説明

抗菌性UV硬化性コーティング組成物

抗菌性組成物および方法を開示する。抗菌性組成物は、抗菌性機能を広範な医療デバイスに付与するのに特に有用である。一態様において、本発明は、ともに、UV硬化性ポリマー組成物を形成することが可能なオリゴマー、モノマーおよび光開始剤を含むUV硬化性組成物を含むUV硬化性抗菌性コーティングに関する。組成物は、必要に応じて流動改質剤を含む。組成物は、広範な薬剤から選択できる抗菌剤をも含む。代表的な抗菌剤は、塩化セチルピリジウム、セトリミド、アレキシジン。二酢酸クロルヘキシジン、塩化ベンズアルコニウムおよびo−フタルアルデヒドを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性組成物および様々な医学的用途においてそれらの組成物を使用するための方法に関する。近代の医学的治療の主な課題の1つは、微生物の感染および蔓延の抑制である。
【背景技術】
【0002】
この課題が常に提起される1つの分野は、様々な種類の点滴治療にある。点滴治療は、最も一般的な医療処置の1つである。入院患者、自宅看護患者および他の患者は、血管系に挿入された血管アクセスデバイスを介して液体、医薬および血液製剤を受ける。感染を治療し、麻酔もしくは鎮痛を提供し、栄養補助を提供し、癌成長を治療し、血圧および心臓律動性を維持するために、または多くの他の臨床的に有意な用途のために点滴治療を使用することができる。
【0003】
点滴治療は、血管アクセスデバイスによって促進される。血管アクセスデバイスは、患者の末梢または中枢血管系にアクセスすることができる。血管アクセスデバイスは、短期間(数日間)、中期間(数週間)または長期間(数カ月間から数年間)にわたって留置することができる。血管アクセスデバイスを連続的点滴治療または断続的治療のために使用することもできる。
【0004】
一般的な血管アクセスデバイスは、患者の静脈に挿入されるプラスチックカテーテルである。カテーテルの長さは、末梢アクセスのための数センチメートルから中枢アクセスのための多センチメートルの範囲であってよく、末梢挿入中枢カテーテル(PICC)などのデバイスを含むことができる。カテーテルは経皮的に挿入することができ、または患者の皮膚の下に外科移植することができる。カテーテル、またはそれに装着された任意の他の血管アクセスデバイスは、単一の管腔、または多くの液体を同時に注入するための複数の管腔を有することができる。
【0005】
血管アクセスデバイスは、一般には、他の医療デバイスを装着できるルアーアダプタを含む。例えば、投与セットを血管アクセスデバイスの一端に装着し、静脈(IV)袋を他端に装着することができる。投与セットは、液体および医薬の連続注入のための液体導管である。一般に、IVアクセスデバイスは、別の血管アクセスデバイスに装着することができ、血管アクセスデバイスを閉鎖し、液体および医薬の断続的注入または注射を可能にする血管アクセスデバイスである。IVアクセスデバイスは、筐体および系を閉鎖するための隔膜を含むことができる。隔膜をブラントカニューレまたは医療デバイスの雄型ルアーで開放することができる。
【0006】
血管アクセスデバイスの隔膜が適正に動作できないか、または不十分な設計特徴を有する場合は、特定の併発症が起こり得る。点滴治療に伴う併発症は、重大な罹患およびさらには死亡を引き起こし得る。1つの重大な併発症は、カテーテル関連血流感染(CRBSI)である。米国の病院では推定で年間250000から400000件の中枢静脈カテーテル(CVC)関連BSIが発生している。それに起因する死亡率は、感染毎に12%〜25%であり、保健医療システムに対する費用はエピソード毎におよそ25000ドル〜56000ドルである。
【0007】
血管アクセスデバイスは、汎発性BSI(血流感染)をもたらす感染の核として作用し得る。これは、定期的にデバイスを洗浄することを怠ること、非無菌挿入技術、またはカテーテル挿入後に流路のいずれかの端部を介して液体流路に入る病原体によって引き起こされ得る。血管アクセスデバイスが汚染されると、病原体は、血管アクセスデバイスに接着し、コロニー形成し、生物膜を形成する。生物膜は、大抵の殺生剤に対して抵抗性を有し、患者の血流に入ってBSIを引き起こす病原体の補給源を提供する。したがって、抗菌性を有するデバイスが必要とされる。
【0008】
生物膜形成および患者感染を防止する1つの手法は、抗菌性コーティングを様々な医療デバイスおよび構成要素に設けることである。多くの医療デバイスは、金属材料またはポリマー材料で構成されている。これらの材料は、通常、高摩擦係数を有する。通常、低摩擦係数を有する低分子量材料または液体を材料のバルクに混入させるか、または基板の表面上に塗布して、デバイスの機能を助ける。
【0009】
過去35年間にわたって、熱可塑性ポリウレタン溶液を抗菌性コーティングの担体として使用することが慣例であった。溶媒は、通常、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、または両者のブレンドである。THFは、非常に迅速に酸化することができ、非常に強い爆発性を有する傾向があるため、高価な防爆のコーティング設備が必要である。これらの強過ぎる溶媒は、また、ポリウレタン、シリコーン、ポリイソプレン、ブチルゴムポリカーボネート、硬質ポリウレタン、硬質ポリ塩化ビニル、アクリルおよびスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含む、広く使用されているポリマー材料の多くを攻撃する。したがって、これらの材料で構成された医療デバイスは、経時的に変形し、かつ/またはそれらの表面に微小亀裂を形成し得る。この種のコーティングについての別の問題は、溶媒が完全に熱蒸発するのにほぼ24時間かかることである。よって、従来の技術は、処理、性能およびコストに関して根強い問題がある。
【0010】
別の制限は、当該コーティングに使用される好適な抗菌剤の入手可能性である。医療デバイスを被覆するのに最も広く使用される抗菌剤の1つは、銀である。銀塩および銀元素は、医療外科業界および全般的な産業の両方において周知の抗菌剤である。それらは、通常、ポリマーバルク材料に含められるか、またはプラズマ、熱蒸着、電気メッキ、もしくは従来の溶媒コーティング技術によって医療デバイスの表面に塗布される。これらの技術は、単調で、高価で、環境的に優しくない。
【0011】
加えて、銀コーティング医療デバイスの性能は、せいぜい月並みである。例えば、銀塩または銀元素から電離した銀イオンが抗菌剤として効果を達成するまで8時間までの時間を要し得る。その結果、銀コーティングが一様に効果的になる前に実質的な微生物活性が生じ得る。また、銀化合物または銀元素は、濃琥珀色から黒色の不快な色を有する。
【0012】
よって、当該技術分野において、様々な種類の医療デバイス、および特に点滴治療に関連するデバイスに抗菌機能を付与するための改良された組成物が必要である。具体的には、ポリマー材料および金属で構成される医療デバイスに容易に塗布することができる効果的な抗菌性コーティングが必要である。当該抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するための改良された方法も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、現在利用可能な抗菌性組成物および方法によってまだ十分に解決されていない当該技術分野での問題および必要性に対応して開発された。したがって、これらの組成物および方法は、医療デバイスと併用される改良された抗菌性組成物および方法を提供することによって、CRBSIのリスクおよび発生などの問題を軽減するために開発されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、抗菌性を有する紫外線(UV)(波長が約200nmから600nm)硬化性コーティングに関する。コーティングを以上に示されている範囲、すなわち約200nmから約600nmの範囲の光によって硬化させることができる。いくつかの実施形態において、約300nmから約450nmの範囲の光で組成物を硬化させることが好ましい可能性がある。これらのコーティングは、特に、医療デバイス、特にニードルレス弁のような静脈内アクセスデバイスに対する使用に適応可能である。以上に言及したように、医療デバイスは、ポリマー基板、特にポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)およびアクリルで構成されていることが多い。
【0015】
本発明の一態様において、当該デバイスの表面を、UV硬化性組成物およびそのマトリックス全体に均一に分散された抗菌剤などの、そこに含まれる追加成分を含むUV硬化性コーティング(以降「UVコーティング」と称することもある)で被覆する。抗菌剤は、マトリックスを介して拡散し、コーティング表面と接触する微生物を撲滅することが可能である。UVコーティングマトリックスに均一に分散された抗菌剤は、マトリックスがIV液によって軟化されると、マトリックスから徐々に拡散する。次いで、抗菌剤は、コーティング表面と接触する微生物を撲滅するのに利用可能である。
【0016】
本発明の配合物は、一般に、ウレタンまたはポリエステル型オリゴマーと、アクリレート型官能基、アクリレート型モノマー、光開始剤、流動改質剤および抗菌剤との組合せで構成される。抗菌剤のナノサイズまたはミクロサイズの粒子は、全コーティングマトリックス全体に均一かつ恒久的に分散される。
【0017】
コーティングは、無溶媒であり、基板の表面を被覆する他の従来のコーティング方法を使用することによって、噴霧、塗布、浸漬または分散され得る。次いで、それらを紫外光で迅速に硬化させることができる。硬化を配合条件および硬化条件に応じて数秒または数分で完了させることができる。本発明のコーティングは、一般に、従来のコーティングの場合の数時間でなく数分以内で効果的である。コーティングは、また、一般に快い淡色またはさらには透明色を有する。
【0018】
多種多様なオリゴマーを本発明の範囲内で使用することができる。オリゴマーは、UV硬化が可能であり、本明細書に記載の種類の抗菌剤を担持することが可能であればよい。例えば、オリゴマーは、アクリル化脂肪族ウレタン、アクリル化芳香族ウレタン、アクリル化ポリエステル、不飽和ポリエステル、アクリル化ポリエーテル、アクリル化アクリル等、または上記物質の組合せであり得る。アクリル化官能基は、一官能性、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性または六官能性であり得る。
【0019】
オリゴマーと同様に、広範なモノマーをこれらの組成物に使用することができる。ここでも、組成物全体がUV硬化性であり、組成物が抗菌剤を保持することが可能であればよい。例えば、モノマーは、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、イソボルニルアクリレート、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメトキシフェニルアセトフェノンヘキシルメチルアクリレート、メタクリル酸1,6−ヘキサンジオール等またはそれらの組合せであり得る。
【0020】
UV硬化を可能にするために、組成物は、十分かつ相溶性の光開始剤を備えるべきである。本発明の一部の実施形態において、光開始剤は、1)ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシムおよびアシルホスフィン酸化物などの単一分子開裂型、ならびに2)ミヒラーケトン、チオキサントン、アントロギオノン、ベンゾフェノン、メチルジエタノールアミン、2−N−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート等またはそれらの材料の組合せなどの水素誘引型であり得る。
【0021】
一部の実施形態において、好ましくは、流動改質剤を組成物に添加することができる。流動改質剤は、組成物の流動特性を要望に応じて制御および改質することを可能にする。流動改質剤は、組成物内の抗菌剤および他の材料の均一な分散に役立つこともできる。好適な流動改質剤は、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカ、またはこれらの材料の組合せを含むことができる。
【0022】
様々な抗菌剤を本発明の組成物に使用することができる。抗菌剤は、組成物の他の成分と相溶性があり、微生物を抑制するのに有効であればよい。具体的には、抗菌剤は、組成物の他の成分と化学的に反応しないことが好適である。上述したように、一部の実施形態において、抗菌剤は、それを微生物の部位に送達することができるように、組成物のマトリックス内を移動することが可能であることが好適である。本発明の範囲内の好適な抗菌剤の例としては、アルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀元素もしくはその化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物等、または上記物質の組合せが挙げられる。
【0023】
別の態様において、本発明は無溶媒であってよい。以上に言及したように、多くの従来のコーティングは、THFおよびDMFなどの強過ぎる溶媒を使用する。本発明は、溶媒を用いずに作用可能であるため、従来の溶媒の使用によってもたらされる問題を回避する。
【0024】
それらの配合物は、また、多くのプラスチック表面(PC、PU、PVC、アクリルおよびSBR等)に対して良好な接着性を示す。配合物を十分な紫外光(波長が約200nmから600nmであり、一部の実施形態では約300nmから約450nmの範囲である紫外光)で硬化させることができる。
【0025】
よって、本発明は、既存の技術の制限の多くを克服する抗菌性コーティング組成物を提供する。本発明は、医学的用途への承認を達成した既知の成分を採用する。これらの成分は、混合され、用意かつ効率的に使用される。以上に記載したように、本発明の組成物は、一般に、オリゴマー、モノマー、光開始剤、流動改質剤および好適な抗菌剤を含む。得られた組成物は、医療デバイスの表面に容易に塗布され、UV光によって迅速に硬化される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のこの詳細な説明は、以上に概要を示した本発明の態様の各々のさらなる説明を提供する。本発明の一態様において、抗菌性紫外線(UV)硬化性コーティングを提供する。コーティングは、ともにUV硬化性ポリマー組成物を形成することが可能であるオリゴマー、モノマーおよび光開始剤を含むUV硬化性組成物を含む。一部の実施形態において、組成物は、組成物の流動特性および組成物内の成分の均一な分散を向上させるために、流動改質剤を含むこともできる。最後に、効果的な抗菌剤がUV硬化性コーティング組成物中に含められる。
【0027】
UV硬化性コーティング組成物は、主として、1つまたは複数のオリゴマーおよび1つまたは複数のモノマーと1つまたは複数の好適な光開始剤との組合せで構成される。以下の説明において、UV硬化性コーティング組成物は、100重量部を構成することになる。UV硬化性コーティング組成物に添加される材料は、流動改質剤、抗菌剤および他の添加剤を含むことができる。これらの材料は、100重量部のUV硬化性コーティング組成物に添加される重量部で定義される。
【0028】
オリゴマーは、一般に、アクリル化脂肪族ウレタン、アクリル化芳香族ウレタン、アクリル化ポリエステル、不飽和ポリエステル、アクリル化ポリエーテル、アクリル化アクリル等、またはそれらの組合せからなる群から選択される。アクリル化官能基は、一官能性アクリレート、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、四官能性アクリレート、五官能性アクリレートおよび六官能性アクリレートからなる群から選択される。組成物の他の成分と相溶性がある任意のオリゴマーが、本発明の範囲内で使用可能である。オリゴマーは、典型的には、UV硬化性組成物の約10%から約90%を構成することになる。いくつかの実施形態において、オリゴマーは、UV硬化性組成物の約20%から約80%を構成することになる。本発明の一部の実施形態において、オリゴマーは、UV硬化性組成物の約30%から約70%を構成することになる。
【0029】
モノマーは、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、イソボルニルアクリレート、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメトキシフェニルアセトフェノンヘキシルメチルアクリレート、メタクリル酸1,6−ヘキサンジオール等またはこれらの化合物の組合せからなる群から選択される。ここでも、組成物の他の成分と相溶性がある任意のモノマーが、本発明の範囲内で使用可能である。モノマーは、典型的には、UV硬化性組成物の約5%から約90%を構成することになる。いくつかの実施形態において、モノマーは、UV硬化性組成物の約10%から約75%を構成することになる。本発明の一部の実施形態において、モノマーは、UV硬化性組成物の約20%から約60%を構成することになる。
【0030】
光開始剤は、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシムおよびアシルホスフィン酸化物などの単一分子開裂型、ならびにミヒラーケトン、チオキサントン、アントロギオノン、ベンゾフェノン、メチルジエタノールアミンおよび2−N−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートからなる水素誘引型からなる群から選択される。光開始剤は、また、それが組成物の他の成分と相溶性を有するように選択され、本発明の範囲内で使用可能である。光開始剤は、典型的には、UV硬化性組成物の約0.5%から約10%を構成することになる。いくつかの実施形態において、光開始剤は、UV硬化性組成物の約1%から約8.5%を構成することになる。本発明の一部の実施形態において、光開始剤は、UV硬化性組成物の約2%から約7%を構成することになる。
【0031】
以上に言及したように、特定の追加的な成分がUV硬化性組成物に添加される。これらの中でも好適な流動改質剤および抗菌剤が顕著である。以上に言及したように、これらの追加的な成分の量は、100重量部のUV硬化性組成物に添加される重量部で表されることになる。
【0032】
流動改質剤は、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカからなる群から選択される。流動改質剤は、一般には、100重量部のUV硬化性組成物に添加される約0.1から約30重量部を構成する。すなわち、UV硬化性組成物は100重量単位であり、流動改質剤は、追加的な重量の約0.1から約30重量部を構成する。他の実施形態において、流動改質剤は、100重量部のUV硬化性組成物に対して0.1から約20重量部を構成する。一部のさらなる実施形態において、流動改質剤は、100重量部のUV硬化性組成物に対して約0.2から約10重量部を構成する。
【0033】
抗菌剤は、一般に、アルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀、銀化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される。抗菌剤は、一般に、100重量部のUV硬化性組成物に対して約0.5から約50重量部の量で存在する。他の実施形態において、抗菌剤は、組成物の約0.5から約30重量部の量で存在してよい。一部のさらなる実施形態において、抗菌剤は、約0.5から約20重量部の量で存在する。
【0034】
抗菌剤は、UV硬化性組成物に溶解することができるか、またはそれに均一に分散することができる。このように、十分な抗菌剤が組成物内を移動して、微生物活性の箇所に接触できることが見いだされる。いずれの場合も、抗菌剤は、組成物の他の成分と化学的に反応しないことが好適である。
【0035】
UVコーティング配合物は、ウレタンまたはポリエステル型アクリレート、例えば、Electronic Materials Inc.(EMI)(EM Breckenridge,Co)の7104、7101、7124−K、7105−5K、Dymax Corporation(コネチカット州Torrington)の1168−M、I−20781、Permabond Engineering Adhesives(ニュージャージ州Somerset)のUV630であり得る。コーティングの粘度は、10000cps未満、好ましくは5000cps未満、最も好ましくは20から1000cpsであるべきである。
【0036】
実施例
【実施例1】
【0037】
本発明の範囲内のUV硬化性組成物を調製し、それらの病原菌撲滅率および阻害域を以下の表1に示されるように試験した。それらの組成物の各々は、抗菌剤を以下に示されるように変更したことを除いては基本的に同じであった。組成物は、EMI7104という商品名のUV硬化性組成物で構成されていた。UV硬化性組成物は、30〜70%のオリゴマー、20〜60%のモノマー、2〜7%の光開始剤で構成されていた。Cabotから入手され、Cabot‘s MS−55という商品名の2.6部のヒュームドシリカを100部のUV硬化性組成物に添加した。また、7.2部の抗菌剤を添加した。配合に使用した具体的な抗菌剤は、以下の通りであった。
サンプル#
1.二酢酸クロルヘキシジン
2.アレキシジン
3.銀スルファジアジン
4.酢酸銀
5.クエン酸銀水和物
6.セトリミド
7.塩化セチルピリジウム
8.塩化ベンズアルコニウム
9.o−フタルアルデヒド
10.銀元素
【0038】
各組成物を3つの病原菌、すなわち表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(グラム陽性細菌);緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(グラム陰性細菌);およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)(酵母または真菌)に対して試験した。それらの結果を表1に要約する。
【0039】
【表1】

【0040】
組成物の各々は、全般的に、細菌を撲滅するのに効果的であった。銀元素を含む組成物を除くすべての組成物が、1時間でカンジダアルビカンスを撲滅するのに効果的であった。表1に示されるように、塩化セチルピリジウムおよびセトリミドは、全般的に、他の抗菌剤より効果的であった。
【実施例2】
【0041】
これらの例において、いくつかの抗菌剤を本発明の範囲内のUV硬化性コーティング組成物に含めた。配合物の各々は、100部の7104UVコーティング、2.6部のヒュームドシリカ[商品名M−5]および5.0部の抗菌剤を含んでいた。銀およびクロルヘキシジンは、医療技術に使用されている広く使用される抗菌剤であるため、それらを試験に含めた。これらの試験の結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
7部の抗菌剤を使用すると、表3に示される結果が得られた。
【0044】
【表3】

【実施例3】
【0045】
表4において、塩化セチルピリジウム(配合物#1)を抗菌剤として使用して、以上に示した配合物を調製した。この組成物は、1分以内に100%の接触撲滅率を発揮する。二酢酸クロルヘキシジン(配合物#4)を抗菌剤として使用した同じ配合物は、すべての3つの種類の微生物に対して1時間以内に100%の接触撲滅率を発揮する。しかし、(いずれも銀化合物または銀元素を抗菌剤として使用している)両方の従来の組成物は、選択された病原菌に対して8時間後まで100%の接触撲滅率を発揮しなかった。
【0046】
【表4】

【実施例4】
【0047】
表5は、表皮ブドウ球菌を病原菌として使用すると、以上に示した4つの抗菌剤が、1時間以内に100%の接触撲滅率を示し、ほぼ4日まで持続できることを示す。しかし、従来の銀薬配合物は、1日目から開始して、1時間の接触撲滅率を全く発揮しない。
【0048】
【表5】

【実施例5】
【0049】
食塩水抽出試験を上記組成物に対して実施した。表6に示すように、グルコン酸クロルヘキシジンは、緑膿菌を病原菌として使用すると、48時間後にその1時間の接触撲滅能力を有意に低下させることが確認された。しかし、他の抗菌剤は、96時間まで接触撲滅能力を維持するものと思われる。
【0050】
【表6】

【実施例6】
【0051】
表7のデータから、両方の従来の配合物(銀またはグルコン酸クロルヘキシジン)は、カンジダアルビカンスを病原菌として使用すると、24時間後にそれらの効力を有意に低下させることが明らかである。ここで試験した上位の4つの抗菌剤は、94時間まで100%の効力を有する。
【0052】
【表7】

【実施例7】
【0053】
本実施例では、本発明の範囲内のいくつかの配合物を作製した。EMIによって製造された様々な専売配合物を使用してUV硬化性組成物を変更した。抗菌活性を測定し、破断点伸びと比較した。データは、以下の通りである。
【0054】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴマー、モノマーおよび光開始剤を含むUV硬化性組成物と、
流動改質剤と、
抗菌剤と、
を含むことを特徴とする抗菌性紫外線(UV)硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
前記オリゴマーは、アクリル化脂肪族ウレタン、アクリル化芳香族ウレタン、アクリル化ポリエステル、不飽和ポリエステル、アクリル化ポリエーテルおよびアクリル化アクリルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項3】
アクリル化官能基は、一官能性アクリレート、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、四官能性アクリレート、五官能性アクリレートおよび六官能性アクリレートからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項4】
前記モノマーは、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、イソボルニルアクリレート、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメトキシフェニルアセトフェノンヘキシルメチルアクリレートおよびメタクリル酸1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項5】
前記光開始剤は、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシム、アシルホスフィン酸化物、ならびにミヒラーケトン、チオキサントン、アントロギオノン、ベンゾフェノン、メチルジエタノールアミンおよび2−N−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項6】
前記流動改質剤は、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項7】
前記流動改質剤は、ヒュームドシリカであることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項8】
前記抗菌剤は、アルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀、銀化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項9】
前記抗菌剤は、セトリミドおよび塩化セチルピリジウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UVコーティング組成物。
【請求項10】
前記抗菌剤は、二酢酸クロルヘキシジン、アレキシジンおよび塩化ベンズアルコニウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UVコーティング組成物。
【請求項11】
前記組成物は、100重量部のUV硬化性組成物において約0.1から約30重量部の量の流動改質剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項12】
前記組成物は、100重量部のUV硬化性組成物において約0.2から約20重量部の量の流動改質剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項13】
前記組成物は、100重量部のUV硬化性組成物において約0.2から約10重量部の量の流動改質剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項14】
前記組成物は、100重量部のUV硬化性組成物において約0.5から約50重量部の量の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項15】
前記組成物は、100重量部のUV硬化性組成物において約0.5から約30重量部の量の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項16】
前記組成物は、100重量部のUV硬化性組成物において約0.5から約20重量部の量の抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性UV硬化性コーティング組成物。
【請求項17】
a)アクリル化脂肪族ウレタン、アクリル化芳香族ウレタン、アクリル化ポリエステル、不飽和ポリエステル、アクリル化ポリエーテルおよびアクリル化アクリルからなる群から選択される約10重量%から約90重量%のオリゴマー、
2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、イソボルニルアクリレート、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメトキシフェニルアセトフェノンヘキシルメチルアクリレートおよびメタクリル酸1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択される約5重量%から約90重量%のモノマー
を有するUV硬化性組成物と、
b)有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカからなる群から選択される、100部のUV硬化性組成物において約0.1から約30重量部の流動改質剤と、
c)アルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀、銀化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される、100部のUV硬化性組成物において約0.5から約50重量部の抗菌剤と、
d)約1から約10部の光開始剤と、
を含むことを特徴とするUV硬化性コーティング組成物。
【請求項18】
オリゴマー、モノマー、光開始剤、流動改質剤を有するUV硬化性組成物と、
セトリミド、塩化セチルピリジウム、二酢酸クロルヘキシジン、アレキシジンおよび塩化ベンズアルコニウムからなる群から選択される抗菌剤と、
を含むことを特徴とする抗菌性コーティング組成物。
【請求項19】
前記抗菌剤は、アレキシジンであることを特徴とする請求項17に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項20】
前記抗菌剤は、セトリミドおよび塩化セチルピリジウムであることを特徴とする請求項17に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項21】
前記抗菌剤は、二酢酸クロルヘキシジンであることを特徴とする請求項17に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項22】
前記抗菌剤は、塩化ベンズアルコニウムであることを特徴とする請求項17に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項23】
ヒュームドシリカを含む流動改質剤をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の抗菌性コーティング組成物。

【公表番号】特表2012−510559(P2012−510559A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539604(P2011−539604)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065941
【国際公開番号】WO2010/065421
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】