説明

抗菌性の繊維の集合体、その製造方法および用途

【課題】抗菌性の耐久性、特に水分に対する抗菌性の耐久性が向上した繊維の集合体を提供すること。
【解決手段】主としてポリオレフィンからなる繊維の集合体であって、該繊維が、抗菌剤を0.1〜30質量%、懸濁剤を0.1〜5質量%含有し、平均繊維長が0.05〜50mmで、分岐構造を有するものである繊維の集合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性の繊維の集合体、その製造方法およびその用途に関する。詳しくは、分岐を有し特定組成からなる抗菌性の繊維の集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生問題の点から不織布に抗菌性を付与することが行われており、ポリエステルに抗菌剤と親水性を付与する化合物を組合せて用いることで長時間に渡って抗菌性を維持することができる樹脂組成物が得られること知られているが、かかる樹脂組成物を繊維等にした場合、柔軟性に劣る(特許文献1)。パルプに抗菌性を持たせたものも知られている(特許文献2)が、抗菌性の耐久性に劣る。柔軟性と耐久性を兼ね備えた不織布が存在すれば有用であり、特定の無機抗菌剤と界面活性剤を組み合わせたスパンボンド法の不織布が示されている(特許文献3)が、持続的な抗菌性の効果に付いては充分とは言えない。
【0003】
一方、ポリマー溶液にポリビニルアルコール等の存在下に水を添加しフラッシュすることにより、繊維長、繊維径が特定の範囲であり、強度の大きい不織布が得られることが知られている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平11−166108号公報
【特許文献2】特開2003-278097号公報
【特許文献3】特開2005−21446号公報
【特許文献4】特開昭48−44523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、抗菌性の耐久性、特に水分に対する抗菌性の耐久性が向上した繊維の集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決する為に、鋭意検討した結果、特定の構造を有し抗菌剤と懸濁剤を含有する繊維の集合体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、主としてポリオレフィンからなる繊維の集合体であって、該繊維が、抗菌剤を0.1〜30質量%、懸濁剤を0.1〜5質量%含有し、平均繊維長が0.05〜50mmで、分岐構造を有するものである繊維の集合体である。
【0007】
また、本発明は、水と懸濁剤と抗菌剤の存在下に熱可塑性樹脂溶液をフラッシュすることを特徴とする分岐構造を有する繊維の集合体の製造方法である。
【0008】
また、本発明は上記繊維の集合体の用途としての不織布、フィルタ類、包装材、カード・シート・ラベル類、住宅用資材、衛生材料およびバインダー用繊維である。
【発明の効果】
【0009】
本発明における抗菌性の繊維の集合体は、抗菌性に優れしかも長時間使用してもその抗菌効果が失われないという優れた効果を有するものであり、さらに当該繊維の集合体を成形することで不織布の形状とすることができ、フィルタ類、包装材、カード・シート・ラベル類、住宅用資材、衛生材料、バインダー用繊維、各種揮散材、並びに、各種成形用紙等の用途に利用することが可能であり工業的に極めて価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔繊維の集合体〕
はじめに、本発明の繊維の集合体について説明する。本発明の繊維の集合体における繊維は、主としてポリオレフィンからなり、抗菌剤および懸濁剤を含有する。
【0011】
ポリオレフィンとしては、炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、あるいは相互の共重合体、さらにはこれらと他の共重合性のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等との共重合体、さらにはこれら単独重合体や共重合体に不飽和カルボン酸モノマーを過酸化物でグラフト反応させて得られるポリマーが好ましく例示される。特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテンまたは4−メチル−1−ブテンの結晶性の重合体および共重合体が好ましく例示される。具体的には、低密度ポリエチレン、線型低密度ポリエチレンやエラストマー(エチレン−α−オレフィン共重合体)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、マレイン酸やアクリル酸による酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ3−メチルブテン、ポリ4−メチルブテン及びこれらの混合物が挙げられる。これらのポリオレフィンは、発明の趣旨から明らかなようにどのような製造法で製造されたものであっても良い。
【0012】
抗菌剤としては、繊維の集合体を製造する際の加熱下でも安定なものであれば特に限定されないが、一般には無機抗菌剤が熱に対して安定であるため利用しやすい。無機抗菌剤としては、銀系無機抗菌剤および非銀系無機抗菌剤がある。銀系無機抗菌剤としては、例えば、銀担持ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、銀担持アパタイト(リン酸カルシウム)、銀担持ガラス(酸化ケイ素)、銀担持リン酸ジルコニウム、銀担持ケイ酸カルシウムなどがある。非銀系無機抗菌剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化銅などを有効成分とするもの、特に、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどと酸化亜鉛または酸化銅との固溶体、あるいは、酸化亜鉛の超微粒子、酸化チタンなどがある。
【0013】
抗菌剤の粒度については特に制限はないが、繊維の集合体の生産性および抗菌効果の点で、粒度D50%は0.05〜3μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜2μmである。ここでD50%とは、5分間以上超音波で分散させられた後にレーザ散乱光で測定した値である。
【0014】
抗菌剤のBET比表面積についても特に制限はないが、抗菌効果およびその持続性の点で、BET比表面積は1〜300m2/gが好ましく、さらに好ましくは10〜150m2/gである。
【0015】
繊維中における抗菌剤の含有量は、0.1〜30質量%であり、好ましくは0.3〜10質量%である。
【0016】
懸濁剤は、繊維の界面張力を低下させ、菌類と抗菌剤との接触効率を向上させ、結果として抗菌作用の向上にも寄与すると考えられる。
【0017】
懸濁剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸塩、ゼラチン、トラガカントゴム、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを使用することができ、また、それらの親水性ポリマーと、一般的なノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤とを併用することもできる。中でも、生産性、抗菌作用への寄与等の点から、特にポリビニルアルコール系の親水性ポリマーが好ましく、ポリビニルアルコールは重合度200〜1000のものが好ましい。
【0018】
繊維中における懸濁剤の含有量は、0.1〜5質量%であり、好ましくは0.3〜3質量%である。抗菌剤および懸濁剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られる繊維の集合体は優れた抗菌性およびその耐久性を示す。
【0019】
本発明における繊維は、上記抗菌剤および懸濁剤の他、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、酸化防止剤、分散剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等が挙げられる。
【0020】
本発明における繊維は、繊維の最長部分の長さの平均値(本明細書において「平均繊維長」という。)が0.05〜50mmであり、好ましくは0.05〜10mmであり、特に好ましくは0.1〜5mmである。平均繊維長が上記範囲内にあることにより、当該繊維を繊維の集合体、としたときに、抗菌性を生かして種々の用途に好ましく使用することができる。
【0021】
また、本発明における繊維は、直径(以下「繊維径」という。)の最小値が0.5μm程度であることが好ましく、繊維径の最大値が50μm程度であることが好ましい。繊維径が上記範囲内にあることにより、当該繊維を繊維の集合体としたときに、抗菌性を生かして種々の用途に好ましく使用することができる。
【0022】
ここで、上記平均繊維長および繊維径の測定方法について説明する。
(1)平均繊維長
フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)を使用し、12000〜13000本の繊維について繊維長を測定し、繊維長0.05mm刻みで分級した各級の数平均繊維長ならびに繊維本数を下記の式に代入して得られる値を平均繊維長とする。
【0023】
平均繊維長(mm)=Σ(Nn×Ln)/Σ(Nn×Ln
Ln:各級の数平均繊維長(mm)
Nn:各級の繊維本数
ここで、各級の平均繊維長Lnは、次式で求められる。
Ln=ΣL/N
L:1つの級における一本一本の実測繊維長
N:1つの級における繊維本数
【0024】
なお、繊維長は以下のようにして測定する。
繊維を希薄な濃度で水に分散し、キャピラリー中を流れる際の繊維にキセノンランプ光を照射してCCD(電荷結合素子)センサーで映像信号を採取し、画像解析する事で測定する。より具体的には、繊維を0.02重量%の水に分散させ、フィンランド国のメッツォオートメーション社製自動繊維測定機(製品名;FiberLab-3.5)を使用し、12000〜13000本の繊維について測定する。繊維長は0.05mm刻みで測定され、繊維長と各繊維長に該当する繊維の存在率(%)の両方の測定結果が得られる。
【0025】
(2)繊維径
繊維径は、1本、1本の繊維を光学顕微鏡あるいは、電子顕微鏡で観察する事で測定する。具体的に、繊維径の最大値および最小値は、次のようにして測定する
最大値:キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて倍率100倍で観察し、10μm以上の部分につき無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最大値とする。
最小値:日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM6480にて倍率3000倍で観察し、10μm未満の部分につき、無作為に100箇所選択し、選択部分の繊維径を測定し、該測定値の最小値とする。
【0026】
本発明における繊維は、分岐構造を有する。分岐構造とは、例えば図1に示すような形態が例示される。繊維の分岐は光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察することにより確認する。なお、図1は、後述する実施例1の分岐構造の繊維の集合体を、キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて75倍で観察した写真である。
本発明において、平均繊維長が0.05〜50mmで、分岐構造を有する繊維の集合体とは、不織布の一種として知られている合成パルプを包含するものであり、不織布を製造する1つの方法であるフラッシュ法で製造することが可能である。フラッシュ法とは、高圧で溶媒に溶解したポリマーを減圧することで溶媒を揮散させ、さらに必要に応じワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて繊維を切断および叩解することで不織布を製造する方法である。特に、特開昭48−44523に記載されているような方法により、ポリオレフィン溶液を抗菌剤および懸濁剤の存在下、水媒体に分散させたものをフラッシュさせると、抗菌性に優れ、繊維状物質が乱雑に分岐した形状を有する本発明の繊維の集合体が得られる。かかる繊維の集合体を不織布にしたもの(合成パルプ)は強度も大きい。
【0027】
本発明の繊維の集合体の形態としては、特に限定されるものではなく、不織布の他、織物、編物等が挙げられる。
本発明の繊維の集合体の目付は、用途に応じて適宜選択すれば良い。
【0028】
以上説明した本発明の繊維の集合体は、抗菌性およびその耐久性に優れ、特に水分に対する抗菌性の耐久性に優れる。
【0029】
〔繊維の集合体の製造方法〕
次に、繊維の集合体を製造する本発明の方法の一実施形態について詳細に説明する。
本発明の繊維の集合体の製造方法は、水と懸濁剤と抗菌剤の存在下に熱可塑性樹脂溶液をフラッシュするものであるが、具体的には、以下の方法によることが好ましい。
【0030】
最初に、原料樹脂を、該樹脂を溶解可能な溶剤に溶解し、前述した懸濁剤、抗菌剤および水を加えてエマルションとする。原料樹脂としては、前述したポリオレフィンが好適である。
【0031】
溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭素類等の中から、原料樹脂を溶解せしめ、且つ、フラッシュ時に揮発し得られた繊維の集合体に残存しにくいものを適宜選択する。
【0032】
懸濁剤の添加量は、繊維中、懸濁剤が0.1〜5質量%となる量とするのが好ましい。製造過程において、添加した懸濁剤の一部が抜けるような操作をする場合は多めに添加する等、適宜調整し添加する。添加量の目安としては、原料樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部である。懸濁剤を添加することにより、エマルションを安定化することができるとともに、フラッシュ後の繊維切断を水中で安定的に行うことができる。
【0033】
一方、抗菌剤の添加量は、繊維中、抗菌剤が0.1〜30質量%となる量とするのが好ましい。製造過程において、添加した抗菌剤の一部が抜けるような操作をする場合は多めに添加する等、適宜調整し添加する。添加量の目安としては、原料樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部である。
【0034】
なお、抗菌剤のより好ましい添加量は、得られる繊維の集合体の用途により異なる。例えば、長期に渡って使用する浄水用フィルタは、原料樹脂100質量部に対して1〜3質量部程度、同じ浄水用フィルタでも、活性炭等の他の材料と混合する場合には、フィルタ内の抗菌剤の絶対量を確保するために、原料樹脂100質量部に対して1〜30質量部程度とすることが好ましい。
【0035】
次に、得られたエマルションを、100〜200℃、好ましくは130〜150℃に加熱し、圧力0.1〜5MPa、好ましくは圧力0.5〜1.5MPaの加圧状態にし、ノズルより減圧下へ噴出(フラッシュ)すると同時に溶剤を気化させる。減圧の条件は、圧力1kPa〜95kPaとすることが好ましく、噴出先は窒素雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。
ここで本明細書において、圧力とは絶対圧力のことを示す。
【0036】
上記のようにしてフラッシュすることにより、分岐構造を有する不定長の繊維が得られるが、この繊維は、さらにワーリング・ブレンダー、ディスクリファイナー等にて切断および叩解して、所望の長さにすることが好ましい。そのとき、繊維を0.5〜5g/リットル濃度の水スラリーとして上記切断・叩解処理を行うことが好ましい。乾燥後、所望によりミキサー等によって開綿してもよい。
【0037】
以上説明した方法によれば、分岐構造を有する繊維の集合体、特に本発明の繊維の集合体を好ましく製造することができる。
【0038】
〔繊維の集合体の用途〕
本発明の繊維の集合体は、抗菌性に優れ、しかも長時間使用しても、特に水分存在下で長時間使用しても、その抗菌効果が失われないという優れた効果を有するものである。
かかる繊維の集合体は、例えば不織布に成形することにより、ティーバッグ紙、コーヒーバッグ紙、だしパック紙、エアフィルタ、マスク、浄水用フィルタ、ワインフィルタ、ビールフィルタ、ジュースフィルタ等などのフィルタ類;食品包装紙、脱酸素材包装紙、医療用包装紙、防虫包装紙等の包装材;壁紙、透湿防水シート、耐熱ボード、ふすま紙、障子紙、グリーティングカード、パンフレット、名刺、ブックカバー、封筒、ランプシェード、ラベル用紙、印刷用紙、ポスター用紙等のカード・シート・ラベル類;セメント粒子捕捉材、チクソ性付与材等の住宅用資材;使い捨てのオムツ・ナプキン・シーツのトップシートや吸収体バインダー繊維、使い捨てのおしぼり・ワイパー・ティッシュのバインダー繊維、脂取り紙、滅菌紙等の衛生材料;加湿器用水蒸気揮散材、芳香剤芯材等の揮散材;および食品トレー・文具用品・大型部品緩衝材・自動車ドアパネルのバインダー用繊維等の多岐に渡って好適に使用することが出来る。
なお、上記用途においては、本発明の繊維の集合体のみから構成してもよいし、本発明の繊維の集合体に他の繊維が混繊していてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1〕
[繊維の集合体の製造方法]
80リットル攪拌機付きオートクレーブ中に、n−ヘキサン20リットル(23℃)、水20リットル(23℃)、ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックス2200J;融点135℃)1kg、ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製 ゴーセノールNL−05)20gおよび抗菌剤(海洋化学研究所(株)製 シーバイオZ−28)6gを投入し、攪拌しながら液温145℃まで昇温した。さらに145℃に保って30分間攪拌してエマルションを得た。
次いで、このエマルションを、オートクレーブに取り付けられた直径3mm、長さ20mmのノズルより窒素雰囲気で圧力53kPaの圧力下にあるドラム内に噴出(フラッシュ)させて繊維状物を得た。
次いで、繊維状物を10g/リットル濃度の水スラリーとした後、直径12インチのディスク型リファイナーで叩解を行い、水中に分散した繊維の集合体を得た。この分散した繊維の集合体を、熱風循環式乾燥機にて50℃で24時間乾燥し、2L家庭用ミキサーにて開綿する事で綿状の繊維の集合体を得た。
【0041】
得られた繊維の集合体は図1に示す通り繊維構造が分岐構造を有していた。尚、図1は乾燥後の繊維の集合体を、キーエンス社製デジタルHFマイクロスコープVH8000にて75倍で観察した際の写真である。
この繊維の集合体は、繊維径が、最小値1.1μm、最大値38μmの分布を有しており、繊維長が0.1mm〜5mmの分布を有していた。平均繊維長は1.21mmであった。繊維中の抗菌剤量は0.49質量%、繊維中のポリビニルアルコール量は、1.9質量%であった。
【0042】
[抗菌性の評価方法]
前記方法で作成した綿状の繊維の集合体につき、JIS L1902 菌液吸収法(繊維製品評価技術協議会認定の抗菌効果試験方法)により、静菌活性値を測定し、抗菌性能を評価した。
(1)評価に使用する試験片の調整方法
綿状の繊維の集合体0.4gを18mm×18mmの金属容器に入れて、一様に広げ圧力63.7MPaにて10分間加圧して、18mm角の正方形で重さ0.4gの試験片を作製した。
(2)試験片の前処理
上記の様に作製した試験片をバイアル瓶に入れ、オートクレーブ中にて温度121℃、圧力103kPaで15分間高圧蒸気滅菌を行った。
(3)培養試験
バイアル瓶に入れた滅菌済み試料に、生菌数を1±0.3×10に調整したStaphylococcus aureus ATCC 6538P(黄色ブドウ球菌)の菌液0.2mLを出来るだけ均一に接種し、37℃で18時間培養した。その培養液に、Tween80 0.2%を添加した生理食塩水20mLを加えて攪拌し菌を洗い出した。この洗い出した菌の10倍希釈系列を作製し、ニュートリエント寒天培地と混釈して37℃で24時間以上培養し、コロニー数を数え、生菌数を求めた。
(4)試験結果の算出
標準試料および試験試料について、上記試験をそれぞれ行い、下式から静菌活性値を求めた。なお、標準試料としてはJIS L 0803記載の綿標準白布を用いた。
静菌活性値 = logB − logC
B:標準試料存在下、18時間培養した後の生菌数
C:試験試料存在下、18時間培養した後の生菌数
ここで静菌活性値が2.2以上を良好と判断し、表1中に○と記載した。また2.2未満を不良と判断し、表1中では×と記載した。
(5)耐久性の評価
20Lの蓋付き容器に水道水20Lと前記(1)で調整した綿状の抗菌性評価サンプルを入れて、よく振り混ぜ1昼夜放置した。メッシュで該評価サンプルをろ過回収して、50℃にて1昼夜乾燥した。こうして得られたサンプルにつき、上記(2)〜(4)に従って抗菌性評価を行った。
結果を表1に示す。表1から分かるように、実施例1のサンプルは、製造直後、並びに水道水浸漬1日後の静菌活性値の双方とも良好な値を示し、サンプルに抗菌性がある事を示すと共に、該抗菌性に耐久性がある事を示した。
【0043】
〔抗菌剤量の分析方法〕
温度25℃、湿度50%、の恒温恒湿条件下、綿状の繊維集合体を厚さ1mmの金属製スペーサーと共にフッ素樹脂製フィルムに挟んで、180℃にて3分間プレスして繊維集合体を溶融することで、1mmのフィルムを作製する。このフィルムを約1cm角に切断したもの10gを磁器製のるつぼに入れ1100℃の電気炉にて燃焼し、その残渣重量を測定する。繊維中の抗菌剤量は、次の式にてパーセントで求める。
抗菌剤量(%)=燃焼後残渣(g)/10(g)×100
【0044】
〔ポリビニルアルコールの定量方法〕
温度25℃、湿度50%、の恒温恒湿条件下、において綿状の繊維集合体を厚さ200μmの金属製スペーサーと共にフッ素樹脂製フィルムに挟んで、180℃にて3分間プレスして溶融することで厚さ約200μmのフィルムを作製する。赤外吸収スペクトル分析装置(日本分光株式会社製FT/IR−400)、このフィルムの、1100cm−1における吸光度を測定する。フィルム厚みをμm単位で実測し、該厚み実測値(μm)と吸光度よりランバート・ベールの法則によりポリビニルアルコールの含有量を求める。
尚、含有量を求める際、ポリビニルアルコールを2.0%含有した同形状のポリエチレンサンプルを予め作製しておき、これを標準サンプルとして用いた。該標準サンプルは、ポリエチレン98質量部にポリビニルアルコール2質量部加えて溶融混練して作成した。
【0045】
〔実施例2〕
実施例1記載の抗菌剤の種類を東亞合成(株)製ノバロンAG1100に変えて、実施例1と同様の方法で繊維の集合体を作製した。
得られた繊維の集合体は繊維構造が分岐構造を有していた。この繊維の集合体は、繊維径が、最小値1.2μm、最大値35μmの分布を有しており、繊維長が0.1mm〜5mmの分布を有していた。平均繊維長は1.19mmであった。繊維中の抗菌剤量は0.46質量%、繊維中のポリビニルアルコール量は、1.9質量%であった。
【0046】
この繊維の集合体について実施例1と同様の方法にて抗菌性の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例2のサンプルは、実施例1同様、製造直後、並びに水道水浸漬1日後の静菌活性値の双方とも良好な値を示し、サンプルに抗菌性がある事を示すと共に、該抗菌性に耐久性がある事を示した。
【0047】
〔比較例1〕
ポリエチレン(三井化学(株)製 ハイゼックス2200J)100質量部に抗菌剤ノバロンAG1100を0.6質量部とポリビニルアルコール2質量部を混合したものを鞘成分とし、ポリプロピレン(三井化学(株)製 ハイポール)を芯成分とした、芯鞘比率=50:50の芯鞘複合繊維を紡糸ノズルより溶融紡糸し、延伸して2デニールの長繊維を作製後、長さ5mmに切断して繊維径25μmの分岐構造でない短繊維を得た。繊維中の抗菌剤は0.30%、繊維中のポリビニルアルコール量は、1.0%であった。
これを上記鞘芯比率で換算すると、鞘側の抗菌剤の含有量は0.60%、鞘側のポリビニルアルコールの含有量は2.0%となった。
【0048】
この短繊維について実施例1と同様の方法にて抗菌性の評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、比較例1のサンプルは、製造直後には良好な静菌抗菌活性値を示し抗菌性を示したが、水道水浸漬1日後には静菌活性値が低下し、抗菌性に耐久性がないことがわかる。
【0049】
〔比較例2〕
実施例1と同様の方法で、抗菌剤を入れずに繊維の集合体を作成した。得られた繊維の集合体は繊維構造が分岐構造を有していた。また、繊維径が、最小値1.1μm、最大値34μmの分布を有しおり、繊維長が0.1mm〜5mmの分布を有していた。平均繊維長は1.20mmであった。繊維中のポリビニルアルコール量は、1.8質量%であった。
【0050】
この繊維の集合体について実施例1と同様の方法にて抗菌性の評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、得られた繊維の集合体には抗菌性がないことがわかる。
【0051】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の繊維の集合体は、抗菌性および水分に対する抗菌性の耐久性に優れるため、不織布、フィルタ類、包装材、カード・シート・ラベル類、住宅用資材、衛生材料、バインダー用繊維等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1に係る繊維の集合体の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてポリオレフィンからなる繊維の集合体であって、該繊維が、抗菌剤を0.1〜30質量%、懸濁剤を0.1〜5質量%含有し、平均繊維長が0.05〜50mmで、分岐構造を有するものである繊維の集合体。
【請求項2】
懸濁剤がポリビニルアルコールであり、抗菌剤が無機化合物である請求項1に記載の繊維の集合体。
【請求項3】
繊維の集合体がフラッシュ法で成形して得たものである請求項1に記載の繊維の集合体。
【請求項4】
水と懸濁剤と抗菌剤の存在下に熱可塑性樹脂溶液をフラッシュすることを特徴とする分岐構造を有する繊維の集合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の繊維の集合体を成形してなる不織布。
【請求項6】
請求項1記載の繊維の集合体を含有するフィルタ類。
【請求項7】
請求項1記載の繊維の集合体を含有する包装材。
【請求項8】
請求項1記載の繊維の集合体を含有するカード・シート・ラベル類。
【請求項9】
請求項1記載の繊維の集合体を含有する住宅用資材。
【請求項10】
請求項1記載の繊維の集合体を含有する衛生材料。
【請求項11】
請求項1記載の繊維の集合体を含有するバインダー用繊維。

【図1】
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【公開番号】特開2007−77519(P2007−77519A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264618(P2005−264618)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】