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抗菌物質及びこれを含む医薬等
説明

抗菌物質及びこれを含む医薬等

【課題】この発明は、梅加工食品を製造する際に副産物として生じる梅酢の利用をより促進するとともに、安全で抗菌活性の強い抗菌物質を提供する。また、強い抗菌活性を備えた医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、飼料を提供する。
【解決手段】この発明の抗菌物質は、梅酢から調製した梅酢ポリフェノール、梅酢ポリフェノールを加水分解して得られる梅酢ポリフェノール加水分解物、又は梅酢ポリフェノールの構成成分である梅酢ポリフェノールアグリコンを含み、高い抗菌活性と安全性を有するものである。また、この発明の医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、飼料は、この発明の抗菌物質を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梅酢ポリフェノールなどの梅酢由来成分を有効成分とする抗菌物質及びこれを含む医薬品等に関する。
【0002】
近年、生活の様々な場面で、微生物が関与する事象が大きな問題として取り上げられている。例えば、食中毒菌として知られるカンピロバクターや、大腸菌O‐157などは、時には深刻な病態を引き起こし、ギランバレー症候群や出血性腎炎などの病気につながるなど、決しておろそかにできないものである。また、口腔内の微生物は、歯のう蝕のみならず、歯周病を引き起こし、これが生活習慣病の原因となることが明らかになっており、口腔内の衛生は重要な問題である。
【0003】
さて、日本では、梅は主に梅干として長らく消費されてきたが、最近では梅酒、梅肉エキス、梅果汁、菓子類にと、様々な形で利用されるようになってきている。梅は健康によい果物として位置づけられており、梅干は漬物として食卓にのぼるほか、消化不良や食あたりなどの消化器系疾患が発症した際にも、梅の果肉を加熱濃縮した「梅肉エキス」などが民間伝承薬的に使用されている。また、中国では、未成熟のウメ果実を燻して「鳥梅」という漢方薬にし、消化器系疾患の治療に使用している。さらに、梅の味はその清涼感から歯磨き、チューンガムなどの口腔用剤としても使用されている。
【0004】
このように、梅が消化器系疾患の治療や口腔用剤として使用されるのは、梅が持つ抗菌活性が大きく関与していると考えられており、様々な研究結果が報告されている。例えば、七山征子は、「梅肉エキス」に抗菌活性があることを報告している(非特許文献1を参照。)。また、Otsuka Tらはスナネズミにヘリコバクター・ピロリ菌を感染させて起きる腺胃の病変が、「梅肉エキス」の投与により抑えられることを報告している(非特許文献2を参照。)。さらに、Chen Yらは「鳥梅」の抗菌活性を報告している(非特許文献3を参照。)。
【0005】
このような研究とならんで、「梅肉エキス」や「鳥梅」の抗菌活性が生じる原因についても研究されており、クエン酸などの有機酸が主な原因であると考えらえられている。これは「梅肉エキス」や「鳥梅」が梅の果実を直接加工したものであり、これら加工品は相当量の有機酸を含んでいるからである。
【0006】
実際、梅果実のクエン酸などの有機酸含有量が4〜6%程度であるのに対して、「梅肉エキス」は梅果肉を加熱濃縮したものであるため、有機酸含量は通常50重量%程度に達する。また、「鳥梅」も有機酸を相当量含んでいる。
【0007】
また、抗菌活性が生じる機序についても研究されており、有機酸がpHを下げて静菌・殺菌作用を示すことから、食品中に梅干などを入れておけば、そのpHが低下して菌の増殖が抑えられることは確かめられている。そのため、「梅肉エキス」や「鳥梅」が抗菌活性を示す理由として、これらを食べることによって腸内のpHが低下して抗菌活性が生じると一般には考えられている。
【0008】
しかし、強力な酸性を持つ胃液中の塩酸でさえも腸内では中和されてしまことを考えると、有機酸も腸内では恐らく中和されており、有機酸が腸内で酸性環境をつくりだすような酸として存在し、働いていることは恐らくあり得ないと考えられる。そこで、有機酸以外の抗菌活性を示す成分の存在が考えられている。
【0009】
ただ、現在のところ、梅果実中の有機酸以外の抗菌活性を示す成分に関する研究はきわめて少ない。例えば、Miyazawa Mらは未熟の梅の果実からヘリコバクター・ピロリ菌の遊泳を阻害する物質を見出している。この物質はリグナンの一種で、(+)-Syringaresinolである(非特許文献4を参照。)。しかし、この物質の梅果実やその加工品中の濃度は極めて低いことから、実際に梅の製品の抗菌活性にはほとんど寄与していないと推測されている。
【0010】
一方、梅の果実中にはポリフェノールが約1000ppm程度存在していることが知られており、発明者らはこのポリフェノールについて研究を進めてきた。そして、梅干製造時に副産物として大量に発生し、処理費用を支払って処理している梅酢から、果実由来のポリフェノール(梅酢ポリフェノール)を大量製造する製造法を開発し、その化学分析や健康増進作用について既に特許出願している(特許文献1を参照。)。なお、この梅酢ポリフェノールは、その製造工程中に、梅果実由来の遊離のクエン酸や梅干製造のために大量に添加された食塩が除去されている。そのため、梅酢ポリフェノールは、ポリフェノールそのものの活性を調べるには最適の素材である。
【0011】
また、発明者らは、梅酢ポリフェノールについて、ラット急性毒性試験、ラット28日間亜急性毒性試験、マウス90日間慢性毒性試験、UMUテスト及びマウス小核試験などの変異原性試験などの安全性試験を実施し、梅酢ポリフェノールの安全性が極めて高いことを明らかにしている(非特許文献5を参照。)。
【0012】
なお、発明者らは、梅酢から得られるポリフェノール抽出物、及びこれを使用する肥満や糖尿病の治療、予防に有効的なα−アミラーゼ阻害作用及びα−グルコシドダーゼ阻害作用を有する酵素阻害剤、食品組成物、特定保健用食品組成物、医薬部外品組成物、医薬組成物に関する特許を既に出願している(特許文献1を参照。)。また、発明者らは、梅酢から得られるポリフェノール抽出物が血圧の上昇を抑制する作用を見出して既に特許出願している(特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−137929号公報
【特許文献2】特願2011−36710号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】七山征子、「食品中の抗菌物質 梅干し,梅肉エキスの抗菌作用」、日本食品微生物学会雑誌12:211-217(1996)
【非特許文献2】Otsuka T, Tsukamoto T, Tanaka H, Inada K, Utsunomiya H, Mizoshita T, Kumagai T, Katsuyama T, Miki K, Tatematsu M.,“ Suppressive effects of fruit-juice concentrate of Prunus mume Sieb. et Zucc. (Japanese apricot, Ume) on Helicobacter pylori-induced glandular stomach lesions in Mongolian gerbils.",Asian Pac J Cancer Prev. 6:337-41(2005)
【非特許文献3】Chen Y, Wong RW, Seneviratne CJ, Hags U, McGrath C, Samaranayake LP, Kao R.,"The antimicrobial efficacy of Fructus mume extract on orthodontic bracket: a monospecies-biofilm model study in vitro.",Arch Oral Biol. 56:16-21 (2011)
【非特許文献4】MIYAZAWA M, Utsunomiya H, Inada K, Yamada T, OKUNO Y, Tanaka H, Tatematsu M. "Inhibition of Helicobacter pylori motility by (+)-Syringaresinol from unripe Japanese apricot." Biol Pharm Bull. 29(1):172-3.(2006)
【非特許文献5】志賀 勇介,土田 辰典,原 雄大,岸田 邦博,前田 正信,宮下 和久,藤原 真紀,山西 妃早子,矢野 史子,三谷 隆彦、「梅酢ポリフェノール抽出物の安全性の検討」、近畿大学生物理工学部紀要No.28 p31-40 2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は、梅加工食品を製造する際に副産物として生じる梅酢の利用をより促進するとともに、安全で抗菌活性の強い抗菌物質を提供することを課題とする。また、強い抗菌活性を備えた医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、飼料を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者らは、鋭意検討の結果、梅酢ポリフェノール、梅酢ポリフェノールの加水分解物、及び梅酢ポリフェノールの構成成分である梅酢ポリフェノールアグリコンが高い抗菌活性を備えていることを見出してこの発明を完成させた。
【0017】
すなわち、この発明の抗菌物質は、梅酢ポリフェノール、梅酢ポリフェノールの加水分解物、又は梅酢ポリフェノールアグリコンを含むものである。また、この発明の医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、飼料は、この発明の抗菌物質を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の抗菌物質は、高い抗菌活性を備えていることが確認されているため、一般の食品などに添加して食品の腐敗を防ぐことや、医薬品として投与して消化管や尿路などで異常繁殖した細菌を殺菌することが期待できる。しかも、この発明の抗菌物質は食品由来であるため高い安全性を有していることが保証されており、長期間に渡って使用できることが期待できる。また、この発明の抗菌物質は、梅干製造時に副産物として発生する梅酢を原料として使用するため、従来は産業廃棄物として廃棄されていた資源を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、梅酢ポリフェノールの腸内細菌8株に対する抗菌活性を示すグラフである。
【図2】図2は、梅酢ポリフェノールアグリコンの腸内細菌8株に対する抗菌活性を示すグラフである。
【図3】図3は、クエン酸の大腸菌に対する抗菌活性を示すグラフである。
【図4】図4は、中和したクエン酸の大腸菌に対する抗菌活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.抗菌物質
この発明の抗菌物質は、梅酢から得られる梅酢ポリフェノール、梅酢ポリフェノールの加水分解物、及び梅酢ポリフェノールアグリコンを有効成分として含むものである。以下に、その詳細について説明する。
【0021】
(1)梅酢ポリフェノール
梅酢に含まれる梅酢ポリフェノールは多種類あり、その構造はアグリコン部分がヒドロキシ桂皮酸である配糖体、ヒドロキシ桂皮酸と糖・有機酸とのエステル体など、ヒドロキシ桂酸の誘導体が大部分を占める。このような梅酢ポリフェノールは、例えば、特許文献1に記載の方法で製造できる。なお、特許文献1で製造された梅酢ポリフェノール抽出物に含まれるポリフェノールの濃度を正確に測定することはできない。しかし、標準物質として没食子酸を使用するフォーリン−チオカルト法により測定した場合、梅酢ポリフェノール抽出物にポリフェノールは、10〜15%程度含まれていることが分かっている。
【0022】
(2)梅酢ポリフェノール加水分解物
梅酢ポリフェノール加水分解物は、アルカリ、酸、アミラーゼやエステラーゼなどの酵素を使用する公知の方法によって、梅酢ポリフェノールを糖や有機酸とアグリコン部分(梅酢ポリフェノールアグリコン)とに加水分解したものである。加水分解条件は特に限定する必要はないが、アグリコン部分が全面的に破壊されてしまう条件は好ましくない。
【0023】
(3)梅酢ポリフェノールアグリコン
梅酢ポリフェノールアグリコンは、梅酢ポリフェノール加水分解物から、糖や有機酸を除去し、アグリコン部分を精製したもののことである。精製方法は、例えば、加水分解物を合成吸着剤(例えば三菱化学社製ダイヤイオンHP20など)から成るカラムクロマトグラフィーにかけ、脱イオン水でカラムを洗浄後、カラムに吸着した梅酢ポリフェノールアグリコンをメタノールやエタノールなどで溶出し、溶出液を濃縮乾固するなどの方法が挙げられる。
【0024】
なお、梅酢ポリフェノール、梅酢ポリフェノール加水分解物、及び梅酢ポリフェノール加水分解物は、液体であっても固体であってもよく、単独で又は別の物質と組み合わせて混合物として使用してもよい。混合物として使用する場合には、スプレードライ、凍結乾燥、デキストリンなどの造形剤の添加処理などをしたものであってもよい。また、液体である場合には、限外ろ過などの公知の方法によって濃縮して使用すれば、不要な成分、例えば、糖分、塩分、有機酸などを除去することもできる。
【0025】
また、梅酢ポリフェノール等は、多数種のポリフェノールを含んでいる。そのため、これらの中から特定のポリフェノールを、ろ過、カラム処理、溶剤洗浄などの公知の手段によって選別処理してから使用してもよい。
【0026】
2.医薬品など
この発明の医薬品、医薬部外品、化粧品、食品及び飼料は、この発明の抗菌物質を含んでいるものである。なお、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品及び飼料における抗菌物質の含有量は、使用する抗菌物質の抗菌力やその用途等を勘案して自由に設定することができる。
【0027】
(1)医薬品
医薬品とは、薬事法に規定されているものであって、医療用医薬品及び一般用医薬品(OTC)の何れをも含む。また、その対象となる疾患は従来からある抗菌物質を含む医薬品、例えば風邪薬、整腸剤などであれば、特に限定することなく使用できる。さらに、その形態については、例えば、丸薬剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル錠剤、トローチ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、懸濁液、エマルジョン剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤、坐剤、外用液剤、軟膏等の塗布剤等の非経口剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
なお、この発明の医薬品を経口剤として製造する場合には、公知の賦型剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤等とともに、公知の製造方法により製造すればよい。
【0029】
また、この発明の医薬品を非経口剤として製造する場合には、注射用蒸留水、生理食塩水希釈剤、ブドウ糖水溶液等の希釈剤、公知の殺菌剤、防腐剤、安定剤、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤とともに、公知の方法によって製造すればよい。
【0030】
(2)医薬部外品
医薬部外品とは、薬事法に規定されているものであって、例えば、脱臭剤(デオドラント剤)、育毛剤、薬用化粧品類、栄養補給薬(サプリメント)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
(3)化粧品
化粧品とは、薬事法に規定されているものであって、例えば、口紅、ファンデーションなどのメークアップ化粧品、化粧水などの基礎化粧品、ヘアトニック、香水、歯磨き、シャンプー、リンス、身体を洗うための石鹸、入浴剤などのいわゆるトイレタリー製品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
(4)食品
食品とは、ヒト用の一般食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、健康食品、栄養補助食品などを意味している。食品として、具体的には、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の水産加工製品、ソーセージ、ハム、ウインナ−等の食肉加工製品、豆腐や油揚げ、コンニャク等の農産加工製品、洋菓子、和菓子、パン、ケ−キ、ゼリ−、プリン、スナック、クッキ−、ガム、キャンディ、ラムネ等の菓子類、生めん、中華めん、そば、うどん等のめん類、ソ−ス、醤油、ドレッシング、マヨネ−ズ、タレ、ハチミツ、粉末あめ、水あめ等の調味料、カレ−粉、からし粉、コショウ粉等の香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレ−トスプレッド、漬物、そう菜、ふりかけや、各種野菜・果実の缶詰・瓶詰等の加工野菜・果実類、チ−ズ、バタ−、ヨ−グルト等の乳製品、果実ジュ−ス、野菜ジュ−ス、乳清飲料、清涼飲料、健康茶、薬用酒類等の飲料、その他、栄養補強(栄養補助)等を目的とする健康維持のための錠剤、飲料、顆粒等の健康志向の飲食品類などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
(5)飼料
飼料とは、ヒト以外の動物の餌のことである。ヒト以外の動物としては、例えば、イヌ、ネコなどの愛玩動物、カナリア、インコなど観賞用鳥類、キンギョ、熱帯魚などの観賞用魚類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜、ニワトリなどの家禽、ブリ、マダイ、ヒラメなどの養殖魚などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
以下に、実施例に基づいてこの発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は如何なる意味においても特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0035】
1.梅酢ポリフェノールの抗菌活性の測定
梅酢ポリフェノールの抗菌活性を、有害な腸内細菌の増殖量に基づいて調べた。具体的には、以下のようにして調べた。
【0036】
(1)梅酢ポリフェノール、試供菌株及び液体培地
梅酢ポリフェノールは、特許文献1に記載の製造方法に従って工業的製法で作成したもの(Lot.100525)を使用した。また、腸内細菌は、Citrobacter freundii(NBRC NO. 12681)、Enterobacter aerogenes(NBRC NO. 13534)、Enterobacter cloacae(NBRC NO. 13535)、Escherichia coli(NBRC NO. 15034)、Klebsiella oxytoca(NBRC NO. 102593)、Proteus hauseri(NBRC NO. 3851)、Proteus mirabilis(NBRC NO. 10567)、Salmonella enterica(NBRC NO. 105726)の8株を使用した。さらに液体培地は、カゼイン膵消化ペプトン5g(オリエンタル酵母社製)、酵母エキス2.5g(オリエンタル酵母社製)、ブドウ糖1gを脱イオン水1Lに溶解して、オートクレーブした標準培地を使用した。
【0037】
(2)抗菌活性試験
各菌の保存斜面培養から一白金耳を液体培地に植え付けて12時間静置培養したのち、再度液体培地に植え継いで4時間前培養した。前培養によって得られた菌体懸濁液をOD630値が0.1になるように液体培地で希釈し、96well-plateの各wellに100μlずつ分注した。希釈菌体懸濁液の入った96well-plateの各wellに、各wellの最終濃度が1000μg/ml,2000μg/ml,3000μg/ml,4000μg/ml,5000μg/mlとなるように、液体培地で溶解した梅酢ポリフェノール溶液を100μlずつ加えた。なお、同じ梅酢ポリフェノール濃度ごとに5穴ずつ調製した。また、梅酢ポリフェノールの入っていないコントロールも同様にして調製した。
【0038】
この96well-plateを37℃に調温した培養器で静置培養し、1時間ごとに10時間目までマイクロプレートリーダーでOD630値を測定した。そして、10時間後におけるOD630値の平均値を、コントロールを100%とする比率で換算し、増殖率とした。梅酢ポリフェノール濃度と増殖率の関係を図1に示す。
【0039】
図1から、梅酢ポリフェノールは1250〜5000μg/mlという広い濃度範囲で、この実験で使用した腸内細菌8株のうち、Enterobacter aerogenesを除く7株で増殖を抑制することが確認できた。また、この実験で使用した梅酢ポリフェノールは遊離型の有機酸や食塩は含んでいないことが別途確認できている。そのため、この実験で使用した梅酢ポリフェノールは、有機酸や食塩の抗菌活性を利用しているのではなく、自ら抗菌活性を有していることが分かった。
【実施例2】
【0040】
2.梅酢ポリフェノールアグリコンの抗菌活性の測定
梅酢ポリフェノールは主にヒドロキシ桂皮酸の誘導体で構成されていることが分かっている。そこで、梅酢ポリフェノールをアルカリ加水分解して、梅酢ポリフェノール加水分解物から糖や有機酸を除去し、得られた梅酢ポリフェノールアグリコンの抗菌活性を調べた。具体的には、以下のようにして調べた。
【0041】
(1)梅酢ポリフェノール及び抗菌活性測定用液体培地
梅酢ポリフェノールは、実施例1と同じものを使用した。また、液体培地は、実施例1の標準培地に最終濃度が100mMになるようにMOPS buffer(pH7.0)を添加した改変標準培地を使用した。これは、調製した梅酢ポリフェノールアグリコンは、その安定性を向上させるために酸性溶液にしてあり、これが標準培地のpHに大きく影響するからである。なお、添加したMOPSが菌の増殖に全く影響しないことは別途確認している。
【0042】
(2)梅酢ポリフェノールアグリコンの調製
梅酢ポリフェノール50mgに、あらかじめ窒素置換した1規定の水酸化ナトリウム(シグマ)水溶液4mlを加えて37℃で24時間反応させた。反応終了後、85%オルトリン酸(ナカライテスク)0.27mlと酢酸エチル5mlを反応液に加えて4℃、3000rpmで1分間遠心し、その上清を回収した。上清を回収した残渣に再度酢酸エチル5mlを加え、同様に遠心し、その上清を回収した。1回目と2回目の上清を混合して、60℃、窒素気下で乾固させ、梅酢ポリフェノールアグリコンとした。
【0043】
(3)抗菌活性試験
培地の違いと、梅酢ポリフェノールアグリコンを使用することを除いて、前培養及び増殖試験は実施例1と同様にして行なった。なお、梅酢ポリフェノールアグリコンは培地に溶解しないので、DMSOに溶解してから培地に加えた(DMSOの最終濃度は1%)。その結果を図2に示す。
【0044】
図2から、梅酢ポリフェノールアグリコンは、全ての菌に対して濃度依存的に増殖抑制効果を備えており、菌種による抗菌活性の差異があまりないことが確認できた。また、梅酢ポリフェノールアグリコンは、梅酢ポリフェノールと比較し、15倍以上低い濃度域でも抗菌活性があることが確認できた。これらのことから、梅酢ポリフェノールの抗菌活性は、糖や有機酸ではなく、アグリコンが主に働いていると推察した。
【0045】
実施例1及び実施例2から、梅酢ポリフェノール及び梅酢ポリフェノールアグリコンのいずれにも抗菌活性を有することが証明された。このことは、梅酢ポリフェノールが生体内で、腸内細菌などが産生する酵素などにより、加水分解を受けたとしても、より強い抗菌活性を発揮することができることを示している。
【実施例3】
【0046】
3.クエン酸を中和した場合の抗菌活性
梅には約5%ものクエン酸が含まれており、梅の抗菌効果の主体はクエン酸であると考えられていた。これは、クエン酸を添加すると、培地のpHが低下して菌の増殖を抑制していると考えられていたからである。例えば図3に示すように、0.3125〜5%の濃度になるようにクエン酸を標準培地に添加し、Escherichia coli(NBRC NO. 15034)の増殖を調べたが、クエン酸存在下では全く増殖が見られなかった。
【0047】
そこで、クエン酸を添加した培地のpHをNaOHで中性付近に調整し、その培地における菌の増殖活性を調べることによって、クエン酸の抗菌活性を調べた。その結果、例えば図4に示すようにEscherichia coli(NBRC NO. 15034)の増殖抑制は全く見られず、逆にクエン酸を添加することで、菌の増殖率は増加した。なお、前記8株の腸内細菌についても全く同じ結果が得られた。この結果から、添加したクエン酸は中和された場合、栄養となっているのではないかと推察された。このことから、pHが中性条件では、梅の抗菌作用はクエン酸以外の物質、例えば上記のポリフェノールが主体的に働いていると推定される。
【実施例4】
【0048】
4.歯のう蝕に関与する細菌に対する抗菌活性の確認
一方、別途実験したところ、歯のう蝕に関与する細菌8株、すなわち、Streptococcus mutans(ATCC 25175)、 Streptococcus anginosus(ATCC 33397)、Streptococcus intermedius(ATCC 27335)、Streptococcus constellatus(ATCC 27823)、S. Streptococcus oralis (ATCC 35037)、Streptococcus salivarius (ATCC 7073)、Streptococcus sanguinis (ATCC 10556)、Streptococcus pyogenes (ATCC 12344)の増殖に対して、梅酢ポリフェノールに抗菌活性があることが判明した(データは示さず。)。また、前記同様、梅酢ポリフェノールをアルカリ加水分解することで抗菌活性が増すことも判明した(データは示さず。)。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明の抗菌物質は、梅干製造時に副産物として発生する梅酢から容易に調製することができ、安価であり、高い安全性が確認されている。そのため、従来からある抗菌物質よりもより広い分野で応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅酢ポリフェノールを有効成分として含む抗菌物質。
【請求項2】
梅酢ポリフェノールの加水分解物を有効成分として含む抗菌物質。
【請求項3】
梅酢ポリフェノールアグリコンを有効成分として含む抗菌物質。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の抗菌物質を含む医薬品。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れかに記載の抗菌物質を含む医薬部外品。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れかに記載の抗菌物質を含む化粧品。
【請求項7】
請求項1から請求項3の何れかに記載の抗菌物質を含む食品。
【請求項8】
請求項1から請求項3の何れかに記載の抗菌物質を含む飼料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−43835(P2013−43835A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180490(P2011−180490)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年度 近畿大学生物理工学部遺伝子工学科卒業研究発表会、近畿大学、平成23年2月24日
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(593078143)社団法人和歌山県農産物加工研究所 (2)
【Fターム(参考)】