説明

抗菌性ポリマー物品を製造する方法

本発明は、真空蒸着および電子ビーム技術を用いて、物品が含むポリマー材料上にアミノ反応性官能基をグラフト化し、続いてそのポリマー材料をキトサン溶液と接触させることを含む、物品に抗菌性および臭気抑制性を付与する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着および電子ビーム技術を用いて、物品上にアミノ反応性官能基をグラフト化すること、続いてキトサン溶液と接触させることを含む、ポリマー物品に抗菌性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物とヒトとの接触を排除または最小限にするための多くの物質が市場に存在することによって証明されているように、環境において遭遇する微生物を最小限にする、または殺滅する物質および/または方法が明らかに求められている。かかる物質は、食品製造または取り扱い分野、および浴室などの個人衛生の分野で有用である。同様に、抵抗力が低下した人々が、疾病の原因となる微生物による被害を特に受けやすい、病院および高齢者福祉施設において、かかる抗菌性物質が使用される。
【0003】
多くの用途において臭気の発生を抑制する需要も増大している。ヒトは、臭気を生じるいくつかの部位を体に有する。ヒトは、何千もの臭気物質を検出する能力も有する。最も顕著な臭気発生部位の中では、腋窩、生殖器部位および足が挙げられ、数多くの様々な臭気物質を生じ、多くの研究の対象ならびに多くの消費者製品の焦点である。さらに、多数の皮脂腺およびエクリン汗腺を含み、かつブドウ球菌属(特に、表皮ブドウ球菌)の個体群を支援する、首、胴体、腕および脚の皮膚で臭気が発生する。皮膚の一部の部位、例えば腋窩、乳頭および肛門性器は、高密度のアポクリン腺またはアポエクリン腺を含有する。これらの部位からのアポクリン分泌は、悪臭となる、独特な、しばしば非常に強い臭気を発生する。これは一部、これらの分泌物中のタンパク質を加水分解し、その結果、臭気物質を放つ、細菌の活性によって生じる(Spielman,A.I.,Zeng,X−N.,Leyden,J.J. and Preti,G.Proteinaceous precursors of human axillary odor:isolation of two novel odor binding proteins.Experientia,1995,51,40−44)。消費者は、衣料品および衛生用製品において新鮮さの香りの知覚を望むため、臭気の発生を抑制する実用的な方法を見出すことが望まれる。
【0004】
さらに、臭気制御機能から利益を得る包装用途がある。肉などの特定の食品は、包装内で濃くなる臭気を自然に発生する。包装が開いている場合には、食品がまだ新鮮だとしても、消費者は不快な臭気に気が付く。例えば、家禽肉食品は、ジスルフィド結合を含有するタンパク質が豊富である。家禽肉食品がバリアまたは青果物鮮度保持包装で包装されている場合、自然に形成する硫化物臭は、包装内で消散、蓄積、濃縮することができない。包装を開くと、消費者は強い、不快な硫化物の臭いに気が付く。
【0005】
キトサンは、ポリ−[1−4]−β−D−グルコサミンに対して一般に使用されている名称である。キトサンは、真菌類の細胞壁、昆虫、特に甲殻類の外殻に由来する、ポリ−[1−4]−β−N−アセチル−D−グルコサミンであるキチンから化学的に誘導される。したがって、広く入手可能な材料に安価に得られる。例えば、Biopolymer Engineering,Inc.(St.Paul,MN);Biopolymer Technologies,Inc.(Westborough,MA);CarboMer,Inc.(Westborough,MA)から商品として市販されている。
【0006】
キトサンは、金属イオンがキトサンとの錯体を形成するように金属塩溶液で処理することができる。キトサンおよびキトサン金属化合物は、殺菌剤および殺真菌剤としての抗菌活性を提供することが知られている(例えば、T.L.Vigo,“Antimicrobial Polymers and Fibers:Retrospective and Prospective,”in Bioactive Fibers and Polymers,J.V.Edwards and T.L.Vigo,eds.,ACS Symposium Series 792,pp.175−200,American Chemical Society,2001参照)。キトサンは、抗ウイルス活性も付与することが知られているが、そのメカニズムはまだよく分かっていない(例えば、Chirkov,S.N.,Applied Biochemistry and Microbiology(Translation of Prikladnaya Biokhimiya i Mikrobiologiya)(2002),38(1),1−8)。さらに、キトサンは、防臭特性を付与することが知られている:例えば、国際公開第99/061079号パンフレット参照。
【0007】
米国特許第4,326,532号明細書に、3つの方法:表面上での(1)酸素Rfプラズマ放電;(2)クロム酸酸化;または(3)酸のRfプラズマ重合によって、キトサンと結合させるためのポリマー表面の製造が開示されているが、それに例示されている方法は(1)および(3)だけである。しかしながら、この特許において、キトサン被覆ポリエチレン物品が対照としてのみ製造されている。発明者により共同執筆された論文(L.K.Lambrecht et al.,Trans.Am.Soc.Artif.Intern.Organs,Vol.XXVII,380−385,1981)では、キトサン−ヘパリン被覆ポリエチレン上での一時的な血栓付着に関して、ポリエチレン管材料は、クロム酸溶液にさらすことによってキトサンコーティングに対して下塗りされる。これらの参考文献のどちらにおいても、キトサン/ポリエチレン物品は、単に実験的な対照であり、それ自体が有用な物品として考察されているわけではない。
【0008】
米国特許第5,618,622には、キトサンなどの逆の電荷の高分子電解質で被覆された、その表面上にカチオンまたはアニオン官能基を有する炭化水素ポリマー繊維を含む、表面修飾繊維性濾過媒体が開示されている。抗菌特性については述べられていない。
【0009】
米国特許第6,197,322号明細書には、例えばおむつの臭いを低減し、皮膚の健康を促進するために、キトサンで処理されたポリプロピレン不織布が開示されている。キトサンは、簡単な浸し塗りによって塗布される。キトサンは、耐久性を向上させるために架橋される。Y.Shin,D.I.Yoo,およびK.Min(Journal of Applied Polymer Science,Vo.74,2911−2916,1999;Asian Textile Journal,February 2000,43−45)は、水可溶性キトサンオリゴマーを抗菌性仕上げ剤としてポリプロピレン不織布に適用している。キトサンオリゴマー(重量平均分子量1814)の水溶液は、パディングによって塗布される。
【0010】
同時係属中の米国特許出願第2003/0091612号明細書において、ポリオレフィン物品は、クロム酸と硫酸の水性混合物で処理され、脱イオン水で洗浄され、濃硝酸に浸漬され、キトサンで処理する前に再び脱イオン水で洗浄されている。有効な抗菌性の物品がこの方法によって製造されるが、より簡単な、より経済的な方法が望まれる。特に大規模な用途では、クロム酸および硫酸などの強い酸化剤よりも環境に優しい物質を使用することも望まれる。
【0011】
米国特許第5,932,495号明細書には、キトサン、アルジネート、または合成ポリマーの悪臭吸収特性を高めるために、トリグリセリドおよび/またはポリグリコシドを含有する基材が開示されている。
【0012】
抗菌性であり、かつ臭気の発生を抑制する物品を製造するために、ポリマー表面にキトサンを塗布する有効な、効率的な、環境に優しい方法が依然として必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
ポリマー材料を含む物品に抗菌性および/または臭気抑制性を付与する方法、ならびにそれから製造される抗菌性および/または臭気抑制物品が本明細書に開示される。
【0014】
記載の方法は:
a)グラフトモノマーを架橋剤と混合して、ブレンドを生成する段階;
b)真空下で高温蒸発器中にブレンドを供給する段階;
c)ノズルを通してブレンドをフラッシュ蒸発させる段階;
d)ポリマー材料上にブレンドを再び凝縮させる段階;
e)再び凝縮されたブレンドを紫外線または電子ビーム放射線に暴露し、それによって再び凝縮されたブレンドおよびポリマー材料を反応させて、架橋グラフトコポリマーを形成する段階;
f)キトサン、キトサン塩、キトサン金属錯体、およびキトサン誘導体からなる群から選択されるキトサン剤を含有する溶液と、架橋グラフトコポリマーを接触させる段階;
g)金属塩を含有する溶液と、架橋グラフトコポリマーを接触させる任意の段階;
h)架橋グラフトコポリマーを乾燥させる段階;
を含み、接触させた架橋グラフトコポリマーは、抗菌性および臭気抑制性である。
【0015】
量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、いずれかの範囲に、好ましい範囲として、または好ましい上限値および好ましい下限値のリストとして示されている場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、上限範囲または上限の好ましい値および下限範囲または下限の好ましい値のいずれかの対から形成されるすべての範囲を具体的に開示するものとして理解されたい。数値の範囲が本明細書に記載されている場合、別段の指定がない限り、その範囲は、その終点および範囲内のすべての整数および分数を包含することが意図される。本発明の範囲は、範囲を定義する場合に記載される特定の値に限定することを意図するものではない。
【0016】
この開示内容のコンテクストにおいて、多くの用語が用いられている。本明細書で使用される、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートとメタクリレートの両方を示す。
【0017】
本明細書で使用される、「アミノ反応性官能基」という用語は、NH2基との化学反応を容易に受ける化学官能基を意味する。例としては、金属イオン、無水物、カルボン酸、イソシアネート、エポキシド、酸塩化物、およびエノンなどの正に荷電した化学種が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される、「ポリオレフィン」という用語は、オレフィンホモポリマーを意味し、かつ少なくとも1種類のオレフィンと、他のオレフィンである、または他のオレフィンではない少なくとも1種類の他のコモノマーとのコポリマーを意味する。
【0019】
本明細書で使用される、「ポリマー材料」という用語は、その表面が少なくとも1種類のポリマーを含む材料を意味する。
【0020】
本明細書で使用される、「グラフト化」という用語は、化学結合によってポリマー基材に結合される化学種を意味する。化学結合としては、限定されないが、イオン結合および共有結合が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される、「グラフトコポリマー」という用語は、主要な鎖(main chain)または「主鎖(backbone)」に連結する1つ以上の側鎖を有するコポリマーを意味する。グラフトコポリマーにおいて、側鎖の目立つ特徴は、構造的なものであり、つまり側鎖は、主鎖の単位を提供するモノマーと異なるモノマーの少なくとも1種類の化学種から誘導される単位を含む。Aが主鎖モノマー、Xがグラフト部位、Bが側鎖モノマーである例は:
【0022】
【化1】

である。
【0023】
本明細書で使用される、「架橋」という用語は、隣接するポリマー鎖が、共有結合によって様々な位置で結合しているポリマーを意味する。
【0024】
本明細書で使用される、「架橋グラフトコポリマー」という用語は、隣接側鎖の対が架橋しているグラフトコポリマーを意味する。B−−−−B結合が架橋である例は:
【0025】
【化2】

である。
【0026】
本明細書で使用される、「不織布」という用語は、摩擦および/または粘着および/または接着によって結合された、方向的にまたはランダムに延伸された繊維の加工シート、ウェブまたはバットを意味する。この用語は、さらに針で縫われようと、そうでなかろうと、織られた、編まれた、タフトされた、ステッチボンドされた組み込み結合ヤーンまたはフィラメント、または湿式粉砕によってフェルト化された、紙および製品を除外する。
【0027】
本明細書で使用される、「抗菌性」という用語は、当技術分野で一般に知られている、殺菌性、殺真菌性、および抗ウイルス性を意味する。「微生物の成長が低減される」、「細菌成長の低減」、「微生物の成長を低減するのに十分な」とは、以下に記述されており、抗菌性の機能を測定するのに通常使用されるShake Flask試験によって測定された、24時間後の99.9%の細菌殺菌が満たされていることを意味し、それは細菌成長の3−log減少の最低必要条件を意味する。
【0028】
本明細書で使用される、「キトサン剤」という用語は、キトサン、キトサン塩、キトサン金属錯体、およびキトサン誘導体を含む、キトサンをベースとするすべての部分を意味する。
【0029】
本明細書で使用される、「臭気抑制(性)」または「臭気発生を抑制」または「臭気の発生を抑制する」という表現は、知覚される臭気の強さの低減、および/また知覚される臭気の心地よさの向上を意味する。臭気を測定する標準法は、臭いの根源がパネル調査員によって知覚されることを意味する、嗅覚法である。
【0030】
数値の範囲が本明細書に記載されている場合、別段の指定がない限り、その範囲は、その終点および範囲内のすべての整数および分数を包含することが意図される。本発明の範囲は、範囲を定義する場合に記載される特定の値に限定することを意図するものではない。
【0031】
抗菌性であり、かつ/または臭気の発生を抑制する物品、およびこれらを提供する方法が本明細書に記述されている。
【0032】
本明細書に記載の方法は、その表面が、天然および合成ポリマー両方の多種多様なポリマーのいずれかを含む物品に適用することができる。適切な天然ポリマーの例としては、綿、木材、亜麻、セラック、絹、羊毛、天然ゴム、革、およびそれらの混合物が挙げられる。適切な合成ポリマーの例としては、限定されないが、ホモポリマー、ポリエステルの混合物、ブレンド、およびコポリマー、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン、フッ素含有ポリマー、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、ポリカーボネート、セルロース−ベースポリマー(例えば、セルロース、レーヨン、酢酸セルロース)、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン、ブチルゴム、ポリクロロプレン、およびポリオレフィンが挙げられる。
【0033】
天然ポリマーおよび合成ポリマーのブレンドも企図される。例えば、木材パルプ(WP)/ポリエチレンテレフタレート(「PET」)ブレンドは、WP1〜100%、PET100〜1%を含有する。一般的なWP/PETブレンドとしては、例えば、55%マツWP/45%PET(2オンス/ヤード2[68g/m2])、55%ヒマラヤスギWP/45%PET(1.5オンス/ヤード2[51g/m2])、70%レーヨン/30%PETインティメイト(intimate)繊維ブレンド(8メッシュパターン,2.2オンス/ヤード2[75g/m2])、50%リオセル/50%PETインティメイト繊維ブレンド(1.8オンス/ヤード2[61g/m2])、または55%ヒマラヤスギWP/45%PET(2オンス/ヤード2[68g/m2])が挙げられる。
【0034】
記載の方法で使用される適切なポリマーの例としては、ポリプロピレン、例えば、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、メタロセン触媒ポリプロピレン;ポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高性能ポリエチレン(HPPE);エチレンとプロピレンのコポリマー;エチレンまたはプロピレンと、プロピレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸および一酸化炭素から選択される少なくとも1種類のモノマーとから誘導されるコポリマー;エチレンのコポリマー、またはプロピレンのコポリマー、またはエチレンのコポリマー、および他のオレフィンのコポリマーなどのジオレフィンとオレフィンとのコポリマー:少なくとも6個の炭素原子の直鎖状脂肪族非共役ジエン(1、4−ヘキサジエンなど)および共役または非共役である他のジエン、例えばノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン等が挙げられる。他の適切な主鎖ポリマーは、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,Delaware)から市販されているTefzel(登録商標)ETFEフルオロポリマー樹脂などの、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマーである。
【0035】
記載の方法において適しているポリマーの他の種類としては、オレフィンとアクリル酸および/またはメタクリル酸とのコポリマーが挙げられる。エチレンが特に有用である。市販の材料の一例は、E.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,Delaware)から市販されているNucrel(登録商標)エチレン酸コポリマー樹脂である。
【0036】
記載の方法でグラフト化した後にブレンドが、キトサン剤のアミノ基が基材の表面と反応して、微生物の成長を低減するのに十分な表面濃度のキトサンを有する安定なコーティングを形成するという必要条件を満たす限り、オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含むポリマーブレンドを使用することができる。
【0037】
本明細書に記載の方法で使用するのに適しているグラフトモノマーとしては、アミン反応性官能基を含有する熱安定性不飽和モノマーが挙げられる。本明細書に記載の方法において使用するのに適しているかかるグラフトモノマーの例としては、限定されないが、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、β−カルボキシエチルメタクリレート、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−無水物、ナディック酸無水物(3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物)が挙げられる。イタコン酸およびイタコン酸無水物が特に好ましいグラフトモノマーである。
【0038】
これらの方法において、架橋剤がグラフトモノマーと共に使用される。適切な架橋剤は、グラフトモノマーと反応し、架橋することができる多官能性化学化合物であり、当業者によって容易に決定される。例えば、トリアクリレート化合物が、イタコン酸に適している架橋剤である。
【0039】
本明細書に記載の物品は、その上にグラフト化されたキトサンを有する。キトサンは、ポリ−[1−4]−β−D−グルコサミンに対して一般に使用されている名称である。キトサンは、真菌類の細胞壁、昆虫、特に甲殻類の外殻に由来する、ポリ−[1−4]−β−N−アセチル−D−グルコサミンであるキチンから化学的に誘導される。本明細書に記載の物品に特に有用なキトサンは、85%を超えるN−脱アセチル化度、分子量範囲約60,000〜200,000、低い重金属含有量(20ppm未満)を有する。キトサンの一般的な粒径は、60〜100メッシュである。
【0040】
本明細書に記載の方法によって製造される物品は、物品が一般に使用される場合に微生物の成長が低減されることから、抗菌性および臭気発生抑制機能を示す。これは、以下に記述され、かつ抗菌性の機能を測定するのに通常使用されるShake Flask試験によって測定された、24時間後の細菌殺菌99.9%が満たされていることを意味し、それは微生物成長における3−log減少の最低必要条件を表す。
【0041】
本明細書に記載の方法の任意の第1段階として、物品が含む特定のポリマーに対して、当技術分野で一般に公知の技術または清浄剤を使用して、ポリマー物品の外部表面を浄化する。例えば、ポリマー材料を含む物品の表面は、C1〜C6アルコール、ジアルキルホルムアミドおよびアセトアミドで、または可塑剤を抽出することができる他の極性溶媒で浄化することができる。次いで、必要であれば、浄化された物品の表面を当技術分野で一般に公知の方法によって、例えば真空乾燥、大気乾燥、オーブン乾燥、および強制空気乾燥によって乾燥させる。本明細書に記載の方法で使用するのに特に適している浄化方法は、プラズマ処理である。
【0042】
任意の表面浄化段階に続いて、Yialzis and Mikhael of Sigma Technologies International Inc.,Tucson,Arizona(Yializis,A.& Mikhael,M.G.,Vacuum surface functionalization of paper and woven or nonwoven materials.46th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters(2003),pp.553−558;および米国特許第6,270,841号明細書、米国特許第6,447,553号明細書、および米国特許第6,468,595号明細書参照)の方法に従って、真空表面官能化によって、物品の表面にアミノ反応性官能基を生成する。本明細書における方法に適用されるこの方法において、グラフトモノマーを架橋剤と混合して、ブレンドが生成される。このブレンドを真空下で高温蒸発器中に供給し;ノズルを通してブレンドをフラッシュ蒸発させ;その表面が前述のポリマーのうちの少なくとも1種類を含有する、物品のポリマー表面上にブレンドを再び凝縮させ;紫外線または電子ビーム放射線に暴露する。紫外線または電子ビーム放射線は、グラフトモノマー、架橋剤、およびポリマー表面の間の種々の重合、グラフト化、および架橋反応を開始し、物品の表面に架橋グラフトコポリマーを形成する。一般に、ポリマー材料の表面は、グラフトモノマー/架橋剤ブレンドをその上に凝縮する前に、プラズマ処理によって浄化される。蒸発器の温度範囲は、約70〜350℃である。適切な真空は、約10-1〜10-7トルの範囲である。ブレンドがその上で凝縮されるポリマー材料の温度は、約−20〜約+30℃の範囲である。
【0043】
次いで、この物品をキトサンで処理する。この処理は、キトサン剤を含有する溶液で物品を浸漬または湿潤することを含む。キトサン剤としては、キトサン、キトサン塩、キトサン−金属錯体、およびキトサン誘導体を含む、キトサンをベースとするすべての部分が挙げられる。
【0044】
キトサン剤を含有する溶液は水溶液であることができる。しかしながら、キトサンは単独で水に可溶性ではないため、キトサンは、溶液中で可溶化される。溶解性は、モノ、ジおよびポリカルボン酸からなる群から選択される水可溶性有機酸の希釈溶液にキトサンを添加することによって得られる。これによって、キトサンが酸と反応し、本明細書で「キトサン塩」と呼ばれる水可溶性塩が形成する。「キトサン−金属錯体」は、金属塩溶液でキトサン溶液を処理することによって形成される。代替方法としては、キトサン塩の代わりに、水可溶性であるN−およびO−カルボキシアルキルキトサンなどの「キトサン誘導体」を直接、水中で使用することができる。塩化リチウム、またはN−メチル−モルホリン−N−オキシドの存在下でジメチルアセトアミドなどの特殊な溶媒にキトサンを溶解することもできる。かかる可溶化キトサン溶液は、キトサン塩またはキトサン誘導体を含有する水溶液の代わりに、記載の方法において使用することができる。
【0045】
一般に、キトサン剤を含有する溶液は、酢酸水溶液であり、好ましくは約0.5%〜約5%酢酸水溶液である。キトサン0.1%〜3%、酢酸0.5%〜1.0%を含有する水溶液が特に有用である。キトサン2%および酢酸水溶液1.5%を含有する水溶液が同様に有用である。キトサン2%、酢酸0.75%を含有する水溶液がさらに有用である。処理の時間は一般に、30秒〜30分間である。処理の温度は重要ではなく、一般には、室温〜90℃の範囲である。
【0046】
キトサンで処理した後、物品を好ましくは脱イオン水で洗浄する。次いで物品を任意に、当技術分野で公知の技術によって乾燥させる。これらの技術としては、大気乾燥、オーブン乾燥、および強制空気乾燥が挙げられる。空気の代わりに、窒素などの不活性雰囲気が提供される。同時係属中の米国特許出願公開第2003/0017194号明細書に記載のように、バッチ方法または連続方法において、物品をキトサンでグラフト化する。
【0047】
記載の方法によって製造された物品は、抗菌特性を示し、臭気発生を抑制することも期待される。ポリマー材料のキトサンでの処理は、1つの機能のみ測定されたとしても、抗菌性機能および臭気抑制機能の両方が得られることが期待される。これは、臭気抑制機能が、臭気発生を活性化する微生物の成長を低減するキトサンの能力に依存すると考えられるからである。したがって、キトサンの抗菌性機能は、臭気発生の抑制に必然的に関係すると考えられる。このことは、別々に測定することができる機能であるが、臭気の抑制は、必然的に非依存的な、異なるキトサンの機能からもたらされるものではないことを示唆している。
【0048】
この抗菌特性は、金属塩での任意の処理によって高められる。本明細書に記載の方法において有用な金属塩としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸銅、硝酸銀、または他の水可溶性亜鉛、銅、および銀塩、またはこれらの混合物が挙げられる。金属塩は一般に、水中の金属塩の希釈(0.1%〜5%)溶液で物品を浸し塗り、吹付け、パディングすることによって塗布される。代替方法としては、キトサン−金属塩を予め形成し、生成物を単離し、酢酸水溶液などの希酸に生成物を再び溶解することによって、金属塩を使用することができる。向上の程度は、使用する特定の金属塩、その濃度、曝露の時間および温度、特定のキトサン処理、つまり、キトサン剤の種類、その濃度、曝露温度および時間に応じて異なる。
【0049】
本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与される物品は、フィルム、膜、ラミネート、メリヤス生地、織布、不織布、繊維、フィラメント、ヤーン、ペレット、コーティング、または発泡体の形をとる、またはそれらを含む。不織布材料の2つの例は、どちらもE.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,Delaware)から市販されている、DuPont(商標)Tyvek(登録商標)スパンボンドオレフィン、およびスパンレースDuPont(商標)Sontara(登録商標)Technologies fabricsである。これらの物品は、限定されないが、射出成形、押出し成形、吹込み成形、熱成形、溶液流延、フィルムインフレーション、編成、製織、または紡糸の方法などの当技術分野で公知の手段によって製造される。
【0050】
これらの物品は、多くの物品が微生物成長の低減および/または臭気発生の抑制から恩恵を受け、かつ多種多様なポリマーが本明細書に記載の物品に含まれることから、多くの用途を提供する。微生物成長を低減し、かつ/または臭気発生を抑制することが望まれる物品の例を以下に示す。微生物の成長は、物品内または物品上で低減される。さらに、これらの物品が使用される最終用途の例を以下に列挙する。
【0051】
本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性にされる物品としては、食品用包装、パーソナルケア(健康および衛生)製品、および化粧品が挙げられる。「包装」とは、包装全体または包装の成分のいずれかを意味する。包装成分の例としては、限定されないが、包装用フィルム、ライナー、吸収パッド包装、収縮バッグ、収縮包装、トレイ、トレイ/容器組立品、覆い、接着剤、蓋、およびアプリケーターが挙げられる。かかる吸収パッド、収縮バッグ、収縮包装、およびトレイが、肉、家禽、および魚介類を包装するのに特に有用であり、包装内の不快な臭いの発生および濃縮を防ぐ。
【0052】
包装は、缶、箱、瓶、広口瓶、バッグ、化粧品包装、または閉端チューブなどの特定の用途に適している形をとることができる。包装は、押出し成形、同時押出し成形、熱成形、射出成形、貼合せ法、吹込み成形などの当技術分野で公知の手段によって作製することができる。
【0053】
包装の例としては、限定されないが、瓶、液体のアプリケーターとして使用される瓶の先端部、処方および非処方カプセル剤および丸剤を収容する瓶の蓋;液体、クリーム剤、ローション、粉末、シャンプー、コンディショナー、丸剤、制汗剤に使用される容器;眼、耳、鼻、喉、膣、尿路、直腸、皮膚、および髪と、またはその内部と直接接触するために適合された容器;唇用製品の包装;容器の蓋が挙げられる。
【0054】
アプリケーターの例としては、口紅、リップクリーム、およびグロス;マスカラ、アイライナー、シャドウなどの目元の化粧品、ダスティングパウダー、バスパウダー、ほお紅、ファンデーションおよびクリーム用の包装およびアプリケーター;ポンプディスペンサーおよびその部材が挙げられる。これらのアプリケーターは、体の様々な表面表に物質を付けるために使用され、細菌成長の低減は、かかる用途において有益である。
【0055】
他の包装成分としては、飲料瓶のボトルネック、交換可能な蓋、および分配システム;食品および飲料送達システム;哺乳瓶の乳首および蓋;おしゃぶりが挙げられる。液体、溶液または懸濁液がディスペンスされる場合、個々の液滴をピペッティングする、または液滴の噴流または塊を吹付ける、圧力をかけて液体をディスペンスする、エマルジョンを広げるため等の包装が作製される。さらに、薬剤および生理学的作用を有する他の物質をディスペンスするための吸入器として認識される包装が企図される。
【0056】
包装の他に、抗菌性および/または臭気抑制物品が有用である、最終用途、特に消費者志向の用途としては、食品取り扱いおよび食品加工装置用のコーティングが挙げられる。かかる装置としては、一時的または永久的な食品製造面;ベルトコンベアアセンブリおよびその部材;混合、摩砕、粉砕、圧延、ペレット化、および押出し成形用の装置、およびその部材;熱交換器およびその部材;排水管およびその部材;限定されないが、バケツ、タンク、パイプ、および管材料などの水を運搬する器具;食品を切る、スライスするための機械およびその部材が挙げられる。本明細書に記載の方法に従って、ポリマーのフィルムを処理し、次いで装置表面にヒートシールすることができる。装置の部材は、限定されないが、食品加工に使用される押出機などの一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機における要素である混合および/または運搬するためのスクリューであることができる。
【0057】
本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与される物品は、限定されないが、スポーツウェア、アクティブウェア、水着、肌着、靴下類(ソックス、ストッキング、パンティストッキング、レッグウォーマー、およびタイツ)、子供用衣服、医療用衣料品(診察着、マスク、手袋、スリッパ、短い長靴、またはかぶり物)、運動ユニフォームおよび防具(保護スポーツパッド、スキンガード、および熱および水分の移動を調節する下着)および衣料品のかかる品物のインサート物およびライナー(例えば、シューズ、ブーツ、またはスリッパの織布または不織布ライナーまたはインサート物、またはスラックスのライナー、または衣服の脇の下のシールド)などの衣料品において、または衣料品の品物として使用される。かかる衣服、インサート物、およびライナーは、臭気発生の抑制から特に恩恵を受ける。
【0058】
本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与される物品は、医療用材料、デバイス、またはインプラント、例えば包帯、接着剤、ガーゼ片、ガーゼパッド、ギブスの部材、医療用または手術用ドレープ、シリンジホルダー、カテーテル、縫合糸、IV管材料、IVバッグ、ステント、ガイドワイヤー、プロテーゼ、整形外科用留め針、歯科材料、ペースメーカー、人工弁、人工心臓、膝および腰部関節インプラント、骨セメント、代用血管、導尿カテーテル小孔、整形外科固定具、ペースメーカーリード、除細動器リード、外耳道シャント、美容外科インプラント、ENT(耳、鼻、喉)インプラント、ステープル、植込み型ポンプ、ヘルニアパッチ、プレート、ねじ、血液バッグ、外部血液ポンプ、液体投与システム、人工心肺、透析装置、人工皮膚、心室補助装置、補聴器、および歯科インプラントにおいて、またはそれらとして使用することもできる。
【0059】
個人衛生分野において、本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与される物品としては、尿失禁パッドおよび衣料品、おむつ、用便練習用パンツ、おむつ用バケツ、パンティーライナー、生理用ナプキン、タンポン、およびタンポンアプリケーターなどの個人衛生物品が挙げられる。かかる物品は、本明細書に記載の方法によって提供される臭気発生の抑制から特に恩恵を受ける。
【0060】
本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与される物品としては、抗菌性ワイプ(wipe)、赤ちゃん用ウェットティッシュ、パーソナルクレンジングワイプ、コスメティックワイプ、おむつ、薬入りワイプまたはパッド(例えば、ざ瘡を治療するための抗生物質、薬剤、痔を治療するための薬剤、かゆみ止め、抗炎症薬、または防腐剤を含有する、薬入りワイプまたはパッド)などの健康管理材料も挙げられる。
【0061】
他のかかる物品としては、哺乳瓶の乳首、おしゃぶり、歯科矯正装置およびそれに付属する付属品、義歯材料、カップ、グラス、歯ブラシ、または乳歯発生用の玩具など、口腔接触が意図される用品も挙げられる。さらに、ベビーブック、プラスチック製はさみ、玩具、クリーニングワイプの容器などの子供用品もまた企図される。
【0062】
本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与される家庭用物品としては、電話機および携帯電話機、繊維充填材、寝具(例えば、マットレス、マットレスカバー、ベッドカバー.毛布、ベッドシーツ、枕、および枕カバー)、窓周り用品、カーペット、フローリング部材、マットおよびラグ裏材などのフォームパッド、室内装飾用品の部材(フォームパッドを含む)、不織布の乾燥機用シート、柔軟剤含有シート、自動車用ワイプ、家庭用クリーニングワイプ、カウンターワイプ、シャワーカーテン、シャワーカーテンのライナー、タオル、洗面タオル、ぞうきん、モップ、テーブルクロス、冷蔵庫の部材、冷蔵庫表面、壁、およびカウンター表面が挙げられる。冷蔵庫内部、および湿った状態で使用される、または浴室などの湿気の多い環境で使用される物品(カウンターワイプ、シャワーカーテン、シャワーカーテンライナー、タオル、洗面用タオル、およびモップ)は特に、本発明によって提供される臭気発生の抑制から恩恵を受ける。
【0063】
本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与される物品としては、この機能によって、選択的分離膜、例えば限外濾過膜および精密濾過膜の表面でのバイオフィルムの成長を低減または予防することができる、空気および水のフィルターも挙げられる。
【0064】
パイプおよびタンクなどの液体輸送および/または保管に使用される装置もまた、抗菌性、および/または臭気抑制ポリマー材料から恩恵を受ける。本明細書に記載の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性が付与されたポリマーのフィルムをパイプもしくはタンクの適切な表面にヒートシールするか、または貼り付けて、防汚性表面を形成することができる。
【0065】
上記の物品およびその部材は、物品を製造する前、間、または後の適切な時点で上述の方法によって抗菌性および/または臭気抑制性にすることができる。例えば、抗菌性シャワーカーテンの製造では、本明細書に記載の方法に従ってポリマー材料を処理し、続いて、処理した材料からシャワーカーテンを製造する。代替方法としては、シャワーカーテンを製造した後に、キトサン処理を行うことができる。ポリマー材料の抗菌/臭気抑制特性は、その最終形態で物品を製造する方法によって著しく影響を受けないと考えられる。
【実施例】
【0066】
本発明は、以下の実施例でさらに定義され、実施例におけるすべての部およびパーセンテージは重量により、度(degree)は摂氏である。本発明の特定の実施形態を示すが、これらの実施例は単なる実例として示されていることを理解されたい。上記の記述およびこれらの実施形態から、当業者は、本発明の本質的な特徴を把握することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、種々の用途および条件に本発明を適合させるために、変更および修正を加えることができる。
【0067】
材料
実施例で使用されるキトサンは、登録商標ChitoClear(登録商標)でPrimex Corporation(Siglufjordur,Iceland)から市販されている。キトサンは、購入した状態のままで使用した。それは、エビの外殻に由来し、85%を超えるN−脱アセチル化度、分子量範囲約60,000〜200,000ダルトン、低い重金属量(20ppm未満)を有した。キトサンの一般的な粒径は60〜100メッシュであった。
【0068】
イタコン酸およびイタコン酸無水物は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)から入手した。
【0069】
Tetratex(登録商標)1303 Expanded PTFE膜,細孔等級0.45ミクロン,厚さ3.5ミル(89ミクロン)をDonaldson Membranes Group,Donaldson Company,Inc.(Minneapolis,Minnesota)から入手した。
【0070】
DuPont(商標)Tyvek(登録商標)ブランドのスパンボンドオレフィンシートをE.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,Delaware)から入手した。
【0071】
ポリプロピレンフィルムおよびMylar(登録商標)PETフィルムをDuPontTeijin Films(商標),Hopewell,Virginiaから入手した。
【0072】
PET面およびWP面を有する、木材パルプ(WP)/PET不織布(55%マツWP/45%PET,2オンス/ヤード2[68g/m2])をE.I.du Pont de Nemours & Co.,Inc.(Wilmington,Delaware)から入手した。
【0073】
ナイロン6,6布をBeacon Fabric & Notions,Lakeland,Floridaから入手した。
【0074】
表面処理方法
基材シートを以下の手順を用いて処理した:
前処理:プラズマ、酸素/アルゴン混合物,2KW
コーティング:イタコン酸/架橋性トリアクリレートでの外面のコーティング
供給速度:10g/分
硬化:電子ビーム,9KV,100mA
【0075】
コーティングしていない基材シートを真空チャンバ(300fpm)内の冷却回転ドラムに取り付けた。蒸発器およびノズルを加熱しながら、チャンバを10-4トルに下げた。ドラムを約−18℃に維持し、モノマーノズルおよび電子銃の前で回転させた。操作条件(蒸発器温度600°F(316℃),ノズル温度500°F(260℃),真空2×10-4トル)に達した後、プラズマ処理器(表面浄化のため)および電子銃(電子ビーム源)の電源を入れ、モノマーブレンドを注入した。作業の最後に、すべての電源を切り、チャンバを排気し、開いた。ダウンサイクル全体(装入、取り出し、ポンプダウンおよび加熱)で10〜15分であった。
【0076】
基材をキトサンで処理する場合、次いで、上述のイタコン酸が付着された基材を、脱イオン水のトレイおよび0.5%酢酸水溶液中の1%キトサン溶液を含有する2つのトレイに通した。各トレイにおける処理基材の滞留時間は約30秒であった。次いで、約110℃に維持された熱風式オーブンで基材を乾燥させた。乾燥プロセスを2回繰り返し、確実に完全に乾燥させた。
【0077】
抗菌性試験法
以下の手順を用いて、Shake Flask Test for Antimicrobial Testing of Materialsによって抗菌性について、処理した物品を試験した:
1.滅菌フラスコにおいてトリプチケースソイブロス(TSB)15〜25mL中の細菌または酵母寒天平板培養液からの単一の、単離されたコロニーを接種する。振盪しながら、または振盪せず、25〜37℃(特定の微生物に最適な成長温度を使用)で16〜24時間インキュベートする(特定の菌株の適切な通気を選択する)。糸状菌については、寒天平板上に胞子形成培養液を調製する。
2.pH6.0〜7.0の滅菌リン酸緩衝液(以下参照)中に細菌または酵母の一晩培養液を希釈し、約105コロニー形成単位/ml(cfu/mL)を得る。必要なリン酸緩衝液の総体積は、50mL×試験フラスコの数(対照を含む)である。糸状菌については、105芽胞/mLにて胞子懸濁液を調製する。胞子懸濁液は、滅菌生理食塩水または酸緩衝液で浸しておいた寒天平板培養液からの芽胞を穏やかに再懸濁することによって調製する。初期の接種材料の数を得るために、トリプチケースソイ寒天(TSA)平板上に、10-4および10-3の最終希釈溶液(酸緩衝液に溶解して調製)を2つ組でプレーティングする。25〜37℃でプレートを一晩インキュベートする。
3.試験すべき材料0.5gを含有する滅菌試験フラスコそれぞれに、接種されたリン酸緩衝液50mLを移す。試験材料を含有しない、接種されたリン酸緩衝液および未接種のリン酸緩衝液の対照フラスコも調製する。
4.wrist−action振盪機上にすべてのフラスコを置き、室温で激しく振盪しながらインキュベートする。一定間隔をあけて、すべてのフラスコから試料を採取し、TSA平板上に適切な希釈溶液をプレーティングする。25〜37℃で16〜48時間インキュベートし、コロニーを計数する。
5.コロニー形成単位数/mL(cfu/mL)としてコロニー数を報告する。
6.Δt値を以下のように計算する:Δt=C−B(式中、Δtは、一定時間tに対する活量定数であり、Cは、インキュベーションからX時間後の未処理対照材料のフラスコにおける平均log10の微生物密度であり、Bは、インキュベーションからX時間後の処理材料のフラスコにおける平均log10の微生物密度である)。Δtは一般に、4、6、または24時間の時点で計算され、ΔtXと表される。
【0078】
ストックリン酸緩衝液:
リン酸二水素カリウム:22.4g
二塩基性リン酸カリウム:56.0g
脱イオン水:体積を1000mLに上げる
【0079】
NaOHまたはHClでリン酸緩衝液のpHをpH6.0〜7.0に調整し、濾過し、滅菌し、使用するまで4℃で保管する。作業リン酸緩衝液は、滅菌脱イオン水800mLでストックリン酸緩衝液1mLを希釈することによって調製される。
【0080】
実施例1
イタコン酸グラフト化、キトサン処理されたDuPont(商標)Tyvek(登録商標)ブランドスパンボンドオレフィンの製造
Tyvek(登録商標)ブランドスパンボンドオレフィンシートに、上述のようにイタコン酸を付着させた。処理材料の試料を取って置いた。その残りを上述のようにキトサン溶液で処理した。次いで、キトサン処理および対照スパンボンドオレフィンシートをE.coli ATCC No.25922およびListeria monocytogenes Scott Aに対する抗菌活性についてアッセイした。結果を表1に示す。
【0081】
表 1.

【0082】
実施例2
イタコン酸グラフト化、キトサン処理された木材パルプ/ポリエステル不織布の製造
上述のように、木材パルプ(WP)/ポリエステル(PET)不織布(55%マツWP/45%PET,2オンス/ヤード2)シートにイタコン酸を付着させた。処理材料の試料を取って置いた。その残りを上述のようにキトサン溶液で処理した。次いで、キトサン処理および対照木材パルプ/ポリエステル不織布シートをE.coli ATCC No.25922およびListeria monocytogenes Scott Aに対する抗菌活性についてアッセイした。その結果を表2に示す。








【0083】
表 2.

【0084】
実施例3
イタコン酸グラフト化、キトサン処理されたポリプロピレンフィルムの製造
上述のように、ポリプロピレンフィルムにイタコン酸を付着させた。処理材料の試料を取って置いた。その残りを上述のようにキトサン溶液で処理した。次いで、キトサン処理および対照ポリプロピレンシートをE.coli ATCC No.25922およびListeria monocytogenes Scott Aに対する抗菌活性についてアッセイした。その結果を表3に示す。
【0085】
表 3.

【0086】
実施例4
イタコン酸無水物グラフト化、キトサン処理されたMylar(登録商標)ポリエステルフィルム
イタコン酸の代わりにイタコン酸無水物をグラフトモノマーとして使用したことを除いては、上述のようにMylar(登録商標)ポリエステル(PET)フィルムのシートを処理した。処理材料の試料を取って置いた。その残りを上述のようにキトサン溶液で処理した。次いで、キトサン処理および対照ポリエステルシートをE.coli ATCC No.25922およびListeria monocytogenes Scott Aに対する抗菌活性についてアッセイした。その結果を表4に示す。
【0087】
表 4.

【0088】
実施例5
イタコン酸無水物グラフト化、キトサン処理されたポリ(テトラフルオロエチレン)発泡フィルム[「ePTFE」]
イタコン酸の代わりにイタコン酸無水をグラフトモノマーとして使用して、Tetratex(登録商標)1303発泡PTFE膜のシートを実施例4に記載のように処理した。処理材料の試料を取って置いた。その残りを上述のようにキトサン溶液で処理した。次いで、キトサン処理および対照ePTFEシートをE.coli ATCC No.25922およびListeria monocytogenes Scott Aに対する抗菌活性についてアッセイした。その結果を表5に示す。
【0089】
表 5.

【0090】
実施例6
イタコン酸グラフト化、キトサン処理されたナイロンの製造
上述のように、ナイロン6,6布にイタコン酸を付着させた。処理材料の試料を取って置いた。その残りを上述のようにキトサン溶液で処理した。次いで、キトサン処理および対照ポリプロピレンシートをE.coli ATCC No.25922およびListeria monocytogenes Scott Aに対する抗菌活性についてアッセイした。その結果を表6に示す。
【0091】
表 6.

【0092】
実施例7
イタコン酸グラフト化、キトサン処理されたナイロンの防臭有効性
実施例1に記載のように、イタコン酸およびキトサンでナイロン6,6(Invista,Wichita,Kansasから商標Supplex(登録商標)およびTactel(登録商標)で市販されている)を処理する。以下に記述するように、Monell Chemical Senses Center(Philadelphia,Pennsylvania)にて、防臭有効性について試料を試験する。
【0093】
方法
被験者。ヒトの体と約14〜24時間接触する材料の布切れ(fabric swatch)の官能評価に参加する、性の異なる20名のボランティア(各性別につき10名)が募集される。洗濯された(無香料洗剤で)Tシャツ(以下参照)および履物にこれらの布切れを取り付ける。被験者は、年齢18〜60歳であり、健康状態良好であり(自己申告)、機能する嗅覚を持ち、ステロイド系避妊薬を使用していない非喫煙者である。
【0094】
さらに、臭気提供者として、12名の男性ボランティアを募集した。これらの個人は、対称に付けられた布切れ(キトサン処理試料および未処理対照試料)が縫い付けられたTシャツおよび履物を着用した。布切れをラベル標示し、処理条件に関して、実験チームをブラインド(blind)に保ち、布切れをTシャツの各腋部位、左および右腹部、および履物の中の足全体の下に縫い付けた。
【0095】
以下の選択基準を用いて、臭気提供者を募集した:
・男性のみ(月経周期にわたる女性の体臭の変化についてコントロールするのは非常に難しいため)
・年齢18〜60歳(60歳を超えると一般に体臭が変化する)
・自己申告により健康状態良好
・研究期間中、制汗剤、腋の下の脱臭剤、および個人的な香料を使用することなく、参加することをいとわない
以下の除外基準を臭気提供者の募集に用いた:
・インスリンを投与している糖尿病患者は、体臭が変化する可能性があるため除外される。
【0096】
以下の選択基準を用いて、知覚パネリストを募集した:
・男性および女性
・年齢18〜60歳(60歳を超えると一般に臭気知覚が下がる)
・両方の鼻孔で呼吸することができる
・臭いをかぐことができ、臭いに関係する障害の病歴がない
・試験日に個人的な香料の使用を差し控えることをいとわない
以下の除外基準を知覚パネリストの募集に用いた:
・試験時点での活発な風邪またはアレルギー
・試験日の個人的な香料の使用
・ステロイド系避妊薬を使用している女性
・無嗅覚または嗅覚減退
【0097】
手順−臭気提供者。IDコードが付けられた、洗濯されたTシャツおよび履物のフットパッドに布切れを縫い付けた。Tシャツおよび履物における各対称対の布切れのうちの1つを、キトサンで処理された布から作製した。もう一方は未処理であり、対照としての役割を果たした。布切れに、例えば、A1L/A2RまたはA2L/A1R(Aは、体の位置を示し、1と2は処理条件であり、LとRは、左/右の位置である)とコードを付けた。研究者は、データ分析が完了するまで処理条件について知らされていない。Tシャツは24時間着用され、履物(ソックスなしで)は12〜14時間着用された。早朝にTシャツおよび履物を受け取った後、提供者は、階段を5つ昇り降りして3回ジョギングすることによって、軽い運動を行った。これは、軽く汗をかかせるために行った。
【0098】
体臭を収集する前に、各提供者は、7日間の洗い流し段階(wash−out phase)を受け、その間、香料または腋の下の脱臭剤は付けず、シャワー/浴槽には無香料の石鹸およびシャンプーを使用した。臭いを収集する前日、および臭いの収集全体を通して、ボランティアは、例えばニンニクなどの特定の食品の摂取を制限するように指示された。
【0099】
臭気収集段階を完了したら、被験者は、Tシャツおよびフットパッドを脱ぎ、ラベル付きのプラスチック製ジップロックバッグにそれを入れ、Monell Centerに送付した。Monellに到着したら、使用するまでTシャツおよびフットパッドを約−80℃で保管した。
【0100】
最初に布切れを3つに切断し、男性3名からの布片を合わせることによって、刺激(stimulus)試料を作製した。処理布切れおよび対照布切れが適切に一致するように注意を払った:同じ個体3名からの処理布切れおよび対照布切れを合わせて、1つの「男性刺激物」を形成した;しかしながら、各試験セッションにおいて多くの「男性刺激物」がある。残りの試料は「ドナー(donor)」を形成した。したがって、各体部位に関して、抗菌剤で処理された4つの「男性刺激物」と4つの類似対照刺激物がある。したがって、各体部位に関して、知覚パネリストは8つの試料を評価した。
【0101】
知覚パネリスト。15〜25分間続く1つのセッションの間、知覚パネリストは、正式な実験で使用される手順で訓練を受けた。2通りの濃度、すなわち10%と0.1%(v/v)の標準臭気物質フェニルエチルアルコール(PEA)および酪酸(BA)について、ラベル等級尺度(labeled magnitude scale)上の評点(「LMS」、刺激の知覚強度を評価する精神物理学的方法[Green B.G.,Dalton,P.,Cowart,B.,Shaffer,G.,Rankin.K.,and Higgins.J. Evaluating the ‘Labeled Magnitude Scale’ for measuring sensations of taste and smell. Chemical Senses,1996,21,323−334])および臭いの快さ(odor pleasantness)の評点(23ポイントスケールで、−11=非常に不快、0=快くも、不快でもない、+11=非常に快い)を得た。さらに、この訓練セッションにおいて、被験者は、刺激の組(PEA対BAの可能性のあるすべての組)について優先選択(preference choice)し、0〜10のスケールで選好(preference)の強さを評点付けした。適切に応答させるために被験者を促すようにプログラムされたコンピューターですべてのデータ収集を行った。
【0102】
3つのセッションそれぞれにおいて、被験者は、腋の下の布切れ、腹部の布切れ、または履物の布切れを評価した。3つの刺激の種類の呈示は、被験者全体にわたって平衡させた。試験セッションは少なくとも1日あけた。
【0103】
1つのセッションにおいて、パネリストは最初に、二者択一のタスクにおいて、すなわち「刺激のある(stimulus)男性」4名からの同じ体部位からのキトサン処理された布切れに対して未処理布切れにおいて、二者択一選好を提供した。「刺激のある男性」の呈示は平衡させたが、合計44の二者択一選好に対して、各「刺激のある男性」の組が11回呈示されるように繰り返した。好みのそれぞれに対して、被験者は、0〜10のスケールで選好の強さの評価も提供した。10が非常に強い選好である。
【0104】
二者択一選好後、被験者に、それぞれの「刺激のある男性」の試料(8つの試料、「刺激のある男性」4名それぞれからのキトサン処理された布切れおよび対照布切れがある)および2つの対照試料が与えられ、その強度(LMSを使用して)および快さを評点付けし、16のリストからディスクリプターを選択するように頼んだ(表1参照)。
10個の試料それぞれを3回評価した。
【0105】
表 1.
評価する臭気に最も適しているものとして臭気パネリストが選んだ、
ディスクリプターのリスト

【0106】
結果
選択。グループ間の因子としてパネリストの性別、反復因子として臭気試料、共変量として年齢を用いた、反復測定共分散分析で選択データを最初に評価した。年齢も性別もその結果に著しく表れなかった。腋の下の試料、履物の試料および腹部の試料に関して、パネリストはより頻繁に、キトサン処理試料を選択した。
【0107】
どちらにしても有意な選好に関して、個々の選択を評価した。44の試行では、1つの試料の29回以上の選択が、有意な(p<0.05)個々の選好である。腋の下の試料、履物の試料および腹部の試料に関して、多くの被験者はキトサン処理試料を有意に選択し、対照を有意に選択したものはいなかった。
【0108】
選好を評価するもう1つの方法は、最初の試行で個人の選択を特定することである(これは、ヒトが急速に適応する臭いにとって重要となる)。臭いの元のそれぞれについての最初の試行において、被験者は、未処理の試料よりも頻繁にキトサン処理された腋の下の試料、履物の試料、および腹部の試料を選択した。
【0109】
選好の強さは実際の選好を裏付ける。被験者が、キトサンで処理された試料を有意に選択した、腋の下の試料、履物の試料、および腹部の試料の試験では、個人が未処理試料に対してキトサン処理試料を選択した場合、選好の強さにおいて反映される、選択の「信頼度」が有意に評価された。
【0110】
知覚強度。各試料の3つの強度評点を平均し、次いで、グループ間因子として性別、共変量として年齢、4名の「刺激のある男性」についての反復測定を用いた反復測定共分散分析で分析した。対照試料は、これらの分析に含まれなった。
【0111】
体からの試料についての平均強度評点の分散分析を、キトサン処理試料と未処理試料の両方のブランク試料で比較した。
【0112】
腋の下:直接的な比較において、キトサン処理試料は、未処理試料よりも著しく低い強度であると評点付けされた。
腹部:体のこの部位は、広範囲な悪臭を発生しないことから、キトサン処理試料と未処理試料との知覚強度の有意な差はなかった。
足:直接的な比較において、キトサン処理試料は、未処理試料よりも著しく低い強度であると評点付けされた。
【0113】
知覚される快さ(Perceived Pleasantness)。各試料の3つの快さの評点を平均し、次いで、グループ間因子として性別、共変量として年齢、4名の「刺激のある男性」についての反反復測定を用いた反復測定共分散分析で分析した。対照試料は、これらの分析に含まれなった。
【0114】
体からの試料についての平均快さ評点の分散分析を、キトサン処理試料および未処理試料のブランク試料と比較した。
【0115】
腋の下:直接的な比較において、未処理試料は、キトサン処理試料よりも著しく不快であると評点付けされた。
腹部:体のこの部位は、広範囲な悪臭を発生しないことから、キトサン処理試料と未処理試料との間で、評点付けされた快さに有意な差はなかった。
足:直接的な比較において、未処理試料は、キトサン処理試料よりも著しく不快であると評点付けされた。
【0116】
臭気の質。各刺激について、ディスクリプターを各被験者から収集し、示されるリスト(表1)から形容詞を選択するように求めた。各刺激を3回呈示した。体部位と接触したキトサン処理および未処理試料の両方に関して、それぞれ4つの試料がある。したがって、すべての被験者全体にわたって、3×4×20=240の形容詞の選択がある。非暴露試料もまた、被験者20名全体にわたって3回呈示し、その結果、60の形容詞の選択が得られた。呈示に関して、結果は、形容詞全体の%に変換された。
【0117】
腋の下:麝香、なし、汗臭いの形容詞が、約5%を超える試料に対して被験者によって選択された。汗臭いの形容詞が最も選択された;しかしながら、汗臭いの選択は、キトサン処理試料では減少した。なしの選択は、キトサン処理試料において増加した。
腹部:なし、香料、汗臭い、木、動物園、花および麝香の形容詞が、約5%を超える試料に対して被験者によって選択された。なしの選択は、キトサン処理試料および未処理試料に対して最も選択された。
足:チーズ、麝香、なし、腐ったミルク、汗臭い、木、およびかび臭いの形容詞が、約5%を超える試料に対して被験者によって選択された。汗臭いの形容詞が最も選択された;しかしながら、汗臭いの選択は、キトサン処理試料では減少した。なしの選択は、キトサン処理試料において増加した。
【0118】
上記で実証されているように、キトサン処理材料は、かなりの量の臭気を発生することが分かっている体の部位、すなわち、腋の下、足、および腹部に伴う悪臭を低減する。この結果から、体からの悪臭が存在する場合には、未処理材料よりもキトサンで処理された布切れが選好される。
【0119】
キトサンの正の効果は、二者択一の選好試験、知覚強度および快さの評価、および臭気の質の選択(形容詞)において示されている。腋の下、履物、腹部の試料については、被験者は、臭いが付けられた未処理の試料よりもキトサン処理試料を選択することが有意に多く、試料がキトサン処理されている場合には、強度が低く、および不快さが低いと評点付けした。要するに、キトサンは、ヒトの体から発生される悪臭を大幅に低減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)グラフトモノマーを架橋剤と混合して、ブレンドを生成する段階;
b)真空下で高温蒸発器中に前記ブレンドを供給する段階;
c)ノズルを通して前記ブレンドをフラッシュ蒸発させる段階;
d)ポリマー材料上に前記ブレンドを再び凝縮させる段階;
e)再び凝縮されたブレンドを紫外線または電子ビーム放射線に暴露し、それによって再び凝縮されたブレンドおよびポリマー材料を反応させて、架橋グラフトコポリマーを形成する段階;
f)キトサン、キトサン塩、キトサン金属錯体、およびキトサン誘導体からなる群から選択されるキトサン剤を含有する溶液と、前記架橋グラフトコポリマーを接触させる段階;
g)金属塩を含有する溶液と、前記架橋グラフトコポリマーを接触させる任意の段階;
h)前記架橋グラフトコポリマーを乾燥させる段階;
を含み、前記の接触させた架橋グラフトコポリマーが抗菌性および臭気抑制性である、ポリマー材料に抗菌性および臭気抑制性を付与する方法。
【請求項2】
前記ポリマー材料が、天然ポリマー;綿;木材;亜麻;セラック;絹;羊毛;天然ゴム;革;天然ポリマーの組み合わせ;合成ポリマー;ホモポリマー;ポリエステルの混合物、ブレンド、およびコポリマー;ポリエーテルエステル;ポリエーテル;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリスチレン;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリ(メタ)アクリレート;液晶ポリマー;ポリエーテルケトン;フッ素含有ポリマー;アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂;スチレン−ブタジエンブロックコポリマー;ポリカーボネート;セルロースベースのポリマー;尿素ホルムアルデヒド樹脂;ポリアクリロニトリル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;メラミン−ホルムアルデヒド樹脂;シリコーン;ブチルゴム;ポリクロロプレン;およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが、エチレンのホモポリマー;プロピレンのホモポリマー;エチレンおよび1つ以上のC3−C8α−オレフィンから誘導されるコポリマー;プロピレンおよび1つ以上のC4−C8α−オレフィンから誘導されるコポリマー;アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、メタロセン触媒ポリプロピレンから選択されるポリプロピレン;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、および高性能ポリエチレンから選択されるポリエチレン;エチレンとプロピレンのコポリマー;エチレンと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、および一酸化炭素から選択される少なくとも1種類のモノマーと、の組み合わせから誘導されるコポリマー;プロピレンと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、および一酸化炭素から選択される少なくとも1種類のモノマーと、の組み合わせから誘導されるコポリマー;オレフィンとジオレフィンとのコポリマー(そのオレフィンは、エチレン、プロピレンから選択される)、およびエチレンと他のオレフィンとのコポリマー;エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマーであり、前記ジオレフィンが、少なくとも6個の炭素原子の直鎖状脂肪族非共役ジエン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、およびブタジエンから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記グラフトモノマーが、アミン反応性官能基を含有する熱安定性不飽和モノマー;メタクリル酸;アクリル酸;グリシジルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート;β−カルボキシルエチルアクリレート;β−カルボキシエチルメタクリレート;マレイン酸ジエチル;マレイン酸モノエチル;マレイン酸ジ−n−ブチル;無水マレイン酸;マレイン酸;フマル酸;イタコン酸;イタコン酸無水物;ドデセニルコハク酸無水物;5−ノルボルネン−2,3−無水物;およびナディック酸無水物(3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物);からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記キトサン含有溶液が、キトサン0.1〜3体積%を含有し、さらに酢酸水溶液0.5〜1.0体積%を含有し;前記金属塩が、水可溶性亜鉛塩、水可溶性銅塩、水可溶性銀塩、およびそれらの混合物からなる群から選択され;前記キトサンが、85%を超えるN−脱アセチル化度、約60,000〜約200,000ダルトンの範囲の分子量、および20ppm未満の重金属含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって抗菌性および臭気抑制性が付与されたポリマー材料を含む物品。
【請求項7】
前記ポリマー材料が、天然ポリマー;綿;木材;亜麻;セラック;絹;羊毛;天然ゴム;革;天然ポリマーの組み合わせ;合成ポリマー;ホモポリマー;ポリエステルの混合物、ブレンド、およびコポリマー;ポリエーテルエステル;ポリエーテル;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリスチレン;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリ(メタ)アクリレート;液晶ポリマー;ポリエーテルケトン;フッ素含有ポリマー;アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂;スチレン−ブタジエンブロックコポリマー;ポリカーボネート;セルロースベースのポリマー;尿素ホルムアルデヒド樹脂;ポリアクリロニトリル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;メラミン−ホルムアルデヒド樹脂;シリコーン;ブチルゴム;ポリクロロプレン;およびエチレンのホモポリマー;プロピレンのホモポリマー;エチレンおよび1つ以上のC3−C8α−オレフィンから誘導されるコポリマー;プロピレンおよび1つ以上のC4−C8α−オレフィンから誘導されるコポリマー;アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、メタロセン触媒ポリプロピレンから選択されるポリプロピレン;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、および高性能ポリエチレンから選択されるポリエチレン;エチレンとプロピレンのコポリマー;エチレンと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、および一酸化炭素から選択される少なくとも1種類のモノマーと、の組み合わせから誘導されるコポリマー;プロピレンと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、および一酸化炭素から選択される少なくとも1種類のモノマーと、の組み合わせから誘導されるコポリマー;オレフィンとジオレフィンとのコポリマー(前記オレフィンは、エチレン、プロピレンから選択される)、およびエチレンと他のオレフィンとのコポリマー;エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマーからなる群から選択されるポリオレフィン(前記ジオレフィンが、少なくとも6個の炭素原子の直鎖状脂肪族非共役ジエン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、およびブタジエンからなる群から選択される);からなる群から選択される、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記グラフトモノマーが、アミン反応性官能基を含有する熱安定性不飽和モノマー;熱安定性不飽和カルボン酸無水物;熱安定性不飽和メタクリル酸二無水物;アクリル酸;グリシジルメタクリレート;2−ヒドロキシエチルアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート;β−カルボキシルエチルアクリレート;β−カルボキシエチルメタクリレート;マレイン酸ジエチル;マレイン酸モノエチル;マレイン酸ジ−n−ブチル;無水マレイン酸;マレイン酸;フマル酸;イタコン酸;イタコン酸無水物;ドデセニルコハク酸無水物;5−ノルボルネン−2,3−無水物;およびナディック酸無水物(3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物);からなる群から選択され、かつ前記金属塩が、水可溶性亜鉛塩;水可溶性銅塩;水可溶性銀塩;およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記物品が、包装;食品取り扱い装置;食品加工装置;食品分配システム;飲料分配システム;摂取品(ingested article);歯科装置;衣服;家庭用品;ヘルスケア用品;医療機器;美容衛生物品;個人衛生用品;液体の保存容器;液体の輸送容器;フィルターおよび分離膜;からなる群から選択される、請求項6に記載の物品。
【請求項10】
前記物品が、包装;容器;瓶;箱;広口瓶;缶;バッグ;閉端チューブ;包装部材;食品用包装;飲料用包装;包装ライナー;蓋;交換可能な容器の蓋;使い捨ての容器の蓋;包装に使用されるフィルム;新鮮食品の包装;新鮮食品包装の吸収パッド;収縮バッグ;食品トレイ;ファーストフード包装;ソフトドリンクボトルのネック;ベルトコンベアアセンブリ;ベルトコンベアの部材;一時的または永久的な食品製造面;食品製造装置;熱交換器;排水管;バケツ;タンク;パイプ;管材料;
カプセル剤;丸剤;液剤;
歯科矯正装置;歯科矯正装置の部材;義歯材料;歯ブラシ;歯洗浄器具;
スポーツウェア;アクティブウェア;水着;肌着;靴下類;ソックス;ストッキング;パンティストッキング;タイツ;レッグウォーマー;子供用衣服;衣類のインサート物(clothing insert);衣類のライナー;脇の下のシールド;履物の織布または不織布ライナーまたはインサート物;運動ユニフォーム;運動防具;スポーツパッド;すね当て;熱および水分の移動を調節する下着;
枕の充填材;寝具;マットレス;マットレスカバー;ベッドカバー;毛布;ベッドシーツ;枕;枕カバー;
窓周り用品;カーペット;フローリング部材;室内装飾用品の部材;フォームパッド;自動車用ワイプ;不織布乾燥機用シート;柔軟剤含有シート;家庭用クリーニングワイプ;カウンターワイプ;タオル;洗面タオル;ぞうきん;モップ;テーブルクロス;冷蔵庫の部材;冷蔵庫の表面;シャワーカーテン;シャワーカーテンのライナー;壁;カウンター表面;
包帯;接着剤;ガーゼ片;ガーゼパッド;ギブス;医療用ドレープ;手術用ドレープ;医療用衣料品;診察着;手術用マスク;手術用手袋;手術用履物;手術用かぶり物;吸入器;医療用インプラント;シリンジホルダー;カテーテル;縫合糸;IV管材料;IVバッグ;ステント;ガイドワイヤー;プロテーゼ;整形外科用留め針;歯科材料;ペースメーカー;ペースメーカーリード;除細動器リード;人工弁;人工心臓;関節インプラント;骨セメント;代用血管;導尿カテーテル小孔;整形外科固定具;外耳道シャント;美容外科インプラント;ENTインプラント;外科用ステープル;植込み型ポンプ;ヘルニアパッチ;外科用プレート;外科用ねじ;血液バッグ;外部血液ポンプ;液体投与システム;人工心肺;透析装置;人工皮膚;心室補助装置;補聴器;
子供用品;哺乳瓶;乳歯発生用の玩具;哺乳瓶の乳首;おしゃぶり;子供用の本;プラスチック製はさみ;玩具;おむつ用バケツ;クレンジングワイプの容器;パーソナルクレンジングワイプ;赤ちゃん用ウェットティッシュ;
化粧品;化粧品包装;化粧用ワイプ;口紅;リップクリーム;アイシャドウ;アイライナー;マスカラ;ボディーパウダー;バスパウダー;ほお紅;顔の化粧品;シャンプー;コンディショナー;脱臭剤;制汗剤;ボディーローション;フェイスクリーム;フェイスパウダー;ポンプディスペンサー;マスカラの棒;薬入りワイプ;化粧ブラシ;点滴容器;点滴容器の先端部;口紅のアプリケーター;アイライナーアプリケーター;アイシャドウアプリケーター;液体;溶液;懸濁液;
個人衛生用品;おむつ;用便練習用パンツ;尿失禁パッド;尿失禁用の衣料品;パンティーライナー;生理用ナプキン;タンポン;タンポンアプリケーター;限外濾過膜;精密濾過膜;空気フィルター;水のフィルター;
ボートの部材;ボートの船体;およびボートのモーター;
からなる群から選択される、請求項6に記載の物品。

【公表番号】特表2008−517143(P2008−517143A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537947(P2007−537947)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037229
【国際公開番号】WO2006/044785
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】