説明

抗菌組成物およびそれらの使用

本発明は、バイオフィルム包埋細菌の成長および増殖を予防するための、(a)カチオン性ポリペプチド、硫酸プロタミン、および(b)ビス−グアニド、クロルヘキシジン塩、を含む組成物を提供する。本発明は、そのような組成物を用いて様々な物体を作製するための方法をさらに提供する。前記物体は、カテーテルなどの医療器具、歯ブラシまたは台所用品などの消耗品、練り歯磨きをはじめとする口腔ケア消耗品、一般家庭用消毒薬をはじめとするクリーニング製品、化粧品、創傷ケア製品、およびパンツである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム包埋微生物の成長および増殖を阻害する新規抗菌組成物に関する。本組成物は、そのような生物の成長および増殖の阻害が望ましい様々な用途において有用である。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年1月11日出願の米国特許出願第11/331,423号の一部継続出願であり、ならびに2005年7月1日出願の米国特許仮出願第60/695,546号および2005年12月6日出願の米国特許仮出願第60/742,972号の利益を米国特許法119条(e)項に従って請求する、2007年5月18日出願の米国特許出願第11/750,826号の優先権を主張するものであり、前記出願のすべての開示が参照により本願に組み込まれる。
【0003】
尿路感染症(UTI)は、すべての院内感染の40%までを占める、最も一般的な院内感染である。UTIの原因の大部分は、経尿道フォーリーカテーテル、恥骨上カテーテルおよび腎瘻カテーテルをはじめとする尿道カテーテルの使用に随伴する。これらの尿道カテーテルは、老人、卒中罹病者、脊髄損傷患者、術後患者および閉塞性尿路疾患を有する者をはじめとする様々な集団に挿入される。尿道カテーテルの挿入および維持についての滅菌ガイドラインの厳守にもかかわらず、カテーテル関連UTIは、依然として大きな問題を呈している。例えば、入院している脊髄損傷患者のほぼ四分の一が、彼らの入院過程で症候性UTIを発現すると推定される。カテーテル関連UTIの症例のほぼ60〜70%をグラム陰性杆菌が、約25%を腸球菌が、および約10%をカンジダ種が占める。さらに、血管カテーテルをはじめとする留置医療器具は、静脈の通行をもたらすため入院患者の管理には必須になってきている。これらのカテーテルならびに他のタイプの医療器具、例えば腹膜カテーテル、心血管器具、整形外科用インプラントおよび他の補綴器具から得られる恩恵は、多くの場合、感染性合併症によって相殺される。これらの感染性合併症の原因となる最も一般的な生物は、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である。血管カテーテルの場合、これら2つの生物は、すべての感染性生物のほぼ70〜80%を占め、表皮ブドウ球菌が最も一般的な生物である。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、真菌性作用因子、は、カテーテル感染症の10〜15%を占める。
【0004】
近年、器具関連感染症の発生率を低下させる手段として、器具の表面または中に抗菌剤および抗生物質を封鎖し、その後、その器具を血管系または尿管内に配置することに非常に大きな努力が払われている。これらの抗菌剤は、様々な化学組成のものであり、それらとしては、カチオン性ポリペプチド(プロタミン、ポリリシン、リゾチームなど)、消毒剤(クロルヘキシジン、トリクロサンなど)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム、Tween(登録商標)−80、サーファクチンなど)、第四級アンモニウム化合物(塩化ベンズアルコニウム、塩化トリドデシルメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウムなど)、銀イオン/化合物、およびニトロフラゾンを挙げることができる。
【0005】
抗菌カテーテルの主な作製方法としては、液浸またはフラッシング、コーティング、薬物−ポリマーコンジュゲートおよび含浸が挙げられる(Tunneyら,Rev.Med.Microbiol,7(4):195−205,1996)。臨床環境では留置直前の液浸によって適するカテーテルを処理することができ、一定の状況では臨床医にその自由度および指揮権が与えられる。幾つかの研究により、抗菌剤でコーティングしたカテーテルの臨床的有効度が調査されている。ミノサイクリンおよびEDTAでコーティングしたポリウレタンカテーテルは、最近の血管カテーテル関連感染症の低減に可能性を示した(Raadら,Clin.Infect.Dis.,25:149−151,1997)。ミノサイクリンおよびリファンピンコーティングは、カテーテル関連感染症のリスクを有意に低減することが証明された(Raadら,Crit.Care Med.,26:219−224,1998)。尿道カテーテルにコーティングされたミノサイクリンは、コロニー形成に対して多少の防御をもたらすことが証明された(Darouicheら,Int.J.Antimicrob.Ag,8:243−247,1997)。Johnsonらは、市販のニトロフラゾンでコーティングしたシリコンカテーテルの実質的なインビトロ抗菌活性を記載した(Antimicrob.Agents Chemother.,43:2990−2995,1999)。医療器具のための抗菌コーティング剤としての銀含有化合物の抗細菌活性は、広く調査されている。クロルヘキシジンと併用される銀−スルファジアジンは、中心静脈カテーテルのコーティング剤として特別な関心を持たれている(Stickler,Curr.Opin.Infect.Dis.,13:389−393,2000;Darouicheら,New Eng.J.Med,340:1−8,1999)。
【0006】
液浸またはコーティング技術による医療器具への抗菌剤の装填は、比較的簡単であるという利点を有する。しかし、添合することができる薬物の限られた量では、持続性抗菌作用に不十分である場合があり、その器具の臨床的挿入後の薬物の放出は、急速であり、比較的無制御である。これらの問題を低減する手段は、医療器具のポリマーマトリックスにそのポリマーの合成段階またはその器具の製造段階で抗菌剤を直接添合することによる手段である。脳脊髄液シャントの感染を防止しようとしてリファンピシンがシリコーンに添合され、多少成功している(Schierholzら,Biomaterials,18:839−844,1997)。ヨウ素も医療器具生体材料に添合された。冠動脈ステントは、シリコーンにヘパリンを共有結合させ、その後、そのヘパリン化した表面に結合した架橋コラーゲンの中に抗生物質を閉じ込めることによって、抗血栓および抗細菌活性を有するように改造された(Fallgrenら,Zentralbl.Bakteriol.,287:19−31,1998)。
【0007】
Welleらは、医療器具をフラッシングするためのキットの作製方法を開示した(米国特許第6,187,768号)。このキットは、カテーテル内で成長した細菌によって引き起こされる感染を予防するために有用な抗生物質、抗凝血剤(硫酸プロタミン)および抗血栓剤またはキレート剤を含有する溶液を含む。
【0008】
Raadらは、ミノサイクリンとEDTAの混合物の医薬組成物が、カテーテルポートの開通性の維持に有用であることを開示した(米国特許第5,362,754号)。最近、RaadおよびSheretzは、非グリコペプチド抗菌剤、抗血栓剤、抗凝血剤、ならびにEDTA、EGTAおよびDTPAからなる群より選択されるキレート剤を用いて有効なカテーテルフラッシュ溶液を調製できることを開示した(米国特許第5,688,516号)。
【0009】
Welleらは、硫酸プロタミンを含む、医療器具において使用するための幾つかの抗凝血剤の使用を教示している(米国特許第6,187,768号)。硫酸プロタミンと一定の抗生物質の併用は、カテーテル随伴細菌、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対して相乗効果を有することが証明された(Sobohら.,Antimicrob.Agents.Chemother.,39:1281−1286,1995;Richardsら,ASAIO Trans,36:296−299)。Kimら(Am.J.Kidney Dis.,39:165−173,2002)は、そのカフおよびチューブにポリマーマトリックス中にクロルヘキシジン、銀−スルファジアジンおよびトリクロサンを含浸させることによって、抗菌剤含浸腹膜透析カテーテルを開発した。Foxらは、銀塩およびクロルヘキシジンを含む相乗作用性組成物を有する医療器具を開示している(米国特許第5,019,096号)。Solomanらは、クロルヘキシジンを含有する抗感染性医療品を開示している(米国特許第6,261,271号)。Modakらは、米国特許第6,706,024号および米国特許第6,843,784号に、クロルヘキシジン、トリクロサンおよび銀化合物含有医療器具を開示している。
【0010】
抗菌組成物の商業的および消費者向け使用の数は拡大しており、バイオフィルム包埋微生物の成長および増殖を阻害する組成物などの有効な抗菌組成物は、おびただしい数の用途に有用である。そのような抗菌組成物は、それ自体で使用される場合もあり、消耗品に添合される場合もあり、または細菌が無いことが望ましい表面に組み込まれる場合もある。
【0011】
抗菌組成物は、口腔消耗品、例えば、練り歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、ブレスミントおよび類似の消耗品へのそのような化合物または組成物の添合を含めて、口腔ケアでの使用が拡大している。また、口腔ケアのために、微生物に対して耐性である表面を伴う製品、例えば、デンタルフロス、義歯およびマウスガードを有することは、多くの場合、望ましい。
【0012】
抗菌化合物に対する工業的利用としては、乳製品製造ラインでの、前記ライン用のフラッシュもしくは洗剤としてのそれらの使用、または前記ラインに例えばコーティングとして組み込まれるそれらの使用;食品および飲料製造または計量分配の際の液体分配ラインでのそれらの使用、例えば、清涼飲料の製造の際の高糖分またはシロップ分配用のフィーダーラインにおけるコーティングとしての使用;パルプおよび製紙工場でのそれらの使用(生物付着のため);化粧品の中に添合されるまたは化粧品を収容するびんにコーティングされる、生産ライン装置から最終消耗品に至るまでの化粧品の製造および包み込みの際のそれらの使用;水処理施設におけるそれらの使用;採鉱に用いられる抽出工程でのそれらの使用;油およびガスのパイプラインにおける、油田のサワー化の際の、ならびに冷却塔における、微生物によって引き起こされるまたは加速される腐食を防止するためのそれらの使用が挙げられる。
【0013】
抗菌剤の消費者向けおよび小型商業使用としては、一般家庭用消毒薬、洗濯用洗剤、掃除用具補充品、創傷ケア、真空システムおよび真空フィルター、ペイントおよび壁張り材、加湿機および加湿機のフィルター、電気掃除機、玩具へのそれらの組込み、ならびに洗濯機、食器洗浄機、動物用水皿、浴室タイルおよび装備品、シーラントおよびグラウト、タオル、Tupperware(登録商標)、皿、まな板、食器乾燥用トレー、浴槽(渦流およびジャクージ浴槽を含む)、養魚池、スイミングプール、バードバス、ガーデンホース、プランターならびに温水浴槽の内側および外側を含めて、様々な家庭用品のためのプラスチックへの添合が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,187,768号
【特許文献2】米国特許第5,362,754号
【特許文献3】米国特許第5,688,516号
【特許文献4】米国特許第6,187,768号
【特許文献5】米国特許第5,019,096号
【特許文献6】米国特許第6,261,271号
【特許文献7】米国特許第6,706,024号
【特許文献8】米国特許第6,843,784号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Tunneyら,Rev.Med.Microbiol,7(4):195−205,1996
【非特許文献2】Raadら,Clin.Infect.Dis.,25:149−151,1997
【非特許文献3】Raadら,Crit.Care Med.,26:219−224,1998
【非特許文献4】Darouicheら,Int.J.Antimicrob.Ag,8:243−247,1997
【非特許文献5】Antimicrob.Agents Chemother.,43:2990−2995,1999
【非特許文献6】Stickler,Curr.Opin.Infect.Dis.,13:389−393,2000
【非特許文献7】Darouicheら,New Eng.J.Med,340:1−8,1999
【非特許文献8】Schierholzら,Biomaterials,18:839−844,1997
【非特許文献9】Fallgrenら,Zentralbl.Bakteriol.,287:19−31,1998
【非特許文献10】Sobohら.,Antimicrob.Agents.Chemother.,39:1281−1286,1995
【非特許文献11】Richardsら,ASAIO Trans,36:296−299
【非特許文献12】Am.J.Kidney Dis.,39:165−173,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、より強力な抗菌作用またはより低い濃度で抗菌作用を有する、新規で有効な抗菌組成物が非常に望ましい。そのような組成物は、人間および家畜に対して安全であり有害でなければ、さらにいっそう望ましい。そのような組成物は、その製造費用が安いと、または公知であり個々に十分に特製付けされている製品の相乗的もしくは非常に効果的な併用剤から作られると、さらにいっそう望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの実施態様は、バイオフィルム包埋微生物の成長および増殖を防止するための組成物を提供し、前記組成物は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビス−グアニドまたはその塩を含む。
【0018】
本発明の1つの実施態様において、前記組成物は、バイオフィルム包埋微生物の器具上での成長および増殖の防止に有用である。
【0019】
本発明の1つの実施態様において、前記カチオン性ポリペプチドは、前記組成物の約12.5mg/mlと約100mg/mlの間である。
【0020】
本発明のもう1つの実施態様において、前記ビス−グアニドは、前記組成物の約100mg/mlと約400mg/mlの間である。
【0021】
さらなる実施態様において、本発明による組成物は、バイオフィルム包埋細菌の成長および増殖の防止に有効である。
【0022】
細菌としては、グラム陰性細菌、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providentia stuartii)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、有核紡錘菌(Fusobacterium nucleatum)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)およびプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0023】
細菌としては、グラム陽性細菌、例えば、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、緑色連鎖球菌(Streptococcus viridans)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ならびにアクチノマイセス・ネスランディー(Actinomyces naeslundii)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0024】
もう1つの実施態様において、組成物は、バイオフィルム包埋真菌(これには、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を挙げることができる)の成長および増殖の防止に有効である。
【0025】
さらなる実施態様において、前記カチオン性ポリペプチドは、硫酸プロタミン、デフェンシン、ラクトペルオキシダーゼおよびリゾチームからなる群より選択される。
【0026】
なおさらなる実施態様において、前記ビス−グアニドは、クロルヘキシジン、アレキシジン、および重合体ビス−グアニドからなる群より選択される。
【0027】
なおさらなる実施態様において、前記ビス−グアニドは、クロルヘキシジン塩基またはクロルヘキシジン塩である。
【0028】
前記クロルヘキシジン塩は、ジグルカン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよび二塩酸クロルヘキシジンからなる群より選択することができる。
【0029】
さらなる実施態様において、前記カチオン性ポリペプチドは、硫酸プロタミンであり、前記ビス−グアニドは、クロルヘキシジン塩である。
【0030】
なおさらなる実施態様において、組成物は、約100mg/mlの硫酸プロタミンおよび約400mg/mlのクロルヘキシジン塩を含む。
【0031】
さらなる実施態様において、本発明による組成物は、1つ以上の成分、例えば、水;結着剤、結合剤もしくはカップリング剤または架橋剤;ビス−フェノール;第四級アンモニウム化合物;マレイミド;抗生物質;およびpH調整剤をさらに含む。
【0032】
もう1つの側面において、本発明は、物体の作製方法を提供し、この方法は、本明細書に開示する方法に従って組成物でその物体の少なくとも1つの表面を処理することを含む。
【0033】
1つの実施態様において、前記物体は器具である。
【0034】
さらなる側面において、本発明は、物体の作製方法を提供し、この方法は、その物体を形成するために使用されるポリマーに本発明による組成物を添合することを含む。
【0035】
1つの実施態様において、前記物体は器具である。
【0036】
もう1つの側面において、本発明は、物体の作製方法を提供し、この方法は、その物体の少なくとも1つの表面を本発明による組成物でコーティングすることを含む。
【0037】
1つの実施態様において、前記組成物は、有効量の硫酸プロタミンおよびクロルヘキシジン塩を含む。
【0038】
もう1つの実施態様において、前記物体は、乳製品製造ラインまたは乳製品製造ライン用のフィルターである。
【0039】
もう1つの実施態様において、前記物体は、食品または飲料を製造するための装置または加工ラインである。
【0040】
もう1つの実施態様において、前記物体は、化粧品製造用の装置である。
【0041】
もう1つの実施態様において、前記物体は、食品、飲料または化粧品の容器である。
【0042】
もう1つの実施態様において、前記物体は、水処理施設または冷却塔の一部である。
【0043】
もう1つの実施態様において、前記物体は、HVACシステムまたはHVACシステム用のフィルターである。
【0044】
もう1つの実施態様において、前記物体は、真空機器、電気掃除機、または真空機器もしくは電気掃除機のフィルターもしくはバッグである。
【0045】
もう1つの実施態様において、前記物体は、油またはガスのパイプラインである。
【0046】
もう1つの実施態様において、前記物体は、窓、ドア、または窓枠もしくはドア枠である。
【0047】
もう1つの実施態様において、前記物体は、加湿機または加湿機のフィルターである。
【0048】
もう1つの実施態様において、前記物体は、玩具である。
【0049】
もう1つの実施態様において、前記物体は、冷却塔の構成部品である。
【0050】
もう1つの実施態様において、前記物体は、医療または歯科用器械である。
【0051】
もう1つの実施態様において、前記物体は、家庭用品、例えば、洗濯機、洗濯機のライナー、食器洗浄機、食器洗浄機のライナー、動物用水皿、浴室タイル、浴室装備品、シャワー、ヘッド、シーラント、グラウト、タオル、食品もしくは飲料保存容器、皿、まな板、食器乾燥用トレー、または浴室装備品、例えば浴槽、渦流浴槽、シンク、ボトル、電気掃除機、便蓋、便座、スイミングプールのライナー、スイミングプールのスキマー、スイミングプールのフィルター、温水浴槽ライン、温水浴槽のフィルター、皿、プレート、カップ、どんぶり、フォーク、ナイフ、スプーン、台所用品、温水浴槽、調理台、または便器である。
【0052】
もう1つの実施態様において、前記物体は、屋外給水装置、例えば養魚池、スイミングプール、バードバス、ガーデンホース、プランター、温水浴槽、水入れ、散水ライン、または散水機である。
【0053】
本発明のもう1つの実施態様において、前記器具は、医療器具である。
【0054】
本発明のもう1つの実施態様において、前記医療器具は、カテーテルであり得る。
【0055】
カテーテルは、留置カテーテル、例えば、中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、動脈カテーテル、血液透析カテーテル、臍帯カテーテル、経皮非トンネル式シリコーンカテーテル、カフ付きトンネル式中心静脈カテーテル、または皮下中止静脈ポートであり得る。
【0056】
カテーテルは、留置カテーテル、例えば、尿道カテーテル、腹膜カテーテル、または中心静脈カテーテルであり得る。
【0057】
もう1つの実施態様において、器具としては、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、声帯補綴具、コンタクトレンズ、または子宮内器具を挙げることができる。
【0058】
さらなる側面において、本発明は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビス−グアニドまたはその塩を含む、感染症を予防するための組成物を提供する。
【0059】
1つの実施態様において、前記感染症は、器具関連感染症である。
【0060】
もう1つの実施態様において、前記組成物は、消耗品に添合される。
【0061】
もう1つの実施態様において、前記消耗品は、獣医学および人間用の口腔消耗品、例えば、歯ブラシ、練り歯磨き、マウスウォッシュ、デンタルフロス、チューインガム、ブレスミント、義歯またはマウスガードである。
【0062】
もう1つの実施態様において、前記消耗品は、一般家庭用消毒薬、窓用クリーナ、浴室用クリーナ、台所用クリーナ、床用クリーナ、織物柔軟剤、洗濯用洗剤、掃除用具補充品である。
【0063】
もう1つの実施態様において、前記消耗品は、包帯または粘着包帯または創傷被覆材、例えば、バンドエイド、体に吸収されないガーゼ/スポンジ被覆材、親水性創傷被覆材、閉鎖性創傷被覆材、ヒドロゲル創傷および熱傷被覆材、スプレーアプリケータ、軟膏、ローション、クリームおよび縫合糸である。
【0064】
もう1つの実施態様において、前記消耗品は、化粧品、例えば、おしろい、リップクリーム、口紅、アイライナーまたはマスカラである。
【0065】
もう1つの実施態様において、前記消耗品は、ペイントまたは壁張り材である。
【0066】
もう1つの実施態様において、前記消耗費は、加湿機のフィルターである。
【0067】
もう1つの実施態様において、前記消耗費は、ゴミ袋である。
【0068】
さらなる側面において、本発明は、器具の作製方法を提供し、この方法は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビス−グアニドまたはその塩でその器具の少なくとも1つの表面を処理することを含む。
【0069】
さらなる側面において、本発明は、(a)カチオン性ポリペプチド、(b)ビス−グアニドまたはその塩、および(c)前記カチオン性ポリペプチドおよび前記ビス−グアニドまたはその塩がコーティングされている、それらが組み込まれている、またはそれらで処理されている医療器具を含む構成物を提供する。
【0070】
さらなる側面において、本発明は、人間および動物における感染症を予防および治療するための、本明細書に記載する任意の組成物の使用を提供する。
【0071】
さらなる側面において、本発明は、哺乳動物に内植するための医療器具の作製における、本発明に記載する任意の組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】バイオフィルム包埋大腸菌(E.coli)の数(CFU)に対する陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)、50μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および50μg/mlの硫酸プロタミンと12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩の併用剤(PS+CHX)の効果を示す棒グラフである。
【図2】バイオフィルム包埋緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の数(CFU)に対する陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)、25μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、25μg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および25μg/mlの硫酸プロタミンと25μg/mlのクロルヘキシジン塩の併用剤(PS+CHX)の効果を示す棒グラフである。
【図3】バイオフィルム包埋表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の数(CFU)に対する陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)、12.5μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および12.5μg/mlの硫酸プロタミンと12.5μg/mlのクロルヘキシジン塩の併用剤(PS+CHX)の強化された効果を示す棒グラフである。
【図4】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)、100mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および100mg/mlの硫酸プロタミンと100mg/mlのクロルヘキシジン塩の併用剤(PS+CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルの大腸菌(E.coli)に対する抗付着効果を示す棒グラフである。
【図5】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)、100mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および100mg/mlの硫酸プロタミンと100mg/mlのクロルヘキシジン塩の併用剤(PS+CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する強化された抗付着効果を示す棒グラフである。
【図6】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)、100mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)、および100mg/mlの硫酸プロタミンと100mg/mlのクロルヘキシジン塩の併用剤(PS+CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルの表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対する抗付着効果を示す棒グラフである。
【図7】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)および400mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルの大腸菌(E.coli)に対する抗付着活性の耐久性を示す折れ線グラフである。
【図8】100mg/mlの硫酸プロタミン(PS)および400mg/mlのクロルヘキシジン塩(CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルの表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対する抗付着活性の耐久性を示す折れ線グラフである。
【図9】バイオフィルム包埋大腸菌(Escherichia coli)の数(CFU)に対する陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)、0.4μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、0.4μg/mlのクロルヘキシジン(CHX)、および0.4μg/mlの硫酸プロタミンと0.4μg/mlのクロルヘキシジンの併用剤(PS+CHX)の効果を示す棒グラフである。
【図10】バイオフィルム包埋セレウス菌(Bacillus cereus)の数(CFU)に対する陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)、6.25μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、3μg/mlのクロルヘキシジン(CHX)、および6.25μg/mlの硫酸プロタミンと3μg/mlのクロルヘキシジンの併用剤(PS+CHX)の効果を示す棒グラフである。
【図11】バイオフィルム包埋ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)のlog CFU/mlに対する陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)、6.25μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、3.125μg/mlのクロルヘキシジン(CHX)、および6.25μg/mlの硫酸プロタミンと3.125μg/mlのクロルヘキシジンの併用剤(PS+CHX)の効果を示す棒グラフである。
【図12】バイオフィルム包埋アクチノマイセス・ネスランディー(Actinomyces naeslundii)のlog CFU/mlに対する陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)、50μg/mlの硫酸プロタミン(PS)、12.5μg/mlのクロルヘキシジン(CHX)、および50μg/mlの硫酸プロタミンと12.5μg/mlのクロルヘキシジンの併用剤(PS+CHX)の効果を示す棒グラフである。
【図13】バイオフォルム包埋プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)の吸光度に対する硫酸プロタミンとクロルヘキシジンの様々な濃度の併用剤(PS+CHX)100/25、50/12.5および23/6.25それぞれと陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)の効果を示す棒グラフである。
【図14】バイオフォルム包埋ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)の吸光度に対する硫酸プロタミンとクロルヘキシジンの様々な濃度の組み合わせ(PS+CHX)50/12.5、25/6.25および12.5/3.125それぞれと陰性対照(NC)(活性成分を伴わない溶液)の効果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
少なくとも1つのカチオン性ポリペプチドおよび少なくとも1つのビス−グアニドを含む組成物は、強化された抗菌活性を有する。特に、そのような化合物は、バイオフィルムに包埋された微生物(細菌種と真菌種の両方を含む)の成長および増殖を防止するために有効である。強化された抗菌活性は、有効な抗菌組成物を生じさせるために用いる必要があるこれらの化合物のそれぞれが少量であることによって証明される。これらの化合物の必要総量は、それらの任意の化合物をそれらだけで使用した場合に必要とされるものより少ない。特に、生物学的に許容される、少量のカチオン性ポリペプチド、およびより低い濃度で生物学的に許容される、少量のビス−グアニドを用いることができ、これらは有効な抗菌剤である。
【0074】
従って、本発明の1つの実施態様は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビス−グアニドまたはその塩を含む、バイオフィルム包埋微生物の成長および増殖を防止するための組成物を提供する。
【0075】
本発明の1つの実施態様は、内植された医療器具またはカテーテルによって引き起こされるまたは悪化する感染症、例えば、留置カテーテルによって引き起こされる尿管感染症を予防するための組成物を提供し、この予防は、前記医療器具またはカテーテルを前記組成物でコーティングすることによって行われ、そのような組成物は、(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビス−グアニドまたはその塩を含む。
【0076】
本発明の相乗作用性抗菌組成物は、有効であるために活性化合物の(過去に用いられたものと比較して)著しく少量しか必要としない。本発明による組成物は、別々の化合物のものを含む特性、しかし、有効度および適用範囲の点でそれらを超える特性を有することができる。活性化合物または成分の非常に低いレベルおよび従って増された有効度は、本発明の実施態様を非常に望ましいものにし、製造を比較的経済的にするが、一定の用途に望まれる場合にはこれらの化合物のより高い濃度を用いることができる。これらの組成物を使用するさらなる利点は、バイオフィルム包埋細菌および真菌および特に、カテーテルなどの医療器具にコロニーを形成する細菌および真菌種、の成長の防止の有効性である。本発明の組成物の調製に有用なカチオン性ポリペプチドの例としては、硫酸プロタミン、デフェンシン、ラクトペルオキシダーゼ、およびリゾチームが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施態様において、前記カチオン性ポリペプチドは、硫酸プロタミンである。
【0077】
本組成物に含まれるカチオン性ポリペプチドの量は、好ましくは約10mg/mlから約200mg/mlの間、およびさらに好ましくは約12.5mg/mlから約100mg/mlの間である。この範囲の上限を用いて、使用前に希釈することができる濃縮生成物を調製することができる。
【0078】
本発明の組成物の調製に有用なビス−グアニドの例としては、クロルヘキシジン、アレキシジン、または重合体ビス−グアニドが挙げられるが、これらに限定されない。ビス−グアニドは、適する塩の形態である場合がある。ビス−グアニド塩は周知である。本発明の好ましい実施態様において、本組成物は、クロルヘキシジン塩、およびさらに好ましくはジグルカン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよび二塩酸クロルヘキシジンを使用して調製される。
【0079】
組成物に含まれるビス−グアニドの量は、好ましくは約10mg/mlから約400mg/mlの間、およびさらに好ましくは約100mg/mlから約400mg/mlの間である。この範囲の上限を用いて、使用前に希釈することができる濃縮生成物を調製することができる。
【0080】
ターゲットにする細菌および処理する器具に依存して、一定の用途についてはより高い化合物濃度を用いる場合がある。適する作業濃度は、公知の方法を用いて容易に決定することができる。
【0081】
本発明の好ましい実施態様において、本組成物は、カチオン性ポリペプチドとして硫酸プロタミンをおよびビス−グアニドとしてクロルヘキシジン塩を含む。さらに好ましい実施態様において、本組成物は、約100mg/mlの硫酸プロタミンおよび約100mg/mlのクロルヘキシジン塩基または塩を含む。
【0082】
本発明の組成物は、公知の方法を用いて調製することができる。一般に、成分を適する溶剤、例えば、水、グリセロール、有機酸および他の適する溶剤に溶解する。
【0083】
本発明の組成物は、任意の数の周知活性成分および基礎材料を含む場合がある。組成物は、適する溶剤、例えば、水;抗菌剤、例えば、抗細菌剤および抗真菌剤;結着剤、結合剤もしくはカップリング剤、架橋剤;またはpH調整剤などの成分をさらに含む場合があるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の組成物は、追加の抗菌成分、例えば、ビス−フェノール、N−置換マレイミド、および第四級アンモニウム化合物をさらに含む場合がある。本発明の組成物を調製するために有用なビス−フェノールの例としては、トリクロサンおよびヘキサクロロフェンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物を調製するために有用なN−マレイミドの例としては、N−エチルマレイミド(NEM)、N−フェニルマレイミド(PheM)、N−(1−ピレニル)マレイミド(PyrM)、ナフタレン−1,5−ジマレイミド(NDM)、N,N’−(1,2−フェニレン)ジマレイミド(oPDM)、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド(pPDM)、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド(mPDM)、および1,1−(メチレンジ−1,4−フェニレン)ビスマレイミド(BM)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物を調製するために有用な第四級アンモニウム化合物の例としては、塩化ベンズアルコニウム、塩化トリドデシルメチルアンモニウム、および塩化ジデシルジメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本組成物の他の適する成分としては、緩衝溶液、リン酸緩衝食塩水、食塩水、ポリビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、シリコーン(例えば、シリコーン粘着剤(lassoers)およびシリコーン接着剤)、ポリカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ−(マレイン酸モノエステル)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、アギン酸またはペクチム酸(pectimic acid))、ポリカルボン酸無水物(例えば、ポリマレイン酸無水物、ポリメタクリル酸無水物またはポリアクリル酸無水物)、ポリアミン、ポリアミンイオン(例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリリシン、ポリ−(ジアルキルアミノエチルメタクリレート)、ポリ−(ジアルキルアミノメチルスチレン)またはポリ−(ビニルピリジン))、ポリアンモニウムイオン(例えば、ポリ−(2−メタクリルオキシエチルトリアルキルアンモニウムイオン)、ポリ−(ビニルベンジルトリアルキルアンモニウムイオン)、ポリ−(N,N−アルキルピリジニウムイオン)またはポリ−(ジアルキルオクタメチレンアンモニウムイオン))およびポリスルホネート(例えば、ポリ−(ビニルスルホネート)またはポリ−(スチレンスルホネート))、コロジオン、ナイロン、ゴム、プラスチック、ポリエステル、Dacron(登録商標)(ポリエチレンテレフタレート)、Teflon(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、およびこれらの誘導体、エラストマーおよびDacron(登録商標)(ゼラチン、コラーゲンまたはアルブミンで封止されたもの)、シアノアクリレート、メチルアクリレート、多孔質遮断皮膜を有する紙、接着剤、例えば、ホットメルト接着剤、溶剤系接着剤、および接着性ヒドロゲル、布、ならびに架橋および非架橋ヒドロゲル、ならびに活性成分の分散および医療器具の少なくとも1つの表面へのバイオフィルム透過性コーティングの付着を助長する任意の他の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されない。上に例示したポリマーの構成要素としてのモノマーを含有する線状コポリマー、架橋コポリマー、グラフトポリマーおよびブロックポリマーも使用することができる。
【0086】
本発明による組成物を使用して阻害することができる、バイオフィルム包埋細菌の例としては、グラム陰性細菌、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providentia stuartii)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、有核紡錘菌(Fusobacterium nucleatum)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)およびプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)(しかし、これらに限定されない)、ならびにグラム陽性細菌、例えば、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、緑色連鎖球菌(Streptococcus viridans)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)またはスタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)およびアクチノマイセス・ネスランディー(Actinomyces naeslundii)(しかし、これらに限定されない)が挙げられる。これらの細菌は、一般に、カテーテルをはじめとする医療器具に付随して見つけられる。
【0087】
本発明による組成物は、バイオフィルム包埋真菌、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・パラシローシス(Candida parapsilosis)、およびカンジダ・ユチリス(Candida utilis)の成長および増殖を阻害するために使用することもできる。もう1つの側面において、本発明は、器具などの物体を作製するための方法を提供し、この方法は、本発明によるカチオン性ポリペプチドおよびビス−グアニド組成物でその物体の少なくとも1つの表面を処理することを含む。本発明の好ましい実施態様において、器具を作製するために使用される組成物は、カチオン性ポリペプチドとして硫酸プロタミンおよびビス−グアニドとしてクロルヘキシジンの有効量を含む。
【0088】
前記物体は、耐微生物性であることが望ましい任意の物体、例えば、家庭用品、工業製品、医療品または医療器具、服飾品または織物、建材製品などであり得る。
【0089】
もう1つの側面において、本発明は、耐微生物性であることが望ましい物体のコーティングに適する組成物、例えば、ペイント、壁張り材、または保護プラスチックコーティングを提供する。
【0090】
用語「有効な」は、具体化される組成物でコーティングされた医療器具の少なくとも1つの表面でのバイオフィルム包埋微生物の成長または増殖を実質的に防止するために十分な活性成分の量;ならびに例えば、医療器具の少なくとも1つの表面のバイオフィルムに実質的に浸透するもしくはそれを破壊し、それによって、バイオフィルムに包埋されている微生物への活性成分、抗菌剤および/もしくは抗真菌剤の接近を助長する、および従って、具体化される組成物の溶液で処理した医療器具の少なくとも1つの表面からの実質的にすべての微生物の除去を助長するために十分な活性化合物の量を指す。量は、それぞれの活性成分について異なるし、公知の要因、例えば、薬学的特徴;医療器具のタイプ;バイオフィルム包埋微生物汚染度;ならびに使用および使用する長さによって変わる。
【0091】
本発明の組成物を使用して処理することができる器具の例としては、医療器具、例えば、チューブおよび他の医療器具、例えばカテーテル、ペースメーカー、人口心臓弁、人工関節、声帯補綴具、コンタクトレンズおよび子宮内器具が挙げられる。
【0092】
医療器具としては、使い捨てまたは持続または留置カテーテル(例えば、中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期トンネル式中心静脈カテーテル、短期中心静脈カテーテル、末梢挿入式中心カテーテル、末梢静脈カテーテル、肺動脈スワン・ガンツカテーテル、尿道カテーテル、および腹膜カテーテル)、長期泌尿器用器具、組織結合型泌尿器用器具、人工血管、血管カテーテルポート、創傷排液管、心室カテーテル、水頭症シャント、心臓弁、心臓補助装置(例えば、左心室補助装置)、ペースメーカーカプセル、失禁用器具、陰茎インプラント、小さなまたは一時的な関節置換物、尿道拡張器、カニューレ、エラストマー、ヒドロゲル、外科手術用器械、歯科用器械、チューブ(例えば、静脈内チューブ、呼吸チューブ、歯科用吸水ライン、歯科用排液チューブ、および供給チューブ)、織物、紙、指示薬ストリップ(例えば、紙製指示薬ストリップまたはプラスチック製指示薬ストリップ)、接着剤(例えば、ヒドロゲル接着剤、ホットメルト接着剤、または溶剤系接着剤)、包帯、整形外科用インプラント、ならびに医療分野において使用される任意の他の器具が挙げられる。
【0093】
医療器具としては、人間もしくは他の動物に挿入もしくは内植することができ、または挿入もしくは内植部位に、例えば、挿入もしくは内植部位付近の皮膚に置くことができ、およびバイオフィルム包埋微生物がコロニーを形成しやすい表面を少なくとも1つ含む、任意の器具も挙げることができる。
【0094】
本発明のための医療器具は、手術室、緊急治療室、病院の部屋、診療所および浴室内の設備の表面を含む。
【0095】
内植可能な医療器具としては、整形外科用インプラントが挙げられ、これらは、バイオフィルム包埋微生物による汚染または感染について内視鏡検査によって検査することができる。挿入可能な医療器具としては、カテーテルおよびシャントが挙げられ、これらは、内視鏡検査などの観血的技法を用いずに検査することができる。
【0096】
医療器具は、任意の適する金属材料または非金属材料で作ることができる。金属材料の例としては、チタンおよびステンレス鋼、ならびにこれらの誘導体または組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。非金属材料の例としては、熱可塑性または高分子材料、例えば、ゴム、プラスチック、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、シリコーン、Gore−Tex(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、Dacron(登録商標)(ポリエチレンテレフタレート)、Teflon(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、エラストマー、およびゼラチン、コラーゲンもしくはアルブミンで封止されたDacron(登録商標)、またはこれらの誘導体もしくは組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0097】
本発明の組成物を使用して処理もしくはコーティングすることができる、または本発明の組成物を組み込むことができる、他の物体の例としては、練り歯磨き、マウスウォッシュ、デンタルフロス、チューインガム、ブレスミント、義歯、マウスガード、乳製品製造ライン、パルプおよび製紙工場用の装置、食品および飲料製造または流通産業において使用される装置、例えばシロップまたは給水ライン、一般家庭用消毒薬、洗濯用洗剤、掃除用具補充品、果実および野菜用洗剤、粘着包帯、包帯、創傷被覆材、軟膏、ローション、化粧品、化粧品容器、水処理施設の設備、採鉱における抽出工程に関係する設備、HVAC(暖房、換気および空調)システムおよびそれらのフィルター、真空機器、電気掃除機ならびに真空機器および電気掃除機のバッグおよびフィルター、油およびガスのパイプライン、ペイントおよび壁張り材、窓、ドアならびに窓およびドア枠、加湿機および加湿機のフィルター、玩具(プラスチック製玩具を含む)、冷却塔に用いられる設備、医療および歯科用器械が挙げられ、様々な家庭用品、例えば、洗濯機および洗濯機のライナー、食器洗浄機および食器洗浄機のライナー、動物用水皿、浴室タオルおよび装備品、シーラントおよびグラウト、タオル、食品および飲料保存容器(Tupperware(登録商標)を含む)、皿、まな板、食器乾燥用トレー、渦流浴槽、便器および便座、他のアクリル製バスタブ、シンク、蛇口および水口、屋外の池のライナー、スイミングプール、スイミングプールのライナー、スイミングプールの設備およびフィルター、バードバス、ガーデンホース、プランター、温水浴槽、ゴミ袋などにプラスチックを組込みこむことまたはコーティングすることができる。
【0098】
好ましい実施態様において、医療器具などの物体の少なくとも1つの表面を処理する方法は、本発明による組成物とその物体を接触させることを含む。本明細書において用いる場合、用語「接触させること」は、コーティング、噴霧、ソーキング、すすぎ、フラッシング、浸水、および洗浄を含むが、これらに限定されない。コーティングすべき物体を、その物体の処理される表面から実質的にすべてのバイオフィルム包埋微生物を除去するために十分な期間、組成物と接触させる。
【0099】
さらに好ましい実施態様では、医療器具などの物体を少なくとも5分間、組成物に沈める。あるいは、その物体を組成物でフラッシュしてもよい。物体が、チューブ、例えば、歯科用ユニット給水ラインまたは乳製品製造ラインまたは食品および飲料加工ラインである場合、組成物をチューブに注入し、その組成物がそのチューブの内腔内に保持されるようにそのチューブの両末端をクランプで締めてもよい。その後、そのチューブを、その物体の少なくとも1つの表面から実質的にすべての微生物を除去するために十分な期間、一般には少なくとも約1分から約48時間、その組成物を満たしたまま放置する。あるいは、すべてのバイオフィルム包埋微生物の実質的な成長を防止するために十分な時間量、チューブの内腔に組成物を注入することによって、チューブをフラッシュしてもよい。そのようなフラッシングは、1回しか必要とされない場合もあり、またはそのチューブの使用寿命にわたって定期的に必要とされる場合もある。所望される場合または必要な場合には、組成物中の活性成分の濃度を変えて、その組成物が医療器具と接触している時間量を減少させることができる。
【0100】
物体の表面を処理するための方法のもう1つの実施態様において、本発明の組成物は、その組成物で物体の表面での反応性を増進するために、有機溶剤、材料浸透剤を含む場合もあり、またはその組成物にアルカリ化剤を添加することもできる。有機溶剤、材料浸透剤および/またはアルカリ化剤は、物体の少なくとも1つの表面への組成物の付着を好ましくは助長するものである。
【0101】
もう1つの側面は、物体の少なくとも1つの表面を本発明の組成物でコーティングする方法を提供する。1つの実施態様において、前記物体は、医療器具などの器具である。概して、医療器具をコーティングするための方法は、医療機器を準備する段階;組成物コーティング剤を準備するまたは作る段階;およびその医療器具の少なくとも1つの表面でのバイオフィルム包埋微生物の成長または増殖を実質的に防止するために十分な量でその組成物コーティング剤をその医療器具の少なくとも1つの表面に塗布する段階を含む。1つの特定の実施態様において、医療器具をコーティングするための方法は、活性成分を活性化し、それによって、その医療器具の少なくとも1つの表面での微生物の成長または増殖を実質的に防止するために有効な濃度の本発明の組成物を作る段階を含み、この場合、本発明の組成物は、活性成分と基礎材料を併せることによって作る。その後、医療器具の少なくとも1つの表面を、本発明の組成物がその医療器具の少なくとも1つの表面を覆う条件下で、本発明の組成物と接触させる。用語「接触させること」は、含浸、配合、混合、組み入れ、コーティング、噴霧および浸漬をさらに含むが、これらに限定されない。医療器具について教示しているこの例は、抗菌コーティングを有することが望ましい多くの他の物体に簡単におよび容易に用いることができる。
【0102】
物体をコーティングするための方法のもう1つの実施態様において、組成物コーティング剤は、好ましくは、活性成分と基礎材料を室温で併せること、およびその組成物を器具の表面に塗布する前にその組成物に活性薬剤を均等に分散させるために十分な時間、その組成物を混合することによって作られる。組成物がその器具の少なくとも1つの表面に付着するために十分な期間、組成物と物体を接触させることができる。物体の表面に組成物を塗布した後、それを放置して乾燥させる。
【0103】
好ましくは、約30秒から約180分間、約25℃から約60℃の範囲の温度で、組成物に物体を浸漬することによって物体を組成物と接触させておく。好ましくは、約60分間、約37℃の温度で、組成物に物体を浸漬することによって物体を組成物と接触させておく。その物体を組成物から取り出し、その後、放置して乾燥させる。その物体器具を、組成物が乾燥するために十分な時間、オーブン内または他の加熱環境に置いてもよい。
【0104】
組成物の1つの層、またはコーティングは、望ましい組成物コーティングをもたらすと考えられるが、多数の層を用いてもよい。上で論じた段階を繰り返すことによって、組成物の多数の層を物体の少なくとも1つの表面に塗布することができる。好ましくは、物体を組成物と3回接触させるが、後のそれぞれの層のために物体を組成物と接触させる前に、物体の少なくとも1つの表面の組成物を乾燥させる。好ましくは、このようにして、物体は、その物体の少なくとも1つの表面に、組成物の3つのコート、または層を含む。
【0105】
もう1つの実施態様において、組成物コーティング剤で医療器具などの物体をコーティングするための方法は、有機溶剤に活性成分を溶解すること、その活性成分および有機溶剤に材料浸透剤を併せること、およびその物体の材料の反応性を向上させるためにアルカリ化剤を併せることによる、物体の少なくとも1つの表面でのバイオフィルム包埋微生物の成長または増殖を実質的に防止するために有効な濃度の組成物コーティング剤を形成する段階を含む。その後、約30℃から約60℃の範囲の温度に組成物を加熱して、その器具の少なくとも1つの表面への組成物コーティング剤の付着を増進する。好ましくは、組成物コーティング剤が物体の少なくとも1つの表面に付着するために十分な期間、その物体の少なくとも1つの表面にその組成物コーティング剤を接触させることによって、組成物コーティング剤を物体の少なくとも1つの表面に塗布する。その後、その物体を組成物コーティング剤から取り出し、好ましくは少なくとも18時間、室温で放置して乾燥させる。その後、その物体を水などの液体ですすぎ、少なくとも2時間および好ましくは4時間放置して乾燥させ、その後、滅菌する。物体の表面での本発明の組成物の乾燥を助長するために、その物体をオーブンなどの加熱環境に置いてもよい。
【0106】
もう1つの側面において、本発明は、医療器具などの物体に本発明による組成物を組み込む方法を提供する。好ましくは、前記物体は医療器具であり、その医療器具を形成している間にその医療器具を形成する材料に組成物を添合する。例えば、組成物を、その医療器具を形成する材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、Gore−Tex(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、Dacron(登録商標)(ポリエチレンテレフタレート)およびTeflon(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)および/またはポリプロピレンと併せ、その医療器具を形成する材料と共に押出し、それによってその医療器具を形成する材料にその組成物を添合することができる。この実施態様では、前記組成物をセプタムまたは接着材に添合することができ、それをその医療器具挿入または内植部位に配置する。この実施態様に従ってその医療器具を形成する材料に添合された組成物を有する医療器具の1つの例は、より詳細に下で説明する接着層を有するカテーテル挿入シールである。その材料に添合された組成物を有する医療器具のもう1つの例は、接着材である。本発明の組成物をテープなどの接着材に組み入れ、それによって、その接着材の少なくとも1つの表面でのバイオフィルム包埋微生物の成長または増殖を防止することができる接着材を提供することができる。
【0107】
実例となる実施態様を参照しながら本発明を説明したが、本発明がこれらの寸分違わない実施態様に限定されないこと、ならびに当業者がそれらに様々な変更および修正を施すことができることは、理解される。すべての変更および修正は、添付の特許請求の範囲に包含されると解釈される。
【0108】
実施例
【実施例1】
【0109】
バイオフィルム包埋カテーテル随伴細菌に対する硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)の併用剤の強化された効果
バイオフィルム包埋バイオフィルム形成性カテーテル随伴細菌、例えば、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対する硫酸プロタミンとクロルヘキシジン塩の併用剤の強化された効果を判定するために、インビトロマイクロプレートアッセイを行った。Luria−Bertani(LB)またはトリプチック・ソイ・ブイヨン(TSB)において成長させたそれぞれの菌株の一晩培養物を接種材料として使用した。12ウエルマイクロプレートを用いて、12.5、25または50μg/mlでそれぞれの試験化合物(PSまたはCHX)が別々におよび一緒に(PS+CHX)存在するまたはしない状態で、コロニー形成抗原(CFA)培地(グラム陰性菌用)またはTSB(グラム陽性菌用)で細菌を成長させた。そのプレートを37℃で24時間、インキュベートした。それぞれのウエルの中の浮遊性細胞を含有する培地を穏やかに除去し、滅菌水ですすいだ。既知容量の水をそれぞれのウエルに添加し、30秒間、超音波処理した。それぞれのウエルの内容物を滅菌試験管に移し、1分間、ボルテックスにかけた後、10倍希釈し、スプレッダーを使用して寒天プレートにプレーティングした。それらのプレートを37℃で24時間インキュベートした後、コロニー形成単位(CFU)をカウントした。クロルヘキシジン塩は、3つすべてのバイオフィルム包埋試験微生物成長を阻害する点で硫酸プロタミンより有効であったが、硫酸プロタミンとクロルヘキシジン塩の併用剤は、緑膿菌および表皮ブドウ球菌に対して強化された阻害効果を及ぼした(図1〜3)。
【実施例2】
【0110】
カテーテル随伴細菌に対する硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)の併用剤でコーティングしたシリコーンカテーテルの阻害活性
PS+CHXでコーティングしたおよび未コーティングの1cmシリコーンカテーテル切片の抗菌活性を、Sheretzuら(Antimicrob.Agents.Chemother.,33:1174−1178,1989)によって以前に記載されたようなKirby−Bauer技術を用いて評価した。米国特許第6,475,434号に記載されているように、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)溶液に浸漬することによってカテーテルをコーティングし、その後、乾燥させた。それらのカテーテルをエチレンオキシドでガス滅菌した。カテーテル随伴細菌、例えば、大腸菌(E.coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を、普通ブイヨンにおいて18時間、37℃で成長させた。それぞれの菌または酵母株の適切な接種材料を使用して、展着プレートを作製した。その後、コーティングしたおよび未コーティングのカテーテル切片を、それぞれのプレートの中央に注意深く押し付けた。24時間、37℃でインキュベートした後、それぞれの切片の周りの阻害ゾーンを、長軸に対して垂直な向きで測定した。阻害ゾーンは、生物ごとに異なり、6mmから21mmにわたった(表1)。コーティングしたカテーテルは、大腸菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、およびカンジダ・アルビカンスに対して有意な阻害活性を有した。
【0111】
表1.カテーテル随伴微生物に対する硫酸プロタミン(PS)+クロルヘキシジン塩(CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルの阻害活性
【表1】

【実施例3】
【0112】
カテーテル随伴細菌に対する硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)の併用剤でコーティングしたシリコーンカテーテルの抗付着効果
PS+CHX、PSおよびCHXでコーティングしたシリコーンカテーテルが細菌のコロニー形成を阻止する能力を、未コーティングのおよびコーティングした切片を大腸菌(E.coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に暴露することにより三重反復で試験した。シリコーンカテーテルをPS(100mg/ml)、CHX(100mg/ml)およびPS(100mg/ml)+CHX(100mg/ml)でコーティングし、エチレンオキシドでガス滅菌した。コーティングしたカテーテル切片は、細菌で攻撃する前に、37℃の滅菌人工尿中で24時間、100rpmでインキュベートした。インキュベートした後、それらのカテーテル切片を滅菌水ですすぎ、37℃のBHI培地中の細菌培養物の中で3時間、100rpmでインキュベートした。3時間インキュベートした後、それらの切片を穏やかに2回洗浄した。洗浄したそれぞれの切片を、1mlの滅菌水が入っている滅菌試験管に移し、30秒間の超音波処理に付し、その後、1分間ボルテックスにかけた。さらに、滅菌水を使用してそれぞれの切片を系列希釈し、LB寒天にプレーティングした。それらのプレートを24時間、37℃でインキュベートし、コロニー(CFU)をカウントした。CHXのみでコーティングしたカテーテルは、大腸菌および表皮ブドウ球菌の付着を阻害する点で、PSおよびPS+CHXでコーティングしたカテーテルより優れていた(図4および6)。しかし、PS+CHX併用剤でコーティングしたカテーテルは、緑膿菌に対して強化された抗付着効果を示した(図5)。
【実施例4】
【0113】
硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)の併用剤でコーティングしたシリコーンカテーテルの阻害活性の耐久性
PS+CHXでコーティングした1cmシリコーンカテーテル切片の抗菌活性を、Sheretzら(Antimicrob.Agents.Chemother.,33:1174−1178,1989)によって以前に記載されたようなKirby−Bauer技術を用いて評価した。米国特許第6,475,434号に記載されているように、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)溶液に浸漬することによってカテーテルをコーティングし、その後、乾燥させた。それらのカテーテル切片をエチレンオキシドでガス滅菌した。カテーテル随伴細菌、例えば、大腸菌(E.coli)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を、普通ブイヨンにおいて18時間、37℃で成長させた。それぞれの菌株の適切な接種材料を使用して、展着プレートを作製した。その後、コーティングしたカテーテル切片を、それぞれのプレートの中央に注意深く押し付けた。24時間、37℃でインキュベートした後、それぞれの切片の周りの阻害ゾーンを、長軸に対して垂直な向きで測定した。阻害ゾーンを測定した後、それらの切片を、それぞれの試験生物を接種した新しい展着プレートに移し、再び24時間、37℃でインキュベートした。それぞれの切片の周りの阻害ゾーンを再び測定した。それぞれの試験生物に対するコーティングしたカテーテル切片の阻害活性の3日、7日および10日間の耐久性を判定するために、この手順を繰り返した。コーティングしたカテーテル切片の肺炎杆菌、VREおよび緑膿菌に対する阻害活性は、3日しか続かなかった(表2)。しかし、これらのコーティングしたカテーテル切片は、大腸菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対しては10日経過した後でさえ有意な阻害活性を示した。
【0114】
表2:硫酸プロタミン(PS)+クロルヘキシジン塩(CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルセグメントの抗付着活性の耐久性
【表2】

【実施例5】
【0115】
硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)の併用剤でコーティングしたシリコーンカテーテルの抗付着活性の耐久性
PS+CHXでコーティングしたシリコーンカテーテルが7日の期間にわたって細菌のコロニー形成を阻止する能力を、未コーティングのおよびコーティングした切片を大腸菌(E.coli)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に暴露することによって(二重反復で)試験した。シリコーンカテーテルをPS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)でコーティングし、エチレンオキシドでガス滅菌した。それらのコーティングしたおよび未コーティングのカテーテル切片を、細菌で攻撃する前に、37℃の滅菌人工尿中で別々に7日間、100rpmでインキュベートした。フラスコ中の人工尿を24時間ごとに新たな人工尿と交換した。コーティングしたカテーテルセグメントとコーティングしていないカテーテルセグメントの両方(三重反復で)を1、3、5および7日の時間間隔で除去し、滅菌水で穏やかにすすいだ。さらに、それらを上の試験生物で1回攻撃した。インキュベートした後、それらのカテーテル切片を滅菌水で穏やかに3回すすぎ、37℃の試験生物の培養ブイヨン中で3時間、100rpmでインキュベートした。3時間インキュベートした後、それらの切片を穏やかに2回すすいだ。それぞれの洗浄したセグメントを、1mlの滅菌水が入っている滅菌試験管に移し、30秒間の超音波処理に付し、その後、1分間、ボルテックスにかけた。さらに、滅菌水を使用してそれぞれの切片を系列希釈し、LB寒天にプレーティングした。それらのプレートを24時間、37℃でインキュベートし、コロニー形成単位(CFU)をカウントした。この手順をそれぞれの時間間隔について繰り返した。PS+CHXでコーティングしたカテーテル切片は、第7日に両方の菌株の付着の約80%阻害が観察されたので、細菌細胞付着の防止に有効であった(図7〜8)。
【実施例6】
【0116】
硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン塩(CHX)の併用剤でコーティングしたシリコーンカテーテルのインビボ有効度
以前に報告されたウサギモデルを少し変えて用いて、インビボ有効度試験を行った(Darouicheら,J.Heart.Valve.Dis.,11:99−104,2002)。この予備試験は、シリコーンカテーテルの皮下内植セグメントの大腸菌(E.coli)感染を防止する点での、PS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)でコーティングしたシリコーンカテーテルのインビボ有効度を評価するためのものであった。シリコーンカテーテルをPS(100mg/ml)+CHX(400mg/ml)でコーティングし、エチレンオキシドでガス滅菌した。グラム陽性皮膚ミクロフローラに対する予防のためにバンコマイシン(20mg/kg体重)の単回用量を受けた合計4匹のウサギの背中に、シリコーンカテーテルの合計15の未コーティング1cmセグメントおよび15のコーティングカテーテルセグメントを皮下内植した。それぞれの器具に大腸菌の臨床分離株の2×10CFU/mlを50μL接種し、その後、創傷を閉じた。それぞれのウサギに2mg/kg体重のケトプロフェンを抗炎症薬/鎮痛薬として、毎日、筋肉内(IM)注射した。7日後、それら4匹のウサギを犠牲にした。超音波処理技術およびプレーティングを用いて、それぞれの器具を外植し、培養した。周囲の液体を回収することによってスワブ培養物を得た。15の未コーティングセグメントのうちの3つ(20%)には大腸菌のコロニーが形成されたが、15すべてのコーティングセグメントには細菌のコロニー形成が全くなかった(表3)。
【0117】
表3:硫酸プロタミン(PS)およびクロルヘキシジン塩(CHX)でコーティングしたシリコーンカテーテルのインビボ有効度
【表3】

【実施例7】
【0118】
クロルヘキシジン+プロタミンでコーティングしたシリコーン膀胱カテーテルのインビボ有効度
この実施例の目的は、(1)クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルのインビボ有効度を未コーティングのカテーテルと比較して確認すること、(2)ヒドロゲル−銀でコーティングしたカテーテルに対してクロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルについての大腸菌(E.coli)による器具コロニー形成率および器具関連感染率を比較すること、(3)クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルが、バイオフィルム包埋微生物の成長または増殖の防止に有用であったことを示すこと、および(4)クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルが、器具関連感染症に対する予防に有用であったことを示すことであった。
【0119】
ウサギの背中に皮下挿入した医療器具の大腸菌感染についての確立されたモデルを用いて、動物試験を行った。特定の病原体のない雌ニュージーランドホワイトラビット(体重2〜3kg)を、ケタミン(70mg/kg体重)とアセプロマジン(2mg/kg体重)の混合物の筋肉内注射(0.5ml/kg体重)を施すことによって麻酔した。人間の患者における手術中の抗生物質予防の施与の実施をシミュレートするために、麻酔導入直後に、それぞれの動物に、大腸菌に対してではなくグラム陽性生物に対して活性であったバンコマイシン(20mg/kg)の筋肉内(IM)注射を施した。ウサギの背中の毛を剃り、その後、無菌様式で準備し、ドレーピングした。6個の(クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたもの2個、ヒドロゲル−銀でコーティングしたもの2個、および未コーティングのもの2個)2cm長カテーテルセグメントを脊椎の3〜4cm外側に互いに離して皮下挿入した。合計84個の器具を14匹のウサギに配置した。大腸菌株2131(カテーテル関連UTIを有する患者からの臨床分離株)の病原性の10CFUを、挿入器具の表面に接種し、創傷を縫合した。ウサギを局所感染、敗血症または主な困難の徴候について毎日モニターした。1週間の時点でウサギを犠牲にし、次の試験を行った:
a.超音波技術を用いることによる器具からの定量的培養、および
b.器具に隣接する部位の定量的スワブ培養。
【0120】
この試験の2つの主要な結果は、器具コロニー形成(定量的超音波処理培養からの大腸菌の成長と定義する;検出能限界、10CFU)および器具関連感染(器具コロニー形成に加えて器具の周囲の部位の定性的スワブ培養からの大腸菌の成長と定義する)であった。90%検出力での両側フィッシャー正確確率検定を用いることによって、器具コロニー形成率および器具関連感染率を異なる群間で比較した。≦0.05のP値は、有意差を示した。
【0121】
除去したカテーテルから回収した平均細菌CFUの副次的結果を、不等分散での二標本t検定を用いることによって3群間で比較した。≦0.05のP値は、有意差を示した。
【0122】
クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテル28個のうちの2個(7%)、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル28個のうちの25個(89%)および未コーティングのカテーテル28個のうちの18個(64%)は、大腸菌のコロニーを形成することとなった。クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルは、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル(P<0.001)または未コーティングのカテーテル(P=0.0016)のいずれよりもコロニーを形成する可能性が有意に低かった。未コーティングのカテーテルに対して銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテルについてのコロニー形成率の有意差はなかった(P=0.51)。
【0123】
クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテル28個のうちの1個(4%)、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル28個のうちの12個(43%)および未コーティングのカテーテル28個のうちの14個(50%)は、大腸菌に起因する器具関連感染症を発現した。クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルは、銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテル(P=0.046)または未コーティングのカテーテル(P=0.013)のいずれよりも器具関連感染症を引き起こす可能性が有意に低かった。未コーティングのカテーテルに対して銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテルについての器具関連感染率の有意差はなかった(P=1.69)。
【0124】
CFUの平均数は、クロルヘキシジン/プロタミン群では4.6×10であり、銀/ヒドロゲル群では2.5×10であり、および未コーティング群では8.3×10であった。CFUの平均数は、未コーティングのカテーテルよりクロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテルの表面でのほうが有意に低かった(P=0.031)。銀/ヒドロゲルでコーティングしたカテーテルを、クロルヘキシジン/プロタミンでコーティングしたカテーテル(P=0.22)または未コーティングのカテーテル(P=0.13)のいずれかとを比較したとき、cfuの平均数に有意差はなかった。
【0125】
これらの結果(表4)は、銀/ヒドロゲルでではなく、クロルヘキシジン/プロタミンでのカテーテルのコーティングが、器具コロニー形成を防止し、器具関連感染症を予防することを示している。器具培養物の最低検出能は、器具1つにつき10CFUであった。純粋な接種材料の2×10CFU/mlまたは1×10CFUを50μL使用した。2mg/kgのケトプロフェンを抗炎症薬/鎮痛薬としてそれぞれのウサギに毎日IM注射した。20mg/kgのバンコマイシンを予防用抗生物質として手術前に与えた。そのシリコーン尿道カテーテルの外径は、4mmであった。未コーティングのカテーテルについては2cmセグメントを使用した。ウサギを犠牲にする前に採血した血液からの培養物は、すべて陰性であった。
【0126】
表4:抗菌コーティングした尿道シリコーンカテーテルの大腸菌2131に対するインビボ活性
【表4】



【実施例8】
【0127】
産業界におけるバイオフィルムに随伴する細菌に対するクロルヘキシジン(CHX)、硫酸プロタミン(PS)およびCHXとPSの併用剤の最小阻害濃度
大腸菌(E.coli)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)およびウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、乳製品工場、パルプおよび製紙工場、食品および飲料製造業界、水処理施設などをはじめとする多種多様な業界において遭遇することが多い細菌である。それらの一部は、様々な消費者製品および家庭用品において一般に見つけられ、多くの場合、例えば、台所、浴室、HVACシステム、加湿機、電気掃除機、玩具などにおいて見つけられる。
【0128】
単独でのクロルヘキシジン(CHX)および硫酸プロタミン(PS)ならびにCHXとPSの併用剤の大腸菌、肺炎杆菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、リステリア菌およびウェルシュ菌に対する最小阻害濃度(MIC)を、以前に記載されているような96ウエルマイクロタイタープレートにおけるブイヨン微量希釈アッセイを用いて決定する(Amsterdam,D.1996.,In:V.Loman,Ed.,「Antibiotics in laboratory medicine」,p.52−111,Williams and Wilkins,Baltimore,M.D.)。簡単に言うと、TBS中で100rpmで振盪しながら37℃で一晩、菌株を成長させ、約10CFU/mlに希釈する。抗菌剤CHX(50から0.098μg/ml)およびPS(200から0.195μg/ml)を単独でおよび一緒にTBS(100μL)で系列希釈し、100μLの細菌上清をそれぞれのウエルに添加する。プレートを37℃で24時間インキュベートし、マイクロタイタープレートリーダー(Multiskan Ascent、フィンランド、ヘルシンキのLabsystems)を使用して600nmで読み取る。MICは、成長を完全に阻害する抗菌剤の最低濃度であると解釈する。CHXとPSの併用剤についてのMICは、単独でのCHXおよびPSのいずれについてのMICより有意に低いことがわかり、ならびにCHXとPSの併用剤は、大腸菌、肺炎杆菌および黄色ブドウ球菌の成長の阻害に関して相乗作用性であることがわかる(表5)。
【0129】
表5:産業界におけるバイオフィルムに随伴する細菌に対するクロルヘキシジン(CHX)、硫酸プロタミン(PS)およびCHXとPSの併用剤のMIC
【表5】

【実施例9】
【0130】
歯垢、齲歯および歯周病に随伴する口腔細菌に対するクロルヘキシジン(CHX)、硫酸プロタミン(PS)およびCHXとPSの併用剤の最小阻害濃度
ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)およびストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)は、虫歯に随伴する主要口腔細菌である。それらは、早期歯垢形成を生じさせる、歯の主要コロニー形成因子である。他の口腔細菌、例えば、アクチノバシラス・ネスランディー(Actinobacillus naeslundii)、有核紡錘菌(Fusobacterium nucleatum)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)およびプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)は、歯垢および歯周病に随伴する。
【0131】
ミュータンス連鎖球菌、S.ソブリナスおよびA.ネスランディーに対するクロルヘキシジン(CHX)、および硫酸プロタミン(PS)単独およびCHXとPSの併用剤の最小阻害濃度(MIC)を、以前に記載されているような96ウエルマイクロタイタープレートにおけるブイヨン微量希釈アッセイを用いて決定する(Amsterdam,D.1996.,In:V.Loman,Ed.,「Antibiotics in laboratory medicine」,p.52−111,Williams and Wilkins,Baltimore,M.D.)。0.01%ブタ胃粘素を補足したTHYEブイヨン中で100rpmで振盪しながら37℃で一晩、ミュータンス連鎖球菌およびS.ソブリナスを成長させ、ならびにTSB−YKブイヨン中でA.ネスランディーを成長させ、約10CFU/mlに希釈する。抗菌剤CHX(50から0.098μg/ml)およびPS(200から0.195μg/ml)を単独でおよび一緒にTHYE(100μL)で系列希釈し、100μLの細菌上清をそれぞれのウエルに添加する。プレートを37℃で24時間インキュベートし、マイクロタイタープレートリーダー(Multiskan Ascent、フィンランド、ヘルシンキのLabsystems)を使用して600nmで読み取る。MICは、成長を完全に阻害する抗菌剤の最低濃度であると解釈される。CHXとPSの併用剤についてのMICは、単独でのCHXおよびPSのいずれについてのMICより有意に低いことがわかり、ならびにCHXとPSの併用剤は、試験したストレプトコッカス種についての微生物成長阻害に関して相乗作用性であることがわかる(表6)。
【0132】
表6:歯垢、齲歯および歯周病に随伴する口腔細菌に対するクロルヘキシジン(CHX)、硫酸プロタミン(PS)およびCHXとPSの併用剤の最小阻害濃度
【表6】

【実施例10】
【0133】
産業界におけるバイオフィルムに随伴するバイオフィルム包埋細菌に対するクロルヘキシジン(CHX)の活性に対する硫酸プロタミン(PS)の強化効果
以前に記載されたような修正型定量的バイオフィルムアッセイ法(Jackson,D.W.ら,J.Bacteriol.184:290−301,2002)を用いてバイオフィルムをアッセイした。大腸菌(E.coli)およびセレウス菌(B.cereus)の一晩培養物をTSB中5%に希釈した。12ウエル組織培養ポリスチレンプレート(ニューヨークのCorning Inc.)において37℃で細菌のバイオフィルムを成長させた。CHXおよびPSの水溶液を別々に調製し、それぞれの適切な容量を12ウエルプレートに個々におよび併用で添加した。それぞれのウエルの総容量を滅菌蒸留水で2mlにした。抗菌剤を伴わないウエルは、対照としての役割を果たした。24時間インキュベートした後、それぞれのウエル内の浮遊性細胞を含有する培地を除去し、バイオフィルムをPBSですすいだ。2mlのPBSをそれぞれのウエルに添加した後、そのプレートを15秒間、超音波処理し、取り外されたバイオフィルムをピペット先端でよく混ぜた。さらに、それぞれのウエルからの1mlの懸濁液を系列希釈(10倍希釈)し、それぞれの希釈物100μLをTSAにプレーティングした。それらのプレートを37℃で24時間インキュベートし、コロニーをカウントした。CHXおよびPSを併用して処理したウエルからのプレートは、いずれかだけで処理したものより有意に少ないコロニーを含有する。単独でのCHXまたはPS処理と比較すると、有意に低いCHXおよびPS濃度が、等価のコロニー数を形成するために必要とされた。CHXとPSの併用は、バイオフィルム包埋大腸菌およびセレウス菌の成長の阻害に関して相乗作用性であった(図9および10)。
【実施例11】
【0134】
歯垢および齲歯に随伴するバイオフィルム包埋細菌に対するクロルヘキシジン(CHX)の活性に対する硫酸プロタミン(PS)の強化効果
以前に記載されたような修正定量的バイオフィルムアッセイ法(Jackson,D.W.ら,J.Bacteriol.184:290−301,2002)を用いてバイオフィルムをアッセイした。ミュータンス連鎖球菌(S.mutans)およびA.ネスランディー(A.naeslundii)の一晩培養物を、0.3%酵母抽出物を含有する4×希薄Todd−Hewittブイヨン(THYE)(pH7.0)および0.3%酵母抽出物を補足したトリプチック・ソイ・ブイヨン(TBSYK、+ヘミンおよびメナジオン)中、それぞれ1%に希釈した。嫌気チャンバー(5%CO)内、37℃で、12ウエル組織培養ポリスチレンプレート(ニューヨークのCorning Inc.)において細菌のバイオフィルムを成長させた。PSおよびCHXの水溶液を別々に調製し、それぞれの適切な容量を12ウエルプレートに個々におよび併用で添加した。それぞれのウエルの総容量を滅菌蒸留水で2mlにした。抗菌剤を伴わないウエルは、対照としての役割を果たした。16時間インキュベートした後、それぞれのウエル内の浮遊性細胞を含有する培地を除去し、バイオフィルムをPBSですすいだ。2mlのPBSをそれぞれのウエルに添加した後、そのプレートを15秒間、超音波処理し、取り外されたバイオフィルムをピペット先端でよく混ぜた。さらに、それぞれのウエルからの懸濁液を系列希釈(10倍希釈)し、それぞれの希釈物100μLをTHYE寒天およびColumbia Blood Agarにそれぞれプレーティングした。それらのプレートを37℃で48時間、嫌気的にインキュベートし、コロニーをカウントした。CHXおよびPSを併用して処理したウエルからのプレートは、いずれかだけで処理したものより有意に少ないコロニーを含有した。単独でのCHXまたはPS処理と比較すると、有意に低いCHXおよびPS濃度が、等価のコロニー数を形成するために必要とされた。PSとCHXの併用は、バイオフィルム包埋S.ミュータンスおよびA.ネスランディーの成長の阻害に関して相乗作用性であった(図11および12)。
【実施例12】
【0135】
歯周病に随伴するバイオフィルム包埋細菌に対する硫酸プロタミン(PS)とクロルヘキシジン(CHX)併用剤の阻害活性
バイオフィルム形成性歯周病随伴細菌、例えば、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)およびポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)の成長に対する硫酸プロタミンとクロルヘキシジンの併用剤の相乗効果を判定するために、インビトロマイクロプレートアッセイを行った。それぞれの菌株の一晩培養物を、以前に記載されたようなメナジオンおよびヘミンを補足した25mlのTodd Hewitt(TH)ブイヨン(Davey,M.E.,Periodontol.2000,42:27−35,2006)中、嫌気性条件下、37℃で24時間で成長させた。対照(水)および併用剤の2倍希釈物を添加した、20μL/ウエル。以前に記載された(Milnerら,FEMS Microbiol.Lett.,140:125−130,1996)ようなバイオフィルム培地を作製して(変性塩基剤+ウシ血清アルブミン(BSA)、α−ケトグルタラート、トリプトン、メナジオンおよびヘミン)、一晩培養物を1:10希釈し、それぞれのウエルに等分した(180μL/ウエル)。96ウエルプレートを嫌気性条件下、37℃で48時間インキュベートし、マイクロタイタープレートリーダー(フィンランド、ヘルシンキ、LabsystemsのMultiskan Ascent)を使用して600nmで読み取った。培地を除去し、プレートを滅菌蒸留水で1回洗浄し、1時間、空気乾燥させ、15分間、クリスタルバイオレットで染色し、染色剤を除去し、滅菌蒸留水で2回すすぎ、空気乾燥させ、その後、クリスタルバイオレットを33%酸性酸溶液に可溶化し、630nmでプレートを読み取った。硫酸プロタミンとクロルヘキシジンの併用剤は、P.インターメディアとP.ジンジバリスの両方におけるバイオフィルム形成を、以前のものより相当相乗的に阻害した(図13および14)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カチオン性ポリペプチドおよび(b)ビス−グアニドまたはその塩を含む、バイオフィルム包埋微生物の成長または増殖を減少させるための組成物。
【請求項2】
前記カチオン性ポリペプチドが、前記組成物の約10mg/mlと約200mg/mlの間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビス−グアニジンが、前記組成物の約100mg/mlと約400mg/mlの間である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性ポリペプチドが、硫酸プロタミン、デフェンシン、ラクトペルオキシダーゼ、およびリゾチームからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオン性ポリペプチドが、硫酸プロタミンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ビス−グアニドが、クロルヘキシジン塩基、クロルヘキシジン塩、アレキシジン、および重合体ビス−グアニドからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビス−グアニドが、クロルヘキシジン塩基または塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記クロルヘキシジン塩が、ジグルカン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよび二塩酸クロルヘキシジンからなる群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性ポリペプチドが、硫酸プロタミンであり、および前記ビス−グアニドが、クロルヘキシジン塩基または塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記硫酸プロタミンが、約100mg/mlとして存在し、および前記クロルヘキシジン塩基または塩が、約400mg/mlとして存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
結着、結合またはカップリング剤;ビス−フェノール;第四級アンモニウム化合物;マレイミド;抗生物質;およびpH調整剤からなる群より選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物で物体の少なくとも1つの表面を処理することを含む、物体を作製する方法。
【請求項13】
処理が、前記物体を形成するために使用されるポリマーに前記組成物を添合することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
処理が、前記物体の少なくとも1つの表面を前記組成物でコーティングすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、有効量の硫酸プロタミンおよびクロルヘキシジン塩基または塩を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記物体が、歯ブラシ;デンタルフロス;義歯、マウスガード;乳製品製造ライン;乳製品製造ラインのフィルター;給水ライン;食品および飲料製造の際に使用されるライン;化粧品容器;プラスチックボトル;真空機器;電気掃除機;蛇口および水口;屋外の池のライナー;抽出工程または採鉱に関係する装置;水差し;散水ライン;散水機;ゴミ袋 Tupperware(登録商標);浴槽;シンク;シャワー;シャワーヘッド;食器洗浄機;電気掃除機のバッグ;電気掃除機のフィルター;油またはガス管;窓枠;ドア;ドア枠;加湿機;加湿機のフィルター;HVACシステムおよびそのフィルター、玩具;冷却塔;医療器械;歯科用器械;洗濯機;洗濯機のライナー;食器洗浄機;食器洗浄機のライナー;皿;プレート;カップ;台所用品;どんぶり;フォーク;ナイフ;スプーン;動物用水皿;浴室タイル;浴室装備品;シーラント;グラウト;タオル;食品保存容器;飲料保存容器;まな板;食器乾燥用トレー;渦流浴槽;便器;便蓋;便座;養魚池;スイミングプール;スイミングプールのライナー;スイミングプールのスキマー:スイミングプールのフィルター;バードバス;ガーデンホース;プランター;温水浴槽;温水浴槽ライン;温水浴槽のフィルター;調理台からなる群より選択される、請求項12または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1または9に記載の組成物を含む口腔ケア消耗品。
【請求項18】
練り歯磨き、マウスウォッシュ、デンタルフロス、チューインガム、およびブレスミントからなる群より選択される、請求項17に記載の口腔ケア消耗品。
【請求項19】
請求項1または9に記載の組成物を含むクリーニング製品。
【請求項20】
一般家庭用消毒薬、窓用クリーナ、浴室用クリーナ、台所用クリーナ、床用クリーナ、洗濯用洗剤、掃除用具補充品;果実および野菜用洗剤;ならびに織物柔軟剤からなる群より選択される、請求項19に記載のクリーニング製品。
【請求項21】
請求項1または9に記載の組成物を含む化粧品。
【請求項22】
おしろい、リップクリーム、口紅、アイライナー、およびマスカラからなる群より選択される、請求項21に記載の化粧品。
【請求項23】
請求項1または9に記載の組成物を含むプラスチック製品。
【請求項24】
玩具;洗濯機;歯ブラシ;義歯;マウスガード;乳製品製造ライン;乳製品製造ラインのフィルター;給水ライン;食品および飲料製造の際に使用されるライン;化粧品容器;ボトル;電気掃除機;電気掃除機のフィルター;油またはガス管;窓枠;ドア;ドア枠;加湿機;加湿機のフィルター;屋外の池のライナー;空気浄化フィルター;便座;Tupperware(登録商標);シャワー;シャワーヘッド;電気掃除機のバッグ;HVACシステム;HVACフィルター;冷却塔;シンク;蛇口および水口;水差し;散水ライン;散水機;浴槽;ゴミ袋;食器洗浄機;浴室タイル;浴室装備品;食器乾燥用トレー;渦流浴槽;便器;便蓋;養魚池;スイミングプール;スイミングプールのライナー;スイミングプールのスキマー;スイミングプールのフィルター;プランター;温水浴槽ライン;温水浴槽のフィルター;医療器械;歯科用器械;洗濯機のライナー;動物用水皿;食器洗浄機のライナー;食品保存容器;飲料保存容器;皿;プレート;どんぶり;カップ;フォーク;ナイフ;スプーン;台所用品;まな板;ガーデンホース;バードバス;温水浴槽;ならびに調理台からなる群より選択される、請求項23に記載のプラスチック製品。
【請求項25】
請求項1または9に記載の組成物を含む創傷ケア製品。
【請求項26】
バンドエイド、体に吸収されないガーゼ/スポンジ被覆材、親水性創傷被覆材、閉鎖性創傷被覆材、ヒドロゲル創傷および熱傷被覆材、スプレーアプリケータ、軟膏、ローション、クリームおよび縫合糸からなる群より選択される、請求項25に記載の創傷ケア製品。
【請求項27】
請求項1または9に記載の組成物でコーティングされた製品。
【請求項28】
義歯;マウスガード;乳製品製造ライン;給水ライン;粘着包帯;HVACシステムの構成部品;水処理施設の構成部品;真空機器および電気掃除機の構成部品;電気掃除機のバッグ;電気掃除機のフィルター;空気浄化フィルター;冷却塔の構成部品;玩具;窓;ドア;窓枠;ドア枠;医療器械;歯科用器械;浴室タイル;台所タイル;動物用水皿;洗濯機;食器洗浄機;タオル;皿;どんぶり;台所用品;カップ;グラス;まな板;食器乾燥用トレー;渦流浴槽;シンク;便器;便座;スイミングプール;バードバス;プランター;ガーデンホース;養魚池;油管;ガス管;乳製品製造ラインのフィルター;食品および飲料製造の際に使用されるライン;化粧品容器;屋外の池のライナー;蛇口および水口;加湿機;加湿機のフィルター;浴室タイル;浴室装備品;便蓋;スイミングプールのライナー;スイミングプールのスキマー;スイミングプールのフィルター;温水浴槽ライン;温水浴槽のフィルター;洗濯機のライナー;食器洗浄機のライナー;動物用水皿;食品保存容器;飲料保存容器;プレート;カップ;フォーク;ナイフ;スプーン;ゴミ袋;ならびに調理台からなる群より選択される、請求項27に記載の製品。
【請求項29】
請求項1または9に記載の組成物を含むペイント。
【請求項30】
バイオフィルムが関与する人間および動物の感染症に随伴するバイオフィルム包埋細菌の成長および増殖を減少させることにおける請求項17から28のいずれか一項に記載の製品または請求項29に記載のペイントの使用。
【請求項31】
ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、サングイス連鎖球菌(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカス・オラーリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)、およびアクチノマイセス・ネスランディー(Actinomyces naeslundii)を含む、歯垢および齲歯関連細菌に対して有効である、請求項17に記載の口腔ケア消耗品。
【請求項32】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)およびプレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)を含む、歯周病関連細菌に対して有効である、請求項17に記載の口腔ケア消耗品。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2010−527335(P2010−527335A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507769(P2010−507769)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000603
【国際公開番号】WO2008/141416
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507422644)ケーン バイオテク インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】KANE BIOTECH INC.
【Fターム(参考)】