説明

抗菌活性化合物をベースとする歯科修復材料

【課題】長期間持続する高い抗菌効果を有し、そして先行技術の欠点を有さない、歯科材料および歯科修復材料を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも1種の式(I):[AG]−R−Z−SP−Y−R−[WG](I)の抗菌活性化合物であって:mは、1、2、3または4である;pは、1、2または3である;RおよびRは、存在しないか、またはアルキレン基である;Rは、各場合において独立して、アルキル基、フェニル基またはベンジル基である;AGは、アンカー基である;SPは、ポリマースペーサーである;WGは、抗菌活性基である;YおよびZは、存在しないか、またはO、S、NH、N、エステル基、アミド基もしくはウレタン基である、抗菌活性化合物、あるいはこの化合物で表面修飾された充填剤;(b)ラジカル重合性モノマー;ならびに(c)ラジカル重合用開始剤を含有する、歯科修復材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌効果を有する化合物をベースとする、歯科材料および歯科修復材料に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科修復材料に抗菌特性を与えることは、長きにわたり公知であり、そして通常、抗菌活性成分を対応する材料マトリックスに単に物理的に混合することによって、行われている。従って、例えば、特許文献1において、う食の予防のための歯用コーティング材料が記載されており、この歯用コーティング材料は、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)を抗菌活性成分として含有する。トリクロサンなどの抗菌フェノール物質を含有する、歯科用途のための材料(例えば、プロテーゼプラスチックおよび固定セメント)はまた、特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献3は、クロルヘキシジンを抗菌活性成分として放出する、グッタペルカベースの歯根管用充填材料を開示する。
【0004】
抗菌活性成分を材料に単に物理的に混合することには、数個の問題が関連する。その抗菌効果を達成する目的で、活性成分は、その材料の作用期間にわたって放出されなければならない。一般に、その放出速度は、その活性成分が最初は非常に高い濃度で放出されるような速度であり、その後、その抗菌効果はほとんど失われる。別の欠点は、高い活性成分濃度で毒性の副作用が起こり得ることであり、このことは、医療用途において特に望ましくない。この理由により、このような用途については特に、材料の硬化中に活性成分を固定する目的で、ポリマーを形成する際に、単独重合によって、または別の重合性モノマーとの共重合によって、活性成分を重合性にするという転換が行われた。
【0005】
特許文献4および特許文献5は、コンタクトレンズにおいて使用するための、第四級アンモニウム基を抗菌基として含む有機シリコーンモノマーを開示する。
【0006】
特許文献6は、コンタクトレンズにおいて使用するための、第四級ホスホニウム基を活性基として含むモノマーを開示する。
【0007】
特許文献7において、第四級アンモニウム基を含む重合性活性成分モノマーが記載されている。(メタ)アクリル官能基が重合性基として使用され、2個〜18個のC原子を有するアルキレンスペーサーが、重合性基と活性基との間に位置している。
【0008】
特許文献8および特許文献9において、特許文献7による抗菌重合性モノマーを含有する、歯科用途のための特別な組成物が記載されている。
【0009】
重合性活性成分モノマーを使用する場合の欠点は、ほとんどの場合において、このモノマーのみが抗菌効果を有し、この抗菌効果が重合後に失われることである。しばしば、存在する残留モノマーのみが、そのポリマーの抗菌効果を担い、その結果、重合していない抗菌モノマーの溶出後、この材料の抗菌効果は低下する。従って、長期間の抗菌効果は有意に低下し、その結果、例えば、薬物または医療製品は、その臨床的能力の少なくともいくらかを失う。
【0010】
特許文献10は、抗菌活性モノマーを備える歯科材料を開示し、ここで抗菌活性基は、ポリマースペーサーを介してラジカル重合性基に結合しており、そしてこの歯科材料は、重合後にも高い抗菌効力を示す。
【0011】
特許文献11は、抗菌特性、殺菌特性、殺ウイルス特性または殺真菌特性を有する分子が表面に共有結合している基材(例えば、医療用途のためのカテーテル、注射器、針および管)を記載する。
【0012】
特許文献12は、表面を処理する方法を開示し、この方法において、この表面に細胞傷害特性または細胞接着特性を与えるために、統計コポリマーがこの表面に結合される。この統計コポリマーは、少なくとも1つのモノマー単位Aおよびモノマー単位Bを有し、このモノマー単位Aの反応性部位は、基材と共有結合を形成し得、このモノマー単位Bは、少なくとも1つの抗菌分子、殺ウイルス分子または殺真菌分子を含む。この方法は、種々の基材(例えば、プラスチック、木材、紙または布)の防腐処理のために有用であり、そして特に、個人衛生学、臨床分野、ならびに家畜への使用および食品産業において有用であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第98/48766号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0220416号明細書
【特許文献3】独国特許第19813686号明細書
【特許文献4】米国特許第5,536,861号明細書
【特許文献5】米国特許第5,358,688号明細書
【特許文献6】欧州特許第0663409号明細書
【特許文献7】欧州特許第0537774号明細書
【特許文献8】欧州特許第0705590号明細書
【特許文献9】国際公開第01/90251号
【特許文献10】欧州特許第1849450号明細書
【特許文献11】米国特許第6,316,015号明細書
【特許文献12】欧州特許第1707601号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、長期間持続する高い抗菌効果を有し、そして記載された欠点を有さない、歯科材料および歯科修復材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
歯科修復材料であって、
(a)少なくとも1種の式(I)
[AG]−R−Z−SP−Y−R−[WG] (I)
の抗菌活性化合物であって、式(I)において、その可変物が以下の意味:
mは、1、2、3または4である;
pは、1、2または3である;
は、存在しないか、あるいは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、該アルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、OSiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONH、置換もしくは非置換の芳香族C〜C14基またはその組み合わせによって1回以上分断され得る;
は、存在しないか、あるいは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、該アルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、OSiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONH、置換もしくは非置換の芳香族C〜C14基またはその組み合わせによって1回以上分断され得る;
は、各場合において独立して、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、置換または非置換のフェニル基またはベンジル基である;
AGは、以下のアンカー基:
【0016】
【化1】

ここでR11aおよびR11bは独立して、H、アルキル、アリールまたは−Si(アルキル)から選択され、ここでアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わし、そしてここで特に好ましくは、R11aとR11bとが各々アルキルであるか、またはR11aがHであってR11bがアルキルである、アンカー基、
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

ここでR12は−Si(アルキル)を表わし、そしてアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わす、アンカー基、
【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

ここでR13、R13aおよびR13bは独立して、アルキルから選択され、特にメチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルから選択され、好ましくはエチルであるか、あるいは特に好ましくは、R13aとR13bが接続されて、4員〜7員の環系を形成し、好ましくは5員環系を形成し、ここで該酸素原子のうちの1つはNで置き換えられ得る、アンカー基、
【0021】
【化6】

ここでR14はアルキルであり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルまたはt−ブチルである、アンカー基、
【0022】
【化7】

ここでR15は、必要に応じて置換されたアルキル基またはシクロアルキル基を表わし、好ましくは、3−ジメチルアミノプロピル、i−プロピルまたはシクロヘキシルを表わす、アンカー基、
【0023】
【化8】

ここでR16は独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシである、アンカー基、
【0024】
【化9】

ここでR17aは、アルコキシ、アリールオキシ、ClまたはOHから選択され、特に、アルコキシ、アリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシであり、そしてR17bおよびR17cは各々独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、OH、アルキルまたはアリールから選択され、好ましくは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシである、アンカー基、
【0025】
【化10】

ここでR18は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルから選択され、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニル、ビフェニルまたはアルキルフェニルから選択される、アンカー基、
【0026】
【化11】

ここでR19aおよびR19bは独立して、H、アルキル、アリールまたは−Si(アルキル)から選択され、ここでアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わし、そしてここで特に好ましくは、R19aとR19bとが各々アルキルであるか、またはR19aがHであってR19bがアルキルである、アンカー基、
【0027】
【化12】

ここでR20は、必要に応じて置換されたアルキル基を表わし、そして好ましくは、−CH−CH−NHまたは-CH−CH(NH)−COOHを表わす、アンカー基、
【0028】
【化13】

ここでR21は、各場合において独立して、Hまたはアルキルから選択され、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルから選択される、アンカー基
から選択されるアンカー基である;
SPは、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、ポリグリセロール基、ポリアルキルオキサゾリン基、ポリエチレンイミン基、ポリアクリル酸基、ポリメタクリル酸基、ポリビニルアルコール基、ポリ酢酸ビニル基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)アクリレート基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート基、親水性ポリペプチド基、ポリオキサゾリン基、ポリアルキレン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基、ポリメタクリル酸エステル基、N−アルキル化ポリエチレンイミン基、N−アルキル化ビニルピリジン基、多糖類基、ポリアミノサッカリド基、および対応するモノマーのコポリマーから好ましくは選択される、ポリマースペーサーである;
WGは、抗菌活性基である;
Yは、存在しないか、またはO、S、NH、N、エステル基、アミド基もしくはウレタン基である、
Zは、存在しないか、またはO、S、NH、N、エステル基、アミド基もしくはウレタン基である;
を有する、抗菌活性化合物、あるいは少なくとも1種の式(I)の化合物で表面修飾された充填剤;
(b)少なくとも1種のラジカル重合性モノマー;ならびに
(c)少なくとも1種のラジカル重合用開始剤
を含有する、歯科修復材料。
(項目2)
および/またはRが、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、そして好ましくは、C10〜C20アルキレン基である、上記項目に記載の歯科修復材料。
(項目3)
AGが、ホスホネート基、ホスフェート基、トリメリト酸基、ピロメリト酸モノイミド基、カルボン酸無水物基、トリメリト酸無水物基、ピロメリト酸モノイミド無水物基、無水コハク酸基、スルホン酸基、スルホネート基、イソシアネート基、ホルメート基、ホルムアミド基、カルバミン酸基、β−ケトエステル基、イミドエステル基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホスクシンイミドエステル基、マレイミド基、カルボジイミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオホスホネート基、チオホスフェート基、チオカルボン酸基、チオ尿素基、トリアジンチオン基、トリアジンジチオン基およびチオウラシル基から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目4)
上記抗菌活性基WGが、

【0029】
【化14】

のピリジニウム基であって、オルト位、メタ位またはパラ位で、特に好ましくはパラ位で、上記式(I)の化合物の残りの部分に結合している、ピリジニウム基;

【0030】
【化15】

のピリジニウム基であって、オルト位、メタ位またはパラ位が、特に好ましくはパラ位が、Rで置換され得、
該ピリジニウム基において、Rは、各場合において独立して、Hまたは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基を表わす、ピリジニウム基;
−N
であって、ここで
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであるか;
あるいはRとRとは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、芳香族環系もしくは非芳香族環系、または芳香族環もしくは非芳香族環を形成し、好ましくは、
【0031】
【化16】

を形成し、ここでR10は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり;
は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基であり、好ましくは-(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
−P7’8’9’
であって、ここで
7’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
8’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくは−CHであり;
9’は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは-(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
【0032】
【化17】

であって、ここで
rは、5〜30であり、好ましくは10〜30であり、特に好ましくは10〜20であるもの;あるいは
第四級アルキルホスホニウム基またはアルキルスルホニウム基、オクテニジンまたはその誘導体、クロルヘキシジンまたは別のビスグアニジン、トリクロサンまたは別のクロロフェノール、抗菌特性を有する無機基、好ましくは1つ以上の抗菌活性金属イオンを含む無機基、例えばマガイニン基または舌抗菌ペプチド(LPA)基などの抗菌ペプチド基
を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目5)
上記抗菌活性基WGが、式
【0033】
【化18】

の第四級アルキルアンモニウム基であり、ここでRは、C〜C31アルキル、好ましくはC〜C20アルキル、特にC〜C18アルキル、特に好ましくはC11〜C16アルキル、そして最も好ましくはC11〜C14アルキルであり、そして最も好ましくは、N,N−ジメチルドデシルアンモニウム基またはN,N−ジメチルセチルアンモニウム基である、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目6)
上記スペーサーSPが、ポリオキサゾリン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基、ポリメタクリル酸エステル基、N−アルキル化ポリエチレンイミン基、N−アルキル化ビニルピリジン基またはポリアミノサッカリド基、あるいは陽イオン性キトサン誘導体である、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目7)
上記スペーサーSPが、式:
【0034】
【化19】

のポリオキサゾリン基であり、ここでnは、好ましくは3〜500、好ましくは5〜200、そして特に好ましくは10〜100であり、そしてRは好ましくは、−CH、−Cまたは−Cである、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目8)
上記可変物のうちの少なくとも1つが、以下の意味:
mは、1または2であり、特に好ましくは1である;
pは、1または2であり、特に好ましくは1である;
は、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、該アルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONHによって1回以上分断され得、特に好ましくはC〜C10アルキレン基であり、そして最も好ましくは、−CH−CH−または−CH−CH−NH−CH−CH−である;
は、置換または非置換の芳香族C〜C14基であり、特に好ましくは、フェニレンまたは−CH−Ph−CH−である;
は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり、特に、C〜C10アルキル基であり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルであり、最も好ましくはメチルである;
SPは、ポリオキサゾリン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基またはポリメタクリル酸エステル基である;
AGは、ホスホネート基、ホスフェート基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、アルコキシシラン基またはアルデヒド基である;
WGは、

【0035】
【化20】

のピリジニウム基であって、式(I)の化合物の残りの部分にオルト位、メタ位またはパラ位で、特に好ましくはパラ位で結合している、ピリジニウム基、

【0036】
【化21】

のピリジニウム基であって、オルト位、メタ位またはパラ位が、特に好ましくはパラ位が、Rで置換され得、
ここでRは、各場合において独立して、Hまたは直鎖もしくは分枝鎖のC〜C20アルキル基を表わす、ピリジニウム基;
−N
であって、ここで
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであるか;
あるいはRとRとは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロ芳香族環系または芳香族環もしくは非芳香族環、好ましくは
【0037】
【化22】

を形成し、ここでR10は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり;
は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは-(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
−P7’8’9’
であって、ここで
7’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
8’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくは−CHであり;
9’は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは−(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
【0038】
【化23】

であって、ここで
rは、5〜30であり、好ましくは10〜30であり、特に好ましくは10〜20であるもの;あるいは
第四級アルキルホスホニウム基またはアルキルスルホニウム基、オクテニジンまたはその誘導体、クロルヘキシジンまたは別のビスグアニジン、トリクロサンまたは別のクロロフェノール、抗菌特性を有する無機基、好ましくは1つ以上の抗菌活性金属イオンを含む無機基、例えばマガイニン基または舌抗菌ペプチド(LPA)基などの抗菌ペプチド基である;
Yは、存在しないか、またはO、S、COOであり、特に好ましくは、存在しない;
Zは、存在しないか、またはO、S、NH、Nもしくはアミドであり、特に好ましくは、存在しないか、またはNH、もしくはN(CHである、
のうちの1つを有し、ここで全ての可変物は、互いに独立して選択され得る、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目9)
少なくとも1種の式(I)の化合物で表面修飾された充填剤を含有し、AGは、好ましくはシリル基-SiR17a17b17cであり、ここでR17aは、アルコキシ、アリールオキシ、ClまたはOHから選択され、特に、アルコキシ、アリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシであり、そしてR17bおよびR17cは各々独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、OH、アルキルまたはアリールから選択され、好ましくは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシである、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目10)
上記充填剤が、粒子状充填剤であり、特に粒子状の有機充填剤または無機充填剤であり、好ましくは、10nm〜50μm、特に好ましくは10nm〜30μm、そして非常に特に好ましくは10nm〜5μmの平均粒径を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目11)
(a)0.05重量%〜50重量%、好ましくは0.5重量%〜25重量%、そして特に好ましくは2重量%〜10重量%の式(I)の抗菌活性化合物;
(b)5重量%〜95重量%、好ましくは5重量%〜85重量%、そして特に好ましくは5重量%〜70重量%のラジカル重合性モノマー;および
(c)0.01重量%〜5重量%、そして好ましくは0.1重量%〜5重量%のラジカル重合用開始剤
を含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目12)
(d)0重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、そして特に好ましくは5重量%〜45重量%の酸性ラジカル重合性モノマー、および/または
(e)0重量%〜90重量%、そして好ましくは1重量%〜85重量%の充填剤、および/または
(f)0重量%〜99.95重量%、好ましくは0.5重量%〜60重量%、そして特に好ましくは1重量%〜40重量%の溶媒、および/または
(g)0重量%〜5重量%、そして好ましくは0.01重量%〜3.0重量%のさらなる添加剤
をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料。
(項目13)
接着剤、プライマー、セメント、コーティング材料または充填材料の調製のための、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料の使用。
(項目14)
上記項目のうちのいずれかにおいて定義された少なくとも1種の式(I)の化合物を含有する、歯科材料。
(項目15)
上記項目のうちのいずれかにおいて定義された式(I)の化合物を含有する組成物であって、セラミック材料、貴金属および卑金属、硬い歯の組織、歯のエナメル質、象牙質、コラーゲン、軟組織、粘膜および革から選択される基材の表面が、該組成物によって修飾されることを特徴とする、組成物。
(項目16)
接着剤、プライマー、セメント、コーティング材料または充填材料として有用な組成物であって、上記項目のうちのいずれかに記載の歯科修復材料を含有する、組成物。
(項目17)
セラミック材料、貴金属および卑金属、硬い歯の組織、歯のエナメル質、象牙質、コラーゲン、軟組織、粘膜および革から選択される基材の表面を修飾するための、上記項目のうちのいずれかにおいて定義された式(I)の化合物の使用。
【0039】
(摘要)
本発明は、歯科修復材料に関し、この歯科修復材料は、(a)少なくとも1種の式(I)
[AG]−R−Z−SP−Y−R−[WG] (I)
の抗菌活性化合物、または少なくとも1種の式(I)の化合物で表面修飾された充填剤、(b)少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、および(c)少なくとも1種のラジカル重合用開始剤を含有する。本発明はまた、接着剤、プライマー、セメント、コーティング材料または充填材料の調製のための、このような歯科修復材料の使用に関する。
【0040】
本発明はまた、少なくとも1種の式(I)の化合物を含有する歯科材料、ならびにセラミック材料、貴金属および卑金属、硬い歯の組織、歯のエナメル質、象牙質、コラーゲン、軟組織、粘膜および革から選択される基材の表面を修飾するための、式(I)の化合物の使用に関する。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、長期間持続する高い抗菌効果を有し、そして記載された欠点を有さない、歯科材料および歯科修復材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
上記目的は、本発明によって、以下に定義されるような少なくとも1種の式(I)の抗菌活性化合物を含有する歯科材料および歯科修復材料によって達成される。
【0043】
第一の局面において、本発明は、式(I):
[AG]−R−Z−SP−Y−R−[WG] (I)
の抗菌活性化合物に関し、その可変物は、以下の意味を有する:
mは、1、2、3または4である;
pは、1、2または3である;
は、存在しないか、あるいは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、このアルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、OSiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONH、置換もしくは非置換の芳香族C〜C14基またはその組み合わせによって1回以上分断され得る;
は、存在しないか、あるいは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、このアルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、OSiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONH、置換もしくは非置換の芳香族C〜C14基またはその組み合わせによって1回以上分断され得る;
は、各場合において独立して、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、置換または非置換のフェニル基またはベンジル基である;
AGは、以下のアンカー基:
【0044】
【化24】

ここでR11aおよびR11bは独立して、H、アルキル、アリールまたは−Si(アルキル)から選択され、ここでアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わし、そしてここで特に好ましくは、R11aとR11bとは、各々アルキルであるか、またはR11aがHであってR11bがアルキルである、アンカー基、
【0045】
【化25】

【0046】
【化26】

ここでR12は、−Si(アルキル)を表わし、そしてアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わす、アンカー基、
【0047】
【化27】

ここでR13、R13aおよびR13bは独立して、アルキルから選択され、特に、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルから選択され、好ましくはエチルであるか、あるいは特に好ましくは、R13aとR13bとが接続されて、4員〜7員の環系、好ましくは5員環系を形成し、ここで上記酸素原子のうちの1つはNで置き換えられ得る、アンカー基、
【0048】
【化28】

ここでR14はアルキルであり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルまたはt−ブチルである、アンカー基、
【0049】
【化29】

ここでR15は、必要に応じて置換されたアルキル基またはシクロアルキル基を表わし、好ましくは、3−ジメチルアミノプロピル、i−プロピルまたはシクロヘキシルを表わす、アンカー基、
【0050】
【化30】

ここでR16は独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、特に好ましくは、メトキシである、アンカー基、
【0051】
【化31】

ここでR17aは、アルコキシ、アリールオキシ、ClまたはOHから選択され、特に、アルコキシ、アリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシであり、そしてR17bおよびR17cは各々独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、OH、アルキルまたはアリールから選択され、好ましくは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシである、アンカー基、
【0052】
【化32】

ここでR18は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルから選択され、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニル、ビフェニルまたはアルキルフェニルから選択される、アンカー基、
【0053】
【化33】

ここでR19aおよびR19bは独立して、H、アルキル、アリールまたは−Si(アルキル)から選択され、ここでアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わし、そしてここで特に好ましくは、R19aとR19bとは各々アルキルであるか、またはR19aがHであってR19bがアルキルである、アンカー基、
【0054】
【化34】

ここでR20は、必要に応じて置換されたアルキル基を表わし、そして好ましくは、−CH−CH−NHまたは-CH−CH(NH)−COOHを表わす、アンカー基、
【0055】
【化35】

ここでR21は、各場合において独立して、Hまたはアルキルから選択され、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルから選択される、アンカー基
から選択されるアンカー基である;
SPは、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、ポリグリセロール基、ポリアルキルオキサゾリン基、ポリエチレンイミン基、ポリアクリル酸基、ポリメタクリル酸基、ポリビニルアルコール基、ポリ酢酸ビニル基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)アクリレート基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート基、親水性ポリペプチド基、ポリオキサゾリン基、ポリアルキレン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基、ポリメタクリル酸エステル基、N−アルキル化ポリエチレンイミン基、N−アルキル化ビニルピリジン基、多糖類基、ポリアミノサッカリド基、および対応するモノマーのコポリマーから好ましくは選択されるポリマースペーサーである;
WGは、抗菌活性基である;
Yは、存在しないか、またはO、S、NH、N、エステル基、アミド基もしくはウレタン基である、
Zは、存在しないか、またはO、S、NH、N、エステル基、アミド基もしくはウレタン基である。
【0056】
上記定義による式(I)の化合物は一般に、ポリマースペーサーSPを含み、このポリマースペーサーSPは、好ましくは、各場合において、1つ以上のアンカー基AGおよび1つ以上の活性成分基WGに、末端で結合している。
【0057】
、RおよびRに必要に応じて存在する置換基は、好ましくは、互いに独立して、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、アリール、ベンジル、F、Cl、Br、I、OH、−COOH、−COO−(C〜C)アルキル、−CONH、−CORおよび−COORから選択され、ここでRは、(C〜C20)アルキル基、フェニル基またはベンジル基である。
【0058】
式(I)は、化学原子価理論に適合する化合物のみを網羅する。例えばO、S、NH、SiR、CONH、CONR、COO、OCONHなどによって、基が分断され得るという表示は、これらの原子または基が、その基の炭素鎖に挿入されること、すなわち、両側で炭素原子に隣接していることを意味すると理解されるべきである。従って、これらの外来原子または基の数は、この炭素原子の数より少なくとも1小さく、従って、これらの外来原子または基は、末端位置にはあり得ない。
【0059】
アルキレン基と芳香族基との組み合わせは、好ましくは、アルキレン−アリーレン基、アルキレン−アリーレン−アルキレン基およびアリーレン−アルキレン−アリーレン基、特に、-CH−Ph−基および−CH−Ph−CH−基を意味する。
【0060】
数個のアンカー基AGが式(I)の化合物中に存在する場合(m=2、3または4)、これらのアンカー基は、基Rの原子と一緒になって、多官能性アンカー基を形成する。アンカー基AGは、同じであっても異なっていてもよい。好ましい実施形態において、これらのアンカー基は同じである。
【0061】
多官能性アンカー基の例は、ジカルボン酸基、トリカルボン酸基およびテトラカルボン酸基(好ましくは、トリカルボン酸基)、ビスホスホネート基およびビスホスフェート基、ビス(イミドエステル)基(特に
【0062】
【化36】

であり、ここでkは独立して、1〜4であり、好ましくはジアルキルアジピミデート基)、ならびにビス(スルホスクシンイミジルエステル)基(特に
【0063】
【化37】

であり、ここでkは独立して、1〜4であり、好ましくはビス(スルホスクシンイミジル)スベレート基)である。
【0064】
数個の抗菌活性基WGが式(I)の化合物中に存在する場合(p=2または3)、これらもまた、同じであっても異なっていてもよい。式(I)の化合物の好ましい実施形態において、抗菌活性基WGは同じである。
【0065】
さらなる好ましい実施形態において、m=1であり、そしてp=1であり、そしてアンカー基AGおよび活性成分基WGは、各々が末端位置にある。
【0066】
用語「ポリマースペーサー」とは、本明細書で一般に、少なくとも3個、特に3個〜500個、好ましくは5個〜200個、特に好ましくは10個〜100個、最も好ましくは10個〜50個の反復単位を有するスペーサーを包含する。
【0067】
式(I)の化合物は、好ましくは、少なくとも250g/mol、特に少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも1000g/mol、特に好ましくは少なくとも1500g/molの分子量を有する。
【0068】
本発明による式(I)の化合物のさらに好ましい実施形態において、Rおよび/またはRは、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、そして特に好ましくは、C10〜C20アルキレン基である。
【0069】
好ましい実施形態において、AGは、ホスホネート基、ホスフェート基、トリメリト酸基、ピロメリト酸モノイミド基、カルボン酸無水物基、トリメリト酸無水物基、ピロメリト酸モノイミド無水物基、無水コハク酸基、スルホン酸基、スルホネート基、イソシアネート基、ホルメート基、ホルムアミド基、カルバミン酸基、β−ケトエステル基、イミドエステル基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホスクシンイミドエステル基、マレイミド基、カルボジイミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオホスホネート基、チオホスフェート基、チオカルボン酸基、チオ尿素基、トリアジンチオン基、トリアジンジチオン基およびチオウラシル基から選択される。
【0070】
さらに、AGがホスホネート基(特に、ジアルキルホスホネート基)、ホスフェート基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、アルコキシシラン基およびアルデヒド基から選択される実施形態が、特に好ましい。多官能性カルボン酸基(特に、ジカルボン酸基、トリカルボン酸基およびテトラカルボン酸基)、カルボン酸無水物基ならびにホスホネート基が、最も好ましい。
【0071】
さらなる好ましい実施形態において、AGは、ホスホネート基、ホスフェート基、カルボン酸基、トリメリト酸基、ピロメリト酸モノイミド基、カルボン酸無水物基、トリメリト酸無水物基、ピロメリト酸モノイミド無水物基、無水コハク酸基、スルホン酸基およびスルホネート基、好ましくは、ホスホネート基、特に、ジアルキルホスホネート基、ホスフェート基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基およびスルホン酸基、最も好ましくは、多官能性カルボン酸基、特に、ジカルボン酸基、トリカルボン酸基およびテトラカルボン酸基、カルボン酸無水物基およびホスホネート基から選択される。このようなアンカー基は、歯のエナメル質、象牙質、ならびに金属酸化物をベースとする基材の修飾に特に適切である。
【0072】
別の実施形態において、AGは、イソシアネート基、ホルメート基、ホルムアミド基、カルバミン酸基、β−ケトエステル基、アルデヒド基、ヘミアセタール基、アセタール基、イミドエステル基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホスクシンイミドエステル基、マレイミド基およびカルボジイミド基から選択される。このようなアンカー基は、コラーゲンおよび他のタンパク質ベースの基材の修飾に特に適切である。
【0073】
別の好ましい実施形態において、AGは、シラン基-SiHR16または-SiH16から選択される。このようなアンカー基は、エチレン性不飽和表面の修飾に特に適切である。
【0074】
別の好ましい実施形態において、AGは、シリル基-SiR17a17b17cから選択される。このようなアンカー基は、無機充填剤および酸化物をベースとする基材(例えば、セラミック材料)の修飾に特に適切である。R17a、R17bおよび/またはR17cがOHである場合、上記定義はまた、必要に応じて、対応するシラノールの縮合生成物を含み得る。これらは好ましくは、本発明の第二の局面による重合性歯科修復材料に可溶性である縮合生成物である。
【0075】
さらなる好ましい実施形態において、AGは、スルフィド基、ジスルフィド基、チオホスホネート基、チオホスフェート基、チオカルボン酸基、チオ尿素基、トリアジンチオン基、トリアジンジチオン基およびチオウラシル基から選択される。このようなアンカー基は、金属基材の表面(特に、周期表の第10族〜第12族の貴金属(例えば、金))の修飾に特に適切である。
【0076】
抗菌基(WG)は、好ましくは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、もしくは第三級アミノ基、陽イオン性の第一級アンモニウム基、第二級アンモニウム基、第三級アンモニウム基、もしくは第四級アンモニウム基、ホスホニウム基またはスルホニウム基、ビスグアニジン基、抗菌ペプチドおよび/またはフェノール基もしくはポリフェノール基である。
【0077】
陽イオン性の第一級アンモニウム基、第二級アンモニウム基、第三級アンモニウム基、および第四級アンモニウム基とは、式(−N)、(−NR)、(−NHR)、および(−N)の基を意味し、ここでRはn−アルキルであり、ここで基Rは、各場合において同じであっても異なっていてもよく、そしてまた、2つの基Rは一緒になって、飽和または不飽和の、芳香族または非芳香族の、単環式環系または多環式環系を形成し得、この環系は、置換されていなくても置換されていてもよい。陽イオン性第四級アンモニウム基とは、さらに、1つ以上の第四級窒素原子を含む、飽和または不飽和の、芳香族または非芳香族の、単環式または多環式の環系を意味し、この環系および/またはこの窒素原子は、置換されていなくても置換されていてもよい。可能な置換基は、H、および直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基から選択される。これに従って、同じことが、式(−P)、(−PR)、(−PHR)および(−P)を有する第一級ホスホニウム基、第二級ホスホニウム基、第三級ホスホニウム基および第四級ホスホニウム基、ならびに式(−S)、(−SHR)および(−S)を有する第一級スルホニウム基、第二級スルホニウム基および第三級スルホニウム基にも適用される。
【0078】
本発明による式(I)の化合物の好ましい実施形態において、抗菌活性基WGは、式(I)の化合物の残りの部分にオルト位、メタ位またはパラ位で、特に好ましくはパラ位で結合している、式
【0079】
【化38】

のピリジニウム基であるか、あるいはオルト位、メタ位またはパラ位が、特に好ましくはパラ位がRで置換され得る、式
【0080】
【化39】

のピリジニウム基であり、
ここでRは、各場合において独立して、H、あるいは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基を表わす。
【0081】
さらなる好ましい実施形態において、
WGは、−Nであり、ここで
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであるか;
あるいはRとRとは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、芳香族環系もしくは非芳香族環系、または芳香族環もしくは非芳香族環、好ましくは
【0082】
【化40】

を形成し、ここでR10は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり;
は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは−(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20である。
【0083】
さらに、
WGが−P7’8’9’であり、ここで
7’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
8’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくは−CHであり;
9’は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは−(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20である、
実施形態が好ましい。
【0084】
さらに、
【0085】
【化41】

であり、ここで
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20である、実施形態が好ましい。
【0086】
さらに好ましいのは、WGが第四級アルキルホスホニウム基またはアルキルスルホニウム基、オクテニジンまたはその誘導体、クロルヘキシジンまたは別のビスグアニジン、トリクロサンまたは別のクロロフェノール、抗菌特性を有する無機基、好ましくは、1つ以上の抗菌活性金属イオン(例えば、Ag、Cu2+、Sn2+、Sn4+、Zn2+またはAl3+)を含む無機基(例えば、オキシフッ化第二スズ基(−O−SnF))、抗菌ペプチド基(例えば、マガイニン基または舌抗菌ペプチド(LPA)基)である、式(I)の化合物である。
【0087】
抗菌活性基WGは、正電荷を有し得る。この正電荷は、A陰イオンにより釣り合いを取られる。好ましいA陰イオンは、F、Cl、Br、I、トリフレート(Trf)、メシレート(Mes)、トシレート(Tos)、パルミチン酸イオン、ステアリン酸イオン、グルコン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、フェノール酸イオン、(メタ)アクリルホスホン酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオンまたはリン酸二水素イオンであり、特に、F、Cl、Br、I、トリフレート(Trf)、メシレート(Mes)またはトシレート(Tos)である。
【0088】
特に好ましいのは、WGが、第四級窒素においてR=C〜C20アルキルで置換されている、式
【0089】
【化42】

のピリジニウム基である、式(I)の化合物である。最も好ましいのは、RがC16アルキルであるセチルピリジニウム基であり、例えば、セチルピリジニウムクロリドまたはセチルピリジニウムブロミドである。
【0090】
同様に特に好ましいのは、WGが式
【0091】
【化43】

の第四級アルキルアンモニウム基であり、ここでRは、C〜C31アルキル、好ましくはC〜C20アルキル、特にC〜C18アルキル、特に好ましくはC11〜C16アルキル、そして最も好ましくはC11〜C14アルキルである、式(I)の化合物である。最も好ましくは、WGは、N,N−ジメチルドデシルアンモニウム基またはN,N−ジメチルセチルアンモニウム基である。
【0092】
好ましい実施形態において、スペーサーSPは、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、ポリグリセロール基、ポリアルキルオキサゾリン基、ポリエチレンイミン基、ポリアクリル酸基、ポリメタクリル酸基、ポリビニルアルコール基、ポリ酢酸ビニル基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)アクリレート基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート基、親水性ポリペプチド基、ポリオキサゾリン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基、ポリメタクリル酸エステル基、N−アルキル化ポリエチレンイミン基、N−アルキル化ビニルピリジン基、ポリアミノサッカリド基、および対応するモノマーのコポリマーから選択される。
【0093】
ポリアミノサッカリド基とは、本明細書において、アミノグリコシド反復単位を有するポリマー基を意味する。ポリアミノサッカリド基の例は、β−(1→4)−結合したアミノ−2−デオキシ−β−D−グルコース単位および類似のオリゴ糖(例えば、他のアミノグリカン)を有する、完全にかもしくは部分的に脱アセチルされたキトサン誘導体、または脱アセチルされていないキトサン誘導体である。
【0094】
好ましい実施形態において、スペーサーSPは、ポリオキサゾリン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基またはポリメタクリル酸エステル基である。
【0095】
さらなる好ましい実施形態において、スペーサーSPは、N−アルキル化ポリエチレンイミン基、N−アルキル化ビニルピリジン基またはポリアミノサッカリド基、あるいは陽イオン性キトサン誘導体である。
【0096】
非常に特に好ましくは、SPは、式:
【0097】
【化44】

のポリオキサゾリン基であり、ここでnは、好ましくは3〜500、好ましくは5〜200、そして特に好ましくは10〜100であり、そしてRは、好ましくは、−CH、−Cまたは−Cである。
【0098】
互いに独立して選択され得る、残りの可変物の好ましい定義は、以下のとおりである:
mは、1または2であり、特に好ましくは1である;
pは、1または2であり、特に好ましくは1である;
は、O、S、NH、N、SiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONHによって1回以上分断され得る直鎖もしくは分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、特に好ましくはC〜C10アルキレン基であり、そして最も好ましくは−CH−CH−または−CH−CH−NH−CH−CH−である;
は、置換または非置換の芳香族C〜C14基であり、特に好ましくは、フェニレンまたは−CH−Ph−CH−である;
は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり、特にC〜C10アルキル基であり、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルであり、最も好ましくはメチルである;
Yは、存在しないか、またはO、S、COOであり、特に好ましくは存在しない;
Zは、存在しないか、またはO、S、NH、Nもしくはアミドであり、特に好ましくは存在しないか、またはNHもしくはN(CHである。
【0099】
全ての可変物が好ましい意味のうちの1つ、そして特に、特に好ましい意味のうちの1つを有する、式(I)の化合物が、当然特に好ましい。
【0100】
本発明により特に好ましい式(I)の化合物は、以下のものである:
【0101】
【化45】

【0102】
【化46】

【0103】
【化47】

【0104】
【化48】

ここで
Aは、Cl、Br、I、Trf、Mes、Tosであり;
nは、3〜500であり;
rは、10〜20である。
【0105】
式(I)の化合物は、それ自体公知である多段階合成方法によって調製され得る。例えば、SPがポリオキサゾリン基である、特に好ましい式(I)の化合物は、以下の方法で調製され得る。ポリマースペーサーSPが、2−アルキル−1,3−オキサゾリンの重合により構築される。重合度、および従って、スペーサーの長さは、モノマー−開始剤比[M]/[I]および反応時間によって、制御される。
【0106】
第一の合成変形例において、抗菌活性基WGを含む化合物が、開始剤として使用される。アンカー基AGを含むアミンが、好ましくは、この重合を停止させるために使用される。あるいは、例えば、エチレンジアミンなどの二官能性アミンが、この重合を停止させるために使用され得、この場合、この二官能性アミンの第二の官能基は、アンカー基AGの付着のために働く。
【0107】
【化49】

第二の合成変形例において、アンカー基AGを含む化合物が、開始剤として使用される。好ましくは、抗菌活性基WGを含むアミンが、この重合を停止させるために使用される。特に好ましくは、第三級アミンがこの重合を停止させるために使用され、これによって、対応する第四級アンモニウム基が抗菌活性基WGとして形成される。
【0108】
適切な保護基を有する化合物もまた、開始剤として使用され得る。この場合、選択される合成変形例に依存して、抗菌活性基WGまたはアンカー基AGは、重合が完了し、そして保護基が除去された後に、導入される。
【0109】
本発明による式(I)の化合物は、重合性歯科修復材料の調製のために特に適切である。従って、第二の局面において、本発明は、
(a)本発明の第一の局面による少なくとも1種の式(I)の抗菌活性化合物、または本発明の第一の局面による少なくとも1種の式(I)の化合物で表面修飾された充填剤;
(b)少なくとも1種のラジカル重合性モノマー;および
(c)少なくとも1種のラジカル重合用開始剤
を含有する、歯科修復材料に関する。
【0110】
式(I)の化合物の好ましい実施形態は、本発明の第一の局面について上で定義された通りである。
【0111】
好ましいラジカル重合性モノマーは、単官能性または多官能性の(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド((メタ)アクリル化合物)である。多官能性(メタ)アクリル化合物とは、1個の(メタ)アクリル基を有する化合物を意味し、そして多官能性(メタ)アクリル化合物とは、2個以上、好ましくは2個〜3個の(メタ)アクリル基を有する化合物を意味する。多官能性モノマーは、架橋特性を有する。
【0112】
好ましい多官能性(メタ)アクリル化合物は、市販の多官能性モノマーであり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フルフリルまたは(メタ)アクリル酸フェニル、および(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルである。
【0113】
特に好ましいのは、加水分解安定性モノマー(例えば、加水分解安定なモノ(メタ)アクリレート(例えば、メタクリル酸メシチル)または2−(アルコキシメチル)アクリル酸(例えば、2−(エトキシメチル)アクリル酸)、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、N−一置換アクリルアミドまたはN−二置換アクリルアミド(例えば、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドまたはN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド)、およびN−一置換メタクリルアミド(例えば、N−エチルメタクリルアミドまたはN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド)、ならびにN−ビニルピロリドンおよびアリルエーテル)である。これらのモノマーは、室温で液体であるので、希釈剤としてもまた適切である。
【0114】
好ましい多官能性モノマーは、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、ビス−GMA(メタクリル酸とビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルとの付加生成物)、エトキシ化ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、UDMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの付加生成物)、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールもしくはジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリトリトール、およびジ(メタ)アクリル酸ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,10−デカンジオール、またはジ(メタ)アクリル酸1,12−ドデカンジオールである。
【0115】
特に好ましいのは、さらに加水分解安定な架橋モノマー(例えば、架橋ピロリドン(例えば、1,6−ビス−(3−ビニル−2−ピロリドニル)−ヘキサン)、または市販のビスアクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミドもしくはエチレンビスアクリルアミド)、ビス−(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N’−ジエチル−1,3−ビス−(アクリルアミド)−プロパン、1,3−ビス−(メタクリルアミド)−プロパン、1,4−ビス−(アクリルアミド)−ブタンもしくは1,4−ビス−(アクリロイル)−ピペラジンであり、これらは、対応するジアミンと塩化(メタ)アクリル酸との反応により合成され得る))である。
【0116】
本発明による歯科修復材料はまた、好ましくは、少なくとも1種のラジカル重合性酸基含有モノマーを含有する。以下において、酸基含有モノマーは、酸性モノマーとも呼ばれる。好ましい酸基は、カルボン酸基、ホスホン酸基、ホスフェート基および/またはスルホン酸基であり、これらの基は、その酸形態で存在しても、エステルの形態で存在してもよい。ホスホン酸基またはホスフェート基を有するモノマーが特に好ましい。これらのモノマーは、1つ以上の酸基を有し得、1個〜2個の酸基を有する化合物が好ましい。
【0117】
好ましい重合性カルボン酸は、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンならびに4−ビニル安息香酸である。
【0118】
好ましいホスホン酸モノマーは、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルである。
【0119】
好ましい酸性重合性リン酸エステルは、リン酸一水素2−メタクリロイルオキシプロピルおよびリン酸二水素2−メタクリロイルオキシプロピル、リン酸一水素2−メタクリロイルオキシエチルおよびリン酸二水素2−メタクリロイルオキシエチル、リン酸水素2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸二水素10−メタクリロイルオキシデシル、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、リン酸二水素6−(メタクリルアミド)ヘキシルならびにリン酸二水素1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イルである。
【0120】
好ましい重合性スルホン酸は、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸である。
【0121】
アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、ベンゾインおよびそれらの誘導体、またはα−ジケトンもしくはそれらの誘導体(例えば、9,10−フェナントレンキノン、1−フェニル−プロパン−1,2−ジオン、ジアセチルもしくは4,4−ジクロロベンジル)が、好ましくは、ラジカル光重合を開始させるために使用される。好ましくは、ショウノウキノンおよび2,2−メトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、そして特に好ましくは、アミンと組み合わせたα−ジケトン(例えば、4−(ジメチルアミノ)−安息香酸エステル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチル−sym.−キシリジンまたはトリエタノールアミン)が、還元剤として使用される。異なる光開始剤の組み合わせもまた使用される。
【0122】
レドックス開始剤の組み合わせ(例えば、過酸化ベンゾイルと、N,N−ジメチル−sym.−キシリジンまたはN,N−ジメチル−p−トルイジンとの組み合わせ)が、いわゆる化学硬化のための開始剤として使用される。さらに、過酸化物と還元剤(例えば、アスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸)とからなるレドックス系もまた、特に適切である。
【0123】
さらに、歯科修復材料は、機械特性を改善するため、または粘度を調節するために、充填剤を含有し得る。本発明によれば、粒子状充填剤が充填剤として好ましい。非常に特に好ましいのは、10nm〜50μm、特に好ましくは10nm〜30μm、そして非常に特に好ましくは10nm〜5μmの平均粒径[透過型電子顕微鏡法(10nm〜80nm)、走査型電子顕微鏡法(50nm〜5μm)またはレーザー回折(0.1μm〜100μm)によって決定される]を有する、有機充填剤粒子または無機充填剤粒子である。
【0124】
好ましい粒子状充填剤は、10nm〜1μmの平均粒径を有する酸化物(例えば、ZrOおよびTiO)、またはSiO、ZrOおよび/もしくはTiOの混合酸化物をベースとする、非晶質球状物質、10nm〜500nmの平均粒径を有するナノ粒子状充填剤または微細充填剤(例えば、発熱性シリカまたは沈降シリカ)、ならびに0.1μm〜5μm、好ましくは0.2μm〜3μm、そして非常に特に好ましくは0.4μm〜1.5μmの平均粒径を有するミニフィラー(例えば、石英、ガラスセラミックまたはガラス粉末)、ならびに10nm〜500nmの平均粒径を有するX線不透過性充填剤(例えば、三フッ化イッテルビウムまたはナノ粒子状酸化タンタル(V)もしくは硫酸バリウム)である。
【0125】
1つの実施形態において、歯科修復材料は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含有する。アンカー基AGがホスホネート基、ジアルキルホスホネート基、ホスフェート基、スルホン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸基またはアルデヒド基から選択される、式(I)の化合物が好ましい。ジカルボン酸基、カルボン酸無水物基またはホスホネート基が最も好ましい。
【0126】
別の実施形態において、式(I)の化合物は、充填剤に結合される。従って、歯科修復材料は、好ましくは、少なくとも1種の式(I)の抗菌活性化合物で表面修飾された少なくとも1つの充填剤を含有する。AGがシリル基-SiR17a17b17cであり、ここでR17aは、アルコキシ、アリールオキシ、ClまたはOHから選択され、特に、アルコキシ、アリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシであり、そしてR17bおよびR17cは各々独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、OH、アルキルまたはアリールから選択され、好ましくは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくはメトキシである、式(I)の化合物が好ましい。好ましくは、AG基の少なくとも1つのケイ素原子は、充填剤に結合している酸素原子を介して、この充填剤に共有結合する。
【0127】
式(I)の化合物で表面修飾された充填剤に加えて、歯科修復材料はまた、式(I)の化合物で修飾されていない充填剤を含有し得る。この充填剤は、好ましくは、上で定義された充填剤から選択される。同様に、歯科修復材料はまた、充填剤に結合した式(I)の化合物に加えて、充填剤に結合していない式(I)の化合物を含有し得る。
【0128】
式(I)の化合物で修飾されていない充填剤部分は、好ましくは、重合性基(例えば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(MPTMS)などのアルコキシシラン)で表面修飾される。
【0129】
さらに、本発明による歯科修復材料は、1種以上のさらなる添加剤を含有し得、これらの添加剤は、好ましくは、安定剤、阻害剤、矯味矯臭剤、色素、顔料、フッ化物イオン放出添加剤、光学光沢剤、可塑剤および/またはUV吸収剤から選択される。好ましいUV吸収剤は、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンであり、好ましい安定剤は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾールおよび4−メトキシフェノールである。
【0130】
本発明による歯科修復材料は、好ましくは:
(a)0.05重量%〜50重量%、好ましくは0.5重量%〜25重量%、そして特に好ましくは2重量%〜10重量%の式(I)の抗菌活性化合物;
(b)5重量%〜95重量%、好ましくは5重量%〜85重量%、そして特に好ましくは5重量%〜70重量%のラジカル重合性モノマー;および
(c)0.01重量%〜5重量%、そして好ましくは0.1重量%〜5重量%のラジカル重合用開始剤
を含有する。
【0131】
成分(a)〜(c)に加えて、本発明による歯科修復材料はまた、好ましくは:
(d)0重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、そして特に好ましくは5重量%〜45重量%の酸性ラジカル重合性モノマー;および/または
(e)0重量%〜90重量%、そして好ましくは1重量%〜85重量%の充填剤;および/または
(f)0重量%〜99.95重量%、好ましくは0.5重量%〜60重量%、そして特に好ましくは1重量%〜40重量%の溶媒;および/または
(g)0重量%〜5重量%、そして好ましくは0.01重量%〜3.0重量%のさらなる添加剤
を含有する。
【0132】
式(I)の抗菌活性化合物が充填剤に結合している本発明による歯科修復材料は、好ましくは:
(a)1重量%〜60重量%、そして好ましくは5重量%〜40重量%の、少なくとも1種の式(I)の抗菌活性化合物で表面修飾されている充填剤;
(b)5重量%〜95重量%、好ましくは5重量%〜85重量%、そして特に好ましくは5重量%〜70重量%のラジカル重合性モノマー;および
(c)0.01重量%〜5.0重量%、好ましくは0.1重量%〜5.0重量%のラジカル重合用開始剤
を含有する。
【0133】
成分(a)〜(c)に加えて、これらの歯科修復材料はまた、好ましくは:
(d)0重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、そして特に好ましくは5重量%〜45重量%の酸性ラジカル重合性モノマー;および/または
(e)0重量%〜40重量%、そして好ましくは0重量%〜30重量%の、式(I)の抗菌活性化合物で表面修飾されていない充填剤;および/または
(f)0重量%〜99.95重量%、好ましくは0.5重量%〜60重量%、そして特に好ましくは1重量%〜40重量%の溶媒;および/または
(g)0重量%〜5重量%、そして好ましくは0.01重量%〜3.0重量%のさらなる添加剤
を含有する。
【0134】
本発明による歯科修復材料の正確な組成は、所望の用途に基づく。本発明による歯科修復材料は、充填材料として特に適切であり、そしてコーティング材料、接着剤、プライマー、自己接着性固定セメントおよび/または自己調整固定セメントとして非常に特に適切である。
【0135】
充填材料は、好ましくは、以下の組成:
(a)0.05重量%〜35重量%、好ましくは0.5重量%〜25重量%、そして特に好ましくは2重量%〜10重量%の式(I)の化合物;
(b)15重量%〜25重量%のラジカル重合性モノマー、好ましくは架橋モノマー、特に、ビス−GMA、ジメタクリル酸ウレタン、および/またはエトキシ化ビス−GMA;
(c)0.5重量%〜2.5重量%の開始剤、好ましくはショウノウキノン/アミン光開始剤系、特に、0.2重量%〜0.6重量%のショウノウキノンおよび0.3重量%〜0.6重量%のアミン共開始剤;
(d)50重量%〜80重量%の充填剤、好ましくは45重量%〜65重量%の微細に粉砕したガラス充填剤、特に、バリウムまたはストロンチウムガラス充填剤、および5重量%〜25重量%のX線不透過性充填剤、特に三フッ化イッテルビウム;
(e)0重量%〜39重量%の基礎(ground)プレポリマー;
(f)0重量%〜0.5重量%、好ましくは0.01重量%〜0.5重量%の着色顔料
を有する。
【0136】
コーティング材料は、好ましくは、以下の組成:
(a)0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%、そして特に好ましくは0.5重量%〜2.5重量%の式(I)の化合物;
(b)50重量%〜90重量%、好ましくは65重量%〜85重量%のラジカル重合性モノマー、好ましくは60.0重量%〜70.0重量%の架橋モノマー、特に、トリアクリレート、および8.0重量%〜15.0重量%の希釈モノマー、特にメタクリル酸メチル;
(c)0.5重量%〜2.5重量%の開始剤、好ましくはショウノウキノン/アミン光開始剤系、特に、0.2重量%〜0.6重量%のショウノウキノンおよび0.3重量%〜0.6重量%のアミン共開始剤および0.5重量%〜1.2重量%の2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;
(d)5.0重量%〜15重量%の充填剤、特にSiOナノ粒子;
(e)0重量%〜10.0重量%の有機溶媒
を有する。
【0137】
接着剤およびプライマーは、好ましくは、以下の組成:
(a)0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%、そして特に好ましくは0.5重量%〜1.5重量%の式(I)の化合物;
(b)10重量%〜20重量%の架橋モノマー、特に、ジメタクリル酸グリセロール(GDMA)またはジメタクリル酸トリエチレングリコール(TEGDMA);
(c)30重量%〜50重量%の親水性モノマー、好ましくはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA);
(d)20重量%〜30重量%の酸性モノマー、好ましくはリン酸二水素メタクリロイルオキシデシル(MDP);
(e)0.5重量%〜2.5重量%の開始剤、好ましくはショウノウキノン/アミン光開始剤系、特に、0.2重量%〜0.6重量%のショウノウキノンおよび0.3重量%〜0.6重量%のアミン共開始剤、特にエチル−p−ジメチルアミノベンゾエート;
(f)5重量%〜20重量%の有機溶媒、好ましくはエタノール
を有する。
【0138】
自己接着性固定セメントおよび/または自己調整固定セメントは、好ましくは、以下の組成を有する:
ベースペースト:
(a)0.05重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜10重量%、そして特に好ましくは0.5重量%〜5重量%の式(I)の化合物;
(b)25重量%〜40重量%のラジカル重合性モノマー、好ましくは架橋モノマー、特に、ジメタクリル酸トリエチレングリコール(TEGDMA)またはジメタクリル酸ウレタン(UDMA);
(c)1重量%〜3.5重量%のアミン、好ましくはN,N−ジ(2−ヒドロキシ)−p−トルイジン;および
(d)15重量%〜70重量%の充填剤、好ましくは2重量%〜5.5重量%のSiO粒子、5重量%〜25重量%のX線不透過性充填剤、特に三フッ化イッテルビウム、10重量%〜45重量%のスプリンター重合体(splinter polymerisate (Splitter−polymerisat))、および0重量%〜45重量%の微細に粉砕したガラス充填剤、特に、バリウムまたはストロンチウムガラス充填剤。
【0139】
触媒ペースト:
(a)3重量%〜8重量%の酸性モノマー、好ましくはリン酸二水素メタクリロイルオキシデシル(MDP);
(b)25重量%〜37重量%のラジカル重合性モノマー、好ましくは架橋モノマー、特に、ジメタクリル酸トリエチレングリコール(TEGDMA)またはジメタクリル酸ウレタン(UDMA);
(c)0.5重量%〜3重量%の過酸化物、好ましくはジ過酸化ベンゾイル;
(d)0.5重量%〜2.5重量%のショウノウキノン/アミン光開始剤系;および
(e)20重量%〜70重量%の、充填剤、好ましくは5重量%〜25重量%のX線不透過性充填剤、特に三フッ化イッテルビウム、2重量%〜5.5重量%のSiO粒子、10重量%〜45重量%のスプリンター重合体、および5重量%〜45重量%の微細に粉砕したガラス充填剤、特に、バリウムガラスまたはストロンチウムガラス充填剤。
【0140】
本発明による式(I)の化合物はまた、硬い歯の組織(例えば、歯のエナメル質および象牙質)、コラーゲン、軟組織、粘膜などの直接の処置に適切である。その用途に依存して、式(I)の化合物は、化粧目的または医療目的で使用され得る。
【0141】
従って、第三の局面において、本発明は、少なくとも1種の本発明の第一の局面による式(I)の化合物を含有する歯科材料に関する。さらに、本発明はまた、本発明の第一の局面による式(I)の化合物の、歯科材料として、または歯科材料の調製のため、特に、歯および/または歯科修復物の抗菌処理のための、使用に関する。AGがホスホネート基、ホスフェート基、カルボン酸基、トリメリト酸基、ピロメリト酸モノイミド基、カルボン酸無水物基、トリメリト酸無水物基、ピロメリト酸モノイミド無水物基、無水コハク酸基、スルホン酸基、スルホネート基、イソシアネート基、ホルメート基、ホルムアミド基、β−ケトエステル基、アルデヒド基、ヘミアセタール基、アセタール基、イミドエステル基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホスクシンイミドエステル基、マレイミド基およびカルボジイミド基、好ましくはホスホネート基(特に、ジアルキルホスホネート基)、ホスフェート基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基およびスルホン酸基、最も好ましくは、多官能性カルボン酸基(特に、ジカルボン酸基、トリカルボン酸基およびテトラカルボン酸基)、カルボン酸無水物基ならびにホスホネート基から選択される、式(I)の化合物が特に好ましい。式(I)の化合物のさらに好ましい実施形態は、本発明の第一の局面について上で定義された通りである。
【0142】
歯科材料は、好ましくは、うがい薬溶液、練り歯磨き、歯科用ゲル、歯科用チンキ剤または歯科用バーニッシュの形態を有する。特に好ましい歯科材料は、以下の組成を有する:
歯科用ゲル:
(a)0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%、そして特に好ましくは0.5重量%〜2.5重量%の式(I)の化合物;
(b)0重量%〜2重量%、そして好ましくは0.05重量%〜1.5重量%の矯味矯臭剤、特に、ハッカ油および/またはサリチル酸メチル(ウィンターグリーン油);
(c)0重量%〜2.5重量%、好ましくは0.5重量%〜2重量%のゲル化剤、特に、ヒドロキシメチルセルロースおよび/またはキサンタン;ならびに
(d)90重量%〜95重量%、好ましくは91重量%〜95重量%の水。
【0143】
歯科用チンキ剤:
(a)0.05重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜15重量%、そして特に好ましくは0.5重量%〜10重量%の式(I)の化合物;
(b)0重量%〜2重量%、そして好ましくは0.05重量%〜1.5重量%の矯味矯臭剤、特に、ハッカ油および/またはサリチル酸メチル(ウィンターグリーン油);
(c)0重量%〜2.5重量%、好ましくは0.5重量%〜2重量%のゲル化剤、特に、ヒドロキシメチルセルロースおよび/またはキサンタン;
(d)5重量%〜55重量%、そして好ましくは6重量%〜55重量%の水;
(e)25重量%〜75重量%の有機溶媒、好ましくは、エタノール、イソプロパノールまたはアセトン。
【0144】
さらに、式(I)の化合物は、表面(特に、例えばセラミック材料(例えば、ケイ酸含有セラミック)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ならびに貴金属および卑金属の基材)に抗菌特性を与えるのに適切である。さらに、式(I)の化合物はまた、美的防腐特性を与える目的で、さらなる基材(例えば、革などの天然産物)の処理に適切である。これらの化合物は通常、溶媒に溶解される。
【0145】
従って、第四の局面において、本発明は、基材の表面を修飾するための、本発明の第一の局面による式(I)の化合物の使用に関する。この基材は、好ましくは、セラミック材料(例えば、ケイ酸含有セラミック)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ならびに貴金属および卑金属から選択される。これらの基材が歯科修復物(例えば、歯冠、ブリッジ、インレー、アンレー、インプラント橋脚歯、総義歯または部分義歯)の形態を有することが、さらに好ましい。式(I)の化合物の好ましい実施形態は、本発明の第一の局面について上で定義された通りである。
【0146】
本発明は、実施例によって以下により詳細に説明される。
【実施例】
【0147】
(実施例1:ポリアルキルオキサゾリンスペーサーおよびピロメリト酸モノイミド無水物アンカー基を有する式(I)の化合物の調製)
【0148】
【化50】

1.1 第四級アルキルアンモニウム基を有する出発化合物1の調製
【0149】
【化51】

市販の抽出物であるα,α’−ジブロモ−p−キシレン(DBX)およびN,N−ジメチルドデシルアミン(DDA)を、使用前に、CHClからの2回の再結晶によって精製した。反応フラスコ中で、DBX(5.00g,18.94mmol,1.0当量)を、乾燥CHCl(100ml)に25℃で、激しく撹拌しながら少量ずつ溶解させた。次いで、層流のみがこのフラスコ内で起こるようにしてこの溶液を撹拌し、そしてその温度を、水浴によって25℃に調整した。滴下漏斗(25ml)中で、DDA(2.565ml,9.47mmol,0.5当量)を乾燥CHClで希釈して、合計10.0mlにした。この希釈したDDAを45分間かけてDBXの溶液に非常にゆっくりと滴下により添加し、そしてこの混合物をさらに15分間撹拌した。この反応混合物を、ロータリーエバポレーターで約30%v/vまで濃縮し、そして沈殿した固体(抽出物、最小量)を全て、濾過により分離して除去した。残った透明な上清を撹拌しながらTHF(200ml)に添加し、そして得られた分散物を遠心分離(10分間,5,000rpm)により分離した。沈降した白色固体(副生成物)を処分した。均質なTHF相を約50%v/vまで濃縮し、そして上記手順を合計5回実施した。残っている溶媒を除去した後に、純粋な生成物1が、黄褐色の粘性の高い物質として得られた。
【0150】
1.2 出発化合物1での開始およびエチレンジアミン2での停止によるメチルオキサゾリンの重合
【0151】
【化52】

出発化合物(1,0.56g,1.17mmol,1.0当量)を乾燥CHCl(18ml,20℃,[Ar])に溶解させ、そして耐圧ガラス反応器(50ml)に移した。メチルオキサゾリン(3.00g,3.00ml,35.2mmol,30.0当量)を添加した。重合(4h)を、重合用マイクロ波(300W)中での誘電加熱(100℃)によって行った。エチレンジアミン(2,1.41g,1.57ml,23.4mmol,20.0当量)を添加し、そしてこの反応混合物を水浴中で撹拌した(24h,40℃)。ジエチルエーテル中のCHClからの5回の再沈殿によって、アミン官能基化ポリマーが黄色がかった吸湿性粉末として得られた(3,DPNMR=33,3.35g,93%)。特徴付けを、H-NMRおよび13C-NMR、ならびにGPCによって行った。
【0152】
1.3 ポリ(メチルオキサゾリン)3とピロメリト酸アンカー基とのDMF中でのポリマー類似反応
【0153】
【化53】

ピロメリト酸二無水物(4,3.96g,18.2mmol,20.0当量)をDMF(60ml,30℃)に溶解させ、そして氷浴によって0℃まで冷却した。アミン末端を有するポリ(メチルオキサゾリン)3(3.00g,0.91mmol,1.0当量)を乾燥DMF(40ml,0℃,蒸留/塩基性酸化アルミニウムでの乾燥後、残留水分<3ppm)に溶解させた。このポリマー溶液を素早く、化合物4に滴下により添加した。この混合物を5分間撹拌した。反応したポリマーが、ジエチルエーテル中のDMFからの5回の再沈殿によって、黄褐色がかった吸湿性粉末として得られた(5,DPNMR=33,2.95g,92%)。特徴付けを、H-NMRおよび13C-NMR、ならびにGPCによって行った。
【0154】
(実施例2:ポリアルキルオキサゾリンスペーサーおよびピロメリト酸モノイミドアンカー基を有する式(I)の化合物の調製)
【0155】
【化54】

実施例1から得られた無水物5の加水分解によって、対応するジカルボン酸を得た。
【0156】
この加水分解を、室温で蒸留水中で撹拌することにより行った。その生成物を、この溶液を濃縮して低温で噴霧乾燥または沈殿させることにより得た。
【0157】
(実施例3:ポリアルキルオキサゾリンスペーサーおよびジアルキルホスホネートアンカー基を有する式(I)の化合物の調製)
【0158】
【化55】

3.1. 停止剤8の調製
【0159】
【化56】

ジエチル−2−ブロモエチルホスホネート(6,10.0g,40.8mmol,1.0当量)を乾燥CHCl(10ml,20℃)に溶解させた。次いで、CHCl(10ml,20℃)中のN,N−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(7,3.60g,40.8mmol,1.0当量)を、15分間かけて撹拌しながらゆっくりと滴下により添加した。
【0160】
この反応混合物をジエチルエーテル中で沈殿させ、そしてそのように得られた粗生成物を、ジエチルエーテル中のメタノールからの3回の再沈殿により精製した。純粋な生成物を、黄白色のペースト状物質として得た(8,9.1g,88%)。特徴付けを、H-NMRおよび13C-NMRにより行った。
【0161】
3.2. 出発化合物1により開始され、アミノホスホネート8により停止される、メチルオキサゾリンの重合
【0162】
【化57】

実施例1から得られた出発化合物(1,0.56g,1.17mmol,1.0当量)を乾燥CHCl(18ml,20℃,[Ar])に溶解させ、そして耐圧ガラス反応器(50ml)に移した。メチルオキサゾリン(3.00g,3.00ml,35.2mmol,30.0当量)を添加した。重合(4h)を、重合用マイクロ波(300W)中で誘電加熱(100℃)により行った。
【0163】
停止剤(8,5.90g,23.4mmol,20.0当量)を添加し、そしてこの反応混合物をさらなるCHCl(10ml)で希釈し、そして水浴中で撹拌した(48h,40℃)。
【0164】
アミノホスホネートで官能基化されたポリマーを、ジエチルエーテル中のCHClから5回再沈殿させることによって、黄色がかった吸湿性粉末として得た(9,DPNMR=33,3.95g,95%)。特徴付けを、H-NMRおよび13C-NMR、ならびにGPCによって行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科修復材料であって、
(a)少なくとも1種の式(I)
[AG]−R−Z−SP−Y−R−[WG] (I)
の抗菌活性化合物であって、式(I)において、その可変物が以下の意味:
mは、1、2、3または4である;
pは、1、2または3である;
は、存在しないか、あるいは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、該アルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、OSiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONH、置換もしくは非置換の芳香族C〜C14基またはその組み合わせによって1回以上分断され得る;
は、存在しないか、あるいは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、該アルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、OSiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONH、置換もしくは非置換の芳香族C〜C14基またはその組み合わせによって1回以上分断され得る;
は、各場合において独立して、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、置換または非置換のフェニル基またはベンジル基である;
AGは、以下のアンカー基:
【化58】

ここでR11aおよびR11bは独立して、H、アルキル、アリールまたは−Si(アルキル)から選択され、ここでアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わし、そしてここで特に好ましくは、R11aとR11bとが各々アルキルであるか、またはR11aがHであってR11bがアルキルである、アンカー基、
【化59】

【化60】

ここでR12は−Si(アルキル)を表わし、そしてアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わす、アンカー基、
【化61】

【化62】

ここでR13、R13aおよびR13bは独立して、アルキルから選択され、特にメチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルから選択され、好ましくはエチルであるか、あるいは特に好ましくは、R13aとR13bが接続されて、4員〜7員の環系を形成し、好ましくは5員環系を形成し、ここで該酸素原子のうちの1つはNで置き換えられ得る、アンカー基、
【化63】

ここでR14はアルキルであり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルまたはt−ブチルである、アンカー基、
【化64】

ここでR15は、必要に応じて置換されたアルキル基またはシクロアルキル基を表わし、好ましくは、3−ジメチルアミノプロピル、i−プロピルまたはシクロヘキシルを表わす、アンカー基、
【化65】

ここでR16は独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシである、アンカー基、
【化66】

ここでR17aは、アルコキシ、アリールオキシ、ClまたはOHから選択され、特に、アルコキシ、アリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシであり、そしてR17bおよびR17cは各々独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、OH、アルキルまたはアリールから選択され、好ましくは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシである、アンカー基、
【化67】

ここでR18は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルから選択され、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、フェニル、ビフェニルまたはアルキルフェニルから選択される、アンカー基、
【化68】

ここでR19aおよびR19bは独立して、H、アルキル、アリールまたは−Si(アルキル)から選択され、ここでアルキルは好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルを表わし、そしてここで特に好ましくは、R19aとR19bとが各々アルキルであるか、またはR19aがHであってR19bがアルキルである、アンカー基、
【化69】

ここでR20は、必要に応じて置換されたアルキル基を表わし、そして好ましくは、−CH−CH−NHまたは-CH−CH(NH)−COOHを表わす、アンカー基、
【化70】

ここでR21は、各場合において独立して、Hまたはアルキルから選択され、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルから選択される、アンカー基
から選択されるアンカー基である;
SPは、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、ポリグリセロール基、ポリアルキルオキサゾリン基、ポリエチレンイミン基、ポリアクリル酸基、ポリメタクリル酸基、ポリビニルアルコール基、ポリ酢酸ビニル基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)アクリレート基、ポリ−(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート基、親水性ポリペプチド基、ポリオキサゾリン基、ポリアルキレン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基、ポリメタクリル酸エステル基、N−アルキル化ポリエチレンイミン基、N−アルキル化ビニルピリジン基、多糖類基、ポリアミノサッカリド基、および対応するモノマーのコポリマーから好ましくは選択される、ポリマースペーサーである;
WGは、抗菌活性基である;
Yは、存在しないか、またはO、S、NH、N、エステル基、アミド基もしくはウレタン基である、
Zは、存在しないか、またはO、S、NH、N、エステル基、アミド基もしくはウレタン基である;
を有する、抗菌活性化合物、あるいは少なくとも1種の式(I)の化合物で表面修飾された充填剤;
(b)少なくとも1種のラジカル重合性モノマー;ならびに
(c)少なくとも1種のラジカル重合用開始剤
を含有する、歯科修復材料。
【請求項2】
および/またはRが、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、そして好ましくは、C10〜C20アルキレン基である、請求項1に記載の歯科修復材料。
【請求項3】
AGが、ホスホネート基、ホスフェート基、トリメリト酸基、ピロメリト酸モノイミド基、カルボン酸無水物基、トリメリト酸無水物基、ピロメリト酸モノイミド無水物基、無水コハク酸基、スルホン酸基、スルホネート基、イソシアネート基、ホルメート基、ホルムアミド基、カルバミン酸基、β−ケトエステル基、イミドエステル基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、スルホスクシンイミドエステル基、マレイミド基、カルボジイミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、チオホスホネート基、チオホスフェート基、チオカルボン酸基、チオ尿素基、トリアジンチオン基、トリアジンジチオン基およびチオウラシル基から選択される、請求項1または2に記載の歯科修復材料。
【請求項4】
前記抗菌活性基WGが、

【化71】

のピリジニウム基であって、オルト位、メタ位またはパラ位で、特に好ましくはパラ位で、前記式(I)の化合物の残りの部分に結合している、ピリジニウム基;

【化72】

のピリジニウム基であって、オルト位、メタ位またはパラ位が、特に好ましくはパラ位が、Rで置換され得、
該ピリジニウム基において、Rは、各場合において独立して、Hまたは直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基を表わす、ピリジニウム基;
−N
であって、ここで
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであるか;
あるいはRとRとは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、芳香族環系もしくは非芳香族環系、または芳香族環もしくは非芳香族環を形成し、好ましくは、
【化73】

を形成し、ここでR10は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり;
は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基であり、好ましくは-(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
−P7’8’9’
であって、ここで
7’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
8’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくは−CHであり;
9’は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは-(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
【化74】

であって、ここで
rは、5〜30であり、好ましくは10〜30であり、特に好ましくは10〜20であるもの;あるいは
第四級アルキルホスホニウム基またはアルキルスルホニウム基、オクテニジンまたはその誘導体、クロルヘキシジンまたは別のビスグアニジン、トリクロサンまたは別のクロロフェノール、抗菌特性を有する無機基、好ましくは1つ以上の抗菌活性金属イオンを含む無機基、例えばマガイニン基または舌抗菌ペプチド(LPA)基などの抗菌ペプチド基
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科修復材料。
【請求項5】
前記抗菌活性基WGが、式
【化75】

の第四級アルキルアンモニウム基であり、ここでRは、C〜C31アルキル、好ましくはC〜C20アルキル、特にC〜C18アルキル、特に好ましくはC11〜C16アルキル、そして最も好ましくはC11〜C14アルキルであり、そして最も好ましくは、N,N−ジメチルドデシルアンモニウム基またはN,N−ジメチルセチルアンモニウム基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科修復材料。
【請求項6】
前記スペーサーSPが、ポリオキサゾリン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基、ポリメタクリル酸エステル基、N−アルキル化ポリエチレンイミン基、N−アルキル化ビニルピリジン基またはポリアミノサッカリド基、あるいは陽イオン性キトサン誘導体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科修復材料。
【請求項7】
前記スペーサーSPが、式:
【化76】

のポリオキサゾリン基であり、ここでnは、好ましくは3〜500、好ましくは5〜200、そして特に好ましくは10〜100であり、そしてRは好ましくは、−CH、−Cまたは−Cである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科修復材料。
【請求項8】
前記可変物のうちの少なくとも1つが、以下の意味:
mは、1または2であり、特に好ましくは1である;
pは、1または2であり、特に好ましくは1である;
は、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C20アルキレン基であり、該アルキレン基は、O、S、NH、N、SiR、CONH、CONR、COOおよび/もしくはOCONHによって1回以上分断され得、特に好ましくはC〜C10アルキレン基であり、そして最も好ましくは、−CH−CH−または−CH−CH−NH−CH−CH−である;
は、置換または非置換の芳香族C〜C14基であり、特に好ましくは、フェニレンまたは−CH−Ph−CH−である;
は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり、特に、C〜C10アルキル基であり、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピルまたはi−プロピルであり、最も好ましくはメチルである;
SPは、ポリオキサゾリン基、ポリエステル基、ポリアミド基、ポリ尿素基、ポリウレタン基、ポリシアノアクリレート基、ポリアクリレート基、ポリアクリル酸エステル基、ポリメタクリレート基またはポリメタクリル酸エステル基である;
AGは、ホスホネート基、ホスフェート基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、アルコキシシラン基またはアルデヒド基である;
WGは、

【化77】

のピリジニウム基であって、式(I)の化合物の残りの部分にオルト位、メタ位またはパラ位で、特に好ましくはパラ位で結合している、ピリジニウム基、

【化78】

のピリジニウム基であって、オルト位、メタ位またはパラ位が、特に好ましくはパラ位が、Rで置換され得、
ここでRは、各場合において独立して、Hまたは直鎖もしくは分枝鎖のC〜C20アルキル基を表わす、ピリジニウム基;
−N
であって、ここで
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであるか;
あるいはRとRとは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロ芳香族環系または芳香族環もしくは非芳香族環、好ましくは
【化79】

を形成し、ここでR10は、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基であり;
は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは-(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
−P7’8’9’
であって、ここで
7’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基、特に好ましくは−CHであり;
8’は、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20アルキル基、好ましくは−CHであり;
9’は、存在しないか、またはH、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C31アルキル基、好ましくは−(CH−CHであり;
rは、5〜30であり、好ましくは10〜25であり、特に好ましくは10〜20であるもの;
【化80】

であって、ここで
rは、5〜30であり、好ましくは10〜30であり、特に好ましくは10〜20であるもの;あるいは
第四級アルキルホスホニウム基またはアルキルスルホニウム基、オクテニジンまたはその誘導体、クロルヘキシジンまたは別のビスグアニジン、トリクロサンまたは別のクロロフェノール、抗菌特性を有する無機基、好ましくは1つ以上の抗菌活性金属イオンを含む無機基、例えばマガイニン基または舌抗菌ペプチド(LPA)基などの抗菌ペプチド基である;
Yは、存在しないか、またはO、S、COOであり、特に好ましくは、存在しない;
Zは、存在しないか、またはO、S、NH、Nもしくはアミドであり、特に好ましくは、存在しないか、またはNH、もしくはN(CHである、
のうちの1つを有し、ここで全ての可変物は、互いに独立して選択され得る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科修復材料。
【請求項9】
少なくとも1種の式(I)の化合物で表面修飾された充填剤を含有し、AGは、好ましくはシリル基-SiR17a17b17cであり、ここでR17aは、アルコキシ、アリールオキシ、ClまたはOHから選択され、特に、アルコキシ、アリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシであり、そしてR17bおよびR17cは各々独立して、アルコキシ、アリールオキシ、Cl、OH、アルキルまたはアリールから選択され、好ましくは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルまたはアリールから選択され、特に、アルコキシまたはアリールオキシから選択され、好ましくは、メトキシ、エトキシまたはプロポキシから選択され、そして特に好ましくは、メトキシである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科修復材料。
【請求項10】
前記充填剤が、粒子状充填剤であり、特に粒子状の有機充填剤または無機充填剤であり、好ましくは、10nm〜50μm、特に好ましくは10nm〜30μm、そして非常に特に好ましくは10nm〜5μmの平均粒径を有する、請求項9に記載の歯科修復材料。
【請求項11】
(a)0.05重量%〜50重量%、好ましくは0.5重量%〜25重量%、そして特に好ましくは2重量%〜10重量%の式(I)の抗菌活性化合物;
(b)5重量%〜95重量%、好ましくは5重量%〜85重量%、そして特に好ましくは5重量%〜70重量%のラジカル重合性モノマー;および
(c)0.01重量%〜5重量%、そして好ましくは0.1重量%〜5重量%のラジカル重合用開始剤
を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の歯科修復材料。
【請求項12】
(d)0重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、そして特に好ましくは5重量%〜45重量%の酸性ラジカル重合性モノマー、および/または
(e)0重量%〜90重量%、そして好ましくは1重量%〜85重量%の充填剤、および/または
(f)0重量%〜99.95重量%、好ましくは0.5重量%〜60重量%、そして特に好ましくは1重量%〜40重量%の溶媒、および/または
(g)0重量%〜5重量%、そして好ましくは0.01重量%〜3.0重量%のさらなる添加剤
をさらに含有する、請求項11に記載の歯科修復材料。
【請求項13】
接着剤、プライマー、セメント、コーティング材料または充填材料の調製のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科修復材料の使用。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項において定義された少なくとも1種の式(I)の化合物を含有する、歯科材料。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項において定義された式(I)の化合物を含有する組成物であって、セラミック材料、貴金属および卑金属、硬い歯の組織、歯のエナメル質、象牙質、コラーゲン、軟組織、粘膜および革から選択される基材の表面が、該組成物によって修飾されることを特徴とする、組成物。
【請求項16】
接着剤、プライマー、セメント、コーティング材料または充填材料として有用な組成物であって、請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯科修復材料を含有する、組成物。

【公開番号】特開2012−167090(P2012−167090A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25897(P2012−25897)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(501151539)イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL−9494 Schaan Liechtenstein
【Fターム(参考)】