説明

抗菌性組成物

【課題】 抗菌性及び安全性に優れ、飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧料のいずれかに好適に用いられる抗菌性組成物の提供。
【解決手段】 (A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種、並びに(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を含有することを特徴とする抗菌性組成物である。油溶性甘草抽出物が、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glycyrrhiza inflata)及びグリチルリーザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)から選択される少なくとも1種の抽出物である態様、没食子酸残基を有する化合物植物が、エピガロカテキンガレート含有植物及びガロタンニン含有植物から選択される少なくとも1種である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性及び安全性に優れ、飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧料のいずれかに好適に用いられる抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、微生物の繁殖による変質や腐敗を起こしやすい飲食品や化粧料等の保存性向上のために配合する抗菌剤としては、各種の合成品や天然物由来のものが使用されている。しかし、人の口や皮膚を経由して体内に入ることが多い飲食品や化粧料用途の抗菌剤としては合成品よりも安全性の高い天然物由来のものが好ましい。また、天然物由来のものであっても、可能な限り添加量を少なし、添加対象物の色、匂い、味、物性等に悪影響を及ぼさないものであることが望まれている。
このような微生物に対する有効な天然物系抗菌剤として、例えば、油溶性甘草抽出物が優れた抗菌作用を有することが知られている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。しかし、油溶性甘草抽出物の添加濃度を上げると、その製品が着色したり、混濁してしまうという欠点がある。
【0003】
また、緑茶抽出物が抗菌作用を有していることは知られており、また、緑茶抽出物が抗菌作用を示す濃度以下の濃度で抗生物質と併用することにより、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)等の薬剤耐性細菌類に対し、抗生物質の抗菌作用を回復させる作用を有することが報告されている(非特許文献3及び非特許文献4参照)。しかし、植物抽出物が抗菌作用を有する天然物との併用により、その天然物の抗菌性を増強させることは知られていない。
【0004】
したがって消費者の自然指向及び安全指向の商品に対する需要増加を図る面から、抗菌剤の使用を必要最低限に抑えることができる抗菌性及び安全性に優れた代替組成物の開発が強く望まれているのが現状である。
【0005】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル No.6、p122、1989年
【非特許文献2】J.Nat.Prod. Vol.43、No.2、p259、1980年
【非特許文献3】Biol.Pharm.Bull. Vol.22、No.12、p1388、1999年
【非特許文献4】Pharm.Bull. Vol.48、No.9、p1286、2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、油溶性甘草抽出物及びその精製物の抗菌作用を飛躍的に増強させることができ、飲食品や化粧品中の微生物に対して、少量の使用で優れた抗菌作用を示し、安全性に優れた抗菌性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが、油溶性甘草抽出物の抗菌作用を増強させることができる植物抽出物について鋭意検討を重ねた結果、没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物が油溶性甘草抽出物及びその精製物の抗菌作用を飛躍的に増強させる作用を有することを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種、並びに(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を含有することを特徴とする抗菌性組成物である。
<2> 油溶性甘草抽出物が、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glycyrrhiza inflata)及びグリチルリーザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)から選択される少なくとも1種の抽出物である前記<1>に記載の抗菌性組成物である。
<3> 油溶性甘草抽出物の精製物が、グラブリジン、グラブレン及びリコカルコンAのいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の抗菌性組成物である。
<4> 没食子酸残基を有する化合物植物が、エピガロカテキンガレート含有植物及びガロタンニン含有植物から選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載の抗菌性組成物である。
<5> エピガロカテキンガレート含有植物が、ツバキ科カメリア属のチャ(Camellia sinensis)である前記<4>に記載の抗菌性組成物である。
<6> ツバキ科カメリア属のチャが、緑茶、ウーロン茶、及び紅茶のいずれかである前記<5>に記載の抗菌性組成物である。
<7> ガロタンニン含有植物が、タラ、ユカン、ミロバラン、ウワウルシ、コウホネ、ヌルデ、ヨーロッパカエデ及びカシ類から選択される少なくとも1種である前記<4>に記載の抗菌性組成物である。
<8> (A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種1質量部に対し(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を0.01〜1000質量部含有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の抗菌性組成物。
<9> 飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧料のいずれかに用いられる前記<1>から<8>のいずれかに記載の抗菌性組成物である。
【0009】
本発明の抗菌性組成物は、(A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種、並びに(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を含有することによって、両者が相乗的に作用して、油溶性甘草抽出物及びその精製物の使用量が少量であっても優れた抗菌性を有し、油溶性甘草抽出物の欠点である、着色、濁り、におい、味の悪影響を減少させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、油溶性甘草抽出物及びその精製物の抗菌作用を飛躍的に増強させることができ、微生物に対して、少量の使用で優れた抗菌作用を示し、安全性に優れた抗菌性組成物を提供でき、飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧料に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の抗菌性組成物は、(A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種、並びに(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0012】
−油溶性甘草抽出物−
甘草は、マメ科Glycyrrhiza属に属する多年生草本植物である。該甘草としては、中国・東北〜内蒙古〜西北地方などに産する東北甘草、西北甘草(Glycyrrhiza uralensis)、中国・新疆地方などに産する新疆甘草(脹果甘草、Glycyrrhiza inflata)、旧ソ連、アフガニスタン、トルコ、パキスタン、スペインなどに産するスペイン甘草(光果甘草、Glycyrrhiza glabra)などが挙げられる。これらの中でも、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glycyrrhiza inflata)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)が好ましい。
【0013】
前記甘草の根、根茎、葉、及び茎のいずれの部位も抽出原料として使用することができるが、これらの中でも、根及び根茎の少なくともいずれかが特に好ましい。また、抽出原料としては、生のものを使用しても乾燥させたものを使用してもよいが、工業的に製造されているグリチルリチンの抽出原料となっている乾燥根及び乾燥根茎、或いはグリチルリチンなどを得るために水で抽出した後の水抽出残渣を原料として使用することもできる。
【0014】
前記抽出に用いる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、含水メタノール、含水エタノール、含水プロパノールなどが挙げられる。更には、超臨界流体として二酸化炭素を用いることもできる。これらの有機溶媒の中では、エタノール又は含水エタノールを使用するのが食品衛生法上、問題が少ないため好ましい。
【0015】
前記甘草又は甘草水抽出残渣から上述した有機溶媒で甘草油性抽出物を得るための条件は特に限定されるものではないが、標準的な方法を示すと、抽出原料に対し2〜10倍量の有機溶媒を加え、攪拌しながら常温で抽出する方法及び加熱還流して抽出する方法がある。また、これらの方法をそれぞれ単独で、又は組み合わせて繰り返し操作すれば、抽出効率が向上し、より好ましい。
【0016】
得られた抽出液は、遠心分離及び濾過により不溶物を取り除いた後、甘草油性抽出物として、そのまま使用することもできるし、更に常法により、濃縮して使用することもできる。また、適当な方法で抽出液を乾燥させれば、甘草油性抽出物として、黄褐色の抽出物粉末を得ることができる。
得られた液状抽出物をそのまま、又は液状抽出物を濃縮したもの、更には液状抽出物の粉末或いは固形の乾燥物が甘草油性抽出物として利用される。
【0017】
得られた油用性甘草抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0018】
−油用性甘草抽出物の精製物−
前記油溶性甘草抽出物の精製物としては、抗菌性を有するグラブリジン、グラブレン及びリコカルコンAのいずれかが好適に挙げられる。
前記精製物は、前記油溶性甘草抽出物を常法により精製することにより得ることができる。
前記精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性炭、多孔性樹脂を用いた方法、吸着剤を用いた方法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などが挙げられる。
前記多孔性樹脂としては、芳香族系又は芳香族系修飾型のものが適当である。使用可能な多孔性樹脂の具体例としては、ダイヤイオンHP,同20,同21、セパビーズSP207,同825,同850(以上、三菱化学社製)、アンバーライトXAD2,同4,同7(以上、オルガノ社製)、等が挙げられる。
また、吸着剤としてはオクタデシルシリカゲル(ODS)が好適に使用される。
【0019】
−没食子酸残基を有する化合物含有植物−
前記没食子酸残基を有する化合物含有植物としては、エピガロカテキンガレート含有植物及びガロタンニン含有植物から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
前記エピガロカテキンガレート含有植物は、ツバキ科カメリア属のチャ(Camellia sinensis)が好適であり、該ツバキ科カメリア属のチャとしては、緑茶、ウーロン茶、紅茶、などが挙げられ、抽出原料としては、葉が用いられる。
【0021】
前記ガロタンニン含有植物としては、タラ、ユカン、ミロバラン、ウワウルシ、コウホネ、ヌルデ、ヨーロッパカエデ、及びカシ類から選択される少なくとも1種が好適である。
前記タラ(マメ科、Caesalpinia spinosa)の抽出原料としては、果皮、幹などが挙げられる。前記ヌルデ(ウルシ科、Rhus javanica)の抽出原料としては、葉にできた虫こぶなどが挙げられる。前記カシ類(ブナ科、Quercus infectoria)の抽出原料としては、葉にできた虫こぶなどが挙げられる。前記ミロバラン(シクンシ科、Terminalia chebula)の抽出原料としては、果実なそが挙げられる。前記コウホネ(スイレン科、Nuphar japonicum)の抽出原料としては、葉などが挙げられる。前記ヨーロッパカエデ(カエデ科、Acer platanoides)の抽出原料としては、葉などが挙げられる。前記ウワウルシ(ツツジ科、Arctostaphylos uva−ursi)の抽出原料としては、葉などが挙げられる。前記ユカン(トウダイクサ科、Phyllanthus emblica)の抽出原料としては、果実などが挙げられる。
【0022】
前記没食子酸残基を有する化合物含有植物から没食子酸残基を有する化合物を抽出する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法により得ることができる。前記抽出物には、抽出液、該抽出液の希釈液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0023】
前記抽出に用いる溶媒としては、水若しくは親水性有機溶媒又はこれらの混合液を室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0024】
前記親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。
【0025】
得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0026】
前記(A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種1質量部に対し、前記(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を0.01〜1000質量部含有することが好ましく、0.1〜100質量部がより好ましく、1〜100質量部が更に好ましい。
【0027】
本発明の抗菌性組成物には、前記(A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種、並びに前記(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物以外にも、組成物の種類、剤型などに応じた公知のその他の成分を添加することができる。該その他の成分としては、例えば、界面活性剤、油脂類、アルコール類、増粘剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、ビタミン類、アミノ酸類などが挙げられる。
【0028】
本発明の抗菌性組成物が適用される微生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細菌、真菌類、などが挙げられる。
【0029】
前記細菌としては、例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌などが挙げられ、また、嫌気性菌、通性嫌気性菌、微好気性菌、好気性菌等のいずれであってもよい。該細菌の具体的な種としては、例えば、Staphylococcus aureusStreptococcus pyogenesEnterococcus faecalisBacillus anthracisBacillus subtilisClostridium tetaniListeria monocytogenesPseudomonas aeruginosaEscherichia coliHaemophilus influenzaeNeisseria gonorrhoeaeMycobacterium tuberculosisCorynebacterium glutamicumStreptomyces antibioticusSalmonella typhiEdwardsiella tardaCitrobacter freundiiVibrio parahaemolyticusMorganella morganiiSeratia marcescensKlebsiella pneumoniaeShigella dysenteriaeYersinia pestisTreponema pallidumLeptospira interroganseCampylobactor jejuniLactobacillus latcisStreptococcus mutansLactobacillus casei等が挙げられる。
【0030】
前記真菌類としては、大きく酵母と糸状菌に分類することができる。前記酵母としては、例えば、Candida albicansC. glabrataC. tropicalisC. parapsilosisC. stellatoideaCryptococcus neoformansSaccharomyces cerevisiae等が挙げられる。前記糸状菌としては、例えば、Aspergillus nigerCladosporium cladosporioidesPaecilomyces variotiiEurotium sp.Penicillium sp.等が挙げられる。
【0031】
本発明の抗菌性組成物は、飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧料のいずれかに配合して、保存性を向上させることができる。なお、本発明の抗菌性組成物には、一般に用いられている抗菌剤、防腐剤、鮮度保持剤、保存剤、酸化防止剤、日持ち向上剤などを合わせて配合することができる。
【0032】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。なお、前記飲食物は上記例示に限定されるものではない。
【0033】
前記化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、トニック、リンス、シャンプー、アストリンゼント、などが挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(製造例1)
−油溶性甘草抽出物Aの製造−
アフガニスタン産甘草(Glycyrrhiza glabra)1000gを5cm程度の大きさに切断した後フラスコに取り、メタノール5000mlを加えて、80℃で2時間抽出した後、ろ過した。得られたろ液を減圧下で濃縮した後、減圧乾燥を行って、油溶性甘草抽出物Aを195g得た。
【0036】
(製造例2)
−グラブリジンの製造−
製造例1で得られた抽出物100gを、シリカゲル、ODSカラムクロマトグラフィーを繰り返し行った後、再結晶を行って、グラブリジンを1.0g得た。
【0037】
(製造例3)
−油溶性甘草抽出物Bの製造−
中国・新疆産甘草(Glycyrrhiza inflata)1000gを1cm程度の大きさに切断後フラスコに取り、酢酸エチル5000mlを加えて、80℃で2時間抽出した後、ろ過した。得られたろ液を減圧下で濃縮した後、減圧乾燥を行って、油溶性甘草抽出物Bを93g得た。
【0038】
(製造例4)
−リコカルコンAの製造−
製造例3で得られた抽出物50gを、シリカゲル、ODSカラムクロマトグラフィーを繰り返し行った後、再結晶を行って、リコカルコンAを2.1g得た。
【0039】
(製造例5)
−油溶性甘草抽出物Cの製造−
中国・東北産甘草(Glycyrrhiza uralensis)100gを粉砕後フラスコに取り、塩化メチレン500mlを加えて、80℃で2時間抽出した後、ろ過した。得られたろ液を減圧下濃縮した後、減圧乾燥を行って、油溶性甘草抽出物Cを5g得た。
【0040】
(製造例6)
−緑茶抽出物の製造−
緑茶100gを粉砕後フラスコに取り、水500mlを加えて、80℃で2時間抽出した後、ろ過した。得られたろ液を減圧下濃縮した後、減圧乾燥を行って、緑茶抽出物30gを得た。
【0041】
(製造例7)
−タラ抽出物の製造−
タラの幹100gを粉砕後フラスコに取り、50%エタノール水溶液500mlを加えて、80℃で2時間抽出した後、ろ過した。得られたろ液を減圧下濃縮した後、減圧乾燥を行って、タラ抽出物28gを得た。
【0042】
(製造例8)
−ヌルデ抽出物の製造−
ヌルデの虫こぶ100gを粉砕後フラスコに取り、70%アセトン水溶液500mlを加えて、80℃で2時間抽出した後、ろ過した。得られたろ液を減圧下濃縮した後、減圧乾燥を行い、ヌルデ抽出物33gを得た。
【0043】
(実施例1)
−抗菌活性の測定方法−
製造例1,3,5の3種の油溶性甘草抽出物A〜C、製造例2のグラブリジン、及び製造例4のリコカルコンA、並びに製造例6〜8の没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物について、下記の微生物に対する抗菌活性についてブレインハートインヒュージョン寒天培地を用いた寒天培地希釈法による最小発育阻止濃度(MIC)で評価した。培養温度は30℃、培養時間は48時間とし、発育の有無を肉眼で判断した。結果を表1に示す。なお、表1中の数値はMIC(μg/mL)であり、抗菌活性が強いほどこの数値は小さくなる。
【0044】
<試験微生物>
A.スタヒロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus
B.バチルス ズブチリス(Bacillus subtilis
C.ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans
D.ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei
【0045】
<抗菌活性試験結果>
【表1】

表1の結果から、製造例1,3,5の3種の油溶性甘草抽出物A、B、Cの最小発育阻止濃度(MIC)は200〜400μg/mLであり、製造例2のグラブリジン、及び製造例4のリコカルコンAの最小発育阻止濃度(MIC)は12.5〜25μg/mLであった。
これに対し、製造例6〜8の没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物の抗菌活性は弱く、緑茶抽出物の最小発育阻止濃度(MIC)が400μg/mLを示した以外には抗菌活性は認められなかった。
【0046】
(実施例2)
−油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種と没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物との併用による抗菌活性の試験−
製造例1,3,5の3種の油溶性甘草抽出物A〜C、製造例2のグラブリジン、及び製造例4のリコカルコンA、並びに製造例6〜8の没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物についての抗菌相乗効果を実施例1と同様にして調べた。結果を表2〜表13に示す。なお、表2〜表4は、スタヒロコッカス アウレウスに対するMICの結果、表5〜表7は、バチルス ズブチリスに対するMICの結果、表8〜表10は、ストレプトコッカス ミュータンスに対するMICの結果、表11〜表13は、ラクトバチルス カゼイに対するMICの結果をそれぞれ示す。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
【表10】

【0056】
【表11】

【0057】
【表12】

【0058】
【表13】

【0059】
表2〜表13の結果から、油溶性甘草抽出物と没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物とを併用した場合には、油溶性甘草抽出物のMIC=3.13〜25μg/mLと顕著な抗菌作用を示し、油溶性甘草抽出物単独の場合のMIC=200〜400μg/mLを大幅に低下させることができる。また、油溶性甘草抽出物の精製物であるグラブリジン及びリコカルコンAについても、これらの単独の場合のMIC=12.5〜25μg/mLであったが、没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物とを併用した場合は、MIC=3.13〜6.25μg/mLであった。
従って、油溶性甘草抽出物及びその精製物と没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物とを併用することによって、顕著な抗菌作用の相乗効果を有することが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の抗菌性組成物は、優れた抗菌性と安全性を兼ね備えており、各種飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧料のいずれかに幅広く用いることができ、これらの保存性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種、並びに(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を含有することを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項2】
油溶性甘草抽出物が、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glycyrrhiza inflata)及びグリチルリーザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)から選択される少なくとも1種の抽出物である請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
油溶性甘草抽出物の精製物が、グラブリジン、グラブレン及びリコカルコンAのいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
没食子酸残基を有する化合物植物が、エピガロカテキンガレート含有植物及びガロタンニン含有植物から選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の抗菌性組成物。
【請求項5】
エピガロカテキンガレート含有植物が、ツバキ科カメリア属のチャ(Camellia sinensis)である請求項4に記載の抗菌性組成物。
【請求項6】
ツバキ科カメリア属のチャが、緑茶、ウーロン茶、及び紅茶のいずれかである請求項5に記載の抗菌性組成物。
【請求項7】
ガロタンニン含有植物が、タラ、ユカン、ミロバラン、ウワウルシ、コウホネ、ヌルデ、ヨーロッパカエデ及びカシ類から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の抗菌性組成物。
【請求項8】
(A)油溶性甘草抽出物及び該油溶性甘草抽出物の精製物から選択される少なくとも1種1質量部に対し(B)没食子酸残基を有する化合物含有植物の抽出物を0.01〜1000質量部含有する請求項1から7のいずれかに記載の抗菌性組成物。
【請求項9】
飲食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧料のいずれかに用いられる請求項1から8のいずれかに記載の抗菌性組成物。

【公開番号】特開2006−45121(P2006−45121A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228602(P2004−228602)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】