説明

抗菌薬耐性株を含む細胞外微生物により引き起こされる感染症をガリウム化合物を用いて予防または治療する方法

本発明は、ガリウムを含む化合物を患者に全身的に投与することにより、細菌および真菌などの細胞外微生物により引き起こされる感染症を予防または治療する方法に関する。本発明が対象とする微生物としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(VRE)、大腸菌(E.coli)O157:II7、フルオロキノロン耐性チフス菌(Salmonella typhi)などが挙げられる。さらに、本方法において、ガリウム化合物は、多剤耐性病原体を発生させる危険が低い感染症の治療用の1以上の従来の抗菌薬と併用投与することができる。本発明の方法は、これまでに達成することが困難であった潰瘍を引き起こすヘリコバクター・ピロリなどの微生物の完全な根絶にも適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 序言
これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2007年4月2日に出願した米国仮出願第60/909658号の優先権を米国特許法第120条に従って主張するPCT国際特許出願である。
【0002】
本発明は、細菌および真菌を含む様々な細胞外微生物により引き起こされる感染症をガリウム化合物を用いて予防または治療する方法に関する。特に、本発明は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与など、その全身的な投与による感染症の予防または治療におけるガリウム化合物の医薬的な使用に関する。本発明により予防可能または治療可能である感染症は、従来の抗生物質および/または薬物に耐性であることが知られている微生物により引き起こされるものを含む。
【背景技術】
【0003】
2. 発明の背景
従来の抗生物質および他の抗菌薬に対して耐性であるますます多くの極めて有害な病原性微生物が出現していることは、世界的に公衆衛生上大きい問題になっている。ヒトおよび家畜における抗生物質の過剰処方/過剰使用が様々な微生物の抗生物質耐性株の急速な発生の一因となっていた。例えば、治療しなければ致命的な予後をきたす、心臓、骨、肺および血流に広がり得る院内感染性(hospital-acquired)(「院内(nosocomial)」)の感染の一般的な原因であることが知られている黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、1940年代の初頭にペニシリンによって十分に制圧された。しかし、1960年代の後期までに80%超の黄色ブドウ球菌がペニシリンに対して耐性となり、1972年までに2%の黄色ブドウ球菌がメシチリン耐性であることが認められた。メシチリン耐性菌の割合は2002年までに57.1%まで上昇し続けた(2003年8月の疾病対策センター(Centers for Disease Control)(「CDC」)米国院内感染サーベイランスシステム(National Nosocomial Infections Surveillance System)に基づく2004年7月の米国感染症学会(「IDSA」)による「Bad Bugs、No Drugs」)。
【0004】
同様に、心内膜炎ならびに尿路および創傷の感染および菌血症を含む他の院内感染の重大な原因であり、バンコマイシンに対して耐性(VRE)である腸球菌の割合は、1980年代の後半以降増加し、2002年には集中治療室からの供試腸球菌サンプルの27%超がバンコマイシンに対して耐性であった(IDSA、2004年、前出による)。抗生物質耐性を発生したことを知られている他の細菌としては、メチシリン耐性、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌属(「CNS」)、セフタジジム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アンピシリン耐性大腸菌(Escherichia coli)、セフタジジム耐性肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)などがある。さらに、例えば、2001年から2003年までにジョージア州、カリフォルニア州およびテキサス州の刑務所で合計12000例の市中感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染が認められた(2004年、IDSA、前出)ことによって明らかなように、薬剤耐性は、院内感染にもはや限定されずに、市中感染に広がっている。
【0005】
抗生物質耐性微生物は、社会に多大な経済的負担をもたらす。薬剤耐性微生物によって引き起こされる感染症は、より長期の入院、代替薬のためのより高い費用、より多くの欠勤日などを必要とし、しばしば死をもたらす。医学研究所(Institute of Medicine)(「IOM」)による報告書(1998年、Antimicrobial Resistance: Issues and Options)によれば、MRSAにより引き起こされる感染症は1症例当たり平均31400ドルの治療費がかかる。薬剤耐性微生物の米国社会への総負担費用は、年間少なくとも40億ドル〜50億ドルであると言われている。
【0006】
抗菌薬耐性を制御するための新薬が緊急に必要であるにもかかわらず、主として慢性疾患の治療に関連する収益性がより高いという理由から、製薬分野における製品開発の焦点は、急性細菌感染などの急性疾患ではなく、慢性疾患にますます移行しているので、新抗生物質の開発は近年かなり遅くなっている(2004年3月、米国食品医薬品局(「FDA」)による、Innovation/Stagnation: Challenge and Opportunity on the Critical Path to New Medical Products、および2003年12月、Sellers L.J.による、「Big Pharma bails on anti-infectives research」、Pharmaceutical Executive 22)。IOMおよびFDAによれば、過去30年間に2つの新規なクラスの抗生物質のみが開発された。すなわち、2000年にオキサゾリジノン、2003年にリポペプチドが開発され、オキサゾリジノンに対する耐性が既に報告されている。
【0007】
ガリウムは、核医学の分野で新生物および炎症の診断に多年にわたり用いられてきたIIIa族の半金属元素である。ガリウムは、癌(Adamsonら、1975年、Cancer Chemothe. Rept、59巻、599〜610頁;Fosterら、1986年、Cancer Treat Rep、70巻、1311〜1319頁);Chitambarら、1997年、Am J Clin Oncol、20巻、173〜178頁)、症候性癌関連高カルシウム血症(Warrellら、1989年、「Gallium in the treatment of hypercalcemia and bone metastasis」中、Important Advances in Oncology、205〜220頁、J.B. Lippincott、Philadelphia;Bockmanら、1994年、Semin Arthritis Rheum、23巻、268〜269頁)、骨吸収(Warrellら、1984年、J Clin Invest、73巻、1487〜1490頁;Warrellら、1989年、前出)、自己免疫疾患および同種移植片拒絶(Matkovicら、1991年、Curr Ther Res、50巻、255〜267頁;Whitacreら、1992年、J Newuro immunol、39巻、175〜182頁;Orosz C.G.ら、1996年、Transplantation、61巻、783〜791頁;Lobanoff M.C.ら、1997年、Exp Eye Res、65巻、797〜801頁)、創傷治癒および組織修復の刺激(Bockmanら、米国特許第5556645号;Bockmanら、米国特許第6287606号)ならびに梅毒などの特定の感染(Levaditi C.ら、1931年、C R Hebd Seances Acad Sci Ser D Sci Nat、192巻、1142〜1143頁)、それぞれ結核、ヒストプラスマ症およびリーシュマニア症などの細胞内の細菌、真菌または寄生虫感染(Olakanmiら、1997年、J. Invest. Med.、45巻、234A頁;Schlesingerら、米国特許第6203822号;Bernsteinら、国際特許出願国際公開第03/053347号)、緑膿菌感染(Schlesingerら、米国特許第6203822号)ならびにトリパノソーマ症(Levaditi Cら、前出)の治療においてある程度の有効性も示されている。
【0008】
骨吸収および高カルシウム血症に対するガリウムの活性の正確なメカニズムはよく知られていないが、癌細胞に対する抗増殖特性および抗菌活性は、癌細胞または微生物による取込みに対する第二鉄イオン(すなわち、Fe3+)とのその競合に起因する可能性があると言われている(Bernstein、1998年、Pharmacol Reviews、50巻(4号)、665〜682頁)。鉄は、多くの病原体を含むほとんどの生存微生物における必須元素であり、DNA合成および様々な酸化還元反応に必要である(Byersら、1998年、Metal Ions Bio syst、35巻、37〜66頁;Guerinotら、1994年、Annu Rev Microbiol、48巻、743〜772頁;Howard、1999年、Clin Micobiol Reviews、12巻(3号)、394〜404頁)。Ga3+は、Fe3+と同様な溶液化学的性質および配位化学的性質を有することが知られており(Shannon、1976年、Acta Crystallographica、A32、751〜767頁;Huheeyら、1993年、In Inorganic Chemistry: Principles of Structure and Reactivity I、第4版、Harper Collins、NY;Hancockら、1980年、In Org Chem、19巻、2709〜2714頁)、鉄輸送タンパク質であるトランスフェリンに結合することによって生体内でFe3+と非常に類似した挙動を示す(Clausenら、1974年、Cancer Res、34巻、1931〜1937頁;Vallabhajosulaら、1980年、J Nucl Med、21巻、650〜656頁)。ガリウムは微生物の鉄輸送メカニズムにより微生物に侵入し、それらのDNAおよびタンパク質合成を妨げると推測されている。
【0009】
米国特許第5997912号は、ガリウム化合物を静脈内、経口またはエアゾールにより投与することによって緑膿菌の増殖を阻害する方法を開示しており、米国特許出願公開第2006/0018945号は、ガリウム化合物を用いてバイオフィルム成長形成を予防または阻害する方法を開示している。
【0010】
米国特許第6203822号および国際特許出願公開第03/053347号は、細胞内細菌、特にミコバクテリウム属(Mycobacterium)の種に感染した患者を、このクラスの細菌に感染した患者にガリウム化合物を静脈内または経口投与することによって治療する方法を開示している(Olakanmiら、2000年、Infection and Immunity、68巻(10号)、5619〜5627頁も参照)。これらの生物は、大量の鉄を貯蔵し、トランスフェリン受容体を過剰発現することが知られているマクロファージを主として感染させる。非経口または経口投与したガリウム化合物は、トランスフェリン受容体を介してマクロファージにより容易に取り込まれ、次いで、これらの細胞内で感染生物により取り込まれ、それにより、その生物の代謝を妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
細胞内生物以外の微生物に対するガリウムの抗菌活性は、これまではさほど探究されていない。
【0012】
さらに、増え続ける多抗生物質耐性微生物に対するガリウム化合物の使用は探究されていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
3. 発明の要旨
本発明は、ガリウム化合物が、従来の抗生物質および/または薬物に対して耐性であることが知られているものを含む様々な病原性細胞外微生物の増殖を制御するのに有効であるという本発明者らの知見に基づいている。
【0014】
したがって、本発明は、予防上または治療上有効な量のガリウム化合物をそれを必要とする被験体に全身的に投与する工程を含む、細胞外微生物によって引き起こされる感染症を予防および/または治療する方法を提供する。好ましい実施形態において、そのような細胞外微生物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびレジオネラ属菌(Legionella spp.)を除くが、他の鉄依存性細胞外病原性微生物を含む。そのような微生物は、哺乳類および鳥類、特にヒトを含む宿主生物を感染させる、細菌または真菌であってよい。それらの微生物としては、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エシェリキア属(Escherichia)、連鎖球菌属(Streptococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、サルモネラ属(Salmonella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、クラミジア属(Chlamydia)、コクシエラ属(Coxilla)、エールリヒア属(Ehrlichia)、フランシセラ属(Francisella)、レジオネラ属(Legionella)、パスツレラ属(Pasteurella)、ブルセラ属(Brucella)、プロテウス属(Proteus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、トロフェリマ属(Tropheryma)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アエロモナス属(Aeromonas)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、カプノシトファガ属(Capnocytophaga)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、リステリア属(Listeria)、エルジニア属(Yersinia)などの属内の細菌、ならびにカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、スポロトリクス・シェンキィ(Sporothrix schenckii)、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、でん風菌(Malassezia furfur)、でん風(Pityriasis versicolor)、エクソフィアラ・ウェルネキ(Exophiala werneckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、エピデルモフィトン属菌(Epidermophyton spp.)、フザリウム属菌(Fusarium spp.)、接合菌類亜種(Zygomyces spp.)、クモノスカビ属菌(Rhizopus spp.)、ケカビ属菌(Mucor spp.)などの真菌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
他の好ましい実施形態において、本発明が対象とする微生物は、ガリウム化合物以外の少なくとも1つの抗生物質または抗菌化合物に対して耐性である。特定の実施形態において、そのような薬剤耐性微生物としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、アンピシリン耐性大腸菌(E.coli)(例えば、大腸菌O157:H7)、フルオロキノロン耐性チフス菌(Salmonella typhi)、セフタジジム耐性肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、フルオロキノロン耐性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
他の態様において、本発明は、予防上または治療上有効な量のガリウム化合物および少なくとも1つの追加の抗菌薬をそれを必要とする被験体に全身的に併用投与する工程を含む、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびレジオネラ属菌(Legionella spp.)以外の細胞外微生物によって引き起こされる感染症を予防および/または治療する方法を提供する。そのような追加の抗菌薬としては、従来の抗生物質などの抗菌薬、抗真菌薬および抗菌活性を有する他の天然由来の薬剤または合成薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
3.1. 定義
本明細書で用いる「被験体」という用語は、家禽(例えば、ニワトリ、シチメンチョウなど)、ならびに非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(例えば、サルおよびヒト)、最も好ましくはヒトなどの哺乳類を含む動物を意味する。
【0018】
本明細書で用いる「全身(性)」または「全身的に」は、主として心臓および血管を含む心血管系ならびにリンパ節、リンパ管を含むリンパ系などの循環系を介して被験体の全身に化合物が分布するような方法で、ガリウム化合物を被験体に投与することを意味する。したがって、ガリウム化合物の全身的な投与としては、経口投与ならびに静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内への投与を含む非経口投与ならびに坐剤などがある。特定の状況において、全身的な投与は、循環系に通ることなく、化合物が原因となる生物と直接接触するという利点も提供し得る。例えば、経口投与するガリウム化合物は、全身分布によるだけではなく、消化管を感染させる微生物との直接的接触によっても、その効果を発揮する。
【0019】
本明細書で用いる「予防上有効な量」という用語は、病原性微生物に関連する疾患または障害を予防するのに十分なガリウム化合物の量を意味する。予防上有効な量は、被験体における病原性微生物の増殖を予防もしくは抑制するのに十分か、または病原性微生物を死滅させるのに十分なガリウム化合物の量を意味し得る。
【0020】
本明細書で用いる「治療上有効な量」という用語は、被験体において病原性微生物により引き起こされる疾患または障害を治療、管理または改善するのに十分なガリウム化合物の量を意味する。治療上有効な量は、被験体の罹患部位におけるまたは血流中の病原性微生物の数を減少させ、病原性微生物の増殖を抑制し(すなわち、静止(stasis))、または病原性微生物を死滅させるのに十分なガリウム化合物の量を意味し得る。さらに、ガリウム化合物の治療上有効な量は、疾患または障害の治療、管理または改善に治療ベネフィットをもたらす、単独、あるいは他の療法および/または他の薬物との併用でのガリウム化合物の量を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
4. 発明の詳細な説明
4.1.鉄輸送およびガリウム
少数の例外(例えば、乳酸桿菌属菌(Lactobacillus spp.)−Archibald、1983年、FEMS Microbiol Lett、19巻、29〜32頁;Weinberg、1997年、Perspectives in Biology and Medicine、40巻(4号)、578〜583頁を参照;およびボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)−Poseyら、2000年、Science、288巻、1651〜1653頁を参照)を除くほとんどの微生物は、それらの生存のために鉄を必要とする(Weinberg、1978年、Microbiol Rev、42巻、45〜66頁;Neilands、1972年、Struct Bond、11巻、145〜170頁)。鉄は最も豊富な金属の1つであるという事実にもかかわらず、好気的環境において不溶性化合物(酸化物−水酸化物)として存在するため、微生物へのその利用可能性は限られている(Guerinot、1994年、前出;Spiroら、1966年、J Am Chem Soc、88巻、2721〜2725頁;Vander Helmら、1994年、In Metal ions in fungi、11巻、39〜98頁、Marcel Dekker, Inc. New York、NY)。したがって、細菌および真菌などの微生物は、環境中で鉄の利用可能性が限られていることに対して、鉄を捕捉するための様々なメカニズムを発達させている(Howard、1999年、前出)。
【0022】
1つのそのようなメカニズムは、シデロフォア(siderophore)と呼ばれる強力な鉄キレート化合物の合成である。微生物は、環境中でFe3+に結合し、特殊な輸送システムを介して微生物の細胞内に輸送される(そこでFe3+がFe2+として放出され、次いで貯蔵される)シデロフォアを産生する。既知のシデロフォアとしては、ロドトルリン酸(rhodotorulic acid)、コプロゲン(coprogen)、フェリクロムおよびフサリニン(fusarinine)などのヒドロキサメート;ポリカルボキシレート;フェノレート−カテコレート(catecholate)およびデスフェリオキサミン(desferioxamine)などがある(Howard、1999年、前出)。他のメカニズムとしては、シデロフォアまたは宿主鉄輸送体(例えば、トランスフェリンおよびラクトフェリン)と錯体形成した鉄の直接的内在化、膜結合レダクターゼメカニズムおよび受容体媒介性メカニズムならびに膜媒介性直接輸送メカニズムなどがある(Howard、1999年、前出;Crosa、1997年、Microbiol Mol Biol Rev、61巻、319〜336頁;Payne、1994年、Methods Enzymol、235巻、329〜344頁)。これらのメカニズムによる鉄の利用可能性は微生物の毒性と密接に関連づけられ(Litwinら、1993年、Clin Microbiol Reviews、6巻(2号)、137〜149頁)、各生物は、その増殖および生存を支えるために鉄に乏しい環境から鉄を得るための複数の代替メカニズムを有することがある(例えば、Spataforaら、2001年、Microbiology、147巻、1599〜1610頁を参照)。
【0023】
ガリウムイオン(Ga3+)と第二鉄イオン(Fe3+)とは、特にタンパク質およびキレート化剤とそれらとの結合に関して強い生化学的類似性を有することが報告されている。これらの類似性は、それらのイオン半径および結合に対するイオン(静電)結合対共有結合の寄与の程度が同等であることに主として起因している(レビューについては、Bernstein、1998年、前出を参照)。これらの類似性のため、Ga3+は様々な生物学的過程においてFe3+を模擬することができる。例えば、Ga3+は、トランスフェリンに結合し(例えば、Clausenら、1974年、Cancer Res、34巻、1931〜1937頁;Vallabhajosulaら、1980年、J Nucl Med、21巻、650〜656頁を参照)、トランスフェリン媒介性エンドサイトーシスにより細胞内に輸送される(Chitambar、1987年、Cancer Res、47巻、3929〜3934頁)。
【0024】
理論により束縛されることを意図することなく、Ga3+はシデノフォアに競合的に結合することができ、微生物により容易に取り込まれ、そこで、DNAおよびタンパク質合成を妨害し、または細菌タンパク質に結合し、微生物の増殖を妨げることができ、それにより、最終的に生物の静止または死をもたらすと考えられる。あるいは、Ga3+が微生物の膜レダクターゼを占有し、Fe3+がレダクターゼに結合してFe3+より生物学的利用能が高いFe2+に還元されることを妨げ得る可能性がある。ガリウムの取込みは、即時に微生物を死滅させるものではなく、むしろ初期の静止(すなわち、微生物の成長または増殖が阻害されている状態)をもたらすので、耐性微生物を発生させる危険は低い。さらに、鉄は病原性微生物にとって生存のための必須元素であり、鉄とガリウムとの生化学的類似性は非常に大きいので、微生物が鉄とガリウムを区別することができるメカニズムを発現させることができ、ガリウムに対して耐性になるということはさらに可能性が低い。ガリウムはまた、微生物のトキシン酵素の産生を妨げることにより、微生物がトキシンを産生するのを予防する可能性がある。
【0025】
本発明は、ガリウム化合物のこれらの特性を利用し、ガリウム以外の少なくとも1つの抗菌薬に対して耐性であるものを含むそのような病原体によって引き起こされる感染症を予防または治療する方法を提供する。
【0026】
4.2.ガリウム化合物
本発明に用いるのに適するガリウム化合物は、医薬的に許容でき、鳥類および哺乳類への使用などの動物への使用、特にヒトへの使用で安全であるあらゆるガリウム含有化合物を含む。ガリウム化合物は、ヒトにおける診断および治療に用いられており、ヒトへの使用で安全であることが知られている(Fosterら、1986年、前出;Toddら、1991年、Drugs、42巻、261〜273頁;Johnkoffら、1993年、Br J Cancer、67巻、693〜700頁を参照)。
【0027】
本発明における使用に適する医薬的に許容できるガリウム化合物としては、硝酸ガリウム、ガリウムマルトレート(gallium maltolate)、クエン酸ガリウム、リン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、炭酸ガリウム、ギ酸ガリウム、酢酸ガリウム、硫酸ガリウム、酒石酸ガリウム、シュウ酸ガリウム、酸化ガリウムおよび様々な適用分野で有効なレベルの元素ガリウムを安全に供給することができる他の任意のガリウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ガリウムピロン、ガリウムピリドンおよびガリウムオキシムなどのガリウム複合体、ならびにトランスフェリンおよびラクトフェリンなどのタンパク質に結合したガリウム、またはヒドロキサメート、ポリカルボキシレートなどのシデロフォアならびにフェノレート−カテコレート、デスフェリオキサミンおよびシステイン、α−ケト酸、ヒドロキシ酸およびピリドキサルイソニコチニルヒドラゾンクラスなどの他の鉄キレート化剤に結合したガリウム(Richardsonら、1997年、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、41巻(9号)、2061〜2063頁)なども、本発明における使用に適している。
【0028】
4.3.ガリウム化合物の医薬的な使用
本発明は、予防上または治療上有効な量のガリウム化合物をそれを必要とする被験体に全身的に投与することにより感染症を予防または治療する方法に関する。
【0029】
本発明により治療できる感染症の例は、治療を受ける被験体がガリウム化合物の全身的な投与から利益を得ることができるものであり、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)等などのブドウ球菌属(Staphylococcus)の種;エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等などのエンテロコッカス属(Enterococcus)の種;チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)等などのサルモネラ属(Salmonella)の種;大腸菌(Escherichia coli)等などのエシェリキア属(Escherichia)の種;肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)等などの連鎖球菌属(Streptococcus)の種;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)等などのヘリコバクター属(Helicobacter)の種;カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)等などのカンピロバクター属(Campylobacter)の種、ならびにエルジニア(Yersinia)属、クラミジア属(Chlamydia)、コクシエラ属(Coxilla)、エールリヒア属(Ehrlichia)、フランシセラ属(Francisella)、レジオネラ属(Legionella)、パスツレラ属(Pasteurella)、ブルセラ属(Brucella)、プロテウス属(Proteus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、トロフェリマ属(Tropheryma)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アエロモナス属(Aeromonas)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、カプノシトファガ属(Capnocytophaga)、バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、リステリア属(Listeria)等の属の種の細胞外微生物により引き起こされるものを含むが、これらに限定されない。本発明により治療できる感染症の例はまた、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、スポロトリクス・シェンキィ(Sporothrix schenckii)、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、でん風菌(Malassezia furfur)、でん風(Pityriasis versicolor)、エクソフィアラ・ウェルネキ(Exophiala werneckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、エピデルモフィトン属菌(Epidermophyton spp.)、フザリウム属菌(Fusarium spp.)、接合菌類亜種(Zygomyces spp.)、クモノスカビ属菌(Rhizopus spp.)、ケカビ属菌(Mucor spp.)などの真菌により引き起こされる感染症を含む。
【0030】
ガリウム化合物は、ガリウム化合物の全身分布または送達をもたらし、経口投与ならびに静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与等などの非経口投与を含むあらゆる方法により投与することができる。特定の感染症において、ガリウム化合物の経口投与は、罹患領域へのガリウム化合物の全身分布/送達だけではなく、消化管内などの罹患領域において化合物と原因となる微生物との直接接触ももたらす。したがって、ガリウム化合物の経口投与は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、大腸菌(Escherichia coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ウェルチ菌(Clostridium perfringens)などを含むが、これらに限定されない様々な微生物により引き起こされる消化管感染を予防または治療するのに特に有用である。胃および十二指腸潰瘍、胃炎、十二指腸炎、ならびに胃癌を引き起こすヘリコバクター・ピロリも本発明の方法の適した標的である。
【0031】
さらに、本発明の方法は、ガリウム化合物以外の少なくとも1つの抗菌薬に対して耐性である微生物によって引き起こされる感染症の予防または治療に適用することができる。本明細書で用いる「抗菌薬(antimicrobial agent)」という用語は、微生物を死滅させるまたはその増殖を直接もしくは間接的に阻害する任意の天然または合成由来の薬物を意味し、従来の抗生物質ならびにスルホンアミド、イソニアジド、エタンブトール、AZT、合成ペプチド抗生物質等などの合成化学療法薬を含む。したがって、特定の実施形態において、本発明により予防できるまたは治療できる感染症は、上記の微生物、特に、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、大腸菌(E.coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの抗菌薬耐性菌株によって引き起こされる。より具体的には、そのような抗菌薬耐性生物としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、アンピシリン耐性大腸菌(E.coli)(例えば、大腸菌O157:H7)、フルオロキノロン耐性チフス菌(Salmonella typhi)、セフタジジム耐性肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、フルオロキノロン耐性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)などがある。本発明の方法は、ガリウム以外の抗菌薬に対して耐性になった他のあらゆる病原性微生物に、それらが増殖および生存に関して鉄に依存している限り、適用することができる。
【0032】
本発明に用いるガリウム化合物は、1以上の医薬的に許容できる担体または賦形剤を用いて従来の方法で製剤化することができる。本明細書で用いる場合、「医薬的に許容できる担体または賦形剤」という語句は、薬剤の投与と適合性のある、いずれかおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを含むことを意図する。医薬的に活性な物質用の様々な医薬的に許容できる担体または賦形剤の使用は、当技術分野で周知である。ガリウム化合物に関しては、硝酸ガリウムの注射製剤(GaniteTM)がGeneta Inc(Berkeley Heights、NJ)から商業的に入手可能である。GaniteTMは、Ga(NO)・9HOおよびクエン酸ナトリウム脱水物の水溶液である。Titan Pharmaceuticals Inc.(San Francisco、CA)により開発されたガリウムマルトレートの経口製剤は、転移性前立腺癌および不応性多発性骨髄腫を有する患者における第II相臨床試験が現在実施されている。
【0033】
ガリウム化合物の治療上有効な量(すなわち、投薬量)は、治療する感染症の性質および重症度、原因微生物の種類、罹患領域の場所、投与方法、被験体の年齢および免疫学的背景、用いるガリウム化合物の種類、ならびに当業者に明らかな他の因子によって異なり得る。一般的に、ガリウム化合物の治療上有効な量は、少なくとも約1μM、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約500μM、少なくとも約1mM、少なくとも約10mM、少なくとも約50mM、少なくとも約100mM、少なくとも約200mM、約500mMまでの身体の罹患領域におけるまたは血漿中のガリウム濃度を与える量であってよい。ガリウムの毒性は低いため、500mMを超えるが、何らかの毒性をもたらす量より少ない量まで、自由に量を増加させてよい。参考のために、健常成人は少なくとも7日間にわたる少なくとも約200mg/m/日硝酸ガリウム静脈内注入に耐えることができることが報告されている(米国特許第6203822号、前出を参照)。また、単剤としての24時間当たり100mg〜1400mgの経口投与は、卵巣癌患者および肺癌患者における重大な毒性をもたらさなかった(Colleryら、2002年、「Gallium in cancer treatment」、Oncology/Hematology、42巻、283〜296頁)。したがって、本発明の方法について、少なくとも約10mg/m/日、少なくとも約50mg/m/日、少なくとも約100mg/m/日、少なくとも約200mg/m/日、少なくとも約300mg/m/日、少なくとも約500mg/m/日、少なくとも約600mg/m/日、少なくとも約700mg/m/日、または少なくとも約800mg/m/日の投薬量での、しかし、毒性をもたらす投薬量より少ない量のでのガリウム化合物の投与が意図される。
【0034】
ガリウム化合物の予防上有効な量は、病原性微生物に関連する疾患または障害を防ぐのに十分な量であってよく、罹患領域の場所、該領域における病原性生物の種類および数、用いるガリウム化合物の種類、ならびに適用の方法および当業者に明らかな他の因子によって異なり得る。一般的に、ガリウム化合物の予防上有効な量は、少なくとも約0.1μM、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、少なくとも約500μM、少なくとも約1mM、少なくとも約10mM、少なくとも約50mM、少なくとも約100mM、少なくとも約200mMまでの身体の罹患領域におけるまたは血漿中のガリウム濃度を与える量であってよい。予防の目的のためのガリウム化合物の量は、200mMを超えるが、何らかの毒性をもたらす量より少ない量まで自由に増加させてよい。
【0035】
他の態様において、本発明は、個別にまたは集合的に予防上または治療上有効な量のガリウム化合物および少なくとも1つの追加の抗菌薬をそれを必要とする被験体に併用投与することを含む、細胞外微生物によって引き起こされる感染症を予防および/または治療する方法を提供する。本明細書で用いる「併用投与(co-administration)」または「併用投与すること(co-administering)」という用語は、同じ投与方法または異なる投与方法の組合せ(例えば、ガリウム化合物の静脈内投与と追加の抗菌薬の経口投与、またはその逆)により、任意の順序で逐次的にまたは同時のいずれかで、ガリウム化合物および少なくとも1つの追加の抗菌薬を投与することを意味する。1以上の追加の抗菌薬とガリウム化合物とのそのような併用投与は、薬物が重複のない完全に異なるメカニズムにより原因となる生物を攻撃するため、および/または生物における抗菌薬耐性の発生が異なる抗菌薬に対する異なるメカニズムに関連し、それにより、薬物自体または宿主自身の免疫系による作用との組合せによりその生物のほぼ完全な根絶をもたらし、原因となる生物が薬物に対する耐性を発生する機会を減少または排除するため、特に有用である。さらに、ガリウムの毒性が低いため、ガリウムの投薬量を増加させることにより、併用療法で、追加の抗菌薬の投薬量を、後者を単独で用いる場合に必要である量よりも少ない量に減少し、それにより後者の有害効果を低減させることができる。さらに、ガリウム化合物と追加の抗菌薬との併用投与は、相乗効果をもたらすことができるので、それぞれを単独で用いる場合に必要な投薬量より少ない量とすることができる。
【0036】
ガリウム化合物と併用投与することができる追加の抗菌薬は、原因となる生物の種類によって、抗菌薬または抗真菌薬であってよい。抗菌薬の例としては、アンピシリン(amipicillin)、フルクロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、チカルシリン、ピペラシリン、カルバペネム、メシリナムなどを含むペニシリンのクラスのもの;セファロスポリンおよびセファマイシンを含むセフェム;スルホンアミド;アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パラモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アプラマイシンなどを含むアミノグリコシド;クロラムフェニコール;クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン(meclocycline)、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリンなどを含むテトラサイクリン;エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、イクタサマイシン(iktasamycin)、オレアンドマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン、タイロシン(tylosin/tylocine)、テリスロマイシン、セスロマイシン(cethromycin)、アンサマイシンなどを含むマクロライド;リンコマイシン、クリンダマイシンなどを含むリンコサミド(lincosamide);ミカマイシン(mikamycin)、プリスチナマイシン(pristinamycin)、エストレオマイシン(oestreomycin)、バージニアマイシンなどを含むストレプトグラミン;アカンスロマイシン(acanthomycin)、アクタプラニン(actaplanin)、アボパルシン(avoparcin)、バルヒマイシン(balhimycin)、ブレオマイシンB(銅ブレオマイシン)、クロロオリエンチシン(chloroorienticin)、クロロポリスポリン(chloropolysporin)、デメチルバンコマイシン、エンデュラシジン(enduracidin)、ガラカルジン(galacardin)、グアニジルフンギン(guanidylfungin)、ハチマイシン(hachimycin)、デメチルバンコマイシン、N−ノナノイル−テイコプラニン、フレオマイシン、プラトマイシン(platomycin)、リストセチン、スタフィロシジン(staphylocidin)、タリソマイシン(talisomycin)、テイコプラニン、バンコマイシン、ビクトマイシン(victomycin)、キシロカンジン(xylocandin)、ゾルバマイシン(zorbamycin)などを含むグリコペプチド;リファンピシン、リファブチン、リファペンチンなどを含むリファマイシン;メトロニダゾール、ニトロチアゾールなどを含むニトロイミダゾール;ナリジクス酸、シノキサシン、フルメキン、オキサリン酸、ピロミド酸、ピペミド酸、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン(lomefloxacin)、ナジフロキサシン(nadifloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、オフロキサシン、ペフロキサシン(pefloxacin)、ルフロキサシン、バロフロキサシン(balofloxacin)、グレパフロキサシン(grepafloxacin)、レボフロキサシン、メシル酸パズフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン(temafloxacin)、トスフロキサシン、クリナフロキサシン(clinafloxacin)、ゲミフロキサシン(gemifloxacin)、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、シタフロキサシン、トロバフロキサシン(trovafloxacin)などを含むキノロン;トリメトプリムを含むジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬;リネゾリド(linezolid)、エペレゾリド(eperezolid)などを含むオキサゾリジノン;グラミシジン、ポリミキシン、スルファクチン(surfactin)などを含むリポペプチド;ならびにそれらの類似体、塩および誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。抗真菌薬の例としては、アンホテリシン、ナイスタチン、ピマリシンなどのポリエン;フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコ(ketoco)などのアゾール系薬物;ナフチフィン、テルビナフィン、アモロルフィン(amorolfine)などのアリルアミンおよびモルホリン系薬物;5−フルオロシトシンなどの代謝拮抗抗真菌薬;ならびにそれらの類似体、塩および誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
任意の所与の感染においてどの抗菌薬をガリウム化合物と組み合わせて用いるべきであるかは、当業者に知られている様々な単純かつ常用の方法により決定することができる。例えば、患者から単離した感染性微生物を、標準化ディスク拡散法(例えば、Kirby−Bauerディスク拡散法)を用いて様々な抗菌薬に対するその感受性について試験することができる。簡単に述べると、この方法において、適切な寒天プレートに試験生物を均一に接種し、所定の濃度の各種抗生物質を含浸したペーパーディスクを寒天表面にのせる。インキュベーションの後に、生物の成長が阻害されているディスクの周囲の円形ゾーンの直径を測定する。阻害ゾーンの直径は、ディスク中の抗生物質の量および抗生物質に対する生物の感受性の関数である。生物が感受性を示す抗生物質をガリウム化合物との併用治療に用いることができる。抗生物質感受性試験の他の例としては、所与の生物に対する所与の抗菌薬の最小阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)を判定するためのブロスチューブ希釈法が挙げられるが、これに限定されない。これらの方法は、6.1項(後出)で述べる。
【0038】
したがって、特定の実施形態において、MRSAにより引き起こされる感染は、それを必要とする対象へのガリウム化合物とバンコマイシンまたはリネゾリド(例えば、Pfizer、NYによるZyvoxTM)との併用投与により治療することができる。バンコマイシンおよびZyvoxTMは、それぞれMRSA感染を治療するためのえり抜きの抗生物質として現在用いられている。同様に、他の特定の実施形態において、VREにより引き起こされる感染は、ガリウム化合物とリネゾリドとの併用投与により治療することができる。さらに他の特定の実施形態において、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)により引き起こされる感染または疾患/障害(例えば、消化性潰瘍、胃炎、十二指腸炎、胃癌など)は、ガリウム化合物と、クラリスロマイシン、アモキシシリンおよび/またはメトロニダゾールとの併用投与により治療することができる。ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の成長を直接または間接的に阻害または抑制する他の薬剤もガリウム化合物と併用投与することができる。そのような薬剤としては、消化性潰瘍の3剤療法(triple therapy)においてクラリスロマイシンおよびアモキシシリンとともに現在用いられているオメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬;およびフルオロファミド(fluorofamide)、アセトヒドロキサム酸、特定の2価金属イオン(Zn、Cu、CoおよびMnなどを含む)などのウレアーゼ阻害薬;ならびに胃の内面を被覆することにより胃の内面を保護するだけではなく、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の成長も抑制するビスマス化合物(例えば、次サリチル酸ビスマス)(S. Wagnerら、1992年、「Bismuth subsalicylate in the treatment of H2 blocker resistant duodenal ulcers: role of Helicobacter pylori」、Gut、33巻、179〜183頁)などの他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
他の態様において、本発明は、ガリウム化合物および1以上の追加の抗菌薬を含む1以上のバイアルを含むキットを提供する。
【実施例】
【0040】
5. 実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために記載するが、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0041】
5.1.生体外での試験:ガリウムに対する微生物の感受性
実施例 1
ガリウムに対する様々な微生物の感受性は、硝酸ガリウムを用いて各微生物の最小阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)を判定することにより試験した。一般的に、MICは、(i)それぞれが標準的な数の微生物を含む一連のブロスをガリウム化合物の連続希釈溶液と混合し、(ii)インキュベーションの後に、微生物の成長を阻害するガリウム化合物の最低濃度であるMICを決定する。MICが低いほど、その生物の感受性は高い。MBCは、MIC試験からの各サンプルの一部を、ガリウム化合物を含まない適切な寒天プレート上で継代培養することによって求める。インキュベーションの後に、成長が認められないガリウム化合物の最低濃度であるMBCを決定する。
【0042】
具体的には、この実験において、2gの硝酸ガリウム粉末を10mlのろ過滅菌済み脱イオン水に溶解し、得られた20%(重量/容積)(すなわち、200mg/ml)溶液をもう一度ろ過滅菌した。10%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%および0.001%の硝酸ガリウム溶液を調製したカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の試験を除いて、ほとんどの生物の試験用に0.156%(すなわち、1.56mg/ml)までの2倍連続希釈物を滅菌脱イオン水を用いて調製した。
【0043】
表1にMICおよびMBCについて試験した微生物の一覧を示す。すべての生物をアメリカンタイプカルチャーコレクション(America Type Culture Collection)(ATCC)(Manassas、VA)から入手した。各微生物を種培養(表1を参照)から採取し、適切な種類のブロスに接種して0.5マクファーランド(McFarland)濁度標準を得た。次いで、微生物の標準懸濁液をブロスで1:100に希釈し、試験に用いた。
【0044】
【表1】

【0045】
各微生物を以下のように96ウエルプレートにおける微量液体希釈法(すなわち、0.1mlの硝酸ガリウム溶液を0.1mlの微生物懸濁液と混合)または試験管中の大量液体希釈法(すなわち、1mlの硝酸ガリウム溶液を1mlの微生物懸濁液と混合)のいずれかにより2回ずつ試験した。
微量液体希釈法:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)O157:H7およびカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)
大量液体希釈法:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(VRE)およびチフス菌(Salmonella typhi)
【0046】
微生物の成長は、サンプル中の濁度の目視観察により判定した。
【0047】
以下の対照を試験サンプルとともにインキュベートした。
生存度対照:脱イオン水と、試験微生物を接種したが硝酸ガリウムを含まない適切なブロスとの等量混合物、および
無菌性対照:脱イオン水と微生物または硝酸ガリウムのいずれかを含まない適切なブロスとの等量混合物
【0048】
各微生物の純度は、適切に希釈した微生物の懸濁液を適切な寒天プレート上で画線培養して分離コロニーを得て、コロニーの形態を観察することにより確認した。
【0049】
MIC試験に用いた懸濁液中の微生物の濃度は、懸濁液の連続希釈物を適切な寒天プレート上に接種し、コロニーの数を数えることにより判定した。
【0050】
MBCを求めるために、MICに用いた10μlの各サンプルを適切な寒天プレート上に接種し、インキュベートした。成長を示さなかった硝酸ガリウムの最低濃度をMBCと決定した。
【0051】
結果を下の表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
5.2.生体内での試験:動物モデルにおける硝酸ガリウムの効果
実施例 2
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)
成体BALBcマウスに1×10CFU/マウスの黄色ブドウ球菌MRSA株(例えば、ATCC33592)を腹腔内注射により接種する。細菌の注射後(接種の約8時間後)に、各マウスに次のうちの1つを単回静脈内注射する:0.9%生理食塩水(対照)、すべて0.9%生理食塩水に溶解した30mg/kg、45mg/kgもしくは60mg/kgの硝酸ガリウム、200mg/kgのバンコマイシン、または45mg/kgの硝酸ガリウムおよび200mg/kgのバンコマイシン。最初に、6群のそれぞれに5匹のマウスが存在する。接種後、マウスを病的状態について1日2回モニターする。体温を1日2回測定し、体温が4℃またはそれ以上低下したマウスは瀕死であるとみなし、安楽死させる。体重を試験期間中1日1回測定する。5日目に、残りのすべての動物を安楽死させる。脾臓、リンパ節および腎臓を採取し、細菌の定量のために滅菌PBS中でホモジナイズし、連続希釈する。
【0054】
実施例 3
バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(VRE)
成体CF1マウスをケージに個別に収容し、糞1g当たりのコロニー形成単位(CFU)の天然腸球菌および可能なVREの総数を各マウスのベースラインとして決定する。1日目に、各マウスにミュラーヒントンブロス(MHB)中0.5ml(約10CFU/ml)のVRE(例えば、ATCC51575)懸濁液またはMHBのみ(対照)をステンレススチール製栄養補給チューブを用いて胃管強制投与により投与する。その後規定の間隔(例えば、1日、7日、14日等)で、各マウスから2つの新鮮な糞ペレットを採取し、重さを量り、MHB中で乳化し、標準的な連続希釈および平板培養法により、糞1g当たりのVRE、腸球菌およびグラム陰性腸桿菌(enteric bacilli)のCFU数を判定する。例えば、総腸球菌数は胆汁エスクリン寒天を用いて、腸桿菌の数はマッコンキー(MacConkey)寒天を用いて、VREの数はバンコマイシン(50μg/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、ポリミキシン(100μg/ml)およびニスタチン(2μg/ml)を含むミュラーヒントンII寒天を用いて測定することができる(M.S. Whitmanら、1996年、「Gastrointestinal tract colonization with vancomycin-resistant Enterococcus faecium in an animal model」、Antimicrobial Agent and Chemotherapy、40巻(6号)、1526〜1530頁)。マウスの群(1群当たり少なくとも5匹)を、マウスへの接種の24時間後から10日後まで、滅菌済み飲料水(対照)、または100μg/ml、200μg/mlもしくは300μg/mlのクエン酸ガリウム、250μg/mlのバンコマイシン、250μg/mlのリネゾイド、または200μg/mlのクエン酸ガリウムおよび250μg/mlのリネゾイドを含有する飲料水の毎日の投与に割り付ける。糞中のVREおよび総腸球菌の数を接種してから40日後まで規定の間隔で各群ごとに判定し、ベースライン数と比較する。
【0055】
実施例 4
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)
C57BL/6マウスにマウス適合ヘリコバクター・ピロリSS1株(Lee A, O'Roukeら、1977年、「A standardized mouse model of Helicobacter pylori infection: introducing Sydney strain」、Gastroenterology、112巻、1386〜97頁)を適切な媒体(例えば、ブルセラブロス)中細菌懸濁液(約1〜2×10細菌/ml)0.1mlの胃内送達により接種する。対照マウスには細菌を含まない媒体0.1mlを投与する。細菌のコロニー形成が確立した状態になるまで、マウスを1〜3週間放置する。マウスの群(1群当たり少なくとも5匹)を、毎日、14日間にわたる滅菌済み生理食塩水(対照)、あるいは生理食塩水中15mg/kgのオメプラゾールを含むまたは含まない60mg/kg、80mg/kgもしくは100mg/kgのガリウムマルトレートの胃内強制投与に割り付ける。処置の終了の24時間後にマウスを安楽死させる。胃組織の縦方向の切片を摘出し、ホルマリン溶液で固定し、パラフィンに包埋し、8μに切断して組織学的切片を作製する。切片をギムザ染色で準備し、胃粘膜のヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のコロニー形成について顕微鏡的に検査する。胃組織の第2の縦方向の切片を摘出し、重量を測定し、1mlのブルセラブロス中でホモジナイズする。ホモジネートをリン酸緩衝生理食塩水で希釈し、一部を2つずつ選択培地(例えば、5%脱線維素ヒツジ血液、100μg/mlバンコマイシン、3.3μg/mlポリミキシンB、200g/mlバシトラシン、10.7μg/mlナリジクス酸および50μg/mlアンホテリシンBを補充した血液寒天)上で平板培養する(J.I. Keenaら、2004年、「The effect of Helicobacter pylori infection and dietary iron deficiency on host iron homeostasis: A study in mice」、Helicobacter、9巻(6号)、643〜650頁を参照)。ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の成長は、グラム染色、形態およびウレアーゼ産生に基づいて確認する。組織1g当たりのコロニー形成単位(CFU)の数を判定し、群間で比較する。
【0056】
6. 同等物
本発明に関連する当業者は、常用の実験のみを用いて本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識し、またはそれらを確認することができる。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0057】
本明細書において言及したすべての刊行物、特許および公開された特許出願は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0058】
本明細書における参考文献の引用または考察は、そのようなものが本発明に対する先行技術であることを認めることと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外微生物によって引き起こされる感染症を予防または治療する方法であって、予防上または治療上有効な量のガリウム化合物をそれを必要とする被験体に全身的に投与する工程を含み、前記細胞外微生物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびレジオネラ属菌(Legionella spp.)を除く、前記方法。
【請求項2】
細胞外微生物が、細菌属のブドウ球菌属(Staphylococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エシェリキア属(Escherichia)、連鎖球菌属(Streptococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、サルモネラ属(Salmonella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、クラミジア属(Chlamydia)、コクシエラ属(Coxilla)、エールリヒア属(Ehrlichia)、フランシセラ属(Francisella)、パスツレラ属(Pasteurella)、ブルセラ属(Brucella)、プロテウス属(Proteus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、トロフェリマ属(Tropheryma)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アエロモナス属(Aeromonas)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、カプノシトファガ属(Capnocytophaga)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、リステリア属(Listeria)およびエルジニア(Yersinia)属、ならびに真菌属のカンジダ属(Candida)からなる群より選択される属の種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記種が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)およびカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞外微生物が少なくとも1つの抗生物質に対して耐性である株である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記株が、MRSA、VRE、大腸菌(E.coli)O157:H7、フルオロキノロン耐性チフス菌(Salmonella typhi)、セフタジジム耐性肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)およびフルオロキノロン耐性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガリウム化合物が、硝酸ガリウム、ガリウムマルトレート、クエン酸ガリウム、リン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、炭酸ガリウム、ギ酸ガリウム、酢酸ガリウム、硫酸ガリウム、酒石酸ガリウム、シュウ酸ガリウムおよび酸化ガリウムからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガリウム化合物が経口投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ガリウム化合物が、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内または坐剤により投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
予防上または治療上有効な量の少なくとも1つの追加の抗菌薬を全身的に併用投与する工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
MRSAによって引き起こされる感染症を予防または治療する方法であって、個別にまたは集合的に、予防上または治療上有効な量のガリウム化合物および少なくとも1つの追加の抗菌薬をそれを必要とする被験体に全身的に併用投与する工程を含む、前記方法。
【請求項11】
前記追加の抗菌薬がバンコマイシンおよび/またはリネゾリドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
VREによって引き起こされる感染症を予防または治療する方法であって、個別にまたは集合的に、予防上または治療上有効な量のガリウム化合物および少なくとも1つの追加の抗菌薬をそれを必要とする被験体に全身的に併用投与する工程を含む、前記方法。
【請求項13】
前記追加の抗菌薬がリネゾリドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)によって引き起こされる消化性潰瘍、胃炎または十二指腸炎を予防または治療する方法であって、予防上または治療上有効な量のガリウム化合物をそれを必要とする被験体に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項15】
前記ガリウム化合物が経口投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ガリウム化合物が、硝酸ガリウム、ガリウムマルトレート、クエン酸ガリウム、リン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、炭酸ガリウム、ギ酸ガリウム、酢酸ガリウム、硫酸ガリウム、酒石酸ガリウム、シュウ酸ガリウムおよび酸化ガリウムからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
予防上または治療上有効な量の少なくとも1つの追加の抗菌薬を全身的に併用投与する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記追加の抗菌薬が、クラリスロマイシン、アモキシシリン、メトロニダゾール、オメプラゾールおよび次サリチル酸ビスマスからなる群より選択される1以上の薬剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ガリウム化合物および少なくとも1つの追加の抗菌薬を含む1以上の容器を含むキット。

【公表番号】特表2010−523577(P2010−523577A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502217(P2010−502217)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058666
【国際公開番号】WO2009/009171
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(508130856)シデロミクス,エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】