カーテンコーター、グラビアコーターなどの適するいずれかの従来の手段あるいはストリークまたは他の欠陥なしに実質的に均一なフィルムを塗布することを可能にする他のいずれかの方法を用いることにより支持体上に分散液をキャスティングすることによって所望の構成に成形される。キャスティングされた分散液の厚さは、得られたフィルムが自立であるのに十分な厚さを有するとともに分散液が上にキャスティングされる基材からうまく除去できる限り重要ではない。一般に、少なくとも約0.25ミル(6.4マイクロメートル)の厚さが満足であり、約15ミル(381マイクロメートル)以下の厚さは、本発明の分散液キャスティング技術を用いて作ることが可能である。
【0034】
特定のポリマーおよび合着条件に応じて多様な支持体を本発明によるキャスティングフィルムのために用いてもよい。分散液を上にキャスティングする表面は、最終フィルムが合着した後に最終フィルムの容易な除去を提供するように選択されるべきである。フルオロポリマー分散液をキャスティングするために適するいかなる支持体も用いることが可能である一方で、適する支持体の例には、高分子フィルムまたはスチールベルトが挙げられる。支持体として用いてもよい高分子フィルムの例には、特に、ポリイミド、ポリアクリレートおよびポリエステルを含むフィルムが挙げられる。航空機の室内装飾またはバス、貨車およびフェリーなどを含む大量輸送車両のための座席としての用途のために、キャスティングされたフィルムが艶消し外観または表面模様付き外観を提供するように、高分子フィルムをキャスティングするために表面模様付き支持体を用いてもよい。例えば、米国特許公報(特許文献12)を参照すること。
【0035】
支持体上にフルオロポリマー分散液をキャスティングした後、フルオロポリマーは、フィルムにフルオロポリマーを合着させるために加熱される。ポリマーを合着させるために用いられる条件は、他の運転条件の中で特に、用いられるポリマー、キャスティングされた分散液の厚さにより異なる。典型的には、PVF分散液を用いるとき、フィルムを合着させるために約340°F(171℃)〜約480°F(249℃)の炉温度を用いることが可能であり、380°F(193℃)〜約450°F(232℃)の温度が特に満足であることが見出された。これらの炉温度は、より低いポリマーを処理する温度を表していない。合着後、最終フィルムは、適するいずれかの従来の技術を用いることにより支持体から剥ぎ取られる。
【0036】
(フルオロポリマーの活性化)
キトサン薬剤で被覆されるべきフルオロポリマーフィルムの各表面は活性化されなければならない。すなわち、表面は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基またはエチレン性不飽和基の官能基を表面上に形成させるために化学変性または物理変性あるいは下塗りに供されなければならず、それによって表面の接着性を改善する。活性化は、フィルムを気体状ルイス酸、例えば、三弗化硼素または硫酸、あるいは液体アンモニア中のアルカリ金属の溶液、すなわち高温水酸化ナトリウムにさらすことにより達成することが可能である。好ましくは、反対表面を冷却しつつ片方または両方の表面を裸火にさらすことにより表面を活性化させることが可能である。フィルムをコロナ処理などの高周波数火花放電に供することもフィルムを活性化させることが可能である。コロナ処理は、空気中でまたは当該技術分野で知られている他の雰囲気、例えば、アセトン富化空気中で行ってもよい。
【0037】
配向フルオロポリマーフィルムと未配向フルオロポリマーフィルムの両方を本明細書に記載された本発明において用いてもよい。
【0038】
(キトサン処理溶液)
本明細書に記載されたフィルムおよび物品は、反応させたキトサンの少なくとも1層の層を上に有する。キトサンは、ポリ−[1−4]−β−D−グルコサミンのために一般に用いられる名称である。キトサンは、ポリ−[1−4]−β−N−アセチル−D−グルコサミンであるキチンから化学的に誘導され、キチンは次に真菌の細胞壁、昆虫、特に甲殻類の殻から誘導される。
【0039】
キトサンの好ましい分子量は約50,000〜約1000,000であり、約70,000〜約80,000は特に好ましい。キトサンの脱アセチル度が少なくとも50%であることが好ましく、90%を上回るのが特に好ましい。
【0040】
キトサンでフィルムまたは物品を被覆するのは、キトサン溶液に物品を浸漬するか、またはキトサン溶液で湿らせることを含む。本明細書で用いられる「キトサン溶液」、「キトサン処理溶液」および「キトサンを含む溶液」は、キトサン、キトサン塩(例えば、水溶性塩を与えるためのキトサンと酸溶液の反応生成物)および他のキトサン誘導体を含むキトサン系部分の少なくとも1つのタイプを含む溶液を意味する。キトサン溶液は、活性化フルオロポリマーフィルムの表面、積層フィルム構造体の活性化フルオロポリマー表面または積層フィルム構造体を含む物品の活性化フルオロポリマー表面を処理するために用いられる。
【0041】
キトサン薬剤を含む溶液は水性であってもよい。溶解度は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびポリカルボン酸からなる群から選択された水溶性有機酸の希釈溶液にキトサンを添加することにより得られる。これは、水溶性塩を形成させるためにキトサンが酸と反応するのを可能にする。あるいは、水溶性であるN−カルボキシアルキルキトサンおよびO−カルボキシアルキルキトサンを含むキトサン誘導体をキトサン塩の代わりに水中で直接用いてもよい。キトサンは、塩化リチウムの存在下でジメチルアセトアミドのような空間溶媒に、またはN−メチルモルホリン−N−オキシドに溶解させてもよく、こうした溶液も本明細書に記載された本発明において用いてよい。
【0042】
典型的には、キトサン処理溶液は、好ましくは約0.5重量%〜約5重量%の水性酢酸を含む酢酸水溶液である。約0.1重量%〜約3重量%のキトサンと約0.5重量%〜約1.0重量%の酢酸を含む水性溶液を調製することが好ましい。約2重量%のキトサンと約0.75重量%の酢酸を含む水溶液を調製することがより好ましい。約2重量%のキトサンと約1.5重量%の酢酸水溶液を含む水溶液を調製することも好ましい。バッチプロセスでの処理時間は典型的には5〜30分である。但し、連続プロセスでは、処理時間は数秒ほどであり得る。処理温度は重要ではなく、典型的にはほぼ室温から約90℃の範囲内である。
【0043】
キトサンで処理した後、物品を好ましくは脱イオン水で洗浄してもよい。任意選択的に、その後、当該技術分野で知られている方法によって物品を乾燥させてもよい。こうした方法には、周囲空気乾燥、炉乾燥および空気押し込み乾燥が挙げられる。窒素などの不活性雰囲気を空気の代わりに提供してもよい。バッチプロセスにおいて、物品は、好ましくは約40〜約90℃で約12〜約24時間にわたり炉で乾燥させる。連続プロセスにおいて、物品は好ましくは約60℃〜約110℃で約0.5〜約2.5分にわたり乾燥させる。
【0044】
本方法によって調製された物品は抗菌特性を示し、臭気発生も抑制することが予想される。前記抗菌特性は、金属塩による処理によって任意選択的に更に強化してもよい。本発明のために有用な金属塩には、例えば、硫酸亜鉛、硫酸銅、硝酸銀または他の水溶性亜鉛塩、銅塩および銀塩またはこれらの混合物が挙げられる。金属塩は、水中の塩の希釈(0.1〜0.5%)溶液を物品上に浸漬するか、噴霧するか、またはパジングすることによって典型的に被着される。あるいは、金属塩の溶液は、米国特許公報(特許文献13)に記載されているようにキトサン−金属錯体を作るためにキトサン溶液と反応させることが可能である。
【0045】
キトサン−銀錯体を製造する方法は、例えば、
(a)酸溶液に0.25〜8.0重量%のキトサンを溶解させる工程と、
(b)工程(a)の生成物に銀塩の溶液を添加する工程と、
(c)攪拌しつつ工程(b)の生成物に水を添加する工程と、
(d)塩基性溶液を添加し、それによって工程(c)の生成物のpHをpH8に上げる工程と、
(e)工程(d)の生成物を濾過する工程と、
(f)工程(e)で得られた固形物を水で洗浄する工程と、
(g)工程(f)で得られた固形物をアセトニトリルで洗浄する工程と、
(h)工程(g)で得られた固形物を真空下で乾燥させる工程と、
(i)任意選択的に、工程(h)で得られた乾燥生成物を微細粉末に粉砕する工程と、
を含む。その後、このキトサン−金属錯体の溶液を用いて物品を処理することが可能である。
【0046】
(キトサン処理された物品)
キトサン溶液を用いて、活性化フルオロポリマーフィルムの表面、積層フィルム構造体の活性化フルオロポリマー表面、あるいは活性化フィルムまたは積層フィルム構造体を含んでも、または含まなくてもよい物品の活性化フルオロポリマー表面を処理することが可能である。キトサン被膜を備えた表面模様付きフルオロポリマーフィルムは、表面模様付きフィルムをキトサン溶液で処理することにより、または表面模様なしのフルオロポリマーフィルムを被覆し、その後、当該技術分野で知られているような高温でエンボス板に抗してフィルムを機械的にエンボスすることにより調製してもよい。例えば、エンボスは、約300°F〜約350°F(約149℃〜約177℃)で行われる。活性化フルオロポリマーフィルムを含むフィルム構造体は、当該技術分野で知られている方法によって積層フィルム構造体を形成させるために様々な基材に接着させてもよい。基材の幾つかの例は、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)、金属(例えば、アルミニウム、スチール)、セルロース質基材(例えば木材)、セメント、アスファルト、メラミン複合材、アラミド(例えば、m−フェニレンテレフタルアミドの紙、シートおよびハニカム構造体)、布地(例えば、ビニル布地およびビニル壁カバー)および熱可塑性樹脂である。
【0047】
熱可塑性基材の使用は、更なる成形操作のために特に適する積層フィルム構造体を製造することが可能である。ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよび液晶ポリマーなどの高性能熱可塑性樹脂などの多様な熱可塑性ポリマーは基材として用いるために望ましい。
【0048】
キトサン被膜を備えた表面模様付きフルオロポリマーフィルムは、表面模様付きフィルムをキトサン溶液で処理することにより、または表面模様なしのフルオロポリマーフィルムを被覆し、その後、当該技術分野で知られているような高温でエンボス板に抗してフィルムを機械的にエンボスすることにより調製し得る。例えばPVFに関して、エンボスは約300°F〜約350°F(約149℃〜約177℃)で行われる。
【0049】
本明細書に記載されたフィルム構造体または積層フィルム構造体は、フォームインプレース成形、差動真空成形、挿入射出成形などの当該技術分野で周知の方法によって造形品または造形物品に成形することが可能である。こうしたフィルム構造体は、平坦フィルム構造体を射出型に入れ、溶融プラスチックをフィルムの背後に射出して、フィルム構造体に射出型の形状を取らせる(フォームインプレース成形)ことにより熱成形することが可能である。あるいは、積層フィルム構造体はシェルに熱成形することが可能であり、溶融プラスチック樹脂をシェルの背後に導入する挿入射出成形プロセスで用いることが可能である。FRP技術(ガラス繊維強化パネル)も適する。あるいは、厚いフィルム構造体、例えば50ミル(1.7mm)以上の構造体を製造することが可能である。これらの厚いシートは、支持用熱可塑性基材への更なる積層を必要とせずに、または射出成形なしで最終部品に直接熱成形することが可能である。
【0050】
(抗菌性のフィルムおよび積層フィルム構造体の使用)
本明細書に記載された抗菌性のフィルム、物品および積層フィルム構造体は、特に航空機、バス、地下鉄車両、貨車、路面電車、フェリー、バン、通勤列車などを含む大量輸送用の車両における多様な状況において表面に被着させることが可能である。航空機の中でのこれらのフィルム、構造体および物品の使用の例には、室内天井および側壁パネル、窓日除け、貯蔵ビン、便所、ギャラリー、トレーテーブル、パーソナルサービスユニット、座席、バルクヘッド間仕切、絶縁障壁、水分障壁、貨物ビンライナーおよび複合ノイズパネルが挙げられるが、それらに限定されない。これらは、密閉環境内の微生物負荷を少なくするために貨車室内、バス室内、地下鉄車両室内、トロリー車両室内、バン室内および船艇室内において類似表面として用いることが可能である。
【0051】
本明細書に記載されたフィルムは、金属、木材、セメント、アスファルト、ビニル、メラミン複合材および布地を含む多様な建築基材に容易に積層させることが可能である。抗菌性のフィルム、積層物および物品を中に導入させることが有効である建築機構の例には、壁カバー、天井および防音タイル、熱材料または防音材料のための袋詰フィルム、ガラス繊維強化プラスチックパネル、金属建物パネル、形状適合性建物パネルおよび空気詰め構造体のための柔軟性積層物、天蓋、日除けまたはスタジアムドームが挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
本明細書に記載されたフィルム、積層フィルム構造体または物品は、製造前、製造後または製造中のいずれかの時点で、抗菌性にするためにキトサンまたはキトサン薬剤で処理してもよい。すなわち、本フィルム、フィルム構造体または物品は、車両形成または状況形成の時点で大量輸送用の車両または建築背景に完全に適応させてもよく、抗菌活性を既に有していてもよいか、または導入後に抗菌活性を獲得してもよい。更に、本フィルム、フィルム構造体または物品は、それらの形成後にこうした車両または背景に挿入するか、または付加してもよく、抗菌活性を既に有していてもよいか、または挿入後に抗菌活性を獲得してもよい。フィルム、積層フィルム構造体または物品が抗菌活性を獲得してもよいときに関するこの融通性は、それらを活性化することが可能であり、現場(in−situ)でキトサンに接触させることが可能であり、そして抗菌活性を既に有しているので導入も挿入も必要がないという事実のゆえである。活性化および現場(in−situ)でのキトサンへの接触の実施は、抗菌性にされるべき表面に物理的に接触させる必要性によって主として限定される。
【0053】
キトサン処理されたフィルム、積層フィルム構造体および物品は、それらの抗菌品質を強化するために初期活性化後に再活性化してもよい。すなわち、再活性化は、フィルム、積層物構造体または物品が中に導入される大量輸送用車両または建築背景の内部、上または中で現場(in−situ)で行ってもよい。再活性化は初期活性化の抗菌活性に匹敵する場合がある抗菌活性の増加をもたらす。すなわち、微生物成長を抑える上で元の効率の99%以下および99%を上回る。再活性化は、定期的、時々または一度限りの事象として行ってもよく、上で記載されたのと同じ活性化プロセスを含む。キトサン処理された表面が裸火または高周波数火花放電に供することによって再活性化されるか否かは、大量輸送用車両または建築背景内の表面の位置に応じて異なる。
【実施例】
【0054】
本発明を以下の実施例で更に規定する。これらの実施例が本発明の好ましい実施形態を示しているが、あくまで例示として示されていることが理解されるべきである。上の説明およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することが可能であり、本発明の趣旨および範囲を逸脱せずに、本発明を種々の用途および条件に適合させるために本発明の種々の変形および変更を行うことが可能である。
【0055】
略語の意味は次の通りである。「cfu」はコロニー形成単位を意味する。「mL」はミリリットルを意味する。「h」は時間を意味する。「g」はグラムを意味する。「wt%」は重量%を意味する。「n.d.」は決定されないことを意味する。
【0056】
(材料および方法)
この試験で用いられたキトサンは、「キトクリア(ChitoClear)」(登録商標)という登録商標でノルウェー国のプリメックス・コーポレーション(Primex Corporation(Norway))から市販されている材料であった。グレードTM656という材料を購入したままで使用した。
【0057】
キトサンサンプルのN−脱アセチル度は85%を上回るように陽子NMR分光分析および炭素13NMR分光分析によって確認した。サンプルの分子量は約75,000であった。
【0058】
「フォーミュラ(Formula)」409(登録商標)オールパーパスクリーナー(All Purpose Cleaner)は、クロロックス・カンパニー(Clorox Company)(カリフォルニア州プレサントン(Pleasanton,CA))の製品であり、受領したまま用いた。
【0059】
厚さ1ミル(25マイクロメートル)の「テドラー(Tedlar)」(登録商標)PVF「 TR10BG3フィルムを本願特許出願人から得た。これは、接着性のために火炎処理された二軸配向透明ポリ弗化ビニルフィルムであった。
【0060】
PVFフィルム上にキトサン溶液を被覆するために線巻ロッド(フロリダ州ポンパノビーチのポールN.ガードナー・カンパニー社(Paul N.Gardner Company,Inc.(Pompano Beach,FL))によって製造された「ガードコ・アプリケータ・ロッド(Gardco Applicator Rods)」を用いた。被膜の理論湿潤厚さは、ロッドを巻き付けるために用いられるワイヤの厚さから由来する。ワイヤ厚さが増加するにつれて、ラップ間の空隙が増加する。製造業者によると、#6ワイヤは湿潤0.6ミルを与え、#8ワイヤは0.8ミルを与える等々である。これらの厚さは粘度および他の要素によって異なる。
【0061】
以下の手順を用いる材料の抗菌試験のための振とうフラスコ試験によって、処理されたフィルムの抗菌特性を試験した。
【0062】
滅菌フラスコ中の「トリプティケース・ソイ・ブロス(Trypticase Soy Broth)」(TSB)15〜25mL中の細菌平板培養またはイースト寒天平板培養から単一の単離されたコロニーを接種する。
【0063】
振とうしつつまたは振とうしないで(特定の菌種の適切な曝気を選択する)25〜37℃(特定の微生物のための最適成長温度を用いる)で16〜24時間にわたり培養する。糸状菌に関して、寒天平板上に胞子形成培養菌を調製する。
【0064】
約105コロニー形成単位/mL(cfu/mL)を得るためにpH6.0〜7.0で滅菌リン酸緩衝液(以下参照)に細菌培養またはイースト培養を一晩希釈する。必要とされるリン酸緩衝液の全体積は、50mL×試験フラスコ(対照を含む)の数である。糸状菌に関して、105胞子/mLで胞子懸濁液を調製する。滅菌生理食塩水またはリン酸緩衝液を満たした寒天平板培養から胞子を穏やかに再懸濁することにより胞子懸濁液を調製する。
【0065】
初期接種材料カウントを得るために、「トリプティケース・ソイ・アガー(Trypticase Soy Agar)」(TSA)平板上に10-4および10-3の最終希釈溶液(リン酸緩衝液中で調製されたもの)の2溶液を平板培養する。25〜37℃で一晩平板を保温する。
【0066】
接種されたリン酸緩衝液50mLを試験されるべき材料0.5gを含む各滅菌試験フラスコに移送する。接種されたリン酸緩衝液および接種されなかったリン酸緩衝液の試験材料のない対照フラスコも調製する。
【0067】
リスト動作シェーカー上にすべてのフラスコを置き、室温で激しく振とうしつつ培養する。周期的にすべてのフラスコからサンプルを取り、TSA平板上で適切な希釈溶液を平板培養する。25〜37℃で16〜48時間にわたり培養し、コロニーをカウントする。
【0068】
コロニー形成単位/mL(cfu/mL)の数としてコロニーカウントを報告する。
【0069】
Δt値(時間tでのlog10減少)を次の通り計算してもよい。Δt=C−B、式中、Δtは一定時間tに関する活性定数であり、Cは培養X時間後の未処理対照材料のフラスコ中の微生物のlog10密度を意味し、Bは培養X時間後の処理材料のフラスコ中の微生物のlog10密度を意味する。Δtは、典型的には4時間、6時間または24時間で計算し、ΔtXとして表現してもよい。
【0070】
(ストックリン酸緩衝液)
一塩基性燐酸カリウム:22.4g
二塩基性燐酸カリウム:56.0g
脱イオン水:1000mLにするための適量
【0071】
NaOHまたはHClのいずれかでリン酸緩衝液のpHをpH6.0〜7.0に調節し、濾過し、滅菌し、使用まで4℃で貯蔵する。ストックリン酸緩衝液1mLを滅菌脱イオン水800mL中で希釈することにより作用リン酸緩衝液を調製する。
【0072】
(実施例1)
#6線巻ロッドを用いて0.5重量%水性酢酸中のグレードTM656キトサンの2重量%溶液を「テドラー(Tedlar)」(登録商標)PVF TR10BG3フィルム上に被覆した。前述した火炎処理以外のフィルム前処理を用いなかった。被覆されたフィルムを60℃で30分にわたり熱対流炉の中で乾燥させた。被覆されたフィルムの外観は未被覆フィルムと区別できなかった。大腸菌(E.Coli)ATCC25922、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538および肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)ATCC4352に対する抗菌効力について被覆され乾燥させたフィルムを評価した。結果を表1、2および3で示している。
【0073】
(実施例2)
#8線巻ロッドを用いて0.5重量%水性酢酸中のグレードTM656キトサンの2重量%溶液を「テドラー(Tedlar)」(登録商標)PVF TR10BG3フィルム上に被覆した。前述した火炎処理以外のフィルム前処理を用いなかった。被覆されたフィルムを60℃で30分にわたり熱対流炉の中で乾燥させた。被覆されたフィルムの外観は未被覆フィルムと区別できなかった。大腸菌(E.Coli)ATCC25922、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538および肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)ATCC4352に対する抗菌効力について被覆され乾燥させたフィルムを評価した。結果を表1、2および3で示している。
【0074】
(実施例3)
#12線巻ロッドを用いて0.5重量%水性酢酸中のグレードTM656キトサンの2重量%溶液を「テドラー(Tedlar)」(登録商標)PVF TR10BG3フィルム上に被覆した。前述した火炎処理以外のフィルム前処理を用いなかった。被覆されたフィルムを60℃で30分にわたり熱対流炉の中で乾燥させた。被覆されたフィルムの外観は未被覆フィルムと区別できなかった。大腸菌(E.Coli)ATCC25922、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538および肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)ATCC4352に対する抗菌効力について被覆され乾燥させたフィルムを評価した。結果を表1、2および3で示している。
【0075】
(実施例4)
実施例1の処理されたPVFフィルムの一区画をメチルエチルケトン(MEK)で湿らせた布地で50回往復摩擦を用いて後で擦った。圧力は指定されておらず、技術者の自由裁量に委ねられていた。フィルムの外観は変わらなかった。大腸菌(E.Coli)ATCC25922、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538および肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)ATCC4352に対する抗菌効力についてフィルムを評価した。結果を表1、2および3で示している。
【0076】
(実施例5)
実施例1の処理されたPVFフィルムの一区画を「フォーミュラ(Formula)」409(登録商標)オールパーパスクリーナー(All Purpose Cleaner)で湿らせた布地で50回往復摩擦を用いて後で擦った。フィルムの外観は変わらなかった。TCC25922、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538および肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)ATCC4352。結果を表1、2および3で示している。圧力は指定されておらず、技術者の自由裁量に委ねられていた。大腸菌(E.Coli)に対する抗菌効力についてフィルムを評価した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化フルオロポリマーとキトサン被膜とを含み、少なくとも1つの表面を各々が有するフィルムまたは物品であって、前記活性化フルオロポリマー表面が活性化するとアミノ反応性官能基を含み、それによって、前記少なくとも1つの表面のキトサン濃度が微生物成長を抑えるのに十分であるように前記アミノ反応性官能基が前記キトサン被膜と化学的に反応することを特徴とするフィルムまたは物品。
【請求項2】
大量輸送用の車両のための、室内天井または側壁パネル、窓日除け、貯蔵ビン、便所、ギャラリー、トレーテーブル、パーソナルサービスユニット、座席、バルクヘッド間仕切、絶縁障壁、水分障壁、貨物ビンライナーまたは複合ノイズパネルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項3】
壁カバー、天井または防音タイル、熱材料または防音材料のための袋詰フィルム、ガラス繊維強化プラスチックパネル、金属建物パネル、形状適合性建物パネルまたは空気詰め構造体のための柔軟性積層物、天蓋、日除けまたはスタジアムドームからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記物品が大量輸送用の車両のための、室内天井または側壁パネル、窓日除け、貯蔵ビン、便所、ギャラリー、トレーテーブル、パーソナルサービスユニット、座席、バルクヘッド間仕切、絶縁障壁、水分障壁、貨物ビンライナーまたは複合ノイズパネルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルムを含む物品。
【請求項5】
大量輸送用の車両が航空機、貨車、バス、地下鉄車両、トロリー車両、バンまたは船艇であることを特徴とする請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記物品が壁カバー、天井または防音タイル、熱材料または防音材料のための袋詰フィルム、ガラス繊維強化プラスチックパネル、金属建物パネル、形状適合性建物パネルまたは空気詰め構造体のための柔軟性積層物、天蓋、日除けまたはスタジアムドームからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌フィルムを含む物品。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが弗素化エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロビニルエーテル/テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン/クロロトリフルオロエチレンコポリマー、弗化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ジポリマー、弗化ビニリデン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)ジポリマーおよびテトラフルオロエチレンとのターポリマー、ポリ弗化ビニリデンまたはポリ弗化ビニリデンとアクリルポリマーのブレンドおよびポリ弗化ビニルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルムまたは物品。
【請求項8】
請求項1に記載のフィルムと基材とを含むことを特徴とする積層フィルム構造体。
【請求項9】
前記基材がガラス繊維強化プラスチック、金属、セルロース質基材、セメント、アスファルト、メラミン複合材、アラミド、布地、ビニル布地、ビニル壁カバーおよび熱可塑性ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の積層フィルム構造体。
【請求項10】
前記アラミド基材がm−フェニレンテレフタルアミドの紙、シートまたはハニカム構造体を含むことを特徴とする請求項9に記載の積層フィルム構造体。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよび液晶ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の積層フィルム構造体。
【請求項12】
フィルムまたは物品を抗菌性にする方法であって、
a.重合されたときにアミノ反応性官能基を含まないフルオロポリマーを含む少なくとも1つの表面を含むフィルムまたは物品を提供する工程と、
b.前記フィルムまたは前記物品の前記少なくとも1つの表面を活性化して活性化フィルムまたは活性化物品を製造する工程と、
c.前記活性化フィルムまたは活性化物品の前記少なくとも1つの表面のキトサン濃度が微生物成長を抑えるのに十分であるようにキトサンを含む溶液に前記活性化フィルムまたは活性化物品を接触させる工程と、
d.前記接触させたフィルムまたは前記接触させた物品を乾燥させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
キトサンと金属塩の錯体を含む溶液に前記活性化フィルムまたは前記活性化物品を接触させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属塩が硫酸亜鉛、硫酸銅、硝酸銀、銅のあらゆる水溶性塩、亜鉛のあらゆる水溶性塩、銀のあらゆる水溶性塩およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
キトサンと金属塩の錯体を製造する方法が、
a.酸溶液に0.25〜8.0重量%のキトサンを溶解させる工程と、
b.工程aの生成物に銀塩の溶液を添加する工程と、
c.攪拌しつつ工程bの生成物に水を添加する工程と、
d.塩基性溶液を添加し、それによって工程cの生成物のpHを8に上げる工程と、
e.工程dの生成物を濾過する工程と、
f.工程eで得られた生成物を水で洗浄する工程と、
g.工程fで得られた固形物をアセトニトリルで洗浄する工程と、
h.工程gで得られた固形物を真空下で乾燥させる工程と、
i.任意選択的に、工程hの乾燥生成物を微細粉末に粉砕する工程と、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記キトサンの分子量が約50,000〜約1,000,000の範囲内であり、前記キトサンの脱アセチル度が少なくとも50%であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記キトサンの分子量が約60,000〜約80,000の範囲内であり、前記キトサンの脱アセチル度が少なくとも85%であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載のフィルムまたは物品を再活性化する方法であって、
a.前記フィルムまたは前記物品の少なくとも1つの表面を活性化して活性化フィルムまたは活性化物品を製造する工程と、
b.前記活性化フィルムまたは前記活性化物品の少なくとも1つの表面のキトサン濃度が微生物成長を抑えるのに十分であるようにキトサンを含む溶液に前記活性化フィルムまたは活性化物品を接触させる工程と、
c.前記接触させたフィルムまたは前記接触させた物品を乾燥させる工程と、
d.任意選択的に、工程b〜dを繰り返す工程と、
を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2008−535938(P2008−535938A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556299(P2007−556299)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/005527
【国際公開番号】WO2006/089059
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】