説明

抗菌性物質の標的および阻害剤の並列同定

本発明は、抗菌作用を有する化合物ならびにその化合物の標的遺伝子を並列同定する方法に関する。このアプローチは、ターゲットバリデーション/創薬を組み合わせること、抗菌剤の機構解明(単数または複数)、既存の剤と同じ作用機序を有する新しい抗菌性ファルマコフォアの発見を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年2月11日出願の米国仮特許出願第60/652,055号に対する優先権の利益を主張し、この教示をその全体において、参照として本明細書中に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、細菌の生存能力にとって重要な遺伝子、およびそれら遺伝子の生成物の阻害剤の同定に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の概要
過去20年の間、完全に配列された細菌ゲノムの数は著しく増加した。細菌ゲノムが2000以上の遺伝子を含むことが明らかにされたが、現在の抗生物質はそれらのごく一握りのみを標的としている。ゲノムデータの収集は、細胞の分子構造に新しい見識を提供し、細胞生存能力を支える基本的な遺伝因子および代謝因子を明らかにした。近年、全ての既知のゲノム配列から予測されたオープン・リーディング・フレーム(ORF)が、オーソロググループのクラスタ(COG)に整理された。COGアプローチの機能性ORFのBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)サーチとの組合せは、創薬において強力なツールとなった。抗生物質に対する抵抗に関する近年の問題を考慮して、新薬の開発につながるような標的の数を増やすことが必要である。
【0004】
抗生物質の標的には、3つの主要な特徴が必要である:第1に、それらは生存能力に必須であるか、または細胞感染に必要でなければならない。第2に、細菌性の標的は、その哺乳類の対照物から著しく異なる必要がある。第3に、それは病原株に存在しなければならない。この情報の実用化は、代謝活性をその必須の遺伝子標的(単数または複数)とリンクさせる能力である。標的が同定されると、細胞生存を観察することによって、その総合的な重要性を評価することができる。
【0005】
ゲノムデータは入手可能である。問題は、入手可能な情報の莫大な量にあり、即座に使用することを困難にする。より多くの生物が配列されるにしたがって、この問題は拡大する。解決されるべき主な問題は、新薬を作るために必要な必須遺伝子をどのように見つけるか、またその標的の阻害剤をどのように探し出すかである。標的遺伝子が同定されたとしても、研究するためにはその機能性の阻害剤を必要とする。
【発明の開示】
【0006】
本発明の概要
本発明は、細菌の生存能力にとって必須の遺伝子およびそれらの遺伝子産物の阻害剤の同定に関する。第1の側面において、本発明は、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を含む抽出物からの抗菌化合物、および該抗菌化合物の標的遺伝子を並列同定する方法を提供する。本発明のこの側面の方法においては、ゲノムライブラリーを含む細菌細胞を平板培地上で抽出物と接触させ、抽出物に対する耐性を持つ細胞を選択し、抽出物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定する。抽出物における抗菌化合物の同定を、感受性細胞および耐性細胞を抽出物のさまざまな画分へ曝露することにより誘導する。
【0007】
第2の側面において、本発明は、抗菌化合物および標的遺伝子の並列同定のために、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を使用するための方法を提供する。本発明のこの側面の方法において、ゲノムライブラリーを含む細菌細胞を平板培地上で化合物の複合混合物と接触させ、複合混合物に対する耐性を持つ細胞を選択し、化合物の複合混合物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定する。化合物の複合混合物を分画し、化合物の複合混合物のさまざまな画分に感受性細胞および耐性細胞を曝露することにより、化合物の複合混合物における抗菌化合物を同定する。
【0008】
第3の側面において、本発明は、現存抗菌剤の作用形態を同定する方法を提供する。本発明のこの側面の方法において、ゲノムライブラリーを含む細菌細胞を平板培地上で、1または2以上の既知の抗菌剤と接触させ、抗菌剤に対する耐性を持つ細胞を選択する。抽出物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定し、標的遺伝子によってエンコードされるタンパク質またはRNAの活性を決定する。
【0009】
第4の側面において、本発明は特定の作用機序によって機能する抗菌性ケモタイプを発見する方法を提供する。本発明のこの側面の方法において、既知の遺伝子を含むプラスミドを含む細菌細胞を、平板培地上で、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を含む抽出物と接触させる。抽出物を分画し、抽出物における抗菌化合物の同定を、感受性細胞および耐性細胞を抽出物のさまざまな画分に曝露することにより誘導する。
【0010】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、抗菌作用を有する化合物とその化合物の標的遺伝子とを並列同定する方法に関する。このアプローチは、ターゲットバリデーション/創薬を組み合わせること、抗菌剤の機構解明(単数または複数)、既存の剤と同じ作用機序を有する新規の抗菌性ファルマコフォアの発見を可能にする。本明細書において引用される特許および刊行物は、当該技術における知識レベルを反映し、その全体において参照として本明細書中に組み入れる。これらの特許および刊行物の教示と本明細書との間のいかなる矛盾も、後者を支持して解決される。
【0011】
第1の側面において、本発明は、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を含む抽出物からの抗菌化合物および該抗菌化合物の標的遺伝子を並列処理で同定する方法を提供する。本発明のこの側面の方法においては、ゲノムライブラリーを含む細菌細胞を平板培地上で抽出物と接触させ、抽出物に対する耐性を持つ細胞を選択し、抽出物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定する。抽出物における抗菌化合物の同定を、感受性細胞および耐性細胞を抽出物のさまざまな画分へ曝露することにより誘導する。
【0012】
本明細書において、細胞にはあらゆる細菌細胞が含まれ得、これはEscherichia coli、Bacillus spp.、Streptomyces coelicolor、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureus、Pseudomonal aeruginosa、またはプラスミドDNAライブラリーを構築できる他の細菌種を含むが、これらに限定されるものではない。さらに、細胞には、あらゆる真菌細胞または寄生虫細胞も含まれ、これはSacchoromyces cerevisiae、Schizosacchoromyces pombe、Neurospora crassa、Candida albicans、Trypanosoma spp.、Giardia spp.、Amoeba spp.、Plasmodium spp.または多コピーライブラリーを構築できる他の真菌種または原生動物種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、平板培地は、細菌細胞の増殖を支える能力のあるいずれのものでもある。かかる平板培地には、LB寒天培地、ミューラー・ヒントン寒天培地、血液寒天培地または当該技術において標準な培地を含むが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、「標的遺伝子」の用語は、抗菌、抗真菌または抗寄生虫活性を伴う抗生物質の活性を抑制する能力を有するあらゆる遺伝子を表現する。標的遺伝子は、当業者に既知のあらゆる手法を介して同定することができる。例えば、抽出物に対する耐性を持った細胞からのプラスミドを単離し、挿入断片を配列することができる。そして、得られた配列は、既知の配列のデータベースに対して照合することができ、例えば、BLASTサーチを、挿入断片における実際の遺伝子およびそれが分かっている場合にその細胞における機能を決定するために行うことができる。また染色体欠失または染色体置換を分子生物学の標準方法によって構築することにより、標的遺伝子を認証することができる。細胞生存能力に必須のタンパク質または細胞感染に必要なタンパク質をエンコードする標的遺伝子は、もっとも興味深い標的である。
【0015】
本明細書において、「抽出物」の用語は、あらゆる天然物抽出物を表現し、これは天然植物抽出物または海洋、真菌、細菌または哺乳類源から調製した抽出物を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、抽出物は、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を含む。本明細書において、「化合物」の用語は、あらゆる天然化合物もしくは合成化合物、または有機小分子化合物を表現する。目的の標的として同定された抽出物における化合物を同定するために、その抽出物を分画し、NMRおよびMSの使用によって、感受性細胞および耐性細胞を抽出物のさまざまな画分に曝露することにより、抗菌化合物の同定を誘導する。
【0016】
本明細書において、「抗菌化合物」および「抗生物質」の用語は、抗菌、静菌、または殺菌活性を有する化合物または組成物を表現する。
本明細書に記述された方法を介して同定された抗菌化合物を、次に(半)合成によって化学修飾し、さらなる関連化合物を同定する。化学修飾をコンピューターによる薬物設計および自動化有機合成によって誘導することができ、構造が関連する類似体を合成し、それらを標的分子への結合に関して分析することにより、親化学構造の系統変異形の何千もの化合物(ライブラリー)を並列に生成することを可能にする。したがって、標的の抑制を意図した何百万もの新規化合物を比較的短い時間で作り出すことができる。
【0017】
E.coliゲノムDNAライブラリーから選択された標的遺伝子の多くが、MDR(Multi-Drug Resistance:多剤耐性)挿入断片の存在を示した。これらは通常、ダイレクトポンプまたはポンプ自体の転写制御因子である。これらの種類の挿入断片は、抵抗力を与えるが、この抵抗力は排出ポンプのみに起因し、したがって主要な関心事ではない。しかしながら、結果は、この異なる細胞傷害性化合物に対して選択されたMDR成分との高レベルの類似性を明示した。それらの例は、輸送タンパクをSMR(small Multi-Resistant)ファミリーからコードするEmrE遺伝子である。EmrE遺伝子の配列は、3つの無関係な化合物に対する耐性を与えることができ、これはポンプとしてのみ作用しているという考えに信憑性を与える。4つの抽出物が、Marオペロン(marA、marR、Rob)のタンパク質をエンコードする遺伝子をともなう選択したプラスミドを有する。これらの種類の結果は最適ではないが、薬剤耐性のメカニズムを見事に解明している。本明細書において説明されたこれらの方法は、これらのポンプを抑制する化合物を同定するために使うことができ、したがって、抗生物質を強化することができ、これによりそれらの有効性を高める。
【0018】
しかしながら、全ての同定された遺伝子がMDRポンプに一致したわけではない。E. coli代謝に関与するタンパク質をコードする少なくとも10つの遺伝子を同定し、これらは潜在的な新薬の標的である。これらは、L13リボソームタンパク質、アセトヒドロキシブタン酸シンターゼ、グルコキナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、リコンビナーゼ、アシル−coA−デヒドロゲナーゼ、cAMPホスホジエステラーゼ、およびセリン・プロテアーゼを含む。これらは、それぞれ阻害剤(または阻害剤を含有する天然物の抽出物)と並列で同定された。
【0019】
IlvMは、IlvGMEDAオペロンの一員であり、分枝鎖アミノ酸の生合成に関与する酵素をエンコードする。この生合成は、ピルビン酸塩およびα−ケト酪酸からバリンおよびイソロイシン、またα−ケト吉草酸からロイシンを導くいくつかの酵素の段階からなる。IlvM遺伝子は、酵素アセトヒドロキシブタン酸シンターゼ/アセト乳酸シンターゼのサブユニットの1つをエンコードし、これらは2つの酵素反応に関与し、複雑な制御経路を有している。全ての細菌種のこのファミリーにおける全ての酵素には、強い機能的類似性がある。しかしながら、かかる酵素の類似体は、哺乳類からは発見されず、したがって、この経路の阻害剤は、哺乳類細胞に対して非細胞傷害性であるべきである。
【0020】
もう1つの選択された原核細胞のみの酵素は、cpdA遺伝子の生成物である。この遺伝子は、c−AMP−ホスホジエステラーゼとして機能する。このファミリーの酵素は、異なる制御経路の重要な酵素として周知である。しかしながら、cpdA遺伝子にエンコードされる、c−AMP−ホスホジエステラーゼIIIは、独特なクラスを表す。このクラスの一員は、細菌種に広く行き渡り、保存構造を有している。BLASTサーチは、E.coli酵素のPasteurella multocida、Vibrio choleraeおよびPseudomonas aeruginosaとの特に高度な相同性を示した。しかしながら、ホスホジエステラーゼのこのクラスは、真核生物には存在しない。
【0021】
他の選択は、2つの抑制座(rplMおよびYhiX)をもたらした。これらは、L13リボソームタンパク質およびGadオペロンのGad X転写制御因子をそれぞれエンコードする。これらのタンパク質の機能性は、いまだにはっきりと特徴付けられていない。しかしながら、間接的観察は、それらが細胞の生存にとって重要であり新しい抗生物質研究の標的候補として用いられるかもしれないことを示している。これらは両方とも、細菌細胞のストレス反応に関与していることが示されている。L13タンパク質がPTCに近い23S rRNAのドメインVと結合することが示されている。これは転写複合体の形成に関与している。このタンパク質の分裂は、リボソームアセンブリの分解および16S rRNAの成熟をもたらす。
【0022】
GadXは、糖質異化のような、かかる重要な細胞機能の活性化因子として知られる、細菌性転写因子のAraC/XylSファミリーに属し、またストレスおよび毒性に反応する。この遺伝子産物は、Gadオペロンの一部であり、長い間グルタミンデカルボキシラーゼ系の転写制御因子と見なされていた。この系は侵食環境における細胞の生存にとって非常に重要である。細胞膜を通過する電荷の移動による細胞内pHを減少し、代謝エネルギーをその微生物に与えると考えられる。しかしながら、新しい実験データは、GadXがより広い範囲の活性を有することを明確にした。GadXの過剰発現は、Gadオペロンからのタンパク質の発現を誘発する。新しい実験は、GadXが毒性細胞因子PerA、osmCタンパク質(高浸透圧での適応に関与)、ならびに異なるプロテアーゼおよびシャペロン(lon、ycgC、yehAおよびyhcA)の発現を誘発することができることを示した。タンパク質の発現、例えばアスパラギン(Asn)およびグルタミン(glnH、glnK)の生合成において、タンパク質の発現に関与することもできる。
【0023】
第2の側面において、本発明は、抗菌化合物およびその抗菌化合物の標的遺伝子の並列同定のために、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を使用するための方法を提供する。本発明のこの側面の方法において、ゲノムライブラリーを含む細菌細胞を、平板培地上で化合物の複合混合物と接触させ、複合混合物に対する耐性を持つ細胞を選択し、化合物の複合混合物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定する。この混合物を分画し、化合物の複合混合物のさまざまな画分に感受性細胞および耐性細胞を曝露することにより、化合物の複合混合物における抗菌化合物の同定を誘導する。
【0024】
本明細書において、化合物の複合混合物は、合成化合物および/または天然化合物、または有機小分子化合物、または化合物の生成物ライブラリーのあらゆる混合物を表現する。
【0025】
第3の側面において、本発明は、現存の抗菌剤の作用形態を同定する方法を提供する。本発明のこの側面の方法において、ゲノムライブラリーを含む細菌細胞を平板培地で、1または2以上の既知の抗菌剤と接触させ、抗菌剤に対する耐性を持つ細胞を選択する。抽出物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定し、標的遺伝子によってエンコードされるタンパク質またはRNAの活性を決定する。全ての定義は上記の通りである。
【0026】
第4の側面において、本発明は、特定の作用機序によって機能する新規の抗菌性ケモタイプを発見する方法を提供する。本発明のこの側面の方法においては、既知の遺伝子を含むプラスミドを含む細菌細胞を、平板培地上で、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を含む抽出物と接触させる。抽出物を分画し、抽出物における抗菌化合物の同定を、感受性細胞および耐性細胞を抽出物のさまざまな画分に曝露することにより誘導する。全ての定義は上記の通りである。
【0027】
以下の例は、本発明の特定の好ましい態様をさらに例示することを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図しない。
例1
抽出物からの抗菌化合物の同定
C010201(Dysidea sp.)から調製された海洋抽出物は、ある標的に関する、いくつかの生じ得る活性を示した。粗抽出物(629mg)をまずセファデックスLH−20カラム(40g)での分画に供し、続いてヘキサン、1:1ヘキサン−CHCl、CHCl、1:1CHCl−アセトン、アセトン、およびメタノールで洗浄した(図2)。1:1ヘキサン−CHClおよび1:1CHCl−アセトン画分は、E. coli増殖に対する最も強い阻害活性を示した。
【0028】
1:1ヘキサン−CHCl(123mg)のさらなる分画をC18オープンカラムで行い、5:5、6:4、7:3、8:2、9:1、および10:0MeOH−HOで続けて溶出した;これにより、最も強い活性の8:2MeOH−HO画分を得た。この画分の精製物を、流速4.5mL/分で35分間、水中60→95%MeCNで洗浄し(240nmで検出)、逆相C18HPLCカラム(250x10mm,5mm)に適用した。この提供された2つの化合物をそれぞれ、2−(2’,4’−ジブロモフェノキシ)−3,4,5−トリブロモフェノール(PP1004, 1)、および2−(2’,4’−ジブロモフェノキシ)−4,5,6−トリブロモフェノール(PP1005, 2)として、スペクトルデータの文献データとの比較により同定した。これらの化合物に対する標的の同定を、以下に説明するように、並列に行うことができる。
【0029】
例2
抗菌性物質およびその標的の並列同定
E.coliDNAライブラリーを、E.coli K-12(ATCC #25404)の全ゲノムDNAの部分的Sau 3A消化物をpGem 3Zベクター(Promega Corp.)にライゲーションすることによって、構築した。得られたプラスミドのプールを、E.coli株DH5a(Invitrogen)に形質転換した。DNAライブラリーは約10の複雑性を有する。当該ライブラリーにおける平均挿入断片サイズは2.0kbであり、90%以上のプラスミドを含む形質転換細胞を有する。これはゲノムの理論上200倍のカバー率を導く。
【0030】
標的の選択を、標的の細胞傷害性抽出物を補填したLB寒天培地プレート上で行った。DNAライブラリーおよび対照細胞(ベクター有り、挿入断片無し)を、異なる抽出物濃度の4つのプレートに適用した。最も高い抽出物濃度に局在したコロニーを選択し、X-GAL指標プレート上で検査した。白色と青色のコロニーの割合で、選択の効率を判断した。青色のコロニーの出現は、偽陽性結果に終わる。これは、被験化合物の存在下での宿主染色体突然変異の可能性として説明することができる。
【0031】
白色コロニーからのプラスミドを精製し、宿主E.coli株へ再形質転換されたときに抵抗性を与える能力を検査した。この再形質転換に耐えたプラスミドを、配列決定へと送った。挿入断片を、T7およびSP6プロモータープライマー両方を使って、それぞれの端から配列した。そして、得られた配列を、挿入断片の実際の遺伝子を判断するために、BLASTサーチに用いた。多剤排出ポンプではない完全な遺伝子を含有する配列を、プロジェクトの次の段階へ持ち越した。NMRおよびMSを使用して、目的の標的を示した抽出物を画分し、阻害化合物を同定した。
【0032】
そして、同義遺伝子が存在する挿入断片を、PCRを用いて分離した。それぞれの個別の遺伝子を個別のプラスミドへ挿入し、必要な抽出物に対する耐性を与える能力を判断した。この方法を使用し、どの遺伝子が抽出物に対する耐性に関与しているかを判断することができ、したがってその標的のサーチを絞ることができる。遺伝子のさらなる操作により、タンパク質のインフレーム欠失および天然E. coliからの遺伝子の除去を経て、抽出物の感度の決定を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本明細書で説明された方法の一態様の略図である。
【図2】C010201(Dysidea sp.)の粗抽出物のバイオアッセイ誘導分画の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を含む抽出物からの抗菌化合物および(2)その抗菌化合物の標的遺伝子を並列同定する方法であって、平板培地上でゲノムライブラリーを含む細菌細胞を抽出物と接触させ、該抽出物に対する耐性を持つ細胞を選択すること、該抽出物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定すること、感受性細胞および耐性細胞をさまざまな画分に曝露することにより該抽出物の分画を誘導すること、およびそれにより前記抽出物中の抗菌化合物を同定することを含む、前記方法。
【請求項2】
平板培地がLB寒天培地、ミューラー・ヒントン寒天培地および血液寒天培地からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細菌細胞がE.coli、Bacillus spp.、Streptomyces coelicolor、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureusおよびPseudomonas aeruginosaからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(1)抗菌化合物および(2)標的遺伝子の並列同定のために、1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を使用するための方法であって、平板培地上でゲノムライブラリーを含む細菌細胞を化合物の複合混合物と接触させ、該複合混合物に対する耐性を持つ細胞を選択すること、該化合物の複合混合物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定すること、該化合物の複合混合物を分画し、感受性細胞および耐性細胞をさまざまな画分に曝露すること、および前記化合物の複合混合物における抗菌化合物を同定することを含む、前記方法。
【請求項5】
平板培地がLB寒天培地、ミューラー・ヒントン寒天培地および血液寒天培地からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細菌細胞がE.coli、Bacillus spp.、Streptomyces coelicolor、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureusおよびPseudomonas aeruginosaからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
現存の抗菌剤の作用形態を同定する方法であって、平板培地上でゲノムライブラリーを含む細菌細胞を1または2以上の既知の抗菌剤と接触させ、該抗菌剤に対する耐性を持つ細胞を選択すること、抽出物に対する耐性を与える標的遺伝子を同定すること、および該標的遺伝子によってエンコードされるタンパク質の活性を決定することを含む、前記方法。
【請求項8】
特定の作用機序によって機能する抗菌性ケモタイプを発見する方法であって、平板培地上で、既知の遺伝子を含む発現ベクターを含む細菌細胞を1または2以上が抗菌作用を示す化合物の複合混合物を含む抽出物と接触させ、感受性細胞および耐性細胞をさまざまな画分に曝露することにより該抽出物の分画を誘導すること、およびそれにより前記抽出物中の抗菌化合物を同定することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−538493(P2008−538493A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555267(P2007−555267)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/004853
【国際公開番号】WO2006/086696
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507255190)ピナクル ファーマシューティカルズ,インク. (2)
【Fターム(参考)】