説明

抗菌性を有する潅水マット

【課題】 本発明は、使用期間中の病気の発生、病気の伝染、藻の発生を効率的に防止または抑制し、マットへの作物の根が進入することを抑制する資材を提供することを課題とする。
【解決手段】 融点150℃以上の熱可塑性ポリエステル樹脂にて形成された繊維よりなる親水性を有する布帛であって、使用の際に上部となる表面に抗菌剤が樹脂エマルションによって固着されており、抗菌剤と樹脂エマルション(固形分質量)の質量比が5:1〜1:5であることを特徴とする抗菌性を有する潅水マット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業や園芸の分野で鉢花栽培時や野菜類の育苗及び施設栽培など、水や水分に接する用途において菌、カビや藻類等の発生及び増殖を抑制する布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から鉢物栽培は、ハウス内で多数の鉢物を並べ、人力または自動システムにより鉢物の上から潅水作業を行っている。この潅水方法は、鉢の上部より潅水するため、潅水に手間がかかり、また鉢物の花および葉が水により破損(発病)することがある。また、イチゴ等施設内で栽培する作物についても、潅水の水や、潅水時に起こる培地の葉っぱへの付着により破損(発病)することがある。このような破損(発病)があると、大切に育てた植物や作物が出荷できなくなって大きな損害を被るおそれがある。
【0003】
近年、上述した問題を発生させないために、鉢の下に不織布製の保水マットを敷いて鉢の底面より給水する方法、培地上に保水マットを敷いて潅水チューブ等を用いてマットを通じ潅水する方法が採用されるようになってきた。これらの方法では、供給された水が直接植物や作物に当たらないため、鉢物の花や葉、作物に被害が生ずることが無いという利点がある。
【0004】
しかしながら、上述の潅水方法であっても、菌の付着等による疫病の発生や水を介しての被害の拡大や、液肥等の肥料により藻が発生するなどの不具合がでている。病気が発生した場合、その苗は使用できず更にはシートを通じ伝染した苗も使用できないこととなる。また、藻が発生すると、育苗終了後の片付けの際に除去しなければならず、非常に手間が掛かる。
【0005】
また、マットを鉢の下に敷く方法では、作物の根がマットに入り込み、苗の定植の際に多くの根を切ってしまい本圃への根の活着に不具合が生じたり、あるいは、藻の発生同様片付けに手間が掛かることとなる。
【0006】
農業分野において上述の水による病気の伝搬や増殖を防ぎ、減農薬栽培等を実現するために、無機系の抗菌剤を使用することが提案されており、特許文献1には、合成繊維や天然繊維に銀を無電解メッキ法や真空蒸着法で被覆し、該繊維を最大50%混合して、シート状やひも状の資材としたものが提案されている。しかしながら、この方法では銀を繊維に被覆することにコストが掛かり、また、抗菌機能が不要な部分にも銀が付着することとなり非効率である。なお、銀の抗菌性を引き出すには、イオンにする必要性と、そのイオンを運ぶ為の十分な水分が必要であるが、この提案ではその機能が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−25719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、作物に直接水が接触しない潅水方法であっても、菌の付着等による疫病の発生、水を介しての被害の拡大、液肥等の肥料による藻の発生を防止または抑制することはできていない。また、マットを鉢の下に敷く方法では、作物の根がマットに入り込んでしまうという問題点がある。
【0009】
そこで本発明は、この問題点を解決するため、使用期間中の病気の発生、病気の伝染、藻の発生を効率的に防止または抑制し、マットへの作物の根が進入することを抑制する資材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するものであり、融点150℃以上の熱可塑性ポリエステル樹脂にて形成された繊維よりなる親水性を有する布帛であって、使用の際に上部となる表面に抗菌剤が樹脂エマルションによって固着されており、抗菌剤と樹脂エマルション(固形分質量)の質量比が5:1〜1:5であることを特徴とする抗菌性を有する潅水マットを提供することを要旨とする。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の潅水マット(以下、「マット」ということもある。)を構成する熱可塑性合成繊維を構成する材料としては、ポリエステル系の樹脂が良く、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸等を共重合した共重合ポリエステル、ポリ乳酸などがあげられ、これらのブレンド物も用いることができる。また繊維としては、これらの樹脂100%からなる中実あるいは中空構造の他に、二種以上のポリマーが複合したものを用いることもできる。この繊維の複合形態としては、サイドバイサイド型、芯鞘型、中空芯鞘型などを使用でき、長繊維、短繊維の何れも使用できる。
【0012】
また、ポリエステル系樹脂の融点としては、150℃以上が良い。融点が150℃未満であると構成繊維への親水性付与時の乾燥に時間がかかるだけで無く、エマルション等のキュアが十分行えなくなるので好ましくない。より効率的に付与するには樹脂の融点は更に高い方が好ましい。
【0013】
本発明に用いられる熱可塑性合成繊維の単糸繊度は、特に限定しないが1デシテックス以上10デシテックス以下の範囲にあることが好ましい。単糸繊度が1デシテックス未満の場合は、繊維が細すぎるために紡糸が不安定となり好ましくない。一方、単糸繊度が10デシテックスを超える場合は、繊維が太すぎるため、繊維間が広くなり、抗菌剤付与の際に表面だけでなく内部または裏面にまで浸透してしまい、マット表面での効果が低下するため好ましくない。また、繊維間の空隙が大きすぎて保水しようとしてもすぐ排水され、保水性が得られなくなるだけでなく、抗菌効果を奏する為の金属イオンも同時に排出されてしまう。このような理由から、より好ましくは2.5〜7デシテックスである。
【0014】
本発明のマットは、使用の際に上部となる表面に抗菌剤が樹脂エマルションによって固着されていることが重要である。すなわち、抗菌剤が上面に存在し、マット上面より潅水されるため、上面においての抗菌性を発現するとともに、潅水された水と一緒に溶出した抗菌成分がマットの上部から下部へ移行して、マット全体において抗菌効果をも奏する。特に、マットの上に鉢を置く場合はマットの上面に抗菌剤を存在させることにより、藻の発生やマットへの根の進入が容易に抑制することができることから、マット上面に抗菌剤が固着していることが必要である。
【0015】
本発明のマットに固着している抗菌剤と樹脂エマルション(樹脂エマルションにおいては、乾燥後の固形分質量)の質量は5:1〜1:5であることが好ましい。この質量比が5:1よりも抗菌剤の方が多くなると、抗菌剤が脱落しやすく抗菌性能の低下が著しく、十分な抗菌性が得られなくなるため、好ましくない。一方、この重量比が1:5よりも樹脂エマルション質量が多くなると、抗菌剤を樹脂エマルションで覆ってしまい、抗菌効果を奏しにくくなる。例えば、抗菌剤が金属成分の場合には、イオンの溶出が抑制され抗菌性能が低下し好ましくない。この理由から抗菌剤と樹脂エマルション(乾燥質量)の質量比は、3:1〜1:3がより好ましい。
【0016】
また、本発明のマットの抗菌剤付与の方法については、マットの上部となる表面(上面)に固着できる方法であればよく、ベタ印刷、グラビア印刷、コーティング等、どのような方法を用いてもよい。含浸のように全体へ付与する方法を選択すると、マット上面だけでなく、全体に付着することになり、効果的に抗菌性を発揮できるとは言いがたく、上面のみに付着させる場合と付着量が同じである場合、抗菌性が必要となるマット上面において抗菌効果を効率的に発揮できず、上面での抗菌性能が低下するため好ましくない。
本発明の抗菌剤の付与量は特に限定されるものではないが、少なすぎると、使用期間中に抗菌性能が維持できなくなるため好ましくなく、多すぎると抗菌剤が金属成分の場合に金属イオンの溶出が多くなり排水の金属イオン濃度が高くなるだけでなく、コスト的にも高くなり好ましくない。したがって、抗菌剤の付与量はマットの使用期間と潅水量にもよるが、マット上面における付与量が概ね1g/mから20g/mが適当である。
【0017】
本発明のマットに用いる抗菌剤は無機系抗菌剤で、抗菌性を有する金属成分をイオン交換法により担持した無機材料であることが好ましい。抗菌剤が有機系であると、抗菌剤を固着する際の熱により変化が生じる、あるいは、作物内に入り込み、肥料、農薬との反応、排水への影響が懸念される。
【0018】
また、抗菌剤は、三次元骨格構造を持つゼオライトにイオン交換にて金属成分を担持させたものが良い。三次元骨格構造を選択することにより金属イオンの溶出度合いをコントロールでき、尚且つ、耐熱性の高いものであるため加工安定性にも優れる。
【0019】
本発明のマットの無機系抗菌剤に担持する金属成分には銀及び銅が含まれていることが好ましい。銀イオンや銅イオンには、抗菌性(菌やカビを不活化させる)だけでなく、藻の発生抑制効果や、根の忌避効果があることから、金属成分として含まれていることが好ましい。なお、銀、銅以外にも抗菌性を有する金属が担持されていてもよい。
【0020】
本発明のマットの抗菌剤を固着する樹脂エマルションには親水性および又は吸水性を有する成分が混錬されていることが好ましい。このエマルションが撥水性であると、抗菌剤への水の接触が阻害され、結果として金属イオンの溶出が不十分となり、抗菌性能が得られなくなるため好ましくない。
【0021】
本発明のマットは、布帛の一方の面のL*値が75以上であり、他方面のL*値が40以下であるマットを用いると良い。表裏で色を変更することにより、片面(上面)のみに抗菌剤を付与するマットにおいては、抗菌剤付与面を色の識別によって容易に判別できるため好ましい。さらに、この場合、L*値が40以下の面に抗菌剤が固着していることが好ましい。この抗菌剤は無機系抗菌剤で金属イオンが溶出されてくるため、肥料や農薬等に含まれる物質と結合して化合物となり発色する場合があるため見た目にもL*値が低い方へ抗菌剤を付与する事が好ましい。
【0022】
本発明のマットは、保水層と吸水拡散層の2層からなっていることが好ましい。この2層で構成されることにより、潅水された水が広がり、作物に必要な水分及び抗菌剤から溶出した金属イオンが長時間に亘りマット内に存在・保持できる。この場合、親水性を有する吸水拡散層を上面にして使用する方が水の広がりや保水が速く行えるためよく、吸水拡散層表面に抗菌剤を固着する。2層を一体化する方法としては、吸水拡散層に潅水した水が保水層へ移行し、保水層から吸水拡散層への水の移動が容易にできる方法であれば特に限定しないが、保水層から吸水拡散層へのニードリングでの三次元交絡による一体化が好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の潅水マットは、マット上面に抗菌剤が固着していることから、潅水時にマット上面に固着した抗菌剤がその機能を発揮することによって、菌やカビ等の増殖や藻の発生を効果的に抑制することができる。
【0024】
そして、抗菌剤が無機系抗菌剤の場合、溶出する銀イオン及び銅イオンが水と共にマット全体へ拡散し抗菌機能を発揮するため、菌、カビ等の増殖を抑制することにより病気の発生及び拡散を良好に防ぐことができる。また、藻の発生やマットへの根の進入を抑制する効果が得られるため、マットを長期に亘り使用することができる。
【実施例】
【0025】
次に本発明の潅水マットを実施例によって、さらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、実施例における各特性値は、以下のようにして求めたものである。
(1)ポリマーの極限粘度:フェノールと四塩化エタンとの等重量混合溶媒を用い、20℃にて測定した。
(2)融点(℃):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)L*値:色彩色差計(データプロセッサ DP−300、測定ヘッド CR−310:ミノルタ社製)を用い、繊維布帛及び有孔フィルムは測定箇所の試料の目付が300g/m2以上となるように、シートを折りたたみ、設置して測定した。なお、本発明のマットは、折りたたまずに測定した。測定の際は、測定個所を変えて3個所測定し、得られた値の平均値をL*値とした。
(4)抗菌剤付与量:あらかじめ空焼きしたるつぼにサンプルを5×10cmサイズ秤量し、電気炉にて650℃1時間で灰化し、灰分を白金皿に移して硝酸(1+1)10mlとフッ酸5mlを加えてホットプレート上にて加温溶解を行う。溶解液に水を加えて全量100mlにする。原子吸光光度計にて金属の定量分析を行い抗菌剤換算にて付与量を求めた。
(5)かび抵抗試験1:JIS−Z−2911(2000年度版)により評価。
プラスチック製品の試験・方法Aに準拠
胞子懸濁液:単一胞子懸濁液,懸濁液滴下量:0.1ml
保存温度:29±1℃,保存日数:4週間
使用カビ:黒コウジカビ(NBRRC6341)
(6)かび抵抗試験2:JIS−Z−2911(2000年度版)により評価。
プラスチック製品の試験・方法Bに準拠(グルコース/無機塩寒天培地)
胞子懸濁液:単一胞子懸濁液,懸濁液滴下量:0.1ml
保存温度:29±1℃,保存日数:4週間
使用カビ:黒コウジカビ(NBRRC6341)
【0026】
実施例1
融点260℃、極限粘度[η]=0.68のポリエチレンテレフタレートを、紡糸口金を用いて、溶融温度285℃で紡糸口金より吐出した。そして、紡糸速度4800m/分でエアーサッカーにて吸引し、その後に金網ネット上に捕集し、空気延伸後の単糸繊度が3.8デシテックスのポリエステル長繊維ウエブを得た。このようにして、目付200g/m2 、厚さ2mmの保水層用ウエブを作成した。
【0027】
次に保水層用ウエブと同じ方法で樹脂に黒色顔料のカーボンブラックを添加し、3デニールの長繊維ウエブを得た後、これを210℃に加熱された表面フラットの熱圧接ロールで線圧50kg/cmで圧接し、表面が平滑な吸水拡散層用ウエブを作成した。さらに、脂肪酸エステルとノニオン活性剤とカチオン活性剤とを主成分とする親水性油剤の原液をアクリルバインダーの固形分重量に対し0.5重量%投入し、同浴で固形分重量に対し16重量%になるように含浸させた。引き続き、160℃の乾燥機で乾燥を行なった。得られた吸水拡散層用ウエブの目付は50g/m2 であった。
【0028】
得られた保水層用ウエブと吸水拡散層用ウエブとを積層し、保水層側よりニードリング処理によって両者を一体化させた。詳細には、ニードルパンチ機械(針;フォスター製 PB−#40)にて、針密度すなわちニードリングの回数を90回/cm2 、針深12.5mm、加工速度10m/minとして処理し、繊維を三次元的に交絡させた。
【0029】
次いで、吸水拡散層側に銀と銅をイオン交換で担持した無機系抗菌剤のシナネンゼオミック社製WAC10NSと、吸水拡散層作成時に使用した親水性油剤を含むアクリルバインダーを固形分重量比で抗菌剤:樹脂=2:1の設定で抗菌剤付与量が2g/m2となるようにグラビアコーティングにて付与した。実際に付着した抗菌剤量は2.06g/m2で、アクリルバインダーは1.05g/m2であり、吸水拡散層のL*値は34.2で、保水層のL*値は86.4であった。このマットのかび抵抗試験の結果、かび抵抗試験1では、肉眼および顕微鏡下でカビの発育は認められず、評価:0であった。また、かび抵抗試験2では、評価:2の高い評価結果が得られた。
【0030】
実施例2
実施例1において、マットを作成し、抗菌剤の付着量が1.00g/m2としたこと以外は実施例1と同様に行い潅水マットを得た。このマットのかび抵抗試験の結果、かび抵抗試験1では、肉眼および顕微鏡下でカビの発育は認められず、評価:0であった。また、かび抵抗試験2では、評価:2の高い評価結果が得られた。
【0031】
比較例1
実施例1において、吸水拡散層として以下のものを作成した。すなわち、保水層用ウエブと同じ方法で樹脂に黒色顔料のカーボンブラックを添加し、3デニールの長繊維ウエブを得た後、これを210℃に加熱された表面フラットの熱圧接ロールで線圧50kg/cmで圧接し、表面が平滑な吸水拡散層用ウエブを作成した。さらに、脂肪酸エステルとノニオン活性剤とカチオン活性剤とを主成分とする親水性油剤の原液をアクリルバインダーの固形分重量に対し0.5重量%投入し、かつ、銀と亜鉛をイオン交換で担持した無機系抗菌剤(シナネンゼオミック社製WAJ10NS)を同浴で抗菌剤とアクリルバインダーの固形分との重量比が1:6となるように行い、同浴で固形分重量に対し16重量%になるように含浸させた。引き続き、160℃の乾燥機で乾燥を行なって、吸水拡散層用ウエブを得た。
得られた吸水拡散層用ウエブは、実施例1と同様にして、保水層用ウエブとニードリング処理により一体化し、マットを得た。なお、実施例1においては、吸水拡散層の表面(上面)に抗菌剤をグラビアコーティングにて固着させたが、比較例1では、抗菌剤を含浸により付着させたため、吸水拡散層の厚み方向にも抗菌剤が付着したものであり、抗菌剤の付与量は1.72g/m2であった。このマットのかび抵抗試験の結果、かび抵抗試験2では、評価:4と低い評価結果であった。
【0032】
比較例2
抗菌剤を付与しなかったこと以外は実施例1と同様にマットを得た。このマットのかび抵抗試験の結果、かび抵抗試験2では評価:5と低い評価結果であった。
【0033】
実施例3、比較例3
実施例1において、吸水拡散層を作成後、吸水拡散層用ウエブの片面に銀と銅をイオン交換で担持した無機系抗菌剤のシナネンゼオミック社製WAC10NSと、吸水拡散層作成時に使用したアクリルバインダーを固形分重量比で抗菌剤:樹脂=3:1.35の設定で抗菌剤付与量が3g/m2となるようにグラビアコーティングにて付与した後にニードリング処理した以外は実施例1と同様に作成し抗菌性マットを得た。得られたマットに実際に付着した抗菌剤量は2.87g/m2で、アクリルバインダーは1.29g/m2であった。
【0034】
一方、実施例3において抗菌剤を付与していないマットを比較用として準備した(比較例3)。それぞれのマットをイチゴ育苗のポット上部からの潅水に使用し1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月後のマットの重量変化を確認した。重量測定の結果、抗菌剤を付与していない比較例3のマットは、1ヶ月後に0.74g、2ヶ月後に3.97g、3ヶ月後に5.83gの重量となったのに対し、抗菌剤を付与した実施例3のマットは1ヶ月後に0.11g、2ヶ月後に1.64g、3ヶ月後に3.59gの重量であり、比較例3に比べて3ヶ月間における重量増加が少なく、このことは、実施例3のマット中に藻類の発生が少ないことを表していた。また、目視においても抗菌剤を付与していないマットに比べ藻の発生量は明らかに少なく良好な状態であった。
【0035】
実施例4、比較例4
実施例3および比較例3で用いたそれぞれのマットを用い、イチゴ育苗のポットの底面からの潅水方法にて使用し、1ヵ月後のマットの状況を確認した。抗菌剤を付与したマットは、マット上の藻の発生や、ポット底面の吸水口からポット外への根の出方及びマットへの根の進入が、抗菌剤を付与していないマットに比べ、明らかに少なく良好な状態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点150℃以上の熱可塑性ポリエステル樹脂にて形成された繊維よりなる親水性を有する布帛であって、使用の際に上部となる表面に抗菌剤が樹脂エマルションによって固着されており、抗菌剤と樹脂エマルション(固形分質量)の質量比が5:1〜1:5であることを特徴とする抗菌性を有する潅水マット。
【請求項2】
抗菌剤が無機系抗菌剤であり、抗菌性を有する金属成分をイオン交換法により担持した無機材料であることを特徴とする請求項1記載の抗菌性を有する潅水マット。
【請求項3】
該抗菌剤の金属成分に銀及び銅が含まれていることを特徴とする請求項1、2記載の抗菌性を有する潅水マット。
【請求項4】
樹脂エマルションに親水性および又は吸水性を有する成分が混錬されていることを特徴とする請求項1から3記載の抗菌性を有する潅水マット。
【請求項5】
布帛の一方の面のL*値が75以上であり、他方の面のL*値が40以下であって、L*値が40以下の面に抗菌剤が固着していることを特徴とする請求項1から4記載の抗菌性を有する潅水マット。
【請求項6】
布帛が保水層と吸水拡散層の2層からなり、吸水拡散層表面に抗菌剤を固着することを特徴とする請求項1から5記載の抗菌性を有する潅水マット。

【公開番号】特開2013−100269(P2013−100269A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225153(P2012−225153)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】