説明

抗菌性組成物

【目的】樹脂製品表面上で安定した抗菌効果を示し、また樹脂中より溶出しても環境汚染の原因となりにくく、樹脂中に混練成型しても呈色しにくい抗菌性組成物を提供することを目的とする。
【構成】水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着させ、480℃以上600℃以下の温度で焼成するか、あるいは水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着させ、480℃以上600℃以下の温度で焼成した抗菌性組成物の表面の少なくとも1部を反応性有機珪素化合物の加水分解物でコーティングするか、あるいは水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着して乾燥粉砕させ、その表面の少なくとも1部を反応性有機珪素化合物の加水分解物でコーティングし、480℃以上600℃以下の温度で焼成したものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗菌性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、合成樹脂製品が多用されるにいたり、例えば、台所用品などのように衛生面で注意を払う必要がある分野に用いられる場合に、合成樹脂製品表面の菌による汚染が問題となってきている。また、建築用資材として使用されているコーキング材表面に菌がはえ、衛生面は勿論のこと外観的にも悪くなるなどの問題が生じている。その対策として合成樹脂中に抗菌性組成物を混入し、合成樹脂製品表面にこの組成物を溶出させて製品表面の殺菌を行なう方法が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】合成樹脂製品表面に抗菌性能を付与させる材料として、有機系の抗菌剤と無機系の抗菌剤がある。これらの抗菌剤の内、有機系抗菌剤は揮発性を有するため、これを合成樹脂に含有させると、合成樹脂製品の周囲環境が汚染され、またこの合成樹脂製品の表面と接触した排液中には、抗菌剤が含有されており、これが排水環境汚染の原因となり、さらに、下水処理中の活性汚泥に影響を及ぼすなどの問題がある。
【0004】一方、無機系抗菌剤で抗菌性能を付与させるために最も抗菌効果の高いものとして銀系抗菌剤が用いられるが、加熱により呈色し、樹脂に混練して用いる場合200℃以上の成型温度で着色してしまうという問題点があった。
【0005】本発明はこのような課題を解決するもので、樹脂製品表面上で安定した抗菌効果を示し、また樹脂中より溶出しても環境汚染の原因となりにくい抗菌性組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するために本発明は、水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着させ、480℃以上600℃以下の温度で焼成してなるものである。また本発明は、水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着させ、480℃以上600℃以下の温度で焼成した抗菌性組成物の表面の少なくとも1部を反応性有機珪素化合物の加水分解物でコーティングしてなるものである。さらに本発明は、水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着して乾燥粉砕させ、その表面の少なくとも1部を反応性有機珪素化合物の加水分解物でコーティングし、480℃以上600℃以下の温度で焼成してなるものである。
【0007】上記水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物はそのまま用いても良く、例えば水溶性銀塩として酢酸銀を用い、これを水溶媒に溶解させた後、亜硫酸アンモニウム塩およびチオ硫酸アンモニウム塩を反応させた液中にシリカゲルを入れ吸着させるようにしても良い。また、上記亜硫酸アンモニウム塩およびチオ硫酸アンモニウム塩は亜硫酸アンモニウムおよびチオ硫酸アンモニウム・ナトリウムが用いられる。さらに上記有機珪素化合物はテトラエトキシシランが用いられる。
【0008】
【作用】以上のように構成された本発明の抗菌性組成物は、樹脂製品表面上で安定した抗菌効果を示し、樹脂中より溶出しても環境汚染の原因となりにくいものとなる。また、成型した樹脂片の呈色も少なくなる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1酢酸銀などの水溶性銀塩100重量部、亜硫酸アンモニウム230重量部、およびチオ硫酸アンモニウム・ナトリウム180重量部を塩素を含まない水に加えて溶解させ、充分攪拌しながら混合しチオスルファト銀錯塩水溶液を得た。
【0010】本実施例に用いる担体は、「JIS Z 0701包装用シリカゲル乾燥剤」に記載のB型のシリカゲル粉末である。このB型シリカゲル粉末は低湿度では吸湿率が低く、高湿度では吸湿率が高く、かつ高湿度における総吸湿量の高いシリカゲル粉末であり、その平均粒径は8μm程度である。
【0011】このシリカゲル粉末を180℃で2時間以上乾燥させた。上記シリカゲル100重量部に対し、銀成分として2重量部になるように前記チオスルファト銀錯塩水溶液を混合した。その後、速やかに溶媒および担体中に吸収された水分を除去した。次いで、これを所定の粒径に粉砕して、抗菌性材料が担持されたシリカゲルを得た。
【0012】このシリカゲルを昇温速度約10℃/分で500℃まで加熱し、抗菌性組成物を得た。上記熱処理温度が480℃未満では抗菌性組成物は暗褐色に呈色し、600℃を超えるとシリカゲルがガラス化し、粒子生長もするため、樹脂への混練に適さない。
【0013】表1に本実施例1で得られた抗菌性組成物の抗菌性能を示し、表1からも本実施例1の抗菌性組成物は実用的な抗菌性能を有することがわかる。なお、抗菌試験において大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus )、バチルス属菌(Bacillus subtillis)を用い、滴下法に準じた。評価は24時間後に行なった。
【0014】また、実施例1の抗菌性組成物1%を、ポリプロピレン樹脂中に分散混練し、成型した樹脂片の呈色状態をも表1に示す。
【0015】実施例2実施例1と同様の方法で抗菌性組成物を得、さらに反応性有機珪素化合物としてテトラエトキシシラン100重量部をエチルアルコールに希釈混合させた溶液に、上記シリカゲル100重量部を分散させた後、これに純水を加えてテトラエトキシシランを加水分解させ、上記実施例1で得られた抗菌性組成物の表面の少なくとも1部をコーティングした。次いでこれを乾燥させて実施例2の抗菌性組成物を得た。
【0016】表1に本実施例2で得られた抗菌性組成物の抗菌性能を示し、表1からも本実施例2の抗菌性組成物は実用的な抗菌性能を有することがわかる。なお、抗菌試験において大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus )、バチルス属菌(Bacillus subtillis) を用い、滴下法に準じた。評価は24時間後に行なった。
【0017】また、実施例2の抗菌性組成物1%を、ポリプロピレン樹脂中に分散混練し、成型した樹脂片の呈色状態をも表1に示す。
【0018】実施例3実施例1と同様の方法で抗菌性材料が担持されたシリカゲルを得た。反応性有機珪素化合物としてテトラエトキシシラン100重量部をエチルアルコールに希釈混合させた溶液に、上記抗菌性材料が担持されたシリカゲル100重量部を分散させた後、これに純水を加えてテトラエトキシシランを加水分解させ、上記シリカゲルの表面の少なくとも1部をコーティングした。次いでこれを乾燥させた。上記コーティング処理済みのシリカゲルを昇温速度約10℃/分で500℃まで加熱し、実施例3の抗菌性組成物を得た。
【0019】表1に本実施例3で得られた抗菌性組成物の抗菌性能を示し、表1からも本実施例3の抗菌性組成物は実用的な抗菌性能を有することがわかる。なお、抗菌試験において大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus )、バチルス属菌(Bacillus subtillis)を用い、滴下法に準じた。評価は24時間後に行なった。
【0020】また、実施例3の抗菌性組成物1%を、ポリプロピレン樹脂中に分散混練し、成型した樹脂片の呈色状態をも表1に示す。
【0021】比較例1実施例1と同様の方法で抗菌性材料が担持されたシリカゲルを得て、これを加熱せずに用いた。
【0022】この比較例1のシリカゲルを用いて実施例1〜実施例3と同様の方法で抗菌性能および樹脂片の呈色状態を試験した結果を表1に示しているが、表1からも樹脂呈色する点で実施例1〜実施例3に比べて劣ることが分かる。
【0023】
【表1】


【0024】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物を吸着担持させたシリカゲルを480℃以上600℃以下の温度でで熱処理することにより、成型した樹脂片の呈色も少なく、かつ良好な抗菌性能を発揮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着させ、480℃以上600℃以下の温度で焼成してなることを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項2】 水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着させ、480℃以上600℃以下の温度で焼成した抗菌性組成物の表面の少なくとも1部を反応性有機珪素化合物の加水分解物でコーティングしてなることを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項3】 水溶性銀塩、銀錯塩または銀化合物をシリカゲルに担持吸着して乾燥粉砕させ、その表面の少なくとも1部を反応性有機珪素化合物の加水分解物でコーティングし、480℃以上600℃以下の温度で焼成してなることを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項4】 水溶性銀塩を水溶媒に溶解させた後、亜硫酸アンモニウム塩およびチオ硫酸アンモニウム塩を反応させた液中にシリカゲルを入れ吸着させることを特徴とする請求項1または2または3記載の抗菌性組成物。
【請求項5】 亜硫酸アンモニウム塩およびチオ硫酸アンモニウム塩は亜硫酸アンモニウムおよびチオ硫酸アンモニウム・ナトリウムであることを特徴とする請求項4記載の抗菌性組成物。
【請求項6】 水溶性銀塩は酢酸銀であることを特徴とする請求項4記載の抗菌性組成物。
【請求項7】 有機珪素化合物はテトラエトキシシランであることを特徴とする請求項2または3記載の抗菌性組成物。