説明

抗菌性組成物及び皮膚外用剤

【課題】汗や皮脂の量や比率が異なる様々な肌や頭皮の皮膚状態でも、トリクロサンと、レゾルシン又はサリチル酸がそれぞれ有する抗菌活性を相乗的に増強できる抗菌性組成物、並びに該抗菌性組成物を含有する皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】トリクロサンと、レゾルシン及び/又はサリチル酸とを含有してなる、抗腋臭原因菌用、抗ニキビ菌用、抗フケ菌用などの抗菌性組成物、並びに該組成物を含有してなる皮膚外用剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性組成物、並びに該抗菌性組成物を含有した皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人に不快感を与える腋臭などの体臭は、特に、汗が皮脂と混ざり、それが腋臭原因菌(Staphylococcus epidermidis)により分解されることにより生じるとされている。
【0003】
ニキビの発生は、毛嚢内細菌であるアクネ菌(Propionibacterium acnes)の増殖が関係していると言われ、このアクネ菌の産生するリパーゼが皮脂を分解して脂肪酸を産生し、それにより炎症が引き起こされるとされている。
【0004】
フケは皮脂腺や汗腺の分泌物や表皮層の剥離物などから構成され、フケ原因菌(Malassezia furfur)の増殖により頭皮が刺激され、フケの発生が助長されるとされている。
【0005】
従来から、皮膚に起因する、体臭、ニキビ、フケの発生を抑制するために、これらの原因菌である皮膚常在菌に抗菌活性を有する化合物が用いられてきた(例えば、特許文献1〜6を参照)。
【0006】
一方、人の肌や頭皮には汗腺や皮脂腺が存在し、その時々で汗と皮脂の量が異なり、汗(水分)が多い状態と皮脂が多い状態とでは、抗菌性化合物の抗菌活性が異なる可能性があった。
【0007】
そこで、トリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールを併用することにより、汗が多く分泌した肌状態に加え、皮脂が多く分泌した肌状態でも、腋臭原因菌に対する抗菌活性を維持できるデオドラント剤が報告されている(特許文献7を参照)。
【0008】
しかし、上記技術では、異なった肌状態でも腋臭原因菌に対する抗菌活性を維持できることに留まり、抗菌性化合物のそれぞれが有する抗菌活性を相乗的に増強できるものではなかった。また、アクネ菌やフケ原因菌に対しては、異なる肌や頭皮の状態における抗菌活性の報告はなされていない。
【0009】
【特許文献1】特表2004−521145号公報
【特許文献2】特表2007−529445号公報
【特許文献3】特開平7−33624号公報
【特許文献4】特開2006−213633号公報
【特許文献5】特開2005−53867号公報
【特許文献6】特開2005−179216号公報
【特許文献7】特開2006−96719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、汗や皮脂の量や比率が異なる様々な肌や頭皮の皮膚状態でも、トリクロサンと、レゾルシン又はサリチル酸がそれぞれ有する抗菌活性を相乗的に増強できる抗菌性組成物、並びに該抗菌性組成物を含有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
〔1〕トリクロサンと、レゾルシン及び/又はサリチル酸とを含有することを特徴とする抗菌性組成物、並びに
〔2〕前記〔1〕に記載の抗菌性組成物を含有してなる皮膚外用剤
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる抗菌性組成物は、汗や皮脂の量や比率が異なる様々な肌や頭皮の状態でも、トリクロサンと、レゾルシン又はサリチル酸のそれぞれが本来有する抗菌活性を相乗的に増強することができるという効果を奏する。
【0013】
しかも、腋臭原因菌、アクネ菌、フケ原因菌に対して優れた抗菌活性を発揮することから、抗腋臭原因菌効果を発揮するデオドラント剤、抗アクネ菌効果を発揮するニキビ用皮膚外用剤、抗フケ原因菌効果を発揮する抗フケ用頭髪化粧料などの皮膚外用剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にかかる抗菌性組成物は、必須成分としてトリクロサンと、レゾルシン及び/又はサリチル酸とを含有する。
【0015】
本発明にかかる抗菌性組成物は、第一の成分であるトリクロサンと、第二の成分であるレゾルシン及び/又はサリチル酸の含有量は特に限定されないが、好ましくは、重量比で0.1:1〜10:1、より好ましくは0.2:1〜5:1、更に好ましくは0.5:1〜2:1となるように配合する。第一の成分の含有量が第二の成分の10重量部を超えて配合すると、また、0.1重量部未満の場合、抗菌活性の相乗的な増強効果が期待できないために好ましくない。
【0016】
尚、本発明の抗菌性組成物には、第一の成分及び第二の成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤等を適宜配合することができる。
【0017】
本発明の抗菌性組成物は、皮膚外用剤に配合して使用することができる。具体的には、洗顔剤、化粧水、乳液、スキンクリーム、ファンデーション、口紅、デオドラント剤、ニキビ予防・治療剤、シャンプー、ヘアトニック、育毛剤などの肌および頭皮に適用する皮膚外用剤に用いることができる。特に、腋臭原因菌やアクネ菌に優れた抗菌活性を発揮することから、デオドラント剤や、ニキビ予防・治療剤などのニキビ用皮膚外用剤に好適に用いることができる。また、フケ原因菌に優れた抗菌活性を発揮することから、ヘアトニック、ふけとりローション、頭皮リフレッシャーなどの頭皮用化粧料、シャンプーなどの洗浄剤等の抗フケ用の頭髪化粧料に好適に用いることができる。
【0018】
皮膚外用剤に本発明の抗菌性組成物を配合する場合、配合量は特に限定されないが、皮膚外用剤中0.001〜3重量%、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%とするとよい。配合量が0.001重量%未満の場合、抗菌効果に劣るために、また、3重量%を超えて配合すると、皮膚刺激性など安全性に問題が生じる場合があるために、いずれの場合も好ましくない。
【0019】
本発明の皮膚外用剤をデオドラント剤として用いる場合、更に制汗成分、消臭成分などを配合することができる。
【0020】
制汗成分とは、皮膚を収斂することにより汗の発生を抑制する薬剤であり、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クロロヒドロキシアルミニウム、アラントインクロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛などを例示することができる。
【0021】
消臭成分とは、臭いを発する物質と反応・吸着したり、臭いをマスクしたりして、臭いを消す効果を有する薬剤であり、例えば、酸化亜鉛などの金属酸化物、アルキルジエタノールアミド、ヒドロキシアパタイト、茶抽出物、香料、酸化防止剤などを例示することができる。
【0022】
制汗成分の配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されず、皮膚外用剤中0.1〜20重量%とするとよく、0.3〜15重量%とすることがより好ましい。0.1重量%未満の配合量では、デオドラント効果の持続性に劣るために、また、20重量%を超えて配合すると、皮膚刺激性など安全性に問題が生じる場合があるために、いずれの場合も好ましくない。
【0023】
また、消臭成分の配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されず、皮膚外用剤中0.01〜5重量%とするとよく、0.1〜2重量%とすることがより好ましい。0.01重量%未満の配合量では、臭いのマスキング効果に劣るために、また、5重量%を超えて配合すると、香りが強くなりすぎたり、肌への着色が生ずる場合があり、また、皮膚刺激性など安全性に問題が生じる場合があるために、いずれの場合も好ましくない。
【0024】
本発明の皮膚外用剤をニキビ用皮膚外用剤として用いる場合、更に、クエン酸、乳酸、グリコール酸、サリチル酸及びそれらの塩、尿素、硫黄などの角質軟化剤;グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、アラントイン、アズレン、インドメタシン、ε−アミノカプロン酸、カンファー、メントール、塩化亜鉛、亜鉛華などの抗炎症剤を配合することができる。
【0025】
角質軟化剤の配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されず、皮膚外用剤中0.0001〜10重量%とするとよく、0.001〜5重量%とすることがより好ましい。0.0001重量%未満の配合量では、角質軟化効果や剥離効果が期待できないために、また、10重量%を超えて配合しても、それ以上の効果が望めないために、いずれの場合も好ましくない。
【0026】
抗炎症剤の配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されず、皮膚外用剤中0.001〜10重量%とするとよく、0.01〜1重量%とすることがより好ましい。0.001重量%未満の配合量では、抗炎症効果が期待できないために、また、10重量%を超えて配合しても、それ以上の効果が望めないために、いずれの場合も好ましくない。
【0027】
本発明の皮膚外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分を適宜任意に配合することができる。例えば、油脂、ロウ類、炭化水素、シリコーン類、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸等の油性成分;非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤の各種界面活性剤;低級アルコール、多価アルコール、糖類、ステロール類等のアルコール類;粘度鉱物、水溶性多糖類等の増粘性高分子;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤;被膜形成性高分子化合物、無機顔料、粉体、色素、顔料、染料、ビタミン類、アミノ酸類、収斂剤、美白剤、動植物抽出物、酸、アルカリ等の添加成分;水等を例示することができる。
【0028】
具体的には、油性成分としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油等の油脂;カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワレン、スクワラン等の炭化水素;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセロール、2−エチルヘキサン酸ジグリセリド等の脂肪酸エステル;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸が挙げられる。
【0029】
界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、及びこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロール及びその誘導体、ポリオキシエチレンラノリン及びその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類等の非イオン界面活性剤;高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸及びその塩、N−アシルサルコシン及びその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩等のアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等の環式4級アンモニウム塩、塩化ベンゼエトニウム等の陽イオン界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤を例示することができる。
【0030】
アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;1,3−ブタンジオール,イソプレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、キシリトール、ラクトース、トレハロース等の糖類;コレステロール、フィトステロール等のステロール類を挙げることができる。
【0031】
増粘性高分子としては、例えば、ベントナイト、スメクタイトの他、バイデライト系、ノントロナイト系、サポナイト系、ヘクトライト系、ソーコナイト系、スチーブンサイト系等の粘度鉱物;カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、デキストラン、アミロース、アミロペクチン、アガロース、プルラン、コンドロイチン硫酸、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を例示することができる。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類、亜硫酸、重亜硫酸、チオ硫酸、チオ乳酸、チオグリコール酸、L−システイン、N−アセチル−L−システイン等を挙げることができる。
【0033】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸塩、リン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、アラニン、シュウ酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−四酢酸、N−オキシエチルエチレンジアミン−三酢酸、エチレングリコールビス−四酢酸、エチレンジアミン−四プロピオン酸、1−ヒドロキシヘキサン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等を挙げることができる。
【0034】
本発明の皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして使用することができる。具体的には、ローション、エアゾール、スティック、パウダー、ロールオン、クリーム、ジェル、乳液、シート剤などの種々の形態に用いることができ、製剤化については、一般に知られている方法により製造すればよい。
【実施例】
【0035】
<試験例1>
腋臭原因菌として、スタフィロコッカス エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis IAM1296)及びコリネバクテリウム ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum ATCC23348)を用いた。ニキビ原因菌として、プロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes ATCC6919)を用いた。フケ原因菌として、マラセチア フルフル(Malassezia furfur NBRC0656)を用いた。
【0036】
(接種菌液の調製)
接種用菌液としてスタフィロコッカス エピデルミディス、コリネバクテリウム ミヌティシマム及びプロピオニバクテリウム アクネスについては、寒天培地で35℃で培養後、更にブイヨン培地に移植して35℃で培養した。得られた培養液をブイヨン培地で約10個/mLに希釈したものを接種用菌液とした。尚、プロピオニバクテリウム アクネスは嫌気培養した。
【0037】
また、マラセチア フルフルについては、寒天培地で30℃で培養後、更にブイヨン培地に移植して30℃で培養した。得られた培養液をブイヨン培地で約10個/mLに希釈したものを接種用菌液とした。
【0038】
(希釈系列の調製)
トリクロサン(比較例1)、レゾルシン(比較例2)、及びサリチル酸(比較例3)は、70%エタノールを希釈溶媒として3000μg/mLに調製し、11段階に倍倍希釈して希釈系列を調製した。
【0039】
また、トリクロサンとレゾルシンの等量混合物(実施例1)、及びトリクロサンとサリチル酸(実施例2)の等量混合物についても、同様に希釈系列を調製した。
【0040】
(最小殺菌濃度(MBC)の測定)
上記の各被験物質を含む希釈系列1mLに対して各寒天培地9mLをシャーレに入れ、それぞれについて、上記各接種用菌液を約1cmの長さに画線した。培養は、スタフィロコッカス エピデルミディス、コリネバクテリウム ミヌティシマム、及びプロピオニバクテリウム アクネスについては、35℃で行い、5日後の菌の生育の有無を判定した。また、マラセチア フルフルについては、30℃で培養を行い、5日後の菌の生育の有無を判定した。尚、プロピオニバクテリウム アクネスは嫌気培養した。
【0041】
生育が認められなかった濃度では、接種した画線から菌を採取し、新鮮寒天培地に移植し更に3日培養した。このとき、生育が認められなかった最小の濃度をMBCとして求め、そのときの各成分の濃度を表1〜6(トレオレイン非添加)に記した。尚、表1〜2はスタフィロコッカス エピデルミディス、表3〜4はコリネバクテリウム ミヌティシマム、表5〜6はプロピオニバクテリウム アクネス、表7〜8はマラセチア フルフルに関する。
【0042】
(皮脂成分の影響の検討)
皮脂成分の影響による殺菌効果を検討するために、皮脂成分としてトレオレインを添加して下記試験を実施した。即ち、上記各被験物質を含む希釈系列1mLに対して、0.1重量%のトリオレインと寒天培地8.9mLをシャーレに入れ、それぞれについて、上記と同様に接種用菌液を約1cmの長さに画線し、培養した。
【0043】
5日後の菌の生育の有無を判定後、上記と同様にMBCを求め、そのときの各成分の濃度を表1〜6(トレオレイン添加)に表した。尚、表1〜2はスタフィロコッカス エピデルミディス、表3〜4はコリネバクテリウム ミヌティシマム、表5〜6はプロピオニバクテリウム アクネス、表7〜8はマラセチア フルフルに関する。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
尚、MBCによって、抗菌力を評価することができる。被験物質の濃度が薄いときには微生物への影響はないが、濃度を増していくと発育抑制が起こり、続いて発育は停止する。更に濃度が増すと、微生物は死滅していくことになる。このときの濃度がMBCとして表される。
【0053】
表1,3,5,7の結果から、トリクロサン単独(比較例1−1〜1−4)では皮脂成分であるトリオレインの存在により、MBCが高くなり、抗菌活性が低下することが分かる。また、レゾルシン単独(比較例2−1〜2−4)では、皮脂成分の影響を受けないことが分かる。これに対して、トリクロサンとレゾルシンとを併用(実施例1−1〜1−4)すると、トレオレイン存在下及び非存在下共に、MBCが著しく低い値となり、両者の抗菌活性が相乗的に著しく増強されることが分かる。
【0054】
表2,4,6,8の結果から、トリクロサン単独(比較例1−1〜1−4)では皮脂成分であるトリオレインの存在により、MBCが高くなり、抗菌力が低下することが分かる。また、サリチル酸単独(比較例3−1〜3−4)では皮脂成分の影響を受けないことが分かる。これに対して、トリクロサンとサリチル酸とを併用(実施例2−1〜2−4)すると、トレオレイン存在下及び非存在下共に、MBCが著しく低い値となり、両者の抗菌活性が相乗的に著しく増強されることが分かる。
【0055】
以上、表1〜8の結果から、本発明の抗菌性組成物は、汗が多い皮膚状態でも、皮脂が多い皮膚状態でも、トリクロサンと、レゾルシン又はサリチル酸のそれぞれが本来有する抗菌効果を相乗的に増強し、様々な皮膚状態で腋臭原因菌、アクネ菌、フケ原因菌などの皮膚常在菌に優れた抗菌活性を発揮できることが分かる。
【0056】
<試験例2:デオドラント剤>
(試料の調製)
表9に記した組成に従い、実施例3〜4および比較例4〜6の各デオドラント剤を常法により調製し下記評価に供した。尚、表中の配合量は重量%を表す。
【0057】
(デオドラント剤の評価)
腋臭が強いと判定された男子被験者10名に、各試料を被験者の一方の腋下に塗布し、もう一方の腋下は比較対照として塗布しなかった。塗布前とその直後及び3時間後のそれぞれについて下記評価基準に従って臭いの判定をし、その平均値を採用した。結果を表9に示す。
【0058】
<評価基準>
臭わない・・・・・・・・0点
かすかに臭う・・・・・・1点
やや臭うが弱い・・・・・2点
はっきりと臭う・・・・・3点
非常に強く臭う・・・・・4点
【0059】
【表9】

【0060】
表9の結果から、本発明のデオドラント剤は優れた防臭効果を有するとともに、その効果も持続することが分かる。
【0061】
<試験例3:ニキビ用皮膚外用剤>
(試料の調製)
表10に記した組成に従い、実施例5〜6および比較例7〜9の各ニキビ用皮膚外用剤を常法により調製し下記評価に供した。尚、表中の配合量は重量%を表す。
【0062】
(ニキビ用皮膚外用剤の評価)
ニキビ症の被験者10名に、各試料を被験者の一方の頬に、1日2回づつ4週間塗布し、下記評価基準に従って改善の程度の人数を判定した。結果を表10に示す。
【0063】
<評価基準>
有効:ニキビの改善が認められる。
やや有効:ニキビの改善がやや認められる。
無効:ニキビの改善が認められない。
【0064】
【表10】

【0065】
表10の結果から、本発明のニキビ用皮膚外用剤は優れたニキビ改善効果を発揮することが分かる。
【0066】
<試験例4:抗フケ用頭髪化粧料>
(試料の調製)
表11に記した組成に従い、実施例7〜8および比較例10〜12の各ヘアトニックを常法により調製し下記評価に供した。尚、表中の配合量は重量%を表す。
【0067】
(抗フケ用頭髪化粧料の評価)
フケ症と自覚する被験者10名に、各試料を被験者に1日2回づつ4週間使用させ、下記評価基準に従って改善の程度の人数を判定した。結果を表11に示す。
【0068】
<評価基準>
有効:フケの改善が認められる。
やや有効:フケの改善がやや認められる。
無効:フケの改善が認められない。
【0069】
【表11】

【0070】
表11の結果から、本発明の抗フケ用頭髪化粧料は優れたフケ抑制効果を発揮することが分かる。
【0071】
以下、本発明にかかる皮膚外用剤の処方例を示す。尚、配合量は重量%である。
【0072】
(処方例1:液体防臭剤)
パラフェノールスルホン酸亜鉛 2.0
エタノール 30.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
レゾルシン 0.1
トリクロサン 0.1
ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 0.5
香料 適量
精製水 残分
合 計 100.0
【0073】
(処方例2:消臭スプレー)
精製水 30.0
エタノール 20.0
サリチル酸 0.2
トリクロサン 0.1
ジメチルエーテル 49.7
合 計 100.0
【0074】
(処方例3:パウダースプレー)
クロロヒドロキシアルミニウム 3.0
無水ケイ酸 1.5
シリコーン処理タルク 1.5
酸化亜鉛 0.5
トリクロサン 0.01
レゾルシン 0.01
イソプロピルミリスチン酸エステル 2.18
ジメチルポリシロキサン 1.0
ソルビタン脂肪酸エステル 0.3
液化石油ガス 90.0
合 計 100.0
【0075】
(処方例4:デオドラントスティック)
ステアリルアルコール 25.0
ポリエチレングリコール 10.0
クロロヒドロキシアルミニウム 20.0
環状ジメチルポリシロキサン 44.6
トリクロサン 0.15
サリチル酸 0.15
香料 0.1
合 計 100.0
【0076】
(処方例6:ロールオンデオドラント)
エタノール 30.0
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 1.0
クロロヒドロキシアルミニウム 10.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.5
トリクロサン 0.2
レゾルシン 0.1
香料 適量
精製水 残分
合 計 100.0
【0077】
(処方例7:デオドラントミスト)
エタノール 45.0
ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 0.5
パラフェノールスルホン酸亜鉛 0.3
架橋ポリスチレン 5.0
サリチル酸 0.1
トリクロサン 0.2
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0078】
(処方例8:デオドラントジェル)
エタノール 60.0
カルボキシビニルポリマー 0.4
環状シリコーン 1.0
ポリエーテル変性シリコーン 0.5
サリチル酸 0.2
トリクロサン 0.2
トリエタノールアミン 0.4
シリコーンパウダー 1.0
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0079】
(処方例9:ニキビ用クリーム)
ステアリルアルコール 8.0
ステアリン酸 3.0
精製ラノリン 6.0
レゾルシン 0.1
トリクロサン 0.2
グリセリン 3.0
モノステアリン酸グリセリル 2.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0080】
(処方例10:ニキビ用化粧水)
1,3−ブチレングリコール 4.0
グリセリン 3.0
エタノール 10.0
ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル 1.0
サリチル酸 0.05
トリクロサン 0.05
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.1
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0081】
(処方例11:ニキビ用乳液)
セチルアルコール 1.0
ミツロウ 0.5
ワセリン 2.0
スクワラン 6.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
エタノール 3.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
グリセリン 4.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
グリセロールモノステアリン酸エステル 1.0
レゾルシン 0.15
トリクロサン 0.2
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0082】
(処方例12:ニキビ用ジェル)
ジプロピレングリコール 7.0
カルボキシビニルポリマー 0.4
メチルセルロース 0.2
エタノール 5.0
レゾルシン 0.1
トリクロサン 0.1
ポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル 1.0
水酸化カリウム 0.1
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0083】
(処方例13:ニキビ用パック)
ポリビニルアルコール 12.0
カルボキシメチルセルロース 5.0
エタノール 7.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 0.5
サリチル酸 0.1
トリクロサン 0.15
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0084】
(処方例14:固形白粉)
セリサイト 15.0
カオリン 10.0
二酸化チタン 5.0
ミリスチン酸亜鉛 5.0
炭酸マグネシウム 5.0
スクワラン 3.0
トリイソオクタン酸グリセリン 2.0
サリチル酸 0.2
トリクロサン 0.1
着色顔料 適量
香料 適量
タルク 残分
合計 100.0
【0085】
(処方例15:ヘアトニック)
パントテニルエチルエーテル 0.2
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)
テトラデシルエーテル 0.5
レゾルシン 0.05
トリクロサン 0.1
エタノール 40.0
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0086】
(処方例16:ふけとりローション)
サリチル酸 0.2
トリクロサン 0.2
L−メントール 0.25
ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 0.3
アラントイン 0.01
エタノール 50.0
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0087】
(処方例17:ヘアーコンディショナー)
オリーブ油 5.0
セタノール 7.0
塩化セチルトリメチルアンモニウム 1.0
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.5
1,3−ブチレングリコール 3.0
レゾルシン 0.1
トリクロサン 0.1
エタノール 5.0
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0088】
(処方例18:エアゾール式ヘアトニック)
〔中身液1〕
エタノール 60.0
酢酸トコフェロール 0.1
サリチル酸 0.2
トリクロサン 0.15
d−カンフル 0.2
ポリオキシエチレン硬化油 0.5
セタノール 0.3
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート0.1
1,3−ブチレングリコール 2.0
プロピレングリコール 2.0
香料 適量
精製水 残分
合計 100.0
【0089】
中身液1 89.6
LPG 10.0
窒素ガス 0.4
合計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリクロサンと、レゾルシン及び/又はサリチル酸とを含有することを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項2】
抗腋臭原因菌用である請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
抗ニキビ菌用である請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
抗フケ菌用である請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の抗菌性組成物を含有してなる皮膚外用剤。
【請求項6】
請求項2に記載の抗菌性組成物を含有してなるデオドラント剤。
【請求項7】
請求項3に記載の抗菌性組成物を含有してなるニキビ用皮膚外用剤。
【請求項8】
請求項4に記載の抗菌性組成物を含有してなる抗フケ用頭髪化粧料。

【公開番号】特開2008−110993(P2008−110993A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−17600(P2008−17600)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】