説明

抗菌物質を含有する局所用組成物

明細書に記載する式Iで示されるフシジン酸誘導体および1種またはそれ以上の脂肪酸モノグリセリドを含有する局所適用用の医薬組成物。本発明の組成物は、皮膚または粘膜の疾患または状態、とりわけ皮膚感染の処置に使用しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌物質を活性成分として含有する局所適用用の医薬組成物、および皮膚疾患または粘膜疾患の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フシジン酸は、天然抗生物質の小ファミリーであるフシダンに属する。
【化1】

【0003】
フシダンは、独特の椅子-舟-椅子型立体配座を有する四環系を共通に有し、これによってステロイドから区別される。従って、ステロイドとのいくつかの構造的類似性、即ち四環系にもかかわらず、フシダンはどのようなホルモン活性も有さない。フシダンは、C-17において二重結合によって環系に結合しているカルボン酸含有側鎖、およびC-16において結合しているアセテート基も共通に有する。
【0004】
Fusidium coccineumの発酵産物であるフシジン酸は、最も抗生物質作用的に活性なフシダンの化合物であり、感染性疾患の治療に臨床的に使用されている唯一のフシダンである。フシジン酸(Fucidin(登録商標))は、急性および難治性の両疾患形態の、重度ブドウ球菌性感染症、特に骨および関節感染症の治療に、臨床的に使用されている(The Use of Antibiotics、第5版、A. KucersおよびN. McK. Bennett編、Butterworth 1997、p.580-587、およびそれに引用されている文献)。フシジン酸は、ブドウ球菌に対して最も一般的に使用されているが、いくつかの他のグラム陽性種に対しても使用されている。フシジン酸の臨床的有用性はまた、種々の組織におけるその効率的分布、低度の毒性およびアレルギー反応、および他の臨床使用抗生物質との交差耐性の不存在にある。
【0005】
フシジン酸は、ブドウ球菌によって生じる多くの皮膚および眼の感染症の局所療法に広く使用されている。それは、単剤療法として投与するか、またはペニシリン類、エリスロマイシン類またはクリンダマイシンのような一般的な抗生物質と併用して投与することができる。それは、Clostridium difficileの抑制用のバンコマイシンの代替薬としても使用されている。ブドウ球菌と比較して、いくつかの他のグラム陽性球菌は、フシジン酸に対して、より低い感受性を示す場合が多い。例えば、連鎖球菌種は一般に、フシジン酸感受性がブドウ球菌の100分の1までも低い(前記のKuchersらの文献)。他の感受性細菌は、グラム陽性嫌気性球菌、例えば、PeptococcusおよびPeptostreptococcus spp.、好気性または嫌気性グラム陽性細菌、例えば、Corynebacterium diphtheriae、Clostridium tetani、Clostridium difficileおよびClostridium perfringensを包含する。グラム陰性細菌は、Neisseria spp.およびLegionella pneumophilaを除いて、耐性である。フシジン酸は、細胞内および細胞外M. lepraeの両方に対して極めて有効である。
【0006】
EP636024には、グリセロールモノラウレートもしくはグリセロールモノミリステートまたはそれらモノグリセリドの混合物およびある特定の抗菌化合物(例えばフシジン酸)を含有する局所用の抗菌組成物が開示されている。該文献には、モノグリセリドおよび抗菌化合物は、該混合物の抗菌作用に関して相乗効果を示すことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
皮膚に局所適用する医薬組成物を製造する際、考慮すべき重要な点は、処置活性成分が賦形剤から放出され、角質層を通って生きた皮膚層(すなわち表皮および真皮)に達しなければならないということである。同様に重要な考慮すべき点は、処置活性成分が、望ましくない全身的副作用をもたらしうる全身循環へ、皮膚を通して急速に浸透すべきでないということである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、本発明に先立つ研究において、モノグリセリド含有賦形剤中にフシジン酸を含有するEP636024の組成物をバリア損傷皮膚に適用すると、吸収されたフシジン酸の大部分が皮膚を透過し、真皮および表皮には少ししか保持されないことを見出した。これに対し、本発明者は驚くべきことに、フシジン酸誘導体を対応する組成物としてバリア損傷皮膚に適用した場合には、吸収されたフシジン酸誘導体の大部分が真皮および表皮に保持され、皮膚を透過して循環に入るのはわずかに過ぎないことを見出した。
【0009】
本発明は、
下記式Iで示される化合物または薬学的に許容しうるその塩もしくは易加水分解性エステル、および
C8-18脂肪酸モノグリセリドまたはそのようなモノグリセリドの混合物を含有する薬学的に許容しうる賦形剤
を含有する局所適用用の医薬組成物に関する:
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、
Xは、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、アルキル、アルケニルまたはアリールであり、該アリールは、アルキル、アルケニル、ハロゲン、アジド、トリフルオロメチルまたはシアノによって任意に置換されていてもよく;
YおよびZは、両方とも水素であるか、またはC-17/C-20結合と一緒にC-17とC-20の間に二重結合を形成するか、または一緒にメチレンであり、C-17およびC-20と共にシクロプロパン環を形成し;
Aは、結合、O、SまたはS(O)であり;
Bは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アシル、C3-7シクロアルキルカルボニルまたはベンゾイルであり、これらは全て、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシおよびアジドから成る群から選択される1個またはそれ以上の置換基で任意に置換されていてもよく、または、Aが結合を表す場合は、Bは水素であってもよく;
Q1およびQ2は、独立に、-CH2-、-C(O)-、-(CHOH)-、-(CHOR)-、-(CHSH)-、-(NH)-、-(CHNH2)-または-(CW)-であり、ここで、RはC1-6アルキルであり、Wはハロゲン、シアノ、アジドまたはトリフルオロメチルであり;
Q3は、-CH2-、-C(O)-または-CHOH-であり;
Gは、水素、OHまたはO-CO-CH3であり;
五員環における2つの結合は実線および点線で示されて、2つの結合のどちらかが二重結合でありうることを示し、そのような場合には、Yは存在せず、Zは水素であり;
C-1とC-2の間の結合は、単結合または二重結合である]。
【0012】
式Iで示される化合物は、WO2005/007669として公開された出願人の先の出願に開示されており、その内容全体を引用により本書の一部とする。
【0013】
他の一態様において、本発明は、皮膚または粘膜の疾患または状態を予防または治療する方法であって、それを必要とする患者に前記組成物を有効量で局所投与することを含んで成る方法に関する。
【0014】
他の一態様において、本発明は、皮膚または粘膜の疾患または状態を予防または治療する医薬を製造するための前記組成物の使用に関する。
【0015】
定義
本発明に関して、「アルキル」という用語は、任意の炭素原子から水素原子を除去することによってアルカンから誘導される一価の基を意味するものとし、第一級、第二級および第三級アルキル基のサブクラスを包含し、その例は、C1〜C12アルキル、例えばC1〜C8アルキル、例えばC1〜C6アルキル、例えばC1〜C4アルキル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ノニル、ドデカニル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。アルカンは、非環式または環式、分岐鎖または非分岐鎖飽和炭化水素を意味し、従って、水素原子および炭素原子だけから成る。
【0016】
「アルケニル」という用語は、適用可能であればEまたはZ立体化学の、1個またはそれ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖非環式炭化水素を意味するものとする。この用語は、例えば、C2〜C12アルケニル、例えばC2〜C8アルケニル、C2〜C6アルケニル、ビニル、アリル、1-ブテニル、2-ブテニル、および2-メチル-2-プロペニルを包含する。
【0017】
「アシル」という用語は、式-CO-R(Rは前記のように定義されるアルキルである)で示される基を意味するものとし、例えばC1〜C6アシルである。
【0018】
「アルコキシ」という用語は、式-OR(Rは前記のように定義されるアルキルである)で示される基を意味するものとし、例えばC1〜C5アルコキシ、C1〜C3アルコキシ、メトキシ、n-プロポキシ、t-ブトキシ等である。
【0019】
「ハロゲン」という用語は、周期系の第7主族の構成員、即ち、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。クロロ、ブロモおよびヨードが本発明の化合物においてより有用である。
【0020】
「シクロアルキルカルボニル」という用語は、式-C(O)-R'(R'は前記のような環式アルキルを表す)で示される基を意味するものとする。
【0021】
「アリール」という用語は、環式、任意に縮合二環式の基を意味するものとし、それにおいて、全ての環原子は炭素であり、環は芳香族であり、または縮合環系の場合は、少なくとも1個の環が芳香族である。アリールの例は、フェニル、ナフチルおよびテトラリニルである。
【0022】
「易加水分解性エステル」という語句は、本明細書において、アルカノイルオキシアルキル、アラルカノイルオキシアルキル、アロイルオキシアルキル、例えば、アセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、ベンゾイルオキシメチルエステルおよび対応する1'-オキシエチル誘導体、またはアルコキシカルボニルオキシアルキルエステル、例えばメトキシカルボニルオキシメチルエステルおよびエトキシカルボニルオキシメチルエステル、および対応する1'-オキシエチル誘導体、またはラクトニルエステル、例えばフタリジルエステル、またはジアルキルアミノアルキルエステル、例えばジエチルアミノエチルエステルを意味する。「易加水分解性エステル」という語句は、本発明化合物の生体内加水分解性エステルを包含する。そのようなエステルは、当業者に既知の方法を使用して製造しうる(参照として本明細書に組み入れられるGB特許第1490852号参照)。
【0023】
用語「モノグリセリド」は、C8-18脂肪酸、例えばミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、パルミトレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸またはオレイン酸のグリセリルモノエステルを意味するものとする。この用語は、モノグリセリドのプロピレングリコールエステル、例えばプロピレングリコールカプリレートまたはプロピレングリコールラウレートをも包含するものとする。
【0024】
用語「カルボマー」は、糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテル(例えばペンタエリスリトールのアリルエーテル、スクロースのアリルエーテル)で架橋したアクリル酸ポリマーを意味するものとする。適当なカルボマーの例は、カルボマー910、カルボマー934、カルボマー934P、カルボマー940、カルボマー941、カルボマー971P、カルボマー974P、カルボマー980またはカルボマー981を包含する。用語「カルボマー」は、ペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したアクリル酸と長鎖アルキルメタクリレートのコポリマー、例えばカルボマー1342、カルボポール(Carbopol、登録商標)1382、カルボポール2984またはカルボポール5984をも包含しうる。
【0025】
用語「ポリキサマー」は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、例えばポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338またはポロキサマー407を意味するものとする。
【0026】
用語「マクロゴール」は、ポリエチレングリコールを意味するものとし、以下、それと同義に用いる。
【0027】
用語「バリア損傷皮膚」は、外層である角質層が正常(intact)ではない皮膚を意味するものとする。バリア損傷は、感染または湿疹のような疾患の結果でありうるか、または人工的に引き起こしたもの(例えば後述の実施例3に記載するようなテープ剥離による)でありうる。バリア損傷皮膚は正常皮膚と比較して、外来物質の透過性がより高く、水分の経表皮損失がより多い。
【0028】
好ましい式Iの化合物
式Iで示される化合物はWO2005/007669に開示されており、該文献にはその化合物の合成方法および使用方法も詳細に記載されている。WO2005/07669の内容全体を引用により本書の一部とする。
【0029】
好ましい式Iの化合物は、YおよびZが両方とも水素で、C-17およびC-20のいずれの立体化学配置もSであるものである。
式Iの化合物において、Aは好ましくはOまたはS(O)でありうる。
式Iの化合物において、Xは好ましくはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、アジドまたはトリフルオロメチルでありうる。
【0030】
式Iの化合物において、Q1およびQ2は独立に-C(O)-および-(CHOH)-であり得、あるいはQ1は、CHF、CHCl、CHBr、CHIまたはCHN3でありうる。特に好ましい態様においては、式Iの化合物において、Q1もしくはQ2、またはQ1およびQ2の両方が、-(COH)-を表し、C-3およびC-11のいずれの立体化学配置もαである。
【0031】
好ましい式Iの化合物において、
Q1およびQ2が両方とも-(CHOH)-基であるか、またはQ1またはQ2の1つが-(CO)-であるか、またはQ1がCHF、CHCl、CHBr、CHIまたはCHN3であり得;
Xが、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、アジドまたはシアノであり得;
ZおよびYが、C-17/C-20結合と一緒にC-17とC-20の間に二重結合を形成し;
Aが酸素であり;
BがC1-4アルキル基であり得、該基は、アジド、ヒドロキシ、フルオロ、クロロおよびブロモから成る群から選択される1個またはそれ以上の置換基で任意に置換されていてもよく、またはBがC1-4アシル基またはベンゾイル基を表し、両基は、1個またはそれ以上のハロゲン原子、特にクロロまたはブロモで任意に置換されていてもよい。
【0032】
すなわち、式Iの化合物において、Bは、エチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-アジドエチル、2-ヒドロキシエチル、プロピル、t-ブチル、イソプロピル、1,3-ジフルオロイソプロピル、アセチル、プロピオニル、クロロアセチルまたはトリフルオロアセチルでありうる。
【0033】
式Iの化合物の特定の例は、下記化合物から成る群から選択される:
24-トリフルオロメチルフシジン酸ナトリウム塩;
24-トリフルオロメチルフシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-クロロ-フシジン酸;
24-クロロ-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-クロロ-フシジン酸ナトリウム塩;
24-トリフルオロメチルフシジン酸;
24-ブロモ-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-フシジン酸;
24-ブロモ-フシジン酸ナトリウム塩;
24-ブロモ-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
【0034】
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-チオアセチル-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-イソプロピルチオ-フシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-イソプロピルスルフィニル-フシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-チオアセチル-フシジン酸;
24-ブロモ-17S,20S-ジヒドロフシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-エトキシ-フシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-エトキシ-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-(2',2',2'-トリフルオロエトキシ)-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-(2',2',2'-トリフルオロエトキシ)-フシジン酸;
【0035】
24-ブロモ-17S,20S-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-17S,20S-メチレン-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-17S,20S-メチレン-フシジン酸;
3-デオキシ-3β,24-ジブロモ-フシジン酸;
3α-アジド-24-ブロモ-3-デオキシ-フシジン酸;
24-ヨード-フシジン酸;
24-ヨード-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ヨード-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
【0036】
24-フェニル-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-フェニル-フシジン酸;
24-(4-ブロモフェニル)-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-(4-ブロモフェニル)-フシジン酸;
24-(4-クロロフェニル)-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-(4-クロロフェニル)-フシジン酸;
24-(3,5-ジフルオロフェニル)-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-(3,5-ジフルオロフェニル)-フシジン酸;および
3-デオキシ-3β,24-ジブロモ-フシジン酸アセトキシメチルエステル。
【0037】
式Iの化合物を含有する好ましい組成物
本発明の組成物中に存在するモノグリセリドは、好ましくは、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノオレエート、プロピレングリコールカプリレート、プロピレングリコールラウレートまたはプロピレングリコールモノラウレートから選択する。モノグリセリドはとりわけ、グリセリルモノミリステートもしくはグリセリルモノラウレートまたはそれらの混合物から選択しうる。
【0038】
好ましい態様において、モノグリセリドはグリセリルモノミリステートおよびグリセリルモノラウレートの混合物から成る。この組成において、グリセリルモノミリステートとグリセリルモノラウレートとの比は、好ましくは約1:5ないし5:1、特に約1:4ないし4:1、好ましくは約1:3ないし3:1、例えば約1:2ないし2:1(例えば約1:2、約1:1、約2:1または約3:1)でありうる。
【0039】
好ましい態様において、本発明の組成物は、組成物の水相と脂質相とが高温(例えば約25℃を越える温度)で分離するのを防ぐよう機能する安定剤をも含有する。驚くべきことに、組成物に安定剤を加えた場合、バリア損傷皮膚への組成物の適用後、より多量の式Iの化合物が真皮および表皮に保持されることがわかった。特定の理論に限定することを意図するものではないが、現在考えられるのは、安定剤が生体付着作用を有し、これが皮膚との接触の改善または皮膚接触時間の延長を促進し得、その結果、真皮および表皮における式Iの化合物の保持時間延長が観察される、ということである。
【0040】
安定剤は、カルボマー、ポロキサマー、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールから選択しうる。適当なカルボマーの例は、カルボマー910、カルボマー934、カルボマー934P、カルボマー940、カルボマー941、カルボマー971P、カルボマー974P、カルボマー980、カルボマー981、カルボマー1342、カルボポール1382、カルボポール5984またはカルボポール2984を包含する。適当なセルロース誘導体の例は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)またはカルボキシメチルセルロース(CMC)を包含する。適当なポロキサマーの例は、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポリキサマー237、ポロキサマー338またはポロキサマー407を包含する。適当なポリビニルピロリドンは分子量(Mw)が7000〜1500000の範囲にあるものを包含する。適当なポリビニルアルコールは、分子量(Mw)が30000〜200000の範囲にあるものを包含する。
【0041】
本発明の組成物は、乳化剤をも含有しうる。適当な乳化剤は、ポリエチレングリコールステアレート(例えばPEG−100−ステアレートまたはマクロゴール40ステアレート)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(例えばステアレス20)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセトステアリルエーテル、ポリソルベート、ソルビタンオレエート、セチルアルコールまたはセトステアリルアルコールから選択しうる。
【0042】
本発明の組成物は、皮膚に適用する局所用製剤中に用いられる他の成分をも含有しうる。そのような成分の例は、溶媒(例えば水もしくはアルコールまたはそれらの混合物)、酸化防止剤(例えばα−トコフェロールまたはアスコルビン酸)、エモリエント(例えば流動パラフィン、白色軟パラフィン、ラノリン、イソプロピルミリステート、中鎖トリグリセリド、硬化ヒマシ油、ジメチコン)、保存剤(例えばジアゾリジニル尿素、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム)、pH調節剤(例えば水酸化ナトリウム、塩酸またはクエン酸)、皮膚緩和(鎮痛)剤、皮膚治癒剤および皮膚調整剤、例えば尿素、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはビサボロールである(CFTA Cosmetic Ingredients Handbook, 第2版, 1992参照)。
【0043】
本発明によると、本発明の組成物は、許容しうる薬学的手法に従って(例えばA. Williams, Transdermal and Topical Delivery Systems, Pharmaceutical Press, ロンドンおよびシカゴ, 2003に記載されるように)、皮膚科学的に許容しうる賦形剤中の懸濁剤または溶液剤として式Iの化合物を製剤化したものから成りうる。すなわち、本発明の組成物は、クリーム、軟膏、ローション、リニメント、ゲル、スプレー、フォーム、懸濁液または溶液を包含する、皮膚適用に適当な任意の局所用製剤の形態でありうる。本発明の組成物は、化粧用に一般に受け入れられ易い水性のゲルまたはクリームの形態であることが好ましい。
【0044】
本発明の組成物のpHは、皮膚表面のpHまたはそれに近いこと、すなわち4.0〜7.0の範囲、とりわけ4.5〜6.0の範囲にあることが好ましい。
【0045】
前記のように、驚くべきことに、本発明のモノグリセリド含有賦形剤中に製剤化した式Iの化合物(以下「活性成分」という)は、モノグリセリドを含有しない従来の軟膏またはクリーム賦形剤中の化合物の製剤と比較して、改善された皮膚浸透性を有することがわかった。また、本発明の組成物をバリア損傷皮膚に適用すると、フシジン酸を含有する対応するモノグリセリド組成物と比較して、真皮および表皮における活性成分の保持率が高いこともわかった。
【0046】
すなわち、後述の実施例3に報告する、バリア損傷皮膚への異なる放射ラベル組成物の浸透を調べる実験からわかるように、活性成分を本発明のモノグリセリド賦形剤中に製剤化した場合、活性成分総適用量の約50%が皮膚に浸透するのに対し、従来のクリーム賦形剤中に製剤化した活性成分は総適用量の約25%、従来の軟膏賦形剤中に製剤化した活性成分は総適用量の約10%が皮膚に浸透するに過ぎなかった。一方、本発明の2種の異なるモノグリセリド組成物中に製剤化した場合、それぞれ、活性成分総適用量の約10%および約15%が皮膚を透過する(すなわち全身的に利用可能となる可能性がある)のに対し、モノグリセリド組成物中に製剤化したフシジン酸は約35%も皮膚を透過する。したがって、式Iの化合物を含有する本発明のモノグリセリド組成物は、真皮および表皮における式Iの活性化合物の保持率が高いことから、皮膚のバリア損傷を伴う疾患または状態、例えば皮膚感染または皮膚感染に関連する疾患、例えば膿痂疹、ざ瘡、皮膚炎、蜂巣炎、毛嚢炎または表在性の創傷もしくは傷害、またはStaphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Corynebacterium xerosis、Staphylococcus epidermidisもしくはPropionibacterium acnesの株によって起こるかもしくはその存在が関与する皮膚もしくは粘膜の感染の場合に、皮膚に適用するのに特に適当である。
【0047】
本発明組成物中の式Iの化合物の量は、約10〜40mg/g賦形剤、好ましくは約15〜30mg/g賦形剤、とりわけ約20〜25mg/g賦形剤の範囲でありうると考えられる。
【0048】
本発明によると、本発明の組成物は、1種またはそれ以上の更なる活性成分を含有しうる。更なる活性成分は以下のものを包含するが、それに限定されない:抗菌剤、例えばムピロシン、または抗炎症剤、例えばコルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾン、クロベタゾール、ベタメタゾン、クロベタゾン、デソキシメタゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、ジフロラゾン、フルメタゾン、フルオシノロン、フルチカゾン、フルプレドニデン、ハルシノニド、モメタゾン、トリアミムシノロン、または薬学的に許容しうるそれらのエステル)、ニコチンアミドもしくはその誘導体、またはカルシニューリン阻害剤(例えばタクロリムスまたはピメクロリムス)。
【0049】
本発明を以下の実施例においてさらに詳細に説明する。実施例は、特許請求の範囲に係る本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0050】
モノグリセリド組成物A

【0051】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(グリセリルモノミリステートおよびグリセリルモノラウレート)と混合した。水相の一部をクエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、グリセロール(85%)およびジアゾリジニル尿素と混合し、前記クリーム混合物にホモジナイズしながら加えた。クリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。pHを約5とした。乳鉢と乳棒を用いて、そのクリーム賦形剤に24−ブロモ−フシジン酸を加えた。
【0052】
実施例3に記載する皮膚浸透試験に使用するラベルした製剤を調製するために、11−H 24−ブロモ−フシジン酸を、対応する冷却したクリーム賦形剤に乳鉢と乳棒を用いて加えた。11−H 24−ブロモ−フシジン酸は、対応する11−ケト化合物を弱塩基性条件下(1M水酸化ナトリウムでpH8.0に調節)にメタノール中でNaBTで還元することによって合成し、次いでクロマトグラフィーにより精製した。組成物の放射能を5MBq/gに調節した。
【0053】
モノグリセリド組成物B

【0054】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、ブチルヒドロキシアニソール)と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素およびカルボマー974Pと混合し、前記クリーム混合物に撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。クリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。乳鉢と乳棒を用いて、そのクリーム賦形剤に24−ブロモ−フシジン酸を加えた。
【0055】
実施例3に記載する皮膚浸透試験に使用するラベルした製剤を調製するために、11−H 24−ブロモ−フシジン酸を、対応する冷却したクリーム賦形剤に乳鉢と乳棒を用いて加えた。11−H 24−ブロモ−フシジン酸は、モノグリセリド組成物Aに関して記載したように調製した。組成物の放射能を5MBq/gに調節した。
【0056】
モノグリセリド組成物C

【0057】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステートおよびマクロゴール40ステアレート)と混合した。そのクリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素およびカルボマー974Pと混合し、前記クリーム混合物に撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。乳鉢と乳棒を用いて、そのクリーム賦形剤に24−ブロモ−フシジン酸を加えた。
【0058】
モノグリセリド組成物D

【0059】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステートおよびマクロゴール40ステアレート)と混合した。そのクリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素およびカルボマー974Pと混合し、前記クリーム混合物に撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。乳鉢と乳棒を用いて、そのクリーム賦形剤に24−ブロモ−フシジン酸を加えた。
【0060】
参照組成物1

【0061】
水相(水、グリセロール(85%)およびソルビン酸カリウム)を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(セチルアルコール、流動パラフィン、ポリソルベート60および白色軟パラフィン)と混合した。pHを約5に調節した。クリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。
【0062】
ラベルした製剤を調製するために、モノグリセリド組成物Aに関して記載したように調製した11−H 24−ブロモ−フシジン酸を、対応する冷却したクリーム賦形剤に乳鉢と乳棒を用いて加えた。組成物の放射能を5MBq/gに調節した。
【0063】
参照組成物2

【0064】
成分をホモジナイズしながら溶融および混合した。その軟膏を撹拌しながら冷却した。モノグリセリド組成物Aに関して記載したように調製した11−H 24−ブロモ−フシジン酸(ナトリウム塩として)を、軟膏賦形剤に乳鉢と乳棒を用いて加えた。組成物の放射能を5MBq/gに調節した。
【0065】
参照組成物3

【0066】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(グリセリルモノミリステートおよびグリセリルモノラウレート)と混合した。水相の一部をクエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、グリセロール(85%)およびジアゾリジニル尿素と混合し、前記クリーム混合物にホモジナイズしながら加えた。クリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。
【0067】
ラベルした製剤を調製するために、11−H フシジン酸(半水和物として)を、対応する冷却したクリーム賦形剤に乳鉢と乳棒を用いて加えた。11−Hフシジン酸は、対応する11−ケト化合物を弱塩基性条件下(1M水酸化ナトリウムでpH8.0に調節)にメタノール中でNaBTで還元することによって合成し、次いでクロマトグラフィーにより精製した。組成物の放射能を5MBq/gに調節した。
【実施例2】
【0068】
モノグリセリド賦形剤組成物
賦形剤組成物I

【0069】
グリセロール(85%)を含む水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(グリセリルモノラウレートおよびグリセリルモノミリステート)と混合した。水相の一部をジアゾリジニル尿素、クエン酸ナトリウムおよび一水和物と混合し、pHを約5に調節し、この混合物を前記クリーム混合物に約55〜65℃でホモジナイズしながら加えた。クリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。
【0070】
賦形剤組成物II

【0071】
グリセロール(85%)を含む水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相(グリセリルモノラウレートおよびグリセリルモノミリステート)と混合した。水相の一部をジアゾリジニル尿素、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸一水和物と混合し、pHを約5に調節し、この混合物を前記クリーム混合物に約55〜65℃でホモジナイズしながら加えた。クリーム混合物を撹拌しながら室温に冷却した。
【0072】
賦形剤組成物III

【0073】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素およびカルボマー974Pと混合し、前記クリーム混合物に約30℃で撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。
【0074】
賦形剤組成物IV

【0075】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素およびカルボマー974Pと混合し、前記クリーム混合物に約30℃で撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。
【0076】
賦形剤組成物V

【0077】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素およびカルボマー974Pと混合し、前記クリーム混合物に約30℃で撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。
【0078】
賦形剤組成物VI

【0079】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、HCl(pH5とする)と混合し、前記クリーム混合物に約50〜60℃で撹拌しながら加えた。得られたクリームを撹拌しながら冷却した。
【0080】
賦形剤組成物VII

【0081】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、HCl(pH5とする)と混合し、前記クリーム混合物に約50〜60℃で撹拌しながら加えた。得られたクリームを撹拌しながら冷却した。
【0082】
賦形剤組成物VIII

【0083】
水相の一部およびグリセロール(85%)を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をジアゾリジニル尿素、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウムと混合し、前記クリーム混合物に撹拌および冷却しながら加えた。
【0084】
賦形剤組成物IX

【0085】
水相の一部およびグリセロール(85%)を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をジアゾリジニル尿素、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウムと混合し、前記クリーム混合物に撹拌および冷却しながら加えた。
【0086】
賦形剤組成物X

【0087】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素、ポロキサマー407と混合し、前記クリーム混合物に約30℃で撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。
【0088】
賦形剤組成物XI

【0089】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素、ポロキサマー407と混合し、前記クリーム混合物に約30℃で撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。
【0090】
賦形剤組成物XII

【0091】
水相の一部を約70℃に加熱し、ホモジナイズしながら溶融油相と混合した。水相の一部をグリセロール(85%)、ジアゾリジニル尿素、ナトリウムカルボキシメチルセルロースと混合し、前記クリーム混合物に約30℃で撹拌しながら加えた。pHを約5に調節した。
【0092】
本発明の医薬組成物を調製するために、上記賦形剤組成物I〜XIIに、活性成分、例えば24−ブロモ−フシジン酸(20mg)をホモジナイズしながら加え、次いでpH約5に調節した後、室温に冷却することができる。別法として、乳鉢と乳棒を用いて、冷却したクリーム賦形剤に活性成分を加えることができる。
【実施例3】
【0093】
インビトロ皮膚浸透試験
本試験においては、ブタ耳の皮膚全層を使用した。耳を使用するまで−18℃で冷凍保存した。実験前日に耳をゆっくりと解凍するように冷蔵庫(5±3℃)に入れた。実験当日に動物用ヘアトリマーを用いて除毛した。外科用メスを用いて皮膚の皮下脂肪を除去し、各耳から2片の皮膚を切り出し、バランスよくフランツ拡散セルに配置した。
【0094】
バリア損傷をもたらすために、D-Squame(登録商標)テープ(直径22mm、CuDerm Corp.、米国テキサス州ダラス)を用いて皮膚上でテープ剥離を25回行った。各テープを試験域に標準の圧力で5秒間押し付け、穏やかな連続的動作で一どきに試験域から剥がした。剥がす方向は、剥がす度に変えた。
【0095】
静置型フランツ型拡散セル(利用可能な拡散面積3.14cm、およびレセプター容積8.6〜11.1ml)を、実質的に、T.J. Franz, “The finite dose technique as a valid in vitro model for the study of percutaneous absorption in man”, Current Problems in Dermatology, 1978, J.W.H. Mall(編), Karger, Basel, 第58〜68頁に記載される方法で使用した。セル毎の特定の体積を測定し、記録した。磁気撹拌子を各セルのレセプターコンパートメントに入れた。皮膚を配置した後、皮膚の水和のために各レセプターチャンバーを生理食塩液(35℃)で満たした。400rpmに設定した磁気撹拌機上に置いた温度調節水浴にセルを入れた。水浴中を循環する水を35±1℃に保ち、それにより、皮膚表面温度を約32℃とした。1時間後、生理食塩液を、レセプター媒質である0.04M等張リン酸緩衝液(pH7.4、35℃)で置き替えた。シンク条件は実験期間中、常に維持した;すなわち、レセプター媒質中の活性化合物濃度を、媒質中の化合物の溶解度の10%未満とした。
【0096】
フシジン酸および24−ブロモフシジン酸をそれぞれ、実施例1に記載したようにHでラベルした後、各試験組成物(モノグリセリド組成物AおよびB、並びに参照組成物1、2および3)に加えた。各試験組成物のインビトロ皮膚浸透を6重に(すなわちn=6)試験した。各放射性組成物の2重のサンプルを分析し、組成物の放射能を試験するための参照として用いた。各試験組成物を4mg/cmの所定用量で、時間0において皮膚膜に適用した。適用にはガラススパチュラを使用し、実際に皮膚に適用された組成物の量を知るために残留組成物量を測定した。
【0097】
皮膚浸透実験は21時間にわたって行った。その後、下記コンパートメントからサンプルを採取した。
(1)拡散セルのドナー部分内側の過剰な組成物および皮膚表面上の過剰な組成物を、綿棒およびTranspore(登録商標)テープ(米国ミネアポリスの3M Healthcareから入手可能)による2回のテープ剥離によって集めた。
(2)高湿度で60℃に3分間暴露した後、生存表皮を分離した。
(3)真皮を小片に切断し、複数のシンチレーションバイアルに分け入れた。
(4)試験域周囲の皮膚を小片に切断し、側方皮膚拡散に関する情報を得るために別に分析した。
(5)レセプター液のサンプル(1.0ml、n=2)を分析した。
【0098】
サンプルの放射能の測定を、液体シンチレーションカウンター(Packard LSA 2100)を用いて行った。サンプル中の放射能を、1分間当たりの壊変数(DPM)として表し、DPM値をngの活性化合物として計算した。21時間後の皮膚サンプルにおける活性化合物分布、すなわち、生存表皮、真皮およびレセプター液中に存在する、ナノモル/cmおよび適用用量の%として表される量を求めた。さらに、拡散セルのドナー部分および皮膚表面上の過剰組成物中の活性化合物量、並びに試験域周囲の皮膚における活性化合物量(すなわち側方拡散)をも求めた。
【0099】
結果を表1に示す。表1には、モノグリセリド組成物AおよびB並びに参照組成物1、2および3を局所適用した後の総量バランスを示す。
【0100】
【表1】

【0101】
上記結果に基づいて結論付けられるのは、モノグリセリド組成物AおよびBからの11−H 24−ブロモ−フシジン酸の皮膚浸透は、11−H 24−ブロモ−フシジン酸を従来のクリームおよび軟膏賦形剤中に配合した場合(それぞれ参照組成物1および2)よりも顕著に高いということである。さらに、真皮および表皮中の11−H 24−ブロモ−フシジン酸の保持の程度は、モノグリセリド組成物中の11−Hフシジン酸よりも顕著に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで示される化合物または薬学的に許容しうるその塩もしくは易加水分解性エステル、および
C8-18脂肪酸モノグリセリドまたはそのようなモノグリセリドの混合物を含有する薬学的に許容しうる賦形剤
を含有する局所適用用の医薬組成物:
【化1】

[式中、
Xは、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、アルキル、アルケニルまたはアリールであり、該アリールは、アルキル、アルケニル、ハロゲン、アジド、トリフルオロメチルまたはシアノによって任意に置換されていてもよく;
YおよびZは、両方とも水素であるか、またはC-17/C-20結合と一緒にC-17とC-20の間に二重結合を形成するか、または一緒にメチレンであり、C-17およびC-20と共にシクロプロパン環を形成し;
Aは、結合、O、SまたはS(O)であり;
Bは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アシル、C3-7シクロアルキルカルボニルまたはベンゾイルであり、これらは全て、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシおよびアジドから成る群から選択される1個またはそれ以上の置換基で任意に置換されていてもよく、または、Aが結合を表す場合は、Bは水素であってもよく;
Q1およびQ2は、独立に、-CH2-、-C(O)-、-(CHOH)-、-(CHOR)-、-(CHSH)-、-(NH)-、-(CHNH2)-または-(CW)-であり、ここで、RはC1-6アルキルであり、Wはハロゲン、シアノ、アジドまたはトリフルオロメチルであり;
Q3は、-CH2-、-C(O)-または-CHOH-であり;
Gは、H、OHまたはO-CO-CH3であり;
五員環における2つの結合は実線および点線で示されて、2つの結合のどちらかが二重結合でありうることを示し、そのような場合には、Yは存在せず、Zは水素であり;
C-1とC-2の間の結合は、単結合または二重結合である]。
【請求項2】
モノグリセリドが、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノオレエート、プロピレングリコールカプリレートまたはプロピレングリコールラウレートである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
モノグリセリドが、グリセリルモノミリステートもしくはグリセリルモノラウレートまたはそれらの混合物である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
モノグリセリドが、グリセリルモノミリステートおよびグリセリルモノラウレートの混合物である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
グリセリルモノミリステートとグリセリルモノラウレートとの比が、約1:5ないし5:1、特に約1:4ないし4:1、好ましくは約1:3ないし3:1、例えば約1:2ないし2:1、例えば約1:2、約1:1、約2:1または約3:1である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
安定剤をも含有する請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
安定性が、カルボマー、ポロキサマー、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
カルボマーが、カルボマー910、カルボマー934、カルボマー934P、カルボマー940、カルボマー941、カルボマー971P、カルボマー974P、カルボマー980、カルボマー981、カルボマー1342、カルボポール1382、カルボポール5984またはカルボポール2984である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)またはカルボキシメチルセルロース(CMC)である請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
ポロキサマーが、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポリキサマー237、ポロキサマー338またはポロキサマー407である請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
ポリビニルピロリドンが、7000〜1500000の範囲の分子量(Mw)を有する請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
ポリビニルアルコールが、30000〜200000の範囲の分子量(Mw)を有する請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
乳化剤をも含有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
乳化剤が、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセトステアリルエーテル、ポリソルベート、ソルビタンオレエート、セチルアルコールおよびセトステアリルアルコールから成る群から選択される請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
式Iの化合物において、YおよびZが両方とも水素で、C-17およびC-20のいずれの立体化学配置もSである請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
式Iの化合物において、AがOまたはS(O)である請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
式Iの化合物において、Xがフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、アジドまたはトリフルオロメチルである請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
式Iの化合物において、Q1およびQ2が独立に-C(O)-または-(CHOH)-である請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
式Iの化合物において、Q1がCHF、CHCl、CHBr、CHIまたはCHN3である請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
式Iの化合物において、
Q1およびQ2が両方とも-(CHOH)-基であるか、またはQ1またはQ2の1つが-(CO)-であるか、またはQ1がCHF、CHCl、CHBr、CHIまたはCHN3であり;
Xが、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、アジドまたはシアノであり;
ZおよびYが、C-17/C-20結合と一緒にC-17とC-20の間に二重結合を形成し;
Aが酸素であり;
BがC1-4アルキル基であり、該基は、アジド、ヒドロキシ、フルオロ、クロロおよびブロモから成る群から選択される1個またはそれ以上の置換基で任意に置換されていてもよく、またはBがC1-4アシル基またはベンゾイル基であり、両基は、1個またはそれ以上のハロゲン原子で任意に置換されていてもよい、
請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
B上の任意の置換基であるハロゲン原子がクロロまたはブロモである請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
式Iの化合物において、Bが、エチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-アジドエチル、2-ヒドロキシエチル、プロピル、t-ブチル、イソプロピル、1,3-ジフルオロイソプロピル、アセチル、プロピオニル、クロロアセチルまたはトリフルオロアセチルである請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
式Iの化合物において、Q1もしくはQ2、またはQ1およびQ2の両方が、-(COH)-を表し、C-3およびC-11のいずれの立体化学配置もαである請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
式Iの化合物が下記化合物から成る群から選択される請求項1に記載の組成物:
24-トリフルオロメチルフシジン酸ナトリウム塩;
24-トリフルオロメチルフシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-クロロ-フシジン酸;
24-クロロ-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-クロロ-フシジン酸ナトリウム塩;
24-トリフルオロメチルフシジン酸;
24-ブロモ-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-フシジン酸;
24-ブロモ-フシジン酸ナトリウム塩;
24-ブロモ-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-チオアセチル-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-イソプロピルチオ-フシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-イソプロピルスルフィニル-フシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-チオアセチル-フシジン酸;
24-ブロモ-17S,20S-ジヒドロフシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-エトキシ-フシジン酸;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-エトキシ-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-(2',2',2'-トリフルオロエトキシ)-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-16-デアセトキシ-16β-(2',2',2'-トリフルオロエトキシ)-フシジン酸;
24-ブロモ-17S,20S-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-17S,20S-メチレン-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ブロモ-17S,20S-メチレン-フシジン酸;
3-デオキシ-3β,24-ジブロモ-フシジン酸;
3α-アジド-24-ブロモ-3-デオキシ-フシジン酸;
24-ヨード-フシジン酸;
24-ヨード-フシジン酸アセトキシメチルエステル;
24-ヨード-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-フェニル-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-フェニル-フシジン酸;
24-(4-ブロモフェニル)-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-(4-ブロモフェニル)-フシジン酸;
24-(4-クロロフェニル)-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-(4-クロロフェニル)-フシジン酸;
24-(3,5-ジフルオロフェニル)-フシジン酸ピバロイルオキシメチルエステル;
24-(3,5-ジフルオロフェニル)-フシジン酸;および
3-デオキシ-3β,24-ジブロモ-フシジン酸アセトキシメチルエステル。
【請求項25】
ゲルまたはクリームである請求項1〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
pHが4.0〜7.0の範囲、とりわけ約4.5〜6.0の範囲にある請求項1〜25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
式Iの化合物の含有量が約10〜40mg/g賦形剤、好ましくは約15〜30mg/g賦形剤、とりわけ約20〜25mg/g賦形剤の範囲である請求項1〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
皮膚または粘膜の疾患または状態を予防または治療する医薬を製造するための請求項1〜27のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項29】
疾患または状態が、皮膚感染または皮膚感染に関連する疾患、例えば膿痂疹、ざ瘡、皮膚炎、蜂巣炎、毛嚢炎または表在性の創傷もしくは傷害、またはStaphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Corynebacterium xerosis、Staphylococcus epidermidisもしくはPropionibacterium acnesの株によって起こるかもしくはその存在が関与する皮膚もしくは粘膜の感染である請求項28に記載の使用。
【請求項30】
皮膚または粘膜の疾患または状態を予防または治療する方法であって、それを必要とする患者に請求項1〜27のいずれかに記載の組成物を有効量で局所投与することを含んで成る方法。
【請求項31】
疾患または状態が、皮膚感染または皮膚感染に関連する疾患、例えば膿痂疹、ざ瘡、皮膚炎、蜂巣炎、毛嚢炎または表在性の創傷もしくは傷害、またはStaphylococcus aureus、Streptococcus pyogenes、Corynebacterium xerosis、Staphylococcus epidermidisもしくはPropionibacterium acnesの株によって起こるかもしくはその存在が関与する皮膚もしくは粘膜の感染である請求項30に記載の方法。

【公表番号】特表2009−526765(P2009−526765A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552677(P2008−552677)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000049
【国際公開番号】WO2007/087806
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(508069752)レオ ファーマ アクティーゼルスカブ (22)
【Fターム(参考)】