説明

抗菌性材料

本発明は、本明細書中に更に述べる非持続性支持材料、及び前記支持材料の表面上の金属銀粒子を含むナノ粒子;前記ナノ粒子を含む複合材料;前記ナノ粒子及び複合材料の製造、並びに前記ナノ粒子及び複合材料の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非持続性支持材、及び前記支持材表面上の金属銀粒子を含むか、それらからなるナノ粒子、ポリマーとそこに埋め込まれた前記ナノ粒子とを含むか、それらからなる複合材料、ナノ粒子及び複合材料の製造、並びに前記ナノ粒子の抗菌特性ベースの前記ナノ粒子及び複合材料の使用に関する。
【0002】
銀は、数十年間、主にAgNO3溶液等のイオン性銀溶液の形態で殺菌剤として用いられてきた。銀の活性は十分に理解されていないが、種々の形態(イオン性及び金属)及び外見(溶液内又は固体として)で広く利用できるという利点を有する。多くの銀含有材料が公知である。
【0003】
EP0190504は、銀でドープされ、<5000nmの粒径を有するナノ粒子、該粒子のポリマー中への組み込み、医療機器のコーティングとしてのその使用を開示している。表面に銀が蒸着しているヒドロキシアパタイトナノ粒子についても説明されているが、この文献は該粒子の製造については開示していない。酸化タンタルについては、ゾル−ゲル法の使用が提案されている。この方法は、比較的大きい多孔質粒子をもたらす。前述したサイズの粒子は、その色、透明性及び抗菌特性のために好ましくない。
【0004】
WO2006/084390は、シリカ及び金属銀ナノ粒子を含み、金属銀ナノ粒子が、電子顕微鏡(高解像度透過型顕微鏡及び走査型透過顕微鏡)により測定され、X線粉末回折により確認される<20nmのサイズを有する、抗菌性ナノ粒子を開示している。支持材は、もっぱら、主にリン酸カルシウム等の特定の金属リン酸塩としてその持続性が高いと考えられるシリカからなる。更に、支持剤はリン酸塩を含まず、それ故、微生物によるリン酸イオンの取り込みに誘発される銀の放出を制限する。5〜20nmの範囲の金属銀ナノ粒子のサイズは、分解される、利用可能な銀の表面積を制限する。
【0005】
WO2005/087660は、ナノ粒子が、<200nmの流体力学的粒経子を有する非持続性材料からなるナノ粒子及びその製造方法を開示している。この文献は、抗菌性材料を得るための前記成形体材料にイオン性銀を含ませることも示唆している。しかし、この文献は、ナノ粒子表面に金属銀を含むナノ粒子を開示していない。更に、前記文献には、ナノ粒子を含む金属銀の製造方法についての教示が見出されない。
【0006】
WO2004/005184は、セリア、及び/又はセリア/ジルコニアを含み、更に貴金属を含む、ナノ粒子状の酸化物系支持材料の製造を開示している。この材料は、その優れた高温安定性のため、高温処理において触媒として後に用いることができる。その化学組成のため、この支持材料は、本発明に関連して持続性であると考えられる。
【0007】
従って、本発明の目的は、先行技術の、これらの欠点の少なくともいくつかを緩和することである。特に、本発明の目的は、生物環境において分解され得るとともに、長期間にわたって高抗菌性である材料を提供することである。更に、有利な光学特性及び抗菌特性を有する製品の製造に適した材料を提供する必要がある。更に、硫黄/硫黄含有化合物の存在下に抗菌性である材料を提供する必要がある。
【0008】
これらの目的は、請求項1に記載のナノ粒子及び請求項6に記載の複合体を提供することにより達成される。本発明の更なる態様は明細書及び独立請求項に開示され、好ましい実施態様は明細書及び従属請求項に開示される。
【0009】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。本明細書において提供され/開示される種々の実施態様、言及及び範囲が任意に組み合わせ得ることが理解される。更に、特定の実施態様に依存し、選択された定義、実施態様又は範囲は適用されない。
【0010】
従って、本発明の一般的な目的は、先行技術の限界又は不都合を克服する、改善された抗菌性材料を提供することである。
【0011】
さて、開示が進むにつれて更に容易に明らかになるであろう本発明の、これら及び更なる目的を実施するため、本発明は、第一の態様において、ナノ粒子状非持続性支持材料、及び前記支持材料の表面上に位置する金属銀ナノ粒子を含む(すなわち、含む又はそれからなる)という特徴により明らかである抗菌ナノ粒子に関する。抗菌ナノ粒子は、更に、<500nmの流体力学的直径、金属銀粒子の少なくとも95数量%の<10nmの粒径、及び5%(w/w)未満の水分含有量により特徴づけられる。
【0012】
本発明は、第二の態様において、このようなナノ粒子を含む複合材料の製造に関する。
【0013】
本発明は、第三の態様において、このようなナノ粒子又は複合材料を含む物品に関する。
【0014】
本発明は、第四の態様において、ナノ粒子の製造に関する。
【0015】
本発明は、第五の態様において、複合材料の製造に関する。
【0016】
本発明は、第六の態様において、このようなナノ粒子又は複合材料を含む物品の製造に関する。
【0017】
本発明は、第七の態様において、このような複合材料の使用に関する。
【0018】
本発明は、第八の態様において、更に、このようなナノ粒子の使用に関する。
【0019】
従って、第一の態様において、本発明は、非持続性支持材料、及び前記支持材料の表面上の金属銀粒子を含む(すなわち、含む又はそれらからなる)ナノ粒子であって、前記ナノ粒子の少なくとも95%(w/w)が<500nmの流体力学的直径を有し;前記ナノ粒子が<5%(w/w)の水分含有量を有し;前記支持材料が塩であり、アニオンが、リン酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン又はそれらの混合物を含むか、それらかなる群から選択され;前記金属銀粒子の少なくとも95%(n/n)が<10nmの直径を有する、ナノ粒子に関する。本明細書に記載のナノ粒子は有利な抗菌特性を有する。
【0020】
本明細書に記載のナノ粒子の詳細、及びナノ粒子の有利な実施態様を以下に示す。
【0021】
流体力学的直径:本明細書に記載のナノ粒子は、[1]に概要を述べる、X線ディスク遠心分離により測定される、500nm未満、好ましくは200nm未満の流体力学的粒径により特徴づけられる。先行技術において用いられた、支持材料又は最終銀含有支持材料のサイズは、通常>1000nmであり、得られる抗菌ポリマーを不透明であるか、又は透明度に関しては少なくとも限定されるようにする。本明細書に記載の抗菌ナノ粒子含有ポリマーは、このような不利な特性を示さないことがわかった。
【0022】
水分含有量:本明細書に記載のナノ粒子は、更に低水分含有量により特徴づけられる。通常、材料は、熱質量分析により測定されるように、アルゴン流下、500℃、30分間の加熱により5%(w/w)未満の水分を失う。湿式化学法により得られる支持材料は、大量の水、通常>10%(w/w)を含む。本明細書に記載のナノ粒子の製造のための火炎溶射熱分解法は、この高水分含有量を回避する。低水分含有量は、例えば、後述するように複合材料を製造する場合に、ナノ粒子の更なる処理に有利である。
【0023】
非持続性支持材料:本明細書に記載のナノ粒子の支持材料は公知であり、例えば、参考として本明細書で援用されるWO2005/087660に開示されている。「非持続性」なる用語は当該技術分野において公知である。「非持続性」は、生物環境において材料の分解及び/又は再吸収についての可能性を有する材料の特徴である。すなわち、このような関連において、「非持続性」は以下の基準の1種以上を満たす材料である。
【0024】
i.溶解度:材料は、必要に応じて、pHを調整するために、非錯体形成バッファー(例えば、Bis−Trisバッファー、Goodのバッファー)のみを用いる場合、25℃において、水中5〜8.5のpHで、少なくとも20ppm(w/w、溶媒の質量に対して)の溶解度を有する。溶解度は、100mgの材料を1.0リットルの、場合により緩衝化した水に加え、例えば、原子吸光分析又は質量分析により溶解した成分の濃度を測定することにより、更に測定される。
【0025】
ii.生体中における生分解:生体(例えば、哺乳動物)中での材料の生分解速度は、生体の質量に対して、少なくとも10ppm/日である。生分解は、材料の再吸収及び/又は分解、それに続く身体からの排出又は生体の組織中でのその無毒性な取り込み(例えば、炭酸カルシウムからのカルシウムの分解及びそれに続く骨中への輸送及び取り込み)として定義される。
【0026】
iii.細胞培養モデルにおける分解:細胞培養モデル(例えば、皮膚細胞、肺細胞、肝細胞)における材料の分解速度は、生細胞の質量に対して、少なくとも50ppm/日である。熟練の研究者は、材料の所定の適用のための適切な細胞系を選択することができる(例えば、ヒトの皮膚に接触する材料の応用のためには、好ましくはヒト皮膚細胞が適用される)。
【0027】
通常の非持続性無機材料は、リン酸塩、硫酸塩又は炭酸塩のような金属塩である。持続性(非分解性)材料の典型的な具体例は、チタニア、酸化アルミニウム、ゼオライト、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムである。ナノ粒子材料が細胞内に入り、毒作用を有することが公知である。持続性材料の場合、損傷は不確実であり、適切な時間内に評価できない。従って、非持続性材料の使用は好都合である。更に、非持続性材料は抗菌特性を向上すると考えられている。例えば、リン酸塩アニオンは材料が微生物と直接接触する場合、リリースオンデマンドの要因となる。このリリースオンデマンド特性は、材料中における銀の有効使用にとって重要である。
【0028】
金属銀粒子:本明細書に記載のナノ粒子は、ナノ粒子状の金属又は部分的イオン状で、銀を含む。金属ナノ粒子数に対して少なくとも95%(「95%(n/n)」)は、電子顕微鏡により測定される直径が10nm未満、更に好ましくは5nm未満の金属銀ナノ粒子として存在する。すなわち、サイズは、走査型透過電子顕微鏡又は高解像度透過型電子顕微鏡のいずれかで、例えば、CM30(Philips,LaB6陰極、300kVで走査、点分解能>2Å)で測定する。電子顕微鏡の解像度における現在の限界のため、<1nmの金属銀粒子は、本発明との関連において粒子とみなされない。本明細書において、<1nmの金属銀粒子は、原子クラスター、さらには分子と呼ばれる。従って、<1nmの金属銀粒子は、金属銀流経分布に基づく数に含まれない。金属銀流経がイオン性銀の分解及び放出を制限することが知られている。前述したサイズの銀粒子が、有用かつ強力な抗菌作用を提供することがわかった。抗菌作用は、利用可能な全銀表面に関し、これは、より小さい銀粒子(例えば、<5nm)が大きいもの(>5nm)より好ましいことを意味する。更に、銀ナノ粒子のための支持材料の使用は、それらの分離を維持する利点を有し、更に、後のポリマー形成における銀の量を容易に調整することができる。ポリマー又はプレポリマー中の粉末の分散性は、支持材料を用いる場合に促進もされる。更に、商品生産物表面上に発生する、最も望ましくない微生物の増殖が栄養制限される場合があることが公知である。栄養素イオン(リン酸塩等)を供給するが、高活性抗菌剤(例えば、ナノ粒子状の銀)をも有する非持続性支持材料を用いると、「トロイの木馬」として機能し得る。リリースオンデマンド法は以下の通りであるとされている:無機支持材料(例えば、ポリマーコーティング又はバルク材料の表面の付近で)は微生物に取り込まれるが、銀も取り込まれる。最も傷つきやすい位置で、現在銀イオン供給権として機能する、微生物の細胞壁を横断する銀が、最も効果的である。
【0029】
本明細書に記載のナノ粒子は、有効量、すなわち、適用時に微生物の抑制を可能とする量の金属銀粒子を含む。適量は、適用方法、及び所定の実験により抑制される微生物により決定することができる。有利な実施態様において、抗菌ナノ粒子の銀含有量は0.1〜20%(w/w)、好ましくは0.5〜10%(w/w)、特に好ましくは1〜10%(w/w)である。支持材料上に蒸着した銀は金属銀として存在し、すなわち、酸化状態は+/−Oであるが、支持材料又は環境による酸化還元反応のため、一部の銀が酸化され、Ag+(酸化状態+1)になる。従って、本明細書に記載のナノ粒子は金属銀粒子を含み、場合により、更にイオン状の銀を含む。この状態は、「金属及び部分的にイオン状」なる用語により示される。
【0030】
更に有利な実施態様において、非持続性材料は塩であり、ここで、カチオンは、カルシウム、ビスマス及びマグネシウムからなる群から選択される。
【0031】
有利な実施態様において、非持続性材料はリン酸カルシウムであり、好ましくはリン酸三カルシウム(TCP)であり、特には、XRD−非晶質形態のリン酸三カルシウムである。XRD−非晶質TCPは、通常のX線粉末解析[2]により測定した場合、材料の独特な回折ピークの不在により特徴づけられる。これらの材料は、特に良好な抗菌特性を有するナノ粒子をもたらすことがわかった。
【0032】
更なる有利な実施態様において、非持続性材料はマグネシウムをドープしたTCPである。これらの材料は、特に良好な抗菌特性を有するナノ粒子をもたらすことがわかった。
【0033】
第二の態様において、本発明は、ポリマーと、本明細書に記載のナノ粒子とを含み(すなわち、含む又はそれらからなる)、前記ナノ粒子が前記ポリマー中に分散している複合材料に関する。このような、前述した複合材料(複合材料)は低コストで高活性の抗菌性複合材料であり、広い面積(塗料等)及び表面用の他のポリマーコーティングのための、ポリマー性の商品生産物等の、多くの用途において用いることができる。一般に、複合材料は、微生物による汚染が望ましくない場所で有用であると考えられる。金属銀からの銀イオンの放出の進行は遅いが、抗菌活性を発現するための特定の環境において十分であると考えられる。金属銀を用いることにより、 銀イオンの事実上終わりのない供給を可能にする。溶解度により制限された細胞毒性破裂は、その後の使用に関する環境において起こりそうもない。更に、金属銀からの銀イオンの放出は金属表面、従って、流経に強く依存すると考えられる。本発明の発明者らは、本明細書に記載の複合材料が、高効率及び長期の抗菌作用を供給することを見出した。
【0034】
ポリマー:本明細書に記載の複合材料は、更にポリマーを含む。ポリマーは、その中に抗菌ナノ粒子が、好ましくは0.02〜50%(w/w)、更に好ましくは5〜30%(w/w)、最も好ましくは10〜20%(w/w)の量で分散しているか又は埋め込まれているマトリクスとしての機能を果たす。一般に、公知又は公知の方法により得ることができる全てのポリマーは、このような複合材料を製造するために適している。ポリマーという用語には、ポリマーブレンド及び強化ポリマーも含まれる。
【0035】
本発明の有利な実施態様において、ポリマーは疎水性ポリマーである。このような疎水性ポリマーは当業者により確認することができ、好ましくは、疎水性ポリマーは25℃における、>65°の水接触角により特徴づけられる。
【0036】
本発明の有利な実施態様において、ポリマーは、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリエステル、ポリウレタン、スチレンブロックコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、アクリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、天然及び合成ゴム、アクリロニトリルゴム、並びにそれらの組み合わせ又はコポリマーからなる群から選択される。
【0037】
本発明の有利な実施態様において、ポリマーは生分解性ポリマーである。有機物質の生分解は、最初に酵素的又は非酵素的に分解工程(加水分解)により無毒の生成物(すなわち、モノマー又はオリゴマー)に進行し、更に体内から排出するか、体内で代謝される[Hayashi,T.,"Biodegradable Polymers for Biomedical Uses",Progress in Polymer Science,1994,19,633]。このような生分解性ポリマーは当業者により確認でき、好ましくは、生分解性ポリマーは、生体(分解可能インプラント中で用いられるような生分解性ポリマー)又は環境(包装用の生分解性ポリマー)中における制限された滞留時間により特徴づけられる。
【0038】
典型的な具体例には、ポリラクチド又はポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリウレタン、デンプン系ポリマー等のポリエステルが含まれる。
【0039】
本発明の有利な実施態様において、ナノ粒子は、コーティングの形態で、大部分は(すなわち>50%、好ましくは>90%)、ポリマーマトリクスの表面に分散している。表面付近におけるシルバーライトは最も高い影響を有するので、一般に、抗菌活性を有すべき材料にコーティングを適用することのみで十分である。
【0040】
本発明の有利な実施態様において、ナノ粒子はポリマーマトリクス内に均一に分散されている。バルク材料中の銀ナノ粒子は、環境に銀イオンをなお放出し、抗菌性複合材料と接触し微生物に2重攻撃をもたらす。
【0041】
更に、本発明は、第三の態様においてこのようなナノ粒子を含む物品に関する。特に、本発明は、本明細書に記載の複合材料を含む(すなわち、含む又はそれらからなる)薄片、被覆物、繊維、織物又は不織材料に関する。
【0042】
従って、本発明は、本明細書に記載の薄片を用いて包装された物品、及び本明細書に記載の被覆物でコーティングされた装置に関する。
【0043】
更に、本発明は、第四の態様においてこのようなナノ粒子の製造に関する。ここで、好ましい方法は、例えば、適切な前駆体材料の火炎溶射合成による、このような粒子の直接的製造を含む。従って、本発明は、a)i)支持材料のカチオンの可溶性前駆体、特にカルボン酸塩、ii)可溶性銀前駆体、iii)支持材料のアニオンの可溶性前駆体、iv)場合により溶媒、特に2−エチルヘキサン酸を含む可燃性溶液を調製する工程、及びb)前記溶液を火炎溶射熱分解工程に供する工程を含む、本明細書に記載のナノ材料の製造方法に関する。
【0044】
火炎溶射熱分解(FSP):FSPは、ナノ粒子の製造の分野において公知である。一般に、ナノ粒子を製造するための適切な方法は、参考として本明細書で援用されるWO2005/087660に開示されており、特に好ましくはリン酸カルシウムの製造のための実施例である。FSPの進行のため、フレームへの供給は可燃性溶媒である必要がある。すなわち、供給はi)可燃性組成物でなければならず、ii)不溶性粒子を実質的に含まない溶液でなければならない。適切な供給についての詳細は当該技術分野において公知であり、所定の実験により決定することができる。更なる詳細を以下に説明する。
【0045】
支持材料のカチオンの可溶性前駆体(カチオン前駆体):原則として、所望のカチオンを含む、任意の可溶性かつ可燃性化合物は、本明細書に記載の方法に適している。例えば、酢酸塩等の金属塩のカルボン酸塩、又は2−エチルヘキサノエートが用いられる。これらの化合物は、Ca(OH)2、Bi(OH)3、Bi23等の適切な塩基性化合物を、2−エチルヘキサン酸等の適切な酸に溶解することにより、in−situ製造することができる。
【0046】
支持材料のアニオンの可溶性前駆体(アニオン前駆体):原則として、硫黄、リン及び/又は炭素を含む、任意の可溶性かつ可燃性化合物は、本明細書に記載の方法に適している。通常、硫酸イオンを得るためにジメチルスルホキシドが用いられ、リン酸塩を得るためにトリブチルホスフェートが用いられる。炭酸イオンの製造には、溶媒又はカチオン前駆体のアニオンが適切な原料である。
【0047】
可溶性銀前駆体:原則として、任意の可溶性かつ可燃性銀化合物は、本明細書に記載の方法に適している。適切な銀塩には、銀2−エチルヘキサノエート、又は2−エチルヘキサノエート中の酢酸銀が含まれる。
【0048】
溶媒:溶媒の添加は必要でないが、好ましい。供給原料の粘度を低下させ、燃焼特性を向上させ、安定な溶液を得、又は炭酸塩の形成のための炭素源を供給するために、溶媒を加えることができる。高沸点溶媒を用いることが有利である。典型的な具体例には、2−エチルヘキサン酸、トルエン及びキシレンが含まれる。
【0049】
他の実施態様において、本発明は、前述したような、カチオン前駆体、アニオン前駆体及び/又は銀前駆体を別個の供給により、火炎溶射熱分解に供給することを含む、本明細書に記載のナノ粒子の製造方法に関する。この方法は、FSP工程前に前駆体が反応する場合、有利であると考えられる。
【0050】
製造についての更なる詳細を実施例に見出すことができる。
【0051】
更に、本発明は、本明細書に記載の方法により得られるナノ粒子に関する。
【0052】
更に、本発明は、第五の態様において本明細書に記載の抗菌性複合材料の製造方法に関する。
【0053】
一般に、製造は、ポリマー、ポリマー溶液又はポリマー前駆体中への本明細書に記載のナノ粒子の導入により実施される。無機材料上に支持される金属銀の使用(すなわち、本明細書に記載のナノ粒子の使用)は、ポリマー基材又はポリマー前駆体中への粒子材料の容易な分散を可能にする。上述のような低水分含有量の粒子は、分散性に関して可能な最良の結果を蹴るために、疎水性ポリマー又はプレポリマー中に分散させる場合に有利である。低水分含有量は、用いられるポリマー材料中で水蒸気の放出又は泡形成をもたらすポリマーの後熱処理に関しても有利である。
【0054】
一実施態様において、本発明は、i)本明細書に記載のナノ粒子を希釈剤、特にアルコールに懸濁する工程、ii)このようにして得られた懸濁液を、場合により希釈剤に溶解又は懸濁したポリマー前駆体に加える工程、iii)重合工程、及びiv)場合により溶媒/希釈剤を除去する工程を含み、工程iv)及びiii)を同時に実施してもよい、本明細書に記載の複合材料の製造方法に関する。
【0055】
更なる実施態様において、本発明は、i)本明細書に記載のナノ粒子を希釈剤、特にアルコールに懸濁する工程、ii)このようにして得られた懸濁液をポリマー溶液と混合する工程、及びiii)場合により溶媒/希釈剤を除去する工程を含む、本明細書に記載の複合材料の製造方法に関する。
【0056】
更なる実施態様において、本発明は、i)本明細書に記載のナノ粒子を希釈剤、特にアルコールに懸濁する工程、ii)このようにして得られた懸濁液をポリマーと混合する工程、及びiii)場合により溶媒を除去する工程を含み、前記希釈剤が前記ポリマーを溶解し得る、本明細書に記載の複合材料の製造方法に関する。
【0057】
更なる実施態様において、本発明は、i)本明細書に記載のナノ粒子をポリマー溶解物に溶解する工程、及びii)前記分散液を成形する工程を含む、本明細書に記載の複合材料の製造方法に関する。この工程は、押出し成形機内で有利に実施される。
【0058】
前述した、個々の工程のそれぞれ(ナノ粒子、ポリマー、ポリマー前駆体の製造、懸濁液/溶液の製造、溶媒/希釈剤の除去)は当該技術分野において公知であり、標準設備を用いて実施することができる。更に、ナノ粒子をポリマーに加えることができ、またポリマーをナノ粒子に加えることもでき、これは、「混合」なる用語により示される。従って、本明細書に記載の複合材料は、大規模であっても、製造することが容易で、都合よく利用可能である。
【0059】
ポリマー中に取り込む場合、ナノ粒子の分散は、押出し成形機又は当該技術分野において公知の他の化合物により実施することができ、次いで、チューブ、フィルム等の特定の形態の所望の物品を形成することができる。
【0060】
本発明との関連で、用語、希釈剤/溶媒は、希釈剤/溶媒の混合物にも適用されることが理解される。
【0061】
更に、本発明は、第六の態様において、このようなナノ粒子又は複合材料を含む物品の製造に関する。
【0062】
一態様において、本発明は、本明細書に記載の複合材料を押出し成形又はコーティングする工程を含む、本明細書に記載の被覆物又は薄片の製造方法に関する。
【0063】
有利な実施態様において、抗菌性銀/支持材料を含むポリマー溶液又はポリマー前駆体からのフィルム又は被覆物の製造は下記工程:
i.本明細書に記載のナノ粒子を、例えば、超音波処理又は高せん断混合により、溶媒、ポリマー溶液又はポリマー、前駆体中に分散する工程、
ii.場合によりポリマーを分散液中に加え、溶解する工程、
iii.ロール塗布、スプレー塗布、ギャップコーティング、エアナイフコーティング、浸漬(浸漬)コーティング、カーテンコーティング又はスロットダイコーティング等の従来の塗布方法を適用することにより、ポリマー性固体フィルム材料又は混合物を含む被覆物を形成する工程、
iv.例えば、熱又はUV照射によりフィルム又は被覆物を硬化する工程を含む。
【0064】
更に、本発明は、第七の態様において、このような複合材料の使用に関する。
【0065】
本明細書に記載の複合材料は、多くの用途、特に微生物による汚染又は微生物の存在が、i)望ましくない、及び/又はii)防止すべき、及び/又はiii)減少させるべき場所における用途において用いることができる。
【0066】
従って、本発明は、広い面積のコーティング(塗装等)及び表面/装置のための他のポリマーコーティングのための、ポリマー性の商品生産物における複合材料の使用に関する。
【0067】
更に、本発明は、包装材料、特に食品包装、医薬品包装、医療機器、台所及び家庭用機器の包装としての、本明細書に記載の複合材料、又は本明細書に記載の薄片の使用に関する。
【0068】
更に、本発明は、建物又は装置、特に、衛生施設、病院施設及び空調装置の被覆物の表面をコーティングするための、本明細書に記載の複合材料、又は本明細書に記載の被覆物の使用に関する。
【0069】
更に、本発明は、塗料として、又は塗料組成物の一部としての、本明細書に記載の複合材料の使用に関する。
【0070】
更に、本発明は、繊維の製造のための、記載の複合材料の使用、並びに布又はフィルター等の織物又は不織材料の製造のための、前記繊維の使用に関する。
【0071】
更に、本発明は、浄水システムにおける、本明細書に記載の、複合材料又は布又は繊維の使用に関する。
【0072】
更に、本発明は、第八の態様において、抗菌剤としての、本明細書に記載のナノ粒子の使用に関する。一般に、本明細書に記載のナノ粒子は多くの用途、特に微生物による汚染又は微生物の存在が、i)望ましくない、及び/又はii)防止すべき、及び/又はiii)減少させるべき用途において用いることができる。(微生物の抑制)
本発明のナノ粒子は、グラム陰性細菌及び酵素の類の微生物の抑制に特に有用である。
【0073】
更に、本発明は、高硫黄濃度の環境における、本明細書に記載のナノ粒子の使用に関する。高硫黄濃度は、通常、生物環境中、又はこのような環境に接触して見られる。多くの場合、高硫黄濃度は、生体からのシステイン及びシスチンアミノ酸の存在のためである。濃度は非常に異なり得るが、10ppm〜10000ppm(100万分の1質量)、好ましくは100ppm〜10000ppmの濃度が高硫黄濃度と考えられる。誤解の回避のため、硫黄濃度は、硫黄の酸化状態(例えば、+6、0、−2)又は結合様式(有機又は無機)とは無関係である。前述の「トロイの木馬効果」は、主に高硫黄濃度の環境における、本明細書に記載のナノ粒子の効果に起因する。持続性担体を有するシステムについては、金属銀よりもなお水溶性が低い、硫化銀のような銀−硫黄化合物の形成中、銀イオンは、文字通り配列される。結果として、銀濃度は、効果がないか、又は不十分な効果の濃度に低下する。
【0074】
本明細書に記載のナノ粒子は、塗料添加剤として用いることができる。
【0075】
更に、本発明は、殺菌剤としての、本明細書に記載のナノ粒子の使用に関する。従って、本発明は、洗浄剤への添加剤としての(液体中に分散した)、ナノ粒子の使用に関する。従って、ナノ粒子は、特に衛生的環境及び病院、食品生産施設における表面、並びに公共交通機関における表面の殺菌のために粉剤又は液剤で用いられる。
【0076】
更に、本発明は、ガス流の殺菌のための、本明細書に記載のナノ粒子の使用に関する。これは、前記ガス流に、粉剤として有効量のナノ粒子を吹き込むことにより達成することができる。
【0077】
更に、本発明は、食品又は医薬品の殺菌のための、本明細書に記載のナノ粒子の使用に関する。殺菌は、抗菌ナノ粒子の添加により、又はそれを食品又は医薬品の表面に塗布することにより、達成することができる。塗布は、粉末又は抗菌ナノ粒子を含む液体の形態で実施することができる。
【0078】
更に、本発明は、例えば、小売り又は保管中の物品の微生物汚染を制限又は防止するための、布の処理としての、本明細書に記載のナノ粒子の使用に関する。これは、粉剤又は液剤のいずれかの中の有効量のナノ粒子を前記物品に塗布することにより達成することができる。
【0079】
以下の詳細な説明を考慮すると、本発明はさらに理解され、前述した目的以外の目的が明らかになるであろう。そのような記述は添付図面について言及され;簡単な説明を以下に示す:
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】20〜50nmの範囲の一次粒径のTCPを示す、純粋なTCP(a)、1Ag−TCP(b)、5Ag−TCP(c)及び10Ag−TCP(d)の高解像度透過型(a)及び走査型透過電子(b、c、d)画像。Agでドープされた試料(b、c、d)は、約2〜4nmの最小直径を有する、微細分散Ag粒子(輝点)を含む。銀含有量が増加すると、約10nmのサイズの大きいAgクラスターの形成をもたらした。
【図2】X線ディスク遠心分離により測定した、流体力学的粒径分布。両試料(1Ag−TCP及び5Ag−TCP)は、15〜200nmの非常に似た対数正規サイズ分布を示す。
【図3】Ag−TCP(1Ag−TCP及び5Ag−TCP)及びAg−SiO2粉末(1Ag−SiO2及び5Ag−SiO2)についての銀粒径の相対的個数濃度。低い銀含有量(1%(w/w))については、銀流経は非常に似ているが、高い銀含有量(5%(w/w))については、TCPについて、小さい粒子への移行が観察された。銀流経は、全ての試料で、主に4nm未満にとどまっていた。
【図4】可視範囲で高透過を示す、約10μm以下の厚さを有する、種々のAg−TCP含有フィルムのUV−可視スペクトル。
【図5】支持材料1及び金属銀粒子2を示す、本明細書に記載の抗菌ナノ粒子の概略図。
【図6】ポリマー1、支持材料2及び金属銀粒子3を示す、本明細書に記載の複合材料の概略図。
【0081】
本発明の現在の好ましい実施態様を示し、開示するが、本発明はそれに限定されず、他の方法で多様に具体化され、以下の請求項の範囲内で実施されることが明白に理解される。
【0082】
実施例
1.複合材料の調製
リン酸三カルシウム銀ナノ粒子(Ag−TCP)及び銀シリカ(Ag−SiO2)を、参考として本明細書で援用される[3]に開示されたような火炎溶射熱分解により調製した。酢酸銀を2−エチルヘキサン酸(puriss.≧98%、Fluka)に溶解することにより、銀前駆体を得た。2−エチルヘキサン酸(puriss.≧99%、Fluka)に溶解した水酸化カルシウム(Riedel de Haen, Ph. Eur.)及びトリブチルホスフェート(puriss.>99%、Fluka)を、それぞれカルシウム及びリン酸塩の原料として用い[2、4]、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、>98%、Lancaster Synthesis GmbH)を、シリカ前駆体として用いた。対応する混合液体を、トルエン(puriss.p.a.,Ph.Eur.,≧99.7%、Riedel de Haen)で最終金属濃度0.75Mに希釈し、5mL/分でキャピラリー(直径0.4mm)を通してメタン/酸素フレームに供給する。キャピラリーの残った液体を分散し、約10cm高さの燃焼噴霧をもたらすために、酸素(5L/分、99.8%、Pan Gas)を用いた[2]。このように形成した粒子を、真空ポンプ(Busch Seco SV 1040 C)を用いて、フレームの上に取り付けたシリンダー上に配置されたグラスファイバーフィルター(Whatmann GF/A、25.7cm直径)上に集めた。フィルターから生成物を除去後、粒子をふるいにかけ(450μmメッシュ)、粉末1gを2−プロパノール(Ph.Eur.,Fluka)16gに分散させた。分散は、超音波小型フローセル(Dmini,Hielscher,5bar水圧、電力250W、周波数24kHz)を用いて実施した。流速は、ペリスタルティックポンプ(REGLO Digital MS−2/6、Ismatec)を用いて2mL/分に調整した。次いで、室温で混合することにより、分散液に熱可塑性シリコーンエラストマー(Geniomer200、Wacker Silicone)4gを溶解した。得られた混合物を、らせん状のドクターブレードを備えた自動フィルムアプリケータ(ZAA 2300、Zehntner Testing Instruments)を用いて36μmのPETフィルムに塗布した(50μm液状塗布)。塗布したフィルムを、大気条件で硬化し、20%(w/w)の火炎調製粉末を含む10μm厚の乾燥コーティングを得た。
【0083】
2.キャラクタリゼーション法
Ag−TCP粉末の流体力学粒径分布は、無水エタノール(Fluka)中の3%(wt/vol)粉末を用いて、X線ディスク遠心分離(BI−XDC、Brookhaven Instruments)により測定した[1、5]。解析前に、粉末を、200Wで5分間、超音波(UP400S、24 kHz、Hielscher GmbH)により分散させた。銀含有量を測定するため、粉末を濃硝酸中で消化し、空気(13.5L/分、PanGas)/アセチレン(2.1L/分、PanGas)フレームを使用するVarian SpectrAA 220FS(0.5mm幅のスリット、ランプ電流4.0mA)によりフレーム原子吸光分析(AAS)により解析し、328.1nmの波長で吸収を測定した。高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像をCM30 ST(Philips、LaB6陰極、30kVにて走査、点分解能>2Å)に記録した。粒子を、銅グリッド上に支持される炭素薄膜上に蒸着させた。走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像は、高角度散乱暗視野(HAADF)検出器(Zコントラスト)を用いて得た。抗菌活性は、ASTM標準E2180−01及びE2149−01(ASTM:米国材料試験協会)に従い、25℃の温度で測定した。1ミリリットルあたりのコロニー形成単位(CFU/mL)の減少についての全ての値は、粉末試料及びフィルム試料のための参考フィルム(Geniomer200)を参照し、「細菌のみ」を基準としている。更に、対応する参考との比較は、所定の接触時間において測定する。
【0084】
3.ナノ粒子の特徴
フレーム合成は、ナノ粒子状酸化物及び金属塩材料の製造のための最も万能な手段として公知である。純粋なリン酸三カルシウム(TCP、図1a)は明らかな電子密度勾配を示さないが、全ての銀をドープしたTCP試料(図1b、c、d)は小さい銀ナノ粒子を含んでいる(輝点)。非常に高密度だが、銀が高度に分散した範囲が、5Ag−TCPについて観察された(図1c)。銀(試料10Ag−TCP)を10%(w/w)Agまで増加させると、>10nmのサイズを有する、相対的に大きいAgクラスターの形成をもたらした(図1d)。20〜50nmの範囲のTCPの一次粒径は、系内への銀の導入により影響されないと考えられる。この電子顕微鏡による観察は、純粋なTCP及び銀含有TCP(10Ag−TCPに対する1Ag−TCP)についての71.6m2/g〜78.0m2/gの比表面積と一致している。試料1Ag−TCPと5Ag−TCPとの流体力学的直径の比較(図2)は、更に形態において類似であると確認する。両試料は、火炎調製粉末について通常観察される対数正規分布と類似の、15〜200nmの範囲の粒径を有している。銀シリカ試料(1Ag−SiO2及び5Ag−SiO2)は非常に類似の形態を示すが、担体、シリカの一次粒径は、TCPと比較し、高融点に起因し得る低い値(すなわち、比表面積SSAは約300m2/gより大幅に高い)となる傾向がある。原子吸光分析法は、銀含有量に関して、フレーム法の耐性を裏付けた。下記表を参照されたい。
【0085】
【表1】

【0086】
a誤差 ±10%
b比表面積、誤差 ±3%。これは窒素吸着能力であり、全ての材料(支持材料及び銀)を含むことに注意
c以下の特徴部分における非常に異なるAg粒径に注意
【0087】
4.複合材料の特徴
一般に、包装材料又は被覆物のための透明度は市場定義要因であり、種々のAg−TCPフィルムのUV−Visスペクトルを記録した(図4)。1Ag−TCP及び5Ag−TCPは、350nm超の波長において>50%の高い透明度を示した。一般に、銀含有量の増加により、透過率は低下する。次第に、茶色がかった着色が目により光学的に、またUV−Vis測定によっても観察されるようになる。これは、7.5Ag−TCP及び10Ag−TCPを用いたフィルムについて約440nmの明らかなピークの発生により表わされる。
【0088】
5.抗菌ナノ粒子の抗菌試験
最初の抗菌試験において、純粋な粒子(TCP及び5Ag−TCP)の活性を、E.coli C43(作業細菌濃度、1×105CFU/mL)との2時間の接触時間を用いたASTM E2149−01により調べた(第1表)。粉末5mgを、作業細菌緩衝溶液8mLに浸漬した。銀含有試料5Ag−TCPは、材料に対するたったの2時間の暴露後にほぼ4倍の強い対数減少を示した。純粋なTCPは、E.coliの増殖にわずかな影響のみ有し、参考と比較し、1/2のCFU/mLが得られた。
【0089】
6.複合材料の抗菌試験
粉末に対するのと同じ試験を、20%(w/w)の粉末を含むフィルムのセットを用い、26時間の接触時間を適用して実施した(第2表)。6cm2の面積のフィルム(20%(w/w)の粉末の装填に対し、約15mg以下の粉末に対応する)を、8mLの作業細菌溶液に浸漬した(1×106CFU/mL)。5Ag−TCP粉末を含有するフィルムは、フィルム材料に対して非常に高い6倍の対数減少を示した。
【0090】
【表2】

【0091】
実験の第三のセットにおいて、ASTM E2149−01(動的接触試験)及びE2180−01(疎水性材料についての静止試験、第3表)の両方の試験方法を用いて、種々の被覆物の、E.coli(アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC) No.8739)に対する効果を試験した。ASTM E2149−01について、短期間及び長期間の効果に関しては、2時間及び24時間の2種の接触時間を選択した。TCP粉末のみを含むフィルムは、両方の時間において細菌濃度において変化を示さなかった。およそわずかな減少。しかし、5Ag−TCP含有フィルムは、24時間後にほぼ6倍の対数減少を示したが、2時間の接触時間において減少は有意に変化しなかった。理論に束縛されないが、メカニズムは瞬間的でないが、むしろ、参考のフィルムについてCFU/mLの3倍の対数増加が24時間の実験において観察されたことを留意し、徐々に着実な細菌の破壊によって進行する。それ故、抗菌フィルムは、初期の細菌と格闘するのみでなく、細菌の増殖中、有効である。静止接触試験ASTM E2180−01について、TCP含有フィルム試料についての細菌濃度は、参考と比較し、10倍に上昇した。また、5Ag−TCPのフィルムへの添加は、最も効果的な5倍の対数減少を引き起こした。
【0092】
【表3】

【0093】
7.他の微生物に対する複合材料の試験
材料の性能を、更に、ASTM E2180−01に従い、種々の通常存在する微生物について24時間調べた。5Ag−TCP含有フィルムは、P.aeruginosa及びC.albicans、それぞれについて、桁外れの6〜7倍の対数減少及び4倍の対数減少を伴う、強力な影響を示した。両微生物は、TCPフィルムとの接触においては、影響はなかった(P.aeruginosaについて4%増加及びC.albicanについて18%の減少)。また、活性で致命的な薬剤としての銀の役割が確認された。今日まで、高い抗菌活性(3〜7倍の対数減少)が、5Ag−TCP含有フィルムについて、特にグラム陰性細菌(E.coli.,P.aeruginosa)及び酵母様真菌(C.alicans)に対して観察された。グラム陽性のS.aureus及びA.nigerの胞子形態のような、より強固な防御メカニズムを有する微生物は、影響がかなり少なかった。
【0094】
【表4】

【0095】
8.支持材料の機能としての活性
種々のAg−TCP及びAg−SiO2試料を含むフィルム材料についての更なる調査を、ASTM E2180−01により実施した。E.coli(ATCC 8739)を用い、1〜10%(w/w)の銀をドープしたTCP、並びに1及び5%(w/w)のシリカ粉末を含むフィルムにより試験を実施した(第5表)。全ての銀−TCPフィルムは、4〜6倍の対数減少をもたらす著しい活性を示した。1%(w/w)超のAgの装填のため、減少は、ほぼ10,000倍(5Ag−TCP、10Ag−TCP)〜ほぼ100,000倍(2Ag−TCP、3Ag−TCP、7.5Ag−TCP)の範囲である。銀を多量に装填したシリカ(5Ag−SiO2)は、E.coliを10,000倍減少させた(4倍の対数減少)。1Ag−SiO2フィルムでは、たった約10倍の減少が観察された。1質量%の銀を有するTCPが、細菌の4倍超の対数減少をもたらすので、これは、TCPが、銀ナノ粒子の支持材料としてシリカよりも優れていることを明らかに示す。
【0096】
【表5】

【0097】
参考文献

【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非持続性支持材料、及び前記支持材料の表面上の金属銀粒子を含むナノ粒子であって、
a.前記ナノ粒子の少なくとも95%(w/w)が<500nmの流体力学的直径を有し、
b.前記ナノ粒子が<5%(w/w)の水分含有量を有し、
c.前記支持材料が塩であり、アニオンが、リン酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン又はそれらの混合物を含むか、それらからなる群から選択され、
d.前記金属銀粒子の少なくとも95%(n/n)が<10nmの直径を有する、ナノ粒子。
【請求項2】
銀含有量が少なくとも0.1%(w/w)、好ましくは少なくとも0.5%(w/w)、最も好ましくは少なくとも1%(w/w)である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記支持材料が塩であり、カチオンが、カルシウム、ビスマス、マグネシウム及びそれらの組み合わせ又は混合物を含むか、それらからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記支持材料が、リン酸カルシウム、特にリン酸三カルシウム及びマグネシウムをドープしたリン酸三カルシウムからなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記支持材料がXRD−非晶質リン酸三カルシウムである、請求項1から4までのいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
ポリマーと、前記ポリマー中に分散した、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子とを含む複合材料。
【請求項7】
前記ポリマーが、25℃において、>65°の水接触角を有する、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記ポリマーが、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ−テトラフルオロエチレン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリエステル、ポリウレタン、スチレンブロックコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、アクリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、天然及び合成ゴム、アクリロニトリルゴム、並びにそれらの組み合わせ又はコポリマーからなる群から選択される、請求項6又は7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記ポリマーが生分解性である、請求項6から8までのいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
請求項6から9までのいずれか1項に記載の複合材料、又は請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子を含む物品、特に、薄片、被覆物、繊維、織物又は不織材料。
【請求項11】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法において、
下記工程:
a.以下のi〜ivを含む可燃性溶液を調製する工程:
i.支持材料のカチオンの可溶性前駆体、
ii.可溶性銀前駆体、
iii.支持材料のアニオンの可溶性前駆体、
iv.場合により溶媒、
b.前記溶液を火炎溶射熱分解工程に供する工程
を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項6から9までのいずれか1項に記載の複合材料の製造方法において、
下記工程:
a.請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子を希釈剤に懸濁する工程、
b.得られた懸濁液を、場合により希釈剤に溶解又は懸濁したポリマー前駆体と混合する工程、
c.重合工程、及び
d.場合により希釈剤を除去する工程、
若しくは
a.請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子を希釈剤に懸濁する工程、
b.得られた懸濁液を、溶媒に溶解したポリマーと混合する工程、
c.場合により希釈剤/溶媒を除去する工程、
若しくは
a.請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子を希釈剤に懸濁する工程、
b.得られた懸濁液をポリマーと混合する工程、
c.場合により前記希釈剤を除去する工程(ここで、前記希釈剤は前記ポリマーを溶解することができる)、
若しくは
a.請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子を、ポリマー溶解物に、好ましくは押出し成形により懸濁する工程、
b.前記分散液を成形する工程
を含む、請求項6から9までのいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項13】
請求項6から9までのいずれか1項に記載の複合材料を押出し成形又はコーティングする工程を含む、請求項11に記載の被覆物又は薄片の製造方法。
【請求項14】
包装材料、特に食品包装、医薬品包装、医療機器、台所及び家庭用機器の包装としての、請求項6から9までのいずれか1項に記載の複合材料、又は請求項14に記載の薄片の使用。
【請求項15】
衛生施設、病院施設及び空調装置のコーティングのための、請求項6から9までのいずれか1項に記載の複合材料、又は請求項10に記載の被覆物の使用。
【請求項16】
浄水装置における、請求項6から9までのいずれか1項に記載の複合材料、若しくは請求項10に記載の布又は繊維の使用。
【請求項17】
特に、高硫黄濃度の環境における抗菌成分としての、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項18】
塗料添加剤としての、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項19】
特に、衛生的環境及び病院、食品生産施設及び公共交通機関における表面の洗浄のための洗浄添加剤としての、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項20】
特に、ガス流へ粉末として前記ナノ粒子を吹き込むことによる、前記ガス流の殺菌のための、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項21】
特に、食品又は医薬品の表面への、前記ナノ粒子の添加、又は前記ナノ粒子の塗布による、前記食品及び医薬品の殺菌のための、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項22】
布の仕上又は布の処理のための、請求項1から5までのいずれか1項に記載のナノ粒子の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−523344(P2010−523344A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501344(P2010−501344)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000170
【国際公開番号】WO2008/122131
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509277132)パーレン コンヴァーティング アクチェンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Perlen Converting AG
【住所又は居所原語表記】CH−6035 Perlen, Switzerland
【出願人】(500466913)
【氏名又は名称原語表記】Eidgenoessische Technische Hochschule Zuerich
【住所又は居所原語表記】Raemistrasse 101, CH−8092 Zuerich, Switzerland
【Fターム(参考)】