説明

抗菌消臭剤

【課題】比較的入手しやすい材料で優れた抗菌作用を有する抗菌消臭剤を提供すること。
【解決手段】塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、界面活性剤、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムがアルカリとともに水に配合されてpHが6〜7.5に調製されている。界面活性剤としては、ラウリルアミノジプロピオン酸等の両性イオン界面活性剤、およびプロピレングリコール等の非イオン系界面活性剤が配合されている。アルカリとしては、アルカリイオン水が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ベンザルコニウムを配合した抗菌消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種分野において使用可能な抗菌消臭剤としては、例えば、以下の組成
アルキルジメチル−ベンザルコニウム−クロライド
ラウリル−イミノ−ジプロピオン酸
ポリオキシ−プロピレングリコール
豆類からのエキス抽出エキス
を有するものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、上記の抗菌消臭剤よりも抗菌作用を高めたものとして、以下の組成
塩化ベンザルコニウム
ラウリルアミノプロピオン酸
プロピレングリコール
貝類エキス(アミノ酸、核酸)
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3529059号公報
【特許文献2】特開2008−279104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の抗菌消臭剤は、細胞内に浸透しにくいため、抗菌作用が十分でないという問題点がある。また、特許文献2に記載の抗菌消臭剤のように、抗菌作用を高めるにあたって、貝類エキス(アミノ酸、核酸)を用いた場合には、材料の調達に多大な手間がかかるわりには、細胞内に浸透しにくいという問題が解消されておらず、抗菌作用が十分でないという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、比較的入手しやすい材料で優れた抗菌作用を有する抗菌消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る抗菌消臭剤は、塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、および界面活性剤がアルカリとともに水に配合されてpHが6〜7.5に調製されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る抗菌消臭剤は、塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、および界面活性剤が水に配合されているため、抗菌作用および消臭作用を発揮する。また、本発明では、さらにアルカリが配合されてpHが6〜7.5に調製されているため、抗菌作用がさらに向上している。すなわち、塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、および界面活性剤を水に配合した場合、pHが低いため、抗菌作用を発揮する際、細胞内に浸透しにくいが、本発明では、アルカリの添加によって、pHが6〜7.5に調製されているので、細胞膜を通しての浸透性や、細胞膜を破壊する作用が優れている。それ故、本発明によれば、比較的入手しやすい材料で優れた抗菌作用を有する抗菌消臭剤を提供することができる。
【0009】
本発明において、前記アルカリとしては、アルカリイオン水を用いることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記アミノ酸として、グリシン、システインおよびアラニンのうちの少なくとも一つが配合されている構成を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記界面活性剤として、両性イオン界面活性剤が配合されていることが好ましい。かかる両性イオン界面活性剤として、ラウリルアミノジプロピオン酸およびラウリルアミノプロピオン酸のうちの少なくとも一方が配合されていることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記界面活性剤として、非イオン系界面活性剤が配合されていることが好ましい。かかる非イオン系界面活性剤としては、例えば、プロピレングリコールおよびポリオキシ−プロピレングリコールのうちの少なくとも一方が配合されていることが好ましい。
【0013】
本発明において、さらに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムが配合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る抗菌消臭剤は、塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、および界面活性剤が水に配合されているため、抗菌作用および消臭作用を発揮する。また、本発明では、さらにアルカリが配合されてpHが6〜7.5に調製されているため、細胞膜を通しての浸透性や細胞膜を破壊する作用が優れている。それ故、比較的入手しやすい材料で優れた抗菌作用を有する抗菌消臭剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る抗菌消臭剤は、塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、および界面活性剤がアルカリとともに水に配合されてpHが6〜7.5に調製されている。アミノ酸の配合は、グリシン、システイン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、メチオニン、トリプトファン等のアミノ酸単体を配合してもよいが、穀物からの抽出エキスとして配合してもよい。また、アミノ酸としては、上記のアミノ酸のうち、グリシン、システイン、およびアラニンのうちの少なくとも一つが配合されていることが好ましい。かかるアミノ酸によれば、優れた抗菌作用および消臭作用を発揮する。
【0016】
本発明に係る抗菌消臭剤は、界面活性剤として、両性イオン界面活性剤が配合されており、かかる両性イオン界面活性剤としては、ラウリルアミノジプロピオン酸やラウリルアミノプロピオン酸等を用いることができる。また、本発明に係る抗菌消臭剤は、界面活性剤として、両性イオン界面活性剤に加えて、非イオン系界面活性剤も配合されており、かかる非イオン系界面活性剤としては、プロピレングリコールやポリオキシ−プロピレングリコール等を用いることができる。
【0017】
また、本発明に係る抗菌消臭剤は、さらに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムも配合されている。
【0018】
本発明に係る抗菌消臭剤では、さらにアルカリが配合されており、pHが6〜7.5に調製されている。より具体的には、本発明に係る抗菌消臭剤は、例えば、以下の組成
塩化ベンザルコニウム:20〜60重量部
アミノ酸(グリシン):5〜30重量部
両性イオン界面活性剤(ラウリルアミノジプロピオン酸):1〜10重量部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:2〜10重量部
非イオン系界面活性剤(プロピレングリコール):5〜20重量部
を水に配合した原液として調製した後、水、あるいは水とアルコールとの混合溶媒によって希釈し、抗菌消臭剤として用いる。その際、アルカリを添加して、pHを6〜7.5に調製して用いる。かかるアルカリとしては、アルカリイオン水を用いることができる。
【0019】
アルカリイオン水を用いて得た抗菌消臭剤は、例えば、以下の組成
塩化ベンザルコニウム:0.4重量%
アミノ酸(グリシン):0.2重量%
両性イオン界面活性剤(ラウリルアミノジプロピオン酸):0.05重量%
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム:0.1重量部
非イオン系界面活性剤(プロピレングリコール):0.2重量%
アルカリ水:5重量%
水(精製水):残部
を有しており、そのpHは約6.8である。
【0020】
なお、アルカリイオン水とは、カルシウム剤を添加した水に電解を行って得られるアルカリ性の水である。かかるアルカリイオン水は、イオン種を自由に通過させる隔膜の両側に、カルシウム剤を添加した水を貯留し、電解する。その結果、陰極側では水酸化イオン、陽イオンおよび溶存水素が多くなり、pHが12程度のアルカリイオン水を得ることができる。
【0021】
本形態の抗菌消臭剤においては、塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、界面活性剤(両性イオン界面活性剤および非イオン系界面活性剤)が配合されているため、抗菌作用および消臭作用を発揮する。また、塩化ベンザルコニウム自身が界面活性剤として機能するとともに、両性イオン界面活性剤および非イオン系界面活性剤が配合されているので、浸透性が高く、抗菌消臭の対象物であるシーツや衣服の繊維の隙間にもスムーズに入り込んで、抗菌作用および消臭作用を発揮する。その際、アミノ酸は、塩化ベンザルコニウム、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤の毒性を緩和する機能等を発揮する。また、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムは、原液の状態での塩化ベンザルコニウムやアミノ酸等の析出を防止するとともに、それらが酸化するのを防止する安定剤として機能する。
【0022】
ここで、塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、界面活性剤等を水に配合しただけでは、pHがかなり低いため(pH=5程度)、菌の細胞内に浸透しにくいが、本発明では、アルカリの添加によって、pHが6〜7.5に調製されている。従って、本発明に係る抗菌消臭剤は、細胞膜を通しての浸透性や、細胞膜を破壊する作用が優れているので、抗菌作用に優れている。それ故、本発明によれば、比較的入手しやすい材料で優れた抗菌作用を有する抗菌消臭剤を提供することができる。
【0023】
(抗菌作用の評価結果)
まず、上記の抗菌消臭剤の原液を200倍に希釈する際、アルカリイオン水を7重量%、10重量%、15重量%、20重量%添加して抗菌消臭剤(被検液)を調製し、かかる被検液のインフルエンザウイルスに対する抗菌作用を評価した。なお、比較液としては、リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSという)を用いた。かかる評価では、ウイルスとして、flu/A/human/Wisconsin/15/30(H1N1)を用い、標的細胞としては、MDCK(Madin−Darby Canine Kindney)を用いた。
【0024】
より具体的には、まず、被検液およびPBSの450μLにウイルス液50μLを加えてよく混合し、氷上(4℃)で10分間静置した。次に、液体で処理した被検液を10倍の段階希釈で1×10-2〜10-6までのウイルス希釈液を作製した。次に、培養液をアスピレーターで抜き、12穴(12ウェル)プレートにMDCKがコンフルエントのものに1×10-2〜10-6までのウイルス希釈液を100μL/ウェルずつ滴下した。次に、二酸化炭素インキューベーターで10分毎にプレートを振とうさせ、60分間培養した。次に、各ウェルに1.5mLずつ0.5%寒天溶液を重層し、寒天が固まった後、上下反転させて二酸化炭素インキューベーターで培養した。観察しながら2日後、6%のニュートラルレッドが入った寒天溶液1.5mLを重層した。実験後、観察を行い、正しいプラックの計測ができるまで培養した。しかる後に、プラック数を計測して被検液のウイルス量(PFU/mL)を算出した。
【0025】
その結果、本発明に係る抗菌消臭剤(被検液)を用いた場合、ウイルス量は0PFU/mLであったのに対して、PBS(参照液)を用いた場合、ウイルス量は7.0×106PFU/mLであり、本発明に係る抗菌消臭剤は抗インフルエンザ作用があることが確認できた。
【0026】
なお、インフルエンザウイルスの他に、ノロウイルスの代替として、ネコカリシウイルスに対しても、本発明に係る抗菌消臭剤は抗菌作用があることが確認できた。
【0027】
(消臭作用の評価)
本発明に係る抗菌消臭剤について、アンモニアおよび硫化水素臭の消臭試験を行ったところ、本発明に係る抗菌消臭剤を用いた場合には、アンモニアおよび硫化水素臭に対して消臭作用があることが確認できた。
【0028】
(他の実施例)
上記の抗菌消臭剤において、アミノ酸をグリシンからシステインやアラニンに代えて評価を行ったが、同様な効果が得られた。また、前記の配合範囲で組成を代えて各種評価を行ったが、同様な効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ベンザルコニウム、アミノ酸、および界面活性剤がアルカリとともに水に配合されてpHが6〜7.5に調製されていることを特徴とする抗菌消臭剤。
【請求項2】
前記アルカリは、アルカリイオン水であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌消臭剤。
【請求項3】
前記アミノ酸として、グリシン、システインおよびアラニンのうちの少なくとも一つが配合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌消臭剤。
【請求項4】
前記界面活性剤として、両性イオン界面活性剤が配合されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の抗菌消臭剤。
【請求項5】
前記両性イオン界面活性剤として、ラウリルアミノジプロピオン酸およびラウリルアミノプロピオン酸のうちの少なくとも一方が配合されていることを特徴とする請求項4に記載の抗菌消臭剤。
【請求項6】
前記界面活性剤として、非イオン系界面活性剤が配合されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の抗菌消臭剤。
【請求項7】
前記非イオン系界面活性剤として、プロピレングリコールおよびポリオキシ−プロピレングリコールのうちの少なくとも一方が配合されていることを特徴とする請求項6に記載の抗菌消臭剤。
【請求項8】
さらに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムが配合されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の抗菌消臭剤。

【公開番号】特開2012−250959(P2012−250959A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126757(P2011−126757)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(598124249)エア・ウォーター・マッハ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】