説明

抗菌性水溶液

【課題】
ホタテ貝殻粉体水溶液の抗菌効果を十分に発揮させることができる抗菌性水溶液を提供すること。
【解決手段】
ホタテ貝殻1を焼成して粉砕した粉体2が投入された水溶液を、炭4に接触させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性水溶液に関し、特にホタテ貝殻水溶液の抗菌効果を十分に発揮させることができる抗菌性水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝殻はCaCOを主成分としているが、このホタテ貝殻を焼成し粉砕した粉体からなるホタテ貝殻セラミックを水に溶いたホタテ貝殻粉体水溶液はCa(OH)を主成分としていて、このCa(OH)を主成分とするこのホタテ貝殻粉体水溶液には強い抗菌効果があることが、従来知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−120013号公報
【0004】
しかしながら、ホタテ貝殻を焼成し粉砕した粉体には腐敗臭の原因となる有機物質が残存し、この有機物質によりホタテ貝殻粉体水溶液中には菌が発生しやすくなっている。そのため、ホタテ貝殻粉体水溶液の抗菌効果は、その有機物質が原因の菌を除去するのに用いられるため、ホタテ貝殻粉体水溶液の抗菌効果を十分に発揮させることができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ホタテ貝殻粉体水溶液の抗菌効果を十分に発揮させることができる抗菌性水溶液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の抗菌性水溶液は、ホタテ貝殻を焼成して粉砕した粉体が投入された水溶液を、炭に接触させて得られることを特徴としている。
この特徴によれば、ホタテ貝殻を焼成して粉砕した粉体に残存している有機物質が炭に吸着されるため、ホタテ貝殻粉体水溶液中に有機物質が残存することなくその有機物質が原因の菌が発生しないので、ホタテ貝殻粉体水溶液の抗菌効果を十分に発揮させることができる。さらに、ホタテ貝殻を焼成して粉砕した粉体に残存している有機物質が炭に吸着されるため、ホタテ貝殻粉体水溶液の消臭効果が高まることが確認できた。
【0007】
前記炭は、透過性紙製袋に封入され前記粉体が投入された水溶液中に所定時間浸されていることが好ましい。
この特徴によれば、水溶液中に残存しているホタテ貝殻を焼成して粉砕した粉体に残存している有機物質は、所定時間透過性紙製袋を透過して炭に吸着されるため、ホタテ貝殻粉体水溶液中に有機物質が残存することなくその有機物質が原因の菌が発生しないので、ホタテ貝殻粉体水溶液の抗菌効果をより十分に発揮させることができる。
【0008】
前記粉体は、前記ホタテ貝殻を約800℃で2時間程度加熱焼成が行われ、粒径約200μmに粉砕されたものであることが好ましい。
この特徴によれば、ホタテ貝殻を約800℃で3時間以上加熱焼成が行われると、ホタテ貝殻粉体に残存する有機物質も消滅しホタテ貝殻粉体水溶液中に菌が発生することがなくなる一方、ホタテ貝殻粉体の機能物質の抗菌効果も損なわれてしまうこととなるが、ホタテ貝殻を約800℃で2時間程度加熱焼成が行われると、前記有機物質が残存するものの、ホタテ貝殻粉体の機能物質の抗菌効果が損なわれることはない。
【0009】
前記炭は、ペーパー類が酸素を絶った状態において650〜800℃で炭化されたペーパー炭であることが好ましい。
この特徴によれば、ペーパー炭は多くの微細気孔を有し、平均比表面積が200m/g以上と極めて高い値を示すので、ホタテ貝殻粉体に残存する有機物質の吸着を短時間で効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の抗菌性水溶液に用いられるホタテ貝殻、ホタテ貝殻粉体及びペーパー類としての新聞紙、ペーパー炭の概略図である。
【図2】本発明の透過性紙製袋にペーパー炭を封入する図である。
【図3】本発明の抗菌性水溶液の生成方法に関する概略図である。
【図4】本発明の第1実施例の抗菌性水溶液(検体1)、本発明の第2実施例の抗菌性水溶液(検体2)、ホタテ貝殻粉体水溶液(対照1)、ペーパー炭水溶液(対照2)、及び竹炭水溶液(対照3)の大腸菌の生菌率の状態を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例の抗菌性水溶液(検体1)、本発明の第2実施例の抗菌性水溶液(検体2)、ホタテ貝殻粉体水溶液(対照1)、ペーパー炭水溶液(対照2)、及び竹炭水溶液(対照3)のサルモレラ菌の生菌率の状態を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例の抗菌性水溶液(検体1)、本発明の第2実施例の抗菌性水溶液(検体2)、ホタテ貝殻粉体水溶液(対照1)、ペーパー炭水溶液(対照2)、及び竹炭水溶液(対照3)の黄色ブドウ球菌の生菌率の状態を示す図である。
【図7】本発明の第1実施例の抗菌性水溶液(検体1)、本発明の第2実施例の抗菌性水溶液(検体2)、ホタテ貝殻粉体水溶液(対照1)、ペーパー炭水溶液(対照2)、及び竹炭水溶液(対照3)のイソ吉草酸の消臭効果試験結果を示す図である。
【図8】本発明の第1実施例の抗菌性水溶液(検体1)、本発明の第2実施例の抗菌性水溶液(検体2)、ホタテ貝殻粉体水溶液(対照1)、ペーパー炭水溶液(対照2)、及び竹炭水溶液(対照3)の酢酸の消臭効果試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る抗菌性水溶液及びその生成方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【0012】
(第1実施例)
図1(a)に示すように、ホタテ貝殻1は、焼成装置(図示せず)により約800℃で2時間程度加熱焼成が行われ、既存の粉砕装置により粒径約200μmに粉砕され、ホタテ貝殻粉体2となる。ホタテ貝殻1を約800℃で3時間以上加熱焼成が行われると、ホタテ貝殻粉体2に残存する有機物質も消滅しホタテ貝殻粉体水溶液中に菌が発生することがなくなる一方、ホタテ貝殻粉体2の機能物質の抗菌効果も損なわれてしまうこととなるが、ホタテ貝殻1を約800℃で2時間程度加熱焼成が行われると、前記有機物質が残存するものの、ホタテ貝殻粉体2の機能物質の抗菌効果が損なわれることはなくなるのである。また図1(b)に示すように、ペーパー類としての新聞紙3は、炭化装置(図示せず)の炭化室に入れられ、炭化室内に燃焼室から高温の燃焼ガスを導入して、酸素を絶った状態の炭化室内を650〜800℃に加熱することにより炭化されてペーパー炭4が生成される。これによりペーパー炭4は、多くの微細気孔を有するうえに、その微細気孔を含め全体にタール分が残留せず、純粋な炭素構造を有することとなる。その結果、ペーパー炭4は、平均比表面積が200m/g以上と極めて高い値を示し、優れた吸着性能を発揮することができる。炭化温度を650〜800℃とする理由は、650℃未満では、得られる炭化物にタール分が残留して、純粋な炭素構造が得られず、従って平均比表面積も200m/g未満と低くなるからである。また、800℃を超える高温にすることはコストの上昇を招き経済的に不利である。
【0013】
図2に示すように、透過性紙製袋5は平面視矩形状を成しており、この袋5には前記ペーパー炭4が入れられ、その開口は適宜手段により封止される。透過性紙製袋5は、木材パルプ及び非木材パルプが配合されて抄紙される原紙から構成されており、透過性紙製袋5の内面6は、クレープ加工によって皺状に形成され、内面6の表面積が増大されている。したがって、後記するようにペーパー炭4を封入した透過性紙製袋5を水槽7内の水8に浸すと、ペーパー炭4の黒ずみは内面6に効率的に吸着され、水槽7内の水8が黒ずむことはない。
【0014】
次に本発明の抗菌性消臭剤水溶液の生成方法について説明する。まず、透過性紙製袋5にペーパー炭4を入れて開口を封止する。次に、ペーパー炭4を封入した透過性紙製袋5とホタテ貝殻粉体2とを水8が入った水槽7内に入れて6時間以上浸す。その際、ホタテ貝殻粉体2の腐敗臭の原因となる有機物質は透過性紙製袋5を透過して透過性紙製袋5に封入されたペーパー炭4に吸着される。したがって、水溶液中に有機物質が残存することなくその有機物質が原因の菌が発生しないので、ホタテ貝殻粉体2の機能物質の抗菌効果を十分に発揮させることができる。そしてその水溶液を30分程イオン発生装置(図示せず)にかけて、その後ろ過装置(図示せず)によりろ過することにより、本発明の抗菌性溶液が生成される。
【0015】
(第2実施例)
第1実施例では、透過性紙製袋5にはペーパー炭4を封入したが、第2実施例では透過性紙製袋5に竹炭(図示せず)を封入した。本発明の抗菌性水溶液の生成方法については第1実施例と同じである。
【0016】
次に、本発明の抗菌性水溶液が十分な抗菌効果を発揮することを実験で確認を行った。
【0017】
そこで、まず、透過性紙製袋5にペーパー炭4を封入した本発明の第1実施例の抗菌性水溶液(検体1)、及び透過性紙製袋5に竹炭を封入した本発明の第2実施例の抗菌性水溶液(検体2)の抗菌効果をホタテ貝殻粉体2水溶液(対照1)、ペーパー炭4水溶液(対照2)、及び竹炭水溶液(対照3)と比較して抗菌効果の確認を行った。試験概要は以下のとおりである。
1.検体
本発明の第1実施例の抗菌性水溶液(検体1)
本発明の第2実施例の抗菌性水溶液(検体2)
2.対照
ホタテ貝殻粉体2水溶液(対照1)
ペーパー炭4水溶液(対照2)
竹炭水溶液(対照3)
3.試験目的
検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3について下記の共試菌を用いて抗菌効果を試験する。共試菌名称及び保存番号を[表1]に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
4.試験方法
共試菌培養液に検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3をそれぞれ加えて保温培養し、0〜10分まで経時的に試験液を取り出し寒天平板培地に塗布、約24時間培養後コロニー係数より生菌率を求めた。培地はLB寒天平板培地を使用。保温温度は37℃である。
5.試験結果
検体1の大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌の生菌率を[表2]に、検体2の大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌の生菌率を[表3]に、対照1の大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌の生菌率を[表4]に、対照2の大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌の生菌率を[表5]に、対照3の大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌の生菌率を[表6]に、それぞれ示す。そして、検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3の大腸菌の生菌率を示すグラフを[図4]に、検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3のサルモネラ菌の生菌率を示すグラフを[図5]に、及び検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3の黄色ブドウ球菌の生菌率を示すグラフを[図6]に、それぞれ示す。
【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
【表5】

【0024】
【表6】

【0025】
大腸菌の生菌率に関しては[表2]〜[表5]、及び[図4]に示すように、検体1では試験開始直後(0分)で生菌率は36%になり、1分で生菌率は0.4%に、5分で生菌率は10−3%以下に、10分で生菌率は10−4%以下になった。また、検体2では試験開始直後(0分)で生菌率は45%になり、1分で生菌率は5%に、5分、10分で生菌率は2%になった。一方、対照1では試験開始直後(0分)で生菌率は50%になり、1分で生菌率は10%に、5分、10分で生菌率は5%になった。また対照2及び対照3では生菌率は100%のままである。これにより、検体1及び検体2とも対照1より大腸菌の生菌率は低い値を示すことが確認できた。これは、ホタテ貝殻粉体2の抗菌効果を阻害している有機物質がペーパー炭または竹炭に吸着されるため、ホタテ貝殻粉体2の抗菌効果が十分発揮できたものによるものである。また検体1の方が検体2より大腸菌の生菌率に関して低い値を示すのは、ホタテ貝殻粉体2の有機物質の吸着能力が竹炭よりペーパー炭4の方が高いためである。また、対照2及び対照3では抗菌効果は全く得られなかった。
【0026】
サルモネラ菌の生菌率に関しては[表2]〜[表5]、及び[図5]に示すように、検体1では試験開始直後(0分)で生菌率は22%になり、1分で生菌率は10‐2%以下に、5分、10分で生菌率は10−4%以下になった。また、検体2では試験開始直後(0分)で生菌率は30%になり、1分で生菌率は2%に、5分、10分で生菌率は1%になった。一方、対照1では試験開始直後(0分)で生菌率は40%になり、1分で生菌率は8%に、5分、10分で生菌率は6%になった。また対照2及び対照3では生菌率は100%のままである。これにより、検体1及び検体2とも対照1よりサルモネラ菌の生菌率は低い値を示すことが確認できた。これは、前述した如く、ホタテ貝殻粉体2の抗菌効果を阻害している有機物質がペーパー炭4または竹炭に吸着されるため、ホタテ貝殻粉体2の抗菌効果が十分発揮できたものによるものである。また検体1の方が検体2よりサルモネラ菌の生菌率に関して低い値を示すのも、前述した如く、ホタテ貝殻粉体2の有機物質の吸着能力が竹炭よりペーパー炭4の方が高いためである。また、対照2及び対照3では抗菌効果は全く得られなかった。
【0027】
黄色ブドウ球菌に関しては[表2]〜[表5]、及び[図6]に示すように、検体1では試験開始直後(0分)で生菌率は62%になり、1分で生菌率は0.6%に、5分、10分で生菌率は10−4%以下になった。また検体2では試験開始直後(0分)で生菌率は70%になり、1分で生菌率は5%に、5分、10分で生菌率は3%になった。一方、対照1では試験開始直後(0分)で生菌率は75%になり、1分で生菌率は15%に、5分、10分で生菌率は12%になった。また対照2及び対照3では生菌率は100%のままである。検体1及び検体2とも対照1より黄色ブドウ球菌の生菌率は低い値を示すことが確認できた。これは、前述した如く、ホタテ貝殻粉体2の抗菌作用を阻害している腐敗臭の原因となる有機物がペーパー炭4または竹炭に吸着されるため、ホタテ貝殻粉体2の抗菌効果が十分発揮できたものによるものである。また検体1の方が検体2より黄色ブドウ球菌の生菌率に関して低い値を示すのも、前述した如く、ホタテ貝殻粉体2の有機物質の吸着能力が竹炭よりペーパー炭4の方が高いためである。また、対照2及び対照3では抗菌効果は全く得られなかった。
【0028】
また、本発明の抗菌性水溶液は、消臭効果が高まることも確認できた。次に、検体1及び検体2の消臭効果を対照1、対照2、及び対照3と比較して消臭効果の確認を行った。
1.試験概要
検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3についてイソ吉草酸のガス除去効果及び酢酸のガス除去効果をガス検知管法により試験して、検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3の消臭効果の確認を行った。
2.試験方法
1)試薬及び器具
・におい袋(25cm×40cm)[有限会社 ミヤコビニル加工所]
・イソ吉草酸:イソ吉草酸(特級)[東京化成工業株式会社]から発生させたガスを用いた。
・酢酸:酢酸(特級)[小宗化学薬品株式会社]から発生させたガスを用いた。
・ガス検知管[株式会社 ガステック]
2)操作
検体1、検体2、対照1、対照2、及び対照3をそれぞれにおい袋に入れ、ヒートシールを施した後、空気3Lを封入し、設定したガス濃度となるような試験対象ガスを添加した。これを静置し、経過時間ごとに袋内のガス濃度をガス検知管を用いて測定した。試験条件を[表7]に示す。
【0029】
【表7】

【0030】
3.試験結果
イソ吉草酸の消臭効果試験結果を[表8]及び[図7]に、酢酸の消臭効果試験結果を[表9]及び[図8]に示す。
【0031】
【表8】

【0032】
【表9】

【0033】
イソ吉草酸の消臭効果試験結果に関しては[表8]及び[図7]に示すように、初期濃度15ppmのものが対照1であるホタテ貝殻粉末2水溶液では2分後に14.1ppmに、4分後には14.2ppmに、6分後、8分後、10分後には14.5ppmになることが確認できた。対照1で経過時間とともにガス濃度が上昇しているが、これはホタテ貝殻粉体2の有機物質により腐敗臭を出していることが原因である。また、対照2であるペーパー炭4水溶液では2分後に13.1ppmに、4分後に12.5ppmに、6分後に12.0ppmに、8分後に11.0ppmに、10分後に10.2ppmになり、わずかながら消臭効果が得られる。同様に対照3である竹炭水溶液では2分後に13.5ppmに、4分後に13.1ppmに、6分後に12.6ppmに、8分後に12.0ppmに、10分後に11.4ppmになり、わずかながら消臭効果が得られる。これはペーパー炭及び竹炭が有する消臭効果によるものである。また、対照2の方が対照3より消臭効果が優れているのは、ペーパー炭4の方が竹炭より吸着能力が高いためである。これに対し、初期濃度15ppmのものが検体1では2分後に2.7ppmに、4分後に1.2ppmに、6分後に1.0ppmに、8分後、10分後には1.0ppm以下になることが確認できた。また、検体2では2分後に7.5ppmに、4分後に5.0ppmに、6分後に4.5ppmに、8分後に3.5ppm、10分後には3.0ppmになることが確認できた。これにより、ホタテ貝殻粉体2の機能物質にも消臭効果を有することが確認できた。また検体1の方が検体2より消臭効果が高いのは、ホタテ貝殻粉体2の有機物質の吸着能力が竹炭よりペーパー炭4の方が高いためである。
【0034】
酢酸の消臭効果試験結果に関しては[表9]及び[図8]に示すように、初期濃度50ppmのものが対照1であるホタテ貝殻粉体2水溶液では2分後、4分後に45ppmに、6分後、8分後に46ppmに、10分後に47ppmに、15分後に46ppmに、20分後に47ppmに、25分後、30分後に48ppmになることが確認できた。対照1で経過時間とともにガス濃度が上昇しているが、これはホタテ貝殻粉体2の有機物質により腐敗臭を出していることが原因である。また対照2であるペーパー炭4水溶液では2分後に48ppmに、4分後に47ppmに、6分後に42ppmに、8分後に38ppmに、10分後に36ppmに、15分後に35ppmに、20分後に31ppmに、25分後に26ppmに、30分後に24ppmになり、わずかながら消臭効果が得られる。同様に対照3である竹炭水溶液では2分後に48ppmに、4分後に48ppmに、6分後に45ppmに、8分後に42ppmに、10分後に40ppmに、15分後に39ppmに、20分後に36ppmに、25分後に32ppmに、30分後に30ppmになり、わずかながら消臭効果が得られる。これはペーパー炭及び竹炭が有する消臭効果によるものである。また、対照2の方が対照3より消臭効果が優れているのは、前述した如く、ペーパー炭4の方が竹炭より吸着能力が高いためである。これに対し、検体1では2分後に10ppmに、4分後に7ppmに、6分後に5ppmに、8分後に3ppmに、10分後には2ppmに、15分後、20分後に1ppmに、25分後、30分後に1ppm以下となることが確認できた。また、検体2では2分後に22ppmに、4分後に15ppmに、6分後に13ppmに、8分後に10ppm、10分後には9ppmに、15分後に7ppmに、20分後に5ppmに、25分後、30分後に4ppmになることが確認できた。これにより、前述したように、ホタテ貝殻粉体2の機能物質にも消臭効果を有することが確認できた。また検体1の方が検体2より消臭効果が高いのは、ホタテ貝殻粉体2の有機物質の吸着能力が竹炭よりペーパー炭4の方が高いためである。
【0035】
消臭効果の確認として、イソ吉草酸及び酢酸から発生するガスを用いた理由は、イソ吉草酸から発生するガスは足の水虫の臭いに似ており、酢酸から発生するガスは脇毛からの汗の臭いに似ている等の理由によるものである。
【0036】
このように、本発明の抗菌性水溶液は、ホタテ貝殻粉体2からの腐敗臭の原因となる有機物質をペーパー炭または竹炭に吸着して、ホタテ貝殻粉体2が有する抗菌効果と消臭効果を十分に発揮させることが出来るものである。
【0037】
本発明の抗菌性水溶液の用途としては、該水溶液を衣料、寝具などに付着させることにより、抗菌効果、消臭効果を持つ商品を得ることができる。例えば、本発明の抗菌性水溶液にマスクを3時間程浸す。その後水洗いをして脱水し、乾燥させることにより、洗っても抗菌効果、消臭効果を持つマスクが得られる。その際、本発明の抗菌性水溶液では、炭の黒ずみ成分は透過性紙製袋の内面に吸着され、本発明の抗菌性水溶液は透明なものであるため、マスクは黒ずむことがなく白色を維持したままであるので、マスクの商品価値が下がることはない。
【0038】
この他に本発明の抗菌性水溶液を付着して、抗菌効果、消臭効果を持たせる製品としては、衣料では下着、靴下、パンツ、パジャマ、スポーツウエア、作業着、トレーナー、ワイシャツなど、スポーツ,介護製品ではサポーター、腰ベルト、リフトバンド、水着、ユニフォームなど、寝具ではシーツ、カバー、クッション、布団(綿、布地に付着)など、家具ではイス(クッションや布地に付着)、ベッド(クッションや布地に付着)、車、電車のソファーなどが挙げられる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0040】
例えば、前記実施形態では、ペーパー類として新聞紙を用いたが、これに限定されるものではなく、ダンボール紙、雑誌、オフィスペーパー、カタログ、チラシなどを用いても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 ホタテ貝殻
2 ホタテ貝殻粉体
3 ペーパー類(新聞紙)
4 ペーパー炭
5 透過性紙製袋
6 透過性紙製袋5の内面
7 水槽
8 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホタテ貝殻を焼成して粉砕した粉体が投入された水溶液を、炭に接触させて得られることを特徴とする抗菌性水溶液。
【請求項2】
前記炭は、透過性紙製袋に封入され前記粉体が投入された水溶液中に所定時間浸されていることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性水溶液。
【請求項3】
前記粉体は、前記ホタテ貝殻を約800℃で2時間程度加熱焼成が行われ、粒径約200μmに粉砕されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性消臭剤水溶液。
【請求項4】
前記炭は、ペーパー類が酸素を絶った状態において650〜800℃で炭化されたペーパー炭であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌性消臭剤水溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231031(P2011−231031A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101173(P2010−101173)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(510116897)
【Fターム(参考)】