説明

抗菌用組成物

【課題】解決しようとする課題点は、様々な微生物に対し十分な抗菌活性並びに抗ウイルス活性を有し、人体あるいは動物に対し安全で、かつ安価で提供することを可能とする新規な抗菌用組成物を見いだすことである。
【解決手段】(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、(E)水が0〜55重量%、を少なくとも含む溶液1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなる抗菌用組成物を創成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌用組成物、詳細には抗菌活性及び抗ウイルス活性を有する抗菌用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、微生物による汚染や腐敗の防止や、微生物あるいはウイルスによる感染予防及び治療を目的として、種々の抗菌剤並びに抗ウイルス剤が様々な分野において使用されている。例えば、食品分野においては食品の腐敗防止の為に防腐剤が使用され、飲食品の製造行程や包装、外食産業における調理加工場等の除菌を目的に抗菌・除菌剤が使用されている。医療分野や化粧品分野においても同様に、製品(医薬品、化粧品)や医療器具の防腐あるいは除菌、医療環境あるいは医薬品類や化粧品類の生産施設等の除菌を目的に抗菌剤が使用されている。特に医療分野においては、微生物及びウイルスによる二次感染が重大な問題となることから、特に微生物及びウイルスの除菌については徹底されている。
また、上記分野以外にも、鳥インフルエンザ等といった家畜の伝染病を防止する為に抗生物質を使用する他、畜産業における家畜の飼育環境の除菌も行われてきている。
【0003】
このように広範囲にわたる分野で抗菌剤あるいは抗ウイルス剤は使用されてきているが、(1)微生物又はウイルスの属種は非常に多種にわたり、また突然変異株も発生しやすいことから、多数の菌種又はウイルス種に対し一様に効果がある抗菌剤又は抗ウイルス剤を製造することは非常に困難である、(2)非常に強力な抗菌活性又は抗ウイルス活性を有する一方、人体に対しても強い副作用を示す場合が多々ある、(3)特に除菌を目的とする場合は、日常的に使用するには経済的に大きな負担を強いることになる抗菌性成分又は抗ウイルス性成分が多い、といった課題点が依然として存在している。
【0004】
例えば、防腐を目的として製品に配合される抗菌剤としては、ソルビン酸塩やパラオキシ安息香酸類が汎用されているが、人体への安全性や抗菌スペクトルの範囲、更にはウイルスに対する効果について十分とはいえない。そこで、現在までに様々な抗菌剤又は抗ウイルス剤が発明されてきているが、未だ上記(1)〜(3)の要項を十分に満たし、市場で優位となる抗菌剤又は抗ウイルス剤は見いだされていない。また、外食産業や食品加工施設、医療施設等の除菌については、その利便性と経済性、抗菌力から70〜80%含水エタノールが汎用されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、解決しようとする課題点は、様々な微生物に対し十分な抗菌活性並びに抗ウイルス活性を有し、人体あるいは動物に対し安全で、かつ安価で提供することを可能とする新規な抗菌用組成物を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、(E)水が0〜55重量%、を少なくとも含む溶液1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなる組成物が優れた抗菌活性及び抗ウイルス活性、詳細には大腸菌、シュードモナス属、スタフィロコッカス属及びバシルス属であるグラム陰性菌群、アスペルギルス属及びカンジダ属である不完全菌類及び半子嚢菌類、及びインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスに対する抗菌活性及び抗ウイルス活性を有することを見いだし、本発明である抗菌用組成物を創成するに至った。
【0007】
本発明の抗菌用組成物の構成成分に関しては、多価アルコール系抗菌物質としてグリセリン脂肪酸エステルが記載され、緑膿菌に対し殺菌効果を有することが示されている他(特許文献1)、グリセリン脂肪酸エステルの類似化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルが食品用抗菌剤として用いられることが示されているが(特許文献2)、本発明のような多種の菌種及び2種のウイルスに対する抗菌活性については検討されていない。また、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸がペニシリウム属、アスペルギルス属、フザリウム属、セファロスポリウム属、サッカロミケス属、カンジダ属並びに他の不完全菌類及び半子嚢菌類(酵母)、大腸菌、サルモネラ種、シゲラ種のようなグラム陰性菌、並びに他のグラム陰性菌(バシルス属、スタフィロコッカス属、エンテロコッカス属、シュードモナス属、ラクトバシルス属)に対して抗菌活性を有することが示されているが(特許文献3)、本発明のようなウイルスに対する抗菌活性については検討されていない。また、スルホコハク酸類の主たる用途として界面活性剤としての使用が示されている他(特許文献4)、動物用抗菌液剤に溶解補助剤としてジオクチルスルホコハク酸塩を使用することが示される他(特許文献5)、有機酸とスルホコハク酸アルキル類を含む抗菌組成物が開示されているが(特許文献6)、本発明の抗菌用組成物の成分構成に関連する記載はない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗菌用組成物は、大腸菌、シュードモナス属、スタフィロコッカス属及びバシルス属であるグラム陰性菌群、アスペルギルス属及びカンジダ属である不完全菌類及び半子嚢菌類、及びインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスに対して優れた抗菌活性を有する。また、本発明の抗菌用組成物は、全て医薬品や化粧品、食品並びに日常雑貨品等で従来から汎用されてきた成分で構成されるものであって、人体又は動物への安全性に関しては殊更優れるものである。更に、これらの成分は、非常に安価でかつ大量に入手が可能な化合物ばかりであり、日常的に使用するにあたって経済的負担が軽減されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−161518号公報
【特許文献2】特開平10−225281号公報
【特許文献3】特表2003−535894号公報
【特許文献4】特開平5−9496号公報
【特許文献5】特開平6−263642号公報
【特許文献6】特表2005−530857号公報
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の抗菌用組成物は、第一に、少なくとも(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、及び(E)水が0〜55重量%を含む溶液を必須とする。
【0011】
(A)の炭素数8〜22の脂肪酸は、置換基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状又は分岐状の飽和あるいは不飽和脂肪酸であれば特に限定はされないが、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸から選択される。脂肪酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩から選択される。特に、融点が低い脂肪酸が性状の安定性や製造の簡便性から好ましく、カプリル酸、カプリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸とそれらの塩から選択される。
当該溶液中における脂肪酸の含有量は、15〜45重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0012】
(B)の炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルは、特に限定はされないが、具体的にはモノカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、モノイソパルミチン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、モノオキシステアリン酸グリセリル、トリオキシステアリン酸グリセリル、モノヒドロキシステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリルから選択される。特に、水に対する溶解性並びに固有の限界ミセル濃度の点から、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル及びモノオレイン酸グリセリルから選択される。
当該溶液中におけるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルの含有量は、20〜50重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0013】
(C)のスルホコハク酸エステルは、特に限定はされないが、具体的にはスルホコハク酸ジエチルヘキシル、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オレイン酸アミドエトキシエタノールスルホコハク酸エステル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸β−シトステリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレングリコールジメチコンスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸イソプロパノールアミドスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム、スルホコハク酸ヤシ油アルキルグルコシド、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムから選択される。特に、水に対する溶解性並びに製造におけるコストの面から、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム及びスルホコハク酸ジエチルヘキシル又はその塩から選択される。
当該溶液中におけるスルホコハク酸エステルの含有量は、10〜30重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0014】
本発明の抗菌用組成物で用いられる少なくとも(A)〜(E)を含む溶液には、脂肪酸の酸化を防止するために、更に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は医薬品、化粧品及び食品に通常添加されている成分であれば特に限定はされないが、具体的には、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。溶液への配合量としては、0.001〜5重量%の範囲であれば十分である。
【0015】
本発明の抗菌用組成物で用いられる(A)〜(E)を含む溶液の製造方法としては、公知な処方製剤の製造方法より得られる。例えば、(A)〜(C)を必要ならば(A)の融点以上に加温しながら溶解及び混合した後、これにあらかじめ混合した(D)及び(E)の混合物を、例えば攪拌機を備えた乳化装置やホモミキサー、ディスパーミキサー、高剪断力の高圧ホモジナイザーや高圧及び/又は真空ホモミキサー、超音波乳化機、SPG膜乳化機、スタティック型ラインミキサー、コロイドミル等といった混合装置を用いて徐々に添加しながら撹拌混合することで当該溶液が製造される。
【0016】
本発明の抗菌用組成物は、第二に前記(A)〜(E)を含む溶液を水性基剤に混合して分散させてなることを必須とする。混合する比率は、溶液1重量部に対し、水性基剤が1〜500重量部の範囲で設定される。混合するにあたって、特に混合装置等は必須ではないが、本発明の組成物を大量に製造する場合には撹拌装置を備えた設備であることが好ましい。
本発明で用いられる水性基剤は、水又はエタノールを0〜10重量%含む水溶液である。また、当該水性基剤には、抗菌用組成物のハンドリング性を向上させることを目的に、更に増粘剤を添加することができる。増粘剤は医薬品、化粧品及び食品に通常添加されている成分であれば特に限定はされないが、具体的には、アクリル酸重合体、アクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アミド重合体、アクリル酸アミド・スチレン共重合体、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アルギン酸又はその塩、加水分解コラーゲン又はその誘導体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、加水分解コムギタンパク質又はその誘導体、加水分解シルク又はその塩又はその誘導体、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、スチレン・ビニルピロリドン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、加水分解エラスチン又はその塩、加水分解カゼイン又はその塩、アラビアゴム、カラギーナン、カラヤガム、ゼラチン、キチン又はその誘導体又はそれらの塩、キトサン又はその誘導体又はそれらの塩、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、流動パラフィン、ヒアルロン酸又はその塩、ソルビトール、トレハロース、デキストラン、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸又はその塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグルタミン酸又はその塩、ユーグレナ多糖体、イソブチレン・マレイン酸塩共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、β−グルカン又はその塩等が挙げられる。水性基剤への配合量としては、0.0001〜20重量%の範囲で設定することができる。
【0017】
本発明の抗菌用組成物は、除菌、殺菌、消毒、防黴等の目的で、公知の抗菌剤、殺菌剤、消毒剤、防黴剤又はこれらを含む組成物と同様に使用することができる。その使用態様としては、医療環境、医療器具類や患部の消毒、食品加工施設や外食産業の加工場や機具・食器等の除菌並びに殺菌、容器移送するコンベア等の除菌、食品包装フィルム、繊維、合成樹脂、木材、日用品等の除菌・消毒等に使用する組成物が例示できる。また、抗菌用組成物の剤型としては、液状あるいはゲル状であり、特に液状の場合には塗布あるいは含浸させて用いる他、エアゾール等の噴霧して用いる形態が特に好ましい。なお、本発明はこれらの態様及び剤型のみの使用に限定されるものではない。
【0018】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
表1〜2に本発明の抗菌用組成物の製造に用いる溶液の製造例と比較例を示した。表中の各成分の数値は重量%を示す。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
(実施例1)製造例1〜8及び比較例1〜3の抗菌性試験
製造例1〜8並びに比較例1〜3を用いて製造した抗菌用組成物に対し、抗菌性試験を実施した。製造例1〜8及び比較例1〜3を水に1:1の比率で混合したものを供試した。対象とする微生物は、Staphylococcus aureus ATCC6538(黄色ブドウ球菌)、Pseudomonas aeruginosa ATCC9027(緑膿菌)、Escherichia coli ATCC8739(大腸菌)、Bacillus subtilis NBRC3134(枯草菌)、Candida albicans ATCC102313(カンジダ菌)、Aspergillus niger
NBRC6341(黒カビ)の6種を設定した。試験方法は日本薬局方の保存効力試験に準拠した。結果を表3〜6に示した。
【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
【表5】

【0026】
【表6】

【0027】
(実施例1の結果)
製造例1〜8及び比較例1〜3の抗菌性を試験した結果、表3〜6で示されたとおり、供試した6種の微生物全てに対して、本発明の抗菌用組成物を構成しない比較例と比べて、優れた抗菌活性を示した。特に製造例1〜4の組成物は、培養7日間でほぼ全ての微生物が死滅していることが確認され、本発明の中でも特に優れた抗菌用組成物であることが判明した。
【0028】
(実施例2)抗菌用組成物の製造における(A)〜(E)を含む溶液と水性基剤の混合比の検討
本発明の抗菌用組成物を製造するにあたり、(A)〜(E)を含む溶液と水性基剤の混合比率について、以下に記載の混合比率で製造した組成物の抗菌活性を調べた。供試する溶液として、実施例1において最も抗菌活性に優れる製造例1を採択した。試験方法は実施例1の方法に準拠し、培養14日目おける各微生物の生菌数を測定した。結果を表7に示した。
製造例9:製造例1の溶液1重量部に対し、水100重量部の比率で混合して得られた抗菌用組成物。
製造例10:製造例1の溶液1重量部に対し、水200重量部の比率で混合して得られた抗菌用組成物。
製造例11:製造例1の溶液1重量部に対し、水500重量部の比率で混合して得られた抗菌用組成物。
製造例12:製造例1の溶液1重量部に対し、水1000重量部の比率で混合して得られた抗菌用組成物。
製造例13:製造例1の溶液1重量部に対し、5%エタノール水溶液200重量部の比率で混合して得られた抗菌用組成物。
製造例14:製造例1の溶液1重量部に対し、10%エタノール水溶液200重量部の比率で混合して得られた抗菌用組成物。
【0029】
【表7】

【0030】
(実施例2の結果)
前記の製造例9〜14の抗菌用組成物について抗菌活性を測定した結果、溶液1重量部に対し、水性基剤500重量部の混合比率までが実施例1で得られた抗菌活性が維持されるものであり、水性基剤が1000重量部となると抗菌活性が低下した。また製造例9〜11及び13〜14の結果から、水性基剤として水のみでもエタノールを含む水溶液でも同様に抗菌活性を示すことが判明し、更には、製造例9〜14は全ての組成物において本発明の抗菌用組成物中に含まれる成分の乖離や沈殿、層分離等の発生もなく、安定な製剤であることが確認された。
【0031】
(実施例3)インフルエンザウイルスの不活性化効果
本発明の抗菌用組成物のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果を測定した。本試験には製造例10の組成物を供試した。試験方法の詳細は以下に示す。なお、ウイルスを対象とした試験に関しては、バイオハザード防止に必要な設備や体制及び取り扱いに長ける試験実施者等を必要とすることから、外部試験機関に委託した。
【0032】
(インフルエンザウイルスの抗ウイルス試験)
[1.供試ウイルス]
Influenza A virus(A型インフルエンザウイルス)
[2.供試ウイルスの培養方法]
インフルエンザウイルスは発育鶏卵の漿尿液腔に接種し、孵卵器で培養後、漿尿液を採取し、密度勾配遠心法により精製したウイルスを供試ウイルス液とした。
[3.ウイルス不活化試験]
試験管内に900μL の製造例10とウイルス液100μL をそれぞれ加え、ボルテックスミキサーでよく混合した後、室温で60分間反応させた。次いで、直ちにこの混合液50μLをリン酸緩衝生理食塩液5mLで100倍に希釈し、製造例10のウイルスに対する作用を停止させるとともに細胞毒性を回避した。この溶液をウイルス感染価定量試験用試料とした。なお、反応時間0分(初期ウイルス感染価測定用)の試料は製造例10の代わりにリン酸緩衝生理食塩液を用いた。
[4.ウイルス不活化試験]
定量試験用試料を原液としリン酸緩衝生理食塩液で10倍階段希釈を行い、原液及び希釈液を96穴プレートにそれぞれ10穴ずつ植え込んだ。更に、5%FBSを含むDulbecco modified Eagle培地(DMEM)に懸濁したMDCK細胞を96穴プレートに植え込んだ。その後、37℃の炭酸ガス孵卵器内で4日間培養し、倒立顕微鏡下でウイルスの感染によって生じた細胞変性効果(CPE)を観察し、Reed-Muench法によりウイルス感染価(TCID50)を求めた。ウイルス感染価の結果を表8に示した。
【0033】
【表8】

【0034】
(実施例3の結果)
製造例10とウイルス液を60分間作用させた後のウイルス感染価は、検出限界値の6.3 TCID50/mL以下に減少した。また、作用時間0分(初期ウイルス感染価)の感染価は5.4×105 TCID50/mLであった。従って製造例10を60分間作用させた場合のウイルス感染価の減少値は 4.9 log10以上であった。以上の結果より、本発明の抗菌用組成物はインフルエンザウイルスに対し優れた抗ウイルス作用を有することが判明した。
【0035】
(実施例4)ヘルペスウイルスの不活性化効果
本発明の抗菌用組成物のヘルペスウイルスに対する抗ウイルス効果を測定した。本試験には製造例10の組成物を供試した。試験方法の詳細は以下に示す。
【0036】
(ヘルペスウイルスの抗ウイルス試験)
[1.供試ウイルス]
Herpes simplex virus type 1(ヘルペスウイルス)
[2.供試ウイルスの培養方法]
ヘルペスウイルスは、アフリカミドリザル腎臓上皮由来のVero細胞に感染させ、90%以上の細胞が細胞変性効果(CPE)を示したとき−80℃の冷凍庫に凍結保存した。その後凍結融解操作を2回繰り返した後、3500rpmで10分間遠心した上清を試験用ウイルスとして使用時まで−80℃に保存した。
[3.ウイルス不活化試験]
試験管内に900μLの製造例10とウイルス液100μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーでよく混合した後、室温で60分間反応させた。次いで、直ちにこの混合液50μL をリン酸緩衝生理食塩液5mLで100倍に希釈し、製造例10のウイルスに対する作用を停止させるとともに細胞毒性を回避した。この溶液をウイルス感染価定量試験用試料とした。なお、反応時間0分(初期ウイルス感染価測定用)の試料は製造例10の代わりにリン酸緩衝生理食塩液を用いた。
[4.ウイルス不活化試験]
定量試験用試料を原液としリン酸緩衝生理食塩液で10倍階段希釈を行い、原液及び希釈液を96穴プレートにそれぞれ10穴ずつ植え込んだ。さらに、5%FBSを含むDulbecco modified Eagle培地(DMEM)に懸濁したVero細胞を96穴プレートに植え込んだ。その後、37℃の炭酸ガス孵卵器内で4日間培養し、倒立顕微鏡下でウイルスの感染によって生じた細胞変性効果(CPE)を観察し、Reed-Muench法によりウイルス感染価(TCID50)を求めた。ウイルス感染価の結果を表9に示した。
【0037】
【表9】

【0038】
(実施例4の結果)
製造例10とウイルス液を60 分間作用させた後のウイルス感染価は検出限界値の6.33 TCID50/mL以下に減少した。また、作用時間0分(初期ウイルス感染価)の感染価は1.1×103 TCID50/mLであった。すなわち、試験品を60分間作用させた場合のウイルス感染価の減少値は2.3 log10以上減少した。以上の結果より本発明の抗菌用組成物はヘルペスウイルスに対し優れた抗ウイルス作用を有することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(A)〜(E)を含む溶液の1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなることを特徴とする抗菌用組成物。
(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩が15〜45重量%、
(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルが20〜50重量%、
(C)スルホコハク酸エステルが10〜30重量%、
(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールが0〜10重量%、
(E)水が0〜55重量%
【請求項2】
炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩が、カプリル酸、カプリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸又はそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の抗菌用組成物。
【請求項3】
炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルが、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル及びモノオレイン酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の抗菌用組成物。
【請求項4】
スルホコハク酸エステルが、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム及びスルホコハク酸ジエチルヘキシル又はその塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3記載の抗菌用組成物。
【請求項5】
大腸菌、シュードモナス属、スタフィロコッカス属及びバシルス属であるグラム陰性菌群、アスペルギルス属及びカンジダ属である不完全菌類及び半子嚢菌類、及びインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスの殺菌又は除菌又は増殖抑制に使用することを特徴とする請求項1〜4記載の抗菌用組成物。

【公開番号】特開2011−162517(P2011−162517A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29592(P2010−29592)
【出願日】平成22年2月14日(2010.2.14)
【出願人】(509306203)テクノマイニング株式会社 (10)
【Fターム(参考)】