説明

抗菌性製品及び粉末抗菌剤

【課題】安全性が高く、安価で製造でき、しかも樹脂等の基材への配合が容易で、且つ、配合した樹脂等の様々な特性(例えば機械特性等)を低下させることのない抗菌性製品を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂100質量部に対して粉末抗菌剤を0.01〜2.99質量部配合してなる抗菌性製品、或いは、熱硬化性樹脂100質量部に対して粉末抗菌剤を0.1〜5.0質量部配合してなる抗菌性製品であって、前記粉末抗菌剤が水酸化カルシウム及びホウ素を含み、前記ホウ素の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.05質量%以上であり、前記鉄の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.8質量%未満であることを特徴とする、抗菌性製品並びに前記粉末抗菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化カルシウム並びにホウ素を含有する粉末抗菌剤を配合してなる抗菌性製品、並びに、前記粉末抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック製品に対して様々な方法で抗菌性を付与する取り組みがなされており、例えば有機系抗菌剤や、銀イオンや亜鉛イオンを利用した無機系抗菌剤、さらには生物からの抽出物やキトサン等の天然成分を使用する天然系抗菌剤などを利用した抗菌性製品が提案されている。
【0003】
これらの中で、有機系抗菌剤は抗菌性が強いという側面を有するが、一般に溶出速度が速いため効果の持続に乏しいという問題があり、また、安全性を重視して抗菌剤の選択を行なうと所望の抗菌効果を得られ難いという問題がある。
また抗菌剤の合成樹脂への溶解性が低い場合には、白濁が起こったり光沢が低下するなど、表面外観を損なう場合がある。
【0004】
銀イオンや亜鉛イオンを利用した無機系抗菌剤は比較的安全性が高く、広範囲の細菌に対して抗菌性を発揮することから、様々な形態で各種合成樹脂製品に使用されている。
但し、このような無機系抗菌剤を抗菌性を付与すべく樹脂に練り込んだ場合、抗菌成分である銀イオン等に起因する樹脂の透明性の低下、変色、さらには樹脂の劣化が生じやすいという問題がある。また樹脂全体に銀イオン系抗菌剤を配合すると、成型製品の内部に存在する抗菌剤が抗菌性に殆ど寄与しない一方、抗菌剤自体それほど安価といえないことから生産費が非常に高くなるという問題があった。
こうした問題を解決するために、微粉体無機抗菌剤をアルコール等の溶媒に分散させて成形品表面に噴霧・塗布したり、或いは該抗菌剤を含有する表面コーティング層として形成するなどによる抗菌性の付与方法も提案され、そして従来、この方法が主に利用されている(特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平 6− 80528号公報
【特許文献2】特開平 8−283452号公報
【特許文献3】特開平11− 12478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の銀イオンや亜鉛イオンを利用した無機系抗菌剤は比較的安全性が高いとはいえ、慢性的な摂取による健康被害の可能性を否定できず、使用後の廃棄処理(焼却による大気汚染、埋立地の土壌汚染、リサイクルの可否等)についても慎重に検討する必要があった。
さらに、合成樹脂成形品の表面コーティングによる抗菌性を付与する方法においては、対象物に傷が付いたり、時間が経過したりすると抗菌性能が低下するという問題があった。
【0007】
なお、従来主に充填剤や安定剤として使用されてきた水酸化カルシウムを、それが抗菌性を有することから、合成樹脂に配合した水酸化カルシウム含有樹脂組成物も提案されている。しかしながら、所望の抗菌効果を得るには相当量の水酸化カルシウムの添加(合成
樹脂100質量部に対し16質量部以上)を必要とし、しかもこの場合、製品の機械的強度や、表面外観を損ねる虞があった(特開2001−123071号公報参照)。
【0008】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、安全性が高く、安価で容易に製造でき、且つ、配合した樹脂等の様々な特性(例えば機械特性等)を低下させることのない抗菌性製品並びに粉末抗菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、全く意外なことに、ホウ素を0.05質量%以上で且つ鉄を0.8質量%未満含む水酸化カルシウム主体の粉末を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に配合すると、特にその配合量が樹脂100質量部に対して2.99質量部以下(熱可塑性樹脂)或いは5.0質量部以下(熱硬化性樹脂)の低濃度であっても、大変高い抗菌性が得られ、しかも機械的強度等の物性の低下が見られず、さらに安全である抗菌性製品が提供されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂100質量部に対して粉末抗菌剤を0.01〜2.99質量部配合してなる抗菌性製品であって、前記粉末抗菌剤が水酸化カルシウム及びホウ素を含み、前記ホウ素の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.05質量%以上であり、前記鉄の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.8質量%未満であることを特徴とする、抗菌性製品に関する。好ましくは、前記粉末抗菌剤が、0.5〜10μmの平均粒径を有する微粉末からなる、抗菌性製品が望ましい。
また本発明は、熱硬化性樹脂100質量部に対して粉末抗菌剤を0.1〜5.0質量部配合してなる抗菌性製品であって、前記粉末抗菌剤が水酸化カルシウム及びホウ素を含み、前記ホウ素の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.05質量%以上であり、前記鉄の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.8質量%未満であることを特徴とする、抗菌性製品に関する。
更に本発明は、前記粉末抗菌剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗菌性製品に使用する粉末抗菌剤は、食品添加物としても使用される水酸化カルシウムを主成分とするため、従来のプラスチック添加用抗菌剤として主流である銀及び亜鉛等を含有する抗菌剤と比べて安定性が高く、また安価である。
しかも本発明の抗菌性製品は、樹脂への粉末抗菌剤の添加量が少量であるにもかかわらず、食器等に求められる高い抗菌効果を十分に発揮することができ、しかも添加した樹脂の機械特性や、またその外観を損なうことがない。
【0011】
さらに本発明の抗菌性製品は、材料中に抗菌剤が均一に分布してその効果を発揮することから、例え材料表面が傷ついたとしても抗菌性能を損なうことがない。
そして本発明の抗菌性製品は、前述したように安全性が高く且つ安価な材料であることから、日用品を含め広範な製品に使用することができる。特に直接手や肌が接触することとなる製品、例えば、パソコン等のキーボード、各種機器やリモコン等の筐体やボタン、食器類、まな板やボール等の調理用器具、便座、浴室・洗面所の床材や壁面材、その他吊り輪やエレベーターの壁面材などに対して安全な抗菌性製品が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は試験片5)(抗菌剤2.99%含有 ポリプロピレン樹脂片)(図1(B))と抗菌剤を含まない(無加工)の試験片(図1(A))を用いて、大腸菌を含有する溶液を24時間培養した後の結果を示す写真である。
【図2】図2は試験片5)(抗菌剤2.99%含有 ポリプロピレン樹脂片)(図2(B))と抗菌剤を含まない(無加工)の試験片(図2(A))を用いて、黄色ぶどう球菌を含有する溶液を24時間培養した後の結果を示す写真である。
【図3】図3は試験片5)(抗菌剤2.99%含有 ポリプロピレン樹脂片)(図3(B))と抗菌剤を含まない(無加工)の試験片(図3(A))を用いて、大腸菌(O157:H7)を含有する溶液を24時間培養した後の結果を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の抗菌性製品は、水酸化カルシウム及びホウ素化合物を含む粉末抗菌剤と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂より構成される。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0014】
<粉末抗菌剤>
本発明の抗菌性製品に適用する粉末抗菌剤に用いる水酸化カルシウムは、当業者に既知の方法により、例えば炭酸カルシウムを焼成して酸化カルシウムとした後、水和させることにより得られる。
炭酸カルシウム源としては、動物性由来のカルシウムを使用することができ、例えばホタテ貝殻、アワビ貝殻、サザエ貝殻、ホッキ貝殻、ウニ貝殻の天然か養殖の貝類又は珊瑚殻等を原料に使用することができる。これらのうち、貝殻組成が均一である点及び供給量が多いなどの点から、ホタテ貝殻を使用することが好ましい。
【0015】
これらの貝殻は、粉砕して貝殻粉末(或いは粒状物)とし、800℃〜1500℃で、より好ましくは850℃〜1200℃で、例えば炭酸ガスを導入しながら焼成する。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。焼成時間は焼成温度等によって適宜設定されるが、通常、雰囲気温度が所定の焼成温度に到達した後、10〜120分、好ましくは15〜90分である。こうした焼成処理により、不要な有機物を熱分解によって除去する。
焼成後、水和させて水酸化カルシウム主体の粉末を得る。
焼成又は水和の過程で、必要に応じてさらに粉砕を行い、最終的には平均粒径0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは0.5〜40μm、最も好ましくは0.5〜10μmの微粉末とする。微粒子の粒径をより細かくすることにより、粉末抗菌剤となして熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に配合する際、均一に分散させることができ、すなわち抗菌性製品に抗菌性能をムラなく付与することができる。
【0016】
得られた水酸化カルシウム主体の微粉末に、必要により、例えば粉末中のホウ素濃度が低い場合等において、酸化ホウ素等のホウ素を含有する微粉末を配合し、十分に混合して均一化させ、粉末抗菌剤を得る。
こうして得られた粉末抗菌剤は水酸化カルシウムを主体としホウ素を必須の成分として含有するものであり、そのホウ素の含有量は、粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.05質量%以上、好ましくは0.2質量%以上である。
また得られた粉末抗菌剤において、鉄の含有はなるべく避けた方がよく、従って鉄の含有量は粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.8質量%未満、好ましくは0.4質量%未満であることが望ましい。
【0017】
<熱可塑性樹脂>
本発明において、前記粉末抗菌剤を配合する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂などが挙げられる。
中でも、まな板等の調理用器具やパソコン等のキーボードに使用する観点からは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂又はPBT樹脂を選択することが好ましい。
【0018】
前述の粉末抗菌剤の熱可塑性樹脂に対する配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01〜2.99質量部であり、好ましくは少なくとも0.1質量部以上であればよく、0.5質量部以上であることがより好ましい。1.0〜2.9質量部が特に好ましく、典型的には2.0〜2.5質量部程度用いられる。0.01質量部未満であると所望の抗菌効果が得られず、また2.99質量部を超えて配合することは、それ以上の量を配合しなくとも十分な抗菌効果を得られるので経済的でなく、その上、場合により配合した樹脂の機械特性や、表面外観を損なう虞がある。
【0019】
<熱硬化性樹脂>
本発明において、前記粉末抗菌剤を配合する熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0020】
前述の粉末抗菌剤の熱硬化性樹脂に対する配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜5.0質量部であり、0.15〜3質量部がより好ましい。0.1質量部未満であると所望の抗菌効果が得られず、また5.0質量部を超えて配合することは、それ以上の量を配合しなくとも十分な抗菌効果を得られるので経済的でなく、その上、場合により配合した樹脂の機械特性や、表面外観を損なう虞がある。
【0021】
<抗菌性製品>
本発明の抗菌性製品には、所望により、従来の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる成形製品に慣用されている添加剤、例えば可塑剤、安定剤、酸化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料、染料など)、蛍光増白剤、防炎剤、帯電防止剤、粘度調整剤等を添加することもできる。
【0022】
本発明の抗菌性製品は、前記粉末抗菌剤を当業者に既知の装置、例えば単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ミキサー、2本ロールミルを用いて前記熱可塑性樹脂に配合し、均一となるように十分に混練した後、射出成形、押出成形、ブロー成形等を用いて所望の形状に成形されて製造される。或いはカレンダー法やキャスティング法などによりフィルム・シート状に成形したり、用途によっては発泡させた製品としてもよい。
また熱硬化性樹脂の場合には、ミキサー等で十分に混練して均一な混合物とし、これを所望の形状の成形型に流しこみ、選定した樹脂固有の硬化条件従って硬化させた後、脱型すればよい。
【0023】
本発明の抗菌性製品ならびに抗菌剤は、様々な用途に使用できる。
本発明の抗菌剤は、従来のプラスチック用抗菌剤として使用されてきた銀や亜鉛とは異なり、安価で且つ安全性が高い材料であることから、日用品を含め広範な製品に使用することができる。
従って、例えば直接手や肌が接触することとなる製品、具体的には、パソコン等のキーボード、各種機器やリモコン等の筐体やボタン、食器類、まな板やボール等の調理用器具、便座、浴室・洗面所の床材や壁面材、その他吊り輪やエレベーターの壁面材などにおいて有利に利用することができる。
特に本発明の抗菌性製品は、材料中に抗菌剤が均一に分布してその効果を発揮することから、例えばまな板などに使用した場合に、まな板表面が包丁によって傷つけられたとしても抗菌性能を十分に発揮でき、抗菌性能の長期間維持を達成することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0025】
製造例1:抗菌剤の製造
ホタテ貝の貝殻を粉砕した後、1000℃で1時間焼成した。焼成物に水を加えて消化し、得られた水酸化カルシウムを粉砕機でさらに微粉砕して、平均粒径が10μmの粉末を製造した。これに酸化ホウ素微粉末を混合して、抗菌剤を得た。
得られた抗菌剤の組成分析結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1:抗菌性試験1
[試験片(抗菌性製品)の製造(1)]
上記抗菌剤をポリプロピレンの総質量に対して0.02質量%、0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%又は2.99質量%となるように混合し、大きさ約50mm×40mm、厚さ2〜3mmの長方形の試験片を製造した。
【0028】
[抗菌性試験及び結果(1)]
JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2
プラスチック製品などの試験方法に準拠し、前述の通りに製造した抗菌剤入り試験片(試験片1)〜5))の抗菌性試験を行った。
すなわち、作成した5種の試験片並びに無加工のポリエチレンフィルムの表面をエタノールで拭いて十分に乾燥させた後、下記に記した3菌株のうちのいずれかを含有する菌液を0.3ml接種した後、ポリエチレンフィルムで覆い、35℃にて24時間(相対湿度90%)培養した後、菌の生菌数を測定した。
使用した試験片、被覆フィルム、菌液の概要については表2に、24時間培養後の生菌数の測定結果を表3に示す。また、試験片5)と無加工の試験片の菌液培養結果の写真を図1〜図3に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
表3に示すとおり、無加工の試験片(ポリエチレンフィルム)は、35℃で24時間培養後には全ての菌が増殖する結果となったが、本発明の抗菌剤を含む試験片1)〜5)は、3種の菌のいずれにおいても優れた抗菌性能を発揮した。特に、図1〜図3に示す培養結果を示す写真からも明らかなように、無加工の試験片(図1(A)、図2(A)、図3(A))と比べ、試験片5)(図1(B)、図2(B)、図3(B))においては、3種の菌のいずれにおいても非常に優れた抗菌性能を発揮した。
【0032】
実施例2:抗菌性試験2
[試験片(抗菌性製品)の製造(2)]
「製造例1:抗菌剤の製造」にて製造した抗菌剤を、メラミンの総質量に対して0.2質量%となるように混合し、大きさ約45mm×45mm、厚さ2mmのほぼ正方形の試験片6)を製造した。
【0033】
[抗菌性試験及び結果(2)]
前述したように、JIS Z 2801:2000の試験方法に準拠し、試験片の抗菌性試験を行った。
すなわち、作成した試験片6)並びに無加工のポリエチレンフィルムの表面をエタノールで拭いて十分に乾燥させた後、下記に記した2菌株のいずれかを含有する菌液を0.4ml接種した後、ポリエチレンフィルムで覆い、35℃にて24時間(相対湿度90%)
培養した後、菌の生菌数を測定した。
使用した試験片、被覆フィルム、菌液の概要については表4に、24時間培養後の生菌数の測定結果を表5に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
表5に示すとおり、無加工の試験片(ポリエチレンフィルム)は、35℃で24時間培養後には全ての菌が増殖する結果となったが、本発明の抗菌剤を含む試験片6)は、2種の菌のいずれにおいても優れた抗菌性能を発揮した。
【0037】
実施例3:水抽出物のpH試験及び試験結果
実施例1の「試験片(抗菌性製品)の製造(1)」で製造した試験片(ポリプロピレンの総質量に対して抗菌剤を0.2質量%とした試料)を10mm×10mmに切り取り、試験片7)とした。
これをJIS K 7371:2000「プラスチック−塩化ビニルホモポリマー及びコポリマー−水抽出物のpHの求め方」に準拠し、試験片7)の水抽出物のpH試験を行った。
これによると、水抽出物のpHは8.1であり、この数値は水道水のpH5.8〜8.6の範囲内のものであることから、本発明の抗菌性製品を調理用器具や食器等に用いた場合であっても安全であることが確認された。
【0038】
実施例4:機械的物性試験及び試験結果
実施例1の「試験片(抗菌性製品)の製造(1)」と同様に、「製造例1:抗菌剤の製造」にて製造した上記抗菌剤をポリプロピレンの総質量に対して0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%又は2.99質量%となるように混合し、大きさ約50mm×40mm、厚さ2〜3mmの長方形の試験片8)〜13)を製造した。なお対照として無添加の試験片も作成した。
得られた試験片に対して、軟化点温度試験、衝撃試験及び流動性試験を行い、試験片の機械的物性を評価した。
物性評価に使用した測定装置を表6に、得られた結果を表7に示す。
【0039】
【表6】

【0040】
【表7】

【0041】
表7に示すように、前記抗菌剤を含む試験片8)〜13)の軟化点温度及び衝撃試験値は、無添加の試験片のそれとほぼ同じ値を示し、両者の値の差異は誤差の範囲内のものと認められるという結果が得られた。
また、流動性は抗菌剤の添加量が増えると減少する傾向がみられたが、無添加の試験片の場合と比べても減少量は少なく、流動性をほぼ保っているとする結果が得られた。
このように、本発明の抗菌性製品に該当する試験片8)〜13)は、無添加の試験片とほぼ同じ機械的物性を維持することができた。
【0042】
実施例5:合成樹脂製品の溶出試験
「製造例1:抗菌剤の製造」にて製造した上記抗菌剤を、ポリプロピレンの総質量に対して2.99質量%となるように混合し、大きさ約40cm×24cm、圧さ約13mmのまな板を製造した。
これを、食品衛生法・食品,添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)ポリエチレン及びポリプロピレンを主成分とする合成樹脂製の器具又は容器包装(平成18年厚生労働省告示第201号)に従い、材質試験(鉛、カドミウム)及び溶出試験(重金属(鉛として)、過マンガン酸カリウム消費量、蒸発残留物(水、4%酢酸、20%エタノール、ヘプタン)を行った。
これによると、何れの試験結果も、食品衛生法・食品,添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に適合するとする結果が、本発明の抗菌性製品をまな板に用いた場合であっても安全であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100質量部に対して粉末抗菌剤を0.01〜2.99質量部配合してなる抗菌性製品であって、前記粉末抗菌剤が水酸化カルシウム及びホウ素を含み、前記ホウ素の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.05質量%以上であり、前記鉄の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.8質量%未満であることを特徴とする、抗菌性製品。
【請求項2】
前記粉末抗菌剤は、0.5〜10μmの平均粒径を有する微粉末からなる、請求項1記載の抗菌性製品。
【請求項3】
熱硬化性樹脂100質量部に対して粉末抗菌剤を0.1〜5.0質量部配合してなる抗菌性製品であって、前記粉末抗菌剤が水酸化カルシウム及びホウ素を含み、前記ホウ素の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.05質量%以上であり、前記鉄の含有量が該粉末抗菌剤の総質量に基づいて0.8質量%未満であることを特徴とする、抗菌性製品。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の粉末抗菌剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−65215(P2010−65215A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185693(P2009−185693)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(508245024)
【出願人】(508245035)
【出願人】(508245068)
【Fターム(参考)】