説明

抗菌性組成物

本発明は抗菌剤とともにテルペノイドを含む抗菌性組成物を提供し、微生物感染を予防する、感染に有効である、または感染を処理する、あるいは微生物の成長または増殖を予防することを含む多数の用途におけるかような組成物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性組成物に関する。特に、本発明は抗菌剤とともにテルペノイドを含む抗菌性組成物に関するものであり、微生物感染を予防する、感染に対抗する、または治療する、あるいは微生物の成長または定着を阻止することを含む種々の用途におけるかような組成物の使用に関する。抗菌性組成物の特定の用途としては、家禽小屋のような動物床敷産業における使用、消毒剤および殺菌剤のような一般的な抗菌性製品における使用、パッケージ材料のような食品産業における使用、製品に直接処理するための使用、植物病原菌の拡大を阻止するための土壌、根覆い、または植物材料への適用のための使用が挙げられ、また、医薬用途に幅広く用いることができる。
【背景技術】
【0002】
家禽小屋において、敷料で微生物が活性化することにより、ニワトリの排泄物中の尿酸がアンモニアに転換する。リター(litter)中のアンモニア濃度が高くこれがアルカリ性となる、家畜密度の高い家禽小屋においては、これは特に問題となる。これが、アンモニアをアンモニアガスへと転換させ、このアンモニアガスが、濃度が上昇すると、鳥に毒性となり、大気中に放出されると酸性雨の主要な原因となる。したがって、動物小屋からのアンモニア放出は監視下にあり、新法により農家は厳格な放出規制(IPPC)を順守するように強いられている。実際の問題として、IPPCの実現は40,000を超す鳥を有する農家は、(i)アンモニアの放出を最小限にし、(ii)家禽小屋から関連する臭いを減らし、(iii)適所に肥料管理計画を有する必要がある。
【0003】
アンモニアリッチである寝床で飼育されている家禽は、産物である食用製品の質を落とす、足しょ皮膚炎足(foot pad dermatitis)(FPD)に加え、足または胸での「腐食火傷(caustic burns)」になる可能性がある。アンモニアによる「腐食火傷」の予防は、動物の健康増進になるばかりでなく、良好な動物の成長および高品質の動物製品の結果として農家の損失を減ずるものでもある。したがって、家禽小屋における微生物活性を最小限にする必要がある。
【0004】
床敷中の尿酸のアンモニアおよびアンモニウムへの微生物転換を予防するための微生物活性の低減は、寝床の湿度をできるだけ低く保つことによって現在のところ達成される。この点において効果的であるとしている報告は、湿気を吸収する敷料を使用している。しかしながら、実際には、鳥の家畜密度がしばしば高いので、寝床の湿度レベルを低く維持することは困難であり、結露(condensation)および液体の流出が起こり、その結果寝床が著しく湿ったものとなる。この湿度は微生物活性を助長し、その結果、ニワトリの排泄物中に存在する尿酸からアンモニウムが形成される。
【0005】
アンモニウムは、pHが7を超えるとアンモニアに変換し、pH8を超えるとアンモニアの濃度が顕著になってくる。敷料が苛性になるのを避けるため、尿酸がアンモニアに変換したらすぐに、ミョウバン(KAl(SO.12HO)または、重硫酸ナトリウムのような酸性塩をpHを低く保つために添加することができる。しかしながら、これらの化合物は永続的ではなく、農家にとって高価である。さらに、残ったリター中の多量のアルミニウムが、重金属濃度が高いためにごみ処理問題を生み出す。結果として、かような「酸性にする物質」の使用は一般的ではなく、家禽小屋におけるアンモニア形成は当たり前となっている。
【0006】
肉や卵用に飼育されているニワトリのような動物使用の他の問題は、食品を介した病原体のリスクである。スーパーマーケットで売られている冷凍チキンの75−95%がカンピロバクターに感染していて、10%がサルモネア菌に感染していると推定される。寝床を製造し、群れを横たわせる農家にとって、動物小屋でのサルモネア菌の検出は、今や全ての群れを殺戮する必要があり、その結果農家にとって多大な経済損失となることを意味する。これらのバクテリアは動物小屋、特に寝床から動物自身にたどり着くと考えられている。これらの問題の原因は、これらのバクテリアに最適な生育環境を床敷が提供していることであり、最適な生育環境には、これらのバクテリアの成長範囲内に適している、高温(25−35℃)、高湿度レベルおよび排泄物中の高濃度の栄養成分、およびpH値を含む。したがって、これらの病原体の成長を抑制するために、床敷内の微生物活性の量を減少させることが活に必要である。
【0007】
壊死桿菌(Fusobacterium necrophorum)およびバクテロイデスメラニノジェニクス(Bacteroides melaninogencus)は、足根(foot root)(足皮膚炎)の病原体であり、足根は、ヒツジ、ヤギ、ウシの足指間の領域が感染し、蹄を腐らせる病気である。病気は非常な痛みを伴い、接触伝染性である。接触によりバクテリアを死滅させることができる床敷によって、これらのバクテリアにより動物が双蹄となる害を顕著に減ずることができるであろう。
【0008】
アルコール類、アルデヒド類、酸化剤、フェノール類または第4級アンモニウム化合物に基づいたものとして特徴付けられうる、市場での合成殺菌剤および殺菌剤は幅広く存在する。かような物質は、一般的には、微生物を死滅させるのに効果的であるが、下記の問題がある;(i)バクテリアはアルデヒド類に対して耐性を獲得するようになる;(ii)酸化剤およびフェノール類は過度に腐食性である;(iii)アルデヒド類は有機物によって不活性化される;(iv)アルコール類は非永続性である;(v)これらの多くはヒトに毒性である、または刺激物として働く;あるいは(vi)これらは負の環境影響を有する。
【0009】
上記問題によって、バニリンのような抗菌性を有する精油および他の天然物のような「天然」でより「環境に優しい」抗菌剤への要求が高まってきている。精油の一般的な例として、チモール(タイム由来の天然フェノール性生成物)、ティーツリー油由来の産物、クローブ(オイゲノール)、ユーカリ、マツなど由来の他の精油を含む産物などが挙げられる。しかしながら、精油および他の植物由来抗菌産物は、抗菌性が弱く、有効量とするためには濃度を高くする必要があり、高価となるばかりでなく、使用者を不快にさせるこれらの産物の強い臭いを発するようになる。したがって、本分野において、公知の抗菌剤の活性を増加させる必要性がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、テルペノイドおよびこの誘導体が公知の抗菌剤の抗菌性を顕著に向上させることを見出した。
【0011】
したがって、本発明の第一の態様は、テルペノイドまたはこの誘導体、および細胞膜の完全性(integrity)または、タンパク質合成を妨げる抗菌剤を含む抗菌性組成物を提供する。
【0012】
第二の態様において、細胞膜の完全性(integrity)または、タンパク質合成を妨げる抗菌剤の抗菌活性を向上させるためのテルペノイドまたはこの誘導体の使用を提供する。
【0013】
本発明者らは、木削りかす(wood shavings)を緩やかに加熱すると抗菌性となるメカニズムを研究し、驚くべきことにテルペノイド、デヒドロアビエチン酸、および抗菌剤であるバニリンの双方を含むこれらの削りかすからの抽出物が高い抗菌性を有することを観察した。しかしながら、実施例1で述べるように、最も驚くべきことは、双方の物質を含む抽出物がバニリンのみ、すなわちテルペノイドと組わせていないときの活性と比較して1000倍より高い抗菌性を示したことを見出したことである。実施例3で示すように、この効果は、アビエチン、デヒドロアビエチンおよびピマル酸のようなジテルペノイドにだけ制限されるものではなく、ウルソン酸、オレアノール酸(oleonic acid)およびベツリンのようなトリテルペノイドの範囲も及ぶ。一般的に、抗菌物質は純粋な形で用いられ、したがって、発明者らは、デヒドロアビエチン酸のようないかなるテルペノイドもバニリンのような天然または合成の抗菌剤の抗菌活性を驚くべきことに高めることができることを初めて見出したと確信している。
【0014】
「抗菌剤の抗菌活性を向上させる」という用語は、抗菌剤が、テルペノイド非存在よりもテルペノイドの存在下でより高い抗菌活性を示すことを意味する。驚くべき活性の向上は、微生物の細胞膜の完全性またはタンパク質合成を補完するように双方の物質が妨げるという相乗的効果の結果であると考えられる。したがって、抗菌剤は微生物の細胞膜の完全性または微生物のタンパク質合成(例えばRNA合成機構)の何れかを阻害することができ、テルペノイドはこれらの剤を細胞内に入りやすくするまたはこれらの機能を高めることができる。
【0015】
抗菌剤の抗菌活性は、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも8倍、または少なくとも10倍、増加されうる。抗菌活性は、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、200倍、300倍、500倍、700倍、または1000倍増加し得る。抗菌活性は、少なくとも1200倍、少なくとも1500倍、少なくとも1700倍または少なくとも2000倍またはそれ以上、増加さえしうる。抗菌活性のかような増加は、実施例で述べられるようなアッセイを用いて決定することができる。
【0016】
本発明者らは、種々の加熱した植物材料を試験し、テルペノイドおよび抗菌剤を含む、例えば、松材や樹皮のような種々の広葉樹または針葉樹からの加熱した木の削りかす(wood shavings)の加熱物が驚くべき抗菌性を示すことを見出した。したがって、テルペノイドおよび/または抗菌剤は、広葉樹または針葉樹のような植物由来でありうる。テルペノイドおよび/または抗菌剤の起源となりうる適切な広葉樹種の例としては、ヒイラギ(モチノキ属)、カシ(コナラ属)、ブナノキ(ブナ属)、セイヨウトネリコ(トリネコ属)、カエデ(カエデ属)、ポプラ(ポプラ(Populus)属)、ヤナギ(ヤナギ属)、およびクリ(ヨーロッパグリ(Castanea sativa))のようなセイヨウトチノキ(クリ属)が挙げられる。
【0017】
テルペノイドおよび/または抗菌剤が得られうる適切な針葉樹種としては、針葉樹(conifer)または松の木が挙げられる。したがって、針葉樹の適切な例としては、マツ(マツ属)、トウヒ(トウヒ属)、ヒマラヤスギ(ヒマラヤスギ属)、モミ(モミ属)、カラマツ(カラマツ属)、ダグラスファー(トガサワラ属)、アメリカツガ(ドクニンジン属)、糸杉(ヒノキ科)、アメリカスギ(セコイア属)またはイチイ(イチイ属)が挙げられる。本発明者らは、マツ、特にヨーロッパアカマツ(Scots Pine)由来の材料が、驚くべき抗菌活性を示し、したがって、本発明の組成物の有用な起源を提供することを見出した。よって、テルペノイドおよび/または抗菌剤は、マツ科、好適には、ヨーロッパアカマツ(Pinus silvestrus)またはヨーロッパクロマツ(Pinus negrus)のようなマツ属起源でありうる。木由来のロジンおよび不均化(disproportionated)ロジンのような材料もまた、本発明における使用のために適したテルペノイド源である。
【0018】
テルペノイドおよび/または抗菌剤の起源となる植物材料は、例えば、少なくとも50℃、または少なくとも115℃の温度に暴露することによって始めに加熱してもよい。植物材料は、200℃より低い、または150℃より低い温度に暴露されうる。植物材料は、75℃〜175℃の間、または100℃〜160℃の間の温度に暴露されうる。植物材料は、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも5時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間または少なくとも72時間、温度処理に暴露されうる。本発明者らは、かような熱処理の暴露が本発明の抗菌組成物をもたらすことを見出した。
【0019】
第一の態様の組成物、または第二の態様の使用で用いられるテルペノイドは、イソプレンユニット、すなわち、2−メチル−1,3−ブタジエンまたはCH=C(CH)CH=CH)から構成される。イソプレンユニットは、一般式(I):
【0020】
【化1】

【0021】
で表わすことができる。
【0022】
テルペノイドは、親水性部分(通常カルボン酸)および疎水性部分(通常多環構造)を有する。テルペノイドは樹脂酸であってもよい。樹脂酸は、木の中で樹脂道を囲む実質的な上皮細胞によって産生される保護剤および木材防腐剤であってもよい。
【0023】
テルペノイドはイソプレンユニットの数にしたがって分類される。したがって、テルペノイドはジテルペノイドまたはトリテルペノイドであってもよい。ジテルペノイドは、4つのイソプレンユニットを有し、トリテルペノイドは6つのイソプレンユニットを有する。第一または第二の態様で用いられうるのに適したトリテルペノイドは、ウルソン酸、オレアノール酸、ベツリン酸、モロン酸(moronic acid)およびルペオール(lupeol)からなるトリテルペノイドの群から選択されうる。トリテルペノイドは実施例3で述べる。
【0024】
樹脂酸および酸化樹脂酸を含むジテルペノイドは、置換されたデカリン骨格からなる疎水性部分および一の水素結合ドナー基を有する親水性領域を有する。ジテルペノイドは、実施例1および2において述べる。適切なジテルペノイドは、デヒドロアビエチン酸;アビエチン酸;ピマル酸;カウレン酸;ent−3−p−ヒドロキシカウレン酸;シルビン酸(salvic acid);トタロール(torarol);18−アセトキシ−cis−クレロダ(cleroda)−3,13−Z−ジエン−15−酸(oic acid);アビエタノール(abietinol)(7,13−アビエタジエン−18−オール(7,13−abietadien−18−ol));デヒドロアビエチルグアニジン(dehydroabieticylguanidines);ピシフェリン酸;フェルギノール;イソピマル酸;7−oxo−デヒドロアビエチン酸;7−ヒドロキシ−デヒドロアビエチン酸;および13−ヒドロキシ−ポドカルパ(podocarpa)−8,11,13−トリエン−18−酸(oic acid)からなるジテルペノイドの群から選択されうる。
【0025】
アビエチン酸は化学式(II)によって表わすことができる。
【0026】
【化2】

【0027】
したがって、第一の態様の組成物、または第二の態様の使用におけるテルペノイドは、アビエチン酸またはこの誘導体でありうる。
【0028】
本発明者らは、これらが、アビエチン酸および抗菌剤を含む殺菌剤または殺菌組成物を製造する最初であることを確信している。したがって、第一の態様の組成物は、消毒剤または殺菌剤でありうる。消毒剤は、微生物感染または敗血症を減らすまたは予防するために生体組織または皮膚に対して適用されるどんな抗菌性物質であってもよい。したがって、消毒剤中の活性成分は毒性または刺激を引き起こすことなく、皮膚や組織に適用され、それでもなお微生物を死滅させることができる十分な選択性と濃度を有することが好ましい。殺菌剤は、非生物物質または表面上に見出せる微生物を死滅させることができるどんな抗菌性の物質であってもよい。
【0029】
本発明にしたがって用いられうる適切なアビエチン酸は、ネオ−アビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸、デヒドロアビエチン酸、またはこれらの誘導体が挙げられる。
【0030】
したがって、好適には、テルペノイドはデヒドロアビエチン酸(DHAA)、またはこれらの誘導体である。デヒドロアビエチン酸および適切なこの誘導体は一般式(III),(IV)または(V)によって表すことができる:
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
この際、Rは、COH、COMe、CHOHまたはCHOであり;RはCOH,COMeまたはCHOHであり;およびRはCOH、COMeまたはCHOHである。
【0035】
本明細書で開示されている特性を有する誘導体の範囲を形成するために、テルペノイドは、例えば、脱水、ハロゲン化、酸化またはメチル化を用いた種々の方法において改変することができる。したがって、テルペノイドの適切な誘導体としては、テルペノイドの、脱水された、酸化された、メチル化されたまたはハロゲン化された形態が挙げられる。例えば、アビエチン酸はピマル酸を形成するために脱水される。また、DHAAは、12,14−ジクロロデヒドロアビエチン酸を形成するためにハロゲン化されうる。
【0036】
テルペノイドまたはその誘導体は、対応する塩(例えば、水酸化DHAA)を形成するために、塩基、例えば、水酸化ナトリウムで処理してもよい。例えば、スプレーまたは溶液自身の浸漬によって表面に適用される、溶液作成のための水に塩は容易に溶解することができる。
【0037】
本発明にしたがって用いられる抗菌剤は微生物の細胞膜の完全性を妨げることができる。これが生ずるメカニズムは異なる物質によって異なると考えられるが、抗菌剤の油溶性部分が微生物の細胞膜のリン脂質構成成分と相互作用し、膜におけるカルシウムおよびカリウムのイオンチャネルの活性を修飾することが考えられる。さらに、抗菌剤は、その生理化学的性質および分子形によって細胞膜と相互作用し、それにより膜酵素、膜キャリア分子および膜レセプターの活性に影響を与えることができる。これらのメカニズムの一部またはすべてによって、微生物の細胞膜の完全性を妨げ、細胞死に至らしめることができる。
【0038】
植物由来のような多くの精油は種々の抗菌活性を示す。したがって、本発明の一実施形態は、第一または第二の態様において用いられる抗菌剤が精油を含む。用いられうる好適な精油としては、タイム油(活性成分:チモール)、丁子油(活性成分:オイゲノール)、ティーツリー油(活性成分テルピネン(Terpinen)−4−オール)、アニス油、ショウブ(Calamus)油、樟脳油、シダーウッド(Cedar wood)油、桂皮油、シトロネラ油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ナツメグ油、パルマローザ(Pamarosa)油、ペパーミント油、ローズマリー油、メボウキ油、ベチベル油、黒コショウ油、ジンジャー油、モツヤクジュ油(Myrrh oil)、オレガノ(Oregano)油、ロレール(Bay leave)油、ゼラニウム油、オレンジ油、ジラ油または冬緑油が挙げられる。
【0039】
したがって、抗菌剤は、チモールまたはこの誘導体を含んでいてもよい。チモールの化学式および構造は本明細書で開示される。
【0040】
精油は、上述した方法で微生物細胞膜の完全性に相互作用する、すなわち、油の油溶性部分が細胞膜の脂質部分と反応し、膜のイオンチャネルの活性を修飾すると考えられる。さらに、精油は、その生理化学的性質および分子形によって細胞膜と相互作用すると考えられる。精油は、通常生物学的活性成分の混合物を含むが、抗菌活性に寄与すると考えられている主成分は、フェノール類である。精油中に見出されるフェノール化合物の例を表1に記載する。
【0041】
【表1】

【0042】
したがって、本発明にしたがって用いられる抗菌剤は、表1にリストされたフェノール化合物のいかなる使用にまで拡張されうる。
【0043】
抗菌活性を有するとも考えられている精油中の他の生物学的活性化合物としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カルバクロール(Carvacol)、クレオゾール、イソオイゲノール、ハイドロキノン、グアヤコール、サリチル酸メチル(Methyl salycilate)、Trans−アネトール、メチルオイゲノール、メチルカビコール(Methyl chavicol)、p−メトキシフェニルアセトン、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒドおよびクミンアルデヒドが挙げられる。したがって、本発明の抗菌剤は、これらの化合物のいかなる形態も含みうる。
【0044】
実施例で述べているように、本発明者らは、薬剤、バニリンの抗菌活性が、テルペノイドであるデヒドロアビエチン酸と併用すると非常に増強されることを示した。したがって、抗菌剤はバニリンまたはその誘導体でありうる。バニリン(メチルバニリンまたは4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドとしても知られる)は分子式Cを有し、式VIによって表される:
【0045】
【化6】

【0046】
したがって、一実施形態において、本発明の第一の態様の組成物は、デヒドロアビエチン酸またはこの誘導体、およびバニリンまたはこの誘導体を含む。第二の態様の使用の一実施形態において、デヒドロアビエチン酸またはこの誘導体は、バニリンまたはこの誘導体の抗菌特性を向上させるために用いられる。バニリンの一般的な誘導体は、式VIIによって表されるバニリン酸である:
【0047】
【化7】

【0048】
他のバニリンの適切な誘導体としては、エチルバニリンが挙げられる。
【0049】
図2に示すように、本発明者らは、DHAAのようなテルペノイドによってスチルベンの抗菌活性を驚くべきことに増大させることができることを示した。したがって、他の実施形態において、抗菌剤はスチルベン、またはこの誘導体でありうる。スチルベンには2つの可能なアイソマー、シス−およびトランス−アイソマーが存在し、式VIIIおよびIXで表される:
【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
実施例12で述べるように、本発明者らは、コニフェルアルデヒド(coniferaldehyde)の抗菌活性がDHAAのようなテルペノイドによって驚くべきことに増強されうることを示した。したがって、他の実施形態において、抗菌剤はコニフェルアルデヒドまたはこの誘導体であり、式Xによって表される:
【0053】
【化10】

【0054】
実施例8で述べられているように、本発明者らは、デヒドロジンゲロン(dehydrozingerone)の抗菌活性もまた、DHAAのようなテルペノイドによって驚くべきことに増強されうることも示した。したがって、さらに他の実施形態において、抗菌剤は、デヒドロジンゲロンまたはこの誘導体であり、式XIによって表される:
【0055】
【化11】

【0056】
したがって、他の実施形態において、本発明の第一の態様の組成物は、デヒドロアビエチン酸もしくはこの誘導体、バニリンもしくはこの誘導体および/またはスチルベンおよび/またはコニフェルアルデヒドおよび/またはデヒドロジンゲロン、もしくはこの誘導体を含む。
【0057】
さらに、他の実施形態において、第二の態様の使用は、バニリンまたはこの誘導体の抗菌特性を上昇させるために、デヒドロアビエチン酸および/またはスチルベンおよび/またはコニフェルアルデヒドおよび/またはデヒドロジンゲロン、あるいはこれらの誘導体を含む。
【0058】
さらに他の実施形態において、抗菌剤はタンパク性であり、少なくとも一のポリペプチドを好適には含む。結果として、薬剤は対象による消費の際にプロテアーゼ酵素によって消化される。例えば、抗菌剤は、34アミノ酸を有する多環式のペプチド抗菌性化合物であるナイシンである。対象による消費の際に、ナイシンは対象に存在するプロテアーゼによって急速に不活化される。実施例5で述べられているように、本発明者らはデヒドロアビエチン酸が水にあまり溶解せず、デヒドロアビエチン酸およびバニリンの双方を含む材料からの水抽出物が驚くべきことに微生物に対して非毒性であることを示した。代わりに、処理した材料では抗菌活性が残っている。したがって、デヒドロアビエチン酸が容易に溶解しないばかりでなく、変性したタンパク質ともに対象に対してなんら毒性効果を有しないので、デヒドロアビエチン酸をナイシンのようなタンパク性の抗菌剤と組み合わせると、非常に安全な製品となるであろう。
【0059】
本発明の抗菌剤として用いられうる、前述した「天然物」に加え、微生物の細胞膜を破壊もでき、微生物の死滅を引き起こし、それ故、本発明にしたがった抗菌剤として用いることができる化学薬品も幅広く存在する。これらの化合物は、アルコール類、アルデヒド類、酸化剤、フェノール類または第4級アンモニウム化合物に分類されうる。通常、かような化合物は表面の清浄用や水道において(例えば塩素)用いられる。したがって、デヒドロアビエチン酸のようなテルペノイドと組み合わせてこれらの抗菌活性を増加させることによって希釈した際にこれらの化合物をより効果的にすることができる。抗菌剤は、抗生剤であってもよいし、抗生剤でなくともよい。抗菌剤は亜鉛のような重金属であってもよいし、重金属でなくともよい。
【0060】
本発明者らは、テルペノイドの他、極性、酸性基または部分、および強固な疎水性部分を有する他の分子もまた、バニリンのような抗菌剤の抗菌活性を増加させるために用いられうることを見出した。
【0061】
したがって、本発明の第三の態様は、精油またはバニリン、もしくはこれらの誘導体の抗菌活性を増加させるための、極性部および強固な疎水性部分を有する化合物の使用を提供する。
【0062】
極性部としては、水酸基、例えば、カルボン酸部が挙げられる。疎水性部は、少なくとも一の芳香族環、好適には複数の芳香族環を含みうる。化合物は、イソフラバノイドフィトアレキシン(isoflavanoid phyto−alexin)(例えば、ファセオリン(phaseolin)、グリセオリン(glyceollin)または、プテロカルパン(pterocarpan)でありうる。精油は、本明細書ですでに述べたもの、またはこの活性成分うちいずれかでありうる。第三の態様の使用は、本発明の下記態様のいずれにおいて述べられている適用のいずれに対しても適用することができる。
【0063】
本発明者らは、本発明にしたがって用いられうる本明細書で述べられる各抗菌剤の化学的構造について注意深く考慮し、同じ化学式によって表されることを見出した。
【0064】
したがって、抗菌剤は式XIIによって表される;
【0065】
【化12】

【0066】
この際、R、R、R、R、RおよびRは独立して、H;OH;C−Cアルキルまたはアルキレン;C−Cアルコキシ;C−C飽和または不飽和アルデヒド;C−Cエステルまたはケトン;C−Cカルボキシル;およびC−Cアルキル置換フェニル基からなる群から選択される。
【0067】
は、OH、C−Cアルキルもしくはアルコキシ、C−Cアルデヒド、またはC−Cアルキル置換フェニル基でありうる。Rは、OH、Cアルコキシ、Cアルデヒド、またはC−Cアルキル置換フェニル基でありうる。
【0068】
は、H、C−CアルキルもしくはアルコキシまたはC−Cエステルでありうる。Rは、H、C−Cアルキル、もしくはC−Cアルコキシ、またはC−Cエステルでありうる。
【0069】
は、H、またはC−Cアルキルでありうる。Rは、H、またはC−Cアルキルでありうる。
【0070】
は、H、C−Cアルキルもしくはアルキレン、C−Cアルコキシ、C−C飽和もしくは不飽和アルデヒド、またはC−Cケトンでありうる。Rは、H、C−Cアルキルもしくはアルキレン、C−Cアルコキシ、C−C飽和もしくは不飽和アルデヒド、またはC−Cケトンでありうる。
【0071】
は、H、またはC−Cアルキルでありうる。Rは、H、またはC−Cアルキルでありうる。
【0072】
は、H、またはC−Cアルキルでありうる。Rは、H、またはC−Cアルキルでありうる。
【0073】
、R、R、R、RおよびRは、下記表で規定されるものでありうる。
【0074】
【表2】

【0075】
当然のことながら、一般式XIIを有し、上記リスト中で特に述べられていない酸化精油またはこの誘導体の化合物が多数存在する。
【0076】
第四の態様において、テルペノイドまたはこの誘導体、および式XII:
【0077】
【化13】

【0078】
この際、R、R、R、R、RおよびRは独立して、H;OH;C−Cアルキルまたはアルキレン;C−Cアルコキシ;C−C飽和または不飽和アルデヒド;C−Cエステルまたはケトン;C−Cカルボキシル;およびC−Cアルキル置換フェニル基からなる群から選択される:で表される抗酸化剤を含む抗菌性組成物が提供される。
【0079】
第五の態様において、式XII:
【0080】
【化14】

【0081】
この際、R、R、R、R、RおよびRは独立して、H;OH;C−Cアルキルまたはアルキレン;C−Cアルコキシ;C−C飽和または不飽和アルデヒド;C−Cエステルまたはケトン;C−Cカルボキシル;およびC−Cアルキル置換フェニル基からなる群から選択される:で表される抗酸化剤の抗菌活性を増加させるためのテルペノイドまたはこの誘導体の使用が提供される。
【0082】
本発明に係る抗菌性組成物は、バクテリアであれ真菌であれ、微生物感染を予防し、抵抗し、または治療するために用いられうる。第一または第四の態様の抗菌剤組成物を用いて治療される、または予防されるバクテリア感染は、グラム−陽性またはグラム−陰性バクテリア感染でありうる。対処するために組成物が用いられるグラム−陽性菌の例としては、バチルス属菌(Bacillus spp.)、クロストリジウム属菌(Clostridium spp.)、マイコバクテリウム属菌(Mycobacterium spp.)、スタヒロコッカス属菌(Staphylococcus spp.)、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus spp.)およびエンテロコッカス属菌(Enterococcus spp.)を含むファーミキューテス門(phylum Firmicutes)が挙げられる。例えば、グラム陽性菌としては、黄色ブドウ球菌(S.aureus)でありうる。対処するために組成物が用いられるグラム−陰性菌の例としては、(Salmonella enterica、S.enteritidisまたはS.typhimuriumのような)サルモネラ属菌(Salmonella spp.)、および(E.coliのような)エシェリキア属菌(Escherichia spp.)のような腸内細菌(Enterobaceriaceae)が挙げられる。カンピロバクター属菌(Campylobacter spp.)およびシュードモナス属菌(Pseudomonas spp.)は、本発明の組成物を用いて治療される他のグラム陰性菌の例である。
【0083】
ヒトまたは動物に感染し、組成物が対抗するために用いられうる真菌感染の例は主に皮膚病である。例えば、対抗される真菌は、ペニシリウム属菌(Penicillium spp.)またはアスペルギルス属菌(Aspergillus spp.)のような糸状菌が挙げられる。皮膚に感染する真菌症の例は、鵝口瘡(病原体カンジダ・アルビカンス)のようなイースト菌感染症に加えて、癜風(病原体ピチロスポルム−オルビクラーレ(Pityrossporum orbicular))、白癬、水虫およびたむし(病原体は、小胞子菌属、白癬菌属、および表皮菌の真菌である)である。また、皮膚の剥離を引き起こす頭皮(ふけ)の真菌感染は、発明の組成物を用いて治療することができる。哺乳類を感染させる真菌感染に加えて、本発明の組成物は、植物または植物製品の真菌感染に対抗するために用いられうる。植物が枯れたときでさえ、植物残渣または胞子(sporulate)上に生き残っている真菌は特に興味深い。枯れた植物材料に生存し、重大なダメージを引き起こす真菌症の例としては、疫病菌属、フハイカビ属、スクレロティニア属、バーティシリウム属、ベンチュラ属(Ventura)、ボトリチス属およびフサリウム属が挙げられる。特に有害な病気の一つが、Sudden Oak Deathの病原体であるPhytophthora ramorumである。この病気はシャクナゲ種に感染し、オーク(コナラ属)を破壊することができる。本発明の組成物は、S.cerevisiaeのようなイースト菌感染に対抗するために用いることができる。
【0084】
本発明の組成物を用いて対抗できる微生物の範囲が幅広いので、本発明者らは、第一または第四の態様の組成物は、公知の抗菌剤の活性を増加させることによって、微生物の活性または存在すら問題となる工業用、家庭用、ヘルスケア、包装およびエンジニア用途のような(臨床的な意味であるか否かにかかわらず)幅広い抗菌性の用途に対して適用することができると信じている。好ましくは、組成物は、溶解した(すなわちアルコールまたはアセトン中に溶解した)形態で、または、水溶性とすることができる塩に転換させることによって適用することができる。しかしながら、塩の形態ではない場合、一旦溶質を蒸発させると、組成物は、支持体表面または材料上に水不溶性形態として、すなわち、吸収され、一体化されるまたは塗布される形で存在する。
【0085】
したがって、本発明の第六の態様では、第一または第四の態様の抗菌性組成物を含む液体製剤が提供される。
【0086】
哺乳類への毒性が低く、心地よいまたは何ら味やにおいがなく、良好で幅広い抗菌特性を有する天然化合物は、多くの用途を有する。例えば、動物の敷料または寝床を衛生的にし、または、表面、例えば食品の調理用に用いられるものを衛生的にするために用いられる。組成物は、また殺菌性のハンドウォッシュおよびソープ、フケ防止シャンプー、皮膚クリーム、およびマウスウォッシュ中に用いることもできる。
【0087】
有利には、バニリンまたは精油のような、細胞膜の完全性を妨げる抗菌剤活性を向上させるためのテルペノイドの使用は、元の活性成分が低い濃度(すなわち非常に希釈されている)の場合でさえ、存在する天然物の活性を顕著に増強させる。したがって、第一または第四の態様の組成物は臭いまたは味がないような低い濃度で効果的である。さらに、本発明の組成物がヒトまたは哺乳類に対して害がなく、化合物は環境の中で自然にあちらこちらに偏在しているので、処理されたものが通常のごみ処理経路を経て処理されても環境に対してあまり負荷をかけないことは重要である。
【0088】
一実施形態において、抗菌性組成物は、その抗菌特性が、動物用床敷に関連していることが知られている主な動物病原体であるサルモネア菌、カンピロバクター、マイコバクテリウムおよび大腸菌の成長を抑制するので、動物用床敷を処理するために用いることができる。尿酸および尿素のアンモニアへの転換に関連する微生物を幅広く抑制することは、動物用床敷が苛性になることを予防し、大気中にアンモニアが放出されることを抑制する。
【0089】
したがって、第七の態様において、第一または第四の態様にしたがって抗菌性組成物を含む動物用床敷(animal bedding)が提供される。
【0090】
第五の態様の動物用床敷におけるアンモニア形成および病原体の数を効果的に減らすために、第一の態様の組成物とともに、木の削りかす(wood shavings)または、紙、パーライトまたは他の多孔性材料のような他の吸収材が処理される。組成物は、バニリンと組み合わせて、デヒドロアビエチン酸またはその誘導体を含むことが好ましい。組成物は、アルコールまたはアセトンを溶媒として含んでいてもよい。したがって、直接スプレーすることによって、または敷料とともに溶液を浸し、混合し、次いで溶媒を蒸発させることによって、敷料を処理することができる。または、水または他の多孔性溶質とともに製剤化できるように、塩の形成によって初め組成物を水溶性にしてもよい。
【0091】
有利には、第七の態様の床敷は臭いを低減し、動物の健康を増進させる。動物用床敷は、家畜産業、例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ニワトリ(foul)またはガチョウのような家禽において、また、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマおよび他の動物ようの動物用床敷として用いることができる。また、動物用床敷は、ペット産業、例えば、ウサギ、テンジクネズミ、ハムスター、アレチネズミ、ラット、ネズミまたはかごの鳥の床敷用に用いることができる。第七の態様の床敷は、また、マウス、ラットまたはウサギのような動物実験室試験(例えば、ノックアウト/ヌードマウス用)において使用される動物用に用いることができる。床敷は、動物園の動物の飼育における床敷/リターとして用いることもできる。床敷は、また、生きている動物を運搬するための、またはサルモネラ・エンテリティディスが健康なめんどりの卵巣に感染し、殻が形成される前に、タマゴを汚染することが知られているので、タマゴを生むめんどり用の動物床敷/リターとしての使用のための動物用床敷としても用いることができる。
【0092】
第一および第四の態様の組成物もまた、真菌または細菌感染によって引き起こされる植物病からの収穫損失を避けるために園芸および造林において用いることができる。したがって、組成物は、植物、果物または野菜への感染から土壌病原体を予防する根覆い(mulch)、すなわち、土壌上の保護カバーとして用いることができる。または、組成物はこれらの材料に定着している病原体が拡大することを抑制するために植物残渣に直接適用することができる。
【0093】
したがって、第八の態様は、第一または第四の態様にしたがった抗菌性組成物を含む根覆いが提供される。
【0094】
根覆いは、微生物感染による収穫の損失を最小限にする、または抑制するために用いられる。例えば、イチゴの50%、ブドウの20〜40%がボトリチスのような真菌感染によって損失し、リンゴ赤カビ病(apple scab)によって、リンゴの金銭価値の70%が損失となりうる。根覆いを用いることによってそのような収穫損失を避けることができると考えられる。
【0095】
本発明者らは、第一または第四の態様の組成物が、対象そのものの微生物コロニー形成の予防または阻害に対して適用することができると確信している。
【0096】
したがって、第九の態様において、対象の微生物コロニー形成を予防する、または阻害する方法が提供され、該方法は、対象の表面に、第一または第四の態様の抗菌性組成物を接触させる、または表面に組成物を塗布することを含む。
【0097】
病院「超強力細菌」は、医療制度の中で主要な問題の一つであり、抗菌性製品はこの問題を克服するための効果的な解決方法となりうる。本発明の組成物は、黄色ブドウ球菌およびクロストリジウム・ディフィシルのようなグラム陽性菌の成長の阻止において効果的であることが示されてきた。本技術は、患者用衣類およびベッド製品を製造するために用いられる、天然物(すなわちウール、綿、リンネル、黄麻など)ならびにナイロンおよびポリエステルから作られるもののような人工繊維に対して適用することができる。他の用途としては、医療機器、備品、電気および電子製品、ならびに窓枠の処理が挙げられる。
【0098】
第十の態様において、第一または第四の態様の抗菌性組成物を含む対象が提供される。
【0099】
組成物で対象を塗布することができる。好適には、一旦塗布した後、組成物は不溶性形態となる。好適には、第九の方法、または第十の対象において用いられる組成物の量は、微生物を死滅させる、または成長を抑制するために十分な効果的な量である。本発明の組成物は無菌とすることが必要な表面または対象に塗布するために特に有用であり、上述したように、該組成物は、長い期間にわたってこれらが抗菌性であるという利点を有する。本発明の組成物は、微生物感染または長期的に患者への感染につながりうる汚染を予防することが重要である、生物学的または医学的状況または環境において用いられる対象または装置に塗布するために用いることができる。
【0100】
対象(物品)は医療機器でありうる。本発明の組成物を用いて塗布される医療装置の例としては、カテーテル、ステント、創傷包帯、救急絆、避妊具、外科的インプラントおよび置換ジョイント(replacement joints)、コンタクトレンズなどが挙げられる。本発明の組成物は、バイオマテリアルならびにこれらから作られる対象および装置に塗布するのに特に有用である。微生物はそのような材料を成長の基質として用いることができるので、バイオマテリアルの微生物汚染/コロニー形成は特に問題となる。バイオマテリアル(例えば、コラーゲンおよび他の生体高分子)は、人工関節の表面を覆うために用いることができる。また、ある種のインプラントは、本発明の殺菌剤を含むバイオマテリアルを実質的に含む。
【0101】
感染性病原体に対して効果的な障壁を造ることは、救急絆、創傷包帯およびばんそうこうを開発する際には、考慮することが重量である。したがって、そのような製品を本発明の組成物で処理すると、病原体への障壁を造りつつ、ガス交換ができる。同様に、ベッドリネンを抗菌性とするために本発明の組成物で処理することもできる。
【0102】
本発明の組成物は、医療環境のような無菌であることが要求される環境における表面に塗布するために用いることができる。該組成物は、病院の病室を清潔にするために用いることができ、病院の大部分に対して本発明の組成物を塗布することができる。組成物は、手術室の壁および床に加えて、手術室における医療器具(例えば、手術台)の表面の感染を予防するために用いることができ、これらを本発明の組成物で塗布することができる。本発明者らは、本明細書で記載されている組成物は、一般的に、滅菌および清潔さを向上させるために大変有用であると確信している。
【0103】
本発明の組成物は、微生物感染しやすい家庭用品の幅広い範囲を保護するために用いることもできる。組成物で製品を塗布することができ、製品は、種々の製品系、例えば、食品の調理表面、キッチンまな板またはカーペットなどの幅広い範囲でありうる。カーペットは通常、ウール、ナイロン、ポリエステルおよびポリプロピレン繊維から作られ、単に本発明の組成物を塗布することができる。しかしながら、潜在的な用途はずっと広いと考えられる。本発明の組成物が適用できる対象の上記リストおよび表面は、網羅されていない。したがって、該組成物は、微生物感染または汚染しやすい表面、例えばキッチンおよびバスルーム表面、ならびに便座またはトイレそのもののような製品に対して適用することができる。
【0104】
本発明者らは、床敷を製造するために用いることができる高分子、布地または織物から製造される靴用の中敷きのような抗菌性材料の製造において本発明の組成物を用いることができ、衣類およびファッション関係においても用いることができると予想している。
【0105】
したがって、第十一の態様において、第一または第四の態様による抗菌性組成物を含む高分子または布地が提供される。
【0106】
高分子の布地は、例えば、病院および手術室において用いられる、例えば、枕カバー、ベッドシーツ、および羽毛掛け布団カバーのような寝具類においての用途を有する。布地または高分子は、例えば、下着や履物の中敷きのような微生物感染しやすい衣類の製造において用いることができる。
【0107】
したがって、第十二の態様において、第十一の態様にしたがった布地または高分子を含む衣類が提供される。
【0108】
衣類としては、下着または靴の中敷きの品物でありうる。衣類は、履物であってよい。
【0109】
したがって、第十三の態様において、第十一の態様にしたがった布地または高分子を含む、履物またはそのための中敷きが提供される。
【0110】
本発明の抗菌性組成物は、また防御用途において用いることもできる。兵隊、特に戦闘中の兵隊は、頻繁には洗うことができず、したがって微生物感染しやすいので、衛生状態が懸念される。したがって、第十二の態様の衣料品は制服、好適には軍服でありうる。
【0111】
本発明の他の用途としては、食品包装が挙げられる。果物を収穫した後、真菌および細菌感染による作物の損失はありふれており、収穫後の損失は、収穫前の損失と少なくとも等しいと見積もられている。したがって、食品包装産業において用いることができる抗菌性材料に対して高い要求がある。
【0112】
好適には、包装材料は、生鮮品、すなわち、保存期間が限定されている、または微生物感染のリスクがある製品の包装用に用いられる。好適には、包装材料は、食品または食材の包装用に用いられる。包装材料は、真菌および細菌のような微生物腐敗による感染を受けやすい果物および野菜のような、傷みやすい、または生鮮食品に対する損失を抑制することができる。腐敗細菌によって引き起こされる損失を避けるために、包装材料は第一または第四の態様の組成物で塗布され、スプレーされ、または浸漬されうる。
【0113】
包装材で包装されうる食品は、果物(例えば、ネクタリン、桃、リンゴ、またはナシ)もしくは野菜、肉、パン、またはビスケットなどでありうる。果物は、収穫後に病気に非常にかかりやすい生産物の例として本明細書で用いられるが、ジャガイモ、ニンジン、レタスなどの他の農産物も、本発明の組成物によって保護される恩恵を得ることができる。
【0114】
第十五の態様において、食品の微生物感染を予防する、または抑制する方法における使用のための、第一または第四の態様の抗菌性組成物の使用が提供され、該方法は、第一または第四の態様の抗菌性組成物を食品の表面に接触させる、または組成物を表面に塗布することを含む。
【0115】
食品は、果物、野菜、肉、または乳製品でありうる。精油は揮発性により食品腐敗細菌を阻害する環境を作り出すので、果物の包装においてしばしば用いられる。食品が一旦解梱されると、精油は蒸発し、食品上になんら残らない。したがって、本発明者らは、果物のような食品を処理するために精油とともにテルペノイドを組み合わせる、第一または第四の態様の組成物の使用を予測する。精油のような細胞膜の完全性を妨げる抗菌剤とともにテルペノイドを用いると、抗菌効果をずっと高めることができる。果物が解梱されると、精油はなんら精油の残渣を残さずに蒸発し、残った分子自体は無害である。したがって、果物を食べるヒトに該処理は無害である。
【0116】
天然抗菌剤とともに、例えば、デヒドロアビエチン酸が塗布されるのは、果物片のような食品の表面上である。果物の表面だけが処理されるので、表面領域ユニットに対する濃度は高くとも、果物のサイズによって、重量または体積あたりの濃度は低くなるであろう。さらに、果物の摂取により、唾液および胃内の消化液と食物が混合される結果、さらに組成物が希釈されることとなるであろう。デヒドロアビエチン酸および他のテルペノイドはあまり水に溶解せず、したがって、細胞膜の完全性に影響を与える物質を適用するときでさえ、摂取した際の影響は少ないと考えられる。
【0117】
さらに、実施例5において、本発明者らは、加熱したマツの削りかす(heated pine shavings)(デヒドロアビエチン酸およびバニリンを含む抗菌剤を広く含む)の水抽出物の抗菌特性を試験した。これらの各抽出物は、サルモネア菌に対してわずかな効果を示したが、木の削り自体は、抽出後に高い抗菌活性を維持したままであった。これは、デヒドロアビエチン酸の水溶性が低く、したがって、摂取した際に毒性を引き起こしにくいことを明白に示す。組成物をより安全にするために、ナイシンのような例えばタンパク性の化合物のような胃内で分解が早い抗菌剤とテルペノイドを併用することが好ましい。
【0118】
本発明者らは、容器またはコンテナーを処理する、またはこれらに塗布するための第一または第四の態様の組成物の使用も予想する。
【0119】
したがって、第十六の態様において、第一または第四の態様にしたがった抗菌性組成物を含む容器が提供される。
【0120】
容器は、食物を保存することができる、すなわち、食品容器でありうる。容器は、生鮮食品や製品のような、腐りやすく、消耗しやすく、または微生物感染しやすい、食品材料を保存することができる。例えば、食品としては果物または野菜が挙げられる。第一または第四の態様の組成物は、廃棄物用の容器に処置するために、または、廃棄物容器への添加剤として用いられうる。したがって、容器は廃棄物を含むことができる、すなわち廃棄物容器でありうる。容器は、食品廃棄物のような分解性の廃棄物を保存するために用いられうる。有機の台所ごみのような分解性廃棄物は、ハエをひきつけ、適切に処理しないと、悪臭を放つ。したがって、組成物で処理した廃棄物容器は、家庭内または商業的ごみ入れでありえ、ハエまたは臭いを低減することができる。
【0121】
要約すると、本発明の組成物は、微生物細胞膜の完全性またはRNA合成のようなタンパク質合成を阻害する抗菌剤と併用して、テルペノイドを含む。(フェノール類、アルコール類、塩素化化合物などのような)合成の抗菌剤の多くは、溶解性が高く、したがって、暴露されるヒト細胞に毒性であると認められる。精油はより疎水的であるが、抗菌性は穏やかである。しかしながら、実施例5で述べられているように、デヒドロアビエチン酸は水への溶解性が低く、処理される特定の表面のみにその効果が限定される。例えば、動物の床敷、病院および家庭内の表面および食材に対する適用が、上述した用途のどの場合においても、処理された対象に接触するヒトへ物質が移動しないであろうから、これは明らかに利点となる。さらに、デヒドロアビエチン酸のようなテルペノイドの精油のような穏やかな抗菌性天然物との併用により、通常は強い味と臭いとともに高価であるこれらの製品を、濃度を非常に減らして非常に効率よく用いることができる。
【0122】
さらなる態様において、テルペノイドまたはこの誘導体、および細胞膜完全性を阻害する抗菌剤を含む抗菌性組成物が提供される。
【0123】
さらなる態様において、細胞膜完全性を阻害する抗菌剤の抗菌活性を向上させるためのテルペノイドまたはこの誘導体の使用が提供される。
【0124】
(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)本明細書の述べられている全ての特徴、および/または開示されている方法またはプロセスの全ての段階は、かような特徴および/または段階の少なくともいくつかが相互に排除している組み合わせを除いて、いかなる組み合わせにおいても上記態様のいずれかと組み合わせることができる。
【0125】
理解をより深める目的で、またいかに同様の実施形態が効果を有するかを示すために、以下の図面および実施例が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、S.aureus(グラム陽性)に対する、バニリンおよびDHAAの組み合わせを含む、本発明の組成物の一実施形態を用いた阻害実験を示す。
【図2】図2は、S.aureus(グラム陽性)に対する、スチルベンおよびDHAAの組み合わせを含む組成物を用いた阻害実験を示す。
【図3】図3は、S.enteritidis(グラム陰性)に対する、バニリンおよびDHAAの組み合わせを含む組成物を用いた阻害実験を示す。
【図4】図4は、S.typhimurium(グラム陰性)に対する、バニリンおよびDHAAの組み合わせを含む組成物を用いた阻害実験を示す。
【図5】図5は、E.col(グラム陰性)に対する、バニリンおよびDHAAの組み合わせを含む組成物を用いた阻害実験を示す。
【図6】図6は、ペニシリウム属菌(糸状菌)に対する、バニリンおよびDHAAの組み合わせを含む組成物を用いた阻害実験を示す。
【図7】図7は、アスペルギルス属菌(糸状菌)に対する、バニリンおよびDHAAの組み合わせを含む組成物を用いた阻害実験を示す、および
【図8】図8は、S.cerevisiae(酵母)に対する、バニリンおよびDHAAの組み合わせを含む組成物を用いた阻害実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0127】
[実施例]
本発明者らは、緩やかに加熱したマツの木の削り(heated pine shavings)が抗菌性であるメカニズムを調べた。下記実施例で述べるように、本発明者らは、テルペノイドであるデヒドロアビエチン酸がバニリンおよび精油のような他の天然抗菌剤の抗菌活性を顕著に増強することができることを見出した。
【0128】
実施例1−バニリンの抗菌活性におけるデヒドロアビエチン酸の相乗効果
本実施例の目的は、デヒドロアビエチン酸がバニリンの抗菌活性をどの程度向上させるかを決定することである。
【0129】
方法
バニリンの20mmolの2倍希釈物のエタノールおよび水溶液(80/20v/v)を用意し、20mmol−0.00975mmolの濃度を準備した。20mmolのデヒドロアビエチン酸のアルコールおよび水溶液も準備した。
【0130】
バニリンの抗菌性効果におけるデヒドロアビエチン酸の効果を比較するために、各バニリン希釈物10μlを3つの10mgパーライト片上にピペットで載せ、20mmolデヒドロアビエチン酸の10μlと一緒の溶液中と、gパーライトあたりの濃度を同じとした。コントロール処理の一連は、デヒドロアビエチン酸を入れず、他の一連は20mmolデヒドロアビエチン酸のみを入れ、第三のコントロール処理はバニリンもデヒドロアビエチン酸も入れず、80/20の比率のアルコールおよび水10μlのみ入れた。一旦アルコールを蒸発させ、パーライト粒子あたり約5×10の細菌負荷を与える、mlあたり約5×10のコロニー形成ユニット(cfu)を含むsalmonella entericaの10μlの懸濁を全ての複製(replicates)に入れた。各粒子を0.25強度(strength)リンガー溶液1ml中で分散させる前に、各パーライト粒子をエッペンドルフチューブ中で25℃24時間インキュベートした。各懸濁から、約1000バクテリア細胞を各々含む6つの20μl液滴をXLD寒天上に静置した。
【0131】
結果
結果を表2に示す。
【0132】
【表3】

【0133】
結論
表2に示された結果は以下を示す:
(i)20mmol以下ではバニリン自体はサルモネア菌に対して阻害効果がなかった;
(ii)デヒドロアビエチン酸と組み合わせると、バニリンの阻害効果は、0.019mmolの濃度で依然として顕著であった。これは、デヒドロアビエチン酸が少なくとも1000−2000倍バニリンの抗菌性効果を増加させることを示す;そして
(iii)20mmolでデヒドロアビエチン酸は顕著な抗菌活性は持たなかった。
【0134】
実施例2−バニリンの抗菌活性に対する有機酸の効果
本実施例の目的は、バニリンに対するデヒドロアビエチン酸の相乗効果が特にデヒドロアビエチン酸に関連するかどうか、または、酸のpH効果によって説明できるかどうかを確かめることである。
【0135】
方法
バニリンの20mmolの2倍希釈物のエタノールおよび水溶液(80/20v/v)を用意し、20mmol−0.078mmolの濃度を準備した。20mmolのクエン酸水溶液も準備した。
【0136】
クエン酸が(実施例1で述べた)デヒドロアビエチン酸と同様の効果を有するかどうかを確かめるために、各バニリン希釈物10μlを3つの10mgパーライト片上にピペットで載せ、溶液中でgパーライトあたりの濃度を同じとした。次いで、20mmolクエン酸10μlを各パーライト粒子上にピペットで載せた。コントロール処理の一連は、クエン酸を入れず、他のコントロールはバニリンもクエン酸も入れず、アルコールおよび水を80/20の割合で10μlのみ入れた。一旦アルコールを蒸発させ、パーライト粒子あたり約5×10の細菌負荷を与える、mlあたり約5×10のコロニー形成ユニット(cfu)を含むサルモネラ菌の懸濁10μlを全ての複製(replicates)に入れた。
【0137】
各粒子を0.25強度(strength)リンガー溶液1ml中で分散させる前に、各パーライト粒子をエッペンドルフチューブ中で25℃24時間インキュベートした。各懸濁から、約1000バクテリア細胞を各々含む6つの20μl液滴をXLD寒天上に静置した。
【0138】
結果
結果を表3に示す。
【0139】
【表4】

【0140】
結論
表3に示された結果は以下を示す:
(i)クエン酸はバニリンの効果をほんのわずかに向上させた(最大で2倍);そして
(ii)デヒドロアビエチン酸のバニリン活性に対する効果は、pH効果に起因し得ない。
【0141】
実施例3
さまざまなトリテルペノイドと組み合わせたバニリンの抗菌活性
実施例3の目的は、親水性部分および疎水性部分も有するトリテルペノイドがバニリンと組み合わせた場合に、ジテルペノイドであるデヒドロアビエチン酸と同様の活性を有するかどうかを決定することである。
【0142】
方法
バニリンの20mmolの10倍希釈物のエタノールおよび水溶液(80/20v/v)を用意し、20mmol−0.02mmolの濃度を準備した。20mmolのウルソン酸、オレアノール酸およびベツリンのアルコール溶液も準備した。
【0143】
バニリンの抗菌効果に対するウルソン酸、オレアノール酸およびベツリンデヒドロアビエチン酸の効果を確かめるために、各バニリン希釈物10μlを3つの10mgパーライト片上にピペットで載せ、20mmolの各トリテルペノイド10μlを含む溶液中とgパーライトあたりの濃度を同じとした。コントロール処理の一連は、トリテルペノイドを入れず、他のコントロールには20mmolのデヒドロアビエチン酸のみ入れた。一旦アルコールを蒸発させ、パーライト粒子あたり約5×10の細菌負荷を与える、mlあたり約5×10のコロニー形成ユニット(cfu)を含むsalmonellaの懸濁10μlを全ての複製(replicates)に入れた。各粒子を0.25強度(strength)リンガー溶液1ml中で分散させる前に、各パーライト粒子をエッペンドルフチューブ中で25℃24時間インキュベートした。各懸濁から、約1000バクテリア細胞を各々含む6つの20μl液滴をXLD寒天上に静置した。
【0144】
結果
結果を表4に示す。
【0145】
【表5】

【0146】
結果
表4に示された結果は以下を示す:
(i)試験した全てのトリテルペノイドはバニリンの活性を向上させた、
(ii)3つのトリテルペノイド間で抗菌効果の向上における顕著な差はなかった、そして
(iii)バニリンとの組み合わせのトリテルペノイドの相乗効果は、デヒドロアビエチン酸およびバニリンを組み合わせて用いた時に観察されたものよりも少なかった。この最も可能性のある理由は、トリテルペノイドは非常に不溶性であり、近接させた場合でも、十分な効果を与えるほどに微生物細胞に十分な量で占めることができないことである。
【0147】
実施例4−異なる木種由来の加熱および非加熱木削りの抗菌効果
実施例4の目的は、種々の代表的な針葉樹および広葉樹由来の加熱および非加熱の木削りの抗菌効果を確かめることである。
【0148】
方法
本実験において、異なる針葉樹(マツ、トウヒ、ヒマラヤスギ)および異なる広葉樹(ブナノキ、カバノキ、セイヨウトリネコ、クリ、アカガシワ)由来の木の幹からの削りかすを採取し、各削りかすを6つのバッチ中で静置した。これらのバッチのうち3つは、72時間140℃で加熱し、他の3つは20℃で乾燥させ、各処理において3つの複製を準備した。続いて、各セットの削りかす1gをユニバーサルボトル(Universal bottle)中で静置し、Salmonella entericaの乳白色懸濁(mlあたり約10cfu)1mlを接種した。接種された削りかすを25℃で20時間インキュベートした。続いて、削りかすから10倍希釈物(きっちり10−8)を準備し、各希釈物の0.1mlをXLD寒天上に載せた。25℃で36時間インキュベーション後にSalmonellaのコロニー数を数えた。
【0149】
結果
結果を表5に示す。
【0150】
【表6】

【0151】
結論
表5に示されたデータから、以下のことが結論付けられる:
(i)非加熱の木の削りかすの抗菌特性において、小さいが有意な差が存在した。バクテリアコロニー数が数多く回復しているので、トウヒ、カバノキ、オークは抗菌性が最も少ないように見える。糸杉およびユーカリは、成長したコロニー数が最も少ないので、加熱処理前で最も抗菌性が高いように見える;
(ii)試験した木種の全ての抗菌活性において加熱により顕著な増加となった;
(iii)加熱により、ユーカリにおいて3倍、トウヒにおいて1000倍抗菌活性が上昇し、マツ、糸杉、セイヨウトリネコ、ブナノキ、オークおよびカバノキにおいては完全な阻害となった;そして、
(iV)マツおよびヒマラヤスギには、バニリンの他、他の抗菌性物質が存在するに違いない。
【0152】
実施例5−毒性試験
本実施例の目的は、バニリン(または木由来の他の抗菌性物質)とデヒドロアビエチン酸との組み合わせがヒト消費において安全であることを示すことである。
【0153】
物質によって引き起こされる潜在的な害は、潜在的な毒性およびその標的細胞に対する暴露によって決定される。したがってヒト細胞に対する潜在的な毒性物質が自体で存在することができる潜在的な経路を理解することは、潜在的な害(リスク)を決定するのに重要である。物質(または物質の有毒な組み合わせ)が、ヒト標的細胞へ接触状態になりにくいことが示されれば、物質は安全であるとみなされる。デヒドロアビエチン酸およびバニリン(または他の天然抗菌剤)の場合、製品でコートした食品を接種した際、ヒト細胞の暴露を避けることができる少なくとも4つのメカニズムが存在する、すなわち;
1)組成物の摂取により、これらを無効にさせるほど十分に化合物は希釈される;
2)細胞の消化系は、組成物との接触に対して消化系の細胞を保護する粘液層によって保護される;
3)一つの(または双方の)化合物は消化系によって不活性化される。これは、酵素活性の結果としてでありうる;そして
4)化合物は、消化系の細胞に衝撃を与えるほどには胃液中で十分には溶解されない。
【0154】
可能性4だけが、摂取試験をすることなく、試験されうる。
【0155】
方法
本実験では、加熱および非加熱のマツ削りかすを試験材料として用いた。前の研究では、加熱したマツ削りかすが抗菌性が高くなることを示してきた。この効果は、少なくとも部分的には、緩やかで長期の加熱(実施例1および3参照)の間に形成される多数の穏やかな抗菌性物質に対してデヒドロアビエチン酸が有する相乗的効果によるものであると考えられている。これらの物質がマツの削りかすに付随して留まって、水で抽出できない場合、消化系においてこれらは溶けず、露出しないと考えられる。サルモネア菌細胞はアビエチン酸およびバニリンの組み合わせに感受性であることがすでに示されているので(実施例1参照)、サルモネア菌を試験微生物として用いた。
【0156】
水抽出物
下記浸漬条件を用いて5mlの滅菌水を2gの削りかす(3つずつ)に添加することによって、水中に加熱および非加熱のマツ削りかすの各セットから6gの材料を浸漬させた:
・24時間室温で浸漬
・24時間90℃のウォーターバス中で浸漬
抽出物が抗菌性であるかどうかを確かめるために、下記手順を続けた:
1.断片(オートクレーブした)ろ紙1gに抽出物1mlを入れる(12サンプル);
2.コントロールとして、0.25強度(strength)リンガー溶液を用いる(3サンプル);
3.50℃でオーバーナイト(または乾燥するまで)サンプルを乾燥する;
4.サルモネア菌の乳白色懸濁を0.25強度(strength)リンガー溶液中に準備し、この1mlを各サンプルに対して添加する;
5.30℃でオーバーナイトインキュベートする;
6.各希釈群(10−1〜10−6)を塗布する(15×6=90プレート);
7.インキュベートし、数えられるプレートを数える;そして
8.コントロール処理および非加熱削りかすからの抽出物に対する阻害を比較する。
【0157】
抽出した削りかすの抗菌活性を確かめるために、下記手順を続けた:
1.50℃でオーバーナイト(または乾燥するまで)削りかすを乾燥する;
2.コントロールとして、ろ紙断片2gを用いる(3サンプル);
3.削りかす各2gおよびサルモネラ菌懸濁のろ紙2mlを添加する;
4.30℃で24時間インキュベートする;
5.希釈群(10−1〜10−6)を塗布する;
6.インキュベートし、数えられるプレートを数える;そして
7.コントロール(ろ紙)および非加熱削りかすに対する阻害を比較する。
【0158】
アルコール抽出物
各加熱および非加熱群から材料を6g採り、5mlのメタノールを2gの削りかす(3つずつ)に添加することによって浸漬し、24時間浸漬する:
抽出物が抗菌性であるかどうかを確かめるために、下記手順を続けた:
1.断片(オートクレーブした)ろ紙1gに抽出物1mlを入れる(6サンプル);
2.コントロールとして、0.25強度(strength)リンガー溶液を用いる(3サンプル);
3.(アルコール残渣が微生物残渣を阻害しないことを確かめるために)メタノールで3つの1gサンプルを浸漬する
4.50℃でオーバーナイト(または乾燥するまで)各サンプルを乾燥する;
5.サルモネア菌の乳白色懸濁を0.25強度(strength)リンガー溶液中に準備し、この1mlを各サンプルに対して添加する;
6.30℃でオーバーナイトインキュベートする;
7.各々(12×6=72プレート)に対する希釈群(10−1〜10−6)を塗布する;
8.インキュベートし、数えられるプレートを数える;そして
9.コントロールおよび非加熱削りかすに対する阻害を比較する。
【0159】
抽出した削りかすの抗菌活性を確かめるために、下記手順を続けた:
1.50℃でオーバーナイト(または乾燥するまで)抽出したサンプルを乾燥する;
2.コントロールとして、ろ紙断片2gを用いる(3サンプル);
3.削りかす各2gおよびサルモネラ菌懸濁のろ紙2mlを添加する;
4.30℃で24時間インキュベートする;
5.各々(9×6=54プレート)に対する希釈群(10−1〜10−6)を塗布する;
6.インキュベートし、数えられるプレートを数える;そして
7.コントロール(ろ紙)および非加熱削りかすに対する阻害を比較する。
【0160】
結果
表6および7に結果を示す。
【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
結論
表6および7から以下のことが結論付けられる:
(i)加熱したマツ削りかすからの冷水および温水双方の抽出物はサルモネラ菌に対して非毒性である;
(ii)微生物毒性は、冷水または温水で抽出した後のマツ削りかすに付随したままである;
(iii)加熱マツ削りかすのアルコール抽出物はサルモネラ菌に毒性である;
(iV)アルコール抽出物は加熱マツ削りかすに付随した毒性のある程度を除去した;
(V)加熱マツ削りかす中の他の抗菌物質と組み合わせたデヒドロアビエチン酸は、バクテリア細胞に顕著な毒性を引き起こすほど水中で十分には溶解しない;
(vi)バニリンのような天然の抗菌剤と一緒にデヒドロアビエチン酸を処理した食品の摂取は、ヒト細胞へ顕著に露出することはないと予想される。
【0164】
実施例6−本発明の組成物の用途
テルペノイドとの併用によりバニリンのような公知の抗菌剤の抗菌活性を劇的に向上させうるという驚くべき知見を本発明者らは、幅広い用途へと適用している。
【0165】
(i)動物用床敷
デヒドロアビエチン酸およびバニリンの双方を含む組成物の液体製剤を準備し、次いで、家禽小屋において用いられている型の存在する動物用床敷上に該製剤をスプレーした。本発明者らは、かような床敷はカンピロバクターおよびサルモネア菌への感染のレベルを減少させ、床敷にいるニワトリがバクテリア感染の兆候を何ら示さないことを見出した。
【0166】
(ii)根覆い
本発明者らは、デヒドロアビエチン酸およびバニリンを含む液体製剤中に浸漬させた根覆いも製造し、製剤の十分な量が吸収されるようにオーバーナイト放置した。次いで、根覆いを土壌の1区画に置き、土壌病原体の植物、果物または野菜への感染を根覆いが防止できることを確認するため試験を行った。喜ばしいことに、通常の根覆いを用いたときのコントロールと比較して、処理した根覆いが根覆い中で成長したイチゴへの微生物感染を抑制したことを確認した。
【0167】
(iii)医療器具
本発明者らは、医療器具表面に対して抗菌活性を付与できるかどうか次いで試験し、モデルとして創傷包帯(すなわち救急絆)を用いた。製剤中に救急絆を浸漬させ、活性量吸収させるためにそれをオーバーナイト放置した。驚くべきことに、救急絆下の傷から広がる微生物感染の広がりを救急絆は阻害したことを見出した。
【0168】
(iv)織物または高分子
該製剤は、衣料品の製造に用いられる綿およびウール断片に適用される。また、靴が製造され、本発明者らは、全ての場合において、微生物感染が抑制されることを見出した。履物の場合、悪臭の発生も最小限化された。
【0169】
(v)食品包装材料
本発明者らは、段ボール型のような食品包装材料を液体製剤でスプレーした。果物や野菜のような生鮮材料は包装材中で保存され、本発明者らは、食材が、従来の包装材料中で保存されたコントロール食材と同程度に早く腐ることはないことを見出した。
【0170】
要約
本発明者らは、極性の、熱分解性(prolytic)の置換基および強固な疎水性部分を有する分子が、微生物細胞膜の完全性を妨げる穏やかな抗菌性物質の抗菌活性を増加させることができることを示した。デヒドロアビエチン酸のようなテルペノイドが抗菌剤であるバニリンの抗菌活性を1000〜2000倍増加させることができる。また、デヒドロアビエチン酸が水へあまり溶解せず、故に、デヒドロアビエチン酸およびバニリンの双方を含む材料由来の水抽出物が微生物細胞に非毒性であることも示した。代わりに、抗菌活性は処理した材料内に残っている。したがって、バニリンのような天然の抗菌剤とともにデヒドロアビエチン酸のようなテルペノイドで処理した食品を摂取してもヒト細胞への顕著な露出へとはつながらないであろう。
【0171】
実施例7−パーライトバイオアッセイ(perlite bio−assay)を用いたSalmonella enteritidisに対する市販のバニリンの抗菌活性における精製したデヒドロアビエチン酸(DHAA)の相乗効果
前の実施例で記載したように、加熱した木削りかすから分離したデヒドロアビエチン酸および/またはバニリンのいずれかを用いると顕著な結果が得られた。培養液中での従来の希釈アッセイの代わりに、「パーライトバイオアッセイ」を用いて、(加熱した木から単離した)バニリンの抗菌効果を2000倍にまで増強させる実験を行った。パーライト上で組み合わせを乾燥させること、およびパーライト重量に基づいて濃度を計算することが、結果を偏在化させうることが議論されうる。
【0172】
したがって、この実験は、パーライトバイオアッセイが不均化(disproportionated)ロジンから単離された純DHAA、およびシグマ−アルドリッチ社から購入した純バニリンを用いた結果を偏在化させるかどうかを確認する。
【0173】
ストック溶液の準備:20mMのバニリンのストック溶液をアセトン中で作製し、20〜0.078mMの範囲の濃度を作製するために、2倍希釈によってさらに希釈した。また、一つのDHAA20mMストックアセトン溶液を作製した。
【0174】
バイオアッセイ試験:微パーライトの10mgを含む1.5mlのエッペンドルフチューブを用いて試験を行った。バニリンの各濃度の10μlを各濃度4つの複製を得るために4つのエッペンドルフチューブ中に分配した。このうち2つには、DHAAを10μl入れた。アセトンを蒸発させるためにチューブを積層フローチャンバー中に3時間静置した。続いて、各チューブにSalmonella enteritidisのオーバーナイト培養物1μlを入れた。インキュベーションの間、パーライトの湿潤状態を保つために、滅菌R.O水10μlを各チューブ中に分配した。コントロールとして、2つのチューブにはDHAAのみを、2つのチューブにはR.O水のみを入れた。
【0175】
チューブをオーバーナイトでインキュベートし、バクテリア計算用の栄養寒天上に各チューブの内容物を塗布することによって、バクテリア生存を定量化した。
【0176】
結果
【0177】
【表9】

【0178】
結論
本実験においてDHAAはバニリンを約8倍効果的にさせた。したがって、パーライトバイオアッセイは、明らかに抗菌剤の活性に対して確かな結果を提供し、試験した2つの純化合物間の相乗効果を示す。また、本発明者らは、これらの化合物を加熱した木削りかすから単離した際、DHAAおよびバニリンの相乗活性にさらに寄与することができるある未知の因子が存在すると確信している。
【0179】
実施例8−Salmonella enteritidisに対するバニリンおよびDHAA混合物の組み合わせでのデヒドロジンゲロンおよびコニフェルアルデヒドの最小限の阻害濃度(MICs)の決定
加熱したマツの木から単離されたバニリンおよびDHAAを組み合わせたときに見られた(すなわち×200)ほどではなかったが、純デヒドロアビエチン酸(DHAA)および純バニリンの組み合わせが2つの化合物間に抗微生物相乗効果(すなわち×8)をもたらすことがわかった。化合物のただ一つが加熱したマツの木由来で、他が精製形態での市販品から得られた場合、同様の強い抗菌効果が得られた。興味深いことに、かように得られた抗菌効果は混合物のオレンジ色をもたらし、橙黄色を呈している未知の混入物質が、バニリンおよびDHAA間の相乗効果を増加させることに関与している可能性があることを示す。可能性のある候補分子は、加熱したマツ削りかすから以前に分離されたコニフェルアルデヒドであると考えられた。
【0180】
同様に、もしバニリンをすぐに使用せず、アセトン中で保存した場合、バニリンとDHAAとを組み合わせた抗菌効果は大きく回復した。バニリンはアセトンと反応し、ケトン、すなわちデヒドロジンゲロンを形成することが知られている。したがって、デヒドロジンゲロンがDHAAおよびバニリン間で得られる抗菌効果において役割を果たすことが仮定された。
【0181】
材料&方法
純バニリンはシグマ−アルドリッチ社から購入した。デヒドロジンゲロンはアセトンでバニリンを濃縮することによって得られた。純デヒドロアビエチン酸は不均化ロジンから単離した。
【0182】
20mMのバニリンのストック溶液を最終的な濃度にするために作製した。また、デヒドロジンゲロンの0.1、1、5および10mMストック溶液およびDHAAの20mMストック溶液をアセトンに化合物を溶解させることによって作製した。ストック溶液は冷蔵庫内5℃で保存した。
【0183】
インビトロアッセイ:可能性のある相乗的分子と組み合わせたバニリンの最小阻害濃度(MIC)を微量培養液希釈法(micro−broth dilution method)を用いて決定した。20mMから0.078mMバニリンまでの2倍希釈物を得るために、96穴マイクロタイタープレートを用いて、滅菌栄養培養液で希釈することによって、6つのバニリンの2倍希釈物を準備した。デヒドロジンゲロン(DHZ)の4つの異なる濃度(10mM、5mM、lmMおよび0.1mM)を作製し、各ウェルに対して各ストック溶液100μlを添加することによってバニリンの異なる濃度を結合させた。別の実験において、DHZをコニフェルアルデヒドで置換した。100μlアセトンを添加することによってコントロールウェルを準備した。プレートを積層フローチャンバー中でアセトンが蒸発するように8時間静置した。各ウェルの抗菌活性を決定するために、25℃オーバーナイトで成長させた10cfu/mlのSalmonella enteritidisを含むバクテリア細胞培養液の5μlをプレートに接種した。接種後、プレートを25℃で24時間インキュベートした。処理が殺菌性であるか否かを確かめるために、各ウェルから0.01mlをニュートリエント寒天培地上にスポットした。次いで、接種されたニュートリエント寒天培地を24〜48時間インキュベートし、何らバクテリア成長がない、またはほんのわずかコロニーが見られるスポットを殺菌性であるとした。静菌効果を決定するために、代謝活性を測定する目的でテトラゾリウム塩溶液を各ウェルに添加した。25℃でオーバーナイトインキュベーションした後、何ら色の変化がないものを静菌効果として決定し、代謝(効果なし)は赤から紫いろとして示した。
【0184】
結果
【0185】
【表10】

【0186】
【表11】

【0187】
結論
コニフェルアルデヒドは、バニリンおよびDHAAと組み合わせるとSalmonella enteritidisに対して強い抗菌効果を与える効果的な抗菌剤である。デヒドロジンゲロンは、バニリンおよびDHAAと組み合わせるとSalmonella enteritidisに対して強い抗菌効果を与える温和な抗菌剤である。この結果は、静菌性であるためには(DHAAと組み合わせて)バニリンおよびデヒドロジンゲロンの5mMを超える合計濃度が必要であることを示す。
【0188】
実施例9−コニフェルアルデヒドおよびバニリン間の抗菌活性におけるデヒドロアビエチン酸の役割
前の実験において、DHAAはバニリンおよびコニフェルアルデヒドの組み合わせに添加された。DHAAが必須であるか否かを確かめるため、3つの物質の抗菌効果の役割を定量化するために別の実験を行った。
【0189】
材料&方法
バニリンおよびコニフェルアルデヒドは、シグマ−アルドリッチ社から購入した。デヒドロアビエチン酸はカラムクロマトグラフを用いて不均化ロジンから単離した。
【0190】
20mMのバニリンのストック脱イオン化溶液を準備した。5および10mMコニフェルアルデヒドおよび20mMデヒドロアビエチン酸(DHAA)のアセトンストック溶液を準備した。全てのストック溶液は5℃で保存した。
【0191】
インビトロアッセイ:異なる処理のMICを微量培養液希釈法(micro−broth dilution method)を用いて決定した。20mMから0.0002mMまでの濃度のバニリンを得るために、96穴マイクロタイタープレートを用いて、滅菌水で20mMストック溶液を希釈することによって、バニリンの4倍希釈物を準備した。コニフェルアルデヒドの5および10mMの2つの濃度を準備し、各ウェルに対して各ストック溶液100μlを添加することによってバニリンの異なる濃度を結合させた。100μlアセトンを添加することによってコントロールウェルを準備した。半分のウェルに最終濃度が20mMとなるようにDHAAを添加し、他の半分には添加しなかった。各処理は4回繰り返した。プレートを積層フローチャンバー中で溶媒が蒸発するように8時間静置した。続いて、25℃オーバーナイトで成長させた10cfu/mlを含むSalmonella enteritidis懸濁の5μlを各ウェルに接種した。接種の後、プレートを25℃で24時間インキュベートした。処理が殺菌性であるか否かを確かめるために、各ウェルから0.01mlをニュートリエント寒天培地上にスポットした。プレートを24〜48時間インキュベートし、何らバクテリア成長がない、またはほんのわずかコロニーが見られるスポットを殺菌性であるとした。可能な場所では、より正確な定量データを得るために、コロニー数を計測した。静菌効果を決定するために、代謝活性を測定する目的でテトラゾリウム塩溶液50μlを各ウェルに添加した。25℃でオーバーナイトインキュベーションした後、何ら色の変化がないものを静菌効果として決定し、代謝(効果なし)は赤から紫色として示した。
【0192】
結果
【0193】
【表12】

【0194】
【表13】

【0195】
結論
デヒドロアビエチン酸は、コニフェルアルデヒドおよびバニリンの併用の効果に対して相乗効果を与える。(DHAAが20mM存在する場合に)5mMのコニフェルアルデヒドを殺菌性にするためには低濃度のバニリン(少なくとも0.0003mM)の存在が必要とされる。
【0196】
実施例10−Salmonella enteritidisに対するバニリンおよびデヒドロアビエチン酸(DHAA)の混合物に対するデヒドロジンゲロンの効果
以前、(バニリンから形成された)デヒドロジンゲロンが、加熱された木削りかすの抗菌活性を説明する寄与因子である可能性があることが示された。バニリンおよびデヒドロジンゲロンの双方がデヒドロアビエチン酸と組み合わせて用いられている実験において、2つの分子の抗菌活性が相加的であることを示した。ここでは、本発明者らは、2つの比率に依存して相乗効果があるか否かを調べた。
【0197】
材料&方法
バニリンは、シグマ−アルドリッチ社から購入した。デヒドロジンゲロンを次のようにしてアセトンでバニリンを濃縮することによって製造した:0.5gのバニリンを2mlのアセトンに添加し、ねじ口バイアル中でバニリンを溶解させるために振とうさせた。バニリンを溶解させた後、10%(w/v)NaOH溶液1mlを添加した。次いで、混合物を室温で24時間保存した。続いて、3M HCL溶液10mlを添加し、混合物をデヒドロジンゲロンの黄色結晶が形成するように激しく振とうした。次いでブフナー漏斗を用いて得られたデヒドロジンゲロンの懸濁物をろ過することによって精製されたデヒドロジンゲロンを分離し、次いで、水で結晶を洗った。材料の大気乾燥の後、単離したデヒドロジンゲロンの構造をNMRを用いて確認した。
【0198】
バニリン−デヒドロジンゲロン溶液の準備
バニリンおよびデヒドロジンゲロンを含む溶液を100:0、75:25、50:50、25:75、0:100の比率(w/w)で5mlアセトン中で調製した。デヒドロジンゲロンおよびバニリンの希釈していない合計濃度は10mMであった。抗菌試験の前に、各比率に対して30.4mgを添加することによって各処理に対して20mMデヒドロアビエチン酸を添加した。コントロール処理は、DHAAのみ、および溶媒のみから構成される。ストック溶液を冷蔵庫中5℃で48時間貯蔵した。
【0199】
アッセイ方法
バニリンおよびデヒドロジンゲロン溶液の組み合わせの阻害活性を微量培養液希釈法(micro dilution broth method)によって測定した。96穴プレートを9.6mlの栄養培養液で満たした。サンプルのMIC(最小阻害濃度)を決定するために、サンプルの希釈物を培養液で作製した(0、1:2、1:4、1:8、1:16、1:32、1:64、1:128)。希釈物を作製した後、プレートを積層フローキャビネット中で溶媒が蒸発するように5時間静置した。
【0200】
続いて、25℃オーバーナイトで成長させた10cfu/mlを含むSalmonella enteritidis懸濁の5μlを各ウェルに接種した。接種の後、プレートを25℃で24時間インキュベートした。処理が殺菌性であるか否かを確かめるために、各ウェルから0.01mlをニュートリエント寒天培地上にスポットした。プレートを24〜48時間インキュベートし、何らバクテリア成長がない、またはほんのわずかコロニーが見られるスポットを殺菌性であるとした。可能な場所では、より正確な定量データを得るために、コロニー数を計測した。静菌効果を決定するために、代謝活性を測定する目的でテトラゾリウム塩溶液50μlを各ウェルに添加した。25℃でオーバーナイトインキュベーションした後、何ら色の変化がないものを静菌効果として決定し、代謝(効果なし)は赤から紫色として示した。
【0201】
【表14】

【0202】
結論
デヒドロジンゲロンおよびバニリンを組み合わせた効果は、相加的ではなかったが、2つの分子間の比率に依存していた。最もよい結果は、どちらかの分子の1:3の比率で用いられている場合に得られた。自身ではデヒドロジンゲロンおよびバニリンは同じような抗菌活性を有していたが、1/3の比率で組み合わせた場合に、単独で、または50:50の比率で用いた場合よりも4〜8倍と驚くべき結果となった。
【0203】
実施例11−デヒドロアビエチン酸の溶解性に対するpHの影響およびSalmonella enteritidisに対するバニリンおよびデヒドロアビエチン酸の組み合わせの抗菌活性におけるストック溶液の保存状態の影響
デヒドロアビエチン酸およびバニリンを高いpH(>9)で組み合わせると、組み合わせの効果がより少なくなった。これはアルカリ条件下でデヒドロアビエチン酸の溶解性が低くなった(その結果、デヒドロアビエチン酸が溶液から析出した)ためであると仮定された。これまで記載した多くの実験がpH7で行ってよい活性を与えたが、加熱した木削りかすから直接得られた抽出物ほど良好ではなかった。加熱した削りかすはpHが約4であった。しかしながら、そのような低いpHは、通常より好ましいのは中性であるバクテリアの成長に影響を与えうる。DHAAが溶解していることを確かめる一方で、pHの影響を試験するために、化合物の溶解方法を2つ用いた。一つ目では、化合物をpH4のリン酸緩衝液に溶解し、他の処理では、DMSOをpH7で用いた。
【0204】
次の処理を試験した:
・実験の開始48時間前に作製したバニリンストック溶液:溶液を冷蔵庫内5℃で保存した;
・実験の開始48時間前に作製したデヒドロアビエチン酸(DHAA)ストック溶液;溶液を冷蔵庫内5℃で保存した;
・実験の開始48時間前に作製したバニリン/DHAA混合ストック溶液;溶液を冷蔵庫内5℃で保存した;
・実験の開始48時間前に作製し、室温(20℃)保存したバニリンストック溶液;
・実験の開始48時間前に作製し、室温(20℃)保存したDHAAストック溶液;
・実験の開始48時間前に作製し、室温(20℃)保存したバニリン/DHAA混合ストック溶液。
【0205】
材料&方法
バニリンはシグマ−アルドリッチ社から購入し、DHAAは不均化ロジンから単離した。
【0206】
pH4で培養液に基づいたバッファー中のストック溶液:バニリンの20mMストック溶液の2バッチおよびバニリン/DHAA(10mM/20mM)の2バッチのアセトン溶液を作製した。各バッチの1を冷蔵庫内で保存し、他を室温で保存した。
【0207】
pH7で培養液に基づいたバッファー中で試験するストック溶液:バニリンの20mMストック溶液の2バッチおよびバニリン/DHAA(10mM/20mM)の2バッチのDMSO溶液を作製した。各バッチの1を冷蔵庫内で保存し、他を室温で保存した。
【0208】
バイオアッセイ試験:微量培養液希釈法を用いて試験を行った。10mM〜0.625mMの範囲の濃度を作製するために、バニリンおよびバニリン/DHAAストック溶液を2倍希釈でさらに希釈した。各濃度100μlを96ウェルプレートの各ウェル中の栄養培養液100μlに添加した。各濃度に対して3つの複製を作製した。プレートは溶媒を蒸発させるために積層チャンバー中で静置した。
【0209】
続いて、各ウェルに25℃でオーバーナイト成長させた10cfu/ml含むSalmonella enteritidis懸濁の5μlを接種した。接種の後、プレートを25℃で24時間インキュベートした。処理が殺菌性であるかどうかを確かめるために、各ウェルから0.01mlをニュートリエント寒天培地上にスポットした。プレートを24〜48時間インキュベートし、バクテリア成長がない、またはほんのわずかコロニーが見られるスポットを殺菌性であるとした。可能な場所では、より正確な定量データを得るために、コロニー数を計測した。静菌効果を決定するために、代謝活性を測定する目的でテトラゾリウム塩溶液50μlを各ウェルに添加した。25℃でオーバーナイトインキュベーションした後、何ら色の変化がないものを静菌効果として決定し、代謝(効果なし)は赤から紫色として示した。
【0210】
【表15】

【0211】
結論
デヒドロアビエチン酸は、pH4およびpH7の双方でバニリンの抗菌活性を増強する(pH自体はサルモネア菌の生存に対してあまり影響がなかった)。デヒドロアビエチン酸を48時間バニリンと相互作用させると、2つの分子の抗菌活性を増加させる。
【0212】
実施例12−コニフェルアルデヒド、チモールおよびスチルベンに対するDHAAの相乗的効果
前の実験では、抗菌性化合物は、バニリンと組み合わせて試験したので、DHAAが単にバニリンの活性を増加させたのか、またはチモール、コニフェルアルデヒドおよびスチルベンのような他の天然抗菌分子の活性も増加させるのかを決定することが難しかった。第一の試験では、これらの化合物はグラム陰性菌であるSalmonella enteritidisに対して試験し、第二の試験では、同じ化合物をグラム陽性菌であるStaphylococcus aureusに対して試験した。
【0213】
材料&方法
チモール、トランス−スチルベンおよびコニフェルアルデヒドはシグマ−アルドリッチ社から購入した。デヒドロアビエチン酸は不均化ロジンから単離した。
【0214】
バイオアッセイ試験:微量培養液希釈法を用いて試験を行った。DHAA(20mM)を、コニフェルアルデヒド、チモールまたは(トランス)スチルベンのいずれかと組み合わせ、25℃で48時間インキュベートした。コントロール溶液はデヒドロアビエチン酸なしで、コニフェルアルデヒド、チモールおよびスチルベンから作製した。アセトンだけの溶媒コントロールも準備した。試験用に、10〜0.156mMの範囲の濃度の活性成分を作製するために、溶液を2倍希釈で希釈した。次いで、20mMデヒドロアビエチン酸の最終濃度となるように各濃度をデヒドロアビエチン酸で補正した。各濃度100μlを96ウェルプレートの各ウェル中の栄養培養液100μlに添加した。各濃度に対して3つの複製を作製した。プレートは溶媒を蒸発させるために積層チャンバー中で静置した。
【0215】
続いて、各ウェルに25℃でオーバーナイト成長させた10cfu/ml含むSalmonella enteritidis懸濁の5μlを接種した。第二の試験では、Staphylococcus aureusを用いた。接種の後、プレートを25℃で24時間インキュベートした。処理が殺菌性であるかどうかを確かめるために、各ウェルから0.01mlをニュートリエント寒天培地上にスポットした。プレートを24時間インキュベートし、バクテリア成長がない、またはほんのわずかコロニーが見られるスポットを殺菌性であるとした。静菌効果を決定するために、代謝活性を測定する目的でテトラゾリウム塩溶液50μlを各ウェルに添加した。25℃でオーバーナイトインキュベーションした後、何ら色の変化がないものを静菌効果として決定し、代謝(効果なし)は赤から紫色として示した。
【0216】
結果
【0217】
【表16】

【0218】
結果
DHAAはコニフェルアルデヒドに対して強い相乗活性を持ち、Salmonella enteritidisに対して化合物を約16倍効果的にした。DHAAはSalmonella enteritidisに対してチモールを約2倍効果的にした。
【0219】
実施例13−種々の微生物に対するデヒドロアビエチン酸およびバニリンの組み合わせの抗菌活性
本発明者らは、薄層クロマトグラフ(TLC)ペーパー上の抑制地帯を用いて、微生物(グラム−陽性およびグラム陰性菌、糸状菌および酵母)に対する種々の化合物の抗菌活性を試験した。
【0220】
材料および方法
2つの試験溶液を準備した、すなわち:(i)DHAAと組み合わせたバニリン、および(ii)デヒドロアビエチン酸(DHAA)と組み合わせたスチルベン。溶液の活性は次いで次のようにいくつかの異なる微生物に対して試験した。
【0221】
TLCプレート上に試験溶液の液滴を静置した。溶液を蒸発させ、培養液中の試験微生物(グラム−陽性およびグラム陰性菌)懸濁をTLCプレート上に均一に塗布した。プレートをオーバーナイトでインキュベートした。微生物活性を可視化するため、TLCプレートをテトラゾリウム塩溶液でスプレーした。微生物活性は赤−ピンク色によって示された。
【0222】
糸状菌に対する溶液の有効性を示すため、糸状菌が胞子を形成するまで接種したTLCプレートをインキュベートした。酵母に対する有効性を示すため、インキュベーションの後、TLCプレートをニュートリエント寒天培地に対してプレスした。プレートを酵母コロニーがはっきりと視覚化されるまでインキュベートした。
【0223】
結果
図1〜8は、試験した微生物の成長に対する試験溶液の効果を示す。
【0224】
図1を参照すると、S.aureusに対するバニリンおよびDHAAの組み合わせの活性が示されている。バクテリア成長が広まっているかどうかコントロールと比較した試験において阻害のクリアゾーンが示されている。図2は、スチルベンだけ、およびコントロールだけよりもスチルベンおよびDHAAの組み合わせがS.aureusに対してより顕著な抗菌性であることを示す。図3は、バニリンおよびDHAAの組み合わせが、S.enteritidisに対して抗菌性であり、これらの2つの化合物自身は効果がないことを示す。図4は、バニリンおよびDHAAの組み合わせがS.typhimuriumに対して抗菌性であることを示す。図5は、バニリンおよびDHAAの組み合わせがE.coliに対して抗菌性であることを示す。図6は、バニリンおよびDHAAの組み合わせがペニシリウム属糸状菌に対して抗菌性であることを示す。図7は、バニリンおよびDHAAの組み合わせがアスペルギルス属に対して抗菌性であることを示す。最後に、図8は、バニリンおよびDHAAの組み合わせが酵母であるS.cerevisiaeに対して抗菌性であることを示す。バニリン自体は5mMで効果があるが、DHAAと組み合わせるとわずか0.078mMで効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルペノイドまたはその誘導体、および細胞膜完全性またはタンパク質合成を妨げる抗菌剤を含む、抗菌性組成物。
【請求項2】
テルペノイドおよび/または抗菌剤が広葉樹もしくは針葉樹由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
テルペノイドおよび/または抗菌剤が、ヒイラギ(モチノキ属)、カシ(コナラ属)、ブナノキ(ブナ属)、セイヨウトネリコ(トリネコ属)、カエデ(カエデ属)、ポプラ(ポプラ(Populus)属)、ヤナギ(ヤナギ属)、またはクリ(ヨーロッパグリ(Castanea sativa))のようなセイヨウトチノキ(クリ属)由来である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記テルペノイドおよび/または前記抗菌剤は、マツ(マツ属)、トウヒ(トウヒ属)、ヒマラヤスギ(ヒマラヤスギ属)、モミ(モミ属)、カラマツ(カラマツ属)、ダグラスファー(トガサワラ属)、アメリカツガ(ドクニンジン属)、糸杉(ヒノキ科)、アメリカスギ(セコイア属)またはイチイ(イチイ属)由来である、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記テルペノイドは、ジテルペノイドまたはトリテルペノイドである、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記トリテルペノイドは、ウルソン酸、オレアノール酸、ベツリン酸、モロン酸(moronic acid)およびルペオール(lupeol)からなるトリテルペノイドの群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ジテルペノイドは、デヒドロアビエチン酸;アビエチン酸;ピマル酸;カウレン酸;ent−3−β−ヒドロキシカウレン酸;シルビン酸(salvic acid);トタロール(torarol);18−アセトキシ−cis−クレロダ(cleroda)−3,13−Z−ジエン−15−酸(oic acid);アビエタノール(abietinol)(7,13−アビエタジエン−18−オール(7,13−abietadien−18−ol));デヒドロアビエチルグアニジン(dehydroabieticylguanidines);ピシフェリン酸;フェルギノール;イソピマル酸;7−oxo−デヒドロアビエチン酸;7−ヒドロキシ−デヒドロアビエチン酸;および13−ヒドロキシ−ポドカルパ(podocarpa)−8,11,13−トリエン−18−酸(oic acid)からなるジテルペノイドの群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記テルペノイドは、デヒドロアビエチン酸のようなアビエチン酸、またはその誘導体である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗菌剤が精油を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記精油がタイム油、丁子油、ティーツリー油、アニス油、ショウブ油、樟脳油、シダーウッド油、桂皮油、シトロネラ油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ナツメグ油、パルマローザ油、ペパーミント油、ローズマリー油、メボウキ油、ベチベル油、黒コショウ油、ジンジャー油、モツヤクジュ油、オレガノ油、ローレル油、セラニウム油、オレンジ油、ジラ油または冬緑油である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗菌剤がバニリンまたはバニリン酸もしくはエチルバニリンのようなその誘導体である、請求項1〜8のいずれか一に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗菌剤が、スチルベンまたはその誘導体である、請求項1〜8のいずれか一に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗菌剤が、コニフェルアルデヒドまたはその誘導体である、請求項1〜8のいずれか一に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗菌剤が、デヒドロジンゲロンまたはその誘導体である、請求項1〜8のいずれか一に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗菌剤が式XII:
【化1】

この際、R、R、R、R、RおよびRは独立して、H;OH;C−Cアルキルまたはアルキレン;C−Cアルコキシ;C−C飽和または不飽和アルデヒド;C−Cエステルまたはケトン;C−Cカルボキシル;およびC−Cアルキル置換フェニル基からなる群から選択される:
によって表される、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
は、OH、C−Cアルキルもしくはアルコキシ、C−Cアルデヒド、またはC−Cアルキル置換フェニル基であり、好ましくはOH、Cアルコキシ、Cアルデヒド、またはC−Cアルキル置換フェニル基であり;Rは、H、C−CアルキルもしくはアルコキシまたはC−Cエステルであり、好ましくは、H、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、またはC−Cエステルであり;Rは、H、またはC−Cアルキルであり、好ましくは、H、またはC−Cアルキルであり;Rは、H、C−Cアルキルもしくはアルキレン、C−Cアルコキシ、C−C飽和もしくは不飽和アルデヒド、またはC−Cケトンであり、好ましくは、H、C−Cアルキルもしくはアルキレン、C−Cアルコキシ、C−C飽和もしくは不飽和アルデヒド、またはC−Cケトンであり;Rは、H、またはC−Cアルキルであり、好ましくは、H、またはC−Cアルキルであり;そしてRは、H、またはC−Cアルキルであり、好ましくは、H、またはC−Cアルキルである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
テルペノイドまたはその誘導体、および式XII:
【化2】

この際、R、R、R、R、RおよびRは請求項15または16のいずれかで規定したとおりである:
によって表される抗菌剤を含む、抗菌性組成物。
【請求項18】
細胞膜完全性またはタンパク質合成を妨げる抗菌剤の抗菌活性を増強させるための、テルペノイドまたはその誘導体の使用。
【請求項19】
式XII:
【化3】

この際、R、R、R、R、RおよびRは請求項15または16のいずれかで規定したとおりである:
によって表される抗菌剤の抗菌活性を増強させるための、テルペノイドまたはその誘導体の使用。
【請求項20】
抗菌剤の抗菌活性を少なくとも8倍増加させる、請求項18または19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記テルペノイドおよび前記抗菌剤が請求項1〜17のいずれかで定義されるものである、請求項18〜20のいずれか一に記載の使用。
【請求項22】
精油またはバニリンの抗菌活性を増加させるための、極性基および強固な疎水性部分を有する化合物の使用。
【請求項23】
前記化合物は、イソフラバノイドフィトアレキシン(isoflavanoid phyto−alexin)(例えば、ファセオリン(phaseolin))、グリセオリン(glyceollin)または、プテロカルパン(pterocarpan)である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を含む、液状製剤。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を含む、床敷。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を含む、根覆い。
【請求項27】
対象の表面に、請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を接触させる、または表面に組成物を塗布することを含む、対象の微生物コロニー形成を予防する、または阻害する方法。
【請求項28】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を含む、物品。
【請求項29】
前記物品が、例えば、カテーテル、ステント、創傷包帯、救急絆、避妊具、外科的インプラント、置換ジョイント(replacement joints)、コンタクトレンズ、救急絆、創傷包帯、または膏薬のような医療機器である、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を含む、布地または高分子。
【請求項31】
請求項30に記載の布地または高分子を含む、衣料品。
【請求項32】
請求項30に記載の布地または高分子を含む、履物またはその中敷き。
【請求項33】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を含む、包装材料。
【請求項34】
前記包装材料は、食品または食材の包装用に用いられる、請求項33に記載の包装材料。
【請求項35】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を食品の表面に接触させる、または組成物を表面に塗布することを含む、食品の微生物感染を予防する、または阻害する方法における請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物の使用。
【請求項36】
請求項1〜17のいずれか一に記載の抗菌性組成物を含む容器。
【請求項37】
前記容器は、食べ物を保存することができる、または廃棄物容器である、請求項36に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504553(P2013−504553A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528454(P2012−528454)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051517
【国際公開番号】WO2011/030158
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(595042184)ユニバーシティ オブ サリー (7)
【Fターム(参考)】