説明

抗菌殺菌剤

【課題】優れた抗菌殺菌性を有しながら、その抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現することができ、かつ、安価で、変色が生じにくく、環境に対する負荷を低減することのできる、抗菌殺菌剤を提供すること。
【解決手段】有効成分として、pH6〜8における25℃での溶解度が、水100gに対して、1g以下である水難溶性の亜鉛含有無機化合物を含有する抗菌殺菌剤を、プラスチック成形材料やセラミックス成形材料に添加する。本発明の抗菌殺菌剤は、優れた抗菌殺菌性を有しており、主成分である亜鉛含有無機化合物が水難溶性であるので、抗菌殺菌剤を添加した材料が水に接触しても、抗菌殺菌剤が溶出しにくく、抗菌殺菌剤を添加した材料は、その抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌殺菌剤、詳しくは、工業用途に用いることのできる抗菌殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水回り(台所、浴室、洗面所、トイレなど)用途のプラスチック成形材料やセラミックス成形材料などに、抗菌殺菌剤を添加することが知られている。
【0003】
このような抗菌殺菌剤として、例えば、銀や銅などを、多孔質担体に吸着させた銀系抗菌殺菌剤や銅系抗菌殺菌剤が知られている。
【0004】
また、抗菌殺菌剤として、例えば、ピリチオン類と、水に対して容易に溶解する硫酸亜鉛や硫酸銅などとを併用することにより、ピリチオン類の殺生物効果を増大させた抗菌組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2003−522734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、銀系抗菌殺菌剤や銅系抗菌殺菌剤は、変色が生じ易いので、これらを添加させた材料が変色し易いという不具合がある。
【0006】
また、銀系抗菌殺菌剤は、高価であるので、銀系抗菌殺菌剤を添加させた材料の製造コストが増大するという不具合がある。
【0007】
また、銅系抗菌殺菌剤は、毒性が強いので、環境に対する負荷が増大するという不具合がある。
【0008】
さらにまた、特許文献1に記載の抗菌組成物では、その例5の表4a、4bに示すように、硫酸亜鉛は、単独で、わずかな殺生物効果(静菌効果)を有するのみであるので、抗菌殺菌剤として実際に使用する場合には、ピリチオン類と併用する必要がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、優れた抗菌殺菌性を有しながら、その抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現することができ、かつ、安価で、変色が生じにくく、環境に対する負荷を低減することのできる、抗菌殺菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは、安価で、変色が生じにくく、環境への負担を低減することのできる抗菌殺菌剤について鋭意検討したところ、有効成分として水難溶性の亜鉛含有無機化合物を用いると、優れた抗菌殺菌性を有しながら、抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現することができる知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)水難溶性の亜鉛含有無機化合物を有効成分として含有することを特徴とする、抗菌殺菌剤、
(2)前記亜鉛含有無機化合物は、pH6〜8における25℃での溶解度が、水100gに対して、1g以下であることを特徴とする、前記(1)に記載の抗菌殺菌剤、
(3)前記亜鉛含有無機化合物は、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸水酸化亜鉛およびリン酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の亜鉛含有無機化合物であることを特徴とする、前記(1)または前記(2)に記載の抗菌殺菌剤
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の抗菌殺菌剤は、優れた抗菌殺菌性を有しており、亜鉛含有無機化合物が水難溶性であるので、水に接触しても溶出しにくく、抗菌殺菌剤を添加した材料は、その抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現することができる。そのため、本発明の抗菌殺菌剤を、特に水回り用途の材料に添加させれば、その材料に、優れた抗菌殺菌性を付与しながら、その抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現させることができる。
【0013】
また、本発明の抗菌殺菌剤は、安価であるため、抗菌殺菌剤を添加した材料の製造コストを低減することができる。
【0014】
また、本発明の抗菌殺菌剤は、変色が生じにくいため、抗菌殺菌剤による材料の変色を有効に防止することができる。
【0015】
また、本発明の抗菌殺菌剤は、環境に対する負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の抗菌殺菌剤は、水難溶性の亜鉛含有無機化合物を有効成分として含有している。
【0017】
本発明において、亜鉛含有無機化合物としては、例えば、水酸化亜鉛などの亜鉛の水酸化物、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、過酸化亜鉛(ZnO)などの亜鉛の酸化物、例えば、ホウ酸亜鉛(ホウ酸亜鉛3.5水和物などの水和物を含む。)などの亜鉛のホウ酸塩、例えば、炭酸水酸化亜鉛(塩基性炭酸亜鉛;2ZnCO・3Zn(OH))、無水炭酸亜鉛(ZnCO)などの亜鉛の炭酸塩、例えば、リン酸亜鉛(リン酸亜鉛4水和物などの水和物を含む。)、ピロリン酸亜鉛(ピロリン酸亜鉛3水和物などの水和物を含む。)などの亜鉛のリン酸塩、例えば、シアン化亜鉛などの亜鉛のシアン化物などが挙げられる。
【0018】
これら亜鉛含有無機化合物は、水難溶性であって、より具体的には、pHが6〜8における25℃での溶解度が、水100gに対して、例えば、1g以下、好ましくは、1×10−1g以下、さらに好ましくは、1×10−2以下、通常、1×10−20g以上、好ましくは、1×10−15g以上、さらに好ましくは、1×10−10g以上である。
【0019】
亜鉛含有無機化合物の溶解度が、上記範囲を越える場合には、水に接触すると溶出し易くなり、抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現することができない場合がある。
【0020】
これら亜鉛含有無機化合物は、単独または併用して用いられる。
【0021】
これら亜鉛含有無機化合物のうち、好ましくは、水酸化亜鉛(pHが6〜8における25℃での溶解度(以下、単に「溶解度」と省略する。):1〜20×10−5g/水100g(文献記載値))、酸化亜鉛(溶解度:3〜5×10−4g/水100g(文献記載値))、ホウ酸亜鉛(溶解度:6×10−3g/水100g(飽和水溶液をICP発光分光分析法により測定した実測値。以下、単に「実測値」と省略する。))、炭酸水酸化亜鉛(溶解度:2×10−5g/水100g(実測値))、リン酸亜鉛(溶解度:1×10−4g/水100g(実測値))が挙げられ、さらに好ましくは、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸水酸化亜鉛が挙げられる。
【0022】
このような亜鉛含有無機化合物は、例えば、粉状の亜鉛含有無機化合物そのものを、抗菌殺菌剤として用いることができる。また、亜鉛含有無機化合物は、例えば、必要により粉砕して、より小さい粒径のものを製造し、これを用いることもできる。
【0023】
また、亜鉛含有無機化合物は、例えば、硫酸亜鉛(水溶性の亜鉛含有化合物)水溶液などの亜鉛含有水溶液に、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することにより、または、硫酸亜鉛水溶液などの亜鉛含有水溶液に、リン酸などの共存下で、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することにより、水難溶性の亜鉛含有無機化合物を粉状に析出させた後、これを採取して得たものを、用いることもできる。
【0024】
本発明の抗菌殺菌剤は、亜鉛含有無機化合物を単独で用いてもよく、また、抗菌殺菌剤の製造時に、亜鉛含有無機化合物以外の有効成分や添加剤などをさらに添加してもよい。
【0025】
添加方法としては、粉剤(後述)では、例えば、乾式混合機などにより混合して添加する方法、液剤(後述)では、例えば、ディスパー型混合機などにより混合して添加する方法、ペースト剤(後述)では、例えば、ニーダー型混合機などにより混合して添加する方法が挙げられる。
【0026】
上記した有効成分としては、特に限定されず、例えば、抗菌、殺菌、防腐、防かび、防藻のうち、少なくともいずれかの効力を有する有効成分が挙げられる。
【0027】
このような有効成分としては、特に限定されず、例えば、ヨウ素系化合物、トリアゾール系化合物、スルファミド系化合物、ビス四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、フタロニトリル系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、チオカルバメート系化合物、ニトリル系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリジン系化合物、ピリチオン系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、イミダゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、フェニルウレア系化合物などが挙げられる。
【0028】
ヨウ素系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(慣用名:IPBC)、p−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネート(商品名:サンプラス、(株)三共製)などが挙げられる。
【0029】
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:アザコナゾール)などが挙げられる。
【0030】
スルファミド系化合物としては、例えば、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(商品名:プリベントールA4/S、バイエル製)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−4−トリルスルファミド(商品名:プリベントールA5、バイエル製)などが挙げられる。
【0031】
ビス四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー38、イヌイ(株)製)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー38A、イヌイ(株)製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)(商品名:ダイマー136、イヌイ(株)製)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムアセテート)(商品名:ダイマー136A、イヌイ(株)製)などが挙げられる。
【0032】
四級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、コータミンD10EPR(花王(株)製)などが挙げられる。
【0033】
フタロニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(商品名:ノプコサイドN−96、サンノプコ(株)製)などが挙げられる。
【0034】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
【0035】
チオフェン系化合物としては、例えば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどが挙げられる。
【0036】
チオカルバメート系化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。
【0037】
ニトリル系化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
【0038】
フタルイミド系化合物としては、例えば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)などが挙げられる。
【0039】
ハロアルキルチオ系化合物としては、例えば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−N、N’−ジメチル−N−フェニル−スルファミドなどが挙げられる。
【0040】
ピリジン系化合物としては、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジンなどが挙げられる。
【0041】
ピリチオン系化合物としては、例えば、ジンクピリチオン、ナトリウムピリチオンなどが挙げられる。
【0042】
ベンゾチアゾール系化合物としては、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0043】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0044】
グアニジン系化合物としては、例えば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などが挙げられる。
【0045】
尿素系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
【0046】
イミダゾール系化合物としては、例えば、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート(慣用名:MBC)、メチル−2−ベンズイミダゾールカルバメート塩酸塩、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0047】
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0048】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールなどが挙げられる。
【0049】
フェニルウレア系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアなどが挙げられる。
【0050】
これら有効成分は、単独または併用して用いられる。
【0051】
上記の添加剤としては、特に限定されず、例えば、吸着剤、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤などが挙げられる。
【0052】
吸着剤としては、特に限定されず、例えば、四価金属のリン酸塩などが挙げられる。
【0053】
リン酸塩を形成する四価金属は、四価の金属であれば、周期表における族は特に制限されない。四価金属には、周期表4族元素、例えば、4A族元素(チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウムなど)、4B族元素(ゲルマニウム、スズ、鉛など)が挙げられる。これら四価の金属のうち、好ましくは、周期表4A族元素に属する金属として、チタン、ジルコニウム、ハフニウムや、周期表4B族元素に属する金属として、スズが挙げられる。
【0054】
なお、本明細書において、周期表の族番号は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)無機化学命名法委員会命名規則1970版による。
【0055】
リン酸塩を形成するリン酸としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、ポリリン酸など挙げられる。また、リン酸塩には、オルトリン酸水素塩などのリン酸水素塩が挙げられる。
【0056】
これら四価金属のリン酸塩は、単独または併用して用いられる。
【0057】
これらのうち、好ましくは、ピロリン酸チタン(TiP)が挙げられる。
【0058】
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、石鹸類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン界面活性剤、高分子界面活性剤など、公知の界面活性剤が挙げられ、好ましくは、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0059】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0060】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸金属塩、ポリカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸エステル金属塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、リグニンスルホン酸金属塩などが挙げられる。また、これらの金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0061】
これら界面活性剤は、単独または併用して用いられる。
【0062】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−t−ブチルフェノール]などのフェノール系酸化防止剤、例えば、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤などが挙げられる。これら酸化防止剤は、単独または併用して用いられる。
【0063】
光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、単独または併用して用いられる。
【0064】
これら添加剤は、単独または併用して用いられる。
【0065】
本発明の抗菌殺菌剤において、亜鉛含有無機化合物以外の有効成分が添加される場合には、そのような有効成分の配合割合は、亜鉛含有無機化合物100重量部に対して、例えば、1〜5000重量部、好ましくは、10〜1000重量部である。
【0066】
また、本発明の抗菌殺菌剤において、添加剤が添加される場合には、各添加剤の配合割合は、亜鉛含有無機化合物100重量部に対して、吸着剤では、例えば、1〜5000重量部、好ましくは、10〜1000重量部、界面活性剤では、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは、1〜10重量部、酸化防止剤では、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、1〜5重量部、光安定剤では、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、1〜5重量部である。
【0067】
本発明の抗菌殺菌剤は、適用対象(プラスチック成形材料やセラミックス成形材料)に直接、すなわち、特に成形することなく、添加することにより、抗菌殺菌性を付与する剤として、使用することができる。さらに、その目的および用途に応じて、例えば、液剤(水懸濁剤および油剤を含む。)、ペースト剤、粉剤、粒剤、マイクロカプセルなどの公知の剤型に製剤化して、適用対象に添加することにより使用することもできる。また、製剤化において、包接化合物として調製してもよく、さらに、層状ケイ酸塩などのモンモリロナイト(スメクタイト類など)などに担持させ、あるいは、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルクなどに吸着させることにより調製したものを使用してもよい。
【0068】
本発明の抗菌殺菌剤は、特に限定されず、各種の工業材料、例えば、プラスチック成形材料やセラミックス成形材料、好ましくは、水回り用途の材料、より具体的には、水回り用途のプラスチック成形材料やセラミックス成形材料に適用することができる。
【0069】
このようなプラスチック成形材料としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの樹脂が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂)、アクリルスチレン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0070】
セラミックス成形材料としては、特に限定されず、例えば、触媒の担体、陶磁器材料、ガラス、耐火物などに用いられ、焼結により成形されるものであって、例えば、ハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系化合物、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などの酸化物、例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウムなどの窒化物、例えば、炭化ケイ素などの非酸化物セラミックスなどが挙げられる。また、セラミックス成形材料としては、上記の複合物であって、例えば、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土などの珪酸塩、例えば、カオリナイト、ベントナイト、軽石、長石、石英などのアルミナ−シリカ系化合物などが挙げられる。
【0071】
また、プラスチック成形材料やセラミックス成形材料、特に、プラスチック成形材料は、溶媒により、ワニスなどの溶液として溶解され、または、乳濁液もしくは懸濁液などの分散液として分散(エマルション、サスペンションなど)されているものがあるが、そのような場合には、本発明の抗菌殺菌剤は、その溶液または分散液に添加すればよい。なお、そのような溶媒としては、特に限定されず、例えば、水系溶媒や有機系溶媒などが挙げられる。
【0072】
水系溶媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒などが挙げられる。
【0073】
また、有機系溶媒としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒などが挙げられる。また、有機系溶媒としては、例えば、工業的に使用されているミネラルスピリットなどの石油系溶媒などが挙げられる。
【0074】
本発明の抗菌殺菌剤は、適用対象(プラスチック成形材料やセラミックス成形材料)において、亜鉛含有無機化合物の濃度として、例えば、約0.005〜5重量%、さらに、0.01〜2重量%となるように、添加されるのが好ましい。
【0075】
本発明の抗菌殺菌剤は、優れた抗菌殺菌性を有しており、亜鉛含有無機化合物が水難溶性であるので、水に接触しても溶出しにくく、抗菌殺菌剤を添加した材料は、その抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現することができる。そのため、本発明の抗菌殺菌剤を、水回り用途のプラスチック成形材料やセラミックス成形材料に添加すれば、これらの材料に、優れた抗菌殺菌性を付与しながら、その抗菌殺菌性を長期にわたって持続的に発現させることができる。
【0076】
また、本発明の抗菌殺菌剤は、安価であるため、抗菌殺菌剤を添加した材料、すなわち、プラスチック成形材料やセラミックス成形材料の製造コストを低減することができる。
【0077】
さらに、本発明の抗菌殺菌剤は、変色が生じにくいため、抗菌殺菌剤による材料(プラスチック成形材料やセラミックス成形材料など)の変色を有効に防止することができる。
【0078】
さらにまた、本発明の抗菌殺菌剤は、環境に対する負荷を低減することができる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
【0080】
実施例1
抗菌殺菌剤としての水酸化亜鉛1.0重量部を、プラスチック成形材料としてのパラロイドA−11(熱可塑性メタクリル樹脂の30重量%酢酸エチル溶液、ローム・アンド・ハース社製)100.0重量部に添加して、ディスパー型混合機にて撹拌混合することにより、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得た。
【0081】
次いで、これをガラス表面に塗布し、その後、乾燥することにより、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0082】
実施例2
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、酸化亜鉛1.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0083】
実施例3
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、ホウ酸亜鉛3.5水和物1.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0084】
実施例4
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、炭酸水酸化亜鉛1.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0085】
実施例5
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、リン酸亜鉛4水和物1.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0086】
実施例6
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、水酸化亜鉛0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0087】
実施例7
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、水酸化亜鉛0.1重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0088】
実施例8
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、水酸化亜鉛0.6重量部を用い、さらに、添加剤(吸着剤)としてのピロリン酸チタン(TiP)0.4重量部を添加した以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0089】
実施例9
水酸化亜鉛1.0重量部の代わりに、水酸化亜鉛0.3重量部を用い、さらに、添加剤(吸着剤)としてのピロリン酸チタン(TiP)0.2重量部を添加した以外は、実施例1と同様の操作により、抗菌殺菌剤を添加したプラスチック成形材料を得て、次いで、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0090】
比較例1
抗菌殺菌剤を添加せずに、プラスチック成形材料としてのパラロイドA−11(熱可塑性メタクリル樹脂の30重量%酢酸エチル溶液、ローム・アンド・ハース社製)を、ガラス表面に塗布し、その後、乾燥することにより、ガラス表面にプラスチック膜を作製した。
【0091】
(評価)
(抗菌試験)
各実施例および比較例で作製したプラスチック膜について、JIS Z 2801(抗菌試験方法、平成12年12月20日制定版)に準拠して、抗菌試験をした。
【0092】
抗菌試験は、試験菌として、エスケリシア・コリー(Escherichia coli;IFO−3044)およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus;IFO3061)を用い、初期の生菌数、および、恒温恒湿33℃で24時間培養後の生菌数を測定することにより、評価した。その結果を、表1に示す。
【0093】
【表1】

表1中、E.coliは、エスケリシア・コリー(Escherichia coli)IFO−3044を示し、S.aureusは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)IFO3061を示す。また、表1中、各成分の欄の数値は、各成分の配合重量部数(重量部)を示す。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の抗菌殺菌剤は、例えば、プラスチック成形材料やセラミックス成形材料、好ましくは、水回り用途のプラスチック成形材料やセラミックス成形材料に、抗菌殺菌性を付与する剤として、使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水難溶性の亜鉛含有無機化合物を有効成分として含有することを特徴とする、抗菌殺菌剤。
【請求項2】
前記亜鉛含有無機化合物は、pH6〜8における25℃での溶解度が、水100gに対して、1g以下であることを特徴とする、請求項1に記載の抗菌殺菌剤。
【請求項3】
前記亜鉛含有無機化合物は、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸水酸化亜鉛およびリン酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の亜鉛含有無機化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の抗菌殺菌剤。

【公開番号】特開2007−314478(P2007−314478A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146791(P2006−146791)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】