説明

抗菌薬の微生物に対する有効性の検査方法

【課題】 微生物を直接的に測定するので信頼性が高く且つ速やかに結果が得られる、抗菌薬の微生物に対する有効性を簡便に検査する方法の提供。
【解決手段】 微生物含有液体を調製し;担体上に、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料からなる対照用の被検試料(a)領域と、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する試料からなる被検試料(b)領域を形成し;それらの領域の微生物を、微生物の至適温度付近で同一条件下に2.5乃至8.0時間培養し;培養後の微生物を染色し;被検試料(a)領域における微生物の染色像と被検試料(b)領域における微生物の染色像とを比較観察し;被検試料(a)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b)領域の染色像中の微生物量が、10%以下であれば有効、10%超且つ50%未満であれば中間、50%以上であれば無効であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌薬の微生物に対する有効性を判定するための方法、その方法の実施に使用するキット、及びその方法の実施に使用する担体の製造方法に関する。本発明によれば、安価なキットを用い、迅速且つ簡便に、抗菌薬の微生物に対する有効性を判定することができる。ここで、「抗菌薬の微生物に対する有効性を判定する」とは、特定の抗菌薬に対して被検微生物が感受性であるか否かを判定すること、特定の抗菌薬に対して被検微生物が耐性であるか否かを判定すること、被検微生物に対する特定の抗菌薬の最小阻止濃度(MIC)を求めること等を包含する。
【背景技術】
【0002】
感染症が原因で容態が急変した患者は、早期に治療を行う必要がある。しかし、その感染症の原因微生物の同定や、抗菌薬に対する感受性を調べる試験は、結果が出るまでに少なくとも1.5日、場合によっては3日ほどの時間を要する。臨床の現場においては、このような試験の結果が出るのを待っていては手遅れとなってしまう。そこで、医師が感染症の原因菌を推定し、その菌に有効な抗菌薬を選択し、投与しているのが現状である。
【0003】
しかし、感染症の原因菌の的確な推定には、高度な専門的な知識が求められる。そのため、第一選択薬としては、通常は抗菌スペクトルの広い薬が選択されている。即ち、必ずしも適切ではない、特定の抗菌薬が多用されているのである。
【0004】
不適切な抗菌薬の多用は、医療費の高騰の原因となるのみならず、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、ESBL(基質拡張型β−ラクタマーゼ産生菌)、MDRP(多剤耐性緑膿菌)に代表される各種耐性菌の出現、増加を招来させた。そこで、昨今においては、抗菌薬の適正使用が強く要求されている。
【0005】
ところで、現在、微生物の薬剤感受性試験は、ディスク拡散法や微量液体希釈法などを測定原理とする試験キットを使用して実施されている。ディスク拡散試験は、米国臨床検査標準化委員会であるCLINICAL LABORATORY STANDARDS INSTITUTE(CLSI)標準の試験法である。この方法では、被検微生物分離株の懸濁液であって、マックファーランド(McFarland)のNo.0.5濁度に調整した懸濁液をゲル・プレートに接種し、その上に所定濃度の被検抗菌薬を含浸してなるディスクを配置し、インキュベーションを行い、そのディスクの発育阻害ゾーンの半径(存在する場合)を測定して、ディスクに含浸されている被検抗菌薬に対するゲル・プレートに接種された被検微生物の感受性を判定する。微量液体希釈法もCLSI標準の試験法である。この方法では、被検抗菌薬を段階的に希釈した培養液に、分離培養した被検微生物を一定量接種し、培養した後、培地の混濁度、曇り及び/又は沈殿物を定量して被検微生物の発育の程度を測定し、被検微生物の発育を阻害する被検抗菌薬の最小濃度(MIC)を求める。これらの薬剤感受性検査では、被検微生物の発育の有無を肉眼で判定又は自動解析機器で測定するが、試験開始から判定までに18乃至48時間程度を要する。
【0006】
感染症の原因微生物の同定や、抗菌薬に対する感受性を調べる試験の結果が短時間で得られれば、上記のような不適切な抗菌薬の多用は防止され、また、各種耐性菌の出現も抑制できる。そこで、従来の標準法に比べて短時間で結果を得ることができる、薬剤感受性試験方法が提案されている。そのような方法は、特許文献1乃至9に開示されている。また、特許文献10には、マイクロプレートに、抗菌性薬剤、呈色試薬及び安定化剤が固相化されてなる感受性試験用プレートと、そのプレートを使用した薬剤感受性試験の例が開示されている。さらに、非特許文献1及び2には、全自動迅速同定感受性測定装置「ライサス」を用いることにより、薬剤感受性試験を、迅速法では最短で3時間で行い得ること、CLSI法に準拠した培養時間(通常18時間)での感受性試験も行い得ること、菌の同定も行い得ることが記載されている。さらに、非特許文献3には、前記「ライサス」を用いることにより、多くの菌種の同定を5時間以内に行い得ること、感受性試験は4乃至7時間で行い得ることが記載されている。
【0007】
ここで、先に記載した二つのCLSIの標準試験法は、基本的に微生物の発育、即ち微生物が増殖するか否かを判定しているのに対し、特許文献1乃至10に記載された方法では、代謝活性、即ち微生物個体の一要素である酵素等の活性が高いか低いかを測定したり、特定の代謝産物、代謝分解物、栄養源等の量を測定し、その増減を判定している。即ち、微生物の発育自体を確認するのではなく、酵素の活性等を指標として、間接的に微生物の発育の有無を判定しているのである。しかし、これらの指標と微生物の発育には、厳密な相関関係があるわけではなく、従って、例えば薬剤感受性試験において偽耐性が生じるということもある。このように、結果の信頼性という点では、特許文献1乃至10に記載された方法は、CLSIの標準試験法に劣るといえよう。
【0008】
非特許文献2には、「ライサス」を用いて行う迅速法の測定原理として、次のような記載がある:
(菌種の同定の場合)菌体酵素が、その基質に蛍光物質を結合させてなる蛍光基質を分解することにより、蛍光物質が遊離する。そこで、この蛍光物質の遊離による蛍光強度の変化を測定する。
(薬剤感受性試験の場合)菌の発育時には、菌体内脱水素酵素が有機酸を酸化する。このとき、NADH等の補酵素を介して酸化還元系発色試薬が還元され、水溶性ホルマゾンとなり、黄色に発色する。従って、この発色を吸光度で測定する。
【0009】
すなわち、「ライサス」を用いて行う迅速法の測定原理も、特許文献1乃至10に記載された方法と同様、酵素の活性等を指標として、間接的に微生物の発育の有無を判定するというものである。
【0010】
さらに、特許文献1乃至9に記載された方法や非特許文献1乃至3に記載された「ライサス」を使用する方法では、高価な試薬や装置が必要である。
【0011】
以上述べたように、感染症治療のためには適切な抗菌薬を迅速に選択する必要があるが、現在の標準法である直接的に微生物の増殖発育を調べる薬剤感受性検査は、結果が出るまでの時間が長すぎるという問題があり、緊急の用途に対応しきれない。一方、これまでに提案された迅速法では、微生物の増殖発育を直接的に見ておらず、しかも、高価な試薬との測定装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4311794号
【特許文献2】米国特許第4622297号
【特許文献3】米国特許第5164301号
【特許文献4】米国特許第4014745号
【特許文献5】特開平7−313193
【特許文献6】特表2000―500340
【特許文献7】特開平10−210998
【特許文献8】特許第3636849号
【特許文献9】特開2007−222182
【特許文献10】特開2001−321156
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】http://www.nissui−pharm.co.jp/diagnostics/raisus.html(2008年12月8日)、日水製薬ライサス「ニッスイ」
【非特許文献2】相良弘文、遠藤隆一、三品正俊、「全自動迅速同定感受性測定装置RAISUS「ライサス」システム」、臨床と微生物、Vol.33、No.1、027−031、2006
【非特許文献3】仲宗根勇、「全自動迅速同定感受性測定装置RAISUS「ライサス」の運用」、臨床と微生物、Vol.33、No.1、033−037、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、特に緊急性を要する感染症患者に対し、どこにおいても当初から適切な抗菌薬を投与できるようにすることである。より具体的には、簡便な方法でありながら、CLSI標準試験法のように微生物を直接的に測定するので信頼性が高く且つ速やかに結果が得られる、被検抗菌薬の被検微生物に対する有効性を検査する方法と、その方法の実施に使用できる検査用キット、並びにその方法の実施に使用できる担体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、さまざまな抗菌薬に対し、被検微生物が感受性であるか否かを判定すること及び/又は被検微生物が耐性であるか否かを判定することや、被検微生物に対する特定の抗菌薬の最小阻止濃度(MIC)を求めること等を可能にする、簡便且つ迅速な検査方法を開発すべく、鋭意検討した。その結果、本発明をなすに至った。
【0016】
即ち本発明は、抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法であって、以下の工程(1)乃至(6)を含む方法に関する:
(1)微生物含有液体を調製し;
(2)担体上に、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料からなる対照用の被検試料(a)領域と、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する試料からなる被検試料(b)領域を形成し、ここで、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とは、互いに混じり合わないことが担保できる限り、同一の担体上に形成されても異なる担体上に形成されてもよく、且つ、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域における微生物の濃度及び/又は数は略同一であり;
(3)担体上において、被検試料(a)領域及び被検試料(b)領域の微生物を、微生物の至適温度付近で同一条件下に2.5乃至8.0時間培養し;
(4)培養後の被検試料(a)領域及び被検試料(b)領域中の微生物を染色し;
(5)被検試料(a)領域における微生物の染色像と被検試料(b)領域における微生物の染色像とを比較観察し;そして
(6)その比較観察の結果、被検試料(a)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b)領域の染色像中の微生物量が、10%以下であれば有効、10%超且つ50%未満であれば中間、50%以上であれば無効であると判定する。
【0017】
なお、本発明の抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法において、「微生物の濃度が略同一」とは、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域に存在する試料について、例えばマックファーランドの濁度といった、微生物濃度を示す指標として使用されている何らかの値が同一であることをいう。従って、ある濁度を示す微生物含有試料を起源とし、その試料の希釈倍率が同一である場合も、「微生物の濃度が略同一」である。
【0018】
「微生物の数が略同一」とは、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域に存在する試料について、例えばあるマックファーランド濁度を示す微生物含有試料を、(A)領域にはそのまま添加し、(B)領域には2倍希釈して2倍量を添加した場合のような、(a)領域と(b)領域において、計算上微生物の数がほぼ同等となる場合を指す。
【0019】
「微生物の濃度及び数が略同一」とは、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域に存在する試料について、例えばマックファーランドの濁度といった、微生物濃度を示す指標として使用されている何らかの値が同一であり且つ被検試料(a)領域と被検試料(b)領域における試料の総容量がほぼ同一である場合をいう。「微生物の濃度及び数が略同一」であることが好ましい。
【0020】
本発明の抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法には、以下の方法(A)及び(B)も包含される。
【0021】
(A) 微生物の抗菌薬に対する感受性を検査する方法であって、以下の工程(A1)乃至(A6)を含む方法:
(A1)微生物懸濁液を、その微生物濃度がマックファーランドのNo.0.5濁度の50倍乃至1倍希釈となるように調製し;
(A2)担体上に、当該微生物懸濁液又はそれを希釈してなる試料からなる対照用の被検試料(a′)領域と、当該微生物懸濁液又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する試料であって、公的に規定されたブレークポイント濃度の抗菌薬を含む被検試料(b′)領域を形成し、ここで、被検試料(a′)領域と被検試料(b′)領域とは、互いに混じり合わないことが担保できる限り、同一の担体上に形成されても異なる担体上に形成されてもよく、且つ、被検試料(a′)領域と被検試料(b′)領域における微生物の濃度及び/又は数は略同一であり;
(A3)担体上において、被検試料(a′)領域及び被検試料(b′)領域の微生物を、微生物の至適温度付近で同一条件下に約2.5乃至8.0時間培養し;
(A4)培養後の被検試料(a′)領域及び被検試料(b′)領域中の微生物を染色し;
(A5)被検試料(a′)領域における微生物の染色像と、被検試料(b′)領域における微生物の染色像とを比較観察し;そして
(A6)その比較観察の結果、被検試料(a′)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b′)領域の染色像中の微生物量が、10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下であれば被検微生物が被検抗菌薬に対して感受性であると判定する。
【0022】
(B) 微生物の抗菌薬に対する耐性を検査する方法であって、以下の工程(B1)乃至(B6)を含む方法:
(B1)微生物懸濁液を、その微生物濃度がマックファーランドのNo.0.5濁度の50倍乃至1倍希釈となるように調製し;
(B2)担体上に、当該微生物懸濁液又はそれを希釈してなる試料からなる対照用の被検試料(a′)領域と、当該微生物懸濁液又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する試料であって、公的に規定されたブレークポイント濃度の抗菌薬を含む被検試料(b′)領域を形成し、ここで、被検試料(a′)領域と被検試料(b′)領域とは、互いに混じり合わないことが担保できる限り、同一の担体上に形成されても異なる担体上に形成されてもよく、且つ、被検試料(a′)領域と被検試料(b′)領域における微生物の濃度及び/又は数は略同一であり;
(B3)担体上において、被検試料(a′)領域及び被検試料(b′)領域の微生物を、微生物の至適温度付近で同一条件下に約2.5乃至8.0時間培養し;
(B4)培養後の被検試料(a′)領域及び被検試料(b′)領域中の微生物を染色し;
(B5)被検試料(a′)領域における微生物の染色像と、被検試料(b′)領域における微生物の染色像とを比較観察し;そして
(B6)その比較観察の結果、被検試料(a′)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b′)領域の染色像中の微生物量が、50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であれば被検微生物が被検抗菌薬に対して耐性であると判定する。
【0023】
上記方法(A)及び(B)において、抗菌薬を含む被検試料の領域である被検試料(b′)領域が複数存在し、それらの被検試料(b′−1)領域乃至被検試料(b′−n)領域(ここで、nは、抗菌薬を含む被検試料(b′)領域の数を示す整数である)は、各々異なる抗菌薬を、各々公的に規定されたブレークポイント濃度で含有するものであってもよい。この場合、被検試料(b′−1)領域乃至被検試料(b′−n)領域は、担体上において、互いに混じり合わないように形成される。
【0024】
本発明の抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法には、以下の方法(C)も包含される。
【0025】
(C) 抗菌薬の微生物に対する最小阻止濃度(MIC)を検査する方法であって、以下の工程(C1)乃至(C6)を含む方法:
(C1)微生物懸濁液を、その微生物濃度がマックファーランドのNo.0.5濁度の50倍乃至1倍希釈となるように調製し;
(C2)担体上に、当該微生物懸濁液又はそれを希釈してなる試料からなる対照用の被検試料(a″)領域と、当該微生物懸濁液又はそれを希釈してなる試料と、検査対象の抗菌薬を各々異なる濃度で含む複数の被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域(ここで、nは、抗菌薬を含む被検試料(b″)の数を示す整数である)を形成し、ここで、被検試料(a″)領域と被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域とは、各々互いに混じり合わないことが担保できる限り、同一の担体上に形成されても異なる担体上に形成されてもよく、且つ、被検試料(a″)領域と被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域の各々における微生物の濃度及び/又は数は略同一であり;
(C3)担体上において、被検試料(a″)領域と被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域の微生物を、微生物の至適温度付近で同一条件下に約2.5乃至8.0時間培養し;
(C4)培養後の被検試料(a″)領域及び被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域中の微生物を染色し;
(C5)被検試料(a″)領域における微生物の染色像と、被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域の各々における微生物の染色像とを比較観察し;そして
(C6)その比較観察の結果、被検試料(a″)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域の各々の染色像中の微生物量が、10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である抗菌薬を含む被検試料(b″)の中で、抗菌薬濃度が最も薄い試料の抗菌薬濃度を最小阻止濃度(MIC)と判定する。
【0026】
また、本発明は、少なくとも、(I)抗菌薬、及び、(II)微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料である被検試料(a)と、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する被検試料(b)とを各々互いに混じり合わないように保持でき且つ微生物の培養に使用できる担体一枚以上を包含し、ここで、担体は、被検試料(a)と被検試料(b)の両者を保持するものであっても、いずれかのみを保持するものであってもよい、抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用キットを提供する。
【0027】
本発明の検査用キットは、さらに、(III)微生物染色用試薬、(IV)検査方法の説明書、(V)担体を保持するラック及び(VI)担体を入れる容器からなる群から選択される少なくとも一種をも包含するものであってよい。
【0028】
さらに、本発明は、検査で使用するための領域を二つ以上有する、スライドガラス、マイクロアレイ用スライドガラス、多穴プレート及び多連モジュールからなる群から選択される担体において、対照用の少なくとも一つの領域を除く他の領域のそれぞれに、当該担体使用時に所定量の被検試料を添加することによって所定濃度となる量の抗菌薬を、当該抗菌薬の溶液で付与し、溶媒を除去する工程を含む、抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用担体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、被検微生物、即ち患者等から採取された試料中に含有される微生物に対し、特定の抗菌薬が有効であるか否かを判定する方法、その方法の実施のためのキット、及びその方法の実施において使用される担体の製造方法が提供される。
【0030】
また、本発明により、被検微生物の薬剤感受性や薬剤耐性を、簡便、安価且つ迅速に、高精度で検出することが可能となる。さらに、本発明により、被検微生物に対する特定の抗菌薬の最小阻止濃度も、簡便、安価且つ迅速に、高精度で知ることが可能となる。
【0031】
本発明の方法は、簡便、安価且つ迅速に実施でき、その結果は精度が高いので、感染症患者に対し、本発明の方法による試験結果に基づき、当初より、適切な抗菌薬を投与することが可能となる。その結果、無駄な投薬が減り、医療費の抑制や耐性菌の発現抑止が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、スライドガラス上で実施する本発明方法の概要を示す。
【図2】図2は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)中、オキサシリン(MPIPC)に対して感受性であることが既知のATCC29213株とMPIPCに対して耐性であることが既知のATCC43300株に対するMPIPC(4μg/mL)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。
【図3】図3は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)中、セフォキシチン(CFX)に対して感受性であることが既知のATCC29213株とCFXに対して耐性であることが既知のATCC43300株に対するCFX(4μg/mL)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。
【図4】図4は、腸球菌(E.faecalis)中、バンコマイシン(VCM)に対して感受性であることが既知のATCC29212株とVCMに対して耐性であることが既知のATCC51299株に対するVCM(4μg/mL)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。
【図5】図5は、大腸菌(E.coli)中、セフタジジム(CAZ)に対して感受性であることが既知のATCC25922株と、K.pneumoniae中、CAZに対して耐性であることが既知のATCC700603株に対するCAZ(8μg/mL)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。
【図6】図6は、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)に対して感受性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)のATCC27853株に対して、これら3剤それぞれの有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。
【図7】図7は、イミペネム(IPM)に対してのみ耐性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株(No.433)に対して、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。
【図8】図8は、イミペネム(IPM)およびシプロフロキサシン(CPFX)に対して耐性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株(No.431)に対して、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。
【図9】図9は、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)に対して耐性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株(No.204)に対して、これら3剤それぞれの有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。
【図10】図10は、大腸菌(E.coli)の臨床分離株に対するレボフロキサシン(LVFX)2μg/mLの有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。
【図11】図11は、オキサシリン(MPIPC)感受性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)臨床分離株およびMPIPC耐性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)臨床分離株に対するMPIPC4μg/mLの有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。
【図12】図12は、バンコマイシン(VCM)感受性の腸球菌(E.faecium)臨床分離株およびVCM耐性の腸球菌(E.faecium)臨床分離株に対するVCM2μg/mLの有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。
【図13】図13は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)中、セフォキシチン(CFX)に対して感受性であることが既知のATCC29213株とCFXに対して耐性であることが既知のATCC43300株に対するCFX(4μg/mL)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す。この実験では、5種類の染料を用いた。
【図14】図14は、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)に対して感受性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)のATCC27853株に対して、これら3剤それぞれの有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。この実験では、5種類の染料を用いた。
【図15】図15は、イミペネム(IPM)に対してのみ耐性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対して、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。この実験では、5種類の染料を用いた。
【図16】図16は、イミペネム(IPM)およびシプロフロキサシン(CPFX)に対して耐性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)の臨床分離株に対して、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)の有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。この実験では、5種類の染料を用いた。
【図17】図17は、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)に対して耐性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)のATCC27853株に対して、これら3剤それぞれの有効性を、本発明の方法で試験した結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。この実験では、5種類の染料を用いた。
【図18】図18は、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)に対して感受性であることが既知の緑膿菌(P.aeruginosa)のATCC27853株に対して、これら3剤それぞれの有効性を検査する方法を、微生物懸濁液の微生物濃度を変えて実施した試験の結果を示す(IPM:16μg/mL、AMK:32μg/mL、CPFX:4μg/mL)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、発明を実施するための形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0034】
1: 抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法
本発明の抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法は、以下の工程(1)乃至(6)を含む。
(1)微生物含有液体を調製し;
(2)担体上に、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料からなる対照用の被検試料(a)領域と、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する試料からなる被検試料(b)領域を形成し、ここで、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とは、互いに混じり合わないことが担保できる限り、同一の担体上に形成されても異なる担体上に形成されてもよく、且つ、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域における微生物の濃度及び/又は数は略同一であり;
(3)担体上において、被検試料(a)領域及び被検試料(b)領域の微生物を、微生物の至適温度付近で同一条件下に2.5乃至8.0時間培養し;
(4)培養後の被検試料(a)領域及び被検試料(b)領域中の微生物を染色し;
(5)被検試料(a)領域における微生物の染色像と被検試料(b)領域における微生物の染色像とを比較観察し;そして
(6)その比較観察の結果、被検試料(a)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b)領域の染色像中の微生物量が、10%以下であれば有効、10%超且つ50%未満であれば中間、50%以上であれば無効であると判定する。
【0035】
1−1: 微生物
本発明の方法で検査される被検微生物は、特に限定されないが、例を挙げると、臨床検査において「一般細菌」に分類されている各種微生物、具体的には、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、腸球菌(E.faecalis)、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)等、及びそれらの薬剤耐性菌等である。
【0036】
1−2: 被検微生物の採取及び微生物含有液体の調製
被検微生物は、例えば、患者から採取した喀痰、血液、尿、膿、穿刺液、便等の生体試料や、病院内等の環境からふき取った試料中に存在する微生物に由来するものである。上記生体試料の中、喀痰、血液、尿、膿、穿刺液等は、そのまま又は公知の方法で前処理し、液体に分散等して微生物含有液体を調製してもよいし、適当な微生物培養用の培地で希釈して微生物含有液体を調製してもよい。便等の固形試料を用いる場合は、当該試料を適当な微生物培養用の培地に懸濁して微生物懸濁液を調製し、それを微生物含有液体として使用することが好ましい。
【0037】
一般的には、常在菌の混入を避け、病原菌のみを検査に供するために、生体試料等を、常法により寒天培地等の固形培地や液体培地で培養して微生物懸濁液を調製し、これを微生物含有液体として使用する。固形培地を用いる場合には、例えば次のようにして微生物懸濁液を調製する。先ず、生体試料を含む寒天培地を調製し、それに生体試料を塗擦し、培養を行う。この寒天培地に形成されたコロニー中、病原菌のコロニーから釣菌する。釣菌された菌を、別の寒天培地表面に塗擦して培養を行い、増菌させる。増菌後の寒天培地から釣菌し、適当な培地に添加して微生物懸濁液を調製する。このとき、微生物懸濁液を、その濁度がマックファーランドのNo.0.5濁度となるように調製することが好ましく、また、本発明方法の工程(2)における被検試料(a)領域や被検試料(b)領域中の微生物の濃度は、マックファーランドのNo.0.5濁度のものを50倍乃至1倍希釈した濃度とすることが好ましく、50倍乃至2倍希釈した濃度とすることがさらに好ましく、30倍乃至3倍希釈した濃度とすることがさらにより好ましく、20倍乃至5倍希釈した濃度とすることが特に好ましい。換言すれば、本発明方法において微生物の培養を開始する際は、微生物の濃度は、2×10cfu/mL乃至1×10cfu/mL程度であることが好ましく、2×10cfu/mL乃至5×10cfu/ml程度であることがさらに好ましく、3.3×10cfu/mL乃至3.3×10cfu/mL程度であることが好ましく、5×10cfu/mL乃至2×10cfu/ml程度であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明方法の実施に際し、微生物濃度が高すぎると、擬耐性の結果が出てしまうことがあり、一方、微生物濃度が低すぎると、短時間の培養では判定が困難となることがあるためである。
【0039】
また、液体培地を用いる場合には、例えば次のようにして微生物懸濁液を調製する。先ず、適当な培地で血液等の生体試料を希釈する。得られた微生物懸濁液が、マックファーランドのNo.0.5濁度よりも濁度が小さい場合には、培養によって増菌させ、No.0.5濁度の微生物懸濁液を得る。一方、調製された生体試料の希釈液や増菌後の微生物懸濁液が、No.0.5濁度よりも大きい濁度を示す場合には、希釈を行い、マックファーランドのNo.0.5濁度となるよう調整する。そして、寒天培地から釣菌し、適当な培地に添加して微生物懸濁液を調製した場合と同様に、本発明方法において工程(2)における被検試料(a)領域や被検試料(b)領域中の微生物の濃度は、マックファーランドのNo.0.5濁度のものを50倍乃至1倍希釈した濃度とすることが好ましく、50倍乃至2倍希釈した濃度とすることがさらに好ましく、30倍乃至3倍希釈した濃度とすることがさらにより好ましく、20倍乃至5倍希釈した濃度とすることが特に好ましい。
【0040】
微生物懸濁液の調製に際して使用する培地は、目的の微生物が発育できる培地であれば、特に制限はない。例えば、ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、アシネトバクター菌、サルモネラ菌等の好気性菌の場合には、CLSI標準法の微量液体希釈法で用いるCation−adjusted Mueller−Hinton broth (CAMHB;陽イオン調整ミュラーヒントンブロス)が好適に使用され、栄養要求の厳しいヘモフィルス属の菌の場合には、Haemophilus Test Medium (HTM)が好適に使用され、栄養要求の厳しいストレプトコッカス属の菌の場合には、ウマ溶血加ミュラーヒントンブロスが好適に使用され、嫌気性菌には、ウマ溶血加ブルセラブロスが好適に使用され、結核菌群及び非結核性抗酸菌には、ミドルブルック7H9ブロスが好適に使用され、酵母、真菌及び糸状菌には、RPMI1640液体培地が好適に使用される。但し、これらに限定されない。
【0041】
1−3: 抗菌薬
本発明において、抗菌薬は、抗菌活性を有するものであればいずれをも用いることができる。抗菌薬の例として、マクロライド系薬、ニューキノロン系薬、テトラサイクリン系薬、リンコマイシン系薬、ペニシリン系薬、セフェム系薬、モノバクタム系薬、カルバペネム系薬、ホスホマイシン系薬、アミノグリコシド系薬、グリコペプチド系薬、β−ラクタマーゼ阻害剤を挙げることができる。中でも、レボフロキサシン(LVFX)、オキサシリン(MPIPC)、バンコマイシン(VCM)、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)、セフォキシチン(CFX)、セフタジジム(CAZ)などを好適に用いることができる。これらの抗菌薬の多くは市販されており、容易に入手することができる。本発明においては、現段階では未上市・未開発の新規抗菌薬も、将来的には用いることができる。
【0042】
1−4: 被検試料(a)領域と被検試料(b)領域の形成
微生物含有液体は、「1−2: 被検微生物の採取及び微生物含有液体の調製」の欄に記載した方法で調製する。また、「被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とは、互いに混じり合わないこと」については、「1−5: 担体」の欄において説明する。
【0043】
被検試料(a)領域は、担体上の適当な個所に、(i)微生物含有液体、例えば微生物懸濁液を滴下することで形成することができ、あるいは、(ii)微生物含有液体とそれを希釈するための培地、培養液、緩衝液等を滴下することで形成することができる。
【0044】
被検試料(b)領域の形成方法の例は、次の通りである。
(I)一定量の微生物含有液体(これは希釈されたものでもよい、以下、同様)、例えば微生物懸濁液(但し、微生物濃度は培養開始時の微生物濃度と同一である)と抗菌薬とを混合することによって調製した被検試料(b)を、担体上に採る。
(II)一定量の微生物含有液体(但し、微生物濃度は培養開始時の微生物濃度の、例えば約2倍である)と、抗菌薬を培養開始時の濃度の、例えば約2倍で含有する抗菌薬溶液とを、各々略同一量、担体上の検査で使用するための領域の一つに採る。
(III)担体が「抗菌薬が固着された、検査で使用するための領域」を有する場合には、その領域内に一定量の微生物含有液体(但し、微生物濃度は培養開始時の微生物濃度と同一である)を添加するだけでよい。
(IV)担体が「抗菌薬が固着された、検査で使用するための領域」を有する場合には、その領域内に、一定量の微生物含有液体と一定量の希釈液とを各々添加して、培養開始時の微生物濃度とする。この場合、初めに希釈液を添加して、固着された抗菌薬を溶解させることが好ましい。
【0045】
上記(III)の場合、例えば、被検試料(a)領域となる個所と被検試料(b)領域となる個所に、ある所定濃度の微生物懸濁液を滴下(好ましくは同容量を滴下)するだけでよい。ある所定濃度の微生物懸濁液を同容量で滴下した場合、被検試料(a)領域に存在する液体と被検試料(b)領域に存在する液体は、抗菌薬の有無以外は同様の条件となる。なお、上記(I)、(II)及び(IV)の場合も、被検試料(a)領域に存在する液体と被検試料(b)領域に存在する液体は、抗菌薬の有無以外は同様の条件とすることができるのはいうまでもない。
【0046】
被検試料(a)領域は、対照(コントロール)のデータを取るためのものであるので、培養開始時において、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域の各々における微生物の濃度及び/又は数は略同一である。なお、微生物の濃度の同一性は、例えばマックファーランドの濁度を一致させることで担保し、微生物の数は、各領域における試料の総容量と微生物の濃度との積とを一致させることで略同一とすることができる。一つの被検試料(a)領域における試料の総容量と、一つの被検試料(b)領域における試料の総容量も、略同一であることが好ましい。微生物の濃度が略同一で、試料の総容量も略同一であれば、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とで、抗菌薬の有無以外の条件が略同一となる。同様に、微生物の数が略同一で、試料の総容量も略同一であれば、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とで、抗菌薬の有無以外の条件が略同一となる。
【0047】
培養開始時の被検試料(b)領域中の抗菌薬の濃度は、検査の目的によって異なる。例えば、被検抗菌薬に対する、被検微生物の感受性又は耐性を検査する場合には、公的に規定された判定ブレークポイント濃度を採用することが好ましい。ここで、判定ブレークポイント濃度を規定する法律や方法の例を挙げると、日本国における「感染症法」、日本化学療法学会の規定、及び薬剤感受性試験法の国際標準法であるCLSI法がある。また、最小阻止濃度(MIC)を求める場合には、種々の濃度で抗菌薬を含有する複数の被検試料(b−1)領域乃至被検試料(b−n)領域(ここで、nは、抗菌薬を含む被検試料(b)領域の数を示す整数である)を形成する。
【0048】
種々の濃度で抗菌薬を含有する複数の被検試料(b−1)領域乃至被検試料(b−n)領域を形成する場合には、個々の濃度で抗菌薬を含む被検試料(b−1)乃至(b−n)を調製してもよいし、初めに抗菌薬濃度が最も濃い被検試料(b)を調製し、それを段階希釈してもよい。また、担体が複数の「抗菌薬が固着された、検査で使用するための領域」を有し、個々の領域に異なる量の抗菌薬が固着されている場合には、それらの領域各々に、一定量の微生物含有液体又はその希釈物(但し、微生物濃度は培養開始時の微生物濃度と同一である)を添加するだけでよい。
【0049】
担体上の一つの「検査で使用するための領域」中における試料の総容量は、特に限定されないが、例えば20乃至250μLであり、30乃至100μLであってよい。培養時における培地からの水分の蒸発を防ぐ手段を採用する場合には、試料の総容量はもっと少なくてもよい。
【0050】
上記したように、「検査で使用するための領域」ごとに、同じ抗菌薬であるが、異なる重量が固着されていてよいし、あるいは、異なる種類の抗菌薬が固着されていてもよい。
【0051】
「検査で使用するための領域」内に抗菌薬を固着させる方法は、担体の製造方法についての説明の個所にて記載する。
【0052】
1−5: 担体
本発明に用いる担体は、その上で微生物を培養し、染色することができ、その後、例えば顕微鏡下での染色像の観察に供することができるものであれば、特に制限はない。例を挙げると、スライドガラス(細菌検査用スライドガラス、ホールスライドガラス、沈渣用プレート等)、マイクロアレイ用スライドガラス、多穴プレート、多連モジュール等がある。また、その材質は、ガラス又はプラスチックが好ましい。
【0053】
担体としてスライドガラスを使用する場合、標準サイズ(寸法:約76×26mm;3”×1”)のものに限定されず、大型スライドガラス(寸法:約76×52mm)や地質学用(寸法:約46×27mm)のもの等も使用可能である。スライドガラスは、勿論、既存のサイズ以外のサイズであってもよい。
【0054】
担体の材料は、透明なガラス又はプラスチックが一般的であるが、色のついた半透明なものであってもよい。また、染色を蛍光染料で行う場合には、バックグラウンド蛍光が抑制されたガラス製のものや、白や黒の着色プラスチックであってもよい。
【0055】
担体は、検査のために使用する区画された領域を有する。この領域の数は、通常は二つ以上である。本発明の検査方法では、対照としての抗菌薬を含まない被検試料のみの系(被検試料(a)領域))と、抗菌薬を含有する被検試料(b)領域とを、同一の条件で処理するからである。したがって、区画された領域が三つ以上あれば、二種類以上の抗菌薬を用いた試験や、抗菌薬の濃度を二種以上とする試験を、一つの担体上で行うことができる。なお、本発明の方法では、検査のために使用する区画された領域が一つしかない担体も使用することはできる。そのような場合には、担体を二つ以上用い、それらの中の少なくとも一つは、被検試料のみの系(a)用とする。
【0056】
担体における「検査のために使用する区画された領域」について説明する。担体がスライドガラスの場合には、「検査のために使用する区画された領域」は、予め特定されている場合と特定されていない場合とがある。最も簡単な例では、スライドガラス上の互いに離れた領域に微生物含有液体等を滴下して被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とを形成でき且つ両領域内の微生物が混じり合わないように培養することができれば、微生物含有液体等を滴下したその個所が、各々、「検査のために使用する区画された領域」となる。この場合は、「検査のために使用する区画された領域」は、予め特定されていない。
【0057】
「検査のために使用する区画された領域」が予め特定されている場合の例は、次の通りである。スライドガラスの表面上に所定の高さの塀又は土手状の囲いを形成し、その塀又は囲いの中を「検査のために使用する区画された領域」としたもの、スライドガラスの表面に、「検査のために使用する区画された領域」を残して、高撥水性の材料を印刷したもの、スライドガラス表面に浅いくぼみ(穴)が形成されてなり、くぼみの中を「検査のために使用する区画された領域」とするもの。なお、その表面に高撥水性の材料が印刷されることによって「検査のために使用する区画された領域」が設けられたスライドガラスは、市販されている。
【0058】
担体として多穴プレートや多連モジュールを使用する場合には、「検査のために使用する区画された領域」とは、その穴の部分である。
【0059】
「検査のために使用する区画された領域」は、透明であるか又はわずかに着色があっても色は薄く透けて見えるのがよい。その領域内に、さらに、着色された細い格子状の線が設けられていてもよい。但し、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラによって染色像を撮影する場合には、「検査のために使用する区画された領域」は、色の濃淡がわかる(染色された微生物が識別できる)という条件を満たせば、透明でなくてもよい。
【0060】
「検査のために使用する区画された領域」の容量、大きさは、微生物の培養ができる限り、特に限定されない。例えば、培養される試料を20乃至250μL程度保持できる容量、大きさである。また、「検査のために使用する区画された領域」の平面形状が円である場合、その大きさは例えば直径が4乃至10mm程度であるが、もっと小さいものであってもよい。勿論、その平面形状は円に限定されず、正方形でも長方形でも、その他の形でもよい。
【0061】
1−6: 培養
培養は、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とを、両領域における試料の総容量と抗菌薬の有無を除いて同一条件で、好ましくは抗菌薬の有無を除いて同一条件で、微生物が発育するに適した温度(至適温度)付近で2.5乃至8.0時間行う。至適温度は、微生物の種類によって異なり、一部の微生物については、通常よりも低温であったり高温であったりするが、多くの微生物については、35℃近辺である。また、その環境は、通常は好気的又は微好気的であることが好ましいが、嫌気性菌であれば、嫌気的環境下で培養を行う。
【0062】
培養に要する時間は、約2.5乃至8時間である。2時間程度では、正しい判定ができない場合があり、一方、8時間を超えて培養を行っても、結果にほとんど変化がないからである。通常は3乃至5時間の培養で十分であるが、発育の遅い一部の菌種や、特定の微生物と特定の抗菌薬との組合せの場合には、6乃至8時間程度、培養を行うことが好ましい。
【0063】
尚、培養中に培地中の水分が蒸発するのを防ぐために、担体を蓋付きの収納用ケースに入れたり、「検査のために使用する区画された領域」に蓋をした上で、インキュベータに入れて培養することが好ましい。また、複数の担体を使用する場合には、担体を保持するラックを使用するとよい。
【0064】
培養開始時において、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域の各々における微生物の濃度又は数は略同一であり、また、個々の領域に含有される試料の総容量も略同一であることが好ましい。
【0065】
1−7: 染色
抗菌薬の存在下と不存在下(対照)における微生物の発育、具体的には数の違いを比較することによって、抗菌薬の有効性を判定するため、培養終了後に微生物の染色を行う。「染色を行う」とは、培養後、染色−媒染−洗浄−脱色等の染色法における通常の操作の全部又は一部を含む行為を行い、微生物を染色することをいう。
【0066】
染色を行う前に、培地中の水分を蒸発させてもよいし、水分は蒸発させずにアルコールやホルマリンで微生物を固定してもよい。水分を蒸発させる方法としては、静置、風乾(ドライヤー等を使用した加熱風乾を含む)、加熱乾燥(例えばホットプレート上で約40℃での乾燥)等がある。水分の蒸発処理は、通常は、室内、安全キャビネット内、乾燥器内、除湿庫内等で行う。
【0067】
染色法は、通常、微生物の染色に用いられる方法であればいずれをも用いることができるが、より簡便な単染色が好ましい。染色試薬は市販されており、容易に入手することができる。微生物の染色法は、当業界で周知の方法(例えば、カラー版「染色法のすべて」、月刊MEDICAL TECHNOLOGY別冊、医歯薬出版株式会社、1988年7月15日第1版第1刷発行や、検査と技術2001年第29巻7号増刊号「病理組織・細胞診のための日常染色法ガイダンス」、医学書院、2001年6月15日発行等を参照されたい)であり、当業者が適宜実施することができる。
【0068】
また、微生物の染色に用いる染色試薬も特に限定されないが、例を挙げると、メチレンブルー、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、塩基性フクシン、アクリジンオレンジ、4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール等がある。染色試薬には、微生物の表面のみを染色するものや、細胞膜に入って細胞膜を染色するもの、核を染めるもの等があるが、いずれであってもよい。
【0069】
なお、染色試薬として蛍光試薬を用いる場合には、例えば、蛍光顕微鏡を用い、蛍光物質にフィルターで抽出した特定波長の光を当てて励起させ、吸収フィルターで分離した特定波長の蛍光を測定する。
【0070】
1−8: 微生物の染色像の比較観察
本発明では、担体上の「微生物を培養し染色した領域」であって、被検試料(b)領域(以下においては、「抗菌薬領域」ということがある)の微生物の染色像を、被検試料(a)領域(以下においては、「対照領域」ということがある)の微生物の染色像と比較観察する。
【0071】
染色像は、例えば、肉眼で観察する。特に薬剤耐性の試験の場合には、耐性であれば抗菌薬領域も対象領域と同様に強く染まっているので、顕微鏡で観察するまでもなく、肉眼で判定が可能である場合も多い。感受性試験の場合には、通常は染色像を顕微鏡下で目視で観察する。具体的には、グラム染色で採用されている倍率である1000倍程度で、油浸系レンズを用いて鏡検する。また、抗菌薬領域と対照領域の染色像や蛍光(蛍光染料を使用した場合)を機械的に読み取り、比較してもよい。あるいは、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)カメラ等により、抗菌薬領域と対照領域とを撮影し、それらの拡大画像を比較観察してもよい。なお、顕微鏡下やCCDカメラ等による撮影は、各領域について、複数視野における染色像を観察した後、代表的な一視野について行えばよいが、染色像にばらつきがある場合等では、二以上、好ましくは三以上の視野について、撮影を行うことが好ましい。これにより、判定の信頼度が高まる。また、光学系拡大レンズ群とパーソナルコンピュータとを組み合わせて、パーソナルコンピュータの画面上にそれらの拡大画像を映し出し、染色像を観察してもよい。
【0072】
1−9: 判定
本発明では、抗菌薬存在下(被検試料(b)領域)における微生物の発育を、抗菌薬不存在下(被検試料(a)領域)における微生物の発育(対照)と比較して、被検微生物に対する被検抗菌薬の有効性を判定する。具体的には、対照領域に存在する微生物量に対して抗菌薬領域に存在する微生物量が10%以下であれば、抗菌薬は有効、10%超且つ50%未満であれば中間、50%以上であれば抗菌薬は無効である。
【0073】
ここで、「微生物量」は、実際に数えた微生物数に限らない。例えば、染色像の一視野内における蛍光強度や、一視野の全面積中の染色された部分の面積の割合であってもよい。あるいは、一視野内の微生物数を係数できるプログラムソフトが組み込まれたパーソナルコンピュータを使用して、微生物数を数えることもできる。
【0074】
1−9−1: 薬剤感受性の評価
本発明の方法を、培養開始時の微生物濃度として、マックファーランドのNo.0.5濁度の微生物懸濁液の50倍乃至1倍希釈に相当する微生物濃度に調整した微生物含有液体を用い、被検試料(b′)領域がCLSI法等の公的に規定されたブレークポイント濃度の抗菌薬を含む試料を含有するという条件で試験を行った場合には、対照領域の染色像中の微生物量を基準として、抗菌薬領域の染色像中の微生物量が、10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下であれば、被検微生物が被検抗菌薬に対して感受性であると判定することができる。培養開始時の対象領域及び抗菌薬領域の微生物懸濁液の微生物濃度は、マックファーランドのNo.0.5濁度の50倍乃至1倍希釈に相当するものが好ましく、50倍乃至2倍希釈に相当するものがさらに好ましく、30倍乃至3倍希釈に相当するものがさらにより好ましく、20倍乃至5倍希釈に相当するものが特に好ましい。
【0075】
1−9−2: 薬剤耐性の評価
本発明の方法を、培養開始時の微生物濃度として、マックファーランドのNo.0.5濁度の微生物懸濁液の50倍乃至1倍希釈に相当する微生物濃度に調整した微生物含有液体を用い、被検試料(b′)領域がCLSI法等の公的に規定されたブレークポイント濃度の抗菌薬を含む試料を含有するという条件で試験を行った場合には、対照領域の染色像中の微生物量を基準として、抗菌薬領域の染色像中の微生物量が、50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であれば、被検微生物が被検抗菌薬に対して耐性、又は、被検抗菌薬が被検微生物に無効であると判定することができる。培養開始時の対象領域及び抗菌薬領域の微生物懸濁液の微生物濃度は、マックファーランドのNo.0.5濁度の50倍乃至1倍希釈に相当するものが好ましく、50倍乃至2倍希釈に相当するものがさらに好ましく、30倍乃至3倍希釈に相当するものがさらにより好ましく、20倍乃至5倍希釈に相当するものが特に好ましい。
【0076】
薬剤耐性菌の、限定的でない例として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)等が挙げられる。たとえば、グラム染色所見においてブドウ球菌の存在を推定できた検体を用いた実験において、被検微生物に対してオキサシリン(MPIPC)又はセフォキシチン(CFX)が無効であると判定されれば、その微生物はMRSAの可能性が高いことが示唆される。同じくグラム染色所見において腸球菌の存在を推定できた検体を用いた実験において、被検微生物に対してバンコマイシン(VCM)が無効であると判定されれば、その微生物はVREの可能性が高いことが示唆される。また、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)、シプロフロキサシン(CPFX)のすべてが無効であると判定された緑膿菌(臨床分離株)は、MDRPの可能性が高いことが示唆される。
【0077】
1−9−3: 最小阻止濃度(MIC)の判定
本発明の方法を、培養開始時の微生物濃度として、マックファーランドのNo.0.5濁度の微生物懸濁液の50倍乃至1倍希釈に相当する微生物濃度に調整した微生物含有液体を用い、各々異なる濃度で抗菌薬を含む複数の被検試料(b″−1)領域乃至被検試料(b″−n)領域(ここで、nは、抗菌薬を含む被検試料(b″)の数を示す整数である)を形成して試験を行った場合には、被検抗菌薬の被検微生物に対する最小阻止濃度(MIC)を検査することができる。即ち、対照領域の染色像中の微生物量を基準として、抗菌薬領域の染色像中の微生物量が、10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である抗菌薬領域の中で、抗菌薬濃度が最も薄い試料を含有する被検試料(b″−x)領域における抗菌薬濃度が、最小阻止濃度(MIC)と判定される。培養開始時の対象領域及び抗菌薬領域の微生物懸濁液の微生物濃度は、マックファーランドのNo.0.5濁度の50倍乃至1倍希釈に相当するものが好ましく、50倍乃至2倍希釈に相当するものがさらに好ましく、30倍乃至3倍希釈に相当するものがさらにより好ましく、20倍乃至5倍希釈に相当するものが特に好ましい。
【0078】
2: 抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用キット
本発明の検査用キットは、少なくとも以下の(I)及び(II)を含む:
(I)抗菌薬;
(II)微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料である被検試料(a)と、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する被検試料(b)とを各々互いに混じり合わないように保持でき且つ微生物の培養に使用できる担体を一枚以上。
【0079】
また、本発明の検査用キットは、上記(I)及び(II)に加え、さらに、以下の(III)乃至(VI)からなる群から選択される少なくとも一種をも包含するものであってもよい:
(III)微生物染色用試薬;
(IV)検査方法の説明書;
(V)担体を保持するラック;及び
(VI)担体を入れる容器。
【0080】
2−1: 抗菌薬
本発明の検査用キットに使用される抗菌薬は、先の「抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法」の説明中に記載したとおりである。抗菌薬は、キットの構成要素として、単独で存在するものであっても、担体の「検査のために使用する区画された領域」に固着されているものであってもよい。また、抗菌薬の種類は、一種のみでも、二種以上であってもよい。
【0081】
2−2: 担体
本発明の検査用キットに使用される担体は、先の「抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法」の説明中に記載したとおりである。本発明の検査用キットに含まれる担体の数は、一枚のみであってもよいし、二枚以上であってもよい。担体上に「検査で使用するための領域」を一つしか形成できない場合には、担体の数は二枚以上となる。担体上に「検査で使用するための領域」を二つ以上形成できる場合には、担体の数は、一枚以上である。
【0082】
なお、担体に抗菌薬が固着されている場合のその構成は、「抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用担体の製造方法」についての説明中で述べる。
【0083】
2−3: 微生物染色用試薬
本発明の検査用キットに使用される微生物染色用試薬の中、染料については、先の「抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法」の説明中に記載したとおりである。
【0084】
染色用試薬の概念には、染料を含む染色液のほかに、染色作業において使用される固定液、媒染剤、洗浄液、脱色液等の染色に使用される各種液体等も包含される。
【0085】
2−4: 説明書
本発明のキットは、上記の抗菌薬、担体及び微生物染色用試薬を使用して、抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法を行うための説明書を含む。当該説明書には、本発明の抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法の実施手順が記載されている。
【0086】
担体上の検査で使用するための領域に抗菌薬が付着させてある場合には、その抗菌薬名や固着量(あるいは指定量の試料を入れた時の抗菌薬濃度)、担体上における抗菌薬の配置や固着量の配置も、説明書に記載されていてよい。
【0087】
2−5: 担体を保持するラック
担体を保持するラックは、たとえば、「検査で使用するための領域」を一つしか形成できない担体を使用する場合に、二枚以上の担体を同一条件で培養するために使用する。勿論、担体を一枚しか使用しない場合でも、ラックを使用することはできる。
【0088】
ラックは、担体を水平に保持又は載置できるものであればよい。その具体例としては、金属パイプ製やプラスチック製の棚(複数のスライドガラスを、互いに空間を空けて縦に積む(各々を棚部分に載せる)ことができるもの)、プラスチック製の担体の側端部(例えば両側部)を挟持できる支持体がある。
【0089】
2−6: 担体を入れる容器
本発明の方法の実施にあたり、培養中に培地中の水分が必要以上に蒸発してしまうと、適切な培養を行うことができない場合がある。そこで、スライドガラス等の担体を入れる密閉容器を使用することが好ましい。このような容器は、担体を入れることができ、密閉性があり、インキュベータ中で使用することができ、且つ微生物の培養に悪影響を与えないものであれば、特に限定されない。なお、密閉性については、必ずしも完全である必要はなく、水分の蒸発が抑制できればよい。このような容器の例として、プラスチック製の角形容器が挙げられる。
【0090】
なお、担体をこのような容器に装入するに際し、担体を容器内に直接装入又は載置してもよいし、ラックに複数の担体を装入した上で、そのラックごと容器に入れてもよい。
【0091】
また、担体を入れる容器には、複数の担体を装入できるように仕切りが形成されているものも包含される。
【0092】
2−6: その他
本発明のキットは、さらに、生体試料や環境ふき取り試料を希釈又は懸濁するための微生物培養培地をも含むことが望ましい。培地は、微生物の培養に適するものであればよく、液体でも粉末でもよい。また、環境ふき取りに使用するための材料、例えばスワブも含んでよい。
【0093】
本発明のキットは、更にカバーグラスを含むものであってもよい。カバーガラスが蓋の役目をはたし、培養中における培地中の水分の蒸発を抑制することができる。
【0094】
また、染色用試薬を同梱しないキットとしてもよい。この場合、染色用試薬は別売としてもよく、あるいは病理検査室で汎用する染色用試薬を利用してもよい。
【0095】
3: 抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用担体の製造方法
本発明に係る、抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用担体の製造方法は、検査で使用するための領域を二つ以上有する、スライドガラス、マイクロアレイ用スライドガラス、多穴プレート及び多連モジュールからなる群から選択される担体において、対照用の少なくとも一つの領域を除く他の領域のそれぞれに、当該担体使用時に所定量の被検試料を添加することによって所定濃度となる量の抗菌薬を、当該抗菌薬の溶液で付与し、溶媒を除去する工程を含む。
【0096】
上記担体がスライドガラスやマイクロアレイ用スライドガラスである場合、「検査で使用するための領域」とは、例えば、その表面上に所定の高さの塀又は土手状の囲いを形成して区画された、その塀又は囲いの中の領域である。あるいは、スライドガラスの表面に、一部を残して高撥水性の材料を印刷してなる担体のその印刷がされていない部分が「検査で使用するための領域」である。また、最も簡単な例では、スライドガラス上の一個所に抗菌薬が固着されていれば、その固着された部分とその周辺の被検試料(b)領域と、被検試料(b)領域からは離れた被検試料(a)領域とが、「検査で使用するための領域」となる。
【0097】
上記担体が表面に穴の形成されたスライドガラスやマイクロアレイ用スライドガラス、多穴プレートや多連モジュールの場合には、穴の部分が「検査で使用するための領域」である。
【0098】
本発明に係る検査用担体においては、複数の「検査で使用するための領域」の中、少なくとも一つは対照用として使用されるので、ここには抗菌薬は固着されない。対照用以外の「検査で使用するための領域」に、抗菌薬が固着される。抗菌薬は、各「検査で使用するための領域」において、その全体又は一部に固着される。
【0099】
担体に抗菌薬を固着するには、抗菌薬の溶液、例えば水溶液を、担体の「検査で使用するための領域」に滴下し、常温での静置乾燥又は風乾、加熱乾燥、強制除湿乾燥(デシケータ内での乾燥)、減圧乾燥、凍結乾燥等の当業界で通常知られる方法で、溶媒を蒸発させ、抗菌薬を固形分として担体上に固着させるものである。
【0100】
このとき、各領域に固着される抗菌薬の量は、担体使用時に所定量の被検試料を添加することによって所定濃度となる量である。例えば、抗菌薬の10%溶液を50μL滴下した場合には、5μgの抗菌薬が「検査で使用するための領域」に固着される。検査に際してこの領域に滴下される菌懸濁液の容量が100μLであれば、調製される被検試料(b)の抗菌薬濃度は、5w/v%となる。
【0101】
抗菌薬が安定性に欠けるもの、例えばカルバペネム系化合物である場合には、抗菌薬に安定剤を併用することが好ましい。カルバペネム系化合物を安定化させる方法の一例は、次の通りである。
【0102】
カルバペネム系抗菌薬を、安定剤である2−ヒドロキシ−3−モルフォリノプロパンスルフォン酸(MOPSO)緩衝液(好ましくは、30乃至120mM濃度とする)に溶解させ、得られた溶液を担体上に滴下し、乾燥によって溶媒を除去し、抗菌薬と安定剤とを担体上に固着させる。なお、抗菌薬に安定剤を併用する場合のそれらの担体上への固着方法や、安定剤の使用が好ましい抗菌薬の例、安定剤の例は、特開2005−341827を参照されたい。
【0103】
先にも説明したように、対照用以外の「検査で使用するための領域」が複数ある場合、それらの領域には、異なる抗菌薬を固着させてもよいし、一種類の抗菌薬をその量を変えて(即ち、培養液中での濃度が異なるものとなるように)固着させてもよいし、異なる抗菌薬を、各々について二種類以上の量で(即ち、被検試料(b−1)領域と被検試料(b−n)領域では、抗菌薬の濃度が異なるものとなるように)固着させてもよい。
【0104】
本発明の検査用担体には、対照用の領域は、少なくとも一つ存在する。用途により、対照用の領域は、二つ以上存在してもよい。例えば、多穴プレートであって、一列毎に一連の試験が行えるものの場合には、各列に一つずつ、対照用領域が存在する。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]既知標準株を用いた検査
表1に示す菌種、菌株を用い、それらが抗菌薬に対して所定濃度で有効であるか否かを試験した。試験に供した抗菌薬及び培地、即ち被検試料(b)領域における抗菌薬の濃度も、表1に記載した。
【0106】
【表1】

【0107】
(1)菌株
各菌種について、ATCC(American Type Culture Collection)の国際標準株を使用した。また、P.aeruginosaの薬剤耐性株については、国際標準株の指定が現在のところ存在しないため、臨床分離株を使用した。
【0108】
(2)薬剤感受性
用いた菌株の薬剤感受性を、表1の既知判定結果欄に示した。具体的には、現在、日常検査で実施されている薬剤感受性試験法の国際標準法であるCLINICAL LABORATORY STANDARDS INSTITUTE(CLSI)法に記載されるMIC判定基準の判定ブレークポイント濃度(μg/mL)(抗菌薬濃度の欄に記載)において、薬剤感受性であるか薬剤耐性であるかを示した。また、P.aeruginosaについては、感染症法に基づく医師等の届出における、「届出のための必要な検査所見」で特定されている、薬剤耐性であると判定される下限濃度を示した。
【0109】
(3)検査方法
図1に示す方法に準じ、試験を行った。具体的には、次の通りである。スライドガラスの一方の表面には、撥水性印刷が為されており、印刷されていない領域として、直径10mmの円形の穴が4個形成されている(松波硝子製;型番TF0410;4穴)。これらの穴が、検査で使用するための領域である。穴の一つに、表1に示す抗菌薬の水性溶液を滴下し、室温にて自然乾燥させて抗菌薬を固着させ、抗菌薬領域を形成した。抗菌薬の水性溶液の滴下量は、後の工程で、検査で使用するための領域に微生物懸濁液を50μL滴下したときに、抗菌薬の濃度が表1に示す値となる量とした。他の穴の一つは、抗菌薬の水性溶液を滴下せず、対照領域として、コントロールの試験に使用する。さらに他の二つの穴は、使用しなかった。
【0110】
抗菌薬領域と対照領域のそれぞれに、表1に示した菌種、菌株の懸濁液であって、McFarland No.0.5濁度のもの(1×10cfu/mL)を10倍希釈したもの(1×10cfu/mL)を、50μL(5×10cfu)添加した。なお、培地は陽イオン調整ミュラーヒントンブロスを使用した。
表1に示した菌種、菌株の懸濁液を添加した後、そのスライドガラスを蓋付きの密閉容器に入れ、その容器をインキュベータに入れ、35℃にて1時間、2時間、4時間又は8時間培養した。
【0111】
インキュベータからスライドガラスを取り出し、23±3℃にて30分間程度自然乾燥させて微生物をスライドガラス上に固着させ、次いで、メチレンブルーを用いて染色した。染色は、次のようにして行った。
【0112】
(染色液の調製)
メチレンブルー1.5gを95%エタノール30mLに溶解させた。メチレンブルーが溶解した後、全量を、0.01%水酸化カリウム水溶液100mLと混合した。
【0113】
(染色方法)
スライドガラス上全体に染色液を載せ、1分間程度そのまま放置した。媒染剤は使用しなかった。その後、染色液を捨て、スライドガラスを水で洗浄した。スライドガラスを安全キャビネット内にて約30分間乾燥させた。脱色は行わなかった。
【0114】
微生物の染色像を、油浸で1,000倍の倍率で顕微鏡下で観察した。観察は、複数視野について行った。代表的な視野を一つ又は二つ以上選択し、鏡検像を撮影した。なお、使用した顕微鏡は、ライカ検査・研究顕微鏡DMLBであった。
【0115】
(4)結果
(4−1)S.aureusに対するオキサシリンの有効性
ペニシリン系抗菌薬であるオキサシリン(MPIPC)を用い、本抗菌薬に対して感受性であることが既知のS.aureus ATCC29213株と耐性であることが既知のS.aureus ATCC43300株を用いて培養を行った場合の結果を図2に示す。
【0116】
図2から明らかなように、ATCC29213株では、培養2時間後において、抗菌薬領域(図面には「薬剤含有」と記載されている;以下同様)の菌数が対照領域(図面には「コントロール」と記載されている;以下同様)の菌数のおよそ10%となっていた。そして、培養4時間後や8時間後においては、抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の5%以下となっていた。従って、MPIPCが有効であることがわかる。
【0117】
一方、ATCC43300株では、培養2時間後では、抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の50%未満であったが、培養4時間後や8時間後においては、抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の50%を超えていた(具体的には、4時間後では約100%、8時間後では約80%)。よって、MPIPCが無効であると判定できた。
【0118】
たとえば臨床分離微生物に対してこのようにMPIPCの有効性を試験することにより、MPIPCが無効であると判定されれば、その菌種はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)である可能性が高いことが示唆される。
【0119】
(4−2)S.aureusに対するセフォキシチンの有効性
オキサシリン(MPIPC)の代わりにセフォキシチン(CFX)を表1に記載の濃度で使用した場合の結果を図3に示す。
【0120】
図3から明らかなように、ATCC29213株の場合もATCC43300株の場合も、培養2時間後では、抗菌薬領域と対照領域の菌数に大きな差はなかった。培養4時間後や8時間後においては、ATCC29213株は、抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の10%以下、より詳細には5%以下となっていた。従って、CFXが有効であることがわかる。一方、ATCC43300株では、培養4時間後や8時間後における抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の約100%であった。よって、CFXが無効であると判定できた。
【0121】
たとえば臨床分離微生物に対してこのようにCFXの有効性を試験して、濃度4μg/mLでCFXが無効であると判定されると、その菌株がMRSAである可能性が高いことが示唆される。
【0122】
(4−3)E.faecalisに対するバンコマイシン(VCM)の有効性
グリコペプチド系抗菌薬であるバンコマイシン(VCM)を用い、本抗菌薬に対して感受性であることが既知のATCC29212株と耐性であることが既知のATCC51299株を用いて培養を行った場合の結果を図4に示す。
【0123】
図4から明らかなように、ATCC29212株の場合もATCC51299株の場合も、培養2時間後では、抗菌薬領域と対照領域の菌数に大きな差はなかった。培養4時間後や8時間後においては、ATCC29212株は、抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の10%以下、より詳細には5%以下となっていた。従って、VCMが有効であることがわかる。一方、ATCC51299株では、培養4時間後における抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の約60%であり、8時間後では、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の100%以上であった。よって、VCMが無効であると判定できた。
【0124】
(4−4)E.coli及びK.pneumoniaeに対するセフタジジム(CAZ)の有効性
セファロスポリン系抗菌薬であるセフタジジム(CAZ)を用い、本抗菌薬に対して感受性であることが既知のE.coli ATCC25922株と耐性であることが既知のK.pneumoniae ATCC700603株を用いて培養を行った場合の結果を図5に示す。
【0125】
図5から明らかなように、培養2時間では、ATCC25922株は、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の約30%であったが、培養4時間後には、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の10%以下、培養8時間後には、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の5%以下となっていた。従って、培養4時間後において、CAZが有効であると判定できた。
【0126】
一方、K.pneumoniae ATCC700603株では、培養2時間後において、抗菌薬領域の菌体が溶菌に至らず、大きく伸長したフィラメント形成が確認された。また、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の約60%であった。培養4時間後及び8時間後では、菌体のフィラメント形成が観察され、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の100%を超えていた。よって、培養2時間で、CAZが無効であると判定できた。なお、菌体がフィラメントを形成する場合、抗菌薬の殺菌性は必ずしも優れたものではないことが知られている。
【0127】
(4−5)P.aeruginosaに対するイミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)及びシプロフロキサシン(CPFX)の有効性
(4−5−1) イミペネム、アミカシン及びシプロフロキサシンの3種の抗菌薬に対して感受性であることが既知の緑膿菌株(ATCC27853)に対して、これら3種の抗菌薬それぞれの有効性を試験した結果を図6に示す。
【0128】
培養2時間後においては、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合は、いずれの抗菌薬についても20乃至30%程度であった。しかし、培養4時間後及び8時間後においては、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の10%以下、より詳細には5%以下となっていた。従って、ここで試験を行った3種の抗菌薬が、いずれも有効であることがわかる。
【0129】
(4−5−2)ATCC27853株の代わりに、現行のCLSI法で、上記3種の抗菌薬の中、IPMに対してのみ耐性と判定されている緑膿菌の臨床分離株(No.433)を用いた場合の結果を図7に示す。
【0130】
培養2時間後においては、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合は、IPMについては約40%、AMK及びCPFXについては20%以下であった。しかし、培養4時間後及び8時間後においては、IPMについては抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数とほぼ同等又は上回っていた。また、AMK及びCPFXについては、培養4時間後及び8時間後には、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の10%以下、より詳細には5%以下となっていた。従って、本発明の方法でも、この細菌に対しては、AMK及びCPFXが有効で、IPMは無効であると判定された。
【0131】
(4−5−3)ATCC27853株の代わりに、現行のCLSI法で、上記3種の抗菌薬の中、IPM及びCPFXに対して耐性と判定されている緑膿菌の臨床分離株(No.431)を用いた場合の結果を図8に示す。
【0132】
培養2時間後においては、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合は、IPMについては約50%、AMKについては15乃至20%程度、CPFXについては約80%であった。しかし、培養4時間後及び8時間後においては、IPM及びCPFXについては抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の70%以上であった。また、AMKについては、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の10%以下、より詳細には5%以下となっていた。従って、この細菌に対しては、AMKが有効で、IPM及びCPFZXは無効であると判定された。
【0133】
(4−5−4)ATCC27853株の代わりに、現行のCLSI法で、上記3種の抗菌薬すべてに対して耐性と判定されている緑膿菌の臨床分離株(No.204)を用いた場合の結果を図9に示す。
【0134】
培養2時間後においてすでに、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合は、いずれの抗菌薬を使用した場合も100%以上であった。培養4時間後も、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合は、いずれの抗菌薬を使用した場合も100%以上であった。培養8時間後では、IPM及びCPFXについては抗菌薬領域の菌数が対照領域の菌数の70%程度であり、また、AMKについては、抗菌薬領域の菌数は対照領域の菌数の100%超であった。従って、この細菌に対しては、上記3種の抗菌薬は、いずれも無効であると判定された。
【0135】
以上の結果から、本発明の方法によれば、被検微生物に対する抗菌薬の有効性が、4時間の培養で、現在18時間以上を要する標準法と同等のレベルで判定できることが明らかとなった。
【0136】
[実施例2]大腸菌(E.coli)臨床分離株に対する抗菌薬有効性の判定
実施例1と同様のスライドガラス製担体の検査で使用するための領域二個所の中、一方に、レボフロキサシン(LVFX)を、後の工程で微生物懸濁液を50μL滴下したときにLVFXの濃度が2μg/mLとなる量で固着させ、抗菌薬領域を作製した。他方には何も固着させず、対照領域とした。
【0137】
抗菌薬領域と対照領域のそれぞれに、E.coli臨床分離株の微生物懸濁液であって、McFarland No.0.5濁度のものを10倍希釈したものを、50μL添加した。なお、培地は陽イオン調整ミュラーヒントンブロスを使用した。E.coli臨床分離株は、他の試験によってLVFXに対して感受性であると判定されたもの(MIC≦0.25μg/mL)と、耐性であると判定されたもの(MIC>8μg/mL)の2種類を使用した。
【0138】
そのスライドガラスを、三菱ガス化学(株)製の角形ジャーに入れ、それをインキュベータに入れ、35±1℃にて4時間培養した。
【0139】
スライドガラスを取り出し、23±3℃にて30分間程度自然乾燥させて、被検微生物をスライドガラス上に固着させ、次いで、実施例1に記載の方法と同様の方法で、メチレンブルーを用いて単染色を行った。染色像を、油浸で1,000倍の倍率で顕微鏡下で観察し、代表的な視野を選択し、鏡検像を撮影した。結果を図10に示す。
【0140】
2種類の臨床分離株のそれぞれについて、左側の写真はLVFX非添加(対照領域)の染色像であり、右側の写真がLVFX添加(抗菌薬領域)の染色像である。上段のE.coliは、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が10%以下、より詳細には5%以下であり、LVFXが有効であると確認することができた。一方、下段のE.coliでは、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が100%を超えており、この細菌に対してはLVFXが無効であることが確認できた。
【0141】
[実施例3]メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出及び抗菌薬有効性の判定
LVFXを、培養時のその濃度が2μg/mLとなる量で固着させる代わりに、MPIPCを、その培養時の濃度が4μg/mLとなる量で固着させて抗菌薬領域を作製したことと、E.coli臨床分離株の代わりにS.aureusの臨床分離株を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、被検微生物に対する抗菌薬の有効性を判定する試験を行った。結果を図11に示す。
【0142】
2種類の臨床分離株のそれぞれについて、左側の写真はMPIPC非添加(対照領域)の染色像であり、右側の写真がMPIPC添加(抗菌薬領域)の染色像である。上段のS.aureusは、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が10%以下、より詳細には5%以下であり、MPIPCが有効であると確認することができた。一方、下段のS.aureusでは、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が100%超であり、この細菌に対してはMPIPCが無効であることが確認できた。即ち、下段の臨床分離株は、MRSAであると判断された。
【0143】
[実施例4]腸球菌の抗菌薬有効性判定とバンコマイシン耐性腸球菌の検出
LVFXを、培養時のその濃度が2μg/mLとなる量で固着させる代わりに、VCMを、その培養時の濃度が2μg/mLとなる量で固着させて抗菌薬領域を作製したことと、E.coli臨床分離株の代わりにE.faeciumの臨床分離株を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、細菌に対する抗菌薬の有効性を判定する試験を行った。結果を図12に示す。
【0144】
2種類の臨床分離株のそれぞれについて、左側の写真はVCM非添加(対照領域)の染色像であり、右側の写真がVCM添加(抗菌薬領域)の染色像である。上段のE.faeciumは、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が10%以下、より詳細には5%以下であり、VCMが有効であると確認することができた。一方、下段のE.faeciumでは、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が100%を超えており、この細菌に対してはMPIPCが無効であることが確認できた。即ち、下段の臨床分離株は、VCM耐性と判断された。
【0145】
[実施例5] 染料の検討(その1)
実施例1において、S.aureusに対するセフォキシチンの有効性を判定するための試験と同様の方法で、但し、染料は、メチレンブルーの他に、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、フクシン及びアクリジンオレンジを使用して、実験を行った。培養時間は4時間とした。
【0146】
染色液の調製方法は、次の通りであった。染色方法は、実施例1に記載のもの(メチレンブルー染色)と同様であった。
【0147】
(1)クリスタルバイオレット染色液
クリスタルバイオレット2gを95%エタノール20mLに溶解させた。クリスタルバイオレットが溶解した後、全量を、蒸留水80mLと混合した。
【0148】
(2)マラカイトグリーン染色液
マラカイトグリーン0.08gを95%エタノール1mLに溶解させた。マラカイトグリーンが溶解した後、全量を、蒸留水99mLと混合した。
【0149】
(3)フクシン染色液
先ず、塩基性フクシン1.5gを95%エタノール50mLに溶解させ、フクシン原液を調製した。別途、石炭酸2.5gを蒸留水50mLに溶解させ、5%石炭酸水溶液を調製した。フクシン原液50mLを5%石炭酸水溶液45mLと混合し、フクシン染色液とした。
【0150】
(4)アクリジンオレンジ染色液
アクリジンオレンジ0.01gを蒸留水1mLに溶解させた。アクリジンオレンジが溶解した後、全量を、酢酸緩衝液(pH4.0)99mLと混合した。
【0151】
染色像を、顕微鏡下に油浸で1,000倍の倍率で観察し、代表的な視野を選択し、鏡検像を撮影した。使用した顕微鏡は、ライカ検査・研究顕微鏡DMLBであり、アクリルオレンジ染色の場合の蛍光の測定(撮影)の際には、励起フィルター(450〜480nm)及び吸収フィルター(515nm)を使用した。結果を図13に示す。
【0152】
図13から明らかなように、ここで使用した染料は、いずれも細菌を明瞭に染色することができ、従って、いずれの染料を使用しても、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合を判定することができることが明らかである。
【0153】
[実施例6] 染料の検討(その2)
実施例1において、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)及びシプロフロキサシン(CPFX)の3種の抗菌薬に対して感受性であることが既知の緑膿菌株(ATCC27853)に対しての、これら3種の抗菌薬それぞれの有効性を判定するための試験と同様の方法で、但し、染料は、メチレンブルーの他に、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、フクシン及びアクリジンオレンジを使用して、実験を行った。染色方法は、実施例5と同様である。培養時間は4時間とした。染色像を、顕微鏡下で油浸で1,000倍の倍率で観察し、代表的な視野を選択し、鏡検像を撮影した。結果を図14に示す。
【0154】
図14から明らかなように、ここで使用した染料は、いずれも細菌を明瞭に染色することができ、従って、いずれの染料を使用しても、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合を判定することができることが明らかである。
【0155】
[実施例7] 染料の検討(その3)
実施例6において、ATCC27853株の代わりに、現行のCLSI法で、上記3種の抗菌薬の中、IPMに対してのみ耐性と判定されている緑膿菌の臨床分離株(No.433)を用いた場合の結果を図15に示す。
【0156】
図15から明らかなように、ここで使用した染料は、いずれも細菌を明瞭に染色することができ、従って、いずれの染料を使用しても、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合を判定することができることが明らかである。
【0157】
[実施例8] 染料の検討(その4)
実施例6において、ATCC27853株の代わりに、現行のCLSI法で、上記3種の抗菌薬の中、IPMとCPFXに対して耐性と判定されている緑膿菌の臨床分離株(No.431)を用いた場合の結果を図16に示す。
【0158】
図16から明らかなように、ここで使用した染料は、いずれも細菌を明瞭に染色することができ、従って、いずれの染料を使用しても、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合を判定することができることが明らかである。
【0159】
[実施例9] 染料の検討(その5)
実施例6において、ATCC27853株の代わりに、現行のCLSI法で、上記3種の抗菌薬すべてに対して耐性と判定されている緑膿菌の臨床分離株(No.204)を用いた場合の結果を図17に示す。
【0160】
図17から明らかなように、ここで使用した染料は、いずれも細菌を明瞭に染色することができ、従って、いずれの染料を使用しても、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合を判定することができることが明らかである。
【0161】
[実施例10] 培養時の微生物濃度の検討
実施例1に記載の方法に準じて、微生物の抗菌薬に対する感受性を試験した。微生物としてはイミペネム、アミカシン及びシプロフロキサシンの3種の抗菌薬に対して感受性であることが既知の緑膿菌株(ATCC27853)を用い、抗菌薬は、イミペネム(IPM)、アミカシン(AMK)及びシプロフロキサシン(CPFX)の3種を用いた。また、
培養開始時の微生物濃度は、McFarland No.0.5濁度のもの(1×10cfu/mL)、McFarland No.0.5濁度のものを2倍希釈したもの(5×10cfu/mL)、それを10倍希釈したもの(1×10cfu/mL)、50倍希釈したもの(2×10cfu/mL)、及び100倍希釈したもの(1×10cfu/mL)とした。
【0162】
担体として、スライドガラスの一方の表面に撥水性印刷が為されており、印刷されていない領域として、直径6mmの円形の穴が10個形成されているもの(松波硝子製;型番TF1006;10穴)を使用した。また、微生物懸濁液の使用量は、30μLとした。培養時間は4時間とした。実施例1と同様の方法でメチレンブルー染色を行い、染色像を、1,000倍の倍率で顕微鏡下で観察し、代表的な視野を選択し、鏡検像を撮影した。結果を図18に示す。
【0163】
図18から明らかなように、IPMについては、培養開始時の微生物懸濁液の微生物濃度がMcFarland No.0.5濁度のものであると、偽耐性の結果となった。培養開始時の微生物懸濁液の微生物濃度がMcFarland No.0.5濁度の2乃至100倍希釈である場合には、感受性であるとの判定を行うことができた。
【0164】
AMKについては、培養開始時の微生物懸濁液の微生物濃度がMcFarland No.0.5濁度のもの及びMcFarland No.0.5濁度の2乃至50倍希釈のものである場合には、感受性であるとの判定を行うことができた。100倍希釈液では、菌数が少ないこともあり、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が10%以下であると、明瞭に判定することはできなかった。
【0165】
CPFXについては、培養開始時の微生物懸濁液の微生物濃度がMcFarland No.0.5濁度のもの及びその2倍希釈のものである場合には、対照領域の発育菌数が多すぎることもあり、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が10%以下であると、明瞭に判定することはできなかった。培養開始時の微生物懸濁液の微生物濃度がMcFarland No.0.5濁度の10乃至50倍希釈のものである場合には、感受性であるとの判定を行うことができた。100倍希釈では、菌数が少ないこともあり、対照領域の発育菌数に対する抗菌薬領域における発育菌数の割合が10%以下であると、明瞭に判定することはできなかった。
【0166】
以上より、微生物の種類と被検抗菌薬の種類との組み合わせによるが、一般的には、培養開始時の微生物懸濁液の微生物濃度として、McFarland No.0.5濁度のものの2乃至50倍希釈に相当する濃度が好ましいことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、病院や臨床検査機関において、患者の生体試料等から分離した微生物に対する抗菌薬の有効性を検査するために有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌薬の微生物に対する有効性を検査する方法であって、以下の工程(1)乃至(6)を含む方法:
(1)微生物含有液体を調製し;
(2)担体上に、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料からなる対照用の被検試料(a)領域と、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する試料からなる被検試料(b)領域を形成し、ここで、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とは、互いに混じり合わないことが担保できる限り、同一の担体上に形成されても異なる担体上に形成されてもよく、且つ、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域における微生物の濃度及び/又は数は略同一であり;
(3)担体上において、被検試料(a)領域及び被検試料(b)領域の微生物を、微生物の至適温度付近で同一条件下に2.5乃至8.0時間培養し;
(4)培養後の被検試料(a)領域及び被検試料(b)領域中の微生物を染色し;
(5)被検試料(a)領域における微生物の染色像と被検試料(b)領域における微生物の染色像とを比較観察し;そして
(6)その比較観察の結果、被検試料(a)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b)領域の染色像中の微生物量が、10%以下であれば有効、10%超且つ50%未満であれば中間、50%以上であれば無効であると判定する。
【請求項2】
工程(2)において、被検試料(a)領域と被検試料(b)領域とを同一の担体上に形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用する担体が、検査で使用するための領域を二つ以上有し、その二つ以上の検査で使用するための領域中の少なくとも一つを除く領域には抗菌薬が固着されており、抗菌薬が固着されていない検査で使用するための領域に微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料を採ることで被検試料(a)領域を形成し、且つ、抗菌薬が固着されている検査で使用するための領域に微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料を採り、抗菌薬を当該試料に溶解させて被検試料(b)領域を形成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記比較観察を、肉眼、顕微鏡下又は撮影された拡大画像で行う、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
被検試料(a)領域と被検試料(b)領域の各々について、代表的な視野について染色像の比較観察を行い、視野中の染色された微生物の数で又は視野中の全面積に対する染色された面積の割合を微生物量として、工程(6)の判定を行う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
被検試料(a)領域と被検試料(b)領域の各々について、当該領域全体の拡大画像を撮影して染色像を観察し、その撮影された拡大画像中の染色された微生物の数で又はその撮影された拡大画像中の全面積に対する染色された面積の割合を微生物量として、工程(6)の判定を行う、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
微生物含有液体が、喀痰、血液、尿、膿、穿刺液、便、及び環境ふき取り試料からなる群より選択される少なくとも一種に由来する試料である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
微生物含有液体が、喀痰、血液、尿、膿、穿刺液、便、及び環境ふき取り試料からなる群より選択される少なくとも一種を液体又は固形培地にて分離培養して得た微生物の培養懸濁液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
被検試料(a)領域及び被検試料(b)領域に存在する試料が、マックファーランド(McFarland)のNo.0.5濁度の培養液を50倍乃至1倍希釈に調整した微生物濃度を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
被検試料(b)領域に存在する試料が、感染症法、日本化学療法学会、CLSI法等によって公的に定められたブレークポイント濃度の抗菌薬を含み、被検試料(a)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b)領域の染色像中の微生物量が、10%以下であれば被検抗菌薬に対して微生物が感受性(Susceptible)、10%超且つ50%未満であれば中間(Intermediate)、50%以上であれば被検抗菌薬に対して微生物が耐性(Resistant)と判定する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
被検試料(b)領域における試料が、他の方法で測定された最小阻止濃度(MIC)の抗菌薬を含み、被検試料(a)領域の染色像中の微生物量を基準として、被検試料(b)領域の染色像中の微生物量が、10%以下であれば被検抗菌薬に対して微生物が感受性(Susceptible)、10%超且つ50%未満であれば中間(Intermediate)、50%以上であれば被検抗菌薬に対して微生物が耐性(Resistant)と判定する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
被検試料(b)領域が、互いに異なる複数の濃度で抗菌薬を含有する被検試料(b−1)領域乃至被検試料(b−n)領域(ここで、nは、被検試料(b)領域の数を示す整数である)である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗菌薬について、互いに異なる複数の濃度の一つが、微生物含有液体中に存在すると予測されている微生物に対する当該抗菌薬の、他の方法で測定された最小阻止濃度(MIC)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも、(I)抗菌薬、及び、(II)微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料である被検試料(a)と、当該微生物含有液体又はそれを希釈してなる試料と検査対象の抗菌薬とを含有する被検試料(b)とを各々互いに混じり合わないように保持でき且つ微生物の培養に使用できる担体一枚以上を包含し、ここで、担体は、被検試料(a)と被検試料(b)の両者を保持するものであっても、いずれかのみを保持するものであってもよい、抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用キット。
【請求項15】
担体が、被検試料(a)及び/又は被検試料(b)を保持する領域である検査で使用するための領域を二つ以上有する、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
二つ以上の検査で使用するための領域中の少なくとも一つを除く領域には抗菌薬が固着されている、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
担体が、スライドガラス、マイクロアレイ用スライドガラス、多穴プレート又は多連モジュールである、請求項14乃至16のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
抗菌薬が、マクロライド系薬、ニューキノロン系薬、テトラサイクリン系薬、リンコマイシン系薬、ペニシリン系薬、セフェム系薬、モノバクタム系薬、カルバペネム系薬、ホスホマイシン系薬、アミノグリコシド系薬、グリコペプチド系薬、及びβ−ラクタマーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項14乃至17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
抗菌薬が、メチシリン、オキサシリン、セフォキシチン、バンコマイシン、イミペネム、アミカシン、及びシプロフロキサシンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
さらに、(III)微生物染色用試薬、(IV)検査方法の説明書、(V)担体を保持するラック及び(VI)担体を入れる容器からなる群から選択される少なくとも一種をも包含する、請求項14乃至19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
染色用試薬における染料が、メチレンブルー、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、塩基性フクシン、アクリジンオレンジ、及び4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドールからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
検査で使用するための領域を二つ以上有する、スライドガラス、マイクロアレイ用スライドガラス、多穴プレート及び多連モジュールからなる群から選択される担体において、対照用の少なくとも一つの領域を除く他の領域のそれぞれに、当該担体使用時に所定量の試料を添加することによって所定濃度となる量の抗菌薬を、当該抗菌薬の溶液で付与し、溶媒を除去する工程を含む、抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用担体の製造方法。
【請求項23】
抗菌薬の溶液が、当該抗菌薬の安定剤をも含む、請求項22に記載の抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用担体の製造方法。
【請求項24】
溶媒を除去する工程が、室温での乾燥、加熱乾燥、強制除湿(デシケータ)、減圧乾燥又は凍結乾燥の工程である、請求項22又は23に記載の抗菌薬の微生物に対する有効性の検査用担体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−213598(P2010−213598A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62173(P2009−62173)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(390023951)極東製薬工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】