説明

抗菌性吸水シート

【課題】アルカリ性の抗菌剤を用いた抗菌性吸水シートにおいて、抗菌性物質によって吸水性樹脂の吸水能力が低下することを防ぐと共に、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせる。
【解決手段】本発明の抗菌性吸水シートは、アルカリ性の抗菌剤を主成分として含有する抗菌部と、吸水性樹脂を含有する吸水部と、抗菌部と吸水部とを分離する分離部とを備え、抗菌部の表面は通水性を有する構成とし、抗菌部が表面になるようにする。抗菌部と吸水部とを分離して配置することによって、抗菌性物質によって吸水性樹脂の吸水能力が低下することを防ぎ、抗菌部の表面に通水性を持たせ、抗菌部が表面になるように構成することによって、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性吸水シートに関し、尿や血液の他、日常生活や生産活動に伴って生じる各種の液体を吸収する吸水シートに関し、吸水した液体による菌類の繁殖を抑制する抗菌性を有した抗菌性吸水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
尿、肉や魚等の食物から出るドリップなど栄養源を含有する液体を吸水性樹脂で吸収すると液体を吸収した吸水性樹脂はゲル化する。ゲル化した吸水性樹脂内では、菌が時間の経過と共に増殖し、増殖した菌は匂い成分を生成する。このとき、吸水性樹脂に対して抗菌剤を適用させることによって、菌の増殖を抑え、匂い成分の生成を抑制することができる。
【0003】
従来、吸水性樹脂を利用した吸水シートに抗菌性を付加した抗菌性吸水シートとして種々のものが知られている。例えば、抗菌性を有する物質と吸水性樹脂とを混合する構成の抗菌性吸水シート、あるいは、抗菌性を有する物質と高吸水性樹脂とを層状に分離した構成の抗菌性吸水シートが知られている。
【0004】
抗菌性を有する物質と吸水性樹脂とを混合する構成の抗菌性吸水シートとして、例えば、抗菌性金属イオンを交換して保持したゼオライト系個体粒子と高吸水性樹脂と2枚の膜でサンドイッチ状に保持した構成の吸水性シート(特許文献1)、高吸水性ポリマーを含む不織布からなる殺菌マット(特許文献2)、抗菌性カルシウム系セラミック化合物の焼成物と吸水性樹脂とからなる抗菌性吸水シート(特許文献3)、吸水粒子の抗菌成分を含浸した吸水膜層を固定化した樹脂フィルム(特許文献4)等が知られている。
【0005】
また、抗菌性を有する物質と高吸水性樹脂とを層状に分離した構成の抗菌性吸水シートとして、例えば、高吸水性樹脂を含浸させた不織布シートと抗菌性を有する物質を含有させたプラスチックフィルムとを点付けラミネート加工で一体化させた構成の吸水シート(特許文献5)、防湿性接着剤層の表面に粉粒状の鮮度保持剤を接着固定させ、鮮度保持剤の表面に吸水層をラミネートさせてなる鮮度保持シート(特許文献6)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平05−45292(第3欄37行-第4欄2行)
【特許文献2】特開平01−313057(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平04−138165号(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平05−124702号(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平07−195626号(特許請求の範囲)
【特許文献6】特許第2640964号(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の発明者は、アルカリ性の抗菌剤を用いた場合には、抗菌剤のアルカリ性によって吸水性樹脂の吸水能力が低下することを見出した。そのため、アルカリ性の抗菌性物質と吸水性樹脂とを混合してなる構成の抗菌性吸水シートでは、抗菌性物質のアルカリ性によって吸水性樹脂の吸水能力が低下し、十分な吸水を行うことができないという問題がある。
【0008】
一方、抗菌性吸水シートを、抗菌性を有する物質と吸水性樹脂とを層状に分離した構成とすれば、抗菌性物質と吸水性樹脂とを分離することができるため、抗菌性物質によって吸水性樹脂の吸水能力が低下するという問題を解決することができる。
【0009】
しかしながら、従来提案されている、抗菌性物質と吸水性樹脂とを層状に分離する構成は、吸水性樹脂を上層に設け、抗菌性物質を下層に設ける構成である。このように、吸水性樹脂を上層に抗菌性物質を下層に設ける構成では、抗菌性吸水シートの表面部分は抗菌性を有していないという問題がある。そのため、上層の吸水性樹脂が栄養源を含有する液体を吸収すると、上層の下部側は下層の抗菌剤によって菌の増殖の抑制が期待できるが、上層の上部側である表面部分では菌の増殖の抑制効果は期待できないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、アルカリ性の抗菌剤を用いた抗菌性吸水シートにおいて、抗菌性物質によって吸水性樹脂の吸水能力が低下することを防ぐと共に、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の抗菌性吸水シートは、アルカリ性の抗菌剤を主成分として含有する抗菌部と、吸水性樹脂を含有する吸水部と、抗菌部と吸水部とを分離する分離部とを備え、抗菌部の表面は通水性を有する構成とする。抗菌部と吸水部とを分離して配置することによって、抗菌性物質によって吸水性樹脂の吸水能力が低下することを防ぎ、抗菌部の表面に通水性を持たせる構成にすることによって、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせる。
【0012】
本発明の抗菌性吸水シートは、抗菌部と吸水部との分離配置の構成、および抗菌部の表面に通水性を持たせる構成は、2つの態様とすることができる。
【0013】
本発明の抗菌性吸水シートにおいて、第1の態様は抗菌部と吸水部とを層状に配置する構成であり、第2の態様は抗菌部と吸水部とを水平方向に配置する構成である。
【0014】
本発明の第1の態様は、抗菌部、吸水部および分離部を、抗菌部と吸水部との間に分離部を挟んで層状に配置する。分離部は、抗菌部と吸水部との間に設けた通水性を有する通水性シート材を配置することで構成することができ、この通水性シート材によって抗菌部と吸水部とを通水可能に分離する。
【0015】
また、抗菌性吸水シートの外表面の内、一方の表面は抗菌部が分離部に面する側と反対側の面であり、他方の表面は吸水部が分離部に面する側と反対側の面である。抗菌部の表面は通水性を有し、吸水部の表面は非通水性を有する。抗菌部の表面に通水性を持たせることによって、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせることができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、抗菌部と吸水部とを分離部を挟んで水平方向に配置する。分離部は、抗菌部と吸水部とを水平方向に分離する。また、抗菌部と吸水部は、水平方向に対して一方の同じ方向の表面は通水性を有し、他方の同じ方向の表面は非通水性を有する。
【0017】
抗菌部と吸水部とを分離部を挟んで水平方向に配置し、水平方向に対して一方の側の表面を通水性とし、他方の側の表面を非通水性とすることによって、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせることができる。
【0018】
第2の態様において、抗菌部および吸水部において、抗菌剤および吸水性樹脂の通水性を有する表面は通水性シート材を備え、抗菌剤および吸水性樹脂の非通水性を有する表面面は非通水性シート材を備える。分離部は、通水性シート材と非通水性シート材との接着部位により構成することができる。
【0019】
本発明の第1の態様および第2の態様は、抗菌部および吸水部の構成において以下の形態とすることができる。
【0020】
抗菌部は、アルカリ性の抗菌剤として、水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性粒子を用いる。水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性粒子は、例えば、貝殻を粉砕して形成される焼成カルシウムを水和処理して得た抗菌性粒子を用いることができる。焼成カルシウムを水和処理して得た抗菌性粒子は、水酸化物イオンの抗菌効果によって菌類の増殖を抑制し、硫化水素などの酸性系の匂い成分や、アルデヒド類等の匂い成分を分解除去する。
【0021】
水酸化カルシウムは、炭酸カルシウムを焼成して酸化カルシウムとした後、水和させることによって得ることができる。炭酸カルシウム源は、動物性由来のカルシウムを使用することができ、例えば、ホタテ貝殻、アワビ貝殻、サザエ貝殻、ホッキ貝殻、ウニ貝殻の天然あるいは養殖の貝類の他、珊瑚殻等を原料に使用することができる。
【0022】
消臭効果は、水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性粒子の単位重量あたりの表面積が大きいほど効果が高まるため、粒度の小さい粉末が好適である。
【0023】
吸水部は2つの形態とすることができる。吸水部の第1の形態は、吸水性樹脂の粒子とアルカリ性の抗菌剤の粒子とを混合して備える。この両粒子を混合させる構成において、抗菌剤の粒子の粒径を吸水性樹脂の粒子の粒径よりも大径とする。
【0024】
アルカリ性の抗菌剤は、アルカリ性によって吸水性樹脂の吸水能力を低下させる性質があるが、高い吸水能力を必要としない用途においては、吸水性樹脂とアルカリ性の抗菌剤を直接混合して用いることができる。このような場合、アルカリ性の抗菌剤の粒径を吸水性樹脂の粒径よりも大きくすることによって抗菌剤の表面積を相対的に小さくし、吸水性樹脂の吸水能力を低下させる影響を低減させる。
【0025】
吸水部の第1の形態の構成によって、吸水部内において、菌類の増殖の抑制、および匂い成分の分解除去の作用を奏することができると共に、アルカリ性の抗菌剤による吸水性樹脂の吸水能力低下を低減させることができる。
【0026】
吸水部の第2の形態は、吸水性樹脂の粒子と非アルカリ性の抗菌剤の粒子とを混合して備える。この両粒子を混合させる構成において、吸水性樹脂の粒子の粒径と抗菌剤の粒子の粒径とを同程度に揃える。吸水性樹脂の粒子と抗菌剤の粒子の粒径を同程度にすることによって、両粒子の混錬性を高め、吸水部内における抗菌剤の偏りを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の抗菌性吸水シートによれば、アルカリ性の抗菌剤を用いた抗菌性吸水シートにおいて、抗菌性物質によって吸水性樹脂の吸水能力が低下することを防ぐと共に、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の抗菌性吸水シートの第1の態様の第1の構成例を説明するための図である。
【図2】本発明の抗菌性吸水シートの第1の態様の第2の構成例を説明するための図である。
【図3】本発明の抗菌性吸水シートの第1の態様の第3の構成例を説明するための図である。
【図4】本発明の抗菌性吸水シートの第2の態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
本発明の抗菌性吸水シートは、吸水性樹脂と抗菌剤を備える。吸水性樹脂は、尿、肉や魚等の食物から出るドリップなど栄養源を含有する液体を吸収してゲル化する。抗菌剤は、ゲル化した吸水性樹脂内において、菌の増殖を抑え、増殖した菌による匂い成分の生成を抑制する。
【0030】
本発明の抗菌性吸水シートは、第1の態様は抗菌部と吸水部とを層状に配置する構成であり、第2の態様は抗菌部と吸水部とを水平方向に配置する構成である。
【0031】
図1〜図3は本発明の抗菌性吸水シートの第1の態様を説明するための図であり、図4は本発明の抗菌性吸水シートの第2の態様を説明するための図である。
【0032】
[本発明の第1の形態]
本発明の第1の態様は、抗菌部と吸水部との間に通水性を有する通水性シート材を分離部として設け、この通水性シート材によって抗菌部と吸水部を上下方向で分離する。抗菌部と吸水部とを層状に配置し、抗菌部を上層又は下層とし、吸水部を下層又は上層とする。抗菌部と吸水部とを通水性シート材を介して層状に分離し、抗菌部を上層又は下層とすることによって抗菌部が表面になるようにする。抗菌部を表面にすることによって、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせる。
【0033】
(第1の構成例)
図1は、第1の態様の抗菌性吸水シートの第1の構成例を説明するための図である。
図1において、抗菌性吸水シート1は、分離部4を挟んで上層に抗菌部2を設け下層に吸水部3を備える。なお、ここでは、抗菌部2を上層に設け、吸水部3を下層に設ける構成例を示しているが、抗菌部2を下層に設け、吸水部3を上層に設ける構成とすることもできる。液体は、抗菌部2の上層又は下層に設けられた通水性シート材の表面を通して、抗菌部2内に滲入し、さらに、分離部4の通水性シート材を通して吸水部3に滲入する。
【0034】
抗菌部2は、水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性を有する抗菌性粒子を備える。水酸化カルシウムは、当業者に既知の方法によって得ることができる。例えば、炭酸カルシウムを焼成して酸化カルシウムとした後、水和させることによって得ることができる。
【0035】
炭酸カルシウム源は、動物性由来のカルシウムを使用することができ、例えば、ホタテ貝殻、アワビ貝殻、サザエ貝殻、ホッキ貝殻、ウニ貝殻の天然あるいは養殖の貝類の他、珊瑚殻等を原料に使用することができる。これらの内、貝殻組成が均一である点および供給量が多いなどの点から、ホタテ貝殻を使用することが好適である。
【0036】
これらの貝殻は、粉砕して貝殻粉末(あるいは粒状物)とし、800℃〜1500℃で、より好ましくは850℃〜1200℃で、例えば炭酸ガスを導入しながら焼成する。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。焼成時間は焼成温度等によって適宜設定されるが、通常、雰囲気温度が所定の焼成温度に到達した後、10〜120分、好ましくは15〜90分である。こうした焼成処理により、不要な有機物を熱分解によって除去する。
【0037】
焼成後、水和させて水酸化カルシウム主体の微細粒子を得る。焼成又は水和の過程で、必要に応じてさらに粉砕を行う。粉砕により得られる粒子の初期粒度は最大で100μm以上となる。粒度調整は、貝化粉の粉砕、分級によって行い1μm以下の粒径とすることができ、例えば0.1〜500μmの粒径の微細粒子を得ることができる。
【0038】
吸水部3は、吸水性樹脂によって形成することができる。吸水性樹脂は、例えば、アクリル酸塩重合体の架橋物、澱粉−アクリル酸塩グラフト共重合体の加水分解生成物の架橋物、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合の架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコールの架橋物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸部分中和物架橋体および酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物等が挙げられる。このうち、大量の液体を吸収することができ、多少の荷重をかけても吸収した液体を分子内に安定に保持可能なアクリル酸塩重合体の架橋物が好適である。
【0039】
また、吸水性樹脂は一般に粉末状や顆粒状のものが好ましい。本発明では、粉末状や顆粒状のものを含めて、粒子の用語で表している。
【0040】
吸水性樹脂は、代表的な製造方法である逆相懸濁重合法や水溶液重合法等の他、各種の重合法で製造したものを必要に応じて粉砕、造粒または分級等を行うことによって調製することができる。
【0041】
分離部4は抗菌部2内の抗菌性粒子と吸水部3内の吸水性樹脂とを分離すると共に、液体を吸水部3内に通過させる。分離部4は、抗菌部2内の通過した液体を吸水部3内に通すために通水性シート材を備える。上部シート5の通水性シート材、および分離部4の通水性シート材は、例えば不織布を用いることができる。
【0042】
また、抗菌部2の上方は上部シート5で覆われる、上部シート5を通過した液体は抗菌部2内に浸透する。抗菌部2内に浸透した液体は分離部4の通水性シート材を通過して、吸水部3内に浸透する。吸水部3内に浸透した液体は、吸水性樹脂に吸収される。抗菌部2は、吸水部3内に浸透した液体による菌の増殖を抑制し、匂い成分を分解する。
【0043】
吸水部3の底部は底部シート6で覆われる。底部シート6は非通水性シート材で形成され、吸水部3内に浸透した液体が外部に漏れ出すことを防止する。非通水性シート材は、例えば樹脂フィルムで形成することができる。
【0044】
抗菌性吸水シート1は上部に抗菌部2が設けられた構成であるため、表面の抗菌性を得ることができる。
【0045】
分離部4および上部シート5の通水性シート材は、例えば不織布で形成することができる。
【0046】
図1(a)〜(c)は抗菌性吸水シートの断面図であり、図1(d)は抗菌性吸水シートの上方部分の概略斜視面である。
【0047】
図1(a)に示す構成例では、抗菌部2内に水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性を有する粒子を備える。ここで、抗菌性粒子の粒度を小さくすることによって、単位重さに対する表面積を大きくして、菌の増殖防止および匂い成分の分解除去の効果を高めることができる。
【0048】
図1(b),(c)に示す構成例では、抗菌部2内に水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性を有する粒子を備えると共に、吸水部3内にも吸水性樹脂13と共に水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性粒子を備える。
【0049】
図1(b)に示す構成例では、抗菌部2内に備える抗菌性粒子の粒度と、吸水部3内に備える抗菌性粒子の粒度を異ならせる。抗菌部2内に備える抗菌性粒子11の粒度は、図1(a)に示した構成と同様に、抗菌性粒子の粒度を小さくすることによって、単位重量あたりの表面積を大きくして、菌の増殖防止および匂い成分の分解除去の効果を高める。
【0050】
一方、吸水部3内に備える抗菌性粒子12の粒度は、吸水部3内の吸水性樹脂13の粒子の粒度と比較した大きな粒度とする。アルカリ性の抗菌剤は、アルカリ性によって吸水性樹脂の吸水能力を低下させる性質がある。図1(b)の構成によれば、吸水部3内において、アルカリ性の抗菌性粒子12の粒径を吸水性樹脂13の粒径よりも大きくすることによって抗菌性粒子12の表面積を相対的に小さくし、吸水性樹脂13の吸水能力を低下させる影響を低減させる。
【0051】
吸水部3内に、粒径の大きな抗菌性粒子12を配することによって、菌類の増殖の抑制、および匂い成分の分解除去の作用を奏すると共に、アルカリ性の抗菌性粒子による吸水性樹脂13の吸水能力低下を低減させることができる。
【0052】
図1(c)に示す構成例では、非アルカリ性抗菌性粒子14を用い、吸水部3内に備える抗菌性粒子14の粒度と吸水性樹脂12の粒子の粒度を揃える。
【0053】
吸水性樹脂12の粒子と非アルカリ性抗菌粒子14の粒子とを混合させる構成において、吸水性樹脂12の粒子の粒径(粒度)と非アルカリ性抗菌粒子14の粒子の粒径(粒度)とを揃えることによって、両粒子の混錬性を高め、吸水部3内における抗菌剤の偏りを防ぐことができる。
【0054】
図1(b),(c)に示す構成例では、吸水部3内に設けた抗菌性粒子によって、吸水部3内での菌の増殖を抑制し、発生した匂い成分を分解することができる。
【0055】
(第2の構成例)
図2は、第1の態様の抗菌性吸水シートの第2の構成例を説明するための図である。図2(a)は抗菌性吸水シートの断面図であり、図2(b)は抗菌性吸水シートの上方部分の概略斜視面である。
【0056】
図2において、抗菌性吸水シート1は、分離部4を挟んで上層に抗菌部2を設け下層に吸水部3を備える。
【0057】
非通水性シート材からなる底部シート6上に吸水部3を所定間隔で設ける。分離部4を形成する通水性シート材を所定間隔ごとに底部シート6と接着する。吸水部3は、接着部7と底部シート6と通水性シート材とで形成される収納空間内に吸水性樹脂を収納することによって形成することができる。
【0058】
分離部4の通水性シート材の上方に上部シート5を設ける。抗菌部2は、分離部4の通水性シート材と上部シート5の間で形成される収納空間内に抗菌性粒子を収納することによって形成することができる。分離部4および上部シート5の通水性シート材は、例えば不織布で形成することができる。
【0059】
上部シート5を通過した液体は抗菌部2内に浸透する。抗菌部2内に浸透した液体は分離部4の通水性シート材を通過して、吸水部3内に浸透する。吸水部3内に浸透した液体は、吸水性樹脂に吸収される。抗菌部2は、吸水部3内に浸透した液体による菌の増殖を抑制し、匂い成分を分解する。
【0060】
また、第2の構成例においても、前記した図1(b),(c)の構成例と同様に、吸水部3内に抗菌性粒子を設ける構成としてもよい。
【0061】
(第3の構成例)
図3は、第1の態様の抗菌性吸水シートの第3の構成例を説明するための図である。図3(a)は抗菌性吸水シートの断面図であり、図3(b)は抗菌性吸水シートの上方部分の概略斜視面である。
【0062】
図3において、抗菌性吸水シート1は、分離部4を挟んで上層に抗菌部2を設け下層に吸水部3を備える。
【0063】
非通水性シート材からなる底部シート6上に吸水部3を設け、分離部4を形成する通水性シート材上に抗菌部2を所定間隔で設けることによって、分離部4の通水性シート材の上方に上部シート5の通水性シート材を設ける。抗菌部2の上部シート5の通水性シート材は所定間隔ごとに分離部4の通水性シート材と接着させる。抗菌部2は、接着部7の通水性シート材と上部シート5の通水性シート材とで形成される収納空間内に抗菌性粒子を収納することによって形成される。
【0064】
分離部4および上部シート5の通水性シート材は、例えば不織布で形成することができる。
【0065】
上部シート5を通過した液体は抗菌部2内に浸透する。抗菌部2内に浸透した液体は分離部4の通水性シート材を通過して、吸水部3内に浸透する。吸水部3内に浸透した液体は、吸水性樹脂に吸収される。また、接着部7を通過した液体についても、分離部4の通水性シート材を通過して吸水部3内に浸透し、吸水性樹脂に吸収される。抗菌部2は、吸水部3内に浸透した液体による菌の増殖を抑制し、匂い成分を分解する。
【0066】
また、第3の構成例においても、前記した図1(b),(c)の構成例と同様に、吸水部3内に抗菌性粒子を設ける構成としてもよい。
【0067】
[本発明の第2の形態]
本発明の第2の態様は、抗菌部と吸水部とを水平方向に配置すると共に、両部の間に分離部を設ける。分離部は抗菌部と吸水部とを水平方向で分離する。抗菌部と吸水部とを分離部を挟んで水平方向に配置することによって、抗菌部が表面になるようにする。抗菌部を表面にすることによって、抗菌性吸水シートの表面に抗菌性を持たせる。
【0068】
図4は、第2の態様の抗菌性吸水シートの構成例を説明するための図である。図4(a)は抗菌性吸水シートの断面図であり、図4(b)は抗菌性吸水シートの上方部分の概略斜視面である。
【0069】
図4において、抗菌性吸水シート1は、分離部4´を挟んで水平方向に抗菌部2と吸水部3とを並べて備える。
【0070】
抗菌性吸水シート1は、非通水性シート材からなる底部シート6上に上部シート5を設け、底部シート6と上部シート5との間で形成される収納空間内に抗菌性粒子および吸水性樹脂を収納することによって抗菌部2および吸水部3が形成される。抗菌部2と吸水部3との間の分離部4´は、底部シート6と上部シート5とを接着する接着部で形成することができる。上部シート5は例えば不織布等の通水性シート材によって形成することができる。
【0071】
上部シート5を通過した液体は抗菌部2内および吸水部3内に浸透する。吸水部3内に浸透した液体は、吸水性樹脂に吸収される。抗菌部2は、吸水部3内に浸透した液体による菌の増殖で発生した匂い成分を分解する。
【0072】
また、第2の態様においても、前記した第1の態様の第1〜第3の構成例と同様に、吸水部3内に抗菌性粒子を設ける構成としてもよい。
【0073】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 抗菌性吸水シート
2 抗菌部
3 吸水部
4 分離部
5 上部シート
6 底部シート
7 接着部
11 抗菌性粒子
12 抗菌性粒子
13 吸水性樹脂
14 抗菌性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性の抗菌剤を主成分として含有する抗菌部と、
吸水性樹脂を含有する吸水部と、
前記抗菌部と前記吸水部とを分離する分離部とを備え、
前記抗菌部の表面は通水性を有することを特徴とする、抗菌性吸水シート。
【請求項2】
前記抗菌部、前記吸水部および分離部を、前記抗菌部と前記吸水部との間に前記分離部を挟んで層状に配置し、
前記分離部は、前記抗菌部と前記吸水部との間に設けた通水性を有する通水性シート材によって抗菌部と前記吸水部とを分離し、
前記抗菌部は、前記分離部に面する側と反対側の表面は通水性を有し、
前記吸水部は、前記分離部に面する側と反対側の表面は非通水性を有することを特徴とする、請求項1に記載の抗菌性吸水シート。
【請求項3】
前記抗菌部と前記吸水部とを前記分離部を挟んで水平方向に配置し、
前記分離部は、前記抗菌部と前記吸水部とを水平方向に分離し、
前記抗菌部と前記吸水部は、水平方向に対して一方の同じ方向の表面は通水性を有し、他方の同じ方向の表面は非通水性を有することを特徴とする、請求項1に記載の抗菌性吸水シート。
【請求項4】
前記抗菌部および前記吸水部は、通水性を有する表面に通水性シート材を備え、
前記抗菌剤および前記吸水性樹脂の非通水性を有する表面に非通水性シート材を備え、
前記分離部は、前記通水性シート材と前記非通水性シート材との接着部位により構成することを特徴とする、請求項3に記載の抗菌性吸水シート。
【請求項5】
前記抗菌部中のアルカリ性の抗菌剤は、水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性粒子であることを特徴とする、請求項1から4の何れか一つに記載の抗菌性吸水シート。
【請求項6】
前記吸水部は、吸水性樹脂の粒子とアルカリ性の抗菌剤の粒子とを混合して備え、
前記抗菌剤の粒子の粒径は、吸水性樹脂の粒子の粒径よりも大であることを特徴とする、請求項1から5の何れか一つに記載の抗菌性吸水シート。
【請求項7】
前記吸水部は、吸水性樹脂の粒子と非アルカリ性の抗菌剤の粒子とを混合して備え、
前記吸水性樹脂の粒子の粒径と前記抗菌剤の粒子の粒径とを揃えることを特徴とする、請求項1から4の何れか一つに記載の抗菌性吸水シート。
【請求項8】
前記水酸化カルシウムを主成分とする抗菌性粒子は、炭酸カルシウムを焼成してなる酸化カルシウムを水和して生成される生成物であることを特徴とする、請求項1から7の何れか一つに記載の抗菌性吸水シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241296(P2012−241296A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113486(P2011−113486)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(509069973)クリア・オフィス株式会社 (6)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】