説明

抗菌用組成物

【課題】アゼライン酸濃度を従来の製剤より低くしても、実用上十分な抗菌力を発揮できる抗菌用組成物を提供する。
【解決手段】溶解型のアゼライン酸を0.1〜10重量%含み、pHが2〜6.5である抗菌用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アゼライン酸は、海外で、ニキビの治療剤の有効成分として広く使用されている。海外では、20重量%といった高濃度のアゼライン酸を含むクリームやゲル等の製剤が使用されている。また、アゼライン酸は基剤に溶解させるのが難しいため、通常は、製剤中に分散状態で含まれている。
しかし、製剤中のアゼライン酸濃度が高いと、皮膚への刺激が強くなるため、刺激を抑えた処方設計が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、アゼライン酸濃度を従来の製剤より低くしても、実用上十分な抗菌力を発揮できる抗菌用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、溶解型のアゼライン酸を0.1〜10重量%含み、pHが2〜6.5である組成物は、アゼライン酸濃度が低いにも関わらず、十分な抗菌力を有することを見出した。
【0005】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の抗菌用組成物を提供する。
項1. 溶解型のアゼライン酸を0.1〜10重量%含み、pHが2〜6.5である抗菌用組成物。
項2. さらに、アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する項1に記載の組成物。
項3. アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩が、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、アスコルビン酸エチル、及びそれらの塩である項2に記載の組成物。
項4. アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を、組成物の全量に対して、0.1〜20重量%含む項2又は3に記載の組成物。
項5. さらに、多価アルコール、グリコールエーテル、及びその誘導体、並びに炭素数1〜4の一価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶解補助剤を含有する項1〜4の何れかに記載の組成物。
項5−2. 多価アルコールを、組成物の全量に対して、1〜50重量%含む項5に記載の組成物。
項5−3. 炭素数1〜4の一価アルコールを、組成物の全量に対して、2〜60重量%含む項5に記載の組成物。
項5−4. グリコールエーテル、及び/又はその誘導体を、組成物の全量に対して、0.001〜70重量%含む項5に記載の組成物。
項6. 上記溶解補助剤が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールである項5、又は5−2に記載の組成物。
項7. 上記溶解補助剤がエタノールである項5、又は5−3に記載の組成物。
項8. 上記溶解補助剤がジエチレングリコールモノエチルエーテルである項5、又は5−4に記載の組成物。
項9. 上記溶解補助剤を、組成物の全量に対して、1〜80重量%含む項5、5−2、5−3、5−4、及び6〜8の何れかに記載の組成物。
項9−2. 上記溶解補助剤が、プロピレングリコールとエタノールとの組み合わせ、ジプロピレングリコールとエタノールとの組み合わせ、1,3−ブチレングリコールとエタノールとの組み合わせ、グリセリンとエタノールとの組み合わせ、ジグリセリンとエタノールとの組み合わせ、1,3-ブチレングリコールとポリエチレングリコールとプロピレングリコールとエタノールとの組み合わせ、1,3-ブチレングリコールとグリセリンとエタノールとの組み合わせ、
プロピレングリコールとジプロピレングリコールとエタノールとの組み合わせ、プロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、ジプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、1,3−ブチレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、グリセリンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、ジグリセリンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、プロピレングリコールとジプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、1,3-ブチレングリコールとポリエチレングリコールとプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、1,3-ブチレングリコールとグリセリンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、
プロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとエタノールとの組み合わせ、ジプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとエタノールとの組み合わせ、1,3−ブチレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとエタノールとの組み合わせ、グリセリンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとエタノールとの組み合わせ、ジグリセリンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとエタノールとの組み合わせ、又はプロピレングリコールとジプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとエタノールとの組み合わせ、1,3-ブチレングリコールとポリエチレングリコールとプロピレングリコールとエタノールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、又は1,3-ブチレングリコールとグリセリンとエタノールとジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせである、項5、又は9に記載の組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の抗菌用組成物は、アゼライン酸が溶解しており、かつpHが2〜6.5であるために、アゼライン酸濃度が0.1〜10重量%と低いにもかかわらず、優れた抗菌力を有する。従って、組成物の防腐力が担保され、かつ対象に使用したときに、ニキビなどの菌によって引き起こされる症状を改善することができる。
また、アゼライン酸濃度が低いため、低コストでも製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の抗菌用組成物は、溶解型のアゼライン酸を0.1〜10重量%含み、pHが2〜6.5である組成物である。
【0008】
アゼライン酸
組成物中のアゼライン酸の含有量は、組成物の全量に対して、約0.1重量%以上であり、約0.5重量%以上が好ましく、約1重量%以上がより好ましい。この範囲であれば、十分な抗菌力が得られる。
また、組成物中のアゼライン酸の含有量は、約10重量%以下であり、約7重量%以下が好ましく、約5重量%以下がより好ましく、約3重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、溶解型アゼライン酸にするために組成物の組成を広範囲から選択することができる。また、十分に皮膚刺激を抑えることができる。
【0009】
アゼライン酸は、組成物中で溶解している。アゼライン酸が溶解していることは、顕微鏡又はマイクロスコープを用いて1000倍に拡大することで確認でき、アゼライン酸の結晶を認めない場合に溶解型と判定することができる。
なお、アゼライン酸は、生理的に許容される塩の形態で用いても良い。アゼライン酸の生理的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、メチルアミン塩、ピリジン塩、トリメチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩などが挙げられる。組成物の調製時にアゼライン酸として配合しても、得られる組成物中で、1種、又は2種以上のアゼライン酸塩が生じる場合もある。
【0010】
pH
本発明の組成物のpHは、約2以上であり、約2.5以上が好ましく、約3以上がより好ましい。この範囲であれば、皮膚刺激の少ない組成物となる。
また、本発明の組成物のpHは、約6.5以下であり、約6.3以下が好ましく、約6以下がより好ましい。この範囲であれば、十分な抗菌力が得られる。
後述するように、本発明の組成物がアスコルビン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩を含む場合は、pHは約4以下であることが好ましく、これにより、組成物の着色が抑制される。
pHの調整は、例えば、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムのような無機塩基、並びにトリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンのような有機塩基などの塩基;塩酸、及び硫酸のような無機酸、並びに乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、及びコハク酸ナトリウムのような有機酸などの酸を用いて行えばよい。酸及び塩基は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0011】
アゼライン酸を溶解型にするために、多価アルコール、グリコールエーテル又はその誘導体、及び炭素数1〜4の一価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶解補助剤を組成物に配合するのが好ましい。
溶解補助剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0012】
多価アルコール
多価アルコールは、一般に、保湿剤として、化粧品や医薬外用剤に添加されている。本発明では、化粧品や医薬外用剤に使用される公知の多価アルコールを制限なく使用できる。
このような公知の多価アルコールとして、
具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール(ペンタメチレングリコール)、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコール(イソペンチルジオール)、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール1540、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、及びポリエチレングリコール35000など)、及びポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール700、ポリプロピレングリコール1000、ポリプロピレングリコール2000など)などの2価アルコール;
グリセリン、及びトリメチロールプロパンなどの3価アルコール;
ジグリセン;並びにポリグリセリンなどが挙げられる。
【0013】
中でも、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、及びジグリセリンが好ましい。
また、ポリエチレングリコール(例えば、エチレングリコールが約2〜870個、中でも約2〜84個、特に約2〜13個重合したポリエチレングリコール)、ポリプロピレングリコール(例えば、プロピレングリコールが約2〜35個、中でも約2〜24個、特に約2〜12個重合したポリプロピレングリコール)、及びポリグリセリン(例えば、グリセリンが約2〜10個、中でも約7〜10個重合したポリグリセリン)も好ましい。
【0014】
多価アルコールを含む場合の多価アルコールの含有量は、組成物の全量に対して、約1重量%以上が好ましく、約3重量%以上がより好ましく、約5重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、アゼライン酸を十分に溶解させることができる。
また、多価アルコールを含む場合の多価アルコールの含有量は、組成物の全量に対して、約50重量%以下が好ましく、約30重量%以下がより好ましく、約20重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、べたつきの無い良好な使用感が得られる。
【0015】
グリコールエーテル又はその誘導体
<グリコールエーテル>
グリコールエーテルとしては、それには限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコールと、メチルアルコール、エチルアルコール、又はプロピルアルコールとのモノエーテルが挙げられる。
好ましいグリコールエーテルとして、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられる。中でもエチレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノエチルエーテルがより好ましい。
【0016】
<誘導体>
グリコールエーテルの誘導体としては、それには限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコールと、メチルアルコール、エチルアルコール、又はプロピルアルコールとのモノエーテルと、1塩基酸又は2塩基酸とのエステルが挙げられる。中でも、2塩基酸とのエステルが好ましい。
2塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸等の飽和直鎖のジカルボン酸;2,2,4−トリメチルアジピン酸、及び2,4,4−トリメチルアジピン酸等の飽和分岐鎖のジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸等の環状のジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸)等が挙げられる。
これらのうち、組成物の皮膚への浸透を促進する効果に優れ、入手が容易でかつ安価である点で、飽和直鎖のジカルボン酸、特に、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸;並びに、環状のジカルボン酸、特に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、及びテレフタル酸が好ましい。中でも、コハク酸、アジピン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が最も好ましい。
好ましいグリコールエーテル誘導体として、それには限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルのコハク酸エステル、エチレングリコールモノメチルエーテルのアジピン酸エステル、エチレングリコールモノメチルエーテルの1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルのコハク酸エステル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルのアジピン酸エステル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルの1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0017】
グリコールエーテル、及び/又はその誘導体を含む場合のその含有量は、組成物の全量に対して、約0.001重量%以上が好ましく、約1重量%以上がより好ましく、約10重量%以上がさらに好ましい。この範囲であれば、アゼライン酸を十分に溶解させることができる。
また、グリコールエーテル、及び/又はその誘導体を含む場合のその含有量は、組成物の全量に対して、約70重量%以下が好ましく、約60重量%以下がより好ましく、約55重量%以下がさらに好ましい。この範囲であれば、べたつきのない良好な使用感が得られる。
【0018】
低級アルコール
低級アルコールは、一般に、溶解剤又は基剤等として、化粧品や医薬外用剤に添加されている。本発明では、化粧品や医薬外用剤に使用される公知の炭素数1〜4の一価アルコールを制限なく使用できる。
このような公知の炭素数1〜4の一価アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、及びtert-ブチルアルコールが挙げられる。中でも、エタノール、及びイソプロピルアルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0019】
一価の炭素数1〜4の低級アルコールを含む場合のこの低級アルコールの含有量は、組成物の全量に対して、約1重量%以上が好ましく、約3重量%以上がより好ましく、約5重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、アゼライン酸を十分に溶解させることができる。
また、この低級アルコールを含む場合の低級アルコールの含有量は、組成物の全量に対して、約40重量%以下が好ましく、約30重量%以下がより好ましく、約20重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、皮膚刺激の少ない組成物が得られる。
【0020】
(i)多価アルコール、(ii)グリコールエーテル、及び/又はその誘導体、及び(iii)一価の炭素数1〜4の低級アルコールにおいて、(i)、(ii)、及び(iii)の2以上を含む場合のこれら溶解補助剤の合計含有量は、組成物の全量に対して、約2重量%以上が好ましく、約5重量%以上がより好ましく、約10重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、アゼライン酸を十分に溶解させることができる。
また、上記溶解補助剤の合計含有量は、組成物の全量に対して、約90重量%以下が好ましく、約80重量%以下がより好ましい。この範囲であれば、使用感に問題がない組成物が得られる。
【0021】
溶解補助剤の好ましい組み合わせ
上記の通り、本発明の組成物は、好ましくは、多価アルコール、グリコールエーテル、及びその誘導体、並びに炭素数1〜4の一価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶解補助剤を含むが、(i)多価アルコールの少なくとも1種、(ii)グリコールエーテル、及びその誘導体の少なくとも1種、及び(iii)炭素数1〜4の一価アルコールの少なくとも1種において、(i)、(ii)、及び(iii)の2を含むことが好ましく、特に、(i)と(ii)を含むこと、及び(i)と(iii)を含むことがより好ましい。また、(i)、(ii)、及び(iii)を含むことも好ましい。(i)、(ii)、及び(iii)の2以上を含む場合、(ii)はジエチレングリコールモノエチルエーテルであることが好ましく、(iii)はエタノールであることが好ましい。
多価アルコール、一価アルコール、並びにグリコールエーテル及び/又はその誘導体を適宜組み合わせて含むことにより、アゼライン酸が十分に溶解し、かつ使用感のよい組成物となる。
【0022】
溶解補助剤(アルコール類、グリコールエーテル類)の好ましい組み合わせを、以下の表1に示す。
【表1】

【0023】
アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩
本発明の組成物は、さらに、アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩(以下、「アスコルビン酸類」ということもある)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、それにより、組成物の抗菌力が向上する。アスコルビン酸類はそれ自体抗菌力を有さないが、アゼライン酸の抗菌力を増強し、一層優れた抗菌作用が得られる。
また、アスコルビン酸類を含むことにより、アゼライン酸の浸透性を向上させることができる。また、本発明の組成物がアスコルビン酸類を含むことにより、アスコルビン酸類、アゼライン酸のそれぞれが有するメラニン生成抑制作用、抗酸化作用、及び/又は皮脂分泌抑制作用が増強されるため、ニキビの予防、ニキビの悪化の防止、ニキビ痕の色素沈着の改善等に効果的である。
【0024】
<アスコルビン酸>
本発明で用いられるアスコルビン酸は、化粧品、又は医薬品、若しくは医薬部外品の外用剤の成分として用いられるものであれば特に限定されない。例えば、ビタミンCの慣用名で知られるL−アスコルビン酸が挙げられる。
【0025】
<アスコルビン酸誘導体>
また、アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸と同様、化粧品、又は医薬品、若しくは医薬部外品の外用剤の成分として用いられるものであれば特に限定されず、任意のエステル誘導体またはエーテル誘導体を使用できる。特に、水溶性の、又は水溶性が高いエステル誘導体またはエーテル誘導体が好ましい。水溶性の、又は水溶性が高いアスコルビン酸エステル誘導体としては、例えば、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸ジリン酸エステル、及びL−アスコルビン酸トリリン酸エステルのようなL−アスコルビン酸のリン酸エステル、並びにL−アスコルビン酸−2−硫酸エステルなどが挙げられる。また、水溶性の、又は水溶性が高いアスコルビン酸エーテル誘導体としては、例えば、アスコルビン酸エチル、L−アスコルビン酸−2−グルコシドなどが挙げられる。
【0026】
<アスコルビン酸又はその誘導体の塩>
アスコルビン酸、又はその誘導体の塩としては、例えば、ナトリウム、及びカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属塩、並びにアルミニウム等の多価金属塩などの金属塩;アンモニウム、及びトリシクロヘキシルアンモニウム等のアンモニウム塩;並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩を挙げることができる。
【0027】
アスコルビン酸類の好ましいものとしては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、アスコルビン酸エチル、及びそれらの塩が挙げられ、皮膚又は粘膜に対する安全性の高さと作用効果の高さから、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、アスコルビン酸エチル、及びそれらの塩が特に好ましい。
【0028】
アスコルビン酸類の含有量は、組成物の全量に対して、約0.1重量%以上が好ましく、約0.2重量%以上がより好ましく、約0.5重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、抗菌力向上効果が十分に得られる。
また、アスコルビン酸類の含有量は、組成物の全量に対して、約20重量%以下が好ましく、約10重量%以下がより好ましく、約5重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、皮膚への刺激が抑えられ、良好な使用感が得られる。
【0029】
製剤形態
本発明の組成物は、アゼライン酸を基剤又は担体に溶解させ、必要に応じてその他の添加剤やその他の有効成分を添加し、さらにpHを3〜6.5に調整することにより、化粧品、医薬部外品、又は医薬品用の製剤とすることができる。
【0030】
組成物の形態は特に限定されず、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スティック剤、及び不織布に薬液を含浸させたシート剤などが挙げられる。これらの製剤は、例えば、医薬品に関する第15改正日本薬局方製剤総則に記載の方法に準じて製造することができる。中でも、液剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、エアゾール剤、スティック剤、及びシート剤などが好ましく、液剤、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、及びシート剤などがより好ましい。
クリーム剤、及び乳剤のように、油性基剤と水性基剤とを含む場合は、W/O型でもよく、O/W型でもよいが、O/W型が好ましい。
組成物の用途としては具体的には、例えば、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、美容液、日焼け止め剤、パック、マスク、ハンドクリーム、ボディローション、及びボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ひげそり剤、ボディーシャンプー、シャンプー、リンス、及びトリートメントのような洗浄用化粧料;リップクリーム、及び口紅などの口唇用化粧料;除毛剤;並びに浴用剤などが挙げられる。
【0031】
基剤又は担体
基剤又は担体としては、上記の通り、多価アルコール、グリコールエーテル及びその誘導体、並びに一価の炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを用いるのが好ましい。
さらに、アゼライン酸を溶解型にすることができる範囲で、化粧品、医薬部外品、又は医薬品の基剤又は担体として公知のものを配合することができる。このような公知の基剤又は担体として、例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α−オレフィンオリゴマー、及び軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、及びシリコーンレジンのようなシリコーン油;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコールのような高級アルコール;コレステロール、フィトステロール、及びヒドロキシステアリン酸フィトステリルのようなステロール類;ホホバ油、メドフォーム油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、椿油、スクワラン、シアバター、及びコメ胚芽油のような植物油;ラノリン、オレンジラフィー油、スクワラン、及び馬油のような動物油;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化グアガム、及びアセチル化ヒアルロン酸のような天然高分子誘導体;ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、及びアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体のような合成高分子;カラギーナン、アルギン酸、セルロース、グアーガム、クインスシード、デキストラン、ジェランガム、及びヒアルロン酸のような天然高分子;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、ホホバ油、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルのようなエステル類;デキストリン、及びマルトデキストリンのような多糖類;コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、及びクエン酸などの有機酸;水などの水系基剤などが挙げられる。
【0032】
多価アルコール、グリコールエーテル及びその誘導体、並びに一価の炭素数1〜4の低級アルコール以外の基剤又は担体を用いる場合は、それらの基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
添加剤
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、又は医薬品に添加される公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、保存剤、pH調整剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、香料、及びパール光沢付与剤等を添加することができる。
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコフェロール誘導体、エリソルビン酸、及びL−システイン塩酸塩などが挙げられる。
【0034】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、及びテトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO−40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO−50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80のような硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、及びイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、及びオレイルアミンのようなアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、及びPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのようなシリコーン系界面活性剤;リン脂質、サーファクチン、及びサポニンなどの天然界面活性剤;ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、及びステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミドなどの脂肪酸アミドアミン;トリラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、及びジ-2-エチルヘキシルアミンなどのアルキルアミン;ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、及びラウリルヒドロキシスルホベタインなどのベタイン系両性界面活性剤などが挙げられる。
【0035】
増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、及びセルロース系増粘剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びカルボキシエチルセルロースなど)及びこれらの塩などが挙げられる。
【0036】
防腐剤、又は保存剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸およびその塩、グルコン酸クロルヘキシジン、アルカンジオール、及びグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0037】
pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、及び硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、及びコハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムなど)、及び有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
【0038】
安定化剤としては、例えば、エデト酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、及びブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
刺激低減剤としては、例えば、甘草エキス、及びアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
その他の有効成分
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含むことができる。有効成分の具体例としては、例えば、保湿成分、抗炎症成分、抗菌又は殺菌成分、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、血行促進成分、角質軟化成分、美白成分、収斂成分、及び紫外線防御成分などが挙げられる。
【0041】
保湿成分としては、例えば、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、及びジグリセリンのような多価アルコール;グルコース、マルトース、及びトレハロースのような糖類;ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、及びキトサンのような高分子化合物;乳酸ナトリウム、及びピロリドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;セラミド、コレステロール、及びリン脂質のような脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、及びシソエキスのような植物抽出エキスなどが挙げられる。
【0042】
抗炎症成分としては、例えば、植物(例えば、コンフリー)に由来する成分、アラントイン、グリチルリチン酸又はその誘導体、酸化亜鉛、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロール、及びサリチル酸又はその誘導体などが挙げられる。
【0043】
抗菌又は殺菌成分としては、例えば、クロルヘキシジン、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、イオウ、レゾルシン、エタノール、塩化ベンゼトニウム、アダパレン、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、アルカンジオール、グリセリン脂肪酸エステル、塩酸アルキルジアミノグリシン、グルコン酸クロルヘキシジン、及びパラフェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。
【0044】
ビタミン類としては、例えば、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等のレチノール誘導体、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、d−δ−トコフェリルレチノエート、α−トコフェリルレチノエート、及びβ−トコフェリルレチノエート等のビタミンA類;dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、及びコハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、及びリボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β−ブトキシエチル、及びニコチン酸1−(4−メチルフェニル)エチル等のニコチン酸類;アスコルビゲン−A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、及びジパルミチン酸L−アスコルビルなどのビタミンC類;メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、及びコレカルシフェロールなどのビタミンD類;フィロキノン、及びファルノキノン等のビタミンK類;γ−オリザノール;ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩;チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、及びチアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’−リン酸ピリドキサール、及び塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、及びデオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;葉酸、及びプテロイルグルタミン酸等の葉酸類;ニコチン酸、及びニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテサイン、D−パンテチン、補酵素A、及びパントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;ビオチン、及びビオチシン等のビオチン類;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、及びアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等のアスコルビン酸誘導体であるビタミンC類;カルニチン、フェルラ酸、α−リポ酸、及びオロット酸等のビタミン様作用因子などが挙げられる。
【0045】
ペプチド又はその誘導体としては、例えば、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、及びアシル化ペプチド(パルミトイルオリゴペプチド、及びパルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)などが挙げられる。
【0046】
細胞賦活化成分としては、例えば、レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、及びパントテン酸類などのビタミン類;グリコール酸、及び乳酸などのα-ヒドロキシ酸類;タンニン;フラボノイド;サポニン;アラントイン;感光素301号などが挙げられる。
老化防止成分としては、例えば、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N−メチル−L−セリン、及びメバロノラクトン等が挙げられる。
【0047】
血行促進作用成分としては、例えば、植物(例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、又はトウモロコシ)に由来する成分;及びグルコシルヘスペリジンなどが挙げられる。
【0048】
角質軟化成分としては、例えば、サリチル酸、グリコール酸、フルーツ酸、フィチン酸、及びイオウなどが挙げられる。
美白成分としては、例えば、アスコルビン酸とその誘導体、アルブチン、トコフェロール、及びトラネキサム酸などが挙げられる。
収斂成分としては、例えば、パラフェノールスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛、メントール、及びエタノールなどが挙げられる。
紫外線防御成分としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、2,4,6-トリス〔4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕-1,3,5-トリアジン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピロン酸エチルヘキシル、エトルヘキシルトリアゾリン、パラアミノ安息香酸およびその誘導体、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、サチリル酸エチレングリコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、酸化チタン、及び酸化亜鉛などが挙げられる。
【0049】
その他の有効成分は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
容器
本発明の抗菌用組成物は、使用目的又は用途に応じ、適宜選択した形状、材質の容器に収容し、使用することができる。容器形状としては、ボトルタイプ、チューブタイプ、ジャータイプ、スポイドタイプ、ディスペンサータイプ、スティックタイプ、パウチ袋、及びチアパックなどを例示できる。また、容器材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE等)、ABS樹脂、AS樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリスチレン、ガラス、及び金属(アルミ等)などを例示できる。また、これらの材料は、強度、柔軟性、耐候性、遮光性、又は成分の安定性等を考慮し、各種コーティング処理を行ったり、これらの材料を例えば混合するなどして組み合わせたり、積層したりして、容器材料として用いることができる。
【0051】
使用方法
本発明の抗菌用組成物の使用方法は、使用対象の皮膚の状態、年齢、性別などによって異なるが、例えば以下の方法とすればよい。即ち、1日数回(例えば、約1〜5回、好ましくは1〜3回)、適量(例えば、約0.05〜5g)を皮膚に塗布すればよい。また、アゼライン酸の1日使用量が、例えば約0.0001〜0.5g、好ましくは約0.001〜0.1g、より好ましくは約0.01〜0.05gとなるように組成物を塗布すればよい。塗布期間は、例えば約7〜360日間、好ましくは約14〜180日間とすればよい。
本発明の抗菌用組成物の使用対象は、皮膚にニキビ、できもの、又は吹出物ができている人が好適である。
本発明の抗菌用組成物は、好ましくは、ニキビ、できもの、又は吹出物の原因菌(例えば、Propionibacterium acnes、又はStaphylococcus aureus)に対する抗菌用の組成物である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて、本発明を、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)アゼライン酸の溶解性の評価
DIGITAL MICROSCOPE VHX-900(KEYENCE製)を用いて、組成物を倍率1000倍で確認し、アゼライン酸の結晶を認めない場合を溶解型とし、アゼライン酸の結晶を認めた場合を分散型とした。
【0053】
(2)組成物の調製
下記表2〜4に組成を示す各例の組成物を調製した。表2〜4中の成分濃度はw/v%である。
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
(3)抗菌力試験
Propionibacterium acnes
Propionibacterium acnes(ATCC 6919)の菌液を、生菌数が約106CFU/mLになるように接種したGAMカンテン培地に、滅菌済みの穿孔カッター(TOYOBO:バイオプシーパンチ8mm、ステンレス製)で直径8mmの穴を開けた。穴内一杯に、各組成物を注入し(0.1mL)、37℃で、72時間培養後、菌の増殖に対する阻止円の大きさを測定した。
結果を上記表2、及び3に併せて示す。
アゼライン酸を溶解し、pHを2〜6.5に調整した実施例1〜6では、抗菌効果が認められた。一方、アゼライン酸を分散させた比較例1、pHが7.0の比較例2では、抗菌効果は認められなかった。また、アゼライン酸を含まない比較例3〜6も抗菌効果が認められなかった。
また、表3の比較例4及び6が抗菌力を示さないことから分かるように、アスコルビン酸は抗菌力を示さなかった。それにも関わらず、実施例3より実施例4の方が抗菌力が強く、また実施例5より実施例6の方が抗菌力が強かった。このことから、アスコルビン酸がアゼライン酸の抗菌力を増強したことが分かる。
【0057】
S.aureus
Staphylococcus aureus(ATCC 6538)の菌液を、生菌数が約106CFU/mLになるように接種したミューラーヒントン寒天培地に、滅菌済みの穿孔カッター(TOYOBO:バイオプシーパンチ8mm、ステンレス製)で直径8mmの穴をあけた。孔内一杯に各組成物を注入し(0.1mL)、33℃で24時間培養後、菌の増殖に対する阻止円の大きさを測定した。
結果を上記表4に併せて示す。
アゼライン酸を溶解し、pHを2〜6.5に調整した実施例7〜9では、抗菌効果が認められた。一方、アゼライン酸を含まない比較例7〜9では、抗菌効果は認められなかった。
【0058】
以下に、本発明の抗菌用組成物の処方例を示す。各成分の含有量の単位は、重量%である。
下記の各処方例の組成物は、DIGITAL MICROSCOPE VHX-900(KEYENCE製)を用いて、倍率1000倍で観察したところ、アゼライン酸の結晶を認めなかった。
処方例1 化粧水
アゼライン酸 5.0
濃グリセリン 2.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
ポリエチレングリコール 10.0
エタノール 7.0
ヒアルロン酸Na 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
水酸化カリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは6.4となるように調整し、ポリエチレンテレフタレート製ボトル容器に充填した。
【0059】
処方例2 クリーム
アゼライン酸 3.0
濃グリセリン 5.0
エタノール 5.0
カルボシキビニルポリマー 0.6
エデト酸ナトリウム 0.1
パルミチン酸イソプロピル 5.0
流動パラフィン 10.0
セトマクロゴール 1.5
モノステアリン酸グリセリン 2.0
セタノール 4.0
白色ワセリン 4.0
水酸化カリウム 適量
トリエタノールアミン 適量
精製水 残余
100.0
pHは5.8となるように調整し、HDPE製チューブ容器に充填した。
【0060】
処方例3 乳液
アゼライン酸 4.0
1,3−ブチレングリコール 10.0
ポリエチレングリコール 3.0
プロピレングリコール 2.0
キサンタンガム 0.3
パルミチン酸イソプロピル 2.0
流動パラフィン 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 5.0
白色ワセリン 10.0
水酸化カリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは6.2となるように調整し、ポリプロピレン製容器に充填した。
【0061】
処方例4 美容液
アゼライン酸 2.0
濃グリセリン 3.0
1,3−ブチレングリコール 10.0
プロピレングリコール 50.7
エタノール 3.0
エデト酸ナトリウム 0.1
水酸化カリウム 適量
トリエタノールアミン 適量
精製水 残余
100.0
pHは5.8となるように調整し、ポリプロピレン製ディスペンサー容器に充填した。
【0062】
処方例5 ゲル
アゼライン酸 4.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
エタノール 10.0
イソプロピルアルコール 3.0
カルボシキビニルポリマー 0.6
エデト酸ナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.3
水酸化カリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは6.4となるように調整し、ポリプロピレン製ジャー容器に充填した。
【0063】
処方例6 美容液
アゼライン酸 1.0
L−アスコルビン酸 3.0
1,3−ブチレングリコール 40.0
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 20.0
香料 0.1
水酸化カリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは3.5となるように調整し、ガラス製遮光スポイド容器に充填した。
【0064】
処方例7 美容液
アゼライン酸 5.0
L−アスコルビン酸 1.0
プロピレングリコール 10.0
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 60.0
香料 0.1
水酸化カリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは4.0となるように調整し、ガラス製遮光スポイド容器に充填した。
【0065】
処方例8 化粧水
アゼライン酸 2.0
アスコルビン酸エチル 2.0
グリセリン 2.0
ジプロピレングリコール 5.0
エタノール 2.0
ヒアルロン酸Na 0.05
キサンタンガム 0.05
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
水酸化カリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは6.0となるように調整し、ポリエチレンテレフタレート製ボトル容器に充填し、ポリプロピレン製フィルムでシュリンク包装を施した。
【0066】
処方例9 クリーム
アゼライン酸 3.0
アスコルビン酸エチル 1.0
グリセリン 5.0
スクワラン 10.0
テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 5.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.0
エデト酸ナトリウム 0.1
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイル
ジメチルタウリンNa)コポリマー 4.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
トリエタノールアミン 適量
精製水 残余
100.0
pHは6.0となるように調整し、EVOH/LDPE積層チューブ容器に充填した。
【0067】
処方例10 乳液
アゼライン酸 1.0
アスコルビン酸エチル 0.5
1,3−ブチレングリコール 10.0
ポリエチレングリコール 3.0
プロピレングリコール 2.0
キサンタンガム 0.3
パルミチン酸イソプロピル 2.0
流動パラフィン 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
水酸化カリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは6.2となるように調整し、ポリプロピレン製ボトル容器に充填した。
【0068】
処方例11 ゲル
アゼライン酸 1.0
アスコルビン酸エチル 1.5
1,3−ブチレングリコール 6.0
グリセリン 1.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 1.2
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
水酸化ナトリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは5.5となるように調整し、ポリプロピレン製ジャー容器に充填した。
【0069】
処方例12 美容液
アゼライン酸 5.0
アスコルビン酸エチル 1.0
プロピレングリコール 10.0
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 60.0
香料 0.1
水酸化ナトリウム 適量
精製水 残余
100.0
pHは4.0となるように調整し、ポリプロピレン製ディスペンサー容器に充填した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の抗菌用組成物は、アゼライン酸濃度が低いにもかかわらず、ニキビ、できもの、又は吹出物の原因菌に対する抗菌力が優れるため、化粧品、並びに医薬部外品、又は医薬の外用剤として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解型のアゼライン酸を0.1〜10重量%含み、pHが2〜6.5である抗菌用組成物。
【請求項2】
さらに、アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩が、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、アスコルビン酸エチル及びそれらの塩である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
アスコルビン酸、その誘導体、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を、組成物の全量に対して、0.1〜20重量%含む請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、多価アルコール、グリコールエーテル及びその誘導体、並びに炭素数1〜4の一価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶解補助剤を含有する請求項1〜4の何れかに記載の組成物。
【請求項6】
上記溶解補助剤が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
上記溶解補助剤がエタノールである請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
上記溶解補助剤がジエチレングリコールモノエチルエーテルである請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
上記溶解補助剤を、組成物の全量に対して、1〜80重量%含む請求項5〜8の何れかに記載の組成物。

【公開番号】特開2012−232970(P2012−232970A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32837(P2012−32837)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】